JPH11206387A - 異種免疫グロブリンを作る方法及びそのためのトランスジェニックマウス - Google Patents

異種免疫グロブリンを作る方法及びそのためのトランスジェニックマウス

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JPH11206387A
JPH11206387A JP10126859A JP12685998A JPH11206387A JP H11206387 A JPH11206387 A JP H11206387A JP 10126859 A JP10126859 A JP 10126859A JP 12685998 A JP12685998 A JP 12685998A JP H11206387 A JPH11206387 A JP H11206387A
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human
immunoglobulin
gene
transgene
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JP10126859A
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Nils Romberg
ロンバーグ,ニルス
Robert M Kai
エム. カイ,ロバート
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Genpharm International Inc
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 異種抗体、即ち非ヒト動物の種のゲノム中に
通常は見つからない免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝
子によりコードされる抗体、を産生することができるト
ランスジェニック非ヒト動物の提供。 【解決手段】 異種抗体を産生することができるトラン
スジェニック非ヒト動物、そのようなトランスジェニッ
ク動物を産生するのに使うトランスジェン(trans
gene)、異種抗体を産生することのできる不死化B
細胞、内因性免疫グロブリン遺伝子座を破壊するための
方法およびベクター、合成免疫グロブリン可変遺領域伝
子セグメントレパートリーの作製方法、並びに異種抗体
産生を誘導する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、異種抗体を産生す
ることができるトランスジェニック非ヒト動物、そのよ
うなトランスジェニック動物を産生するのに使うトラン
スジェン(transgene)、異種抗体を産生することのでき
る不死化B細胞、内因性免疫グロブリン遺伝子座を破壊
するための方法およびベクター、合成免疫グロブリン可
変領域遺伝子セグメントレパートリーの作製方法、並び
に異種抗体産生を誘導する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ヒトにおけるモノクローナル抗体の生体
内適用の開発に直面する主な障害の1つは、非ヒト免疫
グロブリンの本質的免疫原性である。患者は齧歯類免疫
グロブリン配列に対して抗体を産生することにより齧歯
類モノクローナル抗体の治療用量に応答する。それらの
ヒト抗マウス抗体 (HAMA) は治療抗体を中和し、急性毒
性を引き起こし得る。HAMA応答は免疫不全患者ではあま
り過激でない。従って、本質的免疫原性は、患者の免疫
応答の一次的弱化を必要とする移植拒絶反応の治療への
齧歯類モノクローナル抗体の使用を妨害している。齧歯
類抗体は、免疫不全症を含む或る種のリンパ腫を治療す
るためにも有用なことがある。しかしながら、免疫不全
患者でさえも、安全性や効能の低下を引き起こすHAMA応
答を開始し得る。
【0003】モノクローナル抗体を作製するための現在
の技術は、動物(通常はラットまたはマウス)を抗原に
予備暴露するか、または抗原で感作せしめることを伴
う。この予備暴露は、抗原に対して高親和性を有する免
疫グロブリン分子を分泌する脾性B細胞の形成をもたら
す。感作動物の脾細胞を次いでミエローマ細胞と融合せ
しめ、不死の抗体分泌性ハイブリドーマ細胞を形成せし
める。個々のハイブリドーマクローンをスクリーニング
して、特定抗原に対して向けられた免疫グロブリンを産
生する細胞を同定する。
【0004】個々の抗体遺伝子の遺伝子工学は既に提案
されている。2つの遺伝子工学アプローチが報告されて
いる:キメラ抗体および相補性決定領域(CDR)移
植。最も単純なアプローチであるキメラ抗体は、抗体分
子の可変部分と定常部分が別々のエクソン上にコードさ
れるという事実を利用する。再配列されたマウス抗体遺
伝子の可変領域エクソンをヒト定常領域エクソンと単純
に融合せしめることにより、ハイブリッド抗体遺伝子を
得ることができる〔Morrison, S.L.ら(1984),Proc. Nat
l. Acad. Sci. USA, 81, 6851-6855〕。このアプローチ
の主な問題点は、高度に免疫原性のマウスFc領域は排除
されるけれども、残りのマウスFab 配列がまだ免疫原性
であることである〔Bruggemannら(1989), J. Exp. Me
d., 170,2153-2157〕。CDR移植アプローチは、コン
ピューターモデルを使って完全に人工的な抗体を作製す
る。該抗体の中の唯一のマウス配列は抗原結合に関与す
るものである〔Riechmann, L. ら(1988), Nature, 332,
323-327 〕。それらの各アプローチは、着目の抗原に対
して向けられた齧歯類モノクローナル抗体の事前の特徴
付けを必要とし、両者とも操作された抗体を高レベルで
産生するトランスフェクトされた安定な細胞系の作製を
必要とする。
【0005】ヒト抗体の産生のための別のアプローチ
は、免疫グロブリンcDNA配列を含む細菌発現ライブラリ
ーの作製を伴う提案である〔Orlandiら(1989), Proc. N
atl. Acad. Sci. USA, 86, 3833-3837 およびHuseら(19
89), Science, 246, 1275-1281〕。この技術は、報告に
よれば、マウスcDNA配列由来の抗体断片を作製するため
にのみ使われている。
【0006】多数の実験は、Ig遺伝子再配列に必要な特
定のDNA配列を決定するためのトランスフェクトされた
細胞系の使用を報告している〔Lewis およびGellert (1
989), Cell, 59, 585-588 〕。そのような報告は推定上
の配列を同定し、そして再配列に使う組換え酵素へのそ
れらの配列の近づきやすさ(accesibility)が転写により
変更されると結論づけている〔Yancopoulos およびAlt
(1985), Cell, 40,271-281 〕。V(D)J結合のため
の配列は、報告によれば、高度に保存されたほぼ回文式
のヘプタマーと、12または23 bp のいずれかのスペーサ
ーにより隔てられたあまり保存されていない高ATナノ
マーである〔Tonegawa(1983), Nature,302, 575-581 ;
Hesseら(1989), Genes in Dev., 3, 1053-1061 〕。効
率的組換えは、伝えられるところによれば、異なる長さ
のスペーサー領域を有する組換えシグナル配列を含む部
位の間でのみ起こる。
【0007】種々の形態の免疫グロブリン遺伝子を含む
トランスジェニックマウスの製造も報告されている。再
配列されたマウス免疫グロブリン重鎖または軽鎖遺伝子
がトランスジェニックマウスの作製に使われている。そ
のようなトランスジェンは、報告によれば、内因性Ig遺
伝子の再配列を除去することができる。例えばWeaverら
(1985),Cell, 42, 117-127 ; Iglesiasら(1987), Natur
e, 330, 482-484 ;Storb ら(1985), Banbury Reports,
20, 197-207 ; Neuberger ら(1989), Nature,338, 350-
352; Hagman ら(1989), J. Exp.Med.,169, 1911-1929
; 並びにStorbら(1989), Immunoglobulin Genes,Acade
mic Press, T. Honjo, F.W. AltおよびT.H. Rabbitts
編 ,303-326 頁を参照のこと。加えて、μまたはγ1定
常領域を含む機能的に再配列されたヒトIg遺伝子がトラ
ンスジェニックマウス中で発現されている。Yamamuraら
(1986), Proc. Natl. Acad. Sci. USA,83, 2152-2156 ;
Nussenzweig ら(1987), Science, 236, 816-819を参照
のこと。μ再配列重鎖遺伝子の場合、内因性免疫グロブ
リン遺伝子座の対立遺伝子排除が報告されている。しか
しながら、対立遺伝子排除は、全てのトランスジェニッ
クB細胞において常に起こるものではない。例えば Rat
h ら(1989), J.Immunol., 143, 2074-2080(再配列され
たμ遺伝子構造物) ;Manzら(1988), J. Exp.Med., 16
8, 1363-1381(経膜エクソンを欠 くμトランスジェン
は内因性遺伝子の再配列を防止しなかった);Ritchie
ら(1984), Nature, 312, 517-520 ; Storb ら(1986),
J.Immunol. Rev., 89, 85-102 (安定な重鎖/軽鎖複
合体を形成することのできる再配列されたκトランスジ
ェンを発現するトランスジェニックマウスは、B細胞中
で内因性κ遺伝子のみを再配列し、内因性重鎖遺伝子を
正しく再配列することができない) ;およびManzら(198
8), J. Exp. Med., 168, 1363-1381(重鎖と結合できな
い軽鎖をコードするκ遺伝子を含むトランスジェニック
マウスは、低レベルの対立遺伝子排除のみを示す)を参
照のこと。Nussenzweig ら(1988) Nature, 336, 446-4
50 ; Durdik ら(1989), Proc. Natl.Acad. Sci. USA, 8
6, 2346-2350 ; およびShimizu ら(1989), Proc.Natl.
Acad. Sci. USA, 86, 8020-8023も参照のこと。
【0008】高度免疫化トランスジェニックマウス中で
の15 kb マウスκ遺伝子構成物〔O′Brien ら(1987), N
ature, 326, 405-409 ; Storb (1989), Immunoglobulin
Genes, Academic Press, T. Honjo, F.W.Alt およびT.
H Rabbitts 編, 303-326 頁〕およびμ重鎖トランスジ
ェンの可変部分〔Durdikら(1989), Proc. Natl.Acad.Sc
i. USA,86, 2346-2350 〕における体細胞突然異変も報
告されている。
【0009】Ig遺伝子再配列は、組織培養細胞において
研究されているが、トランスジェニックマウスでは詳し
く研究されていない。マウス中に導入された再配列試験
構成物を記載している少数の報告が発表されているに過
ぎない〔Buchini ら(1987),Nature, 326, 409-411(再
配列されていないニワトリλトランスジェン); Goodha
rtら(1987),Proc. Natl.Acad. Sci. USA, 84, 4229-423
3 (再配列されていないウサギκ遺伝子);および Brug
gemann ら(1989), Proc. Natl.Acad. Sci. USA, 86,670
9-6713(ハイブリットマウス−ヒト重鎖)〕。しかしなが
ら、そのような実験の結果は変動的であり、場合によっ
て、トランスジェンの不完全なまたは最小の再配列を生
じることがある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上記に基づくと、ヒト
以外の種から誘導された異種モノクローナル抗体、例え
ばヒト起源の抗体に対する要求が存在することは明らか
である。よって、モノクローナル抗体がそれらのために
設計される特定の種において療法的に利用することがで
きるモノクローナル抗体の源を提供することが本発明の
目的である。
【0011】上記目的に従って、異種抗体、例えばヒト
抗体、を産生することができるトランスジェニック非ヒ
ト動物が提供される。
【0012】更に、異種抗体を発現することができるそ
のようなトランスジェニック動物からのB細胞であっ
て、特定抗原に特異的なモノクローナル抗体の源を提供
するために不死化されている前記B細胞を提供すること
が本発明の目的である。
【0013】この上記目的に従って、そのような異種モ
ノクローナル抗体を産生することができるハイブリドー
マ細胞を提供することが本発明の更なる目的である。
【0014】更にまた、上就の非ヒトトランスジェニッ
ク動物の製造に有用な再配列されていないおよび再配列
された異種免疫グロブリン重鎖および軽鎖トランスジェ
ンを提供することが本発明の目的である。
【0015】更にまた、トランスジェニック動物中の内
因性免疫グロブリン遺伝子鎖を破壊する方法を提供する
ことが本発明の目的である。
【0016】更にまた、上就のトランスジェニック非ヒ
ト動物において異種抗体産生を誘導する方法を提供する
ことが本発明の目的である。
【0017】本発明の更なる目的は、本発明の1または
複数のトランスジェンを作製するために使われる免疫グ
ロブリン可変領域遺伝子セグメントレパートリーを作製
する方法を提供することである。
【0018】上記の参考文献は、単に本出願の出願日よ
り前のそれらの開示のために提供される。本発明者らが
先行発明によってそのような開示より早い日付の権利が
ないと認めることと解釈してはならない。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記目的に従って、本発
明の一観点では、トランジェニック動物の生殖細胞系
(ジャームライン)中に再配列された、再配列されてい
ない、または再配列されたものと再配列されていないも
のとの組み合わせの、異種免疫グロブリン重鎖および軽
鎖トランスジェンを含有する、トランスジェニック非ヒ
ト動物が提供される。
【0020】異種重鎖および/または軽鎖の再配列され
ていない免疫グロブリントランスジェンは、宿主非ヒト
動物に導入されると、重鎖および軽鎖異種免疫グロブリ
ン遺伝子を含有するトランスジェニック非ヒト動物、す
なわち一方もしくは他方のトランスジェンを含有する中
間動物を生ぜしめる。そのような中間動物の生殖細胞中
に組み込まれると、重鎖トランスジェンを含むものと軽
鎖トランスジェンを含むものとの間での異種交配が、重
鎖と軽鎖の両方の異種免疫グロブリントランスジェンを
含有するトランスジェニック非ヒト動物をもたらす。
【0021】本発明のトランスジェンは、少なくとも1
つの可変遺伝子セグメント、1つの連結遺伝子セグメン
トおよび1つの定常領域遺伝子セグメントをコードする
DNAを含んで成る重鎖トランスジェンを包含する。免疫
グロブリン軽鎖トランスジェンは、少なくとも1つの可
変遺伝子セグメント、1つの連結遺伝子セグメントおよ
び1つの定常領域遺伝子セグメントをコードするDNAを
含んで成る。軽鎖および重鎖遺伝子セグメントをコード
する遺伝子セグメントは、それらがトランスジェニック
非ヒト動物にとって異種である。トランスジェニック非
ヒト動物から成らない種からの免疫グロブリン重鎖およ
び軽鎖遺伝子セグメントをコードするDNAに由来する又
は対応するという点で本発明の一観点によれば、個々の
遺伝子セグメントが再配列されておらず、即ち機能的な
免疫グロブリン軽鎖または重鎖をコードするようには再
配列されていないようなトランスジェンが作製される。
そのような再配列されていないトランスジェンは、抗原
に暴露すると、トランスジェニック非ヒト動物において
該遺伝子セグメントの組換え(機能的再配列)および生
成した再配列された免疫グロブリン重鎖および/または
軽鎖の体細胞突然異変を可能にする。
【0022】本発明の別の観点によれば、異種重鎖およ
び軽鎖免疫グロブリントランスジェンは、再配列された
異種DNAの比較的大きい断片を含んで成る。そのような
断片は、典型的には異種免疫グロブリン遺伝子座からの
C,J(および重鎖の場合にはD)セグメントの実質的
部分を含む。加えて、そのような断片は可変遺伝子セグ
メントの実質的部分も含んで成る。
【0023】別の態様では、HP LaserJet Series IIHPL
ASEII,PR Segments である。そのようなトランスジェン
構成物では、様々な調節配列、例えばプロモーター、エ
ンハンサー、クラススイッチ領域、組換えシグナル等
は、異種DNAから誘導された対応配列を含んで成る。あ
るいは、そのような調節配列を、本発明に使われる非ヒ
ト動物と同一のまたは関連の種からのトランスジェン中
に組み込むことができる。例えば、トランスジェニック
マウスに使うために、齧歯類免疫グロブリンエンハンサ
ー配列を有するトランスジェン中にヒト免疫グロブリン
遺伝子セグメントを組み合わせることができる。
【0024】本発明の方法では、生殖細胞系列の再配列
されていない軽鎖および重鎖免疫グロブリントランスジ
ェン−即ちB細胞分化中にVDJ結合を受けるもの−を
抗原と接触せしめ、二次レパートリーB細胞における異
種抗体の産生を誘導する。そのような誘導は、一次レパ
ートリーB細胞中に含まれる再配列された重鎖および/
または軽鎖トランスジェンにおいて体細胞突然異変を引
き起こし、該抗原に対して高い親和性および特異性を有
する異種抗体を産生する。
【0025】そのような抗体産生B細胞は、ウイルスを
用いて、または DNA構成物を含む癌遺伝子を用いて形質
転換せしめることにより、あるいは、ミエローマ細胞系
と融合させて抗体を分泌するハイブリドーマを形成せし
めることにより、不死化することができる。各場合、特
定抗原に対して十分な親和性および特異性を有するクロ
ーンを選択し、該トランスジェンの免疫グロブリン遺伝
子セグメントが由来する種において低い免疫原性を有す
るモノクローナル抗体源を提供する。
【0026】本発明に使われる非ヒト動物中の内因性免
疫グロブリン遺伝子座を破壊するベクターおよび方法も
本発明に包含される。そのようなベクターおよび方法
は、トランスジェン、好ましくはポジティブ−ネガティ
ブ(positive-negative)選別ベクターを使用し、該ベク
ターは、それが本発明において使用する非ヒト動物にと
って内因性である重鎖および/または軽鎖免疫グロブリ
ンをコードする遺伝子セグメントのクラスの機能的破壊
を標的するように構成される。そのような内因性遺伝子
セグメントとしては、多様性領域、連結領域および定常
領域遺伝子セグメントが挙げられる。本発明のこの観点
によれば、ポリティブ−ネガティブ選別ベクターを少な
くとも1つの非ヒト動物の胚性幹細胞と接触させた後、
ポリティブ−ネガティブ選別ベクターが相同組換えによ
って非ヒト動物のゲノム中に組み込まれている細胞を選
択する。移植後、得られたトランスジェニック非ヒト動
物は、該ベクターの相同組み込みの結果として、免疫ゲ
ロブリン媒介の免疫応答を開始することが実質的に不可
能である。そのような免疫不全非ヒト動物は、その後、
免疫不全症の研究に使うことができ、または異種免疫グ
ロブリン重鎖および軽鎖トランスジェンの受容体として
使うことができる。
【0027】本発明はまた、本発明のトランスジェンに
使うことができる合成可変領域遺伝子セグメントを作製
する方法も包含する。該方法は、免疫グロブリンVセグ
メントDNAの集団を作製することを含んで成り、ここで
各々のVセグメントDNAは免疫グロブリンVセグメント
をコードしそして各末端に制限エンドヌクレアーゼの開
裂認識部位を含む。その後、免疫グロブリンVセグメン
トDNAの集団を鎖状に連結して合成免疫グロブリンVセ
グメントレパートリーを形成せしめる。
【0028】本発明の別の観点は、トランスジェニック
動物の生殖細胞中、に機能的に再配列された異種重鎖お
よび軽鎖免疫グロブリントランスジェンを含有するトラ
ンスジェニック非ヒト動物に関する。そのような動物
は、上述の再配列された重鎖および軽鎖トランスジェン
を発現する一次レパートリーB細胞を含有する。そのよ
うなB細胞は、抗原と接触すると体細胞突然変異を受け
て、該抗原に対して高い親和性および特異性を有する異
種抗体を形成することができる。
【0029】本発明はまた、重鎖および軽鎖トランスジ
ェンを有する生殖細胞を含有するトランスジェニック動
物であって、前記トランスジェンの一方が再配列された
遺伝子セグメントを含み、他方が再配列されていない遺
伝子セグメントを含む、トランスジェニック動物にも関
する。
【0030】本発明は、再配列された重鎖および軽鎖異
種免疫グロブリントランスジェンを有する一次レパート
リーB細胞を含有するトランスジェニック動物中で異種
抗体を産生せしめる方法にも関する。そのようなトラン
スジェニック動物は、上述したトランスジェニック動物
のいずれかから得ることができる。該動物の生殖細胞中
に再配列されない重鎖および軽鎖トランスジェンを含む
トランスジェニック動物、再配列された重鎖および軽鎖
トランスジェンを含有するトランスジェニック動物、ま
たは1つが再配列されたトランスジェンそしてもう1つ
が再配列されていないトランスジェンを含有する動物
は、各々、再配列された異種重鎖および軽鎖免疫グロブ
リントランスジェンを有する一次レパートリーB細胞を
含有する。本発明の方法では、第一抗原を結合すること
ができる所望の異種第一抗体が産生される。そのような
動物の一次レパートリーB細胞中の再配列された免疫グ
ロブリン重鎖および軽鎖トランスジェンは、再二の既知
抗原に対して十分な親和性を有する一次レパートリー抗
体を産生することが知られている。この方法では、トラ
ンスジェニック非ヒト動物を連続的にまたは同時に第一
および第二抗原と接触せしめ、再配列されたトランスジ
ェンの体細胞突然変異により第一異種抗体の産生を誘導
する。次いでこうして産生された二次レパートリーB細
胞を上述の如く操作して、第一抗原を結合することがで
きる所望のモノクローナル抗体の産生を不死化する。
【0031】本発明は、複製開始点(ORI)、転写調節領
域(例えばROP、またはpACYC177の転写調節配列、また
は当業界で既知の他の配列)およびクローニング部位を
有する、大型のDNA断片(例えば免疫グロブリンゲノム
断片)のクローニングに有用であるプラスミドにも関す
る。該プラスミドは更に、内因性プラスミド由来プロモ
ーターの下流、例えばアンピシリン耐性遺伝子(amp R
の下流に、転写ターミネーター(例えばtrpRまたは当業
界で既知の他の配列)も含む。転写ターミネーターは、
プロモーターの所で始まる転写がクローニング部位の上
流で終結するようにクローニング部位の上流に置かれ
る。好ましい態様では、クローニング部位は希少な制限
部位により隣接され、該制限部位は、より一般的な制限
部位を作っている6以下のヌクレオチドの代わりに、
7,8またはそれ以上のヌクレオチドから成る部位であ
り、例えばNotI,Sfi I および PacI である。希少な
制限部位としては、天然のDNA配列中では稀に存在す
る、即ち8,000〜10,000ヌクレオチド毎に約1回よりも
低い頻度で存在するヌクレオチド配列を含む部位も挙げ
られる。定義 異種抗体レパートリーにより外来抗原刺激に応答するト
ランスジェニック非ヒト動物のデザインは、トランスジ
ェニック動物の内部に含まれた異種免疫グロブリントラ
ンスジェンがB細胞発達経路を通して正しく機能するこ
とを必要とする。従って、本発明の一観点では、下記の
うちの1つまたは全部をもたらすようにトランスジェン
が作製される:(1)高レベルで且つ細胞型特異的な発現、
(2)機能的な遺伝子再配列、(3)対立遺伝子排除の活性化
およびそれに対する応答、(4)十分な一次レパートリーの
発現、(5)シグナル形質導入、(6)クラススイッチ、(7)体細
胞高度突然変異(hypermutation)、および(8)免疫応答
の間のトランスジェン抗体遺伝子座の優性化。
【0032】下記開示から明らかなように、上記の基準
の全てを満たす必要はない。例えば、トランスジェニッ
ク動物の内因性免疫グロブリン遺伝子座が機能的に破壊
されているそれらの態様では、トランスジェンは対立遺
伝子排除を活性化する必要がない。更に、トランスジェ
ンが機能的に再配列された重鎖および/または軽鎖免疫
グロブリン遺伝子を含んで成る態様では、2番目の基準
である機能的な遺伝子再配列は、少なくとも既に再配列
されているトランスジェンには不要である。分子免疫学
に関する背景については、Fundamental Immunology,
2版 (1989),Paul William E.編, Raven Press,N.Y.
を参照のこと。抗体の構造および産生 抗体としても知られている免疫グロブリンは、全ての哺
乳類の血清および組織液中に存在する糖タンパク質の一
群である。それらは、前駆体Bリンパ球(本明細書中で
「一次レパートリーB細胞」とも称呼される)から発達
する形質細胞(本明細書中で「二次レパートリーB細
胞」とも称呼される)により多量に産生される。そのよ
うな一次レパートリーB細胞は、完全に分化した二次レ
パートリーB細胞によって産生されるものに類似してい
る膜結合型免疫グロブリンを担持している。抗体形成の
誘導には一次レパートリーB細胞と外来抗原との接触が
必要である。
【0033】全ての免疫グロブリンの基本構造は、ジス
ルフィド結合によって一緒に連結された2つの同一の軽
鎖ポリペプチドと2つの同一の重鎖ポリペプチドとから
成る単位に基づく。各軽鎖は、可変軽鎖領域および定常
軽鎖領域として知られる2つの領域を含んで成る。同様
に、免疫グロブリン重鎖は、可変重鎖領域および定常重
鎖領域と呼ばれる2つの領域を含んで成る。重鎖または
軽鎖の定常領域は、重鎖または軽鎖定常領域遺伝子セグ
メントとよばれるゲノム配列によりコードされる。特定
の重鎖遺伝子セグメントの使用が免疫グロブリンのクラ
スを限定する。例えば、ヒトでは、μ定常領域遺伝子セ
グメントが抗体のIgMクラスを限定し、一方でγ,γ2,γ
3,またはγ4 定常領域遺伝子セグメントが抗体のIgG ク
ラス並びにIgGのサブクラスIgG1〜IgG4を限定する。
【0034】重鎖および軽鎖免疫グロブリンの可変領域
は、一緒になって抗体の抗原結合領域を含む。広範囲の
抗原を結合できるようにするために抗体のこの領域に多
様性が必要なため、初期または1次レパートリー可変領
域をコードするDNAは、特定の可変領域遺伝子セグメン
トのファミリーに由来する多数の異なるDNAセグメント
を含んで成る。軽鎖可変領域の場合、そのようなファミ
リーは可変(V)遺伝子セグメントと連結(J)遺伝子
セグメントを含んで成る。よって、軽鎖の初期可変領域
は1つのV遺伝子セグメントと1つのJ遺伝子セグメン
トによってコードされ、各セグメントはその生物のゲノ
ムDNA中に含まれるVおよびJ遺伝子セグメントのファ
ミリーから選ばれる。重鎖可変領域の場合、重鎖の初期
または一次レパートリー可変領域をコードするDNAは、
1つの重鎖V遺伝子セグメント、1つの重鎖多様性
(D)遺伝子セグメントおよび1つのJ遺伝子セグメン
トを含んで成り、各セグメントはゲノムDNA中の適当な
免疫グロブリン遺伝子セグメントのV,DおよびJファ
ミリーから選ばれる。一次レパートリー 重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子をコードするDNA
を作製する方法は、主としてB細胞を発達させることに
存する。種々の免疫グロブリン遺伝子セグメントの結合
化の前に、V,D,Jおよび定常(C)遺伝子セグメント
は、大部分、一次レパートリーB細胞の前駆体中のV,
D,JおよびC遺伝子セグメントのクラスター中で見つ
かる。通常、重鎖または軽鎖の遺伝子セグメントの全て
が単一の染色体上に比較的近くに密接して置かれてい
る。様々な免疫グロブリン遺伝子セグメントの組換え前
のそのようなゲノムDNAは、本明細書中「再配列されて
いない」ゲノムDNAと称呼される。B細胞分化の間に、
V,D,J(または軽鎖遺伝子の場合はVとJのみ)の
適当なファミリーメンバーのいずれか1つの遺伝子セグ
メントが組み換えられて機能的に再配列された重鎖およ
び軽鎖免疫グロブリン遺伝子を形成する。そのような機
能的再配列は、機能的な可変領域をコードするDNAを形
成する可変領域セグメントの再配列である。この遺伝子
セグメント再配列過程は連続的であると思われる。最初
に、重鎖D−J結合点が作られ、次いで重鎖V−DJ結
合点と軽鎖V−J結合点が作られる。軽鎖および/また
は重鎖中の機能的可変領域のこの初期形態をコードする
DNAは、「機能的に再配列されたDNA」または「再配列さ
れたDNA」と呼ばれる。重鎖の場合、そのようなDNA は
「再配列された重鎖DNA」と呼ばれ、そして軽鎖の場
合、そのようなDNA は「再配列された軽鎖DNA」と呼ば
れる。本発明のトランスジェンの機能的再配列を記述す
るためにも同様な用語が使われる。
【0035】機能的な重鎖および軽鎖可変領域を形成す
るための可変領域遺伝子セグメントの組換えは、組換え
応答能のあるV,DおよびJセグメントに隣接する組換
えシグナル配列(RSS) により媒介される。組換えを指令
するのに必要且つ十分なRSSは、二つ組対称のへプタマ
ー、ATに富むノナマー、および12塩基対または23塩基
対のいずれかの中断スペーサー領域を含んで成る。それ
らのシグナルは、D−J(またはV−J)組換えを行い
そして機能的に相互交換可能である異なる遺伝子座およ
び種の間で保存されている。Oettinger ら(1990),Scie
nce, 248,1517- 1523およびその中に引用された参考文
献を参照のこと。配列CACAGTG またはその類似体を含ん
で成るヘプタマーの後に非保存性配列のスペーサー、次
いで配列ACAAAAACCまたはその類似体を有するノナマー
が存在する。それらの配列は、各VおよびD遺伝子セグ
メントのJ側、即ち下流側上に見つかる。生殖細胞型D
およびJ遺伝子セグメントの直前に、再び2つの組換え
シグナル配列があり、すなわち最初にノナマーそして次
に非保存性配列により隔てられて次にヘプタマーがあ
る。VL ,VH またはDセグメントの後ろのヘプタマー
およびノナマー配列は、それらが組み換わるJL,Dまた
はJH セグメントの前方のものと相補的である。ヘプタ
マーとノナマー配列との間のスペーサーは12塩基対の長
さかまたは22〜24塩基対の長さかのいずれかである。
【0036】V, DおよびJセグメントの再配列に加え
て、軽鎖のVセグメントとJセグメントとの間および重
鎖のDセグメントとJセグメントとの間の不定の組換え
によって、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の一次レパー
トリーにおいて更なる多様性が生まれる。そのような様
々な組換えは、そのようなセグメントが結合する正確な
場所の変更(ずれ)によって生成される。軽鎖における
そのようなずれは、曲型的にはV遺伝子セグメントの最
後のコドンの内部およびJセグメントの最初のコドンの
内部に起こる。同様な結合のずれは、重鎖染色体上では
DセグメントとJH セグメントとの間に起こり、10ヌク
レオチドほどの多数に及ぶことがある。更に、Dセグメ
ントとJH セグメントとの間およびVH セグメントとD
セグメントとの間に、ゲノムDNAによりコードされない
幾つかのヌクレオチドが挿入されることがある。それら
のヌクレオチドの付加はN領域多様性として知られてい
る。
【0037】VJおよび/またはVDJ再配列の後、再
配列された可変領域遺伝子セグメントおよび再配列され
た可変領域の下流に置かれた1または複数の定常領域遺
伝子セグメントの転写は、一次DNA転写物を生成し、こ
れが適当なRNAスプライシングを受けると、全長の重
鎖または軽鎖免疫グロブリンをコードするmRNAを生じ
る。そのような重鎖および軽鎖は、B細胞の経膜領域中
への免疫グロブリンの挿入および/またはB細胞からの
分泌を行うリーダー配列を含む。このシグナル配列をコ
ードするDNAは、免疫グロブリン重鎖または軽鎖の可変
領域を形成するのに使うVセグメントの第一エクソンの
内部に含まれる。コードされる免疫グロブリン重鎖およ
び軽鎖ポリペプチド(これは互いとの適切な会合によっ
て抗体分子を形成する)を生成するmRNAの翻訳を調節す
るためにmRNA中に適当な調節配列も存在する。
【0038】可変領域遺伝子セグメント中のそのような
再配列およびそのような連結中に起こり得る可変的組換
えの最終結果は、一次抗体レパートリーの生成である。
一般に、この段階まで分化された各B細胞は、単一の一
次レパートリー抗体を産生する。この分化過程の間に、
機能的に再配列されたIg遺伝子内に含まれるもの以外の
遺伝子セグメントの機能的再配列を抑制する細胞現象が
起こる。二倍体B細胞がそのような単一特異性を維持す
る過程は、対立遺伝子排除と呼ばれる。二次レパートリー 一次レパートリーを含んで成る配列の組の中からの免疫
グロブリンを発現するB細胞クローンは、外来抗原に応
答させるのにすぐに利用可能である。単純なVJおよび
VDJ結合により生じる限定された多様性のため、いわ
ゆる一次応答によって産生される抗体は比較的低い親和
性のものである。2つの異なる型のB細胞がこの初期応
答を作成する:一次抗体形成細胞の前駆体および二次レ
パトリーB細胞の前駆体〔Lintonら(1989), Cell, 59,
1049-1059 〕。最初の型のB細胞は或る種の抗原に応答
してIgM 分泌性形質細胞に成熟する。他のB細胞は、T
細胞依存性成熟過程に入ることにより、抗原への初期暴
露に応答する。このT細胞依存性B細胞成熟の最中に、
体細胞突然変異と呼ばれる過程(しばしば高次突然変異
とも呼ばれる)によって第二水準の多様性が作られる。
それらの一次レパートリーB細胞は、それらの表面上の
免疫グロブリン分子を使って外来抗原を結合し細胞内に
