JPWO2009093634A1 - マツタケ子実体の誘導方法 - Google Patents

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秀之 松下
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志保 飛田
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大嗣 津田
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Abstract

本発明により、トレハロース及び/又は別殺菌した還元性糖類を培地に含有することを特徴とするマツタケ菌床栽培用培地、当該培地を使用したマツタケ菌糸の培養方法並びにマツタケ子実体の菌床栽培方法が提供される。本発明において、還元性糖類としてはグルコース及び/又は果糖が例示される。また、本発明により、マツタケ菌糸がマツタケ菌床栽培用培地の表面に達する前に、培地表面部を除去することを特徴とするマツタケ子実体原基の誘導・形成方法、更にオートミールを含有することを特徴とするマツタケ子実体原基誘導促進物質が提供される。更に、本発明によりマツタケ子実体原基の同定方法が提供される。

Description

本発明は、良好な菌糸成長を行なうことのできるマツタケ(Tricholoma matsutake)菌糸の培養方法、マツタケ菌床栽培用培地、当該培地を用いるマツタケ子実体の菌床栽培方法、マツタケ子実体原基の誘導方法、マツタケ子実体原基の形成方法、及びマツタケ子実体原基誘導促進物質に関する。
マツタケの人工的な栽培は、これまでにさまざまな試みがなされ、多くの報告があるが、再現性よくマツタケを人工栽培したという成功例はない。マツタケの人工的な栽培が非常に困難な理由のひとつは、マツタケは死んだ生物を分解して生きる力、すなわち腐生性を持っておらず、アカマツの根に菌根を作ってアカマツを宿主とし、アカマツから糖類を摂取するという特殊な栄養のとり方をする菌根性のキノコであるためといわれている。
また、マツタケの人工的な栽培において、子実体形成の前段階である菌床表面に現れる子実体原基の形成に関する報告がいくつかなされている。しかしながら、子実体原基と一般に呼んでいる原基様菌糸塊について科学上明確な判断や根拠となる基準はなく、各個人の経験や見た目等の曖昧な判断に委ねられているにすぎない。
本発明の目的は、マツタケの菌床栽培に使用できる菌糸成長の旺盛なマツタケ菌糸の培養方法、当該培養に使用する培地、及び当該培地を使用するマツタケ子実体の人工的な菌床栽培方法、マツタケ子実体原基の誘導方法、及びマツタケ子実体原基の形成方法等を提供することにある。更に、マツタケ子実体原基の同定方法が提供される。
本発明者らは、マツタケの人工的な栽培方法について鋭意検討した結果、培地にトレハロース及び/又は別殺菌した還元性糖類を含有させることで菌糸成長が活性化されること、また、培地にオートミールを添加することによりマツタケ子実体原基形成が誘導・促進されることを見出し、本発明を完成させた。
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は、トレハロース及び/又は別殺菌した還元性糖類をマツタケ菌床栽培用培地に含有せしめることを特徴とする、マツタケ菌床栽培用のマツタケ菌糸培養方法に関する。第1の発明において、還元性糖類としてグルコース及び/又は果糖が使用でき、本発明の態様において、還元性糖類を1〜60重量%培地に含有せしめるマツタケ菌糸の培養方法、またトレハロースを1〜30重量%培地に含有せしめるマツタケ菌糸の培養方法が提供される。
本発明の第2の発明は、トレハロース及び/又は別殺菌した還元性糖類を含有することを特徴とするマツタケ菌床栽培用培地に関する。第2の発明において、還元性糖類としてグルコース及び/又は果糖が使用でき、本発明の態様として、還元性糖類を1〜60重量%含有するマツタケ菌床栽培用培地、またトレハロースを1〜30重量%含有するマツタケ菌床栽培用培地が提供される。
本発明の第3の発明は、本発明の第2の発明のマツタケ菌床栽培用培地を用いることを特徴とするマツタケ子実体の人工的な菌床栽培方法に関する。
本発明の第4の発明は、マツタケ菌糸がマツタケ菌床栽培用培地の表面に達する前に、培地表面部を除去することを特徴とするマツタケ子実体原基の誘導方法に関する。第4の発明において、除去する培地表面部は菌糸が実質的に生育していない表面部であることが好ましい。
本発明の第5の発明は、マツタケ菌糸がマツタケ菌床栽培用培地の表面に達する前に、培地表面部を除去することを特徴とするマツタケ子実体原基の形成方法に関する。第5の発明において、除去する培地表面部は菌糸が実質的に生育していない表面部であることが好ましい。
本発明の第4、第5の発明において、培地表面部の除去により新たに露出した培地表面にフェルト状の菌糸マットの形成が始まり、マットの表面に米粒状の菌糸の塊、すなわち子実体原基が誘導・形成される。この原基は次第に大きくなり、子実体に分化する。
本発明のマツタケ子実体原基の誘導方法又は形成方法において、その培養工程を2段階で実施することが好ましい。例えば、下層の培地として菌床栽培用培地や固形培地を用いて菌糸を培養した後で、その培養物の上に、上層の培地として本発明のマツタケ菌床栽培用培地をのせて更に培養を実施した後に、培地表面部を除去することもできる。また菌糸を培養した培養物の一部を別容器に移し、その上に上層の培地をのせて培養を実施した後で、培地の表面部を除去することもできる。また、これら上層の培地に本発明のマツタケ子実体原基誘導促進剤を含有させてもよい。すなわち、本発明の子実体原基の誘導方法は、下方から上方への菌糸伸長を行う培養手段によって好適に実施される。ここで、下層の培地として本発明のマツタケ菌床栽培用培地又はゲル状の固形培地を使用することが好ましい。下層の培地として本発明のマツタケ菌床栽培用培地又はゲル状の固形培地を使用し、当該培地に種菌としてマツタケ菌糸培養物を接種すると、当該培地に菌糸が蔓延して菌糸層が形成される。次に、その上に前記上層の培地をのせ、更なる培養に供して本発明の子実体原基の誘導方法又は形成方法を実施することにより、再現性よく子実体原基を誘導・形成させることができる。
本発明者らは、菌糸の伸長方向の先端で、子実体原基の誘導・形成への変化が生じることを見出した。すなわち本発明の別の態様において、下層となる培地に種菌を接種し、菌糸が生育した後で、当該下層となる培地の上に上層となる本発明のマツタケ菌床栽培用培地を乗せることによって、下層から上層に菌糸成長させることを特徴とするマツタケ菌糸の下面接種方法、マツタケ子実体原基の誘導方法及び形成方法が提供される。また培地表面の少なくとも一部は種菌で覆わないことを特徴とするマツタケ子実体原基の誘導方法及び形成方法も提供される。この場合には、下記記載の本発明の第6の発明に使用するマツタケ子実体原基誘導促進物質を培地に含有させることが好適である。
また、本発明により、菌床栽培用容器内の空気を新鮮な容器外の空気と無菌的に交換するマツタケ子実体原基の誘導方法が提供される。さらに、本発明により、菌床栽培用容器内の空気を新鮮な容器外の空気と無菌的に交換するマツタケ子実体原基の形成方法が提供される。これらの発明は、前記本発明の第4及び/又は第5の発明と組み合わせて実施されることが好ましい。
本発明の第6の発明は、マツタケ子実体原基誘導促進物質として、オートミール、すなわち燕麦、その加工処理品、及び/又はこれらと同等の活性をもつ物質を使用することを特徴とするマツタケ子実体原基の誘導方法に関する。加工処理品としては、脱穀してもみ穀を除いた燕麦を押しつぶしたもの、細断したもの、粉砕したもの、挽いた粉体などが挙げられ、オートミールの名称で市販されているものを簡便に使用できる。オートミールと同等の活性をもつ物質について、本願明細書に開示の方法に従えば簡便にその活性を測定することができ、本発明に使用できることは当然である。
本発明の第7の発明は、オートミールを含有することを特徴とするマツタケ子実体原基誘導促進剤に関するものであって、マツタケ子実体原基誘導促進剤はオートミール、すなわち燕麦及び/又はその加工処理品を含有していればよい。当該マツタケ子実体原基誘導促進剤を培地などに含有させることができる。
また、本発明によりトレハロース高含有培地を使用するマツタケの人工的な栽培法が提供される。当該トレハロース高含有培地を使用することによりマツタケ菌糸のトレハロース代謝系が活性化され、子実体形成に必要かつ充分な量のトレハロースの供給により、呈味性にも優れたマツタケ子実体の栽培が可能になる。
また、本発明の別の態様として、
マツタケ菌床栽培用培地(A培地という)を、トレハロース及び/又は別殺菌した還元性糖類を含有する培地(B培地という)に接触させる工程を包含するマツタケ菌糸の培養方法であって、前記の工程が
(1)A培地での菌糸培養後、その培養物を固形状のB培地の上に置く、
(2)A培地での菌糸培養後、その培養物の上に固形状のB培地をのせる、
(3)A培地での菌糸培養後、その培養物を液体状のB培地に漬け込む、
(4)A培地での菌糸培養後、その培養物に液体状のB培地を添加する、及び
(5)A培地での菌糸培養後、その培養物を細断し、別のA培地、ならびに液体状及び/又は固形状のB培地と混合する、
からなる工程群より選択される少なくとも1つの工程であることを特徴とするマツタケ菌糸の培養方法を提供する。
また、更に本発明の別の態様として、
A培地の下方、上方、及び/又は内部にB培地を接触させる工程を包含するマツタケ菌糸の培養方法であって、前記の工程が
(6)A培地を固形状のB培地の上にのせ、A培地にマツタケの種菌を接種し培養する、
(7)A培地にマツタケの種菌を接種した後で、A培地の上方に固形状のB培地をのせ培養する、
(8)A培地に、細断した固形状のB培地を混合した後で、マツタケの種菌を接種し培養する、
(9)鹿沼土、赤玉土、ピートモス、腐葉土、バーミキュライト、バーク堆肥からなる群より選択される少なくとも1つの基材の上にのせたA培地に、液体状のB培地を添加し、当該基材の層に液体状のB培地を充分保持させた後で、マツタケの種菌を接種し培養する、及び、
(10)固形状のB培地にマツタケの種菌を接種して培養し、その上にA培地をのせて培養する
からなる工程群より選択される少なくとも1つの工程であることを特徴とするマツタケ菌糸の培養方法を提供する。当該培養方法により、マツタケの原基を誘導することが可能となる。
上記(1)〜(10)の工程に使用されるB培地中の糖濃度は、好適には、還元性糖類としてグルコース及び/又は果糖を使用する場合は1〜60重量%、トレハロースを使用する場合は1〜30重量%の範囲から選択すればよい。また液体培地として調製した後で、菌床栽培用培地に含有させてもよい。なお、A培地は本発明の第2の発明のマツタケ菌床栽培用培地であってもよく、またその他の培地でもよい。
また、本発明の別の態様として、マツタケ菌床栽培用培地で菌糸を培養した後に、窒素、リン及びカリウムを含有する植物栽培用液体肥料、又は当該液体肥料及び糖類を含有する液体状の培地を菌床栽培用培地に接触させる工程を包含する、マツタケ菌糸の培養方法も提供される。糖類としては還元性糖類及び/又はトレハロースが例示され、特に好適にはグルコース及び/又はトレハロースが例示される。当該液体肥料としては、ハイポネックス(登録商標:ハイポネックスジャパン社製)等が例示される。
