WO2009119794A1 - 感染症予防、治療剤 - Google Patents

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Abstract

 本発明により、細菌トキシン-アンチトキシン系を構成するトキシン又はアンチトキシンに結合し、トキシン-アンチトキシン間相互作用を阻害する抗体、又はその遺伝子を有効成分として含有する細菌性感染症の予防又は治療剤が提供される。

Description

感染症予防、治療剤
 本発明は、感染症治療に有用な機能性抗体、及び当該機能性抗体又はその遺伝子を有効成分とする感染症治療剤に関する。
 原核生物のプラスミドの中には、宿主でのプラスミドを維持するためにプラスミドが脱落した宿主を殺すpost-segregation killing(PSK)の機能を有するものが報告されている。これらのプラスミドにはトキシン-アンチトキシン系(以下、TA系と記載する。また、TAモジュール、TA複合体、アディクションモジュールと称されていることがある)をコードする遺伝子(以下、TA遺伝子と記載する。)が存在している。アンチトキシンは細胞内でトキシンと結合して複合体を形成することによってトキシンを不活化しているが、アンチトキシンはトキシンに比べて細胞内で不安定であり、アンチトキシンがプロテアーゼにより分解される事によってより安定なトキシンが活性化される(非特許文献1)。
 現在までに多数のTA系が報告されている。これらはCcdA-CcdB、RelB-RelE、ParD-ParE、HigA-HigB、MazE/PemI-MazF/PemK、Phd-Doc、ならびにVapB-VapCの7つの2コンポーネントファミリーと、ω-ε-ζという3コンポーネントファミリーに分類される(非特許文献1)。
 このようなTA系のひとつとして多数のバクテリアのクロモソームに存在するMazE-MazF系がある。井上らはトキシンであるMazF(ChpAK)は、リボソーム非依存的に特定の塩基配列(ACA)を認識してmRNAを切断するエンドリボヌクレアーゼであることを証明している。Christensenらは、トキシンであるRelEが3塩基の特定のコドンを認識してmRNAを切断するエンドリボヌクレアーゼであることを報告している。また、同グループはトキシンであるChpAK、ChpBK及びYoeBも同様にコドン依存的にmRNAを切断するエンドリボヌクレアーゼであることを報告している。また大腸菌以外にもMazFのホモログとして、Deinococcus radioduransのDR0662、Mycobacterium bovis BCGのMb2014cなどの遺伝子(特許文献1)やMycobacterium tuberculosisのMazFホモログ(非特許文献2)が報告されている。最近、Staphylococcus aureusにもMazFのホモログが見つかっている(非特許文献3)。
 当初、大腸菌のMazEFは大腸菌に細胞死を引き起こすと報告された(非特許文献4)。しかしながらその後、MazFの過剰発現はmRNAを分解してタンパク質の翻訳を抑制し、その結果大腸菌のコロニー形成能は低下するが、アンチトキシンであるMazE遺伝子を発現させる事によって細胞増殖が回復するという研究結果などが示された。このことから、現在ではMazFは大腸菌に細胞死を引き起こすものではないとされている(非特許文献1)。
 それにも関らずTA系は新しい抗生物質の創薬ターゲットとして有用である可能性が指摘されている。特許文献2及び3にはTA系複合体形成を阻害する物質のスクリーニング方法が開示されている。これらの文献にはTA系の複合体形成を阻害する物質が細菌の増殖を抑制する抗生物質として働く可能性について述べられているが、いずれも科学的根拠の無い単なる推測として記載されているに過ぎない。したがって、現在のところTA系の複合体形成を阻害して細菌の増殖抑制や細胞死が起こるかどうかは明らかでなかったし、トキシン-アンチトキシン間相互作用を阻害する抗体により感染症疾患を治療した例や治療可能であることを裏付ける証拠は示されていない。たとえある細菌の増殖とTA系複合体形成との関連が知られていたとしても、実際にトキシンあるいはアンチトキシンに結合する抗体がその細菌による感染症の治療に有効かどうかは不明である。細菌は多くのTA系を有することが分かっている。それぞれのTA系は細胞のなかで他のTA系と複雑なネットワークを作っていると考えられているので、単にある細菌のトキシンあるいはアンチトキシンの働きのみを阻害しただけで当該細菌による感染症疾患が治療できるかどうかは知られていなかった。ある細菌のトキシン-アンチトキシン間相互作用を阻害して当該細菌による感染症疾患の治療に有効な性能を有する機能性抗体はおろか、低分子化合物さえも発見されていない。
国際公開第2007/013265号パンフレット 特開2007-39398号公報 国際公開第2007/109781号パンフレット ネイチャー・レビューズ・マイクロバイオロジー(Nature Reviews Microbiology)、第3巻、第371~382頁(2005) ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリ(The Journal of Biological Chemistry)、第281巻、第18638~18643頁(2006) ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(Journal of Bacteriology)、第189巻、第8871~8879頁(2007) プロシーディングス オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンス(Proceedings of National Academy of Sciences) USA、第93巻、第6059~6063頁(1996)
 近年、多剤耐性菌の出現は医療現場の大きな問題となっており、特定の細胞機能を標的とした新規な感染症治療薬の開発が望まれている。
 従って、本発明は上記のような問題を解決し、新規な感染症治療薬を提供すべくなされたものである。
 本発明者らは、細菌の持つトキシンに特異的に反応する抗体を検索したところ、それらの中に、トキシンのエンドリボヌクレアーゼ活性を保持したまま、アンチトキシンとトキシンとの複合体形成を阻害し、細菌の増殖を抑制、もしくは細菌を死滅させる作用を有するという特異な性質の機能性抗体を見出し、この性質の抗体、当該抗体の活性断片及びこれらをコードする遺伝子は、各感染菌の感染治療薬として広く有用であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
 本発明を概説すれば、
[1]細菌トキシン-アンチトキシン系を構成するトキシン又はアンチトキシンに結合し、トキシン-アンチトキシン間相互作用を阻害する抗体、又はその遺伝子を有効成分として含有する細菌性感染症の予防又は治療剤、
[2]前記抗体がトキシン又はアンチトキシンに対するモノクローナル抗体である[1]の予防又は治療剤、
[3]前記抗体が大腸菌、結核菌及びブドウ球菌からなる群より選択される細菌のトキシン又はアンチトキシンに対するモノクローナル抗体である[2]の予防又は治療剤、
[4]前記トキシン-アンチトキシン系が、配列特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するトキシンを含有するトキシン-アンチトキシ系である[1]~[3]のいずれかに記載の予防又は治療剤、
[5]前記抗体が組換え型抗体である[1]~[4]のいずれかに記載の予防又は治療剤、
[6]前記抗体がヒト化抗体又は完全ヒト抗体である[1]~[5]のいずれかに記載の予防又は治療剤、
[7]細菌性感染症が、結核、MRSA感染症及びVRE感染症からなる群より選択される感染症である、[1]~[6]のいずれかに記載の予防又は治療剤、
[8]細菌トキシン-アンチトキシン系を構成するトキシン又はアンチトキシンに結合し、トキシン-アンチトキシン間相互作用を阻害する抗体を有効成分として含有する細菌性感染症における体重減少抑制剤、
である。
 本発明により、トキシン又はアンチトキシンに特異的に結合し、かつトキシン-アンチトキシン間の相互作用を阻害することにより、トキシン-アンチトキシン複合体形成を妨害し、もって細菌の増殖を抑制もしくは細菌を死滅させる効果を発揮する抗体又は当該抗体の抗原結合部位を含む断片あるいはそれらをコードする遺伝子を有効成分とする細菌感染症の予防・治療剤が提供される。
本発明の実施例4に係る細菌TA系の相互作用阻害を示す図である。 本発明の実施例5に係る細菌TA系の相互作用阻害を示す図である。 本発明の実施例6に係る細菌TA系の相互作用阻害を示す図である。 本発明の実施例7に係る細菌TA系の相互作用阻害を示す図である。 本発明の実施例7に係る細菌TA系の相互作用阻害を示す図である。 本発明の実施例7に係る細菌TA系の相互作用阻害を示す図である。 本発明の実施例7に係る細菌TA系の相互作用阻害を示す図である。 本発明の実施例7に係る細菌TA系の相互作用阻害を示す図である。 本発明の実施例8に係る細菌の生育を示す図である。 本発明の実施例9に係る細菌生菌数を示す図である。