取り込む。外来抗原がタンパク質であるかまたは別のタ
ンパク質抗原に物理的に結合されるならば、そのタンパ
ク質抗原は処理されそして主要組織適合性複合体(MH
C)分子により細胞表面でヘルパーT細胞に提示され、
後者が次いでB細胞の成熟を誘導する。Lanzavecchia
(1985), Nature, 314,537 。このB細胞の完全成熟は
二次応答として知られている。
【0039】抗原により感作されたB細胞クローンのT
細胞依存性成熟の間に、細胞表面上の抗体分子の構造が
2つの経路で変化する。第一は、定常領域が非IgM サブ
タイプにスイッチし、そして可変領域の配列が多数の単
一アミノ酸置換により変更されて一層高い親和性の抗体
分子を生成する。一層高い親和性のクローンを選択した
後、Ig媒介免疫応答によって特徴付けられる非常に特異
的に且つ強固に結合する免疫グロブリンを生産するの
は、この体細胞突然変異の過程である。 前に指摘した
ように、Ig重鎖または軽鎖の各可変領域は、抗原結合領
域を含む。二次応答の間の体細胞突然変異は、アミノ酸
および核酸配列決定により、3つの相補性決定領域(CD
R1, CDR2およびCDR3 ; これは超可変領域1,2または3
とも呼ばれる)を含むV領域の至るところで起こること
が決定されている。CDR1とCDR2は可変遺伝子セグメント
内部に位置し、一方CDR3は大部分がV遺伝子セグメント
とJ遺伝子セグメントの間またはV,DおよびJ遺伝子
セグメントの間の組換えの結果である。CDR1, 2 または
3 を構成しない可変領域の部分は、一般に、FR1, FR2,
FR3 およびFR4 と名付けられたフレームワーク領域と呼
ばれる。図1を参照のこと。高度突然変異の間に、再配
列されたDNAが変異されて異なるIg分子を有する新しい
クローンを生じる。外来抗原に対して一層高い親和性を
有するそれらのクローンがヘルパーT細胞によって選択
的に増大されて、発現抗体の親和力成熟を引き起こす。
クローン選択は、曲型的にはCDR1, CDR2および/または
CDR3領域中に新規変異を含むクローンの発現をもたら
す。しかしながら、抗原結合領域の特異性および親和性
に影響を及ぼすようなそれらの領域の外側の変異も起こ
る。異種抗体を産生することができるトランスジェニック非
ヒト動物 本発明の1観点では、トランスジェニック非ヒト動物
は、少なくとも1つの本発明の免疫グロブリントランス
ジェン(後述)を非ヒト動物の接合子または初期胚中に
導入することにより製造される。本発明に有用である非
ヒト動物は、一般に、免疫グロブリン遺伝子セグメント
を再配列して一次抗体応答を生ぜしめることができ、そ
してその上、そのような再配列されたIg遺伝子の体細胞
突然変異によって二次応答を開始することができる。任
意の哺乳類を包含する。特に好ましい非ヒト動物はマウ
スまたは齧歯類の他のメンバーである。マウスはそれら
の免疫系(マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子
座のゲノム構成を含む)が広範囲に渡り研究されている
ために特に有用である。例えば Immunoglobulin Genes,
AcademicPress, T. Honjo, F.W. Alt およびT.H. Rabb
itts 編 (1989) を参照のこと。
【0040】しかしながら、本発明はマウスの使用に限
定されない。むしろ、一次および二次抗体応答を開始す
ることができる任意の非ヒト哺乳動物を使うことができ
る。そのような動物としては、非ヒト霊長類例えばチン
パンジー、ウシ、ヒツジおよびブタの種、齧歯科の他の
メンバー、例えばラット、並びにウサギおよびモルモッ
トが挙げられる。特に好ましい動物はマウス、ラット、
ウサギおよびモルモットであり、最も好ましくはマウス
である。
【0041】本明細書中で使用する時、用語「抗体」
は、ジスルフィド結合により一緒に連結された2つの同
一の軽ポリペプチド鎖と2つの同一の重ポリペプチド鎖
を少なくとも含んで成る糖タンパク質を言う。重および
軽ポリペプチド鎖は各々、抗原と相互作用する結合ドメ
インを含む可変領域(通常はポリペプチド鎖のアミノ末
端部分)を含有する。重および軽ポリペプチド鎖は各
々、ポリペプチド鎖の定常領域(通常はカルボキシ末端
部分)も含んで成り、その配列の一部は、免疫系の種々
の細胞、或る種の食細胞および典型的補体系の第一成分
(C1q)を含む宿主組織への免疫グロブリンの結合を媒
介する。
【0042】本明細書中で使用する時、「異種抗体」
は、そのような抗体を産生するトランスジェニック非ヒ
ト生物に関連して定義される。それは、トランスジェニ
ック非ヒト動物から成らない生物において見つかるもの
に対応するアミノ酸配列を有するかまたはDNA配列をコ
ードする抗体である。よって、様々な重鎖または軽鎖遺
伝子セグメントを含むトランスジェンの再配列前に、例
えばハイブリダイゼーションまたはDNA配列決定によ
り、そのような遺伝子セグメントを容易に同定すること
ができる。例えば、本発明の一態様では、ヒトゲノム由
来の様々な遺伝子セグメントが再配列されていない形で
重鎖および軽鎖トランスジェンに使われる。この態様で
は、そのようなトランスジェンがマウスに導入される。
軽鎖および/または重鎖トランスジェンの再配列されて
いない遺伝子セグメントは、マウスゲノム中の内因性免
疫グロブリン遺伝子セグメントと識別可能である、ヒト
種に固有のDNA配列を有する。それらは生殖細胞やB細
胞から成らない体細胞では再配列されていない形態でそ
してB細胞では再配列された形態で容易に検出すること
ができる。
【0043】本発明の別の形態では、トランスジェン
は、再配列された重鎖および/または軽鎖免疫グロブリ
ントランスジェンを含んで成る。そのようなトランスジ
ェンの機能的に再配列されたVDJまたはVJセグメン
トに相当する特定セグメントは、マウス中の内因性免疫
グロブリン遺伝子セグメントから明らかに識別可能であ
る免疫グロブリンDNA配列を含む。
【0044】そういったDNA配列の相違は、マウスB細
胞によりコードされるアミノ酸配列に比較するとそのよ
うなヒト免疫グロブリントランスジェンによりコードさ
れるアミノ酸配列にも反映される。よって、ヒト免疫グ
ロブリン遺伝子セグメントによりコードされる免疫グロ
ブリンエピトープに特異的な抗体を使って、本発明のト
ランスジェニック非ヒト動物において、ヒト免疫グロブ
リンアミノ酸配列を検出することができる。
【0045】ヒトまたは他の種由来の再配列されていな
いトランスジェンを含有するトランスジェニックB細胞
は、適当な遺伝子セグメントを機能的に組換えると、機
能的に再配列された軽鎖および重鎖可変領域を形成す
る。そのような再配列されたトランスジェンのDNAは、
大部分が、前記再配列されたトランスジェンを得た遺伝
子セグメントのDNA配列と正確には一致しないであろう
と理解すべきである。これは主に、可変的組換えの間に
導入される変形のためであり、そして二次応答中の高度
突然変異により導入される突然変異のためである。DNA
配列中(並びにアミノ酸配列中)のそのような変形にも
かかわらず、前記再配列されたトランスジェンによりコ
ードされる抗体は、本発明を実施するのに用いる非ヒト
動物中で通常遭遇するものとは異種であるDNAおよび/
またはアミノ酸配列を有することは容易に明らかであろ
う。
【0046】用語「実質的に同じ」は、ポリペプチドに
対して言及する時、問題のポリペプチドまたはタンパク
質が、天然のタンパク質全部またはその部分と少なくと
も約30%の一致、通常は少なくとも約70%の一致、好ま
しくは少なくとも約95%に一致を示すことを指摘する。
本明細書中で使用する時、用語「単離された」、「実質
的に純粋な」および「実質的に均質な」は、本明細書中
で相互に交換可能に用いられ、そして本来それに付随す
る成分から分離されているポリペプチドタンパク質を言
う。典型的には、単量体タンパク質は、試料の少なくと
も約60〜75%が単一のポリペプチド骨格を示す時に実質
的に純粋である。微量の変形または化学的修飾は典型的
には同じポリペプチド配列を共有する。実質的に純粋な
タンパク質は、典型的にはタンパク質試料の約85〜90%
以上、より普通には約95%を含んで成り、好ましくは約
99%以上の純度であろう。タンパク質純度または均質性
は、当業界で公知である多数の手段により、例えばタン
パク質試料をポリアクリルアミドゲル電気泳動した後、
染色によってポリアクリルアミドゲル上の単一ポリペプ
チドバンドを視覚化することにより、指摘することがで
きる。ある目的では、高分解能が必要であり、HPLCまた
は類似の手段が使われるだろう。ポリペプチドは、天然
状態では該ポリペプチドに付随している生来の汚染物か
ら分離された時、天然に伴う成分を実質的に含まない。
よって、ポリペプチドが天然に由来する細胞とは異なる
細胞系中で合成されたポリペプチドは、それの天然に伴
う成分を実質的に含まないだろう。再配列されていないトランスジェン 本明細書中で使用する時、「再配列されていない免疫グ
ロブリン重鎖トランスジェン」は、少なくとも1つの可
変遺伝子セグメント、1つの多様性遺伝子セグメント、
1つの連結遺伝子セグメントおよび1つの定常領域遺伝
子セグメントをコードするDNAを含んで成る。前記重鎖
トランスジェンの各遺伝子セグメントは、前記トランス
ジェンが導入される非ヒト動物から成らない種の免疫グ
ロブリン重鎖遺伝子セグメントをコードするDNAから誘
導されるか、またはそれに相当する配列を有する。同様
に、本明細書中で使用する時、「再配列されていない免
疫グロブリン軽鎖トランスジェン」は、少なくとも1つ
の可変遺伝子セグメント、1つの連結遺伝子セグメント
および少なくとも1つの定常領域遺伝子セグメントをコ
ードするDNAを含んで成る。ここで、前記軽鎖トランス
ジェンの各遺伝子セグメントは、前記軽鎖トランスジェ
ンが導入される非ヒト動物から成らない種の免疫グロブ
リン軽鎖遺伝子セグメントをコードするDNAから誘導さ
れるか、またはそれに相当する配列を有する。
【0047】本発明のこの観点でのそのような重鎖およ
び軽鎖トランスジェンは、再配列されていない形態で上
述の遺伝子セグメントを含有する。即ち、重鎖トランス
ジェン中のV,DおよびJセグメントの間および軽鎖ト
ランスジェン中のVとJセグメントの間には、適当な組
換えシグナル配列(RSS)が置かれる。加えて、そのよ
うなトランスジェンは、定常領域遺伝子セグメントをV
JまたはVDJ再配列された可変領域と結合するための
適当なRNAスプライシングシグナルも含む。
【0048】重鎖トランスジェンが複数のC領域遺伝子
セグメント、例えばヒトゲノムからのCμおよびCγ1
を含む限りでは、各定常領域遺伝子セグメントの上流で
且つ可変領域遺伝子セグメントの下流に、免疫グロブリ
ンクラススイッチ、例えばIgM からIgG へのクラススイ
ッチを考慮した前記定常領域間の組換えを可能にするた
め、下記に説明するような「スイッチ」領域が組み込ま
れる。そのような重鎖および軽鎖免疫グロブリントラン
スジェンは、可変領域遺伝子セグメントの上流に置かれ
たプロモーター領域を含む転写調節配列(OCTAおよびTA
TAモチーフを含む)も含有する。
【0049】プロモーターに加えて、主にB系列細胞中
で機能する他の調節配列が使われる。例えば、軽鎖トラ
ンスジェン上の好ましくはJセグメントと定常領域遺伝
子セグメントとの間に置かれた軽鎖エンハンサー配列
は、トランスジェンの発現を増強し、それによって対立
遺伝子排除を促進するために使われる。重鎖トランスジ
ェンの場合、調節エンハンサーも使われる。
【0050】上述のプロモーターおよびエンハンサー調
節配列は包括的に記載されているけれども、そのような
調節配列は非ヒト動物に対して異種であることができ、
異種トランスジェン免疫グロブリン遺伝子セグメントが
得られるゲノムDNAから誘導することができる。あるい
は、そのような調節遺伝子セグメントは、重鎖および軽
鎖トランスジェンを含む、非ヒト動物または密接に関連
した種のノゲム中の対応する調節配列から誘導される。
そのような調節配列は、トランスジェンの転写および翻
訳を最大にし、その結果対立遺伝子排除を誘導しそして
比較的高いレベルのトランスジェン発現を提供するため
に用いられる。
【0051】好ましい態様では、重鎖および軽鎖Igトラ
ンスジェン上に含まれる各免疫グロブリン遺伝子セグメ
ントは、該トランスジェンを導入する予定の非ヒト動物
に対して異種である種または個体のゲノムDNA、cDNAも
しくはその部分から誘導されるか、またはそれに対応す
る配列を有する。結果として、そのような遺伝子セグメ
ントがトランスジェニック非ヒト動物において機能的に
再配列されそして高次突然変異された時、そのような重
鎖および軽鎖トランスジェンによりコードされる異種抗
体は、Ig遺伝子セグメントが由来する生物において療法
的に利用すると所望の抗原に対する特異的な効能を提供
する、アミノ酸配列並びに総体的な二次および三次構造
を有するであろう。その上、そのような抗体は、処置さ
れる生物に対して「外来」である抗体に比較して、実質
的に減少された免疫原性を示す。
【0052】例えば、好ましい態様では、遺伝子セグメ
ントはヒトから誘導される。そのような重鎖および軽鎖
トランスジェンを含有するトランスジェニック非ヒト動
物は、そのような動物に投与される特異抗原に対してIg
媒介免疫応答を開始することができる。そのような動物
中では異種ヒト抗体を産生することのできるB細胞が産
生される。不死化後、および適当なモノクローナル抗体
(Mab)、例えばハイブリドーマの選択後、治療用ヒト
モノクローナル抗体の源が提供される。そういったヒト
Mab は、ヒトに療法的に投与した時に実質的に減少され
た免疫原性を有する。
【0053】ヒト免疫グロブリントランスジェンを含む
本発明のトランスジェニック動物において異種抗体を惹
起せしめるのに使うことができる抗原の例としては、細
菌、ウイルスおよび腫瘍抗原、並びに移植拒絶反応また
は自己免疫に関係がある特定のヒトB細胞およびT細胞
抗原が挙げられる。
【0054】好ましい態様はヒト遺伝子セグメントを含
む重鎖および軽鎖トランスジェンの作製を開示するけれ
ども、本発明はそれに限定されない。この点に関して
は、本明細書中に記載される教示は、ヒト以外の種から
の免疫グロブリン遺伝子セグメントの使用に合わせて容
易に改変できると理解すべきである。例えば、本発明の
抗体によるヒトの治療処置に加えて、適当な遺伝子セグ
メントによりコードされる治療抗体を使って、獣医科学
に用いられるモノクローナル抗体を産生することができ
る。例えば、種関連モノクローナル抗体による家畜の処
置も本発明により期待される。そのような抗体は、ウ
シ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ等の種からの免疫
グロブリン遺伝子セグメントを含むトランスジェンを使
うことによって、同様に産生せしめることができる。クラススイッチ μまたはδ定常領域の使用は、大部分は、 IgMおよびIg
D を単一細胞中で同時発現できるようにする、交互スプ
ライシングによって決定される。その他の重鎖イソタイ
プ(γ, αおよびε)は、遺伝子再配列現象がCμおよ
びCδエクソンを欠失させた後でのみ天然に発現され
る。この遺伝子再配列過程はクラススイッチと呼ばれ、
各重鎖遺伝子(δを除く)のすぐ上流に置かれたいわゆ
るスイッチセグメントの間での組換えによって起こる。
個々のスイッチセグメントは長さが2〜10 kb であり、
主として短い反復配列から成る。組換えの正確な位置は
個々のクラススイッチ現象ごとに異なる。
【0055】B細胞の成熟の間にトランスジェンがイソ
タイプをスイッチできることは、トランスジェニックマ
ウス中で直接試験されたことはない。しかしながら、ト
ランスジェンはこの機能を成し遂げるだろう。Durdikら
(1989) Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 86, 2346-2350
は、再配列されたマウスμ重鎖遺伝子構成物をマイクロ
インジェクトすると、4つの独立したマウス系列におい
て、高比率のトランスジェニックB細胞が IgMよりもむ
しろIgG に関係するトランスジェンによりコードされる
可変領域を発現することを見出した。トランスジェンと
別の染色体上の内因性γ定常領域との間でイソタイプス
イッチが起こったらしい。
【0056】本明細書中で使用する時、用語「スイッチ
配列」は、スイッチ組換えを招くそれらのDNA配列を言
う。「スイッチ供与体」配列、曲型的にはμスイッチ領
域は、スイッチ組換え中に欠失されるであろう定常領域
の5′(即ち上流)にあるだろう。「スイッチ受容体」
領域は、欠失されるであろう定常領域と代替定常領域
(例えばγ,ε等)との間であろう。組替えが常に起こ
る特異部位は1つもないので、曲型的には最終遺伝子配
列は構成物から予想不可能であろう。 μ遺伝子のスイ
ッチ(S)領域、Sμは、コード配列の約1〜2kb
5′ 側に位置し、そして(GAGCT)n (GGGGT) の形の配列
の多数縦列反復から成る。ここで n は通常2〜5であ
るが、17ほどの大きさに及ぶことができる。〔T. Nikai
doら (1981) :Nature, 292:845-848 を参照のこと。〕 他のCH 遺伝子の5′にも、数キロ塩基対に及ぶ同様な
内部反復性スイッチ配列が見つかっている。Sα領域は
配列決定されており、縦列に反復した80 bp の相同性単
位から成ることが判明した。一方、Sγ2a,Sγ2b およ
びSγ3は全て、互いに非常に類似している反復した49
bpの相同性単位を含む。〔P. Szurekら(1985), J. Immu
nol,135:620-626 およびT. Nikaidoら(1982), J. Biol.
Chem.257:7322-7329を参照のこと。〕全ての配列決定さ
れたS領域は、Sμ遺伝子の基本的反復配列であるペン
タマーGAGCT およびGGGGT の多数の発生を含む〔 T.Nik
aidoら(1982), J. Biol.Chem. 257:7322-7329〕:他のS
領域では、それらのペンタマーはSμのようには正確に
縦列に反復されていないが代わりに大きな反復単位中に
埋もれている。
【0057】Sγ1領域は追加の高次構造を有し、即ち、
2つの直接反復配列が49 bp の縦列反復の2つのクラス
ターの各々に隣接する〔 M.R.Mowattら (1986), J. Imm
unol., 136: 2674-2683を参照のこと〕。ヒトH鎖遺伝
子のスイッチ領域はそれらのマウス同族体に非常に類似
していることがわかっている。一般に、V−J組換えの
酵素的機構とは異なり、スイッチ機構は、明らかに生殖
細胞S前駆体の反復相同領域の種々の整列を収納するこ
とができ、次いで該配列を該整列内の異なる位置で連結
することができる。〔T.H. Rabbitts ら(1981) Nucleic
Acids Res., 9: 4509-4524および J. Ravetchら(1980)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 6734-6738 を参照
のこと。〕 クラススイッチの誘導は、スイッチセグメントの上流で
始まる不毛転写物(sterile transcript)に関係があるら
しい〔Lutzekerら (1988) Mol. Cell Biol. 8,1849 ; S
tavnezer ら (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85,
7704 ; EsserおよびRadbruch (1989)EMBO J., 8, 483
; Bertonら (1989) Proc. Natl. Acad.Sci. USA,86, 2
829 ; Rothmanら (1990) Int. Immunol., 2, 612 〕。
例えば、観察されるIL-4によるγ1不毛転写物の誘導お
よびIFN-γによる障害は、IL-4がB細胞中でのγ1への
クラススイッチを促進し、IFN-γがγ1発現を阻害する
という観察結果と一致する。従って理想的には、クラス
スイッチを受けさせようとするトランスジェン構成物
は、それらの不毛転写物を調節するのに必要なシス作用
性配列の全てを含むべきである。トランスジェニックマ
ウスにおいてクラススイッチ(σμおよびεμ)を獲得
する別法は、ヒトμ遺伝子に隣接する400 bpの直接反復
配列の包含である〔Yasui ら(1989) Eur. J.Immunol.,
19, 1399〕。それらの2配列間の相同組替えは、IgD の
みのB細胞においてμ遺伝子を削除する。モノクローナル抗体 モノクローナル抗体は当業者に公知である種々の技術に
より得ることができる。簡単に言えば、所望の抗原によ
り免疫処理された動物の脾細胞を、通常はミエローマ細
胞との融合により、不死化せしめる 〔KohlerおよびMil
stein, Eur.J.Immunol., 6:511-519(1976)〕。不死化
の別法としては、エプスタインバーウイルス、癌遺伝子
もしくはレトロウイルスによる形質転換、または当業者
において公知である別の方法が挙げられる。単一の不死
化細胞から生じたコロニーを、抗原に対する所望の特異
性および親和性を有する抗体の産生についてスクリーニ
ングし、そして脊椎動物宿主の腹腔中への注入を含む様
々な技術によって、そのような細胞により産生されるモ
ノクローナル抗体の収量を増大させることができる。そ
れらの技術に有用である様々な方法は、例えば、Harlow
およびLane,Antibodies: A Laboratory Manulal,Cold
Spring Harbor, NewYorK(1988) 中に記載されてお
り、免疫グロブリンを産生するための動物の免疫処置;
モノクローナル抗体の産生;プローブとして使われる免
疫グロブリンの標識;免疫アフィニティー精製;および
イムノアッセイを包含する。トランスジェニック一次レパートリー A. ヒト免疫グロブリン遺伝子座 トランスジェン機能のための重要な必要条件は、広範囲
の抗原に対して二次免疫応答を開始させるのに十分な程
度に多様である一次抗体レパートリーの作製である。種
々の重鎖および軽鎖遺伝子セグメントをコードするヒト
免疫グロブリン遺伝子座のサイズは非常に大きい。例え
ば、ヒトゲノムでは、λ軽鎖遺伝子座、κ軽鎖遺伝子座
および重鎖遺伝子座の3つの別々の遺伝子座は、合わせ
るとDNAの5Mb以上または全ゲノムのほぼ0.2%を占め
る。各遺伝子座は、B細胞発達の間に連結領域セグメン
ト(および、重鎖遺伝子座では多様性領域セグメント)
と組換わって完全なV領域エクソンを形成する複数の可
変セグメントから成る。そのような再配列された軽鎖遺
伝子は3つのエクソン:シグナルペプチドエクソン、可
変領域エクソンおよび定常領域エクソンから成る。再配
列された重鎖遺伝子は幾分複数である。それはシグナル
ペプチドヘクソン、可変領域エクソン、および各々が数
個のエクソンによりコードされる多ドメイン定常領域の
縦列整列領域から成る。定常領域遺伝子の各々は異なる
免疫グロブリンクラスの定常部分をコードする。B細胞
発達の間に、V領域に近い定常領域が欠失されて新規重
鎖クラスの発現をもたらす。各重鎖クラスについては、
RNAスプライシングの拓逸一的パターンが経膜型と分泌
型の両方の免疫グロブリンをもたらす。
【0058】ヒト血清抗体分子の約40%がλ軽鎖を含
む。この遺伝子座(染色体22に位置決定される)の構造
は、最も特徴づけられていないものである(図2)。 そ
れは、各々が単一のJセグメントに結合している6つの
定常領域遺伝子の縦列配列の上流の未知数のVセグメン
トから成る。加えて、結合したJセグメントを有する更
に2つの定常領域セグメントが単離されているが、λク
ラスターの残部とのそれらの結合は確立されておらず、
それらが使われるかどうかわかっていない。E. Selsing
ら,“Immunoglobuglin Genes”, AcademicPress, T.
Honjo,F.W.Alt およびT.H. Rabbitts 編(1989)。
κ軽鎖遺伝子座は、染色体2上の3つのクラスター上に
広がっている(図3)。それぞれ850 Kbおよび250 Kbに
わたる最初の2つのクラスターは可変領域遺伝子セグメ
ントのみを含む。約1Mbにわたる三番目のクラスターは
約40個のV遺伝子セグメントを含み、その下流に5つの
Jセグメントのクラスターがあり、次いで単一の定常領
域遺伝子セグメントがある。合計84個のV遺伝子セグメ
ントが同定されており、そしてそのほぼ半分が偽遺伝子
であると考えられる〔Zachau(1989) Immunoglobulin
Genes,AcademicPress,T.Hon-jo,F. W.AltおよびT.H. Ra
bbitts 編, 91-110中〕。Cκ領域の約25 Kb 下流に
「κ欠失要素(κde)」がある。このκde配列は上流配
列と組み換わって、λ軽鎖発現B細胞においてκ定常領
域の欠失を引き起こす。これは、κとλ遺伝子の両方を
上手く再配列する細胞においてイソタイプ排除を引き起
こす。
【0059】ヒト重鎖遺伝子座は最大であり且つ最も多
様である。それは2 Mbにわたる約200個のV遺伝子セグ
メント、約40 Kb にわたる約30個のD遺伝子セグメン
ト、3Kbの範囲内に密集した6個のJセグメント、および
約300 Kbにわたる9個の定常領域遺伝子セグメントから
成る。全遺伝子座は、染色体14の長い方の腕の遠位部分
約2.5 Kbに及ぶ(図 4)。重鎖Vセグメントは配列類似
性に基づいて6つのファミリーに分類することができ
る。約60のVH 1ファミリー、30の VH 2セグメント、8
0のVH3セグメント、30のVH4セグメント、3つのV H5
セグメントおよび1つのVH6セグメントがある。Berman,
J. E. ら(1988), EMBO J., 7,727-738。ヒト重鎖遺伝
子座では、関連するVセグメントが密集しているマウス
遺伝子座とは異なり、個々のVファミリーのメンバーが
入り交じっている。VH6ファミリーの単一メンバーが
Vセグメントの最も近位にあり、定常領域遺伝子セグメ
ントの90 Kb 以内にマッピングされる。Sato, T.ら(198
8),Biochem.Biophys.Res.Commun., 154, 265-271。
機能的DおよびJセグメントは全て、この90 Kb 領域の
なかにあると思われる。〔Siebenlistら(1981), Natur
e, 294, 631-635; Mats-uda ら(1988),EMBOJ.,7, 10
47-1051 ; Buluwelaら(1988), EMBOJ.,7, 2003-2010
; Ichihara ら(1988), EMBOJ.,7, 4141-4150 ;Berm
anら(1988), EMBOJ.,7, 727-738〕。 B. 遺伝子断片トランスジェン 1. 重鎖トランスジェン 好ましい態様では、免疫グロブリン重鎖および軽鎖トラ
ンスジェンは、ヒト由来の再配列されていないゲノムDN
Aを含んで成る。重鎖の場合、好ましいトランスジェン
は670〜830 Kbの長さを有するNotI 断片を含んで成る。
この断片の長さは、3′制限部位が正確にマッピングさ
れていないため、不明瞭である。しかしながら、α1と
φα遺伝子セグメントとの間にあることが知られている
(図4参照)。この断片は、6つの既知VH ファミリー
の全部のメンバー、DおよびJ遺伝子セグメント、並び
にμ,δ,γ3,γ1およびα1定常領域を含む。Berman
ら(1988), EMBOJ.,7, 727-738。このトランスジェン
を含有するトランスジェニックマウス系は、B細胞の発
達に必要とされる重鎖クラスの全部を正しく発現し、そ
してほとんどの抗原に対して二次応答を開始するのに十
分な程多数の可変領域のレパートリーを発現する。
【0060】2. 軽鎖トランスジェン ヒト軽鎖遺伝子座からの必要な遺伝子セグメントおよび
調節配列を全て含有するゲノム断片を同様に作製するこ
とができる。そのような構成物は実施例に記載される。 C. 生体内組換えにより細胞内的に作製されるトランス
ジェン 単一DNA断片上の重鎖遺伝子座の全部または一部分を単
離する必要はない。例えば、ヒト免疫グロブリン重鎖遺
伝子座からの670-830Kb NotI断片は、トランスジェン
作製(transgenesis)の間に非ヒト動物の生体内で形成
させることができる。そのような生体内トランスジェン
作製は、2以上の重複するDNA断片を非ヒト動物の胚性核
に導入することにより行われる。DNA断片の重複部分
は、実質的に相同であるDNA配列を有する。胚性核内に
含まれるレコンビナーゼに暴露されると、重複している
DNA断片が適切な方向において相同的に組み換わって670
-830 Kbの NotI重鎖断片を形成する。
【0061】しかしながら、生体内トランスジェン作製
は、そのサイズのために現存の技術による作製または操
作が困難であるかまたは不可能である多数の免疫グロブ
リントランスジェンを形成せしめるのに使うことができ
ると理解すべきである。例えば、生体内トランスジェン
作製は、YACベクター〔MurrayおよびSzostaK (1983),
Nature,305, 189-193〕により操作することができるDN
A断片よりも大きい免疫グロブリントランスジェンを作
製するのに有用である。そのような生体内トランスジェ
ン作製は、トランスジェニック非ヒト動物から成らない
種の実質的に完全な免疫グロブリン遺伝子座を非ヒト動
物中に導入する場合にも使うことができる。幾つかの研
究グループが、YACベクター中に50〜200 KpのDNA断片
を含むライブラリーを好結果に作製しており〔BurKe ら
(1987), Science, 236, 806-812;Traver ら(1989),
Proc. NatI. Acad. Sci.USA, 86, 5898-5902〕そして
ポリアミン縮合を使って200〜約1000 Kb のサイズの範
囲で YAC ライブラリーを製造している〔McCormick ら
(1989),Proc. NstI. Acad. Sci, USA, 86, 9991-9995〕
けれども、ヒト定常領域免疫グロブリン遺伝子座の670-
830 Kb より実質的に大きいNotI断片をより大きいカバ
ーする復数の重複断片が本明細書中に開示される方法に
よって大型のトランスジェンを容易に製造できると予想
される。
【0062】ゲノム免疫グロブリントランスジェンを形
成させることに加えて、実施例に記載の如く「小遺伝子
座」トランスジェンを形成させるのにも生体内相同組換
えを使うことができる。
【0063】生体内トランスジェン作製を利用する好ま
しい態様では、各々の重複するDNA断片は、好ましくは
第一のDNA断片の末端部分と第二のDNA断片の末端部分の
間で重複する実質的に相同なDNA配列を有する。DNA断片
のそのような重複部分は、好ましくは約500 bp〜約200
0bp、最も好ましくは1.0 kb〜2.0 kbを含む。生体内で
トランスジェンを形成させるための重複DNA断片の相同
組換えは、1990年8月29日にU.S.S.N. 07/574,747 号の
もとに出願された「DNA断片の相同組換えによるDNAの細
胞内生成(Intracellar Generation of DNA byHomolog
ous Recombination of DNA Fragments)」と題する共に
譲渡されたU.S.特許出願明細書に更に詳しく記載されて
いる。 D. 小遺伝子座トランスジェン 本明細書中で使用する時、「免疫グロブリン小遺伝子
座」なる用語は、通常は約150 kb未満、典型的には約25
〜100 kbのDNA配列(より長い配列の中にあってもよ
い)であって、〔前記DNA配列が少なくとも1つの実質
的不連続性(例えば、相同ゲノムDNA配列に関して、通
常は少なくとも約 2〜5 kb、好ましくは10〜25 kb ま
たはそれ以上の欠失)を有するような〕次のものを各々
少なくとも1つ含むDNA配列を言う:機能的可変(V)
遺伝子セグメント、、機能的連結(J)領域セグメン
ト、機能的通常(C)領域遺伝子セグメント、および重
鎖小遺伝子座の場合には、機能的多様性(D)領域セグ
メント。軽鎖小遺伝子座トランスジェンは、長さが少な
くとも25 kb 、典型的には50〜80 kbであるだろう。重
鎖トランスジェンは、単一の定常領域及び不完全なスイ
ッチ領域を有するものは少なくとも約30 kb であるのに
対して、スイッチ領域に作用可能に連結された2つの定
常領域を有するものは典型的には約70〜80 kb 、好まし
くは少なくとも約60kbの長さであろう。更に、小遺伝子
座の個々の要素は好ましくは生殖細胞(ジャームライ
ン)配置内にあり、そして小遺伝子座の該要素により完
全にコードされる多様な抗原特異生を有する機能的抗体
分子を発現するように、トランスジェニック動物の前駆
体B細胞において遺伝子再配列を受けることができる。
【0064】他の好ましい態様では、免疫グロブリン重
鎖および軽鎖トランスジェンはV,D,JおよびC遺伝
子セグメントを各々1つまたは複数含んで成る。適当な
タイプの遺伝子セグメントの少なくとも1つが小遺伝子
座トランスジェンに組み込まれる。重鎖トランスジェン
のCセグメントに関しては、トランスジェンが少なくと
も1つのμ遺伝子セグメントと、少なくとも1つの他の
定常領域遺伝子セグメント、より好ましくはγ遺伝子セ
グメント、最も好ましくはγ3またはγ1遺伝子セグメン
トとを含むことが好ましい。この優先性は、体細胞突然
変異および分泌形の高親和生非IgM 免疫グロブリンの産
生に備えて、コードされる免疫グロブリンのIgM 形とIg
G 形との間のクラススイッチを考慮したものである。他
の定常領域遺伝子セグメントも使うことができ、例えばI
gD, IgA およびIgE の産生をコードするものである。
【0065】ヒトの重鎖J領域セグメントは、3 kbのDN
A長さにおいて密集した6個の機能的Jセグメントと3個
の偽遺伝子を含んで成る。それが比較的小さいサイズで
あることとそれらのセグメントがμ遺伝子およびδ遺伝
子の5 ′部分と一緒に単一の23 kb SFiI/SpeI断片とし
て単離できること〔Sadoら(1988), Biochem. Biophys.
