JP2009293383A - 内燃機関の燃料噴射制御装置および内燃機関の自動適合装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】主噴射に先立つ副噴射が実行可能な圧縮自着火式の内燃機関に対し、これら噴射形態の最適化を図ることが可能な体系化された燃料噴射制御手法を提供する。
【解決手段】コモンレール式ディーゼルエンジンに対し、メイン噴射に先立って、予混合用プレ噴射および予熱用プレ噴射を実行するものにおいて、メイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界として、噴射される燃料の略全量がピストン頂面の凹陥部内に流れ込むようにする。予混合用プレ噴射の遅角限界として、逆進トルクが発生しないタイミングに設定する。予熱用プレ噴射の進角限界として、この予熱用プレ噴射の噴射開始タイミングを進角させていった際に、気筒内での熱発生率が低下するタイミングに設定する。
【選択図】図7
【解決手段】コモンレール式ディーゼルエンジンに対し、メイン噴射に先立って、予混合用プレ噴射および予熱用プレ噴射を実行するものにおいて、メイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界として、噴射される燃料の略全量がピストン頂面の凹陥部内に流れ込むようにする。予混合用プレ噴射の遅角限界として、逆進トルクが発生しないタイミングに設定する。予熱用プレ噴射の進角限界として、この予熱用プレ噴射の噴射開始タイミングを進角させていった際に、気筒内での熱発生率が低下するタイミングに設定する。
【選択図】図7
Description
本発明は、ディーゼルエンジンに代表される内燃機関の燃料噴射制御装置、および、その燃料噴射制御装置の適合値を取得するための内燃機関の自動適合装置に係る。特に、本発明は、燃料噴射弁からの主噴射(以下、メイン噴射と呼ぶ場合もある)に先立つ副噴射(以下、プレ噴射と呼ぶ場合もある)が実行可能な圧縮自着火式の内燃機関に対し、これら主噴射と副噴射との噴射形態の最適化を図るための対策に関する。
従来から周知のように、自動車用エンジン等として使用されるディーゼルエンジンでは、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気温度等に応じて、燃料噴射弁(以下、インジェクタと呼ぶ場合もある)からの燃料噴射時期や燃料噴射量を調整する燃料噴射制御が行われている(例えば下記の特許文献1を参照)。
ところで、上記ディーゼルエンジンの燃焼は、予混合燃焼と拡散燃焼とによって成り立っている。燃料噴射弁からの燃料噴射が開始されると、まず燃料の気化拡散により可燃混合気が生成される(着火遅れ期間)。次に、この可燃混合気が燃焼室の数ヶ所でほぼ同時に自己着火し、急速に燃焼が進む(予混合燃焼)。さらに、燃焼室内への燃料噴射が継続され、燃焼が継続的に行われる(拡散燃焼)。その後、燃料噴射が終了した後にも未燃燃料が存在するため、しばらくの間、熱発生が続けられる(後燃え期間)。
また、ディーゼルエンジンでは、着火遅れ期間が長くなるほど、あるいは着火遅れ期間における燃料の気化が激しいほど、着火後の火炎伝播速度が増大する。この火炎伝播速度が高くなると、一時に燃える燃料の量が多くなり過ぎて、シリンダ内の圧力が急激に増大し、振動や騒音が発生する。こうした現象はディーゼルノッキングと呼ばれており、特に低負荷運転時に発生することが多い。また、このような状況では、燃焼温度の急激な上昇に伴って窒素酸化物(以下、「NOx」と呼ぶ)の発生量も増大し、排気エミッションが悪化してしまう。
そこで、こうしたディーゼルノッキングを防止したり、NOx発生量を低減するために、各種の燃料噴射制御装置が開発されている。例えば、燃料噴射弁からの燃料噴射を複数回に分割して間欠噴射することなどが一般に行われている。
例えば、下記の特許文献2では、メイン噴射に先立って燃料噴射を行うパイロット噴射の噴射時期として、このパイロット噴射の噴射時期から実際の着火時期までの遅れ期間だけ早めてパイロット噴射時期を設定している。これにより、パイロット噴射による燃料の着火時期とメイン噴射時期とをほぼ一致させて、PM(Paticulate Matter:微粒子)およびHC(Hydrocarbons:炭化水素)の排出量を減少させるようにしている。
特開2002−155791号公報
特開2002−195084号公報
特開2002−221067号公報
ところで、上述した如くメイン噴射に先立ってプレ噴射やパイロット噴射(以下、プレ噴射で代表して説明する)を実行するものにおいて、これまでは、噴射開始タイミング(例えばプレ噴射の噴射開始タイミング)や噴射終了タイミング(例えばメイン噴射の噴射終了タイミング)の設定については特に技術的な規定はなされていなかった。そのため、常に最適なタイミングでプレ噴射およびメイン噴射を実行し、これら噴射による効果を最大限に発揮するといった技術については未だ構築されていないのが実情であった。
つまり、これまでは、燃焼音の低減、NOx発生量の低減、高いエンジントルクの確保といった観点から各燃料噴射タイミングを個別に設定し、エンジンの種類毎に試行錯誤で適合(エンジンの種類毎にそれに適したプレ噴射およびメイン噴射の燃料噴射パターンを構築すること)を実施しているのが実情であった。
このように、従来のプレ噴射およびメイン噴射の燃料噴射パターンの設定手法では、噴射タイミングの適合を行う作業者の評価のバラツキなどが、最適な燃料噴射パターンに対する乖離量となりそのまま燃料噴射パターンのバラツキとして反映されてしまうことになる。このため、最適な燃料噴射パターン(最適解)を得ることは殆ど不可能であった。
つまり、従来では、試行錯誤で燃料噴射パターンを決定していたため、種々のエンジンに共通した体系的な燃料噴射制御手法が構築されておらず、燃料噴射制御の最適化を図るためには、未だ改良の余地があった。
尚、上記特許文献3には、メイン噴射の終了時期を演算することでエンジンのトルク不足を解消することが開示されてはいるものの、その限界値(メイン噴射の遅角側への限界値)を求めるといった技術的思想は備えておらず、上記最適解が得られるものとはなっていなかった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、主噴射に先立つ副噴射が実行可能な圧縮自着火式の内燃機関に対し、これら噴射形態の最適化を図るための噴射タイミングの限界値が設定される燃料噴射制御手法を提供することにある。
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、副噴射および主噴射の噴射タイミングの限界を求めることで、その最適化を図るようにしている。
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、副噴射および主噴射の噴射タイミングの限界を求めることで、その最適化を図るようにしている。
−解決手段−
具体的に、本発明は、燃料噴射弁からの燃料噴射動作として、少なくとも、主噴射と、この主噴射に先立って行われる副噴射とが実行可能な圧縮自着火式の内燃機関の燃料噴射制御装置を前提とする。この内燃機関の燃料噴射制御装置に対し、気筒内で往復移動するピストンの頂面には、燃焼室を構成する凹陥部が形成されている。そして、上記主噴射で噴射される燃料および副噴射で噴射される燃料のうちの少なくとも一方の燃料の略全量が上記ピストンの凹陥部内に流れ込むように、燃料の噴射タイミングの限界が設定された燃料噴射動作を実行可能な噴射タイミング設定手段を備えさせている。
具体的に、本発明は、燃料噴射弁からの燃料噴射動作として、少なくとも、主噴射と、この主噴射に先立って行われる副噴射とが実行可能な圧縮自着火式の内燃機関の燃料噴射制御装置を前提とする。この内燃機関の燃料噴射制御装置に対し、気筒内で往復移動するピストンの頂面には、燃焼室を構成する凹陥部が形成されている。そして、上記主噴射で噴射される燃料および副噴射で噴射される燃料のうちの少なくとも一方の燃料の略全量が上記ピストンの凹陥部内に流れ込むように、燃料の噴射タイミングの限界が設定された燃料噴射動作を実行可能な噴射タイミング設定手段を備えさせている。
上記噴射タイミングの限界として具体的には、上記主噴射の噴射終了タイミングの遅角限界と、副噴射(後述する実施形態における予熱用プレ噴射)の噴射タイミングの進角限界とがある。
主噴射の噴射終了タイミングの遅角限界としては、圧縮上死点を経て下死点に向かって移動するピストンの凹陥部内に、上記主噴射で噴射される燃料の略全量が流れ込むように、この主噴射の噴射終了タイミングの遅角限界を設定しており、これを遅角限界として主噴射の燃料噴射動作が実行されることになる。
このように主噴射の噴射終了タイミングの遅角限界を設定すれば、主噴射で噴射された燃料の略全量を、比較的狭く且つ高温度の空間(上記ピストンの凹陥部内)に供給することができて、その燃焼による熱エネルギの殆どを無駄なくエンジントルクに変換させることが可能になる。
また、副噴射の噴射タイミングの進角限界としては、圧縮上死点に向かって移動するピストンの凹陥部内に、上記副噴射で噴射される燃料の略全量が流れ込むように、この副噴射の噴射タイミングの進角限界を設定しており、これを進角限界として副噴射の燃料噴射動作が実行されることになる。このように副噴射の噴射タイミングの進角限界を設定する場合、その進角限界は、副噴射の噴射開始タイミングを進角させていった際に、気筒内での熱発生率または熱発生量が低下する噴射タイミングの直前の遅角側のタイミングに設定されることになる。
このように副噴射の噴射タイミングの進角限界を設定すれば、副噴射で噴射された燃料の略全量を、比較的狭く且つ高温度の空間(上記ピストンの凹陥部内)に供給することができて、その燃焼による熱エネルギを有効に利用して気筒内を予熱することができる。
また、他の副噴射(後述する実施形態における予混合用プレ噴射)を実施する場合における噴射タイミングの限界としては以下のように設定される。つまり、上記副噴射に先立って、ピストンが圧縮上死点に達する前に第2の副噴射が実行されるようになっており、この第2の副噴射の噴射タイミングの遅角限界として、この第2の副噴射で噴射された燃料が、ピストンが圧縮上死点に達するまでは燃焼せず、ピストンが圧縮上死点に達した後に燃焼するタイミングに設定している。このように第2の副噴射の噴射タイミングの遅角限界を設定する場合、その遅角限界は、第2の副噴射で噴射され且つ気筒内のスワール流に沿って流れる燃料が、その後の副噴射または主噴射で噴射された燃料と重畳するタイミングに設定されることになる。
このように第2の副噴射の噴射タイミングの遅角限界を設定すれば、この第2の副噴射で噴射された燃料の燃料による逆進トルクの発生を回避することができ、この第2の副噴射で噴射された燃料を気筒内の予熱(副噴射に重畳させた場合)やトルク発生(主噴射に重畳させた場合)に寄与させることができる。