 本発明において、「抗体」とは免疫原(抗原)と特異的に反応する免疫グロブリン及び抗原結合部位を含むその断片を意味する。本発明において、B細胞が産生する抗体又は抗原結合部位を含むその断片を使用することができる。抗原結合部位を含むその断片としては、重鎖(H鎖、Heavy chain)、軽鎖(L鎖、Light chain)、Fab、F(ab’)、可変領域(V、V)又は定常領域などを単独で、あるいは組み合わせて使用することができる。一般的に重鎖には、γ鎖、μ鎖、α鎖、δ鎖及びε鎖の5種類があり、軽鎖にはλ鎖とκ鎖の2種類が存在する。これらの分子の組み合わせによって、サブクラスがIgG、IgM、IgA、IgD、IgEの各抗体分子が形成される。本発明において使用する抗体としては、ヒト、あるいはマウスのような非ヒト動物由来のモノクローナル抗体、キメラ抗体を含むヒト化抗体、完全ヒト抗体、ポリクローナル抗体、多価抗体(例えば、バイバレント抗体)、マルチ特異性抗体(例えば、バイスペシフィック抗体)又は1本鎖抗体(単鎖抗体、scFv)、さらにラクダやラマの持つH鎖のみからなる抗体から開発されたナノ抗体(Nanobody)やサメのIgNARなどの抗体様分子などが例示される。
 本発明に用いられる抗体は、標的細菌のトキシンの活性を保持したままトキシン又はアンチトキシンを認識し、これに結合して、トキシン―アンチトキシンの相互作用を阻害しうる特異性及び性能を有していればよい。
 本発明において、「トキシン(Toxin)」及び「アンチトキシン(Antitoxin)」とは、それぞれ、細菌(バクテリア)のプラスミドDNA又は染色体DNA上にコードされたタンパク質性毒素及び抗毒素のことを意味する。トキシンは「毒素(poison)」と、アンチトキシンはしばしば「解毒剤(アンチドート、Antidote)」とも呼ばれる。細菌細胞内でトキシンはアンチトキシンと安定なTA複合体を形成し、そのためにトキシンは細胞に対して毒性を発揮することがないが、細胞に対する様々なストレスに応答して、不安定なアンチトキシンがプロテアーゼによって分解を受けるとトキシンがその毒性を発揮して、DNA複製やタンパク質合成を制御する。以上に説明したトキシンとアンチトキシンとで構成される細菌の増殖制御システムは、トキシン-アンチトキシン系(TA系)あるいはアディクションモジュールと呼ばれている。現在までに多数のTA系が報告されている。本発明の抗体によりその機能が調節されるTA系としては、特に本発明を限定するものではないが、以下のようなTA系が例示される。
 Kenn Gerdesらのレビュー[Nature Reviews Microbiology、第3巻、第371~382頁(2005)]によれば、細菌には7つのTA系ファミリーが存在している。レビュー中の表1には、それぞれのTA系をコードするローカス名、トキシン名、アンチトキシン名、トキシンの作用及び原核生物ゲノム中のローカス数などがまとめられている。これらの中で、relBEローカスにコードされているトキシンRelEとmazEF(別名ChpA)ローカスにコードされるトキシンMazF(PemK)は、mRNAを分解するリボヌクレアーゼである。大腸菌のMazE(PemI)(アンチトキシン)/MazF(トキシン)は最もよく解析されているTA系である。MazFがリボソーム非依存的にmRNA中のACA配列を特異的に切断することが井上らによって示されている[Molecular Cell、第12巻、第913~923頁(2003)]。RelEに関してもリボソーム依存的に3塩基の特定コドンを認識してmRNAを切断するエンドリボヌクレアーゼであると報告されている。従ってRelEやMazFの毒性はmRNAを分解することによって翻訳を抑制することにある。ごく最近、Haemophilus influenzaeのVapC-1トキシンとVibrio choleraeのHigBトキシンについてもmRNAを分解するリボヌクレアーゼ活性を持つことが報告されている[Journal of Bacteriology、第189巻、第5041~5048頁(2007)、Molecular Microbiology、第62巻、第397~411頁(2006)]。なお、MazFは病原性大腸菌O-157株にも存在する。また、ごく最近大腸菌MazE-MazFはバンコマイシン耐性腸球菌に存在することが報告された[Proc Natl Acad Sci USA、第104巻、第311~316頁(2007)]。
 なお、本明細書では大腸菌以外の細菌由来のMazF及びMazEファミリーのトキシン及びアンチトキシンについて、起源細菌名をMazF又はMazEに付して表示することがある。MazF(BCG)及びMazE(BCG)はそれぞれMycobacterium bovis BCG由来のMazF及びMazEを、また、MazF(S.aureus)及びMazE(S.aureus)はそれぞれStaphylococcus aureus由来のMazF及びMazEを指す。MazF(BCG)及びMazE(BCG)のアミノ酸配列は、下記の結核菌由来のMazF及びMazEのアミノ酸配列と同一である。
 以下、MazFファミリー及びMazEファミリーのアミノ酸配列を例示する。
大腸菌(Escherichia coli)のMazF(配列番号1)
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のMazF(配列番号2)
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のMazF(S.aureus)(配列番号3)
大腸菌(Escherichia coli)のMazE(配列番号4)
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のMazE(配列番号5)
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のMazE(S.aureus)(配列番号6)
 (I)本発明の抗体
 本発明の抗体は、標的細菌のTA系を構成するトキシン又はアンチトキシンを特異的に認識して結合し、当該トキシンと対応するアンチトキシンとの間の相互作用を阻害する能力をもつ抗体であれば、抗体の作製方法又は製造方法には限定されず、一般的な方法に従って当該抗体を取得することができる。本発明の好適な態様として、mRNAを配列特異的に切断するエンドリボヌクレアーゼ活性を有するトキシン又はそのアンチトキシンを認識する抗体が例示される。以下に大腸菌のTA系の一つであるMazE-MazF系を構成するトキシンであるMazF、及びアンチトキシンであるMazEを例として本発明の抗体について説明する。
(1)抗原の調製
 抗MazE抗体や抗MazF抗体を得るために用いられる抗原としては、タンパク質であるMazEやMazFそのもの、あるいはその少なくとも3残基の連続した部分アミノ酸配列からなるMazEあるいはMazF由来ペプチド、あるいは抗原性を向上させる目的で、これらにヘルパーT細胞エピトープペプチドやアルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などのキャリアタンパク質を付加した誘導体などが用いられる。
 MazEやMazFをそのまま抗原として用いる場合は、当該タンパク質は大腸菌の菌体から直接精製する事ができるが、MazEやMazFをコードするDNAをクローニングして遺伝子組換え技術を使用して組換え体タンパク質として発現させたものを用いることができる。公知の方法に従って、原核細胞の適当な宿主、例えば大腸菌や枯草菌(Bacillus subtilis)での発現に適したプラスミドベクターにMazE遺伝子あるいはMazF遺伝子を搭載しこれらの宿主細胞でMazEやMazFを発現させることができる。動物への免疫抗原としては、細胞抽出液やその濃縮物など組換え体MazEやMazFを含む粗抽出画分を用いることができる。免疫抗原を精製して用いる場合には、発現産物の精製を容易にするために、抗原性を変化させない範囲でHis-Tag又はHA-Tagなどのタグ配列を抗原タンパク質のC末端あるいはN末端に付加することができる。C末端His-Tag付きMazEあるいはMazFの大腸菌での発現、精製はモレキュラー セル(Molecular Cell)第12巻、第913~923頁(2003)に記載の方法に従って行う事ができる。N末端His-Tag付きMazEあるいはMazF組換えタンパク質についても上記文献記載の方法に順じて調製することができる。組み換え体MazEやMazFの発現量やタンパク質の溶解性を向上させる目的で、国際公開第2007/109697号パンフレットに記載の方法に従ってMazE又はMazFをMyxococcus xanthusのProtein Sとのキメラ型タンパク質として発現させても良い。
(2)本発明に用いられる抗MazF抗体あるいは抗MazE抗体の調製
