JPWO2008149600A1 - 放射性同位元素製造装置及び放射性同位元素の製造方法 - Google Patents

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Abstract

ターゲットの耐圧性の向上とターゲット液体の冷却効果の向上とを両立可能とし、ターゲット液体の沸騰を十分に抑制する。放射性同位元素製造装置は、放射線を照射するサイクロトロンと、ターゲット液体Lを収容する収容凹部40を有するターゲット20とを備える。収容凹部40は、サイクロトロンから照射された放射線を導入するための開口部44と、頂部58を有するように開口部44から離れる方向に向けて窪んだ球面状の底面48とを含んでいる。ターゲット20は、サイクロトロンから照射される放射線の照射軸Xと底面48との交差位置が、頂部58の直下となるように配置されている。

Description

本発明は、ターゲット液体と放射線との核反応により放射性同位元素を製造するための放射性同位元素製造装置及び放射性同位元素の製造方法に関する。
脳や心臓、癌などの精密検査における検査方法として、ポジトロン断層撮影法(PET:Positron Emission Tomography)がある。このPET検査では、ポジトロン(陽電子)を放出する放射性同位元素(陽電子放出核種)で標識された検査用薬剤を、注射や吸入等により被験者の体内に導入する。体内に導入された検査用薬剤は、代謝されたり特定の部位(例えば、腫瘍や病変箇所)に蓄積されたりする。放射性同位元素から放出される陽電子と周囲の電子とが結合して消滅する際に放射線(消滅ガンマ線)が放出されるので、この放射線を検出してコンピュータで処理することにより、特定断面における断層撮影画像を得ることができるようになっている。
PET検査の検査用薬剤に使用される放射性同位元素としては、18F、15O、11C、13N等がある。これらは、半減期が2〜110分と極めて短いので、病院内の検査室に近い場所にサイクロトロン等の放射線源を設置し、この放射線源からの放射線(例えば、陽子線や重陽子線等の粒子線)をターゲットに導き、ターゲットに収容されているターゲット液体(例えば、ターゲット水(18O水))との核反応により放射性同位元素を製造する。そして、製造された放射性同位元素を所定の化合物(例えば、フルオロデオキシグルコース(FDG:Fluoro-Deoxy-Glucose))に組み込んだり、その一部を置き換えたりして合成することで、検査用薬剤(例えば、18F−FDG)を製造している。
このような放射性同位元素を製造するためのターゲットとして、従来、ターゲット液体を収容する収容凹部を有し、収容凹部が平坦な1つの底面と平坦な4つの側面とによって画成されているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平9−54196号公報
ところで、放射線源から照射される放射線は、10数MeVといった非常に高いエネルギーを有しているので、ターゲットの収容凹部内に収容されているターゲット液体に放射線が照射されると、ターゲット液体が加熱され、ターゲット液体が沸騰してしまう場合がある。このとき、ターゲット液体内に多数の気泡が発生し、ターゲット液体と放射線との反応が十分に行われなくなる。また、放射線が気泡を通過する際には放射線のエネルギーがほとんど減衰されないので、気泡の存在によって放射線がターゲットに到達してターゲットを構成する材料(例えば、Nb、Ag)がスパッタされ易くなり、生成された放射性同位元素を回収するためのチューブやフィルタにスパッタされた当該材料が析出してしまい、メンテナンスを行わなければならなくなる。そのため、ターゲット液体を十分に冷却して、ターゲット液体の沸騰を抑制することが求められている。
ここで、ターゲット液体の沸騰の抑制を図るための対策として、収容凹部を構成する側壁の一部を薄肉状として、冷却水とターゲット液体との熱交換を促進させることが考えられる。また、ターゲット液体を収容している収容凹部内にHeガス等の不活性ガスを供給して収容凹部内の圧力を高め、ターゲット液体の沸点を高くすることが考えられる。
しかしながら、従来のターゲットは、収容凹部が平坦な1つの底面と平坦な4つの側面とによって画成されていたので、収容凹部内の圧力を高めた場合、収容凹部の角部に応力が集中する傾向にあった。そのため、従来のターゲットでは、収容凹部を薄肉殻状とすると共に収容凹部内の圧力を高めることに限界があり、ターゲット液体の沸騰を十分に抑制することが困難であった。
本発明は、ターゲットの耐圧性の向上とターゲット液体の冷却効果の向上とを両立可能とし、ターゲット液体の沸騰を十分に抑制することが可能な放射性同位元素製造装置及び放射性同位元素の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る放射性同位元素製造装置は、ターゲット液体と放射線との核反応により放射性同位元素を製造するための放射性同位元素製造装置であって、放射線を照射する放射線源と、ターゲット液体を収容する収容凹部を有するターゲットとを備え、収容凹部は、放射線源から照射された放射線を導入するための開口と、頂部を有するように開口から離れる方向に向けて窪んだ凹曲面とを含んでおり、放射線源から照射される放射線の照射軸と凹曲面との交差位置が頂部よりも下側となるように、ターゲットが配置されていることを特徴とする。
