本発明は、基本波の波長変換を行ってレーザ出力をする波長変換レーザに関するものである。
従来から、波長変換素子の非線形光学現象を用いて、基本波レーザの波長を第2高調波(Second Harmonic Generation : SHG)、和周波、差周波等の変換波の波長に変換して出力する波長変換レーザがある。
波長変換レーザは、例えば、図11に示すように、基本波レーザ光源101と、レーザ光源101から出射された基本波レーザ光を集光するレンズ102と、集光された基本波レーザ光を第2高調波に変換する波長変換素子103と、基本波レーザ光と高調波レーザ光とを分離するダイクロイックミラー104からなる。
波長変換素子103は、非線形光学結晶からなり、基本波の波長変換を行う。具体的に、波長変換素子103は、基本波と変換波との位相が整合するように適切に調整された結晶の方位や分極反転構造等を有している。特に、分極反転構造を有する波長変換素子は、擬似位相整合により低パワーでも高効率の波長変換を行うことができ、設計により様々な波長変換を行うことができる。分極反転構造とは、波長変換素子103の自発分極を周期的に反転させた領域が設けられた構造である。
基本波から第2高調波に変換する変換効率ηは、波長変換素子の相互作用長をL、基本波のパワーをP、波長変換素子でのビーム断面積をA、位相整合条件からのずれをΔkとすると、以下のように表すことができる。
η ∝ L2 P / A × sinc2(Δk L/2)
前記の式において、位相整合条件からのずれが生じると、変換効率が低下し、第2高調波(変換波)の発生が低下する。このため、位相整合条件からのずれが生じないように、非線形光学結晶の温度を許容範囲内の所定温度とする制御が行われている。
例えば、特許文献1のように、変換波の光強度を検出する検出手段と、非線形結晶の温度調節手段とを用いて、変換波の光強度が目標値に収束するように温度調節手段の駆動を制御することが提案されている。
特許文献1に係る構成によれば、高い変換効率を得ることや波長変換レーザの出力を制御することができる。
しかし、特許文献1は、波長変換効率の制御により波長変換レーザから出射される変換波光の強度分布を制御することは提案されていない。
特開平4−318528号公報
本発明は、波長変換効率を制御することにより、出射される変換波光の強度分布を制御することができる波長変換レーザ、及びこれを用いた画像表示装置及びレーザ加工装置を提供することを目的としている。
本発明の一局面に係る波長変換レーザは、基本波を出射する基本波光源と、前記基本波光源からの基本波を変換波光に変換するための波長変換素子と、前記波長変換素子を異なる角度で通過する複数の基本波光路を規定するように前記基本波を反射する1対の基本波反射面と、前記1対の基本波反射面の間で別々の方向を向く前記複数の基本波光路のうち、特定の基本波光路における波長変換効率が最も高くなるように波長変換効率を制御する制御装置とを備え、前記1対の基本波反射面のうち少なくとも一方の反射面は、前記変換波光を透過する出力面である。
本発明の他の局面に係る画像表示装置は、前記波長変換レーザと、所定の画像を表示するために前記波長変換レーザから出射された変換波光の変調を行う変調素子とを備えている。
本発明の他の局面に係るレーザ加工装置は、前記波長変換レーザと、前記波長変換レーザから出射された変換波光を集光する集光光学系とを備え、前記各基本波光路のうち変換波光を出射させる光路の数を増減することにより、前記変換波光のスポット形状が変化する。
本発明によれば、波長変換効率を制御することにより、出射される変換波光の強度分布を制御することができる。
図1は、本発明の実施の形態1に係る波長変換レーザの概略構成図である。
図2は、図1の波長変換レーザにおいて変換波光を優先して出射する基本波光路を変更した状態を示す概略構成図である。
図3は、本発明の実施の形態1の変形例に係る波長変換レーザの概略構成図である。
図4は、実施の形態1の変形例に係る波長変換レーザ及びこの波長変換レーザを備えた画像表示装置の概略構成図である。
図5は、本発明の実施の形態2に係る波長変換レーザの概略構成図である。
図6は、図5の波長変換レーザにおいて変換波光を優先して出射する基本波光路を変更した状態を示す概略構成図である。
図7は、本発明の実施の形態3に係る波長変換レーザの概略構成図である。
図8は、図7の波長変換素子及び電極を拡大して示す概略斜視図である。
図9は、図7の波長変換レーザにおいて変換波光を優先して出射する基本波光路を変更した状態を示す概略構成図である。
図10は、本発明の実施の形態3に係る波長変換レーザを備えたレーザ加工装置の概略構成図である。
図11は、従来の波長変換レーザの概略構成図である。
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
以下本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1及び図2は、本発明の実施の形態1に係る波長変換レーザ100の概略構成図である。図1と図2とは、変換波光を優先して出射させる基本波光路を異ならせている点で相違している。
波長変換レーザ100は、基本波を出射するレーザ光源としてのdistributed feedback(以下、DFBと略す)レーザ1と、DFBレーザ1から出射した基本波をコリメートするコリメータ2と、コリメートされた基本波を入射させる波長変換素子10と、波長変換素子10を挟むように配置された一対のダイクロイックミラー(基本波反射面、出力面)3、4と、基本波を吸収するためのビームディフューザ5と、波長変換効率を制御するための制御装置6とを備えている。
DFBレーザ1は、LDの活性層領域に設けられたグレーティングを有し、縦シングルモード出力が容易に得られるようになっている。DFBレーザ1は、発振波長を決定するグレーティングを電界もしくは温度によってチューニングすることにより、発振波長の変調を行うことができるようになっている。具体的に、DFBレーザ1の発振波長は、1064〜1066nmの範囲内から選択することができ、DFBレーザ1は、各波長で縦シングルモードの出力を行うようになっている。
波長変換素子10は、分極周期反転構造を有するMgO:LiTaO3結晶からなり、直方体の形状をもつ。具体的に、波長変換素子10は、図1の左右方向に並ぶ分極周期反転構造を有し、反転周期の擬似位相整合により基本波からの変換波光として第2高調波を発生させる。波長変換素子10は、波長変換素子10内で均一な分極反転周期を有し、定温保持機構により一定温度に保たれている。また、波長変換素子10の基本波が入射又は出射する端面(図1の左右の端面)には、基本波及び第2高調波を透過するコートが施されている。
ダイクロイックミラー3、4は、波長変換素子10を異なる角度で通過する複数の基本波光路を規定するように、波長変換素子10の両側に設けられている。以下、ダイクロイックミラー3、4について具体的に説明する。
ダイクロイックミラー3は、基本波を反射し、かつ、第2高調波を透過するコートをもつ。また、ダイクロイックミラー3は、DFBレーザ1を出射する基本波の光軸に対して垂直な姿勢から、波長変換素子10の長さ方向(図1の左右方向)に傾けて配置してある。したがって、ダイクロイックミラー3で反射する基本波は、波長変換素子10の長さ方向に傾斜した光軸に沿って前記波長変換素子10に再度入射することになる。
ダイクロイックミラー4も、基本波を反射し、かつ、第2高調波を透過するコートをもつ。また、ダイクロイックミラー4は、前記ダイクロイックミラー3と図1において左右対称となる角度で傾斜して配置されている。したがって、ダイクロイックミラー4で反射する基本波は、波長変換素子10の長さ方向に傾斜した光軸に沿って波長変換素子10に再度入射することになる。
このようにダイクロイックミラー3、4が互いに傾斜して配置されていることにより、これらダイクロイックミラー3、4の間には、徐々に図1の上に向かう基本波光路A1〜A5が規定される。この基本波光路A1〜A5は、ダイクロイックミラー3、4の間でそれぞれ別々の方向を向く。各基本波光路A1〜A5は、A1からA5の順に波長変換素子10の分極反転周期に対する傾斜角が大きくなり、これに伴い、基本波が通過する分極反転の周期も長くなる。ダイクロイックミラー3及び4は、波長変換光の出力面を構成する。
制御装置6は、DFBレーザ1から発振される基本波の波長を制御するための発振波長制御部7を備えている。発振波長制御部7は、前記基本波光路A1〜A5のうち、特定の光路における波長変換効率が最大となるように基本波の波長を制御する。具体的に、発振波長制御部7は、DFBレーザ1のグレーティング部に所望の電界を生じさせることにより、発振波長を調整するようになっている。
DFBレーザ1から出射された基本波は、コリメータ2によりコリメートされ波長変換素子10に入射する。図1に示す例では、DFBレーザ1の発振波長が発振波長制御部7により1064nmに設定されることにより、分極反転周期に対して垂直に入射する基本波光路A1において位相整合が行われ、この基本波光路A1において最も高い変換効率で変換波光(第2高調波)a1が発生する。このとき、基本波光路A2〜A5では、ダイクロイックミラー3、4の反射により波長変換素子10の分極反転構造に対して傾斜していることに伴い、位相整合条件からのずれが生じ、変換効率が低くなり、変換波光(第2高調波)a2〜a5は、わずかしか発生しない。このため、変換波光の出力面となるダイクロイックミラー3及び4からは、基本波光路A1で発生した変換波光a1が優先して出射される。なお、波長変換されなかった残りの基本波は、ビームディフューザ5に達し、吸収される。
図2に示す例では、DFBレーザ1の発振波長が発振波長制御部7により1066nmに設定されることにより、分極反転周期に対し最も傾斜している基本波光路A5において位相整合が行われ、この基本波光路A5において最も高い変換効率で第2高調波が発生する。このとき、基本波光路A1〜A4では、分極反転周期が位相整合条件を満たすための周期よりも短いため、位相整合条件からのずれが生じて変換効率が低くなり、第2高調波は、わずかしか発生しない。そのため、変換波光の出力面となるダイクロイックミラー3及び4からは、基本波光路A5で発生した変換波光a5が優先して出力される。
同様にDFBレーザ1の発振波長を発振波長制御部7により変調することにより、位相整合を行う基本波光路を基本波光路A2、A3、A4の中から選択して、各光路A2〜A4において生じた変換波光a2〜a4を優先して出射させることができる。
前記波長変換レーザ100を用いて走査光を出射させることもできる。具体的に、波長変換レーザ100の制御装置6によって、DFBレーザ1の発振波長を1064〜1066nmの範囲内で一定周期で変調することにより、選択する基本波光路をA1→A2→A3→A4→A5→A4→A3→A2→A1→A2・・・と順次に変化させることができる。このとき出射される変換波光の出射角度は、選択する基本波光路に応じて異なるため、変換波光は、順次異なる角度で出射され、波長変換光の走査が繰り返し行われる。この走査速度は、発振波長の変調速度で制御することができる。上述した構成は、制御装置6により基本波光路の選択を順次に行うことにより、出射される波長変換光の走査を行う好ましい形態である。このようにすれば、可動ミラー等を用いず波長変換レーザのみでビーム走査を行うことができるため、部品点数の削減や損失の低減が可能となる。また、前記構成のように、基本波の発振波長の変調により変換波光の走査を行わせる場合、各走査位置における変換波光の波長が異なることになるため、ひとつの光源を用いて分光計測などを行うことができる。
本発明の基本波レーザ光源には、DFBレーザの他、半導体レーザ、ファイバーレーザ、固体レーザなど各種レーザ光源を用いることができる。本実施の形態1では、基本波のビーム整形に用いられるコリメータ2を用いているが、波長変換素子への基本波のビーム整形や拡がり角の制御を行うために各種光学部品を用いることができる。また波長変換素子としては、各種非線形材料を用いることができる。例えば、LBOやKTP、分極反転周期構造をもつLiNbO3やLiTaO3を用いることができる。
本実施の形態では、ダイクロイックミラー3、4として2枚の平面ミラーを用い、これら平面ミラーの双方を傾斜して配置しているが、1枚のみを傾斜して配置してもよい。平面ミラーを傾斜させる角度は、基本波の光路にある程度の角度変化をもたせるために、少なくとも1度以上であることが好ましい。
また、本実施の形態では、一対のダイクロイックミラー3、4の双方を変換波光の出力面としているが、各ダイクロイックミラー3、4の少なくとも一方が波長変換光を出力する面となっていればよい。
