JP5222256B2 - 光偏向器 - Google Patents

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Description

本発明は、光偏向器に関し、より詳細には、電気光学結晶の電界を制御することにより結晶の屈折率を変化させ、光の進行方向を制御する光偏向器に関する。
従来、光の進行方向を制御する光偏向器として、ポリゴンミラー、ガルバノミラー、音響光学効果を利用した光回折、MEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーと呼ばれるマイクロマシーンなどが提案されている。ポリゴンミラーおよびガルバノミラーは、機械的にミラーを駆動するので、慣性による束縛下にあり、偏向動作は、kHz程度の規則的な繰返しに留まる。応答性の改善を目指し、軽量化したMEMSミラーにあっては、空気抵抗が影響し、依然として力学的な制限を免れない。音響光学効果を利用した光偏向器は、可動部がなく、力学的な制限がない。しかしながら、この種の素子では、音波と光波の間の位相整合(ブラグ条件)が関与するため、偏向角の波長依存性が著しく大きく、多波長の光を扱う用途には適用が難しい。
また、電気光学結晶を用いた様々な光機能部品が実用化されている。電気光学結晶に電圧を印加すると、電気光学効果により結晶の屈折率が変化し、ビームを偏向させることができる。電気光学結晶を用いた光偏向器も、力学的な制限を受けない。また、少なくとも結晶の透明領域では、偏向角の波長依存が屈折率分散と同程度に収まるので、音響光学効果の場合に比べて、波長依存性を数桁も小さくできる。電気光学結晶を用いた光偏向器として、プリズム形状を有する電気光学素子の屈折率変化を利用し、屈折の法則(スネルの法則)に従って、出射角を変化させる素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、偏向角が余りに小さいため、この種の素子の応用範囲は非常に限られていた。現実的に得られる屈折率変化は、0.01%程度に過ぎず、進行角の変化が入射面と出射面の2箇所に限られている素子では、大きな偏向角の変化は期待できない。
近年、特定の電気光学効果を示す結晶において、電圧印加時に結晶内に空間電荷分布が形成され、それによる非一様な電界分布が屈折率の勾配を惹起し、この勾配に直交する光線の進路を屈曲させる現象が見いだされた。この現象が生じるのは、屈折率変化が電界の二乗に比例して生じる2次の電気光学効果が必要である。加えて、電気光学結晶が、大きい誘電率、小さい易動度を有して初めて、現実的な値の印加電圧、印加電流により、偏向現象の発現を見る。この種の結晶の代表的な例として、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTa1-xNbx3:KTN)が知られている。
このような電気光学結晶においては、結晶内の全箇所が偏向作用を担うので、光線の伝搬経路上の各所での作用が累積され、偏向された光が結晶から出射される。得られる偏向量は、結晶内の伝搬長におおむね比例する点において、上述した既存の光偏向器とその性質を全く異にしている。その結果、高速動作が可能で、かつ、偏向角の変化を大きく取れるという特長を有する。
図1に、従来の光偏向器の第1の例を示す。光偏向器は、方形の電気光学結晶601の対向する面に、電極602と接地電極603とが形成されている(例えば、特許文献2参照)。図1に示したように、電気光学結晶601に対してx,y,z軸を規定する。2つの電極の中間を通る中心光軸608(z軸)に沿って、入射光605が伝搬する。ここで、駆動電源604により電極602に電圧をx軸方向に印加すると、光線は、接地電極603側に屈曲した偏向光路607を辿り、偏向した出射光606として電気光学結晶601から出射される。
入射光605は、電極602および接地電極603に挟まれた間隙を通過し、入射光605のビーム直径2wは、偏向作用を受けない電圧非印加状態で、2つの電極の間隙の幅dを超えられない。電圧を印加した状態で生ずる偏向は、光線をこの間隙内で斜行せしめる。偏向光路607に沿う光線が、間隙を通過するためには、ビーム直径2wは、さらに小さく抑えられることとなる。
ここで、有限のビーム径wには、回折現象によって、必ず有限の拡り角Δθが伴う。電圧印加による偏向角θが、拡り角Δθよりも小さい場合、偏向角θの変化は元々の拡り角Δθに埋もれてしまって、検知されない。このことから、全拡り角2Δθは、光偏向器の角度分解能を与え、さらに、偏向角の全可変範囲を全拡り角2Δθで除した数は、偏向器の角度分解点数に相当する。偏向角範囲または角度分解能は、偏向器に付加する光学系の角倍率によって、各々増減が可能であるが、それらの比の角度分解点数は、変えられることがない。
空間電荷効果による偏向現象の解析から、最大偏向角θmaxは、式1で表される。
Figure 0005222256
ここで、dは2つの電極の間隔、すなわち電気光学結晶601の厚さである。Lは電気光学結晶601の長さ、nは屈折率、εは誘電率、gは2次電気光学係数である。Emaxは、結晶に印加することができる最大の電界である。結晶内の空間電荷効果の支配下にあっては、電界は陽極直前で平均電界V/dの1.5倍となり、最大を示す。従って、結晶に印加いることができる電圧は、最大Vmax=(2/3)Emaxdに制限される。
一方、光線のビーム径wに伴われる拡り角は、式2で表される。
Figure 0005222256
ここで、λは光線の波長である。
式1および式2を用いれば、角度分解点数Nの具体的表現式として、式3を得る。
Figure 0005222256
