本明細書は、2010年6月29日に出願された「スペックルおよび画像フリッカを低減する走査型レーザプロジェクタの動作方法(Methods for Operating Scanning Laser Projectors to Reduce Speckle and Image Flicker)」と題する米国特許出願第12/825,411号の優先権を主張するものである。
スペックルおよび画像フリッカを低減させるように走査型レーザプロジェクタの光源を動作させる方法のいくつかの実施形態を、ここで特に添付の図面を参照して詳細に説明する。この方法は、一般に、走査型レーザプロジェクタの光源を用いて画像を投影するステップを含む。画像の投影と同時に、光源の出力ビームの性質を変化させて、相関のないスペックルパターンと部分的に相関のあるスペックルパターンとを含むスペックル低減シーケンスを投影し、投影画像内のスペックルを低減させる。スペックル低減シーケンスは、画像内のフリッカを低減させるのに十分な時間間隔で投影される。スペックルと画像フリッカとを低減させる方法の種々の実施形態を、本書においてさらに詳細に説明する。
スペックルおよび画像フリッカを低減させる方法の種々の実施形態を説明する際、相関のないスペックルパターンおよび部分的に相関のあるスペックルパターンに言及する。「スペックルパターン」という用語は、光源で投影された、その特定の画像に特有のスペックル特性を有している離散的画像を称する。「相関のないスペックルパターン」および「部分的に相関のあるスペックルパターン」という用語は、2画像間の相関関数CFの定量的評価を称する。具体的には、各スペックルパターンは画素要素I
xのマトリクスを含む画像であり、2つの画像I
1およびI
2間の相関関数CFは以下のように定義することができる。
ここで、
I
1は第1画像を表す画素のマトリクス、
I
2は第2画像を表す画素のマトリクス、
I
1AvgはマトリクスI
1中の画素の平均強度、
I
2AvgはマトリクスI
2中の画素の平均強度、
∇I
1はマトリクスI
1中の画素の強度の標準偏差であって、ここで、
さらに、∇I
2はマトリクスI
2中の画素の強度の標準偏差であって、ここで、
である。
相関関数の絶対値(すなわち、|CF|)が1に等しいとき、2つの画像は完全に相関がある。同様の関係を使用して、相関関数CFの絶対値が0に等しいとき、2つの画像は完全に相関がない。ただし、相関関数の絶対値が0.1未満であるときには、2つの画像は相関がないものと見なされる。
この説明のために、Inのスペックルパターンを含んでいるスペックル低減シーケンス内の特定のスペックルパターンIxは、この特定のスペックルパターンIxとスペックル低減シーケンス内の任意の他のスペックルパターンとの間の相関関数CFの絶対値が約0から約0.1までであるとき、相関のないスペックルパターンである。さらに、Inのスペックルパターンを含んでいるスペックル低減シーケンス内の特定のスペックルパターンIxは、この特定のスペックルパターンIxとスペックル低減シーケンス内の少なくとも1つの他のスペックルパターンとの間の相関関数CFの絶対値が約0.4から約0.6までであるとき、部分的に相関のあるスペックルパターンである。
図1は、本書において説明されるスペックルおよび画像フリッカを低減するようにレーザ走査式プロジェクタの走査系の光源を動作させる方法と併せて使用し得る、走査型レーザプロジェクタシステムを概略的に描いたものである。走査型レーザプロジェクタシステム100は、一般に、複合光源102および走査ミラー104を含む。一実施の形態において、走査型レーザプロジェクタシステム100は、図1に描かれているように偏光回転子106をさらに含んでもよい。走査型レーザプロジェクタシステム100は、複合光源102で生成された出力ビーム110を走査させて、投影面300上に2次元画像を作り出すようプログラムされている。投影面300は、例えば壁またはプロジェクタスクリーンでもよい。図1に示されている実施形態では、複合光源102からの出力ビーム110の向きを第1走査ミラー104によって投影面300へと変え、さらに出力ビーム110を投影面300上で図1に示されている座標軸のx方向およびy方向に走査して、投影面300上に画像を形成する。走査型レーザプロジェクタシステム100を使用して、静止画(例えば、文字)、動画(例えば、映像)、または静止画と動画を組み合わせたものを表示することができる。一実施の形態において、このシステムを、ハンドヘルドプロジェクタ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン、または他の類似の装置などの比較的小さい装置に組み込むことができるような、小型なものとしてもよい。しかしながら他の実施形態において、このシステムは大判の画像を投影する標準サイズのプロジェクタシステムとしてもよい。
図1に描かれている走査型レーザプロジェクタシステム100の実施形態において、複合光源102は、コヒーレントな光ビーム109a、109b、109cを異なる波長で放射するよう動作可能な1以上の個別の光源108a、108b、108cを備えている。例えば、図1に描かれている複合光源102は、夫々可視スペクトルの緑色、青色、および赤色部分の波長を有するコヒーレントな光ビームを放射することが可能な、3つの個別の光源108a、108b、108cを備えている。各個別光源108a、108b、108cから放射されたコヒーレントな出力ビーム109a、109b、109cを、例えばレンズ、ミラーなどの種々の光学部品(図示なし)を用いて合成およびコリメートして、各個別光源108a、108b、108cからのコヒーレント出力ビーム109a、109b、109cから成るコリメート出力ビーム110を生み出すことができる。他の実施形態において(図示なし)、複合光源102が利用する個別光源は、それより多くても少なくてもよい。例えば、複合光源は1つの個別光源を含むものでもよいし、2つの個別光源を含むものでもよく、あるいは3以上の個別光源を含むものでもよい。個別光源は、可視スペクトルの赤色、青色、または緑色部分の波長以外の波長を有する、コヒーレント光ビームを放射するものでもよいことも理解されたい。
一実施の形態において、個別光源108a、108b、108cは、図2に概略的に示したDBRレーザ120などのDBRレーザである。DBRレーザ120は一般に、波長選択部128、位相整合部130、および利得部132を有する半導体レーザを含み得る。波長選択部128は、分布ブラッグ反射器またはDBR部とも称され得るが、典型的には、レーザ共振器の能動領域外に位置付けられた1次または2次のブラッグ回折格子を備えている。波長選択部は、回折格子が、その反射率が波長に依存するミラーのように作用して、波長選択を実現する。DBRレーザにより放射される出力ビーム109の波長は、電気リード線122で波長選択部128に注入される電流を変化させることによって調節することができる。例えば、一実施の形態においては、DBRレーザ120の波長選択部128に注入される電流を使用して、レーザの動作特性を変化させることによって、DBRレーザ120の出力端面134から放射されるコヒーレント出力ビーム109の波長を制御することができる。より具体的には、注入される電流を使用して、波長選択部128の温度および/または波長選択部128の屈折率を制御することができ、したがって、波長選択部に注入される電流の量を調節することによって、レーザ光源が放射するコヒーレント出力ビーム109の波長を変化させることができる。あるいは、位相整合部130または利得部132に注入される電流を、DBRレーザが放射するコヒーレント出力ビーム109の波長を制御するために同様に使用することもできる。
ここまで個別光源108a、108b、108cはDBRレーザを含むものとして説明してきたが、これらの光源に他の種類のレーザ光源を使用してもよいことを理解されたい。例えば、個別光源108a、108b、108cは、分布帰還型(DFB)レーザ、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)、ダイオード励起固体レーザ(DPSS)、天然の(native)緑色レーザ、垂直外部共振器面発光レーザ(VECSEL)、またはファブリペロー型レーザなどの、1以上の単一波長レーザを含み得る。
別の実施形態において、レーザプロジェクションシステムの個別光源は、図3に描かれている波長変換光源121などの波長変換光源でもよい。波長変換光源121は概して、DBRレーザ120または類似のレーザ素子などの半導体レーザを含み、この半導体レーザが光学的に波長変換素子136に連結されている。波長変換素子136はDBRレーザのコヒーレントビーム138を高調波に変換し、DBRレーザ120のコヒーレントビーム138の波長とは異なる波長を有するコヒーレント出力ビーム109を出力する。この種類の波長変換光源は、より長い波長の半導体レーザから、より短い波長のレーザビームを生成するのに特に有用であり、例えば、レーザプロジェクションシステム用の可視レーザ光源として使用することができる。
