JPWO2009081955A1 - 緑膿菌のiii型分泌装置構成タンパク質pa1698 - Google Patents

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Abstract

緑膿菌感染を実質的に予防あるいは治療する能力を有し、緑膿菌感染患者由来の臨床分離株の多様性に対応できる抗体及びワクチン組成物を提供することを課題とする。本発明によれば、緑膿菌のIII型分泌装置構成タンパク質であるPA1698タンパク質またはそのペプチドに対する抗体およびこれらタンパク質またはペプチドを含むワクチン組成物が提供される。

Description

本発明は緑膿菌のIII型分泌装置構成タンパク質PA1698に対する抗体、並びに、該抗体を含んでなる医薬組成物、緑膿菌感染症診断剤、緑膿菌感染症治療剤、及び緑膿菌の検出キットに関する。また、本発明は、PA1698タンパク質またはそのペプチドを抗原として含むワクチン組成物に関する。
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、土壌、水中など自然環境中に広く一般的に分布しているグラム陰性桿菌であるが、治療抵抗性の重篤な致死性の感染症を引き起こす。その主な標的は、熱傷、臓器移植または癌患者を含む、一般に、易感染宿主(compromised host)と呼ばれる生体防御機能が衰弱した易感染性の患者であり、緑膿菌は院内感染の主要な原因菌である。さらに本菌による肺感染症は嚢胞性繊維症患者において致死性である。これらの患者に対して、主に抗緑膿菌活性を有する抗菌剤が投与されるが、緑膿菌の薬剤耐性により十分に治療効果が得られない症例が多い。また、緑膿菌に対するワクチンや抗体についても古くから検討されているが、直接、不活化した菌を用いる方法では、緑膿菌の血清型別に種々のワクチンや抗体を調製しなければならない等の欠点があった。
このような状況下、緑膿菌間で共通なアミノ酸配列を有する緑膿菌由来のタンパク質を用いた能動免疫または受動免疫による緑膿菌感染症の予防あるいは治療が期待されている。緑膿菌由来のタンパク質をワクチンに応用する例としては、外膜タンパク質OprFおよびOprIの一部分を融合させた組換えタンパク質(特開平8-245699号公報)、typeIV pilinタンパク質(WO2004/099250号公報)等が知られている。
緑膿菌由来のタンパク質を標的とする抗体医薬に関しては、これまでに、抗typeIV pilin 抗体(WO2004/099250号公報)、抗PA1706(またはPcrV)抗体(US6309651号公報、US6827935号公報)、抗PA5158抗体(WO2007/049770号公報)、抗PA0427抗体(WO2007/114340号公報)等が報告されている。
しかし、多様な血清型を示す緑膿菌の臨床分離株が共通に保有する菌体由来のタンパク質は、「緑膿菌共通抗原」として緑膿菌感染症の予防、診断あるいは治療に応用可能であるため、常に求められている。
ところで、PA1698(またはPopN)遺伝子(Genebank accession No.AF010150)にコードされるPA1698タンパク質は、緑膿菌のIII型分泌装置を構成するタンパク質である(Journal of Bacteriology, 2007, 189, 2599-2609)。III型分泌装置とは、病原細菌が宿主細胞質内に病原因子を直接移行させるときに使う装置であり、約30種類のタンパク質より構成される。そのうち、抗PA1706(またはPcrV)抗体には感染防御作用が報告されている(US6309651号公報、US6827935号公報)。
しかしながら、PA1698タンパク質が、株間においてどの程度変異しているかは知られておらず、このタンパク質あるいは部分ペプチドがワクチンの成分として用いられた例や、このタンパク質あるいは部分ペプチドから産生される抗体が感染治療薬あるいは診断薬として用いられた例はない。
本発明は、緑膿菌感染を実質的に予防あるいは治療する能力を有し、緑膿菌感染患者由来の臨床分離株の多様性に対応できる抗体及びワクチン組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、緑膿菌の外膜タンパク質から新規で有用な「緑膿菌共通抗原」を探索することを試み、種々検討した結果、緑膿菌のIII型分泌装置構成タンパク質であるPA1698(別名PopN)タンパク質をコードする遺伝子が、ヒト血清の存在いかんに関わらず、定常的に発現していることをGeneChip解析により見出した(実施例1)。また、93株の緑膿菌臨床分離株について遺伝子解析を実施したところ、驚くべきことに、PA1698タンパク質が、約7割の臨床分離株で完全にアミノ酸配列が保存されており、残る約3割の臨床分離株でも1、2箇所のアミノ酸変異のみがあることを見出した(実施例2)。さらに、PA1698組換えタンパク質を免疫して得られた抗体が、PA1698タンパク質に結合すること(実施例7〜9)、当該抗体が細胞障害性抑制作用を示すこと(実施例10)、当該抗体が緑膿菌感染モデルマウスにおいて高い感染防御効果を示すこと(実施例11および12)を確認した。
すなわち、本発明は、緑膿菌のIII型分泌装置構成タンパク質であるPA1698タンパク質が緑膿菌共通抗原として有用であり、この抗原に対する抗体が緑膿菌に結合して、その感染に対する優れた防御効果を発揮しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、より詳しくは、以下の発明に関するものである。
<1> 緑膿菌由来のPA1698タンパク質に結合する抗体またはその機能的断片。
<2> 緑膿菌由来のPA1698タンパク質が、以下の(i)または(ii)に記載のタンパク質である、<1>に記載の抗体またはその機能的断片。
(i)配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質。
(ii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の機能を有するタンパク質。
<3> 緑膿菌表面に結合する、<1>に記載の抗体またはその機能的断片。
<4> 緑膿菌がヒト気道上皮細胞に及ぼす細胞障害活性を抑制する活性を有する、<1>に記載の抗体またはその機能的断片。
<5> 緑膿菌が感染している患者において抗菌活性を有する、<1>に記載の抗体またはその機能的断片。
<6> 好中球が減少している状態における患者の緑膿菌の感染において抗菌活性を有する、<5>に記載の抗体またはその機能的断片。
<7> FERM BP-11055またはFERM BP-11056の受託番号のもと寄託されたハイブリドーマにより産生される抗体のエピトープに結合する、<1>に記載の抗体またはその機能的断片。
<8> FERM BP-11055またはFERM BP-11056の受託番号のもと寄託されたハイブリドーマ。
<9> 緑膿菌由来のPA1698タンパク質に対する抗体を産生することができるタンパク質抗原またはペプチド抗原を含んでなる抗原組成物と、場合によっては1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、および/またはアジュバントとを含んでなる、緑膿菌に関連する疾患の予防または治療に用いられるワクチン組成物。