式3を参照すると、角度分解点数Nを向上するために調整可能な因子は、ビーム径w、結晶厚dおよび結晶長Lである。他は、物理または物性定数であって、例えば、KTNの例では、屈折率nは、波長λ=633nmにおいて2.29であり、2次電気光学係数はg=0.136m4-2である。従って、角度分解点数として
Figure 0005222256
を得る。ここで、寸法w、dおよびLは、単位mmで表す。また、εrは結晶の比誘電率である。印加電界の上限Emaxは、600Vmm-1とする。比誘電率εrが15,000ならば、角度分解点数はN=25.7(w/d)Lと算出される。
ここで、結晶厚dに対するビーム径wの比w/dは、必然的に1/2より小さい。すなわち、ビームが結晶を通過するためには、その直径2wが結晶厚dに等しいことが、最低の要件である。しかし、これではビームに偏向角を付与する余地が全然ない。簡単な幾何学的考察を行えば、角度分解点数Nについての最適なビーム径・結晶厚比は、w/d=1/4であることがわかる。角度分解点数は、N=6.44Lとなり、例えば、L=5mmの結晶に期待できるNは32程度である。これ以上に角度分解点数を増すためには、更に長い結晶を用いることが必要となる。
他方、結晶の自由な長尺化を阻む事情が存する。第1に、図1の光偏向器の構成において、電極602および接地電極603が対向面に付与された電気光学結晶601は、平行平板キャパシターと同じ構成になる。このキャパシターの静電容量は、結晶長Lに比例して増す。これに伴い、電圧を印加する駆動電源604に要求される駆動電力が増し、光偏向器全体の大型化、高価格化を招くことになる。
第2に、長尺化は、電気光学結晶601自体の体積を増すので、有限の体積を有する単結晶ブールから採れる個数が限られてしまう。一方、電気光学結晶の長さは、結晶ブールの寸法に制限されるため、長尺化には自ずと限界がある。
第3に、結晶ブール内には組成の勾配があり、仮に、長寸の結晶が採れたとしても、誘電率が相対的に小さい部分が含まれてしまう。このような場合、式3中ε2Lは、積分
Figure 0005222256
で置換されることになる。例えば、長さ方向に誘電率が一様に半減したならば、結晶の長さの58%しか光の偏向に寄与しないことと等価になる。すならち、結晶の長さを2倍にしても、結晶の端から端にかけて誘電率が半減したならば、Nの改善は16%とわずかに過ぎない。
以上の事情に鑑み、実際に長寸の結晶を用いる替わりに、内部反射による光路の折り返しを行って、結晶長Lを増したのと等価な効果を得ようとする方法が考えられる(例えば、特許文献2参照)。図2に、従来の光偏向器の第2の例を示す。光偏向器は、方形の電気光学結晶601の対向する面に、電極602と接地電極603とが形成されている。中心光軸608に沿って入射した入射光605は、電気光学結晶601内を3回行き来した後、出射光606として外部に出射される。これにより、3倍長い結晶を用いた時に相当する偏向角が得られ、角度分解点数Nも3倍となる。
ここで、電気光学結晶601内で光路を折り返すための構成を示す。図3は、光偏向器の第2の例において、偏向面に垂直な面内における配置を示す。入射光605は、電気光学結晶601に、その側面から見て斜めに入射し、出射端面に達すると、出射端面に付与された反射膜621bによって反射される。電気光学結晶601内を進行し、再び入射端面に戻る。そして、入射端面に付与された反射膜621aによって反射され、電気光学結晶601内を進行し、出射端面上、反射膜620bの付与されていない箇所を透過して、出射光606として結晶から出射される。
一般に、かかる内部反射により、M−1回折り返した晶内光路607を辿った後に出射させる場合、結晶長をM倍したのと等価な効果が得られ、角度分解点数NをM倍に改善することができる。以上述べたように、高速性に優れ、かつ、大きな偏向角の変化が得られる光偏向器が実現されている。
特開平09−005797号公報 国際公開第2006/137408号パンフレット
しかしながら、上述した従来の光偏向器は、偏向角範囲、角度分解点数において、以下の問題点を残している。上述の式3によれば、結晶長L、または積分
Figure 0005222256
を増すことにより、角度分解点数Nを無制限に大きくできるように見える。しかしながら、式3の導出に用いる最大偏向角θmaxには、実のところ上限があるので、無制限に大きくはできない。出射光は、出射端面の角を越えては偏向され得ないという自明の幾何学的制限により、最大偏向角θmaxについて、さらに式4が成り立つ。
Figure 0005222256
ここで、式1と式4とを連立し、結晶の厚さについて最適なビーム径の条件w=d/4を用いると、式5を得る。
Figure 0005222256
すなわち、結晶長Lは、無制限に大きくできるわけではなく、結晶厚dで決まる上限がある。KTNの場合には、L≦14.9dとなり、これを角度分解点数の式3に代入して、N≦95.6dを得る。角度分解点数Nを増すためには、結晶長Lと同時に結晶厚dを増す必要があり、結局、結晶厚dが制限要因となる。例えば、KTNの場合、結晶厚d=1mmの結晶からは、N=96を超える角度分解点数は、得られない。
一方、結晶の厚さを増すと、それに比例して、必要な印加電圧Vmax=(2/3)Emaxdも上昇する。駆動電源に要求される駆動電力は、結晶厚dの2乗に依存する。上述した内部反射による光路の折り返し構成を採用すると、折り返し回数Mを増すことにより、物理的な結晶長を増さずに、実効的な結晶長を増すことができる。この場合でも駆動電力は、結晶厚dの1乗に依存する。
従って、従来技術においては、角度分解点数Nの向上は、高い駆動電力を必要としていた。内部反射による光路の折り返し構成は、駆動電力の角度分解点数Nへの依存性を2乗から1乗に大幅に軽減はするものの、依然、駆動電源に要求される電力が、実用可能な角度分解点数を制限する。
