JPWO2008143144A1 - 澱粉含有組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、澱粉粒の崩壊を抑制する方法、および澱粉粒の崩壊が抑制されてなる澱粉を澱粉含有組成物(澱粉製剤)として簡便かつ効率よく製造する方法を提供する。本発明の方法は、澱粉と水溶性ヘミセルロースの粉末混合物、特に澱粉:水溶性ヘミセルロース=99:1〜70:30(重量比)からなる粉末混合物を50℃以上100℃未満で相対湿度50%以上の条件で湿熱処理することによって実施することができる。

Description

本発明は、澱粉粒の崩壊を抑制する方法に関する。また本発明は、澱粉粒の崩壊が抑制されてなる澱粉を、澱粉含有組成物(澱粉製剤)として簡便かつ効率よく製造する方法に関する。
食品製造において、小麦粉等の澱粉類を主成分としたフラワーペースト等のフィリング材が、パンや菓子類に利用されている。通常、澱粉を多量の水の存在下で加熱すると、ある一定の温度域で周囲の水を吸収して膨潤し、急激に粘度が増加する。この様な現象を、「澱粉の糊化」という。澱粉粒は適切な膨潤の度合いで糊化すると高い粘性を有するため、増粘剤や保型剤として幅広く利用されている。しかしながら、天然(未改質)の澱粉の糊液は、糊化時やその後の攪拌によるせん断力、高温条件、または低pH条件などにより、澱粉粒が過剰に膨潤するため、崩壊し易くなる。澱粉粒が崩壊した糊液は、粘度が低下したり、また望ましくない食感が発現する等といった現象を起こしやすい。
この様な澱粉粒の過剰な膨潤または/および崩壊を防ぎ、粘度を維持することを目的として、澱粉分子中のグルコース鎖を化学反応によって架橋した、アジピン酸架橋澱粉やリン酸架橋澱粉が市販されている。或いは、上記架橋澱粉と同様の効果をもつ澱粉を調製するために、増粘多糖類を併用して澱粉を改質する試みも行われており、例えば、特許文献1ではキサンタンガムなどの増粘多糖類と澱粉を粉末混合した後、水を添加し15〜50%になるように水分含量を調整し、これを100〜200℃の条件で乾式加熱を行う方法が提案されている。
特開2005−54028号公報
しかし、特許文献1の技術では、澱粉の水分含量を15〜50%という特定の範囲に調整することが必要で、製造工程が煩雑であるとともに、100〜200℃の高温での作業が必要で危険を伴うという問題がある。また、従来の架橋澱粉を製造する場合には、化学薬品や未反応の薬品を洗浄するための大量の水が必要であり、製造コストや排水による環境汚染の問題がある。
そこで、本発明は、より簡便にしかも安価な製造コストで排水などの問題なく、澱粉粒の崩壊を抑制して粘度の急激な低下を防止するための方法を提供することを目的とする。また、本発明は、澱粉粒の崩壊による粘度の急激な低下が抑制されてなる澱粉含有組成物を製造するための方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討を重ねた結果、澱粉と水溶性ヘミセルロースの粉末混合物を50℃以上100℃未満で相対湿度50%以上の条件で湿熱処理することにより、化学的な処理を行なった架橋澱粉と同様に、澱粉粒の崩壊が抑制されてなる澱粉含有組成物が調製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、下記の実施態様を包含する。
(I)澱粉粒の崩壊が抑制されてなる澱粉含有組成物の製造方法
(I-1)澱粉と水溶性ヘミセルロースの粉末混合物を50℃以上100℃未満で相対湿度50%以上の条件で湿熱処理する工程を有する、澱粉含有組成物の製造方法。
(I-2)澱粉と水溶性ヘミセルロースの粉末混合物中の澱粉と水溶性ヘミセルロースの配合比が、澱粉:水溶性ヘミセルロース=99:1〜70:30(重量比)であることを特徴とする(I-1)に記載する製造方法。
(I-3)澱粉が、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、もち米澱粉、馬鈴薯澱粉、もち馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、およびサゴ澱粉からなる群から選択される少なくとも1種である、(I-1)または(I-2)に記載する製造方法。
(I-4)澱粉が、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、およびもち馬鈴薯澱粉からなる群から選択される少なくとも1種である、(I-1)または(I-2)に記載する製造方法。
(I-5)水溶性ヘミセルロースが、大豆由来の水溶性ヘミセルロースである、(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する製造方法。
(I-6)澱粉粒の崩壊が抑制されている澱粉含有組成物の製造方法であることを特徴とする、(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載する製造方法。
(II)澱粉粒の崩壊が抑制されてなる澱粉含有組成物
(II-1)(I-1)乃至(I-5)のいずれかの記載の方法によって製造された澱粉含有組成物。
(II-2)澱粉粒の崩壊が抑制されてなる(II-1)記載の澱粉含有組成物。
(II-3)(II-1)または(II-2)に記載する澱粉含有組成物を用いて製造された食品。
(III)澱粉粒の崩壊抑制方法
(III-1)(a)澱粉を水溶性ヘミセルロースと粉末混合する工程、および(b)得られた粉末混合物を50℃以上100℃未満で相対湿度50%以上の条件で湿熱処理する工程を有する、澱粉粒の崩壊抑制方法。