 本発明のポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体は、それぞれ[メソッズ イン エンザイモロジー(Methods in Enzymology)、第182巻、第663~670頁(1990)]又は[モノクローナル アンタイボディーズ:プリンシプル アンド プラクティス(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice)アカデミックプレス(1996)]に記載の方法に従って(1)で調製した抗原を用いて適当な動物を免疫することによって取得することができる。ポリクローナル抗体の場合は免疫動物の血清を次のスクリーニングに使用する。抗原に対する特異性や抗体の機能、あるいは抗体遺伝子を取得する観点から見れば、モノクローナル抗体の方が好適に用いられる。モノクローナル抗体の場合は、免疫動物の脾臓やリンパ節から調製した抗体産生細胞とミエローマ細胞とを細胞融合したハイブリドーマを次のスクリーニングに使用することができる。
 ヒト以外の動物を免疫して得られた抗体については、ヒトに投与する場合の免疫原性の軽減のために、動物由来の抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に接合した「ヒト化キメラ抗体」を作成することができる(特開平7-194384号公報)。また、可変部領域の抗原性をアミノ酸置換・ヒト化によりヒトの抗原性に変換し、リガンド結合性は損なうことなく免疫原性を低下させることもできる(特開平8-280387公報)。さらに、動物抗体(ドナー)由来の相補性決定領域(CDR)部分のみをヒト由来の抗体(アクセプター)に移植する方法(再構成)によってヒト化抗体を製造することができる。CDRのみならずフレームワーク部分の一部のアミノ酸を、ドナーのそれに合わせることによってより抗原性を低めつつ、元の抗体の反応性を維持したヒト化抗体を作成することもできる(特許2828340号公報、特開平11-4694号公報、特開平11-243955号公報)。
 さらにヒト抗体を生産するマウスやウシなどのトランスジェニック動物を(1)に記載のMazEやMazFタンパク質で免疫することによって、完全ヒトモノクローナル抗体を得ることもできる(特開平10-146194号公報、特開平10-155492号公報、特許2938569号公報、特開平11-206387号公報、特表平8-509612号公報、特表平11-505107号公報)。
 本発明のモノクローナル抗体は、上記のように免疫動物の抗体産生細胞から取得する方法の他に、抗体の遺伝子ライブラリーを作成して、そのライブラリーから抗体ディスプレイ技術を用いて抗原であるMazEやMazFに特異的な抗体を選抜する方法によって取得することもできる。
 抗体遺伝子ライブラリーとしては、
(i)(1)で作成した免疫抗原を用いて免疫した動物やヒトの抗体産生細胞から抗体のH鎖及びL鎖の遺伝子を増幅し、Fabや単鎖抗体(scFv)のフォーマットで発現するように作成した免疫ライブラリー、
(ii)非免疫動物、ヒトの末梢血リンパ球などから抗体のH鎖及びL鎖の遺伝子を増幅し、Fabや単鎖抗体(scFv)のフォーマットで発現するように作成した非免疫(ナイーブ)ライブラリー、又は
(iii)動物やヒトの特定の抗体分子のV遺伝子の相補性決定領域(Complementarity Determining Region;CDR)を、適当な長さのランダムなアミノ酸配列をコードするオリゴヌクレオチドで置換して作成した合成ライブラリー、
などを用いることができる。
 抗体ディスプレイ技術として最も一般的なものは、繊維状ファージ(例えばM13ファージ)の外殻タンパク質(g3p)上に抗体をFabやscFvの形で提示するファージディスプレイ法である。FabあるいはscFvを提示するファージディスプレイライブラリーは、[ファージディスプレイ ア ラボラトリー マニュアル(Phage Display A Laboratory Manual)コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(2001)]に記載の方法に従って構築することができる。ファージディスプレイライブラリー以外に、酵母表層ディスプレイ法、リボソームディスプレイ法、又は動物細胞表面ディスプレイ法などで作製されたライブラリーを利用することもできる。
 得られた抗体を適当なプロテアーゼで消化することによって、抗原結合部位を含む低分子化抗体を作成することができる。プロテアーゼ限定消化による抗体の低分子化は古典的で良く知られた手法であって、例えば、IgG1をペプシンで消化することによってF(ab’)を、パパインで消化することによってFabを調製することができる。これらの低分子化抗体の調製には、例えばピアス社製のImmunoPure(登録商標)Fab Preparation Kitなどを用いることができる。
(3)本発明に用いられる抗体のスクリーニング
 免疫動物血清中の抗体力価の測定やモノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングにおける抗体力価の測定は一般的にはRIA法、ELISA法、又はフローサイトメトリなどの方法を用いて行う事ができる。例えば、ELISA法で行う場合にプレートをコーティングする抗原には、免疫抗原をそのまま使用することもできるが、免疫抗原とは異なるMazFを用いることが好ましい。例えば、免疫抗原としてHis-Tag付きMazEもしくはMazFを用いた場合は、抗体力価測定用にはHis-Tagを持たない精製(部分精製)MazEもしくはMazFを用いるか、あるいは、N-末端His-Tag付きMazEもしくはMazFを免疫抗原とした場合には、力価測定用にはC-末端His-Tag付きMazEもしくはMazFを使用してTag配列そのもの、あるいはTag配列を含むMazEもしくはMazFの配列に反応する抗体を排除してMazEもしくはMazFに特異的に反応する抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。また、BSAなど目的抗原とは関係のないタンパク質に対する力価を測定して非特異的な抗体を排除することができる。モノクローナル抗体の場合は、ハイブリドーマのスクリーニングの過程で、抗体力価の高いクローンから低いクローンまで、さまざまなモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。
 また、得られたハイブリドーマのmRNAから適当なプライマーによって抗体分子をコードするcDNAの配列情報を得ることができる。例えばマウスのハイブリドーマであれば、選択した抗体を産生するハイブリドーマのトータルRNAを鋳型として、既報の方法[Journal of Immunological Methods、第178巻、第241-251頁(1995)]を用いて、重鎖CH1及び軽鎖CL部分に設計されたプライマーと逆転写酵素を用いたファーストストランド合成、それに引き続きPCR反応を行う事によって抗体重鎖、軽鎖可変部位(VH、VL)をコードするDNAをクローニングし、それらの塩基配列をDNAシークエンサーを用いて決定することができる。このようにして、抗MazE抗体、あるいは抗MazF抗体の抗原結合部位を含む抗体断片をコードする遺伝子を得ることができる。得られた遺伝子の核酸配列を決定することによって、抗MazE抗体、あるいは抗MazF抗体の抗原結合部位を含む抗体断片のアミノ酸配列情報を得ることもできる。得られた抗原結合部位を含む抗体断片をコードする遺伝子の配列をもとにして、抗体可変領域をコードする遺伝子と抗体定常領域をコードする遺伝子と連結することによって完全抗体を発現する発現プラスミドを構築することができる。また、完全抗体以外にも、Fab、単鎖抗体(scFv)、単鎖抗体の二量体(Diabody)、単鎖抗体の三量体(Triabody)又はミニボディー(Minibody)などの抗原結合部位を含む低分子化抗体をコードするcDNAをデザインすることができ、これらの遺伝子を適切な宿主で発現させるためのプロモーターの下流に連結することによって抗原結合部位を含む低分子化抗体発現用プラスミドを構築することができる。これらの抗体断片発現プラスミドを大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などの適当な宿主で発現させることによって、上記の抗体や低分子化抗体を組換えタンパク質として得ることができる。