以上述べたように、従来の光偏向器においては、角度分解点数を増そうとすると、結晶を厚くすることになり、駆動電源に要求される電圧・電力の増加を招くという問題点があった。
本発明の目的は、光路の折り返しを、結晶外部に置いた凹反射面により行うことにより、電気光学結晶を厚くすることなく、角度分解点数を増すことが可能な光偏向器を提供することにある。
本発明は、このような目的を達成するために、電気光学結晶に電圧を印加し、電界に直交するように入射された入射光を、前記電気光学結晶内部に生じる屈折率勾配により偏向し、前記電気光学結晶から出射光として出射させる光偏向器において、前記電界に直交する前記電気光学結晶の中心光軸上に、前記電気光学結晶を挟んで第1の凹反射面と第2の凹反射面とを備え、前記電気光学結晶への1回目の入射光が、前記電気光学結晶を透過して1回目の出射光となり、前記1回目の出射光が、前記第の凹反射面において反射して1回目の反射光となり、前記1回目の反射光が、前記電気光学結晶を透過せずに、前記第の凹反射面において反射して2回目の反射光となり、前記2回目の反射光が、前記電気光学結晶への2回目の入射光となり、前記電気光学結晶を透過して出射された2回目の出射光が、前記第2の凹反射面において3回目の反射光となり、前記3回目の反射光が、前記電気光学結晶を透過せずに、前記第1の凹反射面において反射して4回目の反射光となり、前記4回目の反射光が、前記電気光学結晶への3回目の入射光となり、前記第1および第2の凹反射面における反射を繰り返して、前記電気光学結晶をn(n≧3)回透過してn回目の出射光が出射されることを特徴とする。
前記電界に直交する前記電気光学結晶の中心光軸上に、前記電気光学結晶を挟んで第1の凹反射面と第2の凹反射面とを備え前記第1の凹反射面の曲率中心を反射面上に含む第1の平面鏡と、前記第2の凹反射面の曲率中心を反射面上に含む第2の平面鏡とをさらに備え、前記電気光学結晶への1回目の入射光が、前記電気光学結晶を透過して1回目の出射光となり、前記1回目の出射光が、前記第の凹反射面において反射して1回目の反射光となり、前記1回目の反射光が、前記第の平面鏡において反射して再度前記第の凹反射面において反射して2回目の反射光となり、前記2回目の反射光が、前記電気光学結晶への2回目の入射光となり前記電気光学結晶を透過して出射された2回目の出射光が、前記第の凹反射面において反射して3回目の反射光となり、前記3回目の反射光が、前記第の平面鏡において反射して再度前記第の凹反射面において反射して4回目の反射光となり、前記4回目の反射光が、前記電気光学結晶への3回目の入射光となり、前記第1および第2の凹反射面と前記第1および第2の平面鏡とにおける反射を繰り返して、前記電気光学結晶をn(n≧3)回透過してn回目の出射光が出射されるようにすることもできる。
本発明の光偏向器では、出射光に対して角倍率−1の光学系を介して、電気光学結晶に光を再入射させる。これにより、復路の伝搬に際して往路で付与された偏向が相殺されるのを防ぐ。
本発明の光偏向器では、前記凹反射面として、球面を用いることができる。
本発明の光偏向器では、前記凹反射面として、円筒面を用いることもできる。
以上説明したように、本発明によれば、電機光学結晶の外部に設置した凹反射面により、結晶内の偏向中心の移動を伴わずに、光路の折り返しを行うので、駆動電源に高電圧・大電力を要求する厚い結晶を用いることなく、角度分解点数を増すことができる。
また、本発明によれば、従来の内部反射による折り返し構成と併用でき、角度分解点数を増した光偏向器を、大量・低価格に供給することもできるので、工業的に大きな効果が得られる。
従来の光偏向器の第1の例を示す図である。 従来の光偏向器の第2の例を示す図である。 従来の光偏向器の第2の例において、偏向面に垂直な面内における配置を示す図である。 本発明の第1の実施形態にかかる光偏向器の構成を示す図である。 図4の偏向中心付近の拡大図である。 第1の実施形態にかかる光偏向器において球面鏡を適用した場合の構成を示す図である。 第1の実施形態にかかる光偏向器において円筒鏡を適用した場合の構成を示す図である。 本発明の第2の実施形態にかかる光偏向器の構成を示す図である。 第2の実施形態にかかる光偏向器において球面鏡を適用した場合の構成を示す図である。 図8の偏向中心付近の拡大図である。 本発明の第3の実施形態にかかる光偏向器の構成を示す図である。 第3の実施形態にかかる光偏向器において球面鏡を適用した場合の構成を示す図である。 実施例1-1にかかる光偏向器の構成を示す図である。 実施例1-2にかかる光偏向器の構成を示す図である。 実施例2-1にかかる光偏向器の構成を示す図である。 実施例2-2にかかる光偏向器の構成を示す図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
従来の光偏向器の課題を、回数M−1の折り返し構成を採った場合について考える。まず、上述した式をMを用いて書き換える。最大偏向角θmaxは、
Figure 0005222256
となる。これを拡り角で除して得る角度分解点数Nは、
Figure 0005222256
となる。一方、最大偏向角θmaxについて、
Figure 0005222256
となり、式6と式8を連立すれば、
Figure 0005222256
を得る。すなわち、結晶厚dがMLの上限を与え、角度分解点数Nに対して、上限
Figure 0005222256
を与える。上式にはMが現れないことに、注目されたい。その結果、Nを増す手段は、dを増すしかなかった。