(III-2)澱粉と水溶性ヘミセルロースの粉末混合物中の澱粉と水溶性ヘミセルロースの配合比が、澱粉:水溶性ヘミセルロース=99:1〜70:30(重量比)であることを特徴とする(III-1)に記載する方法。
(III-3)澱粉が、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、もち米澱粉、馬鈴薯澱粉、もち馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、およびサゴ澱粉からなる群から選択される少なくとも1種である、(III-1)または(III-2)に記載する方法。
(III-4)澱粉が、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、およびもち馬鈴薯澱粉からなる群から選択される少なくとも1種である、(III-1)または(III-2)に記載する方法。
(III-5)水溶性ヘミセルロースが、大豆由来の水溶性ヘミセルロースである、(III-1)乃至(III-4)のいずれかに記載する方法。
本発明による方法によれば、澱粉と水溶性ヘミセルロースの粉末混合物、好ましくは澱粉と水溶性ヘミセルロースを、澱粉:水溶性ヘミセルロース=99:1〜70:30(重量比)の割合で含む粉末混合物を50℃以上100℃未満で相対湿度50%以上の条件で湿熱処理することによって、澱粉粒の崩壊が抑制されてなる澱粉を、澱粉含有組成物として簡便にかつ安全に取得することができる。また本発明の方法によれば、澱粉と水溶性ヘミセルロースの粉末混合物を湿熱処理する温度、相対湿度および処理時間を上記の範囲で適宜設定することによって、澱粉粒の崩壊の抑制を、簡便かつ安全に、希望する程度に調節することができる。斯くして得られる澱粉含有組成物は、澱粉製剤として、架橋澱粉と同様に、バッター、フラワーペースト、たれ、ソース、ドレッシング、およびヨーグルト(デイリープロダクト)などの食感改良に好適に使用することができる。
(I)澱粉粒の崩壊が抑制されてなる澱粉含有組成物の製造方法
本発明の製造方法は、澱粉と水溶性ヘミセルロースの粉末混合物を、50℃以上100℃未満で相対湿度50%以上の条件下で湿熱処理することによって実施することができ、斯くして、湿熱処理前の澱粉(または湿熱処理前の澱粉と水溶性ヘミセルロースの粉末混合物)と比べて、澱粉粒の崩壊が抑制されてなる性質を有する澱粉含有組成物を取得することができる。
本発明で使用する澱粉は、加熱等により変性が生じていない、未加熱かつ未変性の澱粉であり、この限りにおいて、一般に流通しているものを利用することができる。例えば、植物に由来する澱粉であり、具体的には、コーンスターチ(うるち種トウモロコシに由来する澱粉)、ワキシーコーンスターチ(もち種トウモロコシに由来する澱粉)、タピオカ澱粉、米澱粉(うるち米に由来する澱粉)、もち米澱粉(もち米に由来する澱粉)、馬鈴薯澱粉(うるち種の馬鈴薯に由来する澱粉)、もち馬鈴薯澱粉(もち種の馬鈴薯に由来する澱粉)、小麦澱粉、甘藷澱粉、およびサゴ澱粉などを挙げることができる。好ましくは馬鈴薯澱粉、もち馬鈴薯澱粉、ワキシーコーンスターチ、およびタピオカ澱粉であり、より好ましくは馬鈴薯澱粉、もち馬鈴薯澱粉、およびタピオカ澱粉であり、特に好ましくはもち馬鈴薯澱粉である。
本発明で利用できるもち馬鈴薯澱粉は、通常の馬鈴薯澱粉(うるち種の馬鈴薯の澱粉)がアミロースを20〜22%含有しているのに対して、アミロースを1%未満しか含有しないもち種の馬鈴薯の澱粉である。かかる澱粉は、例えばAVEBE社製のELIAN100(商品名)など、一般的に商業的に入手可能である。
水溶性ヘミセルロースは、植物の繊維質を構成する多糖類のうち、セルロース以外のものであり、セルロースと比べて水溶性が高い。具体的には、ラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、グルコース、ガラクツロン酸、グルクロン酸の1種若しくは2種以上を構成糖として含む水溶性の多糖類である。
本発明で使用する水溶性ヘミセルロースは、豆類由来、特に大豆、なかでも子葉由来のものが好ましい。本発明において、水溶性ヘミセルロースは、その分子量がいかなる範囲のものであっても使用可能であるが、好ましくは高分子量であり、平均分子量が数千〜数百万、具体的には5000〜100万であるものが好ましい。尚、この水溶性ヘミセルロースの平均分子量は、標準プルラン(昭和電工株式会社)を標準物質として0.1MのNaNO3溶液中の粘度を特定する極限粘度法で求めた値である。
水溶性ヘミセルロースは、ヘミセルロースを含む原料から水抽出するか、場合によっては酸、アルカリ条件下で加熱溶出させるか、または酵素により分解溶出させることができる。ここで原料としては、豆類、例えば大豆から通常油脂や蛋白質を除いた残渣を用いることができる。あるいは、豆腐、豆乳または分離大豆蛋白を製造するときに副生するオカラを利用することもできる。具体的には、まず、これらの原料を酸性乃至アルカリ性の高温水中で、好ましくは80℃以上130℃以下、より好ましくは100℃以上130℃以下にて加熱抽出し、水溶性画分を分画する。次いで、得られた水溶性画分をそのまま乾燥するか、または、例えば活性炭処理或いは樹脂吸着処理して低分子物質を除去した後に、アルコール沈殿処理をし、それを乾燥することによって、水溶性ヘミセルロースを得ることができる。
このような水溶性ヘミセルロースは、例えば大豆由来の水溶性ヘミセルロースとして、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のSM−1200(商品名)およびSM−900(商品名)、不二製油株式会社製のソヤファイブS−HR100(商品名)を挙げることができる。