なお、本実施の形態は、発振波長制御部7により基本波の発振波長の変調を行い、優先する基本波光路A1〜A5を選択する好ましい形態である。このように基本波の発振波長を変調させることで、波長変換光の角度及び強度分布だけでなく、出射する変換波光の波長の変調も行うこともできる。発振波長の変調を行う場合、変調の周波数を100Hz以上に設定して、変調を高速で行うことが好ましい。変調を高速に行うことにより、画像表示や照明として波長変換光を用いる場合のみかけのスペクトル幅を太くし、干渉性を低減させることができる。
また、DFBレーザ1の発振波長を高速に変化させることにより、出射する変換波光の角度変化を高速化することができる。発振波長の高速変調には、本実施の形態の様にDFBレーザ1を用い、グレーティング部の電界変調を用いることが好ましい。このようにすれば、非常に高速な発振波長の制御を行うことができる。
以下、図3を参照して実施の形態1の変形例について説明する。
図3は、実施の形態1の変形例に係る波長変換レーザ100aの概略図を示す。前記波長変換レーザ100と同様の構成については、同じ番号を付して説明を省略する。
波長変換レーザ100aは、波長変換レーザ100の構成に加えて、基本波光路A1、A3、A5から出射される変換波光a1、a2、a3の一部を受光する受光素子8a、8b、8cと、サンプラー65とを有する。
受光素子8a〜8cは、受光した変換波光の光量を検出するとともに、検出値の差分に基づいてどの受光素子8a〜8cへの入射光量が最も多いかを検出する。
サンプラー65は、波長変換素子10から出射される変換波光の一部を反射して、受光素子8a〜8cに導くための光学部品である。具体的に、サンプラー65は、低反射コートがされたガラス板である。
波長変換レーザ100aでは、制御装置6の発振波長制御部7によりDFBレーザ1の波長を変えることによって、変換波光を優先して出射させる基本波光路A1〜A5を選択することができる。受光素子8a〜8cのうち入射光量が最も多い受光素子の検出結果に基づいて、基本波光路A1、A3、A5のうち変換波光が優先して出射された基本波光路が検出される。制御装置6は、受光素子8a〜8cの検出結果に基づいて検出された基本波光路と、発振波長制御部7により選択された基本波光路が一致するようにフィードバック制御を行う。したがって、選択された基本波光路から常に優先して変換波光が出力されることになる。
波長変換レーザ100aは、基本波光路A1、A3、A5からの変換波光a1、a3、a5を受光する複数の受光素子8a〜8cを有し、基本波光路A1、A3、A5のうち選択された基本波光路へのフィードバック制御を行うことができる好ましい形態である。
前記波長変換レーザ100aでは、位相整合条件が異なる複数の基本波光路A1〜A5を有し、位相整合条件の違いを利用して、光路の選択を行う。位相整合条件は、周囲環境や経時時間により影響を受け、初期条件から変化する場合がある。波長変換レーザ100aでは、複数の基本波光路からの出力を検出する複数の受光素子8a〜8cの検出結果に基づいてフィードバック制御を行うことにより、位相整合条件の変化にかかわらず、意図した基本波光路からの出力を優先させることができる。また、前記実施形態では、基本波光路A1、A3、A5からの変換波光a1、a3、a5を受光する3つの受光素子8a〜8cを備えた構成について説明したが、全ての基本波光路A1〜A5に対応する5つの受光素子を備え、全ての基本波光路A1〜A5についてフィードバック制御をすることができるようにしてもよい。
なお、複数の受光素子とは、一つの受光素子を分割して使用する形態も含む趣旨であり、例えば、Si−PDなどを用いることができる。
以下、図4を参照して実施の形態1の変形例について説明する。
図4は、実施の形態1の変形例に係る波長変換レーザ100b及びこの波長変換レーザ100bを備えた画像表示装置18の概略図を示す。上述した構成と同様の構成については、同じ番号を付してその説明を省略する。
波長変換レーザ100bは、DFBレーザ1と、レンズ2と、制御装置6と、波長変換素子14とを備えている。
DFBレーザ1は、前記発振波長制御部7により発信波長を変化可能な状態で、基本波(1064nm近傍)を出力する。
波長変換素子14は、図4に示すように台形(図4の左側の辺が上底及び下底に対して直角な台形)の側面形状を有し、この側面形状が図4の紙面と直交する方向に延びる柱状の外形とされている。この波長変換素子14には、図4の左右方向に並ぶ分極反転構造が形成されている。
より具体的に、波長変換素子14は、DFBレーザ1から出射された基本波に対し垂直な端面(図4の左側の端面)12と、傾斜する端面(図4の右側の端面)11とを有する。端面12は、基本波の入射部分にのみ基本波に対する反射防止(Anti Reflection:AR)コートを有し、その他の部分に基本波及び変換波光の反射(High Reflection:HR)コートを有する。端面11は、基本波に対するHRコートと、変換波光に対するARコートとを有し、波長変換光の出力面である。また、端面11は、端面12に対して傾斜している。
また、波長変換素子14は、分極反転周期構造を有するMgO:LiNbO3からなり、分極反転周期は、入射する基本波の向き(図4の左右方向)に形成されている。波長変換素子14により、基本波は、緑色の変換波光(532nm近傍)に変換される。端面11が端面12に対して傾斜しているため、端面12で反射する基本波の光路は、分極反転周期に対して傾くことになる。したがって、端面12での反射回数が多くなることに伴い、基本波光路が分極反転周期と交差する角度が大きくなる。
具体的に、基本波光路B1〜B5は、B1からB5の順で分極反転周期との交差角度が大きくなる。これに伴い、基本波光路B1〜B5における位相整合条件は、端面12での反射回数に応じてそれぞれ異なることになる。このため、発振波長制御部7を含む制御装置6によって基本波の波長を変調することにより、各基本波光路B1〜B5のうちの何れかの光路から優先して変換波光を出力させることができる。
次に、図4に示す画像表示装置18について説明する。
画像表示装置18は、前記波長変換レーザ100bと、波長変換レーザ100bからの変換波光を偏向するレンズ15と、レンズ15からの変換波光を入射させる導光板16と、導光板16から出射された変換波光により画像を表示するための液晶パネル17とを備えている。
波長変換レーザ100bを出射した波長変換光は、レンズ15を経て、導光板16に導かれる。導光板16は、側面から入射したビームの均一化を行うとともに、ビームを立ち上げて主面から出射することにより、液晶パネル17を背面から照明する。液晶パネル17は、画像信号に従い変換波光を変調することにより画像を表示する。液晶パネル17は、偏光板、液晶、TFTなどからなる一般的な透過型液晶パネルである。導光板16は、サブ導光板16a、16b、16cを有する。サブ導光板16a、16b、16cは、それぞれ入射した変換波光を均一化するとともに、液晶パネル17側(主面側)へ立ち上げるようになっている。
波長変換レーザ100bにおいて基本波光路B1から出射される変換波光b1は、レンズ15により偏向されてサブ導光板16aに入射する。同様に、基本波光路B3及び基本波光路B5から出射される変換波光b3、b5は、それぞれサブ導光板16b及びサブ導光板16cに入射する。そのため、波長変換レーザ100bにおいて、基本波光路B1、B3、B5のうちの何れの光路を選択するかに応じて、サブ導光板16a〜16cの何れの部分を光らせるのかを制御することができる。
このように、画像表示装置18では、サブ導光板16a〜16cのうち光らせるサブ導光板を選択することにより、画面内の輝度分布を制御することができる。例えば、真っ暗な画像を表示する場合、サブ導光板16a〜16cの全てを光らせずに、黒を表現する。また、波長変換レーザ100bにおいて選択することができる基本波光路の数が多い場合、これに併せてサブ導光板の数を増やす事もできる。
画像表示装置18は、基本波光路B1、B3、B5の中から選択された光路において生じた変換波光を波長変換レーザ100bから優先して出射し、この変換波光の変調を行う変調素子を有する好ましい形態である。このように、波長変換レーザ100bでは、変換波光を出射させる基本波光路を選択することができるので、画像表示装置に表示される画像の輝度分布を制御することができる。
具体的に、画像表示装置18は、サブ導光板16a〜16cを有しているので、液晶パネル17の光らせる部位を、サブ導光板16a〜16cの位置に対応して選択することができる。画像表示装置の輝度分布を制御するためには、表示させる画像のうち黒い部分に対応する位置に配置されたサブ導光板を光らせず、明るい部分に対応する位置に配置されたサブ導光板のみを強く光らせることで、画像のコントラストを上げることができる。また、導光板16の不要な領域を光らせないことにより、消費電力の低減を図ることができる。
なお、カラー画像を表示する場合は、前記波長変換レーザ100bに加えて赤及び青のレーザ光源を併用する。赤及び青の半導体レーザ光源をサブ導光板16a〜16c毎に設置することで、画像表示装置の輝度分布をサブ導光板毎に設定することができる。
(実施の形態2)
図5及び図6は、本発明の実施の形態2に係る波長変換レーザ200の概略構成図である。図5と図6とは、変換波光を優先して出射させる基本波光路を異ならせている点で相違している。
波長変換レーザ200は、基本波を出射するレーザ光源としてのファイバレーザ21と、ファイバレーザ21からの基本波を集光する集光レンズ22と、集光された基本波が入射する波長変換素子20と、波長変換素子20を挟むように配置された一対の凹面ミラー23、24と、波長変換素子20の温度を制御するための制御装置25とを備えている。
ファイバレーザ21は、シングルモード、かつ、10W以上の出力で直線偏光の基本波光を出射する。波長変換素子20の変換効率は、基本波のパワーに比例するため、前記ファイバレーザ21を利用することにより高い変換効率を得ることができ、高効率の波長変換レーザ200を得ることが可能となる。つまり、ファイバレーザ21は、波長変換レーザ200を高効率にすることができる好適な基本波レーザ光源である。
波長変換素子20は、分極周期反転構造を有するMgO:LiNbO3結晶からなり、長さ25mm、幅5mm、厚み1mmの直方体の形状をもつ。具体的に、波長変換素子20は、図5の左右方向(波長変換素子20の長さ方向)に並ぶ分極周期反転構造を有し、反転周期の擬似位相整合により変換波光である第2高調波を発生させる。図5及び6に示す縞模様は、周期構造の概略であり、反転周期は、約7μmであり、波長変換素子20内で略均一とされている。また、波長変換素子20の基本波が入射及び出射する端面(図5の左右の端面)には、基本波及び第2高調波(変換波光)を透過するコートが施されている。
波長変換素子20の温度は、制御装置25の温度制御部26により制御されている。具体的には、例えば、波長変換素子20の底面にペルチェ素子を取り付け、このペルチェ素子に対して温度制御部26によって電圧を印加することにより波長変換素子20の温度を制御することができる。このとき、波長変換素子20の温度を検出するための温度センサ等を設け、この温度センサによる検出温度に基づいて温度制御部26によりフィードバック制御を行うことが好ましい。また、温度制御は、波長変換素子20の全体について行ってもよいし、波長変換素子20の一部について行ってもよい。
凹面ミラー23は、基本波を反射し、かつ、第2高調波を透過するコートを有し、変換波光である第2高調波を出射するための出力面となっている。凹面ミラー24は、基本波及び第2高調波を反射するコートを有する。凹面ミラー23の曲率半径は、22mmであり、凹面ミラー24の曲率半径は、20mmであり、凹面ミラー間の距離は、空気換算長で約21mmである。基本波は、2つの凹面ミラー23、24間で反射することにより、波長変換素子20を異なる角度で複数回往復する。また、2つの凹面ミラー23、24は、波長変換素子20内の基本波光路で基本波を集光する役割を果たしている。これにより、変換効率が向上する。
ファイバレーザ21から出射した基本波は、集光レンズ22により波長変換素子20内にビームウェストを持つように集光される。集光レンズ22からの基本波は、凹面ミラー24により覆われていない波長変換素子20の端面から波長変換素子20内に入射する。波長変換素子20から出射した基本波は、凹面ミラー23で反射することにより、波長変換素子20に対して異なる入射角度で再入射する。そして、波長変換素子20から出射した基本波は、凹面ミラー24で反射することにより、波長変換素子20に対して異なる入射角度で再入射する。
