JPWO2010041308A1 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Abstract

コモンレール式ディーゼルエンジンに対し、エンジンの過渡運転が発生した場合、「筒内過渡温度」から「筒内定常温度」を減算して「筒内温度差」(ΔT)を求め、その「筒内温度差」が負の値である場合にはプレ噴射の噴射量を多くするプレ噴射増量補正を行い、「筒内温度差」が正の値である場合にはプレ噴射の噴射量を少なくするプレ噴射減量補正を行う。これにより、気筒内の予熱量が適切に得られ、筒内燃焼状態の適正化による必要トルクの確保および排気エミッションの改善が図れる。

Description

本発明は、ディーゼルエンジンに代表される内燃機関の燃料噴射制御装置に係る。特に、本発明は、燃料噴射弁からの主噴射(以下、メイン噴射と呼ぶ場合もある)に先立って筒内予熱用の副噴射(以下、プレ噴射またはパイロット噴射と呼ぶ場合もある)が実行可能な圧縮自着火式の内燃機関に対し、この副噴射での噴射量の適正化を図るための対策に関する。
従来から周知のように、自動車用エンジン等として使用されるディーゼルエンジンでは、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気温度等に応じて、燃料噴射弁(以下、インジェクタと呼ぶ場合もある)からの燃料噴射タイミングや燃料噴射量を調整する燃料噴射制御が行われている。
上記ディーゼルエンジンの燃焼は、予混合燃焼と拡散燃焼とにより成り立っている。インジェクタからの燃料噴射が開始されると、まず燃料の気化拡散により可燃混合気が生成される(着火遅れ期間)。次に、この可燃混合気が燃焼室の数ヶ所でほぼ同時に自己着火し、急速に燃焼が進む(予混合燃焼)。さらに、燃焼室内への燃料噴射が継続され、燃焼が継続的に行われる(拡散燃焼)。その後、燃料噴射が終了した後にも未燃燃料が存在するため、しばらくの間、熱発生が続けられる(後燃え期間)。
また、ディーゼルエンジンでは、着火遅れ期間が長くなるほど、あるいは着火遅れ期間における燃料の気化が激しいほど、着火後の火炎伝播速度が増大する。この火炎伝播速度が大きくなると、一時に燃える燃料の量が多くなり過ぎて、シリンダ内の圧力が急激に増大し、振動や騒音が発生する。こうした現象はディーゼルノッキングとよばれており、特に低負荷運転時に発生することが多い。また、このような状況では、燃焼温度の急激な上昇に伴って窒素酸化物(以下、「NOx」と呼ぶ)の発生量も増大し、排気エミッションが悪化してしまう。
そこで、こうしたディーゼルノッキングを防止したり、NOx発生量を低減するために、各種の燃料噴射制御装置が開発されている。例えば、エンジントルク発生に寄与する燃焼を行わせるメイン噴射に先立って、少量の燃料を噴射する副噴射(パイロット噴射やプレ噴射)を行うものが挙げられる。つまり、パイロット噴射やプレ噴射の実行後、燃料噴射を一旦中断し、その燃料が着火状態(いわゆる火種)になったところでメイン噴射を実行することが提案されている(下記の特許文献1〜3を参照)。
こうした副噴射の実行により、その後のメイン噴射の開始に伴う初期燃焼を緩和でき、ディーゼルノッキングの発生を抑制することができる。また、メイン噴射実行時には副噴射時の燃料が既に着火しており、予め火種ができた状態となっているため、失火の発生を回避することもできる。このため、副噴射によって低温始動性が向上するようになるとともに、低温時における白煙の発生も低減されるようになる。さらに、この副噴射によって着火遅れ期間中の燃料噴射量が減少するため、予混合燃焼も抑制される。また、予混合燃焼中は熱発生率が高くなるためNOxの生成が促進される可能性があるが、上記副噴射により予混合燃焼が抑制されることで、NOxの発生、並びに予混合燃焼に伴う騒音の発生も、同様に低減されることになる。
尚、特許文献1には、エンジンが加速運転状態になったときに副噴射量および主噴射量をそれぞれ増量補正するに際し、エンジンが高負荷側の設定運転領域まで移行すると予測された場合には、副噴射量の増量補正を制限することが開示されている。これにより、加速運転の後期に燃焼が過度に激しくなることを回避できるようにしている。
また、特許文献2には、副噴射に起因する予混合気の着火が過早着火であると判断された場合に、予混合気の空燃比をリーン側またはリッチ側に設定することが開示されている。これにより、エンジン負荷に関わらず安定した燃焼を実現可能としている。
更に、特許文献3には、冷却水温度が高いほど副噴射量を増加させ、これにより、NOxの還元が最良となる必要最小限のHCを供給可能とすることが開示されている。
特開2001−241345号公報 特開2004−197599号公報 特許第3861418号公報
ところで、これまで、上述したような副噴射(以下、プレ噴射で代表して説明する)を実行する場合に、エンジンの過渡運転時にあっては、その副噴射での噴射量が適正に得られてない可能性があることを本発明の発明者は見出した。以下、具体的に説明する。
上記プレ噴射の噴射量は、予め実験やシミュレーションにより、エンジンを定常運転にした状態で筒内温度やエンジン運転状態(エンジン負荷など)に応じた噴射量として規定されている。つまり、この筒内温度およびエンジン運転状態とプレ噴射の噴射量との関係をマップ化してエンジンECUのROMに記憶させておき、現在の筒内温度およびエンジン運転状態を上記マップに当て嵌めて、プレ噴射の噴射量を読み出し、この読み出した噴射量でプレ噴射を実行するようにしている。
このため、エンジンが定常運転状態であって筒内温度が所定温度に収束している場合には、上記マップに従ったプレ噴射を実行することで、適切なプレ噴射量が得られる。これにより、気筒内の予熱量が適切に得られ、筒内燃焼状態の適正化による必要トルクの確保および排気エミッションの改善を図ることができる。
ところで、実際の気筒内で必要となる予熱量(以下、要求予熱量と呼ぶ)は以下のように変化している。
例えば、エンジンのトルクが一定で回転数が上昇していく運転状態では、エンジン冷却系の冷却能力が略一定であることから、エンジン内部のフリクションの増加に伴って筒内の蓄熱量が次第に大きくなっていく。このため、このような運転状態では要求予熱量は低下していくことになる。
また、エンジンの回転数が一定でトルクが上昇していく運転状態では、筒内での熱発生量が増加していくために筒内の蓄熱量が次第に大きくなっていく。従って、この場合にも要求予熱量は低下していくことになる。
このため、例えばエンジンの軽負荷運転が継続している状態(例えば市街地走行時)から一時的に高負荷運転に移行した場合、それに伴ってプレ噴射の噴射量を増量補正することにはなるが、この増量補正を行っても直ちに予熱量が要求予熱量には到達せず(上記蓄熱分だけ熱量が奪われてしまって(シリンダヘッド等の熱容量分だけ熱量が奪われてしまって)気筒内空間の予熱に寄与できる燃料量が少なくなってしまい)、予熱量不足の状態が継続することになる。そして、このように一時的に高負荷運転となった場合、直ちに軽負荷運転に戻ることになるので、次回の高負荷運転時においても予熱量不足の状態を招いてしまうことになる。
一方、車両の高速巡航走行が継続している状態(例えば高速道路の走行時)では筒内温度が収束状態(比較的高い筒内温度が維持された状態)となっているが、この状態から車両が減速する場合、気筒内の要求予熱量は減少するにも拘わらず、気筒内には上記高速巡航走行時に発生していた上記蓄熱分が残存しているため、プレ噴射の減量補正を行っても直ちに予熱量が要求予熱量まで低下することがなく、予熱量過剰状態を招いてしまうことになる。
このような予熱量不足や予熱量過剰の状態では、筒内の燃焼状態を理想的な燃焼とすることが困難になり、エンジントルクが十分に得られなかったり、排気エミッションの悪化を招いたりする可能性がある。
具体的には、排気エミッションを改善するためにメイン噴射の噴射タイミングを遅角側に設定したり、EGR量の増量を行ったりしている場合に、予熱量不足が生じていると、失火限界に対する余裕分(噴射タイミングの遅角可能量や、EGR量の増量可能量)を十分に確保することが難しい。その結果、筒内での燃焼が悪化することになる。逆に、予熱量過剰の状態では、膨張行程初期時の燃焼速度が大幅に上昇してしまう。その結果、NOx発生量が増加したり燃焼音が大きくなってエンジン騒音の増大に繋がってしまうことになる。