Res.Commun., 154, 246-271〕を仮定すれば、小遺伝
子座構成物において全部のJ領域遺伝子セグメントを使
うことが好ましい。更に、この断片はμ遺伝子とδ遺伝
子の間の領域に広がるため、μ発現に必要とされるシス
結合した3 ′調節要素の全部を含む可能性が大きい。更
に、この断片は完全なJ領域を含むため、重鎖エンハン
サーとμスイッチ領域を含む〔Mills ら(1983),Nature,
306, 809;Yancopoulos およびAlt (1986) Ann. Rev. Im
munol., 4, 339-368〕。それは:VDJ結合を開始させ
て一次レパートリーB細胞を形成ささせる転写開始部位
も含む〔Yancopoulos および Alt(1985) Cell,40, 271
-281 〕。あるいは、23Kb SfiI/SpeI 断片の代わりに、
D領域の一部を含む36 Kb BssHII/SpeI 断片を使うこと
ができる。そのような断片の使用は、効率的D−J結合
を促進させる5′ 隣接配列の量を増加させる。
【0066】ヒトD領域は、縦列に結合した4または5
個の相同な9Kbの亜領域から成る〔Siebenlistら(198
1), Nature, 294, 631-635〕。各亜領域は10個までの個
々のDセグメントを含む。それらのセグメントの一部は
マッピングされており、それを図4に示す。2つの異な
る方策を使って小遺伝子座D領域を作製する。第一の方
策は、1つまたは2つの反復D亜領域を含む短いDNAの
連続鎖の中に置かれたそれらのDセグメントのみを使う
ものである。候補となるのは、12個の個々のDセグメン
トを含む単一の15 Kb 断片である。DNAのこの断片は2
つの 近接するEcoRI 断片から成り、そして完全に配列
決定されている〔Ichiharaら(1988), EMBO J., 7, 4141
-4150〕。12のDセグメントが一次レパートリーに十分
であろう。しかしながら、D領域の分散された性質があ
るとすれば、別の方策は、幾つかの非近接D断片含有断
片を一緒に連結して、より多数のセグメントを有する一
層小型のDNA断片を作製することである。
【0067】重鎖小遺伝子座トランスジェンを作製する
のには、少なくとも1つ、好ましくは複数のV遺伝子セ
グメントが使われる。隣接配列と一緒に1つまたは2つ
の再配列されていないVセグメントを含む10〜15 Kb の
DNA断片を単離する。 特徴付けられたヒトハイブリドー
マ、例えば抗シトメガロウイルス抗体を産生するもの
〔NewKirK ら(1988)J. Clin.Invest., 81, 1511-151
8〕の転写されたV領域から決定されたユニーク5′ 配
列から作製したプローブを使って、そのようなDNAを含
むクローンを選択する。重鎖mRNA の5′ 非翻訳配列を
使って、この抗体を作製したもとの生殖細胞型Vセグメ
ントを単離するためのユニークなヌクレオチドプローブ
(好ましくは長さが40ヌクレオチド)を作製する。既知
抗原に対する抗体中に含まれることが知られているVセ
グメントを使うと、このVセグメントが機能的であるこ
とを保証するだけでなく、二次免疫応答におけるトラン
スジェン関与の分析も助かる。このVセグメントを上述
したように小遺伝子座のD領域および定常領域断片と融
合せしめて、小遺伝子座重鎖トランスジェンを作製す
る。
【0068】あるいは、YAC ライブラリーから、復数の
V領域セグメントを含む大きな連続したDNA断片を単離
する。様々な数のV領域セグメントを含む種々の大きさ
のDNA断片を、小遺伝子座トランスジェン構成物中でヒ
ト抗体レパートリーを提供する能力について試験する。
YAC ベクター〔MurrayおよびSzostaK(1983),Nature. 3
05, 189-193〕、F因子にもとづくプラスミド〔O′Conn
erら(1989), Science,244, 1307-1312〕または上述の重
複断片の組換えを使った生体内作製を用いて、幾つかの
非近接のVセグメント含有断片から1つの大きな断片を
構築することも可能である。あるいは、合成V領域レパ
ートリー(後述)を使うこともできる。
【0069】小遺伝子座軽鎖トランスジェンは、ヒトλ
またはκ免疫グロブリン遺伝子座から同様にして作製す
ることができる。κ軽鎖小遺伝子座の作製は、重鎖小遺
伝子座の作製に非常に類似しているが、ただし、それは
サイズがより小さく複雑性がより低いために、ずっと単
純である。ヒトκ遺伝子座は1つだけの定常領域セグメ
ントを有する。5′および 3′エンハンサーと一緒のこ
のセグメント、並びに全部で5つの機能的Jセグメント
を、単一の10 kb DNA断片において単離することができ
る。この断片は、重鎖小遺伝子座について記載したよう
に作製された小遺伝子座V領域と一緒に同時注入され
る。 例えば、複数のDNA断片、その少なくとも2つ、
3つまたは4つの(その各々はV領域配列、D領域配
列、Jおよび定常領域配列、D及びJ及び定常領域配
列、または定常領域配列のいずれかであり、ここで、各
配列はヒト遺伝子配列に実質的に相同である)から、
V,D,Jおよび定常領域配列をコードする。例えば約
75kbの、免疫グロブリン重鎖小遺伝子座トランスジェン
構成物を形成せしめることができる。好ましくは、前記
配列は転写調節配列に作用可能に連結され、そして再配
列を受けることができる。2以上の適当に置かれた定常
領域配列(例えばμおよびγ)およびスイッチ領域で
は、スイッチ組換えも起こる。複数のDNA断片から同様
に形成された、ヒトDNAに実質的に相同であり且つ再配
列を受けることができる典型的な軽鎖トランスジェン構
成物はV, D,および定常領域をコードする少なくとも
2つ、3つまたは4つのDNA断片を含み、ここで各断
片はV領域配列、Jおよび定常領域配列か、または定常
領域配列かのいずれかを含んで成るだろう。 E. 機能的V遺伝子セグメントの決定方法および合成V
セグメントレパートリーの作製方法 遺伝子セグメントの様々なファミリー、即ちV,D,J
およびC領域遺伝子セグメントのうち、V遺伝子セグメ
ントの数は通常、DJおよびC領域遺伝子セグメントそ
れぞれに対応する遺伝子セグメントの数を遥かに上回
る。産生される抗体の約90%が単一のV遺伝子セグメン
トを使うウサギ系〔KnightおよびBecKer(1990), Cell,6
0, 963-970 〕への類推によれば、限定数のV領域遺伝
子セグメント、1ほど少数のV領域遺伝子セグメント、
を含む重鎖および軽鎖トランスジェンを製造することが
可能である。従って、免疫グロブリン媒介性免疫応答を
開始する時に、特定生物、例えばヒトにより、どのV領
域遺伝子セグメントが使われるかを決定する方法をもつ
ことが望ましい。このアプローチによれば、単一のV遺
伝子セグメントは、JまたはDJ遺伝子セグメントと組
み合わせると、一次レパートリーの生成に十分な多様性
をCDR3に提供することができ、これは、体細胞突然変異
を受けると、可変領域の至るところで、例えば高親和性
抗体の産生のためにはCDR1およびCDR2において、更なる
多様性を提供することができる。
【0070】本発明のこの観点では、免疫応答の間に生
物体によりどのV遺伝子セグメントが使われるかを決定
するための方法およびベクターが提供される。この方法
は、B細胞のポリ A+ RNA から合成したcDNA中にどのV
セグメントが見つかるかを決定することに基づく。その
ような方法およびベクターを使って合成Vセグメントレ
パートリーの作製を容易にすることもできる。
【0071】重鎖Vセグメントを同定するためおよび合
成Vセグメントレパートリーを作製するためのこの方策
の概要は、ず5と6に描写される。該方策は、適当な変
更を伴って、軽鎖Vセグメントを同定するためにも同様
に利用することができる。第一段階はクローニングベク
ターの作製である。好ましい出発材料は、再配列されて
いないVセグメントと一緒に5′および3′隣接配列を含
有するDNA断片(約 2Kb)である。この断片を、プラス
ミド、例えば図5および6中で“W”および“Z”と指
定された希少な切断性制限部位によって隣接されたポリ
リンカー部位を含むpGP1またはpGP2(後述)中にクロー
ニングする(pGP1およびpGP2のポリリンカーと制限部位
は実施例において説明する)。次いでオリゴヌクレオチ
ド指令突然変異誘発を使って、2つの新規制限部位 “X
”および“y”(通常は 各々約6 ヌクレオチドの長
さ)を導入する。制限部位“x”は、シグナルとVセグ
メントエクソンとの間のイントロンの3′ 末端から約20
ヌクレオチドの所に置かれる。制限部位“y”は、ヘプ
タマー組換えシグナル配列とノナマー組換えシグナル配
列との間の23 bp のスペーサーの内部に、Vセグメント
結合点の約20ヌクレオチド3′ 側に置かれる。生じたプ
ラスミドを酵素“x”および“y”で切断することによ
り、第二エクソン(Vセグメント)を除去し、5′ 隣接
配列、V領域プロモーター、シグナルペプチドエクソ
ン、イントロン、“x”末端と“y”末端により隣接され
たギャップ、組換えシグナル配列の外側半分、および
3′ 隣接配列を残す。このプラスミドをpVH1と命名す
る。
【0072】第二段階は、4組のオリゴヌクレオチドプ
ライマー(P1〜P4)の合成である。P1とP2は約50ヌクレ
オチドを有する非ユニークオリゴマーであり、その各々
は二本鎖cDNA合成をプライムするために使う。P1は、pV
H1中の組換えシグナル配列のアンチセンス鎖に相同な配
列の約20ヌクレオチドで始まり(5′から3′方向)(制
限酵素“y”の認識配列を含む)、そしてVHフレーム
ワーク領域 3(FR3)の最後の30ヌクレオチドとハイブリ
ダイズするアンチセンス配列の約30ヌクレオチドが続
く。最後の約30ヌクレオチドに渡り、異なるVHファミ
リーの全てとハイブリダイズする1組のプライマーを生
じるようにランダム塩基が組み込まれる。第二のオリゴ
ヌクレオチドP2は、センス方向にあり、そしてpVH1中の
制限部位“X” で始まる約50ヌクレオチドと相同であ
る。これは“X” 制限部位、イントロンの最後の約20ヌ
クレオチド、およびFR1 の最初の約30ヌクレオチドを含
む。やはり最後の約30ヌクレオチドは、異なるVH領域
セグメントに適応するように非ユニークである。オリゴ
ヌクレオチドP3およびP4は、それぞれP1およびP4の最初
の約20ヌクレオチドに相同である。それらのオリゴ体は
Vセグメント中への新規突然変異の導入を回避するよう
にユニークであり、そしてポリメラーゼ連鎖反応(PC
R)によって二本鎖cDNAを増幅するのに使われる。
【0073】重鎖または軽鎖免疫グロブリン遺伝子座の
可変セグメントにハイブリダイスすることができ且つ該
セグメントの合成をプライムすることができるプライマ
ーP1およびP2の3′ 末端部分は、当業者によって容易に
決定することができる。例えば、多数のヒトVH遺伝子
のヌクレオチド配列が発表されている。例えば、Berma
n, J.E.ら(1987),EMBO J., 7, 727-738 および Kabat,
E.A.ら(1987), Sequences ofProtein of Immunological
Interests, U.S Dept. Health & HumanServices, Wash
ington, D.C.を参照のこと。 同様に、ヒト軽鎖免疫グ
ロブリン遺伝子座のVセグメントを同定および/または
作製するのに使う時、プライマーP1およびP2の3′ 配列
部分は、発表された配列から容易に決定することができ
る。例えば、 Kabat, E.A.ら(前掲)を参照のこと。一
般に、様々なVセグメント間で保存されるこれらヌクレ
オチド位置は、P1およびP2プライマーの 3′部分におい
ても保存される。可変セグメントの中で変形が観察され
るようなそれらのヌクレオチド位置については、対応す
るP1およびP2プライマー中のそのようなヌクレオチド位
置を同様に変形して、異なるVHまたはVLセグメント
にハイブリダイズすることができるプライマーのプール
を含んで成るP1およびP2プライマーを提供する。
【0074】次の段階は、それらのオリゴヌクレオチド
プライマーを使って、ベクターpVH1中でヒト重鎖V領域
cDNA配列のライブラリーを作製することである。P1は、
ヒトB細胞ポリ A+ RNA からの第一鎖cDNA合成を開始さ
せるために使う。該DNAを塩基加水分解し、そしてP2を
使って第二鎖の合成を開始させる。次いで全長の二本鎖
cDNAをアクリルアミドゲル上で精製し、電気溶出せし
め、そしてオリゴヌクレオチドプライマーP3およびP4を
使うポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のための鋳型
として使用する。あるいは、常法によってまずcDNAを合
成し、このcDNAをP1開始リアクターのための鋳型として
使用する。次いで増幅された生成物(約 0.3kb)をゲル
精製し、制限酵素“x”および“y”で切断し、そしてpH
V1中にクローニングする。
【0075】生成したcDNAライブラリーは、可変領域セ
グメントの合成ゲノムライブラリーを表し、可変セグメ
ントの従来のゲノムライブラリーを上回る3つの利点を
提供する。第一に、従来のライブラリーは50%まで偽遺
伝子配列を含んでいるが、このライブラリーは偽遺伝子
を全く含まない。第二に、合成ライブラリーは、従来の
ライブラリーよりもずっとコンパクトであり、20 kbあ
たり1個の機能的セグメントに対比して、2 kbのDNA あ
たり1個の機能的V遺伝子を含む。最後に、このアプロ
ーチは操作に利用可能であるVセグメントプロモーター
配列を残す。
【0076】そのようなcDNAライブラリーは、差別的発
現の故に特定の生殖細胞型Vセグメントの方に偏り得
る。偏りの2つの源は(i)Vセグメント組換えの差別的
速度、および(ii)Vセグメントを発現するB細胞クロ
ーンの差別的選択である。第一の偏り源は2つの方法で
処理される。第一に、偏りは胎児生免疫グロブリンレパ
ートリーにおいて最も顕著であるため、B細胞RNAの源
として胎児性組織を避ける。第二に、半ランダムプライ
マーP1およびP2を、各々が異なるVセグメントファミリ
ーと選択的に交差ハイブリダイスするプールに分ける。
次いでそれらのプライマーを使って4〜6つの別個のラ
イブラリーを作製し、こうしてV領域ファミリーの全て
が提示されることを保証する。第二の偏り源であるB細
胞クローンの差別的選択もまた、同様な2つの方法で処
理される。第一に、最小の割合の抗原選択B細胞を含む
RNA源を使用する。リンパ節と脾臓を避ける。成体の骨
髄は非選択B細胞の1つの源である。しかしながら、そ
れは前B細胞由来の転写される偽遺伝子配列を高い割合
で含む。RNAの別の源は全血である。循環しているB細
胞の90%が未成熟のμまたはμ,δを発現している細胞
であり、そして最近の骨髄移住物である。しかしなが
ら、抗原選択されたIgG発現細胞のレベルは、個体の免
疫状態に大きく依存しうる。従って、単離されたポリA+
RNAを、特異的プローブを用いたノーザンブロットハ
イブリダイゼーションにより、特定のB細胞配列につい
て調べる。脾RNAを使うことがより実用的である場合、
およびこのRNAが高い比率の IgG 配列を含む場合、選択
の偏りを最少にするために第二のアプローチが使われ
る。cDNAの第一鎖合成を、IgM 転写物に特異的な約40ヌ
クレオチドの定常領域エクソン2プライマーにより開始
させる。次いでP2を用いて第二鎖合成を開始し、そして
P1を用いて第三巡目の合成を開始する。この第三巡目の
合成からのcDNAは、P3とP4を使ったPCR増幅のための
鋳型を提供する。
【0077】可変領域ライブラリーが作製されれば、そ
の中に使われたVセグメントを、標準技術により、例え
ばファミリー特異的もしくはセグメント特異的オリゴヌ
クレオチドを用いた配列決定および/またはハイブリダ
イゼーション並びにPCR法による差別的増幅により、
同定することができる。Vセグメントライブラリーのそ
のような特徴付けは、特定の生物におけるVセグメント
の使用頻度および分布に関する情報を提供し、結果とし
て、本発明の種々のトランスジェンの作製に使うことの
できるVセグメントの同定を提供する。かくして、上述
の小遺伝子座トランスジェン構成物において1または複
数の有力なV遺伝子セグメントを使うことができる。更
に、そのようなライブラリーから選択したクローンを使
って、頻度に使われるVセグメントを含むゲノム断片を
同定して、特定の所望のVセグメントを含むゲノム断片
の同定を容易にすることができる。
【0078】加えて、合成Vセグメントレパートリー
は、ライブラリー配列の連結によって作製することがで
きる。注入配列の数百コピーを含む大きな反復性トラン
スジェン縦列整列は、一般にトランスジェニックマウス
の製造において発生される。それらの縦列整列は通常非
常に安定である。しかしながら、合成V領域の安定性を
確実にするために、各々2kbのV領域セグメント間のラ
ンダム DNAブロックが好ましくは導入される。それらの
ランダムDNAブロックは、優性調節要素の挿入を防ぐよ
うに、ゲノムDNAを消化し次いで再連結することにより
調製される。ゲノムDNA は、好ましくは4種の頻繁な切
断制限酵素:AluI, DpnI, HaeIII および Rsa Iで消化
される。この消化は平均長さ64ヌクレオチドを有する平
滑末端断片を生成する。50〜100ヌクレオチドのサイズ
範囲の断片をアクリルアミドゲルから溶出せしめ、次い
で再連結する。再連結されたDNAをMboIで部分消化し、
サイズ分画する。0.5〜2 Kbの範囲内の断片を、pVH1の
作製に使ったベクターのポリリンカーの BamHIまたはBg
III部位中にクローニングする。
【0079】ランダム配列ライブラリーを合成Vセグメ
ントライブラリーと組み合わせて合成Vセグメントレパ
ートリーを造成する。ランダム配列ライブラリーからの
挿入断片を酵素“W”および“Z”で遊離せしめ、ベク
ター配列から分離精製する。合成Vセグメントライブラ
リーからの挿入断片を酵素“W”および“Z”での消化
により単離する。Vセグメント挿入断片を精製する前
に、このDNAを子ウシ腸ホスファターゼで処理して自己
連結を防止する。次いでVセグメント挿入断片をランダ
ム挿入断片と一緒に連結せしめて、合成Vセグメントレ
パートリーを含む交互縦列整列を作製する。この連結混
合物をショ糖勾配上でサイズ選別し、50〜100 kb分画
を、例えばD−J−定常小遺伝子座構成物と一緒に、マ
イクロインジェクトする。介在するクローニング段階を
伴わずに合成Vセグメントレパートリーを直接注入する
ことにより、注入断片の縦列整列が単一部位に挿入され
るようになるという事実を利用することが可能である。
この場合、そのような縦列整列は完全には重複ではなく
て、更なる多様性をもたらす。あるいは、合成Vセグメ
ントレパトリーをD−J−C小遺伝子座と組み合わせて
重鎖トランスジェンを形成せしめることもできる。
【0080】合成軽鎖免疫グロブリンセグメントレパー
トリーも同様に、軽鎖遺伝子座用の適応なプライマーを
使って作製することができる。内因性免疫グロブリン遺伝子鎖の機能的破壊 好結果に再配列された免疫グロブリン重鎖および軽鎖ト
ランスジェンの発現は、トランスジェニック非ヒト動物
中の内因性免疫グロブリン遺伝子の再配列を抑制するこ
とにより優性作用を有すると予想される。しかしなが
ら、内因性抗体を欠く非ヒト動物を生成せしめる別の方
法は、内因性免疫グロブリン遺伝子座を突然変異せしめ
ることによるものである。胚性幹細胞技術および相同組
換えを使って、内因性免疫グロブリンレパートリーを容
易に排除することができる。下記はマウス免疫グロブリ
ン遺伝子座の機能的破壊を説明する。しかしながら、開
示されるベクター及び方法は、他の非ヒト動物における
使用に合わせて容易に改変することができる。
【0081】簡単に言えば、この技術は、生殖細胞組織
に分化することができる多分化能性細胞系における、相
同組換えによる遺伝子の不活性化を包含する。マウス免
疫グロブリンの変更コピーを含むDNA構成物を胚性幹細
胞の核に導入する。その細胞の一部において、導入され
たDNAがマウス遺伝子の内因性コピーと組み換わり、そ
れを変更コピーで置き換える。この新たに操作された遺
伝的損傷を含む細胞を宿主マウス胚に注入し、それを受
容体雌に再移植する。それらの胚のいくつかが、変異細
胞系に完全に由来する生殖細胞を有するキメラマウスに
発達する。従って、キメラマウスを交配することによ
り、導入された遺伝的損傷を含むマウスの新規系列を獲
得することが可能である。〔Capecchi (1989) Science,
244, 1288-1292により概説されている〕。
【0082】マウスλ遺伝子座は免疫グロブリンのわず
か5%に寄与するため、重鎖および/またはκ軽鎖遺伝
子座の不活性化で十分である。それらの遺伝子座の各々
を破壊するのには3つの方法があり、J領域の欠失、J
−Cイントロンエンハンサーの欠失、および終結コドン
の導入による定常領域コード配列の破壊である。DNA構
成物デザインの見地から、最後の方法の選択が最も簡単
である。μ遺伝子の排除はB細胞の成熟を破壊し、それ
によっていずれかの機能的重鎖セグメントにクラススイ
ッチすることを防ぐ。それらの遺伝子座を破壊(ノック
アウト)する方策を下記に概説する。
【0083】マウスμおよびκ遺伝子を破壊するために
は、Jaenischおよび共同研究者〔Zijlstraら(1989), Na
ture,342, 435-438 〕によりマウスβ2ミクログロブリ
ン遺伝子の好結果の破壊に使われたデザインを基にした
標的ベクターを用いる。プラスミドpMCIneo からのネオ
マイシン耐性遺伝子 (neo) を標的遺伝子のコード領域
中に挿入する。pMCIneo 挿入断片は neo発現を指令する
のにハイブリッドウイルスプロモーター/エンハンサー
配列を使う。このプロモーターは胚性幹細胞中で活性で
ある。従って、破壊(ノックアウト)構成物の組込みの
ための選択マーカーとしてneoを使うことができる。ラ
ンダム挿入現象に対する陰性選択マーカーとしてHSVチ
ミジンキナーゼ(tK)遺伝子を核構成物の末端に付加する
(Zijlstraら、前掲) 重鎖遺伝子座を破壊するための
標的ベクターを図7に示す。重鎖遺伝子座を破壊するた
めの第一方策はJ領域の削除である。この領域はマウス
ではかなり小さく、わずか1.3 kbに及ぶ。遺伝子標的ベ
クターを作製するために、マウスゲノムライブラリーか
らの分泌されたA定常領域エクソンの全部を含む15 kb
のKpnI断片を単離する。1.3 kbのJ領域をpMCIneo から
の1.1 kb挿入断片により置き換える。次いで核KpnI断片
の 5′ 末端にHSV tk遺伝子を付加する。相同組換えに
よるこの構成物の正しい組込みは、neo遺伝子によるマ
ウスJH 領域の置換をもたらすだろう(図7)。neo 遺
伝子を基にしたプライマーとD領域中のKpnI 部位のマ
ウス配列 5′に相同のプライマーとを使って、PCRに
より組換え体をスクリーニングする。
【0084】あるいは、μ遺伝子のコード領域を破壊す
ることにより重鎖遺伝子座を破壊(ノックアウト)す
る。このアプローチは、上記のアプローチで使ったもの
と同じ15 kb のKpnI断片を必要とする。pMCIneo からの
1.1 kb挿入断片をエクソンII中のユニークBamHI部位の
ところに挿入し、そしてHSV tk遺伝子を 3′KpnI 末端
に付加する。次にneo 挿入断片の両側における二重交差
(これはtk遺伝子を削除する)を選択する。それらは、
選択されたクローンのプールからPCR増幅により検出
される。PCRプライマーの一方はneo 配列に由来し、
そして他方は標的ベクターの外側のマウス配列に由来す
る。マウス免疫グロブリン遺伝子座の機能的破壊は実施
例に記載される。 再配列された免疫グロブリン重鎖および軽鎖トランスジ
ェンを含有するトランスジェニック非ヒト動物 再配列されていない小遺伝子座Igトランスジェンを含有
する上述のトランスジェニック動物の基礎をなす前提
は、天然の免疫グロブリン遺伝子座に見つかる種々の遺
伝子セグメントの全部を含める必要なしに完全な抗体レ
パートリーを作製することが可能であることである。理
論的には、二次レパートリーを減少させずに、一次レパ
ートリーに貢献する異なる配列の数を減らすことが可能
である。任意の特定抗原に対してT細胞依存性応答を開
始するのに十分な多様性が一次レパートリーにある限
り、体細胞高度突然変異がその抗原に対する高親和性抗
体を提供することができるだろう。
【0085】この概念は、ヘテロロガスの抗体レパート
リー全体が体細胞突然変異により完全に作製される本発
明のこの観点において更に前進する。抗原結合部位は、
アミノ末端重鎖ドメインとアミノ末端軽鎖ドメインの間
の界面により造られる。抗原と相互作用するこれら各ド
メインの内部のCDR1, 2 および3 残基は、β鎖を連結す
る3つの異なるループ上に位置する。前に記載したよう
に、それらの領域は、異なる抗原を認識する異なる抗体
分子間で最大の配列多様性を有する。よって、抗体レパ
ートリーはCDR1, 2および3 の配列多様性により決定さ
れる。完全な抗体レパートリーを生成するCDR1, 2およ
び3の多様性は3つの源に由来する:組換え多様性、結
合多様性および体細胞突然変異。CDR1とCDR2のところの
組換え多様性は、異なるCDR1および2配列を含む異なる
Vセグメントの選択から生じる。CDR3のところの組換え
多様性は、異なるDおよびJセグメントの選択から生じ
る。結合多様性はCDR3多様性にのみ貢献し、一方、V領
域全体にまたがって作用する体細胞突然変異は、3つの
相補性決定領域の全ての多様性に貢献する。組換えおよ
び結合多様性は一緒になって一次レパートリーの多様性
に貢献する(図1)。従って、VDJ結合はIgMを発現
する一次B細胞のセットを生じる。
【0086】外来抗原に対して或る最少限の親和性を有
する細胞表面IgM分子を発現する何らかの一次レパート
リーB細胞は、IgMとしてその抗原を細胞内に取り込
み、そして細胞表面を元に戻す。次いで該抗原は処理さ
れ、関連したペプチドがクラスIIMHC分子により細胞
表面上に提示される。十分な外来抗原が細胞表面に提示
されれば、これがT細胞応答を開始させ、次いでT細胞
応答がB細胞のT細胞依存性成熟を開始させる。これが
いわゆる二次応答である(図8)。この応答の一部は、
免疫グロブリン遺伝子の可変領域の高度突然変異に関係
する。従って二次応答を受けたB細胞クローンは常に、
変更された免疫グロブリン分子を有する新規クローンを
生じる。外来抗原に対する、より高い新和性を持つこれ
らクローンは、発現された抗体の新和性成熟をもたら
す。体細胞高度突然変異は全V領域にまたがって起こる
ため、親和性の成熟の過程に対する理論的制限はない。
【0087】本発明のこの観点では、完全な抗体応答を
生ぜしめるのにCDR1およびCDR2多様性は不要である。む
しろ、VJおよびVDJ結合により作られるCDR3多様性
が、多数の異なる抗原に対して高親和性抗体を産生する
T細胞依存性成熟を開始させるのに十分な最少限の親和
性を提供するであろう。よって、一次多様性を用いずに
広範囲の抗体レパートリーを作製するための方法および
トランスジェニック動物が提供される。そのような多様
性は、抗体多様性の発生のための体細胞突然変異に頼っ
ている。親和性成熟の過程の間に、体細胞突然変異は、
刺激抗原に対して高いというよりむしろ低い親和性を有
する多数のクローンを生ぜしめる。それらのクローンの
大部分は選択されず、死に絶えてしまう。しかしなが
ら、それらのクローンの1つがまた存在する新規抗原に
対して親和力を有するならば、このクローンは増殖して
新規抗原に対する親和性成熟を受ける(図9)。本発明
のこの観点では、再配列されたヒト重鎖および軽鎖を有
するトランスジェニック非ヒト動物、例えばマウスは一
緒になって、既知抗原に対して低い親和性を有する抗体
を形成する。この動物に既知抗原を注入した場合、その
B細胞は二次応答を受け、その抗原に対する高親和性抗
体の産生を引き起こす。しかしながら、このマウスに既
知抗原と新規抗原の混合物を注入し、次いで新規抗原の
みでチャレンジした場合には、上就の分岐過程により、
新規抗原に対する高親和性抗体が産生される。このアプ
ローチは次の2つの主な利点を有する:第一に、トラン
スジェン構成物が容易に作製できること;そして第二
に、再配列されたトランスジェンは、内因性マウス遺伝
子の再配列を対立遺伝子的におよびアイソタイプ的に排
除でき、よって上述した相同組換えによりそれらの遺伝
子を排除する必要がなくなる。 本発明のこの態様の第
一段階は、既知抗原に対して向けられたIgM 抗体を発現
するヒトハイブリドーマからの、再配列された重鎖およ
び軽鎖遺伝子の単離である。理想的ハイブリドーマは、
良好なマウスT細胞応答を生ぜしめることができる容易
に入手可能な抗原を認識するものである。そのようなヒ
トハイブリドーマは多数現存し、それらとしては、破傷
風毒素、シュードモナス、またはグラム陰性菌といった
有望な抗原と反応するものが幾つか挙げられる〔James
およびBourla(1987) J. Immunol. Methods, 100, 5-40
により概説されている〕。完全な再配列された重鎖遺伝
子はDNAの単一断片(約20 kb)上に単離され、一方3′
エンハンサーを含む再配列されたκ軽鎖遺伝子は第二の
DNA断片(約20 kb)上に単離される。それらの各断片
は、ハイブリドーマから単離されたDNAから作製したλ
ファージライブラリーから単離されたクローンから一緒
に継ぎ合わされる。2つの構成物、即ち重鎖構成物と軽
鎖構成物が作製される。
【0088】重鎖構成物(図10)は。ヒトγ3およびγ
1定常領域を含む25 kb断片とその後方のラット重鎖3′
エンハンサー〔Petterssonら(1990), Nature, 344, 165
-168〕を含む700 bp断片に連結された、再配列されたIg
M 遺伝子を含有する20 kb のハイブリドーマ断片から成
る。軽鎖構成物は、再配列されたκ鎖と3′エンハンサ
ーとを含む20 kb の完全DNA断片である。それら2つの
構成物を、それらがマウスゲノム中の単一部位において
組み込まれるように、同時注入する。トランスジェニッ
クマウスをトランスジェンmRNAの発現についてノーザン
ブロット分析により試験する。次いで尾部血液試料にお
いてFACS分析を実施して、トランスジェンによりコード
されるタンパク質の細胞表面発現を検出する。次いでマ
ウスをもとのハイブリドーマにより認識される抗原で免
疫処置する。尾部血液試料に関してELISA およびFACS分
析を実施してクラススイッチを検出する。最後に、もと
の抗原と一緒に抗原のパネルを同時注入することによ
り、多数の異なる抗原に応答する能力についてマウスを
試験する。尾血液をELISAにより分析して、個々の抗原
に対して向けられた高親和性ヒトIgG 抗体の産生を検出
する。
【0089】このトランスジェニックマウスを、特定抗
原に対して向けられたヒト抗体の産生に使用するために
は、その抗原を、好ましくは、遺伝子をそれから単離し
たところのハイブリドーマに関連する抗原と一緒に、初
めに同時注入する。このハイブリドーマ関連抗原は補抗
原(しばしば第二抗原)と呼ばれ、新規抗原は単に抗原
(または第一抗原)と呼ばれる。可能であれば、第二抗
原は注入前に第一抗原に化学的に架橋結合される。これ
は、第一抗原を一次トランスジェン提示B細胞により取
込みおよび提示させ、それによって第一抗原を認識する
活性化されたヘルパーT細胞のプールの存在を保証す
る。曲型的な免疫処置スケジュールは次の通りである。
第1日:完全フロイントアジュバント中で第二抗原と混
合したまたはそれに架橋結合した第一抗原をマウスに腹
腔内(ip)注射する。第14日:第一抗原(第二抗原を含ま
ない)を不完全フロイントアジュバント中でip注射す
る。第35日:不完全フロイントアジュバント中の第一抗
原を繰り返し注射する。第45日:尾部血液試料において
ELISA により抗体応答について試験する。第56日:良好
な応答者に不完全フロイントアジュバント中の抗原を繰
り返し注射する。第59日:良好な応答者の脾臓を融合す
る。
【0090】本発明の別の観点では、Ig遺伝子をそれか
ら単離したところのハイブリドーマにより認識される抗
原を免疫原として使う。次いでもとの抗体の体細胞突然
変異形を発現する免疫処置動物から、新規トランスジェ
ニックハイブリドーマを単離する。それらの新規抗体
は、もとの抗原に対して一層高い親和性を有するだろ
う。この抗体「鋭敏化(sharpening)」法は、CDR移植術
により作製された(E.P.公開番号239400、1987年9 月30
日に公開)かまたは細菌〔W.D. Huse ら (1989)Scienc
e,246, 1275 〕 もしくはファージ〔T. Clackson ら (1
991) Nature,352, 624〕発現ライブラリーから単離され
た抗体遺伝子にも適用することができる。 再配列されたまたは再配列されていない免疫グロブリン
重鎖および/または軽鎖トランスジェンを含有するトラ
ンスジェニック非ヒト動物 上記態様は、完全に再配列されたまたは完全に再配列さ
れていない重鎖および軽鎖免疫グロブリントランスジェ
ンを使って、異種抗体を産生することのできるトランス
ジェニック非ヒト動物を製造することを記載した。本発
明の更なる観点では、上述の再配列されていないトラン
スジェンおよび再配列されたトランスジェンのいずれか
を組み合わせて使用してトランスジェニック動物におい
て重鎖および軽鎖トランスジェンを提供することによ
り、少なくとも1つの再配列された免疫グロブリントラ
ンスジェンと少なくとも1つの再配列されていない免疫
グロブリントランスジェンを含有するトランスジェニッ
ク動物を製造する。この点に関して、再配列されていな
いトランスジェンは、重鎖または軽鎖のゲノムまたは小
遺伝子座トランスジェン構成物を含んで成ることがで
き、再配列されたトランスジェンは再配列された適当な
トランスジェンを含んで成ることができる。例えば、再
配列されていない小遺伝子座軽鎖トランスジェンを使う
場合、他方の適当なトランスジェンは完全に再配列され
た重鎖トランスジェンである。しかしながら、再配列さ
れたトランスジェンが再配列された免疫グロブリン軽鎖
トランスジェンを含んで成り、そして再配列されていな
いトランスジェンが免疫グロブリン重鎖ゲノムまたは小
遺伝子座トランスジェン、最も好ましくは、関連したA
およびy定常領域を有する再配列されていない重鎖トラ
ンスジェンを含んで成ることが好ましい。
【0091】再配列されたトランスジェンと再配列され
ていないトランスジェンとの組合せは、一次レパートリ
ーB細胞内での多様性の中間レベルを提供する。一次レ
パートリーB細胞において再配列されたトランスジェン
中のCD1,CD2およびCD3 の一次多様性は固定されるけれ
ども、再配列されていないトランスジェンの再配列によ
って生じるCDR1, CDR2およびCDR3の一次多様性は、再配
列された重鎖および軽鎖トランスジェンを使った時に得
られるB細胞クローンよりも高い潜在的多様性を有する
B細胞の一次レパートリーの集団を提供する。そのよう
な一次多様性は、そのような細胞が体細胞突然変異によ
って外来抗原に応答すると、拡大された二次多様性を提
供する。核酸 用語「実質的に相同な」核酸とは、2つの核酸が、また
は指定されたその配列が、適当なヌクレオチド挿入また
は欠失を使って最適に整列しそして比較した時に、少な
くとも約80%のヌクレオチド、通常は少なくとも約90%
〜95%、より好ましくは少なくとも約98%〜99.5%のヌ
クレオチドが同一である(適当なヌクレオチド挿入また
は欠失を伴って)ことを指摘する。あるいは、セグメン
トが選択的ハイブリダイゼーション条件下でその鎖の相
補体にハイブリダイズする時、実質的相同性が存在す
る。核酸は完全細胞中に、細胞溶解物中に、または部分
的に精製されたもしくは実質的に純粋な形で、存在する
ことができる。核酸は、標準技術により、例えばアルカ
リ/SDS 処理、CsClバンド沈降、カラムクロマトグラフ
ィー、アガロースゲル電気泳動および当業界で公知の他
の方法により、他の細胞成分または他の汚染物、例えば
他の細胞性核酸もしくはタンパク質から分離精製された
時、「単離され」または「実質的に純粋にされ」る。F,
Ausubelら編、Current Protocolsin Molecular Biolog
y, Greene Publishing and Wiley-Interscie-nce, New
York(1987)を参照のこと。
【0092】本発明の核酸組成物は、しばしば天然の配
列(修飾された制限部位等を除き)の形であるが遺伝子
配列を提供するための標準技術に従って、cDNA、ゲノム
DNAまたは混合物のいずれかから突然変異されることが
できる。コード配列については、それらの変異は、所望
であればアミノ核配列に影響してもよい。特に生来の
V,D,J,定常,スイッチおよび他の本明細書中に記
載のそのような配列に実質的に相同であるかまたはそれ
から誘導されるDNA配列が考えられる(ここで、「誘
導される」たは、ある配列が別の配列と同一であるかま
たは変更されていることを指摘する)。
【0093】核酸はそれが別の核酸配列と機能的関係に
置かれる時、「作用可能に連結される」という。例え
ば、プロモーターまたはエンハンサーがコード配列の転
写に作用するならば、それらはコード配列に作用可能に
連結されている。転写調節配列については、作用可能に
連結されるとは、連結されたDNA配列が隣接であっ
て、そして2種のタンパク質コード領域を連結すること
が必要な場合には、隣接であって且つ読み枠内であるこ
とを意味する。スイッチ配列については、作用可能に連
結されるとは、該配列がスイッチ組換えを行うことがで
きることを意味する。特定の好ましい態様 本発明の好ましい態様は、実施例16に記載のトランスジ
ェンの単一コピーを含有する動物と交配させた実施例14
に記載のトランスジェン (pHC2) の単一コピーを含有す
る動物、並びに実施例9および12に記載のJH欠失動物
から繁殖させた子孫である。動物はそれらの3つの特性
の夫々について同型接合に交配される。そのような動物
は次の遺伝子型を有する:再配列されていないヒト重鎖
小遺伝子座(実施例14に記載)に単一コピー(染色体の
一倍体1組あたり)、再配列されたヒトκ軽鎖構成物
(実施例16に記載)の単一コピー(染色体の一倍体1組
あたり)、および機能的JHセグメントの全部を除去す
る各内因性マウス重鎖遺伝子座のところの欠失(実施例
9および16に記載)。そのような動物は、JHセグメン
トの欠失について同型接合であるマウスと交配させる
と、JH欠失について同型接合でありそしてヒト重鎖お
よび軽鎖構成物については半接合である子孫を生産す
る。生じた動物に抗原を注入し、それらの抗原に対する
ヒトモノクローナル抗体の産生に使う。
【0094】そのような動物から単離されたB細胞は、
それらが各遺伝子の単一コピーのみを含むため、ヒト重
鎖および軽鎖に関して単一特異性である。更に、それら
はヒトまたはマウス重鎖に関して単一特異性であろう。
というのは、実施例9および12に記載のようにして導入
されたJH領域に広がる欠失によって、両方の内因性マ
ウス重鎖遺伝子コピーが非機能的であるためである。更
に、B細胞の実質的部分はヒトまたはマウス軽鎖に関し
て単一特異性であろう。何故なら、再配列されたヒトκ
軽鎖遺伝子の単一コピーの発現が、B細胞の実質的部分
における内因性マウスκおよびλ鎖遺伝子の再配列を対
立遺伝子的におよびイソタイプ的に排除するだろうから
である。
【0095】好ましい態様のトランスジェニックマウス
は、理想的には生来のマウスのものと実質的に同じであ
る、有意なレパートリーを有する免疫グロブリン産生を
示すだろう。例えば、内因性Ig遺伝子が不活性化されて
いる時、総免疫グロブリンレベルは約0.1 〜10mg/ml血
清、好ましくは0.5 〜5 mg/ml、理想的には少なくとも
約1.0 mg/mlの範囲であろう。IgM からIgG にスイッチ
することができるトランスジェンをトランスジェニック
マウスに導入した時、血清 IgG対IgM の成熟マウス比は
好ましくは約10:1 である。もちろん、IgG対IgM 比
は、未成熟マウスではずっと低いだろう。一般に、脾臓
およびリンパ節B細胞の約10%より多く、好ましくは40
〜80%が、もっぱらヒトIgGタンパク質のを発現する。
【0096】レパートリーは理想的には非トランスジェ
ニックマウス中にしめされるものとほぼ等しく、通常は
少なくとも約10%ほど高く、好ましくは25〜50%または
それ以上高いだろう。マウスゲノム中に導入される異な
るV,JおよびD領域の数に主として依存して、通常少
なくとも約1000種の異なる免疫グロブリン(理想的には
IgG)、好ましくは104 〜106 またはそれ以上の免疫グ
ロブリンが産生されるだろう。それらの免疫グロブリン
は、曲型的には、高抗原性タンパク質の約半分またはそ
れ以上を認識するだろう。抗原性タンパク質としては、
ハトチトクロームC、ニワトリリゾチーム、アメリカヤ
マゴボウのマイトジェン(PWM) 、ウシ血清アルブミン、
アオガイヘモシアニン、インフルエンザ赤血球凝集素、
スタフィロコッカスプロテインA,マッコウクジラミオ
グロビン、インフルエンザノイラミニダーゼおよびλリ
プレッサータンパク質が挙げられるがそれに限定されな
い。上記免疫グロブリンの幾つかは、予め選択された抗
原に対して、少なくとも約10-7 -1、好ましくは10-8 -1
〜10-9 -1またはそれ以上の親和性を示すだろう。
【0097】上記に本発明のトランスジェニック動物の
好ましい態様を記載したけれども、他の態様は本明細書
の開示により、そしてより特定的には実施例に記載のト
ランスジェンにより定義される。トランスジェニック動
物の4つのカテゴリーが定義され得る: I. 再配列されていない重鎖免疫グロブリントランスジ
ェンと再配列された軽鎖免疫グロブリントランスジェン
とを含有するトランスジェニック動物。
【0098】II. 再配列されていない重鎖免疫グロブリ
ントランスジェンと再配列されていない軽鎖免疫グロブ
リントランスジェンとを含有するトランスジェニック動