本発明の方法において、澱粉と水溶性ヘミセルロースは、湿熱処理する前に、いずれも粉末の状態で混合されていればよい。その配合割合は、特に制限されないものの、通常、重量比として、澱粉:水溶性ヘミセルロース=99:1〜70:30、好ましくは95:5〜80:20、より好ましくは90:10〜80:20の範囲が例示できる。水溶性ヘミセルロースの配合割合が少なすぎると十分な崩壊抑制効果を得ることができず、また、多すぎると澱粉の配合割合が低下して、単位組成物あたりの澱粉としての粘度発現または/および食感改良効果が低下する。
本発明の方法は、上記範囲の配合割合で粉体混合された澱粉と水溶性ヘミセルロースの混合物を、湿熱処理することによって行なわれる。湿熱処理は、澱粉と水溶性ヘミセルロースの粉末混合物を、相対湿度50%以上100%以下の湿度条件で、50℃以上100℃未満の温度で加熱処理することによって実施される。好ましい湿度条件は、相対湿度80%以上であり、より好ましくは相対湿度90〜95%である。また好ましい温度条件は、80℃以上100℃未満であり、より好ましくは85〜90℃である。
かかる湿熱処理は、簡便には恒温恒湿槽を用いて行うことができる。湿熱処理時間は、処理を行う澱粉と水溶性ヘミセルロースの混合比率にもよるが、通常3〜24時間を例示することができる。かかる処理時間は、処理温度や湿度に応じて増減可能である。例えば、処理温度が80℃で相対湿度が80%の場合は処理時間を5時間程度とし、処理温度が85℃で相対湿度が95%の場合は処理時間を3時間程度にする等、適宜調節することができる。
斯くして製造された澱粉含有組成物は、未処理の澱粉または未処理の澱粉と水溶性ヘミセルロールの粉末混合物と比較して、澱粉粒の崩壊が抑制されているという性質を備えている。
かかる澱粉含有組成物の性質は、後述する実施例に記載する評価方法を用いて、当該澱粉含有組成物を水に分散させて温度を変化させた場合の粘度挙動と、未処理の澱粉または未処理の澱粉と水溶性ヘミセルロールの粉末混合物のそれとを対比することによって、評価することができる。
また、本発明にかかる澱粉含有組成物には、本発明の効果を妨げない範囲において、必要に応じて他の添加物を添加することができる。具体的には、調味料、香料、酸味料、色素、保存料、糊料、pH調整剤、糖類、甘味料が例示できる。斯くして調製される澱粉含有組成物は、食品の品質改良剤または食感改良剤として各種の食品の製造に使用することができる。
本発明の澱粉含有組成物を用いて製造できる食品としては、例えば、バッター;ソース、たれ類;スープ;ドレッシング;ヨーグルト、サワークリームなどデイリープロダクト;うどん、そば、スパゲティ、マカロニ、中華麺などの生麺、半生麺、冷凍麺、乾燥麺(フライ麺、ノンフライ麺)などの麺類;パン類;ケーキやクッキーなどの焼き菓子類;フラワーペーストなどのペースト類;団子、練りあん、ようかんなどの和菓子類;餃子の皮、春巻きの皮、中華饅の皮などの生地素材;ハム、ソーセージ、焼き豚などの魚畜肉製品;フライものの衣用バッターなどを例示することができる。
(II)澱粉の崩壊の抑制方法
本発明の抑制方法は、(a)澱粉を水溶性ヘミセルロースと粉末混合する工程、および(b)得られた粉末混合物を50℃以上100℃未満で相対湿度50%以上の条件で湿熱処理する工程を有することを特徴とする。
(a)の工程で使用する澱粉および水溶性ヘミセルロースは、前述の通りであり、互いに粉末状態のものを混合して使用される。ちなみに、もち馬鈴薯澱粉であるAVEBE社製のELIAN100(商品名)、大豆由来の水溶性ヘミセルロースである三栄源エフ・エフ・アイ(株)製のSM−1200(商品名)およびSM−900(商品名)、不二製油(株)製のソヤファイブS−HR100(商品名)はいずれも粉末である。
粉末状の澱粉および水溶性ヘミセルロースの混合は、通常の方法で行うことができ、例えば、ダブルコーンミキサーなど転倒式ミキサーやナウタミキサーなど回転式スクリューミキサーを使用し、均一になるまで混合する方法を挙げることができる。
斯くして調製された粉末混合物は、(b)の50℃以上100℃未満で相対湿度50%以上100%以下の条件で湿熱処理する工程に供せられる。当該(b)工程は、(I)で説明する方法に従って実施することができる。
斯くして澱粉は、未処理の澱粉または未処理の澱粉と水溶性ヘミセルロールの粉末混合物と比較して、澱粉粒の崩壊が抑制されている性質を備えるように改質される。かかる方法によって改質された澱粉は、澱粉含有組成物の状態で、食品の品質改良剤または食感改良剤として各種の食品に製造に使用することができる。
以下に、本発明を、実施例を用いて説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
実験例
各種の条件で澱粉含有組成物を調製し(実施例1〜19、比較例1〜13、参考例1)、調製した各種澱粉含有組成物について、水での膨潤、糊化、老化、粘度の変化から、澱粉粒の膨潤抑制性と崩壊抑制性を評価した。なお、各表に示す配合比率はすべて重量比を意味する。
(1)澱粉含有組成物の調製
澱粉と水溶性ヘミセルロースを、表1記載の配合割合で粉体混合した後、恒温恒湿槽を用いて、表1に記載するそれぞれの条件下で湿熱処理を行った(実施例1〜19)。また比較例として、澱粉と水溶性ヘミセルロースを、表1記載の配合割合で粉体混合した後、湿熱処理をしないか、または50℃未満または50%未満の相対湿度条件で湿熱処理を行った(比較例1〜10)。さらに比較例として、澱粉に水溶性ヘミセルロースを配合しないか(比較例11および12)、または澱粉と水溶性ヘミセルロースをそれぞれ別個に湿熱処理した後に混合して澱粉含有組成物を調製した(比較例13)。また、参考例として、ワキシーコーンスターチをアジピン酸で架橋し、さらにアセチル化した、市販の加工澱粉である、Colflo67(商品名)を用いた(参考例1)。
