JPWO2009084417A1 - アクリル酸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

グリセリンと脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリド、脂肪酸エステル、アルカリ化合物、アルカリ化合物塩の群から選ばれる1種以上の化合物を含むグリセリン混合物からアクリル酸を少ないエネルギー消費量で製造できるアクリル酸の製造方法を提供する。本発明のアクリル酸の製造方法は、グリセリン混合物を脱水反応させてアクロレイン混合物を得る工程と、アクロレイン混合物を酸化反応させてアクリル酸混合物を得る工程と、アクリル酸混合物からアクリル酸を回収する工程とを有する方法である。

Description

本発明は、グリセリンを主成分として含むグリセリン混合物を用いて、アクリル酸を製造する方法に関する。
一般に、アクリル酸は、化石資源であるプロピレンの酸化により製造されているが、化石資源に依存した製造方法では、大気中の二酸化炭素の増加が懸念される。また、化石資源は将来的に枯渇することが懸念されている。
そこで、植物性油脂または動物性油脂からバイオディーゼル燃料を製造する際に、または、石鹸を製造する際に副生物として生成するグリセリンを利用することが検討されている。すなわち、副生したグリセリンを脱水および酸化してアクリル酸を製造する方法が検討されている。
ここで、植物性油脂から生成したグリセリンは、植物由来であることから資源の枯渇の懸念がなく、しかも、その炭素源は大気中の二酸化炭素であることから、実質的に大気中の二酸化炭素の増加に寄与しないといった利点を有する。また、動物性油脂は、家畜が植物性油脂などの飼料を摂食することで作り出された資源で、その炭素源は大気中の二酸化炭素とみなすことができる。
グリセリンからのアクリル酸の製造方法としては、グリセリンを分子状酸素の存在下で脱水反応と酸化反応させてアクリル酸を製造する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。また、特許文献2には、グリセリンを気相中で脱水反応させて、該脱水反応で生じたガス状の反応物を気相酸化反応させてアクリル酸を製造する方法が開示されている(例えば特許文献2参照)。これらの反応で使用するグリセリンは、通常、純度の高いものが使用されていた。
国際公開第06/114506号パンフレット 特開2005−213225号公報
しかし、植物性油脂または動物性油脂からバイオディーゼル燃料を製造する際に、または、石鹸を製造する際に得られるグリセリンには、副生した脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリド、脂肪酸エステル、アルカリ化合物、アルカリ化合物塩等の不純物が混ざっている。そのため、純度の高いグリセリンを得るためには蒸留する必要がある。しかし、グリセリンは沸点が高いために蒸留の際に多量のエネルギーを要する。副生したグリセリンを活用するためにエネルギーを多量に消費してしまうのであれば、副生したグリセリンを用いる意味が薄れる。
このようなことから、バイオディーゼル燃料製造の際または石鹸製造の際に副生したグリセリンを、少ないエネルギー消費量で活用することが求められている。
本発明の課題は、グリセリンを含むグリセリン混合物からアクリル酸を少ないエネルギー消費量で製造できるアクリル酸の製造方法を提供することにある。
本発明者らが鋭意研究を行ったところ、脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリド、脂肪酸エステル、アルカリ化合物、アルカリ化合物塩の群から選ばれる1種以上の化合物の共存下でグリセリンを脱水反応および酸化反応させても、前記の化合物が共存していない場合と同等の収率でアクリル酸が得られることを見出した。そして、その知見に基づいて、以下のアクリル酸の製造方法を発明した。
すなわち、本発明は、以下のように構成されている。
[1]
(1)グリセリン混合物を脱水反応させてアクロレイン混合物を得る工程;
(2)当該アクロレイン混合物を酸化反応させてアクリル酸混合物を得る工程;及び
(3)当該アクリル酸混合物からアクリル酸を回収する工程;
を含む、アクリル酸の製造方法。
[2]
前記工程(2)を、分子状酸素の存在下で行う、前記[1]に記載のアクリル酸の製造方法。
[3]
前記工程(1)及び前記工程(2)を同時に行う、前記[1]又は[2]に記載のアクリル酸の製造方法。
[4]
前記工程(2)及び前記工程(3)を同時に行う、前記[1]又は[2]に記載のアクリル酸の製造方法。
[5]
(A)下記(a)及び(b)を含む、グリセリン混合物を得る工程:
(a)油脂とアルコールとをエステル交換反応させて、脂肪酸エステル、グリセリン、脂肪酸および/または脂肪酸塩を含む脂肪酸エステル混合物を得る工程;及び
(b)該脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去する工程;
を行い、その後、前記工程(1)乃至(3)を行う、前記[1]乃至[4]の何れか一つに記載のアクリル酸の製造方法。
[6]
アクリル酸混合物からアクリル酸を回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記脂肪酸エステル混合物を得る工程(A)(a)において使用する、前記[5]に記載のアクリル酸の製造方法。
[7]
アクリル酸混合物からアクリル酸を回収した後に残った残存物の一部または全部を酸で処理した後、前記脂肪酸エステル混合物を得る工程(A)(a)において使用する、前記[6]に記載のアクリル酸の製造方法。
[8]
(B)下記(c)及び(d)を含む、グリセリン混合物を得る工程:
(c)油脂とアルカリとをケン化反応させて、脂肪酸アルカリ塩、グリセリンおよび脂肪酸を含む脂肪酸アルカリ塩混合物を得る工程;
(d)当該脂肪酸アルカリ塩混合物から脂肪酸アルカリ塩を除去する工程;
を行い、その後、前記工程(1)乃至(3)を行う、前記[1]乃至[4]の何れか一つに記載のアクリル酸の製造方法。
[9]
アクリル酸混合物からアクリル酸を回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記脂肪酸アルカリ塩混合物を得る工程(B)(c)において使用する、前記[8]に記載のアクリル酸の製造方法。
