図1は、本発明に係るデータ保持装置の一実施形態を示す回路図である。
本図に示す通り、本実施形態のデータ保持装置は、インバータINV1〜INV7と、パススイッチSW1〜SW4と、マルチプレクサMUX1、MUX2と、Nチャネル型電界効果トランジスタQ1a、Q1b、Q2a、Q2bと、強誘電体素子(強誘電体キャパシタ)CL1a、CL1b、CL2a、CL2bと、を有して成るラッチ回路である。
インバータINV1の入力端は、データ信号(D)の印加端に接続されている。インバータINV1の出力端は、インバータINV2の入力端に接続されている。インバータINV2の出力端は、パススイッチSW1を介して、マルチプレクサMUX1の第1入力端(1)に接続されている。マルチプレクサMUX1の出力端は、インバータINV3の入力端に接続されている。インバータINV3の出力端は、インバータINV5の入力端に接続されている。インバータINV5の出力端は、出力信号(Q)の引出端に接続されている。マルチプレクサMUX2の第1入力端(1)は、インバータINV3の出力端に接続されている。マルチプレクサMUX2の出力端は、インバータINV4の入力端に接続されている。インバータINV4の出力端は、パススイッチSW2を介して、マルチプレクサMUX1の第1入力端(1)に接続されている。
このように、本実施形態のデータ保持装置は、ループ状に接続された2つの論理ゲート(図1ではインバータINV3、INV4)を用いて、入力されたデータ信号Dを保持するループ構造部LOOP(図中の破線で囲まれた部分)を有して成る。
インバータINV6の入力端は、マルチプレクサMUX1の第1入力端(1)に接続されている。インバータINV6の出力端は、パススイッチSW3を介して、マルチプレクサMUX2の第2入力端(0)に接続されている。インバータINV7の入力端は、マルチプレクサMUX2の第1入力端(1)に接続されている。インバータINV7の出力端は、パススイッチSW4を介して、マルチプレクサMUX1の第2入力端(0)に接続されている。
強誘電体素子CL1aの正極端は、第1プレートラインPL1に接続されている。強誘電体素子CL1aの負極端は、マルチプレクサMUX2の第2入力端(0)に接続されている。強誘電体素子CL1aの両端間には、トランジスタQ1aが接続されている。トランジスタQ1aのゲートは、Fリセット信号FRSTの印加端に接続されている。
強誘電体素子CL1bの正極端は、マルチプレクサMUX2の第2入力端(0)に接続されている。強誘電体素子CL1bの負極端は、第2プレートラインPL2に接続されている。強誘電体素子CL1bの両端間には、トランジスタQ1bが接続されている。トランジスタQ1bのゲートは、Fリセット信号FRSTの印加端に接続されている。
強誘電体素子CL2aの正極端は、第1プレートラインPL1に接続されている。強誘電体素子CL2aの負極端は、マルチプレクサMUX1の第2入力端(0)に接続されている。強誘電体素子CL2aの両端間には、トランジスタQ2aが接続されている。トランジスタQ2aのゲートは、Fリセット信号FRSTの印加端に接続されている。
強誘電体素子CL2bの正極端は、マルチプレクサMUX1の第2入力端(0)に接続されている。強誘電体素子CL2bの負極端は、第2プレートラインPL2に接続されている。強誘電体素子CL2bの両端間には、トランジスタQ2bが接続されている。トランジスタQ2bのゲートは、Fリセット信号FRSTの印加端に接続されている。
なお、上記した構成要素のうち、パススイッチSW1は、クロック信号CLKに応じてオン/オフされ、パススイッチSW2は、反転クロック信号CLKB(クロック信号CLKの論理反転信号)に応じてオン/オフされる。すなわち、パススイッチSW1とパススイッチSW2は、互いに排他的(相補的)にオン/オフされる。一方、パススイッチSW3、SW4は、いずれも制御信号E1に応じてオン/オフされる。また、マルチプレクサMUX1、MUX2は、いずれも制御信号E2に応じてその信号経路が切り換えられる。
次に、上記構成から成るデータ保持装置の動作について、詳細な説明を行う。なお、以下の説明では、強誘電体素子CL1a、CL1bの接続ノードに現れる電圧をV1、強誘電体素子CL2a、CL2bの接続ノードに現れる電圧をV2、インバータINV4の入力端に現れる電圧をV3、インバータINV4の出力端に現れる電圧をV4、インバータINV3の入力端に現れる電圧をV5、インバータINV3の出力端に現れる電圧をV6というように、各部のノード電圧に符号を付すことにする。
図2は、本発明に係るデータ保持装置の一動作例を説明するためのタイミングチャートであり、上から順に、電源電圧VDD、クロック信号CLK、データ信号D、制御信号E1、制御信号E2、Fリセット信号FRST、第1プレートラインPL1の印加電圧、第2プレートラインPL2の印加電圧、ノード電圧V1、ノード電圧V2、及び出力信号Qの電圧波形を示している。
まず、データ保持装置の通常動作について説明する。
時点W1までは、Fリセット信号FRSTが「1(ハイレベル)」とされており、トランジスタQ1a、Q1b、Q2a、Q2bがオンされて、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bの各両端間がいずれも短絡されているので、これらの強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bには一切電圧が印加されない状態となっている。なお、第1プレートラインPL1と第2プレートラインPL2は、いずれも「0(ローレベル)」とされている。
また、時点W1までは、制御信号E1が「0」とされており、パススイッチSW3とパススイッチSW4がオフされているので、データ書き込み用ドライバ(図1の例ではインバータINV6、INV7)はいずれも無効とされている。
また、時点W1までは、制御信号E2が「1」とされており、マルチプレクサMUX1とマルチプレクサMUX2の第1入力端(1)が選択されているので、ループ構造部LOOPにて通常ループが形成されている。
従って、クロック信号CLKのハイレベル期間には、パススイッチSW1がオンされ、パススイッチSW2がオフされるので、データ信号Dが出力信号Qとしてそのまま通過される形となる。一方、クロック信号CLKのローレベル期間には、パススイッチSW1がオフされ、パススイッチSW2がオンされるので、クロック信号CLKの立下がりエッジで、データ信号Dがラッチされる形となる。
なお、図3は、上記した通常動作時の信号経路(図中では太線として描写)を示す回路図である。
次に、強誘電体素子へのデータ書き込み動作について説明する。
時点W1〜W3では、クロック信号CLKが「0」とされ、反転クロック信号CLKBが「1」とされる。従って、第1パススイッチSW1がオフされ、第2パススイッチがオンされる。このように、クロック信号CLK及び反転クロック信号CLKBの論理を予め固定しておくことにより、強誘電体素子に対するデータ書き込み動作の安定性を高めることが可能となる。
また、時点W1〜W3では、Fリセット信号FRSTが「0」とされ、トランジスタQ1a、Q1b、Q2a、Q2bがオフされて、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bに対する電圧印加が可能な状態とされる。
また、時点W1〜W3では、制御信号E1が「1」とされ、パススイッチSW3とパススイッチSW4がオンされる。従って、データ書き込み用ドライバ(図1の例ではインバータINV6、INV7)がいずれも有効とされる。
なお、時点W1〜W3では、それまでと同様、制御信号E2が「1」とされており、マルチプレクサMUX1とマルチプレクサMUX2の第1入力端(1)が選択されているので、ループ構造部LOOPにて通常ループが形成されている。
また、時点W1〜W2では、第1プレートラインPL1と第2プレートラインPL2が「0」とされ、時点W2〜W3では、第1プレートラインPL1と第2プレートラインPL2が「1」とされる。すなわち、第1プレートラインPL1と第2プレートラインPL2に対して、同一のパルス電圧が印加される。このようなパルス電圧の印加により、強誘電体素子内部の残留分極状態が反転状態/非反転状態のいずれかに設定される。