<10> 緑膿菌由来のPA1698タンパク質が、以下の(i)または(ii)に記載のタンパク質である、<9>に記載のワクチン組成物。
(i)配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質。
(ii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の機能を有するタンパク質。
<11> 緑膿菌に関連する疾患が、緑膿菌感染に起因する全身感染疾患である、<9>に記載のワクチン組成物。
<12> <1>〜<7>のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片と、場合によっては1種以上の薬学的に許容される担体、および/または希釈剤とを含んでなる、緑膿菌に関連する疾患の予防または治療に用いられる医薬組成物。
<13> 緑膿菌に関連する疾患が、緑膿菌感染に起因する全身感染疾患である、<12>に記載の医薬組成物。
<14> <1>〜<3>のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片を含んでなる、緑膿菌感染症診断剤。
<15> <1>〜<3>のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片を含んでなる、緑膿菌の検出キット。
[抗体]
本発明によれば、緑膿菌由来のPA1698タンパク質またはその一部を認識する抗体またはその機能的断片が提供される。本発明による抗体が結合する緑膿菌のPA1698タンパク質は、血清型等によらず株間でのアミノ酸配列の保存性が極めて高いことが見出された(実施例2)。従って、本発明による抗体の標的となる緑膿菌のPA1698タンパク質は、好ましくは、配列番号:2に記載のアミノ酸配列PA01株由来のタンパク質、あるいは配列番号:2で表されるアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の機能を有するタンパク質である。アミノ酸配列の置換、欠失、挿入もしくは付加は、一般的には、1〜2アミノ酸である。典型的には、1〜2アミノ酸の置換である。
本発明による抗体は、好ましくは、精製されたPA1698タンパク質を抗原として含んでなる抗原組成物を、抗体が誘発できる量で実験動物へ投与(免疫)することによって得られる。心臓あるいは動脈から採血し、分離して得た抗血清を精製した後、純粋抗体として使用することができる。
本発明による抗体には、PA1698タンパク質を抗原として、当該抗原をマウス等の哺乳動物に免疫して得られるポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体(本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体も含む)、遺伝子組換え技術を用いて製造されるキメラ抗体およびヒト化抗体、並びにヒト抗体産生トランスジェニック動物等を用いて製造されるヒト抗体が含まれる。本発明による抗体を医薬としてヒトに投与する場合は、副作用低減の観点から、ヒト抗体が望ましい。
「ヒト抗体」とは、すべての領域がヒト由来の抗体である。本発明によるヒト抗体は、当業者に周知の方法を用いて作製することができる(例えば、Intern. Rev. Immunol, 1995, 13, 65-93、J. Mol. Biol, 1991, 222, 581-597、特開平10-146194号公報、特開平10-155492号公報、特許2938569号公報、特開平11-206387号公報、特表平8-509612号公報、特表平11-505107号公報等を参照することができる)。
「ヒト化抗体」は、マウス抗体の抗原結合部位(CDR;相補性決定領域)の遺伝子配列だけをヒト抗体遺伝子に移植(CDRグラフティング)した抗体である。本発明によるヒト化抗体は、当業者に周知の方法を用いて作製することができる(例えば、EP239400、WO90/07861号公報等を参照することができる)。
「キメラ抗体」は、ある種の抗体の可変領域とそれとは異種の抗体の定常領域とを連結した抗体である。具体的には、抗原をマウスに免疫し、そのマウスモノクローナル抗体の遺伝子から抗原と結合する抗体可変部(V領域)を切り出し、ヒト骨髄由来の抗体定常部(C領域)遺伝子と結合して作製することができる。本発明によるキメラ抗体は、当業者に周知の方法を用いて作製することができる(例えば、特開平8-280387号公報、米国特許第4816397号公報、米国特許第4816567号公報、米国特許第5807715号公報等を参照することができる)。
本発明によるモノクローナル抗体は、当業者に周知の方法を用いて作製することができる(例えば、Antibodies A LABORATORY MANUAL Ed Harlow, David Lane Cold Spring Harbor Laboratory 1988、単クローン抗体実験マニュアル(1987)講談社、富山朔二ら編、単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA(1987)講談社、岩崎辰夫ら編等を参照することができる)。本発明によるポリクローナル抗体もまた、当業者に周知の方法を用いて作製することができる。
本発明による「機能的断片」とは、抗体の一部分(部分断片)であって、本発明によるタンパク質を特異的に認識するものを意味する。具体的には、Fab、Fab’、F(ab’)2、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖抗体(scFv)、およびこれらの重合体等が挙げられる。
本発明の抗体は、緑膿菌感染の治療や診断に、あるいは研究用試薬として用いることができる。このような抗体には、PA1698タンパク質を認識し、かつ緑膿菌表面に結合する抗体が含まれる。緑膿菌表面に結合する好ましい抗体としては、実施例8に記載のWhole cell ELISA試験を行った場合に、その吸光度が、対照と比較して顕著に高いものである。精製IgG画分の場合、好ましくは吸光度が0.3以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上、さらにより好ましくは1.0以上(例えば、1.2以上、1.4以上)である。
本発明の抗体を緑膿菌感染に適用する態様においては、緑膿菌が感染している患者において抗菌活性を有する抗体またはその機能的断片が提供される。この態様において、特に好ましい抗体としては、配列番号:2で表されるアミノ酸配列もしくは1または複数個の保存的置換を有する配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質に対する抗体またはその機能的断片が挙げられる。
一旦、緑膿菌に対し抗菌活性を有する抗体が特定された場合、当業者であれば、その抗体が認識するペプチド領域を特定して、その領域に結合し、同様の活性を示す種々の抗体を作成することができる。このような抗体の好ましい例としては、FERM BP-11055あるいはFERM BP-11056のもと受託されたハイブリドーマが産生する抗体のエピトープに結合する抗体が挙げられる。