[10]
前記工程(3)を、アクリル酸混合物の蒸留により行う、前記[1]乃至[9]の何れか一つに記載のアクリル酸の製造方法。
[11]
前記グリセリン混合物が、脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリド、脂肪酸エステル、アルカリ化合物、アルカリ化合物塩よりなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、前記[1]乃至[10]の何れか一つに記載のアクリル酸の製造方法。
[12]
前記脂肪酸は、炭素数が4〜24の脂肪酸の群から選ばれる1種以上の脂肪酸である、前記[11]に記載のアクリル酸の製造方法。
[13]
前記脂肪酸塩は、炭素数が4〜24の脂肪酸の群から選ばれる1種以上である脂肪酸と、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アミン化合物の群から選ばれる1種以上の化合物との塩である、前記[11]に記載のアクリル酸の製造方法。
[14]
前記グリセリドは、炭素数が4〜24の脂肪酸の群から選ばれる1種以上の脂肪酸から構成されるものである、前記[11]に記載のアクリル酸の製造方法。
[15]
前記脂肪酸エステルは、炭素数が4〜24の脂肪酸の群から選ばれる1種以上の脂肪酸と、炭素数が1〜10のアルコールの群から選ばれる1種以上のアルコールとのエステルである、前記[11]に記載のアクリル酸の製造方法。
本発明のアクリル酸の製造方法によれば、グリセリンと脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリド、脂肪酸エステル、アルカリ化合物、アルカリ化合物塩の群から選ばれる1種以上の化合物を含むグリセリン混合物からアクリル酸を少ないエネルギー消費量で製造できる。
<第1の実施形態>
本発明のアクリル酸の製造方法の第1の実施形態について説明する。
本実施形態のアクリル酸の製造方法は、油脂とアルコールとをエステル交換反応させて、脂肪酸エステル混合物を得る工程(以下、第1の工程という)と、該脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去して、グリセリン混合物を得る工程(以下、第2の工程という)と、該グリセリン混合物を脱水反応させて、アクロレイン混合物を得る工程(以下、第3の工程という)と、該アクロレイン混合物を酸化反応させて、アクリル酸混合物を得る工程(以下、第4の工程という)、該アクリル酸混合物からアクリル酸を回収する工程(以下、第5の工程という)と、該第5の工程後に残った残存物の一部または全部を第1の工程に戻す工程(以下、第6の工程という)とを有する。
(第1の工程)
第1の工程における油脂としては、例えば、植物性油脂、動物性油脂、廃食用油脂などが挙げられる。
植物性油脂としては、例えば、アマニ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、綿実油、ゴマ油、コメ油、ナタネ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ヒマシ油、米ぬか油、クルミ油、ツバキ油、ピーナッツ油などが挙げられる。
動物性油脂としては、例えば、牛脂、豚脂、羊脂、牛脚脂、鳥油、鶏油、魚油、鯨油、バターなどが挙げられる。
廃食用油脂としては、家庭、レストラン、ファーストフード店、弁当製造工場、給食工場などにおいて調理に用いた使用済みの動植物性油脂が挙げられる。
ここで、油脂とは、脂肪酸とグリセリンとのエステルのことである。また、脂肪酸とは、長鎖炭化水素の1価のカルボン酸のことである。長鎖炭化水素は二重結合を含んでも構わない。脂肪酸としては、本発明に適している点では、炭素数が4〜24の脂肪酸の群から選ばれる1種以上であることが好ましい。炭素数4〜24の脂肪酸の具体例としては、例えば、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、プラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコセン酸、リシノール酸などが挙げられる。
第1の工程におけるアルコールとしては、本発明に適している点では、炭素数が1〜10のアルコールの群から選ばれる1種以上であることが好ましい。炭素数1〜10のアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−へプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール等が挙げられる。
エステル交換反応の際には、生産性の点から、エステル交換反応用の触媒を用いることが好ましい。エステル交換反応用触媒としては、酸性触媒と塩基性触媒が挙げられる。酸性触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸、強酸性イオン交換樹脂、ケイタングステン酸、リンタングステン酸などのヘテロポリ酸、硫酸ジルコニアなどが挙げられる。塩基性触媒としては、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、強塩基性イオン交換樹脂、アミンなどが挙げられる。
油脂とアルコールとをエステル交換反応させることにより、脂肪酸エステル、グリセリン、脂肪酸および/または脂肪酸塩を含む脂肪酸エステル混合物が得られる。ここで生成する脂肪酸エステルは、使用した油脂とアルコールに対応したものであり、いわゆるバイオディーゼル燃料と呼ばれ、ディーゼルエンジンの燃料として使用することができる。
(第2の工程)
第2の工程において、脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去する方法としては、例えば、脂肪酸エステル混合物を蒸留する方法、液液分離方法、カラムにより分離する方法などが挙げられる。
脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去して得たグリセリン混合物は、グリセリンと、脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリド、脂肪酸エステル、アルカリ化合物、アルカリ化合物塩の群から選ばれる1種以上の化合物とを含む。