ここで図4を参照すると、周波数変換光源に使用される波長変換素子136の一実施形態の断面が概略的に描かれている。波長変換素子136は概して、入力端面140と出力端面146との間に延在する導波路部分144を有した、MgOドープニオブ酸リチウムなどのバルク結晶材料142を含む。一実施の形態において、導波路部分144は周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)結晶である。第1波長λ1を有するコヒーレントビーム138(DBRレーザ120のコヒーレントビーム138など)が波長変換素子136の導波路部分144内に導かれると、コヒーレントビーム138は波長変換素子136の導波路部分144に沿って伝播し、そこでコヒーレントビーム138は第2波長λ2に変換される。波長変換素子136は、波長変換されたコヒーレント出力ビーム109を出力端面146から放射する。例えば、一実施の形態において、DBRレーザ120が放射しかつ波長変換素子136の導波路部分144内に導かれるコヒーレントビーム138は、約530nmの波長を有している(例えば、コヒーレントビーム138は赤外光ビームである)。この実施形態において、波長変換素子136は赤外光ビームを可視光に変換して、約530nmの波長を有する波長変換されたコヒーレント出力ビーム109を放射する(例えば、可視緑色光)。
図4に描かれている波長変換素子136の実施形態において、波長変換素子136が放射するコヒーレント出力ビーム109の波長は、様々な技術を利用して調節することができる。例えば、波長変換素子136のコヒーレント出力ビーム109の波長を、コヒーレント出力ビーム109の波長に変化を生じさせる電場を波長変換素子136に印加することによって調節してもよい。さらに別の実施形態において、波長変換素子136のコヒーレント出力ビーム109の波長を、波長変換素子136および/または波長変換素子の導波路部分に、コヒーレント出力ビーム109の波長に変化を生じさせる熱を加えることによって調節してもよい。
ここで図5を参照すると、波長変換光源に使用される波長変換素子136の別の実施形態の断面が概略的に描かれている。この実施形態において、波長変換素子136の構成は図4の波長変換素子136と類似している。ただし、この実施形態の波長変換素子136は、第1導波路部分144aと、第2導波路部分144bと、さらに第3導波路部分144cとを備え、これらの夫々は波長変換素子136の入力端面140と出力端面146との間に延在している。導波路144a、144b、144cの夫々は、他の導波路とは異なる波長の出力ビームを生成するように調整される。この実施形態において、波長変換素子136に光学的に連結された半導体レーザ(図示なし)をアクチュエータに機械的に連結させてもよく、このアクチュエータを利用して半導体レーザの位置を調節することによって、半導体レーザを異なる導波路に光学的に連結させてもよい。各導波路144a、144b、144cにおいて半導体レーザの波長を、その導波路に応じて調整することで、波長変換素子136は所望の波長を有するコヒーレント出力ビーム109を放射する。したがって、波長変換光源の波長は、DBRレーザを波長変換素子のさまざまな導波路部分に連結させることによって調節することができる。
再び図1を参照すると、本書において説明する実施形態において、複合光源102の出力ビーム110は上述したように第1走査ミラー104を用いて投影面300上に走査される。第1走査ミラー104は出力ビーム110の光経路内に位置付けられ、出力ビーム110を投影面300に向かって反射する。走査ミラー104は、ミラーの配向を少なくとも2つの軸112、114に関して調節するよう動作可能なアクチュエータに連結されたミラーを含み得る。例えば、一実施の形態においてこのアクチュエータは、ミラーに連結されたマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)である。MEMSデバイスはミラーを第1軸112および第2軸114に関して回転させるよう動作可能であり、それにより、反射された出力ビーム110を投影面300上でy方向およびx方向に走査させて画像を形成することができる。
図1に描かれている走査型レーザプロジェクタシステム100の実施形態において、このシステムはさらに偏光回転子106を備えている。偏光回転子は、複合光源102の出力ビーム110が第1走査ミラー104に到達する前に偏光回転子106を通過するよう、複合光源102の光経路内に位置付けられる。偏光回転子106は、出力ビーム110の偏光を第1偏光から第2偏光へと調節するよう動作可能なものである。第2偏光は第1偏光と直交するものでもよい。あるいは第2偏光は、第1偏光と直交しない、中間の偏光でもよい。一実施の形態において偏光回転子106は、光ビームの偏光を回転させるのに適した、液晶偏光回転子または類似のデバイスでもよい。
図1に描かれている走査型レーザプロジェクタシステム100の実施形態は偏光回転子106を含んでいるが、他の実施形態において、走査型レーザプロジェクタシステムは偏光回転子を備えずに構成し得ることを理解されたい。
走査型レーザプロジェクタシステム100は、本書において説明する、スペックルおよび画像フリッカを低減する方法を実行するようプログラムされる。具体的には、走査型レーザプロジェクタシステム100は、複合光源102に通信連結されている、例えばマイクロコントローラやプログラマブルロジックコントローラなどの1以上のシステムコントローラ107、第1走査ミラー104、および偏光回転子106を含み得る。システムコントローラ107は、複合光源102、第1走査ミラー104、および偏光回転子106を制御して、単一色または多色の画像を生成および投影すると同時に投影画像内のスペックルおよび画像フリッカを低減させるようプログラムされる。システムコントローラ107は、当技術において周知の画像投影用ソフトウェアや関連する電子機器と一緒になって、符号化された画像データを伝える1以上の画像データ信号(例えば、レーザ駆動電流)を複合光源102に供給することができる。出力ビーム110が複数の個別光源108a、108b、108cを含む場合、システムコントローラ107は、個別光源108a、108b、108cが放射したコヒーレント出力ビーム109a、109b、または109cの夫々の、波長、利得、および/または強度を個別に制御することができる。例えば、符号化された画像データが個別光源108a、108b、108cの1以上の出力ビーム109a、109b、109cの利得または強度を変動させ、これに対応して複合光源102の出力ビーム110に利得または強度の変動を生じさせる。第1走査ミラー104で出力ビームを投影面300上に走査させたときに、出力ビーム110に生じた利得または強度の変動によって画像が形成される。
さらに図1を参照し、走査型レーザプロジェクタシステムの光源を動作させる方法を、ここでは複合光源102の光源108aを参照して説明する。ただし、スペックルおよび画像フリッカを低減させるために、他の光源108bおよび108cにも同じ制御方法を適用し得ることを理解されたい。
走査型レーザプロジェクタシステム100の光源108aを動作させる方法は、光源108aで複数のフレームを含む画像を投影するステップを含む。画像を作り出すために、システムコントローラ107は上述したように、光源108aが放射する出力ビーム109aに利得または強度の変動を生じさせる画像データ信号を、光源108aに供給する。出力ビーム109aを異なる波長の1以上の他の出力ビーム(すなわち、出力ビーム109b、109c)と合成させて出力ビーム110を形成し、これを投影面300へと方向転換させてもよい。第1走査ミラー104が出力ビーム110を投影面300上に迅速に走査させて複数のフレームを生み出し、これらのフレームが、検出器(人間の眼など)により統合されたときに、光源108aに供給された画像データ信号内に符号化されている画像を形成する。一般に、走査型レーザプロジェクタは個別のフレームを60フレーム/秒(すなわち、60Hz)の速度で投影する。各フレーム内の各画素(すなわち、投影面300上でのビームスポット夫々の別々の位置)は、約20ナノ秒間照射される。
光源108aの強度または利得を画像データ信号で変化させて画像を生成するときに、対応する出力ビーム109aの物理的性質を、投影画像内のスペックルを低減させるように同時に変化させることができる。より具体的には、画像を光源108aで投影すると同時に、スペックル低減シーケンスを光源108aの出力ビーム109aで投影するように、出力ビーム109aの物理的性質を変化させる。スペックル低減シーケンスは複数のスペックルパターンInを含み得る。ここでnはシーケンス内のスペックルパターンの総数である。本書で説明する実施形態において、スペックル低減シーケンス内のスペックルパターン総数nは少なくとも8である。
一般にスペックルは、投影画像上に重ね合わせるスペックルパターンを時間の関数として変化させることにより低減させることができる。スペックルパターンを十分に速く(すなわち、人間の眼の積分時間よりも速く)変化させた場合には、投影されたスペックルパターンが人間の眼により平均化されて、スペックルのコントラストが減少した印象になる。例えば、スクリーンにぶつかる光の偏光が第1直線偏光Sから第2直線偏光Pに変わる場合、2つの相関のないスペックルパターンが生成される(すなわち、1つは第1偏光を有し、かつ1つは第2偏光を有する)。偏光状態をSからPに人間の眼の積分時間よりも速く切り替えることによって、眼に見えるスペックルコントラストは2の平方根だけ低下する。