以上のような不具合が生じる原因は、上述したプレ噴射の噴射量を規定するマップが、エンジンが定常運転状態となっていることを前提として作成されたためであることに本発明の発明者は着目した。つまり、これまでのプレ噴射の噴射量を決定する制御ロジックでは、上述したようなエンジンの過渡運転時については考慮されていなかった。
そこで、本発明の発明者は、エンジンの過渡運転状態では、上記マップ(定常運転状態を前提とするマップ)で規定される噴射量とは異なる噴射量でプレ噴射を実行する必要があることを見出し、本発明に至った。
尚、上記各特許文献においても、エンジンの過渡運転時に応じて適切な筒内予熱量を得るためにプレ噴射の噴射量を設定する技術的思想については開示されていない。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、主噴射に先立って副噴射を実行可能とした内燃機関に対し、副噴射での燃料噴射量の最適化を図ることが可能な燃料噴射制御装置を提供することにある。
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、内燃機関が過渡運転となった場合には、略同一負荷で定常運転である場合に比べて筒内予熱量の過不足分が生じているので、この筒内予熱量の過不足分に応じて副噴射量を制御し、内燃機関の過渡運転時であっても適切な筒内予熱量が得られるようにしている。
−解決手段−
具体的に、本発明は、燃料噴射弁からの燃料噴射動作として、少なくとも、主噴射と、この主噴射に先立って行われ且つ気筒内の予熱に寄与する副噴射とが実行可能な圧縮自着火式の内燃機関の燃料噴射制御装置を前提とする。この内燃機関の燃料噴射制御装置に対し、内燃機関の負荷変化による過渡運転時、筒内温度がその負荷に応じた所定温度に略収束するまでの間、筒内予熱量の過不足分に応じて副噴射の噴射量を補正する副噴射量補正手段を備えさせている。
より具体的には、内燃機関の過渡運転時における筒内過渡温度から、上記負荷に応じて収束する上記所定温度である筒内定常温度を減算することで求められる筒内温度差に応じて筒内予熱量の過不足分を求め、この過不足分に応じて副噴射の噴射量を補正するようにしている。
この特定事項により、内燃機関が定常運転から過渡運転に移行した場合、上記筒内過渡温度が筒内定常温度よりも低く、筒内予熱量が、現負荷に応じた所定温度よりも低い場合には副噴射の噴射量を増量補正する。これにより、筒内予熱量の不足分が解消されていき、筒内過渡温度は筒内定常温度に急速に近付いていく。その結果、気筒内の予熱量が適切に得られ、筒内燃焼状態の適正化による必要トルクの確保および排気エミッションの改善を図ることが可能になる。一方、上記筒内過渡温度が筒内定常温度よりも高く、筒内予熱量が、現負荷に応じた所定温度よりも高い場合には副噴射の噴射量を減量補正する。これにより、筒内予熱量の過剰分が解消されていき、この場合にも筒内過渡温度は筒内定常温度に急速に近付いていく。その結果、気筒内の予熱量が適切に得られ、筒内燃焼状態の適正化による必要トルクの確保および排気エミッションの改善を図ることが可能になる。
上記副噴射での噴射量を増量補正や減量補正する場合の具体的な運転状態としては、内燃機関の負荷上昇に伴う過渡運転時には上記筒内温度差に応じて副噴射の噴射量を増量補正する一方、内燃機関の負荷下降に伴う過渡運転時には上記筒内温度差に応じて副噴射の噴射量を減量補正するようにしている。
例えば、内燃機関の軽負荷運転が継続している状態でドライバによる急激なアクセル踏み込み操作が行われて内燃機関の負荷が上昇した場合には、副噴射の噴射量が増量補正(定常運転時でのその負荷に対応した副噴射の噴射量よりも増量側に補正)され、過渡運転の状態に応じた予熱量の加算が行われることになる。逆に、内燃機関の高負荷運転が継続している状態でドライバによる急激なアクセル戻し操作が行われて内燃機関の負荷が下降した場合には、副噴射の噴射量が減量補正(定常運転時でのその負荷に対応した副噴射の噴射量よりも減量側に補正)され、過渡運転の状態に応じた予熱量の減算が行われることになる。これにより内燃機関の過渡状態に応じた予熱量を得ることが可能になる。
上記副噴射を増量補正する際の具体的な動作としては以下のものが挙げられる。先ず、副噴射1回当たりの噴射量を増量することなく、副噴射の噴射回数を増加するものである。また、副噴射1回当たりの噴射量を増量するものである。
上記副噴射を減量補正する際の具体的な動作としては以下のものが挙げられる。先ず、副噴射1回当たりの噴射量を減量することなく、副噴射の噴射回数を削減するものである。また、副噴射1回当たりの噴射量を減量するものである。
また、副噴射の噴射回数を増減することで噴射量を調整するものにあっては、その副噴射1回当たりの噴射量を、燃料噴射弁の最小限界噴射量に設定している。このように副噴射1回当たりの噴射量を最小限界噴射量に設定することで、この副噴射で噴射された燃料の吸熱反応を抑制することができる。つまり、副噴射の着火遅れを抑制し、この副噴射で噴射された燃料による筒内予熱効果を、遅れを殆ど生じさせることなく確保することが可能になる。
本発明では、内燃機関が過渡運転となった場合には、略同一負荷で定常運転である場合に比べて筒内予熱量の過不足分が生じていることに鑑み、この筒内予熱量の過不足分に応じて副噴射量を制御し、内燃機関の過渡運転時であっても適切な筒内予熱量が得られるようにしている。このため、筒内燃焼状態の適正化による必要トルクの確保および排気エミッションの改善を図ることが可能になる。
図1は、実施形態に係るエンジンおよびその制御系統の概略構成図である。 図2は、ディーゼルエンジンの燃焼室およびその周辺部を示す断面図である。 図3は、ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。 図4は、膨張行程時の熱発生率の変化状態を示す波形図である。 図5は、筒内過渡温度と筒内定常温度との温度差ΔTと、プレ噴射の噴射量を算出するための補正係数との関係を示す図である。 図6は、プレ噴射増量補正の第1実施形態に係る燃料噴射パターンを示す図である。 図7は、プレ噴射増量補正の第2実施形態に係る燃料噴射パターンを示す図である。 図8は、プレ噴射減量補正の第1実施形態に係る燃料噴射パターンを示す図である。 図9は、プレ噴射減量補正の第2実施形態に係る燃料噴射パターンを示す図である。
符号の説明
1 エンジン(内燃機関)
23 インジェクタ(燃料噴射弁)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車に搭載されたコモンレール式筒内直噴型多気筒(例えば直列4気筒)ディーゼルエンジン(圧縮自着火式内燃機関)に本発明を適用した場合について説明する。
−エンジンの構成−
先ず、本実施形態に係るディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)の概略構成について説明する。図1は本実施形態に係るエンジン1およびその制御系統の概略構成図である。また、図2は、ディーゼルエンジンの燃焼室3およびその周辺部を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るエンジン1は、燃料供給系2、燃焼室3、吸気系6、排気系7等を主要部とするディーゼルエンジンシステムとして構成されている。
燃料供給系2は、サプライポンプ21、コモンレール22、インジェクタ(燃料噴射弁)23、遮断弁24、燃料添加弁26、機関燃料通路27、添加燃料通路28等を備えて構成されている。
上記サプライポンプ21は、燃料タンクから燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を高圧にした後、機関燃料通路27を介してコモンレール22に供給する。コモンレール22は、サプライポンプ21から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各インジェクタ23に分配する。インジェクタ23は、その内部に圧電素子(ピエゾ素子)を備え、適宜開弁して燃焼室3内に燃料を噴射供給するピエゾインジェクタにより構成されている。このインジェクタ23からの燃料噴射制御の詳細については後述する。