このように、基本波は、凹面ミラー23と24との間を往復し、波長変換素子を異なる角度で複数回通過する。つまり、各凹面ミラー23、24の間には、それぞれ別々の方向を向く複数の基本波光路(図5ではE1〜E7のみを例示するが実際にはより多くの光路が規定されている)が規定されている。本実施形態では、これら基本波光路E1〜E7のうち、図5の左から右に向かう基本波光路E1、3、5、7において生じた変換波光e1、e3、e5、e7が凹面ミラー23を透過して出射するようになっている。以下、具体的に説明する。
基本波は、各凹面ミラー23、24の間の往復の過程において、波長変換素子20内の複数の箇所で集光する。具体的に、図5に示す構成では、凹面ミラー24で反射して図5の左から右へ波長変換素子20を通過するときに(基本波光路E1、E3、E5、E7を通過するときに)基本波光が集光し、変換効率が高くなっている。波長変換素子20内を基本波が通過するときに発生した波長変換光は、凹面ミラー23から出力される。一方、図5の右から左へ波長変換素子20を通過するとき(基本波光路E2、E4、E6を通過するとき)には、ビームウェストを過ぎた基本波光が発散しないように凹面ミラー23により集光された状態で、基本波光は、再び凹面ミラー24側へ戻される。
図5では、波長変換素子20の分極反転周期構造に対し直交して通過する基本波光路において位相整合するように温度制御部26により波長変換素子20の温度を制御し、その温度が保たれている。本実施形態においては、図5の下に位置する基本波光路E1と、上に位置する基本波光路E3とが波長変換素子20の分極反転周期構造に対し概ね直交しているため、これら基本波光路E1、E3においては、位相整合条件からのずれが少なく、変換効率が高くなり、発生する波長変換光が多い。特に、本実施形態における基本波光路E1は、波長変換素子20の分極反転周期構造に略直交しているため、この基本波光路E1における波長変換効率が最も大きい。これに対し、波長変換素子20を傾斜して通過する基本波光路E2、E4、E6では、位相整合条件からのずれが大きいため変換効率が低くなり、発生する波長変換光が少ない。したがって、図5の下に位置する基本波光路E1及び、上に位置する基本波光路E3において生じる変換波光が優先して出射される。
図6は、温度制御部26により波長変換素子20の温度を図5に示す例よりも1度低い温度に制御し、この温度が保たれた状態を示している。図6に示す状態においては、波長変換素子20の分極反転周期構造を斜めに横切る基本波光路E5、E7において位相整合条件からのずれ量が小さく、変換効率は、高くなる。これに対し、分極反転周期構造に概ね直交する基本波光路E1、E3においては、位相整合条件からのずれが大きく、変換効率が低くなる。つまり、図6に示す例では、波長変換素子20の分極反転構造を傾斜して通過する基本波光路E5、E7(図6の中段に位置する光路)において生じる変換波光を優先して出射させている。より具体的に、本実施形態では、基本波光路E7における波長変換効率が最も高く設定されている。
本実施の形態2は、温度制御部26により波長変換素子20の温度を変化させることにより、異なる角度で波長変換素子20を通過する基本波光路E1〜E7のそれぞれにおける位相整合条件からのずれ量を制御し、特定の基本波光路において生じた変換波光を優先して出射させる。実施の形態2では、特定の基本波光路において生じた変換波光を優先して出射させる制御を行うことにより、波長変換レーザ200から出射される変換波光の強度分布を制御することができる。
実施の形態2は、温度制御部26により波長変換素子20を温度制御することにより、特定の基本波光路から変換波光を優先して発生させる好ましい形態である。したがって、実施の形態2によれば、波長変換レーザ200から出射される波長を一定としたまま、出射される変換波光の角度や強度分布及び出射されるビーム数を制御することができる。また、波長変換素子20の一部について温度制御を行うことにより、波長変換素子20内に温度分布をもたせて、角度や強度分布およびビーム数を制御することもできる。
波長変換レーザ200では、出力面となる凹面ミラー23から変換波光が複数のビームとなって出射される。具体的に、本実施形態では、凹面ミラー23と凹面ミラー24とは、同軸となるように正対して配置されているため、波長変換素子20に入射した基本波は、凹面ミラー23と凹面ミラー24との間で波長変換素子20の幅方向(図5及び図6の上下方向)に広げられて、凹面ミラー23に到達する。つまり、基本波は、波長変換素子20の幅方向に存在する複数の基本波光路(E1〜E7)に沿って進行して、幅方向に並ぶ複数本のビームとして凹面ミラー23に到達する。このとき、凹面ミラー23、24間を往復する基本波光路E1〜E7は、波長変換素子20の幅方向に互いに異なる角度とされている。したがって、凹面ミラー23から出射される変換波光は、各基本波光路(E1、E3、E5、E7)で発生した変換波光(e1、e3、e5、e7)の合計であるため、波長変換素子の幅方向にマルチ化された横マルチビームとなって出射される。ここで、本実施の形態2のように基本波光路(E1、E3、E5、E7)の中の複数の基本波光路において生じた変換波光を出射しながら、何れかの基本波光路において生じた変換波光を優先して出射することは、各基本波光路E1、E3、E5、E7において発生する変換波光間のパワーバランスを制御することを意味する。つまり、波長変換レーザ200では、波長変換素子20の温度制御により、出射される横マルチビームの強度分布を制御することができる。
本実施の形態は、横マルチビームで出射される変換波光の強度分布を制御する好ましい形態である。本実施の形態に係る波長変換レーザ200は、複数の基本波光路を持つため、変換波光を複数のビームとして出力することができる。そして、これら複数のビームを線状の横マルチビームとすることにより、一つの光束として扱うことができる。ここで、横マルチビームの強度分布を制御することができることは、波長変換レーザ200を各種の応用製品に適用する利点となる。特に、映像や照明の分野では、強度の均一化が必要となるため、有効である。横マルチビームを出射する従来のレーザでは、マルチビームに含まれる各ビームの強度を制御することは煩雑であったが、本実施の形態に係る波長変換レーザ200では、変換効率を制御することによりマルチビームに含まれる各ビームの強度の制御を容易に行うことができる。また、変換波光を優先して出射するための基本波光路の切り換えを時間的に変化させることにより、横マルチビームの強度分布を時間的に変化させることができるので、干渉ノイズを低減することができる。
図6に示す例では、基本波が初めに波長変換素子に入射する基本波光路E1よりも、その後に波長変換素子を通過する基本波光路E2〜E7において発生する変換波光が多くなるように、温度制御部26により波長変換素子20の温度が制御されている。このようにすれば、波長変換素子20の発熱による破壊を抑制することができる。その理由は、以下の通りである。
基本波及び変換波のパワーが大きい場合、波長変換素子20の発熱及びこの発熱による波長変換素子20の破壊が生じるおそれがあり、波長変換素子20の光耐性が課題となる。そこで、本実施の形態について検討すると、波長変換レーザ200では、凹面ミラー23、24間で基本波を往復させるようにしているので、基本波は、凹面ミラー23、24における反射時のロスや、変換波光の発生時の消費により、前記往復の回数を重ねるに従い減衰する。このため、波長変換素子20に初めに入射する基本波光路E1において、前記した波長変換素子20の発熱と破壊のリスクが最も高くなる。一方、図6に示すように、基本波が初めに波長変換素子20に入射する基本波光路E1よりも、その後に波長変換素子20を通過する基本波光路E2〜E7において発生する変換波光が多くなるように制御することにより、波長変換素子20の発熱及びこの発熱による破壊というリスクを回避することができ好ましい。したがって、図6に示すような制御をすることで、信頼性の高い安定した出力を行う波長変換レーザを得ることができる。
(実施の形態3)
図7〜図9は本発明の実施の形態3に係る波長変換レーザ300の概略構成図である。図7と図9とは、変換波光を優先して出射させる基本波光路を異ならせている点で相違している。
波長変換レーザ300は、基本波をパルス発振するレーザ光源としてのモードロックレーザ31と、モードロックレーザ31からの基本波を集光する集光レンズ32と、集光された基本波が入射する波長変換素子30と、波長変換素子30を挟むように配置されたダイクロイックミラー33及び凹面ミラー34と、波長変換素子30に取り付けられた電極37と、波長変換素子30に印加する電圧を制御するための制御装置35とを備えている。
モードロックレーザ31は、40psecのパルス幅でレーザ発振を行う。
波長変換素子30は、分極周期反転構造を有するMgO:LiNbO3結晶からなり、20mmの長さを有する。また、波長変換素子30は、図7の左右方向(波長変換素子の長さ方向)に並ぶ分極周期反転構造を有し、反転周期の擬似位相整合により変換波光である第2高調波を発生させる。前記分極周期反転構造の反転周期は、波長変換素子30内で均一とされている。また、波長変換素子30の基本波が入射及び出射する端面(図7の左右の端面)には、基本波と第2高調波を透過するコートが施されている。そして、波長変換素子30の温度は、図外の定温保持部により一定に保たれている。
ダイクロイックミラー33は、基本波を反射し、かつ、第2高調波を透過するコートを有し、変換波光である第2高調波を出射するための出力面となっている。ダイクロイックミラー33は、モードロックレーザ31から出射される基本波の光軸に対して垂直な姿勢から、波長変換素子30の長さ方向(図7の左右方向)に傾けて配置してある。したがって、ダイクロイックミラー33で反射する基本波は、波長変換素子30の長さ方向に傾斜した光軸に沿って波長変換素子30に再度入射することになる。
凹面ミラー34は、基本波及び第2高調波を反射するコートを有する。凹面ミラー34は、基本波を集光する役割を果たしている。したがって、この凹面ミラー34と前記ダイクロイックミラー33との間には、それぞれ別々の方向を向く複数の基本波光路D1〜D5が規定される。そして、これらの基本波光路D1〜D5のうちの光路D3、D5に沿って伝播する基本波のビーム径を凹面ミラー34が絞っている。基本波光路D3及び基本波光路D5は、光路D1とは異なる角度で波長変換素子30を通過する。
電極37は、波長変換素子30の表裏の面(図8の上面と底面)にそれぞれ設けられた櫛歯状(梯子型)の電極である。電極37は、MgO: LiNbO3結晶のz軸方向における+z軸面と−z軸面にそれぞれ設けられている。より具体的に、電極37は、基本波光路D3及び基本波光路D5が規定された2の領域をそれぞれ挟むように合計4箇所に設けられている。各電極37における波長変換素子30の幅方向(図7の上下方向)に延びる複数の部分は、それぞれ波長変換素子30の分極反転の周期に対応して形成されている。
制御装置35は、前記各電極37間に印加される電圧を制御するための電圧制御部36を備えている。電圧制御部36は、基本波光路D3を挟むように配置された一対の電極37間、又は基本波光路D5を挟むように配置された一対の電極37間にそれぞれ電圧を印加することにより、基本波光路D3又は基本波光路D5が規定された波長変換素子30の一部の領域に電界を生じさせる。そして、電圧制御部36による電圧の印加と印加の停止とを切り換えることにより、基本波光路D3又は基本波光路D5が規定された波長変換素子30の領域に生じた電界のスイッチングを行うことができる。このように、波長変換素子30に対して電界を生じさせることにより、基本波光路D3及び基本波光路D5が規定された領域について波長変換素子30の屈折率が変化する。
モードロックレーザ31から出射された基本波のパルス光は、集光レンズ32により集光され、波長変換素子30に入射する。図7では、分極反転周期に対し垂直に入射する基本波光路D1で位相整合を行い、この基本波光路D1において高い変換効率で第2高調波が発生する。一方、基本波光路D3及び基本波光路D5では、基本波は、波長変換素子30に傾斜して入射して、分極反転周期構造に対し傾きをもって波長変換素子30を通過する。このため、基本波光路D3及びD5においては、位相整合条件からのずれが生じ、変換効率が低くなり、第2高調波は、ほとんど発生しない。このため、基本波光路D1で発生した変換波光d1のみがダイクロイックミラー33から出力される。なお、変換波光d1のパルス幅は約40psecである。