グリセリン混合物に含まれる脂肪酸は、油脂を構成するものと同様である。ただし、グリセリン混合物に含まれる脂肪酸は、0.10MPaにおける沸点が200〜400℃の範囲にある脂肪酸が好ましい。このような沸点の脂肪酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレン酸などが挙げられる。これらの脂肪酸は、グリセリンとの沸点が近いために蒸留での分離は困難であるが、グリセリンをアクリル酸に変換することでその分離が容易になる。
また、グリセリンに含まれる脂肪酸塩は、炭素数が4〜24の前記脂肪酸の群から選ばれる1種以上である脂肪酸と、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アミン化合物の群から選ばれる1種以上の化合物との塩である。
ここで、アルカリ金属化合物としては、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド等が挙げられ、アルカリ土類金属化合物としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド等が挙げられる。
また、アミン化合物しては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、アニリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピロール、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキサイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、尿素等が挙げられる。
脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去して得たグリセリン混合物において、グリセリン含有量は5〜95質量%であることが好ましく、10〜95質量%であることがより好ましく、15〜95質量%であることが特に好ましい。アクリル酸の収量を充分に確保するという観点では、グリセリンの含有量は5質量%以上が好ましく、95質量%以下であれば、本発明の有用性がより高まる。
グリセリン混合物における脂肪酸の含有量は、グリセリンの含有量(質量)を1とした際に、質量比で0.001〜1であることが好ましく、0.01〜0.1であることがより好ましい。脂肪酸の含有量が、グリセリン含有量を1とした際の0.001以下であると、本発明の有用性が低下する傾向にあり、1を超えるとアクリル酸の収量が小さく、効率が低下する傾向にある。
グリセリン混合物における脂肪酸塩の含有量は、グリセリンの含有量(質量)を1とした際に、質量比で0.001〜1であることが好ましく、0.01〜0.1であることがより好ましい。脂肪酸塩の含有量が、グリセリン含有量を1とした際の0.001以下であると、本発明の有用性が低下する傾向にあり、1を超えるとアクリル酸の収量が小さく効率が低下する傾向にある。
グリセリドは、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドのいずれであってもよい。グリセリドを構成する脂肪酸は上記油脂を構成する脂肪酸と同様である。
グリセリン混合物におけるグリセリドの含有量は、グリセリンの含有量(質量)を1とした際に、質量比で0.001〜1であることが好ましく、0.01〜0.5であることがより好ましい。グリセリドの含有量が、グリセリン含有量を1とした際の0.001以下であると、本発明の有用性が低下する傾向にあり、1を超えるとアクリル酸の収量が小さく効率が低下する傾向にある。
アルカリ化合物としては、例えば、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、強塩基性イオン交換樹脂、アミン等が挙げられる。
グリセリン混合物におけるアルカリ化合物の含有量は、グリセリンの含有量(質量)を1とした際に、質量比で0.001〜1であることが好ましく、0.01〜0.5であることがより好ましい。アルカリ化合物の含有量が、グリセリン含有量を1とした際の0.001以下であると、本発明の有用性が低下する傾向にあり、1を超えるとアクリル酸の収量が小さく効率が低下する傾向にある。
アルカリ化合物塩としては、アルカリ化合物と酸との酸性塩、中性塩が挙げられる。酸としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、ホウ酸等が挙げられる。
グリセリン混合物におけるアルカリ化合物塩の含有量は、グリセリンの含有量(質量)を1とした際に、質量比で0.001〜1であることが好ましく、0.01〜0.5であることがより好ましい。アルカリ化合物塩の含有量が、グリセリン含有量を1とした際の0.001以下であると、本発明の有用性が低下する傾向にあり、1を超えるとアクリル酸の収量が小さく効率が低下する傾向にある。
また、グリセリン混合物には、グリセリン、脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリド、脂肪酸エステル、アルカリ化合物、アルカリ化合物塩以外の成分、例えば、水、塩基、酸、アルコールなどが含まれてもよい。また、グリセリン混合物は、第3の工程以降の反応を阻害しない溶媒(例えば、水等)によって希釈されたものでもよい。
(第3の工程)
第3の工程では、具体的には、グリセリン混合物中のグリセリンが脱水してアクロレインを生成する。
該脱水反応では、反応速度を高める点で、脱水反応用触媒を用いることが好ましい。脱水反応用触媒としては、例えば、酸性触媒、塩基性触媒を使用することができる。酸性触媒としては、例えば、カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト、ゼオライトなどの天然物あるいは合成粘土化合物、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカアルミナなどの酸化物、複合酸化物、ヘテロポリ酸、硫酸塩、硫酸酸性塩、炭酸塩、炭酸酸性塩、硝酸塩、硝酸酸性塩、リン酸塩、リン酸酸性塩、硫酸、リン酸、酸性イオン交換樹脂などが挙げられる。
