JPWO2008149900A1 - 水素の製造方法および改質反応器 - Google Patents
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Abstract
水素製造方法は、気化状態の炭化水素系原料と酸素と水とを含む混合原料から、水素を含有する改質ガスを生じさせるための改質反応器(1)の内部において、部分酸化改質反応および水蒸気改質反応を併発させるオートサーマル改質反応により行われる。改質反応器(1)は、所定のガス流路を有し、主として発熱反応である部分酸化改質反応を起こすための第1触媒を含む第1領域(41)と、所定のガス流路を有し、主として吸熱反応である水蒸気改質反応を起こすための第2触媒を含む第2領域(42)とを備える。第1領域(41)と第2領域(42)とは、熱伝導性の内管(3)を挟んで隣接して配置されており、上記第1触媒は、上記第1領域(41)における中間位から下流側に充填されている。図1
Description
本発明は、炭化水素系原料を含む混合原料から、オートサーマル改質法により水素を含む改質ガスを得る方法、およびこの方法を適切に行うための改質反応器に関する。
水素を工業的に製造する方法として、部分酸化法と水蒸気改質法とを組み合わせたオートサーマル改質法が知られている。このオートサーマル改質法においては、水素の発生源として炭化水素系原料を用い、部分酸化法においては、発熱反応である部分酸化改質反応により炭化水素系原料と酸素から水素と二酸化炭素が発生し、水蒸気改質法においては、吸熱反応である水蒸気改質反応により炭化水素系原料と水から水素と二酸化炭素が発生する。オートサーマル改質法は、部分酸化改質反応による発熱量と水蒸気改質反応による吸熱量とをバランスさせて、理想的には外部加熱が不要な熱自立型の改質反応を行わせる手法である。例えば炭化水素系原料としてメタノールを用いる場合の部分酸化改質反応および水蒸気改質反応の反応式は、下記の式(1)および(2)で表される。これらの反応は、いずれも触媒が関与することにより進行する。オートサーマル改質法では、一般に、銅−亜鉛系触媒が用いられる。
オートサーマル改質法においては、上記式(1)で表す発熱反応が起こったすぐ近傍で上記式(2)の吸熱反応が起これば、熱の授受が効率よく行われると考えられる。しかしながら、実際には、部分酸化改質反応は、水蒸気改質反応に比べて反応速度が速い。このため、例えば炭化水素系原料と酸素と水とを含む混合原料が改質反応器に供給されると、改質反応器内のガス流路の上流側では、部分酸化改質反応が水蒸気改質反応よりも優位に起こり、過度な温度上昇を招いて触媒活性が損なわれる虞がある。その一方、改質反応器のガス流路の下流側では、水蒸気改質反応が部分酸化改質反応よりも優位に起こるため、次第に温度が低下して水蒸気改質反応が十分に行われなくなる。また、改質触媒(銅−亜鉛系触媒)においては、酸素の影響を受けて触媒活性が低下する。
上記の触媒活性の低下の問題に対し、改質触媒に貴金属種を添加して触媒活性の低下を抑制したり、定期的に改質触媒を還元して触媒活性を賦活させる方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
しかしながら、定期的に改質触媒を還元する従来方法では、改質反応器を含めた水素製造システムにおいて、長時間連続運転が出来ず、水素製造の効率が悪くなってしまう。加えて、上述したように、部分酸化改質反応および水蒸気改質反応における反応速度の相違に起因して改質反応器内の熱バランスが崩れると、オートサーマル改質法の系全体としてオートサーマル改質反応を長時間持続することが出来ないといった問題もある。
本発明は、このような事情の下で考え出されたものであって、オートサーマル改質法による水素の製造において、触媒活性の低下を防止し、長時間連続運転を可能とすることを目的としている。
本発明の第1の側面によって提供される水素の製造方法は、気化状態の炭化水素系原料と酸素と水とを含む混合原料から、水素を含有する改質ガスを生じさせるための改質反応器の内部において、部分酸化改質反応および水蒸気改質反応を併発させるオートサーマル改質反応により水素を製造する方法であって、上記改質反応器は、所定のガス流路を有し、主として発熱反応である部分酸化改質反応を起こすための第1触媒を含む第1領域と、所定のガス流路を有し、主として吸熱反応である水蒸気改質反応を起こすための第2触媒を含む第2領域とを備え、上記第1領域における部分酸化改質反応を当該第1領域の中間位から開始させ、上記第1領域と上記第2領域との間で熱伝導を行わせることを特徴としている。