本発明に係る放射性同位元素製造装置では、収容凹部が、頂部を有するように開口から離れる方向に向けて窪んだ凹曲面を含んでいる。そのため、収容凹部において応力集中が起こり難くなり、収容凹部の耐圧性が向上する。その結果、収容凹部の一部を薄肉殻状とした場合であっても、十分に収容凹部内の圧力を高めることができるようになるので、ターゲットの耐圧性の向上とターゲット液体の冷却効果の向上とを両立可能とし、ターゲット液体の沸騰を十分に抑制することが可能となる。これにより、放射線とターゲット液体との反応性が向上するようになると共により高いエネルギーで放射線をターゲット液体に照射することができるようになるので、放射性同位元素の収量が増大することとなる。
また、本発明に係る放射性同位元素製造装置では、収容凹部が、頂部を有するように開口から離れる方向に向けて窪んだ凹曲面を含んでいる。そのため、収容凹部の容積を従来のターゲットにおける収容凹部の容積と同じとすると共にターゲット液体の使用量を従来と同量とした場合、従来と比較して収容凹部の深さ(放射線の照射軸方向における開口から頂部までの直線距離)が深くなる。その結果、ターゲット液体が沸騰して気泡が発生した場合でも、従来と比較して放射線のエネルギーがターゲット液体によって減衰し易くなるので、ターゲットがスパッタされることを抑制することが可能となる。
また、本発明に係る放射性同位元素製造装置では、放射線源から照射される放射線の照射軸と凹曲面との交差位置が頂部よりも下側となるようにターゲットが配置されている。収容凹部に収容されているターゲット液体のうち下方に位置する部分の温度が上方に位置する部分の温度よりも低い傾向にあるので、このようにすることで、放射線がターゲット液体のうち温度の低い部分に照射されるようになる。その結果、ターゲット液体の局所的な温度上昇が抑えられ、ターゲット液体の沸騰をより十分に抑制することが可能となると思われる。
また、本発明に係る放射性同位元素製造装置では、放射線源から照射される放射線の照射軸と凹曲面との交差位置が頂部よりも下側となるようにターゲットが配置されている。放射線によって加熱されたターゲット液体は上方に移動する傾向にあるので、このようにすることで、ターゲット液体において対流が発生しやすくなる。その結果、ターゲット液体の局所的な温度上昇が抑えられ、ターゲット液体の沸騰を更に十分に抑制することが可能となる。
好ましくは、放射線源から照射される放射線の照射軸と凹曲面との交差位置が頂部の直下となるように、ターゲットが配置されている。
好ましくは、凹曲面は、球面状とされている。
好ましくは、ターゲットは、一方が凹曲面をなし、他方が凸曲面をなす薄肉殻状部と、前記薄肉殻状部の周りを囲むように前記薄肉殻状部を支持する環状支持部とを有し、収容凹部は、薄肉殻状部と環状支持部とで囲まれる空間によって構成されている。このようにすると、冷却水とターゲット液体との熱交換をより促進させることが可能となる。
好ましくは、収容凹部は、開口と凹曲面とを繋ぐ側面を更に含んでおり、環状支持部には、収容凹部の側面の少なくとも一部を囲むように、放射線源から照射される放射線に向かう方向に窪んだ凹部が設けられている。このようにすると、環状支持部のうち凹部と収容凹部との間の部分が薄肉状となるので、冷却水がこの凹部内を循環することで、冷却水とターゲット液体との熱交換を更に促進させることができ、一層の冷却効果を得ることが可能となる。
好ましくは、凹曲面の鉛直方向における中央を通ると共に水平面に平行な仮想平面よりも上側における収容凹部の容積は、仮想平面よりも下側における収容凹部の容積よりも大きい。このように収容凹部の上部の容積が大きくなることで、収容凹部の上部において冷却水との接触面積が増加するので、沸騰したターゲット液体が気体として存在しがちな収容凹部の上部を極めて効率的に冷却することが可能となる。また、このように収容凹部の下部の容積が小さくなることで、高価なターゲット液体の使用量を抑えられるので、コストの低減を図ることが可能となる。
より好ましくは、頂部は、仮想平面よりも上側に位置している。このようにすると、収容凹部の上部の容積をより大きくすることができる。
より好ましくは、収容凹部は、放射線源から照射される放射線の照射軸から見たときの外形が鉛直方向に長い環状を呈している。このようにすると、放射線源から照射される放射線の照射軸から見たときの外形が水平方向に長い環状を呈している場合と比較して、収容凹部の両側部の容積が小さくなるので、高価なターゲット液体の使用量をより抑えることが可能となる。
より好ましくは、ターゲットは、一方が凹曲面をなし、他方が凸曲面をなす薄肉殻状部を有しており、凸曲面に対応する形状を呈する対応凹曲面を有すると共に対応凹曲面が凸曲面と対向するように配置された椀状部材を更に備え、椀状部材には、対応凹曲面側に開放され、ターゲット液体を冷却するための冷却液を導入するための開口が底部に形成されると共に、開口からの冷却液を一時的に貯留する一時貯留凹部が設けられている。このように開口から導入された冷却液を一時貯留凹部に一時的に貯留すると、開口から導入された冷却液は、一時貯留凹部にて流速が遅くなった後に薄肉殻状部の凸曲面と椀状部材の対応凹曲面との間に流れ込むこととなるので、開口から導入された冷却液がターゲットの凸曲面全面に拡がりつつ流れる際に発生する圧力損失の低減を図ることが可能となる。そのため、ターゲットの凸曲面上において冷却液の偏流が発生し難くなる。その結果、ターゲットを介してターゲット液体の冷却を均一に行いやすくなる。
さらに好ましくは、一時貯留凹部の開口側の縁上における任意の点Pと、一時貯留凹部の開口側の縁の当該点Pにおける、放射線源から照射される放射線の照射軸から見たときの法線が、放射線源から照射される放射線の照射軸から見て対応凹曲面の外縁と交差する点とを結ぶ、対応凹曲面の表面に沿った距離を、点Pでの沿面距離Dとしたときに、一時貯留凹部の開口側の縁上における実質的に全ての点での沿面距離が略同一である。このようにすると、対応凹曲面における冷却液の流路の長さが略同一となるので、案内孔によって案内された冷却液がターゲットの凸曲面全面に拡がりつつ流れる際に発生する圧力損失をより一層低減することができるようになる。なお、「実質的に全ての点」とは、例えば、椀状部材の先端に切り欠き部が設けられている場合であって、一時貯留凹部の開口側の縁の点における、放射線源から照射される放射線の照射軸から見たときの法線が、放射線源から照射される放射線の照射軸から見たときの対応凹曲面の外縁のうち当該切り欠き部によって構成される部分を通るときには、その点を除く趣旨である。また、「略同一」とは、例えば、±0.1mm程度の幅があった場合でも同一とみなす趣旨である。