また、ヘテロポリ酸、硫酸塩、硫酸酸性塩、炭酸塩、炭酸酸性塩、硝酸塩、硝酸酸性塩、リン酸塩、リン酸酸性塩、硫酸、リン酸などを担体に担持した担持型触媒を使用することもできる。担体としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカアルミナなどの酸化物、複合酸化物などが挙げられる。
触媒の形状については、特に限定はされない。例えば、粉体状、球状、円柱状、鞍状、ハニカム状などが挙げられる。
触媒の調製方法としては、例えば、含浸法、沈殿法、イオン交換法などが挙げられる。
また、触媒は、予めその目的に応じた気体中で焼成することも可能である。気体としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、空気などが挙げられる。
本実施形態例のアクリル酸の製造方法は、上記脱水反応で得た成分と分子状酸素とを反応させて、アクリル酸を得る方法である。
脱水反応の形式は、例えば、液相反応、気相反応のいずれで行うことも可能であり、固定床、流動床などが適用される。また、回分式、半回分式、連続式のいずれであってもよい。
脱水反応の温度は、0〜600℃にすることができる。反応の効率が高いことから、100〜500℃であることが好ましく、150〜400℃であることがより好ましい。
グリセリンの脱水反応はモル数が増加する反応であるため、圧力が低い程、グリセリンの収率が高くなる。具体的には、圧力は0.01〜10.0MPaであることが好ましく、0.05〜5MPaであることがより好ましい。
ただし、液相反応の場合には、グリセリンが液体として存在できる温度および圧力を選択し、気相反応の場合には、グリセリンが気体として存在できる温度および圧力を選択する。
液相反応の場合には、溶媒を使用してもよい。溶媒としては、反応温度で安定であるものが好ましく、そのような溶媒としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等の飽和炭化水素、ジベンジル等の芳香族炭化水素、ジフェニルエーテル、スルホラン、シリコーンオイル等が挙げられる。
気相反応の場合には、不活性ガスで希釈してもよい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、二酸化炭素、希ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン等)、水蒸気等を用いることができる。
(第4の工程)
第4の工程では、具体的には、アクロレイン混合物中のアクロレインが酸化してアクリル酸を生成する。
該酸化反応では、反応速度を高める点で、酸化反応用触媒を用いることが好ましい。酸化反応用触媒としては、例えば、金属酸化物およびそれらの混合物や複合酸化物などを含む固体触媒が挙げられる。金属酸化物を構成する金属としては、鉄、モリブデン、チタン、バナジウム、タングステン、アンチモン、錫、銅からなる群から選ばれる1種以上の金属が挙げられる。
酸化触媒は、上記酸化物を担体に担持した担持型触媒であってもよい。担体としては、シリカ、アルミナ、ジルコニアおよびこられの混合物または複合酸化物、炭化珪素などが挙げられる。
触媒の形状については、特に限定はされない。例えば、粉体状、球状、円柱状、鞍状、ハニカム状などが挙げられる。
触媒の調製方法としては、例えば、含浸法、沈殿法、イオン交換法などが挙げられる。
また、触媒は、予めその目的に応じた気体中で焼成することも可能である。気体としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、空気などが挙げられる。
酸化反応の形式は、例えば、液相反応、気相反応のいずれで行うことも可能であり、固定床、流動床など適用される。また、回分式、半回分式、連続式のいずれであってもよい。
酸化反応の温度は、反応の効率が高いことから、150〜400℃であることが好ましく、200〜350℃であることがより好ましい。
圧力は0.01〜10MPaであることが好ましく、0.05〜10MPaであることがより好ましい。
ただし、液相反応の場合には、アクロレインが液体として存在できる温度および圧力を選択し、気相反応の場合には、アクロレインが気体として存在できる温度および圧力を選択する。
液相反応の場合には、溶媒を使用してもよい。溶媒としては、反応温度で安定であるものが好ましく、そのような溶媒としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等の飽和炭化水素、ジベンジル等の芳香族炭化水素、ジフェニルエーテル、スルホラン、シリコーンオイル等が挙げられる。
酸化反応は、分子状酸素の存在下に行う。分子状酸素としては、酸素ガスそのものを供給してもよく、空気として供給してもよい。また、分子状酸素の供給は、脱水反応と酸化反応の間でも、また、脱水反応の前でも可能である。
酸化反応の際には、不活性ガスを添加することもできる。不活性ガスとしては、例えば、窒素、二酸化炭素、希ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン等)、水蒸気などが挙げられる。
酸化反応におけるガス組成は爆発範囲内にならないように調整する必要がある。そのような組成としては、例えば、アクロレイン1〜15体積%、酸素0.5〜25体積%、水蒸気0〜50体積%、窒素20〜80体積%の組成が挙げられる。
本発明における第3の工程と第4の工程は、同時に行うことが可能である。例えば、シングル型反応器を使用して、脱水反応と酸化反応を同時に行うことができる。
該反応では、反応速度を高める点で触媒を用いることが好ましい。触媒としては、脱水反応用触媒と酸化反応用触媒を混合して使用することが可能である。また、脱水能と酸化能とを併せもつ触媒を使用することが可能である。
脱水反応用触媒としては、例えば、酸性触媒、塩基性触媒を使用することができる。酸性触媒としては、例えば、カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト、ゼオライトなどの天然物あるいは合成粘土化合物、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカアルミナなどの酸化物、複合酸化物、ヘテロポリ酸、硫酸塩、硫酸酸性塩、炭酸塩、炭酸酸性塩、硝酸塩、硝酸酸性塩、リン酸塩、リン酸酸性塩、硫酸、リン酸、酸性イオン交換樹脂などが挙げられる。