 ファージディスプレイのような抗体ディスプレイ技術を用いて抗体可変部位遺伝子を含むFabや単鎖抗体(scFv)ライブラリーからMazFに特異的な抗体を得るためには、バイオパニングと呼ばれる操作を行う。公知の方法、例えば[ファージディスプレイ ア ラボラトリー マニュアル(Phage Display A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(2001)]に記載の方法に従って、M13ファージ抗体ライブラリーからMazEもしくはMazFに結合するファージを選択する操作を行えばよい。基本操作としては、プラスティックプレートやチューブに固相化したMazEもしくはMazFにM13ファージ抗体ライブラリーを接触させ、適当な緩衝液、例えば0.1%Tween20を含むPBS(リン酸緩衝生理食塩水)などを用いて結合しない非特異的なファージを洗浄して除去した後に、結合ファージを酸性溶液、例えば0.1M グリシン―塩酸(pH2.2)などを用いて溶出、中和して大腸菌に感染させて増殖させるという操作を数回繰り返すことによって目的抗原であるMazEあるいはMazFに特異的な抗体をディスプレイしているファージを濃縮する。ファージ内部には提示された抗体をコードする遺伝子を含むファージミドベクターがパッケージングされているため、このファージミドベクターの抗体遺伝子挿入部分の核酸塩基配列を決定することによって、選抜取得した抗体の遺伝子をクローニングし、その配列情報を決定することができる。固相に固定化する抗原(MazEあるいはMazF)の量、又は固定化方法などを変えることによってさまざまな親和性とエピトープ特異性を持った抗体V領域を選択することができる。
 上記のようにMazEあるいはMazFに特異的に結合する抗体として選択されたものの中から、MazFのトキシンとしての活性、すなわち抗体あるいはその機能性断片の配列特異的リボヌクレアーゼ活性阻害能を測定することによって、MazE又はMazFに結合し、かつ、トキシンとしての活性を完全には阻害しない抗体をスクリーニングすることができる。さらに、MazEとMazFの存在下、当該抗体を共存させて配列特異的リボヌクレアーゼ活性を測定することによって、トキシンであるMazFとアンチトキシンであるMazEの相互作用を阻害する抗体をスクリーニングすることができる。
 MazEあるいはMazFに対する結合活性の強さと、MazE-MazFのTA複合体形成阻害活性の強さとは、必ずしも相関しない事を考慮すると、MazEあるいはMazFに対する結合活性の強い抗体だけでなく、MazEやMazFに対する結合活性がそれほど強くない抗体についてもMazFのトキシン活性に対する影響や、MazE-MazF相互作用に対する影響を測定することが望ましい。
 大腸菌MazFのリボヌクレアーゼ活性は、例えば合成オリゴRNAあるいはDNA-RNAキメラオリゴヌクレオチドを基質として、文献[モレキュラー セル(Molecular Cell)、第12巻、第913~923頁(2003)、アナリティカル バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)、第371巻、第173~183頁(2007)]に記載された方法に従って測定する事ができる。また、MazFによる切断位置の5’側にリボヌクレオチド残基を含むDNA-RNAキメラオリゴヌクレオチドの5’末端を蛍光物質ROXで、3’末端を消光物質Eclipseでそれぞれ標識した合成基質を使用してMazFのリボヌクレアーゼ活性を高感度に測定する方法が国際公開第2007/109781号パンフレットに記載されている。さらに、MazFの活性を無細胞タンパク質合成系を用いて測定する方法がモレキュラー セル(Molecular Cell)、第12巻、第913~923頁(2003)に記載されている。
 これらの活性測定系に本発明の抗体を添加した際に、MazFのリボヌクレアーゼ活性に影響を全く及ぼさないか、影響を及ぼすとしても50%程度まで、好ましくは20%程度までの阻害効果を示す抗体が本発明の抗体としては好ましい。
 上述のMazFのリボヌクレアーゼ活性測定系にMazEを共存させることによってMazFの活性は抑制される。MazEとMazFの比率は特に限定はないが、1:10から2:1のモル比の範囲でアッセイ系の感度によって適宜設定すれば良い。上記の論文によればMazEをMazFに対してほぼ等モル加えることによってMazFの無細胞タンパク質合成系での活性は抑制されている。合成オリゴRNAを基質としてMazFのリボヌクレアーゼ活性を測定する系では、MazEとMazFのモル比が約1:4の条件でMazFのリボヌクレアーゼ活性の阻害効果を確認することができる。このようなMazE共存下でのMazF活性測定系に本発明の抗体を加えることによって、本発明の抗体によるMazE-MazF間相互作用の阻害効果を測定することができる。すなわち、MazEによるMazFの活性阻害効果が確認できる条件下で本抗体を添加し、MazEによるMazF活性の阻害効果が抑制されるような抗体を選択することによって、本発明の抗体、すなわちMazE又はMazFを特異的に認識して結合し、当該MazFとMazE間の相互作用を阻害する能力をもつ抗体を得ることができる。
 上記のようにMazFのリボヌクレアーゼ活性を利用したアッセイ系の他に、TA複合体(MazE-MazF複合体)の解離を直接観察する方法が国際公開第2007/109781号パンフレットに記載されている。すなわち、トキシンあるいはアンチトキシンをGFPのような蛍光蛋白質との融合タンパク質として発現、精製し、対応するアンチトキシンあるいはトキシンにHis-Tagを付加して、蛍光蛋白質-トキシン/アンチトキシンとアンチトキシン/トキシン-His-Tagの複合体を形成させ、この複合体をニッケルアガロースビーズなどに固定化し、この固定化複合体に対してTA複合体形成阻害剤を添加して、遊離する蛍光強度(蛍光蛋白質-トキシン/アンチトキシン)を測定するという方法である。この測定系に本発明の抗体を添加して、遊離してくる蛍光強度を測定することによって、本発明のTA複合体を構成するトキシンに特異的に結合し、当該トキシンとアンチトキシンとの間の相互作用を阻害する能力をもつ抗体を選択することができる。
 MazE-MazF複合体形成阻害活性は、以下の方法によって測定することもできる。MazEもしくはMazFを容器に固相化し、BSAやミルクカゼインなどでブロッキングした後、MazEを固相化した場合はTag配列を付加したMazFを、MazFを固相化した場合はTag配列を付加したMazEを加える。室温あるいは37℃で適当な時間インキュベーションした後、容器を洗浄し、次いで容器表面に結合したMazEあるいはMazFをそれぞれに付加されたTag配列に対する抗体を用いて検出する。この目的のために、MazFとMazEには精製用のTag配列(例えばHis-Tag配列)の他にそれぞれ異なるTag配列、例えばMyc-tag配列やHA-tag配列などを付加しておくことが望ましい。MazEやMazFとMyxococcus xanthus Protein Sとのキメラ型タンパク質を用いれば、Protein Sに対する抗体を用いて検出することができる。MazEあるいはMazFの固相化プレート上でMazE-MazF相互作用のアッセイを行う系に本発明の抗体を添加してMazE-MazF複合体形成阻害活性を測定する場合、一定量のMazEあるいはMazFと濃度を変化させた抗体を混合してMazFあるいはMazE固相化プレートにそれぞれ添加し、固相上のMazEあるいはMazFに結合するMazFあるいはMazEを検出する事によって複合体形成阻害活性を測定する事ができる。逆に、濃度を変化させたMazEあるいはMazFと競合する抗体量を抗マウス標識抗体などで検出定量することによっても、本発明の治療剤に用いられる抗体のMazE-MazF複合体形成阻害活性を測定する事ができる。
 本発明の別の態様では、得られた抗体又は当該抗体の抗原結合部位を含む断片をコードする遺伝子を、標的とする細菌内、つまり抗体又は当該抗体の抗原結合部位を含む断片が作用するTA系を有する細菌内で発現させ、TA系複合体の形成を阻害することができる。前記抗体又は抗原結合部位を含むその断片の細菌内での発現のため、適切なプロモーターの制御下に前記の抗体又はその断片をコードする遺伝子を含有する適切なベクターを作製することができる。ベクターには特に限定はないが、プラスミドベクター、ウイルスベクター、又はファージベクター等を使用することができる。標的とする細菌内での前記遺伝子の発現は、前記のプロモーターに適した発現誘導因子又は遺伝子発現抑制因子などにより制御されていることが好ましい。
 以上に説明したMazE/MazFと同様に、他のTA系のトキシン、アンチトキシンについても本発明に使用できる抗体を取得することができる。
(II)本発明の感染症治療剤
 本発明の感染症治療剤は、(I)に記載したTA系のトキシン又はアンチトキシンに結合し、当該TA系複合体形成を阻害する活性を有する抗体又は当該抗体の抗原結合部位を含む断片、もしくは当該抗体又は当該抗体の抗原結合部位を含む断片をコードする遺伝子を有効成分として含有する感染症治療剤である。本発明の感染症治療剤は、有効成分となる抗体又は当該抗体の抗原結合部位を含む断片が作用するTA系を有する細菌に対し、増殖抑制又はプログラム細胞死誘導などを引き起こす。したがって、本発明の感染症治療剤は、細菌感染の治療において有用であり、場合により細菌の感染予防にも使用できる。