一方、本発明に係る放射性同位元素の製造方法は、上記したいずれかの放射性同位元素製造装置を用意する工程と、ターゲットを冷却するための冷却液を循環させる工程と、頂部よりも上側で且つ収容凹部内に所定の空隙を残すように、収容凹部内にターゲット液体を収容する工程と、照射軸と凹曲面との交差位置が頂部よりも下側となると共に、放射線源から照射される放射線の照射領域がターゲット液体に収まるように、放射線源から放射線をターゲットに向けて照射する工程とを備えることを特徴とする。
本発明に係る放射性同位元素の製造方法では、上記した放射性同位元素製造装置と同様の効果を奏する。また、本発明に係る放射性同位元素の製造方法では、頂部よりも上側で且つ収容凹部内に所定の空隙を残すように、収容凹部内にターゲット液体を収容している。そのため、ターゲット液体が沸騰した場合でも、当該所定の空隙において、蒸発したターゲット液体の凝縮が行われる。その結果、凝縮熱伝達により、ターゲット液体の冷却効果をより向上させることが可能となる。
好ましくは、ターゲット液体を収容する工程の後で且つ放射線源から放射線をターゲットに向けて照射する工程の前に、収容凹部内に不活性ガスを供給して、収容凹部内を加圧する工程を更に備える。このように、収容凹部内を加圧することで、ターゲット液体の沸点が高くなり、ターゲット液体の沸騰による気泡の発生を抑制することが可能となる。
本発明によれば、ターゲットの耐圧性の向上とターゲット液体の冷却効果の向上とを両立可能とし、ターゲット液体の沸騰を十分に抑制することが可能な放射性同位元素製造装置及び放射性同位元素の製造方法を提供することができる。
図1は、第1実施形態に係る放射性同位元素製造装置を示す断面図である。 図2は、図1のターゲット部分を拡大して示す断面図である。 図3は、第1実施形態に係る放射性同位元素製造装置が有するターゲットの一部を切断して示す前方斜視図である。 図4は、第1実施形態に係る放射性同位元素製造装置が有するターゲットの一部を切断して示す後方斜視図である。 図5は、第1実施形態に係る放射性同位元素製造装置が有するターゲットを示す背面図である。 図6は、図5のVI−VI線において切断した場合における、第1実施形態に係る放射性同位元素製造装置のターゲット部分を拡大して示す断面図である。 図7は、第2実施形態に係る放射性同位元素製造装置を示す断面図である。 図8は、図7のターゲット部分を拡大して示す断面図である。 図9は、第2実施形態に係る放射性同位元素製造装置が有するターゲットの一部を切断して示す前方斜視図である。 図10は、第2実施形態に係る放射性同位元素製造装置が有するターゲットの一部を切断して示す後方斜視図である。 図11は、第2実施形態に係る放射性同位元素製造装置が有するターゲットを示す背面図である。 図12は、第2実施形態に係る放射性同位元素製造装置が有する椀状部材の一部を切断して示す前方斜視図である。 図13は、第2実施形態に係る放射性同位元素製造装置が有する椀状部材を示す正面図である。
符号の説明
1…放射性同位元素製造装置、10…サイクロトロン、12…ターゲット装置、20…ターゲット、20a…薄肉殻状部、20b…環状支持部、40…収容凹部、42…嵌合凹部、48…底面、54a…凸曲面、58…頂部、60…凹部、78…椀状部材、78b…貫通孔(開口)、104…対応凹曲面、106…一時貯留凹部、D,D1,D2,D3…沿面距離、E,E1…一時貯留凹部の開口側の縁、E2…対応凹曲面の外縁、L…ターゲット液体、P,P1,P2,P3…点、S…仮想平面、X…照射軸。
本発明に係る放射性同位元素製造装置の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。また、説明中、「上」及び「下」なる語を使用することがあるが、これは図面の上方向及び下方向に対応したものである。
(1)第1実施形態
(1.1)放射性同位元素製造装置の構成
図1に示されるように、第1実施形態に係る放射性同位元素製造装置1は、サイクロトロン(放射線源)10と、ターゲット装置12とを備える。サイクロトロン10は、放射線(例えば、陽子線や重陽子線等の粒子線)を照射軸Xに沿って照射するものである。
ターゲット装置12は、マニホールド14を介して、放射線が導出されるサイクロトロン10の導出口10aに装着されている。ターゲット装置12は、第1ボディ部16と、第2ボディ部18と、ターゲット20と、第3ボディ部22とを備える。
第1ボディ部16は、開口部24a及び開口部24bを繋ぐと共に照射軸Xに沿って延びる通過孔24を有する円柱形状の部材である。第1ボディ部16は、例えばアルミ合金によって形成することができる。第1ボディ部16は、その基端部分に外向きのフランジ部26を有している。
第1ボディ部16の側壁には、照射軸Xと直交する軸Yに沿って延びると共に通過孔24と連通する一対の導入孔28及び導出孔30が設けられている。導入孔28及び導出孔30は、その先端部(通過孔24に向かう側の端部)が、通過孔24の開口部24a及び開口部24bに向かうようにY字形状に分岐されている。導入孔28からは、冷媒としてのHeガスが通過孔24内に供給される。導出孔30からは、導入孔28から通過孔24内に供給されたHeガスが排出される。