緑膿菌が感染している患者は、例えば、種々の薬剤投与や放射線治療などにより、好中球が減少している状態にある患者でありうる。本発明の抗体によれば、重篤な感染症に発展しやすい、このような患者に対しても効果を発揮することができる点で有利である。また、患者に感染している緑膿菌は、多剤耐性緑膿菌でありうる。本発明の抗体は、通常用いられる抗生物質によっては治療できない、多剤耐性緑膿菌に感染した患者に対しても、有効性を示しうる。
また、びまん性汎細気管支炎(DPB)や嚢胞性線維症(CF)などの慢性気道感染症では、気道上皮細胞からの粘液(ムチン)過剰分泌は気道閉塞を引き起こし、予後不良の大きな因子となる。緑膿菌は慢性気道感染症における主要な原因菌である。本発明の抗体によれば、緑膿菌がヒト気道上皮細胞に及ぼす細胞障害活性を抑制しうるため、慢性気道感染症の治療においても効果を発揮しうる。好ましい抗体としては、実施例10に記載の実験を行った場合に、ヒト気道上皮細胞の細胞死の抑制率が、10%以上、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上である。このような抗体としては、例えば、FERM BP-11055、FERM BP-11056のもと受託されたハイブリドーマが産生する抗体が挙げられる。
また、本発明によれば、上記本発明の抗体を産生するハイブリドーマが提供される。好ましいハイブリドーマとしては、2008年10月31日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託された受託番号FERM BP-11055のハイブリドーマ(1698-1)、FERM BP-11056のハイブリドーマ(1698-2)が挙げられる。
[ワクチン組成物]
緑膿菌由来のPA1698タンパク質は、タンパク質抗原として用いることができ、このような抗原を含む抗原組成物は、緑膿菌に関連する疾患の予防または治療のためのワクチンとして用いることができる。従って、本発明によれば、緑膿菌由来のPA1698タンパク質に対する抗体を産生することができる抗原組成物を含んでなるワクチン組成物が提供される。ここで「抗原組成物」は、タンパク質抗原を唯一の構成要素とする組成物でもよく、また他の成分を含んでなる組成物であってもよい。
本発明によれば、上記抗原組成物と、場合によっては1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、および/またはアジュバントとを含んでなる緑膿菌に関連する疾患の予防または治療に用いられるワクチン組成物を製造することができる。
本発明によるワクチン組成物に用いられる担体は、投与の様式および経路、並びに標準的な製薬の実際を基にして選択され、キャリアータンパク質(例えば、牛血清アルブミン(BSA)、卵白アルブミン(OVA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、ラパスガイ由来のヘモシアニン(KLH:Keyhole limpet hemocyanin)等)、溶解剤(例えば、エタノール、ポリソルベート、Cremophor EL(登録商標)等)、等張化剤、保存剤、抗酸化剤、賦形剤(例えば、ラクトース、スターチ、結晶性セルロース、マンニトール、マルトース、リン酸水素カルシウム、軽無水珪酸、炭酸カルシウム等)、結合剤(例えば、スターチ、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油等)、安定化剤(例えば、ラクトース、マンニトール、マルトース、ポリソルベート、マクロゴール、ポリオキシエチレン硬化ひまし油等)等がある。必要であれば、グリセリン、ジメチルアセトアミド、70%乳酸ナトリウム、界面活性剤、または塩基性物質(例えば、水酸化ナトリウム、エチレンジアミン、エタノールアミン、重炭酸ナトリウム、アルギニン、メグルミン、トリスアミノメタン等)等を加えてもよい。
キャリアータンパク質の具体例としては、本発明によるワクチン組成物の抗原性を高めるため、本発明によるペプチドに公知のKLH溶液(Calbiotec社製 50%グリセロール溶液に1ml当たり125mgを溶解させる)をカップリング(coupling)させることができる。
本発明によるワクチン組成物に用いられる希釈剤は、投与の様式及び経路、並びに標準的な製薬の実際を基にして選択され、例えば、水または生理食塩水、リン酸塩緩衝生理食塩水、重炭酸塩溶液等が挙げられる。
本発明によるワクチン組成物に用いられるアジュバントは、投与の様式及び経路、並びに標準的な製薬の実際を基にして選択され、例えば、コレラ毒素、大腸菌の熱不安定腸毒素(LT)、リポソーム、又は免疫刺激性複合体(ISCOM:immunostimulating complex)等が挙げられる。
投与は、緑膿菌による感染のおそれがある投与対象の年齢、体重、性別、一般的な健康状態により異なるが、経口投与、非経口投与(例えば、静脈投与、動脈投与、局所投与)のいずれかの投与経路で投与することができるが、好ましくは非経口投与である。経口投与および非経口投与のための剤形およびその製造方法は当業者に周知であり、本発明による抗原組成物を、薬学的に許容される上記の担体などと混合等することにより、常法に従って製造することができる。経口投与のための剤型は、固体または液体の剤型、具体的には溶剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等が挙げられる。非経口投与のための剤型は、溶剤、懸濁剤、軟膏剤、クリーム剤、坐剤、眼剤、点鼻剤、点耳剤等が挙げられる。経口投与の場合、香味料及び着色料を加えることもできる。
本製剤の徐放を希望する場合、生物分解性のポリマー(例えば、ポリ-D,L-ラクチド−コ−グリコリド、ポリグリコリド等)を、増量母材として加えることができる(例えば、米国特許5,417,986号公報、米国特許4,675,381号公報、米国特許4,450,150号公報を参照することができる)。
適当な医薬用の担体および希釈剤等、並びにこれらの使用のために医薬上必要な物は、Remington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
本発明によるワクチン組成物の投与量は、例えば、ワクチン抗原の種類、本抗原と共にアジュバントを投与するか否か、共投与されるアジュバントの種類、投与の様式と頻度、及び希望する効果(例えば、予防か、それとも治療か)により、本発明者によって決定されるが、一般的には、本発明のワクチン組成物を、1成人1投与あたり1μg〜100mgの量で投与する。本ワクチンと共にアジュバントを投与する場合、一般的には、1成人1投与あたり1ng〜1mgの量を投与する。本発明者の決定に従って、必要がある場合には、投与を繰り返す。例えば、初期化のための投与に引き続いて、1週間毎に3回の増強のための投与を行うことができる。あるいは増強のための注射を、最初の免疫接種後8〜12週目に、そして2回目の増強を16〜20週目に、同一の調合剤を用いて行うことができる。
[抗体の用途及び医薬組成物]
緑膿菌に関連する疾患