また、上記サプライポンプ21は、燃料タンクから汲み上げた燃料の一部を、添加燃料通路28を介して燃料添加弁26に供給する。添加燃料通路28には、緊急時において添加燃料通路28を遮断して燃料添加を停止するための上記遮断弁24が備えられている。
また、上記燃料添加弁26は、後述するECU100による添加制御動作によって排気系7への燃料添加量が目標添加量(排気A/Fが目標A/Fとなるような添加量)となるように、また、燃料添加タイミングが所定タイミングとなるように開弁時期が制御される電子制御式の開閉弁により構成されている。つまり、この燃料添加弁26から所望の燃料が適宜のタイミングで排気系7(排気ポート71から排気マニホールド72)に噴射供給される構成となっている。
吸気系6は、シリンダヘッド15(図2参照)に形成された吸気ポート15aに接続される吸気マニホールド63を備え、この吸気マニホールド63に、吸気通路を構成する吸気管64が接続されている。また、この吸気通路には、上流側から順にエアクリーナ65、エアフローメータ43、スロットルバルブ62が配設されている。上記エアフローメータ43は、エアクリーナ65を介して吸気通路に流入される空気量に応じた電気信号を出力するようになっている。
排気系7は、シリンダヘッド15に形成された排気ポート71に接続される排気マニホールド72を備え、この排気マニホールド72に対して、排気通路を構成する排気管73,74が接続されている。また、この排気通路には、NOx吸蔵触媒(NSR触媒:NOx Storage Reduction触媒)75およびDPNR触媒(Diesel Paticulate−NOx Reduction触媒)76を備えたマニバータ(排気浄化装置)77が配設されている。以下、これらNSR触媒75およびDPNR触媒76について説明する。
NSR触媒75は、吸蔵還元型NOx触媒であって、例えばアルミナ(Al23)を担体とし、この担体上に例えばカリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)のようなアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)のようなアルカリ土類、ランタン(La)、イットリウム(Y)のような希土類と、白金(Pt)のような貴金属とが担持された構成となっている。
このNSR触媒75は、排気中に多量の酸素が存在している状態においてはNOxを吸蔵し、排気中の酸素濃度が低く、かつ還元成分(例えば燃料の未燃成分(HC))が多量に存在している状態においてはNOxをNO2若しくはNOに還元して放出する。NO2やNOとして放出されたNOxは、排気中のHCやCOと速やかに反応することによってさらに還元されてN2となる。また、HCやCOは、NO2やNOを還元することで、自身は酸化されてH2OやCO2となる。即ち、NSR触媒75に導入される排気中の酸素濃度やHC成分を適宜調整することにより、排気中のHC、CO、NOxを浄化することができるようになっている。本実施形態のものでは、この排気中の酸素濃度やHC成分の調整を上記燃料添加弁26からの燃料添加動作によって行うことが可能となっている。
一方、DPNR触媒76は、例えば多孔質セラミック構造体にNOx吸蔵還元型触媒を担持させたものであり、排気ガス中のPMは多孔質の壁を通過する際に捕集される。また、排気ガスの空燃比がリーンの場合、排気ガス中のNOxはNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵され、空燃比がリッチになると、吸蔵したNOxは還元・放出される。さらに、DPNR触媒76には、捕集したPMを酸化・燃焼する触媒(例えば白金等の貴金属を主成分とする酸化触媒)が担持されている。
ここで、ディーゼルエンジンの燃焼室3およびその周辺部の構成について、図2を用いて説明する。この図2に示すように、エンジン本体の一部を構成するシリンダブロック11には、各気筒(4気筒)毎に円筒状のシリンダボア12が形成されており、各シリンダボア12の内部にはピストン13が上下方向に摺動可能に収容されている。
ピストン13の頂面13aの上側には上記燃焼室3が形成されている。つまり、この燃焼室3は、シリンダブロック11の上部にガスケット14を介して取り付けられたシリンダヘッド15の下面と、シリンダボア12の内壁面と、ピストン13の頂面13aとにより区画形成されている。そして、ピストン13の頂面13aの略中央部には、キャビティ(凹陥部)13bが凹設されており、このキャビティ13bも燃焼室3の一部を構成している。
このピストン13は、コネクティングロッド18の小端部18aがピストンピン13cにより連結されており、このコネクティングロッド18の大端部はエンジン出力軸であるクランクシャフトに連結されている。これにより、シリンダボア12内でのピストン13の往復移動がコネクティングロッド18を介してクランクシャフトに伝達され、このクランクシャフトが回転することでエンジン出力が得られるようになっている。また、燃焼室3に向けてグロープラグ19が配設されている。このグロープラグ19は、エンジン1の始動直前に電流が流されることにより赤熱し、これに燃料噴霧の一部が吹きつけられることで着火・燃焼が促進される始動補助装置として機能する。
上記シリンダヘッド15には、燃焼室3へ空気を導入する吸気ポート15aと、燃焼室3から排気ガスを排出する上記排気ポート71とがそれぞれ形成されていると共に、吸気ポート15aを開閉する吸気バルブ16および排気ポート71を開閉する排気バルブ17が配設されている。これら吸気バルブ16および排気バルブ17はシリンダ中心線Pを挟んで対向配置されている。つまり、本エンジン1はクロスフロータイプとして構成されている。また、シリンダヘッド15には、燃焼室3の内部へ直接的に燃料を噴射する上記インジェクタ23が取り付けられている。このインジェクタ23は、シリンダ中心線Pに沿う起立姿勢で燃焼室3の略中央上部に配設されており、上記コモンレール22から導入される燃料を燃焼室3に向けて所定のタイミングで噴射するようになっている。
更に、図1に示す如く、このエンジン1には、過給機(ターボチャージャ)5が設けられている。このターボチャージャ5は、タービンシャフト51を介して連結されたタービンホイール52およびコンプレッサホイール53を備えている。コンプレッサホイール53は吸気管64内部に臨んで配置され、タービンホイール52は排気管73内部に臨んで配置されている。このためターボチャージャ5は、タービンホイール52が受ける排気流(排気圧)を利用してコンプレッサホイール53を回転させ、吸気圧を高めるといった所謂過給動作を行うようになっている。本実施形態におけるターボチャージャ5は、可変ノズル式ターボチャージャであって、タービンホイール52側に可変ノズルベーン機構(図示省略)が設けられており、この可変ノズルベーン機構の開度を調整することにより、エンジン1の過給圧を調整することができる。
吸気系6の吸気管64には、ターボチャージャ5での過給によって昇温した吸入空気を強制冷却するためのインタークーラ61が設けられている。このインタークーラ61よりも更に下流側に設けられた上記スロットルバルブ62は、その開度を無段階に調整することができる電子制御式の開閉弁であり、所定の条件下において吸入空気の流路面積を絞り、この吸入空気の供給量を調整(低減)する機能を有している。
また、エンジン1には、吸気系6と排気系7とを接続する排気還流通路(EGR通路)8が設けられている。このEGR通路8は、排気の一部を適宜吸気系6に還流させて燃焼室3へ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させるものである。また、このEGR通路8には、電子制御によって無段階に開閉され、同通路を流れる排気流量を自在に調整することができるEGRバルブ81と、EGR通路8を通過(還流)する排気を冷却するためのEGRクーラ82とが設けられている。
−センサ類−