本発明の第2の側面によって提供される改質反応器は、気化状態の炭化水素系原料と酸素と水とを含む混合原料から、部分酸化改質反応および水蒸気改質反応を併発させるオートサーマル改質反応により、水素を含有する改質ガスを生じさせるための改質反応器であって、所定のガス流路を有し、主として発熱反応である部分酸化改質反応を起こすための第1触媒を含む第1領域と、所定のガス流路を有し、主として吸熱反応である水蒸気改質反応を起こすための第2触媒を含む第2領域とを備え、上記第1領域と上記第2領域とは、熱伝導性の隔壁を挟んで隣接して配置されており、上記第1触媒は、上記第1領域における中間位から下流側に充填されていることを特徴としている。
好ましくは、上記第1触媒は、銅−亜鉛系の触媒を300℃以上に加熱して得られたものである。
好ましくは、上記第1触媒は、金属銅または酸化銅のうち少なくとも1種を含むものである。
好ましくは、上記炭化水素系原料は、メタノール、エタノールおよびジメチルエーテルからなる群より選択される。
好ましくは、上記第1領域および上記第2領域は、上記第1領域が上流側に位置するとともに上記第2領域が下流側に位置し、上記第1領域におけるガス流路の下流端と上記第2領域におけるガス流路の上流端とが連通するように構成されている。
好ましくは、上記第1触媒は、部分酸化改質反応を伴わない充填材によって希釈された状態で配されている。
好ましくは、上記第1領域におけるガス流路の上流部には、部分酸化改質反応を伴わない充填材が充填されている。
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
図1は、本発明に係る改質反応器1の概略構造を示す断面図である。この改質反応器1は、気化状態とされた炭化水素系原料を含む混合原料から、部分酸化改質反応および水蒸気改質反応を組み合わせたオートサーマル改質反応により、水素を含有する改質ガスを生じさせる。改質反応器1は、外側容器2と内管3とを含む二重管構造を有し、当該外側容器2と内管3とで規定される空間内に改質反応部4を備えている。
外側容器2は、閉端管状構造を有し、その下端には原料導入口21が設けられ、下端近傍には改質ガス導出口22が設けられている。外側容器2は、例えばステンレス鋼で形成されている。
図1および図2に示すように、内管3は、一定の厚みの壁を有する円筒状であり、外側容器2の内部に設けられている。内管3は、その下端が外側容器2の内底面に対して例えば溶接などの手法により取り付けられている。内管3の下端は原料導入口21と連通するとともに、内管3の下端と外側容器2の内底面との間には隙間が存在しない。内管3の上端は、外側容器2内で開放されている。これにより、外側容器2の内部においては、原料導入口21から内管3の内部空間、外側容器2の上部空間、および外側容器2と内管3の間の空間により、改質ガス導出口22に至るまでガスが流れる流路が形成されている。内管3は、ステンレス鋼など熱伝導性を有する素材で構成されている。
改質反応部4は、改質触媒が充填されている部位であり、内管3の内側に位置する円柱状の第1領域41と、この第1領域41に対して内管3を挟んで隣接して位置(外側容器2と内管3の間)する円筒状の第2領域42と、これらの第1および第2領域41,42を連通させる連通領域43とから構成されている。第1領域41は、内管3と、内管3の軸方向に離間した一対の仕切部材5とによって規定されている。第2領域42は、外側容器2と、内管3と、外側容器2と内管3の間において内管3の軸方向に離間した一対の仕切部材6とによって規定されている。この結果、内管3は、隣接する第1領域41および第2領域42を区画する隔壁としての役割を担う。仕切部材5,6は、例えばパンチングプレートで形成されており、気化状態とされた混合原料や改質ガスを通過させつつ改質触媒を封じ込めることができる。
第1領域41におけるガス流路の上流部411には、部分酸化改質反応を伴わない充填材が充填されている。この充填材としては、例えば蓄熱機能を有するアルミナボールが挙げられる。第1領域41におけるガス流路の下流部412には、第1触媒が充填されている。この第1触媒は、主として部分酸化改質反応に関与するものであり、例えば銅−亜鉛系触媒を300℃以上に加熱して酸化触媒に変換したものが用いられる。特に350℃以上に加熱すると、上記式(2)で示した改質反応に対する活性が失われる一方、上記式(1)で示した部分酸化改質反応に対する活性が顕著に現れる。したがって、この熱処理した銅−亜鉛系触媒は、酸化物(酸化銅+酸化亜鉛)の形態で用いるのが好適である。また、本実施形態では、上記第1触媒は、アルミナボールなどの部分酸化改質反応に関与しない充填材によって希釈された状態で充填されている。上記第1触媒の配合比率は、例えば10〜70体積%とされる。
