JPWO2008132976A1 - 顕微鏡装置 - Google Patents

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Abstract

回折格子8により発生した回折光は、第2対物レンズ9を通り、反射ミラー205で偏向されて第1対物レンズ10により、標本11の表面に縞模様の照明光を形成する。これにより、標本11から発生した蛍光は、第1対物レンズ10、反射ミラー205、第2対物レンズ9を通り、回折格子8に、標本11の像を結像する。回折格子8を光学系から取り外し、反射ミラー205の代わりにダイクロイックミラーを配置すれば、標本11からの蛍光は、ダイクロイックミラーを透過して結像レンズ52により、撮像装置53の撮像面に、標本11の像を結像する。これにより、通常の蛍光顕微鏡と切り換えて使用することが可能な、回折光を利用した顕微鏡装置を提供することができる。

Description

本発明は、顕微鏡装置に関するものである。
生物標本などの被観察物を超解像観察するための手法に、照明光を空間変調する手法があり、特開平11−242189号公報(特許文献1)、米国再発行特許第38307号公報(特許文献2)、W.Lukosz,"Optical systems with resolving powers exceeding the clasical limit.II",Journal of the Optical Society of America,Vol.37,PP.932,1967(非特許文献1)、W.Lukosz and M.Marchand,Opt. Acta. 10,241,1963(非特許文献2)等に記載されている。
これらの手法では、空間変調された照明光で被観察物の構造の空間周波数を変調し、解像限界を超える高い空間周波数の情報を顕微鏡光学系の結像に寄与させる。但し、超解像画像を観察するためには変調された被観察物の像(変調像)を復調する必要がある。復調の方法は大別して2種類あり、光学的な復調(非特許文献1、2参照)と、演算による復調(特許文献1、2参照)とがある。なお、光学的な復調は、回折格子などの空間変調素子を用いて変調像を再変調することによって実現する。
特開平11−242189号公報 米国再発行特許発明第38307号明細書 W.Lukosz,"Optical systems with resolving powers exceeding the clasical limit.II",Journal of the Optical Society of America,Vol.37,PP.932,1967 W.Lukosz and M.Marchand,Opt. Acta. 10,241,1963
しかし、演算による復調は複雑な演算処理を要するので時間がかかり、被観察物をリアルタイム観察することが難しい。一方、光学的な復調は回折格子などの空間変調素子を用いるので時間はかからないが、その復調精度は空間変調素子の形状精度や配置精度などに依存するので、良好な超解像画像を得ることが難しい。
因みに、非特許文献2に記載の復調方法(光学的な復調)では、変調に関する光路と復調に関する光路とを平行にし、変調と復調とに共通の回折格子の異なる部分を用いることで配置精度の問題改善を図っているが、変調に関わる光学系の瞳と復調に関わる光学系の瞳とを共役にすることができないため、観察視野が極端に狭いという欠点がある。
また、被観察物を顕微鏡間で再配置することなく、超解像観察と通常の簡便な蛍光観察の双方を行いたいという要望もある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、通常の蛍光顕微鏡と切り換えて使用することが可能な、超解像顕微鏡装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための第1の手段は、照射光を受光して、回折光を形成する空間変調素子と、
前記回折光を試料面の同一位置で干渉させて干渉縞を形成し、前記干渉縞によって変調を受けた前記試料面からの光を前記空間変調素子面に結像させる対物光学系と、
撮像手段と、
前記空間変調素子面で再変調された光の像を前記撮像手段の撮像面に結像させるリレー光学系と、
を有する顕微鏡装置であって、
前記対物光学系中には、光分離手段と反射部材とが、択一的に光路に挿脱可能に配置されており、前記光分離手段が光路に挿入されたときに前記試料面からの光が向かう方向と、前記反射部材が光路に挿入されたときに前記試料面からの光が向かう方向とが、異なる方向とされていることを特徴とする顕微鏡装置である。