また、本発明の別の態様として、培養工程中に菌糸の伸長を低下もしくは停止させる工程を包含するマツタケ子実体の誘導方法が提供され、当該菌糸の伸長の低下もしくは停止の期間にマツタケ子実体への分化が惹起される。当該菌糸の伸長を低下もしくは停止させる条件としては、例えば、培地水分含量を低下させる条件、培養温度を低温にシフトさせる条件等が挙げられる。菌糸の伸長を低下もしくは停止させる期間は、特に限定はないが、1〜60日間、更に好適には10〜30日間であることが好ましい。その後、菌糸の伸長を再開させる条件、例えば培地水分含量を上昇させる条件、培養温度を適温にシフトさせる条件等を上記マツタケ子実体の誘導方法に組み込むことによりマツタケ子実体への分化が進行する。
更に、本発明によりオートミール高含有培地を使用するマツタケ子実体原基の形成方法が提供される。当該オートミール高含有培地を使用することによりマツタケ子実体原基形成が盛んとなり、菌糸伸長方向の先端で変化が生じる。また粒上のオートミールを培地に添加した場合、培地表面のオートミール粒上及び粒付近でマツタケ子実体原基形成が盛んとなり、マツタケ子実体の栽培が可能になる。
本発明による前記マツタケ菌糸の培養方法により、マツタケ菌糸を菌床栽培用培地の表層から外部に向けて旺盛に噴き出させることができ、その高密度培養が達成されて、マツタケ子実体栽培に好適なマツタケ菌床栽培用培養物が提供される。また、前記マツタケ子実体原基の誘導方法及び前記マツタケ子実体原基の形成方法により、これまで困難であったマツタケの子実体原基を誘導・形成させることができる。
また本発明により、マツタケpriA遺伝子発現を指標にする、科学的な根拠に基づくマツタケの子実体原基の同定方法が提供される。当該発明により子実体誘導を行う際の菌床培養又は培地組成等の条件を遺伝子発現量の変化から科学的に最適化する事が可能になるので、本発明はマツタケの人工的な栽培の確立に極めて有用になる。
以上、本発明により、マツタケの菌床栽培に使用できる菌糸成長の旺盛なマツタケ菌糸の培養方法、当該培養に使用する培地、マツタケ子実体原基の誘導方法、マツタケ子実体原基の形成方法及び当該培地を使用するマツタケ子実体の人工的な菌床栽培方法が提供される。また、本発明により、これまで困難であったマツタケの子実体原基を誘導し、形成させる方法、及びマツタケ子実体原基誘導促進物質が提供される。更に、マツタケ子実体原基の同定方法が提供される。
以下に本発明について詳細に説明する。
本願明細書において、マツタケ菌床栽培用培地とは、キノコの菌床栽培に使用される菌床栽培用培地を示し、例えば下記に示す公知の培地基材、栄養材、及びその他成分で構成される菌床栽培用培地を示す。当該菌床栽培用培地は、下記の培地調製、容器詰め、及び殺菌工程を経て調製することができる。
培地調製とは、キノコの人工的な菌床栽培に使用される培地基材、栄養材、及びその他成分を適宜計量、混合、かく拌し、マツタケの菌床栽培に適した水湿潤状態になるよう加水することによって水分調整するまでの工程をいう。培地基材として、例えば、針葉樹オガクズ、広葉樹オガクズ、チップダスト、ヤマゴケ、ミズゴケ、コーンコブ、綿実殻、バガス、アルファルファ、ビートパルプ、モミガラ、チモシー、オカラ、マメカワ、シリカゲル、多糖類ゲル、高吸水ポリマー、キノコ原木栽培後の廃ホダ木、キノコ菌床栽培後の廃菌床、又はキノコ菌床栽培中の菌糸が蔓延した菌床培地の凍結乾燥物等を使用してもよいが、好適にはスギオガクズを使用する。また、吸水性の高い基材であれば上記以外の材料でもよい。更に、吸水性の良否にかかわらず、当該培地に適宜栄養源等を添加することができる。これらはキノコの人工的な栽培に用いることができるものであれば特に限定はなく、栄養源としてトウモロコシの実、米糠、小麦フスマ、コーンブラン、ホミニーフィード、バンサイ、オカラ、マメカワ、オートミール、松の実、糖類、例えば後述の還元性糖類、トレハロース、マルトシルトレハロース、スクロース、及び/又は可溶性デンプン等を使用することができ、好適にはトウモロコシの実及び/又はオートミール、特に好適にはトウモロコシの実の新鮮物、乾燥物、粉砕物、圧ペン物、加熱圧ペン物、オートミール、及び/又は糖類を使用する。更に、その他成分としてマンニトール等の糖アルコール類、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸カルシウム、クエン酸、及び/又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を添加することもできる。また、上記培地に加えて、その他成分として種々のキノコ子実体の乾燥粉末、マツタケ菌糸の培養物、鹿沼土、赤玉土、ピートモス、腐葉土、バーミキュライト、及び/又はバーク堆肥などの基材を適宜添加するか、もしくは培地の底に敷いて使用することもできる。
マツタケ子実体原基誘導促進物質としてオートミールを培地に添加する場合、その効果を発揮する量を添加すればよく、好ましくは1〜60重量%、好適には3〜50重量%のオートミールをマツタケ子実体原基発生用固形培地に添加することが好ましい。固形培地にオートミール、例えば未粉砕物、粉砕物、あるいはそれらの混合物を添加することにより、原基形成が促進され、培地表面のオートミール粒上あるいはその周辺で原基の誘導・形成が顕著になる。
また、菌床栽培用培地の水分含量は、特に限定はないが、例えば40〜80重量%、好適には45〜75重量%、より好適には50〜70重量%であってもよい。ただし、培地中のマツタケの菌糸の生育が可能な程度の空隙と水分を保持でき、かつ培地が乾燥しない水分含量に適宜調整することが好適である。水分調整した培地の性状を見て、これらの水分含量を適宜設定すればよい。
容器詰めとは、培地をキノコの栽培ビン、栽培袋、栽培箱又はフラスコに詰める工程である。具体的には、通常0.1〜10リットル容の耐熱性広口培養ビン又はフラスコなどに、前記のとおり調製した培地を、例えば1100mLビンの場合であれば、550〜900g、好ましくは600〜850g圧詰し、更に、圧詰した培地に口径1〜15cm程度の穴を1ないし複数個開け、打栓する工程をいう。
殺菌とは、培地中のすべての微生物を死滅させる工程であって、通常、蒸気による常圧殺菌で98〜100℃、4〜12時間、又は高圧殺菌で101〜125℃、好ましくは118℃、30〜180分間行われる。
また、本願明細書において液体培地は、マツタケの培養に使用される液体培地であれば特に限定はなく、トレハロース、後述の還元性糖類、マルトシルトレハロース、スクロース、及び/又は可溶性デンプン等を糖類として含有し、更に酵母エキス、ポリペプトン、大豆ペプトン、麦芽エキス、バレイショデンプン、ヤマイモ乾燥粉末、種々のキノコ子実体乾燥粉末、マツタケ菌糸培養物、ポテトデキストロース、マンニトール等の糖アルコール、L−オルニチン、L−グルタミン、L−メチオニン、D−イソロイシン、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウム、トウモロコシの実の粉末、コーンスティープリカー、オートミール粉末、種々の銅塩(例えば、クエン酸銅、フタル酸銅、酒石酸銅、硫酸銅、塩化銅等)、種々の鉄塩(例えば、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化鉄、グルコン酸鉄、乳酸鉄、硫酸鉄、リン酸鉄等)、種々のマンガン塩(例えば、塩化マンガン、硫酸マンガン、酢酸マンガン、グルコン酸マンガン、等)、種々の亜鉛塩(例えば、乳酸亜鉛、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等)、多糖分解酵素(アミラーゼ、セルラーゼ、グルカナーゼ、キシラナーゼ等)、α−ピネン、及び/又はコラーゲンペプチド等を含有する液体培地が例示される。
また、本願明細書において、固形培地としては、前記の液体培地を固化剤で固形化した培地、好適には流動性のないゲル状の固形培地が例示される。固化剤としては、例えば寒天、マンナン、ジェラン、ゼラチン、ケルコゲル等が例示される。前記固形培地は、前記液体培地に更に固化剤を添加することにより調製することができる。当該固形培地中の固化剤の含有量は、液体培地が固形化すれば特に限定はないが、例えば寒天を使用した場合、0.5〜3重量%、好適には1〜2重量%であることが好ましい。
本発明により、トレハロース及び/又は別殺菌した還元性糖類を含有するマツタケ菌床栽培用培地(以下、本発明の培地と称する)が提供される。本願明細書において別殺菌とは、培養に供される還元性糖類以外の栄養成分(窒素源となる栄養成分等)及び培地原料とは別に、培養に供される還元性糖類に殺菌処理を施すことを意味する。本発明において還元性糖類として、還元性を示す糖類であれば特に限定はないが、還元性を示す単糖類及び/又は二糖以上の糖類を使用してもよい。還元性を示す単糖類として、例えばグルコース、果糖、キシロース、マンノース、ガラクトース、ラムノース、アラビノース及び/又はフコース等を使用してもよく、特に好適にはグルコース及び/又は果糖を使用してもよい。還元性を示す二糖以上の糖類として、例えば、ラクトース、マルトース、イソマルトース、セロビオース、マルトトリオース、マルトテトラオース及び/又はマルトペンタオース等を使用してもよい。これらの還元性糖類の中でも、グルコース、果糖、及び/又はマルトースが本発明に最も好適である。
本発明の培地にトレハロースを添加する場合、前記マツタケ菌床栽培用培地の製造において、トレハロースを水性溶媒、例えば水道水又はイオン交換水などに溶解させたものを添加するか、又はそのまま添加し、混合したものを、容器詰めし、殺菌を施すことができる。
本発明の菌床栽培用培地に別殺菌した還元性糖類を使用する場合、前記マツタケ菌床栽培用培地の調製とは別に、当該還元性糖類を容器中にて水性溶媒、例えば水道水又はイオン交換水などに溶解して調製し、前記殺菌条件もしくは同等の効果を示す他の手段(例えば無菌ろ過等)で殺菌した後で、マツタケ菌床栽培用培地に含有させてもよい。
本発明の培地がトレハロースを含有する場合、その濃度としては、1〜30重量%、好適には2〜30重量%が例示される。また、本発明の培地が別殺菌した還元性糖類を含有する場合、その濃度としては、1〜60重量%、好適には2〜50重量%、特に好適には3〜40重量%が例示される。本発明の培地を使用してマツタケ菌糸の培養を行った場合、菌糸成長が旺盛である。特に、本発明の培地として別殺菌した還元性糖類を含有する培地を使用して菌糸培養を行った場合、別殺菌しない場合と比較して菌糸成長が明らかに旺盛である。さらに、培地中の還元性糖類の含有量が高濃度である場合、その効果の差は顕著となる。また、本発明の培地を用いてマツタケ菌糸の培養を行う際に、好適には、その種菌を調製するための前培養で使用する培地中の糖類は、本発明の培地にて使用するものと同じ糖類であることが好ましい。
前記の本発明の培地を使用することにより、菌糸層が厚く、菌糸成長の早いマツタケ菌糸の培養が可能となる。これまで、マツタケ菌糸の培養において高濃度の低分子糖類(単糖、二糖など)を使用することは、培地の浸透圧を上げてマツタケ菌糸の生育を阻害すると考えられていた。しかし、例えばグルコースや果糖を使用する場合、その他の培地成分と別に殺菌すれば高濃度でもマツタケ菌糸の生育を阻害しないばかりか、むしろ菌糸の増殖を促進することを本発明者らは初めて見出した。また、トレハロースのような非還元性の糖の場合はその他の培地成分と混合して加熱殺菌した場合でも、また別殺菌の場合でも、高濃度で菌糸の増殖が促進されることを本発明者らは初めて見出した。すなわち、本発明により、培地に糖成分を高含有し、高効率なマツタケの菌糸培養を可能にする培地が提供され、菌床栽培用培地に厚い菌糸層を有する培養物が得られる。一般にキノコ類は、それぞれのキノコにとって必要な菌糸量以上の菌糸塊となった場合に子実体を形成する。すなわち、菌糸層が厚いことは菌糸量が多いということを意味し、本発明の培地を使用してマツタケ菌糸の培養を行なうことにより、マツタケ子実体を栽培しうる。