エンジン1の各部位には、各種センサが取り付けられており、それぞれの部位の環境条件や、エンジン1の運転状態に関する信号を出力する。
例えば、上記エアフローメータ43は、吸気系6内のスロットルバルブ62上流において吸入空気の流量(吸入空気量)に応じた検出信号を出力する。吸気温センサ49は、吸気マニホールド63に配置され、吸入空気の温度に応じた検出信号を出力する。吸気圧センサ48は、吸気マニホールド63に配置され、吸入空気圧力に応じた検出信号を出力する。A/F(空燃比)センサ44は、排気系7のマニバータ77の下流において排気中の酸素濃度に応じて連続的に変化する検出信号を出力する。排気温センサ45は、同じく排気系7のマニバータ77の下流において排気ガスの温度(排気温度)に応じた検出信号を出力する。レール圧センサ41はコモンレール22内に蓄えられている燃料の圧力に応じた検出信号を出力する。スロットル開度センサ42はスロットルバルブ62の開度を検出する。
−ECU−
ECU100は、図3に示すように、CPU101、ROM102、RAM103およびバックアップRAM104などを備えている。ROM102は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。RAM103は、CPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリである。バックアップRAM104は、例えばエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
以上のCPU101、ROM102、RAM103およびバックアップRAM104は、バス107を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース105および出力インターフェース106と接続されている。
入力インターフェース105には、上記レール圧センサ41、スロットル開度センサ42、エアフローメータ43、A/Fセンサ44、排気温センサ45、吸気圧センサ48、吸気温センサ49が接続されている。さらに、この入力インターフェース105には、エンジン1の冷却水温に応じた検出信号を出力する水温センサ46、アクセルペダルの踏み込み量に応じた検出信号を出力するアクセル開度センサ47、および、エンジン1の出力軸(クランクシャフト)が一定角度回転する毎に検出信号(パルス)を出力するクランクポジションセンサ40などが接続されている。一方、出力インターフェース106には、上記インジェクタ23、燃料添加弁26、スロットルバルブ62、および、EGRバルブ81などが接続されている。
そして、ECU100は、上記した各種センサの出力に基づいて、エンジン1の各種制御を実行する。さらに、ECU100は、インジェクタ23の燃料噴射制御として、後述するパイロット噴射、プレ噴射、メイン噴射(主噴射)、アフタ噴射、ポスト噴射を実行する。
−燃料噴射形態−
以下、本実施形態における上記パイロット噴射、プレ噴射、メイン噴射、アフタ噴射、ポスト噴射の各動作の概略について説明する。
(パイロット噴射)
パイロット噴射は、インジェクタ23からのメイン噴射(主噴射)に先立ち、予め少量の燃料を噴射する噴射動作である。つまり、このパイロット噴射の実行後、燃料噴射を一旦中断し、メイン噴射が開始されるまでの間に圧縮ガス温度(気筒内温度)を十分に高めて燃料の自着火温度に到達させるようにし、これによってメイン噴射で噴射される燃料の着火性を良好に確保するようにしている。即ち、この実施形態におけるパイロット噴射の機能は、気筒内の予熱に特化したものとなっている。言い換えれば、この実施形態におけるパイロット噴射は、燃焼室3内でのガスの予熱を行うための噴射動作(予熱用燃料の供給動作)となっている。
具体的には、噴霧の分配や局所濃度の適正化を図るために、パイロット噴射の1回当たりの噴射量をインジェクタ23の最小限界噴射量(例えば1.5mm3)とし、噴射回数を設定することで必要な総パイロット噴射量を確保するようにしている。このようにして分割噴射されるパイロット噴射のインターバルは、インジェクタ23の応答性(開閉動作の速さ)によって決定される。このインターバルは、例えば200μsに設定される。また、パイロット噴射の噴射開始タイミングとしては、例えばクランク角度で、ピストン13の圧縮上死点前(BTDC)80°以降に設定される。尚、パイロット噴射の1回当たりの噴射量や、インターバル、噴射開始タイミングは、上記値に限定されるものではない。
(プレ噴射)
プレ噴射は、インジェクタ23からのメイン噴射に先立ち、予め少量の燃料を噴射する噴射動作である。プレ噴射は、メイン噴射による燃料の着火遅れを抑制し、安定した拡散燃焼に導くための噴射動作であって、副噴射とも呼ばれる。また、本実施形態におけるプレ噴射は、上述したメイン噴射による初期燃焼速度を抑制する機能ばかりでなく、気筒内温度を高める予熱機能をも有するものとなっている。
具体的に、本実施形態では、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気温度等の運転状態に応じて決定される要求トルクを得るための総燃料噴射量(プレ噴射での噴射量とメイン噴射での噴射量との和)に対して例えば10%としてプレ噴射の基本噴射量が設定される。この総燃料噴射量に対するプレ噴射量の比率は、気筒内を予熱する際に必要となる熱量等に応じて設定される。
本実施形態の特徴は、このプレ噴射の噴射形態(噴射タイミングおよび噴射量)にある。つまり、気筒内に対する予熱量を適切に得るための噴射形態が得られるようにしている。このため、上記プレ噴射の噴射量としては、適切な予熱量を確保するために必要に応じて変更されることになる(上記基本噴射量(総燃料噴射量に対して10%の噴射量)から変更されることになる)。具体的なプレ噴射の噴射形態については後述する。
(メイン噴射)
メイン噴射は、エンジン1のトルク発生のための噴射動作(トルク発生用燃料の供給動作)である。本実施形態では、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気温度等の運転状態に応じて決定される要求トルクを得るための上記総燃料噴射量から上記プレ噴射での噴射量を減算した噴射量として設定される。
ここで、上述したプレ噴射およびメイン噴射の基本的な制御プロセスについて簡単に説明する。
まず、エンジン1のトルク要求値に対して、上記プレ噴射での噴射量とメイン噴射での噴射量との和である総燃料噴射量が算出される。つまり、エンジン1に要求されるトルクを発生させるための量として総燃料噴射量が算出される。
上記エンジン1のトルク要求値は、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気温度等の運転状態、補機類等の使用状況に応じて決定される。例えば、エンジン回転数(クランクポジションセンサ40の検出値に基づいて算出されるエンジン回転数)が高いほど、また、アクセル操作量(アクセル開度センサ47により検出されるアクセルペダルの踏み込み量)が大きいほど(アクセル開度が大きいほど)エンジン1のトルク要求値としては高く得られる。
このようにして総燃料噴射量が算出された後、この総燃料噴射量に対するプレ噴射での噴射量の比率(分割率)を設定する。つまり、プレ噴射量は、総燃料噴射量に対して上記分割率で分割された量として設定されることになる。この分割率(プレ噴射量)は、「メイン噴射による燃料の着火遅れの抑制」と「メイン噴射による燃焼の熱発生率のピーク値の抑制」とを両立する値として求められる。これらを抑制することで、高いエンジントルクを確保しながらも、燃焼音の低減やNOx発生量の低減を図ることが可能になる。尚、本実施形態では、上述した如くプレ噴射の基本噴射量を得るための上記分割率を10%としている。
(アフタ噴射)
アフタ噴射は、排気ガス温度を上昇させるための噴射動作である。具体的に、本実施形態では、このアフタ噴射により供給された燃料の燃焼エネルギがエンジンのトルクに変換されることなく、その大部分が排気の熱エネルギとして得られるタイミングでアフタ噴射を実行するようにしている。また、このアフタ噴射においても、上述したパイロット噴射の場合と同様に、最小噴射率(例えば1回当たりの噴射量1.5mm3)とし、複数回数のアフタ噴射を実行することで、このアフタ噴射で必要な総アフタ噴射量を確保するようにしている。