上式において、折り返し回数Mが消失する理由は、従来の折り返し構成は、光学的・幾何学的に結晶長をM倍するのと全く等価だからである。折り返し回数Mは、常に結晶長Lに伴われ、MLの形でのみ、現れているからである。本発明者は、より自由度の高い折り返し構成について考究を進め、電気光学結晶から出射した出射光を、凹反射面により再び電気光学結晶に入射する折り返し構成に想到した。
このとき、凹反射面の曲率の中心は、出射光が偏向に伴い回転する際の回転中心、即ち射出中心に一致させる。図1を参照して説明すると、偏向中心609は、電気光学結晶の内部で光線が偏向に伴い回転する際に中心となる点である。一様な結晶においては、偏向が零の際に辿る光路である中心光軸上で、偏向中心609は結晶の中点にある。さらに、出射光が出射端面において屈折するので、これを考慮すると、偏向中心は出射端面の方向に変位する。この点を、射出中心610という。射出中心610は出射端面からL/(2n)の距離にある。
凹反射面によって反射され、電気光学結晶に戻された光線は、結晶内を進行する際、その偏向中心が以前と同一の偏向中心に保たれる。これに対し、従来の折り返し構成にあっては、図2に示したように、端面の内部反射によって光線を戻す度に、偏向中心はL/2ずつ入射端面の方向に移動していく。これは、反射の度に、長さLだけ長い新たな結晶を等価的に加えたことになるからである。
本実施形態にかかる折り返し構成では、偏向中心が不動なため、幾何学上は結晶長が不変に見える。すなわち、最大偏向角θmaxに関する幾何学的束縛を表す式8は、
Figure 0005222256
と置き換えられる。他方、最大偏向角θmaxについての式6と、角度分解点数Nについての式7は、変わらない。その結果、式6と式10とを連立して、
Figure 0005222256
を得る。すなわち、この場合、結晶厚dは
Figure 0005222256
の上限を与える。式7に、この上限を代入し、角度分解点数Nの上限として、
Figure 0005222256
を得る。ここで、角度分解点数Nの上限には、結晶厚dに加えて
Figure 0005222256
が含まれ、その結果、結晶厚dを保ったまま、折り返し回数Mを増加することにより、角度分解点数Nを増すことができる。すなわち、本実施形態による折り返し構成によれば、駆動電源に高電圧・大電力を要求する厚い結晶を用いることなく、折り返し回数Mという外部に付加した光学系のパラメータをのみを介して、角度分解点数を増加させることが可能となる。
ここで、凹反射面によって出射光を反射し、電気光学結晶に戻しただけでは、反射された光線が結晶内を進行する際に、入射光に付与されたのと同じ量の逆向きの偏向が付与され、往復分の行程を経た後には偏向が完全に相殺されてしまう。これは、磁場の介在しない光学系において、逆向きに進む光は同一の作用を受けるという光の相反性による。このままでは、式6および式7に示したように、最大偏向角θmax、角度分解点数Nが、折り返し回数M分、累積されることにはならない。このような相反性に関る問題を回避する方法として、以下の2様が考えられる。
(第1の方法)第1の方法では、復路での光の偏光を、往路における偏と直交させる。一般に、2次の電気光学効果の大きさは、印加電界および光の偏光方向に依存する。光が感じる屈折率変化は、その光が印加電界に平行に直線偏光している場合に最も大きい。従って、光偏向器では、印加電界に平行な偏光が用いられる。この場合、2次電気光学係数は、2次電気光学テンソルの成分g11である。上述した計算式では、この成分を、簡単のためにgと表してきた。印加電界と直交する偏光に対する屈折率変化は、2次電気光学テンソルの成分g12が支配する。後者g12は、前者g11と逆の符号を持ち、その絶対値は前者に比較して小さく、無視できる程度の大きさである。従って、往路に対して直交する直線偏光により、復路を伝搬させれば、電気光学結晶による偏向作用は受けず、相反性による偏向の打ち消しは生じない。この場合、折り返し回数Mは、偏向作用を受ける往路だけを計数することとなる。
(第2の方法)第2の方法では、復路での伝搬に先立ち、中心光軸に垂直な面内で光線を反転する。すなわち、第1の方法の凹反射面に加えて、さらに角倍率−1の光学系を介して、出射光を結晶に戻す。このようにして、往路で得た偏向角の符号が逆転されて入射され、復路での偏向が加算的に累積される。この場合、折り返し回数Mは、復路の分も含めて計数すればよい。
(第1の実施形態)
次に、本実形態の基本構成を説明する。図4に、本発明の第1の実施形態にかかる光偏向器の構成を示す。光偏向器は、方形の電気光学結晶101の対向する面に、電極102と接地電極103とが形成されている。2つの電極の中間を通る中心光軸108(z軸)に沿って、入射光105が伝搬する。入射光105は、入射レンズ116により、適切なビーム直径2wとして、電気光学結晶101に集束される。駆動電源104により電極102に電圧をx軸方向に印加すると、光線は、接地電極103側に屈曲した偏向光路107aを辿り、電気光学結晶101から出射される。
図5に、図4の偏向中心付近の拡大図を示す。往路の偏向作用は、電気光学結晶101内の光線については、中心光軸108の結晶内での中点である偏向中心109の周りの回転で表される。電気光学結晶101からの出射光は、出射端面において屈折するので、これを考慮すると、偏向中心は出射端面の方向に変位して、射出中心110となる。すなわち、偏向作用を受けた出射光は、射出中心110の周りに回転を受けたように見える。この出射光は、射出中心110に曲率中心を持つ凹面鏡111に入射する。偏向面内で、凹面鏡111の入射点における接線は、光線に垂直であるから、凹面鏡111による反射は直反射となる。反射された光線は、射出中心110に向かって戻される。この戻り光線は、再入射時に結晶端面で屈折を受け、結晶内で偏向中心109に向けて復路を辿る。