また、ヘテロポリ酸、硫酸塩、硫酸酸性塩、炭酸塩、炭酸酸性塩、硝酸塩、硝酸酸性塩、リン酸塩、リン酸酸性塩、硫酸、リン酸などを担体に担持した担持型触媒を使用することもできる。担体としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカアルミナなどの酸化物、複合酸化物などが挙げられる。
触媒の形状については、特に限定はされない。例えば、粉体状、球状、円柱状、鞍状、ハニカム状などが挙げられる。
触媒の調製方法としては、例えば、含浸法、沈殿法、イオン交換法などが挙げられる。
また、触媒は、予めその目的に応じた気体中で焼成することも可能である。気体としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、空気などが挙げられる。
本実施形態例のアクリル酸の製造方法は、上記脱水反応で得た成分と分子状酸素とを反応させて、アクリル酸を得る方法である。
また、酸化反応用触媒としては、例えば、金属酸化物およびそれらの混合物や複合酸化物などを含む固体触媒が挙げられる。金属酸化物を構成する金属としては、鉄、モリブデン、チタン、バナジウム、タングステン、アンチモン、錫、銅からなる群から選ばれる1種以上の金属が挙げられる。
酸化触媒は、上記酸化物を担体に担持した担持型触媒であってもよい。担体としては、シリカ、アルミナ、ジルコニアおよびこられの混合物または複合酸化物、炭化珪素などが挙げられる。
触媒の形状については、特に限定はされない。例えば、粉体状、球状、円柱状、鞍状、ハニカム状などが挙げられる。
触媒の調製方法としては、例えば、含浸法、沈殿法、イオン交換法などが挙げられる。
また、触媒は、予めその目的に応じた気体中で焼成することも可能である。気体としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、空気などが挙げられる。
反応の形式は、例えば、液相反応、気相反応のいずれで行うことも可能であり、固定床、流動床など適用される。また、回分式、半回分式、連続式のいずれであってもよい。
反応の温度は、反応の効率が高いことから、150〜400℃であることが好ましく、200〜350℃であることがより好ましい。
反応の圧力は0.01〜10MPaであることが好ましく、0.05〜10MPaであることがより好ましい。
ただし、液相反応の場合には、グリセリンが液体として存在できる温度および圧力を選択し、気相反応の場合には、グリセリンが気体として存在できる温度および圧力を選択する。
液相反応の場合には、溶媒を使用してもよい。溶媒としては、反応温度で安定であるものが好ましく、そのような溶媒としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等の飽和炭化水素、ジベンジル等の芳香族炭化水素、ジフェニルエーテル、スルホラン、シリコーンオイル等が挙げられる。
反応は、分子状酸素の存在下に行う。分子状酸素としては、酸素ガスそのものを供給してもよく、空気として供給してもよい。
反応の際には、不活性ガスを添加することもできる。不活性ガスとしては、例えば、窒素、二酸化炭素、希ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン等)、水蒸気などが挙げられる。
反応におけるガス組成は爆発範囲内にならないように調整する必要がある。そのような組成としては、例えば、グリセリン1〜20体積%、酸素0.5〜25体積%、水蒸気0〜50体積%、窒素20〜80体積%の組成が挙げられる。
酸化反応により得たアクリル酸混合物には、重合を防止するために、重合防止剤を添加することが好ましい。重合防止剤としては、例えば、フェノチアジン、フェノール、ハイドロキノン、メトキノン、カテコール、クレゾール等のフェノール化合物が挙げられる。
重合防止剤を添加する場合の重合防止剤添加量は、アクリル酸を100質量%とした際の1質量ppm〜1質量%であることが好ましい。
(第5の工程)
アクリル酸混合物からアクリル酸を回収する方法としては、公知の分離・回収方法を適用することができるが、工業的に回収するためには、アクリル酸混合物を蒸留する方法が好ましい。
蒸留の具体例としては、単蒸留、多段蒸留、水蒸気蒸留、フラッシュ蒸留などが挙げられる。蒸留の方式は、回分式、半回分式、連続式のいずれであってもよい。
多段蒸留を適用した場合には、例えば、アクリル酸より低沸点の成分を塔頂部から留出させ、中間部からアクリル酸を留出させ、塔底部から脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリド、脂肪酸エステル、アルカリ化合物、アルカリ化合物塩から選ばれる化合物を留出させることができる。
多段蒸留で使用される蒸留塔としては、棚段式蒸留塔、充填蒸留塔などの公知の蒸留塔を使用することができる。
棚段式蒸留塔の棚段の構造としては、例えば、泡鐘トレイ、多孔板トレイ、バルブトレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラクトレイなどが挙げられる。
充填蒸留塔の充填物としては、規則充填物や不規則充填物が挙げられる。規則充填物としては、例えば、金属板型、金網型、グリッド型などが挙げられる。不規則充填物としては、例えば、ラシヒリング、レッシングリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、テラレット、ポールリング、フレキシリング、カスケードリングなどが挙げられる。
アクリル酸混合物を多段蒸留する場合、蒸留条件としては、塔底部の温度を0〜120℃とすることが好ましく、5〜100℃とすることがより好ましく、10〜80℃とすることがさらに好ましい。塔底部の温度が120℃より高いと、アクリル酸が重合することがあり、塔底部の温度が0℃より低いと、冷却に要するエネルギー量が増えてしまう傾向にある。なお、蒸留の圧力は、温度との関係で決まる。