緑膿菌は宿主の抵抗力の低下につれて致命的な結果となる日和見感染の病原菌であり、また、抗生物質に抵抗性であるため、院内感染の主要な原因菌でもある。後記実施例により示されるように、ムチン投与によりマクロファージの機能を低下させたマウス緑膿菌易感染性モデルにおいて、本発明の抗体が、実際に感染防御効果を有すること(実施例11)、また、Cyclophosphamide monohydrate投与により好中球を減少させたマウス緑膿菌易感染性モデルにおいて、本発明による抗体が実際に感染防御効果を有することが確認された(実施例12)。また、本発明による抗体が感染防御効果を有する理由の一つとして、緑膿菌による細胞障害性を抑制することが挙げられる(実施例10)。従って、本発明による抗体は、緑膿菌に関連する疾患の予防または治療に有用である。
緑膿菌に関連する疾患としては、多剤耐性緑膿菌を含む緑膿菌感染に起因する全身感染疾患、例えば、敗血症、髄膜炎、心内膜炎等が挙げられる。耳鼻科領域では、中耳炎、副鼻腔炎、呼吸器科領域では、肺炎、慢性気道感染症、カテーテル感染症、外科領域では、術後腹膜炎、術後胆道などの炎術後感染症、眼科領域では、眼瞼膿瘍、涙膿炎、結膜炎、角膜潰瘍、角膜膿瘍、全眼球炎、眼窩感染、泌尿器科領域では、複雑性尿路感染症を含む尿路感染症、カテーテル感染症、肛門周辺膿瘍等が挙げられる。この他にも、重症熱傷、気道熱傷を含む熱傷や褥瘡感染症、嚢胞性繊維症等が挙げられる。
本発明によれば、予防上または治療上の有効量の本発明による抗体を、ヒトを含む哺乳類に投与する工程を含んでなる、緑膿菌に関連する疾患の予防方法または治療方法が提供される。
緑膿菌感染症診断剤
後記の実施例において示されるように、本発明による抗体は緑膿菌と結合することが確認された(実施例8)。これらの結果から、本発明による抗体は、緑膿菌の存在を検出することができることが示唆された。したがって、本発明による抗体は、緑膿菌感染症診断剤として用いることができる。
また、本発明によれば、本発明による抗体を用いる緑膿菌感染の診断方法が提供される。
本発明による診断方法は、緑膿菌感染のおそれのあるヒトを含む哺乳動物から喀痰、肺洗浄液、膿、涙、血液、尿等の生体試料を採取し、次いで、採取した試料と本発明による抗体とを接触させ、抗原抗体反応が生じたか否かを判断することにより実施することができる。
緑膿菌感染症診断薬キット
本発明によれば、緑膿菌の存在を検出するためのキットであって、本発明による抗体を少なくとも含んでなるキットが提供される。本発明による検出キットに含まれる抗体は、標識したものであってもよい。この検出キットは、抗原抗体反応を利用して、緑膿菌の存在を検出することができる。
本発明による検出キットは、所望により、抗原抗体反応を実施するための種々の試薬、例えばELISA法等に用いる2次抗体、発色試薬、緩衝液、説明書、および/または器具などを更に含むことができる。
医薬組成物
本発明による医薬組成物または用剤は、本発明による抗体を有効成分として用い、好ましくは、精製した抗体組成物と任意の成分、例えば生理食塩水、葡萄糖水溶液又は燐酸塩緩衝液などを含有する組成物の形態で使用しても良い。
本発明による医薬組成物は必要に応じて液体又は凍結乾燥した形態で製形化しても良く、任意に薬学的に許容される担体、例えば、安定化剤、防腐剤、等張化剤(isotonic agent)などを含有させることもできる。
薬学的に許容される担体としては、凍結乾燥した製剤の場合、マンニトール、ラクトース、サッカロース、ヒトアルブミンなどを例として挙げることができ、液状製剤の場合には、生理食塩水、注射用水、燐酸塩緩衝液、水酸化アルミニウムなどを例として挙げることができる。しかし、これらに限定されるものではない。
投与は、投与対象の年齢、体重、性別、一般的な健康状態により異なるが、経口投与、非経口投与(例えば、静脈投与、動脈投与、局所投与)のいずれかの投与経路で投与することができるが、好ましくは非経口投与である。
医薬組成物の投与量は、患者の年齢、体重、性別、一般的な健康状態、緑膿菌感染症の程度及び投与する抗体組成物の成分により多様である。本発明による抗体組成物は、一般的に静脈内投与の場合、成人には体重1kg当たり1日0.1ないし1000mg、好ましくは1ないし100mgを投与する。
本発明による医薬組成物は、緑膿菌による感染のおそれがある患者に対してあらかじめ投与しておくことが好ましい。
診断剤として調剤するには、合目的な任意の手段を採用して任意の剤型でこれを得ることができる。たとえば腹水、目的抗体を含む培養液、または精製した抗体についてその抗体価を測定し、適当にPBS(生理食塩を含むリン酸緩衝液)等で希釈した後、0.1%ナトリウムアジド等を防腐剤として加える。またはラテックス等に本発明の抗体を吸着させたものも抗体価を求め適当に希釈し、防腐剤を添加して用いる。前記のように本発明の抗体をラテックス粒子に結合させたものは、診断剤として好ましい剤型の一つである。この場合のラテックスとしては適当な樹脂材料たとえばポリスチレン、ポリビニールトルエン、ポリブタジエン等のラテックスが適当である。
以下、本発明の理解を深めるために実施例に沿って説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1:GeneChipR解析>
ヒト血清添加培地で発現している遺伝子を探索する手法として、GeneChipR発現解析システム(Affymetrix社製GeneChipRP. aeruginosaゲノムアレイ)を用いた。緑膿菌PAO1菌株を用いて、2通りの培養条件、すなわち0%、50%ヒト血清添加Luria-Bertani(LB)培地(ナカライテスク社製)(最終のLB培地組成は均一)で37℃にて595nmの吸光度が1.0になるまで振とう培養し、RNeasy Protect Bacteria Miniキット(QIAGEN GmbH社製)を用い、添付文書の方法に従って、全RNAを抽出し、2100バイオアナライザー(Agilent Technologies社製)により定量を行った。その後、GeneChipRの添付文書の方法に従って実験を行った。遺伝子発現データの解析はMicroarray Suite 5.0(Affymetrix社製)により行い、シグナルならびにディテクションを計算した。このとき、全プローブセットのシグナルの平均値が1000となるように補正を行った。実験は独立に2回実施した。
その結果、ハウスキーピングタンパク質であるPA4761(DnaKあるいはHSP70)は、いずれの培養条件でも血清添加の有無に関わらず、転写産物が検出されたことを示す「Present」と判定され、当該遺伝子が発現していることが示された。また、PA5158(OpmG)ならびにPA2019(MexX)と会合し薬剤排出ポンプを構成する内膜貫通タンパク質でテトラサイクリンやアミノグシコシド系抗生物質などリボソーム阻害剤によって誘導されるPA2018(MexY)(J. Bacteriology, 2005, 187, 5341-5346)は、それらの薬剤が存在しない今回の条件下では「Absent」と判定され、遺伝子が発現していないことが示された。一方、PA1698遺伝子に関しては、いずれの条件下においても血清添加の有無に関わらず「Present」と判定された。