図2の例に即して具体的に述べると、時点W1では、出力信号Qが「1」であるため、ノード電圧V1が「0」となり、ノード電圧V2が「1」となる。従って、時点W1〜W2において、第1プレートラインPL1と第2プレートラインPL2が「0」とされている間、強誘電体素子CL1a、CL1bの両端間には電圧が印加されない状態となり、強誘電体素子CL2aの両端間には負極性の電圧が印加される状態となり、強誘電体素子CL2bの両端間には正極性の電圧が印加される状態となる。一方、時点W2〜W3において、第1プレートラインPL1と第2プレートラインPL2が「1」とされている間、強誘電体素子CL2a、CL2bの両端間には電圧が印加されない状態となり、強誘電体素子CL1aの両端間には正極性の電圧が印加される状態となり、強誘電体素子CL1bの両端間には負極性の電圧が印加される状態となる。
このように、第1プレートラインPL1と第2プレートラインPL2に対して、パルス電圧を印加することにより、強誘電体素子内部の残留分極状態が反転状態/非反転状態のいずれかに設定される。なお、強誘電体素子CL1aとCL1bとの間、及び、強誘電体素子CL2aとCL2bとの間では、互いの残留分極状態が逆になる。また、強誘電体素子CL1aとCL2aとの間、及び、強誘電体素子CL1bとCL2bとの間でも、互いの残留分極状態が逆になる。
時点W3では、Fリセット信号FRSTが再び「1」とされ、トランジスタQ1a、Q1b、Q2a、Q2bがオンされて、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bの各両端間がいずれも短絡されるので、これらの強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bには一切電圧が印加されない状態となる。このとき、第1プレートラインPL1と第2プレートラインPL2は、いずれも「0」とされる。
また、時点W3では、制御信号E1が再び「0」とされ、パススイッチSW3とパススイッチSW4がオフされるので、データ書き込み用ドライバ(図1の例ではインバータINV6、INV7)がいずれも無効とされる。なお、制御信号E2については不問であるが、図2の例では「0」とされている。
そして、時点W4では、電源電圧VDDが遮断される。このとき、Fリセット信号FRSTは、時点W3から「1」に維持されており、トランジスタQ1a、Q1b、Q2a、Q2bがオンされて、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bの各両端間がいずれも短絡されている。従って、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bには一切電圧が印加されない状態となっているので、電源遮断時に電圧変動が生じた場合であっても、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bに意図しない電圧が印加されることはなく、データ化けを回避することが可能となる。
なお、図4は、上記したデータ書き込み動作時(特に時点W1〜W3)の信号経路(図中では太線として描写)を示す回路図である。
次に、強誘電体素子からのデータ読み出し動作について説明する。
時点R1〜R5では、クロック信号CLKが「0」とされており、反転クロック信号CLKBが「1」とされている。従って、第1パススイッチSW1がオフされており、第2パススイッチがオンされている。このように、クロック信号CLK及び反転クロック信号CLKBの論理を予め固定しておくことにより、強誘電体素子からのデータ読み出し動作の安定性を高めることが可能となる。
時点R1では、最先にFリセット信号FRSTが「1」とされており、トランジスタQ1a、Q1b、Q2a、Q2bがオンされて、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bの各両端間がいずれも短絡されている。従って、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bには一切電圧が印加されない状態となっているので、電源投入時に電圧変動が生じた場合でも、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bに意図しない電圧が印加されることはなく、データ化けを回避することが可能となる。
なお、時点R1において、第1プレートラインPL1と第2プレートラインPL2は、いずれも「0(ローレベル)」とされている。
時点R2では、制御信号E1、E2がいずれも「0」とされた状態(すなわち、データ書き込み用ドライバが無効とされ、かつ、ループ構造部LOOPで通常ループが無効とされている状態)で、電源電圧VDDが投入される。このとき、図5中の太線で描写された信号ラインは、フローティングとなっている。
続く時点R3では、Fリセット信号FRSTが「0」とされ、トランジスタQ1a、Q1b、Q2a、Q2bがオフされて、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bに対する電圧印加が可能な状態とされる一方、第2プレートラインPL2が「0」に維持されたまま、第1プレートラインPL1が「1」とされる。このようなパルス電圧の印加により、ノード電圧V1及びノード電圧V2として、強誘電体素子内の残留分極状態に対応した電圧信号が現れる。
図2の例に即して具体的に説明すると、ノード電圧V1としては、比較的低い電圧信号(以下、その論理をWL[Weak Low]と呼ぶ)が現れ、ノード電圧V2としては、比較的高い電圧信号(以下、その論理をWH[Weak Hi]と呼ぶ)が現れる。すなわち、ノード電圧V1とノード電圧V2との間には、強誘電体素子内の残留分極状態の差に応じた電圧差が生じる形となる。
このとき、時点R3〜R4では、制御信号E2が「0」とされ、マルチプレクサMUX1とマルチプレクサMUX2の第2入力端(0)が選択されるので、ノード電圧V3の論理はWLとなり、ノード電圧V4の論理はWHとなる。また、ノード電圧V5の論理はWHとなり、ノード電圧V6の論理はWLとなる。このように、時点R3〜R4では、装置各部のノード電圧V1〜V6が未だ不安定な状態(インバータINV3及びインバータINV4での論理反転が完全に行われず、その出力論理が確実に「0」/「1」となっていない状態)である。
続く時点R4では、制御信号E2が「1」とされ、マルチプレクサMUX1とマルチプレクサMUX2の第1入力端(1)が選択されるので、ループ構造部LOOPにて通常ループが形成されている。このような信号経路の切り換えに伴い、インバータINV4の出力端(論理:WH)とインバータINV3の入力端(論理:WH)が接続され、インバータINV3の出力端(論理:WL)とインバータINV4の入力端(論理:WL)が接続される。従って、各ノードの信号論理(WH/WL)に不整合は生じず、以降、ループ構造部LOOPにて通常ループが形成されている間、インバータINV3は、論理WLの入力を受けて、その出力論理を「1」に引き上げようとし、インバータINV4は、論理WHの入力を受けて、その出力論理を「0」に引き下げようとする。その結果、インバータINV3の出力論理は、不安定な論理WLから「0」に確定され、インバータINV4の出力論理は、不安定な論理WHから「1」に確定される。
このように、時点R4において、ループ構造部LOOPが通常ループとされたことに伴い、強誘電体素子から読み出された信号(ノード電圧V1とノード電圧V2との電位差)がループ構造部LOOPで増幅される形となり、出力信号Qとして電源遮断前の保持データ(図2の例では「1」)が復帰される。
その後、時点R5では、Fリセット信号FRSTが再び「1」とされ、トランジスタQ1a、Q1b、Q2a、Q2bがオンされて、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bの各両端間がいずれも短絡されるので、これらの強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bには一切電圧が印加されない状態となる。このとき、第1プレートラインPL1と第2プレートラインPL2は、いずれも「0」とされる。従って、データ保持装置は、時点W1以前と同様、通常動作状態に復帰される。
なお、図5は、上記したデータ読み出し動作時(特に時点R3〜R4)の信号経路(図中では太線として描写)を示す回路図である。