ここで、相反性による偏向の打ち消しを回避するために、第1の実施形態では、上述した第1の方法を適用する。出射光は、電気光学結晶101に再入射する迄に、4分の1波長板117を2回通過する。偏向光路107aを辿り出射された光線は、xz平面内に直線偏光している。これに対して、4分の1波長板117は、その主軸が、xz平面に45°の仰角を持つように設置されている。4分の1波長板117を2回通過することにより、凹面鏡111により反射された光線は、yz平面内の直線偏光となる。
yz平面内の直線偏光に対しては、電気光学結晶101による偏作用が小さく無視できるので、復路の光路は、図4,5に点線で示したように、偏向中心109を通る直線となる。偏向中心109を通り、電気光学結晶101の左端に達した光線は、電気光学結晶101から出射した後、凹面鏡113により再び電気光学結晶101に戻される。凹面鏡113の曲率中心は、射出中心112に置かれる。また、出射光は、4分の1波長板118を2回通過する。4分の1波長板118の軸方位は、4分の1波長板117の軸方位に平行であり、4分の1波長板118を2回通過して、電気光学結晶101に再入射した時の偏光は、xz平面内の直線偏光に戻る。
電気光学結晶101の左端は、入射光105の導入箇所であり、入射光105も、4分の1波長板118を通過する。従って、入射光105がxz平面内の直線偏光になるように、前段の4分の1波長板119によって、予め偏光を調節しておく。
凹面鏡113により再び電気光学結晶101に戻された光線は、2回目の往路、すなわち接地電極103側に屈曲した偏向光路107bを辿り、電気光学結晶101から出射される。ここで累積される偏向作用も、偏向中心109の周りの回転で表され、電気光学結晶101から出射された光線は、射出中心110から発するように見える。出射光は、再び凹面鏡111に達し、この段階で折り返し回数はM=2となる。以降、復路・往路から成る一連の行程を所望の回数だけ繰り返し、折り返し回数Mを経た後、出射光106として、電気光学結晶101から出射される。図4,5に示したのは、M=3の場合である。
第1の実施形態の構成には、電気光学結晶101に対して、光線を入出射する手段として、2つの凹面鏡111、113が必要である。凹面鏡111、113は、偏向面(xz平面)内で円周の一部を形成すれば良く、偏向面に垂直な面(yz平面)内での形状は自由である。このような凹面鏡として、入手が容易な選択として、少なくとも球面鏡と円筒鏡とがある。
図6に、第1の実施形態にかかる光偏向器において球面鏡を適用した場合の構成を示す。2つの凹面鏡111、113には、入射光および出射光を通すための開口部が設けられている。入射光105は、凹面鏡113の開口部を通って、電気光学結晶101に斜めに入射する。入射光が、凹面鏡111、113の対の間で反射を繰り返すに従って、電気光学結晶101内での晶内光路は、107a、107b、107cと逐次、時計方向に回転される。図6に示した光路の回転は、偏向作用によるものではなく、対になった球面鏡への入出射による回転である。3回目に至って、出射光106は、凹面鏡111の開口部を通過して出射される。
図7に、第1の実施形態にかかる光偏向器において円筒鏡を適用した場合の構成を示す。入射光105は、凹面鏡113の開口部を通って、電気光学結晶101に斜めに入射する。入射光が、凹面鏡111、113の対の間で反射を繰り返すに従って、電気光学結晶101内での晶内光路は、107a、107b、107cと逐次、上方に平行移動される。3回目に至って、出射光106は、凹面鏡111の開口部を通過して出射される。
(第2の実施形態)
図8に、本発明の第2の実施形態にかかる光偏向器の構成を示す。光偏向器は、方形の電気光学結晶201の対向面に、電極202と接地電極203とが形成されている。2つの電極の中間を通る中心光軸208(z軸)に沿って、入射光205が伝搬する。入射光は、入射レンズ216により、適切なビーム直径2wとして、電気光学結晶201に集束される。駆動電源204により電極202に電圧をx軸方向に印加すると、光線は、接地電極203側に屈曲した偏向光路207aを辿り、偏向した出射光として電気光学結晶201から出射され、球面鏡211に入射される。
ここで、相反性による偏向の打ち消しを回避するために、第2の実施形態では、上述した第2の方法を適用する。一般に、球面鏡による曲率中心から曲率中心への結像は、角倍率−1の光学系を与える。この性質に立脚して、球面鏡による結像を1回余分に行わせた後、すなわち出射光を球面鏡で2回反射させた後に、電気光学結晶に光を再入射させる。
図9に、第2の実施形態にかかる光偏向器において球面鏡を適用した場合の構成を示す。球面鏡211で反射された光線は、電気光学結晶201を透過せず、球面鏡213に直接入射する。球面鏡213で反射された光線は、電気光学結晶201の端面で屈折を受け、偏向中心209に向けて往路を辿り、折り返しM=2回目の行程が開始される。以降、結晶外部の復路・結晶内部の往路から成る一連の行程を所望の回数だけ繰り返し、折り返し回数Mを経た後、出射光206として、電気光学結晶201から出射される。図8,9に示したのは、M=3の場合である。
図10に、図8の偏向中心付近の拡大図を示す。球面鏡211の曲率中心は、xz平面(偏向面)内では、上述した第1の実施形態の射出中心よりも若干結晶の中央よりに曲率中心210を有する。yz平面(偏向面に垂直な面)内では、図9に示すように、中心光軸208上ではなく結晶外部の点であって、偏向中心からy軸方向に変位した点に結像させる。その結果、球面鏡211で反射された光線は、必ず結晶外部に変位した点を通過する。