第1ボディ部16は、導入孔28がマニホールド14の導入孔14aと連通すると共に、導出孔30がマニホールド14の導出孔14bと連通するように、マニホールド14に装着されている。このとき、第1ボディ部16とマニホールド14との間には、第1ボディ部16とマニホールド14とによって挟持されたフォイル32が配置されている。そのため、第1ボディ部16の通過孔24とマニホールド14の通過孔14cとは、フォイル32によって隔てられている。
フォイル32は、放射線の通過を許容する一方、空気やHeガスといった流体の通過を遮蔽する。フォイル32は、例えばTi等の金属又は合金から形成された円形状の薄い箔であり、その厚さが10μm〜50μm程度となっている。
第2ボディ部18は、図2において詳しく示されるように、開口部34a及び開口部34bを繋ぐと共に照射軸Xに沿って延びる通過孔34を有する円柱形状の部材である。第2ボディ部18は、例えばアルミ合金によって形成することができる。第2ボディ部18は、通過孔34が第1ボディ部16の通過孔24と連通するように、第1ボディ部16に装着されている。
ターゲット20は、図2〜図4において詳しく示されるように、照射軸Xに略直交する先端面36及び基端面38を有し、外形が円柱形状を呈する部材である。ターゲット20は、例えばNbによって形成することができる。ターゲット20は、球殻状の薄肉殻状部20aと、薄肉殻状部20aの周りを囲むように薄肉殻状部20aを支持する環状支持部20bとを有している。そのため、ターゲット20においては、薄肉殻状部20aと環状支持部20bとで囲まれる空間によって、ターゲット液体(本実施形態においては、ターゲット水(18O))Lを収容する収容凹部40が先端面36側に構成されており、第3ボディ部22が嵌め込まれる嵌合凹部42が基端面38側に構成されている。
収容凹部40は、サイクロトロン10から照射された放射線を導入するための開口部44と、開口部44と繋がると共に断面が円形状を呈する内壁面46と、内壁面46と繋がると共に開口部44に対してサイクロトロン10よりも離れる側に向けて窪んだ球面状を呈する底面(凹曲面)48とを有する。
嵌合凹部42は、基端面38側(収容凹部40とは反対側)から収容凹部40に向けて窪んでいる。嵌合凹部42は、第3ボディ部22を導入するための開口部50と、開口部50と繋がると共に断面が円形状を呈する内壁面52と、内壁面52と繋がる底面54とを有する。この底面54は、開口部50に近づく方向(底面48が窪む方向と同じ方向)に向けて突出した球面状を呈する凸曲面54aと、凸曲面54aの周囲に拡がる平面54bとを含んでいる。
嵌合凹部42の凸曲面54aは、収容凹部40の底面48に肉薄している。すなわち、薄肉殻状部20aは、頂部58を有しており、収容凹部40の底面48をなしていると共に嵌合凹部42の凸曲面54aをなしている。
環状支持部20bは、薄肉殻状部20aと直接接続される第1部分20b、及び、第1部分20bの外側を更に取り囲む第2部分20bを含んでいる。この第1部分20bは、その一部が、収容凹部40の内壁面46をなしていると共に嵌合凹部42の平面54bをなしている(図2〜図4参照)。第1部分20bの一部をなしている平面54bには、サイクロトロン10から照射される放射線に向かう方向に窪んだ凹部60が複数(第1実施形態において4つ)設けられている(図4及び図5参照)。これらの凹部60は、それぞれが収容凹部40の内壁面46の一部を囲むように形成されており(図2及び図6参照)、照射軸X方向から見てそれぞれ略円弧状を呈している(図4及び図5参照)。これらの凹部60は、後述するガス導入孔70及び搬送孔72を避けるように形成されている。
ターゲット20の先端面36には、シール部材としてのOリング62を収容する環状の凹部64が設けられている。
ターゲット20の基端面38には、嵌合凹部42を挟んで一対の突出部66が突設されている。突出部66には、照射軸X方向に延びるフェラル収容孔68が穿設されている。ターゲット20には、収容凹部40内にHeガスを導入するためのガス導入孔70が、上方に位置するフェラル収容孔68から収容凹部40へと貫通するように延設されている。ターゲット20には、収容凹部40との間でターゲット液体Lの搬入及び搬出を行うための搬送孔72が、下方に位置するフェラル収容孔68から収容凹部40へと貫通するように延設されている。
ターゲット20は、収容凹部40が第2ボディ部18の通過孔34に向かうように、第2ボディ部18に装着されている。このとき、ターゲット20は、サイクロトロン10から照射される放射線の照射軸Xが収容凹部40の底面48における頂部58の直下に位置するように配置されている。従って、照射軸Xと収容凹部40の底面48との交差位置は、頂部58の直下となっている。
また、このとき、ターゲット20と第2ボディ部18との間には、ターゲット20と第2ボディ部18とによって挟持されたフォイル74が配置されている。そのため、ターゲット20の収容凹部40と第2ボディ部18の通過孔34とは、フォイル74によって隔てられている。
フォイル74は、放射線の通過を許容する一方、空気やHeガスといった流体の通過を遮蔽する。フォイル74は、例えばTi等の金属又は合金から形成された円形状の薄い箔であり、その厚さが10μm〜50μm程度となっている。
図1に戻って、第3ボディ部22は、外形が円柱形状をなす本体部76と、本体部76の先端部分に設けられた椀状部材78とを有する。第3ボディ部22は、例えばアルミ合金によって形成することができる。
本体部76は、照射軸Xに略直交する先端面80及び基端面82を有している。本体部76の先端面80には、基端面82側に向けて窪む凹部84が設けられており、凹部84の中央部分には、突出部86が突設されている。