上記で説明したように、本実施形態のデータ保持装置は、ループ状に接続された論理ゲート(図1ではインバータINV3、INV4)を用いてデータを保持するループ構造部LOOPと、強誘電体素子のヒステリシス特性を用いてループ構造部LOOPに保持されたデータを不揮発的に記憶する不揮発性記憶部(CL1a、CL1b、CL2a、CL2b、Q1a、Q1b、Q2a、Q2b)と、ループ構造部LOOPと前記不揮発性記憶部とを電気的に分離する回路分離部(MUX1、MUX2、INV6、INV7、SW3、SW4)と、を有して成り、前記回路分離部は、データ保持装置の通常動作中には、強誘電体素子に対する印加電圧を一定に保ちつつ、ループ構造部LOOPを電気的に動作させる構成とされている。
このように、ループ構造部LOOPの信号線から強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bを直接駆動するのではなく、ループ構造部LOOPの信号線と強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bとの間に、バッファとしても機能するデータ書き込み用ドライバ(図1ではインバータINV6、INV7)を設けることにより、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bがループ構造部LOOP内の負荷容量とならないようにすることが可能となる。
また、データ書き込み用ドライバ(インバータINV6、INV7)の出力端にパススイッチSW3、SW4を接続し、制御信号E1に応じて、データの書き込み時にのみ、パススイッチSW3、SW4をオンさせる構成であれば、通常動作時には、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bが駆動されないようにすることが可能となる。
また、データ読み出しの際には、制御信号E2に応じて、マルチプレクサMUX1、MUX2の入出力経路を切り換えることにより、ループ構造部LOOP内の論理ゲート(図1ではインバータINV3、INV4)と強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bとの導通/遮断を制御することができる。従って、特定ノードをフローティングとするために、負荷の大きいクロック線を増設する必要がないため、消費電力の増大を回避することが可能となる。
なお、本実施形態のデータ保持装置では、制御信号E1、E2が新たに必要となるが、これらの信号は、常時駆動されるクロック信号と異なり、通常時には一切駆動されないので、データ保持装置の消費電力には、ほとんど影響を与えることがない。
また、本実施形態のデータ保持装置では、データ書き込み用ドライバ(インバータINV6、INV7)や、マルチプレクサMUX1、MUX2が新たに必要となるが、CPU[Central Processing Unit]などの演算回路内におけるデータ保持装置の占有面積は、数%に過ぎないことが多く、演算回路全体に与える面積増加の影響は殆どないと言える。
このように、本実施形態のデータ保持装置であれば、通常動作中には強誘電体素子が無駄に駆動されることがないので、揮発性のデータ保持装置と同レベルの高速化、並びに、低消費電力化を図ることが可能となる。
すなわち、揮発性のデータ保持装置と同等の取り扱いを行うことができるので、タイミング設計や消費電力設計などの再設計を行わずに、既存回路の記憶素子部分を本発明のデータ保持装置に置き換えることが可能となる。従って、既存回路を容易に不揮発化することができるので、例えば、待機時にデータを消さずに電源を遮断したり、電源投入後、即時に動作再開が可能なCPU等を実現することが可能となる。
次に、強誘電体素子からのデータ読み出し動作の変形例について、図6を参照しながら詳細な説明を行う。図6は、本発明に係るデータ保持装置の別の動作例を説明するためのタイミングチャートであり、上から順に、電源電圧VDD、クロック信号CLK、データ信号D、制御信号E1、制御信号E2、Fリセット信号FRST、第1プレートラインPL1の印加電圧、第2プレートラインPL2の印加電圧、ノード電圧V1、ノード電圧V2、及び、出力信号Qの電圧波形を示している。
時点R1〜R5では、クロック信号CLKが「0」とされており、反転クロック信号CLKBが「1」とされている。従って、第1パススイッチSW1がオフされており、第2パススイッチがオンされている。このように、クロック信号CLK及び反転クロック信号CLKBの論理を予め固定しておくことにより、強誘電体素子からのデータ読み出し動作の安定性を高めることが可能となる。
時点R1では、最先にFリセット信号FRSTが「1」とされており、トランジスタQ1a、Q1b、Q2a、Q2bがオンされて、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bの各両端間がいずれも短絡されている。従って、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bには一切電圧が印加されない状態となっているので、電源投入時に電圧変動が生じた場合でも、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bに意図しない電圧が印加されることはなく、データ化けを回避することが可能となる。
なお、時点R1において、第1プレートラインPL1と第2プレートラインPL2は、いずれも「0(ローレベル)」とされている。
時点R2では、Fリセット信号FRSTが「0」とされて、トランジスタQ1a、Q1b、Q2a、Q2bがオフされ、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bに対する電圧印加が可能な状態とされる一方、第2プレートラインPL2が「0」に維持されたまま、第1プレートラインPL1が「1」とされる。このようなパルス電圧の印加により、ノード電圧V1及びノード電圧V2として、強誘電体素子内の残留分極状態に対応した電圧信号が現れる。
図6の例に即して具体的に説明すると、ノード電圧V1の論理としてはWLが現れ、ノード電圧V2の論理としてはWHが現れる。すなわち、ノード電圧V1とノード電圧V2との間には、強誘電体素子内の残留分極状態の差に応じた電圧差が生じる形となる。
ただし、時点R2〜R3では、未だ電源電圧VDDが投入されていないため、ループ構造部LOOP各部のノード電圧V3〜V6はいずれも「0」となっており、延いては、出力信号Qが「0」となっている。
続く時点R3では、制御信号E1、E2がいずれも「0」とされた状態(すなわち、データ書き込み用ドライバが無効とされ、かつ、ループ構造部LOOPで通常ループが無効とされている状態)で、電源電圧VDDが投入される。このとき、図5中の太線で描写された信号ラインは、フローティングとなっている。
なお、時点R3〜R4では、制御信号E2が「0」とされ、マルチプレクサMUX1とマルチプレクサMUX2の第2入力端(0)が選択されるので、ノード電圧V3の論理はWLとなり、ノード電圧V4の論理はWHとなる。また、ノード電圧V5の論理はWHとなり、ノード電圧V6の論理はWLとなる。このように、時点R3〜R4では、装置各部のノード電圧V1〜V6が未だ不安定な状態(インバータINV3及びインバータINV4での論理反転が完全に行われず、その出力論理が確実に「0」/「1」となっていない状態)である。
続く時点R4では、制御信号E2が「1」とされ、マルチプレクサMUX1とマルチプレクサMUX2の第1入力端(1)が選択されるので、ループ構造部LOOPにて通常ループが形成されている。このような信号経路の切り換えに伴い、インバータINV4の出力端(論理:WH)とインバータINV3の入力端(論理:WH)が接続され、インバータINV3の出力端(論理:WL)とインバータINV4の入力端(論理:WL)が接続される。従って、各ノードの信号論理(WH/WL)に不整合は生じず、以降、ループ構造部LOOPにて通常ループが形成されている間、インバータINV3は、論理WLの入力を受けて、その出力論理を「1」に引き上げようとし、インバータINV4は、論理WHの入力を受けて、その出力論理を「0」に引き下げようとする。その結果、インバータINV3の出力論理は、不安定な論理WLから「0」に確定され、インバータINV4の出力論理は、不安定な論理WHから「1」に確定される。