また、上記噴射タイミング設定手段は、内燃機関の運転状態に応じて、燃料の噴射タイミングの限界を解除して燃料噴射動作を実行可能な構成となっている。例えば、排気系に備えられた触媒の加熱要求がある場合には、上記主噴射の噴射終了タイミングの遅角限界を解除して、この主噴射の噴射タイミングを大きく遅角側に移行させ、この噴射された燃料の一部を未燃燃料のまま排気系に供給し、この排気系で燃焼させることによる触媒の加熱に寄与させる。
上述した燃料噴射タイミングの限界値を自動取得するための自動適合装置の構成としては以下のものが挙げられる。先ず、燃料噴射弁によって、主噴射と、この主噴射に先立って行われる副噴射とを実行可能とする圧縮自着火式の内燃機関に対して、上記主噴射で噴射される燃料および副噴射で噴射される燃料のうちの少なくとも一方の燃料の略全量が上記ピストンの凹陥部内に流れ込むように、上記燃料の噴射タイミングの限界を得るための自動適合装置を前提とする。この自動適合装置に対し、上記副噴射の噴射タイミングを固定した状態で、主噴射の噴射タイミングを遅角側に変化させていきながら気筒内での熱発生率または熱発生量が低下するタイミングを求め、このタイミングの直前の進角側のタイミングを主噴射の噴射終了タイミングの遅角限界として自動取得する構成としている。
また、上記主噴射の噴射タイミングを固定した状態で、上記副噴射の噴射タイミングを進角側に変化させていきながら気筒内での熱発生量または熱発生率が低下するタイミングを求め、このタイミングの直前の遅角側のタイミングを副噴射の噴射タイミングの進角限界として自動取得する構成としている。
更に、上記副噴射に先立って第2の副噴射が実行されるものにあっては、上記主噴射の噴射タイミングを固定した状態で、第2の副噴射の噴射タイミングを変化させていきながら気筒内での熱発生量が略「0」となるタイミングを求め、このタイミングを第2の副噴射の遅角限界として自動取得する構成としている。
これにより、燃料噴射タイミングの限界値を試行錯誤で取得したり、その適合値の取得に膨大な時間を必要とするといったことが解消され、適合動作の高効率化および適合値の信頼性の向上を図ることができる。
本発明では、主噴射に先立つ副噴射が実行可能な圧縮自着火式の内燃機関に対し、これら噴射形態の最適化を図るための噴射タイミングの限界値を設定し、その限界の範囲内で燃料噴射動作を実行するようにしている。このため、各燃料噴射で噴射される燃料による効果を最大限に発揮することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車に搭載されたコモンレール式筒内直噴型多気筒(例えば直列4気筒)ディーゼルエンジン(圧縮自着火式内燃機関)に本発明を適用した場合について説明する。
−エンジンの構成−
先ず、本実施形態に係るディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)の概略構成について説明する。図1は本実施形態に係るエンジン1およびその制御系統の概略構成図である。また、図2は、ディーゼルエンジンの燃焼室3およびその周辺部を示す断面図である。
先ず、本実施形態に係るディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)の概略構成について説明する。図1は本実施形態に係るエンジン1およびその制御系統の概略構成図である。また、図2は、ディーゼルエンジンの燃焼室3およびその周辺部を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るエンジン1は、燃料供給系2、燃焼室3、吸気系6、排気系7等を主要部とするディーゼルエンジンシステムとして構成されている。
燃料供給系2は、サプライポンプ21、コモンレール22、インジェクタ(燃料噴射弁)23、遮断弁24、燃料添加弁26、機関燃料通路27、添加燃料通路28等を備えて構成されている。
上記サプライポンプ21は、燃料タンクから燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を高圧にした後、機関燃料通路27を介してコモンレール22に供給する。コモンレール22は、サプライポンプ21から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各インジェクタ23に分配する。インジェクタ23は、その内部に圧電素子(ピエゾ素子)を備え、適宜開弁して燃焼室3内に燃料を噴射供給するピエゾインジェクタにより構成されている。このインジェクタ23からの燃料噴射制御の詳細については後述する。
また、上記サプライポンプ21は、燃料タンクから汲み上げた燃料の一部を、添加燃料通路28を介して燃料添加弁26に供給する。添加燃料通路28には、緊急時において添加燃料通路28を遮断して燃料添加を停止するための上記遮断弁24が備えられている。
また、上記燃料添加弁26は、後述するECU100による添加制御動作によって排気系7への燃料添加量が目標添加量(排気A/Fが目標A/Fとなるような添加量)となるように、また、燃料添加タイミングが所定タイミングとなるように開弁時期が制御される電子制御式の開閉弁により構成されている。つまり、この燃料添加弁26から所望の燃料が適宜のタイミングで排気系7(排気ポート71から排気マニホールド72)に噴射供給される構成となっている。
吸気系6は、シリンダヘッド15(図2参照)に形成された吸気ポート15aに接続される吸気マニホールド63を備え、この吸気マニホールド63に、吸気通路を構成する吸気管64が接続されている。また、この吸気通路には、上流側から順にエアクリーナ65、エアフローメータ43、スロットルバルブ62が配設されている。上記エアフローメータ43は、エアクリーナ65を介して吸気通路に流入される空気量に応じた電気信号を出力するようになっている。
排気系7は、シリンダヘッド15に形成された排気ポート71に接続される排気マニホールド72を備え、この排気マニホールド72に対して、排気通路を構成する排気管73,74が接続されている。また、この排気通路には、後述するNOx吸蔵触媒(NSR触媒:NOx Storage Reduction触媒)75およびDPNR触媒(Diesel Paticulate−NOx Reduction触媒)76を備えたマニバータ(排気浄化装置)77が配設されている。以下、これらNSR触媒75およびDPNR触媒76について説明する。
NSR触媒75は、吸蔵還元型NOx触媒であって、例えばアルミナ(Al2O3)を担体とし、この担体上に例えばカリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)のようなアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)のようなアルカリ土類、ランタン(La)、イットリウム(Y)のような希土類と、白金(Pt)のような貴金属とが担持された構成となっている。
このNSR触媒75は、排気中に多量の酸素が存在している状態においてはNOxを吸蔵し、排気中の酸素濃度が低く、かつ還元成分(例えば燃料の未燃成分(HC))が多量に存在している状態においてはNOxをNO2若しくはNOに還元して放出する。NO2やNOとして放出されたNOxは、排気中のHCやCOと速やかに反応することによってさらに還元されてN2となる。また、HCやCOは、NO2やNOを還元することで、自身は酸化されてH2OやCO2となる。すなわち、NSR触媒75に導入される排気中の酸素濃度やHC成分を適宜調整することにより、排気中のHC、CO、NOxを浄化することができるようになっている。本実施形態のものでは、この排気中の酸素濃度やHC成分の調整を上記燃料添加弁26からの燃料添加動作によって行うことが可能となっている。
一方、DPNR触媒76は、例えば多孔質セラミック構造体にNOx吸蔵還元型触媒を担持させたものであり、排気ガス中のPMは多孔質の壁を通過する際に捕集される。また、排気ガスの空燃比がリーンの場合、排気ガス中のNOxはNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵され、空燃比がリッチになると、吸蔵したNOxは還元・放出される。さらに、DPNR触媒76には、捕集したPMを酸化・燃焼する触媒(例えば白金等の貴金属を主成分とする酸化触媒)が担持されている。
ここで、ディーゼルエンジンの燃焼室3およびその周辺部の構成について、図2を用いて説明する。この図2に示すように、エンジン本体の一部を構成するシリンダブロック11には、各気筒(4気筒)毎に円筒状のシリンダボア12が形成されており、各シリンダボア12の内部にはピストン13が上下方向に摺動可能に収容されている。
ピストン13の頂面13aの上側には上記燃焼室3が形成されている。つまり、この燃焼室3は、シリンダブロック11の上部にガスケット14を介して取り付けられたシリンダヘッド15の下面と、シリンダボア12の内壁面と、ピストン13の頂面13aとにより区画形成されている。そして、ピストン13の頂面13aの略中央部には、キャビティ(凹陥部)13bが凹設されており、このキャビティ13bも燃焼室3の一部を構成している。
このピストン13は、コネクティングロッド18の小端部18aがピストンピン13cにより連結されており、このコネクティングロッド18の大端部はエンジン出力軸であるクランクシャフトに連結されている。これにより、シリンダボア12内でのピストン13の往復移動がコネクティングロッド18を介してクランクシャフトに伝達され、このクランクシャフトが回転することでエンジン出力が得られるようになっている。また、燃焼室3に向けてグロープラグ19が配設されている。このグロープラグ19は、エンジン1の始動直前に電流が流されることにより赤熱し、これに燃料噴霧の一部が吹きつけられることで着火・燃焼が促進される始動補助装置として機能する。
上記シリンダヘッド15には、燃焼室3へ空気を導入する吸気ポート15aと、燃焼室3から排気ガスを排出する上記排気ポート71とがそれぞれ形成されていると共に、吸気ポート15aを開閉する吸気バルブ16および排気ポート71を開閉する排気バルブ17が配設されている。これら吸気バルブ16および排気バルブ17はシリンダ中心線Pを挟んで対向配置されている。つまり、本エンジン1はクロスフロータイプとして構成されている。また、シリンダヘッド15には、燃焼室3の内部へ直接的に燃料を噴射する上記インジェクタ23が取り付けられている。このインジェクタ23は、シリンダ中心線Pに沿う起立姿勢で燃焼室3の略中央上部に配設されており、上記コモンレール22から導入される燃料を燃焼室3に向けて所定のタイミングで噴射するようになっている。