尚、各処方で用いた原材料は、下記の通りである。また、湿熱処理にはEspec社製の恒温恒湿槽(型番:SH−641)を用いた。
・もち馬鈴薯澱粉:ELIAN100(AVEBE製)
・馬鈴薯澱粉:精製乾燥殺菌馬澱(松谷化学工業製)
・ワキシーコーンスターチ:ワキシースターチW(三和澱粉工業製)
・タピオカ澱粉:タイ国産
・水溶性ヘミセルロース:ソヤファイブS−HR100(不二製油製)
・ワキシーコーンスターチ加工澱粉:Colflo67(日本NSC製)
Figure 2008143144
(2)澱粉粒膨潤性と崩壊抑制性の評価
<評価方法>
表1記載の処方により得られた各種試料(実施例、比較例及び参考例)に、最終濃度が固形物換算で6重量%となるように水に添加した(全量25g)。なお、以後、澱粉、澱粉含有組成物および水溶性ヘミセルロースの濃度については、特に記載のない場合は、固形物換算の重量%とする。これを160rpmで撹拌しながら(最初の10秒のみ960rpm)、表2に記載する条件で連続的に加熱および冷却し、粘度変化を測定した。なお、粘度の測定は、New Port Scientific社製RVA(Rapid Visco Analyzer)を用いて行った。当該RVAは、プログラムされた温度と攪拌子の回転数における粘度を連続して測定できる装置である。粘度はRVA unit(以後、RVUと表記する)という単位で示され、SI単位系の粘度の単位であるパスカル・秒(Pa.s)の値を0.012で除した値とほぼ等しいとされる。なお、以後、特に記載のない限り「RVA測定」とは、表2に記載した温度プログラムで測定したものとする。
Figure 2008143144
一般に天然の澱粉(未処理澱粉)は多量の水の存在下で加熱すると、ある一定の温度域で、水を吸収して膨潤し始める。かかる様子は、RVAにおいて粘度カーブの立ち上がりとして現われる。その後、加熱することによって澱粉粒が膨潤し、粘度はさらに上昇していき、次いで澱粉粒が十分に膨潤すると粘度カーブはピークに達する。その後、糊化した澱粉粒は崩壊を開始し、粘度カーブは下降を示す。当該図1は、天然澱粉として4.8重量%の天然のもち馬鈴薯澱粉(未処理澱粉;比較例11)をRVA測定した粘度挙動(粘度カーブ)であり、天然澱粉の澱粉粒の膨潤および崩壊の様子を表わしている。澱粉粒の膨潤により粘度カーブが急に立ち上がり、やがて十分に膨潤してピークを示すものの、ただちに澱粉粒は崩壊を開始し、粘度カーブは下降を示すことがわかる。また、図2には、RVA測定前(左図)と測定後(右図)における当該もち馬鈴薯澱粉(未処理澱粉;比較例11)の顕微鏡写真の画像を示す。RVA測定前には、はっきりと確認できる澱粉粒が、RVA測定による加熱と攪拌工程によって崩壊していることがわかる。
一方、天然の澱粉(未処理澱粉)を化学的に処理した架橋澱粉は、その架橋の程度が強くなるに従い、澱粉粒の膨潤や崩壊が抑制される為に、粘度カーブの立ち上がりが遅くなったり、粘度カーブがピークを示さなくなって右肩上がりになったり、全体的に粘度が低下するなどの様子を呈することが知られている。架橋澱粉の一例として、ワキシーコーン澱粉をアジピン酸で架橋し、アセチル化したColflo67(日本NSC製;参考例1)を4.8重量%でRVA測定した結果を図3に示す。
本発明では、天然の澱粉および架橋澱粉に関するこの様なRVA測定時の粘度カーブの変化に基づいて、上記で調製した各種試料の粘度カーブから、これらの試料が澱粉粒の膨潤や崩壊が抑制されているかどうかについて評価を行った。
<評価1>
図4に、もち馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを80:20の比率で混合した後、80℃−相対湿度(RH)80%で湿熱処理した試料(実施例1:実線、および実施例7:点線)の粘度カーブを示す。また、図5および6に、それぞれ上記実施例1および7のRVA測定前(左図)とRVA測定後(右図)の顕微鏡写真の画像を示した。未処理(比較例1:太実線)の試料と比較して、湿熱処理5時間(実施例7:点線)及び湿熱処理24時間(実施例1:実線)の試料では、粘度の立ち上がりが遅くなっており、このことから澱粉粒の膨潤が抑制されていることがわかる。また、湿熱処理5時間の試料(実施例7:点線)では粘度カーブのピークによって表わされる粘度低下が、未処理試料(比較例1:太実線)よりも小さく、また湿熱処理24時間の試料(実施例1:実線)では粘度カーブが低下しないことから、澱粉粒の崩壊が抑制されていることが予想される。
未処理試料(比較例1)のRVA測定前(左図)とRVA測定後(右図)の顕微鏡写真の画像を図7に示す。かかる画像から、未処理試料(比較例1)では、RVA測定前には、はっきりと確認できていた澱粉粒が、RVA測定による加熱と攪拌工程によって崩壊しているが、湿熱処理5時間(実施例7:図6)及び湿熱処理24時間(実施例1:図5)の試料では、RVA測定後においても澱粉粒が残っており、澱粉粒の崩壊が抑制されていることが確認された。これらの粘度挙動から澱粉粒の膨潤抑制性と崩壊抑制性を評価した結果を表3に示す。
Figure 2008143144
尚、膨潤抑制性及び崩壊抑制性に関する評価は、比較例1を基準として下記の基準に従って行った。
◎:膨潤抑制または崩壊抑制に非常に効果有り
○:膨潤抑制または崩壊抑制に効果有り
△:膨潤抑制または崩壊抑制に僅かに効果有り