以上のことから、間違いなくPA1698遺伝子が発現し、その遺伝子産物であるPA1698タンパク質が定常的に存在している可能性が示唆された。
<実施例2:臨床分離株におけるPA1698遺伝子の解析>
使用菌株は、全国の臨床施設において各種臨床材料より分離された緑膿菌93株(明治製菓株式会社 横浜研究所に保管)を試験に供した。これらの株は血液、尿、喀痰、膿、咽頭粘液などに由来しており、血清型は緑膿菌研究会主催の型別検討委員会の決定(1975年)による血清学的分類に基づくA群、B群、E群、G群、I群、M群などが含まれている。
(1) ゲノムDNAの調製
臨床分離の緑膿菌93株について、ミューラーヒントン培地(ベクトン・ディッキンソン社製)で37℃にて一晩培養し、低速遠心によって集菌した。得られた菌体からDNeasy Tissueキット(QIAGEN GmbH社製)を用い、添付文書の方法に従って、ゲノムDNAを調製した。
(2) PCR法によるDNA断片の増幅
調製したゲノムDNAを鋳型に、PA1698遺伝子を含む領域をPCRにより増幅した。具体的には、緑膿菌PAO1菌株のゲノム配列(NCBIのデータベースにおけるアクセッション番号:NC_002516)をもとに、PA1698遺伝子を特異的に増幅するプライマーセット(配列番号:3、配列番号:4)を設計し、Takara ExTaq(タカラバイオ株式会社製)で添付の説明書に従い、GeneAmp PCR System 9700(Applied BioSystems社製)を用いてPCRを実施した。PCRにて増幅されたDNA断片は、アガロースゲル電気泳動により、目的のサイズ(1128塩基対)であることを確認した。
(3) DNAシーケンサーによるポリヌクレオチド配列の解析
PCR産物は、MultiScreen PCRプレート(Millipore Corporation社製)にて精製後、シーケンス反応に供した。PAO1株のゲノム配列(NC_002516)をもとに、各PCR産物をシーケンシングできるプライマー(配列番号:5〜配列番号:7)を設計し、シーケンス反応にはBigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencingキット(Applied BioSystems社製)を用いた。シーケンス反応は添付の説明書に従い、GeneAmp PCR System 9700(Applied BioSystems社製)で実施した。シーケンス反応産物は、あらかじめ水で膨張させたSephadex G-50 Fine DNA Grade(Amersham Biosciences AB社製)をつめたMultiScreen-HVプレート(Millipore Corporation社製)で精製後、Applied Biosystems 3730 DNA Analyzer(Applied BioSystems社製)を用いてポリヌクレオチド配列の解析を行った。
上記の解析により判明した臨床分離株のポリヌクレオチド配列をポリペプチド配列に置換し、PAO1株のものと比較検討した結果、PA1698タンパク質の全長配列において、15ヶ所に変異が認められた(表1)。
しかしながら、約7割の臨床分離株で完全にアミノ酸配列は保存されており、残る約3割の臨床分離株でも1、2箇所のアミノ酸変異のみがあることを確認し、全ての緑膿菌に対して保存されている領域が存在していた。このことから、緑膿菌のPA1698タンパク質が「緑膿菌共通抗原」として有用であることが示唆された。
Figure 2009081955
<実施例3:PA1698遺伝子DNA断片のクローニング>
緑膿菌PA1698遺伝子(配列番号:1)のアミノ酸コード領域867塩基の全長を含むDNA断片を、以下の方法により、ベクターpIVEX2.4d(Roche Diagnostics社)を用いてクローニングし、発現ベクターpET15b(Novagen社)に組み込んだ。
クローニングするDNA断片を緑膿菌PAO1菌株のゲノムDNAからPCR(DNA Thermal Cycler 480;Perkin-Elmer社製)により増幅した。DNAポリメラーゼはPyrobest(宝酒造社製)を使用し、反応液にジメチルスルホキシドを5%添加し、PCRプライマーは制限酵素部位NotI(GCGGCCGC)およびBamHI(GGATCC)を付加するための塩基を含むプライマー(配列番号:8、配列番号:9)を用いた。
PCRの温度条件は、94℃で2分間の加熱の後、94℃で30秒間、60℃で1分間および72℃で2分間を25サイクルとした。PCR産物をMinElute PCR Purification Kit(Qiagen社製)を用いて精製し、制限酵素NotI(New England Biolabs社製)およびBamHI(東洋紡社製)で切断した。また、pIVEX2.4dをNotIおよびBamHIで切断した。切断により生じたDNA断片をアガロースゲル電気泳動で分離し、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社製)を用いて抽出精製した。NotI-BamHIで切断したPCR産物およびpIVEX2.4dをT4 DNAリガーゼ(Ligation High、東洋紡社製)で連結し、大腸菌DH5α菌株(Competent High DH5α、東洋紡社製)を形質転換した。PA1698遺伝子断片が組み込まれたpIVEX2.4dプラスミド(pIVEX-PA1698-1)を、QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen社製)を用いて精製し、BigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社製)を用いてサイクルシークエンス反応を行い、挿入部分の塩基配列を確認した(3730 DNA Analyzer、Applied Biosystems/HITACHI社製)。
次に、pIVEX-PA1698-1を鋳型として、開始コドン(ATG)の部分に制限酵素部位NdeI(CATATG)を付加するための塩基を含むPCRプライマー(配列番号:10)および挿入部分の下流に位置するT7ターミネーター部分に対合するPCRプライマー(配列番号11)を用いて挿入部分を含む断片を増幅し、制限酵素NdeI(New England Biolabs社製)および終止コドン直後に制限酵素部位があるBamHIで切断した。また、pET15bをNdeIおよびBamHIで切断した。これらの切断DNA断片を分離精製後、連結し、大腸菌を形質転換した。PA1698遺伝子断片が組み込まれたpET15bプラスミド(pET-PA1698-1)を回収し、挿入部分の塩基配列を確認した。
<実施例4:PA1698組換えタンパク質の発現ならびに精製>