図1に描かれているようなレーザ走査プロジェクタにおいて、光ビームは所与の位置で極短時間(およそ20ナノ秒)の間留まり、これを画素持続時間と称する。その結果、スペックルパターンを画素持続時間よりも速く変更し得る場合を除き、異なるスペックルパターンを投影できる最速の速度はフレームレートに等しく、これはほとんどのプロジェクションシステムで典型的には60Hzである。相関のないスペックルパターンを2つのみ、例えばSとPとの間で偏光状態を切り替えることにより投影すると、30Hzはスペックルなどの高い空間周波数特性に対する人間の応答時間よりも速いため、スペックルは依然として2の平方根だけ低くなる。スペックルが2の平方根低くなったとしても、スペックルを許容できるレベルまで低減させるのに通常十分ではなく、知覚されるスペックルコントラストをさらに低下させるために相関のないより多くのスペックルパターンが必要である。しかしながら、例えば4つの相関のないスペックルパターンをフレームレートで投影すると、4つの画像のシーケンス(A,B,C,D/A,B,C,D/...)が投影され、これらの画像が投影される周波数(15Hz)は人間の眼の応答時間よりも遅いため画像フリッカが生じる。
画像フリッカを低減させる1つの手法は、より長いスペックル低減シーケンス(すなわち、より遅い周波数で投影されるスペックル低減シーケンス)を投影するステップを含む。相関のないスペックルパターンの数は限定され得るため、より長いスペックル低減シーケンスは、一連の相関のないスペックルパターンと相関のあるスペックルパターンとから作り出してもよい。実験によれば、スペックル低減シーケンスを10Hz以下で使用すると、画像フリッカが低減され、観察者にはスペックルが時間の関数としてゆっくり動いているように見えることが示されている。しかし、どのくらいスペックル低減シーケンスの持続時間を延長し得るかについては限界がある。実際に、シーケンスが過度に遅いと、相関のないスペックルパターンをさらに加えても画像の品質はそれ以上改良されない。実験によれば、スペックルなどの高空間周波数のノイズでは、画像改善がその限界を超えて少なくなるため、スペックル低減シーケンスの持続時間は0.13秒(7.5Hz)未満で維持されるべきであることが示されている。
一実施の形態において、スペックル低減シーケンスの持続時間は、約0.07秒超から約0.13秒まで(すなわち、スペックル低減シーケンスの繰返し速度が約7.5Hzから約15Hzまで)としてもよい。別の実施形態において、スペックル低減シーケンスの持続時間は、約0.1秒超(すなわち、スペックル低減シーケンスの繰返し速度が10Hz未満)でもよく、かつ0.13秒(7.5Hz)を超えないものとなる。具体的には、持続時間が0.07秒を超えるスペックル低減シーケンスは、スペックル低減シーケンスと同時に投影される画像内の画像フリッカを大幅に低減し、知覚される投影画像の品質を改善することが見出された。したがって、持続時間が約0.07秒を超えるスペックル低減シーケンスは、投影画像内のスペックルの知覚量を低減するためにも、また投影画像内の画像フリッカを低減するためにも使用することができる。
例えば2つの異なる偏光状態間で切替えを行い、かつ光源の波長を、相関のないスペックル低減パターンを生成するのに十分な程度に分離されている3つの異なる波長に調節することによって、少なくとも6つの相関のないスペックルパターン(すなわち、相関のないスペックルパターンの数k=6)を生み出す実施形態では、偏光および波長を連続して調節して部分的に相関のあるスペックル低減パターンと相関のないスペックル低減パターンとのシーケンスを生成することによって、スペックル低減シーケンスを10Hz未満で生成するのは容易である。
4つの相関のないスペックルパターンのみが利用可能な実施形態では、スペックル低減シーケンスが複数の相関のないスペックルパターンと複数の部分的に相関のあるスペックルパターンとを含むよう、相関のないスペックルパターンの間に中間の部分的に相関のあるパターンを挿入することによって、スペックル低減シーケンスの持続時間を増加させるというのも一策である。例えば、スペックル低減シーケンス内のスペックルパターンの総数nが少なくとも8であるとき、スペックル低減シーケンス内の相関のないスペックルパターンの数kは4以上の整数であり、さらにスペックル低減シーケンス内の部分的に相関のあるスペックルパターンの数lは4以上の整数である。
上述したように、スペックル低減シーケンス内の個別のスペックルパターンIxは、この個別のスペックルパターンIxとスペックル低減シーケンス内の任意の他のスペックルパターンとの間の相関関数CFの絶対値が約0から約0.1までであるとき、相関のないスペックルパターンである。さらに、スペックル低減シーケンス内の個別のスペックルパターンIxは、この個別のスペックルパターンIxとスペックル低減シーケンス内の少なくとも1つの他のスペックルパターンとの間の相関関数CFの絶対値が約0.4から約0.6までであるとき、部分的に相関のあるスペックルパターンである。
一実施の形態では、スペックル低減シーケンス内において、相関のないスペックルパターンの個別の1つを、部分的に相関のあるスペックル低減パターンの個別の1つと交互にする。例えば、1つの相関のないスペックルパターンを投影した後に続いて、1つの部分的に相関のあるスペックルパターンを投影するなどしてもよい。別の実施形態において、スペックル低減シーケンスは、複数の連続した相関のないスペックルパターンを、1以上の連続した部分的に相関のあるスペックルパターンと交互に含む。例えば、2つの部分的に相関のあるスペックルパターンを順に投影した後に続いて、2つの相関のないスペックルパターンを順に投影し、さらに続いて2つの部分的に相関のあるスペックルパターンを順に投影するなどしてもよい。さらに別の実施形態において、スペックル低減シーケンスは、複数の連続した部分的に相関のあるスペックルパターンを、1以上の連続した相関のないスペックルパターンと交互に含む。例えば、2つの部分的に相関のあるスペックルパターンを順に投影した後に続いて、1つの相関のないスペックルパターンを投影し、さらに続いて2つの部分的に相関のあるスペックルパターンを順に投影するなどしてもよい。
スペックル低減シーケンス内の(相関のない、または部分的に相関のある)各スペックルパターンは、光源108aの出力ビーム109aの物理的性質を変化させることによって作り出される。本書において説明する実施形態において、この物理的性質は、出力ビーム109aの波長、出力ビーム109aの偏光、出力ビーム109aの投影面300に対する入射角、あるいはこれらの波長、偏光、および/または入射角を種々組み合わせたものとすることができる。
例えば、光源108aがDBRレーザを含む上述の実施形態では、DBRレーザに通信連結されたシステムコントローラ107を用いてDBRレーザの波長選択部に供給される電流を調節することによって、光源108aの出力ビーム109aの波長を変化させる。光源108aが、図3に示した波長変換素子に光学的に連結された半導体レーザを備えている周波数変換光源である実施形態においては、光源108aが放射する出力ビーム109aの波長を、波長変換素子の導波路部分を加熱することによって変化させてもよい。あるいは、光源108aが放射する出力ビーム109aの波長を、波長変換素子に電場を印加することによって変化させてもよい。波長変換素子の導波路部分の加熱や、あるいは波長変換素子への電場の印加は、適切な時間間隔で波長に所望の変化をもたらすようにシステムコントローラ107で制御してもよい。
光源108aの出力ビーム109aの波長を変化させてさまざまな相関のないスペックルパターンおよび/または部分的に相関のあるスペックルパターンを生成する実施形態において、相関のないスペックルパターン間の波長の変動は少なくとも0.3nmである。例えば、出力ビーム109aが第1波長530nmを有している場合(すなわち、第1波長は可視スペクトルの緑色部分内)、出力ビーム109aの第1波長は、530.15nmまたは529.85nmの第2波長まで、少なくとも±0.3nm変化させられるであろう。この例において、530nm、530.15nm、および529.85nmの波長で生成されたスペックルパターンは、互いに対して相関がない。
しかしながら、特定の偏光を有する出力ビーム109aでは、0.3nm未満の波長の変動は部分的に相関のあるスペックルパターンをもたらす。より具体的には、出力ビーム109aが固定偏光を有し、かつ出力ビームの波長を、少なくとも±0.3nm離れた第1波長と第2波長との間の範囲に亘って変化させることができる場合には、出力ビーム109aの波長を第1波長と第2波長との間の中間波長に変化させて、第1波長または第2波長のいずれかで形成されたスペックルパターンに対して部分的に相関のあるスペックルパターンを生成することができる。例えば、光源108aの出力ビーム109aの波長が第1波長529.85nmと第2波長530.15nmとの間で可変である場合には、出力ビーム109aの波長を中間波長である530nmに変化させて、第1波長または第2波長のいずれかで生成されるスペックルパターンと部分的に相関のあるスペックルパターンを生成してもよい(出力ビームの偏光が、第1波長、第2波長、および中間波長で同じままであると仮定する)。530nmで生成されたスペックルパターンは、530.15nmおよび529.85nmで生成されたスペックルパターンに対して部分的にのみ相関があるが、530.15nmおよび529.85nmで生成されたスペックルパターンは、互いに対して相関がないことを理解されたい(すなわち、波長の差が少なくとも0.3nmである)。