本発明により、前記の本発明のマツタケ菌床栽培用培地を用いたマツタケ子実体の菌床栽培方法が提供される(以下、本発明の栽培方法と称する)。本発明のマツタケ菌糸の培養方法又は本発明の栽培方法に使用するマツタケ菌株に特に限定はなく、例えば、天然産のマツタケ子実体から分離されたマツタケ菌株又は公知のマツタケ菌株(例えば、NRBC 306040、NRBC 30773、NRBC 32806、もしくはNRBC 33136等)を使用してもよい。
本発明の栽培方法において、マツタケ培養物を種菌として使用してもよい。以下、本発明の栽培方法において使用されうる種菌について説明する。本発明の栽培方法において使用する種菌として液体種菌を使用する場合、公知のキノコの菌糸培養用液体培地、例えば前述の液体培地を使用できる。好適にはトレハロース及び/又は別殺菌した還元性糖類を含有する液体培地にマツタケの菌糸を無菌的に接種し、培養して、種菌が製造される。培養温度としては、菌糸の成長が行われれば特に限定はなく、例えば5〜40℃、好適には10〜35℃、更に好適には15〜30℃が例示される。液体種菌の培養は、フラスコやジャーファーメンター等を用いて実施することができる。しかし、大量栽培の場合、より容量が大きく培養日数を短縮できる観点からジャーファーメンター培養が好適である。培養期間は、使用する菌株又は培養スケールによって異なってもよく、特に限定されるものではないが、例えば5〜100日間であってもよい。培養方法としては、マツタケの菌糸が成長すれば特に限定はないが、静置培養又は振とう培養が挙げられる。あるいは、培地内部でスターラーバーを回転させて培地をかく拌し、培養を実施してもよい。
また、本発明の栽培方法に使用する種菌として固体種菌を使用する場合、公知のキノコの菌床栽培に用いられる培地、好適には前記のマツタケ菌床栽培用培地にマツタケの菌糸を無菌的に接種し、培養することで得られた培養物を使用してもよい。培養温度としては、菌糸の成長が可能であれば特に限定はなく、例えば5〜40℃、好適には10〜35℃、更に好適には15〜30℃が例示される。培養期間は使用する菌株又は培養スケールによって異なってもよく、特に限定されるものではないが、例えば20〜500日間であってもよい。また、本発明の栽培方法において使用する種菌について、シャーレ上で培養した培養物を固体種菌として使用することもできる。
このようにして培養したマツタケの液体培養物及び/又は固体培養物を種菌として本発明の栽培方法に用いることができる。
以下、一例としてビン栽培による本発明の栽培方法について述べるが、その方法は、培地調製、容器詰め、殺菌、接種、培養、芽出し、生育、及び収穫の各工程からなる。次にこれらを具体的に説明するが、本発明はこの説明の内容に限定されるものではない。
培地調製は、前述の本発明の培地調製を参考に実施することができる。容器詰め、及び殺菌についても前述の本発明の菌床栽培用培地の容器詰め、及び殺菌工程を参考に実施することができる。別殺菌された還元性糖類を使用する場合、当該殺菌工程の後に別殺菌された還元性糖類が添加される。このようにして得られた本発明の培地に、糖類やその他栄養源を含有する液体培地又は固体培地を更に添加又は設置することもできる。ここで添加又は設置される液体培地及び固体培地は、トレハロース及び/又は別殺菌した還元性糖類を含有することが好ましい。また、本発明の培地の底部に、鹿沼土、赤玉土、ピートモス、腐葉土、バーミキュライト、及び/又はバーク堆肥などを敷いておくこともできる。
接種は、殺菌後に放冷させた培地に前記種菌を無菌的に植え付ける工程である。培地への種菌接種量は、特に限定はないが、例えば1リットルの培地に液体種菌を接種する場合、5〜500mL、固体種菌を使用する場合、5〜500gの範囲から適宜選択すればよい。
種菌を接種した培地を培養工程に供することによって、菌糸の生育、熟成が行なわれる。通常、種菌接種済みの菌床栽培用培地に、温度5〜40℃、好適には10〜35℃、更に好適には15〜30℃、湿度50〜80%で菌糸を蔓延させ、更に熟成させる。培養工程は、培地又は培養ビンの容量により適宜設定でき、1100mLビン栽培の場合、通常50〜500日間、好ましくは300日間前後行われる。また、菌糸培養中に、適当なタイミングで流水ポンプ等により容器内の空気を交換してもよい。更に培養中に、別殺菌したグルコース、果糖、及び/又はトレハロース等の栄養分を培地に新たに添加してもよい。
本発明の培養工程において、当該工程中に菌糸の伸長の低下もしくは停止させる操作を加えてもよく、例えば、培地水分含量を低下させる条件、及び/又は培養温度を低温にシフトさせる条件等を組み込んでもよい。菌糸の伸長を停止させる期間は、特に限定はないが、1〜60日間、更に好適には10〜30日間である。その後、菌糸の伸長を再開させる操作、例えば培地水分含量を上昇させる条件、培養温度を適温にシフトさせる条件等を組み込むことにより培養工程を継続することができる。
芽出し工程は、マツタケの子実体原基を誘導・形成させる工程である。芽出しを促進するために、培地表面部の除去、菌掻き、加水、加湿、光照射、覆土、及び/又は超音波処理などを実施することができる。また本発明のマツタケ子実体原基誘導促進物質を使用してもよく、この場合、前記の物理的な工程の有無にかかわらず、芽出しを促進することが可能である。
覆土材として、赤玉土、鹿沼土、バーミキュライト、石英、パーライト、ガラスビーズ等の無機鉱物質、畑土、森林土壌、山土等の土壌類及び/又はオガクズ、好ましくはスギオガクズ等を使用してもよい。これらの覆土材は単独で使用してもよく、また2種類以上を混合して使用してもよい。また、これらの覆土材はそのまま、もしくは水又は各種栄養源、例えば後述の植物栽培用液体肥料を溶解した水と混合した後で殺菌してから使用される。
生育工程とは子実体原基から成熟子実体を形成させる工程であって、通常5〜25℃、好ましくは10〜20℃で湿度60〜100%、好ましくは70〜100%の条件下、10〜50日間栽培を実施することである。生じた成熟子実体を収穫することによって、生育工程が終了する。なお子実体原基誘導・形成後に培養温度を2〜10℃の範囲で低温シフトさせてもよい。
以上、本発明の栽培方法をビン栽培により説明したが、本発明はマツタケの菌床栽培に広く適用できるものであって、上記ビン栽培に限定されるものではない。
本発明の子実体原基の誘導方法は、例えば、前記のマツタケ菌床栽培用培地を調製し、容器に詰め、殺菌工程、前述の接種、培養工程に供し、更に培地表面部を除去することにより行われる。ただし、ここで使用されるマツタケ菌床栽培用培地中のトレハロース及び/又は別殺菌した還元性糖類の含有の有無は、特に限定されるものではない。
当該誘導方法において培養工程を2段階で行う場合、下層の培地でマツタケ菌糸を培養した後に上層の培地を添加して更に培養を実施すると、マツタケ菌糸は下層の培地と上層の培地の境界面から上方に向かって伸長してゆく。その際、上層の培地の水分が低下し菌糸の生育が遅くなることがあるが、その場合、適宜、水、植物栽培用液体肥料、及び/又は液体培地を1回もしくは複数回(1、2、3、4又は5回、好適には2又は3回)添加すればよい。ここで、植物栽培用液体肥料としては、例えば後述の植物栽培用液体肥料が例示される。
当該誘導方法において、除去される培地表面部は、菌糸が実質的に生育していない表面部であることが好ましい。この場合、本発明を特に限定するものではないが、培地表面部はマツタケ菌糸が培地表面に露出する程度に除去される。このような操作を施すことにより、菌床面にてマツタケ原基を誘導することができる。また、当該培養方法において、マツタケ菌糸の培養条件は、菌糸の成長が可能であれば特に限定はなく、例えば前述の培養工程と同様の条件であってもよい。
前記の培地表面部が除去された後で、更に、5〜30℃の範囲で培養を実施することにより子実体原基が誘導される。その後は、前記生育工程と同様に培養を実施し、子実体形成を促すことができる。また原基形成誘導後は、菌床面に対して適宜覆土を行うこともできる。覆土材としては、前述の芽出し工程に使用されるものが使用できる。
また、本発明では、別の態様であるマツタケ菌床栽培用培地(A培地)をトレハロース及び/又は別殺菌した還元性糖類を含有する培地(B培地)に接触させる工程を包含するマツタケ菌糸の培養方法において、例えばB培地としてトレハロースを含有する液体培地を調製する場合、前記の液体培地の調製法に従って、前記培地成分から適宜選択される培地成分及びトレハロースを水性溶媒、例えば水道水又はイオン交換水と混合し、更に殺菌処理を施して調製する方法が例示される。また、本発明の培地が別殺菌した還元性糖類を含有する場合、前記培地成分から適宜選択される培地成分を混合したもの、及びこれとは別に還元性糖類を水性溶媒、例えば水道水やイオン交換水に溶解したものを個別に殺菌処理した後で、無菌的に混合して培地調製を行うこともできる。なお、本願明細書において、ゲル状であっても流動性を有する軟性ゲル状のB培地は、液体培地に含まれる。
B培地として固形培地を調製する場合、例えば前記のB培地として調製した液体培地に固形剤を添加することにより得てもよい。
前記B培地の液体培地及び/又は固形培地をマツタケ菌床栽培用培地と接触させるために、菌床栽培用培地をゲル状の固形培地の上に置く、菌床栽培用培地の上にゲル状の固形培地をのせる、菌床栽培用培地を液体培地に漬け込む、菌床栽培用培地に液体培地を添加する、細断した菌床栽培用培地を固形培地(ゲル状の固形状培地を含む)及び/又は液体培地と混合する等の手段を実施することができる。更に、後述のマツタケ種菌を前記の接触手段を実施した後のマツタケ菌床栽培用培地に接種してもよく、前もって種菌を接種したか又は更に培養を行った菌床栽培用培地を他の培地と接触させてもよい。
また、A培地において、トレハロース及び/又は別殺菌した還元性糖類の含有の有無は、特に限定されるものではない。
本発明の培養方法の培養条件は、菌糸の成長が可能であれば特に限定はなく、例えば前述の本発明の栽培方法の培養工程と同様の条件であってもよい。
上記マツタケ菌糸の培養方法によりマツタケ菌糸をマツタケ菌床栽培用培地の表層から外部に向けて旺盛に噴き出させることができ、その高密度培養が達成される。菌糸培養におけるこのような現象は通常の菌床培地での培養では確認されるものではなく、本発明者らにより人工的に誘導されるものである。また、当該培養方法により、マツタケの子実体原基を誘導することが可能となる。