他方、電気光学結晶201を挟んで球面鏡211に対向して設置されている球面鏡213は、xz平面内では、第1の実施形態の射出中心よりも若干結晶の中央よりに曲率中心212を有する。yz平面内では、図9に示すように、中心光軸208上ではなく結晶外部の点であって、偏向中心からy軸方向に変位した点に結像させる。その結果、球面鏡213で反射された光線は、必ず結晶外部に変位した点に向かって反射される。
2つの凹面鏡211、213には、入射光および出射光を通すための開口部が設けられている。入射光205は、凹面鏡213の開口部を通って、電気光学結晶201に斜めに入射する。入射光が、凹面鏡211、213の対の間で反射を繰り返すに従って、電気光学結晶201内での晶内光路は、逐次時計方向に回転される。3回目に至って、晶内光路207cを辿り、出射光206は、凹面鏡211の開口部を通過して出射される。
(第3の実施形態)
図11に、本発明の第3の実施形態にかかる光偏向器の構成を示す。光偏向器は、方形の電気光学結晶301の対向面に、電極302と接地電極303とが形成されている。2つの電極の中間を通る中心光軸308(z軸)に沿って、入射光305が伝搬する。入射光は、入射レンズ316により、適切なビーム直径2wとして、電気光学結晶301に集束される。駆動電源304により電極302に電圧をx軸方向に印加すると、光線は、接地電極303側に屈曲した偏向光路307aを辿り、偏向した出射光として電気光学結晶301から出射され、球面鏡311に入射される。
ここで、相反性による偏向の打ち消しを回避するために、第3の実施形態では、上述した第2の方法を適用する。第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に、球面鏡による結像を1回余分に行わせることにより、角倍率−1の光学系を与える。
図12に、第3の実施形態にかかる光偏向器において球面鏡を適用した場合の構成を示す。球面鏡311の曲率中心は、yz平面(偏向面に垂直な面)内では、上述した第1の実施形態の射出中心のように中心光軸308上ではなく、結晶外部の点であって、射出中心310からy軸方向に変位した点に結像させる。結晶外部に変位した点は、平面鏡314の反射面上にあるので、球面鏡311で反射された光線は、平面鏡314により、球面鏡311上の中心光軸を跨いだ反対側の点に、反射される。球面鏡311により反射された光線は、偏向角の符号が逆転された上で、電気光学結晶301に再入射することになる。
このようにして、復路では、本来打ち消す方向に蓄積される偏向が、反転された偏向に対しては加算的に累積され、折り返しM=2回目の行程を形成する。電気光学結晶301の左端に面して置かれた球面鏡313は、yz平面内では、中心光軸208上ではなく、結晶外部の点であって、射出中心312からy軸方向に変位した点に結像させる。結晶外部の点は、平面鏡315の反射面上にあるので、球面鏡313で反射された光線は、平面鏡315により、球面鏡313上の中心光軸を跨いだ反対側の点に、反射される。球面鏡313により反射された光線は、偏向角の符号が再び逆転され、すなわち最初の偏向角の符号に戻った上で、電気光学結晶301に再入射することになる。以降、復路・往路から成る一連の行程を所望の回数だけ繰り返し、折り返し回数Mを経た後、出射光306として、電気光学結晶301から出射される。図11,12に示したのは、M=3の場合である。
2つの球面鏡311、313には、入射光および出射光を通すための開口部が設けられている。入射光305は、球面鏡313の開口部を通って、電気光学結晶301に斜めに入射する。入射光が、平面鏡314、315で反射し、球面鏡311、313の対の間で反射を重ねるに従って、電気光学結晶301内での晶内光路は、逐次時計方向に回転される。3回目に至って、出射光206は、晶内光路307cを辿り、凹面鏡311の開口部を通過して出射される。
第1から第3の実施形態の電気光学結晶は、KTNからなり、結晶厚d=1mm、比誘電率εr=15,000であり、上限までの電圧Vmax=400Vを印加する。第1から第3の実施形態の何れの構成によっても、結晶長L=8.5mmの下で、角度分解点数N=160が得られる。さらに、何れの構成によっても、それぞれ折り返し回数をM=5に増すと同時に、結晶長をL=6.5mmにまで縮めたところ、角度分解点数はN=210に達する。
ここまで、本発明の基本構成とその動作を詳らかにしたので、以下に、実施例として、若干の応用例について述べる。何れも、本実施形態の構成を、従来からの光路の折り返し構成と併用した例である。
(実施例1-1)本実施形態における一対の凹面鏡からなる光学系は、共中心配置に相当しており、凹面鏡の精密な調整を要する。これに対し、従来の結晶内部の反射による光路の折り返しは、端面の平行度の良い結晶を用いれば、別段の調整を要さずに実施できる。そこで、凹面鏡により大きい折り返し回数Mを得ようとするときの調整の困難を緩和するために、結晶内部の反射による折り返しを併用する構成を考える。このように併用する場合には、偏向角が蓄積され大きくなる後段に、本実施形態の折り返し構成を採用し、前段に内部反射による折り返し構成を採用する。
図13に、実施例1-1にかかる光偏向器の構成を示す。前段に内部反射による折り返しを行う電気光学結晶401a、後段に本実施形態の折り返し構成を行う電気光学結晶401bを配置している。入射光405は、入射レンズ416により、適切なビーム直径2wとして、前段の電気光学結晶401aに集束される。入射光は、電気光学結晶401a中で、両端面に付与された反射膜421a,421bにより、第1の折り返し回数M1−1回の反射を経た後、電気光学結晶401aから出射される。