前記課題を解決するための第2の手段は、照射光を受光して、回折光を形成する空間変調素子と、前記回折光を試料面の同一位置で干渉させて干渉縞を形成し、前記干渉縞によって変調を受けた前記試料面からの光を前記空聞変調素子面に結像させる対物光学系と、
撮像手段と、
前記空間変調素子面で再変調された光の像を前記撮像手段の撮像面に結像させるリレー光学系と、
を有することを特徴とする顕微鏡装置であって、
前記空問変調素子は、光路に挿脱可能に配置され、
前記対物光学系中には、光分離手段と反射部材とが、択一的に前記光路に挿脱可能に配置さており、前記光分離手段が前記光路に挿入されたときには、前記空問変調素子は前記光路から取り除かれ、前記反射部材が前記光路に挿入されたときには、前記空間変調素子は前記光路に挿入されていることを特徴とする顕微鏡装置である。
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段又は第2の手段であって、前記反射部材が光路に挿入されたときには、前記試料面からの光は前記空間変調素子面に結像し、前記光分離手段が光路に挿入されたときには、前記リレー光学系とは別のリレー光学系を介して、前記試料面から発生した光による試料面の像を、前記撮像手段とは別の撮像手段の撮像面に結像するようにされていることを特徴とするものである。
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第1の手段から第3の手段のいずれかであって、前記反射部材は、厚さが1.5mmより厚い反射ミラーであることを特徴とするものである。
前記課題を解決するための第5の手段は、前記第1の手段から第3の手段のいずれかであって、前記反射部材は、反射プリズムであることを特徴とするものである。
前記課題を解決するための第6の手段は、照射光を受光して、回折光を形成する空間変調素子と、
前記回折光を試料面の同一位置で干渉させて干渉縞を形成し、前記干渉縞によって変調を受けた前記試料面からの光を前記空問変調素子面に結像させる対物光学系と、
撮像装置と、
前記空間変調素子面で再変調された光の像を前記撮像装置の撮像面に結像させるリレー光学系と、
を有する顕微鏡装置であって、
前記空間変調素子は挿脱可能に配置されていることを特徴とする顕微鏡装置である。
本発明によれば、通常の蛍光顕微鏡と切り換えて使用することが可能な、超解像顕微鏡装置を提供することができる。
本発明の実施の形態の1例である顕微鏡装置の光学系の概要を示す図である。 本発明の実施の形態の1例である顕微鏡装置の光学系の概要を示す図である。 照明光/結像光分離手段の例の概要を示す図である。 顕微鏡装置を空間変調された照明光を使用した超解像用顕微鏡として使用する場合に用いるブロックを示す図である。 ミラーの代わりに反射プリズムを配置したブロックを示す図である。 制御・演算装置の制御に関する動作フローチャートである。 制御・演算装置の演算に関する動作フローチャートである。 復調像の画像データを示す図である。 3つの復調像の画像データ波数空間上で合成し、1つの合成画像データを得る様子を示す図である。
符号の説明
1…光源、2…コレクタレンズ、3…レンズ、4…励起フィルタ、5…ダイクロイックミラー、6…バリアフィルタ、7…レンズ、7…レンズ、8…回折格子、9…第2対物レンズ、10…第1対物レンズ、11…標本、12…レンズ、21…瞳、22…標本11の共役面、23…回折格子8の像、24…再変調像の拡大像、25…撮像装置、31…光源像、32…瞳面、40…アクチュエータ、41…回転ステージ、42…演算装置、43…画像表示装置、51…回転ステージ、52…結像レンズ、53…撮像装置、54…標本の表面の像、201…励起フィルタ、202…ダイクロイックミラー、203…バリアフィルタ、204…ブロック、205…反射ミラー、206…ブロック、LS1…照明光学系、LS2…観察光学系、LS21…対物光学系、LS22…リレー光学系
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1、図2は、本発明の実施の形態の1例である顕微鏡装置の光学系の概要を示す図である。図1には、この顕微鏡装置を、空間変調された照明光を利用した超解像顕微鏡として使用している場合の光線が示されている。
図1に示すとおり、本顕微鏡装置には、回転ステージ51に配置された光源1、コレクタレンズ2、レンズ3、励起フィルタ4、ダイクロイックミラー5、レンズ7、回折格子8、第2対物レンズ9、反射ミラー205、第1対物レンズ10、蛍光色素で標識された標本(生物標本など)11、バリアフィルタ6、レンズ12、撮像装置25(CCDカメラなど)、制御・演算装置42(回路やコンピュータなど)、画像表示装置43、アクチュエータ40、回転ステージ41が配置される。又、蛍光顕微鏡として使用する場合に使用される結像レンズ52と撮像装置53が配置されている。