更に、図1に示す如く、このエンジン1には、過給機(ターボチャージャ)5が設けられている。このターボチャージャ5は、タービンシャフト5Aを介して連結されたタービンホイール5Bおよびコンプレッサホイール5Cを備えている。コンプレッサホイール5Cは吸気管64内部に臨んで配置され、タービンホイール5Bは排気管73内部に臨んで配置されている。このためターボチャージャ5は、タービンホイール5Bが受ける排気流(排気圧)を利用してコンプレッサホイール5Cを回転させ、吸気圧を高めるといった所謂過給動作を行うようになっている。本実施形態におけるターボチャージャ5は、可変ノズル式ターボチャージャであって、タービンホイール5B側に可変ノズルベーン機構(図示省略)が設けられており、この可変ノズルベーン機構の開度を調整することにより、エンジン1の過給圧を調整することができる。
吸気系6の吸気管64には、ターボチャージャ5での過給によって昇温した吸入空気を強制冷却するためのインタークーラ61が設けられている。このインタークーラ61よりも更に下流側に設けられた上記スロットルバルブ62は、その開度を無段階に調整することができる電子制御式の開閉弁であり、所定の条件下において吸入空気の流路面積を絞り、この吸入空気の供給量を調整(低減)する機能を有している。
また、エンジン1には、吸気系6と排気系7とを接続する排気還流通路(EGR通路)8が設けられている。このEGR通路8は、排気の一部を適宜吸気系6に還流させて燃焼室3へ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させるものである。また、このEGR通路8には、電子制御によって無段階に開閉され、同通路を流れる排気流量を自在に調整することができるEGRバルブ81と、EGR通路8を通過(還流)する排気を冷却するためのEGRクーラ82とが設けられている。
−センサ類−
エンジン1の各部位には、各種センサが取り付けられており、それぞれの部位の環境条件や、エンジン1の運転状態に関する信号を出力する。
エンジン1の各部位には、各種センサが取り付けられており、それぞれの部位の環境条件や、エンジン1の運転状態に関する信号を出力する。
例えば、上記エアフローメータ43は、吸気系6内のスロットルバルブ62上流において吸入空気の流量(吸入空気量)に応じた検出信号を出力する。吸気温センサ49は、吸気マニホールド63に配置され、吸入空気の温度に応じた検出信号を出力する。吸気圧センサ48は、吸気マニホールド63に配置され、吸入空気圧力に応じた検出信号を出力する。A/F(空燃比)センサ44は、排気系7のマニバータ77の下流において排気中の酸素濃度に応じて連続的に変化する検出信号を出力する。排気温センサ45は、同じく排気系7のマニバータ77の下流において排気ガスの温度(排気温度)に応じた検出信号を出力する。レール圧センサ41はコモンレール22内に蓄えられている燃料の圧力に応じた検出信号を出力する。スロットル開度センサ42はスロットルバルブ62の開度を検出する。
−ECU−
ECU100は、図3に示すように、CPU101、ROM102、RAM103およびバックアップRAM104などを備えている。ROM102は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。また、RAM103は、CPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104は、例えばエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
ECU100は、図3に示すように、CPU101、ROM102、RAM103およびバックアップRAM104などを備えている。ROM102は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。また、RAM103は、CPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104は、例えばエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
以上のCPU101、ROM102、RAM103およびバックアップRAM104は、バス107を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース105および出力インターフェース106と接続されている。
入力インターフェース105には、上記レール圧センサ41、スロットル開度センサ42、エアフローメータ43、A/Fセンサ44、排気温センサ45、吸気圧センサ48、吸気温センサ49が接続されている。さらに、この入力インターフェース105には、エンジン1の冷却水温に応じた検出信号を出力する水温センサ46、アクセルペダルの踏み込み量に応じた検出信号を出力するアクセル開度センサ47、および、エンジン1の出力軸(クランクシャフト)が一定角度回転する毎に検出信号(パルス)を出力するクランクポジションセンサ40などが接続されている。一方、出力インターフェース106には、上記インジェクタ23、燃料添加弁26、スロットルバルブ62、および、EGRバルブ81などが接続されている。
そして、ECU100は、上記した各種センサの出力に基づいて、エンジン1の各種制御を実行する。さらに、ECU100は、インジェクタ23の燃料噴射制御として、後述するパイロット噴射、プレ噴射、メイン噴射(主噴射)、アフタ噴射、ポスト噴射を実行する。
これらの燃料噴射を実行する際の燃料噴射圧は、コモンレール22の内圧により決定される。このコモンレール内圧として、一般に、コモンレール22からインジェクタ23へ供給される燃料圧力の目標値、すなわち目標レール圧は、エンジン負荷(機関負荷)が高くなるほど、および、エンジン回転数(機関回転数)が高くなるほど高いものとされる。すなわち、エンジン負荷が高い場合には燃焼室3内に吸入される空気量が多いため、インジェクタ23から燃焼室3内に向けて多量の燃料を噴射しなければならず、よってインジェクタ23からの噴射圧力を高いものとする必要がある。また、エンジン回転数が高い場合には噴射可能な期間が短いため、単位時間当たりに噴射される燃料量を多くしなければならず、よってインジェクタ23からの噴射圧力を高いものとする必要がある。このように、目標レール圧は一般にエンジン負荷およびエンジン回転数に基づいて設定される。
上記パイロット噴射やメイン噴射などの燃料噴射における燃料噴射パラメータについて、その最適値はエンジンや吸入空気等の温度条件によって異なるものとなる。
例えば、上記ECU100は、コモンレール圧がエンジン運転状態に基づいて設定される目標レール圧と等しくなるように、即ち燃料噴射圧が目標噴射圧と一致するように、サプライポンプ21の燃料吐出量を調量する。また、ECU100はエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量および燃料噴射形態を決定する。具体的には、ECU100は、クランクポジションセンサ40の検出値に基づいてエンジン回転速度を算出するとともに、アクセル開度センサ47の検出値に基づいてアクセルペダルへの踏み込み量(アクセル開度)を求め、このエンジン回転速度およびアクセル開度に基づいて総燃料噴射量(後述するプレ噴射での噴射量とメイン噴射での噴射量との和)を決定する。
−燃料噴射形態−
以下、本実施形態における上記パイロット噴射、プレ噴射、メイン噴射、アフタ噴射、ポスト噴射の各動作の概略について説明する。
以下、本実施形態における上記パイロット噴射、プレ噴射、メイン噴射、アフタ噴射、ポスト噴射の各動作の概略について説明する。
(パイロット噴射)
パイロット噴射は、インジェクタ23からのメイン噴射(主噴射)に先立ち、予め少量の燃料を噴射する噴射動作である。つまり、このパイロット噴射の実行後、燃料噴射を一旦中断し、メイン噴射が開始されるまでの間に圧縮ガス温度(気筒内温度)を十分に高めて燃料の自着火温度に到達させるようにし、これによってメイン噴射で噴射される燃料の着火性を良好に確保するようにしている。すなわち、この実施形態におけるパイロット噴射の機能は、気筒内の予熱に特化したものとなっている。言い換えれば、この実施形態におけるパイロット噴射は、燃焼室3内でのガスの予熱を行うための噴射動作(予熱用燃料の供給動作)となっている。
パイロット噴射は、インジェクタ23からのメイン噴射(主噴射)に先立ち、予め少量の燃料を噴射する噴射動作である。つまり、このパイロット噴射の実行後、燃料噴射を一旦中断し、メイン噴射が開始されるまでの間に圧縮ガス温度(気筒内温度)を十分に高めて燃料の自着火温度に到達させるようにし、これによってメイン噴射で噴射される燃料の着火性を良好に確保するようにしている。すなわち、この実施形態におけるパイロット噴射の機能は、気筒内の予熱に特化したものとなっている。言い換えれば、この実施形態におけるパイロット噴射は、燃焼室3内でのガスの予熱を行うための噴射動作(予熱用燃料の供給動作)となっている。
具体的には、噴霧の分配や局所濃度の適正化を図るために、パイロット噴射の1回当たりの噴射量をインジェクタ23の最小限界噴射量(例えば1.5mm3)とし、噴射回数を設定することで必要な総パイロット噴射量を確保するようにしている。このようにして分割噴射されるパイロット噴射のインターバルは、インジェクタ23の応答性(開閉動作の速さ)によって決定される。このインターバルは、例えば200μsに設定される。また、パイロット噴射の噴射開始タイミングとしては、例えばクランク角度で、ピストン13の圧縮上死点前(BTDC)80°以降に設定される。なお、パイロット噴射の1回当たりの噴射量や、インターバル、噴射開始タイミングは、上記値に限定されるものではない。
(プレ噴射)
プレ噴射は、インジェクタ23からのメイン噴射に先立ち、予め少量の燃料を噴射する噴射動作である。プレ噴射は、メイン噴射による燃料の着火遅れを抑制し、安定した拡散燃焼に導くための噴射動作であって、副噴射とも呼ばれる。このプレ噴射には、エンジン1のトルク発生のための噴射動作(トルク発生用燃料の供給動作)と、燃焼室3内でのガスの予熱を行うための噴射動作(予熱用燃料の供給動作)とがある。なお、この実施形態におけるプレ噴射の具体的な噴射形態や、プレ噴射とメイン噴射との関係については後述する。
プレ噴射は、インジェクタ23からのメイン噴射に先立ち、予め少量の燃料を噴射する噴射動作である。プレ噴射は、メイン噴射による燃料の着火遅れを抑制し、安定した拡散燃焼に導くための噴射動作であって、副噴射とも呼ばれる。このプレ噴射には、エンジン1のトルク発生のための噴射動作(トルク発生用燃料の供給動作)と、燃焼室3内でのガスの予熱を行うための噴射動作(予熱用燃料の供給動作)とがある。なお、この実施形態におけるプレ噴射の具体的な噴射形態や、プレ噴射とメイン噴射との関係については後述する。