組換えタンパク質の発現には、T7 RNAポリメラーゼ遺伝子が組み込まれた大腸菌BL21(DE3)菌株とT7プロモーターを有するpETベクターの発現系(Novagen社製)を使用した。大腸菌発現ベクターpET-PA1698-1は、T7プロモーターの下流にHis-タグ(6個の連続したヒスチジン)が融合したPA1698タンパク質をコードするプラスミドである(実施例3参照)。BL21(DE3)菌株を塩化カルシウムで処理(Molecular Cloning第2版、Sambrook他(1989)参照)し、pET-PA1698-1により形質転換した。形質転換体を50μg/mlアンピシリンを含むLB培地で一晩培養し、新しい培地に200倍希釈で懸濁して37℃で4時間培養後、IPTGを最終濃度0.5mMで添加して発現誘導し、さらに3時間培養した。細胞を遠心で回収し、−20℃で凍結した。細胞をタンパク質抽出試薬B-PER Bacterial Protein Extraction Reagent(Pierce社製)で溶解し、発現タンパク質を含む不溶性画分を回収し、最終濃度100μg/mlのリゾチーム(卵白リゾチーム、生化学工業社製)で処理後、1%Triton X-100を添加したダルベッコリン酸緩衝塩類溶液(PBS)で洗浄した。
タンパク質の精製には、His-タグを利用したNiキレートクロマトグラフィを用いた。発現調製した不溶性タンパク質を、溶解バッファー(8M尿素、5mMイミダゾール、200mM NaClおよび0.05%NP-40を添加したPBS)で可溶化した。溶解したタンパク質をNi-NTA Agarose(Qiagen社製)に結合し、40容量の溶解バッファーで洗浄した。さらに、40容量の洗浄バッファー(NP-40を除いた溶解バッファー)で洗浄した後、溶出バッファー(8M尿素、300mMイミダゾール、200mM NaClを添加したPBS)により、His-タグ付タンパク質を溶出し回収した。その結果、大腸菌230mlの培養から最終的に2.3mgのタンパク質が回収された。
<実施例5:抗原の免疫ならびに抗血清の調製>
緑膿菌はPA103菌株(ATCC29260)をミューラーヒントン寒天培地上にて一晩37℃で培養し、数個のコロニーをLB培地に懸濁後、一晩37℃で振とう培養し、PBSで洗浄、再懸濁した後、1%となるようにホルマリンを加え、24時間以上不活化処理した不活化菌を使用した。
PA1698組換えタンパク質による免疫は、100μg/mlとなるよう8M尿素溶液に溶解して用いた。
免疫方法としては雄性BNラット(日本チャールスリバー社より購入)の皮下あるいは筋肉内に初回のみフロインドの完全アジュバントとともに、2回目以降は不完全アジュバントとともに2週間間隔で、計6回免疫した。ホルマリン不活化菌、PA1698組換えタンパク質はそれぞれ20μg/animalで免疫した。最終免疫の1週間後、腹部大動脈あるいは頚動脈からの全採血を行い、室温1時間放置後、遠心分離(1500G、20分間)を行い、上清を抗血清としてラット1匹あたり約5ml回収した。
<実施例6:抗血清および腹水からのIgG画分の精製>
ラット抗血清および腹水からのIgG画分の精製は、Ha rlow & Lane, 288-318, Chapter 8, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor (1988)らの方法を使用した。ラット抗血清あるいはラット−マウスハイブリドーマをマウス腹腔で増殖させ、得た腹水を10,000xgで20分間遠心し不溶物を除いた上清に、2容量の60mM酢酸ナトリウム(pH4.0)を添加した後、1N塩酸によりpHを4.8に調製した。抗血清あるいは腹水試料に対して0.06容量のカプリル酸を室温にて除々に添加し30分間攪拌し不溶物を生成させた。13,000xgで10分間遠心し沈殿を除いた後、0.45μmのフィルターを通過させた。得られた試料は、Amicon Ultra-15 (Millipore)を用い濃縮後、最終的にPBS(-)溶液に交換し最終標品とした。本方法によりラット抗血清40mlあるいは独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターの受託番号がFERM BP-11055、FERM BP-11056であるハイブリドーマから産生されたラットMAbを含むマウス腹水75mL、35mLより精製を行い、IgG画分として102mg、14mg、3mgのタンパク質を回収した。タンパク定量はLowry法に基づくDC Protein Assay(Bio-Rad社製)、IgGの純度はSDS-PAGEにより評価した。
<実施例7:ELISA試験>
PA1698組換えタンパク質に結合する抗体をELISA法で検出するため、PA1698組換えタンパク質を、8M尿素を添加したPBSに溶解し、96穴ニッケルプレート(HIS-Select High Sensitivity (HS) Nickel Coated Plates、Sigma社製)にウェルあたり0.5μgのタンパク質を入れ、室温でプレートに結合させた。洗浄バッファー(0.05%Tween 20、5mMイミダゾールおよび500mM NaClを添加したPBS)で洗浄し、ブロッキングバッファー(0.5%ゼラチンを添加した洗浄バッファー)でブロッキング後、実施例5あるいは6で得られた抗体を含む試料をウェルに入れ、室温で反応させた。洗浄バッファーで洗浄後、2次抗体(ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ラットIgG抗体、10000倍希釈、Sigma社製)を入れ、反応後に洗浄した。発色基質(TMB Microwell Peroxidase Substrate System、KPL社製)を添加して反応後、1Mリン酸で酵素反応を停止し、450nmの吸光度を測定した。
その結果、PA1698組換えタンパク質免疫ラット抗血清(10,000倍希釈)を試料としたときの吸光度が0.490であったのに対し、陰性対照である免疫前血清(10,000倍希釈)では吸光度が0.061であった。これはPA1698組換えタンパク質免疫ラット抗血清中に、免疫原としたPA1698組換えタンパク質に結合する抗体が含まれていることを示している。
<実施例8:Whole cell ELISA試験>
Whole cell ELISAはLB培地にて終夜培養したPA103菌株の菌液を96ウェルELISAプレート(MaxiSorp Type、NUNC社製)にウェルあたり100μL分注し、4℃、1時間で固相化後、洗浄バッファー(0.05%Tween20含有TBS)で洗浄し、ブロッキングバッファー(2%ウシ血清アルブミン含有TBS)でブロッキング後、1次抗体サンプルとして、PBSで希釈した実施例5および6で得られたPA1698組換えタンパク質免疫ラット抗血清または精製IgG画分を加え、37℃で1時間反応させた。洗浄後、2次抗体(ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ラットIgG抗体、5000倍希釈、Sigma社製)を添加し、室温で1時間反応後に洗浄した。発色基質(TMB Microwell Peroxidase substrate System、KPL社製)を添加して暗所で反応後、1Mリン酸溶液で酵素反応を停止し、450nmの吸光度を測定した。
その結果、PA1698組換えタンパク質免疫ラット抗血清の吸光度が1.058であったのに対し、陰性対照である免疫前血清の吸光度は0.729であった。この結果はPA1698組換えタンパク質免疫ラット抗血清の中に、緑膿菌の細胞表面あるいは培養上清中に存在するPA1698タンパク質を認識する抗体(IgG)が含まれていることを示している。