このように、時点R4において、ループ構造部LOOPが通常ループとされたことに伴い、強誘電体素子から読み出された信号(ノード電圧V1とノード電圧V2との電位差)がループ構造部LOOPで増幅される形となり、出力信号Qとして電源遮断前の保持データ(図6の例では「1」)が復帰される。
その後、時点R5では、Fリセット信号FRSTが再び「1」とされ、トランジスタQ1a、Q1b、Q2a、Q2bがオンされて、強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bの各両端間がいずれも短絡されるので、これらの強誘電体素子CL1a、CL1b、CL2a、CL2bには一切電圧が印加されない状態となる。このとき、第1プレートラインPL1と第2プレートラインPL2は、いずれも「0」とされる。従って、データ保持装置は、時点W1以前と同様、通常動作状態に復帰される。
上記したように、図6のデータ読み出し動作は、図2のデータ読み出し動作と異なり、電源電圧VDD投入前から、強誘電体素子内の残留分極状態に対応した電圧信号(ノード電圧V1、V2)の引き出し動作を開始する構成とされている。このような構成とすることにより、電源電圧VDD投入後の動作ステップ数を減らして(図2の動作例では3ステップ(時点R3、R4、R5)を要するのに対して、図6の動作例では2ステップ(時点R4、R5)のみ)、通常動作に復帰するまでの所要時間を短縮することが可能となる。
次に、本実施形態のデータ保持装置で用いられる強誘電体素子の特性について、詳細な説明を行う。
図7は、強誘電体素子の特性を説明するための図である。なお、図7の上段には、強誘電体素子Csに電圧Vsを印加する様子が模式的に描写されている。また、図7の下段左側には、強誘電体素子Csのヒステリシス特性が示されており、下段右側には、強誘電体素子Csの容量特性が示されている。
本図に示すように、強誘電体素子Csは、その両端間に電圧Vsを印加した際の残留分極状態に応じて容量特性が変化する。具体的に述べると、強誘電体素子Csの両端間に正極性の電圧Vsを印加して、強誘電体素子Csを非反転状態(y=1)とした場合には、その容量値が小さくなる。逆に、強誘電体素子Csの両端間に負極性の電圧Vsを印加して、強誘電体素子Csを反転状態(y=0)とした場合には、その容量値が大きくなる。従って、強誘電体素子Csに記憶されたデータの読み出しに際しては、上記した容量値の違いを電圧値に変換する必要がある。
そこで、本実施形態データ保持装置は、不揮発性記憶部からデータを読み出す際、非反転状態(y=1)の強誘電体素子と、反転状態(y=0)の強誘電体素子との容量結合を用いる構成とされている。
図8は、強誘電体素子間の容量結合を用いたデータ読み出し方式を説明するための図である。なお、図8の上段は、強誘電体素子CL1a(強誘電体素子CL2a)が反転状態(y=0)で、強誘電体素子CL1b(強誘電体素子CL2b)が非反転状態(y=1)であるときの容量特性を示しており、図8の下段は、上記と逆に、強誘電体素子CL1a(強誘電体素子CL2a)が非反転状態(y=1)で、強誘電体素子CL1b(強誘電体素子CL2b)が反転状態(y=0)であるときの容量特性を示している。
先にも述べたように、強誘電体素子に対するデータの書き込みに際して、強誘電体素子CL1aとCL1bとの間、及び、強誘電体素子CL2aとCL2bとの間では、互いの残留分極状態が逆になるので、その容量特性としては、一方の容量値が大きいほど、他方の容量値が小さいという関係となる。
従って、互いに残留分極状態が逆である2つの強誘電体素子CL1aとCL1b、並びに、強誘電体素子CL2aとCLK2bを直列に接続し、その一端にパルス電圧を加えたとき、両素子間の接続ノードに現れるノード電圧V1、V2(容量値の比で決まる電圧値であり、図8では読み出し電圧Voutと表記)を検出する構成とすれば、読み出し電圧Voutの振幅値を1[V]近辺まで確保して、読み出しマージンを大幅に改善することが可能となる。
また、本実施形態のデータ保持装置は、強誘電体素子CL1a、CL1bの容量比に応じたノード電圧V1と、強誘電体素子CL2a、CL2bの容量比に応じたノード電圧Vbを比較することで、不揮発性記憶部から読み出されたデータの0/1判定を行う構成とされているため、インバータの閾値を厳密に設定する必要はない。
このように、本実施形態のデータ保持装置では、強誘電体素子間の容量結合を用いたデータ読み出し方式が採用されているが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、図9(第1の変形例)に示すように、強誘電体素子CL1a、CL2aと、インバータINV3、INV4を構成するトランジスタのゲート容量との容量結合を用いて、不揮発性記憶部からデータを読み出す構成(言い換えれば、図1の構成から、強誘電体素子CL1b、CL2bとトランジスタQ1b、C2bを除いた構成)としても構わないし、若しくは、図10(第2の変形例)に示すように、強誘電体素子CL1a、CL1bと、その他の容量素子C1、C2との容量結合を用いて、不揮発性記憶部からデータを読み出す構成としても構わない。
図11は、セット/リセット機能を備えたDフリップフロップ(レジスタ)への適用例を示す回路図である。
本図に示すように、Dフリップフロップを構成する場合には、ラッチ回路が2段組(マスタとスレーブ)に直列接続されるが、マスタとスレーブの両方を不揮発化する必要はなく、スレーブ側のラッチ回路にのみ本発明を適用すれば足りる。
また、その通常動作、強誘電体素子へのデータ書き込み動作、及び、強誘電体素子からのデータ読み出し動作は、マスタ側のラッチ回路が接続されている以外、先述と同様であり、各々の動作時における信号経路についても、図12〜図14で示すように、特段重複した説明を要するものではない。
ただし、本図に示すDフリップフロップでは、セット/リセット機能を実現すべく、ループ構造部を形成する論理ゲートとして、インバータではなく、否定論理積演算器NAND1〜NAND4が用いられている。なお、否定論理積演算器NAND1、NAND3に入力されるセット信号RNを「0」とすれば、出力信号Qが強制的に「1」となり、否定論理積演算器NAND2、NAND4に入力されるリセット信号SNを「0」とすれば、出力信号Qが強制的に「0」となる。従って、データの書き込み動作時やデータの読み出し動作時には、セット信号RN及びリセット信号SNを「1」としておく必要がある。
次に、本発明に係るデータ保持装置の第3の変形例について、図15を参照しながら、詳細な説明を行う。図15は、本発明に係るデータ保持装置の第3の変形例を示す回路図である。
本図に示したデータ保持装置は、インバータINV1〜INV7と、パススイッチSW1〜SW4と、マルチプレクサMUX1〜MUX4と、デマルチプレクサDeMUX1、DeMUX2と、Nチャネル型電界効果トランジスタQ11a〜Q1ma、Q11b〜Q1mb、Q21a〜Q2ma、Q21b〜Q2mbと、強誘電体素子(強誘電体キャパシタ)CL11a〜CL1ma、CL11b〜CL1mb、CL21a〜CL2ma、CL21b〜CL2mbと、を有して成るラッチ回路である。
インバータINV1の入力端は、データ信号(D)の印加端に接続されている。インバータINV1の出力端は、インバータINV2の入力端に接続されている。インバータINV2の出力端は、パススイッチSW1を介して、マルチプレクサMUX1の第1入力端(1)に接続されている。マルチプレクサMUX1の出力端は、インバータINV3の入力端に接続されている。インバータINV3の出力端は、インバータINV5の入力端に接続されている。インバータINV5の出力端は、出力信号(Q)の引出端に接続されている。マルチプレクサMUX2の第1入力端(1)は、インバータINV3の出力端に接続されている。マルチプレクサMUX2の出力端は、インバータINV4の入力端に接続されている。インバータINV4の出力端は、パススイッチSW2を介して、マルチプレクサMUX1の第1入力端(1)に接続されている。
このように、本実施形態のデータ保持装置は、ループ状に接続された2つの論理ゲート(図15ではインバータINV3、INV4)を用いて、入力されたデータ信号Dを保持するループ構造部LOOP(図中の破線で囲まれた部分)を有して成る。
インバータINV6の入力端は、マルチプレクサMUX1の第1入力端(1)に接続されている。インバータINV6の出力端は、パススイッチSW3を介して、デマルチプレクサDeMUX1の入力端に接続されている。デマルチプレクサDeMUX1の第1出力端〜第m出力端は、それぞれ、マルチプレクサMUX4の第1入力端〜第m入力端に接続されている。マルチプレクサMUX4の出力端は、マルチプレクサMUX2の第2入力端(0)に接続されている。