さらに図1を参照すると、光源108aが放射する出力ビーム109aの偏光を、偏光回転子106を用いて変化させることによって、さまざまな相関のあるスペックルパターンおよび相関のないスペックルパターンをさらに作り出すことができる。例えば、固定波長を有する出力ビームでは、出力ビームの偏光を第1偏光から、第1偏光に直交する第2偏光に変化させることができる。この例において、第1偏光の出力ビームで生成されたスペックルパターンは、第2偏光を有する出力ビームで生成されたスペックルパターンと相関がない。しかしながら、出力ビーム109aの偏光を、第1偏光から、第1偏光および第2偏光と非直交の中間の偏光に変化させた場合、第1偏光の出力ビームで生成されたスペックルパターンと中間の偏光の出力ビームにより生成されたスペックルパターンは、部分的に相関がある。直交する第1偏光と第2偏光との間の多数の中間の偏光を利用して、多数の部分的に相関のあるスペックルパターンを作り出すことができることを理解されたい。例えば、中間の偏光の数は2つ(すなわち、第1中間偏光および第2中間偏光)でもよいし、あるいは3以上でもよく、各中間の偏光は第1および第2偏光と非直交である。
ここで図6を参照すると、別の実施形態において、複合光源102の出力ビームが投影面300上に入射する角度θを変化させることによって、さまざまな相関のあるスペックルパターンおよび相関のないスペックルパターンをさらに作り出すことができる。スクリーンに紙や塗装面などの材料を使用した場合、観察者からスクリーンまでの距離が約1/2メートルであるときには、約1.5mRadのスクリーン上での出力ビームの入射角の変化で相関のないスペックルパターンを作り出すのに十分であることが見出された。例えば、図6に示した走査型レーザプロジェクタシステム200の実施形態において、走査型レーザプロジェクタシステム200は上述したように、複合光源102、偏光回転子106、および第1走査ミラー104を含む。ただし、この実施形態において、走査型レーザプロジェクタシステム200は第2走査ミラー224をさらに備えている。この第2走査ミラーは、上述した第1走査ミラー104に類似の構造を有している。具体的には第2走査ミラー224は、少なくとも2つの軸222、223に関してミラーの配向が調節可能となるようにMEMSアクチュエータまたは類似のアクチュエータなどのアクチュエータに連結されたミラーを含み得る。第1走査ミラー104は複合光源102の出力ビームの光経路内に置かれ、さらに、複合光源102の出力ビーム110(光源108aの出力ビーム109aを含む)の方向を第2走査ミラー224上へと変えかつ出力ビーム110を第2走査ミラーの表面上で2方向に走査させるように、第1走査ミラー104は配向される。第2走査ミラー224は、出力ビーム110の方向を投影面300上へと変えるように位置付けられる。さらに、第2走査ミラー224の配向を第1走査軸222および第2走査軸223に関して調節して、出力ビームの投影面上での入射角θを変えてもよい。
この実施形態において、出力ビームにより生成される2つのスペックルパターン間の相関関数は、出力ビームの入射角θによって変わる。相関のないスペックルパターンは、連続したスペックル低減パターン間で出力ビームの入射角を少なくとも±1.5mRad変化させることによって、出力ビームで形成することができる。例えば、出力ビーム110が第1入射角θ1を有する場合、出力ビーム110の第1入射角θ1を少なくとも1.5mRad変化させて第2入射角θ2としてもよい。この例において、第1入射角θ1の出力ビームで生成されたスペックルパターンと第2入射角θ2の出力ビームで生成されたスペックルパターンは、互いに相関のないスペックルパターンである(すなわち、入射角の変化が少なくとも1.5mRadである)。
ただし、出力ビームが固定の偏光および波長を有しかつ第1入射角θ1の変化が1.5mRad未満である場合、入射角を変化させることにより形成されるスペックルパターンは、第1入射角θ1により形成されるスペックルパターンと部分的にのみ相関があるスペックルパターンを生み出すことになる。より具体的には、出力ビーム110が固定の偏光および波長を有し、かつ出力ビーム110の入射角が少なくとも1.5mRad離れている第1入射角θ1と第2入射角θ2との間の範囲に亘って可変である場合には、第1入射角θ1と第2入射角θ2との間の中間入射角θInに出力ビームの第1入射角θ1を変化させることで、第1入射角θ1または第2入射角θ2のいずれかで形成されたスペックルパターンに対して部分的に相関のあるスペックルパターンを生成することができる。
例えば、光源108aの出力ビーム110の入射角が第1入射角θ1と第2入射角θ2との間で可変である場合、出力ビームの入射角θ1を、θ1とθ2との間の中間入射角θInへと変化させて、第1入射角θ1または第2入射角θ2のいずれかで形成されたスペックルパターンと部分的に相関のあるスペックルパターンを生成することができる(出力ビームの偏光が、第1入射角θ1、第2入射角θ2、および中間入射角θInで同じままであると仮定する)。中間入射角θInで生成されたスペックルパターンは、第1入射角θ1および第2入射角θ2で生成されたスペックルパターンに対して単に部分的に相関があるが、第1入射角θ1および第2入射角θ2で生成されたスペックルパターンは互いに対して相関がない(すなわち、入射角の差が少なくとも1.5mRadである)ことを理解されたい。
再び図1を参照すると、一実施の形態において、光源108aは出力ビーム109aを放射するように動作可能であり、かつ光源108aは出力ビーム109aの波長を、少なくとも0.3nm離れている第1波長Aと第2波長Bとの間の範囲に亘って変化させる。例えば、第1波長Aは約529.85nmから約530.15nmまでの範囲内のものでもよい。ただし、光源108aの具体的な特性に応じて、さまざまな波長範囲(すなわち、529.85nm〜530.15nm以外)を使用することもできることを理解されたい。波長範囲の両端点は、波長が変化したときに出力ビームの色に認識できる差が生じないよう、十分に近いものであることも理解されたい。システムコントローラ107は、光源108aの出力ビーム109aの波長を、第1波長Aまたは第2波長Bのいずれかから第1波長Aおよび第2波長Bの間の中間波長ABまで変化させるように動作可能なものでもよい。例えば、一実施の形態において、中間波長ABと第1波長Aまたは第2波長Bいずれかとの間の差は、約0.15nmでもよい。ただし、中間波長ABは第1波長Aと第2波長Bとの間の中心である必要はないことを理解されたい。
この実施形態において、システムコントローラ107は、出力ビームの偏光を第1偏光P1と第1偏光P1に直交する第2偏光P2との間の範囲に亘って変化させるように、偏光回転子106を制御するよう動作可能なものでもよい。より具体的には、システムコントローラ107は、光源108aの出力ビーム109aの偏光を、第1偏光P1または第2偏光P2のいずれかから、第1偏光P1または第2偏光P2のいずれとも非直交である第1中間偏光P12まで変化させるよう動作可能なものでもよい。
この実施形態において、システムコントローラ107は、光源108aの出力ビーム109aの波長を変化させて以下のようなInのスペックル低減パターンのスペックル低減シーケンスを生成するよう動作可能なものでもよい。
AP1‐AP12‐AP2‐ABP2‐BP2‐BP12‐BP1‐ABP12
ここで、n=8、相関のないスペックルパターンの数kが4、そして部分的に相関のあるスペックルパターンlの数が4である。この実施形態において、AP1、AP2、BP2、およびBP1は相関のないスペックルパターンであり、またAP12、ABP2、BP12、およびABP12は部分的に相関のあるスペックルパターンである。このスペックル低減シーケンスの時間長は、約0.07秒から約0.13秒である。
別の実施形態において、光源108aは、出力ビーム109aを放射しかつ出力ビーム109aの波長を第1波長Aから、少なくとも0.3nm離れた第2波長Bまで変えるよう、動作可能である。例えば、第1波長Aは約529.85nmでもよく、一方第2波長Bは約530.15nmでもよい。システムコントローラ107は、光源108aの出力ビーム109aの波長を上述したように第1波長Aから第2波長Bまで変えるように動作可能なものでもよい。