また、菌糸を培養した本発明のマツタケ菌床栽培用培地に、窒素、リン及びカリウムを含有する植物栽培用液体肥料、又は当該液体肥料及び糖類を含有する液体培地を接触させる工程を包含するマツタケ菌糸の培養方法において、当該液体培地に含有される糖類としては前述の還元性糖類及び/又はトレハロースが例示され、特に好適にはグルコース及び/又はトレハロースが例示される。また当該液体培地としては、当該液体肥料又は当該液体肥料及び糖類を水性溶媒、例えばイオン交換水又は水道水などに溶解させたもの、もしくはこれにリン酸二水素カリウム、硫酸マグネシウム、クエン酸銅、フマル酸鉄、塩化マンガン、及び/又は乳酸亜鉛等の無機塩を更に添加したものが例示される。当該液体用肥料として、好適にはハイポネックス(登録商標)が使用できる。当該方法におけるマツタケ菌糸の培養条件は、菌糸の成長が可能であれば特に限定はなく、例えば前述の培養工程と同様の条件であってもよい。また、当該液体培地の接触は、1回もしくは複数回(1、2、3、4又は5回、好適には2又は3回)実施することができる。当該マツタケ菌糸の培養方法により、マツタケ菌糸を菌床栽培用培地の表層から外部に向けて旺盛に噴き出させることができ、その高密度培養が達成される。
本発明者らは、マツタケpriA遺伝子発現を指標とする、科学的な根拠に基づくマツタケの子実体原基の同定方法を提供する。当該方法により子実体誘導を行う際の菌床培養や培地組成等の条件を遺伝子発現量の変化から科学的に最適化する事が可能になるので、当該方法はマツタケの人工的な栽培の確立に極めて有用である。
以下に本発明を実施例をもって示すが、本発明はこれらの実施例の範囲のみに限定されるものではない。なお、特に限定しない限り、以下%は重量%を意味する。
実施例1
下記のA及びBの溶液(イオン交換水に溶解)を調製した。
A 糖溶解液(20%トレハロース、20%グルコース、もしくは20%果糖)
B 0.4%酵母エキスD−3(日本製薬社製)、0.2%ポリペプトンS(日本製薬社製)、1%リン酸二水素カリウム、0.1%硫酸マグネシウム、及び2%ケルコゲル(大日本住友製薬社製)
このAの糖溶解液の適当量及び45mLのBの溶液を混合し、トレハロース、グルコース、もしくは果糖がそれぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10%となるように、各成分を適宜イオン交換水と混合し、最終的に90mLの培地を調製した。120℃、20分間での殺菌処理後に、それぞれを3枚のシャーレに分注し、平板培地を作製した。
また、AとBの溶液をそれぞれ別容器で120℃、20分間殺菌処理した後で、AとBの溶液を前記と同様に混合し、それぞれを3枚のシャーレに分注し、平板培地を作製した。この際の分量の調整には滅菌イオン交換水を使用した。
天然産のマツタケ子実体から分離したマツタケ菌株の平板培養物(平板培養菌糸)〔培地組成:2%グルコース、0.1%酵母エキスNT(興人社製)、0.1%ハイチオンエキス(興人社製、酵母エキスの一種)、0.1%コーンスティープリカー(和光純薬社製)、0.02%L−オルニチン、0.3%リン酸二水素カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、2.5ppmクエン酸銅、2.5ppmフマル酸鉄、0.5ppm塩化マンガン、0.5ppm乳酸亜鉛、2%圧ペントウモロコシ(飯坂精麦社製)粉末、及び2%寒天(ナカライテスク社製)〕からカップドロッパーを用いて培養物片(直径6mm)を抜き出し、得られた培養物片1つを上記の平板培地の中央に接種し、25℃で60日間静置培養を行った。
このようにしてトレハロース含有培地、別殺菌したグルコース又は果糖含有培地を用いた場合、厚い菌糸層を有するマツタケ菌糸の培養が可能となることが認められた。
実施例2
(1)種菌の調製
5%トレハロース、5%ハローデックス(林原社製、マルトシルトレハロース)、0.15%酵母エキスNT、0.15%ハイチオンエキス、0.1%ポリペプトンS、0.02%L−オルニチン、0.02%L−グルタミン、0.02%L−メチオニン、0.3%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、1.5%圧ペントウモロコシ粉末、0.5%オートミール(クエーカー・オーツ社製)粉末、2.5ppmクエン酸銅、2.5ppmフマル酸鉄、0.5ppm塩化マンガン、及び0.5ppm乳酸亜鉛となるように各成分を900mLのイオン交換水と混合したものを、スターラーバーを入れた2リットルの三角フラスコに入れ、120℃で20分間オートクレーブ処理した。
なお、事前に液体培地〔組成は上記記載の培地に0.5%オートミール粉末及び1.6kUα−アミラーゼ(アスペルギルス オリゼ由来、シグマ社製)を添加したもの〕にマツタケ菌株の平板培養菌糸をくり抜いたもの(直径6mm)1個を接種し、マツタケ菌糸を培養した。得られたマツタケ菌糸培養物80mLを上記で調製した培地に接種し、25℃、500rpmで6日間培養して、種菌とした。マツタケ菌株として、天然産のマツタケ子実体から分離した7つの菌株(0021、0044、0107、0117、0121、2006−0047、2006−0051)を使用した。
(2)菌床培地の調製
約6ヶ月堆積したスギオガクズ乾燥物550mL(78g)、圧ペントウモロコシ粉末165g、及びオートミール200gを混合した。この混合物に、360mLのイオン交換水、25gのトレハロース(固形培地における濃度は3%)、1.8gのリン酸水素二カリウム、0.36gのリン酸二水素カリウムの混合物を添加、かく拌し、菌床培地とした。
別に、1.5リットルの鹿沼土を5リットルの三角フラスコの底に敷き、その上に、上記の菌床培地をのせ、中央に直径約10cmの穴をあけ(鹿沼土層には至らない穴)、120℃で2時間オートクレーブ処理した。
(3)添加用液体培地の調製
7%トレハロース、0.1%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.02%L−オルニチン、0.04%L−グルタミン、0.01%L−メチオニン、0.001%D−イソロイシン、0.5%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、及び0.05%硫酸マグネシウムとなるように各成分を300mLのイオン交換水に混合し、120℃で20分間オートクレーブ処理して、添加用液体培地とした。
(4)培養の開始
実施例2−(2)に記載の菌床培地のオートクレーブ処理物に、実施例2−(3)に記載の添加用液体培地を全量添加した後で、実施例2−(1)に記載の種菌を500mL接種し、20℃で培養を開始した。培養開始時、鹿沼土層は液体に浸る状態であった。培養開始後22日目に100秒間流水ポンプにより吸引して、容器内の空気を交換した。
(5)培養経過
培養開始後、菌糸が伸び始め、培養開始後30日目でマツタケ菌糸が培地全体に蔓延するとともに、培地表層では旺盛な菌糸の噴き出しが観察された。
実施例3
(1)種菌の調製
0.1%グルコース、0.1%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.3%リン酸二水素カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、2%圧ペントウモロコシ粉末、2.5ppmクエン酸銅、2.5ppmフマル酸鉄、0.5ppm塩化マンガン、及び0.5ppm乳酸亜鉛となるように各成分を1リットルのイオン交換水に混合したものを、スターラーバーを入れた2リットルの三角フラスコに入れ、120℃で20分間オートクレーブ処理した。この培地に、平板培地で培養したマツタケ0117株の平板培養菌糸をくり抜いたもの(直径6mm)10個を接種し、20℃、500rpmで22日間培養し、種菌とした。
(2)菌床培地の調製
約6ヶ月堆積したスギオガクズ乾燥物1.5リットル(214g)、圧ペントウモロコシ粉末20g、オートミール粉末10g、松の実200gを混合した。この混合物に、156mLのイオン交換水、20gのトレハロース(固形培地中の濃度3.1%)、20gのマルトース(固形培地中の濃度3.1%)、及び1mLの4種の金属塩の混合液(0.05%クエン酸銅、0.05%フマル酸鉄、0.01%塩化マンガン、0.01%乳酸亜鉛)を混合したものを添加、かく拌し、5リットルの三角フラスコに詰め、その中央に直径約10cmの穴(容器底から約1cmまで)をあけ、122℃で2時間オートクレーブ処理した。
(3)培養の開始
実施例3−(2)に記載の菌床培地のオートクレーブ処理物に、実施例3−(1)に記載の種菌を320mL接種し、20℃で培養を開始した。培養開始後86日目、100日目、118日目、132日目、146日目に流水ポンプで100秒間容器内の空気を交換した。培養開始後148日目でマツタケ菌糸は培地全体の約6割に蔓延した。
(4)−1 ホンシメジ菌床培養物の凍結乾燥物の調製
PGY液体培地(組成:グルコース2.0%(w/v)、ペプトン0.2%(w/v)、酵母エキス0.2%(w/v)、KHPO0.05%(w/v)、MgSO・7HO0.05%(w/v))100mLに、Lyophyllum shimeji La 01−27株(FERM BP−10960)の菌糸を接種し、25℃で7日間振とう培養(100rpm)した。培養物2mLを200mLの同培地に植え継ぎ、7日間振とう培養(100rpm)を行った。その後、更に培養物の全量を160リットルの同培地が入った200リットル容ジャーファーメンター(小松川製作所製)に接種し、6日間かく拌培養(かく拌速度:100rpm、通気量25リットル/分)を行い、液体種菌を調製した。一方、圧ペントウモロコシ(飯坂精麦社製)及び針葉樹鋸屑のスギオガ〔(有)トモエ物産〕を乾物重量比で2:1(圧ペントウモロコシ:針葉樹鋸屑)に混合し、培地の水分が最終的に62重量%になるように水を加え十分にかく拌・混合したものを、ポリプロピレン製の広口培養ビン(1100mL)にそれぞれ入れ(ビン及びフタを含めた重量合計800g)圧詰した。圧詰物表面の中央に口径2.0cmの孔、及び圧詰物表面の中央を中心とした直径4cmの円周上に均等に4つの口径1cmの孔(それぞれ深さが10cm程度)を開けた。培養ビンにキャップをし、118℃で30分間高圧蒸気殺菌を行い、20℃まで放冷したものを菌床栽培用培養基(固形培地)とした。この固形培地に上記の液体種菌を約25mL接種し、暗所にて温度20℃、湿度70〜75%の条件下、約112日間培養し、培地全体に菌糸が蔓延した子実体形成前のホンシメジ菌床培養物を調製した。その後、上記で調製したホンシメジ菌床培養物を掻き出し、凍結乾燥させ、得られた乾燥物を粉砕機で粉砕することにより、ホンシメジ菌床培養物の凍結乾燥物を調製した。
(4)−2 培養物をのせるゲルの調製
10%トレハロース、0.1%コーンスティープリカー、3%ホンシメジ菌床培養物の凍結乾燥物(実施例3−(4)−1で調製)、0.5%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.7%ケルコゲルとなるように各成分を750mLのイオン交換水と混合し、120℃で20分間オートクレーブ処理した後で、5リットルの三角フラスコ内で固化させた。別に、10%トレハロース、0.1%コーンスティープリカー、0.5%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.7%ケルコゲルとなるように各成分を750mLのイオン交換水と混合したものを120℃で20分間オートクレーブ処理したものを上記の5リットルの三角フラスコ内のゲルの上に流し込み固化させ、培養物をのせるゲルとした。
(4)−3 添加用固形培地の調製
圧ペントウモロコシ200g及び100mLのイオン交換水を混合し、120℃で2時間オートクレーブ処理して、添加用固形培地とした。
(4)−4 添加用液体培地の調製