物。
【0099】III. 再配列された重鎖免疫グロブリント
ランスジェンと再配列されていない軽鎖免疫グロブリン
トランスジェンとを含有するトランスジェニック動物。
【0100】IV. 再配列された重鎖免疫グロブリントラ
ンスジェンと再配列された軽鎖免疫グロブリントランス
ジェンとを含有するトランスジェニック動物。
【0101】トランスジェニック動物の上記カテゴリー
の、好ましい優先順序はI>II>III>IVである。
【0102】トランスジェニック動物の上記カテゴリー
の各々の範囲内で、多数の可能な組合せが好ましい。そ
のような好ましい態様は下記のものを含んで成る。カテゴリーI (a)実施例 7または16の動物と交配させた実施例1と2ま
たは19と20の動物。
【0103】(b)実施例 7または16の断片と同時注入し
た実施例1または19の断片。
【0104】(c)実施例 7または16の動物の交配させた
実施例 5 (H,IまたはJ) , 14, 17または21の動物。
【0105】(d)実施例 7または16の構成物と同時注入
した実施例 5(H)または14の構成物。 (e)実施例 9 ,11,12または13の動物と交配させた上記の
全て。特に好ましい態様は実施例 9または12または13の
動物と交配させた上記の全てである。カテゴリーII (a)実施例 6, 3, 4, 16, 22または23の動物と交配させ
た実施例1,2,19,または20の動物。
【0106】(b)実施例 2または20に記載の断片と同時
注入した実施例1または19に記載の断片。
【0107】(c)実施例 6 (B,CまたはD)または16の
動物と交配させた実施例 5(H,IまたはJ),14,17ま
たは21の動物。
【0108】(d)実施例 6(B)または16と同時注入し
た構成物 5(H)または14。
【0109】(e)実施例 6(B,CまたはD)または16の
動物と交配させた実施例 1, 2, 19または20の動物。
【0110】(f)実施例 5(H,IまたはJ),14, 17,ま
たは21の動物と交配させた実施例 3, 4, 22または23の
動物。
【0111】(g)実施例 9,10,11,12または13の動物と交
配させた上記の全て。カテゴリーIII (a)実施例 8または15の動物と交配させた実施例 3, 4,
22または23の動物。
【0112】(b)実施例 8または15の断片と同時注入し
た実施例3または23の断片。
【0113】(c)実施例 8または15の動物と交配させた
実施例6(B,C,またはD)または16の動物。
【0114】(d)実施例 8または15の構成物と同時注入
した実施例 6(B)または15の構成物。 (e)実施例 9 〜13の動物と交配させた上記の全て。カテゴリーIV (a)実施例 8または15の動物と交配させた実施例7または
16の動物。
【0115】(b)実施例 8または15の構成物と同時注入
した実施例7または16の構成物。
【0116】(c)実施例 9 〜13の動物と交配させた上記
の全て。
【0117】下記は例示のつもりで与えられ、請求の範
囲に対する限定と解釈してはならない。方法および材料 トランスジェニックマススは、Hogan ら、“Manipulati
ng theMouse Embryo:A Laboratory Manual”, Cold Spr
ing Harbor Laboratoryに従って誘導される。
【0118】胚性幹細胞は、発表された方法に従って操
作される〔Terato-carcinomas andembryonic stem cell
s: a practical approach,E.J. Robertson編, IRL Pres
s,Washington, D.C., 1987 :Zjilstraら(1989), Natur
e, 342, 435-438 : およびSchwartzberg,P.ら(1989), S
cience, 246, 799-803〕。
【0119】DNAクローニング方法は、J. Sambrook
ら、Molecular Cloning:A LaboratoryManual,第2版, 1
989, Cold Spring Harbor Labora-tory Press, Cold Sp
ring Harbor, N.Y.に従って実施される。
【0120】オリゴヌクレオチドは、製造業者により与
えられた規格書に従ってApplied Biosystemsのオリゴヌ
クレオチド合成装置上で合成される。
【0121】ハイブリドーマ細胞および抗体は、“Anti
bodies: A LaboratoryManual”, Harlow およびDavid L
ane編,Cold Spring Harbor Labo-ratory (1988) に従
って操作される。
【0122】
【実施例1】ゲノム重鎖ヒトIgトランスジェン この実施例は、マウスの接合子中にマイクロインジェク
トされるヒトゲノム重鎖免疫グロブリントランスジェン
のクローニングとマイクロインジェクションを記載す
る。
【0123】Marzluff, W.F.ら (1985), “Transcripti
on and Translation: A PracticalApproach”,B.D. Ham
mesおよびS.J. Higgins編, 89-129頁, IRL Press, Oxfo
rdにより記載されたようにして、新鮮なヒト胎盤組織か
ら核を単離する。単離された核(またはPBSで洗浄した
ヒト精母細胞)を低融点アガロースマトリック中に埋め
込み、EDTAとプロテイナーゼKで溶解せしめて高分子量
DNAを暴露させ、このDNAを、次いでM. Finney によりCu
rrent Protocols in Molecular Biology(F.Ausubelら
編,John Wiley & Sons,増幅4版, 1988, 第 2.5.1章)
中に記載された通りにアガロース中で制限酵素NotIで消
化する。
【0124】次いでNotIで消化DNAを、Anand, R.ら(198
9), Nucl. Acids Res.,17, 3425-3433 により記載され
たようにパルスフィールドゲル電気泳動により分画す
る。NotI断片に富む画分をサザンブロットハイブリダイ
ゼーションによりアッセイし、この断片によりコードさ
れる1または複数の配列を検出する。そのような配列
は、重鎖Dセグメント、Jセグメント、μおよびγ1定
常領域と一緒に6種のVHファミリーの全部の代表物を
含む〔この断片は、Bermanら (1988)前掲によりHeLa細
胞から670 kb断片として同定されているが、本発明者ら
はヒト胎盤および精子DNA からは830 kb断片としてであ
ることを発見した〕。このNotI断片を含む画分(図4参
照)をプールし、そして酵母細胞中のベクターpYACNNの
NotI部位にクローニングする。プラスミドpYACNNは、pY
AC-4 Neo〔Cook, H.ら (1988),Nucl. Acids.Res., 16,
11817 〕をEcoRI で消化しそしてオリゴヌクレオチド
5′- AAT TGC GGC CGC - 3′の存在下で連結せしめるこ
とにより調製する。
【0125】Brownsteinら(1989), Science, 244, 1348
-1351およびGreen, E.ら(1990), Proc. Natl. Acad. Sc
i. USA, 87, 1213-1217 により記載されたようにして、
重鎖NotI断片を含むYAC クローンを単離する。M. Finne
y 前掲により記載されたパルスフィールドゲル電気泳動
により、高分子量酵母DNAからクローン化 NotI挿入断片
を単離する。1mMのスペルミンの添加によりこのDNA を
凝縮させ、上述の単細胞胚の核に直接マイクロインジェ
クトする。
【0126】
【実施例2】不連続ゲノム重鎖Igトランスジェン VH6、Dセグメント、Jセグメント、μ定常領域およ
び一部のγ定常領域を含むヒトゲノムDNAの110 kb SpeI
断片(図4参照)を実施例1に記載の如くYACクローニ
ングにより単離する。
【0127】記載されたようにV1〜V5の複数コピー
を含む(上述の970-830kb Not I 断片の上流の)570 k
b Hot I 断片を単離する。〔Bsrmanら(1988)前掲は2
つの570 kb HotI 断片を検出した。その各々が多数のV
セグメントを含む。〕 上記2断片を実施例1に記載の如くマウス単細胞胚の核
に同時注入する。
【0128】2つの異なるDNA断片の同時注入は、通
常、染色体内の同じ挿入部位のところでの両断片の結合
を引き起こすだろう。従って、2断片の各々の少なくと
も1コピーを含有する生成トランスジェニック動物の約
50%が、定常領域含有断片の上流に挿入されたVセグメ
ント断片を有するだろう。それらの動物のうち、110 kb
SpeI 断片の位置に関する570 kb Hto I 断片の方向に依
存して、50%がDNA逆位により、そして50%が欠失によ
り、V−DJ結合を達成するだろう。生成したトランス
ジェニック動物からDNAを単離し、そしてサザンブロッ
トハイブリダイゼーションにより両トランスジェンを含
むことがわかったそれらの動物(詳しくは、多数のヒト
Vセグメントとヒト定常領域遺伝子の両方を含む動物)
を、ヒト免疫グロブリン分子を発現する能力について試
験する。
【0129】
【実施例3】生体内相同組換えにより形成されるゲノム
κ軽鎖ヒトIgトランスジェン ヒトκ軽鎖の地図はLorezs. w.ら(1987), Nucl.Acids
Res.,15,9667-9677 に記載されており、そして図11に描
写される。
【0130】Cκ全部、3′ エンハンサー、全Jセグメ
ントおよび少なくとも5つの異なるVセグメントを含有
する450 kb Xho I-Not I 断片(a) を単離し、そして
実施例1に記載の如く単細胞胚の核にマイクロインジェ
クトする。
【0131】
【実施例4】生体内相同組換えにより形成されるゲノム
κ軽鎖ヒトIgトランスジェン 上記成分の全部と更に少なくとも20個のVセグメントと
を含む750Kp MluI-Not I 断片(b)(図11参照)を実
施例1に記載の如く単離し、そしてBssHIIで消化して約
400 kbの断片(c)を生成せしめる。
【0132】450 kb Xho I-Not I 断片(a)と約400
kb MluI-BssHII 断片(c)は、図11に示される Bss
HII制限部位とXhoI制限部位とにより限定される配列重
複を有する。マウス接合子のマイクロインジェクション
によるそれらの2断片の相同組換えは、450 kb Xho I
/Not I 断片(実施例 3)中に見つかるものよりも少な
くとも15〜20個追加のVセグメントを含むトランスジェ
ンをもたらす。
【0133】
【実施例5】重鎖小遺伝子座の作製 A. pGP1およびpGP2の作製 pBR322をEcoRI とStyIで消化し、下記のオリゴヌクレオ
チドと連結せしめることにより、図13に記載の制限部位
を有する147 塩基対の挿入断片を含むpGPIを作製する。
それらのオリゴの概括的重複は図13にも示される。
【0134】オリゴヌクレオチドは下記のものである。
【0135】
【化1】 このプラスミドは、マイクロインジェクション用のベク
ター配列から単離することができる大挿入断片を構築す
るための、希少な切断性Not I 部位により隣接された大
きなポリリンカーを含む。このプラスミドは、pUC 由来
プラスミドに比べて比較的低コピーであるpBR322に由来
する(pGP1は複製開始点の近くにpBR322コピー数調節領
域を保持している)。低コピー数は挿入配列の潜在的毒
性を減少させる。加えて、pGP1は、アンピシリン耐性遺
伝子と前記ポリリンカーとの間に挿入された、trpA由来
の強力な転写ターミネーター配列〔Christie, G.E.ら(1
981), Proc. Natl. Acad. Sci. USA〕も含む。これは、
アンピシリンプロモーターから起こる読み過ごし転写を
防ぐことにより、或る種の挿入断片に関係する毒性を減
少させる。 プラスミドPG2 は、ポリリンカー中に追加
の制限部位(SfiI)を導入するようにpGP1から誘導され
る。pGP1を M1uIとSpeIで消化し、該プラスミドのポリ
リンカー部分の中の認識配列を切除する。 このように
消化されたpGP1に次のアダプターオリゴヌクレオチドを
連結せしめてpGP2を作製する。
【0136】 5′CGC GTG GCC GCA ATG GCC A 3′ 5′CTA GTG GCC ATT GCG GCC A 3′ pGP2は M1uI部位と SpeI部位の間に置かれた追加の Sfi
I部位を含むこと以外はpGP1と同じである。これは挿入
断片を SfiIで並びに NotIで完全に切除することを可能
にする。 B. pRE3(ラットエンハンサー 3 ′)の作製 ラット定常領域の下流に置かれたエンハンサー配列を重
鎖構成物中に導入する。
【0137】Petterssonら(1990), Nature, 344, 165-1
68により記載された重鎖領域 3′エンハンサーを単離
し、クローニングする。次のオリゴヌクレオチド: 5′CAG GAT CCA GAT ATC AGT ACC TGA AAC AGG GCT TGC 3′ 5′GAG CAT GCA CAG GAC CTG GAG CAC ACA CAG CCT TCC 3′ を使って、ラットIGH 3′エンハンサー配列をPCR増
幅せしめる。 こうして形成された3′エンハンサーを
コードする二本鎖DNAをBamHIとSphIで切断し、BamHI/Sp
hIで切断されたpGP2中にクローニングしてpRE3(ラット
エンハンサー3′)を得る。 C.ヒトJ−μ領域のクローニング この領域の実質的部分を、λファージ挿入断片から単離
された2以上の断片を組み合わせることによりクローニ
ングする。図14を参照のこと。
【0138】オリゴヌクレオチド GGA CTG TGT CCC TGT
GTG ATG CTT TTG ATG TCT GGG GCCAAGを使って、全部
のヒトJセグメントを含む6.3 kbBamhI/HindIII断片
〔Matsuda ら(1988),EMBO J., 7, 1047-1051 :Ravetech
ら(1981), Cell, 27, 583-591〕をヒトゲノムDNAライブ
ラリーから単離する。
【0139】オリゴヌクレオチド CAC CAA GTT GAC CTG
CCT GGT CAC AGA CCTGAC CAC CTATGA を使って、エン
ハンサー、スイッチおよび定常領域コードエクソンを含
む隣接の10 kb HindIII/BamHI 断片〔Yasuiら(1989),
Eur. J. Immunol., 19, 1399-1403 〕を同様に単離す
る。
【0140】プローブとしてクローンpMUM挿入断片(pM
UMは、μ膜エクソン1オリゴヌクレオチド:CCT GTG GAC
CAC CGC CTC CAC CTT CAT CGT CCT CTT CCT CCT を使
ってヒトゲノムDNAライブラリーから単離された4 kb Ec
oRI/HindIII断片である)を使って隣接の 3′ 1.5 kbB
amHI 断片を同様に単離し、そしてpUC19 中にクローニ
ングする。 pGP1をBamHIと Bg1IIで消化した後、子ウ
シ腸アルカリホスファターゼで処理する。
【0141】図14からの断片(a)および(b)を前記消化pG
P1中にクローニングする。次いで5′BamHI部位がBamHI
/Bg1II融合により破壊されるように置かれたクローン
を単離する。それをpMUと命名する(図15参照)。pMUをBa
mHIで消化し、図14からの断片(C)を挿入する。HindIII
消化により方向性を確認する。生じたプラスミドpHIG1
(図15)は、JおよびCμセグメントをコードする18 kb
挿入断片を含有する。 D.Cμ領域のクローニング pGP1をBamHIとHindIIIで消化し、次いで子ウシ腸アルカ
リホスファターゼで処理する(図14)。このように処理
された図14の断片(b)および図14の(c)を、BamHI/HindI
IIで切断したpGP1中にクローニングする。HindIII消化
により断片(c)の正しい方向を確認し、Cμ領域をコー
ドする12 kb 挿入断片を含むpCON1 を得る。
【0142】pHIG1 は、NotI部位により隣接されたポリ
リンカー中に SfiI3′部位と SpeI5′部位を有する18 k
b 挿入断片内にJセグメント、スイッチおよびμ配列を
含む故に、再配列されたVDJセグメントに使われるだ
ろう。pCON1 はJ領域を欠き12 kb 挿入断片のみを含む
こと以外はpHIG1 と同じである。再配列されたVDJセ
グメントを含む断片の作製におけるpCON1 の使用につい
ては後に記載する。 E.γ−1定常領域のクローニング(pREG2) ヒトγ−1領域のクローニングは図16に描写される。
【0143】Yamamuraら(1986), Proc. Natl. Acad. Sc
i. USA, 86, 2152-2156は、組込み時に部分的に削除さ
れたトランスジェン構成物からの膜結合ヒトγ−1の発
現を報告している。彼らの結果は、 3′BamHI部位が、5
kb未満のV−Cイントロンを有する経膜再配列されそ
してスイッチされたγ遺伝子コピーを含む配列の輪郭と
なることを指摘している。従って、再配列されていない
スイッチされていない遺伝子では、最初のγ−1 定常エ
クソンの 5′未満から5 kb未満のところで始まる配列中
にスイッチ領域全体が含まれる。従ってそれは5′5.3 k
b HindIII断片中に含まれる〔Ellison, J.W. ら(1982),
Nucleic Acids Res., 10, 4071-4079 〕。 Takahashi
ら(1982),Cell, 29, 671-679 もまた、この断片がスイ
ッチ配列を含むことを報告しており、この断片と7.7 kb
HindIII−BamHI 断片とを合わせると我々がトランスジ
ェン構成物に必要とする配列の全部を含むに違いない。
【0144】γ−1の第三エクソン(CH3)に特異的
である次のオリゴヌクレオチドを使って、γ−1領域を
含むファージクローンを同定し単離する。
【0145】 5′ TGA GCC ACG AAG ACC CTG AGG TCA AGT TCA ACT GGT ACG TGG 3′ 7.7 kb HindIII−Bg1II断片(図16中の断片(a))をHind
III/BG1IIで切断されたpRE3中にクローニングしてpREG
1 を作製する。上流の5.3 kb HindIII断片(図16中の断
片(b))をHindIII消化 pREG1中にクローニングしてpREG
2 を作製する。
【0146】BamHI/SpeI 消化により正しい方向を確か
める。 F.CγとCμの結合 上述したプラスミドpHIG1 はヒトJセグメントとCμ定
常領域エクソンを含む。Cμ定常領域遺伝子セグメント
を含むトランスジェンを提供するために、pHIG1 をSfiI
で消化した(図15)。プラスミドpREG2 も SfiIで消化
し、ヒトCγエクソンとラット 3′エンハンサー配列を
含む13.5 kb 挿入断片を得た。それらの配列を連結し、
31.5 kb 挿入断片上にヒトJセグメント、ヒトCμ定常
領域、ヒトCγ1 定常領域およびラット3′エンハンサ
ー配列を含むプラスミドpHIG3′を作製した(図17)。
【0147】pCON1 を SfiIで消化し、そしてpREG2をSf
iIで消化して得られたヒトCγ領域とラット3′エンハ
ンサーとを含む SfiI断片と連結せしめることにより、
ヒトCμおよびヒトCγ 1をコードするがJセグメント
を含まない第二のプラスミドを作製する。得られたプラ
スミドpCON (図17) は、ヒトCμ、ヒトγ 1 およびラ
ット3′エンハンサー配列を有する 26 kbの NotI/SpeI
挿入断片を含有する。 G.Dセグメントのクローニング ヒトDセグメントをクローニングするための方策は図18
に描写される。Dセグメントを含むヒトゲノムライブラ
リーからのファージクローンを、多様性領域配列〔Y. I
chihara ら(1988), EMBO J., 7,4141-4150 〕に特異的
なプローブを使って同定しそして単離する。次のオリゴ
ヌクレオチドを使用する。
【0148】
【化2】 オリゴ DXP1 を使って同定されたファージクローンか
ら、DLR1,DXP1, DXP′1およびDA1を含む5.2 kb XhoI断
片(図18中の断片(b))を単離する。オリゴ DXP4 を使っ
て同定されたファージクローンから、DXR4,DA4 およびD
K4を含む3.2 kb XbaI断片(図18中の断片(c)を単離す
る。
【0149】図18中の断片(b),(c)および(d)を結合し、
pGP1のXbaI/XhoI部位中にクローニングして、10.6 kb
挿入断片を含むpHIG2 を形成せしめる。
【0150】このクローニングは連続的に行われる。ま
ず、図18の5.2 kb断片(b)と図18の2.2kb断片(d)を子ウ
シ腸アルカリホスファターゼで処理し、そして XhoIとX
baIで消化されたpGP1中にクローニングする。生じたク
ローンを該 5.2 kb および2.2kb挿入断片を用いてスク
リーニングする。5.2 kbおよび2.2 kb挿入断片での試験
に陽性であるそれらのクローンの半分が、BamHI 消化に
より確かめると正しい方向で5.2 kb挿入断片を有する。
次いで図18の3.2 kb Xba I 断片を、断片(b)と(d)を含
むこの中間プラスミド中にクローニングし、pHIG2を形成
せしめる(図9)。このプラスミドは、ユニーク 5 ′Sf
i I部位とユニーク 3′Spe I部位を有するポリリンカー
中にクローニングされた多様性セグメントを含む。完全
なポリリンカーは Not I部位により隣接される。 H. 重鎖小遺伝子座の作製 下記は、1 または複数のVセグメントを含むヒト重鎖小
遺伝子座の作製を説明する。
【0151】Newkirk ら(1988), J. Clin. Invest., 8
1, 1511-1518 のハイブリドーマ中に含まれるVセグメ
ントとして同定されたものに相当する再配列されていな
いVセグメントを、次のオリゴヌクレオチド: 5′−GAT CCT GGT TTA GTT AAA GAG GAT TTT ATT CAC CCC TGT GTC−3′ を使って単離する。
【0152】再配列されていないVセグメントの制限地
図を決定して、消化すると 3′および 5′隣接配列と一
緒に再配列されていないVセグメントを含む約 2 kbの
長さを有するDNA断片を提供するユニーク制限部位を同
定する。 5′プライム配列はプロモーターおよび他の調
節配列を含み、一方 3′隣接配列はV−DJ結合に必要
な組換え配列を提供するだろう。この約3.0 kbVセグメ
ント挿入断片をpGB2のポリリンカー中にクローニング
し、pVH1を形成せしめる。
【0153】pVH1を SfiI で消化し、得られた断片をpH
IG2 の SfiI部位にクローニングして pHIG5′を作製す
る。pHIG2 はDセグメントのみを含むので、生成した p
HIG5′プラスミドはDセグメントと一緒に単一のVセグ
メントを含む。pHIG5 中に含まれる挿入断片のサイズ
は、10.6kb +Vセグメント挿入断片のサイズである。N
otIと SpeIでの消化によりpHIG5 からの挿入断片を切り
出す。J, CμおよびCγ1 セグメントを含む pHIG3′
を SpeIと NotI で消化し、そして上記配列とラット3′
エンハンサーとを含む 3kb断片を単離する。それらの2
断片を一緒にして、 NotIで消化されたpGP1中に連結せ
しめ、1つのVセグメント、9つのDセグメント、6つ
の機能的なJセグメント、Cμ、Cγおよびラット3′
エンハンサーを含むpHIGを作製する。この挿入断片のサ
イズは約43 kb +Vセグメント挿入断片のサイズであ
る。 I. 相同組換えによる重鎖小遺伝子座の作製 前の章で指摘したように、pHIGの挿入断片は単一のVセ
グメントを使用すると約43〜45 kb である。この挿入断
片サイズは、プラスミドベクター中に容易にクローニン
グすることができる限界かまたはそれに近い。より多数
のVセグメントの使用に備えるために、接合子またはE
S細胞内での相同組換えによってラット3′エンハンサ
ー配列、ヒトCμ、ヒトCγ1、ヒトJセグメント、ヒ
トCセグメントおよび多数のヒトVセグメントを含むト
ランスジェンを形成する、重複DNA断片の生体内相同組
換えを下記に記載する。
【0154】ヒトJセグメントを含む6.3 kb BamHI/Hi
ndIII断片(図14中の断片(a)を参照のこと)を、次のア
ダプター: 5′GAT CCA AGC AGT 3′ 5′CTA GAC TGC TTG 3′ 5′CGC GTC GAA CTA 3′ 5′AGC TTA GTT CGA 3′ を使って、 M1uI/SpeIで消化された pHIG5′中にクロ
ーニングする。
【0155】生成したプラスミドをpHIG5′0(重複)と
命名する。このプラスミド中に含まれる挿入断片はヒト
V,DおよびJセグメントを含む。pVHIからの単一Vセ
グメントが使われる時、この挿入断片のサイズは約17 k
b +2 kbである。この挿入断片を単離し、そしてヒト
J,Cμ,γ1およびラット3′エンハンサー配列を含む
pHIG3′からの挿入断片と組み合わせる。両挿入断片
は、2つのDNA 断片の間の約6.3 kbの重複部分を提供す
るヒトJ配列を含む。これらをマウス接合子中に同時注
入すると、生体内相同組換えが起こり、pHIG中に含まれ
る挿入断片と同等のトランスジェンを生成する。
【0156】このアプローチは生体内で形成されるトラ
ンスジェン中への複数のVセグメントの付加を提供す
る。例えば、単一のVセグメントをpHIG5′中に組み込
む代わりに、(1)単離されたゲノムDNA、(2)ゲノムDNA
から誘導された連結されたDNA、または(3)合成Vセグメ
ントレパートリーをコードするDNAの上に含まれる多数
のVセグメントをpHIG2の SfiI部位にクローニングして
pHIG5′VN を作製する。次いで図14のJセグメント断片
(a)を phi5′VN 中にクローニングし、そして挿入断片
を単離する。この挿入断片は、pHIG3′から単離した挿
入断片上に含まれるJセグメントと重複するJセグメン
トと多数のVセグメントを含むようになる、これをマウ
ス接合子の核中に同時注入すると、相同組換えが起こ
り、多数のVセグメントおよび多数のJセグメント、多
数のDセグメント、Cμ領域、Cγ1領域(全てヒト由
来)並びにラット3′エンハンサー配列をコードするト
ランスジェンを生成する。 J. 合成VH領域断片と重鎖DJC構成物との同時注入
による重鎖小遺伝子座の作製 上述した通りに合成VH領域断片を作製しそして単離す
る。それらの断片を、プラスミドpHIG(または全くVセ
グメントを含まないpHIGの変形)の精製NotI挿入断片と
一緒に同時注入する。同時注入されたDNA断片は染色体
の単一部位に挿入される。生じたトランスジェニック動
物の一部は、pHIG構成物中の前記配列の近隣に且つ上流
に置かれた合成V領域を有するトランスジェン挿入断片
を含むだろう。それらの動物は、実施例5(H)に記載
の動物よりも多数のヒト重鎖一次レパートリーを有する
であろう。
【0157】
【実施例6】軽鎖小遺伝子座の作製 A. pEμ1の作製 pEμ1の作製は図21に描写される。オリゴ:5′GAA TGG
GAG TGA GGC TCT CTC ATA CCC TAT TCA GAA CTG ACT3′
を使ってファージクローンから678bpの XbaI−EcoR1 断
片〔J.Banerji ら(1983), Cell,33, 729-740 〕におい
てマウス重鎖エンハンサーを単離する。
【0158】このEμ断片を、EcoR1部位の平滑末端フ
ィリングにより、EcoRV/XbaI消化されたpGP1中にクロ
ーニングする。生じたプラスミドをpEμ1と命名する。 B. κ軽鎖小遺伝子座の作製 κ構成物は、少なくとも1つのヒトVκセグメント、5
つのヒトJκセグメント全部、ヒトJ−Cκエンハンサ
ー、ヒトκ定常領域エクソン、および理想的にはヒト
3′κエンハンサーを含む〔 K.Meyer ら(1989), EMBO
J., 8, 1959-1964〕。マウスのκエンハンサーはCκか
ら9 kb下流である。しかしながら、ヒトではまだ同定さ
れていない。加えて、該構成物はマウス重鎖J−Cμエ
ンハンサーの1コピーも含む。
【0159】この小遺伝子座は4つの成分断片から作製
される: (a)マウス遺伝子座との類推によりヒトCκエクソン
3′ヒトエンハンサーとを含む16 kb SmaI断片(図20中
の断片(a)); (b) 5 つのJセグメント全部を含む5′隣接5 kb SmaI断
片(図20中の断片(b));(c)pEμ1から単離されたマウ
ス重鎖イントロンエンハンサー(この配列は、B細胞発
達のできるだけ初期に軽鎖構成物の発現を誘導するため
に含まれる。重鎖遺伝子は軽鎖遺伝子よりも初期に転写
されるため、この重鎖エンハンサーはおそらくイントロ
ンκエンハンサーよりも早い段階で活性であろう。)お
よび(d)1または複数のVセグメントを含む断片。
【0160】この構成物の調製は次の通りである。ヒト
胎盤DNAをSmaIで消化し、電気泳動によりアガロース上
で分画する。同様に、ヒト胎盤DNAを BamHIで消化し、
電気泳動により分画する。 SmaIで消化したゲルから16
kb 画分を単離し、同様にBamHIで消化したDNAを含むゲ
ルから11 kb 領域を単離する。
【0161】16 kb BamHI 画分を、 XhoIで消化され X
hoI制限消化生成物にフィルインするためにクレノウ断
片DNAポリメラーゼで処理されているラムダ FIX II (St
ratagene,La Jolla, California) 中にクローニングす
る。16 kb SmaI 画分の連結はSmaI 部位を破壊するがXh
oI 部位はそのまま残す。
【0162】11 kb SamHI 画分を、クローニング前に S
amHIで消化したラムダEMBL3(Stratagene,La Jolla, Cal
ifornia) 中にクローニングする。
【0163】各ライブラリーからのクローンを、Cκ特
異的オリゴ:5'GAA CTG TGG CTG CAC CAT CTG TCT TCA
TCT TCC CGC CAT CTG 3'を用いて探査する。
【0164】Cκが SamHIに隣接するように、16 KB Xh
oI 挿入断片をXhoIで切断されたpEμ1 中にサブクロー
ニングする。生じたプラスミドをpKap1 と命名する。図
22を参照のこと。
【0165】上記Cκ特異的オリゴヌクレオチドを用い
てλEMBL3/BamHI ライブラリーを探査し、図20の断片
(d)に相当する11kbクローン を同定する。5kb SmaI断片
(図20の断片(b))をサブクローニングし、次いで SmaI
で消化されたpKap1 中に挿入する。正しい方向のJセグ
メント、CκおよびEμエンハンサーを含むそれらのプ
ラスミドをpKap2 と命名する。
【0166】その後、1または複数のVκセグメントをp
Kap2 の MluI 中にサブクローニングし、ヒトVκセグ
メント、ヒトJκセグメント、ヒトCκセグメントおよ
びヒトEμエンハンサーをコードするプラスミドpKapH
を生ぜしめる。pKapH をNotI で消化することによりこ
の挿入断片を切り出し、そしてアガロースゲル電気泳動
により精製する。こうして精製された挿入断片を上述の
如くマウス接合子の前核中にマイクロインジェクトす
る。 C. 生体内相同組換えによるκ軽鎖小位座の作製 11 kb BamHI断片(図20の断片(d))を、その3′末端が
SFi I部位の方に向くように、BamHIで消化された pGP1
中にクローニングする。生じたプラスミドをpKAPintと
命名する。pKAPint 中のBamHI部位と SpeI 部位との間
のポリリンカー中に1または複数のVκセグメントを挿
入してpKapHVを作製する。pKapHVの挿入断片をNot Iで
の消化により切り出し、そして精製する。pKap2からの
挿入断片をNot I での消化により切り出し、精製する。
それらの2断片の各々は、pKapHVからの断片が、pKap2か
ら得られる挿入断片中に含まれる5 kb SmaI 断片と実質
的に相同であるJκセグメントを含む5kbのDNA配列を含
むという点で、相同性領域を含有する。それ故に、それ
らの挿入断片は、マウス接合子中にマイクロインジェッ
トされると相同組換えして、Vκ,JκおよびCκをコ
ードするトランスジェンを形成することができる。 D. 軽鎖JC構成物と合成Vκ領域断片との同時注入に
よるκ軽鎖小遺伝子座の作製 上記の如く合成Vκ領域断片を作製し、単離する。それ
らのDNA断片をプラスミドpKap2またはプラスミドpKapH
の精製Not I 断片と同時注入する。同時注入されたDNA
断片は染色体の単一部位に挿入される。生成するトラン
スジェニック動物の一部は、pKap2 またはpKapH 構成物
の核配列の近隣で且つ上流に置かれた合成V領域を有す
るトランスジェン挿入断片を含むだろう。それらの動物
は実施例 6(B)に記載のものよりも多数のヒトκ軽鎖
一次レパートリーを有するだろう。
【0167】
【実施例7】免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子の再配列され
発現されるコピーに対応するゲノムクローンの単離 この実施例は、着目の免疫グロブリンを発現する培養細
胞からの免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子のクローニングを
記載する。そのような細胞は、与えられた免疫グロブリ
ン遺伝子の多数の対立遺伝子を含み得る。例えば、ハイ
ブリドーマは 4コピーのκ軽鎖遺伝子を含み、その 2
コピーは融合相手の細胞系からのものであり、2コピー
は着目の免疫グロブリンを発現するもとのB細胞からの
ものである。それらの4コピー のうち、数個が再配列す
ることができるという事実にもかかわらず、ただ1つだ
けが着目の免疫グロブリンをコードする。この実施例に
記載の手順は、κ軽鎖の発現されるコピーの選択的クロ
ーニングを考慮したものである。 A. 二本鎖cDNA ヒトハイブリドーマもしくはリンパ腫からの細胞、また
は細胞表面形態もしくは分泌形態またはその両形態の、
κ軽鎖含有IgMを合成する他の細胞系を、ポリA+ RNA
の単離に使用する。次いで該 RNAを、逆転写酵素を使っ
たオリゴdTプライムされたcDNAの合成に使用する。次い
で一本鎖cDNAを単離し、ポリヌクレオチドターミナルト
ランスフェラーゼ酵素を使って3′末端にG残基を付加
する。次いでC末端が付けられた一本鎖cDNAを精製し、
そしてプライマーとして次のオリゴヌクレオチド: 5′- GAG GTA CAC TGA CAT ACT GGC ATC CCC CCC CCC C
CC -3′を使った第二鎖合成(DNAポリメラーゼ酵素
により触媒される)のための鋳型として用いる。
【0168】二本鎖 cDNAを単離し、発現される免疫グ
ロブリン分子の重鎖及び軽鎖をコードするmRNAの5′末
端のヌクレオチド配列を決定するために使用する。次い
で、それらの発現される遺伝子のゲノムクローンを単離
する。発現される軽鎖遺伝子のクローニング方法は、下
記のB部に要約される。 B. 軽鎖 A部に記載された二本鎖cDNAを変性せしめ、次のオリゴ
ヌクレオチドプライマー: 5 ′-GTA CGC CAT ATC AGC TGG ATG AAG TCA TCA CAT GGC GGG AAG ATG AAG ACA GAT GGT GCA - 3′ を使った第3巡目のDNA合成のための鋳型として使用す
る。
【0169】このプライマーは、κ軽鎖情報の定常部分
に特異的な配列(TCATCA GAT GGC GGG AAG ATG AAG ACA
GAT GGT GCA)並びに新たに合成されるDNA 鎖のPCR 増
幅のためのプライマーとして使うことができるユニーク
配列(GTA CGC CAT ATCAGC TGG ATG AAG)を含む。この
配列を、次の2つのオリゴヌクレオチドプライマー: 5′-GAG GTA CAC TGA CAT ACT GGC ATG - 3 ′ 5′-GTA CGC CAT ATC AGC TGG ATG AAG - 3 ′ を使ってPCR により増幅せしめる。
【0170】PCR 増幅された配列をゲル電気泳動により
精製し、そしてプライマーとして次のオリゴヌクレオチ
ド: 5′-GAG GTA CAC TGA CAT ACT GGC ATG - 3 ′ を使うジデオキシ配列決定反応のための鋳型として使用
する。
【0171】次いで、該配列の最初の42ヌクレオチドを
使って、免疫グロブリン情報が転写された遺伝子を単離
するためのユニークプローブを合成する。このDNAの合
成42ヌクレオチドセグメントを、以後o-カッパと称する
ことにする。
【0172】Ig発現細胞系から単離しそして個別におよ
びSmalを含む幾つかの異なる制限エンドヌクレアーゼと
対に組み合わせて消化したDNAのサザンブロットを、32
P標識したユニークオリゴヌクレオチドo-カッパを用い
て探査する。ユニーク制限エンドヌクレアーゼ部位は、
再配列されたVセグメントの上流に同定される。
【0173】次いでIg発現細胞系からのDNAを SmaI お
よび第二の酵素(Vセグメントの内側に SmaI 部位があ
る場合にはBamHIまたはKpnI)で切断する。いずれかの
生成した非平滑末端をT4DNAポリメラーゼ酵素で処理
し、平滑末端化DNA分子を与える。次いで制限部位をコ
ードするリンカー(断片中にどの部位が存在しないかに
応じてBamHI,EcoRI またはXho I)を付加し、そして対
応するリンカー酵素で切断してBamHI, EcoRIまたはXho
I 末端を有するDNA断片を与える。次いで該DNAをアガロ
ースゲル電気泳動によりサイズ分画し、発現されるVセ
グメントを包含するDNA 断片を含む画分をラムダEMBL3
またはラムダFIX(Stratagene, La Jolla,California)
中にクローニングする。ユニークプローブo-カッパを使
って、Vセグメント含有クローンを単離する。陽性クロ
ーンからDNA を単離し、そしてpKap1のポリリンカー中
にサブクローニングする。生じたクローンをpRKLと命名
する。
【0174】
【実施例8】免疫グロブリン重鎖μ遺伝子の再配列され
発現されるコピーに相当するゲノムクローンの単離 この実施例は、着目の免疫グロブリンを発現する培養細
胞からの免疫グロブリン重鎖μ遺伝子のクローニングを
記載する。この実施例に記載の手順は、μ重鎖遺伝子の
発現コピーの選択的クローニングを考慮したものであ
る。
【0175】実施例 7のA部に記載した如く、二本鎖cD
NAを調製し単離する。この二本鎖cDNAを変性せしめ、次
のオリゴヌクレオチドプライマー: 5′-GTA CGC CAT ATC AGC TGG ATG AAG ACA GGA GAC GAG GGG GAA AAG GGT TGG GGC GGA TGC - 3′ を使った3巡目のDNA合成のための鋳型として使用する。
【0176】このプライマーは、μ重鎖情報の定常部分
に特異的な配列(ACAGGA GAC GAG GGG GAA AAG GGT TGG
GGC GGA TGC )並びに新たに合成されるDNA鎖のPCR 増
幅のためのプライマーとして使うことができるユニーク
配列(GTA CGCCAT ATC AGC TGG ATG AAG) を含む。この
配列を、次の2つのオリゴヌクレオチドプライマー: 5′-GAG GTA CAC TGA CAT ACT GGC ATG - 3 ′ 5′-GTA CTC CAT ATC AGC TGG ATG AAG - 3 ′ を使ってPCR により増幅せしめる。
【0177】PCR 増幅された配列をゲル電気泳動により
精製し、そしてプライマーとして次のオリゴヌクレオチ
ド: 5′-GAG GTA CAC TGA CAT ACT GGC ATG - 3 ′ を使ったジデオキシ配列決定反応のための鋳型として使
用する。
【0178】次いで、該配列の最初の42ヌクレオチドを
使って、免疫グロブリン情報が転写された遺伝子を単離
するためのユニークプローブを合成する。このDNAの合
成42ヌクレオチドセグメントを、以後o-ミューと称する
ことにする。
【0179】Ig発現細胞系から単離しそして個別におよ
びMIuI( MIuIは、JセグメントとμCH1との間を開裂す
る稀少切断性酵素である)を含む幾つかの異なる制限エ
ンドヌクレアーゼと対に組み合わせて消化したDNAのサ
ザンブロットを、32P 標識したユニークオリゴヌクレ
オチドo-ミューを用いて探査する。ユニーク制限エンド
ヌクレアーゼ部位は、再配列されたVセグメントの上流
に同定される。
【0180】次いでIg発現細胞系からの DNAを MIuIお
よび第二の酵素で切断する。次いで MIuIまたは SpeI
アダプターリンカーを末端に連結せしめ、切断して上流
部位を MIuIまたは SpeI に変換する。次いで該DNAを
アガロースゲル電気泳動によりサイズ分画し、発現され
るVセグメントを包含するDNA断片を含む画分をプラス
ミドpGP1中に直接クローニングする。ユニークプローブ
o-ミューを使ってVセグメント含有クローンを単離し、
その挿入断片を MIuI でまたはMIuI/SpeI で切断され
たプラスミドpCON2 中にサブクローニングする。生じた
クローンをpRMGH と命名する。
【0181】
【実施例9】相同組換えによるマウス重鎖遺伝子の欠失 この実施例は、胚性幹(ES)細胞中での相同組換え〔Zjil
straら(1989), Nature, 342,435-438〕による内因性マ
ウス重鎖遺伝子の欠失に次いで、生成したキメラマウス
の生殖細胞にES細胞が移住するようにそれらのES細胞を
マウス胚盤胞胚中に移植すること(Teratocarcinomas an
d embryonic stem cells : a practicalapproach, E.