この実施形態において、システムコントローラ107は、偏光回転子106を制御して、出力ビーム109aの偏光を第1偏光P1と第1偏光P1に直交する第2偏光P2との間の範囲に亘って変化させるように動作可能なものでもよい。システムコントローラ107は、光源108aの出力ビーム109aの偏光を、第1偏光P1または第2偏光P2のいずれかから、第1中間偏光P12または第2中間偏光P21まで変化させるよう動作可能なものでもよい。第1中間偏光P12および第2中間偏光P21の両方は、第1偏光P1および第2偏光P2と非直交である。
この実施形態において、システムコントローラ107は、光源108aの出力ビーム109aの波長を変化させて以下のようなInのスペックル低減パターンのスペックル低減シーケンスを生成するよう動作可能なものでもよい。
AP1‐AP12‐AP21‐AP2‐BP1‐BP12‐BP21‐BP2
ここで、n=8、相関のないスペックルパターンの数kが4、そして部分的に相関のあるスペックルパターンlの数が4である。この実施形態において、AP1、AP2、BP2、およびBP1は相関のないスペックルパターンであり、かつAP12、AP21、BP12、およびBP21は部分的に相関のあるスペックルパターンである。このスペックル低減シーケンスの時間長は、約0.07秒から約0.13秒である。
前述のスペックルを低減するための技術は、スペックル低減シーケンスの相対的な時間を考慮に入れて、低速スペックル低減技術と称することができる。別の実施形態において、スペックル低減技術の組合せを使用することもできる。例えば、上述したようなある低速スペックル低減技術を、画素持続時間よりも速い他のスペックル低減方法とともに使用してもよい。一実施の形態において、本書で上述した低速スペックル低減技術を、人間の眼の積分時間よりも速い(すなわち、約0.04秒よりも速い)時間に亘って投影されるスペックル低減シーケンスと併せて使用してもよい。その場合スペックル低減シーケンスは、30Hzで投影される一連のスペックルパターン(A,B/A,B/…)を含んでもよく、その結果、各単一フレームのスペックルコントラストは十分に発達したスペックルよりも低くなる。
例えば、ここで図7を参照すると、レーザプロジェクションシステム400の一実施の形態の概略図が示されており、これを使用して、人間の眼の積分時間よりも速い速度でスペックルパターンを生成することができる。例示的なレーザプロジェクションシステム400は、光源410が生成しかつ光走査部品426が反射(または透過)した出力ビーム420を2次元走査させて例えば壁またはプロジェクタスクリーンなどの所与の投影面430で2次元画像を作り出すようにプログラムされた、走査型レーザプロジェクションシステムとして構成されている。以下でより詳細に説明するが、実施形態の中には偏光スクランブル装置429を備え得るものもある。レーザプロジェクションシステム400を使用して、静止画(例えば、文字)、動画(例えば、映像)、またはその両方を表示することができる。このシステムを、ハンドヘルドプロジェクタ、携帯電話、携帯情報端末、ノートパソコン、または他の類似の装置などの比較的小さい装置に組み込むことができるような、小型なものとしてもよい。
光源410は、1以上のレーザを含み得る。図7および8に示した実施形態は、異なる波長でコヒーレントビームを放射するよう動作可能な3つのレーザ411a、411b、および411cを含んでいる。一例として、ミラーおよびダイクロイックミラーを使用して、3つの放射されたビーム414a、414b、および414cを単一の放射ビーム420に合成してもよい。例えば、光源410は、赤色、青色、および緑色の波長のビームを夫々放射することが可能な3つのレーザを含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、出力ビーム420は略コリメートされた緑色、赤色、および青色のビームから成る。例えば、第1レーザ411aは緑色スペクトル領域内の波長を有するビーム414aを放射し得、第2レーザ411bは赤色スペクトル領域内の波長を有するビーム414bを放射し得、さらに第3レーザ411cは青色スペクトル領域内の波長を有するビーム414cを放射し得る。他の実施形態が利用する光源410は、より多くのまたはより少ないコリメートされたレーザビームを放射するものでもよいし、および/または、ビームを緑色、赤色、または青色以外の波長で放射するものでもよい。例えば、出力ビーム420は、緑色スペクトル領域内の波長を有する単一の出力ビームでもよい。
光源410は、例えば分布帰還型(DFB)レーザ、分布ブラッグ反射型(DBR)レーザ、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)、ダイオード励起固体レーザ(DPSS)、天然の緑色レーザ、垂直外部共振器面発光レーザ(VECSEL)、またはファブリペロー型レーザなどの、1以上の単一波長レーザを含み得る。さらに、緑色ビームを生成するために、いくつかの実施形態の光源410は、第2高調波発生用(SHG)結晶または高調波発生用結晶などの波長変換素子(図示なし)をさらに備えて、赤外バンドのネイティブ波長を有するレーザビームを周波数逓倍してもよい。例えば、MgOドープの周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)結晶などのSHG結晶を使用して、1060nmのDBRレーザまたはDFBレーザの波長を530nmに変換することにより、緑色光を生成することができる。光源410は、多くの波長の放射が可能なレーザなど、単一波長レーザ以外のレーザを含むものでもよい。他の実施形態において光源410は、波長変換素子を使用することなく天然の緑色レーザを放射することが可能な、レーザを含んでもよい。
光源410は、レーザ411a〜411cにより生成された各ビームの光路内に位置付けられた、光源レンズ412a〜412cをさらに含んでもよい。光源レンズは、光源410から出て行くビーム414a〜414cを略コリメートして提供することができる。他の実施形態において、光源410は光源レンズを備えていないものでもよく、ビームは光源410からコリメートされていない状態で出て行ってもよい。一実施の形態において、レーザプロジェクションシステム400は、レーザ411a〜411cにより生成された3つのビーム414a〜414cを反射および合成して出力ビーム420とするように位置付けられかつ構成された、反射面416a〜416cをさらに備えている。出力ビーム420は、レーザビーム414a〜414cを含む単一のビームでもよいし、あるいはレーザビーム414a〜414cを含む3つのビームでもよい。例えば、レーザビーム414a〜414cは空間的に分離したものでもよく、これらのビームを合成して単一の出力ビーム420としなくてもよい。レーザを1つのみ利用する実施形態において、レーザプロジェクションシステム400は反射面を利用しなくてもよい。さらに、他のビーム合成装置を利用してもよいことを理解されたい。
レーザプロジェクションシステム400は、本書において開示した制御機能の多くを実行するようプログラムすることができる。システム400は、従来のまたはこれから開発されるプログラミング方法を含め、数多くの手法でプログラム可能である。本書において論じられるシステム400をプログラムする方法は、その実施形態を任意の特定のプログラミング手法に限定することを意図したものではない。
いくつかの実施形態において、レーザプロジェクションシステム400は、例えば光源410を制御して単一色または複数色の画像データ流を生み出すようプログラムされた、マイクロコントローラなどの1以上のシステムコントローラ(図示なし)を含んでもよい。システムコントローラは、当技術において周知の画像投影用ソフトウェアや関連する電子機器と一緒になって、画像データを伝える1以上の画像データ信号(例えば、レーザ駆動電流)を光源に供給することができる。所望の画像を作り出すために、光源410はその後、符号化画像データを出力ビーム420の利得変動または強度変動の形で放射し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、他のコントローラまたはプログラム手段を利用して走査レーザ画像を生成してもよい。
集束光学部品422を、出力ビーム420が最初に集束光学部品422を通過するように、出力ビーム420の光路内に位置付けてもよい。スペックル低減散乱面428を、集束光学部品の後かつ光走査部品426の前において、出力ビーム420の光路内へと選択的に導入してもよい。集束光学部品422は、出力ビーム420(すなわち、ビーム414a〜414cから成る単一出力ビーム、または3つの集束点)の第1集束点をレーザプロジェクションシステム400内部の位置L1で生み出すような焦点距離を有する。出力ビーム420により生成された、L1を起点とする光423は、その後コリメート用部品424と光走査部品426とを介し、集束ビーム421として投影面430上の位置L2の第2集束点上で再結像される。散乱面を光路内に挿入するとき、散乱面の位置は好適には第1集束点L1に近接した位置とするべきである。