(ポスト噴射)
ポスト噴射は、排気系7に燃料を直接的に導入して上記マニバータ77の昇温を図るための噴射動作である。例えば、DPNR触媒76に捕集されているPMの堆積量が所定量を超えた場合(例えばマニバータ77の前後の差圧を検出することにより検知)、ポスト噴射が実行されるようになっている。
−燃料噴射圧−
上述した各燃料噴射を実行する際の燃料噴射圧は、コモンレール22の内圧により決定される。このコモンレール内圧として、一般に、コモンレール22からインジェクタ23へ供給される燃料圧力の目標値、即ち目標レール圧は、エンジン負荷(機関負荷)が高くなるほど、および、エンジン回転数(機関回転数)が高くなるほど高いものとされる。即ち、エンジン負荷が高い場合には燃焼室3内に吸入される空気量が多いため、インジェクタ23から燃焼室3内に向けて多量の燃料を噴射しなければならず、よってインジェクタ23からの噴射圧力を高いものとする必要がある。また、エンジン回転数が高い場合には噴射可能な期間が短いため、単位時間当たりに噴射される燃料量を多くしなければならず、よってインジェクタ23からの噴射圧力を高いものとする必要がある。このように、目標レール圧は一般にエンジン負荷およびエンジン回転数に基づいて設定される。
上記パイロット噴射やメイン噴射などの燃料噴射における燃料噴射パラメータについて、その最適値はエンジン1や吸入空気等の温度条件によって異なるものとなる。
例えば、上記ECU100は、コモンレール圧がエンジン運転状態に基づいて設定される目標レール圧と等しくなるように、即ち燃料噴射圧が目標噴射圧と一致するように、サプライポンプ21の燃料吐出量を調量する。また、ECU100はエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量および燃料噴射形態を決定する。具体的には、ECU100は、クランクポジションセンサ40の検出値に基づいてエンジン回転速度を算出するとともに、アクセル開度センサ47の検出値に基づいてアクセルペダルへの踏み込み量(アクセル開度)を求め、このエンジン回転速度およびアクセル開度に基づいて総燃料噴射量(プレ噴射での噴射量とメイン噴射での噴射量との和)を決定する。
−目標燃料圧力の設定手法−
次に、本実施形態において目標燃料圧力を設定する際の技術的思想について説明する。
(目標燃料圧力の基本設定手法)
ディーゼルエンジン1においては、NOx発生量を削減することによる排気エミッションの改善、燃焼行程時の燃焼音の低減、エンジントルクの十分な確保といった各要求を連立することが重要である。本発明の発明者は、これら要求を連立するための手法として、燃焼行程時における気筒内での熱発生率の変化状態(熱発生率波形で表される変化状態)を適切にコントロールすることが有効であることに着目し、この熱発生率の変化状態をコントロールするための手法として以下に述べるような目標燃料圧力の設定手法を見出した。
図4の実線は、横軸をクランク角度、縦軸を熱発生率とし、メイン噴射で噴射された燃料の燃焼に係る理想的な熱発生率波形を示している。この図4では、理解を容易にするために1回のメイン噴射(複数回の分割メイン噴射が行われる場合には第1回目の分割メイン噴射)が行われた場合の熱発生率波形を示している。図中のTDCはピストン13の圧縮上死点に対応したクランク角度位置を示している。この熱発生率波形としては、例えば、ピストン13の圧縮上死点(TDC)からメイン噴射で噴射された燃料の燃焼が開始され、圧縮上死点後の所定ピストン位置(例えば、圧縮上死点後10°(ATDC10°)の時点)で熱発生率が極大値(ピーク値)に達し、更に、圧縮上死点後の所定ピストン位置(例えば、圧縮上死点後25°(ATDC25°)の時点)で上記メイン噴射において噴射された燃料の燃焼が終了するようになっている。この時点までに燃焼を終了させるために、本実施形態では、圧縮上死点後22°(ATDC22°)までにメイン噴射での燃料噴射を終了させるようになっている。このような熱発生率の変化状態で混合気の燃焼を行わせるようにすれば、例えば圧縮上死点後10°(ATDC10°)の時点で気筒内の混合気のうちの50%が燃焼を完了した状況となる。つまり、膨張行程における総熱発生量の約50%がATDC10°までに発生し、高い熱効率でエンジン1を運転させることが可能となる。
尚、図4に一点鎖線で示す波形は、上記プレ噴射で噴射された燃料の燃焼に係る熱発生率波形を示している。これにより、メイン噴射で噴射された燃料の安定した拡散燃焼が実現される。例えば、このプレ噴射で噴射された燃料の燃焼によって10[J]の熱量が発生する。この値は、これに限定されるものではなく。例えば、上記総燃料噴射量に応じて適宜設定される。また、図示していないが、プレ噴射に先立ってパイロット噴射も行われており、これにより気筒内温度を十分に高めて、メイン噴射で噴射される燃料の着火性を良好に確保している。
また、図4に二点鎖線αで示す波形は、燃料噴射圧力が、適正値よりも高く設定された場合の熱発生率波形であり、燃焼速度およびピーク値が共に高くなりすぎており、燃焼音の増大やNOx発生量の増加が懸念される状態である。一方、図4に二点鎖線βで示す波形は、燃料噴射圧力が、適正値よりも低く設定された場合の熱発生率波形であり、燃焼速度が低く且つピークの現れるタイミングが大きく遅角側に移行していることで十分なエンジントルクが確保できないことが懸念される状態である。
上述したように、本実施形態に係る目標燃料圧力の設定手法は、熱発生率の変化状態の適正化(熱発生率波形の適正化)を図ることで燃焼効率の向上を図るといった技術的思想に基づくものである。
そして、それを実現するための目標燃料圧力の設定手法としては、等燃料噴射圧力ライン(等燃料噴射圧力領域)が、エンジン1の回転数およびトルクから求められる出力(パワー)の等パワーライン(等出力領域)に割り付けられた燃圧設定マップを作成しておき、この燃圧設定マップに従って目標燃料圧力を決定するようにしている。つまり、この燃圧設定マップでは、等パワーラインと等燃料噴射圧力ラインとが略一致するように設定されている。
この燃圧設定マップに従って燃料圧力を決定することで、インジェクタ23の開弁期間(噴射率波形)を制御すれば、その開弁期間中における燃料噴射量を規定することが可能になり、燃料噴射量制御の簡素化および適正化を図ることができる。
このようにして作成された燃圧設定マップに従い、エンジン1の運転状態に適した目標燃料圧力を設定し、サプライポンプ21の制御等を行うようになっている。
−プレ噴射制御−
本実施形態の特徴は、上記プレ噴射の噴射形態(噴射タイミングおよび噴射量)の制御にある。具体的には、エンジン1の過渡運転時には、エンジン1の定常運転時とは異なる噴射形態でプレ噴射を実行するようにしている。
尚、エンジン1の運転状態が定常運転状態であるか過渡運転状態であるかの判別は、例えば上記アクセル開度センサ47によって検出されるアクセル操作量の単位時間当たりの変化量に基づいて行われる。つまり、アクセル操作量の単位時間当たりの変化量が所定量以上である場合に過渡運転状態であると判定する。また、スロットル開度センサ42によって検出されるスロットル開度の単位時間当たりの変化量に基づいて行うようにしてもよい。
ここでいうエンジン1の過渡運転の発生状況としては、例えば、車両の市街地走行時などであって、エンジン1の軽負荷運転(ドライバによるアクセルペダルの踏み込み操作量が比較的少ない状態:例えば踏み込み操作量10%程度)が継続している状態から、アクセルペダルが大きく踏み込まれて高負荷運転に移行した場合が挙げられる。また、車両の高速巡航走行が継続している場合などであって、アクセルペダルが比較的大きく踏み込まれている高負荷運転(例えばアクセルペダルの踏み込み操作量50%程度)が継続している状態から、アクセルペダルの踏み込み量が小さくなって低負荷運転に移行した場合も挙げられる。