第2領域42、および連通領域43には、第2触媒が充填されている。この第2触媒は、主として水蒸気改質反応に関与するものであり、例えば加熱処理を施さない銅−亜鉛系触媒が挙げられる。
上記構成の改質反応器1を含む水素製造システム(全体は図示せず)を稼動させると、原料ガス導入口21から外側容器2内に混合原料が導入される。混合原料は、炭化水素系原料と酸素と水とを含み、例えば、図示しない気化器において予め加熱されて気化状態とされている。この気化器では、後の改質反応器1での改質反応において必要とされる所定の反応温度(例えば200〜250℃)まで加熱される。上記炭化水素系原料としては、例えばメタノール、エタノール、ジメチルエーテルが挙げられる。以下の実施形態の説明においては、炭化水素系原料としてメタノールを用いるものする。混合原料に含まれる酸素の供給源は、例えば空気や酸素濃度が高められた酸素富化ガスである。
原料ガス導入口21を介して改質反応器1に供給された気化状態の混合原料は、内管3の内側に位置する上流側の第1領域41を通過して内管3の上端から連通領域43に進入し、外側容器2と内管3の間に位置する下流側の第2領域42を通過して改質ガス導出口22に導かれる。図1に表された矢印は、外側容器2内におけるガスの流れを示す。改質反応部4においては、改質触媒の作用により、発熱反応であるメタノールの部分酸化改質反応および吸熱反応であるメタノールの水蒸気改質反応が併発し、混合原料から水素を含む改質ガスが発生する。
具体的には、第1領域41の上流部411においては、混合原料が反応することなく通過する。次いで、第1領域41の下流部412においては、主としてメタノールの部分酸化改質反応が進行する。即ち、第1触媒の酸化作用により、上記式(1)の反応式で表される発熱反応が起こる。また、副反応として、下記の式(3)の反応式で表される発熱反応も起こりうる。
ここで、混合原料が下流部412に進入すると、比較的に反応速度の速い部分酸化改質反応が進行し、下流部412内の温度が急激に上昇する。その結果、第1領域41におけるガス流路の中間位において、温度分布のピークである高温部が位置することになる。
連通領域43および第2領域42においては、主としてメタノールの水蒸気改質反応が進行する。即ち、第2触媒の作用により、上記(2)の反応式で表される吸熱反応が起こる。また、副反応として、上記式(3)で生じたホルムアルデヒドから、下記の式(4)の反応式で表される改質反応(発熱反応)も起こりうる。
本実施形態では、改質反応部4内の温度が所定の範囲内に維持されるように、各反応で消費されるメタノールの割合(即ち各反応の比率)が設定されている。即ち、改質反応部4においては、オートサーマル改質反応が進行する。
このようにして改質反応器1において生じた水素を含む改質ガスは、適当な手法により精製される。化学的な手法を用いる場合には、水素、二酸化炭素、一酸化炭素を主として含む改質ガスをアルカリ溶液で処理して二酸化炭素と一酸化炭素を除去する。また、混合原料の酸素源として空気を用いる場合には、窒素を効率よく除去する観点から、吸着剤が充填された複数の吸着塔を用いて行うPSAガス分離法によって水素を分離するのが好ましい。
本実施形態のように、改質反応部4の上流側の第1領域41と下流側の第2領域42とが熱伝導性の内管3(隔壁)を挟んで隣接して配置された構成では、発熱反応である部分酸化改質反応と吸熱反応である水蒸気改質反応の反応速度の相違に起因する改質反応部4での熱バランスの不安定さを解消することができる。連通領域43を経て折返して第2領域42を通流するガスは、吸熱反応である水蒸気改質反応が優位に進行して徐々に温度が低下するが、上述のように第1領域41の中間位が温度ピークの高温部であることから、この高温部から内管3を介した伝熱により温度が再び上昇し、吸熱反応である水蒸気改質反応が十分に進行し、全体メタノール反応率も改善される。
以上のように、上記改質反応器1を用いた水素の製造によると、部分酸化改質反応および水蒸気改質反応を組み合わせたオートサーマル改質反応を長時間に亘って適切に進行させることができ、水素の生成効率を高めることができる。
また、本実施形態においては、第1領域41に充填された第1触媒は、蓄熱機能を有するアルミナボールによって希釈されている。これにより、第1領域41での発熱反応(部分酸化改質反応)による過度の温度上昇が抑制される。加えて、第1領域41における温度ピーク後の温度低下を緩やかにして高温領域を保持することができ、第2領域42への伝熱効果を高めることができる。このように第1領域41の第1触媒を希釈する構成は、改質反応部4内の温度分布を調整することが可能であり、折返し構造による伝熱効果を有効に発揮するうえで好適である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る改質反応器およびこの改質反応器を用いた水素の製造方法の具体的な構成は、発明の思想から逸脱しない範囲で種々に変更が可能である。