アクリル酸混合物を蒸留する際には、アクリル酸の重合を防止するために、重合防止剤をあらかじめ添加することが好ましい。重合防止剤としては、例えば、フェノチアジン、フェノール、ハイドロキノン、メトキノン、カテコール、クレゾール等のフェノール化合物が挙げられる。重合防止剤を添加する場合の重合防止剤添加量は、アクリル酸を100質量%とした際の1質量ppm〜1質量%であることが好ましい。
(第6の工程)
第5の工程後に残った残存物には、グリセリンと、脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリド、脂肪酸エステル、アルカリ化合物、アルカリ化合物塩の群から選ばれる1種以上の化合物とが含まれる。残存物の一部を戻す場合には、脂肪酸および脂肪酸塩、グリセリドを含む混合物の一部を戻してもよいし、脂肪酸のみを戻してもよいし、脂肪酸塩のみを戻してもよいし、グリセリドのみを戻してもよい。
残存物の全部または一部を第1の工程に戻した場合、または、残存物中の脂肪酸を戻した場合には、脂肪酸とアルコールとがエステル化反応して、脂肪酸エステルを生成する。これは、第1の工程で用いるエステル交換反応用触媒は、エステル化反応用触媒としても機能するからである。
残存物中の脂肪酸塩を第1の工程に戻した場合には、油脂との反応に利用される。また、脂肪酸塩を第1の工程に戻す場合には、脂肪酸エステルが容易に得られることから、第1の工程の前に脂肪酸塩を酸により前処理することが好ましい。
第3の工程と第4の工程とは同時にまたは逐次に行うことができる。逐次に行う場合には、例えば、連結した二つの反応器を備えたタンデム型反応器を使用して、一段目の反応器で脱水反応(第3の工程)を行い、二段目の反応器で酸化反応(第4の工程)を行うことができる。
また、第4の工程と第5の工程とは同時にまたは逐次に行うことができる。
<第2の実施形態>
本発明のアクリル酸の製造方法の第2の実施形態について説明する。
本実施形態のアクリル酸の製造方法は、油脂とアルカリとをケン化反応させて、脂肪酸アルカリ塩混合物を得る工程(以下、第1’の工程という)と、該脂肪酸アルカリ塩混合物から脂肪酸アルカリ塩を除去して、グリセリン混合物を得る工程(以下、第2’の工程という)と、該グリセリン混合物を脱水反応させてアクロレイン混合物を得る工程(以下、第3の工程という)と、該アクロレイン混合物を酸化反応させてアクリル酸混合物を得る工程(以下、第4の工程という)、該アクリル酸混合物からアクリル酸を回収する工程(以下、第5の工程という)と、該第5の工程後に残った残存物の一部または全部を第1’の工程に戻す工程(以下、第6’の工程という)とを有する。
(第1’の工程)
第1’の工程における油脂としては、第1の実施形態における油脂と同様のものを挙げることができる。
第1’の工程において、油脂と反応させるアルカリとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、強塩基性イオン交換樹脂、アミン等が挙げられる。
油脂とアルカリとの反応は、公知のいかなる方法で行うことができる。この反応によって得られた脂肪酸アルカリ塩混合物は、アルカリに対応した脂肪酸アルカリ塩、グリセリン、脂肪酸および/または脂肪酸塩を含む。
脂肪酸アルカリ塩としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸マグネシウム、脂肪酸カルシウム等が挙げられる。これらの脂肪酸アルカリ塩は、石鹸として使用することが可能である。
(第2’の工程)
第2’の工程において、脂肪酸アルカリ塩混合物から脂肪酸アルカリ塩を除去する方法としては、例えば、第1の実施形態における脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去する方法と同様である。
脂肪酸アルカリ塩混合物から脂肪酸アルカリ塩を除去して得たグリセリン混合物において、グリセリン含有量の好ましい範囲、グリセリン混合物における脂肪酸の含有量、脂肪酸塩の含有量は、第1の実施形態と同等である。
また、本実施形態におけるグリセリン混合物にも、グリセリン、脂肪酸および脂肪酸塩以外の成分、例えば、水、塩基、酸、脂肪酸エステル、アルコール、グリセリドなどが含まれてもよい。また、グリセリン混合物は、第3の工程以降の反応を阻害しない溶媒(例えば、水等)によって希釈されたものでもよい。
(第3の工程、第4の工程、第5の工程)
第3の工程、第4の工程および第5の工程は、第1の実施形態と同様である。
(第6’の工程)
第6’の工程にて、第5の工程後に残った残存物の全部または一部、とりわけ脂肪酸を第1’の工程に戻すことにより、アルカリとのケン化反応をさらに生じさせることができる。
また、本実施形態でも、脂肪酸塩を第1’の工程に戻す場合には、第1’の工程の前に脂肪酸塩を酸により前処理することが好ましい。
以上説明した第1の実施形態および第2の実施形態のアクリル酸の製造方法では、グリセリン混合物を蒸留しないで、脱水および酸化反応に供するため、グリセリン混合物を利用する際のエネルギー消費量が少ない。
ところで、沸点が高いグリセリン(0.1MPaにおける沸点:290℃)と、脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリド、脂肪酸エステル、アルカリ化合物、アルカリ化合物塩の群から選ばれる1種以上の化合物とを蒸留等により分離する場合にはエネルギー消費量が多くなる。しかし、上記実施形態の製造方法では、沸点が低い(0.1MPaにおける沸点:139℃)アクリル酸とグリセリンと脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリド、脂肪酸エステル、アルカリ化合物、アルカリ化合物塩の群から選ばれる1種以上の化合物を分離する際には、沸点の低いアクリル酸を留出させればよいから、エネルギー消費量が少ない。
したがって、上記製造方法によれば、グリセリン混合物からアクリル酸を少ないエネルギー消費量で製造できる。
さらに、上記実施形態では、第6の工程あるいは第6’の工程にて、第5の工程後に残った残存物を第1の工程あるいは第1’の工程に戻すため、油脂基準の脂肪酸エステルの収率を高めることができる。
なお、本発明のアクリル酸の製造方法は、上述した第1の実施形態および第2の実施形態に限定されない。上記実施形態では、第5の工程後に残った残存物の一部または全部を第1の工程に戻したが、第1の工程に戻さずに、第5の工程後に残った脂肪酸にアルコールを反応させて、脂肪酸エステルを製造してもよい。