 細菌による感染症としては、例えば、(病原性)大腸菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、リステリア(リステリア・モノサイトゲネス)菌、サルモネラ菌又は緑濃菌などによる感染症が挙げられ、特に本発明は多剤耐性菌に起因する感染症に有用である。本発明の感染症治療剤のターゲットとなるMazE-MazF系と相同性を有するTA系は大腸菌の他にも結核菌[Journal of Biological Chemistry, 第281巻、第18638~18643頁(2006)]、黄色ブドウ球菌[Journal of Bacteriology、第189巻、第8871~8879頁(2007)]に存在することが知られている。また最近、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の薬剤耐性遺伝子がのったプラスミド上に大腸菌のMazE-MazF TAモジュールが存在していることが示されている[Proceedings of National Academy of Sciences USA、第104巻、第311~316頁(2007)]。従って本発明の感染症治療剤は大腸菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、腸球菌ならびにこれらと同種の抗生物質耐性株の治療に有効である。
 本発明の感染症治療剤は、医薬製剤の製造法で一般的に用いられている公知の手段に従って、本発明の抗体又は当該抗体の抗原結合部位を含む断片を、そのまま、あるいは薬理学的に許容される担体と混合して、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、注射剤、坐剤又は徐放剤等の医薬製剤として安全に投与することができる。
 抗体又は当該抗体の抗原結合部位を含む断片の製剤中の含有量は、製剤全体の1~100重量%であればよいが、10~100%が好ましく、50~100%がより好ましい。本発明の感染症治療剤は、投与対象、対象臓器、症状又は投与方法などにより異なり特に制限されないが、一般的に、患者(体重60kgとして)に対して、一日につき約5~2000mg、好ましくは約10~1000mg、より好ましくは約20~500mg投与されることが望ましい。投与方法は適宜選択され、特に制限されないが、好ましくは静脈注射である。
 薬理学的に許容される担体としては、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等が挙げられる。更に必要に応じ、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤又は湿潤剤等の添加物を適宜、適量用いることもできる。
 本発明の抗体又は当該抗体の抗原結合部位を含む断片をコードする遺伝子を有効成分として含有する感染症治療剤は、前記遺伝子を含むネーキッド型、ベクター型等の核酸とし、任意の剤形とすることができる。ここで、ネーキッド型とは前記遺伝子の発現システムの他に核酸自体の自己複製機能や粒子(ファージ又はウイルス)への組み込み機能を有しない核酸を指す。ベクター型の感染症治療剤に使用できるベクターは、遺伝子の安定性、細菌への遺伝子導入効率により適宜選択すればよく、具体的にはプラスミドベクター、ウイルスベクター、又はファージベクターである。
 本発明の抗体又は当該抗体の抗原結合部位を含む断片をコードする遺伝子を有効成分とする細菌感染症治療剤に用いられるベクターとして、ファージベクター又はファージミドベクターが好適に用いられる。ファージはバクテリオファージとも呼ばれる細菌に感染するウイルスである。ファージベクターはファージゲノムを改良してベクター化したもので、1つのベクター内にファージの全ゲノムを含み、単独でファージを形成することが可能である。一方、ファージミドベクターはファージへのパッケージングシグナルを含んだプラスミドベクターであり、ファージミドベクターにはファージ構成タンパク質の一部のみがコードされているので、そのままではファージを形成することができない。ファージ粒子の形成には、その他のファージ粒子形成に必要なファージ構成タンパク質を供給するためのヘルパーファージが必要で、このヘルパーファージをファージミドベクターと重感染させることによって初めてファージ粒子を形成することができる。これらのファージベクターあるいはファージミドベクターに本発明の抗体又は当該抗体の抗原結合部位を含む断片をコードする遺伝子を挿入することによって、これらの治療用遺伝子を効率よく目的の細菌内に導入し、本発明の抗体又は当該抗体の抗原結合部位を含む断片を目的細菌内で発現させることができる。本発明で用いられるファージは特に限定されるものではないが、例えば大腸菌のλファージに代表される溶原性ファージやT4ファージやT7ファージ、M13ファージなどの毒性ファージが挙げられる。また、大腸菌以外の細菌に感染するバクテリオファージとしては、例えばブドウ球菌(Staphylococci)に感染するPhage K[Journal of Bacteriology 186,2862-2871(2004)]や結核菌に感染するMycobacteriophageなどを含めて多数のバクテリオファージが報告されており、これらのファージあるいはファージミドベクターを標的の細菌に合わせて適宜用いることができる。
 本発明の抗体又は当該抗体の抗原結合部位を含む断片をコードする遺伝子を有効成分として含有する感染症治療剤は、細菌への遺伝子導入を促進する物質、又は医学的に許容される添加剤をさらに含んでもよい。細胞への遺伝子導入を促進する物質としてはカチオン性脂質、カチオン性ポリマー又は疎水性ポリマーがある。医学的に許容される添加剤としては生体親和性材料がある。前記遺伝子又はベクターは、生体親和性材料に担持されていてもよい。生体親和性材料は具体的にはコラーゲン、ゼラチン又はそれらの混合物である。
 以下に実施例により、さらに詳細に本発明を説明するが、本発明は実施例の範囲内に限定されるものではない。
参考例1 大腸菌MazF[MazF(E.coli)]発現プラスミドベクターの構築とMazF(E.coli)の発現、精製
 Escherichia coliのMazFのアミノ酸配列(配列番号1)から国際公開第2004/113498号パンフレットの記載に従って、MazF(E.coli)をコードする遺伝子配列からACA配列を当該配列にコードされるアミノ酸残基を変化させることなく、他の塩基配列に置き換えたDNAを構築した。なお、精製を簡便に行うためにHis-Tag配列をMazF(E.coli)のN末端側に付加し、MazF(E.coli)をコードする遺伝子配列のコドンを大腸菌でのコドン使用頻度を考慮して最適化した。このDNAを含むDNA断片を化学的に合成し、T7プロモーターからターミネーター間の遺伝子配列中のACA配列を他の塩基配列に置き換えたpET21(ノバジェン社製)遺伝子発現用プラスミドベクターのNcoI-HindIIIサイト間に挿入した組換えプラスミド、pETALHNMazF2を作製した。
 このプラスミドにより大腸菌JM109を形質転換した。得られた形質転換体1コロニーを5mLのLB培地中で37℃にて8時間振とう培養した後、80mLのLB培地で拡大培養し、菌体からQIA filter Plasmid Maxi Kit(キアゲン社製)を用いてプラスミドpETALHNMazF2を精製した。得られたプラスミドpETALHNMazF2で大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、得られた形質転換体を3LのLB培地中でJar培養した。
 得られた菌体を400mMのNaCl及び10mMのイミダゾールを含むPBSに懸濁後、超音波処理して無細胞抽出液を調製し、これよりHis Trap HP(GEヘルスケア社製)を用いてMazF(E.coli)を精製した。
参考例2 大腸菌MazE[MazE(E.coli)]発現プラスミドベクターの構築とMazE(E.coli)の発現、精製
 国際公開第2004/113498号パンフレットの記載に従って、Escherichia coliのMazEのアミノ酸配列(配列番号4)のN末端側にHis-Tag配列とMyc-Tag配列を付加したタンパク質をコードするDNAを含むDNA断片を化学的に合成し、遺伝子発現用プラスミドベクター、pET21a(ノバジェン社製)のNdeIサイト-EcoRIサイト間に挿入した組換えプラスミド、pHisMycMazEを作製した。
 このプラスミドにより大腸菌JM109を形質転換した。得られた形質転換体1コロニーを5mLのLB培地中で37℃にて8時間振とう培養した後、80mLのLB培地で拡大培養し、菌体からQIA filter Plasmid Maxi Kitを用いてプラスミドpHisMycMazEを精製した。得られたプラスミドpHisMycMazEで大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、得られた形質転換体を3LのLB培地中でJar培養した。OD600nmが0.5付近になった時点で終濃度1mMになるようにIPTGを添加して発現を誘導し、引き続き4時間培養を続けた。得られた菌体を400mMのNaCl及び10mMのイミダゾールを含むPBSに懸濁後、超音波処理して無細胞抽出液を調製し、これよりHis Trap HPを用いてMazE(E.coli)を精製した。