このうち、光源1、コレクタレンズ2、レンズ3、励起フィルタ4、ダイクロイックミラー5、レンズ7、回折格子8、第2対物レンズ9、反射ミラー205、第1対物レンズ10が照明光学系LS1を構成しており、第1対物レンズ10、反射ミラー205、第2対物レンズ9、回折格子8、レンズ7、ダイクロイックミラー5、バリアフィルタ6、レンズ12が観察光学系LS2を構成している。また、第1対物レンズ10、反射ミラー205と第2対物レンズ9とが対物光学系LS21を構成し、レンズ7とレンズ12とがリレー光学系LS22を構成している。照明光学系LS1と観察光学系LS2とは、第1対物レンズ10からダイクロイックミラー5までの光路を共有している。
照明光学系LS1の光源1は、光軸から所定距離dだけ偏心した位置に配置されている。光源1からの光は、コレクタレンズ2において平行光に変換され、レンズ3により瞳共役面に光源像31を形成する。その光源像31からの光は、励起フィルタ4によって波長選択されたのちダイクロイックミラー5によって偏向され、照明光学系LS1と観察光学系LS2との共通光路へ入り、レンズ7により標本11の共役面22上に集光する。この光は、その共役面22に配置された回折格子8によって、そのまま直進する0次光の他に、0次光と光軸に関して対称な方向に1次光を生じる。それぞれの光束は第2対物レンズ9へ入射し、平行光に変換された後、反射ミラー205によって90°偏向され、第1対物レンズ10を介して標本11上に2光束干渉縞を形成する。(このとき、第1対物レンズ10の後側焦点面に光源像32が形成される。)。これによって標本11は、空間変調された照明光で照明(構造化照明)される。なお、図1において21は、瞳である。
ここで、回折格子8は、例えば、1次元の周期構造をもつ位相型又は振幅型の回折格子である。特に、振幅型の回折格子は波長特性が良いため、光源1に白色光源を使用できるので好ましい。光源1としては、白色光源の代わりに単一波長の光源を用いてもよいし、レーザ光源からの光を光ファイバで導き、その端面に形成される二次光源を光源1として用いてもよい。
また、構造化照明の輝度分布(回折格子8の像23の輝度分布)を正弦波状にするために、回折格子8で生じる次数2以上の余分な回折成分を除去することが望ましい。その際には、回折格子8よりも後段の適当な箇所(例えば第1対物レンズ10の瞳面)で除去するとよい。或いは、回折格子8の濃度分布を予め正弦波状にしておけば、余分な回折成分の発生を抑え、光量の損失を抑えることができる。
本実施の形態では、回折格子8により生じる回折光のうち、0次光(回折しないで直進する光)D0と、1次光D1が、対物レンズの光軸に対称となるように、予め光源1を偏心させてある。また、光源1の偏心量dは、回折格子8のピッチとコレクタレンズ2、レンズ3、レンズ7の合成焦点距離から計算で求めることができる。
回折格子のピッチをPg、光源の波長をλ、コレクタレンズ2、レンズ3、レンズ7の合成焦点距離をf22とすれば、光源の偏心量dは、
d=f22×λ/(2×Pg) … (1)
となる。
さて、D0とD1は、第1対物レンズ10の瞳面32にそれぞれ集光する。この集光点は、第1対物レンズ10の瞳径のなるべく端(光軸から離れた位置)に設定すると、超解像の効果が高いので望ましい。その場合、回折格子8による照明光の回折光のうち、0次光と1次光以外の光は、第1対物レンズ10の有効径内には入射できないのでその後の系に影響しない。瞳面32にそれぞれ集光したD0とD1は、それぞれ平行光束となって第1対物レンズ10を出射し、標本11上に2光束干渉縞を形成する。
これにより、構造化照明された光を励起光として標本11上では蛍光が発生する。このときに第1対物レンズ10側から見た標本11の構造は、構造化照明により変調されている。変調された構造には、モアレ縞が生じている。このモアレ縞は、標本11が有する微細構造と構造化照明のパターンとが成すモアレ縞であり、標本11の微細構造が、構造化照明の空間周波数の分だけ低い空間周波数帯域に変換されている。よって、解像限界を超える高い空間周波数の構造の光までもが、第1対物レンズ10によって捉えられることになる。
第1対物レンズ10によって捉えられた蛍光は、第1対物レンズ10、反射ミラー205及び第2対物レンズ9からなる対物光学系LS21により、共役面22上に標本11の変調像を形成する。その変調像は、その共役面22に配置された回折格子8によって再変調される。このようにして生じた再変調像では、空間周波数を変化させた標本11の構造が、元の空間周波数に戻される。この再変調像に、標本11の復調像が含まれている。