本体部76には、基端面82側に照射軸Xに沿って延びる一対のノズル孔88,90が設けられている。下方に位置するノズル孔88には、冷却水を供給するための供給管92のノズル92aが嵌め込まれる。上方に位置するノズル孔90には、冷却水を回収するための回収管94のノズル94aが嵌め込まれる。
本体部76には、冷却水を案内するための案内孔96が、ノズル孔88から先端面80の突出部86へと貫通するように延設されている。案内孔96の先端部分(先端面80側の部分)は、第1実施形態においては、先端側に向かうにつれて拡径された漏斗状とされている(図1及び図2参照)。本体部76には、冷却水を案内するための案内孔98が、ノズル孔90から先端面80の凹部84へと貫通するように延設されている。
椀状部材78は、嵌合凹部42の凸曲面54aに対応する形状(球面状)を呈する底面100を有している。椀状部材78には、その先端部分に一対の切り欠き部102が設けられている。第3ボディ部22は、椀状部材78の先端がターゲット20の嵌合凹部42の平面54bと当接するように、ターゲット20の嵌合凹部42に嵌め込まれている。
(1.2)放射性同位元素の製造方法
続いて、上記の構成を有する放射性同位元素製造装置1を用いて放射性同位元素を製造する方法について説明する。
まず、供給管92から冷却水の供給を開始し、第3ボディ部22の案内孔96、嵌合凹部42の平面54bと椀状部材78の底面100との間の空間、嵌合凹部42の凹部60及び椀状部材78の切り欠き部102、第3ボディ部22の凹部84、第3ボディ部22の案内孔98並びに回収管94の順に、冷却水を循環させる(図2の矢印参照)。このとき、嵌合凹部42の平面54bに複数の凹部60が設けられているので、冷却水は、図6に示されるように、椀状部材78の先端を回り込むようにして凹部60内を循環することとなる。
次に、マニホールド14の導入孔14aから冷媒としてのHeガスの供給を開始し、第1ボディ部16の導入孔28、通過孔24(特にフォイル32,74に向けて)、導出孔30及びマニホールド14の導出孔14bの順に、Heガスを流動させる。
次に、収容凹部40内に所定の空間V(図2参照)を残すように、搬送孔72を通して、ターゲット液体Lを収容凹部40に供給する。このとき、放射線がターゲット20に直接照射されることを防ぐため、ターゲット液体Lの水面が第2ボディ部18の通過孔34の上端よりも高くなるようしている(図1及び図2参照)。放射線は第2ボディ部18の通過孔34を通過してターゲット20に導かれるので、これにより、放射線の照射領域A(図2参照)がターゲット液体Lに収まることとなる。
次に、ガス導入孔70を通して、収容凹部40内に高圧でHeガスを供給する。このように加圧することにより、ターゲット液体Lの沸騰による気泡の発生が抑制される。
この状態で、サイクロトロン10から放射線をターゲット20に向けて照射する。サイクロトロン10から照射された放射線は、照射軸Xに沿って、マニホールド14の通過孔14c、フォイル32、第1ボディ部16の通過孔24、第2ボディ部18の通過孔34及びフォイル74を順に通過して、ターゲット20の収容凹部40内に至る。そして、ターゲット20の収容凹部40内に収容されているターゲット液体Lと放射線との間において18O(p,n)18Fで表される核反応が行われることにより、一次生成物として18で表される放射性同位元素が生成される。生成された放射性同位元素を含むターゲット液体Lは、搬送孔72を逆流させて図示しないフィルタを通して回収される。
そして、回収された放射性同位体元素を用いて、PET検査の検査用薬剤としての18F−FDGが合成される。
(1.3)作用及び効果
以上のような第1実施形態においては、ターゲット20が、頂部58を有する薄肉殻状部20aと、薄肉殻状部20aを支持する環状支持部20bとによって構成されており、薄肉殻状部20aの一方が、開口部44に対してサイクロトロン10よりも離れる側に向けて窪んだ球面状を呈する底面48をなしている。そのため、収容凹部40において応力集中が起こり難くなり、収容凹部40の耐圧性が向上する。その結果、十分に収容凹部40内の圧力を高めることができるようになるので、ターゲット20の耐圧性の向上とターゲット液体Lの冷却効果の向上とを両立可能とし、ターゲット液体Lの沸騰を十分に抑制することが可能となっている。これにより、放射線とターゲット液体Lとの反応性が向上するようになると共により高いエネルギーで放射線をターゲット液体Lに照射することができるようになるので、放射性同位元素の収量が増大することとなる。
また、第1実施形態おいては、ターゲット20が、頂部58を有する薄肉殻状部20aと、薄肉殻状部20aを支持する環状支持部20bとによって構成されており、薄肉殻状部20aの一方が、開口部44に対してサイクロトロン10よりも離れる側に向けて窪んだ球面状を呈する底面48をなしている。そのため、収容凹部40の容積(ターゲット液体Lの体積と空間Vとの合計に相当する)を従来のターゲットにおける収容凹部の容積と同じとすると共にターゲット液体Lの使用量を従来と同量とした場合、従来と比較して収容凹部40の深さ(放射線の照射軸X方向における開口部44から頂部58までの直線距離)が深くなる。その結果、ターゲット液体Lが沸騰して気泡が発生した場合でも、従来と比較して放射線のエネルギーがターゲット液体Lによって減衰し易くなるので、ターゲット20がスパッタされることを抑制することが可能となっている。
また、第1実施形態においては、ターゲット20が、頂部58を有する薄肉殻状部20aと、薄肉殻状部20aを支持する環状支持部20bとによって構成されており、薄肉殻状部20aの一方が、開口部44に対してサイクロトロン10よりも離れる側に向けて窪んだ球面状を呈する底面48をなしている。そのため、冷却水とターゲット液体Lとの熱交換をより促進させることが可能となっている。