×:膨潤抑制または崩壊抑制に効果なし。
<評価2>
図8に、馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを80:20の比率で混合した後、80℃−RH80%で湿熱処理した試料の粘度カーブを示す。未処理(比較例8:太実線)試料の粘度カーブに比べて、湿熱処理5時間(実施例14:点線)及び湿熱処理24時間(実施例15:実線)の試料の粘度カーブは全体的に低下しており、このことから、湿熱処理によって得られた試料は、澱粉粒の膨潤が抑制されていることがわかる。評価を表4に示す。
Figure 2008143144
尚、膨潤抑制に関する評価は、比較例8を基準として前述する方法に従って行った。
<評価3>
図9にワキシーコーンスターチと水溶性ヘミセルロースを80:20の比率で混合した後、80℃−RH80%で湿熱処理した試料の粘度カーブを示す。未処理試料(比較例9:太実線)と比較して、湿熱処理5時間の試料(実施例16:点線)及び湿熱処理24時間の試料(実施例17:実線)は、ピークによって表わされる粘度低下が小さくなっており、このことから澱粉粒の崩壊が抑制されていることがわかる。評価を表5に示す。
Figure 2008143144
尚、崩壊抑制に関する評価は、比較例9を基準として前述する方法に従って行った。
<評価4>
図10にタピオカ澱粉と水溶性ヘミセルロースを80:20の比率で混合した後、80℃−RH80%で湿熱処理した試料の粘度カーブを示す。未処理試料(比較例10:太実線)の粘度カーブと比較して、湿熱処理5時間の試料(実施例18:点線)及び湿熱処理24時間の試料(実施例19:実線)では、ピークの粘度が低くなっている。また、粘度カーブのピークによって表わされる粘度低下が小さくなっており、澱粉粒の崩壊が抑制されていることがわかった。評価を表6に示す。
Figure 2008143144
尚、崩壊抑制の評価は、比較例10を基準として前述する方法に従って行った。
<評価5>
図11にもち馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを80:20の比率で混合した後、80℃−RH80%、80℃−RH50%、および80℃−RH30%の条件でそれぞれ24時間湿熱処理した試料の粘度カーブを示した(実施例1および8,比較例6)。未処理試料(比較例1:太実線)と比較して、80℃−RH50%湿熱処理の試料(実施例8:点線)、および80℃−RH80%湿熱処理の試料(実施例1:実線)は、湿熱処理時の湿度が上がるにつれて、粘度カーブの立ち上がりが遅くなっており、澱粉粒の膨潤が抑制されていることがわかる。一方、80℃−RH30%湿熱処理の試料(比較例6:一点破線(−・−・−))の粘度カーブは、未処理試料(比較例1:太実線)とほぼ同様の立ち上がりを示し、澱粉粒の膨潤が抑制されている様子は見られなかった。
また、未処理試料(比較例1:太実線)と比較して、80℃−RH50%湿熱処理の試料(実施例8:点線)の粘度カーブは、ピークによって表わされる粘度低下度が小さく、また80℃−RH80%湿熱処理の試料(実施例1:実線)は粘度低下を示さないことから、澱粉粒の崩壊が抑制されていることがわかる。一方、80℃−RH30%湿熱処理の試料(比較例6:一点破線)の粘度カーブは、ピークによって表わされる粘度低下が、未処理試料よりも大きく、澱粉粒の崩壊がむしろ促進されていることがわかった。評価を表7に示す。
Figure 2008143144
尚、膨潤抑制および崩壊抑制の評価は、比較例1を基準として前述する方法に従って行った。
<評価6>
図12にもち馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを80:20の比率で混合後、RH80%で80℃、60℃、40℃において、24時間湿熱処理した試料の経時的な粘度カーブを示した(実施例1および9、比較例7)。
未処理試料(比較例1:太実線)の粘度カーブと比較して、RH80%での湿熱処理温度が60℃(実施例9:点線)および80℃(実施例1:実線)と上がるにつれて、粘度の立ち上がりが遅くなっており、これから澱粉粒の膨潤が抑制されていることがわかる。一方、RH80%−40℃湿熱処理試料(比較例7:一点破線)の粘度カーブは、未処理試料(比較例1:太実線)とほぼ同様の立ち上がりを示し、これから澱粉粒の膨潤は抑制されていないと判断された。また、未処理試料(比較例1:太実線)の粘度カーブと比較して、RH80%−60℃湿熱処理の試料(実施例9:点線)はピークによって表わされる粘度低下が小さく、RH80%−80℃湿熱処理の試料(実施例1:実線)は粘度低下を示さないことから、澱粉粒の崩壊が抑制されていることがわかった。一方、RH80%−40℃湿熱処理の試料(比較例7:一点破線)は、ピークによって表わされる粘度低下度が未処理試料(比較例1)とほぼ同等であり、これから澱粉粒の崩壊は抑制されていないと判断された。評価を表8に示す。
Figure 2008143144
尚、膨潤抑制および崩壊抑制の評価は、比較例1を基準として前述する方法に従って行った。
<評価7>
図13に、表9に示した処理で調製した試料(実施例1、比較例1および11〜13)の粘度カーブを示した。
Figure 2008143144
なお、粘度測定は、実施例1(実線)および比較例1(一点破線)および13(二点破線(−・・−・・−))については、濃度が6重量%(澱粉4.8重量%、水溶性ヘミセルロース1.2重量%)となるように、比較例11(太実線)および12(点線)については濃度が4.8重量%となるように、水に添加して、その他の条件は前述のRVAの測定方法に準じて評価を行った。