図9では、各電極37に対し電圧制御部36により電圧を印加することにより、基本波光路D3と基本波光路D5が規定された波長変換素子30の領域に電界を生じさせている。これにより、波長変換素子30の基本波光路における第2高調波と基本波との屈折率差が小さくなり、光路が分極反転周期構造に対して傾いていても、位相整合条件からのずれ量が小さくなる。したがって、基本波光路の基本波光路D3及び基本波光路D5においても変換効率が高くなる。その結果、図9に示す例では、基本波光路D1だけでなく、基本波光路D3及び基本波光路D5においても第2高調波が発生し、ダイクロイックミラー33から出力される。
ここで、基本波光路D1、基本波光路D3及び基本波光路D5の合計出力のパルス時間幅は、約100psecである。そして、基本波光路D1における出力光に対して基本波光路D3における出力光は、時間的に遅延しており、基本波光路D3の出力光に対して基本波光路D5の出力光は、時間的に遅延しているため、合計出力光のパルス幅は、モードロックレーザ31からの基本波に対して、2倍以上に拡大される。なお、光路数をさらに増やすことにより、合計出力光のパルス幅を5倍以上に増やすことも可能である。また、基本波光路D5に対応する領域にのみ電界を生じさせ、基本波光路D1と基本波光路D5において変換波光を発生させることにより、40psecの変換波光のパルスを45psec間隔で出力するここともできる。
本実施の形態3に係る波長変換レーザ300は、電圧制御部36により波長変換素子30に電界を生じさせることにより位相整合条件からのずれ量を制御し、変換波光が発生する基本波光路の基本波光路D1、D3、D5を選択する好ましい形態である。本実施の形態では、異なる角度で波長変換素子30を通過する基本波光路D1、D3、D5と、波長変換素子30に生じる電界により、位相整合条件からのずれ量を制御することができる。電界によるスイッチングにより、基本波光路の選択の切り替えを高速に行うことができる。例えば本実施の形態では、パルス光の繰り返し周期内に基本波光路の選択を切り替えることができる。
波長変換レーザ300は、基本波をパルス発振するモードロックレーザ31を用い、制御装置35により変換波光を出射する基本波光路の数を制御することにより、出射光のパルス幅や間隔を制御する好ましい形態である。図7と図9とでは、変換波光を出射する基本波光路の数を1から3に切り換えることにより、出射光のパルス幅を40psecから100psecに大きくすることができる。基本波光路の数によりパルス幅を制御することにより、パルス幅を数倍にすることが可能となる。また、基本波光路D1と基本波光路D5とを選択した場合(図9の場合)のように、非常に短いパルス間隔のパルス光を作成することができる。本実施の形態を用いることにより、他のレーザでは、実現することが困難なパルス幅およびパルス間隔での出射を行うことができる。
次に、図10に示すレーザ加工装置39について説明する。
図10は、実施の形態3の変形例に係るレーザ加工装置39の概略図を示す。
レーザ加工装置39は、前記波長変換レーザ300と、波長変換レーザ300からの変換波光を集光するレンズ38とを備えている。
波長変換レーザ300は、前記制御装置36により、基本波光路D1のみを選択して変換波光d1を出力する場合と、基本波光路D1〜D3から変換波光d1、d3、d5を出力する場合とのスイッチングが可能である。
レンズ38は、波長変換レーザ300からの変換波光を集光する。
前記レーザ加工装置39を用いて加工を行なう場合には、加工対象物Tの表面をレンズ38の集光位置付近に配置する。ここで、レーザ加工装置39は、上述のように、変換波光d1のみを出力する状態と、変換波光d1〜d3を出力する状態とを切り換えることができるので、加工対象物Tに対しては1つのスポットにおいてビームを照射する場合と、ライン状に並ぶ3つのスポットにおいてビームを照射する場合とを選択することができる。
本実施の形態に係るレーザ加工装置39は、波長変換レーザ300の基本波光路を選択することにより、加工対象物Tに対するビームの照射範囲(スポット形状)を変化させることができる。ビームの照射範囲を変化させることにより、加工の種類に併せたビームの照射範囲を設定することができ、加工時間の短縮や加工精度の向上を図ることができる。また、本実施の形態に係るレーザ加工装置39は、機械的な機構を用いることなく、ビームの照射範囲を変化させることができるため、信頼性が高い。さらに、前記レーザ加工装置39では、変換波光を優先して出射させる基本波光路D1〜D3を、時間的に連続的に変化させることができるため、ビーム出射中のスポット形状変化や、中間的なスポット形状を作成することができる。このため、複雑な加工を迅速に行うことができる。
なお、上述した実施の形態は、上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。当然、本発明の各実施の形態を組み合わせて用いることもできる。なお、複数の基本波光源を用いたり、第2高調波の他、差周波、和周波などの変換波を出力する構成としてもよい。また、波長変換素子内の分極反転周期を数種類の周期を有するようにしてもよい。
本発明は、基本波が1対の基本波反射面の間で反射して、波長変換素子を異なる角度で複数回通過し、少なくとも一方の反射面は、波長変換光を透過する出力面となり、波長変換素子を通過する複数の基本波光路で波長変換光が発生し得るとき、特定の基本波光路の変換波光を優先して出射させる制御を行う制御装置を有することを特徴としている。
本構成では、ひとつの波長変換素子内で、角度が異なる基本波光路をもつことにより複数の位相整合条件をもつこととなる。特定の基本波光路の位相整合条件にあわせた基本波波長又は温度などを制御装置により設定することにより、特定の基本波光路における変換効率が高くなる。一方、特定の基本波光路以外の基本波光路においては、位相整合条件から外れるため、変換効率が低くなり、その結果として、特定の基本波光路の変換波光が優先して出射される。特定の基本波光路からの波長変換光を優先して出射することにより、出射される波長変換光の角度、強度分布又はビーム数などを制御することができる。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明の一局面に係る波長変換レーザは、基本波を出射する基本波光源と、前記基本波光源からの基本波を変換波光に変換するための波長変換素子と、前記波長変換素子を異なる角度で通過する複数の基本波光路を規定するように前記基本波を反射する1対の基本波反射面と、前記1対の基本波反射面の間で別々の方向を向く前記複数の基本波光路のうち、特定の基本波光路における波長変換効率が最も高くなるように波長変換効率を制御する制御装置とを備え、前記1対の基本波反射面のうち少なくとも一方の反射面は、前記変換波光を透過する出力面である。
本発明によれば、波長変換素子を異なる角度で通過する複数の基本波光路が規定されているので、1対の基本波反射面の間で別々の方向を向く複数の基本波光路に対応して複数の位相整合条件が存在することになる。そして、本発明では、制御装置によって各基本波光路のうちの特定の光路における波長変換効率が最も高くなるように波長変換効率を制御することができるので、当該基本波光路に対応する方向(角度)に変換波光を優先して出射させることができる。
したがって、本発明によれば、出射する変換波光の角度、強度分布、及びパルス時間幅の制御を行うことができる波長変換レーザを提供することができる。
なお、本発明に係る1対の基本波反射面は、基本波光を反射するとともに、1対の基本波反射面の少なくとも一方が基本波光の光路に角度変化をもたらす面となっていればよい。例えば、基本波反射面は、平面ではなく凸面や凹面形状となっていてもよく、波長変換素子の端面を基本波反射面としてもよい。反射面の形状は、球面や非球面、およびシリンドリカル面としてもよい。
具体的に、前記制御装置は、前記波長変換素子の温度を制御する温度制御部を備え、前記温度制御部は、前記波長変換素子を温度制御することにより前記特定の基本波光路を選択する構成とすることができる。
このようにすれば、波長変換素子の温度を制御して波長変換素子の位相整合条件を変化させることにより、各基本波光路における波長変換効率を制御することができる。
また、前記制御装置は、前記基本波光源による前記基本波の発振波長を制御する発振波長制御部を備え、前記発振波長制御部は、前記基本波の発振波長を制御することにより前記特定の基本波光路を選択する構成とすることもできる。
このようにすれば、基本波光源による基本波の発振波長を変化させることにより、複数の基本波光路における波長変換効率を制御することができる。
さらに、前記制御装置は、前記波長変換素子に電界を生じさせるために前記波長変換素子に電圧を印加する電圧制御部を備え、前記電圧制御部は、前記波長変換素子に電界を生じさせることにより前記特定の基本波光路を選択する構成とすることもできる。
このようにすれば、波長変換素子に電圧を印加して波長変換素子の屈折率を変化させることにより、複数の基本波光路における波長変換効率を制御することができる。
前記波長変換レーザにおいて、前記各基本波光路の少なくとも1つから出射された変換波光の光量を検出可能な受光素子をさらに備え、前記制御装置は、前記受光素子により検出された光量に基づいて前記特定の基本波光路における波長変換効率が最も大きくなるように波長変換効率を制御することが好ましい。
この構成によれば、フィードバック制御を行うことにより、特定の基本波光路における波長変換効率を確実に最も高いものにすることが可能となる。
前記波長変換レーザにおいて、前記制御装置は、前記各基本波光路のうち少なくとも2以上の光路において生じた変換波光を同時にマルチビームとして出射させるとともに、前記マルチビームの強度分布を制御することが好ましい。
この構成によれば、少なくとも2以上の光路からマルチビームとして変換波光を出射するようにしているので、前記各光路における波長変換効率を制御することにより、マルチビームの強度分布を制御することができる。
前記波長変換レーザにおいて、前記基本波光源は、前記基本波をパルス発振し、前記制御装置は、前記各基本波光路のうち前記変換波光を出射させる光路の数を増減することにより、前記出力面から出射する変換波光のパルス幅、間隔の少なくとも一方を制御することが好ましい。
このように基本波をパルス発振させた場合、基本波光源から各基本波光路までの光路長に差が存在することに伴い、一の基本波光路において変換波光が発生していない時点においても他の基本波光路において変換波光が発生している状況が生じることとなる。そこで、前記構成では、前記光路長の差を利用して、変換波光を出射させる基本波光路の数を増減することにより、出力面から出射する変換波光のパルス幅や間隔を制御することができる。
前記波長変換レーザにおいて、前記制御部は、前記各基本波光路のうち前記基本波が初めに通過する光路よりもその後に通過する光路における波長変換効率が大きくなるように波長変換効率を制御することが好ましい。
この構成によれば、発熱に伴う波長変換素子の破壊を抑制することができる。その理由は以下の通りである。基本波が初めに通過する基本波光路では基本波のパワーが大きいため、この基本波光路における波長変換効率を大きくするとそこで生じる変換波光のパワーも大きなものとなり、この変換波光の吸収に伴う波長変換素子の発熱量は大きなものとなる。これに対し、前記構成のように、初めての基本波光路を通過した後の基本波のパワーは、波長変換が行われた分だけ小さなものとなるため、その後の基本波光路における波長変換効率を大きくしても、これにより生じる変換波光のパワーは小さく、波長変換素子の発熱量も小さくなる。したがって、波長変換素子の破壊を抑制することができる。
前記波長変換レーザにおいて、前記制御装置は、前記出力面から出射された変換波光が所定の範囲を走査するように、前記変換波光を出射する基本波光路を順次切り換えることが好ましい。
この構成によれば、所定の範囲を走査する走査光として変換波光を出力することができる。
本発明の他の局面に係る画像表示装置は、前記波長変換レーザと、所定の画像を表示するために前記波長変換レーザから出射された変換波光の変調を行う変調素子とを備えている。
本発明によれば、波長変換レーザから特定の方向に出射された変換波光を利用して、表示される画像に応じて変調素子の適所に変換波光を導くことができるため、画像のコントラストの向上及び消費電力の低減を図ることができる。
本発明の他の局面に係るレーザ加工装置は、前記波長変換レーザと、前記波長変換レーザから出射された変換波光を集光する集光光学系とを備え、前記各基本波光路のうち変換波光を出射させる光路の数を増減することにより、前記変換波光のスポット形状が変化する。
本発明によれば、加工の種別に応じて変換波光のスポット形状を変化させることにより、加工時間の短縮や加工精度の向上を図ることができる。
本発明は、基本波光源からの基本波の波長変換を行う波長変換レーザに利用することができる。