参考例3 Mycobacterium bovis BCGのMazF[MazF(BCG)]ならびにMazE[MazE(BCG)]の発現、精製。
 Mycobacterium bovis BCGのMazF[MazF(BCG)]ならびにMazE[MazE(BCG)]の発現プラスミドベクターの構築とタンパク質発現・精製は以下のようにして行った。国際公開第2007/013265号パンフレット、FEMS Microbiology Letter、第274巻、第73~82頁(2007)ならびにThe Journal of Biological Chemistry、第281巻、第18638~18643頁(2007)の記載を参考にして、MazF(BCG)をコードする遺伝子を含むDNA(配列番号7)を合成し、これを制限酵素Nde I及びXho Iで消化した。このDNAをpET21a(Novagen)ベクターの制限酵素サイトNde I-Xho I間にクローニングしたMazF(BCG)発現プラスミドベクター、pET-Mb2014cを構築した。また、MazE(BCG)をコードする遺伝子を含むDNA(配列番号8)を合成し、これを制限酵素Nde I及びHind IIIで消化した。このDNAをpET21a(Novagen)ベクターの制限酵素サイトNde I-Hind III間にクローニングしたMazE(BCG)発現プラスミドベクター、pHisMazEmbを構築した。
 これら2種類のプラスミドベクターでそれぞれ大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、得られた形質転換体を3LのLB培地中でJar培養した。OD600nmが0.5付近になった時点で終濃度1mMになるようにIPTGを添加して発現を誘導し、引き続き2時間培養を続けた。得られた菌体を400mMのNaCl及び10mMのイミダゾールを含むPBSに懸濁後、超音波処理して無細胞抽出液を調製し、これからHis Trap HPを用いてMazF(BCG)とMazE(BCG)を精製した。
 なお、Mycobacterium tuberculosisにはMazF(BCG)及びMazE(BCG)と同一のTA系が存在する。
参考例4 Staphylococcus aureusのMazF[MazF(S.aureus)]ならびにMazE[MazE(S.aureus)]の発現、精製。
 Staphylococcus aureusのMazF[MazF(S.aureus)]ならびにMazE[MazE(S.aureus)]の発現プラスミドベクターの構築とタンパク質発現・精製は以下のようにして行った。Journal of Bacteriology、第189巻、第8871~8879頁(2007)の記載を参考にして、MazF(S.aureus)をコードする遺伝子を含むDNA(配列番号9)を合成し、これを制限酵素Nde I及びBamH Iで消化した。このDNAをpET28a(Novagen)ベクターの制限酵素サイトNde I-BamH I間にクローニングしたMazF(S.aureus)発現プラスミドベクター、pET28mazFsaを構築した。また、MazE(S.aureus)をコードする遺伝子を含むDNA(配列番号10)を合成し、これを制限酵素Nco I及びBamH Iで消化した。このDNAをpET28a(Novagen)ベクターの制限酵素サイトNco I-BamH I間にクローニングしたMazE(S.aureus)発現プラスミドベクター、pHisPrS2MazEsaを構築した。pHisPrS2MazEsaは、MazE(S.aureus)のN末端側にMyxococcus xanthusのProtein Sが2分子結合した形のキメラタンパク質の発現ベクターである。
 これら2種類のプラスミドベクターでそれぞれ大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、得られた形質転換体を3LのLB培地中でJar培養した。OD600nmが0.5付近になった時点で終濃度1mMになるようにIPTGを添加して発現を誘導し、引き続き4時間培養を続けた。得られた菌体を400mMのNaCl及び10mMのイミダゾールを含むPBSに懸濁後、超音波処理して無細胞抽出液を調製し、これからHis Trap HPを用いてMazF(S.aureus)とMazE(S.aureus)を精製した。
実施例1 抗MazF抗体、抗MazE抗体の作製
 参考例1から参考例4で調製したMazF(E.coli)、MazE(E.coli)、MazF(BCG)、MazE(BCG)、MazF(S.aureus)とMazE(S.aureus)を1mg/mLの抗原溶液とした。以下、本実施例1では、MazFあるいはMazEの由来にかかわらず、単にMazE、MazFと記載することがある。これらの抗原溶液をそれぞれBALB/cマウス4匹に投与し、メソッズ イン エンザイモロジー(Methods in Enzymology)、第182巻(1990)及びモノクローナル アンタイボディーズ:プリンシプル アンド プラクティス(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice)アカデミックプレス(1996)に記載の方法に従って、抗血清及びハイブリドーマを得た。この抗血清又はハイブリドーマ培養上清について、参考例1から参考例4で調製したMazFあるいはMazEを定法に従って固相化した96-ウェル マイクロプレートを用いてELISAを行う事によってMazFあるいはMazEに特異的に結合する抗体を選択した。
 抗MazF抗体及び抗MazE抗体は、抗体遺伝子ライブラリーからスクリーニングすることによって得ることもできる。抗体遺伝子ライブラリーとしては、例えば健常人の末梢血リンパ球を材料として抗体可変部(VH、VL)から定常領域(CH1、CL)をコードする遺伝子を増幅して適当なベクターにクローニングすることによって作成することができる。抗体遺伝子ライブラリーや、ファージディスプレイライブラリーの作成方法については以下に挙げるラボマニュアルならびにそこに引用されている原著論文などを参考にして作成する事ができる。
[Methods In Molecular Biology Volume 248 ”Antibody Engineering Methods and Protocols”、 Edited by Benny K.C. Lo、 Humana Press(2004)]
[”Phage Display, A Laboratory Manual”、Edited by Carlos F. Barbas III, Dennis R. Burton, Jamie K. Scott, Gregg J. Silverman、Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)]
 このようにして、抗MazF(E.coli)抗体2C7、21B-8H、40ー10A、2H10、2H8、3B7、3B11、抗MazF(S.aureus)抗体7B-7F、8Aー5E、抗MazF(BCG)抗体2A-7G、11A-5Dを取得し、以下の実施例に使用するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、モノクローナル抗体のFab断片及びこれらをコードする遺伝子を適宜調製した。
 参考例1から参考例4で調製したMazFあるいはMazEを定法に従って固相化したプラスティックチューブを用いて上記の参考文献などを参考にしてバイオパニングを行うことによって、MazFあるいはMazEに特異的に結合するFab、scFv、Fd、軽鎖、VH、VL、ならびにこれらの抗体断片をコードする遺伝子とその核酸配列情報を得ることができる。
実施例2 MazF(E.coli)のリボヌクレアーゼ活性に対する抗体の影響
 MazF(E.coli)のリボヌクレアーゼ活性は以下のようにして測定した。MazF(E.coli)75ng及びMazE(E.coli)を15ng含むか又は含まない終濃度10mM Tris-塩酸バッファーpH7.5を37℃で15分間プレインキュベーションした後に、基質であるオリゴヌクレオチドMazG30(配列番号11)を100pmolと抗体サンプルを添加して37℃で30分間反応させた。25mM EDTAを含む95%ホルムアルデヒドを等量加えて反応を停止させた。反応停止液を15%アクリルアミドゲルを使用した電気泳動にて分析した。その結果、基質MazG30とMazFだけを添加した場合、基質MazG30は分解されて14mer相当の位置にバンドが生じた。基質MazG30にMazE及びMazFを加えた場合は、基質MazG30の分解が阻害され14mer相当の位置のバンドが減少した。さらに、基質MazG30にMazE、MazF、及び実施例1で得られた抗MazF(E.coli)モノクローナル抗体のFab断片を添加した場合は、基質MazG30は分解されて14mer相当の位置にバンドが生じた。