また、PA1698組換えタンパク質免疫ラット抗血清から得られた精製IgG画分である抗PA1698 IgGについては、陰性対照であるアジュバントのみを投与して得た対照ラット血清より精製したIgG画分(50μg/well)の吸光度が0.147であったのに対し、抗PA1698 IgG(50μg/well)では、0.460であった。これは当該IgG画分中に緑膿菌を認識する抗体(IgG)が含まれていることを示している。
<実施例9:モノクローナル抗体(MAb)の作製>
PA1698組換えタンパク質の実施例5における最終免疫の1週間後、ラットから麻酔下後、無菌的に脾臓を摘出した。得られた脾臓をRPMI-1640培地(Gibco社製)で洗浄した後、スライドグラスに脾臓を挟み、すり潰し微小片として供試脾細胞を得た。得られた脾細胞はRPMI-1640培地で1000rpm、5分間遠心し洗浄した。一方、10%FCS(ウシ胎児血清)を含むRPMI-1640培地で5%CO2、相対湿度100%、37℃で予め培養して対数増殖期にあるミエローマ細胞(P3X63Ag8U1細胞)をRPMI-1640培地で遠心洗浄し、先に述べた脾細胞とミエローマ細胞の比が4:1になるように混合した。混合した細胞を1000rpmで5分間遠心し、上清を捨て細胞を充分にほぐした。この細胞を含む遠心管にポリエチレングリコール(M.W. 1000 和光純薬社製)2g、RPMI-1640培地2mLおよびDMSO(ナカライテスク社製)0.2mLから成る溶液1mLを静かに加え、遠心管をゆっくり回転させ細胞を混合させた。1分後、遠心管をゆっくり回転させながらRPMI-1640培地15mLを3分かけ加えた。1000rpmで5分間遠心後、上清を捨て充分に細胞をほぐした後、脾細胞として1.6×106/mLとなるようHAT培地(Gibco社製)にて調整し、96穴マイクロプレート(住友ベークライト社製)に0.2mLずつ分注した。5%CO2、相対湿度100%、37℃で約1〜2週間培養後、ウェル中に生育しているハイブリドーマが顕微鏡下で観察された。
(1)目的抗体のスクリーニング
PA1698組換えタンパク質に結合する抗体を実施例7に記載したELISA法で検出した。また、緑膿菌に結合する抗体を実施例8に記載したwhole cell ELISA法で検出した。
(2)目的抗体産生細胞のクローニング
スクリーニングの結果、目的抗体を産生していると判定されたハイブリドーマを5個/0.2mLあるいは20個/0.2mLとなるようBM-Condimed H1 Hybridoma Cloning Supplement(Roche Diagnostics社製)を5%含む10%FCS/HT(Gibco社製)培地にて調整し各ウェルに0.2mLずつ分注した。1〜2週間後にクローンの生育が顕微鏡下で観察できた。スクリーニングの項で述べた方法で分析し、目的抗体を産生しているクローンを選択した。再度上記の方法でハイブリドーマを1個/0.2mLあるいは2個/0.2mLとなるようBM-Condimed H1 Hybridoma Cloning Supplementを5%含む10%FCS/HT(Gibco社製)培地にて調整し、96穴マイクロプレートの各ウェルに0.2mLずつ分注した。1〜2週間後にスクリーニングの項で述べた方法で分析し目的の抗体を産生する単クローンを選択し、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターの受託番号がFERM BP-11055、FERM BP-11056であるハイブリドーマを得た。
(3)in vitroにおける細胞の培養およびMAbの産生
96穴マイクロプレートで充分増殖させた目的クローンは48穴プレート、12穴プレート、50mL、250mLフラスコに徐々にスケールアップして10%FCS-RPMI培地で培養した。このようにして得られた細胞の培養上清に産生されているMAbを実施例7に記載したELISA法で検出した。
その結果、PA1698組換えタンパク質を吸着したウェルへの結合を検出するELISAでの吸光度が、陰性対照である10%FCS-RPMI培地では0.056であったのに対し、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターの受託番号がFERM BP-11055であるハイブリドーマの培養上清は、吸光度が0.828であり、受託番号FERM BP-11056であるハイブリドーマの培養上清は、吸光度が0.811であった。以上の結果から、PA1698組換えタンパク質に結合するMAbが産生されていることが明らかとなった。
(4)in vivoにおける細胞の腹水化およびMAbの産生
BALB/c-nu/nuマウス(日本チャールスリバー社より購入)に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターの受託番号がFERM BP-11055、FERM BP-11056であるハイブリドーマを1×107/mouseとなるように腹腔内投与し、1〜2週間後に腹水を採取した。腹水中に含まれるMAbは実施例6に記載した方法で精製し、得られた精製IgG画分をそれぞれ、抗1698-1 IgG(MAb)、抗1698-2 IgG(MAb)と命名した。このラットMAbのIgGのサブクラスは、モノクローナル抗体アイソタイピングキット(RMT1、大日本製薬社製)によって重鎖および軽鎖を判定した結果、重鎖はそれぞれIgG2a、IgG2aであり、軽鎖は全てκと判定された。
実施例6に記載した方法でマウス腹水より精製した上記MAbの緑膿菌表面への結合を、実施例8に記載したwhole cell ELISAにて確認した。
抗1698-1 IgG(MAb)の結果:受託番号がFERM BP-11055であるハイブリドーマを投与したマウス腹水から精製して得たIgG画分である抗1698-1 IgG(MAb)の吸光度が、0.871であったのに対し、陰性対照であるアジュバントのみを投与し得た対照ラット血清より精製したIgG画分(50μg/well)の吸光度は0.084であった。この結果から、当該IgG画分中に緑膿菌を認識する抗体(IgG)が含まれていることが明らかとなった。
抗1698-2 IgG(MAb)の結果:受託番号がFERM BP-11056であるハイブリドーマを投与したマウス腹水から精製して得たIgG画分である抗1698-2 IgG(MAb)の吸光度が、1.415であったのに対し、陰性対照であるアジュバントのみを投与し得た対照ラット血清より精製したIgG画分(50μg/well)の吸光度は0.084であった。この結果から、当該IgG画分中に緑膿菌を認識する抗体(IgG)が含まれていることが明らかとなった。
<実施例10:緑膿菌PA103菌株がヒト気道上皮細胞(Beas2B細胞)に及ぼす細胞障害活性に対するPA1698抗体の防御効果>
Beas2B細胞を96穴培養用プレートに5×104/wellの細胞数になるように分注し、2日間37℃の5%CO2インキュベーター内で培養した。培養後、PBS(-)で2度洗浄し、16%BSA添加(溶解後KOHで中和した)DMEM/F12培地を50μL加えた。そこへPBSで希釈したPA1698組換えタンパク質免疫ラット抗血清から得られた精製IgG画分である抗PA1698 IgGあるいは抗1698-1 IgG(MAb)、抗1698-2 IgG(MAb)と、緑膿菌PA103菌株5×108cfu/mLを25μLずつ加え37℃、5%CO2インキュベーター内で4時間培養した。4時間後、培養上清中のLDH(乳酸脱水素酵素)量を細胞死の指標として測定した。0.2%TritonX100で細胞を可溶化したときのLDH量を100%細胞死量とし、緑膿菌PA103菌株を添加しないときのLDH量を0%細胞死量として計算した。