エンジン1が定常運転状態となっている場合には、上記ECU100のROM102に予め記憶されているプレ噴射量設定マップに従ってプレ噴射が実行される。このプレ噴射量設定マップは、予め実験やシミュレーションにより、エンジン1を定常運転にした状態で筒内温度やエンジン運転状態(エンジン負荷など)に応じたプレ噴射量を得るためのマップである。つまり、この筒内温度およびエンジン運転状態とプレ噴射の噴射量との関係をマップ化してROM102に記憶させておき、エンジン1の定常運転時には、現在の筒内温度およびエンジン運転状態を上記マップに当て嵌めて、プレ噴射の噴射量を読み出し、この読み出した噴射量でプレ噴射を実行するようにしている。
このため、エンジン1が定常運転状態であって筒内温度が所定温度に収束している場合には、上記プレ噴射量設定マップに従ったプレ噴射を実行することで、適切なプレ噴射量が得られる。これにより、気筒内の予熱量が適切に得られ、筒内燃焼状態の適正化による必要トルクの確保および排気エミッションの改善を図ることができる。
一方、上述したようなアクセル操作量の変更などによってエンジン1に過渡運転が発生した場合(アクセルペダルが大きく踏み込まれて高負荷運転に移行した場合や、アクセルペダルの踏み込み量が小さくなって低負荷運転に移行した場合)、本実施形態では、エンジン1が定常運転状態となっていることを前提として作成された上記プレ噴射量設定マップに基づくプレ噴射は実行せず、後述するようなプレ噴射を実行することになる。具体的には、現在のエンジン負荷等に基づいて上記プレ噴射量設定マップから求められたプレ噴射での噴射量に対し、後述する補正係数を乗算することで噴射量を増量補正または減量補正するようにしている(副噴射量補正手段による噴射量補正動作)。以下、具体的に説明する。
先ず、エンジン1の過渡運転が発生した場合、「筒内過渡温度」から「筒内定常温度」を減算し、その値(ΔT:以下、「筒内温度差」と呼ぶ)に応じてプレ噴射での噴射量を増量補正または減量補正するための補正係数を求める。
ここで、「筒内過渡温度」とは、エンジン1の過渡運転が発生したことで、プレ噴射の噴射量が変更された場合に、未だ筒内温度が収束していない状況での筒内温度である。また、「筒内定常温度」とは、現在のエンジン1の過渡運転(現在のエンジン負荷に応じた運転状態)が継続されて、筒内温度が収束したと仮定した場合の筒内温度である。つまり、この「筒内定常温度」は、エンジン1が定常運転状態となっている場合に、現在の負荷に応じて適切な筒内予熱が行われている状況での筒内温度に相当する。
このため、過渡運転時には、「筒内過渡温度」が、その収束温度である「筒内定常温度」に近付いていくことになるが、この収束に達するまでの期間は筒内予熱量に過不足が生じている。本実施形態におけるプレ噴射での噴射量の増量補正や減量補正は、その期間での噴射量を補正することで、筒内予熱量の過不足を可及的迅速に解消できるようにするものである。
尚、筒内温度は推定または測定される。筒内温度の推定動作としては、エンジン負荷と筒内温度との関係を実験等により求めてマップ化しておき、このマップによりエンジン負荷から筒内温度を求める。また、筒内に圧力センサを設けておき、所定の状態方程式を使用して筒内圧力から筒内温度を求めるようにしてもよい。また、筒内に温度センサが設置可能な構成が実現された場合には、この温度センサによって筒内温度を直接的に測定することができる。
図5は、上記「筒内過渡温度」から「筒内定常温度」を減算して得られた「筒内温度差」(ΔT=「筒内過渡温度」−「筒内定常温度」)と、プレ噴射での噴射量を増量補正または減量補正するための補正係数との関係を示している。
このように、「筒内過渡温度」が「筒内定常温度」に対して低い場合には「筒内温度差」(ΔT)は負の値となり、この「筒内過渡温度」が「筒内定常温度」に対して低いほど、その絶対値も大きくなっていく。そして、この場合、上記補正係数が「1.0」を超える値となり、「筒内過渡温度」と「筒内定常温度」との差が大きいほど、プレ噴射の噴射量に対して増量側の補正量が大きくなっていく。つまり、プレ噴射が大幅に増量補正されることになる。このプレ噴射の増量補正により、筒内予熱量の不足分が解消されていき、「筒内過渡温度」は「筒内定常温度」に急速に近付いていく。
その結果、気筒内の予熱量が適切に得られることになり、筒内燃焼状態の適正化による必要トルクの確保および排気エミッションの改善を図ることができる。また、排気エミッションを改善するためにメイン噴射の噴射タイミングを遅角側に設定したり、EGR量の増量を行ったりしている場合の失火限界に対する余裕分を十分に確保することが可能になり、これによっても排気エミッションの改善を図ることができる。
逆に、「筒内過渡温度」が「筒内定常温度」に対して高い場合には「筒内温度差」(ΔT)は正の値となり、この「筒内過渡温度」が「筒内定常温度」に対して高いほど、その絶対値も大きくなっていく。そして、この場合、上記補正係数が「1.0」を下回る値となり、「筒内過渡温度」と「筒内定常温度」との差が大きいほど、プレ噴射の噴射量に対して減量側の補正量が大きくなっていく。つまり、プレ噴射が大幅に減量補正されることになる。このプレ噴射の減量補正により、筒内予熱量の過剰分が解消されていき、この場合にも「筒内過渡温度」は「筒内定常温度」に急速に近付いていく。
その結果、この場合も、気筒内の予熱量が適切に得られることになり、筒内燃焼状態の適正化による必要トルクの確保および排気エミッションの改善を図ることができる。また、予熱過剰状態を早期に解消できるため、燃焼速度の上昇に伴うNOx発生量の増加や燃焼音の増大も防止することができる。
以上が、本実施形態におけるプレ噴射量補正動作の基本思想である。
次に、上述したエンジン1の過渡運転時におけるプレ噴射の噴射形態についての複数の実施形態を説明する。ここでは、プレ噴射を増量補正する場合の2つの実施形態、および、プレ噴射を減量補正する場合の2つの実施形態について説明する。
(プレ噴射増量補正の第1実施形態)
先ず、プレ噴射を増量補正する場合の第1実施形態について説明する。
図6は、本実施形態におけるプレ噴射およびメイン噴射の実行期間中における燃料噴射パターンの変化の一例を示している。図6(a)はプレ噴射の増量補正前の燃料噴射パターン(定常運転時の燃料噴射パターン)を、図6(b)はプレ噴射の増量補正時であって補正量が比較的少ない場合の燃料噴射パターンを、図6(c)はプレ噴射の増量補正時であって補正量が比較的多い場合の燃料噴射パターンをそれぞれ示している。
図6(a)に示すように、エンジン1の定常運転時には、プレ噴射は、ピストン13の圧縮上死点(TDC)に近接した進角側で実行されている。また、この図6(a)では、プレ噴射の噴射量はインジェクタ23の最小限界噴射量(1.5mm3)に設定されている。この値は、これに限定されるものではない。
また、メイン噴射は、ピストン13の圧縮上死点(TDC)よりも僅かに進角側で開始され、圧縮上死点(TDC)よりも遅角側で終了している。これにより、上述した理想的な熱発生率波形(図4の実線を参照)が得られることになる。
そして、エンジン1の過渡運転時において、「筒内過渡温度」が「筒内定常温度」に対して低い場合には、上記「筒内温度差」(ΔT)が負の値となり、過渡運転時の予熱量不足が生じていると判断される。このため、上記プレ噴射(以下、このプレ噴射を遅角側プレ噴射と呼ぶ)よりも進角側にプレ噴射(以下、このプレ噴射を進角側プレ噴射と呼ぶ)を実行する。つまり、プレ噴射としての噴射総量を追加増量する。この進角側プレ噴射の噴射量としては、インジェクタ23の最小噴射率(1.5mm3)に設定されている。即ち、過渡運転発生前のプレ噴射量に対して1.5mm3の噴射増量が行われる。これにより、筒内予熱量の不足分が解消されていき、「筒内過渡温度」は「筒内定常温度」に急速に近付いていく。
尚、この場合、遅角側プレ噴射の噴射形態(噴射タイミングおよび噴射量)については、エンジン1の定常運転時(図6(a)に示す状態)から変更しないようにし、上述した理想的な熱発生率波形が得られる状態を維持している。また、このようにプレ噴射の噴射量を増量した場合、それに伴ってプレ噴射に起因するエンジン1のトルクも大きくなるため、このトルク増大分に応じたトルク減少量が得られるようにメイン噴射での噴射量を減量補正する。これにより、上記トルク要求値に応じたエンジントルクを得ることができる。