図13に示すように、澱粉と水溶性ヘミセルロースを粉体混合後、湿熱処理した試料(実施例1:実線)は、他の試料と比較して、粘度カーブの立ち上がりが最も遅く、澱粉粒の膨潤が他の組み合わせより最も抑制されていることがわかった。また実施例1以外の試料はピークを示し、その後経時的に粘度低下を示すのに対して、実施例1の試料はピークを示さず、粘度低下も示さなかった。これから、実施例1の試料は、澱粉粒の崩壊も最も抑制されていることがわかった。比較例11を基準として評価した結果を表10に示す。
Figure 2008143144
<評価8>
表11に示す条件で処理した実施例1〜6、および比較例1の試料の最終粘度(RVU)を調べ、これを表11に示した。この結果、12時間までは処理時間が長くなるに従って最終粘度は低下したが、実施例4〜6に示すように、処理時間が12時間以上になると、粘度は殆ど変化しなかった。
Figure 2008143144
また、図14にこれらの各試料の粘度カーブを示す(実施例1:点線、実施例2:太実線、実施例3:一点破線、実施例4:二点破線、比較例1:実線)。
図14に示すように、未処理(比較例1:実線)の試料は、粘度の立ち上がりが早く、ピークを示して、その後粘度が低下するのに対して、実施例1〜4及び参考例では粘度の立ち上がりが遅く、ピークを示さず、このことから澱粉粒の膨潤および崩壊がいずれも抑制されていることがわかった。また、この結果から、湿熱処理する温度、相対湿度、処理時間をコントロールすることにより澱粉粒の膨潤および崩壊をコントロールすることが可能であることがわかる。これらの評価を表12に示す。
Figure 2008143144
尚、膨潤抑制および崩壊抑制の評価は、比較例1を基準として前述する方法に従って行った。
<評価9>
図15にもち馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを99:1の比率で混合した後、85℃、相対湿度95%で24時間湿熱処理した試料(実施例10:実線)の粘度カーブを示し、水溶性ヘミセルロースを混合していない未処理のもち馬鈴薯(澱粉単体;比較例11:点線)および、もち馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを99:1の比率で混合した未処理のもち馬鈴薯澱粉(比較例2:太実線)の粘度カーブと比較した。RVAでの粘度測定は澱粉濃度が4.8重量%になるように調整し、その他の条件は前述のRVAの測定方法に準じて評価を行った。
その結果、澱粉単体(比較例11:点線)と比較して、24時間湿熱処理した試料(実施例10:実線)は粘度の立ち上がりが遅く、更には、ピークを示さず、澱粉粒の膨潤および崩壊のいずれもが抑制されていることが判明した。なお、水溶性ヘミセルロースを混合した未処理試料(比較例2:太実線)と澱粉単体(比較例11:点線)は、ほぼ同様の粘度カーブを示した。評価を表13に示す。
Figure 2008143144
尚、膨潤抑制および崩壊抑制の評価は、比較例11を基準として前述する方法に従って行った。
<評価10>
図16にもち馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを95:5の比率で混合した後、85℃、相対湿度95%で24時間湿熱処理した試料(実施例11:実線)の粘度カーブを示し、水溶性ヘミセルロースを混合していない未処理のもち馬鈴薯(澱粉単体;比較例11:点線)および、もち馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを95:5の比率で混合した未処理のもち馬鈴薯澱粉(比較例3:太実線)の粘度カーブと比較した。RVAでの粘度測定は澱粉濃度が4.8重量%になるように調整し、その他の条件は前述のRVAの測定方法に準じて評価を行った。
その結果、澱粉単体(比較例11:点線)と比較して、24時間湿熱処理した試料(実施例11:実線)は粘度の立ち上がりが遅く、更には、ピークを示さず、澱粉粒の膨潤および崩壊のいずれもが抑制されていることが判明した。なお、水溶性ヘミセルロースを混合した未処理試料(比較例3:太実線)は、澱粉単体(比較例11:点線)と比較して、粘度立ち上がりが遅くピークによって表わされる粘度低下が小さく、澱粉に水溶性ヘミセルロースを混合することで若干、澱粉の膨潤および崩壊が抑制されていた。しかし、実施例11と比較すると抑制の度合いは不十分であった。評価を表14に示す。
Figure 2008143144
尚、膨潤抑制および崩壊抑制の評価は、比較例11を基準として前述する方法に従って行った。
<評価11>
図17にもち馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを90:10の比率で混合し、85℃、相対湿度95%で24時間湿熱処理した試料(実施例12:実線)の粘度カーブを示し、水溶性ヘミセルロースを混合していない未処理のもち馬鈴薯(澱粉単体;比較例11:点線)および、もち馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを90:10の比率で混合した未処理のもち馬鈴薯澱粉(比較例4:太実線)の粘度カーブと比較した。RVAでの粘度測定は澱粉濃度が4.8重量%になるように調整し、その他の条件は前述のRVAの測定方法に準じて評価を行った。