インバータINV7の入力端は、マルチプレクサMUX2の第1入力端(1)に接続されている。インバータINV7の出力端は、パススイッチSW4を介して、デマルチプレクサDeMUX2の入力端に接続されている。デマルチプレクサDeMUX2の第1出力端〜第m出力端は、それぞれ、マルチプレクサMUX3の第1入力端〜第m入力端に接続されている。マルチプレクサMUX3の出力端は、マルチプレクサMUX1の第2入力端(0)に接続されている。
強誘電体素子CL11a〜CL1maの正極端は、それぞれ、プレートラインPL11〜PL1mに接続されている。強誘電体素子CL11a〜CL1maの負極端は、それぞれ、デマルチプレクサDeMUX1の第1出力端〜第m出力端に接続されている。強誘電体素子CL11a〜1maの両端間には、それぞれ、トランジスタQ11a〜Q1maが接続されている。トランジスタQ11a〜Q1maのゲートは、それぞれ、Fリセット信号FRST1〜FRSTmの印加端に接続されている。
強誘電体素子CL11b〜CL1mbの正極端は、それぞれ、デマルチプレクサDeMUX1の第1出力端〜第m出力端に接続されている。強誘電体素子CL11b〜CL1mbの負極端は、それぞれ、プレートラインPL21〜PL2mに接続されている。強誘電体素子CL11b〜CL1mbの両端間には、それぞれ、トランジスタQ11b〜Q1mbが接続されている。トランジスタQ11b〜Q1mbのゲートは、それぞれ、Fリセット信号FRST1〜FRSTmの印加端に接続されている。
強誘電体素子CL21a〜CL2maの正極端は、それぞれ、プレートラインPL11〜PL1mに接続されている。強誘電体素子CL21a〜CL2maの負極端は、それぞれ、デマルチプレクサDeMUX2の第1出力端〜第m出力端に接続されている。強誘電体素子CL21a〜CL2maの両端間には、それぞれ、トランジスタQ21a〜Q2maが接続されている。トランジスタQ21a〜Q2maのゲートは、それぞれ、Fリセット信号FRST1〜FRSTmの印加端に接続されている。
強誘電体素子CL21b〜CL2mbの正極端は、それぞれ、デマルチプレクサDeMUX2の第1出力端〜第m出力端に接続されている。強誘電体素子CL21b〜CL2mbの負極端は、それぞれ、プレートラインPL21〜PL2mに接続されている。強誘電体素子CL21b〜CL2mbの両端間には、それぞれ、トランジスタQ21b〜Q2mbが接続されている。トランジスタQ21b〜Q2mbのゲートは、それぞれ、Fリセット信号FRST1〜FRSTmの印加端に接続されている。
なお、上記した構成要素のうち、パススイッチSW1は、クロック信号CLKに応じてオン/オフされ、パススイッチSW2は、反転クロック信号CLKB(クロック信号CLKの論理反転信号)に応じてオン/オフされる。すなわち、パススイッチSW1とパススイッチSW2は、互いに排他的(相補的)にオン/オフされる。一方、パススイッチSW3、SW4は、いずれも制御信号E1に応じてオン/オフされる。また、マルチプレクサMUX1、MUX2は、いずれも制御信号E2に応じてその信号経路が切り換えられる。また、マルチプレクサMUX3、MUX4と、デマルチプレクサDeMUX1、DeMUX2は、いずれも制御信号SEL1〜SELmに応じてその信号経路が切り換えられる。
すなわち、上記構成から成るデータ保持装置は、データDをmビット分(m≧2)だけ格納するために、図1の構成をさらに拡張したものであって、制御信号SEL1〜SELmに応じて選択可能な第1記憶領域〜第m記憶領域を有する構成とされている。なお、図15の例に即して述べると、第x記憶領域(1≦x≦m)は、強誘電体素子CL1xa、CL1xb、CL2xa、CL2xbと、トランジスタQ1xa、Q1xb、Q2xa、Q2xbと、によって形成されている。ただし、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、先出の図9、図10と同様の変形を行うことも可能である。
次に、上記構成から成るデータ保持装置の動作について、詳細な説明を行う。なお、以下の説明では、デマルチプレクサDeMUX1の第1出力端〜第m出力端(マルチプレクサMUX4の第1入力端〜第m入力端)に各々現れる電圧をV11〜V1m、デマルチプレクサDeMUX2の第1出力端〜第m出力端(マルチプレクサMUX3の第1入力端〜第m入力端)に各々現れる電圧をV21〜V2m、インバータINV4の入力端に現れる電圧をV3、インバータINV4の出力端に現れる電圧をV4、インバータINV3の入力端に現れる電圧をV5、インバータINV3の出力端に現れる電圧をV6というように各部のノード電圧に符号を付すことにする。
図16は、本発明に係るデータ保持装置の一動作例(第1記憶領域にデータDを書き込んで、第m記憶領域からデータDを読み出す動作)を説明するためのタイミングチャートであり、上から順に、電源電圧VDD、クロック信号CLK、データ信号D、制御信号E1、制御信号E2、制御信号SEL1、Fリセット信号FRST1、プレートラインPL11の印加電圧、プレートラインPL21の印加電圧、ノード電圧V11、ノード電圧V21、制御信号SELm、Fリセット信号FRSTm、プレートラインPL1mの印加電圧、プレートラインPL2mの印加電圧、ノード電圧V1m、ノード電圧V2m、及び出力信号Qの電圧波形を示している。
なお、データDの書き込み先や読み出し元として選択されていない第y記憶領域(1<y<m)に関連する制御信号SELy、Fリセット信号FRSTy、プレートラインPL1yの印加電圧、プレートラインPL2yの印加電圧、ノード電圧V1y、ノード電圧V2yは、データDの書き込み動作中には、データDの書き込み先として選択されていない第m記憶領域のそれと同様となり、データDの読み出し動作中には、データDの読み出し元として選択されていない第1記憶領域のそれと同様となるため、その描写並びに説明を適宜省略する。
まず、データ保持装置の通常動作について説明する。
時点W1までは、Fリセット信号FRST1〜FRSTmが全て「1(ハイレベル)」とされており、トランジスタQ11a〜Q1ma、Q11b〜Q1mb、Q21a〜Q2ma、Q21b〜Q2mbが全てオンされて、強誘電体素子CL11a〜CL1ma、CL11b〜CL1mb、CL21a〜CL2ma、CL21b〜CL2mbの各両端間がいずれも短絡されているので、これらの強誘電体素子CL11a〜CL1ma、CL11b〜CL1mb、CL21a〜CL2ma、CL21b〜CL2mbには一切電圧が印加されない状態となっている。なお、プレートラインPL11〜PL1mとプレートラインPL21〜PL2mは、いずれも「0(ローレベル)」とされている。
また、時点W1までは、制御信号E1が「0」とされており、パススイッチSW3とパススイッチSW4がオフされているので、データ書き込み用ドライバ(図15の例ではインバータINV6、INV7)はいずれも無効とされている。
また、時点W1までは、制御信号E2が「1」とされており、マルチプレクサMUX1とマルチプレクサMUX2の第1入力端(1)が選択されているので、ループ構造部LOOPにて通常ループが形成されている。
従って、クロック信号CLKのハイレベル期間には、パススイッチSW1がオンされ、パススイッチSW2がオフされるので、データ信号Dが出力信号Qとしてそのまま通過される形となる。一方、クロック信号CLKのローレベル期間には、パススイッチSW1がオフされ、パススイッチSW2がオンされるので、クロック信号CLKの立下がりエッジで、データ信号Dがラッチされる形となる。
次に、第1記憶領域へのデータ書き込み動作について説明する。
時点W1〜W3では、クロック信号CLKが「0」とされ、反転クロック信号CLKBが「1」とされる。従って、第1パススイッチSW1がオフされ、第2パススイッチがオンされる。このように、クロック信号CLK及び反転クロック信号CLKBの論理を予め固定しておくことにより、強誘電体素子に対するデータ書き込み動作の安定性を高めることが可能となる。
また、時点W1〜W3では、データDの書き込み先として第1記憶領域を選択すべく、制御信号SEL1が「1」とされ、その余の制御信号SEL2〜SELmが「0」とされる。これにより、デマルチプレクサDeMUX1、DeMUX2は、その入力端と第1出力端を結ぶ信号経路が選択された状態となり、マルチプレクサMUX3、MUX4は、その出力端と第1入力端を結ぶ信号経路が選択された状態となる。