プレ噴射の噴射量は、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気温度等の運転状態に応じて決定される要求トルクを得るための総燃料噴射量(プレ噴射での噴射量とメイン噴射での噴射量との和)に対し、所定の比率(例えば10%)に設定することが可能である。
(メイン噴射)
メイン噴射は、エンジン1のトルク発生のための噴射動作(トルク発生用燃料の供給動作)である。なお、この実施形態におけるメイン噴射の具体的な噴射形態や、メイン噴射とプレ噴射との関係については後述する。
メイン噴射は、エンジン1のトルク発生のための噴射動作(トルク発生用燃料の供給動作)である。なお、この実施形態におけるメイン噴射の具体的な噴射形態や、メイン噴射とプレ噴射との関係については後述する。
メイン噴射の噴射量は、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気温度等の運転状態に応じて決定される要求トルクを得るための上記総燃焼噴射量から、上記プレ噴射での噴射量を減算した噴射量として設定することが可能である。
ここで、上述したプレ噴射およびメイン噴射の制御プロセスについて簡単に説明する。まず、エンジン1のトルク要求値に対して、上記プレ噴射での噴射量とメイン噴射での噴射量との和である総燃料噴射量が算出される。つまり、エンジン1に要求されるトルクを発生させるための量として総燃料噴射量が算出される。
上記エンジン1のトルク要求値は、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気温度等の運転状態、補機類等の使用状況に応じて決定される。例えば、エンジン回転数(クランクポジションセンサ40の検出値に基づいて算出されるエンジン回転数)が高いほど、また、アクセル操作量(アクセル開度センサ47により検出されるアクセルペダルの踏み込み量)が大きいほど(アクセル開度が大きいほど)エンジン1のトルク要求値としては高く得られる。
このようにして総燃料噴射量が算出された後、この総燃料噴射量に対するプレ噴射の噴射量の比率(分割率)を設定する。つまり、プレ噴射量は、総燃料噴射量に対して上記分割率で分割された量として設定されることになる。この場合、分割率(プレ噴射量)は、メイン噴射による燃料の着火遅れの抑制が可能な値として設定される。この実施形態では、上記分割率は10%に設定されている。そして、このようなプレ噴射およびメイン噴射によって、高いエンジントルクを確保しながらも、緩慢燃焼の実現による燃焼音の低減やNOx発生量の低減を図ることが可能になる。
(アフタ噴射)
アフタ噴射は、排気ガス温度を上昇させるための噴射動作である。具体的に、この実施形態では、このアフタ噴射により供給された燃料の燃焼エネルギがエンジン1のトルクに変換されることなく、その大部分が排気の熱エネルギとして得られるタイミングでアフタ噴射を実行するようにしている。また、このアフタ噴射においても、上述したパイロット噴射の場合と同様に、1回当たりの噴射量をインジェクタ23の最小限界噴射量(例えば1.5mm3)とし、噴射回数を設定することで必要な総アフタ噴射量を確保するようにしている。
アフタ噴射は、排気ガス温度を上昇させるための噴射動作である。具体的に、この実施形態では、このアフタ噴射により供給された燃料の燃焼エネルギがエンジン1のトルクに変換されることなく、その大部分が排気の熱エネルギとして得られるタイミングでアフタ噴射を実行するようにしている。また、このアフタ噴射においても、上述したパイロット噴射の場合と同様に、1回当たりの噴射量をインジェクタ23の最小限界噴射量(例えば1.5mm3)とし、噴射回数を設定することで必要な総アフタ噴射量を確保するようにしている。
(ポスト噴射)
ポスト噴射は、排気系7に燃料を直接的に導入して上記マニバータ77の昇温を図るための噴射動作である。例えば、DPNR触媒76に捕集されているPMの堆積量が所定量を超えた場合(例えばマニバータ77の前後の差圧を検出することにより検知)、ポスト噴射が実行されるようになっている。
ポスト噴射は、排気系7に燃料を直接的に導入して上記マニバータ77の昇温を図るための噴射動作である。例えば、DPNR触媒76に捕集されているPMの堆積量が所定量を超えた場合(例えばマニバータ77の前後の差圧を検出することにより検知)、ポスト噴射が実行されるようになっている。
−目標燃料圧力の設定手法−
次に、本実施形態において目標燃料圧力を設定する際の技術的思想について説明する。
次に、本実施形態において目標燃料圧力を設定する際の技術的思想について説明する。
ディーゼルエンジン1においては、NOx発生量を削減することによる排気エミッションの改善、燃焼行程時の燃焼音の低減、エンジントルクの十分な確保といった各要求を連立することが重要である。本発明の発明者は、これら要求を連立するための手法として、燃焼行程時における気筒内での熱発生率の変化状態(熱発生率波形で表される変化状態)を適切にコントロールすることが有効であることに着目し、この熱発生率の変化状態をコントロールするための手法として以下に述べるような目標燃料圧力の設定手法を見出した。
図4の実線は、横軸をクランク角度、縦軸を熱発生率とし、メイン噴射で噴射された燃料の燃焼に係る理想的な熱発生率波形を示している。この図4では、メイン噴射単独での熱発生率波形(プレ噴射による熱発生率を加えていない熱発生率波形)を示している。図中のTDCはピストン13の圧縮上死点に対応したクランク角度位置を示している。
この熱発生率波形としては、例えば、ピストン13の圧縮上死点(TDC)からメイン噴射で噴射された燃料の燃焼が開始され、圧縮上死点後の所定ピストン位置(例えば、圧縮上死点後10°(ATDC10°)の時点)で熱発生率が極大値(ピーク値)に達し、更に、圧縮上死点後の所定ピストン位置(例えば、圧縮上死点後25°(ATDC25°)の時点)で上記メイン噴射において噴射された燃料の燃焼が終了するようになっている。この時点までに燃焼を終了させるために、本実施形態では、圧縮上死点後22°(ATDC22°)までにメイン噴射での燃料噴射を終了させるようになっている。このような熱発生率の変化状態で混合気の燃焼を行わせるようにすれば、例えば圧縮上死点後10°(ATDC10°)の時点で気筒内の混合気のうちの50%が燃焼を完了した状況となる。つまり、膨張行程における総熱発生量の約50%がATDC10°までに発生し、高い熱効率でエンジン1を運転させることが可能となる。
また、図4に二点鎖線αで示す波形は、燃料噴射圧力が、適正値よりも高く設定された場合の熱発生率波形であり、燃焼速度およびピーク値が共に高くなりすぎており、燃焼音の増大やNOx発生量の増加が懸念される状態である。一方、図4に二点鎖線βで示す波形は、燃料噴射圧力が、適正値よりも低く設定された場合の熱発生率波形であり、燃焼速度が低く且つピークの現れるタイミングが大きく遅角側に移行していることで十分なエンジントルクが確保できないことが懸念される状態である。
上述したように、本実施形態に係る目標燃料圧力の設定手法は、熱発生率の変化状態の適正化(熱発生率波形の適正化)を図ることで燃焼効率の向上を図るといった技術的思想に基づくものである。
尚、実際の燃料噴射動作としては、このような熱発生率波形となるメイン噴射に先立って、上述したパイロット噴射およびプレ噴射が実行されることになる。これらパイロット噴射およびプレ噴射により、気筒内温度を十分に高めて、メイン噴射で噴射される燃料の着火性を良好に確保し、また、プレ噴射により、メイン噴射による初期燃焼速度を抑制し、安定した拡散燃焼に導くようにしている。
−プレ噴射およびメイン噴射の噴射形態−
次に、上記プレ噴射およびメイン噴射の噴射形態について具体的に説明する。なお、この実施形態では、メイン噴射に先立って2回のプレ噴射が実行される場合について説明する。ここでは、1回目のプレ噴射を予混合用プレ噴射(第2の副噴射)と呼び、2回目のプレ噴射を予熱用プレ噴射(副噴射)と呼ぶこととする。
次に、上記プレ噴射およびメイン噴射の噴射形態について具体的に説明する。なお、この実施形態では、メイン噴射に先立って2回のプレ噴射が実行される場合について説明する。ここでは、1回目のプレ噴射を予混合用プレ噴射(第2の副噴射)と呼び、2回目のプレ噴射を予熱用プレ噴射(副噴射)と呼ぶこととする。
上記予熱用プレ噴射(2回目のプレ噴射)で噴射された燃料の機能として、一般に、自着火により気筒内の予熱に寄与する機能(予熱機能と言う)と、自着火せずにその後に噴射される燃料(この実施形態ではメイン噴射の燃料)とともに燃焼する機能(予混合機能と言う)とがある。予熱用プレ噴射の燃料のうち、予熱機能に寄与する燃料(予熱項と言う)と、予混合機能に寄与する燃料(予混合項と言う)との比率は、予熱用プレ噴射の噴射タイミングおよび噴射量に応じて変化する。この点について、図5を参照して説明する。
図5は、予熱用プレ噴射の実行タイミングと、その実行タイミングにおいて気筒内で発生する熱発生量との関係を、複数の燃料噴射量(A〜D)に対して解析した結果を示している。例えば、Aは燃料噴射量0.7mm3であり、Bは燃料噴射量1.5mm3であり、Cは燃料噴射量3.0mm3であり、Dは燃料噴射量6.0mm3である。また、図中の一点鎖線は燃料量1.5mm3が完全燃焼した場合の熱量レベルを示している。例えば、図中の点Xは、予熱用プレ噴射をピストン13の圧縮上死点前(BTDC)15°のタイミングで実行し且つ燃料噴射量を1.5mm3とした場合に熱発生量がX1[J]であることを表している。また、図中の点Yは、予熱用プレ噴射をピストン13の圧縮上死点前(BTDC)7°のタイミングで実行し且つ燃料噴射量を3.0mm3とした場合に熱発生量がY1[J]であることを表している。更に、図中の点Zは、予熱用プレ噴射をピストン13の圧縮上死点(TDC)のタイミングで実行し且つ燃料噴射量を6.0mm3とした場合に熱発生量がZ1[J]であることを表している。
この図から分かるように、予熱用プレ噴射の噴射タイミングがピストン13の圧縮上死点(TDC)に近付くほど、同一の噴射量であっても熱発生量は大きくなる。すなわち、ピストン13が圧縮上死点付近に達していて気筒内温度が上昇している環境下に予熱用プレ噴射を実行すれば、局部的に濃度の高い混合気が高温環境下に晒されて燃焼が開始することになる。このため、予熱用プレ噴射の噴射タイミングがピストン13の圧縮上死点(TDC)に近付くほど、同一の噴射量であっても熱発生量は大きくなる。このように、自着火可能な燃料が上述の予熱項となり得る。