また、アクセルペダルの踏み込み量が更に大きくなるなどしてエンジン1の過渡状態が大きくなり、筒内予熱量をよりいっそう高くする必要が生じた場合には、プレ噴射の噴射量を更に増量することになる。
具体的には、図6(c)に示すように、遅角側プレ噴射での噴射量を増量する。この場合、遅角側プレ噴射の開始タイミングについては変更せず、遅角側プレ噴射の終了タイミングを遅角側に移行させることで、この遅角側プレ噴射での噴射量を増量する。この増量分は図5により求められる補正係数に基づいて設定される。例えば、この遅角側プレ噴射での噴射量が1.5mm3から2.0mm3に増量される。
このように遅角側プレ噴射での噴射量を増量した場合にも、それに伴ってプレ噴射に起因するエンジン1のトルクが大きくなるため、このトルク増大分に応じたトルク減少量が得られるようにメイン噴射での噴射量を減量補正する。
また、この図6(c)に示すように、プレ噴射での噴射量を大幅に増量させたことで「筒内過渡温度」が高くなっていき、その結果、上記ΔTが小さくなっていくと、上記補正係数としては小さくなっていくため(1.0に近付いていくため)、プレ噴射の噴射量は減量されていくことになる。具体的には、図6(c)に示すプレ噴射の噴射形態から図6(b)に示すプレ噴射の噴射形態に変更していく。そして、筒内予熱量が十分に得られて筒内温度が収束し、過渡運転状態が解消されると、図6(a)に示す初期状態に戻ることになる。
尚、本実施形態では、2回のプレ噴射を実行することでプレ噴射量の増量補正を行うようにしていたが、3回以上のプレ噴射によってプレ噴射量の増量補正を行うようにしてもよい。
また、進角側プレ噴射の噴射終了タイミングと遅角側プレ噴射の噴射開始タイミングとの間の期間であるインターバルとしては、例えばインジェクタ23の性能によって決定される最短閉弁期間(インジェクタ23が閉弁してから開弁を開始するまでの最短期間:例えば200μs)として設定される。このインターバルは上記値に限定されるものではない。また、図6(b)に示す噴射パターンにおいて、遅角側プレ噴射の噴射終了タイミングとメイン噴射の噴射開始タイミングとの間の期間であるインターバルとしては、上記最短閉弁期間(200μs)よりも長く設定されている。これは、更なるプレ噴射量の増量要求があった場合に、図6(c)に示す如く、遅角側プレ噴射の終了タイミングを遅角側に移行させる必要があるからである。
(プレ噴射増量補正の第2実施形態)
次に、プレ噴射を増量補正する場合の第2実施形態について説明する。
図7は、本実施形態におけるプレ噴射およびメイン噴射の実行期間中における燃料噴射パターンの変化の一例を示している。図7(a)はプレ噴射の増量補正前の燃料噴射パターン(定常運転時の燃料噴射パターン)を、図7(b)はプレ噴射の増量補正時であって補正量が比較的少ない場合の燃料噴射パターンを、図7(c)はプレ噴射の増量補正時であって補正量が比較的多い場合の燃料噴射パターンをそれぞれ示している。
図7(a)に示すように、エンジン1の定常運転時には、プレ噴射は、ピストン13の圧縮上死点(TDC)に近接した進角側で実行されている。また、この図7(a)では、プレ噴射の噴射量はインジェクタ23の最小限界噴射量(1.5mm3)に設定されている。この値は、これに限定されるものではない。
また、メイン噴射は、ピストン13の圧縮上死点(TDC)よりも僅かに進角側で開始され、圧縮上死点(TDC)よりも遅角側で終了している。これにより、上述した理想的な熱発生率波形(図4の実線を参照)が得られることになる。
そして、エンジン1の過渡運転時において、「筒内過渡温度」が「筒内定常温度」に対して低い場合には、上記「筒内温度差」(ΔT)が負の値となり、過渡運転時の予熱量不足が生じていると判断される。このため、図7(b)に示すように、プレ噴射での噴射量を増量する。この場合、プレ噴射の開始タイミングについては変更せず、プレ噴射の終了タイミングを遅角側に移行させることで、このプレ噴射での噴射量を増量する。この増量分は図5により求められる補正係数に基づいて設定される。例えば、このプレ噴射での噴射量が1.5mm3から2.0mm3に増量される。これにより、筒内予熱量の不足分が解消されていき、「筒内過渡温度」は「筒内定常温度」に急速に近付いていく。
尚、この場合、プレ噴射の噴射開始タイミングについては、エンジン1の定常運転時から変更しないようにし、上述した理想的な熱発生率波形が得られる状態を維持している。
また、このようにプレ噴射の噴射量を増量した場合、それに伴ってプレ噴射に起因するエンジン1のトルクも大きくなるため、このトルク増大分に応じたトルク減少量が得られるようにメイン噴射での噴射量を減量補正する。これにより、上記トルク要求値に応じたエンジントルクを得ることができる。
また、アクセルペダルの踏み込み量が更に大きくなるなどしてエンジン1の過渡状態が大きくなり、筒内予熱量をよりいっそう高くする必要が生じた場合には、プレ噴射の噴射量を更に増量することになる。
具体的には、図7(c)に示すように、上記プレ噴射(以下、このプレ噴射を遅角側プレ噴射と呼ぶ)よりも進角側にプレ噴射(以下、このプレ噴射を進角側プレ噴射と呼ぶ)を実行する。つまり、プレ噴射としての噴射総量を追加増量する。この進角側プレ噴射の噴射量としては、インジェクタ23の最小噴射率(1.5mm3)に設定されている。即ち、過渡運転発生前のプレ噴射噴射量に対して1.5mm3の噴射増量が行われる。
このようにプレ噴射の噴射回数を増加させることでプレ噴射での噴射量を増量した場合にも、それに伴ってプレ噴射に起因するエンジン1のトルクが大きくなるため、このトルク増大分に応じたトルク減少量が得られるようにメイン噴射での噴射量を減量補正する。
また、この図7(c)に示すように、プレ噴射での噴射量を大幅に増量させたことで「筒内過渡温度」が高くなっていき、その結果、上記ΔTが小さくなっていくと、上記補正係数としては小さくなっていくため(1.0に近付いていくため)、プレ噴射の噴射量は減量されていくことになる。具体的には、図7(c)に示すプレ噴射の噴射形態から図7(b)に示すプレ噴射の噴射形態に変更していく。そして、筒内予熱量が十分に得られて筒内温度が収束し、過渡運転状態が解消されると、図7(a)に示す初期状態に戻ることになる。
尚、本実施形態では、1回のプレ噴射を増量補正した後に更なる増量補正が必要となった場合には2回のプレ噴射を実行するようにしていたが、3回以上のプレ噴射によってプレ噴射量の増量補正を行うようにしてもよい。
(プレ噴射減量補正の第1実施形態)
次に、プレ噴射を減量補正する場合の第1実施形態について説明する。
図8は、本実施形態におけるプレ噴射およびメイン噴射の実行期間中における燃料噴射パターンの変化の一例を示している。図8(a)はプレ噴射の減量補正前の燃料噴射パターン(定常運転時の燃料噴射パターン)を、図8(b)はプレ噴射の減量補正時の燃料噴射パターンをそれぞれ示している。
図8(a)に示すように、エンジン1の定常運転時には、プレ噴射は、ピストン13の圧縮上死点(TDC)に近接した進角側で実行されている。また、この図8(a)では、プレ噴射の噴射量はインジェクタ23の最小限界噴射量よりも多い噴射量(例えば2.5mm3)に設定されている。この値は、これに限定されるものではない。
また、この場合、プレ噴射の噴射終了タイミングとメイン噴射の噴射開始タイミングとの間の期間であるインターバルとしては、上記最短閉弁期間(200μs)に設定されている。このインターバルは上記値に限定されるものではない。
そして、エンジン1の過渡運転時において、「筒内過渡温度」が「筒内定常温度」に対して高い場合には、上記「筒内温度差」(ΔT)が正の値となり、過渡運転時の予熱量過剰が生じていると判断される。このため、上記プレ噴射を減量することになる。具体的には、図8(b)に示すように、プレ噴射での噴射量を最小限界噴射量(1.5mm3)を下限値として減量する。この減量分は図5により求められる補正係数に基づいて設定される。この場合、プレ噴射の開始タイミングについては変更せず、遅角側プレ噴射の終了タイミングを進角側に移行させることで、このプレ噴射での噴射量を減量する。