アルコールとしては、上記第1の工程で挙げたものと同様のものを使用できる。
脂肪酸にアルコールを反応させる際には、エステル化反応用触媒を用いることが好ましい。エステル化反応用触媒としては、酸性触媒と塩基性触媒が挙げられる。酸性触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸、強酸性イオン交換樹脂、ケイタングステン酸、リンタングステン酸などのヘテロポリ酸、硫酸ジルコニアなどが挙げられる。塩基性触媒としては、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、強塩基性イオン交換樹脂、アミンなどが挙げられる。
また、第5の工程後に残った脂肪酸にアルカリを反応させて、脂肪酸アルカリ塩を製造してもよい。
脂肪酸アルカリ塩を製造する際に使用するアルカリとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの水酸化物、炭酸塩等が挙げられる。
得られた脂肪酸アルカリ塩は、石鹸として使用することができる。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
(調製例1)触媒Aの調製
硫酸水素カリウム6gを水に溶解して硫酸水素カリウム水溶液を調製し、この硫酸水素カリウム水溶液をシリカ14gに含浸させ、乾燥させた後、窒素雰囲気下、300℃にて、3時間焼成して、硫酸水素カリウム/シリカからなる脱水反応用触媒Aを得た。
(調製例2)触媒Bの調製
パラモリブデン酸アンモニウム7.0g、メタバナジン酸アンモニウム2.1g、パラタングステン酸アンモニウム0.89g、水50mlをフラスコに仕込み、攪拌しながら90℃に加熱して溶解させた。これにより得た溶解液に、硝酸銅1.8gを水15mlに溶解させてあらかじめ調製した硝酸銅水溶液を添加し、触媒調製用溶液を得た。
この触媒調製用溶液をα−アルミナ20gに含浸させ、次いで、蒸発乾固させた。乾燥後、空気雰囲気下において400℃で3時間焼成して、α−アルミナ担持のモリブデン−バナジウム−タングステン−銅の酸化物からなる酸化反応用触媒Bを得た。
(比較例1)[グリセリンの回収]
グリセリンを60質量%、パルミチン酸を3.0質量%、オレイン酸を2.7質量%、パルミチン酸モノグリセリド2.7質量%、オレイン酸モノグリセリド2.7質量%、パルミチン酸メチル2.1質量%、オレイン酸メチル1.8質量%、水9.7質量%、その他の成分を15.3質量%含むグリセリン混合物500gを、精留塔を具備する1000mlフラスコに仕込み、減圧下で蒸留して、グリセリン留分を得た。留出液の回収量は291gであった。この留出液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、グリセリン組成比は98質量%であり、パルミチン酸、オレイン酸、パルミチン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、パルミチン酸メチル、オレイン酸メチルとも確認されなかった。仕込みのグリセリンに対する留分中のグリセリンの回収率は95%であった。
[反応]
内径10mm×長さ300mmのステンレス製反応管を2本連結させ、各反応管に電気炉を取り付けて反応装置を作製した。この反応装置における一段目の反応管に調製例1で得た触媒Aを5ml、二段目の反応管に調製例2で得た触媒Bを5ml充填した。また、一段目の反応管と二段目の反応管の間にガスを添加できるように配管を接続した。
上記のようにして得たグリセリンを水で希釈した20質量%グリセリン水溶液を8g/時間で、一段目の反応管に連続的に供給した。その際、一段目の反応管を300℃に電気炉で加熱し、二段目の反応管を電気炉で280℃に加熱した。また、一段目の反応管と二段目の反応管との間に酸素を600Nml/時間の割合で供給した。
二段目の反応管出口を冷却し、得られた反応ガスを凝縮させて、捕集した。捕集した液(捕集液)をガスクロマトグラフィーで分析したところ、グリセリン転化率は100%、アクリル酸収率は51%であった。
次いで、得られた捕集液を精密蒸留して、精製アクリル酸を得た。精製後の、グリセリン基準のアクリル酸収率は45%であった。
[反応]
比較例1と同様の反応装置を用い、一段目の反応管に調製例1で得た触媒Aを5ml、二段目の反応管に調製例2で得た触媒Bを5ml充填した。
次いで、一段目の反応器に、グリセリン20質量%、パルミチン酸1.0質量%、オレイン酸0.9質量%、パルミチン酸モノグリセリド0.9質量%、オレイン酸モノグリセリド0.8質量%、パルミチン酸メチル0.7質量%、オレイン酸メチル0.6質量%、水70質量%、その他の成分5.1質量%を含むグリセリン混合物を8g/時間で供給した。一段目の反応管を300℃に電気炉で加熱し、二段目の反応管を電気炉で280℃に加熱した。また、一段目の反応管と二段目の反応管の間に酸素を600Nml/時間の割合で供給した。
二段目の反応管出口を冷却し、反応ガスを凝縮させて、捕集した。捕集液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、グリセリン転化率は100%、アクリル酸収率は51%であった。
その後、捕集液を精密蒸留して、精製アクリル酸を得た。精製後の、グリセリン基準のアクリル酸収率は48%であった。
本実施例では、グリセリン混合物を蒸留しなかったもかかわらず、グリセリン混合物を蒸留して精製した比較例1と同程度の収率でアクロレインを得ることができた。
また、グリセリン混合物を蒸留せずに比較例1と同程度の収率でアクリル酸を得ることができたことから、アクリル酸単位量当たり少ないエネルギー消費量でアクリル酸を製造できることがわかる。
(比較例2)[反応]
調製例1で得た触媒Aのうち粒径0.5〜1.0mmに篩い分けた成分を5ml、調製例2で得た触媒Bの5mlを充分に混合した。得られた触媒混合物を内径10mm×長さ300mmのステンレス製反応管に充填した。
次いで、反応管を電気炉で300℃に加熱し、比較例1における20質量%グリセリン水溶液を8g/時間、酸素を600Nml/時間の割合で供給して反応させた。