光走査部品426は、出力ビーム420の光路内において集束部品422の後に位置付けられる。光走査部品426は、画像フレームを形成している複数の画素をある画像フレームレートで照射するように出力ビーム420を投影面430に向けて2次元走査するよう構成された、1以上の制御可能な可動マイクロオプトエレクトロメカニカルシステム(MOEMS)またはマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)を含んでもよい。回転多角形、共振ミラー、またはガルバノミラーなどの、他の走査部品を使用してもよい。走査出力ビームは、図7および8において集束出力ビーム421として図示されている。連続した画像フレームが、走査レーザ画像を作り出す。MOEMSまたはMEMSをミラーまたはプリズムに作動的に連結させることもまた意図されており、ミラーまたはプリズムはそれに従って出力ビーム420の方向を変えるように構成されている。集束部品422は出力ビーム420を光走査部品426の方へ集束させる。
図7は、無限大の焦点深度モード(すなわち、非スペックル低減モード)で動作しているシステム400を示している。集束光学部品422およびコリメート用部品424の光学特性は、投影面上に現れる画像が、投影距離とは無関係にかつレーザプロジェクタシステム400内部での任意の焦点調節を必要とすることなく、シャープなままであるように、投影面にぶつかる集束出力ビーム421の収束角を十分に小さいものとするような特性である。さらに、集束光学部品422およびコリメート用部品424の光学特性は、投影面430上でのビームスポットサイズを、画像解像度要件を満足させるよう十分に小さくするような特性である。典型的には、投影面430上のビームスポットサイズは、画像の画素サイズとおよそ同じサイズであるべきである。図7に示したように、無限大の焦点深度モードで動作するとき、スペックル低減散乱面428は出力ビーム420の光路内に導入されない。レーザプロジェクションシステム400を無限大の焦点深度モードで動作させるとき、焦点深度が非常に大きいため、集束された走査レーザ画像を投影面430上で得るために焦点調節する必要はない。この条件を満足させるため、集束出力ビーム421の収束角は比較的小さいものであるべきであり、それにより光走査部品426上でのビームのビーム直径は比較的小さくなる。しかしながら、収束角を小さくした結果、スペックルはあまり低減されない。
図8は、スペックル低減モードで動作しているレーザプロジェクションシステム400を示したものである。図8に示したようにスペックル低減散乱面428は、集束された出力ビーム420の光路内の、第1集束点L1に近接した位置に導入される。スペックル低減散乱面428は、例えばアクチュエータを用いて、光路内および光路外へと機械的に動かしてもよい。位置L1の第1集束点を起点とした、スペックル低減散乱面428を透過した後の光423’は、コリメート用部品424および光走査部品426を介して投影面430(すなわち、投影スクリーン)上の位置L2の第2集束点で再結像される。集束出力ビーム421’は位置L2の第2集束点を照射する。第1集束点は投影面上の位置L2の第2集束点で結像されるため、投影面430上での集束出力ビーム421の振幅プロファイルはそれほど著しく変更されることはなく、これはビームスポットサイズが図7で説明および図示した以前のプロジェクタ構造に対して変化しなかったことを意味している。言い換えれば、スペックル低減散乱面428は、光走査部品426の前に位置付けられ、かつ投影面430上の第2集束点位置L2で再結像される第1集束点L1の近くに位置しているため、スペックル低減散乱面428を導入しても投影面430上の画像のシャープネスに影響しない。ここで、スペックル低減散乱面428は投影面430上で結像されるため、電場の位相のいくらかの高空間周波数の変調が投影面430上のビームスポットに加えられる。光走査部品426が集束出力ビーム421’を走査させると、スペックル低減散乱面428により与えられる位相変調の位置は、光走査部品426により迅速走査されるその出力ビームに従うため、位相変調は投影面430に対して迅速に動かされることになる。その結果、観察者に見えるスペックルは低減される。さらに、この実施形態において、スペックル散乱面428の投影面430上での画像は画素持続時間よりも速い(すなわち、20nsよりも速い)速度で変わり、したがって、スペックルは単一の画像を生み出すのに必要な持続時間よりも速いスピードで減少する。結果として、各単一の投影フレームのスペックルコントラストが弱まって、全体的なスペックルの印象を画像フリッカを作り出さずに減少させることができる。スペックル低減散乱面を使用するこの種のスペックル低減を、本書では即時スペックル低減と称する。
図8は、第1集束点L1の位置を起点とした出力ビームの発散が、スペックル低減散乱面428の挿入で増加することをさらに示しており、これに対応して集束出力ビーム421’の収束角が増加する。そのため、収束角によっては、レーザプロジェクションシステム400から投影面430までの距離と無関係にシャープな画像を維持することはできないであろう。したがって、収束角によっては、集束出力ビーム421’を投影面430で確実に集束させるために焦点調整機構を利用してもよい。一実施の形態においては、多くの投影距離でスペックル低減散乱面428を投影面430上で適切に結像させるために、コリメート用部品424をZ軸に沿って移動させてもよい。別の実施形態においては、スペックル低減散乱面428がY軸に対して傾斜するよう、スペックル低減散乱面428をX軸に関して傾けてもよい。スペックル低減散乱面428をY軸に沿って移動させて、焦点調節を提供してもよい。スペックル低減散乱面428が傾斜していることにより、Y軸に沿った動きはスペックル低減散乱面428の活性表面(すなわち、スペックル低減散乱面428の出力ビームが照射される部分)をZ軸に沿って移動させることになり、これはレーザプロジェクションシステム400の焦点を変化させることと等しい。本書に記載される種々の軸は、単に説明のためのものであり、向きに関する特定の限定が意図されているものではないことを理解されたい。
レーザプロジェクションシステムのパラメータは、適切な画像解像度の他、図7に示した非スペックル低減モードでの無限大の焦点深度、さらに図8に示したスペックル低減モードでの所望のスペックル低減を達成するよう、最適化されるべきである。無限大の焦点深度は、レーザビームが略ガウシアンでありかつ従来のガウシアンビームの伝播法則に従って投影面430まで伝播すると想定して分析することができる。どのようにして無限大の焦点深度が得られるかについて説明するために、一方向の画像解像度が800画素であって(すなわち、走査レーザ画像の一画像ラインが800画素を含み)、かつ走査装置の偏角がこの同じ方向において40°である事例を想定する。第1近似において、投影面上の画像画素サイズは以下で与えることができる。
ここで、
Pixelは画素サイズ、
Dは投影距離、
θはレーザプロジェクションシステムの投影角度(40°)、および、
Rはレーザプロジェクションシステムの一方向における固有解像度(800画素)である。
画素サイズは投影距離の0.9E−3倍に等しいため、角度0.9mRadがこの画素に関連し得、これを画素の角度範囲と呼ぶ。800画素の解像度を達成するため、最も広範囲の投影距離Dに亘って最高の解像度を得るためには、コリメート出力ビームにより照射された投影面上のビームスポットサイズ(半値全幅(FWHM))を、画像画素サイズと略等しいものとするべきであることを示すことができる。ガウシアンビームの伝播法則をその後適用して、ビームスポットサイズを投影距離Dの関数として計算することができる。
図9は、投影距離D(X軸)に対する、表面のビームスポットのFWHMサイズおよび画素サイズ(Y軸)を描いたグラフ440を示している。曲線442は、画像画素サイズを投影距離Dの関数として表している。曲線444は、レーザプロジェクションシステムから0.4メートル離れた位置に極小さいビームを作り出すよう上述の光学部品が構成されたものであると想定した場合の、表面のビームスポットサイズを示している。グラフ440から分かるように、表面のビームスポットサイズは画素サイズよりも速く広がり、さらに約1メートル以降は、ビームが画像画素より大きくなって画像解像度の低下をもたらす。曲線448で描いた事例は、ビームの収束を大幅に小さく設定したものであり、レーザプロジェクションシステムから400mm離れた位置では、より大きいビームサイズを生み出すことになる。この事例では、適切な画像解像度は0.7メートルよりも長い距離に対してのみ達成される。曲線446は理想的な状態に近いものであり、このときガウシアンビームの収束角は画素の角度範囲に等しくなるよう設定されている。グラフ440に示されているように、ガウシアンビームの収束角が画素の角度範囲に等しくなるよう設定された事例では、画像解像度を達成できる(すなわち、表面のビームスポットサイズが画像画素サイズよりも小さい)投影距離を、最も広範囲にすることができる。上述した数値例では、これは光走査部品上のビーム直径およそ0.4から0.5mm(FWHM)に対応する。