このようにプレ噴射での噴射量を減量した場合には、それに伴ってプレ噴射に起因するエンジン1のトルクが小さくなるため、このトルク減少分に応じたトルク増大量が得られるようにメイン噴射での噴射量を増量補正する。
この図8(b)に示すように、プレ噴射での噴射量を減量させたことで「筒内過渡温度」が低くなっていき、その結果、上記ΔTが大きくなっていくと、プレ噴射の噴射量を増量していくことになる。そして、筒内予熱量の過剰分か解消されて筒内温度が収束し、過渡運転状態が解消されると、図8(a)に示す初期状態に戻ることになる。
(プレ噴射減量補正の第2実施形態)
次に、プレ噴射を減量補正する場合の第2実施形態について説明する。
図9は、本実施形態におけるプレ噴射およびメイン噴射の実行期間中における燃料噴射パターンの変化の一例を示している。図9(a)はプレ噴射の減量補正前の燃料噴射パターン(定常運転時の燃料噴射パターン)を、図9(b)はプレ噴射の減量補正時の燃料噴射パターンをそれぞれ示している。
図9(a)に示すように、エンジン1の定常運転時には、プレ噴射は、ピストン13の圧縮上死点(TDC)よりも進角側で実行される(ピストン13の圧縮上死点よりも進角側にプレ噴射の開始タイミングと終了タイミングとが設定される)。また、この図9(a)では、プレ噴射の噴射形態として、インジェクタ23の最小限界噴射量でのプレ噴射が2回実行されている。
この場合、進角側プレ噴射の噴射終了タイミングと遅角側プレ噴射の噴射開始タイミングとの間の期間であるインターバル、および、遅角側プレ噴射の噴射終了タイミングとメイン噴射の噴射開始タイミングとの間の期間であるインターバルとしては、それぞれ上記最短閉弁期間(200μs)に設定されている。このインターバルは上記値に限定されるものではない。
そして、エンジン1の過渡運転時において、「筒内過渡温度」が「筒内定常温度」に対して高い場合には、上記「筒内温度差」(ΔT)が正の値となり、過渡運転時の予熱量過剰が生じていると判断される。このため、上記プレ噴射を減量することになる。具体的には、図9(b)に示すように、進角側のプレ噴射を非実行とするようにしてプレ噴射での総噴射量を減量する。この場合、遅角側のプレ噴射の噴射形態については変更しない。
このようにプレ噴射での噴射量を減量した場合には、それに伴ってプレ噴射に起因するエンジン1のトルクが小さくなるため、このトルク減少分に応じたトルク増大量が得られるようにメイン噴射での噴射量を増量補正する。
この図9(b)に示すように、プレ噴射での噴射量を減量させたことで「筒内過渡温度」が低くなっていき、その結果、上記ΔTが大きくなっていくと、プレ噴射の噴射量を増量していくことになる。そして、筒内予熱量の過剰分か解消されて筒内温度が収束し、過渡運転状態が解消されると、図9(a)に示す初期状態に戻ることになる。
以上説明してきたように、各実施形態によれば、プレ噴射での噴射量を増量補正したり減量補正したりすることにより、筒内予熱量の過不足を可及的迅速に解消することができる。その結果、筒内燃焼状態の適正化による必要トルクの確保および排気エミッションの改善を図ることができる。
−他の実施形態−
以上説明した各実施形態では、自動車に搭載される直列4気筒ディーゼルエンジンに本発明を適用した場合について説明した。本発明は、自動車用に限らず、その他の用途に使用されるエンジンにも適用可能である。また、気筒数やエンジン形式(直列型エンジン、V型エンジン等の別)についても特に限定されるものではない。
また、上記各実施形態では、マニバータ77として、NSR触媒75およびDPNR触媒76を備えたものとしたが、NSR触媒75およびDPF(Diesel Paticulate Filter)を備えたものとしてもよい。
また、上記各実施形態では、プレ噴射に対して増量補正や減量補正を行うことで、過渡運転時における筒内予熱量の適正化を図るようにしていた。本発明はこれに限らず、パイロット噴射に対して増量補正や減量補正を行うことで、過渡運転時における筒内予熱量の適正化を図ることも技術的思想の範疇である。更には、プレ噴射とパイロット噴射との両方に対して増量補正や減量補正を行って過渡運転時における筒内予熱量の適正化を図ることも本発明の技術的思想の範疇である。
本発明は、自動車に搭載されるコモンレール式筒内直噴型多気筒ディーゼルエンジンにおいて、メイン噴射に先立ってプレ噴射を実行する場合の燃料噴射制御に適用することが可能である。

Claims (8)

  1. 燃料噴射弁からの燃料噴射動作として、少なくとも、主噴射と、この主噴射に先立って行われ且つ気筒内の予熱に寄与する副噴射とが実行可能な圧縮自着火式の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    内燃機関の負荷変化による過渡運転時、筒内温度がその負荷に応じた所定温度に略収束するまでの間、筒内予熱量の過不足分に応じて副噴射の噴射量を補正する副噴射量補正手段を備えていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  2. 上記請求項1記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    上記副噴射量補正手段は、内燃機関の過渡運転時における筒内過渡温度から、上記負荷に応じて収束する上記所定温度である筒内定常温度を減算することで求められる筒内温度差に応じて筒内予熱量の過不足分を求め、この過不足分に応じて副噴射の噴射量を補正するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  3. 上記請求項2記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    上記副噴射量補正手段は、内燃機関の負荷上昇に伴う過渡運転時は上記筒内温度差に応じて副噴射の噴射量を増量補正する一方、内燃機関の負荷下降に伴う過渡運転時は上記筒内温度差に応じて副噴射の噴射量を減量補正するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  4. 上記請求項1、2または3記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    上記副噴射量補正手段は、副噴射の噴射量を増量補正する際、副噴射1回当たりの噴射量を増量することなく、副噴射の噴射回数を増加するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  5. 上記請求項1、2または3記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    上記副噴射量補正手段は、副噴射の噴射量を増量補正する際、副噴射1回当たりの噴射量を増量するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  6. 上記請求項1、2または3記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    上記副噴射量補正手段は、副噴射の噴射量を減量補正する際、副噴射1回当たりの噴射量を減量することなく、副噴射の噴射回数を削減するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  7. 上記請求項1、2または3記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    上記副噴射量補正手段は、副噴射の噴射量を減量補正する際、副噴射1回当たりの噴射量を減量するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  8. 上記請求項4または6記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    上記副噴射1回当たりの噴射量は、燃料噴射弁の最小限界噴射量に設定されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
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