J. Robertson 編 ,IRL Press, Washington,D.C.,1989)
を記載する。
【0182】重鎖Jセグメントを欠失せしめ、よって重
鎖遺伝子座における好結果の遺伝子再配列の可能性を排
除するようにマウス染色体中に相同に組み換わるであろ
う DNA配列を作製する。この構成物のデザインを下記に
要約する。
【0183】プラスミドpGP1を制限エンドヌクレアーゼ
BamHIおよびBgIIIで消化し、そして再連結せしめてプラ
スミドpGPldlを得る。次いでこのプラスミドを使ってい
わゆる遺伝子破壊(ノックアウト)構成物を構築する。
【0184】マウスゲノムの所望の標的領域に相同な配
列を得るために、非リンパ系組織(例えば肝臓)から誘
導されたファージライブラリーから、次のJH 特異的オ
リゴヌクレオチドプローブ: を使ってマウスゲノムクローンを単離する。
【0185】陽性のファージクローンから誘導されたDN
Aから、このプローブとハイブリダイズする3.5 kb KpnI
−EcoRI 断片を単離する。この断片を KpnI/EcoRI で
消化されたpGP1d1中にサブクローニングしプラスミドpM
K01 を形成せしめる。次のようにして、組換え体の薬剤
選択のためのネオマイシン耐性(Neo) 遺伝子および単純
ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)遺伝子〔M. Cap
ecchi (1989),Science, 244, 1288-1292〕 を単離す
る。プラスミドpGEM7(KJ1) (M.A. Rudnicki, 3/15/89)
をHindIIIで消化し、そして DNA po1Iのクレノウ形で末
端を平滑化する。次いで該DNA をEcoRI で消化してpGKN
eo断片を単離し、次のオリゴヌクレオチド: 5′−AATTCATG− 3′ をアダプターとして使って、SphI/ NaeIで切断されたp
MK01 中にクローニングする。
【0186】生じたプラスミドをpMK02 と命名する。こ
のプラスミドは、マウスJH セグメントを隣接する配列
により隣接されたネオマイシン耐性遺伝子を含む。この
プラスミドを単独で重鎖遺伝子の欠失に使うことができ
る。あるいは、ヘルペスTK遺伝子を該構成物に付加し
て、Neo 耐性クローンにおける相同組換え現象の頻度を
向上させることができる〔M. Capecchi (1989), Scienc
e, 244, 1288-1292〕。これは次のようにして行われ
る。pGEM7(TK) (M.A. Rudnicki)のEcoRI− HindIIIPGKT
K断片を単離し、そしてアダプターとして次のオリゴヌ
クレオチド: 5′−AATTGTAC− 3′ 5′−AGCTGTAC− 3′ を使って pMK02の KpnI部位にクローニングする。生じ
たプラスミドを pMK03と命名する。
【0187】相同組換えの全体効率を更に向上させるた
めに、標的配列に相同であるDNAの大セグメントを構成
物に付加する。下記のCμ特異的オリゴヌクレオチド とハイブリダイズする13 kb EcoRI 断片を使う。
【0188】Cμコードエクソンを含むこの12 kb 断
片、または 5′EcoRI末端を含む該断片の実質的部分
を、マウスゲノムファージライブラリーから単離し、そ
してpMK03 のEcoRI 部位中にサブクローニングする。生
じたプラスミドをpMK04 と命名する。
【0189】pMK04 の挿入断片をNotIでの消化により単
離し、次いでES細胞中にエレクトロポレーションする。
相同組換え体クローンを単離し、Zjilstraら(1989), Na
ture, 342, 435-438により記載された通りにJH 欠失マ
ウスの作製に使用する。
【0190】
【実施例10】相同組換えによるマウス軽鎖位の欠失 この実施例は、胚性幹細胞中での相同組換えによる内因
性マウス軽鎖遺伝子の欠失を記載する(前記実施例を参
照のこと)。
【0191】マウス染色体中に相同に組み換わりκ軽鎖
定常領域エクソンを欠失せしめるDNA配列を作製する。
この構成物のデザインを下記に要約する。
【0192】プラスミドpGEM7(TK)Sal (M.A. Rudnicki,
Whitehead Institute)から2 kb BamHI−EcoRI チミジ
ンキナーゼ断片を単離し、そして次のオリゴヌクレオチ
ドアダプター: 5′−AATTTTG− 3′ を使って、BamHI/ SfiIで消化されたpGP1中にサブクロ
ーニングする。生じたプラスミドをpKK01 と命名する。
【0193】マウスゲノムの所望の標的領域に相同な配
列を得るために、非リンパ系組織(例えば肝臓)から誘
導されたファージライブラリーから、o-MKC と命名され
た次のマウスκ軽鎖特異的オリゴヌクレオチド: を使ってマウスゲノムクローンを単離する。
【0194】陽性のクローンからDNA を単離し、そして
o-MK3 プロープとハイブリダイズする2.3kb BglII断片
〔P.S. Neumaier および H.G.Zachau(1983). Nucl. Ac
ids Res., 11, 3631-3656 〕を単離する。o-MK3 プロー
プの配列は次の通りである: この2.3 kb BglII断片を、該断片の 3′末端がポリリン
カー部位に隣接するように、BamHIで消化されたpKK01
中にサブクローニングする。
【0195】オリゴヌクレオチドo-MKC とハイブリダイ
ズする4 kb SphI−HpaI DNA断片を陽性ファージクロー
ンから単離し、そしてEcoRI/SphIで消化されたプラス
ミドpKK02 中にサブクローニングする。生じたプラスミ
ドをpKK03 と命名する。
【0196】pGEM7(KJ1)Sal (M.A. Rudnicki, 3/15/89)
の2 kb SalI-EcoRl断片を単離し、リンカーアダプター
を使ってプラスミドpKK03 のBssHII部位中にサブクロー
ニングする。これは、まず次の3つのオリゴヌクレオチ
ド: 5′−CAGCGCGC− 3′ 5′−CATCGCGCGCTG− 3′ 5′−AATTGCGCGCTG− 3′ の混合物を2 kb SalI- EcoRI 断片に連結せしめること
によって行われる。次いでこの連結混合物を酵素BssHII
で消化し、そしてBssHIIで消化されたプラスミドpKK03
に連結せしめる。生じたプラスミドをpKK04 と命名す
る。pKK04 の挿入断片を NotIでの消化により単離し、
次いでES細胞中にエレクトロポレーションする。相同組
換え体クローンを単離しZjilstraら(1989), Nature, 34
2, 435-438により記載された通りにCκ 欠失マウスの
作製に使用する。
【0197】
【実施例11】相同組換えによりマウスκ軽鎖遺伝子の
不活性化 この実施例は、胚性幹(ES)細胞中での相同組換えによる
マウス内因性κ遺伝子座の不活性化に次いで、不活性化
されたκ対立遺伝子を有する標的ES細胞を初期マウス胚
(胚盤胞)中に注入することによるマウス生殖細胞系中
への変異遺伝子の導入を記載する。
【0198】方策は、Jκ遺伝子とCκセグメントに及
ぶ遺伝子座の4.5kbセグメントが欠失されそして選択マ
ーカーneoにより置き換えられているマウスκ遺伝子座
に相同なDNA配列を含むベクターを用いた相同組換えに
よりJκ遺伝子とCκ遺伝子を欠失せしめることであ
る。κ標的ベクターの作製 プラスミドpGEM7(KJ1) (M.A. Rudnicki,Whitehead Inst
itute)は、クローニングベクターpGEM-72f(+) 中のマウ
スホスホグリセレートキナーゼ(pgK) プロモーター〔Xb
a I/I/ Taq I 断片;Adra,C.N.ら(1987),Gene, 60, 6
5-74〕の転写調節下に、トランスフェクトされたES細胞
の薬剤選択に使うネオマイシン耐性遺伝子(neo)を含
む。このプラスミドは、マウスpgK遺伝子の 3′領域に
由来する。neo 遺伝子にとって異種のポリアデニル化部
位〔PvuII/HindIII断片;Boer, P.H.ら(1990)Biochem
ical Genetics,28, 299-308〕も含む。このプラスミド
をκ標的ベクターの作製のための出発点として使った。
第一段階はneo 発現カセットの3′のκ遺伝子座に相同
な配列を挿入することであった。
【0199】Cκ遺伝子座に特異的なオリゴヌクレオチ
ドプローブ: 5′-GGC TGA TGC TGC ACC AAC TGT ATC CAT CTT CCC ACC ATC CAG-3′ およびJκ遺伝子セグメントに特異的なオリゴヌクレオ
チドプローブ: 5′-CTC ACG TTC GCT GGG ACC AAG CTG GAG CTG AAA CGT AAG- 3′ を使って、肝臓DNAから誘導されたゲノムファージライ
ブラリーから、マウスκ鎖配列(図25a)を単離した。
【0200】陽性ファージクローンから2断片におい
て、即ち1.2kb BglII/SacI断片と6.8 kb SacI断片とし
て、マウスCκセグメントの3'に及ぶ8 kb BglII/SacI
断片を単離し、それをBglII/SacIで消化されたpGEM(KJ
1) 中にサブクローニングし、プラスミドpNEO-K3'を作
製した(図25b).Jκ領域の 5′に及ぶ1.2 kb EcoRI
/Sph I 断片も陽性ファージクローンから単離した。こ
の断片の Sph I 部位に Sph I/Xba I/ BglII/EcoRI
アダプターを連結せしめ、生じたEcoRI 断片をneo遺伝
子および下流の3′κ配列と同じ5′→3′方向で、 EcoR
Iで消化された pNEO-K3′に連結せしめ、pNEO-K5′3
(図25c)を作製した。
【0201】次いで、Mansour ら〔(1988) Nature, 33
6,348-352〕により記載されたようにして、相同組換え
体を有するESクローンの富化に備えるために、該構成物
中に単純ヘルペスウイルス(HSV) チミジンキナーゼ(TK)
遺伝子を含めた。プラスミドpGEM7(TK) (M.A. Rudnick
i)からHSV TKカセットを得た。このカセットは、pGEM7
(KJ1)について上述したのと同様に、マウスpgk プロモ
ーターとポリアデニル化配列とにより隣接されたHSV TK
遺伝子の構造配列を含む。pGEM7(TK)の EcoRI部を Bam
HI部位に変更し、そしてTKカセットを BamHI/HindIII
断片として切り出し、pGP1b 中にサブクローニングして
pGP1b-TKを作製した。このプラスミドをXhoI部位のとこ
ろで線状化し、Jκの 5′からのゲノム配列とCκの
3′からのゲノム配列とにより隣接された neo遺伝子を
含む、pNEO-K5'3'からの XhoI断片をpGP1b-TK中に挿入
し、標的ベクターJ/C KI(図25d)を作製した。J/C KI
を用いた相同組換え後のゲノムκ遺伝子座の推定構造を
図25eに示す。κ対立遺伝子の標的不活性化を伴うES細胞の作製および
分析 本質的には記載された通りに〔Robertson, E.J.(1987)
Teratocarcinomas andEmbryonic Stem Cells: A Practi
cal Approach,E.J. Robertson編 (Oxford: IRL Press),
71-112頁〕、分裂上不活性なSNL76/7 支持細胞層〔McM
ahon, A.P.およびBradly, A. (1990)Cell, 62, 1073-10
85 〕上でAB-1細胞を増殖させた。
【0202】κ鎖不活性ベクター J/C K1を NotIで消化
し、そして記載された方法〔Hasty,P.R. ら (1991) Nat
ure, 350, 243-246〕によりAB-1細胞中にエレクトロポ
レートせしめた。エレクトロポレートされた細胞を100
mm皿上に2〜5 ×106 細胞/皿 の密度で塗沫した。24時
間後、G418(200 μg/mlの活性成分)および FIAU(0.5
μM)を培地に添加し、10〜11日に渡り薬剤耐性クロー
ンを発達させた。クローンを採取し、トリプシン処理
し、2 部分に分け、更に増殖させた。次いで、各クロー
ンからの細胞の半分を凍結させ、もう半分をベクターと
標的配列との間の相同組換えについて分析した。
【0203】サザンブロットハイブリダイゼーションに
よりDNA分析を行った。記載の如く〔Laird, P.W. ら(19
91), Nucl. Acids Res., 19〕クローンからDNA を単離
し、XbaIで消化し、そして特徴的プローブとして図25e
に指摘の800 bp EcoRI/XbaI断片を用いて探査した。こ
のプローブは野生型遺伝子座中の3.7 kb XbaI断片、お
よび標的ベクターと相同組換えされた遺伝子座中の特徴
的1.8 kbバンドを検出した(図25a およびe を参照のこ
と)。サザンブロット分析によりスクリーニングした 3
58個のG418およびFIAU耐性クローンのうち、4 つのクロ
ーンがκ遺伝子座での相同組換えを示す1.8 kb XbaIバ
ンドを表した。それらの4 つのクローンを更に BelII,
SacIおよび PstI酵素で消化し、κ対立遺伝子のうちの
1つに該ベクターが相同的に組み込まれたことを確認し
た。特徴的800 bp EcoRI/XbaI断片を用いて探査する
と、野生型DNAの BelII, SacIおよび PstI消化物がそれ
ぞれ4.1, 5.4および7 kbの断片を生成し、一方標的され
たκ対立遺伝子の存在はそれぞれ2.4, 7.5および5.7 kb
の断片により指摘された(25a および e を参照のこ
と)。 XbaI消化物により検出された4つの陽性クロー
ンの全てが、κ軽鎖のところでの相同組換えに特徴的な
期待の BelII, SacIおよび PstI制限断片を示した。不活性化されたκ鎖を有するマウスの作製 前の章できさいした4つの標的されたESクローンを、記
載の如く〔 Bradley,A. (1987), Teratocarcinomas and
Embryonic StemCells: A Practical Approach, E.J. R
obertson 編 (Oxford: IRLPress), 113-151 頁〕C57B1/
6J胚盤胞中に注入し、そして偽妊婦雌の子宮に移し、注
入ES細胞から誘導された細胞と宿主の胚盤胞との混合物
を表すキメラマウスを作製する。黒いC57B1/6J背景上に
おける、ES細胞系に由来するアグーチ皮膜着色の存在に
より、キメラ動物を外観的に同定する。AB1 ES細胞はXY
細胞系であるので、雄のキメラをC57BL/6Jと交配させ、
子孫を優性のアグーチ皮膜色の存在について観察する。
アグーチ子孫はESゲノムの生殖細胞伝達の指標である。
κ鎖不活性化についてのアグーチ子孫の異型接合性は、
標的されたESクローンの同定に用いた特徴的プローブを
使って、尾部生検試料からのDNAのサザンブロット分析
により確かめる。次いで、異型接合体の兄弟−姉妹交配
を行い、κ鎖変異に対して同型接合性のマウスを生成せ
しめる。
【0204】
【実施例12】相同組換えによるマウス重鎖遺伝子の不
活性化 この実施例は、胚性幹(ES)細胞中での相同組換えによる
内因性マウス免疫グロブリン重鎖遺伝子の活性化を記載
する。方策は、JH領域が欠失されそして選択マーカー遺
伝子neo により置き換えられている重鎖配列を含むベク
ターとの相同組換えにより内因性重鎖Jセグメントを欠
失せしめることである。重鎖標的ベクターの作製H4 特異的オリゴヌクレオチドプローブ:5′−ACT AT
G CTA TGG ACT ACT GGG GTC AAG GAA CCT CAG TCA CCG
− 3′を使って、D3 ES 細胞系〔Gossler ら(1986), Pr
oc. Natl. Acad.Sci. U.S.A. , 83,9065-9069 〕から誘
導されたゲノムファージライブラリーから、JH 領域を
含むマウス重鎖配列(図26a)を単離した。
【0205】JH 領域に及ぶ3.5 kbゲノム SacI/StuI
断片を陽性ファージクローンから単離し、それを SacI
/SmaI で消化されたpuc18中にサブクローニングした。
生じたプラスミドをpuc18 JH と命名した。プラスミド
pGEM7(KJ1)から、トランスフェクトされたES細胞の薬剤
選別に用いるネオマイシン耐性遺伝子(neo)を誘導し
た。pGEM7 (KJ1) 中のHindIII部位を合成アダプダーの
付加によって SalI部位に変更し、そして XbaI/SalIで
の消化によりneo 発現カセットを切り出した。次いで
neo断片の両端を DNA polIのクレノウ形での処理により
平滑末端化し、puc18 JH の NaeI部位中にサブクロー
ニングし、プラスミド puc18 JH -neo (図26b) を作製
した。
【0206】標的ベクターの更なる作製は、プラスミド
pGP1b の誘導体において行った。pGP1b を制限酵素 Not
Iで消化し、アダプターとして次のオリゴヌクレオチ
ド:5′−GGC CGC TCG ACG ATA GCC TCG AGG CTA TAA A
TC TAG AAG AAT TCC AGC AAA GCT TTG GC− 3′と連結
せしめた。
【0207】生じたプラスミド(pGETと命名)を使って
マウス免疫グロブリン重鎖標的構成物を構築した。
【0208】Mansour ら〔(1988) Nature, 336, 348-35
2〕 により記載されたようにして、相同組換え体を有す
るESクローンの富化に備えるために、該構成物中に単純
ヘルペスウイルス(HSV) チミジンキナーゼ(TK)遺伝子を
含めた。プラスミドpGEM(TK)からEcoRI とHindIIIでの
消化によりHSV TK遺伝子を得た。このTK DNA断片をpGMT
のEcoRI 部位とHindIII部位との間にサブクローニング
し、プラスミドpGMT-TK(図26c)を作製した。
【0209】標的配列に対する広範な相同性領域を提供
するために、陽性ゲノムファージクローンから XhoIで
のDNAの限定消化および XbaIでの部分消化により、JH
領域の5′に位置する5.9 kbのゲノムXbaI/XhoI断片を
誘導した。図26aと26bに示されるように、このXbaI部位
はゲノムDNA中には存在せず、むしろ陽性ファージクロ
ーン中のクローン化ゲノム重鎖挿入断片にすぐに隣位す
るファージ配列から誘導される。この断片を XbaI/Xho
Iで消化されたpGMT-TK 中にサブクローニングし、プラ
スミド pGMT-TK-JH 5′(図26d)を作製した。
【0210】作製の最終段階は、neo 遺伝子および隣接
するゲノム配列を含むpuc18 JH -neoからの3 kb EcoRI
断片の切除を含んだ。この断片をクレノウポリメラーゼ
により平滑末端にし、同様に平滑末端化されたpGMT-TK-
H 5′のXhoI部位中にサブクローニングした。生じた
構成物 JHK01 (図26e) は、JH 遺伝子座を隣接する
6.9 kbのゲノム配列を含み、neo 遺伝子が中に挿入され
ているJH 領域に及ぶ2.3 kbの欠失を有する。図25f
は、標的用構成物との相同組換え後の内因性重鎖対立遺
伝子の構造を示す。
【0211】
【実施例13】標的されたES細胞の生産および分析 本質的には記載された通りに〔Robertson, E.J.(1987)
Terato-carcinomas and embryonic stem cells: A Prac
tical Approach,E.J. Robertson編 (Oxford: IRL Pres
s), 71-112頁〕、分裂上不活性なSNL76/7支持細胞層〔M
cMahon, A.P.およびBradley, A. (1990)Cell, 62, 1073
-1085 〕上でAB-1細胞を増殖させた。
【0212】重鎖不活性ベクター JHKO1 を NotI で消
化し、そして記載された方法〔Hasty, P.R. ら (1991)
Nature, 350, 243-246〕によりAB-1細胞中にエレクトロ
ポレートせしめた。エレクトロポレートされた細胞を10
0mm皿上に 2 〜 5 ×106 細胞/皿の密度で塗沫した。2
4時間後、G418(200mg/mlの活性成分) およびFIAU
(0.5mM)を培地に添加し、8 〜10日間に渡り薬剤耐性
クローンを発達させた。クローンを採取し、トリプシン
処理し、2部分に分け、更に増殖させた。次いで、各ク
ローンからの細胞の半分を凍結させ、もう半分をベクタ
ーと標的配列との間の相同組換えについて分析した。
【0213】サザンブロットハイブリダイゼーションに
よりDNA分析を行った。記載の如く〔Laird, P.W. ら(19
91), Nucl. Acids Res., 19〕クローンからDNA を単離
し、HindIIIで消化し、そして特徴的プローブとして図2
6fに示される500 bp EcoRI/StuI断片を用いて探査し
た。このプローブは野生型遺伝子座中の 2.3 kb HindII
I断片を検出し、一方で5.3 kbバンドは標的用ベクター
と相同組換えされた標的遺伝子座に特徴的である。(図
26aおよびfを参照のこと)。重鎖対立遺伝子の標的破壊
を確かめるために酵素 SpeI, StuIおよびBamHIで追加の
消化を行った。
【0214】
【実施例14】重鎖小遺伝子座トランスジェン A. 大型のDNA配列をクローニングするためのプラスミ
ドベクターの作製 1. pGP1a プラスミドpBR322を EcoRIと StyIで消化し、そして次
のオリゴヌクレオチド: オリゴ−42 5′− caa gag ccc gcc taa tga gcg ggc ttt ttt ttg cat act gcg gcc gct − 3′ オリゴ−43 5′− aat tag cgg ccg cag tat gca aaa aaa agc ccg ctc att agg cgg gct − 3′ と連結せしめた。
【0215】生じたプラスミドpGP1aを、稀少切断性制
限酵素 NotIにより切除することができる非常に大型のD
NA構成物をクローニングするために改変する。それは、
trpA遺伝子に由来する強力な転写終結シグナル〔Christ
ie, G.E.ら (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78,4
180〕の下流に(アンピシリン耐性遺伝子AmpRに関し
て) NotI制限部位を含む。この終結シグナルは、AmpR
遺伝子からの読み過ごし転写を排除することにより、 N
otI部位中に挿入されるコード配列の潜在的毒性を低下
させる。加えて、このプラスミドは、pBR322コピー数調
節領域を保持しているために pUCプラスミドに比較して
低コピー数である。この低コピー数も挿入配列の潜在的
毒性を更に低下させ、そしてDNA複数による大型挿入断
片に対する選択を減少させる。 2. pGP1b pGP1a を NotIで消化し、そして次のオリゴヌクレオチ
ド: オリゴ−47 5′− ggc cgc aag ctt act gct gga tcc tta att aat cga tag tga tct cga ggc − 3′ オリゴ−43 5′− ggc cgc ctc gag atc act atc gat taa tta agg atc cag cag taa gct tgc − 3′ と連結せしめた。
【0216】生じたプラスミド pGP1bは、NotIにより隣
接された短いポリリンカー領域を含む。これは、NotIに
より切除することができる大型挿入断片の作製を容易に
する。 3. pGPe 次のオリゴヌクレオチド: オリゴ−44 5′− ctc cag gat cca gat atc agt acc tga aac agg gct tgc − 3′ オリゴ−47 5′− ctc gag cat gca cag gac ctg gag cac aca cag cct tcc − 3′ を使って、ポリメラーゼ連鎖反応技術によりラット肝臓
DNA由来の免疫グロブリン重鎖 3′エンハンサー〔S. Pe
ttersonら (1990),Nature, 344, 165-168〕を増幅せし
めた。
【0217】増幅生成物を BamHIとSphIで消化し、そし
て BamHI/SphIで消化されたpNNO3(pNNO3 は、記載順に
次の制限部位: NotI, BamHI,NcoI, ClaI, EcoRV, Xba
I, SacI, XhoI, SphI, PstI,BglII,EcoRI, SmaI, Kpn
I, HindIIIおよびNotIを有するポリリンカーを含む pUC
由来のプラスミドである)中にクローニングした。生じ
たプラスミドpRE3を BamHIとHindIIIで消化し、そして
ラットIg重鎖3′エンハンサーを含む挿入断片を、 BamH
I/HindIIIで消化されたpGP1b 中にクローニングした。
生じたプラスミドpGPe(図27および表1)は、配列をク
ローニングすることができそして次いで NotI消化によ
って3′エンハンサーと一緒に切り出すことができる幾
つかのユニーク制限部位を含有する。
【0218】
【表1】 B. IgMを発現する小遺伝子座トランスジェン pIGM1の
作製 1. J−μ定常領域クローンの単離およびpJM1の作製 ファージベクターλ EMBL3/SP6/T7 ( Clonetech Labora
tories,Inc., Palo Alto, CA ) 中にクローニングした
ヒト胎盤ゲノムDNAライブラリーを、ヒト重鎖J領域特
異的オリゴヌクレオチド: オリゴ−1 5′− gga ctg tgt ccc tgt gtg atg ctt ttg atg tct ggg gcc aag − 3′ を用いてスクリーニングし、そしてファージクローンλ
1.3を単離した。6つのJセグメント全部並びにDセグ
メントDHQ52 および重鎖J−μイントロンエンハンサー
を含む、6 kbのHindIII/KpnI断片をこのクローンから
単離した。同じライブラリーをヒトμ特異的オリゴヌク
レオチド: オリゴ−2 5′− cac caa gtt gac ctg cct ggt cac aga cct gac cac cta tga − 3′ を用いてスクリーニングし、ファージクローンλ2.1 を
単離した。μスイッチ領域およびμ定常領域エクソンの
全部を含む、10.5 kbのHindIII/XhoI断片をこのクロー
ンから単離した。それらの2断片を、KpnI/XhoIで消化
された pNN03 と一緒に連結せしめ、プラスミド pJM1を
得た。 2. pJM2 ファージクローンλ2.1から4kbのXho I断片を単離し
た。該断片は、ある種のIgD 発現B細胞中でのμ欠失に
関係するいわゆるΣμ要素〔H. Yasui ら(1989) Eur.J.