達成し得るスペックル低減レベルは、多くのパラメータに依存することを示すことができる。本発明者は、投影面がバルク散乱の表面であるとき、光走査部品(すなわち、MEMS走査ミラー)上に入射する直径6mm未満の出力ビームを用いて、スペックルの減衰が達成できることを見出した。バルク散乱の投影面とは、光が表面上で散乱されるのではなく、投影面の材料内に浸透しかついくらかの距離に亘って広がるような投影面である。バルク散乱投影面の材料は、限定するものではないが、紙、塗装面、ボール紙、および繊維を含み得る。この種のスクリーン材料を使用したとき、走査部品をそれほど大きいサイズにすることを必要とせずに、スペックルを著しく低減させ得ることを本発明者は認識している。出力ビームの光走査部品上での直径が比較的小さいため、光走査部品は走査レーザ画像を生み出すのに十分な速さで回転し得、かつ焦点深度を改善することができる。
光走査部品上のビームサイズのスペックルコントラストへの影響を実際のプロジェクタ材料で定量化するために、大型で低速のMEMS走査ミラーで構成される実験的なセットアップを組み立てた。以下の例は説明の目的のみのためのものであって、限定するためのものではない。MEMS走査ミラー上に入射する出力ビームの直径の関数として、スペックルを評価した。投影距離Dを0.5mに設定し、投影面までの観察者の距離も0.5mに設定し、さらに観察者の眼の瞳孔直径が暗室の照明条件で6mmであると想定する。MEMS走査ミラーの直径は3.6×3.2mmであり、またフレームレートは1Hzであったため、画像は人間の眼には見えないものとなった。得られた走査画像を、積分時間を1秒に設定しかつ光の集光角度を12mRad(例えば、スクリーンから0.5メートル離れて位置している6mmの眼の瞳孔と同様)とした、アイシミュレータで評価した。画像ライン間の距離は表面ビームスポットよりも小さく、そのため画像ラインは完全に重複するものとなった。MEMS走査ミラー上のビームのサイズをレーザ光源の液体レンズとコリメート用レンズとを使用して変化させ、さらにこのサイズをCCDカメラで測定した。投影面上にガウシアンビームスポットを作り出しかつ投影面上のガウシアンビームスポットの各位置に対するスペックルパターンを計算することから構成されるモデルを用いて、理論的結果をさらに導き出した。ガウシアンビームスポットの位置の関数として計算された画像の強度を合計することにより、モデルの最終画像を得た。画像ライン間のライン間距離を、ガウシアンビームのFWHMと等しく設定した。このモデルでは、投影面が略ビーム波長の粗さ深度を有するランダムな粗面を備えた表面散乱材料であると想定した。
図10は、表面散乱投影面として粗い金属スクリーン(曲線452)を、そしてバルク散乱投影面として紙スクリーン(曲線456)を使用して上記実験セットアップから得られた実験データをプロットしたグラフ450を示している。Y軸はスペックルコントラストであり、一方X軸はMEMS走査ミラー上の出力ビームの1/e2ビーム直径である。1/e2ビーム直径は、1/e2=最大強度値の0.135倍となる周辺分布上の2点間の距離である。曲線454は、スペックルコントラストの理論モデルから導き出された理論的結果を示している。粗い金属スクリーンはモデル予測に密接に従っており、これは上述したモデルおよび実験セットアップが有効であったことを示している。曲線454は、曲線454の評価に使用した金属表面が光を偏光解消しなかったという事実を考慮に入れて修正されたものであることに留意されたい。投影面が光を偏光解消していた曲線456との公正な比較を可能にするよう、曲線454に対する実験データは後に平方根2によって工夫された(devised)ものである。グラフ450に示されているように、紙スクリーン上で測定されたスペックルは、理論予測(曲線454)および粗い金属スクリーン(曲線452)よりも大幅に速く減少する。紙スクリーンは、MEMS走査ミラー上で約2.2mmの1/e2ビーム直径で、約42%のスペックルコントラストに到達する。反対に、粗い金属スクリーンのデータは40%のスペックルコントラストに到達しなかった。外挿法によって曲線472を推定すると、40%のスペックルコントラストは6mm超の1/e2ビーム直径で達成することができる。したがって、走査レーザ画像をバルク散乱投影面上に投影したときには、大幅に小さい光走査部品426を利用して、効果的なスペックルコントラストの減衰を達成することができる。例えば光走査部品426の直径は、出力ビームの直径よりも若干大きいものとすることができる。上の実験では、2.2mmよりも大きい直径を有する光走査部品を使用して画像を走査してもよい。しかしながら、この直径は光走査部品の回転を遅くするほど大きなものとするべきではない。直径がより小さければ(例えば、約2.2mmと約3.5mmの間など)、より小型の光走査部品426のMEMS駆動ミラーが、画像フレームレートから遅れることなく、画像フレームレート(例えば、20Hz超)で回転できるであろう。
したがって、ほとんどの既存の投影面材料で、光走査部品の直径を例えば3.5mmなどの妥当なものとして、37%など比較的小さいスペックル振幅を達成することができる。しかしながら、観察者にスペックルが見えないようにするには、スペックル振幅が37%では十分ではない可能性があり、本書において説明する実施形態を例えばスペクトル拡張および/または偏光スクランブルなどの他のスペックル低減技術と併せて使用してもよい。
一例として、限定するものではないが、光源410のレーザのうちの1つ(例えば、レーザ411a)がFWHMで発散角8°のシングルモードガウシアンビームを放射していると想定し、どのようにレーザプロジェクションシステムを構成すれば、非スペックル低減モードでの無限大の焦点深度と、スペックル低減モードでのスペックル低減との両方の条件を満足させることができるかについて説明する。レーザコリメート用部品424の焦点距離は、FWHM0.28mmのコリメートビーム421を生成するよう、2mmとしてもよい。走査ミラー上に0.5mm(FWHM)前後のビーム直径を作り出し、かつスペックル低減散乱面428が光路内に挿入されていないときには無限大の焦点深度条件を満足させるよう、2つの他のレンズ(422および424)の焦点距離を夫々4mmおよび7mmとしてもよい。さらに、コリメート用部品424の焦点を調節して、ビームのビームウエストL1を400mm前後の名目上のスクリーン距離の位置で結像する。
スペックル低減散乱面428が光路内に挿入されると、スペックル低減散乱面上のビームの直径はスペックル低減散乱面の散乱の角度に直接関係する。
ここで、
θはスペックル低減散乱面の散乱の角度、
ФMEMSは走査部品上での出力ビームの直径、および、
f2はコリメート用レンズの焦点距離である。
上で与えられた数値例においてf2は約7mmである。すなわち、スペックル振幅37%に対応するビーム直径3.5mmを得るためには、スペックル低減散乱面428の散乱の角度はおよそ約33°(周角)である。光走査部品の直径は、ビームのけられを防ぐために少なくとも3.5mmとするべきである。
一実施の形態において、スペックル低減散乱面428は、所望の散乱角度の範囲内(例えば、上の例において説明した33°)で、均一な角度エネルギー分布を作り出す。別の実施形態においては、スペックル低減散乱面428を、出力ビームプロファイルが多くの点から成るグリッドを含むように構成してもよい。これは、例えば、少なくとも1つのホログラフィックビームスプリッタを使用することによって達成することができる。さらに別の実施形態において、スペックル低減散乱面428により放射される角度エネルギー分布は環状形状でもよい。スペックル低減散乱面428を、ホログラフィックディフューザまたはコンピュータ生成ホログラムを用いて得ることもできる。スペックル低減散乱面428は、エネルギーを寄生回折次数において無駄にしないよう、回折効率ができるだけ高く(例えば、90%超)かつエネルギーのほとんど(例えば、90%超)が1次回折で回折されるように構成されるべきである。高回折効率を達成するために、スペックル低減散乱面428を入射ビームに対して、ブラッグ角と呼ばれる特定の角度で配置してもよい。さらに、スペックル低減散乱面428は、図7および8で示されているように透過性の要素でもよいし、あるいは反射性の散乱要素として構成することもできる。
本発明者は、光源410が多色のレーザ(例えば、レーザ411a〜411c)を含んでいる実施形態において、スペックル低減散乱面428が全ての色に対する全ての要件を同時に満たすことは困難であろうということを既に認識している。というのも、散乱角度、回折効率、およびブラッグ角などのパラメータは、レーザビームの波長の関数であるためである。一実施の形態において、レーザビーム414a〜414cは出力ビーム420内で角度分離され、集束部品の焦点面近くに位置するL1のレベルで、空間的に分離しているビームをもたらす。図11を参照すると、スペックル低減散乱面428の出口部分でのレーザビームが示されている。レーザビームは、集束部品422で集束されて、スペックル低減散乱面428でX軸に沿って分離された3つの異なる集束点425a、425b、および425cを生み出す。図11に示されているスペックル低減散乱面428は、3つの空間的に分離した領域429a、429b、および429cを含んでいる。空間的に分離した領域429a〜429cの夫々の散乱特性を、集束点425a〜425cに関連した対応するレーザビームの波長に対して最適化してもよい。特定の色の波長では、スペックルコントラストが重要な問題ではない可能性がある。例えば、青色のスペックルは通常観察者に見えないため、青色レーザビームに関連する領域(例えば、空間的に分離した領域429b)は、散乱しない、またはほとんど散乱しない、透過性のものでもよい。