10%トレハロース、2%圧ペントウモロコシ粉末、0.5%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウムとなるように各成分を600mLのイオン交換水と混合し、120℃で20分間オートクレーブ処理して、添加用液体培地とした。
(5)追加培養の開始
実施例3−(3)に記載の培養開始後148日目の培養物を、スパーテルで細断し(細断物の長径が1cm以下程度)、実施例3−(4)−3に記載の添加用固形培地全量と混合した後で、実施例3−(4)−2に記載の培養物をのせるゲルの上にのせ、中央に穴(ゲル表層から約1cm、直径約5cm)をスパーテルで形作った。その上面に、実施例3−(4)−4に記載の添加用液体培地520mLを添加し、20℃で培養を開始した。なお、培養開始後、およそ2週間に1回流水ポンプを用いて、1回当り100秒吸引して培養物容器内の空気を新しい空気と置換した。
(6)培養経過
追加培養開始後、菌糸が伸び始め、上記の培養物をのせるゲルと添加用固形培地との間の接触部分から上方に向かって旺盛に菌糸が噴き出し始めた。
実施例4
(1)種菌の調製
2%トレハロース、2%グルコース、0.1%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.02%L−オルニチン、0.3%リン酸二水素カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.025%ケルコゲル、2.5ppmクエン酸銅、2.5ppmフマル酸鉄、0.5ppm塩化マンガン、及び0.5ppm乳酸亜鉛となるように各成分を150mLのイオン交換水と混合したものを、バッフル3個付の500mLの三角フラスコに入れ、120℃で20分間オートクレーブ処理した。0.02%となるようα−ピネンを添加した培地に、マツタケ0117株の平板培養菌糸をくり抜いたもの(直径6mm)2個を接種し、25℃、80rpmで64日間振とう培養した。この培養物全量を、液体培地(0.1%グルコース、0.1%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.3%リン酸二水素カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、2%圧ペントウモロコシ粉末、2.5ppmクエン酸銅、2.5ppmフマル酸鉄、0.5ppm塩化マンガン、0.5ppm乳酸亜鉛となるように各成分を800mLのイオン交換水と混合したものを、スターラーバーを入れた2リットルの三角フラスコに入れ、120℃で20分間オートクレーブ処理したもの)に接種し、20℃、500rpmで24日間培養し、種菌とした。
(2)菌床培地の調製
約6ヶ月堆積したスギオガクズ乾燥物1リットル(156g)、圧ペントウモロコシ粉末150g、及びオートミール粉末50gを混合した。この混合物に、294mLのイオン交換水、50gのマルトース(固形培地中の濃度7.1%)及び1mLの4種の金属塩の混合液(0.05%クエン酸銅、0.05%フマル酸鉄、0.01%塩化マンガン及び0.01%乳酸亜鉛)を混合したものを添加、かく拌し、125℃で2時間オートクレーブ処理した。
(3)培養の開始
実施例4−(2)に記載の菌床培地のオートクレーブ処理物に、実施例4−(1)に記載の種菌を330mL接種し、20℃で培養を開始した。なお、培養開始後129日目、161日目、及び175日目に流水ポンプで100秒間容器内の空気を交換した。培養開始後185日目でマツタケ菌糸はほぼ培地全体に蔓延した。
(4)−1 培養物をのせるゲルの調製
0.3%酵母エキスNT、0.2%ハイチオンエキス、0.05%L−グルタミン、0.5%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、1%ケルコゲルとなるように各成分を1.5リットルのイオン交換水と混合したもの、及び150gのグルコースを150mLの水に溶解したものをそれぞれ120℃で20分間オートクレーブ処理し、5リットルのビーカー内で混合し、固化させて、培養物をのせるゲルとした。
(4)−2 添加用固形培地の調製
約6ヶ月堆積したスギオガクズ乾燥物200mL(30g)、圧ペントウモロコシ60g、圧ペントウモロコシ粉末60g、オートミール(未粉砕物)60g、及びオートミール粉末30gを混合した。この混合物に、150mLのイオン交換水、0.2gの酵母エキスNT、0.1gのハイチオンエキス、0.1gのポリペプトンS、1gのリン酸二水素カリウム、0.2gのリン酸水素二カリウム、及び0.1gの硫酸マグネシウムを混合したものを添加、かく拌し、120℃で2時間オートクレーブ処理して、添加用固形培地とした。
(4)−3 添加用液体培地1、2の調製
0.2%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.05%L−グルタミン、0.5%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、及び0.05%硫酸マグネシウムとなるように各成分を500mLのイオン交換水と混合したもの、及び50gのグルコースを50mLの水に溶解したもの(グルコース濃度約37%)を、それぞれ120℃で20分間オートクレーブ処理し、混合して、添加用液体培地1とした。
また、1%グルコース、0.2%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.02%L−オルニチン、0.5%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、5ppmクエン酸銅、5ppmフマル酸鉄、1ppm塩化マンガン、及び1ppm乳酸亜鉛となるように各成分を500mLのイオン交換水と混合し、120℃で20分間オートクレーブ処理して、添加用液体培地2とした。
(5)追加培養の開始
実施例4−(3)に記載の培養開始後185日目の培養物をスパーテルで細断(細断物の長径が1cm以下程度)し、実施例4−(4)−2に記載の添加用固形培地全量と混合した後で、実施例4−(4)−1に記載の培養物をのせるゲルの上にのせ、中央に穴(ゲル表層から約1cm、直径約5cm)をスパーテルで形作った。その上面に、実施例4−(4)−3に記載の添加用液体培地1を470mL添加し、20℃で培養を開始した。培養開始とともに、1分間あたり5mLの無菌空気を送り始めた。
(6)培養経過
追加培養開始後、白色の菌糸が伸び始めるとともに、上記の培養物をのせるゲルと添加用固形培地との間の接触部分から上方に向かって、黄色から黄褐色の厚い菌糸層が形成され始めた。追加培養開始後133日目に上記の厚い菌糸層から米粒様の子実体原基の菌糸塊が突出しているのが見られた。その後、同様の菌糸塊が多数形成された。しかしながら、形成された原基が生育して容器壁に接するようになると、その形が崩れて未分化の菌糸の様になるので、追加培養開始後190日目に培養物を5リットルのビーカーから取り出し10リットルのビーカーに移した。その際、培養物中央穴に実施例4−(4)−3に記載の添加用液体培地2を220mL添加した。その後、更に34日間培養を継続したところ、子実体原基は大きくなっても形が崩れず、いくつかの原基は直径1cm以上の大きさに生育した。
実施例5
(1)種菌の調製
2%グルコース、0.05%ニッピペプチド(ニッピ社製、コラーゲンペプチド)、0.05%スーパーミーストパウダーA−002(アサヒフードアンドヘルスケア社製)、0.05%リン酸二水素カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、及び0.04%ケルコゲルとなるように各成分を1リットルのイオン交換水と混合したものを、スターヘッドかく拌子を入れた2リットルの三角フラスコに入れ、120℃で20分間オートクレーブ処理した。この培地に、天然産のマツタケ子実体から分離した2006−035株の平板培養菌糸をくり抜いたもの(直径6mm)10個を接種した。25℃、24日静置後、約1000rpmで1日かく拌した後に、約200rpmで更に24日かく拌培養した。
この培養物1リットルを、液体培地(2%グルコース、0.05%ニッピペプチド、0.05%スーパーミーストパウダーA−002、0.05%リン酸二水素カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.04%ケルコゲル、及び0.02%サラダ油となるように各成分を120リットルのイオン交換水と混合し、容量200リットルのジャーファーメンターに入れ、120℃で20分間オートクレーブ処理したもの)に接種し、25℃、100rpm、通気量25リットル/分で21日間培養して、種菌とした。
(2)菌床培地の調製
約6ヶ月堆積したスギオガクズ、圧ペントウモロコシ、オートミール、ヤマゴケ(中国産、三信社輸入)を乾燥重量比で7:8:8:1の比で混合し、水分が65%となるように水道水を添加、かく拌し、容量1.1リットルのポリプロピレン製のボトル上部まで詰め込み、ステンレス製の棒により容器底から約2cmの深さの穴(直径約1cm)を5個あけ、98℃で1時間、118℃で30分、その後加熱をとめて60分オートクレーブ処理し、固形培地とした。
(3)培養の開始
実施例5−(2)に記載の菌床培地のオートクレーブ処理物に、実施例5−(1)に記載の種菌を25mL接種し、21℃で培養を開始した。培養開始後236日目に、マツタケ菌糸は培地のほぼ半分に蔓延した。
(4)添加用液体培地の調製
以下の4種類の溶液を調製した。
溶液1:0.9%酵母エキスNT、0.3%ハイチオンエキス、0.4%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、及び0.05%硫酸マグネシウムとなるように各成分を500mLのイオン交換水に溶解した。
溶液2:40gの果糖を333mLのイオン交換水に溶解した(果糖濃度は約11%)。
溶液3:30gのグルコースを167mLのイオン交換水に溶解した(グルコース濃度は約25%)。
溶液4:4種の金属塩の混合液(0.05%クエン酸銅、0.05%フマル酸鉄、0.01%塩化マンガン、0.01%乳酸亜鉛)10mLを100mLのイオン交換水で希釈した。
上記の溶液1〜4を個別に120℃で20分間オートクレーブ処理した後で、混合し、添加用液体培地とした。
(5)追加培養の開始
実施例5−(3)に記載の培養開始後236日目の培養物の容器を切断除去した後で、培養物の上部4cmを切断除去し、5リットルのビーカーに入れた。実施例5−(4)に記載の添加用液体培地780mLをビーカー底に注入し、20℃にて1分間あたり5mLの無菌空気で通気しながら追加培養を開始した。
(6)培養経過
培養開始後6日目に培養物表層から肉眼で観察可能な菌糸が噴き出し始め、添加用液体培地を加えない場合と比較してはるかに密な菌糸塊となった。
参考例A
(1)液体培地の調製
2%グルコース、2%果糖、0.1%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.1%コーンスティープリカー、0.1%ポリペプトンS、0.5%リン酸二水素カリウム、及び0.05%硫酸マグネシウムとなるように各成分を150mLのイオン交換水に溶解し、3個のバッフル付500mL三角フラスコに入れ、120℃、20分間処理した。天然産のマツタケ子実体から分離したマツタケ菌株0117株の平板培養菌糸(培地組成:5%ハローデックス、0.1%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.2%ポリペプトンS、0.3%リン酸二水素カリウム、及び0.6%ケルコゲル)からカップドロッパーを用いて培養物片(直径6mm)を抜き出し、得られた培養物片3つを上記液体培地に接種し、25℃、80rpmで振とう培養を開始した。