リレーレンズ420は、前段の電気光学結晶401aの出射端からM1L1/(2n)の距離にある射出中心(L1は電気光学結晶401aの結晶長)を、後段の電気光学結晶401bの入射端面側の射出中心に結像する。電気光学結晶401bの両側に配置した球面鏡411、413により、前段から出射された光線は、第2の折り返し回数M2を経た後、出射光406として光偏向器から出射される。
電気光学結晶401a,401bは、KTNからなり、結晶厚d=1mm、比誘電率εr=15,000であり、上限までの電圧Vmax=400Vを印加する。電気光学結晶401aの結晶長をL1=5.0mmとし、折り返し回数M1=3で用い、電気光学結晶401bの結晶長をL2=6.5mmとし、折り返し回数M2=3で用いると、角度分解点数N=210が得られる。これを、上述の基本構成の動作と対照するに、実施例1−1の場合、前段の構成を付加することにわり、後段の折り返し回数をM2=5からM2=3に削減しても、同等の角度分解点数を得ることができる。一方、折り返し回数をM=5の本実施形態の折り返し構成のみと比較して、光学調整は遥かに容易となる。
(実施例1-2)大きな角度分解点数を必ずしも望まないものの、動作電圧を低減したい場合がある。このような場合、本実施形態の折り返し構成を用いて、内部反射による折り返し構成の射出中心を復旧する構成が考えられる。
図14に、実施例1-2にかかる光偏向器の構成を示す。入射光405は、入射レンズ416により、適切なビーム直径2wとして、電気光学結晶401に集束される。電気光学結晶401の両端面に付与された反射膜421a,421bにより第1の折り返し回数M−1回の反射を経た後、電気光学結晶401から出射される。ここで、電気光学結晶401を囲む2つの球面鏡411、413をリレー光学系として、電気光学結晶401から出射された光線を、再び電気光学結晶401に入射する。
リレー光学系は、M回の折り返し後の射出中心(電気光学結晶401の右端からML/(2n)の距離にある)を、電気光学結晶401の左端に対する射出中心(電気光学結晶401の左端からL/(2n)距離にある)に結像する。これにより、前半の折り返し動作に伴う射出中心の後退が解消され、後半の折り返し動作が新たに開始される。到達可能な角度分解点数は、M回の内部反射に伴われる値に過ぎないが、2M回の偏向が累積されている分、電気光学結晶401に印加する電圧を低くできる。
電気光学結晶401は、KTNからなり、結晶厚d=1mm、比誘電率εr=15,000であり、結晶長L=5.0mmとし、折り返し回数M=3で用いる。角度分解点数として得られたのはN=95に過ぎなかったが、印加電圧Vmax=280Vとすることができる。内部反射による折り返し構成によれば、折り返し回数M=3のとき、上限電圧Vmax=400Vが必要となる。一方、仮に同じ長さ結晶で折り返し回数M=6とした場合、分解点数はN=48で限界に達してしまう。
(実施例2-1)実施例1では、前段に内部反射による折り返し構成を別個に配置することにより、後段の本実施形態の折り返し構成による折り返し回数を削減し、構成全体としての光学調整を容易にした。実施例1では、前後各段の結晶長を個別に設定でき、高い自由度が得られるものの、2つの結晶を要する点で、経済化には改善の余地が残っている。そこで、実施例2では、内部反射による折り返し構成と本実施形態の折り返し構成とを一体化して組込み、単一の結晶のみで実現する。
図15に、実施例2-1にかかる光偏向器の構成を示す。入射光505は、入射レンズ516により、適切なビーム直径2wとして、球面鏡513の開口部を通って、電気光学結晶501の側面に斜めに集束される。入射光は、電気光学結晶501中で、両端面に付与された反射膜521a,521bにより、第1の折り返し回数M1−1回の反射を経た後、電気光学結晶501から出射される。続いて、球面鏡511、513および平面鏡514、515からなる第3の実施形態の構成により、第2の折り返し回数M2を経た後、出射光506として光偏向器から出射される。
ここで、後段の折り返し回数をM2=2としたとき、球面鏡511および平面鏡514は、前段と後段の間のリレー光学系としてのみ作用する。すなわち、前段の内部反射による折り返し構成の射出中心(電気光学結晶501の右端からM1L/(2n)の距離にある)を、電気光学結晶501に再入射する端面側の射出中心(電気光学結晶501の右端からL/(2n)距離にある)に結像する。他方、球面鏡513および平面鏡515は、本実施形態の折り返し構成として作用し、電気光学結晶501の左端側の射出中心のそれ自体への結像を行う。これら左右の光学系は、互いに独立して調整可能であり、極めて容易に調整することができる。
電気光学結晶501は、KTNからなり、結晶厚d=1mm、比誘電率εr=15,000であり、結晶長L=5.0mmとし、折り返し回数M1=3の内部反射の後、折り返し回数M2=2の反射を付加したところ、角度分解点数としてN=160が得られる。上述の実施形態と比較すると、前段を付加することにより後段の折り返し回数を、M2=3から、M2=2に削減しても、同等の角度分解点数を得ることができる。一方、構成全体としての光学調整は極めて容易となる。光学調整に精密を要さなくなった結果、電気光学結晶501を囲む2つの球面鏡511、513、および2つの平面鏡514、515の保持・調整具に、安価な機器を用いることができる。同時に、必要な結晶長も、L=8.5mmからL=5.0mmにまで短縮され、低価格化を図ることもできる。
(実施例2-2)実施例2−1において、後段の折り返し回数をM2=2に留めことにより、電気光学結晶501を囲む光学系に対する精度要求が、著しく低減された。そこで、光学系を個別部品を組み立てて構築するのではなく、無調整の一体成形品を充てることにより、さらに生産性の向上と大幅な経済化を図る。