また、時点W1〜W3では、Fリセット信号FRST1が「0」とされ、トランジスタQ11a、Q11b、Q21a、Q21bがオフされて、強誘電体素子CL11a、CL11b、CL21a、CL21bに対する電圧印加が可能な状態とされる。
一方、Fリセット信号FRST2〜FRSTmは、引き続き「1」に維持されるので、第2記憶領域〜第m記憶領域でのデータ化けを回避することが可能となる。
また、時点W1〜W3では、制御信号E1が「1」とされ、パススイッチSW3とパススイッチSW4がオンされる。従って、データ書き込み用ドライバ(図15の例ではインバータINV6、INV7)がいずれも有効とされる。
なお、時点W1〜W3では、それまでと同様、制御信号E2が「1」とされており、マルチプレクサMUX1とマルチプレクサMUX2の第1入力端(1)が選択されているので、ループ構造部LOOPにて通常ループが形成されている。
また、時点W1〜W2では、プレートラインPL11、PL21が「0」とされ、時点W2〜W3では、プレートラインPL11、PL21が「1」とされる。すなわち、プレートラインPL11、PL21に対して、同一のパルス電圧が印加される。このようなパルス電圧の印加により、強誘電体素子内部の残留分極状態が反転状態/非反転状態のいずれかに設定される。
図16の例に即して具体的に述べると、時点W1では出力信号Qが「1」であるため、ノード電圧V11が「0」となり、ノード電圧V21が「1」となる。従って、時点W1〜W2において、プレートラインPL11、PL21がいずれも「0」とされている間、強誘電体素子CL11a、CL11bの両端間には、電圧が印加されない状態となり、強誘電体素子CL21aの両端間には、負極性の電圧が印加される状態となり、強誘電体素子CL21bの両端間には、正極性の電圧が印加される状態となる。一方、時点W2〜W3において、プレートラインPL11、PL21がいずれも「1」とされている間、強誘電体素子CL21a、CL21bの両端間には、電圧が印加されない状態となり、強誘電体素子CL11aの両端間には、正極性の電圧が印加される状態となり、強誘電体素子CL11bの両端間には、負極性の電圧が印加される状態となる。
このように、プレートラインPL11、PL21に対して、パルス電圧を印加することにより、強誘電体素子内部の残留分極状態が反転状態/非反転状態のいずれかに設定される。なお、強誘電体素子CL11aとCL11bとの間、及び、強誘電体素子CL21aとCL21bとの間では、互いの残留分極状態が逆になる。また、強誘電体素子CL11aとCL21aとの間、及び、強誘電体素子CL11bとCL21bとの間でも、互いの残留分極状態が逆になる。
なお、時点W1〜W3において、プレートラインPL12〜PL1m、PL22〜PL2mはいずれも「0」に維持される。
時点W3では、Fリセット信号FRST1が再び「1」とされて、トランジスタQ11a、Q11b、Q21a、Q21bがオンされ、強誘電体素子CL11a、CL11b、CL21a、CL21bの各両端間がいずれも短絡されるので、これらの強誘電体素子CL11a、CL11b、CL21a、CL21bは一切電圧が印加されない状態となる。このとき、プレートラインPL11、PL21は、いずれも「0」とされる。また、制御信号SEL1も「0」とされる。
また、時点W3では、制御信号E1が再び「0」とされ、パススイッチSW3とパススイッチSW4がオフされるので、データ書き込み用ドライバ(図15の例ではインバータINV6、INV7)がいずれも無効とされる。なお、制御信号E2については不問であるが、図16の例では「0」とされている。
また、時点W3において、Fリセット信号FRST2〜FRSTmは、いずれも「1」に維持され、制御信号SEL2〜SELm、プレートラインPL12〜PL1m、PL22〜PL2mは、いずれも「0」に維持される。
そして、時点W4では、電源電圧VDDが遮断される。このとき、Fリセット信号FRST1〜FRSTmは、いずれも電源電圧VDDの遮断前から「1」に維持されており、トランジスタQ11a〜Q1ma、Q11b〜Q1mb、Q21a〜Q2ma、Q21b〜Q2mbがオンされて、強誘電体素子CL11a〜CL1ma、CL11b〜CL1mb、CL21a〜CL2ma、CL21b〜CL2mbの各両端間がいずれも短絡されている。従って、強誘電体素子CL11a〜CL1ma、CL11b〜CL1mb、CL21a〜CL2ma、CL21b〜CL2mbには一切電圧が印加されない状態となっているので、電源遮断時に電圧変動が生じた場合であっても、強誘電体素子CL11a〜CL1ma、CL11b〜CL1mb、CL21a〜CL2ma、CL21b〜CL2mbに意図しない電圧が印加されることはなく、データ化けを回避することが可能となる。
次に、第m記憶領域からのデータ読み出し動作について説明する。
時点R1〜R5では、クロック信号CLKが「0」とされており、反転クロック信号CLKBが「1」とされている。従って、第1パススイッチSW1がオフされており、第2パススイッチがオンされている。このように、クロック信号CLK及び反転クロック信号CLKBの論理を予め固定しておくことにより、強誘電体素子からのデータ読み出し動作の安定性を高めることが可能となる。
時点R1では、最先に全てのFリセット信号FRST1〜FRSTmが「1」とされており、トランジスタQ11a〜Q1ma、Q11b〜Q1mb、Q21a〜Q2ma、Q21b〜Q2mbがオンされて、強誘電体素子CL11a〜CL1ma、CL11b〜CL1mb、CL21a〜CL2ma、CL21b〜CL2mbの各両端間がいずれも短絡されている。従って、強誘電体素子CL11a〜CL1ma、CL11b〜CL1mb、CL21a〜CL2ma、CL21b〜CL2mbには一切電圧が印加されない状態となっているので、電源投入時に電圧変動が生じた場合でも、強誘電体素子CL11a〜CL1ma、CL11b〜CL1mb、CL21a〜CL2ma、CL21b〜CL2mbに意図しない電圧が印加されることはなく、データ化けを回避することが可能となる。
なお、時点R1において、プレートラインPL11〜PL1mとプレートラインPL21〜PL2mは、いずれも「0(ローレベル)」とされている。
時点R2では、制御信号E1、E2がいずれも「0」とされた状態(すなわち、データ書き込み用ドライバが無効とされ、かつ、ループ構造部LOOPで通常ループが無効とされている状態)で、電源電圧VDDが投入される。
続く時点R3では、データDの読み出し元として第m記憶領域を選択すべく、制御信号SELmが「1」とされ、その余の制御信号SEL1〜SEL(m−1)が「0」とされる。これにより、デマルチプレクサDeMUX1、DeMUX2は、その入力端と第m出力端を結ぶ信号経路が選択された状態となり、マルチプレクサMUX3、MUX4は、その出力端と第m入力端を結ぶ信号経路が選択された状態となる。
また、時点R3では、Fリセット信号FRSTmが「0」とされて、トランジスタQ1ma、Q1mb、Q2ma、Q2mbがオフされて、強誘電体素子CL1ma、CL1mb、CL2ma、CL2mbに対する電圧印加が可能な状態とされる一方、プレートラインPL2mが「0」に維持されたまま、プレートラインPL1mが「1」とされる。このようなパルス電圧の印加により、ノード電圧V1m及びノード電圧V2mとして、強誘電体素子内の残留分極状態に対応した電圧信号が現れる。
図16の例(第3記憶領域に論理「1」のデータDが格納されていた場合)に即して具体的に説明すると、ノード電圧V1mの論理としてはWLが現れ、ノード電圧V2mの論理としてはWHが現れる。すなわち、ノード電圧V1mとノード電圧V2mとの間には、強誘電体素子内の残留分極状態の差に応じた電圧差が生じる形となる。
このとき、時点R3〜R4では、制御信号E2が「0」とされ、マルチプレクサMUX1とマルチプレクサMUX2の第2入力端(0)が選択されるので、ノード電圧V3の論理はWLとなり、ノード電圧V4の論理はWHとなる。また、ノード電圧V5の論理はWHとなり、ノード電圧V6の論理はWLとなる。このように、時点R3〜R4では、装置各部のノード電圧V1m、V2m、V3〜V6が未だ不安定な状態(インバータINV3及びインバータINV4での論理反転が完全に行われず、その出力論理が確実に「0」/「1」となっていない状態)である。