Immunol., 19, 1399〕を含む、pJM1の配列にすぐ下流の
配列を含有する。この断片をDNAポリメラーゼIのクレノ
ウ断片で処理し、そしてXho I で切断されクレノウで処
理されたpJM1と連結せしめる。生じたプラスミドpJM2
(図28は、内部の Xho I 部位を失っているが、クレノ
ウ酵素による不完全な反応の結果として3′ Xho Iを保
持している。pJM2は完全なヒトJ領域、重鎖J−μイン
トロンエンハンサー、μスイッチ領域およびμ定常領域
エクソン全部、並びにμ欠失に関係する2つの0.4 kbの
直接反復σμおよびΣμを含有する。 3. D領域クローンの単離およびpDHIの作製 次のヒトD領域特異的オリゴヌクレオチド: オリゴ−4 5′− tgg tat tac tat ggt tcg ggg agt tat tat aac cac agt gtc −3′ を用いて、ヒト胎盤ゲノムライブラリーをD領域クロー
ンについてスクリーニングした。ファージクローンλ4.
1とλ4.3を単離した。D要素DK1, DN1およびDM2〔Y.
Ichihara ら(1988) EMBO J.,7, 4141〕 を含む5.5kb
の Xho I 断片をファージクローンλ4.1から単離した。
D要素DLR1 , DXP1, DXP 1 およびDA1を含む上流に
隣接5.2kb Xho I断片をファージクローンλ4.3 から単
離した。それらのD領域 XhoI断片の各々をプラスミド
ベクターpSP72(Promega, Madison, WI)のSalI 部位中
にクローニングし、2配列を結合するXho I部位を破壊
した。次いで上流断片をXho IとSmaI で切り出し、下
流断片をEcoRVとXho Iで切り出した。得られた単離断
片を SalIで消化されたpSP2と一緒に連結せしめ。プラ
スミドpDHIを与えた。pDHIは、少なくとも7つのDセグ
メントを含みXho I( 5′)およびEcoRV ( 3′)で切
り出すことができる10.6kbの挿入断片を含有する。 4. pCOR1 プラスミドpJM2をAsp718(KpnIのアイソシゾマー)で消
化し、そして DNAポリメラーゼIのクレノウ断片を用い
て突出末端をフィルインした。次いで生じたDNAを ClaI
で消化し、挿入断片を単離した。この挿入断片をpDNAの
XhoI/EcoRV挿入断片およびXho I/ClaI 消化 pGPeと
連結せしめ、pCOR1を作製した(図29)。 5. pVH251 2つのヒト重鎖可変領域セグメントVH 251 とVH 105
〔C. G.Humphries ら(1988) Nature, 331,446〕を含む1
0.3 kbのゲノムHindIII断片をpSP72 中にサブクローニ
ングし、プラスミドpVH251を与えた。 6. pIGM1 プラスミドpCOR1を XhoIで部分消化し、そして pVH251
の単離Xho I/SalI挿入断片を上流の Xho I部位にクロ
ーニングし、プラスミドpIGMl (図30)を作製した。pI
GMlは、下記の配列要素の全部が Not Iでの消化により
ベクター配列を含まない単一断片において単離すること
ができそしてマウス胚の前核中にマイクロインジェクト
することができるように、2つの機能的ヒト可変領域セ
グメント、少なくとも8つのヒトDセグメント、6つのヒ
トJH セグメント全部、ヒトJ−μエンハンサー、ヒ
トσμ要素、ヒトμスイッチ領域、 ヒトμコードエク
ソン 全部および Σμ要素を、 ラット重鎖3′ エンハ
ンサーと共に含有する。 C. IgMとIgGを発現する小遺伝子座トランスジェンpHCl
の作製 1. γ定常領域クローニングの単離 次のヒトIgG 定常領域遺伝子に特異的なオリゴヌクレオ
チド: オリゴ−29 5′−cag cag gtg cac acc caa tgc cca tga gcc cag aca ctg gac −3 を用いてヒトゲノムライブラリーをスクリーニングし
た。ファージクローンλ29.4とλ29.5を単離した。γス
イッチ領域を含むファージクローンλ29.4の 4 kbHindI
II断片を使って、ファージベクターラムダFIXTM 11(Str
atagene, La Jolla,CA) 中にクローニングされたヒト
胎盤ゲノム DNA ラブラリーを探査した。ファージクロ
ーンλSg1.13を単離した。異なるγクローンのサブクラ
スを決定するために、鋳型として上記 3つのファージク
ローンの各々のサブクローンを使ってそしてプライマー
として次のオリゴヌクレオチド: オリゴ−67 5′−tga gcc cag aca ctg gac− 3′ を使って、ジデオキシ配列決定反応を実施した。
【0219】ファージクローンλ29.5とλSγ1.13は両
方ともγ1サブクラスであると決定された。 2. pγe1 γ1コード領域を含むファージクローン λ29.5の7.8kb
Hind III断片を pUC18中にクローニングした。生じた
プラスミドpLTlをXhoI で消化し、クレノウ断片で処理
し、そして再連結せしめて内部Xho I部位を破壊した。
生じたクローンpLTlxKをHindIIIで消化し、挿入断片を
単離し、pSP72 中にクローニングしてプラスミドクロー
ン pLTlxK を作製した。ポリリンカーXho I部位とヒト
配列由来のBamHI 部位にところでのpLTlxKs の消化は、
γ1定常領域コードエクソンを含む7.6 kb断片を与え
た。この7.6 kb Xho I/BamHI断片を、ファージクロー
ンλ29.5からの隣接の下流4.5 kb BamHI断片と一緒に、
XhoI/BamHI で消化されたpGPe中にクローニングし、プ
ラスミドpγelを作製した。 pγelは、ラット重鎖3′エ
ンハンサーに連結された、 5 kbの下流配列と共にγ1定
常領域コードエクソンの全部を含有する。 3. pγe2 γ1 スイッチ領域とスイッチ前不毛転写物(sterile tr
ans-cript)〔P. Sideras ら(1989) International Immu
nol., 1, 631〕の第一エクソンとを含む5.3 kbのHindII
I断片をファージクローンλSγ1.13 から単離し、そし
て挿入断片の5′末端の近隣にポリリンカーXhoI部位を
有するpSP71 中にクローニングし、プラスミドクローン
pSγ1sを作製した。pSγ1sの XhoI/SalI挿入断片を Xh
oIで消化された pSγ1s 中にクローニングし、プラスミ
ドクローpγe2を作製した(図31)。pγe2は、ラット重
鎖 3′エンハンサーに連結された、下流の 5 kb配列と
共に、γ1定常領域コードエクソン全部並びに上流のスイ
ッチ領域および不毛転写物エクソンを含有する。このク
ローンは、挿入断片の5′末端にユニークXhoI部位を含
む。全挿入断片は、XhoI部位及び3′ラットエンハンサ
ーと共に、NotIでの消化によりベクター配列から切出さ
れうる。 4. pHC1 プラスミドpIGM1 を XhoIで消化し、43 kb 挿入断片を
単離し、そして XhoIで消化された pγe2中にクローニ
ングし、プラスミドpHC1WP作製した(図30)。pHC1は、
下記の配列要素の全部が NotIでの消化によりベクター
配列を含まない単一断片において単離しそしてマウス胚
の前核中にマイクロインジェクトしてトランスジェニッ
ク動物を作製することができるように、ラット重鎖3′
エンハンサーと共に、2 つの機能的ヒト可変領域セグメ
ント、少なくとも 8つのヒトDセグメント、6 つのヒト
H セグメント全部、ヒトJ−μエンハンサー、ヒトσ
μ要素、ヒトμスイッチ領域、ヒトμコードエクソン全
部、ヒトΣμ要素、およびヒトγ1定常領域(関連のス
イッチ領域および不毛転写物関連エクソンを含む)を含
有する。 D. IgM と IgG を発現する小遺伝子鎖トランスジェンp
HC2の作製 1. ヒト重鎖V領域遺伝子 VH49.8 の単離 ヒト胎盤ゲノムDNA ライブラリーラムダ FIXTM II (Str
atagene,La Jolla, CA) を、次のヒトVH1 ファミリー特
異的オリゴヌクレオチド: オリゴ−49 5′− gtt aaa gag gat ttt att cac ccc tgt gtc ctc tcc aca ggt gtc − 3′ を用いてスクリーニングした。
【0220】ファージクローンλ49.8を単離し、そして
可変セグメントVH49.8を含む6.1 kbXbaI断片をpNNO3 中
にサブクローニングし(ポリリンカー ClaI部位が VH4
9.8の下流にそしてポリリンカーXhoI部位が上流にくる
ように)、プラスミドpVH49.8 を作製した。この挿入断
片の800 bp領域を配列決定すると、VH49.8は転写解読枠
並びに完全なスプライシングシグナルおよび組換えシグ
ナルを有することがわかり、よって該遺伝子が機能的で
あることを指摘する(表 2 )。
【0221】
【表2】 2. pV2 プラスミドpUC12 中にサブクローニングされたヒトVH
IV ファミリー遺伝子VH 4-21〔I. Sanz ら (1989) EMB
O J., 8, 3741 〕を含む4 kb XbaIゲノム断片をSmaIとH
indIIIで切り出し、ポリメラーゼIのクレノウ断片で処
理した。平滑末端化された断片を、ClaIで消化されクレ
ノウで処理されたpVH49.8 中にクローニングした。生じ
たプラスミドpV2 は、挿入断片の 3′末端のユニーク S
alI部位および5′末端のユニークXhoI部位を使って、同
じ方向でVH4-21の上流に連結された、ヒト重鎖遺伝子VH
49.8を含む。 3. pSγ1-5′ 近隣の上流3.1 kb XbaI断片と一緒に0.7 kb XbaI/Hind
III断片(プラスミドpγe2中の 5.3 kb γ1 スイッチ領
域含有断片のすぐ上流で且つそれに隣接した配列を表
す)をファージクローンλSg1.13から単離し、そしてHi
ndIII/XbaIで消化されたpUC18 ベクター中にクローニ
ングした。生じたプラスミドpSγ1-5′は、γ1イソタイ
プにスイッチする前のB細胞中に見つかる不毛転写物(s
teriletranscript)〔P. Siderasら (1989)Internationa
l Immu-nol., 1, 631〕の開始部位の上流の配列を表す
3.8 kb挿入断片を含む。該転写物はイソタイプスイッチ
の開始に関係があり、そして上流のシス作用性配列はし
ばしば転写調節に重要であるので、不毛転写物の正しい
発現および関連するスイッチ組換えを促進するためにそ
れらの配列がトランスジェン構成物中に含まれる。 4. pVGE1 pSγ1-5′挿入断片をSmaIとHindIIIで切り出し、クレノ
ウ酵素で処理し、そして次のオリゴヌクレオチドリンカ
ー: 5′−ccg gtc gac cgg−3′ と連結せしめた。この連結生成物を SalIで消化し、Sa
lIで消化されたpV2 に連結せしめた。生じたプラスミド
pVP は、2つの機能的ヒト可変遺伝子セグメントVH49.8
とVH4-21(表2参照)の下流に連結された3. kbの γ1ス
イッチ5′ 隣接配列を含む。 SalIでの部分消化および
XhoIでの完全消化の後、アガロースゲル上での15kb断片
の精製により、pVP挿入断片を単離する。次いで該挿入
断片をpγe2の XhoI部位中にクローニングし、プラスミ
ドクローンpVGE1(図32)を作製する。 pVGE1 は、ヒト
γ1定常遺伝子および関連のスイッチ領域の上流に2つの
ヒト重鎖可変遺伝子セグメントを含有する。可変領域と
定常領域との間のユニークSalI部位を用いて、D,Jお
よび μ遺伝子セグメントをクローニングすることがで
きる。γ1 遺伝子の3′ 末端にラット重鎖3′エンハン
サーが連結され、そして挿入断片全体はNotI部位により
隣接される。 5. pHC2 プラスミドクローンpVGE1 を SalIで消化し、pIGM1 のX
hoI挿入断片をその中にクローニングした。生じたクロ
ーンpHC2(図30)は、4つの機能的ヒト可変領域セグメ
ント、少なくとも8つのDセグメント、6つのヒトJH
セグメント全部、ヒトJ−μエンハンサー、ヒトσμ要
素、ヒトμスイッチ領域、ヒトμコードエクソン全部、
ヒトΣμ要素、およびヒトγ1定常領域(不毛転写物開
始部位の上流の4 kb隣接配列と共に、関連のスイッチ領
域と不毛転写物関連エクソンを含む)を含有する。それ
らのヒト配列は、前記配列要素全部を NotIでの消化に
よりベクター配列を含まない単一鎖上に単離しそしてマ
ウス胚の前核中にマイクロインジェクトしてトランスジ
ェニック動物を生ぜしめることができるように、ラット
重鎖 3′エンハンサーに連結される。該挿入断片の 5′
末端のユニーク XhoI部位を使って、追加のヒト可変遺
伝子セグメントをその中にクローニングし、この重鎖小
遺伝子座の組換え多様性を更に増大させることができ
る。 E. トランスジェニックマウス プラスミドpIGM1 およびpHC1の NotI挿入断片をアガロ
ースゲル電気泳動によりベクター配列から単離した。精
製された挿入断片を、受精した(C57BL/6 × CBA) F2マ
ウスの胚の前核中にマイクロインジェクトし、そして生
存している胚を、Hogan らにより記載された通りに(B.
Hogan, F. Costantini およびE. Lacy,Methods ofMani
pulating the Mouse Embryo, 1986, Cold Spring Harbo
rLaboratory, New York)偽妊娠した雌に移した。注入
された胚から発育したマウスを、尾部DNAのサザンブロ
ット分析によりトランスジェン配列の存在について分析
した。既知量のクローン化DNAを含有する対照標準物に
比較したバンド強度により、トランスジェンコピー数を
評価した。3 〜 8週齢において、それらの動物から血清
を単離し、そしてHarlowおよびLane (E. Harlow および
D. Lane,Antibodies: A Laboratory Manual, 1988, Col
d Spring HarborLaboratory, New York) により記載さ
れたように、トランスジェンによりコードされるヒトIg
M およびIgG1の存在について ELISAによりアッセイし
た。マイクロタイタープレートのウエルを。ヒトIgMに
特異的なマウスモノクローナル抗体(クローンAF6, #02
85, AMAC,Inc. Westbrook, ME)およびヒトIgG に特異的
なマウスモノクローナル抗体(クローンJL512, #0280,
AMAC,Inc. Westbrook, ME)によりコーティングした。
該ウエル中に血清試料を連続的に希釈し、予備吸着させ
ることによってマウス免疫グロブリンとの交差反応性を
最小限にしたアフィニティー単離されたアルカリホスフ
ァターゼ接合ヤギ抗ヒトIg(多価)を用いて、特異的免
疫グロブリンの存在を検出した。図33は、プラスミドpH
C1のトランスジェン挿入断片を注入した胚から発育した
2匹の動物の血清中のヒトIgM およびIgG1の存在につい
ての ELISAアッセイの結果を示す。1匹の動物(#18)
は、サザンブロット分析によればトランスジェンについ
て陰性であり、検出可能レベルのヒトIgM またはIgG1を
全く示さなかった。2番目の動物(#38)は、サザンブロッ
ティングによれば該トランスジェンの約 5コピーを含ん
でおり、そして検出可能レベルのヒトIgMとIgG1の両方
を示した。トランスジェンを注入した胚から発育した11
匹の動物についてのELISAアッセイの結果を下表(表3)
に要約する。
【0222】
【表3】 ELISA アッセイによるトランスジェニック動物の血清中のヒトIgM および IgG 1の検出 注入した およそのトランスシ゛ェンコヒ゜- 動物 # トランスシ゛ェン 数(細胞あたり) ヒトIgM ヒトIgG1 6 pIGM1 1 ++ − 7 pIGM1 0 − − 9 pIGM1 0 − − 10 pIGM1 0 − − 12 pIGM1 0 − − 15 pIGM1 10 ++ − 18 pHC1 0 − − 19 pHC1 1 − − 21 pHC1 <1 − − 26 pHC1 2 ++ + 38 pHC1 5 ++ + 表 3 は、組み込まれたトランスジェンDNAの存在と血清
中のトランスジェンによりコードされる免疫グロブリン
との間の相関関係を示す。pHC1トランスジェンを含むこ
とがわかった動物のうちの2匹は、検出可能なレベルの
ヒト免疫グロブリンを発現しなかった。それらは共に低
コピー動物であり、該トランスジェンの完全なコピーが
含まれていないか、または該動物が遺伝的モザイクを有
している(動物#21 について評価された細胞あたり<1
コピーにより指摘される)ことがあり、そしてトランス
ジェン含有細胞が造血系統に移っていない可能性があ
る。あるいは、トランスジェンがそれらの発現に至らな
いゲノム領域中に組み込まれている可能性がある。pIGM
1トランスジニック動物の血清中のヒトIgMの検出は、並
びにpHC1トランスジェニック動物の血清中のヒトIgMとI
gG1の検出は、トランスジェン配列がVDJ結合、転写
およびイソタイプスイッチを指令する上で正しく機能す
ることを指摘する。
【0223】
【実施例15】再配列された重鎖トランスジェン A. 再配列されたヒト重鎖VDJセグメントの単離 ファージベクターλEMBL3/SP6/T7(Clonetech Laborato
ries,Inc.,Palo Alto, CA)中にクローニングされた2種
のヒト白血球ゲノムDNAライブラリーを、ヒト重鎖J−
μイントロンエンハンサーを含むλ1.3の1 kb PacI/Hi
ndIII断片を用いてスクリーニングする。陽性クローン
を、次のVH 特異的オリゴヌクレオチド: オリゴ-7 5′-tca gtg aag gtt tcc tgc aag gca tct gga tac acc ttc acc -3′ オリゴ-8 5′-tcc ctg aga ctc tcc tgt gca gcc tct gga ttc acc ttc agt-3′ の混合物とのハイブリダイゼーションについて試験す
る。
【0224】VプローブとJ−μプローブの両方とハイ
ブリダイズするクローンを単離し、そして再配列された
VDJセグメントのDNA配列を決定する。 B. 再配列されたヒト重鎖トランスジェンの作製 機能的VJセグメントを含む断片(転写解読枠およびス
プライスシグナル)を、プラスミド由来の XhoI 部位が
挿入断片列の 5′末端に隣接するように、プラスミドベ
クターpSP72 中にサブクローニングする。機能的VDJ
セグメントを含むサブクローンを XhoIとPacI(PacIは
J−μイントロンエンハンサー近くの部位を認識する希
少な切断酵素である)で消化し、そして挿入断片を Xho
I/PacIで消化されたpHC2中にクローニングし、機能的
VDJセグメント、J−μイントロンエンハンサー、μ
スイッチ要素、μ定常領域コードエクソンおよびγ1定
常領域(これは不毛転写物関連配列、γ1スイッチおよ
びコードエクソンを含む)を有するトランスジェン構成
物を作製する。上述したように、このトランスジェン構
成物を NotIで切り出し、そしてマウス胚の前後中にマ
イクロインジェクトしてトランスジェニック動物を作製
する。
【0225】
【実施例16】軽鎖トランスジェン A. プラスミドベクターの作製 1. プラスミドベクターpGP1c プラスミドベクターpGP1a を NotIで消化し、そして次
のオリゴヌクレオチド: オリゴ−81 5′− ggc cgc atc ccg ggt ctc gag gtc gac aag ctt tcg agg atc cgc − 3′ オリゴ−82 5′− ggc cgc gga tcc tcg aaa gct tgt cga cct cga gac ccg gga tgc − 3′ をその中に連結せしめる。生じたプラスミドpGP1c は、
NotI部位により隣接された XmaI,XhoI,SalI,HindIIIお
よびBamHI 制限部位を有するポリリンカーを含む。 2. プラスミドベクターpGP1d プラスミドベクターpGP1a を NotIで消化し、そして次
のオリゴヌクレオチド: オリゴ−87 5′− ggc cgc tgt cga caa gct tat cga tgg atc ctc gag tgc− 3′ オリゴ−88 5′− ggc cgc act cga gga tcc atc gat aag ctt gtc gac agc− 3′ をその中に連結せしめる。生じたプラスミドpGP1c は、
NotI部位により隣接された SalI, HindIII,CalI,BamHI
および XhoI制限部位を有するポリリンカーを含む。 B. JκおよびCκクローンの単離 ファージベクターλEMBL3/SP6/T7 (Clonetech Laborato
ries,Inc., PALO AIto, CA)中にクローニングされたヒ
ト胎盤ゲノムDNAライブラリーを、ヒトκ軽鎖J領域特
異的オリゴヌクレオチド: オリゴ−36 5′− cac ctt cgg cca agg gac acg act gga gat taa acg taa gca− 3′ を用いてスクリーニングし、そしてファージクローン13
6.2と136.5を単離する。136.2からJκ1セグメントを
含む7.4 kb XhoI 断片を単離し、プラスミドpNNO3中に
サブクローニングしてプラスミドクローンp36.2 を作製
する。Cκ遺伝子セグメントと共にJκセグメント2 〜
5を含む近隣の13 kb XhoI断片をファージクローン136.
5 から単離し、そしてプラスミドpNNO3 中にサブクロー
ニングしてプラスミドクローンp36.5 を作製する。それ
ら2つのクローンを一緒にすると、Jκ1の7.2 kb上流
で始まりCκの9 kb下流で終わる領域に及ぶ。 C. 再配列された軽鎖トランスジェンの作製 1. 再配列された可変セグメントを発現させるためのC
κベクターpCK1Cκ遺伝子を含むプラスミドクローンp3
6.5 の13 kb XhoI断片を、9 kbの下流配列と一緒に、該
挿入断片の5′末端がプラスミドXhoI部位に隣接した状
態で、プラスミドベクターpgp1C のSalI部位中にクロー
ニングする。生じたクローンpCK1は、再配列されたVJ
κセグメントを含むクローン化断片をユニーク 5′XhoI
部位に収納することができる。次いで該トランスジェン
を NotIで切り出し、ゲル電気泳動によってベクター配
列から精製する。得られたトランスジェン構成物は、ヒ
トJ−Cκイントロンエンハンサーを含むであろうし、
ヒト3′エンハンサーを含むことができる。 2. 再配列された可変セグメントを発現させるための重
鎖エンハンサー含有CκベクターpCK2 マウス重鎖J−μイントロンエンハンサー〔J.Banerji
ら (1983)Cell, 33, 729-740 〕を含むマウスゲノムDNA
の0.9 kb XbaI断片をpUC18 中にサブクローニングし、
プラスミドpJH22.1 を作製した。このプラスミドをSph
Iにより線状化し、クレノウ酵素を用いて末端をフィル
インした。クレノウ処理されたDNAを次いでHindIIIで消
化し、そしてヒト重鎖J−μイントロンエンハンサー
〔A. Haydayら (1984) Nature, 307, 334-340〕を含む
ファージクローンλ1.3(前の実施例)の M1uI(クレノ
ウ)/HindIII断片をそれと連結した。生じたプラスミ
ドpMHE1 は、両者が単一のBamHI/HindIII断片上に切除
されるように、pUC18 中に一緒に連結されたマウスとヒ
トの重鎖J−μイントロンエンハンサーから成る。この
2.3kb断片を単離し、pGP1c 中にクローニングしてpMHE2
を作製する。pMHE2をSalIで消化し、p36.5の13 kb Xho
I挿入断片をその中にクローニングする。生じたプラス
ミドpCK2は、マウスとヒトの重鎖J−μイントロンエン
ハンサーがトランスジェン挿入断片の3′末端に融合し
ていること以外は、pCK1と同一である。最終トランスジ
ェンの発現を調節するために、異なるエンハンサー、即
ちマウスまたはラットの3′ κまたは重鎖エンハンサー
〔K.MeyerおよびM.S. Neuber-ger (1989) EMBO J., 8,
1959-1964 ; S. Petterson ら (1990)Nature, 344,
165-168〕を使って類似構成物を作製することができ
る。 2. 再配列されたκ軽鎖可変セグメントの単離 ファージベクターλEMBL3/SP6/T7 (Clonetech Laborat
ories,Inc., Palo Alto, CA)中にクローニングされた2
つのヒト白血球ゲノムDNAライブラリーを、 p36.5 の3.
5 kb XhoI/SmaI断片を含むヒトκ軽鎖J領域を用いて
スクリーニングした。陽性クローンを、次のVκ特異的
オリゴヌクレオチド: オリゴ−65 5′−agg ttc agt ggc agt ggg tct ggg aca gac ttc act ctc acc atc agc -3′ とのハイブリダイゼーションについて試験した。Vプロ
ーブとJプローブの両方とハイブリダイズしたクローン
を単離し、そして再配列されたVJκセグメントのDNA
配列を決定する。 3. 再配列されたヒト軽鎖構成物を含有するトランスジ
ェニックマウスの作製 機能的VJセグメントを含む断片(転写解読枠およびス
プライススグナル)をベクターpCK1およびpCK2の XhoI
部位中にサブクローニングし、再配列されたκ軽鎖トラ
ンスジェンを作製する。NotIでの消化により該トランス
ジェン構成物をベクター配列から単離する。アガロース
ゲル上で精製した挿入断片をマウス胚の前核中にマイク
ロインジェクトし、トランスジェニックマウスを作製す
る。ヒトκ鎖を発現している動物を、重鎖小遺伝子を含
有するトランスジェニック動物(実施例14)と交配し、
ヒト抗体を完全に発現するマウスを作る。
【0226】VJκ組合せの全部が、広域スペクトルの
種々の重鎖VDJ組合せと共に安全な重鎖−軽鎖複合体
を形成できるわけではないので、それぞれ異なる再配列
されたVJκクローンを使って幾つかの異なる軽鎖トラ
ンスジェン構成物を作製し、そして重鎖小遺伝子座トラ
ンスジェンを発現するマウスと交配させる。二重トラン
スジェニック(重鎖構成物と軽鎖構成物の両方)動物か
ら、末梢血、脾臓およびリンパ節リンパ球を単離し、ヒ
トおよびマウスの重鎖および軽鎖免疫グロブリンに特異
的な蛍光抗体(Pharmingen, San Diego, CA)で染色し、
そしてFACScan分析装置(Becton Dickinson,San Jose,C
A) を使ってフローサイトメトリーにより分析する。最
大数のB細胞の表面上に最高レベルのヒト重鎖/軽鎖複
合体を生じ且つ免疫細胞区分に悪影響を与えない(Bお
よびT細胞サブセット特異的抗体を用いたフローサイト
メトリー分析によりアッセイした時)再配列された軽鎖
トランスジェン構成物を、ヒトモノクローナル抗体の産
生のために選択する。 D. 再配列されていない軽鎖小遺伝子座トランスジェン
の作製 1. 小遺伝子座トランスジェンを作製するためのJκ,
Cκ含有ベクターpJCK1 p36.5 の 13 kbのCκ含有 XhoI挿入断片をクレノウ酵
素で処理し、HindIIIで消化されクレノウ処理されたプ
ラスミドpGPld 中にクローニングする。挿入断片の5′
末端がベクター由来の ClaI部位に隣接するようなプラ
スミドクローンを選択する。生じたプラスミドp36.5-ld
をClaIで消化し、クレノウで処理する。p36.5 のJκ1
含有7.4 kb XhoI挿入断片をクレノウで処理し、そして
ClaIで消化されクレノウ処理されたp36.5-ld中にクロー
ニングする。p36.2挿入断片がp36.5 挿入断片と同じ方
向にあるクローンを選択する。このクローンpJCKl (図
34)は、7.2 kbの上流配列および9 kbの下流配列と一緒
に、完全なヒトJκ領域およびCκ領域を含む。該挿入
断片はヒトJ−Cκイントロンエンハンサーも含み、ヒ
ト3′κエンハンサーを含むこともある。該挿入断片
は、追加の3′隣接配列、例えば重鎖または軽鎖エンハ
ンサーをクローニングする目的でユニーク3′SslI部位
により隣接される。ユニーク XhoI部位は、再配列され
ていないVκ遺伝子セグメント中でクローニングする目
的で該挿入断片の5′末端に置かれる。ユニーク SalIお
よび XhoI部位は、最終のトランスジェン構成物をベク
ター配列から単離するために使われる NotI部位により
隣接される。 2. 再配列されていないVκ遺伝子セグメントの単離お
よびヒトIg軽鎖タンパク質を発現するトランスジェニッ
ク動物の作製 Vκ特異的オリゴヌクレオチドであるオリゴ−65(上
述)を使って、ファージベクターλ EMBL3/SP6/T7 (Clo
netech Laboratories,Inc., Palo Alto, CA)中にクロー
ニングされたヒト胎盤ゲノムDNAライブラリーを探査す
る。生じたクローンからの可変遺伝子セグメントを配列
決定し、そして機能的と思われるクローンを選択する。
機能性を判断するための基準は、転写解読枠、完全なス
プライス受容体および供与体配列、並びに完全な組換え
配列を含むことである。選択された可変遺伝子セグメン
トを含む DNA断片を、プラスミドpJCl のユニーク XhoI
部位にクローニングし、小遺伝子座構成物を作製する。
得られたクローンをNotIで消化し、挿入断片を単離し、
そしてマウス胚の前核中にマイクロインジェクトしてト
ランスジェニック動物を作製する。それらの動物のトラ
ンスジェンは、B細胞の発達の際にV−J結合を受ける
であろう。ヒトκ鎖を発現する動物を、重鎖小遺伝子座
を含有するトランスジェニック動物と交配し、ヒト抗体
を完全に発現するマウスを得る。
【0227】
【実施例17】合成重鎖可変領域 この実施例は図35に要約される。 A. クローニングベクターpVHfの作製 1.pGP1f プラスミドpGP1a (前の実施例)を NotIで消化し、そ
して次のオリゴヌクレオチドをそれと連結せしめる: オリゴ−“a” 5′− ggc cgc atg cta ctc gag tgc aag ctt ggc cat cca − 3′ オリゴ−“b” 5′− ggc ctg gat ggc caa gct tgc act cga gta gca tgc − 3′ 生じたプラスミドpGP1f は、 NotI部位と SfiI部位とに
より隣接された SphI, XhoIおよびHindIII部位を含む。 2. pVHf ヒトVH −Vファミリー可変遺伝子セグメントVH 251
〔C.G.Humphries ら (1988) Nature, 331, 446〕を約2.
4 kbの5′隣接配列と約1.4 kbの3′隣接配列と一緒に、
4.2 kbの SphI/HindIII 断片上においてプラスミドpVH
251(前の実施例)から単離し、そしてプラスミドベク
ター pSelectTM -1(Promega Corp., Madison, WI)中
にクローニングした。5′隣接配列を VH 251 のプロモ
ーター、第一エクソンおよび第一イントロンと一緒に、
次のオリゴヌクレオチドを使ったポリメラーゼ連鎖反応
(PCR)によりこの鋳型から増幅させる: オリゴ−83 5′-cag ctc gag ctc ggc aca ggc gcc tg
t ggg -3′オリゴ−835′-ctc tag agt cga cct gca gg
c − 3′ 3′隣接配列を、次のオリゴヌクレオチドを使ったPC
Rにより増幅させる:オリゴ−85 5′-agc ctc gag cc
c gtc taa aac cct cca cac -3′オリゴ−865′-ggt ga
c act ata gaa tac tca agc − 3′増幅された 5′配列
を SphIとXhoIで消化し、そして増幅された3′配列をHi
ndIIIと XhoIで消化する。得られた断片を一緒にプラス
ミドpGP1f 中にクローニングし、プラスミドpVHfを作製
する。プラスミドpVHfは、シグナル配列をコードする第
一エクソンと共に、VH 251 の転写を調節するシス作用
性調節要素を含有する。pVHfは重鎖可変配列のための発
現カセットとして使われる。そのような配列は後述のよ
うな KasI/XhoIで消化されたプラスミド中にクローニ
ングされる。 B. 可変遺伝子コード配列の単離 1. 発現されるVH 遺伝子のcDNA配列の増幅 ヒト末消血リンパ球(PBL) からポリ (A)+ RNA を単離す
る。逆転写酵素を用いて、プライマーとしてオリゴ−(d
T)を使って、第一鎖cDNAを合成する。第一鎖cDNAを単離
し、そしてターミナルトランスフェラーゼを使ってオリ
ゴ(dG)末端を付加する。次いで、Frohmanら (1988), Pr
oc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8998)の方法の変形に
より、IgM 転写物の5′配列を特異的に増幅させる。dG
末端を付加した第一鎖PBL cDNAを用いたポリメラーゼ連
鎖反応において、オリゴ−(dC)13および次のオリゴヌク
レオチド: オリゴ−69 5′− gga att ctc aca gga gac gag − 3′ をそれぞれ 5′および 3′プライマーとして使用する。
オリゴ−69は IgM定常領域のアミノ酸11〜17をコードす
る配列に相補的である。従って、それらのプライマー
は、発現されるVH 遺伝子配列を含む約0.6 kbのDNA 断
片を増幅させるだろう。 2. 生殖細胞系形態へのcDNA配列の逆変換 次のオリゴヌクレオチド: オリゴ−“c” 5′− ctg acg act ctg tat ggc gcc
(ct)a(cg)t(cg)(ct) (cg)ag (ag)t(cg) ca(ag) ct(gt)
gtg(cg)a(ag) tc(gt) gg(gt)− 3′ を、変性されPCR増幅されたIgM 5′配列にアリール
せしめる。オリゴ−“c”は、KasI部位を含む21ヌクレ
オチド非縮重配列に次いで、多数のヒトVH セグメント
の第二エクソンの5′末端に相同である30ヌクレオチド
縮重配列を含有する (Genbank; Los Alamos,NM) 。この
プライマーをDNAポリメラーゼで伸長し、生成物をサイ
ズ分画により未使用のプライマーから単離する。次いで
該生成物を変性せしめ、次のオリゴヌクレオチド: オリゴ−“d” 5′− ggg ctc gag gct ggt ttc tct c
ac tgt gtgt(cgt)t (acgt)(ag)(ct) aca gta ata ca(c
t)(ag)g(ct)− 3′ にアニールせしめる。オリゴ−“d”は、XhoI部位とV
−DJ組換え配列の一部を含む30ヌクレオチド非縮重配
列に次いで、多数のヒト可変遺伝子セグメントのフレー
ムワーク領域 3中の最後の7アミノ酸をコードする配列
に相補的である21ヌクレオチド縮重配列を含有する。ア
ニールしたオリゴヌクレオチドをDNAポリメラーゼで伸
長し、そして生成物をサイズ分画により未使用のプライ
マーから単離する。個々の可変遺伝子断片の配列保全性
を確実にするために、DNA合成の1巡終了ごとにプライ
マーの除去を行う。オリゴ−“d"プライマー伸長生成物
を、プライマーとして次の2つのオリゴヌクレオチド: オリゴ−“e" 5′−ctg acg act ctg tat ggc gcc − 3′ オリゴ−“f" 5′−ggg ctc gag gct ggt ttc tct − 3′ を使ってPCRにより増幅せしめる。得られた0.36 kb
のPCR生成物をゲル電気泳動により精製し、制限酵素
KasIと XhoIにより消化する。次いで消化生成物を Kas
I/ XhoIで消化されたpVHf中にクローニングし、生殖細
胞型配置において発現される可変遺伝子配列のライブラ
リーを作製する。pVHfの KasI部位中への連結は、第二
エクソンの 5′末端のところにスプライス受容体部位を
再構築し、XhoI部位中への連結は可変遺伝子セグメント
の3′ 末端のところに組換えシグナルを再構築する。縮
重オリゴヌクレオチド“c”および“b"の別の変形を使
って異なる集団の可変遺伝子を増幅せしめ、それらの異
なる集団を表す生殖細胞型配置のライブラリーを作製す
る。(Genbank;Los Alamos, NN)。 c. 合成遺伝子座の作製 合成生殖細胞配置VH 遺伝子のライブラリー全体を一緒
に増殖させ、プラスミドを単離する。中程度コピープラ
スミドpVHf(これはアンピシリン耐性遺伝子とクローニ
ング部位との間に強力な転写ターミネーターを含む)
は、ライブラリー内の特定のクローンの増大を最小にす
るためにデザインされる。プラスミドDNAを SfiIで消化
し、子ウシ腸ホスファターゼで処理して5′リン酸基を
除去し、次いで NotIで消化する。SfiI末端のみが脱リ
ン酸されるように、NotI消化前に子ウシ腸ホスファター
ゼを除去する。消化したDNAをアガロースゲル電気泳動
によってベクター配列から単離し、そして次のオリゴヌ
クレオチド: オリゴ−“g” 5′−ggc cta act gag cgt ccc ata ttg aga acc tcc− 3′ オリゴ−“h" 5′−ggt tct caa tat ggg acg ctc agt ta−3′ に連結せしめる。オリゴ-“g"をリン酸化しないままで
オリゴ-“h"をリン酸化する。V遺伝子′の NotI 末端
の全部がオリゴヌクレオチドに連結し別のV領域断片に
は連結しないように、大モル過剰のオリゴヌクレオチド
を使って連結反応を実施する。 SfiI末端は自身とは適
合しないので、Vセグメントは各Vセグメントが単一の
オリゴヌクレオチドスペーサー単位により次のVセグメ
ントから隔てられるようにして同じ方向で鎖状に連結す
るだろう。
【0228】大きな連鎖物を電気泳動によりサイズ分画
し、アガロースゲルから単離する。次いで、サイズ分画
された連鎖物をD−J−C含有DNA 断片(例えばpHC1ま
たはpHC2挿入断片)と一緒にマウス胚の前核中に同時注
入し、多数の一次レパートリーを有するトランスジェニ
ック動物を作製する。あるいは、該連鎖物をpGPfのよう
なプラスミドベクター中にクローニングする。
【0229】
【実施例18】リンパ系細胞レセプターサブセット特異
的抗体の作製 異種(即ちヒト)免疫グロブリンレセプター(B細胞レ
セプター)またはT細胞レセプターによるマウスの接種
は、優性的に、与えられた種の全てのもしくは大部分の
免疫グロブリンまたはT細胞レセプターが共有する(し
かし種間では異なる)特定のエピトープ(優性エピトー
プ)に対して向けられたマウス抗体の産生をもたらす。
従って、B細胞またはT細胞レセプターの特定のサブセ
ット(例えばイソタイプまたは可変領域ファミリー)を
識別する抗体を単離することは困難である。しかしなが
ら、ヒト免疫グロブリンを発現するマウス(上記実施例
に記載)は、それらの共有のB細胞エピトープに免疫学
的に寛容であろうし、従ってヒト免疫グロブリンのサブ
セットを識別する抗体を産生せしめるのに有用であろ
う。この概念は、ヒトT細胞レセプターコード配列を発
現するトランスジェニックマウスを作製し、そしてそれ
らのマウスをヒト免疫グロブリントランスジェックマウ
スと交配させることにより拡張される。そのようなマウ
スにヒトT細胞レセプタータンパク質を含む単離物を接
種し、そしてT細胞レセプターサブセットを認識するモ
ノクローナル抗体を産生せしめる。
【0230】研究は、ある種の自己免疫疾患に関与する
T細胞抗原レセプターには限定された変異性があること
を証明している〔T.F. Davies ら(1991)New England j.
