JPWO2010016205A1 - 筒状編地の編成方法、および筒状編地 - Google Patents

筒状編地の編成方法、および筒状編地 Download PDF

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秀樹 仲
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Abstract

筒状編地同士の接合部を強化するための編成方法、および、この編成方法により編成された編地を提供する。編糸交差工程と、ニット編成工程と、交絡工程を実施する。編糸交差工程では、前後の針床に交互に掛け目とタック目を形成すると共に、掛け目とタック目に繋がり前後の針床間を渡る編糸(渡り編糸部1)と筒状編地を構成する一部の編糸(交差編糸部2)とを交差させる。ニット編成工程では、前記掛け目にニット編成を行って、当該掛け目に連続する新規編目3を形成する。交絡工程では、新規編目3とこの新規編目3に対向する針床に係止される対向編目4のいずれか一方を対向する針床に目移しすることで、渡り編糸部1と交差編糸部2とを絡ませる。

Description

本発明は、2つの筒状編地を接合する際に、接合部を強化するための筒状編地の編成方法、および、筒状編地同士の接合部を強化した筒状編地に関するものである。
横編機を用いてセーターなどの筒状編地を編成するにあたり、身頃と袖とを接合しつつ、接合部を強化するための編成が行われている(例えば、特許文献1を参照)。この特許文献1では、対向する身頃の側端と袖の側端とを袋編みにより接合している。このようにして編成された筒状編地では、例えば、身頃と袖とを互いに離れる方向に引っ張ったときに、袋編みされた部分が主として張力を受けると共に、当該部分の編目が縮まって身頃と袖とに編糸を繰り出すことで、身頃と袖との接合部を維持する。
特許第3968017号公報
しかし、近年のニーズの多様化により、編地の見た目を重視して、編針に対して適正番手以外となる細い編糸や弱い編糸などを使用することがあり、その場合には接合部を強化する必要がある。ここで、上述した特許文献1の編成方法は、袋編みの回数を増やすことにより強化の度合いを高めることができる一方で、袋編みの回数分だけ横編機のキャリッジの往復動作が増えてしまう。これに対し、接合部を縫製により補強する場合もあるが、その縫製作業の工程が増えてしまう。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、単純な編成動作で筒状編地同士の接合部を強化するための編成方法、および、この編成方法により編成された編地を提供することを目的とする。
本発明の筒状編地の編成方法は、少なくとも前後一対の針床を有し、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を使用して、2つの筒状編地を接合する際、当該接合部を強化するための編成方法であって、以下の工程を備えることを特徴とする。
接合する2つの筒状編地にまたがるように、前後の針床に交互に編糸を掛けて、前後一方の針床の空針に掛け目を、他方の針床において筒状編地を構成する編目が係止される編針の一部にタック目を形成すると共に、前記掛け目とタック目とを繋ぎ、前後の針床間を渡る編糸と、筒状編地を構成する一部の編糸とのうち、一方の編糸が下側編糸、他方の編糸が上側編糸となるように交差させる編糸交差工程。
前記掛け目にニット編成を行って、当該掛け目に連続する新規編目を形成するニット編成工程。
前記新規編目とこの新規編目に対向する針床の編針に係止される対向編目のいずれか一方の編目を他方の編目に重ね合わせるように目移しすることで、前記下側編糸で前記上側編糸を上下に挟み、下側編糸と上側編糸とを絡ませる交絡工程。
また、本発明の筒状編地の編成方法は、前記編糸交差工程、ニット編成工程、及び交絡工程の一連の工程を実施した後、さらに、これらの工程で使用した編針の針床に関し、前後を入れ替えてもう一度前記一連の工程を実施することも好ましい。
また、本発明の筒状編地の編成方法は、編糸交差工程において、前後の針床の編針に編糸を掛ける前に、既に針床の編針に係止される筒状編地を構成する編目列の一部の編目を、これらの編目に対向する針床の空針に目移ししておくことが好ましい。この場合、目移しにより空針となった編針に対して掛け目の形成を行えば良い。
本発明の筒状編地は、少なくとも前後一対の針床を有し、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を用いて編成され、筒状編地同士を接合した接合部を有する筒状編地に係る。この筒状編地は、前記接合部において、対向する前後の編地部間を渡る複数の渡り編糸部を備える。そして、少なくとも一部の渡り編糸部と、筒状編地を構成する編糸部とが互いに掛け合うように絡んでおり、渡り編糸部に繋がる2つの編目の位置がウェール方向にズレていることを特徴とする。