レーザビームの空間的な分離は、例えば光源レンズ412a〜412cをX軸方向に動かして、略コリメートされた出力ビーム420の各ビームが正確に同じ方向に向くことがないようにすることにより達成できる。空間的な分離は、反射面416a〜416cの反射の角度を若干ずらすことによっても達成し得る。しかしながら、集束点425a〜425cは投影面上で再結像されるため、この3色は投影面上でも同様に空間的に分離されることになり、これは画像解像度の問題に繋がる可能性がある。ビームスポットの投影面上での空間的な分離を補償するために、レーザプロジェクションシステムをレーザ414a〜414cに時間遅延を導入するようにプログラムして、出力ビーム420を光走査部品426で走査させたときに、各ビームスポットが同じ領域を照射して所望の画素を生成するようにしてもよい。
さらに、スペックルが現れているにも拘わらず、観察者が画像品質を許容できると考える典型的な知覚レベルは、スペックルコントラストが20%〜30%前後のものである。20%〜30%のスペックルコントラストを達成するためには、非常に大きな光走査部品が必要とされ得るが、これは実用的ではないであろう。そのため、本書において説明した実施形態を、出力ビームの偏光状態を変調する偏光スクランブル装置などの他のスペックル低減技術と併せて利用することが望ましいであろう。再び図8を参照するが、レーザプロジェクションシステム400の実施形態は、出力ビームの光路内においてスペックル低減散乱面428の後に位置付けられた、偏光スクランブル装置429をさらに含んでもよい。一例として、その全体が参照することにより本書に組み込まれる米国特許第7,653,097号明細書に記載されているような偏光分離および遅延ユニットを、出力ビームの偏光をスペックル低減周波数で(例えば、画像フレームレートで)回転させるように偏光変調するために使用してもよい。偏光分離および遅延ユニットは、光路内においてコリメート用部品424の後かつ光走査部品426の前に位置付けてもよい。
別の実施形態において、偏光スクランブル装置429は、図1に関連して上述したように出力ビームの光路内に挿入することが可能な、例えば1つの液晶セルなどの偏光変調器を含んでもよい。偏光変調器を、レーザビームの偏光が2つの直交する偏光状態(SおよびPの直線偏光または左円偏光および右円偏光など)の間で切り替わるように、後に変調してもよい。例えば、各投影画像フレームの最後で偏光が一方の状態から他方の状態に切り替わるように、偏光回転の周波数を設定してもよい。
スペックルコントラストの低減を達成するために、出力ビームのスペクトル拡張を利用することもできる。例えば、緑色スペクトル領域内の出力ビームは、効果的にスペックルを低減させるために約0.5nm波長を超えるスペクトル幅を有し得る。スペクトル拡張および/または偏光スクランブルを、上述したディフューザの実施形態と併せて利用して、スペックルコントラストのレベルを30%未満に低減することができる。
一例として限定するものではないが、およそ25%のスペックルコントラストレベルは、光走査部品上に直径3.5mmで入射する出力ビームを、偏光スクランブルと併せてスペックル低減散乱面を用いて照射することにより達成することができる。別の例として、スペックル低減散乱面を偏光スクランブルと併せて使用しかつ緑色出力ビームに対する出力ビームスペクトル幅を少なくとも0.6nmとして、直径1.5mmの出力ビームを光走査部品上に照射してもよい。
スペックル低減散乱面428を含むレーザプロジェクションシステム400の実施形態において、スペックル低減散乱面を使用して、十分に発達したスペックルまでは含まないスペックル低減パターン(すなわち、30%未満のスペックルコントラストを有するパターン)を投影してもよい。さらに、レーザプロジェクションシステム400を、上で説明した低速スペックル低減技術を利用して動作させて、人間の眼の積分時間よりも短時間(すなわち、0.04秒未満)の一連のスペックル低減パターンを含む、スペックル低減シーケンスを生み出すこともできる。
例えば、一実施の形態において、2つの相関のないスペックルパターンAおよびB(すなわち、k=2)から成るスペックル低減シーケンスを、レーザプロジェクションシステム400で投影してもよい。この相関のないスペックルパターンAおよびBは、スペックルパターンを生成するのに使用されるビームの偏光、波長、および/または入射角を、上述したようにスペックルパターンが、相関がないものとなるように変化させることによって生成することができる。レーザプロジェクタシステム400を非スペックル低減モードで(すなわち、図7で示したようにスペックル低減散乱面428を使用しないで)動作させるとき、第1スペックルパターンAおよび第2スペックルパターンBの夫々は、十分に発達したスペックルを含み得る(すなわち、スペックルパターンは100%に近いスペックルコントラストを有する)。しかしながら、スペックル低減散乱面428を図8で示したように利用した場合、スペックルパターンAまたはスペックルパターンBの夫々のスペックルコントラストは約30%未満となり得る。スペックル低減散乱面428を使用すると、交互にされたスペックルパターンAおよびBから構成されるスペックル低減シーケンスを周波数30Hz(すなわち、シーケンスの時間長は0.033秒)で投影することで、画像の各フレームが十分に発達したスペックルまでは含んでいないような、すなわち画像中の知覚されるスペックル量が低減されるような、画像を生成することができる。
ここで、本書において説明した方法を利用すると、走査型レーザプロジェクタシステムの光源で投影された画像内のスペックルおよび画像フリッカを低減させることができることを理解されたい。一実施の形態において、約0.07秒から約0.13秒までの時間長を有し、かつ相関のないスペックルパターンと部分的に相関のあるスペックルパターンとの両方を含んでいる、スペックル低減シーケンスを利用する。別の実施形態において、約0.04秒未満の時間長を有し、かつ相関のないスペックルパターン、または、相関のないスペックルパターンと部分的に相関のあるスペックルパターンとの組合せ、を含んでいる、スペックル低減シーケンスを利用する。したがって、本書において利用されるスペックル低減シーケンスの持続時間は、スペックルを低減しかつ画像フリッカを防ぐため、約0.04秒未満の、あるいは約0.07秒から約0.13秒までの、時間長を有することになることを理解されたい。
種々の特定の相関のないスペックルパターンおよび部分的に相関のあるスペックルパターンを有する、スペックル低減シーケンスの特定の実施形態を本書において説明してきたが、他の相関のないスペックルパターンおよび部分的に相関のあるスペックルパターンの組合せも利用し得ることを理解されたい。さらに、本書において説明したスペックル低減シーケンスの特定の実施形態は、レーザ光源の出力ビームの波長とレーザ光源の出力ビームの偏光とを変化させることにより生成される、相関のないスペックルパターンおよび部分的に相関のあるスペックルパターンを含んでいるが、光源の出力ビームの波長の変化、偏光の変化、および入射角の変化を、種々組み合わせて使用することで、同様の結果(すなわち、スペックルおよび画像フリッカの低減)を達成することもできることを理解されたい。
相関のないスペックルパターンと部分的に相関のあるスペックルパターンとから成るスペックル低減シーケンスを適切な時間間隔で体系的に投影するのを助けるために、出力ビームの物理的性質の変動は、変化させる物理的性質にかかわりなくシステムコントローラにより実行および制御されて、スペックル低減シーケンスと同時に投影される画像内のスペックルと画像フリッカとの両方を低減させることも理解されたい。
特定の手法で「プログラム」された、特定の性質を具現化するようにまたは特定の手法で機能するように「構成」または「プログラム」された、特定の実施形態の構成要素に関する本書における記述は、目的用途の記述とは対照的な構造的記述であることに留意されたい。より具体的には、ある構成要素が「プログラム」または「構成」された様態に本書で言及した場合、これはその構成要素の現存の物理的条件を示したものであり、したがってその構成要素の構造的特徴の明確な記述と理解されるべきである。
特定の部品または要素の説明に「少なくとも1つ」という表現を使用するとき、他の部品または要素の説明に単数形を使用することが、特定の部品または要素に2以上を使用するものを除外することを意味するものではないことにも留意されたい。より具体的には、部品は単数形で説明され得るが、その部品を1つのみに限定すると解釈されるべきではない。
請求される主題の精神および範囲から逸脱することなく、本書において説明された実施形態の種々の改変および変形が作製可能であることは当業者には明らかであろう。すなわち、本書において説明した種々の実施形態の改変および変形が、添付の請求項およびその同等物の範囲内であるならば、本明細書はこのような改変および変形を含むと意図されている。