また、第1実施形態おいては、サイクロトロン10から照射される放射線の照射軸Xと収容凹部40の底面48との交差位置が頂部58の直下となるようにターゲット20が配置されている。収容凹部40に収容されているターゲット液体Lのうち下方に位置する部分の温度が上方に位置する部分の温度よりも低い傾向にあるので、このようにすることで、放射線がターゲット液体Lのうち温度の低い部分に照射されるようになる。その結果、ターゲット液体Lの局所的な温度上昇が抑えられ、ターゲット液体Lの沸騰をより十分に抑制することが可能となると思われる。
また、第1実施形態おいては、サイクロトロン10から照射される放射線の照射軸Xと収容凹部40の底面48との交差位置が頂部58の直下となるようにターゲット20が配置されている。放射線によって加熱されたターゲット液体Lは上方に移動する傾向にあるので、ターゲット液体Lにおいて対流が発生しやすくなる。その結果、ターゲット液体Lの局所的な温度上昇が抑えられ、ターゲット液体Lの沸騰を更に十分に抑制することが可能となっている。
また、第1実施形態においては、放射性同位元素を製造する際に、収容凹部40内に所定の空間Vを残すように、ターゲット液体Lを収容凹部40に供給している。そのため、ターゲット液体Lが沸騰した場合でも、当該空間Vにおいて、蒸発したターゲット液体Lの凝縮が行われる。その結果、凝縮熱伝達により、ターゲット液体Lの冷却効果をより向上させることが可能となる。
また、第1実施形態においては、環状支持部20bの第1部分20bの一部をなしている平面54bに、収容凹部40の内壁面46の一部を囲む凹部60が4つ設けられている。そのため、凹部60によって、環状支持部20bのうち凹部60と収容凹部40との間の部分が薄肉状となるので、冷却水がこの凹部60内を循環することで、冷却水とターゲット液体Lとの熱交換を更に促進させることができ、一層の冷却効果を得ることが可能となっている。
(2)第2実施形態
(2.1)放射性同位元素製造装置の構成
続いて、図7〜図13を参照して、第2実施形態に係る放射性同位元素製造装置2の構成について、第1実施形態に係る放射性同位元素製造装置1との相違点を中心に説明する。
ターゲット20は、図7〜図11に示されるように、薄肉殻状部20aと、薄肉殻状部20aの周りを囲むように薄肉殻状部20aを支持する環状支持部20bとを有している。そのため、ターゲット20においては、薄肉殻状部20aと環状支持部20bとで囲まれる空間によって、ターゲット液体Lを収容する収容凹部40が先端面36側に構成されており、第3ボディ部22が嵌め込まれる嵌合凹部42が基端面38側に構成されている。なお、第2実施形態においては、ターゲット20の基端面38に突出部66が設けられていない。
収容凹部40は、開口部44と、内壁面46と、底面(凹曲面)48とを有する。収容凹部40の外形(開口部44、内壁面46及び底面48全体としての外形)は、図9及び図10において詳しく示されるように、照射軸Xから見て鉛直方向に長い環状を呈している。具体的には、収容凹部40は、第2実施形態において、照射軸Xから見たときの外形がレーストラック形状を呈している。つまり、開口部44は、収容凹部40の外形を構成しており、内壁面46及び底面48は、照射軸Xから見たときに、この開口部44によって画成される領域内に存在している。
ここで、レーストラック形状とは、第1及び第2の円弧部と、第1及び第2の直線部とを有し、第1の円弧部の開口と第2の円弧部の開口とが向かい合うように第1及び第2の円弧部が配されており、第1の円弧部の一端と当該一端側にある第2の円弧部の一端とが第1の直線部によって接続され、第1の円弧部の他端と第2の円弧部の他端とが第2の直線部によって接続された形状をいう。開口部44及び内壁面46では、各円弧部の曲率が等しくなっている(図9及び図10参照)。なお、開口部44及び内壁面46は、照射軸Xから見て楕円形状等であってもよい。
底面48は、内壁面46と連続的に繋がっており、開口部44に対してサイクロトロン10(放射線が照射される側)よりも離れる側に向けて窪んだ曲面状を呈している。
収容凹部40の底面48と嵌合凹部42の凸曲面54aとは肉薄している。つまり、薄肉殻状部20aは、頂部58を有し、基端面38側に向けて突出している。
頂部58は、第2実施形態において、薄肉殻状部20aの鉛直方向における中央よりも上側に位置している。そのため、薄肉殻状部20a(収容凹部40の底面48)の鉛直方向における中央を通ると共に水平面に平行な仮想平面S(図8参照)よりも上側における収容凹部40の容積は、仮想平面Sよりも下側における収容凹部40の容積よりも大きくなっている。
環状支持部20bは、薄肉殻状部20aと直接接続される第1部分20b、及び、第1部分20bの外側を更に取り囲む第2部分20bを含んでいる。第1部分20bの一部をなしている平面54bには、サイクロトロン10から照射される放射線に向かう方向に窪んだ凹部60が複数(第2実施形態において2つ)設けられている(図9〜図11参照)。これらの凹部60は、それぞれが収容凹部40の内壁面46の一部(半周程度)を囲むように形成されており(図8及び図10参照)、照射軸X方向から見てそれぞれ略円弧状を呈している(図10及び図11参照)。
本体部76には、冷却水を案内するための案内孔96が、ノズル孔88から先端面80の突出部86へと貫通するように延設されている。案内孔96の先端部分(先端面80側の部分)は、第2実施形態においては、直管状とされている(図7、図8及び図12参照)。