一方、予熱用プレ噴射の噴射タイミングがピストン13の圧縮上死点(TDC)から進角されるほど、燃焼室内容積が大きい状態(ピストン13が低い位置にある状態)で微少量のプレ噴射が行われることになる。このため、その後に、ピストン13が圧縮上死点付近に達して気筒内温度が上昇(吸気の圧縮による温度上昇)しても、既に燃料が広範囲に拡散し、混合気が可燃空燃比よりも希薄化してしまう結果、混合気が着火不能な状態となる可能性がある。このように、自着火不能な燃料が上述の予混合項となり得る。
そして、予熱用プレ噴射の噴射タイミングがピストン13の圧縮上死点(TDC)に近付くほど、予熱項の比率が高くなる。ただし、ピストン13の圧縮上死点(TDC)付近で予熱用プレ噴射を行っても、その噴射量のうち実際に熱発生量に寄与できる燃料量(予熱項)は50%程度である。例えば、ピストン13の圧縮上死点(TDC)のタイミングで噴射量を3.0mm3とした予熱用プレ噴射の場合、熱発生量は、燃料量1.5mm3が完全燃焼した場合の熱量レベルに相当する。
これに対し、予熱用プレ噴射の噴射タイミングがピストン13の圧縮上死点(TDC)から進角されるほど、予混合項の比率が高くなる。図5から分かるように、ピストン13の圧縮上死点前(BTDC)15°よりも進角側のタイミングで予熱用プレ噴射を実行した場合には混合気の希薄化が急速に進み、予混合項の比率がさらに高くなる。また、ピストン13の圧縮上死点前(BTDC)30°よりも進角側のタイミングでプレ噴射を実行した場合、その噴射量が所定の上限値(図6参照)以下であれば、プレ噴射の全ての燃料が予混合項となり得る。この図6は、このプレ噴射の噴射量の上限値とプレ噴射の噴射タイミングとの関係を示す図である。プレ噴射の噴射量の上限値は、プレ噴射の噴射タイミングに応じて変化する。具体的には、図6に示すように、プレ噴射の噴射タイミングがピストン13の圧縮上死点(TDC)から進角されるほど、その上限値が大きく設定される。例えば、ピストン13の圧縮上死点前(BTDC)30°のタイミングで噴射量を1.5mm3としたプレ噴射の場合、予混合項が100%となり、予熱項が0%となる。しかし、噴射量が上限値の1.5mm3を超えると自着火可能となるため、その上限値を超えた分の燃料は予熱項となる。
上記予熱用プレ噴射の噴射タイミングとしては、この予熱用プレ噴射で噴射され且つ気筒内のスワール流に沿って流れる燃料が、その後にメイン噴射で噴射された燃料と重畳しないように設定されている。つまり、気筒内のスワール流を考慮して、予熱用プレ噴射の燃料を、メイン噴射の燃料が噴射される場所以外の場所に予め噴射しておくようにしている。このような予熱用プレ噴射およびメイン噴射の噴射形態を隣接噴射と言う。
より具体的には、スワール比が「2」、インジェクタ23の噴孔数が「10」の場合、予熱用プレ噴射とメイン噴射とのインターバルを気筒内の周方向で36°(クランク角度で18°)未満とすれば、予熱用プレ噴射で噴射された燃料とメイン噴射で噴射された燃料とを重なり合わせないようにすることができる。このようにして、予熱用プレ噴射で噴射された燃料とメイン噴射で噴射された燃料とを重なり合わせないようにすることで、予熱用プレ噴射で噴射された燃料の大部分(最大で50%)を気筒内予熱に寄与させることができる。
一方、1回目のプレ噴射である予混合用プレ噴射は、メイン噴射あるいは予熱用プレ噴射に対して重畳する噴射として設定することが可能である。
図7は予混合用プレ噴射をメイン噴射に対して重畳させる場合の噴射パターンを示しており、図8は予混合用プレ噴射を予熱用プレ噴射に対して重畳させる場合の噴射パターンを示している。
図7に示すように、予混合用プレ噴射とメイン噴射とを重畳噴射とする場合、メイン噴射の噴射タイミングは、ピストン13の圧縮上死点(TDC)の近傍に設定される。予混合用プレ噴射の噴射タイミングは、ピストン13の圧縮上死点前(BTDC)のタイミングに設定され、スワール比が「2」、インジェクタ23の噴孔数が「10」であれば、予混合用プレ噴射とメイン噴射とのインターバルがクランク角度で36°となるように設定される。また、予熱用プレ噴射の噴射タイミングは、ピストン13の圧縮上死点前(BTDC)のタイミングに設定され、できるだけメイン噴射の噴射タイミングに近付けて設定される。
一方、図8に示すように、予混合用プレ噴射と予熱用プレ噴射とを重畳噴射とする場合、予熱用プレ噴射の噴射タイミングは、ピストン13の圧縮上死点(TDC)の近傍に設定される。予混合用プレ噴射の噴射タイミングは、ピストン13の圧縮上死点前(BTDC)のタイミングに設定され、スワール比が「2」、インジェクタ23の噴孔数が「10」であれば、予混合用プレ噴射と予熱用プレ噴射とのインターバルがクランク角度で36°となるように設定される。また、メイン噴射の噴射タイミングは、ピストン13の圧縮上死点後(ATDC)のタイミングに設定され、できるだけ予熱用プレ噴射の噴射タイミングに近付けて設定される。
この図8に示す噴射パターンでは、予混合用プレ噴射の燃料と予熱用プレ噴射の燃料とが重なり合うため、次のような効果が得られる。すなわち、上述のような重畳噴射により、予混合用プレ噴射で噴射された燃料は、予熱用プレ噴射が行われると、予熱用プレ噴射の燃料とともに速やかに燃焼して、気筒内の予熱に寄与することになる。このようにして、予混合用プレ噴射および予熱用プレ噴射で噴射された燃料の大部分を気筒内予熱に寄与させることができ、各プレ噴射で噴射された燃料の燃焼による熱発生量を最大限に利用して、メイン噴射で噴射された燃料の燃焼を開始させることが可能になる。これにより、メイン噴射で噴射される燃料の着火性を良好に確保することができる。しかも、予熱用プレ噴射で燃料が噴射されるピストン13の圧縮上死点(TDC)までの間は、予混合用プレ噴射の燃料は燃焼しないため、逆進トルクの発生を回避することができる。これにより、メイン噴射の燃料の燃焼にともなうトルクを効率よく得ることができる。
−噴射限界の設定−
本実施形態の特徴は、上述したメイン噴射、予熱用プレ噴射、予混合用プレ噴射のそれぞれにおける噴射タイミングの限界(噴射限界タイミング)を設定している点にある。具体的には、メイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界、予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界、予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界がそれぞれ設定されている。以下、それぞれについて説明する。
本実施形態の特徴は、上述したメイン噴射、予熱用プレ噴射、予混合用プレ噴射のそれぞれにおける噴射タイミングの限界(噴射限界タイミング)を設定している点にある。具体的には、メイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界、予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界、予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界がそれぞれ設定されている。以下、それぞれについて説明する。
(メイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界)
先ず、メイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界について説明する。このメイン噴射で噴射された燃料の熱エネルギを効果的にエンジントルクに変換するためには、このメイン噴射で噴射された燃料の略全量を、上記ピストン13の頂面13aに形成されたキャビティ13b内に流れ込ませることが有効である。そのため、本実施形態では、膨張行程時において、圧縮上死点から下死点に向かって移動するピストン13のキャビティ13b内にインジェクタ23から噴射される燃料(メイン噴射での燃料)を流れ込ませることができなくなるピストン移動位置の直前位置(上死点側の位置)をメイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界としている。
先ず、メイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界について説明する。このメイン噴射で噴射された燃料の熱エネルギを効果的にエンジントルクに変換するためには、このメイン噴射で噴射された燃料の略全量を、上記ピストン13の頂面13aに形成されたキャビティ13b内に流れ込ませることが有効である。そのため、本実施形態では、膨張行程時において、圧縮上死点から下死点に向かって移動するピストン13のキャビティ13b内にインジェクタ23から噴射される燃料(メイン噴射での燃料)を流れ込ませることができなくなるピストン移動位置の直前位置(上死点側の位置)をメイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界としている。
具体的には、図9に示すように、インジェクタ23からの燃料噴射方向(図中に一点鎖線で示している)が上記キャビティ13bから外れるタイミング(この図9に示す状態からピストン13が下死点側に移動した状態でインジェクタ23から燃料噴射が行われると、その燃料は上記キャビティ13bから外れてしまうことになる)直前のタイミングをメイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界としている。例えば、この値はクランク角度で、圧縮上死点後22°(ATDC22°)の時点となる。
このようなタイミングにメイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界を設定することで、このメイン噴射で噴射された燃料の略全量を、比較的狭く且つ高温度の空間に供給することができて、その燃焼による熱エネルギの殆どを無駄なくエンジントルクに変換させることが可能になる。
(予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界)
次に、予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界について説明する。上述した如く、メイン噴射の直前に実行される予熱用プレ噴射は、メイン噴射で噴射された燃料と重畳しないように燃料を噴射することで、気筒内の予熱に寄与させることができる。
次に、予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界について説明する。上述した如く、メイン噴射の直前に実行される予熱用プレ噴射は、メイン噴射で噴射された燃料と重畳しないように燃料を噴射することで、気筒内の予熱に寄与させることができる。