(2)培養経過
培養開始後30日を経過しても菌糸の増殖は確認できなかった。
実施例6
(1)種菌の調製
マツタケ菌株としてマツタケ0021株を使用すること以外は、実施例5−(1)と同様にして種菌を調製した。
(2)菌床培地の調製
実施例5−(2)と同様に菌床培地のオートクレーブ処理物を調製した。
(3)培養の開始
実施例6−(2)に記載の菌床培地のオートクレーブ処理物に、実施例6−(1)に記載の種菌を50mL接種し、21℃で培養を開始した。培養開始後317日目でマツタケ菌糸はほぼ培地全体に蔓延した。
(4)添加用液体培地1〜3の調製
3%グルコース、0.1%リン酸二水素カリウム、及び0.05%硫酸マグネシウムとなるように各成分を300mLのイオン交換水に溶解し、4種の金属塩の混合液(0.05%クエン酸銅、0.05%フマル酸鉄、0.01%塩化マンガン、及び0.01%乳酸亜鉛)5mLと混合し、120℃で20分間オートクレーブ処理して、添加用液体培地1とした。
1%ケルコゲル300mL(イオン交換水に溶解した)に、4種の金属塩の混合液(0.05%クエン酸銅、0.05%フマル酸鉄、0.01%塩化マンガン、及び0.01%乳酸亜鉛)3mL及びグルコース300gを混合し(グルコース濃度は約59%)、120℃で20分間オートクレーブ処理して、添加用液体培地2とした。
200mLのイオン交換水に100gのグルコースを溶解し(グルコース濃度は約37%)、120℃で20分間オートクレーブ処理して、添加用液体培地3とした。
(5)追加培養の開始
実施例6−(3)に記載の培養開始後317日目の培養物の容器を切断除去し、培養物を2リットルのビーカーに倒置して入れ、実施例6−(4)に記載の添加用液体培地1 300mLをビーカー底に注入し、20℃で追加培養を開始した。
(6)培養経過
培養開始後、すぐに培養物表層から菌糸が旺盛に噴き出した。培養開始後45日目にビーカー内の液体培地が培養物に総て吸収されたので、実施例6−(4)に記載の添加用液体培地2 200mLをビーカー底に注入し、20℃で培養を継続した。その後3回、実施例6−(4)に記載の添加用液体培地3をビーカー底に注入した(培養開始後120日目に60mL、147日目に40mL、及び169日目に40mL)。培養物から噴き出した菌糸層は極めて厚く、菌床培地の一段階培養物と比べるとはるかに顕著であった。
参考例B
(1)ゲルの調製
0.1%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.3%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.025%ケルコゲル、2.5ppmクエン酸銅、2.5ppmフマル酸鉄、0.5ppm塩化マンガン、0.5ppm乳酸亜鉛となるように各成分を1.5リットルのイオン交換水に混合したものに750gのグルコースを溶解させ(グルコース濃度は約37%)、そのうち500mLを3リットルのビーカーに入れ、5gのケルコゲルを添加した。残りの1460mLを3リットルの三角フラスコに入れ、14.6gのケルコゲルを添加した、どちらの容器も122℃で20分間オートクレーブ処理した後で、室温で放冷し、ゲルを固化させた。
(2)追加培養の開始
実施例6−(3)に記載の培養開始後317日目の培養物と同様に調製した培養物の容器を切断除去し、培養物を参考例B−(1)に記載のゲル入りの3リットルのビーカーに入れ、培養物と容器の隙間に、参考例B−(1)に記載の3リットルの三角フラスコで作製したゲルをスパーテルでほぐしたものを全量入れ、20℃で追加培養を開始した。
(3)培養経過
培養開始後、培養物は変化せず、28日経過後も変化しなかった。
一方、実施例6では、他の培地成分とは別に殺菌し、本参考例と同一のグルコース濃度を有するグルコース水溶液を50日以上に渡ってマツタケの培養物に添加したが、菌糸はその間旺盛な生長を続けた。
すなわち、グルコースを単独あるいは窒素源非含有の水溶液の状態で別殺菌することによって、高濃度グルコースでのマツタケ菌糸の旺盛な生長がはじめて可能となった。
実施例7 マツタケ培養菌床の調製
使用する菌株をマツタケ0021株とする以外は、実施例5−(1)、(2)及び(3)と同様に種菌の調製、菌床培地の調製、及び培養の開始を行った。培養開始後360日目でマツタケ菌糸は培地のほぼ全体に蔓延した。
実施例8
(1)種菌の調製
2%グルコース、2%圧ペントウモロコシ粉末、0.1%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.1%コーンスティープリカー、0.02%L−オルニチン、0.3%リン酸二水素カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、2.5ppmクエン酸銅、2.5ppmフマル酸鉄、0.5ppm塩化マンガン、0.5ppm乳酸亜鉛、及び2%寒天からなる平板培地(120℃で20分間オートクレーブ処理した後で、室温で固化させたもの)に、マツタケ0021株の平板培養菌糸をくり抜いたもの(直径6mm)を1個を接種し、20℃、90日間培養し、種菌とした。
(2)下層の培地の作製、種菌の接種及び前培養の開始
前記実施例8−(1)で使用した平板培地と同一の培地組成となるように各成分を500mLのイオン交換水に混合したものを3リットルの三角フラスコに入れ、120℃で20分間オートクレーブ処理し、室温で固化させて、下層の培地とした。実施例8−(1)に記載の種菌をくり抜き(直径44mm)、を下層の培地に接種し、25℃で前培養を開始した。
(3)上層の培地、添加用液体培地1の調製、添加、及び本培養の開始
約6ヶ月堆積したスギオガクズ乾燥物0.8リットル(116g)、圧ペントウモロコシ粉末150g、オートミール粉末150g、及び実施例7で調製したマツタケ培養菌床の掻きだし物180gを混合した。この混合物に、305mLのイオン交換水、20gのトレハロース、20gのマルトース、20gのマンニトール、及び3mLの4種の金属塩の混合液(0.05%クエン酸銅、0.05%フマル酸鉄、0.01%塩化マンガン、及び0.01%乳酸亜鉛)の混合物を添加、かく拌し、120℃で120分間オートクレーブ処理して、上層の培地とした。
0.5%グルコース、0.1%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.02%L−オルニチン、0.2%リン酸二水素カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.025%ケルコゲル、5ppmクエン酸銅、5ppmフマル酸鉄、1ppm塩化マンガン、及び1ppm乳酸亜鉛となるように各成分を500mLのイオン交換水と混合したものを、120℃で120分間オートクレーブ処理して、添加用液体培地1とした。
実施例8−(2)に記載の培養物を70日培養した後で、上記の上層の培地、更に上記の添加用液体培地1を添加し、20℃で本培養を開始した。本培養開始後45日目から、流水ポンプを用いておよそ2週間に1回のペースで1回あたり60秒間吸引することによって培養物容器内の空気を新しい空気と置換した。
(4)添加用液体培地2の調製及び添加
7%トレハロース、0.1%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.02%L−オルニチン、0.02%L−グルタミン、0.02%L−メチオニン、0.3%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、及び0.05%硫酸マグネシウムとなるように各成分を200mLのイオン交換水に混合し、120℃で20分間オートクレーブ処理して、添加用液体培地2とした。
実施例8−(3)に記載の培養物の本培養開始後113日目に、実施例8−(4)に記載の添加用液体培地2を添加し、20℃で培養を更に継続した。
本培養開始後203日目から241日目にかけて、25℃で培養を行った。本培養開始後225日目に、上層の培地のうちで菌糸がまだ蔓延していない部分を除去した。
(5)培養経過
本培養開始後241日目に、約20個のマツタケ子実体原基が形成されたことを確認し、培養温度を19℃とした。その後、子実体原基は徐々に大きく生育し、本培養開始後265日目に最大で2mm程度の直径を有する子実体原基が得られた。同日、0.1%となるようにハイポネックス微粉(ハイポネックスジャパン社製)をイオン交換水に溶解し、無菌ろ過したもの27mLを添加した。本培養開始後266日目に更に50mLの上記溶液を添加し、267日目に培養温度を15℃とした。268日目に更に15mLの同溶液を添加した。本培養開始後272日目には、子実体原基の直径は最大で3mm程度となった。276日目では、直径は3.7mmほどであった。
実施例9
(1)種菌の調製
マツタケ0044株を使用する以外は、実施例8−(1)と同様に種菌を調製した。
(2)下層の培地の作製、種菌の接種及び前培養の開始
実施例8−(2)と同様に下層の培地の作製、種菌の接種及び前培養を実施した。
(3)上層の培地、添加用液体培地1の調製、添加、及び本培養の開始
約6ヶ月堆積したスギオガクズ乾燥物1リットル(145g)、圧ペントウモロコシ粉末150g、オートミール粉末50g、及びホンシメジ子実体(タカラバイオ社製)乾燥粉末20gを混合した。この混合物に、305mLのイオン交換水、20gのトレハロース、20gのマルトース、20gのマンニトール、及び2mLの4種の金属塩の混合液(0.05%クエン酸銅、0.05%フマル酸鉄、0.01%塩化マンガン、及び0.01%乳酸亜鉛)の混合物を添加、かく拌し、120℃で120分間オートクレーブ処理し、上層の培地とした。
また、0.5%グルコース、0.1%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.02%L−オルニチン、0.3%リン酸二水素カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.025%ケルコゲル、5ppmクエン酸銅、5ppmフマル酸鉄、1ppm塩化マンガン、及び1ppm乳酸亜鉛となるように各成分を500mLのイオン交換水と混合し、120℃で120分間オートクレーブ処理し、添加用液体培地1とした。
実施例9−(2)に記載の培養物を66日間培養した後で、上記の上層の培地、更に上記の添加用液体培地1を添加し、20℃で本培養を開始した。本培養開始後45日目から流水ポンプを用いて、およそ2週間に1回のペースで1回あたり60秒間吸引することによって培養物容器内の空気を新しい空気と置換した。
(4)添加用液体培地2の調製、及び添加
7%トレハロース、0.1%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.02%L−オルニチン、0.02%L−グルタミン、0.02%L−メチオニン、0.3%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、及び0.05%硫酸マグネシウムとなるように各成分を220mLのイオン交換水と混合し、120℃で20分間オートクレーブ処理し、添加用液体培地2とした。