例えば、第1領域41に配される第1触媒としては、金属銅や酸化銅を用いることも可能である。銅触媒の場合、酸化触媒としての機能が付与できればよいので、多くの方法で作製することが可能である。表面積を増やす観点から、金属銅そのものをフィラメント状にする、あるいはハニカム構造とすることにより第1触媒を構成してもよい。
改質反応器1の構成としては、例えば、外側容器2の外周を取り巻くようにジャケット部を設け、当該ジャケット部に加熱媒体を通流させてもよい。このような構成によれば、外側容器などから放熱されることによる熱エネルギの損失分を補うことができる。
次に、本発明の有用性を実施例により説明する。
本実施例では、下記の具体的構成を有する改質反応器1を用いて、メタノール、空気、および水によって構成された混合原料から水素を含む改質ガスを発生させた。
〔改質反応器〕
改質反応器1の外側容器2は、ステンレス管(外径:156mm,内径:150mm,全長:1050mm)により構成した。内管3は、ステンレス管(外径:84mm,内径:80mm,全長:900mm)により構成した。第1領域41の上流部411には、アルミナボール(粒径:3mm)を充填高さ300mmで充填した。第1領域41の下流部412には、第1触媒としての熱処理済みの銅−亜鉛系触媒(粒径:3mm)とアルミナボール(粒径:3mm)の混合物を充填高さ450mmで充填した。触媒とアルミナボールの混合比率は3:7とした。熱処理済みの銅−亜鉛系触媒は、400℃以上の高温で処理されたものを用いた。第2領域42および連通領域43には、第2触媒としての熱処理を施していない銅−亜鉛系触媒(粒径:3mm)を充填高さ750mmで充填した。
改質反応器1の外側容器2は、ステンレス管(外径:156mm,内径:150mm,全長:1050mm)により構成した。内管3は、ステンレス管(外径:84mm,内径:80mm,全長:900mm)により構成した。第1領域41の上流部411には、アルミナボール(粒径:3mm)を充填高さ300mmで充填した。第1領域41の下流部412には、第1触媒としての熱処理済みの銅−亜鉛系触媒(粒径:3mm)とアルミナボール(粒径:3mm)の混合物を充填高さ450mmで充填した。触媒とアルミナボールの混合比率は3:7とした。熱処理済みの銅−亜鉛系触媒は、400℃以上の高温で処理されたものを用いた。第2領域42および連通領域43には、第2触媒としての熱処理を施していない銅−亜鉛系触媒(粒径:3mm)を充填高さ750mmで充填した。
〔水素の製造〕
改質反応器1に供給される混合原料の供給量は、メタノールが0.46kmol/h、水が0.69kmol/h、空気が80Ndm3/min(N:標準状態)(純酸素換算で0.0446kmol/h)の流量であった。当該混合原料は、気化器において加熱されて気化状態とされたうえで改質反応器1に供給された。改質反応器1への導入時の混合原料の温度は、230℃であった。
改質反応器1に供給される混合原料の供給量は、メタノールが0.46kmol/h、水が0.69kmol/h、空気が80Ndm3/min(N:標準状態)(純酸素換算で0.0446kmol/h)の流量であった。当該混合原料は、気化器において加熱されて気化状態とされたうえで改質反応器1に供給された。改質反応器1への導入時の混合原料の温度は、230℃であった。
改質反応器1から導出された改質ガスは、PSAガス分離装置によって水素が濃縮分離され、純度約99.8%の製品水素ガスを得た。当該製品水素ガスの取得量は、21Nm3/hであった。また、投入したメタノール量に対する全反応率(全体メタノール反応率)は、約93%であり、改質ガスのドライ換算での概略組成は、水素が67%、二酸化炭素が25%、窒素が7.4%、一酸化炭素が0.5%、アルゴンが0.1%であった。
〔改質反応部の温度分布〕
本実施例においては、定常稼動時における改質反応部4の温度分布を調査した。温度分布の調査は、第1領域41の下流部412、および第2領域42に設定された複数の測定ポイントの温度を測定することにより行った。当該測定ポイントは、第1領域41および第2領域42におけるガスの流れ方向に沿った所定の軸上に変位して設定された。第1領域41および第2領域42には、上記軸に沿って移動可能に温度計を配置した。そして、当該温度計の測定部の位置を上記軸上において変位する測定ポイントへ順次ずらし、当該測定ポイントごとの温度を測定した。