本発明の筒状編地の編成方法によれば、2つの筒状編地の接合部において対向する前後の編地部間を渡る複数の渡り編糸部を備える本発明の筒状編地を編成できる。この渡り編糸部は、前後の編地部間を渡るにあたり、筒状編地を構成する編糸の一部分である編糸部に絡んでいる。そのため、接合部に張力が作用した際、引っ張られる方向に対して編糸同士が絡んでいるポイントが可動して張力を平準化し、接合部全体に張力を分担させることができる。また、本発明の編成方法により編成された筒状編地では、渡り編糸部に繋がる2つの編目の位置が互いにウェール方向にズレているので、渡り編糸部を介して接合部に作用する張力をウェール方向の異なる部分に分散させることができる。そのため、本発明の筒状編地では、引っ張られたときに、接合部の特定の箇所に張力が集中することがなく、接合部の強度の向上を図れる。
また、本発明の編成方法を実施した後、編成で使用した編針の針床に関し前後を入れ替えて本発明の編成方法をもう一度実施することで、筒状編地の前後の編地部に対称に強化された部分が形成される。対称に形成された強化部は、見た目のバランスが良いし、接合部に作用する張力を前後の編地部にほぼ均等に分散させて、接合部の強度を向上させる。
さらに、編糸交差工程において、前後の針床に編糸を掛ける前に、既に係止される編目を予め目移しすることで、後述する実施例1に示すように、接合部の編目の状態をシンプルにできるので、接合部が厚くならない。
実施例1に記載される筒状編地の接合部を強化するための編成方法を経時的に説明する編成工程図である。 図1に引き続く実施例1の編成工程図である。 実施例2に記載される筒状編地の接合部を強化するための編成方法を経時的に説明する編成工程図である。 図3に引き続く実施例2の編成工程図である。
以下、セーターの身頃と袖とを接合する場合を例にして本発明の実施例1、2を説明する。両実施例はいずれも、左右方向に延び、かつ、前後方向に互いに対向する前後二対の針床を有し、前後の針床間で編目の目移しが可能な4枚ベッドの横編機を用いて説明する。以降、この横編機に備わる下部前針床をFD、下部後針床をBD、上部前針床をFU、上部後針床をBUという。
上述した横編機を使用した筒状編地の接合部を強化するための編成方法の一例を、身頃と袖の接合に関し、図1、図2の編成工程図に基づいて説明する。図1、図2中の小文字アルファベットで特定される編針a〜dに係止される編目は身頃の編目の一部であり、編針e〜hに係止される編目は袖の編目の一部である。なお、図1、図2では、説明の便宜上、編針の数を実際の編成に使用する数よりも少なくしている。
図1(A)では、身頃と袖の隣り合う側端の編目であるBDの編針dとe、FDの編針dとeに係止する編目同士を袖全体を目移しして重ね合わせた状態でニット編成を行い、一つの筒にした直後の状態を示す。そして、この状態から、図1(A)中の細線矢印に示すように、BDの編針c,e,gに係止される編目を、対向するFUの編針c,e,gに目移しする。
次いで、給糸部材を左方向に移動させて、図1(A)に示す目移しにより空針となったBDの編針c,e,gに掛け目を形成すると共に、身頃と袖を形成する編目が係止されるFDの編針b,d,fにタック目を形成する(図1(B)参照)。BDの掛け目とFDのタック目は、リブ状に交互に形成され、その際、タック目と掛け目との間を繋ぎ、BDとFDとの間を渡る渡り編糸部1が、身頃と袖を接合した後の筒の一部分である編糸部(交差編糸部2)に交差する(図1(B)のWで示す部分を参照)。この場合、渡り編糸部1が鉛直方向の上方側にある上側編糸、交差編糸部2が渡り編糸部1の下側にある下側編糸になる。
さらに、給糸部材を右方向に移動させて、図1(B)でBDの編針c,e,gに係止される掛け目に対してニット編成して編目3(新規編目)を形成すると共に、BDの編針hに係止される編目にタック目を形成し、渡り編糸部1がズレないようにしている(図1(C)参照)。上記編目3が係止されるBDに対向するFUには、図1(A)でBDからFUに目移しされた編目である編目4(対向編目)が係止されている。
最後に、図2(D)に示すように、FUの編針c,e,gに預けておいた編目4を対向するBDの編針c,e,gに返し、図2(E)の状態とする。このBDの編針c,e,gには、図1(C)で形成した編目3が係止されているので、FUに預けておいた各編目4は、対向する針床にある編目3に重ねられる。
FUに預けておいた編目4をBDの編針c,e,gに目移しすることで、交差編糸部2(下側編糸)が渡り編糸部1(上側編糸)を上下から挟むので、図1(B)において単に交差するだけであった渡り編糸部1と交差編糸部2とが絡み合う(図2(E)のXで示す部分を参照)。