そして、この予熱用プレ噴射においても、この予熱用プレ噴射で噴射された燃料を効果的に気筒内の予熱に寄与させるためには、この予熱用プレ噴射で噴射された燃料の略全量を、上記ピストン13の頂面13aに形成されたキャビティ13b内に流れ込ませることが有効である。そのため、本実施形態では、圧縮行程時に圧縮上死点に向かって移動するピストン13のキャビティ13b内にインジェクタ23から噴射される燃料を流れ込ませることができる進角側の限界値を予熱用プレ噴射の噴射開始タイミングの進角限界としている。具体的に、この値はクランク角度で、圧縮上死点前15°(BTDC15°)の時点となる。
このようなタイミングに予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界を設定することで、この予熱用プレ噴射で噴射された燃料の略全量を、比較的狭く且つ高温度の空間に供給することができて、その燃焼による熱エネルギを有効に利用して気筒内を予熱することができる。
(予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界)
次に、予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界について説明する。上述した如く、予熱用プレ噴射に先立って実行される予混合用プレ噴射は、圧縮上死点前に実行されるので、ピストン13が圧縮上死点(TDC)に達する前に、この燃料が燃焼してしまうと逆進トルク(クランクシャフトの回転方向に対して逆方向に作用するトルク)が発生してしまう。これを回避するためには、この予混合用プレ噴射で噴射された燃料がピストン13の圧縮上死点までは燃焼せず、ピストン13が圧縮上死点を経た後にメイン噴射や予熱用プレ噴射で噴射された燃料とともに燃焼するタイミングに設定する必要がある。そのために、本実施形態では、この予混合用プレ噴射の噴射タイミングとしては、ピストン13が圧縮上死点(TDC)に達した以後に噴射される燃料(メイン噴射または予熱用プレ噴射)に重畳されるようになっている。
次に、予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界について説明する。上述した如く、予熱用プレ噴射に先立って実行される予混合用プレ噴射は、圧縮上死点前に実行されるので、ピストン13が圧縮上死点(TDC)に達する前に、この燃料が燃焼してしまうと逆進トルク(クランクシャフトの回転方向に対して逆方向に作用するトルク)が発生してしまう。これを回避するためには、この予混合用プレ噴射で噴射された燃料がピストン13の圧縮上死点までは燃焼せず、ピストン13が圧縮上死点を経た後にメイン噴射や予熱用プレ噴射で噴射された燃料とともに燃焼するタイミングに設定する必要がある。そのために、本実施形態では、この予混合用プレ噴射の噴射タイミングとしては、ピストン13が圧縮上死点(TDC)に達した以後に噴射される燃料(メイン噴射または予熱用プレ噴射)に重畳されるようになっている。
図7に示す噴射パターンでは、予混合用プレ噴射がメイン噴射に重畳されている。この場合、メイン噴射の噴射開始タイミング(TDC)に対して36°だけ進角したタイミングで予混合用プレ噴射が実行される。また、図8に示す噴射パターンでは、予混合用プレ噴射が予熱用プレ噴射に重畳されている。この場合、予熱用プレ噴射の噴射開始タイミング(TDC)に対して36°だけ進角したタイミングで予混合用プレ噴射が実行される。これらのタイミングよりも遅角側のタイミングで予混合用プレ噴射が実行されてしまうと、気筒内容積が小さくなると共に気筒内温度が上昇した状態で燃料噴射が実行されることになって、この予混合用プレ噴射で噴射された燃料が着火して逆進トルクが発生してしまう可能性がある。このため、上記噴射タイミングを予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界として設定している。
以上のようにして、予め、メイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界、予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界、予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界がそれぞれ設定されており、各燃料噴射時には、この限界を超えないタイミングで燃料噴射が実行される(噴射タイミング設定手段による燃料噴射動作)。
例えば、エンジン回転数、アクセル開度(エンジン負荷)、冷却水温度等をパラメータとして、各燃料噴射タイミングが算出またはマップから読み出された場合に、その燃料噴射タイミングが上記限界値を超える値であった場合には、その燃料噴射タイミングは、その限界値に制限されるようになっている。
以上説明してきたように、本実施形態では、各プレ噴射およびメイン噴射の噴射タイミングの限界を一連の技術的思想によって設定することができ、これまでにない制御ルールの構築により、プレ噴射およびメイン噴射の噴射パターンを一義的に決定する統合制御を実現することが可能になる。そして、この制御プロセスによってプレ噴射およびメイン噴射が実行されることにより、高効率の燃焼状態を得ることが可能になる。
−燃料噴射タイミング自動適合装置−
次に、上述したようなメイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界、予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界、予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界を取得するために使用される燃料噴射タイミング自動適合装置(自動適合ツール)について説明する。
次に、上述したようなメイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界、予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界、予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界を取得するために使用される燃料噴射タイミング自動適合装置(自動適合ツール)について説明する。
一般に、自動車用エンジンの制御では、エンジン回転速度やエンジン負荷といったエンジンの運転状態に応じて、燃料噴射時期等の各種制御パラメータが決定されている。各運転状態における各制御パラメータは、排気エミッション特性、燃料消費特性等の様々なエンジン特性が要求を満たすように予め適合されている。
このような制御パラメータの適合は、従来では、エンジンベンチ上で試行錯誤を繰り返して行われている。すなわち、車載エンジンの出力軸とダイナモメータとを回転駆動軸によって連結し、ダイナモメータにて車載エンジンの負荷トルクをテストトルクとして吸収することで、車載エンジンが車両に搭載されて運転される状態を擬似的に作り出す。そして各運転状態において制御パラメータを調整しながら窒素酸化物排出量や消費燃料量等の各種エンジン特性値を計測し、制御パラメータの最適な値を適合値として取得する。こうした制御パラメータの適合には、試行錯誤とそれに伴う膨大な時間とを必要としていた。
このような状況は、プレ噴射やメイン噴射の燃料噴射タイミングを決定する場合も同様である。つまり、インジェクタ23からの燃料噴射タイミングを決定する場合にも、従来では、試行錯誤とそれに伴う膨大な時間とが必要であった。本実施形態における燃料噴射タイミング自動適合装置は、この燃料噴射タイミングの限界値を自動的に求めるものである。以下、具体的に説明する。
図10は、上記各プレ噴射およびメイン噴射の噴射タイミング限界の適合値を自動取得するためのシステム構成を示している。この図10に示すように、ダイナモメータ110は、エンジン1の出力トルクを吸収することで、エンジン1が疑似的に車両に搭載された状態を生成するものである。また、計測装置120は、エンジン1の排気特性等を計測したり、エンジン1のクランク軸の回転速度を計測したりする装置である。更に、適合用コンピュータにより構成される自動適合装置130は、ダイナモメータ110を操作するとともに、上記サプライポンプ21やインジェクタ23や可変ノズルベーン機構等の各種アクチュエータの操作量を適宜設定して同操作量により上記ECU100を介して各アクチュエータを操作する機能を有する。そして、自動適合装置130では、計測装置120による計測結果に基づき、上記燃料噴射タイミングの限界値を含む各適合を行うようになっている。
そして、上記燃料噴射タイミングの限界値の自動適合を行うための動作は以下のようにして行われる。ここでは、先ず、メイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界を求めるための自動適合動作について説明し、その後、予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界および予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界を求めるための自動適合動作について説明する。
これら適合動作の概略について説明すると、メイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界を求めるための自動適合動作では、図11に示すように、プレ噴射(予混合用プレ噴射および予熱用プレ噴射)の噴射タイミングを固定した状態で、メイン噴射の噴射タイミングを遅角側(図中の矢印参照)に変化させていきながら気筒内での熱発生率を求めていき、この熱発生率が低下するタイミングに対して僅かに進角側のタイミングをメイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界として自動取得する。尚、上記熱発生率に代えて、熱発生量を求めていくようにしてもよい。
また、予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界および予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界を求めるための自動適合動作では、図12に示すように、メイン噴射の噴射タイミングを固定(例えばATDC7°に固定)した状態で、プレ噴射の噴射タイミングを進角側に変化させていきながら(図中の矢印参照)、気筒内での熱発生量の変化状態を求め、その変化に基づいて、予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界および予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界を自動取得する。尚、上記熱発生量に代えて、熱発生率を求めていくようにしてもよい。
(メイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界取得動作)