その結果、澱粉単体(比較例11:点線)と比較して、24時間湿熱処理した試料(実施例12:実線)は粘度の立ち上がりが遅く、更には、ピークを示さず、澱粉粒の膨潤および崩壊のいずれもが抑制されていることが判明した。なお、水溶性ヘミセルロースを混合した未処理試料(比較例4:太実線)は、澱粉単体(比較例11:点線)と比較して、粘度立ち上がりが遅くピークによって表わされる粘度の低下が小さく、澱粉に水溶性ヘミセルロースを併用することで若干、澱粉の膨潤および崩壊が抑制されていた。しかし、実施例11と比較すると抑制の度合いは不十分であった。評価を表15に示す。
Figure 2008143144
尚、膨潤抑制および崩壊抑制の評価は、比較例11を基準として前述する方法に従って行った。
<評価12>
図18にもち馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを70:30の比率で混合した後、85℃、相対湿度95%で24時間湿熱処理した試料(実施例13:実線)の粘度カーブを示し、水溶性ヘミセルロースを混合していない未処理のもち馬鈴薯(澱粉単体;比較例11:点線)および、もち馬鈴薯澱粉と水溶性ヘミセルロースを70:30の比率で混合した未処理のもち馬鈴薯澱粉(比較例5:太実線)の粘度カーブと比較した。RVAでの粘度測定は澱粉濃度が4.8重量%になるように調整し、その他の条件は前述のRVAの測定方法に準じて評価を行った。
その結果、澱粉単体(比較例11:点線)と比較して、24時間湿熱処理した試料(実施例13:実線)は、粘度の立ち上がりが遅く、更には、ピークを示さず、澱粉粒の膨潤および崩壊のいずれもが抑制されていることが判明した。なお、水溶性ヘミセルロースを混合した未処理試料(比較例5:太実線)は、澱粉単体(比較例11:点線)と比較して、粘度立ち上がりが遅くピークによって表わされる粘度低下が小さく、澱粉に水溶性ヘミセルロースを併用することで若干、澱粉の膨潤および崩壊が抑制されていた。しかし、実施例11と比較すると抑制の度合いは不十分であった。評価を表16に示す。
Figure 2008143144
尚、膨潤抑制および崩壊抑制の評価は、比較例11を基準として前述する方法に従って行った。
以上のような各評価(評価1〜12)により、澱粉を水溶性ヘミセルロースと粉体混合して、これを50℃以上100℃未満、好ましくは80℃以上100℃未満の温度条件で、50%以上、好ましくは80%以上の相対湿度条件で湿熱処理することによって、澱粉単品(未処理または湿熱処理)または澱粉と水溶性ヘミセルロースの粉末混合物(未処理)に比して、澱粉の膨潤または/および崩壊が抑制されることが判明した。澱粉の中でも、特にもち馬鈴薯澱粉(評価1:実施例1と比較例1)は、他の澱粉〔馬鈴薯澱粉(評価2:実施例15と比較例8)、ワキシーコーンスターチ(評価3:実施例17と比較例9)、タピオカ澱粉(評価4:実施例18と比較例10)〕と比較して、未処理と湿熱処理後のRVAでの粘度カーブの変化が著しく、良好に澱粉粒の膨潤抑制効果および崩壊抑制効果が得られることがわかった。
また、実施例10〜13の結果から、澱粉と水溶性ヘミセルロースの粉末混合物は、その配合割合が99:1〜70:30(重量比)の範囲で本発明の効果が十分に得られることが確認された。一方、比較例2〜5に示すように、かかる配合割合であっても、湿熱処理を行わなければ、本発明の効果が得られないことが確認された。
以下、本発明で得られた澱粉含有組成物を食品に添加し、その効果を示す。処方中の「※」は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示し、同じく「*」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の製品であることを示す。
<試作例>
実施例1及び比較例1、比較例11、比較例12の試料を用い、表17の試作例1〜4に示す配合のフルーツソースを調製した。
Figure 2008143144
<調製方法>
・水に砂糖、澱粉含有組成物を添加し、攪拌しながら加熱する。
・90℃で10分間加熱後、りんご果汁を添加する。
・20℃に冷却し、50%クエン酸溶液を用いてpHを3.6に調整する。
・パウチに充填した後、85℃で20分殺菌する。
<評価>
室温で保存し、翌日フルーツソースの粘度および食感を評価をしたところ、表18のようになった。なお、粘度はBL型B型粘度計(TOKIMEC製)を使用し、20℃で回転数30rpm、1分後の値とした。
Figure 2008143144
この結果からわかるように、澱粉含有組成物として実施例1の試料を使用してフルーツソースを調製することによって、湿熱処理を行なっていない比較例1や水溶性ヘミセルロースを添加していない比較例11、比較例12の試料と比較して、粘度低下が小さく、ボディー感の有るフルーツソースを調製することが出来た。
<処方例1>
表19にカレーパン用フィリングの処方を示す。澱粉含有組成物としては実施例1よりも澱粉粒の膨潤抑制効果の高い実施例2の澱粉含有組成物を使用した。
Figure 2008143144
<調製方法>
・水に上記材料を添加し、90℃で10分間加熱攪拌する。
・水で全量を補正する。
・容器に充填する。
<処方例2>
表20にフラワーペーストの処方を示す。フラワーペーストにおいては膨潤抑制効果と崩壊抑制効果の強い澱粉製剤が好まれる傾向があるため、実施例2よりも更に膨潤抑制効果と崩壊抑制効果の高い実施例4の澱粉含有組成物を使用した。
Figure 2008143144
<調製方法>
・香料以外の材料を40℃のお湯に溶解する。
・ホモジナイザーで1分間乳化する。
・沸騰状態で3分間加熱攪拌する。
・フレーバーを添加し、水で全量を補正する。
・容器に充填し、冷水中で冷却する。
<処方例3>
表21にサツマイモの天ぷらに使用するバッターの処方例を示す。天ぷらの食感改良(サクサク感)のために、澱粉粒の膨潤が崩壊しにくい実施例4の澱粉製剤を使用した。