なお、時点R3において、Fリセット信号FRST1〜FRST(m−1)は、いずれも「1」に維持され、制御信号SEL1〜SEL(m−1)、プレートラインPL11〜PL1(m−1)、PL21〜PL2(m−1)は、いずれも「0」に維持される。
続く時点R4では、制御信号E2が「1」とされ、マルチプレクサMUX1とマルチプレクサMUX2の第1入力端(1)が選択されるので、ループ構造部LOOPにて通常ループが形成されている。このような信号経路の切り換えに伴い、インバータINV4の出力端(論理:WH)とインバータINV3の入力端(論理:WH)が接続され、インバータINV3の出力端(論理:WL)とインバータINV4の入力端(論理:WL)が接続される。従って、各ノードの信号論理(WH/WL)に不整合は生じず、以降、ループ構造部LOOPにて通常ループが形成されている間、インバータINV3は、論理WLの入力を受けて、その出力論理を「1」に引き上げようとし、インバータINV4は、論理WHの入力を受けて、その出力論理を「0」に引き下げようとする。その結果、インバータINV3の出力論理は、不安定な論理WLから「0」に確定され、インバータINV4の出力論理は、不安定な論理WHから「1」に確定される。
このように、時点R4において、ループ構造部LOOPが通常ループとされたことに伴い、強誘電体素子から読み出された信号(ノード電圧V1mとノード電圧V2mとの電位差)がループ構造部LOOPで増幅される形となり、出力信号Qとして第3記憶領域の保持データ(図16の例では「1」)が復帰される。
その後、時点R5では、Fリセット信号FRSTmが再び「1」とされ、トランジスタQ1ma、Q1mb、Q2ma、Q2mbがオンされて、強誘電体素子CL1ma、CL1mb、CL2ma、CL2mbの各両端間がいずれも短絡されるので、これらの強誘電体素子CL1ma、CL1mb、CL2ma、CL2mbには、一切電圧が印加されない状態となる。このとき、プレートラインPL1mとプレートラインPL2mは、いずれも「0」とされる。従って、データ保持装置は、時点W1以前と同様、通常動作状態に復帰される。
上記で説明したように、第3変形例のデータ保持装置において、強誘電体素子のヒステリシス特性を用いてループ構造部LOOPに保持されたデータDを不揮発的に記憶する不揮発性記憶部は、強誘電体素子を用いたm個の記憶領域を有して成り、所定の制御信号SEL1〜SELmに応じて、データDの書き込み先ないしは読み出し元となる記憶領域を選択して用いる構成とされている。このような構成とすることにより、複数のデータDを任意に切り換えて使用することが可能なデータ保持装置を実現することができる。
なお、データ保持装置の通常動作時には、強誘電体素子が信号線から分離されるので、強誘電体素子の増加によって、データ保持装置の性能劣化(速度劣化や消費電力の増加など)が招かれることはない。
次に、第3記憶領域からのデータ読み出し動作の変形例について、図17を参照しながら詳細な説明を行う。図17は、本発明に係るデータ保持装置の別の動作例を説明するためのタイミングチャートであり、上から順に、電源電圧VDD、クロック信号CLK、データ信号D、制御信号E1、制御信号E2、制御信号SEL1、Fリセット信号FRST1、プレートラインPL11の印加電圧、プレートラインPL21の印加電圧、ノード電圧V11、ノード電圧V21、制御信号SELm、Fリセット信号FRSTm、プレートラインPL1mの印加電圧、プレートラインPL2mの印加電圧、ノード電圧V1m、ノード電圧V2m、及び、出力信号Qの電圧波形を示している。
なお、データDの書き込み先や読み出し元として選択されていない第y記憶領域(1<y<m)に関連する制御信号SELy、Fリセット信号FRSTy、プレートラインPL1yの印加電圧、プレートラインPL2yの印加電圧、ノード電圧V1y、ノード電圧V2yは、データDの書き込み動作中には、データDの書き込み先として選択されていない第m記憶領域のそれと同様となり、データDの読み出し動作中には、データDの読み出し元として選択されていない第1記憶領域のそれと同様となるため、その描写並びに説明を適宜省略する。
時点R1〜R5では、クロック信号CLKが「0」とされており、反転クロック信号CLKBが「1」とされている。従って、第1パススイッチSW1がオフされており、第2パススイッチがオンされている。このように、クロック信号CLK及び反転クロック信号CLKBの論理を予め固定しておくことにより、強誘電体素子からのデータ読み出し動作の安定性を高めることが可能となる。
時点R1では、最先にFリセット信号FRST1〜FRSTmが「1」とされており、トランジスタQ11a〜Q1ma、Q11b〜Q1mb、Q21a〜Q2ma、Q21b〜Q2mbがオンされて、強誘電体素子CL11a〜CL1ma、CL11b〜CL1mb、CL21a〜CL2ma、CL21b〜CL2mbの各両端間がいずれも短絡されている。従って、強誘電体素子CL11a〜CL1ma、CL11b〜CL1mb、CL21a〜CL2ma、CL21b〜CL2mbには一切電圧が印加されない状態となっているので、電源投入時に電圧変動が生じた場合であっても、強誘電体素子CL11a〜CL1ma、CL11b〜CL1mb、CL21a〜CL2ma、CL21b〜CL2mbに意図しない電圧が印加されることはなく、データ化けを回避することが可能となる。
なお、時点R1において、プレートラインPL11〜PL1mとプレートラインPL21〜PL2mは、いずれも「0(ローレベル)」とされている。
時点R2では、Fリセット信号FRSTmが「0」とされて、トランジスタQ1ma、Q1mb、Q2ma、Q2mbがオフされ、強誘電体素子CL1ma、CL1mb、CL2ma、CL2mbに対する電圧印加が可能な状態とされる一方、プレートラインPL2mが「0」に維持されたまま、プレートラインPL1mが「1」とされる。このようなパルス電圧の印加により、ノード電圧V1m及びノード電圧V2mとして、強誘電体素子内の残留分極状態に対応した電圧信号が現れる。
図17の例(第3記憶領域に論理「1」のデータDが格納されていた場合)に即して具体的に説明すると、ノード電圧V1mの論理としてはWLが現れ、ノード電圧V2mの論理としてはWHが現れる。すなわち、ノード電圧V1mとノード電圧V2mとの間には、強誘電体素子内の残留分極状態の差に応じた電圧差が生じる形となる。
ただし、時点R2〜R3では、未だ電源電圧VDDが投入されていないため、ループ構造部LOOP各部のノード電圧V3〜V6はいずれも「0」となっており、延いては、出力信号Qが「0」となっている。
続く時点R3では、データDの読み出し元として第m記憶領域を選択すべく、制御信号SELmが「1」とされ、その余の制御信号SEL1〜SEL(m−1)が「0」とされる。これにより、デマルチプレクサDeMUX1、DeMUX2は、その入力端と第m出力端を結ぶ信号経路が選択された状態となり、マルチプレクサMUX3、MUX4は、その出力端と第m入力端を結ぶ信号経路が選択された状態となる。
また、時点R3では、制御信号E1、E2がいずれも「0」とされた状態(すなわち、データ書き込み用ドライバが無効とされ、かつ、ループ構造部LOOPで通常ループが無効とされている状態)で、電源電圧VDDが投入される。
なお、時点R3〜R4では、制御信号E2が「0」とされ、マルチプレクサMUX1とマルチプレクサMUX2の第2入力端(0)が選択されるので、ノード電圧V3の論理はWLとなり、ノード電圧V4の論理はWHとなる。また、ノード電圧V5の論理はWHとなり、ノード電圧V6の論理はWLとなる。このように、時点R3〜R4では、装置各部のノード電圧V1〜V6が未だ不安定な状態(インバータINV3及びインバータINV4での論理反転が完全に行われず、その出力論理が確実に「0」/「1」となっていない状態)である。
続く時点R4では、制御信号E2が「1」とされ、マルチプレクサMUX1とマルチプレクサMUX2の第1入力端(1)が選択されるので、ループ構造部LOOPにて通常ループが形成されている。このような信号経路の切り換えに伴い、インバータINV4の出力端(論理:WH)とインバータINV3の入力端(論理:WH)が接続され、インバータINV3の出力端(論理:WL)とインバータINV4の入力端(論理:WL)が接続される。従って、各ノードの信号論理(WH/WL)に不整合は生じず、以降、ループ構造部LOOPにて通常ループが形成されている間、インバータINV3は、論理WLの入力を受けて、その出力論理を「1」に引き上げようとし、インバータINV4は、論理WHの入力を受けて、その出力論理を「0」に引き下げようとする。その結果、インバータINV3の出力論理は、不安定な論理WLから「0」に確定され、インバータINV4の出力論理は、不安定な論理WHから「1」に確定される。