本発明は、基本波の波長変換を行ってレーザ出力をする波長変換レーザに関するものである。
従来から、波長変換素子の非線形光学現象を用いて、基本波レーザの波長を第2高調波(Second Harmonic Generation : SHG)、和周波、差周波等の変換波の波長に変換して出力する波長変換レーザがある。
波長変換レーザは、例えば、図11に示すように、基本波レーザ光源101と、レーザ光源101から出射された基本波レーザ光を集光するレンズ102と、集光された基本波レーザ光を第2高調波に変換する波長変換素子103と、基本波レーザ光と高調波レーザ光とを分離するダイクロイックミラー104からなる。
波長変換素子103は、非線形光学結晶からなり、基本波の波長変換を行う。具体的に、波長変換素子103は、基本波と変換波との位相が整合するように適切に調整された結晶の方位や分極反転構造等を有している。特に、分極反転構造を有する波長変換素子は、擬似位相整合により低パワーでも高効率の波長変換を行うことができ、設計により様々な波長変換を行うことができる。分極反転構造とは、波長変換素子103の自発分極を周期的に反転させた領域が設けられた構造である。
基本波から第2高調波に変換する変換効率ηは、波長変換素子の相互作用長をL、基本波のパワーをP、波長変換素子でのビーム断面積をA、位相整合条件からのずれをΔkとすると、以下のように表すことができる。
η ∝ L2 P / A × sinc2(Δk L/2)
前記の式において、位相整合条件からのずれが生じると、変換効率が低下し、第2高調波(変換波)の発生が低下する。このため、位相整合条件からのずれが生じないように、非線形光学結晶の温度を許容範囲内の所定温度とする制御が行われている。
例えば、特許文献1のように、変換波の光強度を検出する検出手段と、非線形結晶の温度調節手段とを用いて、変換波の光強度が目標値に収束するように温度調節手段の駆動を制御することが提案されている。
特許文献1に係る構成によれば、高い変換効率を得ることや波長変換レーザの出力を制御することができる。
しかし、特許文献1は、波長変換効率の制御により波長変換レーザから出射される変換波光の強度分布を制御することは提案されていない。
本発明は、波長変換効率を制御することにより、出射される変換波光の強度分布を制御することができる波長変換レーザ、及びこれを用いた画像表示装置及びレーザ加工装置を提供することを目的としている。
本発明の一局面に係る波長変換レーザは、基本波を出射する基本波光源と、前記基本波光源からの基本波を変換波光に変換するための波長変換素子と、前記波長変換素子を異なる角度で通過する複数の基本波光路を規定するように前記基本波を反射する1対の基本波反射面と、前記1対の基本波反射面の間で別々の方向を向く前記複数の基本波光路のうち、特定の基本波光路における波長変換効率が最も高くなるように波長変換効率を制御する制御装置とを備え、前記1対の基本波反射面のうち少なくとも一方の反射面は、前記変換波光を透過する出力面である。
本発明の他の局面に係る画像表示装置は、前記波長変換レーザと、所定の画像を表示するために前記波長変換レーザから出射された変換波光の変調を行う変調素子とを備えている。
本発明の他の局面に係るレーザ加工装置は、前記波長変換レーザと、前記波長変換レーザから出射された変換波光を集光する集光光学系とを備え、前記各基本波光路のうち変換波光を出射させる光路の数を増減することにより、前記変換波光のスポット形状が変化する。
本発明によれば、波長変換効率を制御することにより、出射される変換波光の強度分布を制御することができる。
本発明によれば、波長変換効率を制御することにより、出射される変換波光の強度分布を制御することができる。
図1は、本発明の実施の形態1に係る波長変換レーザの概略構成図である。
図2は、図1の波長変換レーザにおいて変換波光を優先して出射する基本波光路を変更した状態を示す概略構成図である。
図3は、本発明の実施の形態1の変形例に係る波長変換レーザの概略構成図である。
図4は、実施の形態1の変形例に係る波長変換レーザ及びこの波長変換レーザを備えた画像表示装置の概略構成図である。
図5は、本発明の実施の形態2に係る波長変換レーザの概略構成図である。
図6は、図5の波長変換レーザにおいて変換波光を優先して出射する基本波光路を変更した状態を示す概略構成図である。
図7は、本発明の実施の形態3に係る波長変換レーザの概略構成図である。
図8は、図7の波長変換素子及び電極を拡大して示す概略斜視図である。
図9は、図7の波長変換レーザにおいて変換波光を優先して出射する基本波光路を変更した状態を示す概略構成図である。
図10は、本発明の実施の形態3に係る波長変換レーザを備えたレーザ加工装置の概略構成図である。
図11は、従来の波長変換レーザの概略構成図である。
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
以下本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1及び図2は、本発明の実施の形態1に係る波長変換レーザ100の概略構成図である。図1と図2とは、変換波光を優先して出射させる基本波光路を異ならせている点で相違している。
波長変換レーザ100は、基本波を出射するレーザ光源としてのdistributed feedback(以下、DFBと略す)レーザ1と、DFBレーザ1から出射した基本波をコリメートするコリメータ2と、コリメートされた基本波を入射させる波長変換素子10と、波長変換素子10を挟むように配置された一対のダイクロイックミラー(基本波反射面、出力面)3、4と、基本波を吸収するためのビームディフューザ5と、波長変換効率を制御するための制御装置6とを備えている。
DFBレーザ1は、LDの活性層領域に設けられたグレーティングを有し、縦シングルモード出力が容易に得られるようになっている。DFBレーザ1は、発振波長を決定するグレーティングを電界もしくは温度によってチューニングすることにより、発振波長の変調を行うことができるようになっている。具体的に、DFBレーザ1の発振波長は、1064〜1066nmの範囲内から選択することができ、DFBレーザ1は、各波長で縦シングルモードの出力を行うようになっている。
波長変換素子10は、分極周期反転構造を有するMgO:LiTaO3結晶からなり、直方体の形状をもつ。具体的に、波長変換素子10は、図1の左右方向に並ぶ分極周期反転構造を有し、反転周期の擬似位相整合により基本波からの変換波光として第2高調波を発生させる。波長変換素子10は、波長変換素子10内で均一な分極反転周期を有し、定温保持機構により一定温度に保たれている。また、波長変換素子10の基本波が入射又は出射する端面(図1の左右の端面)には、基本波及び第2高調波を透過するコートが施されている。
ダイクロイックミラー3、4は、波長変換素子10を異なる角度で通過する複数の基本波光路を規定するように、波長変換素子10の両側に設けられている。以下、ダイクロイックミラー3、4について具体的に説明する。
ダイクロイックミラー3は、基本波を反射し、かつ、第2高調波を透過するコートをもつ。また、ダイクロイックミラー3は、DFBレーザ1を出射する基本波の光軸に対して垂直な姿勢から、波長変換素子10の長さ方向(図1の左右方向)に傾けて配置してある。したがって、ダイクロイックミラー3で反射する基本波は、波長変換素子10の長さ方向に傾斜した光軸に沿って前記波長変換素子10に再度入射することになる。
ダイクロイックミラー4も、基本波を反射し、かつ、第2高調波を透過するコートをもつ。また、ダイクロイックミラー4は、前記ダイクロイックミラー3と図1において左右対称となる角度で傾斜して配置されている。したがって、ダイクロイックミラー4で反射する基本波は、波長変換素子10の長さ方向に傾斜した光軸に沿って波長変換素子10に再度入射することになる。
このようにダイクロイックミラー3、4が互いに傾斜して配置されていることにより、これらダイクロイックミラー3、4の間には、徐々に図1の上に向かう基本波光路A1〜A5が規定される。この基本波光路A1〜A5は、ダイクロイックミラー3、4の間でそれぞれ別々の方向を向く。各基本波光路A1〜A5は、A1からA5の順に波長変換素子10の分極反転周期に対する傾斜角が大きくなり、これに伴い、基本波が通過する分極反転の周期も長くなる。ダイクロイックミラー3及び4は、波長変換光の出力面を構成する。
制御装置6は、DFBレーザ1から発振される基本波の波長を制御するための発振波長制御部7を備えている。発振波長制御部7は、前記基本波光路A1〜A5のうち、特定の光路における波長変換効率が最大となるように基本波の波長を制御する。具体的に、発振波長制御部7は、DFBレーザ1のグレーティング部に所望の電界を生じさせることにより、発振波長を調整するようになっている。
DFBレーザ1から出射された基本波は、コリメータ2によりコリメートされ波長変換素子10に入射する。図1に示す例では、DFBレーザ1の発振波長が発振波長制御部7により1064nmに設定されることにより、分極反転周期に対して垂直に入射する基本波光路A1において位相整合が行われ、この基本波光路A1において最も高い変換効率で変換波光(第2高調波)a1が発生する。このとき、基本波光路A2〜A5では、ダイクロイックミラー3、4の反射により波長変換素子10の分極反転構造に対して傾斜していることに伴い、位相整合条件からのずれが生じ、変換効率が低くなり、変換波光(第2高調波)a2〜a5は、わずかしか発生しない。このため、変換波光の出力面となるダイクロイックミラー3及び4からは、基本波光路A1で発生した変換波光a1が優先して出射される。なお、波長変換されなかった残りの基本波は、ビームディフューザ5に達し、吸収される。
図2に示す例では、DFBレーザ1の発振波長が発振波長制御部7により1066nmに設定されることにより、分極反転周期に対し最も傾斜している基本波光路A5において位相整合が行われ、この基本波光路A5において最も高い変換効率で第2高調波が発生する。このとき、基本波光路A1〜A4では、分極反転周期が位相整合条件を満たすための周期よりも短いため、位相整合条件からのずれが生じて変換効率が低くなり、第2高調波は、わずかしか発生しない。そのため、変換波光の出力面となるダイクロイックミラー3及び4からは、基本波光路A5で発生した変換波光a5が優先して出力される。
同様にDFBレーザ1の発振波長を発振波長制御部7により変調することにより、位相整合を行う基本波光路を基本波光路A2、A3、A4の中から選択して、各光路A2〜A4において生じた変換波光a2〜a4を優先して出射させることができる。
前記波長変換レーザ100を用いて走査光を出射させることもできる。具体的に、波長変換レーザ100の制御装置6によって、DFBレーザ1の発振波長を1064〜1066nmの範囲内で一定周期で変調することにより、選択する基本波光路をA1→A2→A3→A4→A5→A4→A3→A2→A1→A2・・・と順次に変化させることができる。このとき出射される変換波光の出射角度は、選択する基本波光路に応じて異なるため、変換波光は、順次異なる角度で出射され、波長変換光の走査が繰り返し行われる。この走査速度は、発振波長の変調速度で制御することができる。上述した構成は、制御装置6により基本波光路の選択を順次に行うことにより、出射される波長変換光の走査を行う好ましい形態である。このようにすれば、可動ミラー等を用いず波長変換レーザのみでビーム走査を行うことができるため、部品点数の削減や損失の低減が可能となる。また、前記構成のように、基本波の発振波長の変調により変換波光の走査を行わせる場合、各走査位置における変換波光の波長が異なることになるため、ひとつの光源を用いて分光計測などを行うことができる。
本発明の基本波レーザ光源には、DFBレーザの他、半導体レーザ、ファイバーレーザ、固体レーザなど各種レーザ光源を用いることができる。本実施の形態1では、基本波のビーム整形に用いられるコリメータ2を用いているが、波長変換素子への基本波のビーム整形や拡がり角の制御を行うために各種光学部品を用いることができる。また波長変換素子としては、各種非線形材料を用いることができる。例えば、LBOやKTP、分極反転周期構造をもつLiNbO3やLiTaO3を用いることができる。
本実施の形態では、ダイクロイックミラー3、4として2枚の平面ミラーを用い、これら平面ミラーの双方を傾斜して配置しているが、1枚のみを傾斜して配置してもよい。平面ミラーを傾斜させる角度は、基本波の光路にある程度の角度変化をもたせるために、少なくとも1度以上であることが好ましい。
また、本実施の形態では、一対のダイクロイックミラー3、4の双方を変換波光の出力面としているが、各ダイクロイックミラー3、4の少なくとも一方が波長変換光を出力する面となっていればよい。