以上のようにして編成された身頃と袖の接合部では、前側編地部(FDの編針に係止される部分)と後側編地部(BDの編針に係止される部分)との間にジグザグに渡り編糸部1が渡っており、この渡り編糸部1と交差編糸部2とが互いに掛け合うように絡み合っている。この渡り編糸部1と交差編糸部2とが絡み合う配置状態により、出来上がった筒状編地を引っ張ったときに、絡み合っているポイントが可動することで、接合部に作用する張力を前後だけでなく斜め方向など、接合部全体で受けることができる。
また、渡り編糸部1に繋がる前側編地部の編目10と後側編地部の編目20とは、図1(C)で行ったニット編成でウェール方向に編目が一つ追加されることにより、筒状編地におけるウェール方向の互いの位置が1つズレている。そのため、接合部に作用する張力が筒状編地におけるウェール方向の同じ高さの部分にかかるのではなく、異なる高さの部分に分散するので、局所的に大きな張力が作用することなく、編糸に過大な負担がかかることもない。
図1および図2を使用して説明した編成を実施した後、編成で使用した編針に関し、針床の前後を対称に入れ替えただけの状態で編成を続けて行っても良い。この場合、まず、図1(A)に示す編成とは前後反対になるように、FDの編針c,e,gの編目を対向するBUの編針c,e,gに目移しする。以降は、図1(B)、図1(C)、図2(D)、図2(E)に示す編成と前後反対の編針を使用して編成することで、前後の編地部に対称に強化された部分が形成される。このような編成を行うと、筒状編地の接合部における見た目のバランスも良いし、接合部に作用する張力も前後の編地部にほぼ均等に分散されるので好ましい。
実施例2では、渡り編糸部1と交差編糸部2とが絡み合う配置状態が、実施例1とは異なる編成方法の一例を図3、図4の編成工程図に基づいて説明する。なお、図3、図4の見方は、図1、図2と同様である。
まず、図3(A)では、図1(A)と同じ1つの筒にした状態から、給糸部材を左方向に移動させて、FUの編針b,d,fに掛け目を形成すると共に、BDの編針c,e,gにタック目を形成する。これらの編目は、リブ状に交互に形成されており、その結果、前後の針床間に渡る渡り編糸部1が形成される。
次いで、給糸部材を右方向に移動させて、身頃と袖の編目であるFDの編針c,e,gに係止される編目に対してニット編成を行う(図3(B)参照)。このニット編成により、前後の編地間を渡る渡り編糸部1が、身頃と袖を接合した後の筒の一部分である編糸部(交差編糸部2)に交差する(図3(B)のYで示す部分を参照)。この場合、渡り編糸部1が下側編糸、交差編糸部2が上側編糸となる。
さらに、図3(C)に示すように、給糸部材を左方向に移動させて、FUの編針b,d,fに形成した掛け目に対してニット編成をし、その掛け目のウェール方向に連続する編目3(新規編目)を形成する。
最後に、図4(D)に示すように、図3(C)でFUの編針b,d,fに形成した編目3を、対向するBDの編針b,d,fに係止される編目4(対向編目)に重ね合わせるように目移しし、図4(E)の状態にする。これら一連の編成により、前後の編地部間を渡り編糸部1が渡ると共に、渡り編糸部1と交差編糸部2とが互いに掛け合うように絡み合うので(図4(E)のZで示す部分を参照)、実施例1と同様に身頃と袖の接合部が強化される。また、本例の場合も、渡り編糸部1に繋がる編目10と編目20とは、筒状編地におけるウェール方向の互いの位置が1つズレているので、接合部に作用する張力を筒状編地の異なる高さの部分に分散させることができる。
さらに実施例2においても、図3、図4で示した編成を実施した後、編成で使用した編針に関し、針床の前後を対称に入れ替えただけの状態で編成を続けることで、身頃と袖の接合部における見た目のバランスが良くなるし、接合部に作用する張力を前後の編地部にほぼ均等に分散させることができる。
その他、実施例1、2では、図1(A)や図3(A)に示すように、身頃と袖とを接合して一つの筒状にした後、本発明の編成方法を実施することにより接合部を強化した。これに対して、図示はしていないが身頃の側端の編目と袖の側端の編目とを重ね合わせただけの状態で、あるいは、単に身頃の側端と袖の側端を隣接させた状態で、本発明の編成方法を使用することもできる。これらの場合、身頃と袖の接合と同時に、接合部の強化も行うことができる。
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、2枚ベッド横編機で実施例に示す編成を実施しても良い。その場合、目移しなどを行うことができるように、一方の針床において編目が係止される編針に対向する他方の針床の編針を空針とすれば良い。その他、編糸交差工程で形成するタック目または掛け目は、一針ごとではなく複数針ごとに形成しても良い。
1 渡り編糸部 2 交差編糸部
3 編目(新規編目) 4 編目(対向編目)
10,20 渡り編糸部に繋がる編目