本実施例においては、定常稼動時における改質反応部4の温度分布を調査した。温度分布の調査は、第1領域41の下流部412、および第2領域42に設定された複数の測定ポイントの温度を測定することにより行った。当該測定ポイントは、第1領域41および第2領域42におけるガスの流れ方向に沿った所定の軸上に変位して設定された。第1領域41および第2領域42には、上記軸に沿って移動可能に温度計を配置した。そして、当該温度計の測定部の位置を上記軸上において変位する測定ポイントへ順次ずらし、当該測定ポイントごとの温度を測定した。
図3は、第1領域41および第2領域42の温度分布を表すグラフである。同図の横軸は、第1領域41および第2領域42のガスの流れ方向の経路長さ1500mm(第1領域41における充填高さである750mmと第2領域42における充填高さである750mmとの合計)において、第1領域41の上流側端部を基点とするガスの流れ方向への測定ポイントまでの変位量を表す。同図の縦軸は、当該測定ポイントの測定温度を表す。図3によく表れているように、第1領域41(同図横軸の750mmまでの範囲)では、温度ピークである高温部(約450℃以上)が中間位に位置していることが確認できた。第2領域42(同図横軸の750mmを超えた範囲)に入ると、吸熱反応である水蒸気改質反応が優位に進行して一旦温度が低下するが、230℃を下回ることはなかった。これは、第1領域41において主として進行する部分酸化改質反応により生じた熱エネルギが内管3を介して第2領域42に伝達されたことによるものと考えられる。そして、第2領域42の中間位では、第1領域41における温度ピーク領域からの伝熱により再び温度が上昇した。そして、第2領域42の後半部分においても230℃を下回ることはなかった。これは、第1領域41の上流部411に充填されたアルミナボールからの伝熱が寄与していると考えられる。このように、第2領域42においては、その全体を通じて230℃以上となっており、水蒸気改質反応が十分に進行していると考えられる。
Claims (11)
- 気化状態の炭化水素系原料と酸素と水とを含む混合原料から、水素を含有する改質ガスを生じさせるための改質反応器の内部において、部分酸化改質反応および水蒸気改質反応を併発させるオートサーマル改質反応により水素を製造する方法であって、
上記改質反応器は、所定のガス流路を有し、主として発熱反応である部分酸化改質反応を起こすための第1触媒を含む第1領域と、所定のガス流路を有し、主として吸熱反応である水蒸気改質反応を起こすための第2触媒を含む第2領域とを備え、
上記第1領域における部分酸化改質反応を当該第1領域の中間位から開始させ、
上記第1領域と上記第2領域との間で熱伝導を行わせる、水素の製造方法。 - 上記第1触媒は、銅−亜鉛系の触媒を300℃以上に加熱して得られたものである、請求項1に記載の水素の製造方法。
- 上記第1触媒は、金属銅または酸化銅のうち少なくとも1種を含むものである、請求項1に記載の水素の製造方法。
- 上記炭化水素系原料は、メタノール、エタノールおよびジメチルエーテルからなる群より選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の水素の製造方法。
- 気化状態の炭化水素系原料と酸素と水とを含む混合原料から、部分酸化改質反応および水蒸気改質反応を併発させるオートサーマル改質反応により、水素を含有する改質ガスを生じさせるための改質反応器であって、
所定のガス流路を有し、主として発熱反応である部分酸化改質反応を起こすための第1触媒を含む第1領域と、所定のガス流路を有し、主として吸熱反応である水蒸気改質反応を起こすための第2触媒を含む第2領域とを備え、
上記第1領域と上記第2領域とは、熱伝導性の隔壁を挟んで隣接して配置されており、
上記第1触媒は、上記第1領域における中間位から下流側に充填されている、改質反応器。 - 上記第1触媒は、銅−亜鉛系の触媒を300℃以上に加熱して得られたものである、請求項5に記載の改質反応器。
- 上記第1触媒は、金属銅または酸化銅のうち少なくとも1種を含むものである、請求項5に記載の改質反応器。
- 上記第1領域は上記第2領域よりも上流側に位置し、上記第1領域におけるガス流路の下流端と上記第2領域におけるガス流路の上流端とが連通している、請求項5に記載の改質反応器。
- 上記第1触媒は、部分酸化改質反応を伴わない充填材によって希釈された状態である、請求項5に記載の改質反応器。
- 上記第1領域におけるガス流路の上流部には、部分酸化改質反応を伴わない充填材が充填されている、請求項5に記載の改質反応器。
- 上記炭化水素系原料は、メタノール、エタノールおよびジメチルエーテルからなる群より選択される、請求項5〜10のいずれかに記載の改質反応器。
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