なお、本実施の形態は、発振波長制御部7により基本波の発振波長の変調を行い、優先する基本波光路A1〜A5を選択する好ましい形態である。このように基本波の発振波長を変調させることで、波長変換光の角度及び強度分布だけでなく、出射する変換波光の波長の変調も行うこともできる。発振波長の変調を行う場合、変調の周波数を100Hz以上に設定して、変調を高速で行うことが好ましい。変調を高速に行うことにより、画像表示や照明として波長変換光を用いる場合のみかけのスペクトル幅を太くし、干渉性を低減させることができる。
また、DFBレーザ1の発振波長を高速に変化させることにより、出射する変換波光の角度変化を高速化することができる。発振波長の高速変調には、本実施の形態の様にDFBレーザ1を用い、グレーティング部の電界変調を用いることが好ましい。このようにすれば、非常に高速な発振波長の制御を行うことができる。
以下、図3を参照して実施の形態1の変形例について説明する。
図3は、実施の形態1の変形例に係る波長変換レーザ100aの概略図を示す。前記波長変換レーザ100と同様の構成については、同じ番号を付して説明を省略する。
波長変換レーザ100aは、波長変換レーザ100の構成に加えて、基本波光路A1、A3、A5から出射される変換波光a1、a2、a3の一部を受光する受光素子8a、8b、8cと、サンプラー65とを有する。
受光素子8a〜8cは、受光した変換波光の光量を検出するとともに、検出値の差分に基づいてどの受光素子8a〜8cへの入射光量が最も多いかを検出する。
サンプラー65は、波長変換素子10から出射される変換波光の一部を反射して、受光素子8a〜8cに導くための光学部品である。具体的に、サンプラー65は、低反射コートがされたガラス板である。
波長変換レーザ100aでは、制御装置6の発振波長制御部7によりDFBレーザ1の波長を変えることによって、変換波光を優先して出射させる基本波光路A1〜A5を選択することができる。受光素子8a〜8cのうち入射光量が最も多い受光素子の検出結果に基づいて、基本波光路A1、A3、A5のうち変換波光が優先して出射された基本波光路が検出される。制御装置6は、受光素子8a〜8cの検出結果に基づいて検出された基本波光路と、発振波長制御部7により選択された基本波光路が一致するようにフィードバック制御を行う。したがって、選択された基本波光路から常に優先して変換波光が出力されることになる。
波長変換レーザ100aは、基本波光路A1、A3、A5からの変換波光a1、a3、a5を受光する複数の受光素子8a〜8cを有し、基本波光路A1、A3、A5のうち選択された基本波光路へのフィードバック制御を行うことができる好ましい形態である。
前記波長変換レーザ100aでは、位相整合条件が異なる複数の基本波光路A1〜A5を有し、位相整合条件の違いを利用して、光路の選択を行う。位相整合条件は、周囲環境や経時時間により影響を受け、初期条件から変化する場合がある。波長変換レーザ100aでは、複数の基本波光路からの出力を検出する複数の受光素子8a〜8cの検出結果に基づいてフィードバック制御を行うことにより、位相整合条件の変化にかかわらず、意図した基本波光路からの出力を優先させることができる。また、前記実施形態では、基本波光路A1、A3、A5からの変換波光a1、a3、a5を受光する3つの受光素子8a〜8cを備えた構成について説明したが、全ての基本波光路A1〜A5に対応する5つの受光素子を備え、全ての基本波光路A1〜A5についてフィードバック制御をすることができるようにしてもよい。
なお、複数の受光素子とは、一つの受光素子を分割して使用する形態も含む趣旨であり、例えば、Si−PDなどを用いることができる。
以下、図4を参照して実施の形態1の変形例について説明する。
図4は、実施の形態1の変形例に係る波長変換レーザ100b及びこの波長変換レーザ100bを備えた画像表示装置18の概略図を示す。上述した構成と同様の構成については、同じ番号を付してその説明を省略する。
波長変換レーザ100bは、DFBレーザ1と、レンズ2と、制御装置6と、波長変換素子14とを備えている。
DFBレーザ1は、前記発振波長制御部7により発信波長を変化可能な状態で、基本波(1064nm近傍)を出力する。
波長変換素子14は、図4に示すように台形(図4の左側の辺が上底及び下底に対して直角な台形)の側面形状を有し、この側面形状が図4の紙面と直交する方向に延びる柱状の外形とされている。この波長変換素子14には、図4の左右方向に並ぶ分極反転構造が形成されている。
より具体的に、波長変換素子14は、DFBレーザ1から出射された基本波に対し垂直な端面(図4の左側の端面)12と、傾斜する端面(図4の右側の端面)11とを有する。端面12は、基本波の入射部分にのみ基本波に対する反射防止(Anti Reflection:AR)コートを有し、その他の部分に基本波及び変換波光の反射(High Reflection:HR)コートを有する。端面11は、基本波に対するHRコートと、変換波光に対するARコートとを有し、波長変換光の出力面である。また、端面11は、端面12に対して傾斜している。
また、波長変換素子14は、分極反転周期構造を有するMgO:LiNbO3からなり、分極反転周期は、入射する基本波の向き(図4の左右方向)に形成されている。波長変換素子14により、基本波は、緑色の変換波光(532nm近傍)に変換される。端面11が端面12に対して傾斜しているため、端面12で反射する基本波の光路は、分極反転周期に対して傾くことになる。したがって、端面12での反射回数が多くなることに伴い、基本波光路が分極反転周期と交差する角度が大きくなる。
具体的に、基本波光路B1〜B5は、B1からB5の順で分極反転周期との交差角度が大きくなる。これに伴い、基本波光路B1〜B5における位相整合条件は、端面12での反射回数に応じてそれぞれ異なることになる。このため、発振波長制御部7を含む制御装置6によって基本波の波長を変調することにより、各基本波光路B1〜B5のうちの何れかの光路から優先して変換波光を出力させることができる。
次に、図4に示す画像表示装置18について説明する。
画像表示装置18は、前記波長変換レーザ100bと、波長変換レーザ100bからの変換波光を偏向するレンズ15と、レンズ15からの変換波光を入射させる導光板16と、導光板16から出射された変換波光により画像を表示するための液晶パネル17とを備えている。
波長変換レーザ100bを出射した波長変換光は、レンズ15を経て、導光板16に導かれる。導光板16は、側面から入射したビームの均一化を行うとともに、ビームを立ち上げて主面から出射することにより、液晶パネル17を背面から照明する。液晶パネル17は、画像信号に従い変換波光を変調することにより画像を表示する。液晶パネル17は、偏光板、液晶、TFTなどからなる一般的な透過型液晶パネルである。導光板16は、サブ導光板16a、16b、16cを有する。サブ導光板16a、16b、16cは、それぞれ入射した変換波光を均一化するとともに、液晶パネル17側(主面側)へ立ち上げるようになっている。
波長変換レーザ100bにおいて基本波光路B1から出射される変換波光b1は、レンズ15により偏向されてサブ導光板16aに入射する。同様に、基本波光路B3及び基本波光路B5から出射される変換波光b3、b5は、それぞれサブ導光板16b及びサブ導光板16cに入射する。そのため、波長変換レーザ100bにおいて、基本波光路B1、B3、B5のうちの何れの光路を選択するかに応じて、サブ導光板16a〜16cの何れの部分を光らせるのかを制御することができる。
このように、画像表示装置18では、サブ導光板16a〜16cのうち光らせるサブ導光板を選択することにより、画面内の輝度分布を制御することができる。例えば、真っ暗な画像を表示する場合、サブ導光板16a〜16cの全てを光らせずに、黒を表現する。また、波長変換レーザ100bにおいて選択することができる基本波光路の数が多い場合、これに併せてサブ導光板の数を増やす事もできる。
画像表示装置18は、基本波光路B1、B3、B5の中から選択された光路において生じた変換波光を波長変換レーザ100bから優先して出射し、この変換波光の変調を行う変調素子を有する好ましい形態である。このように、波長変換レーザ100bでは、変換波光を出射させる基本波光路を選択することができるので、画像表示装置に表示される画像の輝度分布を制御することができる。
具体的に、画像表示装置18は、サブ導光板16a〜16cを有しているので、液晶パネル17の光らせる部位を、サブ導光板16a〜16cの位置に対応して選択することができる。画像表示装置の輝度分布を制御するためには、表示させる画像のうち黒い部分に対応する位置に配置されたサブ導光板を光らせず、明るい部分に対応する位置に配置されたサブ導光板のみを強く光らせることで、画像のコントラストを上げることができる。また、導光板16の不要な領域を光らせないことにより、消費電力の低減を図ることができる。
なお、カラー画像を表示する場合は、前記波長変換レーザ100bに加えて赤及び青のレーザ光源を併用する。赤及び青の半導体レーザ光源をサブ導光板16a〜16c毎に設置することで、画像表示装置の輝度分布をサブ導光板毎に設定することができる。
(実施の形態2)
図5及び図6は、本発明の実施の形態2に係る波長変換レーザ200の概略構成図である。図5と図6とは、変換波光を優先して出射させる基本波光路を異ならせている点で相違している。
波長変換レーザ200は、基本波を出射するレーザ光源としてのファイバレーザ21と、ファイバレーザ21からの基本波を集光する集光レンズ22と、集光された基本波が入射する波長変換素子20と、波長変換素子20を挟むように配置された一対の凹面ミラー23、24と、波長変換素子20の温度を制御するための制御装置25とを備えている。
ファイバレーザ21は、シングルモード、かつ、10W以上の出力で直線偏光の基本波光を出射する。波長変換素子20の変換効率は、基本波のパワーに比例するため、前記ファイバレーザ21を利用することにより高い変換効率を得ることができ、高効率の波長変換レーザ200を得ることが可能となる。つまり、ファイバレーザ21は、波長変換レーザ200を高効率にすることができる好適な基本波レーザ光源である。
波長変換素子20は、分極周期反転構造を有するMgO:LiNbO3結晶からなり、長さ25mm、幅5mm、厚み1mmの直方体の形状をもつ。具体的に、波長変換素子20は、図5の左右方向(波長変換素子20の長さ方向)に並ぶ分極周期反転構造を有し、反転周期の擬似位相整合により変換波光である第2高調波を発生させる。図5及び6に示す縞模様は、周期構造の概略であり、反転周期は、約7μmであり、波長変換素子20内で略均一とされている。また、波長変換素子20の基本波が入射及び出射する端面(図5の左右の端面)には、基本波及び第2高調波(変換波光)を透過するコートが施されている。
波長変換素子20の温度は、制御装置25の温度制御部26により制御されている。具体的には、例えば、波長変換素子20の底面にペルチェ素子を取り付け、このペルチェ素子に対して温度制御部26によって電圧を印加することにより波長変換素子20の温度を制御することができる。このとき、波長変換素子20の温度を検出するための温度センサ等を設け、この温度センサによる検出温度に基づいて温度制御部26によりフィードバック制御を行うことが好ましい。また、温度制御は、波長変換素子20の全体について行ってもよいし、波長変換素子20の一部について行ってもよい。
凹面ミラー23は、基本波を反射し、かつ、第2高調波を透過するコートを有し、変換波光である第2高調波を出射するための出力面となっている。凹面ミラー24は、基本波及び第2高調波を反射するコートを有する。凹面ミラー23の曲率半径は、22mmであり、凹面ミラー24の曲率半径は、20mmであり、凹面ミラー間の距離は、空気換算長で約21mmである。基本波は、2つの凹面ミラー23、24間で反射することにより、波長変換素子20を異なる角度で複数回往復する。また、2つの凹面ミラー23、24は、波長変換素子20内の基本波光路で基本波を集光する役割を果たしている。これにより、変換効率が向上する。
ファイバレーザ21から出射した基本波は、集光レンズ22により波長変換素子20内にビームウェストを持つように集光される。集光レンズ22からの基本波は、凹面ミラー24により覆われていない波長変換素子20の端面から波長変換素子20内に入射する。波長変換素子20から出射した基本波は、凹面ミラー23で反射することにより、波長変換素子20に対して異なる入射角度で再入射する。そして、波長変換素子20から出射した基本波は、凹面ミラー24で反射することにより、波長変換素子20に対して異なる入射角度で再入射する。