Figure 2008143144
<調製方法>
・サツマイモを1cmの厚さに切る。
・氷水に上記材料を添加し、バッターを調製する。
・サツマイモをバッターに浸けてバッターでコーティングした後、175℃で3分間油調する。
本発明は、各種の食品の力学特性または/および食感を改良するために用いられる澱粉含有組成物について、澱粉粒の崩壊を抑制して、未処理の澱粉に比して安定した粘度を示す改質澱粉を取得するために有用な方法を提供するものである。
天然のもち馬鈴薯澱粉(比較例11)のRVA測定における粘度挙動(縦軸左)を示す図である。RVA測定時の温度変化(縦軸右)を破線(−−−)で示す(以下、図3〜4、図8〜18において同じ)。 天然のもち馬鈴薯澱粉(比較例11)について、RVA測定前(左図)と測定後(右図)の澱粉粒の形状を示す顕微鏡写真の画像を示す。対物レンズ×10(以下、図5〜7において同じ)。 ワキシーコーンスターチ加工澱粉(参考例1)のRVA測定における粘度挙動を示す図である。 実施例1(実線)、実施例7(点線(・・・・)、および比較例1(太実線)で得られた試料のRVA測定における粘度挙動を示す。 実施例1の試料について、RVA測定前(左図)と測定後(右図)の澱粉粒の形状を示す顕微鏡写真の画像を示す。 実施例7の試料について、RVA測定前(左図)と測定後(右図)の澱粉粒の顕微鏡写真を示す。 比較例1の試料について、RVA測定前(左図)と測定後(右図)の澱粉粒の顕微鏡写真を示す。 実施例15(実線)、実施例14(点線)、および比較例8(太実線)で得られた試料のRVA測定における粘度挙動を示す。 実施例17(実線)、実施例16(点線)、および比較例9(太実線)で得られた試料のRVA測定における粘度挙動を示す。 実施例19(実線)、実施例18(点線)、および比較例10(太実線)で得られた試料のRVA測定における粘度挙動を示す。 実施例1(実線)、実施例8(点線)、比較例1(太実線)、比較例6(一点破線(−・−))で得られた試料のRVA測定における粘度挙動を示す。 実施例1(実線)、実施例9(点線)、比較例1(太実線)、および比較例7(一点破線)で得られた試料のRVA測定における粘度挙動を示す。 実施例1(実線)、比較例1(一点破線)、比較例11(太実線)および比較例12(点線)、および比較例13(二点破線(−・・−))で得られた試料のRVA測定における粘度挙動を示す。 実施例1(点線)、2(太実線)、3(一点破線)および4(二点破線)、ならびに比較例1(実線)で得られた試料のRVA測定における粘度挙動を示す。 実施例10(実線)、比較例2(太実線)、および比較例11(点線)で得られた試料のRVA測定における粘度挙動を示す。 実施例11(実線)、比較例3(太実線)、および比較例11(点線)で得られた試料のRVA測定における粘度挙動を示す。 実施例12(実線)、比較例4(太実線)、および比較例11(点線)で得られた試料のRVA測定における粘度挙動を示す。 実施例13(実線)、比較例5(太実線)、および比較例11(点線)で得られた試料のRVA測定における粘度挙動を示す。

Claims (11)

  1. 澱粉と水溶性ヘミセルロースの粉末混合物を50℃以上100℃未満で相対湿度50%以上の条件で湿熱処理する工程を有する、澱粉含有組成物の製造方法。
  2. 澱粉と水溶性ヘミセルロースの粉末混合物中の澱粉と水溶性ヘミセルロースの配合比が、澱粉:水溶性ヘミセルロース=99:1〜70:30(重量比)であることを特徴とする請求項1に記載する製造方法。
  3. 澱粉が、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、もち米澱粉、馬鈴薯澱粉、もち馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、およびサゴ澱粉からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載する製造方法。
  4. 水溶性ヘミセルロースが、大豆由来の水溶性ヘミセルロースである、請求項1に記載する製造方法。
  5. 澱粉粒の崩壊が抑制されている澱粉含有組成物の製造方法であることを特徴とする、請求項1に記載する製造方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載する方法によって製造された澱粉含有組成物。
  7. 請求項6に記載する澱粉含有組成物を用いて製造された食品。
  8. (a)澱粉を水溶性ヘミセルロースと粉末混合する工程、および(b)得られた粉末混合物を50℃以上100℃未満で相対湿度50%以上の条件で湿熱処理する工程を有する、澱粉粒の崩壊抑制方法。
  9. 澱粉と水溶性ヘミセルロースの粉末混合物中の澱粉と水溶性ヘミセルロースの配合比が、澱粉:水溶性ヘミセルロース=99:1〜70:30(重量比)であることを特徴とする請求項8に記載する方法。
  10. 澱粉が、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、もち米澱粉、馬鈴薯澱粉、もち馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、およびサゴ澱粉からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項8に記載する方法。
  11. 水溶性ヘミセルロースが、大豆由来の水溶性ヘミセルロースである、請求項8に記載する方法。
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