図13は、上記メイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界を求めるための自動適合動作の手順を示すフローチャートである。この図13に示すルーチンを、エンジンの種類毎に実行して、そのエンジンにおけるメイン噴射の噴射終了タイミングの限界値(適合値)を取得し、そのエンジンに適した燃料噴射タイミングが得られるようにしている。
図13は、上記メイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界を求めるための自動適合動作の手順を示すフローチャートである。この図13に示すルーチンを、エンジンの種類毎に実行して、そのエンジンにおけるメイン噴射の噴射終了タイミングの限界値(適合値)を取得し、そのエンジンに適した燃料噴射タイミングが得られるようにしている。
また、この自動適合動作の開始時には、メイン噴射の噴射タイミングとしては、この自動適合動作における噴射タイミングの変更の範囲のうち最も進角側に設定される。
この自動適合動作が開始されると、先ず、ステップST1において、現在のメイン噴射の噴射タイミングで膨張行程を行った場合の熱発生率(dQ)のピーク値を測定する。第1回目のピーク値の測定動作にあっては、図11において実線で示すタイミングでメイン噴射が行われ、その際の熱発生率のピーク値としては図中のdQ1として得られることになる。
その後、ステップST2に移り、前回の熱発生率のピーク値と、今回ステップST1で測定された熱発生率のピーク値とを比較し、今回の熱発生率のピーク値の方が増加しているか否かを判定する。1回目のピーク値の測定動作にあっては、前回ピーク値が存在しないので、ここではYes判定されることになる。
ステップST2でYes判定されると、ステップST3に移り、メイン噴射の噴射タイミング(噴射時期)を遅角側に移行させる。つまり、図11に実線で示していた噴射タイミングから破線で示す噴射タイミングまで僅かに遅角させる。この場合の遅角量は、例えばクランク角度で3°となっている。この値はこれに限定されるものではない。
このようにしてメイン噴射の噴射タイミングを遅角側に移行させた状態で、燃焼行程を実行させ、その際の熱発生率のピーク値を測定する(ステップST1)。この場合の熱発生率のピーク値としては、図11中のdQ2として得られる。
そして、ステップST2で、前回の熱発生率のピーク値と、今回ステップST1で測定された熱発生率のピーク値とを比較し、今回の熱発生率のピーク値の方が増加しているか否かを判定する。ここでYes判定された場合には、ステップST3において、更に、メイン噴射の噴射タイミングを遅角側に移行させ、上記と同様の熱発生率のピーク値を測定する。例えば、上述した如く、前回測定された熱発生率のピーク値が図11中のdQ1であって、今回測定された熱発生率のピーク値が図11中のdQ2である場合には、ステップST2でYes判定され、ステップST3において、メイン噴射の噴射タイミングが遅角側に移行される。
このようにしてメイン噴射の噴射タイミングを遅角側に移行させていきながら、前回の熱発生率のピーク値に対して今回の熱発生率のピーク値の方が増加しているか否かを判定していく。
そして、前回の熱発生率のピーク値に対して今回の熱発生率のピーク値が同一または低下した場合にはステップST2でNo判定され、ステップST4に移る。例えば、前回測定された熱発生率のピーク値が図11中のdQ3であって、今回測定された熱発生率のピーク値が図11中のdQ4である場合には、ステップST2でNo判定判定され、ステップST4に移る。
このステップST4では、この際のメイン噴射の噴射タイミングにおける噴射終了タイミング(噴射終了角)を検出する。図11においては、図中のタイミングM1が噴射終了タイミングとして検出される。
その後、ステップST5に移り、このステップST4で求められた噴射終了タイミング(噴射終了角)に対して所定の余裕角αを減算した値を、メイン噴射の噴射終了タイミングの限界値(噴射終了遅角ガード)として登録する。これは、上記熱発生率のピーク値が低下したタイミングよりも僅かに進角したタイミングをメイン噴射の噴射終了タイミングの限界値として設定する処理である。この余裕角αの値としては、上記ステップST3で設定されているメイン噴射の噴射タイミングの遅角量に相当する値(クランク角度で3°)であってもよいし、この遅角量よりも小さい値(例えばクランク角度で1°)であってもよい。
(プレ噴射の噴射タイミングの限界取得動作)
図14は、上記予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界、予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界を求めるための自動適合動作の手順を示すフローチャートである。この図14に示すルーチンを、エンジンの種類毎に実行して、そのエンジンにおける予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界(適合値)、予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界(適合値)を取得し、そのエンジンに適した燃料噴射タイミングが得られるようにしている。
図14は、上記予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界、予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界を求めるための自動適合動作の手順を示すフローチャートである。この図14に示すルーチンを、エンジンの種類毎に実行して、そのエンジンにおける予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界(適合値)、予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界(適合値)を取得し、そのエンジンに適した燃料噴射タイミングが得られるようにしている。
また、この自動適合動作の開始時には、プレ噴射の噴射タイミングとしては、この自動適合動作における噴射タイミングの変更の範囲のうち最も遅角側(ATDC側)に設定される(図12に実線P1で示すプレ噴射の噴射タイミングを参照)。また、予め備えられた2つのフラグ(FLG1、FLG2)は共にOFFとされている。
この自動適合動作が開始されると、先ず、ステップST11において、現在の熱発生量(Qi)を測定する。第1回目の熱発生量の測定動作にあっては、図12においてP1で示すタイミングでプレ噴射が行われ、そのプレ噴射に伴う熱発生量が測定されることになる。
その後、ステップST12に移り、現在登録されている熱発生量の最大値(Qmax)と、今回ステップST11で測定された熱発生量(Qi)とを比較し、今回測定された熱発生量(Qi)の方が大きくなっているか否かを判定する。1回目の熱発生量の測定動作にあっては、熱発生量の最大値(Qmax)が存在しないので、ここではYes判定されることになる。
ステップST12でYes判定されると、ステップST13に移り、上記ステップST11で測定された熱発生量を、熱発生量の最大値(Qmax)として登録してステップST14に移る。
ステップST14では、今回測定された熱発生量(Qi)と熱発生量の最大値(Qmax)との比(Qi/Qmax)が所定値Aよりも小さく、且つフラグ(FLG1)がOFFとなっているか否かを判定する。尚、この所定値Aとしては「1」または「1」よりも小さい値(例えば「0.7」)が設定される。上記ステップST13では、今回測定された熱発生量(Qi)が熱発生量の最大値(Qmax)として登録されているため、これらの比は「1」となっており、このステップST14ではNo判定され、ステップST17に移る。
ステップST17では、今回測定された熱発生量(Qi)が「0」であって、且つフラグ(FLG2)がOFFとなっているか否かを判定する。プレ噴射がピストン13の圧縮上死点後に実行される場合には、上述した如く、局部的に濃度の高い混合気が高温環境下に晒されて燃焼が開始することになるため、熱発生量が正の値(Qi>0)となり、このステップST17ではNo判定され、ステップST20に移る。
ステップST20では、以下の式(1)から燃料噴射タイミングでの予混合率(RMIXi)を算出してステップST21に移る。
RMIXi=1−Qi/Qth …(1)
ここで、Qthは、プレ噴射で噴射された燃料の量に対応した理論熱発生量、つまり、プレ噴射で噴射された燃料の全量が燃焼したと仮定した場合に発生する熱発生量である。
ここで、Qthは、プレ噴射で噴射された燃料の量に対応した理論熱発生量、つまり、プレ噴射で噴射された燃料の全量が燃焼したと仮定した場合に発生する熱発生量である。
ステップST21では、プレ噴射の噴射タイミング(噴射時期)の進角度が、この自動適合動作における進角度範囲のうちの最大進角度(β)に未だ達していないか否かを判定する。1回目の熱発生量の測定動作にあっては、プレ噴射の噴射タイミングは最大進角度に達していないので、このステップST21ではYes判定され、ステップST22に移る。
ステップST22では、図12でP1で示すタイミングに設定したプレ噴射の噴射タイミングを所定角度だけ進角させる。この場合の遅角量は、例えばクランク角度で3°となっている。この値はこれに限定されるものではない。
このようにしてプレ噴射の噴射タイミングを進角側に移行させた状態で、燃焼行程を実行させ、その際の熱発生量を測定する(ステップST11)。
そして、ステップST12において、現在登録されている熱発生量の最大値(Qmax)と、今回ステップST11で測定された熱発生量(Qi)とを比較し、今回測定された熱発生量(Qi)の方が大きくなっているか否かを判定する。今回測定された熱発生量の方が大きくなっている場合には、ステップST13に移り、上記ステップST11で測定された熱発生量を熱発生量の最大値(Qmax)として更新登録して、ステップST14に移る。一方、今回測定された熱発生量(Qi)が現在登録されている熱発生量の最大値(Qmax)と同一であるか、または、この熱発生量の最大値(Qmax)よりも小さい場合には、ステップST12でNo判定され、熱発生量の最大値(Qmax)を更新することなしにステップST14に移る。