このように、基本波は、凹面ミラー23と24との間を往復し、波長変換素子を異なる角度で複数回通過する。つまり、各凹面ミラー23、24の間には、それぞれ別々の方向を向く複数の基本波光路(図5ではE1〜E7のみを例示するが実際にはより多くの光路が規定されている)が規定されている。本実施形態では、これら基本波光路E1〜E7のうち、図5の左から右に向かう基本波光路E1、3、5、7において生じた変換波光e1、e3、e5、e7が凹面ミラー23を透過して出射するようになっている。以下、具体的に説明する。
基本波は、各凹面ミラー23、24の間の往復の過程において、波長変換素子20内の複数の箇所で集光する。具体的に、図5に示す構成では、凹面ミラー24で反射して図5の左から右へ波長変換素子20を通過するときに(基本波光路E1、E3、E5、E7を通過するときに)基本波光が集光し、変換効率が高くなっている。波長変換素子20内を基本波が通過するときに発生した波長変換光は、凹面ミラー23から出力される。一方、図5の右から左へ波長変換素子20を通過するとき(基本波光路E2、E4、E6を通過するとき)には、ビームウェストを過ぎた基本波光が発散しないように凹面ミラー23により集光された状態で、基本波光は、再び凹面ミラー24側へ戻される。
図5では、波長変換素子20の分極反転周期構造に対し直交して通過する基本波光路において位相整合するように温度制御部26により波長変換素子20の温度を制御し、その温度が保たれている。本実施形態においては、図5の下に位置する基本波光路E1と、上に位置する基本波光路E3とが波長変換素子20の分極反転周期構造に対し概ね直交しているため、これら基本波光路E1、E3においては、位相整合条件からのずれが少なく、変換効率が高くなり、発生する波長変換光が多い。特に、本実施形態における基本波光路E1は、波長変換素子20の分極反転周期構造に略直交しているため、この基本波光路E1における波長変換効率が最も大きい。これに対し、波長変換素子20を傾斜して通過する基本波光路E2、E4、E6では、位相整合条件からのずれが大きいため変換効率が低くなり、発生する波長変換光が少ない。したがって、図5の下に位置する基本波光路E1及び、上に位置する基本波光路E3において生じる変換波光が優先して出射される。
図6は、温度制御部26により波長変換素子20の温度を図5に示す例よりも1度低い温度に制御し、この温度が保たれた状態を示している。図6に示す状態においては、波長変換素子20の分極反転周期構造を斜めに横切る基本波光路E5、E7において位相整合条件からのずれ量が小さく、変換効率は、高くなる。これに対し、分極反転周期構造に概ね直交する基本波光路E1、E3においては、位相整合条件からのずれが大きく、変換効率が低くなる。つまり、図6に示す例では、波長変換素子20の分極反転構造を傾斜して通過する基本波光路E5、E7(図6の中段に位置する光路)において生じる変換波光を優先して出射させている。より具体的に、本実施形態では、基本波光路E7における波長変換効率が最も高く設定されている。
本実施の形態2は、温度制御部26により波長変換素子20の温度を変化させることにより、異なる角度で波長変換素子20を通過する基本波光路E1〜E7のそれぞれにおける位相整合条件からのずれ量を制御し、特定の基本波光路において生じた変換波光を優先して出射させる。実施の形態2では、特定の基本波光路において生じた変換波光を優先して出射させる制御を行うことにより、波長変換レーザ200から出射される変換波光の強度分布を制御することができる。
実施の形態2は、温度制御部26により波長変換素子20を温度制御することにより、特定の基本波光路から変換波光を優先して発生させる好ましい形態である。したがって、実施の形態2によれば、波長変換レーザ200から出射される波長を一定としたまま、出射される変換波光の角度や強度分布及び出射されるビーム数を制御することができる。また、波長変換素子20の一部について温度制御を行うことにより、波長変換素子20内に温度分布をもたせて、角度や強度分布およびビーム数を制御することもできる。
波長変換レーザ200では、出力面となる凹面ミラー23から変換波光が複数のビームとなって出射される。具体的に、本実施形態では、凹面ミラー23と凹面ミラー24とは、同軸となるように正対して配置されているため、波長変換素子20に入射した基本波は、凹面ミラー23と凹面ミラー24との間で波長変換素子20の幅方向(図5及び図6の上下方向)に広げられて、凹面ミラー23に到達する。つまり、基本波は、波長変換素子20の幅方向に存在する複数の基本波光路(E1〜E7)に沿って進行して、幅方向に並ぶ複数本のビームとして凹面ミラー23に到達する。このとき、凹面ミラー23、24間を往復する基本波光路E1〜E7は、波長変換素子20の幅方向に互いに異なる角度とされている。したがって、凹面ミラー23から出射される変換波光は、各基本波光路(E1、E3、E5、E7)で発生した変換波光(e1、e3、e5、e7)の合計であるため、波長変換素子の幅方向にマルチ化された横マルチビームとなって出射される。ここで、本実施の形態2のように基本波光路(E1、E3、E5、E7)の中の複数の基本波光路において生じた変換波光を出射しながら、何れかの基本波光路において生じた変換波光を優先して出射することは、各基本波光路E1、E3、E5、E7において発生する変換波光間のパワーバランスを制御することを意味する。つまり、波長変換レーザ200では、波長変換素子20の温度制御により、出射される横マルチビームの強度分布を制御することができる。
本実施の形態は、横マルチビームで出射される変換波光の強度分布を制御する好ましい形態である。本実施の形態に係る波長変換レーザ200は、複数の基本波光路を持つため、変換波光を複数のビームとして出力することができる。そして、これら複数のビームを線状の横マルチビームとすることにより、一つの光束として扱うことができる。ここで、横マルチビームの強度分布を制御することができることは、波長変換レーザ200を各種の応用製品に適用する利点となる。特に、映像や照明の分野では、強度の均一化が必要となるため、有効である。横マルチビームを出射する従来のレーザでは、マルチビームに含まれる各ビームの強度を制御することは煩雑であったが、本実施の形態に係る波長変換レーザ200では、変換効率を制御することによりマルチビームに含まれる各ビームの強度の制御を容易に行うことができる。また、変換波光を優先して出射するための基本波光路の切り換えを時間的に変化させることにより、横マルチビームの強度分布を時間的に変化させることができるので、干渉ノイズを低減することができる。
図6に示す例では、基本波が初めに波長変換素子に入射する基本波光路E1よりも、その後に波長変換素子を通過する基本波光路E2〜E7において発生する変換波光が多くなるように、温度制御部26により波長変換素子20の温度が制御されている。このようにすれば、波長変換素子20の発熱による破壊を抑制することができる。その理由は、以下の通りである。
基本波及び変換波のパワーが大きい場合、波長変換素子20の発熱及びこの発熱による波長変換素子20の破壊が生じるおそれがあり、波長変換素子20の光耐性が課題となる。そこで、本実施の形態について検討すると、波長変換レーザ200では、凹面ミラー23、24間で基本波を往復させるようにしているので、基本波は、凹面ミラー23、24における反射時のロスや、変換波光の発生時の消費により、前記往復の回数を重ねるに従い減衰する。このため、波長変換素子20に初めに入射する基本波光路E1において、前記した波長変換素子20の発熱と破壊のリスクが最も高くなる。一方、図6に示すように、基本波が初めに波長変換素子20に入射する基本波光路E1よりも、その後に波長変換素子20を通過する基本波光路E2〜E7において発生する変換波光が多くなるように制御することにより、波長変換素子20の発熱及びこの発熱による破壊というリスクを回避することができ好ましい。したがって、図6に示すような制御をすることで、信頼性の高い安定した出力を行う波長変換レーザを得ることができる。
(実施の形態3)
図7〜図9は本発明の実施の形態3に係る波長変換レーザ300の概略構成図である。図7と図9とは、変換波光を優先して出射させる基本波光路を異ならせている点で相違している。
波長変換レーザ300は、基本波をパルス発振するレーザ光源としてのモードロックレーザ31と、モードロックレーザ31からの基本波を集光する集光レンズ32と、集光された基本波が入射する波長変換素子30と、波長変換素子30を挟むように配置されたダイクロイックミラー33及び凹面ミラー34と、波長変換素子30に取り付けられた電極37と、波長変換素子30に印加する電圧を制御するための制御装置35とを備えている。
モードロックレーザ31は、40psecのパルス幅でレーザ発振を行う。
波長変換素子30は、分極周期反転構造を有するMgO:LiNbO3結晶からなり、20mmの長さを有する。また、波長変換素子30は、図7の左右方向(波長変換素子の長さ方向)に並ぶ分極周期反転構造を有し、反転周期の擬似位相整合により変換波光である第2高調波を発生させる。前記分極周期反転構造の反転周期は、波長変換素子30内で均一とされている。また、波長変換素子30の基本波が入射及び出射する端面(図7の左右の端面)には、基本波と第2高調波を透過するコートが施されている。そして、波長変換素子30の温度は、図外の定温保持部により一定に保たれている。
ダイクロイックミラー33は、基本波を反射し、かつ、第2高調波を透過するコートを有し、変換波光である第2高調波を出射するための出力面となっている。ダイクロイックミラー33は、モードロックレーザ31から出射される基本波の光軸に対して垂直な姿勢から、波長変換素子30の長さ方向(図7の左右方向)に傾けて配置してある。したがって、ダイクロイックミラー33で反射する基本波は、波長変換素子30の長さ方向に傾斜した光軸に沿って波長変換素子30に再度入射することになる。
凹面ミラー34は、基本波及び第2高調波を反射するコートを有する。凹面ミラー34は、基本波を集光する役割を果たしている。したがって、この凹面ミラー34と前記ダイクロイックミラー33との間には、それぞれ別々の方向を向く複数の基本波光路D1〜D5が規定される。そして、これらの基本波光路D1〜D5のうちの光路D3、D5に沿って伝播する基本波のビーム径を凹面ミラー34が絞っている。基本波光路D3及び基本波光路D5は、光路D1とは異なる角度で波長変換素子30を通過する。
電極37は、波長変換素子30の表裏の面(図8の上面と底面)にそれぞれ設けられた櫛歯状(梯子型)の電極である。電極37は、MgO: LiNbO3結晶のz軸方向における+z軸面と−z軸面にそれぞれ設けられている。より具体的に、電極37は、基本波光路D3及び基本波光路D5が規定された2の領域をそれぞれ挟むように合計4箇所に設けられている。各電極37における波長変換素子30の幅方向(図7の上下方向)に延びる複数の部分は、それぞれ波長変換素子30の分極反転の周期に対応して形成されている。
制御装置35は、前記各電極37間に印加される電圧を制御するための電圧制御部36を備えている。電圧制御部36は、基本波光路D3を挟むように配置された一対の電極37間、又は基本波光路D5を挟むように配置された一対の電極37間にそれぞれ電圧を印加することにより、基本波光路D3又は基本波光路D5が規定された波長変換素子30の一部の領域に電界を生じさせる。そして、電圧制御部36による電圧の印加と印加の停止とを切り換えることにより、基本波光路D3又は基本波光路D5が規定された波長変換素子30の領域に生じた電界のスイッチングを行うことができる。このように、波長変換素子30に対して電界を生じさせることにより、基本波光路D3及び基本波光路D5が規定された領域について波長変換素子30の屈折率が変化する。
モードロックレーザ31から出射された基本波のパルス光は、集光レンズ32により集光され、波長変換素子30に入射する。図7では、分極反転周期に対し垂直に入射する基本波光路D1で位相整合を行い、この基本波光路D1において高い変換効率で第2高調波が発生する。一方、基本波光路D3及び基本波光路D5では、基本波は、波長変換素子30に傾斜して入射して、分極反転周期構造に対し傾きをもって波長変換素子30を通過する。このため、基本波光路D3及びD5においては、位相整合条件からのずれが生じ、変換効率が低くなり、第2高調波は、ほとんど発生しない。このため、基本波光路D1で発生した変換波光d1のみがダイクロイックミラー33から出力される。なお、変換波光d1のパルス幅は約40psecである。