図16に、実施例2-2にかかる光偏向器の構成を示す。実施例2−1における光学系を、一体成形部品(光ガイド522,523)に置換した。2つの光ガイド522、523は、反射膜524a,525aが施された球面鏡を有し、対向する面には、反射膜524b,525bが施された平面鏡と、電気光学結晶501を嵌め込む切り欠けが設けられている。
入射光505は、入射レンズ516により、適切なビーム直径2wとして、電気光学結晶501の側面に斜めに集束される。入射光は、電気光学結晶501中で、両端面に付与された反射膜521a,521bにより、第1の折り返し回数M1−1回の反射を経た後、電気光学結晶501から出射され、光ガイド522中に入射する。光ガイド522は、リレー光学系として作用し、前段の内部反射による折り返し構成の射出中心(電気光学結晶501の右端からM1L/(2n)の距離にある)を、電気光学結晶501に再入射する端面側の射出中心(電気光学結晶501の右端からL/(2n)距離にある)に結像する。
電気光学結晶501から出射された光線は、光ガイド523に入射する。光ガイド523は、本実施形態の折り返し構成として作用し、電気光学結晶501の左端側の射出中心のそれ自体への結像を行う。これにより、電気光学結晶501に戻された光線は、折り返し回数M2=2を経た後、出射光506として光偏向器から出射される。
電気光学結晶501は、KTNからなり、結晶厚d=1mm、結晶長L=5.0mm、比誘電率εr=15,000とし、前段の内部反射による折り返し回数M1=3に対して、角度分解点数としてN=160が得られる。
101,201,301,401,501,601 電気光学結晶
102,202,302,602 電極
103,203,303,603 接地電極
104,204,304,604 駆動電源
105,205,305,405,505,605 入射光
106,206,306,406,506,606 出射光
107,207,307,607 偏向光路
108,208,308,608 中心光軸
109,209,309,609 偏向中心
110,112,610 射出中心
111,113 凹面鏡
116,216,316,416,516 入射レンズ
117〜119 4分の1波長板
210,310,212,312 曲率中心
211,311,411,511,213,313,413,513 球面鏡
314,514,315,515 平面鏡
420 リレーレンズ
421,521,524,525,621 反射膜
522,523 光ガイド

Claims (4)

  1. 電気光学結晶に電圧を印加し、電界に直交するように入射された入射光を、前記電気光学結晶内部に生じる屈折率勾配により偏向し、前記電気光学結晶から出射光として出射させる光偏向器において、
    前記電界に直交する前記電気光学結晶の中心光軸上に、前記電気光学結晶を挟んで第1の凹反射面と第2の凹反射面とを備え、
    前記電気光学結晶への1回目の入射光が、前記電気光学結晶を透過して1回目の出射光となり、前記1回目の出射光が、前記第の凹反射面において反射して1回目の反射光となり、前記1回目の反射光が、前記電気光学結晶を透過せずに、前記第の凹反射面において反射して2回目の反射光となり、前記2回目の反射光が、前記電気光学結晶への2回目の入射光となり、
    前記電気光学結晶を透過して出射された2回目の出射光が、前記第2の凹反射面において3回目の反射光となり、前記3回目の反射光が、前記電気光学結晶を透過せずに、前記第1の凹反射面において反射して4回目の反射光となり、前記4回目の反射光が、前記電気光学結晶への3回目の入射光となり、
    前記第1および第2の凹反射面における反射を繰り返して、前記電気光学結晶をn(n≧3)回透過してn回目の出射光が出射されることを特徴とする光偏器。
  2. 電気光学結晶に電圧を印加し、電界に直交するように入射された入射光を、前記電気光学結晶内部に生じる屈折率勾配により偏向し、前記電気光学結晶から出射光として出射させる光偏向器において、
    前記電界に直交する前記電気光学結晶の中心光軸上に、前記電気光学結晶を挟んで第1の凹反射面と第2の凹反射面とを備え
    前記第1の凹反射面の曲率中心を反射面上に含む第1の平面鏡と、前記第2の凹反射面の曲率中心を反射面上に含む第2の平面鏡とをさらに備え、
    前記電気光学結晶への1回目の入射光が、前記電気光学結晶を透過して1回目の出射光となり、前記1回目の出射光が、前記第の凹反射面において反射して1回目の反射光となり、前記1回目の反射光が、前記第の平面鏡において反射して再度前記第の凹反射面において反射して2回目の反射光となり、前記2回目の反射光が、前記電気光学結晶への2回目の入射光となり
    前記電気光学結晶を透過して出射された2回目の出射光が、前記第の凹反射面において反射して3回目の反射光となり、前記3回目の反射光が、前記第の平面鏡において反射して再度前記第の凹反射面において反射して4回目の反射光となり、前記4回目の反射光が、前記電気光学結晶への3回目の入射光となり、
    前記第1および第2の凹反射面と前記第1および第2の平面鏡とにおける反射を繰り返して、前記電気光学結晶をn(n≧3)回透過してn回目の出射光が出射されることを特徴とする光偏器。
  3. 前記第1の凹反射面および前期第2の凹反射面は、球面であることを特徴とする請求項1および2に記載の光偏器。
  4. 前記第1の凹反射面および前期第2の凹反射面は、円筒面であることを特徴とする請求項1および2に記載の光偏器。
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