実施例3 抗体によるMazE-MazF相互作用阻害の高感度測定方法
 MazFのリボヌクレアーゼ活性を高感度に測定するため、蛍光物質と消光物質で標識されたキメラオリゴヌクレオチドを用いた活性測定系を以下の文献を参考にして構築した。
国際公開第2007/109781号パンフレット
Analytical Biochemistry、第371巻、第173~183頁(2007)
Molecular Microbiology、第69巻、第559~569頁(2008)
Journal of Bacteriology、Published online ahead of print on 27 February 2009
 このアッセイ系では、MazFのリボヌクレアーゼ活性によって二重標識キメラオリゴヌクレオチドが切断される結果、蛍光物質と消光物質の距離が離れ蛍光が生じる。活性測定系にMazFとともにMazEが共存する場合は、MazE-MazF複合体が形成されるためにMazFのリボヌクレアーゼ活性は抑制され基質は分解されないが、反応系にMazE-MazF相互作用を阻害する抗体が共存する場合は、MazE-MazF複合体の解離が起こり、MazFのリボヌクレアーゼ活性が発揮される結果、基質が分解されて蛍光シグナルが観測される。
 MazFのリボヌクレアーゼ活性測定用基質として、上記文献を参考にして表1に記載する蛍光標識キメラオリゴヌクレオチドを用いた。表1において、rUはリボヌクレオチド(ウラシル)を表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
実施例4 MazE-MazF相互作用に対する抗MazF(E.coli)抗体の影響
 実施例3の方法を用いた抗MazF(E.coli)抗体によるMazE(E.coli)-MazF(E.coli)相互作用阻害活性の測定は以下のようにして行った。
 蛍光測定用マイクロプレートを用いて、1μMのMazF(E.coli)10μLと、抗体溶液25μLを混合して37℃で15分間反応させた後、1μMのMazE(E.coli)を5μL加えて4℃で60分間反応させた。その後、基質溶液、10μLを加えて37℃で90分間反応させ、励起波長:485nm;蛍光波長:535nmでの蛍光強度を蛍光プレートリーダー(ベルトールド社製)で測定した。基質溶液の組成は、312.5nMの基質1、16.75U/mLのRNaseインヒビター(タカラバイオ社製)、2.5倍濃度のcomplete,EDTA-freeプロテアーゼインヒビターカクテル(ロッシュ社製)を含む50mM Tris-塩酸バッファーpH7.5である。
 抗体溶液として、実施例1で作成した抗MazF(E.coli)抗体2C7及び2H10のH鎖Fdフラグメント(VH-CH1)をPROTEIOS(商標) Wheat germ cell-free protein synthesis kit(東洋紡)を用いた無細胞系でタンパク質合成したものを使用した結果を図1に示す。コントロールとしては抗体FdフラグメントのmRNAを加えずにタンパク質合成反応を行ったものを使用した。
 コントロール溶液を添加した場合、蛍光シグナルの増加は見られず、MazF(E.coli)のリボヌクレアーゼ活性はMazE(E.coli)によって抑制されたままであるのに対し、合成した2C7及び2H10のFdフラグメントを添加した場合、MazF(E.coli)のリボヌクレアーゼ活性によって基質が分解され反応時間とともに蛍光シグナルが増加した。
実施例5 MazE-MazF相互作用に対する抗MazF(S.aureus)抗体の影響
 実施例3の方法を用いた抗体によるMazE(S.aureus)-MazF(S.aureus)相互作用阻害活性の測定は以下のようにして行った。
 蛍光測定用マイクロプレートを用いて、0.5μMのMazF(S.aureus)10μLと、抗体溶液25μL(25pmol)を混合して37℃で15分間反応させた後、0.5μMのMazE(S.aureus)を5μL加えて4℃で60分間反応させた。その後、基質溶液、10μLを加えて37℃で90分間反応させ、励起波長:485nm;蛍光波長:535nmでの蛍光強度を蛍光プレートリーダーで測定した。基質溶液の組成は312.5nMの基質3、16.75U/mLのRNaseインヒビター及び2.5倍濃度のcomplete,EDTA-freeプロテアーゼインヒビターカクテルを含む50mM Tris-塩酸バッファーpH7.5である。
 抗体溶液として、実施例1で作成したマウス抗MazF(S.aureus)モノクローナル抗体である7B-7Fのマウス腹水からの精製抗体を使用した結果を図2に示す。コントロールとしては10mM Tris-塩酸バッファーpH7.5を使用した。
 コントロール溶液を添加した場合、蛍光シグナルの増加は見られず、MazF(S.aureus)のリボヌクレアーゼ活性はMazE(S.aureus)によって抑制されたままであるのに対し、モノクローナル抗体7B-7Fを添加した場合、MazF(S.aureus)のリボヌクレアーゼ活性によって基質が分解され反応時間とともに蛍光シグナルが増加した。
実施例6 MazE-MazF相互作用に対する抗MazF(BCG)抗体の影響
 実施例3の方法を用いた抗体によるMazE(BCG)-MazF(BCG)相互作用阻害活性の測定は以下のようにして行った。
 蛍光測定用マイクロプレートを用いて、4μMのMazF(BCG)10μLと、抗体溶液25μL(80pmol)を混合して37℃で15分間反応させた後、4μMのMazE(BCG)を5μL加えて4℃で60分間反応させた。その後、基質溶液、10μLを加えて37℃で90分間反応させ、励起波長:485nm;蛍光波長:535nmでの蛍光強度を蛍光プレートリーダーで測定した。基質溶液の組成は312.5nMの基質2、16.75U/mLのRNaseインヒビター及び2.5倍濃度のcomplete,EDTA-freeプロテアーゼインヒビターカクテルを含む50mM Tris-塩酸バッファーpH7.5である。
 抗体溶液として、実施例1で作成したマウス抗MazF(BCG)モノクローナル抗体である2A-7G、11A-5Dのマウス腹水からの精製抗体を使用した結果を図3に示す。コントロールとしては10mM Tris-塩酸バッファーpH7.5を使用した。
 コントロール溶液を添加した場合、蛍光シグナルの増加は見られず、MazF(BCG)のリボヌクレアーゼ活性はMazE(BCG)によって抑制されたままであるのに対し、モノクローナル抗体2A-7G又は11A-5Dを添加した場合、MazF(BCG)のリボヌクレアーゼ活性によって基質が分解され反応時間とともに蛍光シグナルが増加した。
実施例7 MazE-MazF相互作用に対する抗MazF抗体の影響
 抗体によるMazE-MazF相互作用阻害活性の測定は抗原固相化プレートを用いた競合アッセイ法でも行った。ヌンク社製96ウェルマイクロプレートの各ウェルに、大腸菌又は黄色ブドウ球菌のMazE又はMazFをそれぞれ2μg/mLの濃度で固相化した。固相化は4℃で14時間行った。
 まず、固相化したMazFに相互作用するMazEに対して、抗MazF抗体の濃度を変化させて添加する競合アッセイを行った。MazF固相化プレートを0.1%のTween20(シグマ社製)及び1%のBSA(シグマ社製)を含むPBS溶液でブロッキングした。実施例1で作製した抗体とMazEの混合液をMazF固相化プレートに添加し、さらに4℃、60分間インキュベーションし、その後プレートを0.1%Tween20を含むPBS溶液で洗浄した。コントロールとして、抗体希釈液である0.1%のTween20及び1%のBSAを含むPBS溶液を用いた。固相プレート上に結合しているMazEを検出するために、MazEに付加したMyc-Tag配列[MazE(E.coli)]又はProteinS[MazE(S.aureus)]に対する抗体を用いた。HRP標識抗Myc-Tag配列抗体の反応は濃度2μg/mLの抗体溶液を、HRP標識抗ProteinS抗体の反応は濃度0.2μg/mLの抗体溶液を加えて室温、60分間反応させた。0.1%Tween20を含むPBS溶液で洗浄した後、基質である3,3’,5,5’-Tetramethylbenzidine(TMB、シグマ社製)を添加して発色させ、1Nの硫酸を等量加えて反応を停止させた。その後、450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。
 実施例1で作製した抗MazF(E.coli)モノクローナル抗体21B-8H又は40-10AによるMazE-MazF相互作用阻害の結果を図4に示す。抗体濃度を上げると、プレートに固相化したMazFに結合するMazE量が減少した。一方コントロールではMazE量に変化は無かった。