図9では、各電極37に対し電圧制御部36により電圧を印加することにより、基本波光路D3と基本波光路D5が規定された波長変換素子30の領域に電界を生じさせている。これにより、波長変換素子30の基本波光路における第2高調波と基本波との屈折率差が小さくなり、光路が分極反転周期構造に対して傾いていても、位相整合条件からのずれ量が小さくなる。したがって、基本波光路の基本波光路D3及び基本波光路D5においても変換効率が高くなる。その結果、図9に示す例では、基本波光路D1だけでなく、基本波光路D3及び基本波光路D5においても第2高調波が発生し、ダイクロイックミラー33から出力される。
ここで、基本波光路D1、基本波光路D3及び基本波光路D5の合計出力のパルス時間幅は、約100psecである。そして、基本波光路D1における出力光に対して基本波光路D3における出力光は、時間的に遅延しており、基本波光路D3の出力光に対して基本波光路D5の出力光は、時間的に遅延しているため、合計出力光のパルス幅は、モードロックレーザ31からの基本波に対して、2倍以上に拡大される。なお、光路数をさらに増やすことにより、合計出力光のパルス幅を5倍以上に増やすことも可能である。また、基本波光路D5に対応する領域にのみ電界を生じさせ、基本波光路D1と基本波光路D5において変換波光を発生させることにより、40psecの変換波光のパルスを45psec間隔で出力するここともできる。
本実施の形態3に係る波長変換レーザ300は、電圧制御部36により波長変換素子30に電界を生じさせることにより位相整合条件からのずれ量を制御し、変換波光が発生する基本波光路の基本波光路D1、D3、D5を選択する好ましい形態である。本実施の形態では、異なる角度で波長変換素子30を通過する基本波光路D1、D3、D5と、波長変換素子30に生じる電界により、位相整合条件からのずれ量を制御することができる。電界によるスイッチングにより、基本波光路の選択の切り替えを高速に行うことができる。例えば本実施の形態では、パルス光の繰り返し周期内に基本波光路の選択を切り替えることができる。
波長変換レーザ300は、基本波をパルス発振するモードロックレーザ31を用い、制御装置35により変換波光を出射する基本波光路の数を制御することにより、出射光のパルス幅や間隔を制御する好ましい形態である。図7と図9とでは、変換波光を出射する基本波光路の数を1から3に切り換えることにより、出射光のパルス幅を40psecから100psecに大きくすることができる。基本波光路の数によりパルス幅を制御することにより、パルス幅を数倍にすることが可能となる。また、基本波光路D1と基本波光路D5とを選択した場合(図9の場合)のように、非常に短いパルス間隔のパルス光を作成することができる。本実施の形態を用いることにより、他のレーザでは、実現することが困難なパルス幅およびパルス間隔での出射を行うことができる。
次に、図10に示すレーザ加工装置39について説明する。
図10は、実施の形態3の変形例に係るレーザ加工装置39の概略図を示す。
レーザ加工装置39は、前記波長変換レーザ300と、波長変換レーザ300からの変換波光を集光するレンズ38とを備えている。
波長変換レーザ300は、前記制御装置35により、基本波光路D1のみを選択して変換波光d1を出力する場合と、基本波光路D1〜D3から変換波光d1、d3、d5を出力する場合とのスイッチングが可能である。
レンズ38は、波長変換レーザ300からの変換波光を集光する。
前記レーザ加工装置39を用いて加工を行なう場合には、加工対象物Tの表面をレンズ38の集光位置付近に配置する。ここで、レーザ加工装置39は、上述のように、変換波光d1のみを出力する状態と、変換波光d1〜d3を出力する状態とを切り換えることができるので、加工対象物Tに対しては1つのスポットにおいてビームを照射する場合と、ライン状に並ぶ3つのスポットにおいてビームを照射する場合とを選択することができる。
本実施の形態に係るレーザ加工装置39は、波長変換レーザ300の基本波光路を選択することにより、加工対象物Tに対するビームの照射範囲(スポット形状)を変化させることができる。ビームの照射範囲を変化させることにより、加工の種類に併せたビームの照射範囲を設定することができ、加工時間の短縮や加工精度の向上を図ることができる。また、本実施の形態に係るレーザ加工装置39は、機械的な機構を用いることなく、ビームの照射範囲を変化させることができるため、信頼性が高い。さらに、前記レーザ加工装置39では、変換波光を優先して出射させる基本波光路D1〜D3を、時間的に連続的に変化させることができるため、ビーム出射中のスポット形状変化や、中間的なスポット形状を作成することができる。このため、複雑な加工を迅速に行うことができる。
なお、上述した実施の形態は、上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。当然、本発明の各実施の形態を組み合わせて用いることもできる。なお、複数の基本波光源を用いたり、第2高調波の他、差周波、和周波などの変換波を出力する構成としてもよい。また、波長変換素子内の分極反転周期を数種類の周期を有するようにしてもよい。
本発明は、基本波が1対の基本波反射面の間で反射して、波長変換素子を異なる角度で複数回通過し、少なくとも一方の反射面は、波長変換光を透過する出力面となり、波長変換素子を通過する複数の基本波光路で波長変換光が発生し得るとき、特定の基本波光路の変換波光を優先して出射させる制御を行う制御装置を有することを特徴としている。
本構成では、ひとつの波長変換素子内で、角度が異なる基本波光路をもつことにより複数の位相整合条件をもつこととなる。特定の基本波光路の位相整合条件にあわせた基本波波長又は温度などを制御装置により設定することにより、特定の基本波光路における変換効率が高くなる。一方、特定の基本波光路以外の基本波光路においては、位相整合条件から外れるため、変換効率が低くなり、その結果として、特定の基本波光路の変換波光が優先して出射される。特定の基本波光路からの波長変換光を優先して出射することにより、出射される波長変換光の角度、強度分布又はビーム数などを制御することができる。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明の一局面に係る波長変換レーザは、基本波を出射する基本波光源と、前記基本波光源からの基本波を変換波光に変換するための波長変換素子と、前記波長変換素子を異なる角度で通過する複数の基本波光路を規定するように前記基本波を反射する1対の基本波反射面と、前記1対の基本波反射面の間で別々の方向を向く前記複数の基本波光路のうち、特定の基本波光路における波長変換効率が最も高くなるように波長変換効率を制御する制御装置とを備え、前記1対の基本波反射面のうち少なくとも一方の反射面は、前記変換波光を透過する出力面である。
本発明によれば、波長変換素子を異なる角度で通過する複数の基本波光路が規定されているので、1対の基本波反射面の間で別々の方向を向く複数の基本波光路に対応して複数の位相整合条件が存在することになる。そして、本発明では、制御装置によって各基本波光路のうちの特定の光路における波長変換効率が最も高くなるように波長変換効率を制御することができるので、当該基本波光路に対応する方向(角度)に変換波光を優先して出射させることができる。
したがって、本発明によれば、出射する変換波光の角度、強度分布、及びパルス時間幅の制御を行うことができる波長変換レーザを提供することができる。
なお、本発明に係る1対の基本波反射面は、基本波光を反射するとともに、1対の基本波反射面の少なくとも一方が基本波光の光路に角度変化をもたらす面となっていればよい。例えば、基本波反射面は、平面ではなく凸面や凹面形状となっていてもよく、波長変換素子の端面を基本波反射面としてもよい。反射面の形状は、球面や非球面、およびシリンドリカル面としてもよい。
具体的に、前記制御装置は、前記波長変換素子の温度を制御する温度制御部を備え、前記温度制御部は、前記波長変換素子を温度制御することにより前記特定の基本波光路を選択する構成とすることができる。
このようにすれば、波長変換素子の温度を制御して波長変換素子の位相整合条件を変化させることにより、各基本波光路における波長変換効率を制御することができる。
また、前記制御装置は、前記基本波光源による前記基本波の発振波長を制御する発振波長制御部を備え、前記発振波長制御部は、前記基本波の発振波長を制御することにより前記特定の基本波光路を選択する構成とすることもできる。
このようにすれば、基本波光源による基本波の発振波長を変化させることにより、複数の基本波光路における波長変換効率を制御することができる。
さらに、前記制御装置は、前記波長変換素子に電界を生じさせるために前記波長変換素子に電圧を印加する電圧制御部を備え、前記電圧制御部は、前記波長変換素子に電界を生じさせることにより前記特定の基本波光路を選択する構成とすることもできる。
このようにすれば、波長変換素子に電圧を印加して波長変換素子の屈折率を変化させることにより、複数の基本波光路における波長変換効率を制御することができる。
前記波長変換レーザにおいて、前記各基本波光路の少なくとも1つから出射された変換波光の光量を検出可能な受光素子をさらに備え、前記制御装置は、前記受光素子により検出された光量に基づいて前記特定の基本波光路における波長変換効率が最も大きくなるように波長変換効率を制御することが好ましい。
この構成によれば、フィードバック制御を行うことにより、特定の基本波光路における波長変換効率を確実に最も高いものにすることが可能となる。
前記波長変換レーザにおいて、前記制御装置は、前記各基本波光路のうち少なくとも2以上の光路において生じた変換波光を同時にマルチビームとして出射させるとともに、前記マルチビームの強度分布を制御することが好ましい。
この構成によれば、少なくとも2以上の光路からマルチビームとして変換波光を出射するようにしているので、前記各光路における波長変換効率を制御することにより、マルチビームの強度分布を制御することができる。
前記波長変換レーザにおいて、前記基本波光源は、前記基本波をパルス発振し、前記制御装置は、前記各基本波光路のうち前記変換波光を出射させる光路の数を増減することにより、前記出力面から出射する変換波光のパルス幅、間隔の少なくとも一方を制御することが好ましい。
このように基本波をパルス発振させた場合、基本波光源から各基本波光路までの光路長に差が存在することに伴い、一の基本波光路において変換波光が発生していない時点においても他の基本波光路において変換波光が発生している状況が生じることとなる。そこで、前記構成では、前記光路長の差を利用して、変換波光を出射させる基本波光路の数を増減することにより、出力面から出射する変換波光のパルス幅や間隔を制御することができる。
前記波長変換レーザにおいて、前記制御部は、前記各基本波光路のうち前記基本波が初めに通過する光路よりもその後に通過する光路における波長変換効率が大きくなるように波長変換効率を制御することが好ましい。
この構成によれば、発熱に伴う波長変換素子の破壊を抑制することができる。その理由は以下の通りである。基本波が初めに通過する基本波光路では基本波のパワーが大きいため、この基本波光路における波長変換効率を大きくするとそこで生じる変換波光のパワーも大きなものとなり、この変換波光の吸収に伴う波長変換素子の発熱量は大きなものとなる。これに対し、前記構成のように、初めての基本波光路を通過した後の基本波のパワーは、波長変換が行われた分だけ小さなものとなるため、その後の基本波光路における波長変換効率を大きくしても、これにより生じる変換波光のパワーは小さく、波長変換素子の発熱量も小さくなる。したがって、波長変換素子の破壊を抑制することができる。
前記波長変換レーザにおいて、前記制御装置は、前記出力面から出射された変換波光が所定の範囲を走査するように、前記変換波光を出射する基本波光路を順次切り換えることが好ましい。
この構成によれば、所定の範囲を走査する走査光として変換波光を出力することができる。
本発明の他の局面に係る画像表示装置は、前記波長変換レーザと、所定の画像を表示するために前記波長変換レーザから出射された変換波光の変調を行う変調素子とを備えている。
本発明によれば、波長変換レーザから特定の方向に出射された変換波光を利用して、表示される画像に応じて変調素子の適所に変換波光を導くことができるため、画像のコントラストの向上及び消費電力の低減を図ることができる。
本発明の他の局面に係るレーザ加工装置は、前記波長変換レーザと、前記波長変換レーザから出射された変換波光を集光する集光光学系とを備え、前記各基本波光路のうち変換波光を出射させる光路の数を増減することにより、前記変換波光のスポット形状が変化する。
本発明によれば、加工の種別に応じて変換波光のスポット形状を変化させることにより、加工時間の短縮や加工精度の向上を図ることができる。
本発明は、基本波光源からの基本波の波長変換を行う波長変換レーザに利用することができる。