ステップST14では、上述した如く、今回測定された熱発生量(Qi)と熱発生量の最大値(Qmax)との比(Qi/Qmax)が上記所定値Aよりも小さく、且つフラグ(FLG1)がOFFとなっているか否かを判定する。今回測定された熱発生量(Qi)が熱発生量の最大値(Qmax)よりも大幅に小さくなっている場合には、このステップST14でYes判定され、ステップST15において、現在のプレ噴射の噴射タイミングを、予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界(適合値:Acrnk)として記憶し、ステップST16でフラグ(FLG1)をONする。このフラグ(FLG1)がONされたことで、予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界の取得が完了したことになる。このようにして予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界を記憶した後、ステップST17に移る。
一方、今回測定された熱発生量(Qi)と熱発生量の最大値(Qmax)との比(Qi/Qmax)が上記所定値A以上である場合には、現在のプレ噴射の噴射タイミングは予熱用プレ噴射の進角限界ではないとして、フラグ(FLG1)をOFFにしたままステップST17に移る。
ステップST17では、今回測定された熱発生量(Qi)が「0」であって、且つフラグ(FLG2)がOFFとなっているか否かを判定している。プレ噴射が上述した重畳噴射(メイン噴射に対して重畳する噴射)のタイミングに達した場合には、プレ噴射の実行時における熱発生量(Qi)が「0」となり、ステップST17でYes判定される。そして、ステップST18において、現在のプレ噴射の噴射タイミングを、予混合プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界(適合値:Rcrnk)として記憶し、ステップST19でフラグ(FLG2)をONする。このフラグ(FLG2)がONされたことで、予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界の取得が完了したことになる。このようにして予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界を記憶した後、ステップST20に移る。
一方、今回測定された熱発生量(Qi)が「0」でない場合には、現在のプレ噴射の噴射タイミングは予混合用プレ噴射の遅角限界ではないとして、フラグ(FLG2)をOFFにしたままステップST20に移る。
以上のような動作が繰り返されることで、上記ステップST15で、予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界(適合値:Acrnk)が記憶され、上記ステップST18で、予混合プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界(適合値:Rcrnk)が記憶された後、ステップST21で、プレ噴射の噴射タイミング(噴射時期)の進角度が最大進角度(β:図12に破線で示すプレ噴射の噴射タイミングを参照)に達した時点で、この自動適合動作を終了する。
以上が、各燃料噴射タイミングの限界値を取得するための燃料噴射タイミング自動適合動作である。
このように、本実施形態では、メイン噴射の噴射終了タイミングの遅角限界、予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界、予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界を自動適合させることができ、試行錯誤で適合値を取得したり、その適合値の取得に膨大な時間を必要とするといったことが解消され、適合動作の高効率化を図ることができる。
−他の実施形態−
以上説明した実施形態では、自動車に搭載される直列4気筒ディーゼルエンジンに本発明を適用した場合について説明した。本発明は、自動車用に限らず、その他の用途に使用されるエンジンにも適用可能である。また、気筒数やエンジン形式(直列型エンジン、V型エンジン等の別)についても特に限定されるものではない。
以上説明した実施形態では、自動車に搭載される直列4気筒ディーゼルエンジンに本発明を適用した場合について説明した。本発明は、自動車用に限らず、その他の用途に使用されるエンジンにも適用可能である。また、気筒数やエンジン形式(直列型エンジン、V型エンジン等の別)についても特に限定されるものではない。
また、上記実施形態では、マニバータ77として、NSR触媒75およびDPNR触媒76を備えたものとしたが、NSR触媒75およびDPF(Diesel Paticulate Filter)を備えたものとしてもよい。
また、上記実施形態では、メイン噴射に先立って2回のプレ噴射(予混合用プレ噴射および予熱用プレ噴射)が実行される場合について説明した。本発明はこれに限らず、何れか一方のプレ噴射のみを実行する場合にも適用可能である。この場合にも、予混合用プレ噴射の噴射タイミングの遅角限界や、予熱用プレ噴射の噴射タイミングの進角限界については上述した実施形態の場合と同様にして設定される。
1 エンジン(内燃機関)
13 ピストン
13b キャビティ(凹陥部)
23 インジェクタ(燃料噴射弁)
130 自動適合装置
13 ピストン
13b キャビティ(凹陥部)
23 インジェクタ(燃料噴射弁)
130 自動適合装置
Claims (10)
- 燃料噴射弁からの燃料噴射動作として、少なくとも、主噴射と、この主噴射に先立って行われる副噴射とが実行可能な圧縮自着火式の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
気筒内で往復移動するピストンの頂面には、燃焼室を構成する凹陥部が形成されており、
上記主噴射で噴射される燃料および副噴射で噴射される燃料のうちの少なくとも一方の燃料の略全量が上記ピストンの凹陥部内に流れ込むように、燃料の噴射タイミングの限界が設定された燃料噴射動作を実行可能な噴射タイミング設定手段を備えていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 上記請求項1記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
上記噴射タイミング設定手段は、圧縮上死点を経て下死点に向かって移動するピストンの凹陥部内に、上記主噴射で噴射される燃料の略全量が流れ込むように、この主噴射の噴射終了タイミングの遅角限界を設定して燃料噴射動作を実行するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 上記請求項1または2記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
上記噴射タイミング設定手段は、圧縮上死点に向かって移動するピストンの凹陥部内に、上記副噴射で噴射される燃料の略全量が流れ込むように、この副噴射の噴射タイミングの進角限界を設定して燃料噴射動作を実行するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 上記請求項3記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
上記副噴射の噴射タイミングの進角限界は、この副噴射の噴射開始タイミングを進角させていった際に、気筒内での熱発生率または熱発生量が低下する噴射タイミングの直前の遅角側のタイミングに設定されることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 上記請求項1〜4のうち何れか一つに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
上記副噴射に先立って、ピストンが圧縮上死点に達する前に第2の副噴射が実行されるようになっており、
上記第2の副噴射の噴射タイミングの遅角限界は、この第2の副噴射で噴射された燃料が、ピストンが圧縮上死点に達するまでは燃焼せず、ピストンが圧縮上死点に達した後に燃焼するタイミングに設定されることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 上記請求項5記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
上記第2の副噴射の噴射タイミングの遅角限界は、この第2の副噴射で噴射され且つ気筒内のスワール流に沿って流れる燃料が、その後の上記副噴射または上記主噴射で噴射された燃料と重畳するタイミングに設定されることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 上記請求項1〜6のうち何れか一つに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
上記噴射タイミング設定手段は、内燃機関の運転状態に応じて、燃料の噴射タイミングの限界を解除して燃料噴射動作を実行可能な構成とされていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 燃料噴射弁によって、主噴射と、この主噴射に先立って行われる副噴射とを実行可能とする圧縮自着火式の内燃機関に対して、上記主噴射で噴射される燃料および副噴射で噴射される燃料のうちの少なくとも一方の燃料の略全量がピストンの凹陥部内に流れ込むように、上記燃料の噴射タイミングの限界を得るための自動適合装置であって、
上記副噴射の噴射タイミングを固定した状態で、主噴射の噴射タイミングを遅角側に変化させていきながら気筒内での熱発生率または熱発生量が低下するタイミングを求め、このタイミングの直前の進角側のタイミングを主噴射の噴射終了タイミングの遅角限界として自動取得するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の自動適合装置。 - 上記請求項8記載の内燃機関の自動適合装置において、
上記主噴射の噴射タイミングを固定した状態で、上記副噴射の噴射タイミングを進角側に変化させていきながら気筒内での熱発生量または熱発生率が低下するタイミングを求め、このタイミングの直前の遅角側のタイミングを副噴射の噴射タイミングの進角限界として自動取得するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の自動適合装置。 - 上記請求項8または9記載の内燃機関の自動適合装置において、
上記副噴射に先立って第2の副噴射が実行されるようになっており、
上記主噴射の噴射タイミングを固定した状態で、第2の副噴射の噴射タイミングを変化させていきながら気筒内での熱発生量が略「0」となるタイミングを求め、このタイミングを第2の副噴射の遅角限界として自動取得するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の自動適合装置。
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