実施例9−(3)に記載した培養物の本培養開始後117日目に、上記の添加用液体培地2を添加し、20℃で培養を更に継続した。
本培養開始後207日目から244日目にかけて、25℃で培養を行った。本培養開始後245日目から19℃で培養した。本培養開始後263日目に、菌糸がまだ蔓延していない部分の上層の培地を除去した。
(5)スギオガクズの調製
約6ヶ月堆積したスギオガクズ500g及び7.5リットルのイオン交換水を混合し、100℃、1時間処理し、目の開き0.3mmのざるを用いてろ過し、残渣を得た。得られた残渣に7.5リットルのイオン交換水を混合し、100℃、1時間処理し、目の開き0.3mmのざるを用いてろ過し残渣を得る工程を2回繰り返し、残渣を得た。得られた残渣に7.5リットルのイオン交換水を混合した後で、室温で、1時間かく拌し、目の開き0.3mmのざるを用いてろ過し残渣を得る工程を2回繰り返し、残渣を得た。得られた残渣を乾燥させて、乾燥洗浄スギオガクズを得た。
乾燥洗浄スギオガクズ31gを120℃で120分間オートクレーブ処理したもに、0.1%となるようにハイポネックス微粉をイオン交換水に溶解し、無菌ろ過したものを70mL添加し、培養物上面を覆うためのスギオガクズとした。
(6)培養経過
本培養開始後266日目に、マツタケ子実体原基の形成が確認され、その後、原基は徐々に大きく生育し、本培養開始後269日目に子実体原基17個が観察され、その直径は最大で約1mm程度であった。
本培養開始後271日目に、実施例9−(5)に記載のスギオガクズで培養物の上面を覆い、培養温度を15℃とした。本培養開始後283日目に培養物上面を覆ったスギオガクズを除去した。269日目に確認された原基は見えなくなっていたが、290日目に多数の原基が再び形成された。本培養開始後301日目で、最大の原基は直径約2.2mmであった。
実施例10
(1)種菌の調製
0.15%酵母エキスNT、0.15%ハイチオンエキス、0.3%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、1%圧ペントウモロコシ粉末、1%オートミール粉末、2.5ppmクエン酸銅、2.5ppmフマル酸鉄、0.5ppm塩化マンガン、及び0.5ppm乳酸亜鉛となるように各成分を800mLのイオン交換水と混合し、スターラーバーを入れた2リットルの三角フラスコに入れ、120℃で20分間オートクレーブ処理した。この培地に、8gのグルコースを80mLのイオン交換水に溶解し120℃で20分間オートクレーブ処理したものを混合して、種菌用培地とした。この種菌用培地に、マツタケ2006−051株の平板培養菌糸をくり抜いたもの(直径6mm)9個を接種し、20℃、500rpmで41日間かく拌培養し、種菌とした
(2)下層の培地の作製、種菌の接種及び前培養の開始
5%トレハロース、5%マンニトール、0.2%酵母エキスNT、0.2%ハイチオンエキス、0.2%酵母アブルーム(興人社製)、0.1%コーンスティープリカー、0.5%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、1%ケルコゲル、5%マツタケ菌床培養物の掻きだし物(実施例7で調製)、2.5ppmクエン酸銅、2.5ppmフマル酸鉄、0.5ppm塩化マンガン、及び0.5ppm乳酸亜鉛となるように各成分を2リットルのイオン交換水に混合したものを5リットルの三角フラスコに入れ、120℃で20分間オートクレーブ処理し、室温で固化させて、下層の培地とした。実施例10−(1)に記載の種菌10mLを下層の培地に接種し、25℃で前培養を開始した。
(3)上層の培地、添加用液体培地1の調製、添加、及び本培養の開始
約6ヶ月堆積したスギオガクズ乾燥物100mL(17g)、圧ペントウモロコシ粉末30g、及びオートミール(未粉砕物)100gを混合した。この混合物に、70mLのイオン交換水、7gのトレハロース、1gの酵母エキスNT、0.5gのリン酸二水素カリウム、及び0.1gのリン酸水素二カリウムの混合物を添加、かく拌し、120℃で120分間オートクレーブ処理し、上層の培地とした。
また、トレハロース7g、酵母エキスNT1g、リン酸二水素カリウム0.5g、及びリン酸水素二カリウム0.1gを140mLのイオン交換水に混合し、120℃で20分間オートクレーブ処理し、添加用液体培地1とした。
実施例10−(2)に記載の培養物を66日培養した後で、上記の上層の培地、更に上記の添加用液体培地1を添加し、20℃で本培養を開始した。なお、本培養開始後36日目から流水ポンプを用いておよそ2週間に1回のペースで1回あたり100秒間吸引することによって、培養物容器内の空気を新しい空気と置換した。
(4)添加用液体培地2の調製、及び添加
5%トレハロース、0.04%酵母エキスNT、0.04%ハイチオンエキス、0.01%L−オルニチン、0.01%L−グルタミン、0.4%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、5ppmクエン酸銅、5ppmフマル酸鉄、1ppm塩化マンガン、及び1ppm乳酸亜鉛となるように各成分を200mLのイオン交換水に混合し、120℃で20分間オートクレーブ処理して、添加用液体培地2とした。
実施例10−(3)に記載した培養物の本培養開始後188日目に、上記の添加用液体培地2を55mL添加し、20℃で培養を更に継続した。
(5)培養経過
本培養開始後190日目に、マツタケ子実体原基が多数観察されたが、最大のものでその直径は3.5mm程度であった。また、上層培地表面のオートミール粒上及び粒周辺において特に子実体原基の密度が高かった。
実施例11
(1)priA遺伝子の探索
シイタケが菌糸から子実体へ移行する際に形成される子実体原基において、priA遺伝子の発現は顕著に上昇する〔ジーン(Gene)、第114巻、第173〜178頁(1992)〕。このシイタケpriA遺伝子と相同性を示す遺伝子がマツタケに存在しているかあるいは保存されているかを探索するために、タカラバイオ社保有のマツタケゲノムのドラフト配列データベースに対して相同性検索を行った。その結果、マツタケゲノム内に高度に保存されているマツタケpriA遺伝子配列を見出した。マツタケpriA遺伝子のシイタケpriA遺伝子との相同性は、アミノ酸配列に翻訳した際の比較において、相同性を示す値として一般に使用されているE−value値が6e−47であって、Score値が176であり、非常に高い相同性を有していることを確認した。
次にマツタケにおけるpriA遺伝子の発現変動解析をリアルタイムPCRによって行うために、上記相同性検索で得られた配列を元に複数のプライマーを設計した。配列表の配列番号1で表されるFプライマー1及び配列表の配列番号2で表わされるRプライマー1を作製した。
(2)ras遺伝子の探索
複数サンプル間で特定の遺伝子の発現変動を比較するために、サンプル間で発現量が一定している事が明らかになっている遺伝子(ハウスキーピング遺伝子という)の発現量で補正を行い、その上で特定の遺伝子の発現変動の評価が必要となる。シイタケの場合、シイタケras遺伝子が菌糸から子実体形成期を経て子実体に至るまで一定して発現する事が報告されている〔ジーン(Gene)、第105巻、第91〜96頁(1991)〕。そのため、マツタケpriA遺伝子の発現変動を評価するために、シイタケras遺伝子と相同性を有する遺伝子がマツタケゲノムに存在しているかあるいは保存されているかを探索するために、実施例11−(1)に記載の方法と同様に、マツタケゲノムのドラフト配列データベースに対して相同性検索を行った。その結果、マツタケゲノム内に高度に保存されているマツタケras遺伝子配列を見出した。マツタケras遺伝子のシイタケras遺伝子との相同性は、アミノ酸配列に翻訳した際の比較において、相同性を示す値として一般に使用されているE−value値がe−55であって、Score値が126であり、高い相同性を有していることを確認した。
実施例11−(1)と同様にして、上記相同性検索で得られた配列を元に複数のプライマーを設計した。配列表の配列番号3で表されるFプライマー2及び配列表の配列番号4で表されるRプライマー2を作製した。
(3)菌糸の調製
市販の培地(ポテト・デキストロースカンテン培地「ダイゴ」(日本製薬社製))を用いた平板培地に、別途培養した丹波産のマツタケ子実体から分離した2006−079株の平板培養菌糸をくり抜いたもの(直径6mm)を接種し、20℃で培養して、平板培養菌糸を得た。
(4)−1 マツタケ子実体原基の調製−種菌の調製
2%グルコース、0.05%ニッピペプチド(ニッピ社製、コラーゲンペプチド)、0.05%スーパーミーストパウダーA−002、0.05%リン酸二水素カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、及び0.04%ケルコゲルとなるように各成分を1リットルのイオン交換水と混合し、スターヘッドかく拌子を入れた2リットルの三角フラスコに移し、120℃で20分間オートクレーブ処理した。この培地に、実施例11−(3)で得た平板培養菌糸をくり抜いたもの(直径6mm)10個を接種し、25℃で21日静置し、約1000rpmで1日かく拌した後で、約200rpmで21日かく拌培養して、種菌とした。
(4)−2 マツタケ子実体原基の調製−菌床培地の調製
約6ヶ月堆積したスギオガクズ、圧ペントウモロコシ、オートミール、及びヤマゴケ(中国産、三信社輸入)を7:8:8:1の乾燥重量比で混合し、水分が65%となるように水道水を添加、かく拌したものを、容量1.1リットルのポリプロピレン製のボトル5本の上部までそれぞれ詰め込み、ステンレス製の棒により容器底から約2cmの深さの穴(直径約1cm)を5個あけ、98℃で1時間、118℃で30分、その後加熱をとめて60分オートクレーブ処理して、固形培地とした。
(4)−3 マツタケ子実体原基の調製−培養の開始
実施例11−(4)−2に記載の5本の菌床培地に、実施例11−(4)−1に記載の種菌をそれぞれ40mL接種し、21℃で培養を開始した。培養開始後371日目に、マツタケ菌糸が培地の約7割に蔓延した。
(4)−4 マツタケ子実体原基の調製−原基発生誘導
実施例11−(4)−3に記載の培養物1本をスパーテルで細断(細断物の長径が1cm以下程度)し、2リットルのビーカーに移した。その細断物の上に、150mLの10%トレハロース溶液及び1%乾燥酵母エビオス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)を含む1%リン酸2水素カリウム溶液150mLを添加した(これらの溶液は120℃で20分間オートクレーブ処理済)。更にその上に、実施例11−(4)−3に記載の別の培養物1本を上記培養物と同様にスパーテルで細断したもの(細断物の長径が1cm以下程度)を載せ、その上に150mLの10%トレハロース溶液及び1%乾燥酵母エビオスを含む1%リン酸2水素カリウム溶液150mLを添加した(これらの溶液は120℃で20分間オートクレーブ処理済)。次に、圧ペントウモロコシ粉末:オートミール:トレハロース:約6ヶ月堆積したスギオガクズが乾燥重量比で1:1:1:1となるように混合したものを120℃で120分間オートクレーブ処理し、そのうち100gを上記細断物及び各溶液を添加したものの上に添加し、更にその上から、100mLの10%トレハロース溶液及び1%乾燥酵母エビオスを含む1%リン酸2水素カリウム溶液100mL(これらの溶液は120℃で20分間オートクレーブ処理済)を添加した。その後、18℃で培養を開始した。