Med., 325, 238 〕。この限定された変異性のため、自
己反応性であるヒトT細胞のサブセットを特異的に認識
するヒトモノクローナル抗体を産生することが可能であ
る。 A. B細胞サブセット特異的抗体の産生 ヒト免疫グロブリンを発現するトランスジェニックマウ
スに、健康な提供者からまたは高レベルの単一免疫グロ
ブリン型を発現するB細胞悪性を有する患者から単離し
た免疫グロブリンを接種する〔Millerら (1982) New En
gland j. Med.,306, 517-522〕。HarlowおよびLaneによ
り記載されたように(E. Harlow および D.Lane, Antib
odies: A Laboratory Manual, 1988, Cold SpringHarbo
rLaboratory, New York)、モノクローナル抗体を分泌
するハイブリドーマを作製する。B細胞サブセットを特
異的に認識するヒト抗体を分泌する個々のハイブリドー
マを選択する。 B. ヒトT細胞レセプター配列を発現するトランスジェ
ニックマウス そのままの及び完全に再配列されたヒトT細胞レセプタ
ー(TCR)αおよびβ遺伝子を含むDNA断片をマウス胚の前
核中に同時注入し、トランスジェニック動物を作製す
る。トランスジェニック動物をFACS分析によりそれらの
T細胞の表面上への両トランスジェンの発現についてア
ッセイする。少量のT細胞において低レベルのみでヒト
αおよびβ TCR鎖を発現する動物を選択する。免疫学的
寛容を獲得するためにはごく低レベルのみの発現が要求
され、高レベレ発現は動物の免疫系を破壊し、モノクロ
ーナル抗体の産生に必要な免疫応答を開始する能力を妨
害するであろう。あるいは、免疫学的寛容を獲得するた
めには正しい組織または細胞型特異的発現は要求されな
いので、TCR αおよびβ鎖cDNAクローンを非TCR 転写シ
グナルの支配下にトランスジェン発現カセット〔T. Cho
i ら (1991) Mol.Cell Biol., 11, 3070-3074 〕中に挿
入する。TCR αおよびβ鎖cDNAトランスジェン構成物を
マウス胚の前核中に同時注入してトランスジェニック動
物を作製する。TCR は多鎖複合体であるため〔H. Cleve
rsら (1988) Ann. Rev.Immunol., 6, 629-662〕、TCR鎖
の異所性発現は細胞表面発現をもたらさないだろう。し
かしながら、細胞表面発現は抗原提示〔Townsendら (19
86) Nature, 324,575-577 〕および寛容誘導には必要で
ない。
【0231】T細胞レセプターαおよびβ鎖トランスジ
ェニックマウスをヒト免疫グロブリン発現性トランスジ
ェニックマウスと交配し、ヒトT細胞の特異的サブセッ
トを認識するヒトモノクローナル抗体を作製するのに有
用であるマウスを作製する。そのようなマウスに、健康
な患者からまたは単一のTCR 型を発現するT細胞悪性を
有する患者かた単離したT細胞由来タンパク質を接種す
る。モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調
製し、そしてB細胞サブセットを特異的に認識するヒト
抗体を分泌する個々のハイブリドーマを選択する。
【0232】
【実施例19】ゲノム重鎖ヒトIgトランスジェン この実施例は、接合子中へのマイクロインジェクション
またはES細胞中への組込みによりマウス生殖細胞中に導
入される、ヒトゲノム重鎖免疫グロブリントランスジェ
ンのクローニングを記載する。 Marzluff, W.F.ら(198
5), Transcription and Translation : APractical App
roach, B.D. Hammes およびS.J. Higgins編,89-129
頁,IRL Press, Oxford により記載されたようにして、
新鮮なヒト胎盤組織から核を単離する。単離された核
(またはPBS で洗浄したヒト精母細胞)を 0.5%低融点
アガロースブロック中に埋め込み、そして核については
500mMEDTA, 1% SDS中の 1mg/mlのプロテイナーゼKに
より、精母細胞については500mM EDTA, 1% SDS, 10mM D
TT中の 1mg/mlのプロテイナーゼKにより、50℃にて18
時間溶解せしめる。該ブロックを40μg/mlのPMSF/TE中
で50℃にて30分間インキュベートすることにより、プロ
テイナーゼKを不活性化する。次いでM. Finneyにより
Current Protocols in Molecular Biology (F.Ausubel
ら編,John Wiley& Sons, 増幅4, 1988, 例えば第2.5.1
章)中に記載されたように、アガロース中で該DNAを制
限酵素 NotIで消化する。
【0233】NotIで消化したDNAを、次いでAnand, R.
ら(1989), Nuc. AcidsRes., 17,3425-3433 により記載
されたようにパルスフィールドゲル電気泳動により分画
する。 NotI断片に富む画分をサザンハイブリダイゼー
ションによりアッセイし、この断片によってコードされ
る1または複数の配列を検出する。そのような配列は、
重鎖Dセグメント、Jセグメントおよびγ1定常領域と
共に6つのVH ファミリー全部の代表的を含む〔この断
片はBermanら(1988), 前揚によればHeLa細胞から670 kb
断片として同定されているけれども、本発明者らはそれ
がヒト胎盤および精子DNAからのは830 kba断片であるこ
とを発見した〕。この NotI断片を含む画分(図4参
照)を記載の如く〔McCormick, M. ら(1990), Techniqu
e 2, 65-71〕ベクターpYACNNの NotI部位中に連結せし
める。プラスミドpYACNNは、pYACno (Clontech)をEcoRI
で消化しそしてオリゴヌクレオチド 5′− AAT TGC GGG CGC −3′の存在下で連結せしめる
ことにより、調製される。
【0234】Traverら(1989), Proc. Natl. Acad. Sci.
USA, 86, 5898-5902により記載された通りに、重鎖 No
tI断片を含むYACベクターを単離する。クローン化され
たNotI挿入断片を、M. Finney,前掲により記載されたよ
うなパルスフィールドゲル電気泳動により高分子量酵母
DNAから単離する。1mMスペルミンの添加によりDNAを濃
縮し、上述した通り単細胞胚の核に直接マイクロインジ
ェクトする。あるいは、DNA をパルスフィールドゲル電
気泳動により単離し、そしてリポフェクション〔Gnirke
ら(1991), EMBO J., 10, 1629-1634 〕によりES細胞中
に導入するか、またはYAC をスフェロプラスト融合によ
りES細胞中に導入する。
【0235】
【実施例20】不連続ゲノム重鎖IgトランスジェンH 6、Dセグメント、Jセグメント、μ定常領域およ
び一部のγ定常領域を含むヒトゲノムDNAの 85 kb SPEI
断片(図4参照)は、本質的には実施例1に記載した通
りのYACクローニングによって単離された。生殖細胞型
可変領域由来の断片、例えば多コピーのV1〜V5 を含
む上記の670-830 kb NotI断片の上流の570 kb NotI断
片、を含有するYACを上述の如く単離する。〔Bermanら
(1988),前掲は、各々が多数のVセグメントを含有する
2つの570 kb NotI断片を検出した。〕この2断片を実
施例1に記載の如くマウス単細胞胚の核中に同時注入す
る。
【0236】曲型的には、2つの異なるDNA断片の同時
注入は、染色体内の同一部位のところへの両断片の組込
みをもたらす。従って、該2断片各々の少なくとも1コ
ピーを含む生じたトランスジェニック動物の約50%が、
定常領域含有断片の上流に挿入されたVセグメント断片
を有する。それらの動物のうち、85 kb NotI断片の位置
に関する570 kb NotI断片の方向性に依存して、約50%
がDNA逆位によりV−DJ結合を行い、そして約50%が
欠失によりV−DJ結合を行うだろう。生じたトランス
ジェニック動物からDNAを単離し、そしてサザンブロッ
トハイブリダイゼーションにより両方のトランスジェン
を含んでいることが示された動物(詳しくは、多数にヒ
トVセグメントとヒト定常領域遺伝子の両方を含有する
動物)を、標準技術に従って、ヒト免疫グロブリンを発
現する能力について試験する。
【0237】
【実施例21】重複する YAC 断片の連結 重複領域を有する2つのYACを、Silverman ら(1990), Pr
oc.Natl.Acad. Sci. USA, 87, 9913-9917により記載さ
れたような減数分裂組換えにより酵母中で連結せしめ、
小型の両YAC由来の配列を担持している単一の大型YACを
誘導する。連結したYAC が一つの動原体ベクターアーム
と1つの非動原体ベクターアームを含むように、2つの
YAC をアームに関して整列せしめる。必要であれば、挿
入断片の両末端のユニーク制限部位を使って挿入断片を
該ベクター中で再クローニングする。挿入断片がユニー
ク制限断片でないならば、Guthrie およびFink(前掲)
により記載されたように、酵母のオリゴヌクレオチド形
質転換によりベクターアーム中にユニーク部位を挿入す
る。重複しない不連続配列を有するYAC を連結するため
には、次のようにして重複を造成する。 5′YACの 3′
末端領域と 3′YACの3′末端領域をサブクローニング
し、試験管内で連結せしめて結合断片を作り、そして相
同組換え(Guthrie およびFink, 前掲)により一方また
は両方のYAC中に再導入する。次いで2つのYAC を、Sil
verman ら(前掲)により記載されたようにして減数分
裂的に組換える。連結したYAC を、例えば実施例1の如
く、マウス中に導入する。
【0238】
【実施例22】ゲノムκ軽鎖ヒトIgトランスジェン ヒトκ軽鎖の地図はLorenz, W.ら(1987), Nucl. aCIds
Res., 15,9667-9677において記載されており、それを図
11に示す。Cκ全部、3′エンハンサー、Jセグメント
全部、および少なくとも5つの異なるVセグメントを含
む450 kb XhoI−NotI断片(a)、または上記の全部と少な
くとも20多いVセグメントを含む750kb MluI−NotI断片
(b)を単離し、そして実施例1に記載の如く接合子また
はES細胞中に導入する。
【0239】
【実施例23】生体内相同組換えにより形成されたゲノ
ムκ軽鎖ヒトIgトランスジェン 750 kb MulI−NotI断片をBssHIIで消化し、約400 kbの
断片(C)を得る。450 kbXhoI−NotI断片(a)と約400 kb M
ulI−BssHII断片(C)とは、図11に示されるBssHII制限部
位とXhoI制限部位とにより範囲限定される配列重複を有
する。それらの2断片の相同組換えは、450 kb XhoI−N
otI断片(実施例22)中に見つかるものよりも少なくと
も15〜20多い追加のVセグメントを含むトランスジェン
を生成する。
【0240】
【実施例24】トランスジェニックB細胞中の機能的に
再配列された可変領域配列の同定 着目の抗原を使って、次の遺伝的特性:JH の欠失(実
施例9および12)については内因性所有鎖遺伝子座にお
ける同型接合性;再配列されていないヒト重鎖小遺伝子
座トランスジェン(実施例5および14)の単一コピーに
ついては半接合性;および再配列されたヒトκ軽鎖トラ
ンスジェン(実施例7および16)の単一コピーについて
は半接合性、を有するマウスを免疫処置する〔Harlowお
よびLane,Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spri
ng Harbor, New York(1988)を参照のこと〕。
【0241】免疫処置スケジュールの後、脾臓を取り出
し、脾細胞を使ってハイブリドーマを調製する。着目の
抗原と反応性である抗体を分泌する個々のハイブリドー
マクローンからの細胞を使ってゲノムDNAを調製する。
ゲノムDNAの試料を、ユニークな6塩基対配列を認識す
る幾つかの異なる制限酵素で消化し、そしてアガロース
ゲル上で分画する。サザンブロットハイブリダイゼーシ
ョンを使って2〜10 kb範囲内の2つのDNA断片を同定す
る、該断片の一方は、再配列されたヒト重鎖VDJ配列
の単一コピーを含み、もう一方は再配列されたヒト軽鎖
VJ配列の単一コピーを含む。それらの2断片をアガロ
ースゲル上でサイズ分画し、pUC18 中に直接クローニン
グする。クローンかされた挿入断片を、定常領域配列を
含む重鎖および軽鎖発現カセット中にそれぞれサブクロ
ーニングする。
【0242】プラスミドクローン pγe1(実施例14)を
重鎖発現カセットとして使用し、再配列されたVDJ配
列を XhoI部位中にクローニングする。プラスミドクロ
ーンpCK1を軽鎖発現カセットとして使用し、再配列され
たVJ配列を XhoI部位中にクローニングする。生じた
クローンを一緒に使ってSP0 細胞をトランスフェクトせ
しめ、着目の抗原と反応する抗体を産生せしめる〔M.S.
Co ら (1991) Proc.Natl. Acad. Sci. USA, 88: 286
9〕。
【0243】あるいは、上述のクローン化ハイブリドー
マ細胞からmRNAを単離し、cDNAを合成するのに使う。発
現されるヒト重鎖および軽鎖VDJおよびVJ配列を、
次いでPCRにより増幅し、クローニングする〔J. W.
Larrich ら (1989) Biol. Technology, 7: 934-938〕。
それらのクローンのヌクレオチド配列を決定した後、同
じポリペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを合成
し、そして C.Queenら(1989)Proc. Natl. Acad. Sci. U
SA, 84:5454-5458〕により記載されたようにして合成発
現ベクターを作製する。
【0244】本発明の好ましい態様の今までの記載は、
例示および説明のために与えられる。それらが徹底的で
あるつもりはなく、また本発明を正確な開示形態に制限
するつもりはない。上記教示に照らして多数の改良およ
び変更が可能である。
【0245】本明細書中の全ての刊行物および特許出願
は、あたかも各々の刊行物または特許出願が明確に且つ
個別に参考として本明細書中に組み込まれると指摘され
たかのように、参考として本明細書中に組み込まれる。
【0246】当業者により明らかであろうそのような改
良および変更は本発明の範囲内であるものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 再配列されていないゲノムDNA中および再配
列された免疫グロブリン重鎖遺伝子から発現されるmRNA
中の相補性決定領域CDR1, CDR2,およびCDR3, 並びにフ
レームワーク領域FR1, FR2, FR3およびFR4を表わす。
【図2】 ヒトλ鎖遺伝子座を表す。
【図3】 ヒトκ鎖遺伝子座を表す。
【図4】 ヒト重鎖遺伝子座を表す。
【図5】 合成Vセグメントレパートリーを作製するた
めの方策を示す。
【図6】 合成Vセグメントレパートリーを作製するた
めの方策を示す。
【図7】 内因性免疫グロブリン遺伝子座の機能的破壊
のための方策を示す。
【図8】 B細胞の成熟を導くT細胞媒介二次応答を示
す。
【図9】 2つの異なる抗原に応答したB細胞の体細胞
突然変異およびクローン増殖を示す。
【図10】 ヒトγ3 およびγ1定常領域を含む25 Kb
断片とその後方のラット鎖3′ エンハンサー配列を含む
700bp断片に連結された再配列された IgM遺伝子を含有
するトランスジェン構成物を示す。
【図11】 生体内相同組換えによって軽鎖トランスジ
ェンを形成するために使うことができる断片を表す、ヒ
トκ鎖遺伝子座の制限地図である。
【図12】 pGP1の作製を示す。
【図13】 pGP1中に含まれるポリリンカーの構成を示
す。
【図14】 本発明のヒト重鎖トランスジェンを作製す
るのに使う断片を示す。
【図15】 pHIG1 およびpCON1 の作製を示す。
【図16】 pREG2 を形成せしめるためにpRE3(ラット
エンハンサー3′)中に挿入されるヒトCγ1 断片を示
す。
【図17】 pHIG3′およびpCONの作製を示す。
【図18】 本発明のトランスジェンの作製に使われる
ヒトD領域セグメントを含む断片を示す。
【図19】 pHIG2(Dセグメント含有プラスミド)の
作製を示す。
【図20】 本発明のトランスジェンの作製に使われる
ヒトJκおよびヒトCκ遺伝子セグメントを包含する断
片を示す。
【図21】 pEμの構造を示す。
【図22】 pKapH の作製を示す。
【図23】 A〜Dは、マウスの内因性免疫グロブリン
重鎖遺伝子座を機能的に破壊するためのポジティブ−ネ
ガティブ選別ベクターの作製を示す。
【図24】 A〜Cは、マウスの内因性免疫グロブリン
軽鎖遺伝子座を機能的に破壊するためのポジティブ−ネ
ガティブ選別ベクターの作製を示す。
【図25】 a〜eは、κ鎖標的用ベクターの構造を示
す。
【図26】 a〜fは、マウス重鎖標的用ベクターの構
造を示す。
【図27】 ベクターpGPeの地図を示す。
【図28】 ベクターpJM2の構造を示す。
【図29】 ベクターpCOR1の構造を示す。
【図30】 pIGM1, pHC1およびpHC2のトランスジェン
構成物を示す。
【図31】 pγe2の構造を示す。
【図32】 pVGE1の構造を示す。
【図33】 pHC1トランスジェニックマウス中でのヒト
Ig発現のアッセイ結果を示す。
【図34】 pJCK1の構造を示す。
【図35】 合成重鎖可変領域の作製を示す。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成10年8月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0218
【補正方法】変更
【補正内容】
【0218】
【表1】 B.IgMを発現する小遺伝子座トランスジェンpIG
M1の作製 1.J−μ定常領域クローンの単離およびpJM1の作
ファージベクターλEMBL3/SP6/T7(Clo
netech Laboratories,Inc.,
Palo Alto,CA)中にクローニングしたヒト
胎盤ゲノムDNAライブラリーを、ヒト重鎖J領域特異
的オリゴヌクレオチド: オリゴ−1 5′−gga ctg tgt ccc
tgt gtg atg ctt ttg atg t
ct ggg gcc aag− 3′ を用いてスクリーニングし、そしてファージクローンλ
1.3を単離した。6つのJセグメント全部並びにDセ
グメントDBQ52および重鎖J−μイントロンエンハ
ンサーを含む、6kbのHindIII/KpnI断片
をこのクローンから単離した。同じライブラリーをヒト
μ特異的オリゴヌクレオチド: オリゴ−2 5′−cac caa gtt gac
ctg cct ggt cac aga cct g
ac cac cta tga− 3′ を用いてスクリーニングし、ファージクローンλ2.1
を単離した。μスイッチ領域およびμ定常領域エクソン
の全部を含む、10.5kbのHindIII/Xho
I断片をこのクローンから単離した。それらの2断片
を、KpnI/XhoIで消化されたpNN03と一緒
に連結せしめ、プラスミドpJM1を得た。 2.pJM2 ファージクローンλ2.1から4kbのXhoI断片を
単離した。該断片は、ある種のIgD発現B細胞中での
μ欠失に関係するいわゆるΣμ要素〔H.Yasuiら
(1989)Eur.J.Immunol.19,
399〕を含む、pJM1の配列にすぐ下流の配列を含
有する。この断片をDNAポリメラーゼIのクレノウ断
片で処理し、そしてXhoIで切断されクレノウで処理
されたpJM1と連結せしめる。生じたプラスミドpJ
M2(図28は、内部のXhoI 部位を失っている
が、クレノウ酵素による不完全な反応の結果として3′
Xho Iを保持している。pJM2は完全なヒトJ領
域、重鎖J−μイントロンエンハンサー、μスイッチ領
域およびμ定常領域エクソン全部、並びにμ欠失に関係
する2つの0.4kbの直接反復σμおよびΣμを含有
する。 3.D領域クローンの単離およびpDBIの作製 次のヒトD領域特異的オリゴヌクレオチド: オリゴ−4 5′−tgg tat tac tat
ggt tcg ggg agt tat tat a
ac cac agt gtc−3′ を用いて、ヒト胎盤ゲノムライブラリーをD領域クロー
ンについてスクリーニングした。ファージクローンλ
4.1とλ4.3を単離した。D要素DKI’N1
よびDM2〔Y.Ichiharaら(1988)EM
BO J.,7,4141〕を含む5.5kb(1)X
hol断片をファージクローンλ4.1から単離した。
D要素DLR1’XP1’XP1およびDA1を含
む上流に隣接5.2kb Xho I断片をファージク
ローンλ4.3から単離した。それらのD領域XhoI
断片の各々をプラスミドベクターpSP72(Prom
ega,Madison,WI)のSalI部位中にク
ローニングし、2配列を結合するXho I部位を破壊
した。次いで上流断片をXho IとSmaIで切り出
し、下流断片をEcoRVとXho Iで切り出した。
得られた単離断片をSalIで消化されたpSP2と一
緒に連結せしめ。プラスミドpDHIを与えた。pDB
Iは、少なくとも7つのDセグメントを含みXho I
(5′)およびEcoRV(3′)で切り出すことがで
きる10.6kbの挿入断片を含有する。 4.pCOR1 プラスミドpJM2をAsp718(KpnIのアイソ
シゾマー)で消化し、そしてDNAポリメラーゼIのク
レノウ断片を用いて突出末端をフィルインした。次いで
生じたDNAをClaIで消化し、挿入断片を単離し
た。この挿入断片をpDNAのXhoI/EcoRV挿
入断片およびXhoI/ClaI消化pGPeと連結せ
しめ、pCOR1を作製した(図29)。 5.pVH251 2つのヒト重鎖可変領域セグメントV251とV
05〔C.G.Humphriesら(1988)Na
ture331,446〕を含む10.3kbのゲノ
ムHindIII断片をpSP72中にサブクローニン
グし、プラスミドpVH251を与えた。 6.pIGM1 プラスミドpCOR1をXhoIで部分消化し、そして
pVH251の単離XhoI/SalI挿入断片を上流
のXhoI部位にクローニングし、プラスミドpIGM
1 (図30)を作製した。pIGM1は、下記の配列
要素の全部がNot Iでの消化によりベクター配列を
含まない単一断片において単離することができそしてマ
ウス胚の前核中にマイクロインジェクトすることができ
るように、2つの機能的ヒト可変領域セグメント、少な
くとも8つのヒトDセグメント、6つのヒトJセグメ
ント全部、ヒトJ−μエンハンサー、ヒトσμ要素、ヒ
トμスイッチ領域、ヒトμコードエクソン全部およびΣ
μ要素を、ラット重鎖3′エンハンサーと共に含有す
る。 C.IgMとIgGを発現する小遺伝子座トランスジェ
ンpHClの作製 1.γ定常領域クローニングの単離 次のヒトIgG定常領域遺伝子に特異的なオリゴヌクレ
オチド: オリゴ−29 5′−cag cag gtg cac
acc caatgc cca tga gcc c
ag aca ctg gac−3 を用いてヒトゲノムライブラリーをスクリーニングし
た。ファージクローンλ29.4とλ29.5を単離し
た。γスイッチ領域を含むファージクローンλ29.4
の4kbHindIII断片を使って、ファージベクタ
ーラムダFIXTM11(Stratagene,La
Jol1a,CA)中にクローニングされたヒト胎盤
ゲノムDNAラブラリーを探査した。ファージクローン
λSg1.13を単離した。異なるγクローンのサブク
ラスを決定するために、鋳型として上記3つのファージ
クローンの各々のサブクローンを使ってそしてプライマ
ーとして次のオリゴヌクレオチド: オリゴ−67 5′−tga gcc cag aca
ctg gac−3′ を使って、ジデオキシ配列決定反応を実施した。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0221
【補正方法】変更
【補正内容】
【0221】
【表2】 2.pV2 プラスミドpUC12中にサブクローニングされたヒト
IVファミリー遺伝子VH4−21[I.Sanz
ら(1989)EMBOJ.,8,3741〕を含む4
kbXbaIゲノム断片をSmaIとHindIIIで
切り出し、ポリメラーゼIのクレノウ断片で処理した。
平滑末端化された断片を、ClaIで消化されクレノウ
で処理されたpVH49.8中にクローニングした。生
じたプラスミドpV2は、挿入断片の3′末端のユニー
クSalI部位および5′末端のユニークXhoI部位
を使って、同じ方向でVH4−21の上流に連結され
た、ヒト重鎖遺伝子VH49.8を含む。 3.pSγ1−5′ 近隣の上流3.1kbXbaI断片と一緒に0.7kb
XbaI/HindIII断片(プラスミドpγe2中
の5.3kbγ1スイッチ領域含有断片のすぐ上流で且
つそれに隣接した配列を表す)をファージクローンλS
g1.13から単離し、そしてHindIII/Xba
Iで消化されたpUC18ベクター中にクローニングし
た。生じたプラスミドpSγ1−5′は、γ1イソタイ
プにスイッチする前のB細胞中に見つかる不毛転写物
(steriletranscript)〔P.Sid
erasら(1989)International
Immu−nol.1,631〕の開始部位の上流の
配列を表す3.8kb挿入断片を含む。該転写物はイソ
タイプスイッチの開始に関係があり、そして上流のシス
作用性配列はしばしば転写調節に重要であるので、不毛
転写物の正しい発現および関連するスイッチ組換えを促
進するためにそれらの配列がトランスジェン構成物中に
含まれる。 4.pVGE1 pSγ1−5′挿入断片をSmaIとHindIIIで
切り出し、クレノウ酵素で処理し、そして次のオリゴヌ
クレオチドリンカー: 5′−ccg gtc gac cgg−3′ と連結せしめた。この連結生成物を SalIで消化
し、SalIで消化されたpV2に連結せしめた。生じ
たプラスミドpVPは、2つの機能的ヒト可変遺伝子セ
グメントVH49.8とVH4−21(表2参照)の下
流に連結された3.kbのγ1スイッチ5′隣接配列を
含む。SalIでの部分消化およびXhoIでの完全消
化の後、アガロースゲル上での15kb断片の精製によ
り、pVP挿入断片を単離する。次いで該挿入断片をp
γ−e2のXhoI部位中にクローニングし、プラスミ
ドクローンpVGE1(図32)を作製する。pVGE
1は、ヒトγ1定常遺伝子および関連のスイッチ領域の
上流に2つのヒト重鎖可変遺伝子セグメントを含有す
る。可変領域と定常領域との間のユニークSalI部位
を用いて、D,Jおよびμ遺伝子セグメントをクローニ
ングすることができる。γ1遺伝子の3′末端にラット
重鎖3′エンハンサーが連結され、そして挿入断片全体
はNotI部位により隣接される。 5.pHC2 プラスミドクローンpVGE1をSalIで消化し、p
IGM1のXhoI挿入断片をその中にクローニングし
た。生じたクローンpHC2(図30)は、4つの機能
的ヒト可変領域セグメント、少なくとも8つのDセグメ
ント、6つのヒトJセグメント全部、ヒトJ−μエン
ハンサー、ヒトσμ要素、ヒトμスイッチ領域、ヒトμ
コードエクソン全部、ヒトΣμ要素、およびヒトγ1定
常領域(不毛転写物開始部位の上流の4kb隣接配列と
共に、関連のスイッチ領域と不毛転写物関連エクソンを
含む)を含有する。それらのヒト配列は、前記配列要素
全部をNotIでの消化によりベクター配列を含まない
単一鎖上に単離しそしてマウス胚の前核中にマイクロイ
ンジェクトしてトランスジェニック動物を生ぜしめるこ
とができるように、ラット重鎖3′エンハンサーに連結
される。該挿入断片の5′末端のユニークXhoI部位
を使って、追加のヒト可変遺伝子セグメントをその中に
クローニングし、この重鎖小遺伝子座の組換え多様性を
更に増大させることができる。 E.トランスジェニックマウス プラスミドpIGM1およびpBC1のNotI挿入断
片をアガロースゲル電気泳動によりベクター配列から単
離した。精製された挿入断片を、受精した(C57BL
/6×CBA)F2マウスの胚の前核中にマイクロイン
ジェクトし、そして生存している胚を、Hoganらに
より記載された通りに(B.Hogan,F.Cost
antiniおよびE.Lacy,Methods o
fManipulating the Mouse E
mbryo,1986,ColdSpring Har
borLaboratory,New York)偽妊
娠した雌に移した。注入された胚から発育したマウス
を、尾部DNAのサザンブロット分析によりトランスジ
ェン配列の存在について分析した。既知量のクローン化
DNAを含有する対照標準物に比較したバンド強度によ
り、トランスジェンコピー数を評価した。3〜8週齢に
おいて、それらの動物から血清を単離し、そしてHar
lowおよびLane(E.HarlowおよびD.L
ane,Antibodies:ALaborator
y Manual,1988,Cold Spring
HarborLaboratory,New Yor
k)により記載されたように、トランスジェンによりコ
ードされるヒトIgMおよびIgG1の存在についてE
LISAによりアッセイした。マイクロタイタープレー
トのウエルを。ヒトIgMに特異的なマウスモノクロー
ナル抗体(クローンAF6,#0285,AMAC,I
nc.Westbrook,ME)およびヒトIgGに
特異的なマウスモノクローナル抗体(クローンル51
2,#0280,AMAC,Inc.Westbroo
k,ME)によりコーティングした。該ウエル中に血清
試料を連続的に希釈し、予備吸着させることによってマ
ウス免疫グロブリンとの交差反応性を最小限にしたアフ
ィニティー単離されたアルカリホスファターゼ接合ヤギ
抗ヒトIg(多価)を用いて、特異的免疫グロブリンの
存在を検出した。図33は、プラスミドpHC1のトラ
ンスジェン挿入断片を注入した胚から発育した2匹の動
物の血清中のヒトIgMおよびIgG1の存在について
のELISAアッセイの結果を示す。1匹の動物(#1
8)は、サザンブロット分析によればトランスジェンに
ついて陰性であり、検出可能レベルのヒトIgMまたは
IgG1を全く示さなかった。2番目の動物(#38)
は、サザンブロッティングによれば該トランスジェンの
約5コピーを含んでおり、そして検出可能レベルのヒト
IgMとIgG1の両方を示した。トランスジェンを注
入した胚から発育した11匹の動物についてのELIS
Aアッセイの結果を下表(表3)に要約する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12N 15/02 C12N 5/00 B C12P 21/08 15/00 C //(C12N 15/09 ZNA C12R 1:91) (72)発明者 カイ,ロバート エム. アメリカ合衆国,カリフォルニア 94111, サンフランシスコ,2301,ジャクソン ス トリート 155

Claims (150)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも1つの可変領域セグメント、
    1つの多様性遺伝子セグメント、1つの連結遺伝子セグ
    メントおよび1つの定常領域遺伝子セグメントをコード
    するDNAを含んで成る単離された免疫グロブリン重鎖ト
    ランスジェンであって、前記遺伝子セグメントの各々が
    同一種からまたは前記種の個体からの免疫グロブリン重
    鎖遺伝子セグメントに相当するDNAから誘導され、そし
    て該セグメントが生体内で遺伝子再配列を受けて重鎖ポ
    リペプチドをコードする再配列された遺伝子を形成する
    ことができることを特徴とする、前記免疫グロブリン重
    鎖トランスジェン。
  2. 【請求項2】 前記トランスジェンの長さが、前記重鎖
    トランスジェン上に含まれる遺伝子セグメントの全部を
    含む対応するゲノムDNAの長さよりも短い、請求項1の
    免疫グロブリン重鎖トランスジェン。
  3. 【請求項3】 前記少なくとも1つの定常領域遺伝子セ
    グメントが少なくとも2つの定常領域遺伝子セグメント
    を含んで成る、請求項1のトランスジェン。
  4. 【請求項4】 前記1つの定常領域遺伝子セグメントが
    μおよびγ定常領域遺伝子セグメントを含んで成る、請
    求項3のトランスジェン。
  5. 【請求項5】 前記少なくとも1つの定常領域遺伝子セ
    グメントがγ定常領域遺伝子セグメントを含んで成る、
    請求項1のトランスジェン。
  6. 【請求項6】 前記少なくとも1つの可変遺伝子セグメ
    ントが、前記種または前記個体の第一の機能的D近位可
    変領域遺伝子セグメントに相当するDNAを含んで成る、
    請求項1のトランスジェン。
  7. 【請求項7】 前記遺伝子セグメントの各々の相対位置
    が前記種のゲノム中の対応する遺伝子セグメントの相対
    位置と同じである、請求項1のトランスジェン。
  8. 【請求項8】 前記種がヒトである、請求項1のトラン
    スジェン。
  9. 【請求項9】 前記トランスジェンが再配列されておら
    ず、そして非ヒトトランスジェニック動物のB細胞中に
    導入されると再配列を受けてV領域多様性を生じること
    ができる、請求項1のトランスジェン。
  10. 【請求項10】 少なくとも1つの可変遺伝子セグメン
    ト、1つの連結遺伝子セグメントおよび1つの定常領域
    遺伝子セグメントをコードするDNAを含んで成る単離さ
    れた免疫グロブリン軽鎖トランスジェンであって、前記
    遺伝子セグメントの各々が同一種からまたは前記種の個
    体からの免疫グロブリン軽鎖遺伝子セグメントに相当す
    るゲノムDNA から誘導され、そして該セグメントが生体
    内で遺伝子再配列を受けて軽鎖ポリペプチドをコードす
    る再配列された遺伝子を形成することができることを特
    徴とする、前記免疫グロブリン軽鎖トランスジェン。
  11. 【請求項11】 前記トランスジェンの長さが、前記軽
    鎖トランスジェン上に含まれる遺伝子セグメントの全部
    を含む対応するゲノムDNA の長さよりも短い、請求項10
    の免疫グロブリン軽鎖トランスジェン。
  12. 【請求項12】 前記少なくとも1つの可変領域遺伝子
    セグメントが、前記種または前記個体の第一の機能的J
    近位可変遺伝子セグメントに相当するDNAを含んで成
    る、請求項11のトランスジェン。
  13. 【請求項13】 前記遺伝子セグメントの各々の相対位
    置が前記種または前記個体のゲノム中の対応する遺伝子
    セグメントの相対位置と同じである請求項11のトランス
    ジェン。
  14. 【請求項14】 前記種または個体がヒトである、請求
    項10のトランスジェン。
  15. 【請求項15】 前記トランスジェンが再配列されてお
    らず、そして非ヒトトランスジェニック動物のB細胞中
    に導入されると再配列を受けてV領域多様性を生じるこ