このように、時点R4において、ループ構造部LOOPが通常ループとされたことに伴い、強誘電体素子から読み出された信号(ノード電圧V1mとノード電圧V2mとの電位差)がループ構造部LOOPで増幅される形となり、出力信号Qとして第3記憶領域の保持データ(図17の例では「1」)が復帰される。
その後、時点R5では、Fリセット信号FRSTmが再び「1」とされ、トランジスタQ1ma、Q1mb、Q2ma、Q2mbがオンされて、強誘電体素子CL1ma、CL1mb、CL2ma、CL2mbの各両端間がいずれも短絡されるので、これらの強誘電体素子CL1ma、CL1mb、CL2ma、CL2mbには、一切電圧が印加されない状態となる。このとき、プレートラインPL1mとプレートラインPL2mは、いずれも「0」とされる。従って、データ保持装置は、時点W1以前と同様、通常動作状態に復帰される。
上記したように、図17のデータ読み出し動作は、図16のデータ読み出し動作と異なり、電源電圧VDD投入前から、強誘電体素子内の残留分極状態に対応した電圧信号(ノード電圧V1m、V2m)の引き出し動作を開始する構成とされている。このような構成とすることにより、電源電圧VDD投入後の動作ステップ数を減らして(図16の動作例では3ステップ(時点R3、R4、R5)を要するのに対して、図17の動作例では2ステップ(時点R4、R5)のみ)、通常動作に復帰するまでの所要時間を短縮することが可能となる。
次に、第3変形例のデータ保持装置をCPUに適用した場合の処理切替動作について、図18を参照しながら説明する。図18は、データ入れ替えによる処理切替動作の一例を示す模式図であり、データ保持装置の第1記憶領域と第m記憶領域を任意に切り替えて用いることにより、処理A(例えば動画圧縮処理)と処理B(例えば表計算処理)が交互に切り替えられる様子が模式的に示されている。なお、図18の左側には、縦軸を時間軸として処理Aと処理Bが交互に切り替えられる様子が示されており、図18の右側には、CPU内部で使用されているデータ保持装置の動作状態が模式的に示されている。
処理Aから処理Bに移る場合、データ保持装置は、処理Aに関するデータDAを第1記憶領域(CL11a〜CL21b)に書き込み、処理Bに関するデータDBを第m記憶領域(CL1ma〜CL2mb)から読み出すことで、データ保持装置に格納されているデータの入替処理を行う。一方、処理Bから処理Aに移る場合には、上記と逆に、データ保持装置は、処理Bに関するデータDBを第m記憶領域(CL1ma〜CL2mb)に書き込み、処理Aに関するデータDAを第1記憶領域(CL11a〜CL21b)から読み出すことで、データ保持装置に格納されているデータの入替処理を行う。このようなデータの入替処理により、CPUで実行される処理を瞬時に切り替えることが可能となる。
なお、データ入れ替えによってCPUの処理切替を行う場合、先出の図16、図17で示した電源オフ期間は必ずしも必要ではない。
次に、強誘電体素子のセルパターンのレイアウトについて、図19〜図22を参照しながら詳細に説明する。図19〜図22は、それぞれ、強誘電体素子のセルパターンの第1レイアウト例〜第4レイアウト例を示す模式図である。なお、図中の符号a〜dは、それぞれ、強誘電体素子を示しており、符号x、yは、それぞれ、素子間距離を示している。
半導体基板上に複数の強誘電体素子を形成する際、そのレイアウト段階では、いずれの強誘電体素子も同一の形状(例えば、上面視した場合に正方形や長方形となる形状)に設計されているが、マスキングプロセスやエッチングプロセスを経て半導体基板上に形成される実際の素子形状は、プロセスの特性上、設計通りの形状とはならないことが多い。
例えば、図19において、強誘電体素子a、dは、いずれの四辺にも別の素子が近接していないため、素子のコーナー部分がエッチングされやすく、半導体基板上に形成される実際の素子形状は、各々の四隅全てが比較的大きく丸められた形となる。一方、強誘電体素子b、cは、各々の一辺が互いに対向する形で互いに近接しているため、この一辺を含む素子のコーナー部分がエッチングされにくく、半導体基板上に形成される実際の素子形状は、各々の四隅のうち、互いに対向する二隅が比較的小さく丸められた形となり、その余の二隅が比較的大きく丸められた形となる。図20〜図22の例についても、上記と同様である。
このように、半導体基板上に形成される実際の素子形状は、素子の疎密に応じて四隅のエッチング度合いが異なるものとなるが、強誘電体素子CL1aと強誘電体素子CL1bとのペア、並びに、強誘電体素子CL2aと強誘電体素子CL2bとのペアについては、それぞれ半導体基板上に形成された実際の形状が等しくなるように配置するとよい。
図19の例であれば、強誘電体素子a、dを第1ペアとし、強誘電体素子b、cを第2ペアとすればよい。また、図20の例であれば、強誘電体素子a、bを第1ペアとし、強誘電体素子c、dを第2ペアとしてもよいし(図中(a)を参照)、若しくは、強誘電体素子a、cを第1ペアとし、強誘電体素子b、dを第2ペアとしてもよい(図中(b)を参照)。また、図21の例であれば、強誘電体素子a、cを第1ペアとし、強誘電体素子b、dを第2ペアとしてもよいし(図中(a)を参照)、強誘電体素子a、bを第1ペアとし、強誘電体素子c、dを第2ペアとしてもよいし(図中(b)を参照)、若しくは、強誘電体素子a、dを第1ペアとし、強誘電体素子b、cを第2ペアとしてもよい(図中(c)を参照)。また、図22の例であれば、強誘電体素子a、dを第1ペアとし、強誘電体素子b、cを第2ペアとすればよい。
このようなセルパターンのレイアウトを行うことにより、一対となる強誘電体素子の形状(面積)を揃えて、そのペア性を高めることが可能となり、延いては、データ保持装置のデータ保持特性を向上することが可能となる。
また、図15で示すように、記憶領域を複数設ける場合についても上記と同様であり、強誘電体素子CL11a〜CL1maと強誘電体素子CL11b〜CL1mbとのペア、並びに、強誘電体素子CL21a〜CL1maと強誘電体素子CL21b〜CL2mbとのペアについては、互いの形状(面積)を揃えておくことが重要である。
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、ループ構造部LOOPを形成する論理ゲートとして、インバータや否定論理積演算器を用いた構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、否定論理和演算器など、その他の論理ゲートを用いることも可能である。
また、上記実施形態では、ループ構造部LOOPと不揮発性記憶部とを電気的に分離する回路分離部の構成要素として、インバータINV6、INV7とパススイッチSW3、SW4の組み合わせを用いた構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、上記に代えてトライステートインバータ(出力をフローティングとすることが可能なインバータ)を用いてもよい。
また、回路分離部のポイントは、通常動作時、強誘電体素子に電圧を加えないようにすることができるという点にあり、上記実施形態で例示した構成(すなわち、通常動作時に強誘電体素子に対する印加電圧を一定電圧に保つ構成)の他にも、強誘電体素子が有する電圧印加用電極の少なくとも一をフローティング状態に保つ構成が考えられる。具体的には、図1において、通常動作時には、トランジスタQ1a、Q1b、Q2a、Q2bをオフにしつつ、第1プレートラインPL1及び第2プレートラインPL2をフローティング状態にするなどの方法が考えられる。また、回路構成自体を変更するのであれば、強誘電体素子とノード電圧V1(V2)の引出端との間、若しくは、強誘電体素子とプレートラインPL1(PL2)との間に、新たにトランジスタを追加し、そのオン/オフ制御を行う構成とすればよい。
また、通常動作時、ないしは、データの読み出し動作時、強誘電体素子に対する印加電圧を一定に保つ場合には、強誘電体素子の両端間に接続されたトランジスタがオンしていればよく、プレートラインの電圧は必ずしもローレベルでなくともよい。