(4)−5 マツタケ子実体原基の調製−培養経過
追加培養開始後、30日目に培地表面に子実体原基が形成され始めた。その後、50日目に同様の子実体原基が多数形成され、それぞれが1cmを超え大きく生育した。
(5)mRNAの調製
実施例11−(3)に記載のマツタケ菌糸、実施例11−(4)−5で得られた子実体原基、及び市販の丹波産マツタケ子実体の3試料を各N=2で解析を行うために、各サンプルからmRNAを調製した。まず、各サンプルを液体窒素にて凍結した状態で乳鉢にて粉状になるまですり潰し、RNAiso(タカラバイオ社製)に添付のプロトコールに従い、全RNAの抽出を行った。なお、本サンプルには大量の多糖類が含まれていたので、イソプロパノール沈澱操作の際に3M酢酸ナトリウムをイソプロパノールと同量添加したものを用いた。そのまま全RNAをRT−PCRに用いることも可能であったが、高純度なサンプルからより正確なデータを得るために、OligotexTM−dT30<Super> mRNA Purification Kit(タカラバイオ社製)を用いて、上記で抽出した全RNAからmRNAの調製を行った。
(6)priA遺伝子の発現解析
上記実施例11−(1)及び(2)で決定したプライマー、及び実施例11−(5)で調製したmRNAを用いてリアルタイムPCRによるpriA遺伝子の発現解析を行った。リアルタイムPCRでは、One Step SYBR PrimeScript RT−PCR Kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)を用い、添付のプロトコールに従いRT−PCR反応液を調製し、Thermal Cycler Dice Real Time System(タカラバイオ社製)を用いて相対測定を行った。ras遺伝子にて補正した相対比較解析において、マツタケpriA遺伝子の発現量は、子実体原基由来サンプルにおいて、菌糸と比較してその発現が約20倍であり、顕著な上昇が確認できた。また、マツタケ子実体では、菌糸と同程度かそれ以下に発現量が減少していた。
これらの結果は、シイタケにおいてpriA遺伝子が子実体形成期の子実体原基においてのみ高発現するという報告と相関している。測定に用いた子実体原基が菌糸から子実体へと移行する段階にある子実体原基であり、本発明により形成される子実体原基が真のマツタケ子実体原基であることが初めて科学的に証明された。
実施例12
(1)種菌の調製
実施例5−(1)と同様に種菌を調製した。
(2)菌床培地の調製
実施例5−(2)と同様に菌床培地のオートクレーブ処理物を調製した。
(3)菌床培養1の開始
実施例5−(3)と同様に培養を開始した。培養開始後217日目でマツタケ菌糸は培地のほぼ半分に蔓延した。当該培養により得られた培養物をマツタケ菌床培養物とした。
(4)−1 ホンシメジ菌床培養物の凍結乾燥物の調製
実施例3−(4)−1の記載と同様の方法で、培養を約77日間行い、培地全体に菌糸を蔓延させた子実体原基形成前のホンシメジ菌床培養物を調製した。その後、上記で調製したホンシメジ菌床培養物を掻き出し、凍結乾燥し、得られた乾燥物を粉砕機で粉砕し、ホンシメジ菌床培養物の凍結乾燥物とした。
(4)−2 下層のゲル培地の調製
2.5%トレハロース、2.5%ハローデックス、0.1%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.02%オルニチン塩酸塩、0.02%グルタミン、0.02%グルタミン酸、0.01%メチオニン、0.4%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.3%ハイポネックス微粉、1%ケルコゲル、2.5%ホンシメジ菌床培養物の凍結乾燥物(実施例12−(4)−1で調製)、2.5ppmクエン酸銅、2.5ppmフマル酸鉄、0.5ppm塩化マンガン、及び0.5ppm乳酸亜鉛となるように各成分を1.2リットルのイオン交換水に混合し、5リットルの三角フラスコに入れ、120℃で20分間オートクレーブ処理し、室温で固化させて、下層のゲル培地とした。
(4)−3 下層用及び上層用固形培地の調製
約6ヶ月堆積したスギオガクズ乾燥物200mL(28g)、圧ペントウモロコシ粉末60g、オートミール(未粉砕物)200gを混合した。この混合物に、160mLのイオン交換水、4gのトレハロース、4gのハローデックス、0.48gのハイポネックス微粉、0.64gのリン酸二水素カリウム、0.16gのリン酸水素二カリウムの混合物、及び1.6mLの4種の金属塩の混合液(0.05%クエン酸銅、0.05%フマル酸鉄、0.01%塩化マンガン、及び0.01%乳酸亜鉛)を添加、かく拌し、3:1の重量比で分配し、120℃で120分間オートクレーブ処理して、それぞれを下層用及び上層用固形培地とした。
(4)−4 添加用液体培地1〜3の調製
実施例12−(4)−1に記載のホンシメジ菌床培養物の凍結乾燥物7.5gを300mLのイオン交換水に混合したものを120℃で20分間オートクレーブ処理し、添加用液体培地1とした。
1%グルコース、0.2%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.02%オルニチン塩酸塩、0.5%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、5ppmクエン酸銅、5ppmフマル酸鉄、1ppm塩化マンガン、及び1ppm乳酸亜鉛となるように各成分をイオン交換水に混合したものを、120℃で20分間オートクレーブ処理し、添加用液体培地2とした。
8%トレハロース、0.5%酵母エキスNT、0.1%ハイチオンエキス、0.1%グルタミン、0.5%リン酸二水素カリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、2.5ppmクエン酸銅、2.5ppmフマル酸鉄、0.5ppm塩化マンガン、及び0.5ppm乳酸亜鉛となるように各成分をイオン交換水に混合したものを、120℃で20分間オートクレーブ処理し、添加用液体培地3とした。
(5)菌床培養2の開始
実施例12−(4)−2に記載の下層のゲル培地の上に、実施例12−(4)−3に記載の下層用固形培地をのせた。次に、実施例12−(3)に記載のマツタケ菌床培養物の上部5cmを切り捨て、切断面から下方へ3cm分の培養物をスパーテルで掻き出し、上記の下層用固形培地の上部に接種した。この接種物の上に、実施例12−(4)−3に記載の上層用固形培地をのせ、その上から、実施例12−(4)−4に記載の添加用液体培地1を210mL添加し、20℃で培養を開始した。なお、菌床培養2開始後、およそ2週間に1回のペースで流水ポンプを用いて、1回あたり100秒間吸引することによって培養物容器内の空気を新しい空気と置換した。
(6)培養経過
菌床培養2開始後、白色の菌糸が伸び始め、徐々に下層用及び上層用固形培地に菌糸が回り始めた。菌床培養2開始後90日目頃に培地水分含量を低下させて菌糸の伸長を停止状態とし、菌床培養2開始後119日目に実施例12−(4)−4に記載の添加用液体培地2を180mL添加し、菌床培養2開始後139日目及び157日目に実施例12−(4)−4に記載の添加用液体培地3をそれぞれ10mLずつ添加し、培地水分含量の上昇による菌糸伸長を再開させた。
菌床培養2開始後157日目ぐらいから、菌糸の色が淡黄色となり、マツタケ子実体原基が形成され始めた。菌床培養2開始後200日目ぐらいで、子実体原基は更に増加したので、菌床培養2開始後206日目から夜間の培養温度を15℃にして、培養を続けた。菌床培養2開始後228日目に、子実体原基の一部に細長く生育した状態のものが観察され、菌床培養2開始後244日目に、細長く生育した状態のものの上部が大きく広がり、柄部分及び傘部分の分化が確認され、マツタケ幼子実体が得られた。
本発明により、マツタケの菌床栽培に使用できる菌糸成長の旺盛なマツタケ菌糸の培養方法、当該培養に使用する培地、当該培地を使用するマツタケ子実体の人工栽培方法、マツタケ子実体原基の誘導方法、及びマツタケ子実体原基の形成方法が提供される。またマツタケ子実体原基形成誘導物質としてのオートミールの使用方法が提供され、本発明により、これまで困難であったマツタケ子実体原基形成の再現性良い実施が可能になる。当該培地やこれらの方法は、例えば、マツタケの菌床人工栽培において、極めて有用である。更に本発明により、子実体原基の同定方法が提供され、マツタケの子実体誘導を行う際の菌床培養や培地組成等の条件を遺伝子発現量の変化から科学的に最適化する事が可能になり、本発明はマツタケ子実体の菌床人工栽培の確立に極めて有用である。
SEQ ID NO:1 ; Primer F primer 1 to amplify the priA gene.
SEQ ID NO:2 ; Primer R primer 1 to amplify the priA gene.
SEQ ID NO:3 ; Primer F primer 2 to amplify the ras gene.
SEQ ID NO:4 ; Primer R primer 2 to amplify the ras gene.

Claims (17)

  1. マツタケ菌床栽培用のマツタケ菌糸培養方法であって、トレハロース及び/又は別殺菌した還元性糖類をマツタケ菌床栽培用培地に含有せしめることを特徴とするマツタケ菌糸の培養方法。
  2. 還元性糖類がグルコース及び/又は果糖である請求項1記載のマツタケ菌糸の培養方法。
  3. 還元性糖類を1〜60重量%培地に含有せしめる請求項1記載のマツタケ菌糸の培養方法。
  4. トレハロースを1〜30重量%培地に含有せしめる請求項1記載のマツタケ菌糸の培養方法。
  5. トレハロース及び/又は別殺菌した還元性糖類を含有することを特徴とするマツタケ菌床栽培用培地。
  6. 還元性糖類がグルコース及び/又は果糖である請求項5記載のマツタケ菌床栽培用培地。
  7. 還元性糖類を1〜60重量%含有する請求項5記載のマツタケ菌床栽培用培地。
  8. トレハロースを1〜30重量%含有する請求項5記載のマツタケ菌床栽培用培地。
  9. 請求項5記載のマツタケ菌床栽培用培地を用いることを特徴とするマツタケ子実体の菌床栽培方法。
  10. マツタケ菌糸がマツタケ菌床栽培用培地の表面に達する前に、培地表面部を除去することを特徴とするマツタケ子実体原基の誘導方法。
  11. 除去する培地表面部が、菌糸が実質的に生育していない表面部である請求項10記載のマツタケ子実体原基の誘導方法。
  12. マツタケ菌糸がマツタケ菌床栽培用培地の表面に達する前に、培地表面部を除去することを特徴とするマツタケ子実体原基の形成方法。
  13. 除去する培地表面部が、菌糸が実質的に生育していない表面部である請求項12記載のマツタケ子実体原基の形成方法。
  14. マツタケ子実体原基誘導促進物質としてオートミールを使用することを特徴とするマツタケ子実体原基の誘導方法。
  15. オートミールが燕麦又はその加工処理品である請求項14記載のマツタケ子実体原基の誘導方法。
  16. オートミールを含有することを特徴とするマツタケ子実体原基誘導促進剤。
  17. オートミールが燕麦又はその加工処理品である請求項16記載のマツタケ子実体原基誘導促進剤。
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