その結果、PA1698組換えタンパク質免疫ラット抗血清から得られた精製IgG画分である抗PA1698 IgG(2.5mg/mL)添加により16.3%細胞死を抑制した。また、受託番号がFERM BP-11055であるハイブリドーマを投与したマウス腹水から精製して得たIgG画分である抗1698-1 IgG(MAb)(0.625mg/mL)は18.9%細胞死を抑制した。さらに、受託番号がFERM BP-11056であるハイブリドーマを投与したマウス腹水から精製して得たIgG画分である抗1698-2 IgG(MAb)(0.625mg/mL)は22.5%細胞死を抑制した。
<実施例11:正常マウスにおけるPA103菌株全身感染に対するPA1698組換えタンパク質免疫ラット抗血清の感染防御能>
正常マウス全身感染モデルでの評価は、4週齡のCD-1雄性マウス(日本チャールズリバー社より購入)に5%ムチン含有生理食塩水500μlに懸濁したPA103菌株の1.7x105cfu/マウス(34LD50)を腹腔内に接種し、直後に生理食塩水で2.5倍希釈した抗血清サンプルを10ml/kgで尾静脈より投与し、7日後の生死で感染防御活性を判定した。
その結果、陰性対照であるアジュバントのみを投与して得たラットsham血清投与群では、7匹中全てのマウスが死亡したが、実施例5で得られたホルマリン不活化PA103菌株免疫ラット抗血清投与群では全例生存し、感染防御活性が認められた。この条件下、実施例5で得られたPA1698組換えタンパク質免疫ラット抗血清投与群は7匹中5匹生存し、感染防御活性が認められた。
<実施例12:好中球減少マウスにおけるPA103菌株全身感染に対するPA1698組換えタンパク質免疫ラット抗血清の感染防御能>
好中球減少マウス全身感染モデルでの評価は、cyclophosphamide(以下、CYとする。Sigma-Aldrich社製)の12.5mg/mL(生理食塩水)を調製し、4週齡のCD-1雄性マウスに125mg/kgの投与量でday-5、-2、0に合計3回腹腔内投与して末梢血中の好中球を減少させた。その後、生理食塩水250μlに懸濁したPA103菌株の9.5x104cfu/マウス(70LD50)を腹腔内に接種し、直後にサンプルを10mL/kgで尾静脈より投与し、7日後の生死で感染防御活性を判定した。
その結果、陰性対照であるアジュバントのみを投与して得たラットsham血清投与群では、7匹中全てのマウスが死亡したが、実施例5で得られたホルマリン不活化PA103菌株免疫ラット抗血清投与群では7匹中6匹生存し、感染防御活性が認められた。この条件下で、実施例5で得られたPA1698組換えタンパク質免疫ラット抗血清投与群は7匹中4匹生存し、感染防御活性が認められた。
本発明による抗体の標的であるPA1698タンパク質は、血清型等によらず株間での保存性が極めて高いことが見出された。このため、本発明による抗体は、多様な臨床分離株と反応することが可能であり、緑膿菌感染症の予防や治療のための医薬や診断薬として、優れた効果を発揮しうる。また、本発明による抗体は、緑膿菌によるヒト気道上皮細胞への障害を抑制する効果をも有しうるため、びまん性汎細気管支炎(DPB)や嚢胞性線維症(CF)などの慢性気道感染症に対しての効能を持つことが期待できる。本発明のワクチン組成物は、生体内において本発明の抗体を誘導することにより、緑膿菌感染症に対して、優れた予防効果及び治療効果を発揮しうる。本発明による抗体やワクチン組成物は、緑膿菌感染症に対する予防、治療あるいは診断において大きく貢献しうるものである。

Claims (15)

  1. 緑膿菌由来のPA1698タンパク質に結合する抗体またはその機能的断片。
  2. 緑膿菌由来のPA1698タンパク質が、以下の(i)または(ii)に記載のタンパク質である、請求項1に記載の抗体またはその機能的断片。
    (i)配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質。
    (ii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の機能を有するタンパク質。
  3. 緑膿菌表面に結合する、請求項1に記載の抗体またはその機能的断片。
  4. 緑膿菌がヒト気道上皮細胞に及ぼす細胞障害活性を抑制する活性を有する、請求項1に記載の抗体またはその機能的断片。
  5. 緑膿菌が感染している患者において抗菌活性を有する、請求項1に記載の抗体またはその機能的断片。
  6. 好中球が減少している状態における患者の緑膿菌の感染において抗菌活性を有する、請求項5に記載の抗体またはその機能的断片。
  7. FERM BP−11055またはFERM BP−11056の受託番号のもと寄託されたハイブリドーマにより産生される抗体のエピトープに結合する、請求項1に記載の抗体またはその機能的断片。
  8. FERM BP−11055またはFERM BP−11056の受託番号のもと寄託されたハイブリドーマ。
  9. 緑膿菌由来のPA1698タンパク質に対する抗体を産生することができるタンパク質抗原またはペプチド抗原を含んでなる抗原組成物と、場合によっては1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、および/またはアジュバントとを含んでなる、緑膿菌に関連する疾患の予防または治療に用いられるワクチン組成物。
  10. 緑膿菌由来のPA1698タンパク質が、以下の(i)または(ii)に記載のタンパク質である、請求項9に記載のワクチン組成物。
    (i)配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質。
    (ii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の機能を有するタンパク質。
  11. 緑膿菌に関連する疾患が、緑膿菌感染に起因する全身感染疾患である、請求項9に記載のワクチン組成物。
  12. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片と、場合によっては1種以上の薬学的に許容される担体、および/または希釈剤とを含んでなる、緑膿菌に関連する疾患の予防または治療に用いられる医薬組成物。
  13. 緑膿菌に関連する疾患が、緑膿菌感染に起因する全身感染疾患である、請求項12に記載の医薬組成物。
  14. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片を含んでなる、緑膿菌感染症診断剤。
  15. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片を含んでなる、緑膿菌の検出キット。
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