椀状部材78は、図7、図8、図12及び図13に示されるように、嵌合凹部42の凸曲面54aに対応する形状を呈する対応凹曲面104を有している。第2実施形態において、椀状部材78の対応凹曲面104と嵌合凹部42の凸曲面54a(薄肉殻状部20aの凸曲面54a)との間隙(直線距離)Gは、第3ボディ部22がターゲット20の嵌合凹部42に嵌め込まれた状態で、1mm程度となるように設定されている(図8参照)。
また、椀状部材78には、対応凹曲面104側に開放された一時貯留凹部106が設けられている。一時貯留凹部106は、底面106aと、底面106aと繋がる側面106bとによって構成されている。側面106bの底面106aと反対側の端部は、対応凹曲面104と繋がっている。椀状部材78には、底面106aから椀状部材78の背面78aへと貫通する貫通孔78bが設けられている。貫通孔78bには、本体部76の案内孔96の先端部分が嵌め込まれている。そのため、案内孔96によって案内された冷却水は一時貯留凹部106に一時的に貯留される。
一時貯留凹部106は、図13に示されるように、照射軸Xから見て鉛直方向に長いレーストラック形状を呈している。一時貯留凹部106では、上側の円弧部の半径が下側の円弧部の半径よりも大きくなっている。
ここで、一時貯留凹部106の開口側の縁E上における任意の点Pと、一時貯留凹部106の開口側の縁E1の点Pにおける、照射軸Xから見たときの法線Nが、照射軸Xから見て対応凹曲面104の外縁E2と交差する点Qとを結ぶ、対応凹曲面104の表面に沿った距離を、点Pでの沿面距離Dとする。このとき、椀状部材78においては、一時貯留凹部106の開口側の縁E1上における実質的に全ての点での沿面距離が略同一となっている。
例えば、図12及び図13に示されるように、点P1での沿面距離D1、点P2での沿面距離D2及び点P3での沿面距離D3は、いずれも15.1mm±0.1mmである。なお、「実質的に全ての点」とは、一時貯留凹部106の開口側の縁E1の点における、照射軸Xから見たときの法線が、照射軸Xから見たときの対応凹曲面104の外縁E2のうち切り欠き部102によって構成される部分を通る場合には、その点を除く趣旨である。第2実施形態では、一時貯留凹部106の開口側の縁E1の一部である縁E1A,E1B上の点が除かれる。また、「略同一」とは、一時貯留凹部106の開口側の縁E1上における各点での沿面距離が±0.1mm程度の幅を有していても、これを許容する趣旨である。
(2.2)作用及び効果
以上のような第2実施形態に係る放射性同位元素製造装置2は、第1実施形態に係る放射性同位元素製造装置1と同様の効果を奏する。
また、第2実施形態おいては、仮想平面Sよりも上側における収容凹部40の容積は、仮想平面Sよりも下側における収容凹部40の容積よりも大きい。このように収容凹部40の上部の容積が大きいと、収容凹部40の上部(薄肉殻状部20aの上部)において冷却水との接触面積が増加するので、沸騰したターゲット液体が気体として存在しがちな収容凹部40の上部を極めて効率的に冷却することができるようになっている。また、このように収容凹部40の下部の容積が小さいと、高価なターゲット液体の使用量を抑えられるので、コストの低減を図ることができるようになっている。
また、第2実施形態においては、頂部58が、仮想平面Sよりも上側に位置している。そのため、収容凹部40の上部の容積がより大きくなっている。
また、第2実施形態においては、収容凹部40が、照射軸Xから見て鉛直方向に長い環状(レーストラック形状)を呈している。そのため、収容凹部40が照射軸Xから見て水平方向に長い環状を呈している場合と比較して、収容凹部40の両側部の容積が小さくなるので、高価なターゲット液体の使用量をより抑えることでできるようになっている。
また、第2実施形態においては、ターゲット液体Lを冷却するための冷却水を一時的に貯留する一時貯留凹部106が椀状部材78に設けられている。このように案内孔96によって案内された冷却水を一時貯留凹部106に一時的に貯留すると、案内孔96によって案内された冷却水は、一時貯留凹部106にて流速が遅くなった後に嵌合凹部42の凸曲面54a(薄肉殻状部20aの凸曲面54a)と椀状部材78の対応凹曲面104との間に流れ込むこととなるので、案内孔96によって案内された冷却水が嵌合凹部42の凸曲面54a全面に拡がりつつ流れる際に発生する圧力損失の低減を図ることが可能となる。そのため、嵌合凹部42の凸曲面54a上において冷却水の偏流が発生し難くなる。その結果、ターゲット20(薄肉殻状部20a)を介してターゲット液体Lの冷却を均一に行いやすくなっている。
また、第2実施形態においては、一時貯留凹部106の開口側の縁E1上における実質的に全ての点での沿面距離が略同一となっている。このようにすると、対応凹曲面104における冷却水の流路の長さが略同一となるので、案内孔96によって案内された冷却水が嵌合凹部42の凸曲面54a全面に拡がりつつ流れる際に発生する圧力損失をより一層低減することができるようになっている。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、収容凹部40が球面状を呈する底面48を有していたが、収容凹部40が開口部44に対してサイクロトロン10よりも離れる側に向けて窪んでいれば、球面状に限られず、他の形状の凹曲面とすることができる。
また、本実施形態では、サイクロトロン10から照射される放射線の照射軸Xと収容凹部40の底面48との交差位置が頂部58の直下となるようにターゲット20が配置されていたが、これに限られず、サイクロトロン10から照射される放射線の照射軸Xと収容凹部40の底面48との交差位置を頂部58の下側とすることができる。
また、本実施形態では、ターゲット20が、頂部58を有する薄肉殻状部20aと、薄肉殻状部20aを支持する環状支持部20bとによって構成されていたが、殻状でなくてもよく、例えば嵌合凹部42の凸曲面54aを平面状とする等、厚肉状とすることもできる。