Claims (4)

  1. 少なくとも前後一対の針床を有し、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を使用して、2つの筒状編地を接合する際、当該接合部を強化するための筒状編地の編成方法であって、
    接合する2つの筒状編地にまたがるように、前後の針床に交互に編糸を掛けて、前後一方の針床の空針に掛け目を、他方の針床において筒状編地を構成する編目が係止される編針の一部にタック目を形成すると共に、前記掛け目とタック目とを繋ぎ、前後の針床間を渡る編糸と、筒状編地を構成する一部の編糸とのうち、一方の編糸が下側編糸、他方の編糸が上側編糸となるように交差させる編糸交差工程と、
    前記掛け目にニット編成を行って、当該掛け目に連続する新規編目を形成するニット編成工程と、
    前記新規編目とこの新規編目に対向する針床の編針に係止される対向編目のいずれか一方の編目を他方の編目に重ね合わせるように目移しすることで、前記下側編糸で前記上側編糸を上下に挟み、下側編糸と上側編糸とを絡ませる交絡工程と、
    を備えることを特徴とする筒状編地の編成方法。
  2. 前記編糸交差工程、ニット編成工程、及び交絡工程の一連の工程を実施した後、さらに、これらの工程で使用した編針の針床に関し、前後を入れ替えてもう一度前記一連の工程を実施することを特徴とする請求項1に記載の筒状編地の編成方法。
  3. 前記編糸交差工程において、前後の針床の編針に編糸を掛ける前に、既に針床の編針に係止されている筒状編地を構成する編目列の一部の編目を、これらの編目に対向する針床の空針に目移しし、
    この目移しにより空針となった編針に対して前記掛け目の形成を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の筒状編地の編成方法。
  4. 少なくとも前後一対の針床を有し、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を用いて編成され、筒状編地同士を接合した接合部を有する筒状編地であって、
    前記接合部において、対向する前後の編地部間を渡る複数の渡り編糸部を備え、
    少なくとも一部の渡り編糸部と、筒状編地を構成する編糸部とが互いに掛け合うように絡んでおり、
    渡り編糸部に繋がる2つの編目の位置がウェール方向にズレていることを特徴とする筒状編地。
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