 実施例1で作成した抗MazF(S.aureus)モノクローナル抗体7B-7F又は8A-5EによるMazE-MazF相互作用阻害の結果を図5に示す。抗体濃度に依存してプレートに固相化したMazFに結合するMazE量が減少した。一方コントロールではMazE量に変化は無かった。
 次に、MazE又はMazFの濃度を変化させて添加する競合アッセイを行った。抗MazF抗体の影響を評価する場合はMazF固相化プレートを用い、抗MazE抗体の場合はMazE固相化プレートを用いた。固相化プレートは0.1%のTween20及び1%のBSAを含むPBS溶液でブロッキングしたが、MazF(E.coli)固相化プレートの場合だけは1%のBSAを含むPBS溶液でブロッキングを行った。抗体とMazE又はMazFの混合液を、MazE又はMazF固相化プレートに添加し、さらに4℃、60分間インキュベーションし、その後プレートを0.1%Tween20を含むPBS溶液で洗浄した。抗体の濃度を、抗MazF(E.coli)抗体の場合は50ng、抗MazE(S.aureus)抗体の場合は25ng、抗MazF(S.aureus)抗体の場合は25ngとした。固相プレート上に結合している抗体は、HRP標識抗マウスIgG抗体を添加して検出した。2次抗体の反応は室温、60分間である。0.1%Tween20を含むPBS溶液でプレートを洗浄した後、TMBを添加して発色させ、1Nの硫酸を等量加えて反応を停止させた。その後、450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。
 実施例1で作成した抗MazF(E.coli)モノクローナル抗体21B-8H又は40-10AによるMazE-MazF相互作用阻害の結果を図6に示す。MazE量を上げると、プレートに固相化したMazFに結合する抗MazF(E.coli)抗体21B-8Hと40-10Aの量が添加したMazE量に応じて減少した。
 実施例1で作成した抗MazE(S.aureus)モノクローナル抗体14A-8G又は16C-3AによるMazE-MazF相互作用阻害の結果を図7に示す。プレートに固相化したMazEに結合する抗MazE(S.aureus)モノクローナル抗体14A-8Gと16C-3Aが添加したMazF量に依存して減少した。
 実施例1で作成した抗MazF(S.aureus)モノクローナル抗体7B-7F又は8A-5EによるMazE-MazF相互作用阻害の結果を図8に示す。プレートに固相化したMazFに結合する抗MazF(S.aureus)モノクローナル抗体7B-7Fと8A-5Eが添加したMazE量に依存して減少した。
実施例8 大腸菌の生育に対する抗MazF抗体の影響
 実施例1で作製した抗MazF(E.coli)抗体2C7のFabフラグメント、2H10、2H8、3B7、3B11のH鎖Fdフラグメント(VH-CH1)をコードする遺伝子を、ファージミドベクターのLacプロモーターの下流に作動可能になるように挿入し、発現用ファージミドベクターを作製した。この発現用ファージミドベクターとM13KO7ヘルパーファージを用いて治療用M13ファージ(2C7、2H10、2H8)とコントロール用M13ファージ3B7、3B11を作製した。作製したファージを感染させて大腸菌HB2151株を形質転換し、終濃度1mMのIPTG及び終濃度100μg/mLのアンピシリンを添加してFabフラグメント遺伝子、もしくは、Fdフラグメント遺伝子の発現を誘導した。大腸菌の増殖曲線の結果を図9に示す。2C7のFabフラグメント、又は、2H10、2H8のH鎖Fdフラグメントを発現させたサンプルにおいて、宿主大腸菌の生育が阻害された。一方、IPTGを添加しない場合にはすべてのサンプルにおいて、宿主大腸菌の生育阻害は観察されなかった。
実施例9 抗MazF抗体遺伝子を用いたマウスの大腸菌感染症治療モデル
 実施例8で用いた治療用M13ファージ(2C7、2H10及び2H8)ならびにコントロール用M13ファージ3B11を作製した。マウスを用いた感染モデル実験は以下のように行った。大腸菌HB2151株を2mLの2×YT培地で37℃、一晩しんとう培養した。翌朝、培養液を新しい2×YT培地、100mLに1%植菌したものを、37℃で1.5時間しんとう培養後集菌し、菌体に2×YTを加えて5x108 cfu/mLの菌濃度に調整した。この大腸菌希釈液0.2mL(1x108 cfu)を6週齢のBALB/cマウスの腹腔内に投与した。その直後に、125mMのIPTGを含む、5×108cfu/mLの治療用M13ファージ液、又は、コントロールM13ファージ液0.2mLを大腸菌液を投与した側とは反対側の腹腔内に投与した。5時間後、7mLのPBSで腹腔内細胞を回収し、この腹腔液を2×YTで希釈して100μg/mLのアンピシリン及び2%のグルコースを含む2×YT寒天プレート上に撒いて出てくるコロニーを計数して、生菌数を測定した。実験結果を図10に示す。治療用M13ファージ投与群では、コントロールM13ファージ3B11投与群に比べてマウス腹腔内の大腸菌数が減少していた。
 以上の結果から、細菌TA系のトキシンの活性を抑制することなく、トキシン又はアンチトキシンに特異的に結合し、かつトキシン―アンチトキシンの相互作用を阻害することにより、病原性細菌の増殖を抑制もしくは細菌を死滅させる効果を発揮する抗体又は当該抗体の抗原結合部位を含む断片及びそれらをコードする遺伝子が提供される。さらに、これらの抗体又は当該抗体の抗原結合部位を含む断片を有効成分として含有する感染症治療剤、これらの有効成分をコードする遺伝子を利用する感染症治療剤が提供され、現在深刻な問題となっている多剤耐性菌への治療方法が提供される。
SEQ ID NO:1: Amino acid sequence of E.coli MazF.
SEQ ID NO:2: Amino acid sequence of Mycobacterium tuberclosis MazF.
SEQ ID NO:3: Amino acid sequence of Staphylococcus aureus MazF (S.aureus).
SEQ ID NO:4: Amino acid sequence of E.coli MazE.
SEQ ID NO:5: Amino acid sequence of Mycobacterium tuberclosis MazE.
SEQ ID NO:6: Amino acid sequence of Staphylococcus aureus MazE (S.aureus).
SEQ ID NO:7: Nucleic acid sequence containing MazF(BCG).
SEQ ID NO:8: Nucleic acid sequence containing MazE(BCG).
SEQ ID NO:9: Nucleic acid sequence containing MazF (S.aureus).
SEQ ID NO:10: Nucleic acid sequence containing MazE (S.aureus).
SEQ ID NO:11: Synthetic oligonucleotide MazG30.
SEQ ID NO:12: Nucleic acid sequence of substrate-1.
SEQ ID NO:13: Nucleic acid sequence of substrate-2.
SEQ ID NO:14: Nucleic acid sequence of substrate-3.

Claims (8)

  1.  細菌トキシン-アンチトキシン系を構成するトキシン又はアンチトキシンに結合し、トキシン-アンチトキシン間相互作用を阻害する抗体、又はその遺伝子を有効成分として含有する細菌性感染症の予防又は治療剤。
  2.  前記抗体がトキシン又はアンチトキシンに対するモノクローナル抗体である請求項1に記載の予防又は治療剤。
  3.  前記抗体が大腸菌、結核菌、及びブドウ球菌からなる群より選択される細菌のトキシン又はアンチトキシンに対するモノクローナル抗体である請求項2に記載の予防又は治療剤。
  4.  前記トキシン-アンチトキシン系が、配列特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するトキシンを含有するトキシン-アンチトキシ系である請求項1~3のいずれか1項に記載の予防又は治療剤。
  5.  前記抗体が組換え型抗体である請求項1~4のいずれか1項に記載の予防又は治療剤。
  6.  前記抗体がヒト化抗体又は完全ヒト抗体である請求項1~5のいずれか1項に記載の予防又は治療剤。
  7.  細菌性感染症が、結核、MRSA感染症、及びVRE感染症からなる群より選択される感染症である、請求項1~6のいずれか1項に記載の予防又は治療剤。
  8.  細菌トキシン-アンチトキシン系を構成するトキシン又はアンチトキシンに結合し、トキシン-アンチトキシン間相互作用を阻害する抗体を有効成分として含有する細菌性感染症における体重減少抑制剤。
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