    とができる、請求項10のトランスジェン。
  16. 【請求項16】 動物の生殖細胞中に異種免疫グロブリ
    ン重鎖および軽鎖トランスジェンを含有するトランスジ
    ェニック非ヒト動物。
  17. 【請求項17】 前記重鎖および前記軽鎖トランスジェ
    ンが再配列されている、請求項16のトランスジェニック
    非ヒト動物。
  18. 【請求項18】 前記重鎖および前記軽鎖トランスジェ
    ンが再配列されていない、請求項16のトランスジェニッ
    ク非ヒト動物。
  19. 【請求項19】 前記重鎖トランスジェンと前記軽鎖ト
    ランスジェンのうちの一方が再配列されており、そして
    前記重鎖トランスジェンと前記軽鎖トランスジェンのう
    ちの他方が再配列されていない、請求項16のトランスジ
    ェニック非ヒト動物。
  20. 【請求項20】 前記重鎖トランスジェンが再配列され
    ておらずそして前記軽鎖トランスジェンが再配列されて
    いる、請求項19のトランスジェニック非ヒト動物。
  21. 【請求項21】 前記トランスジェンが前記動物のB細
    胞中で機能的に再配列される、請求項16のトランスジェ
    ニック非ヒト動物。
  22. 【請求項22】 前記B細胞が異種抗体を産生する、請
    求項21のトランスジェニック非ヒト動物。
  23. 【請求項23】 前記異種重鎖および軽鎖遺伝子がヒト
    である、請求項16のトランスジェニック非ヒト動物。
  24. 【請求項24】 前記非ヒト動物が齧歯類である、請求
    項16のトランスジェニック非ヒト動物。
  25. 【請求項25】 免疫グロブリン重鎖トランスジェンお
    よび免疫グロブリン軽鎖トランスジェンを含有する非ヒ
    ト動物の少なくとも1つの細胞において異種抗体を産生
    することができるトランスジェニック非ヒト動物であっ
    て、前記重鎖トランスジェンは少なくとも1つの可変遺
    伝子セグメント、1つの多様性遺伝子セグメント、1つ
    の連結遺伝子セグメントおよび1つの定常領域遺伝子セ
    グメントをコードするDNAを含んで成り、そして前記免
    疫グロブリン軽鎖トランスジェンは少なくとも1つの可
    変遺伝子セグメント、1つの連結遺伝子セグメントおよ
    び1つの定常領域遺伝子セグメントをコードするDNAを
    含んで成り、ここで前記重鎖および軽鎖トランスジェン
    の前記遺伝子セグメントの各々は単離された形態である
    か、または前記非ヒト動物から成らない種または前記種
    の個体の免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子セグメン
    トをコードするDNAに相当することを特徴とする、前記
    トランスジェニック非ヒト動物。
  26. 【請求項26】 前記トランスジェニック非ヒト動物が
    齧歯類である、請求項25のトランスジェニック動物。
  27. 【請求項27】 前記トランスジェンがヒト抗体遺伝子
    セグメントをコードする、請求項25のトランスジェニッ
    ク非ヒト動物。
  28. 【請求項28】 前記トランスジェニック動物の少なく
    とも1つの内因性免疫グロブリン遺子座が機能的に破壊
    されている、請求項25のトランスジェニック非ヒト動
    物。
  29. 【請求項29】 前記内因性遺伝子座の破壊が、重鎖ま
    たは軽鎖免疫グロブリンをコードする内因性免疫グロブ
    リン遺伝子セグメントを破壊することによって生じ、前
    記遺伝子セグメントが多様性、連結および定常遺伝子セ
    グメントから成る群から選ばれる、請求項28のトランス
    ジェニック非ヒト動物。
  30. 【請求項30】 前記内因性免疫グロブリン遺伝子セグ
    メントが、前記重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコード
    する連結領域遺伝子セグメントである、請求項29のトラ
    ンスジェニック非ヒト動物。
  31. 【請求項31】 前記破壊が前記選ばれた遺伝子セグメ
    ントの実質的全部の欠失によるものである、請求項29の
    トランスジェニック非ヒト動物。
  32. 【請求項32】 前記重鎖トランスジェンと前記軽鎖ト
    ランスジェンが再配列されていない、請求項25のトラン
    スジェニック非ヒト動物。
  33. 【請求項33】 前記重鎖トランスジェンと前記軽鎖ト
    ランスジェンが再配列されている、請求項25のトランス
    ジェニック非ヒト動物。
  34. 【請求項34】 前記重鎖トランスジェンと前記軽鎖ト
    ランスジェンのうちの一方が再配列されており、そして
    前記重鎖トランスジェンと前記軽鎖トランスジェンのう
    ちの他方が再配列されていない、請求項25のトランスジ
    ェニック非ヒト動物。
  35. 【請求項35】 前記重鎖トランスジェンが再配列され
    ておらず、そして前記軽鎖トランスジェンが再配列され
    ている、請求項34のトランスジェニック非ヒト動物。
  36. 【請求項36】 トランスジェニック非ヒト動物から誘
    導された非ヒトB細胞であって、異種抗体を産生するこ
    とができる非ヒトB細胞。
  37. 【請求項37】 前記B細胞が、機能的に再配列された
    異種重鎖免疫グロブリントランスジェンと機能的に再配
    列された異種軽鎖免疫グロブリンとを含有する、請求項
    36の非ヒトB細胞。
  38. 【請求項38】 前記機能的に再配列された重鎖および
    軽鎖免疫グロブリントランスジェンの各々がヒト起源の
    ものである、請求項37の非ヒトB細胞。
  39. 【請求項39】 前記B細胞が同種抗体を産生しない、
    請求項36の非ヒトB細胞。
  40. 【請求項40】 トランスジェニック非ヒト動物から誘
    導された非ヒトB細胞に融合したミエローマ細胞を含ん
    で成るハイブリドーマであって、前記B細胞にとって異
    種であるモノクローナル抗体を産生することができる前
    記ハイブリドーマ。
  41. 【請求項41】 前記非ヒトB細胞から誘導された前記
    ハイブリドーマのゲノム物質が、機能的に再配列された
    重鎖免疫グロブリントランスジェンと機能的に再配列さ
    れた軽鎖免疫グロブリントランスジェンとを含有し、前
    記機能的に再配列されたトランスジェンの各々が前記B
    細胞にとって異種である。請求項40のハイブリドーマ。
  42. 【請求項42】 前記トランスジェンがヒト起源のもの
    である、請求項41のハイブリドーマ。
  43. 【請求項43】 前記モノクローナル抗体がヒト抗体で
    ある、請求項40のハイブリドーマ。
  44. 【請求項44】 前記B細胞が齧歯類起源のものであ
    る、請求項40のハイブリドーマ。
  45. 【請求項45】 前記ミエローマ細胞がマウス起源のも
    のである、請求項40のハイブリドーマ。
  46. 【請求項46】 非ヒト動物の少なくとも1つの内因性
    免疫グロブリン遺伝子座が機能的に破壊されているトラ
    ンスジェニック非ヒト動物の製造方法であって、 非ヒト動物の少なくとも1つの胎児性幹細胞を、内因性
    重鎖または軽鎖免疫グロブリンをコードする遺伝子セグ
    メントのファミリーの機能的破壊を標的するトランスジ
    ェンと接触せしめ、ここで前記遺伝子セグメントのファ
    ミリーは、機能的な内因性の多様性、連結および定常遺
    伝子セグメントファミリーから成る群から選ばれ;そし
    て前記トランスジェンが相同組換えにより前記非ヒト動
    物のゲノム中に組み込まれている少なくとも1つの胎児
    性幹細胞を選択する、段階を含んで成る方法。
  47. 【請求項47】 前記トランスジェンがポジティブーネ
    ガティブ選別ベクターを含んで成る、請求項46の方法。
  48. 【請求項48】 前記機能的破壊が前記遺伝子セグメン
    トファミリーの全部または一部の欠失を含んで成る、請
    求項46の方法。
  49. 【請求項49】 前記欠失が連結遺伝子セグメントのフ
    ァミリーの欠失である、請求項48の方法。
  50. 【請求項50】 前記機能的破壊が転写または翻訳終結
    配列の導入を含んで成る、請求項46の方法。
  51. 【請求項51】 前記機能的破壊が定常領域遺伝子セグ
    メントの破壊である、請求項46の方法。
  52. 【請求項52】 前記遺伝子セグメントが、μ重鎖定常
    領域遺伝子セグメント、κ軽鎖定常領域遺伝子セグメン
    トおよび機能的λ軽鎖定常領域遺伝子セグメント群から
    成る群から選ばれることを特徴とする、請求項51の方
    法。
  53. 【請求項53】 少なくとも1つの再配列された異種免
    疫グロブリン重鎖トランスジェンと少なくとも1つの再
    配列された異種免疫グロブリン軽鎖トランスジェンとを
    含有する少なくとも1つのB細胞を有するトランスジェ
    ニック非ヒト動物中での異種抗体の産生方法であって、
    ここで前記抗体は抗原を結合することができ、 前記トランスジェニック動物を前記抗原と接触させて前
    記異種抗体の産生を誘導する段階を含んで成る方法。
  54. 【請求項54】 前記接触が前記トランスジェンの少な
    くとも1つの体細胞突然変異を引き起こす、請求項53の
    方法。
  55. 【請求項55】 前記異種抗体を産生するB細胞の少な
    くとも1つを不死化して前記異種抗体に相当するモノク
    ローナル抗体の源を提供する段階を更に含んで成る、請
    求項53の方法。
  56. 【請求項56】 前記不死化がハイブリドーマを形成さ
    せるための前記B細胞とミエローマ細胞との融合によ
    る、請求項55の方法。
  57. 【請求項57】 請求項55の方法に従って産生されるモ
    ノクローナル抗体。
  58. 【請求項58】 前記重鎖および軽鎖トランスジェンが
    ヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントを含んで成り、そ
    して前記抗体がヒト抗体である、請求項57の方法。
  59. 【請求項59】 少なくとも1つの再配列された異種免
    疫グロブリン重鎖トランスジェンと少なくとも1つの再
    配列された異種免疫グロブリン軽鎖トランスジェンとを
    含有する少なくとも1つのB細胞を有するトランスジェ
    ニック非ヒト動物中での第一異種抗体の産生方法であっ
    て、ここで前記第一異種抗体は第一抗原を結合すること
    ができ、そして前記重鎖および軽鎖トランスジェンは既
    知の第二抗原に応答して体細胞突然変異を受けて第二異
    種抗体を産生することができ、前記方法が、次の段階:
    前記トランスジェニック動物を少なくとも前記第一抗原
    と接触せしめて前記重鎖または軽鎖トランスジェンの少
    なくとも1つの体細胞突然変異を誘導し、前記第一異種
    抗体を産生することのできるB細胞を生産するを含んで
    成ることを特徴とする方法。
  60. 【請求項60】 前記接触が、前記第一抗原と前記第二
    既知抗原とを連続または同時接触せしめて前記第一およ
    び前記第二異種抗体をそれぞれ産生することのできる第
    一および第二B細胞を生産することを含んで成る、請求
    項59の方法。
  61. 【請求項61】 前記第一異種抗体を産生する前記B細
    胞の少なくとも1つを不死化して前記第一異種抗体に相
    当するモノクローナル抗体の源を提供する段階を更に含
    んで成る、請求項59の方法。
  62. 【請求項62】 前記不死化がハイブリドーマを形成さ
    せるための前記B細胞とミエローマ細胞との融合によ
    る、請求項61の方法。
  63. 【請求項63】 請求項61の方法に従って産生されるモ
    ノクローナル抗体。
  64. 【請求項64】 前記再配列された重鎖および軽鎖トラ
    ンスジェンがヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントを含
    んで成り、そして前記抗体がヒト抗体である、請求項63
    のモノクローナル抗体。
  65. 【請求項65】 合成免疫グロブリンVセグメントレパ
    ートリーの作製方法であって、次の段階: (a)免疫グロブリンVセグメントDNAの集団を作製し、こ
    こで前記VセグメントDNAの各々は免疫グロブリンVセ
    グメントをコードしそして第一制限エンドヌクレアーゼ
    の第一開裂認識部位を各末端に含有しており;そして
    (b)前記免疫グロブリンVセグメントDNAの集団を鎖状に
    連結して合成免疫グロブリンVセグメントレパートリー
    を形成せしめるを含んで成る方法。
  66. 【請求項66】 前記VセグメントDNAの集団がゲノムD
    NAから誘導され、そして前記作製がP1およびP2プライマ
    ーを使ったPCR 増幅によるものであり、ここで前記P1プ
    ライマーは、5′から 3′方向において、前記開裂認識
    部位および前記ゲノムDNA中の多数の免疫グロブリンV
    セグメントのC末端部分の一方の鎖にハイブリダイズす
    ることのできる配列をコードするプライマーの混合物を
    含んで成り、そして前記P2プライマーは、5′から 3′
    方向において、前記開裂認識部位および前記ゲノムDNA
    中の前記多数の免疫グロブリンVセグメントのN末端部
    分の相補鎖にハイブリダイズすることのできる配列をコ
    ードするプライマーの混合物を含んで成る、請求項65の
    方法。
  67. 【請求項67】 前記免疫グロブリンVセグメントDNA
    の集団がB細胞mRNAから誘導され、そして前記作製が次
    の段階: (i) 5′から 3′方向において、前記開裂認識部位およ
    び前記mRNAが転写されるゲノムDNA中の多数の免疫グロ
    ブリンVセグメントのC末端部分のコード鎖にハイブリ
    ダイズすることのできる配列をコードするプライマーの
    混合物を含んで成るプライマーP1を用いて、前記mRNAか
    らの一本鎖cDNAの合成を開始し; (ii) 5′から 3′方向において、前記開裂認識部位およ
    び前記ゲノムDNA中の前記多数の免疫グロブリンVセグ
    メントのN末端部分のアンチセンス鎖にハイブリダイズ
    することのできる配列をコードするプライマーの混合物
    を含んで成るプライマーP2を用いて、前記一本鎖cDNAか
    ら二本鎖cDNAの合成を開始する を含んで成る、請求項65の方法。
  68. 【請求項68】 前記免疫グロブリンVセグメントDNA
    の各々が、前記VセグメントDNAの一方の末端に第一の
    開裂認識部位を含有しそして前記VセグメントDNAの他
    方の末端に第二の異なる開裂認識部位を含有し、そして
    前記方法が前記二本鎖cDNAをP3およびP4プライマーを用
    いて増幅せしめる段階を更に含んで成り、ここで前記P3
    プライマーは前記第一の開裂認識部位をコードするDNA
    を含んで成り、そして前記P4プライマーは前記第二の開
    裂認識部位をコードするDNAを含んで成る、請求項67の
    方法。
  69. 【請求項69】 前記免疫グロブリンVセグメントが、
    第一のシグナル配列エクソンおよびゲノムDNAによりコ
    ードされる複数の免疫グロブリンVセグメントの第二エ
    クソンをコードするDNAを含んで成る、請求項65の方
    法。
  70. 【請求項70】 前記免疫グロブリンVセグメントDNA
    の集団が、ゲノムDNAによりコードされる複数の免疫グ
    ロブリンVセグメントの第二エクソンをコードするDNA
    を含んで成る、請求項65の方法。
  71. 【請求項71】 前記集団の各メンバーを発現ベクター
    中に連結せしめることにより、第二制限エンドヌクレア
    ーゼの第二開裂部位、免疫グロブリンプロモーター、免
    疫グロブリン分泌シグナル配列、第三制限エンドヌクレ
    アーゼの第三開裂認識部位、組換えシグナル配列および
    第四制限エンドヌクレアーゼの第四開裂認識部位を順に
    含んで成る発現カセットを形成せしめ、前記連結は前記
    第三開裂認識部位中であって前記第二開裂認識部位と前
    記第四開裂認識部位との間に前記発現カセットを形成す
    る、請求項70の方法。
  72. 【請求項72】 前記連結が、前記発現ベクターを前記
    第二および第四制限エンドヌクレアーゼで消化すること
    による発現カセットの連結である、請求項71の方法。
  73. 【請求項73】 請求項65の方法に従って作製される合
    成Vセグメントレパートリー。
  74. 【請求項74】 発現可能なVセグメントの調製方法で
    あって、次の段階: (a)Vセグメントの第二エクソンをコードし且つその各
    末端に第一制限エンドヌクレアーゼの第一開裂認識部位
    を含有する少なくとも1つのVセグメントDNAを作製
    し;そして(b)前記VセグメントDNAを発現ベクター中に
    連結せしめ、ここで前記発現ベクターは、免疫グロブリ
    ンプロモーター、免疫グロブリン分泌シグナル配列、前
    記ベクターを第二制限エンドヌクレアーゼで開裂させる
    と前記VセグメントDNAを連結することができる第二制
    限エンドヌクレアーゼの第二開裂認識部位および組換え
    配列を順に含んで成るを含んで成る方法。
  75. 【請求項75】 複数のDNA断片から形成される免疫グ
    ロブリン(Ig)重鎖小遺伝子座トランスジェン構成物であ
    って、該構成物はヒトIgタンパク質のヒト可変(V)領
    域、多様性(D)領域、連結(J)領域および定常
    (C)領域をコードするDNA配列を含んで成り、前記配
    列は転写調節配列に作用可能に連結されておりそして生
    体内で遺伝子再配列を受けるとヒト重鎖ポリペプチドを
    コードする再配列された遺伝子を生じることができ、こ
    こで該DNA断片の少なくとも3つの各々がV領域配列、 D領域配列、 Jおよび定常領域配列、 DおよびJおよび定常領域配列、または1つの定常領域
    配列を含んで成り、前記Igタンパク質コード配列の全部
    がヒト遺伝子配列と実質的に相同である、前記小遺伝子
    座トランスジェン構成物。
  76. 【請求項76】 前記小遺伝子座トランスジェン構成物
    が長さ約75kbである、請求項75の小遺伝子座トランスジ
    ェン構成物。
  77. 【請求項77】 前記定常領域遺伝子配列が2つの異な
    る免疫グロブリンイソタイプをコードする、請求項75の
    小遺伝子座トランスジェン構成物。
  78. 【請求項78】 前記定常領域遺伝子配列がスイッチ組
    換えを受けることができる、請求項77の小遺伝子座トラ
    ンスジェン構成物。
  79. 【請求項79】 前記イソタイプがμおよびγである、
    請求項77の小遺伝子座トランスジェン構成物。
  80. 【請求項80】 前記定常領域遺伝子配列が重鎖γイソ
    タイプをコードする、請求項75の小遺伝子座トランスジ
    ェン構成物。
  81. 【請求項81】 前記Igコード配列が単一個体からのも
    のである、請求項75の小遺伝子座トランスジェン構成
    物。
  82. 【請求項82】 前記定常領域配列が第二定常領域の
    5′にμ定常領域を含んで成る、請求項75のIg小遺伝子
    座トランスジェン構成物。
  83. 【請求項83】 前記構成物が、μ定常領域の5′にス
    イッチ供与体領域、およびμ定常領域と第二定常領域と
    の間にスイッチ受容体領域を更に含んで成り、前記スイ
    ッチ領域が生体内でスイッチングを行うために作用可能
    に連結されている、請求項82のIg小遺伝子座トランスジ
    ェン構成物。
  84. 【請求項84】 前記スイッチ供与体領域がヒトμスイ
    ッチ領域である、請求項83のIg小遺伝子座トランスジェ
    ン構成物。
  85. 【請求項85】 前記スイッチ受容体領域がヒトγ1
    イッチ領域である、請求項83のIg小遺伝子座トランスジ
    ェン構成物。
  86. 【請求項86】 前記第二定常領域がγ1定常領域であ
    る、請求項83のIg小遺伝子座トランスジェン構成物。
  87. 【請求項87】 複数のDNA断片から形成される免疫グ
    ロブリン(Ig)軽鎖小遺伝子座トランスジェン構成物であ
    って、該構成物はヒトIgタンパク質のヒト可変(V)領
    域、連結(J)領域および定常(C)領域をコードする
    DNA配列を含んで成り、前記配列は転写調節配列に作用
    可能に連結されておりそして生体内で遺伝子再配列を受
    けるとヒト軽鎖ポリペプチドをコードする再配列された
    遺伝子を生じることができ、ここで該DNA断片の少なく
    とも3つの各々がV領域配列、 Jおよび定常領域配列、または定常領域配列を含んで成
    り、前記Igタンパク質コード配列の全部がヒト遺伝子配
    列と実質的に相同である、前記小遺伝子座トランスジェ
    ン構成物。
  88. 【請求項88】 前記遺伝子配列が単一個体からのもの
    である、請求項87の小遺伝子座トランスジェン構成物。
  89. 【請求項89】 前記小遺伝子座トランスジェン構成物
    が約50 kbから成る、請求項87の小遺伝子座トランスジ
    ェン構成物。
  90. 【請求項90】 前記1つの可変遺伝子が連結遺伝子配
    列に作用可能に連結されている、請求項87の小遺伝子座
    トランスジェン構成物。
  91. 【請求項91】 前記各領域の相対位置が生殖細胞軽鎖
    遺伝子中の対応領域の相対位置と同じである、請求項87
    の小遺伝子座トランスジェン構成物。
  92. 【請求項92】 免疫グロブリン遺伝子挿入断片を含有
    する酵母人工染色体(YAC)であって、前記挿入断片は、
    生体内で再配列を受けて再配列された遺伝子を形成する
    ことができる免疫グロブリン可変遺伝子配列、連結遺伝
    子配列および定常領域配列を含んで成り、ここで前記遺
    伝子は免疫グロブリンポリペプチドをコードする、前記
    YAC。
  93. 【請求項93】 前記染色体が多様性遺伝子配列を更に
    含んで成る、請求項92のYAC。
  94. 【請求項94】 前記染色体が、生体内でイソタイプス
    イッチングを受けるように作用可能に連結されているス
    イッチ供与体領域およびスイッチ受容体領域を更に含ん
    で成る、請求項92のYAC。
  95. 【請求項95】 前記遺伝子配列が同一個体からのもの
    である、請求項92のYAC。
  96. 【請求項96】 前記挿入断片が約85 kbである、請求
    項92のYAC。
  97. 【請求項97】 前記挿入断片に作用可能に連結された
    転写調節配列を更に含んで成る、請求項92のYAC。
  98. 【請求項98】 トランスジェニック非ヒト動物中での
    変更ゲノムの作製方法であって、 重複配列を有する2つの酵母人工染色体を縮合し、ここ
    で前記染色体は一緒になって機能的免疫グロブリン遺伝
    子座をコードし;そして酵母人工染色体を哺乳類のゲノ
    ム中に挿入することを含んで成る方法。
  99. 【請求項99】 前記酵母人工染色体がポリアミンを用
    いて縮合される、請求項98の方法。
  100. 【請求項100】 前記挿入段階がトランスフェクショ
    ンまたはリポフェクションにより行われる、請求項98の
    方法。
  101. 【請求項101】 前記酵母人工染色体がゲノム中に組
    み込まれる、請求項98の方法。
  102. 【請求項102】 非ヒト哺乳動物中の内因性免疫グロ
    ブリン遺伝子を不活性化する方法であって、前記内因性
    免疫グロブリン遺伝子に相同であるヌクレオチド配列を
    含んで成るDNA断片を前記哺乳動物のゲノム中に導入
    し、それによって前記ヌクレオチド断片が相同組換えに
    よってゲノム中に組み込まれることにより前記内因性遺
    伝子を破壊することを含んで成る方法。
  103. 【請求項103】 前記DNA断片を前記ゲノム中に導入
    する段階が、胚性幹細胞の形質転換によって行われる、
    請求項102の方法。
  104. 【請求項104】 前記破壊が連結遺伝子セグメントの
    欠失を含んで成る、請求項102の方法。
  105. 【請求項105】 前記破壊がエンハンサーのまたはκ
    定常領域の欠失を含んで成る、請求項102の方法。
  106. 【請求項106】 請求項102の方法により製造される
    非ヒト哺乳動物。
  107. 【請求項107】 V領域配列がVH251 を含んで成る、
    請求項75または87の単離された免疫グロブリン鎖小遺遺
    伝子座トランスジェン構成物。
  108. 【請求項108】 再配列されたヒト免疫グロブリンを
    産性することができ且つ異種ヌクレオチド配列挿入断片
    を含む内因性免疫グロブリン遺伝子を有することができ
    るトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
  109. 【請求項109】 前記異種ヌクレオチド配列が内因性
    免疫グロブリンポリペプチドの発現を減少させる、請求
    項108の哺乳動物。
  110. 【請求項110】 前記異種ヌクレオチド配列が内因性
    μ重鎖ポリペプチドの発現を減少させる、請求項108の
    哺乳動物。
  111. 【請求項111】 前記異種ヌクレオチド配列が内因性
    軽鎖ポリペプチドの発現を減少させる、請求項108の哺
    乳動物。
  112. 【請求項112】 前記軽鎖ポリペプチドがκまたはλ
    である、請求項111の哺乳動物。
  113. 【請求項113】 前記異種ヌクレオチド配列が転写ま
    たは翻訳終結配列を導入する、請求項108の哺乳動物。
  114. 【請求項114】 前記哺乳動物がマウスである、請求
    項108の哺乳動物。
  115. 【請求項115】 前記免疫グロブリンが、可変遺伝子
    セグメント、連結遺伝子セグメントおよび定常領域遺伝
    子セグメントを有する免疫グロブリン小遺伝子座トラン
    スジェン構成物から発現される、請求項108の哺乳動
    物。
  116. 【請求項116】 前記小遺伝子座トランスジェン構成
    物が重鎖遺伝子である、請求項115の哺乳動物。
  117. 【請求項117】 再配列された免疫グロブリントラン
    スジェン構成物を含んで成る、請求項108の哺乳動物。
  118. 【請求項118】 前記再配列されたトランスジェン構
    成物がκ軽鎖をコードする、請求項117の哺乳動物。
  119. 【請求項119】 前記再配列されたトランスジェン構
    成物が重鎖をコードする、請求項117の哺乳動物。
  120. 【請求項120】 トランスジェニック非ヒト哺乳動物
    から免疫グロブリンを産生せしめる方法であって、ここ
    で前記哺乳動物は特定の抗原を認識する再配列された免
    疫グロブリントランスジェン構成物を有し、 トランス
    ジェニック哺乳動物を前記特定の抗原で免疫処置し;そ
    して前記特定の抗原を結合する免疫グロブリンを産生す
    るトランスジェニック哺乳動物からのB細胞についてス
    クリーニングする。ことを含んで成る方法。
  121. 【請求項121】 スクリーニングの段階が前記トラン
    スジェニック哺乳動物から単離されたB細胞を不死化す
    ることを含む、請求項120の方法。
  122. 【請求項122】 請求項121の方法に従って製造され
    た不死化された細胞であって、選択されたB細胞をミエ
    ローマ細胞と融合することによって形成されたハイブリ
    ドーマである前記細胞。
  123. 【請求項123】 請求項120のハイブリドーマにより
    産生されるモノクローナル抗体。
  124. 【請求項124】 次の段階:スクリーニング段階前に
    トランスジェニック動物を第二抗原で免疫処理し;そし
    て前記第二抗原を結合する免疫グロブリンを産生するB
    細胞についてスクリーニングするを更に含んで成る、請
    求項120の方法。
  125. 【請求項125】 前記抗原のうちの1つがヒト免疫グ
    ロブリンである、請求項120の方法。
  126. 【請求項126】 前記マウスがT細胞レセプタートラ
    ンスジェンを含んで成り、そして前記抗原のうちの1つ
    がヒトT細胞レセプターである、請求項120の方法。
  127. 【請求項127】 トランスジェニックマウスであっ
    て、 (i) 可変遺伝子配列、多様性遺伝子配列、連結遺伝子配
    列、並びにスイッチ供与体配列およびスイッチ受容体配
    列に作用可能に連結された2つの定常領域配列を含んで
    成る重鎖ヒトトランスジェン; (ii)可変遺伝子配列、
    連結遺伝子配列および定常遺伝子配列を含んで成る軽鎖
    トランスジェン;および(iii) 各トランスジェンに作用
    可能に連結された転写調節配列を含んで成るゲノムを有
    し、ここで前記遺伝子配列および調節配列は生体内にお
    いて発生的に制御される多様性の発現を行って複数のヒ
    ト免疫グロブリンを形成する、前記トランスジェニック
    マウス。
  128. 【請求項128】 血清1mlあたり約1mgのヒト免疫グロ
    ブリンを産生する、請求項127のトランスジェニックマ
    ウス。
  129. 【請求項129】 ヒト免疫グロブリンの約10%より多
    くがIgGである、請求項127のトランスジェニックマウ
    ス。
  130. 【請求項130】 ヒト免疫グロブリンが予め選択され
    た抗原に対して約10-7-1より大きい親和性を示す、請
    求項127のトランスジェニックマウス。
  131. 【請求項131】 外来抗原に対して免疫処置されると
    免疫応答を開始し、前記免疫応答が、該抗原により免疫
    処置された非トランスジェニックマウスの内因性免疫グ
    ロブリンにより結合される抗原の少なくとも約10%に結
    合することができるヒト免疫グロブリンを産生すること
    を含んで成る、請求項127のトランスジェニックマウ
    ス。
  132. 【請求項132】 約1000種より多い異なるヒト免疫グ
    ロブリンを産生することができる、請求項131のトラン
    スジェニックマウス。
  133. 【請求項133】 約1000種より多い異なるヒトIgG免
    疫グロブリンを産生することができる、請求項131のト
    ランスジェニックマウス。
  134. 【請求項134】 ヒト免疫グロブリンの産生方法であ
    って、抗原により免疫処置された請求項131のトランス
    ジェニックマウスからのB細胞を不死化し;そして前記
    抗原と反応性の免疫グロブリンを分泌する選択された不
    死化B細胞を増殖させることを含んで成る方法。
  135. 【請求項135】 請求項134 に従って産生されるヒト
    免疫グロブリン(Ig)であって、ヒト免疫グロブリンと生
    来会合しているヒトタンパク質に関して単離されている
    前記ヒト免疫グロブリン。
  136. 【請求項136】 10-7 -1より大きい抗原親和性を有
    する、請求項135のヒト免疫グロブリン。
  137. 【請求項137】 ヒト免疫グロブリン重鎖小遺伝子座
    トランスジェンを含んで成るゲノムを有するトランスジ
    ェニックマウスであって、前記トランスジェンがマウス
    中で再配列およびスイッチすることができ、それによっ
    て2以上の再配列されたヒト重鎖イソタイプが生産され
    るトランスジェニックマウス。
  138. 【請求項138】 前記イソタイプがμおよびγであ
    る、請求項137のトランスジェニックマウス。
  139. 【請求項139】 請求項137のマウスにより産生され
    る単離されたヒトモノクローナル抗体。
  140. 【請求項140】 リンパ系細胞サブセットと特異的に
    反応するヒト免疫グロブリン。
  141. 【請求項141】 前記サブセットがヒトT細胞サブセ
    ットである、請求項140のヒト免疫グロブリン。
  142. 【請求項142】 前記サブセットが自己反応性T細胞
    である、請求項141のヒト免疫グロブリン。
  143. 【請求項143】 免疫グロブリンDNA断片のクローニ
    ングにおいて有用なプラスミドベクターであって、 (i) 複製開始点; (ii) コピー調節配列; (iii) 希少な制限酵素部位により隣接されたクローニン
    グ部位; (iv)プラスミド由来のプロモーターの上流で且つクロー
    ニング部位の下流に置かれ、それによってプロモーター
    のところで始まる転写がクローニング部位の上流で終結
    する、転写ターミネーター を含んで成るベクター。
  144. 【請求項144】 前記希少な制限酵素部位が NotI,S
    fiIおよび PactIから選ばれる、請求項143に記載のベ
    クター。
  145. 【請求項145】 pGP1b, pGP1c, pGP1d, pGP1d, pGP1
    fおよびpGPeから成る群から選ばれる、請求項143に記載
    のベクター。
  146. 【請求項146】 請求項16,25,108,127または137
    のトランスジェニックマウス内で発達したB細胞から単
    離された、再配列されたヒトVDJ遺伝子断片から本質
    的に成る組成物。
  147. 【請求項147】 トランスジェニック齧歯類からのヒ
    ト免疫グロブリンの産生方法であって、前記齧歯類はヒ
    ト重鎖および軽鎖免疫グロブリントランスジェンの生殖
    細胞型コピーを含んで成るゲノムを有し、前記齧歯類を
    抗原で免疫処置し;そして前記抗原を結合する免疫グロ
    ブリンを産生する齧歯類からのB細胞についてスクリー
    ニングすることを含んで成る方法。
  148. 【請求項148】 前記軽鎖トランスジェンが生殖細胞
    において再配列される、請求項147の方法。
  149. 【請求項149】 前記重鎖トランスジェンが前記齧歯
    類の生殖細胞において再配列されない、請求項148の方
    法。
  150. 【請求項150】 請求項40,53,59,120 または147
    の方法に従って産生される単離されたヒト免疫グロブリ
    ン。
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