また、本実施形態ではHeガスを収容凹部40に供給して収容凹部40内の圧力を高めていたが、Heガスに限られず他の不活性ガスを用いることもできる。
また、第2実施形態では頂部58が仮想平面Sよりも上側に位置していたが、仮想平面Sよりも上側における収容凹部40の容積が仮想平面Sよりも下側における収容凹部40の容積よりも大きさよりも大きければ、頂部58の位置はこれに限られない。
また、第2実施形態では一時貯留凹部106が椀状部材78に設けられていたが、一時貯留凹部106が椀状部材78に設けられていなくてもよい。
また、第2実施形態では一時貯留凹部106の開口側の縁E1上における実質的に全ての点での沿面距離が略同一となっていたが、対応凹曲面104がこの条件を満たす形状とされていなくてもよい。

Claims (12)

  1. ターゲット液体と放射線との核反応により放射性同位元素を製造するための放射性同位元素製造装置であって、
    放射線を照射する放射線源と、
    前記ターゲット液体を収容する収容凹部を有するターゲットとを備え、
    前記収容凹部は、前記放射線源から照射された放射線を導入するための開口と、頂部を有するように前記開口から離れる方向に向けて窪んだ凹曲面とを含んでおり、
    前記放射線源から照射される放射線の照射軸と前記凹曲面との交差位置が前記頂部よりも下側となるように、前記ターゲットが配置されていることを特徴とする放射性同位元素製造装置。
  2. 前記放射線源から照射される放射線の照射軸と前記凹曲面との交差位置が前記頂部の直下となるように、前記ターゲットが配置されていることを特徴とする請求項1に記載された放射性同位元素製造装置。
  3. 前記凹曲面は、球面状とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載された放射性同位元素製造装置。
  4. 前記ターゲットは、一方が前記凹曲面をなし、他方が凸曲面をなす薄肉殻状部と、前記薄肉殻状部の周りを囲むように前記薄肉殻状部を支持する環状支持部とを有し、
    前記収容凹部は、前記薄肉殻状部と環状支持部とで囲まれる空間によって構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載された放射性同位元素製造装置。
  5. 前記収容凹部は、前記開口と前記凹曲面とを繋ぐ側面を更に含んでおり、
    前記環状支持部には、前記収容凹部の前記側面の少なくとも一部を囲むように、前記放射線源から照射される放射線に向かう方向に窪んだ凹部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載された放射性同位元素製造装置。
  6. 前記凹曲面の鉛直方向における中央を通ると共に水平面に平行な仮想平面よりも上側における前記収容凹部の容積は、前記仮想平面よりも下側における前記収容凹部の容積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載された放射性同位元素製造装置。
  7. 前記頂部は、前記仮想平面よりも上側に位置していることを特徴とする請求項6に記載された放射性同位元素製造装置。
  8. 前記収容凹部は、前記放射線源から照射される放射線の照射軸から見たときの外形が鉛直方向に長い環状を呈していることを特徴とする請求項6又は7に記載された放射性同位元素製造装置。
  9. 前記ターゲットは、一方が前記凹曲面をなし、他方が凸曲面をなす薄肉殻状部を有しており、
    前記凸曲面に対応する形状を呈する対応凹曲面を有すると共に前記対応凹曲面が前記凸曲面と対向するように配置された椀状部材を更に備え、
    前記椀状部材には、前記対応凹曲面側に開放され、前記ターゲット液体を冷却するための冷却液を導入するための開口が底部に形成されると共に、前記開口からの冷却液を一時的に貯留する一時貯留凹部が設けられていることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載された放射性同位元素製造装置。
  10. 前記一時貯留凹部の開口側の縁上における任意の点Pと、前記一時貯留凹部の開口側の縁の当該点Pにおける、前記放射線源から照射される放射線の照射軸から見たときの法線が、前記放射線源から照射される放射線の照射軸から見て前記対応凹曲面の外縁と交差する点とを結ぶ、前記対応凹曲面の表面に沿った距離を、点Pでの沿面距離Dとしたときに、前記一時貯留凹部の開口側の縁上における実質的に全ての点での沿面距離が略同一であることを特徴とする請求項9に記載された放射性同位元素製造装置。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載された放射性同位元素製造装置を用意する工程と、
    前記ターゲットを冷却するための冷却液を循環させる工程と、
    前記頂部よりも上側で且つ前記収容凹部内に所定の空隙を残すように、前記収容凹部内に前記ターゲット液体を収容する工程と、
    前記照射軸と前記凹曲面との交差位置が前記頂部よりも下側となると共に、前記放射線源から照射される放射線の照射領域が前記ターゲット液体に収まるように、前記放射線源から放射線を前記ターゲットに向けて照射する工程とを備えることを特徴とする放射性同位元素の製造方法。
  12. 前記ターゲット液体を収容する工程の後で且つ前記放射線源から放射線を前記ターゲットに向けて照射する工程の前に、前記収容凹部内に不活性ガスを供給して、前記収容凹部内を加圧する工程を更に備えることを特徴とする請求項11に記載された放射性同位元素の製造方法。
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