反応管出口を冷却し、反応ガスを凝縮させて、捕集した。捕集液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、グリセリン転化率は100%、アクリル酸収率は45%であった。
次いで、得られた捕集液を精密蒸留して、精製アクリル酸を得た。精製後の、グリセリン基準のアクリル酸収率は43%であった。
[反応]
比較例2において、20質量%グリセリン水溶液の代わりに、グリセリン20質量%、パルミチン酸1.0質量%、オレイン酸0.9質量%、パルミチン酸モノグリセリド0.9質量%、オレイン酸モノグリセリド0.8質量%、パルミチン酸メチル0.7質量%、オレイン酸メチル0.6質量%、水70質量%、その他の成分5.1質量%を含むグリセリン混合物を反応管に供給した以外は比較例2と同様にして反応させた。
反応管出口を冷却し、反応ガスを凝縮させて、捕集した。捕集液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、グリセリン転化率は100%、アクリル酸収率は45%であった。
その後、捕集液を精密蒸留して、精製アクリル酸を得た。精製後の、グリセリン基準のアクリル酸収率は43%であった。
本実施例では、グリセリン混合物を蒸留しなかったもかかわらず、グリセリン混合物を蒸留して精製した比較例2と同程度の収率でアクリル酸を得ることができた。よって、アクリル酸単位量当たり少ないエネルギー消費量でアクリル酸を製造できることがわかる。
本発明のアクリル酸の製造方法によれば、グリセリンと脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリド、脂肪酸エステル、アルカリ化合物、アルカリ化合物塩の群から選ばれる1種以上の化合物を含むグリセリン混合物からアクリル酸を少ないエネルギー消費量で製造できる。

Claims (15)

  1. (1)グリセリン混合物を脱水反応させてアクロレイン混合物を得る工程;
    (2)当該アクロレイン混合物を酸化反応させてアクリル酸混合物を得る工程;及び
    (3)当該アクリル酸混合物からアクリル酸を回収する工程;
    を含む、アクリル酸の製造方法。
  2. 前記工程(2)を、分子状酸素の存在下で行う、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
  3. 前記工程(1)及び前記工程(2)を同時に行う、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
  4. 前記工程(2)及び前記工程(3)を同時に行う、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
  5. (A)下記(a)及び(b)を含む、グリセリン混合物を得る工程:
    (a)油脂とアルコールとをエステル交換反応させて、脂肪酸エステル、グリセリン、脂肪酸および/または脂肪酸塩を含む脂肪酸エステル混合物を得る工程;及び
    (b)該脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去する工程;
    を行い、その後、前記工程(1)乃至(3)を行う、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
  6. アクリル酸混合物からアクリル酸を回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記脂肪酸エステル混合物を得る工程(A)(a)において使用する、請求項5に記載のアクリル酸の製造方法。
  7. アクリル酸混合物からアクリル酸を回収した後に残った残存物の一部または全部を酸で処理した後、前記脂肪酸エステル混合物を得る工程(A)(a)において使用する、請求項6に記載のアクリル酸の製造方法。
  8. (B)下記(c)及び(d)を含む、グリセリン混合物を得る工程:
    (c)油脂とアルカリとをケン化反応させて、脂肪酸アルカリ塩、グリセリンおよび脂肪酸を含む脂肪酸アルカリ塩混合物を得る工程;
    (d)当該脂肪酸アルカリ塩混合物から脂肪酸アルカリ塩を除去する工程;
    を行い、その後、前記工程(1)乃至(3)を行う、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
  9. アクリル酸混合物からアクリル酸を回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記脂肪酸アルカリ塩混合物を得る工程(B)(c)において使用する、請求項8に記載のアクリル酸の製造方法。
  10. 前記工程(3)を、アクリル酸混合物の蒸留により行う、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
  11. 前記グリセリン混合物が、脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリド、脂肪酸エステル、アルカリ化合物、アルカリ化合物塩よりなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
  12. 前記脂肪酸は、炭素数が4〜24の脂肪酸の群から選ばれる1種以上の脂肪酸である、請求項11に記載のアクリル酸の製造方法。
  13. 前記脂肪酸塩は、炭素数が4〜24の脂肪酸の群から選ばれる1種以上である脂肪酸と、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アミン化合物の群から選ばれる1種以上の化合物との塩である、請求項11に記載のアクリル酸の製造方法。
  14. 前記グリセリドは、炭素数が4〜24の脂肪酸の群から選ばれる1種以上の脂肪酸から構成されるものである、請求項11に記載のアクリル酸の製造方法。
  15. 前記脂肪酸エステルは、炭素数が4〜24の脂肪酸の群から選ばれる1種以上の脂肪酸と、炭素数が1〜10のアルコールの群から選ばれる1種以上のアルコールとのエステルである、請求項11に記載のアクリル酸の製造方法。
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