但し、この再変調像には、復調像にとって不要な回折成分が含まれている。不要な回折成分とは、標本11から射出された0次回折光に対し回折格子8で生じた±1次回折成分、標本11から射出された−1次回折光に対する0次回折成分、標本11から射出された+1次回折光に対する0次回折成分である。これらの不要な回折成分を再変調像から除去するためには、回折格子8を1周期分若しくはN周期分(Nは自然数)動かして平均化すればよい。
再変調像からの蛍光は、レンズ7を介してダイクロイックミラー5を透過した後、観察光学系LS2の単独光路へ入り、バリアフィルタ6を透過したのち、レンズ12を介して再変調像の拡大像24を形成する。つまり、回折格子8で再変調された再変調像は、レンズ7及びレンズ12からなるリレー光学系LS22によって、拡大像24へとリレーされる。この拡大像24は、撮像装置25によって撮像され、再変調像の画像データが生成される。なお、撮像装置25で撮像する場合、回折格子8を1周期若しくはN周期(Nは自然数)動かしている間、再変調像を蓄積することによって平均化すれば、復調像の画像データを得ることができる。
この画像データは、標本11を構造化照明によって超解像観察するための情報を含む。その画像データは、制御・演算装置42によって取り込まれ、演算が施されてから、画像表示装置43へと送出される。
以上、本顕微鏡装置は、標本11の共役面22から標本11までの光路を照明光学系LS1と観察光学系LS2とで完全に共通光路にすると共に、共役面22に回折格子8を配置している。本顕微鏡装置ではこの回折格子8により、標本11の微細構造の変調を図る。そして、変調された標本11の微細構造は、この位置に配置された回折格子8により、自動的に再変調される。
なお、回折格子8は、アクチュエータ40によって格子線に直交する方向Dbへ移動可能である。この移動により、構造化照明の位相が変化する。制御・演算装置42がアクチュエータ40及び撮像装置25を制御し、1フレーム分の画像データを蓄積している間にその位相を1周期分若しくはN周期分(Nは自然数)だけ変化させることで、その画像データから、構造化照明のパターンと、再変調時に生じた不要な回折成分とを消去する。
あるいは、撮像装置25の撮像素子としてCCDなど電荷蓄積型の撮像素子を用い、構造化照明の位相が1周期分若しくはN周期分(Nは自然数)だけ変化するのに必要な時間を蓄積時間とすることで、構造化照明のパターンと、再変調時に生じた不要な回折成分を消去してもよい。
あるいは、撮像装置25の撮像素子としてNMOS、CMOSなど電荷蓄積型ではない撮像素子を用い、更に各画素の出力にローパスフィルター、もしくは、積分回路を接続しておくことで、構造化照明のパターンと、再変調時に生じた不要な回折成分を消去してもよい。その際には、接続するローパスフィルター、もしくは、積分回路の時定数として構造化照明の位相が1周期分若しくはN周期分(Nは自然数)だけ変化するのに必要な時間以上とする。
また、回折格子8は、回転ステージ41によってアクチュエータ40と共に光軸の周りを回転可能である。この回転により、構造化照明の方向が変化する。制御・演算装置42が回転ステージ41及び撮像装置25を制御し、構造化照明の方向を複数方向に変化させる度に画像データを取得すれば、複数方向に亘り超解像観察するための情報を得ることができる。これにより、標本11の二次元の超解像観察が可能となる。
また、以上の動作に必要なプログラムは、例えばCD−ROMなどの記録媒体やインターネットを介して制御・演算装置42に予めインストールされている。
ここで、回折格子8を回転ステージ41によって光軸の周りを回転させる際、光源1を偏心させる方向も、光軸に対して回転させる必要があるが、その手段の例は、回転ステージ51によって行われ、詳細は、前述の、特願2006−334211号に記載されている。
なお、本実施の形態では、1次元の構造周期を持つ回折格子8と、その回折格子8を1方向(格子線に直交する方向)に移動させるアクチュエータ40とを使用したが、2次元の周期構造を持つ回折格子と、その回折格子を2方向(格子線に直交する方向)に移動させるアクチュエータとを使用すれば、2方向に亘る超解像画像の情報を略同時に取得することができるので、さらなる高速化を図ることができる。
さらに、上述した各実施形態の顕微鏡装置は、リレーされた再変調像(拡大像24)を撮像装置25で検出したが、拡大像24を接眼レンズを介して肉眼で観察できるように変形されてもよい。
また、上述した各実施形態の顕微鏡装置は、空間変調素子として回折格子を使用したが、入射光束に対し同様の作用をする別の空間変調素子を使用してもよい。例えば、回折格子8の代わりに透過型液晶表示素子などの空間変調素子を用いれば、構造化照明の位相変化及び方向変化を電気的に行うことができ、アクチュエータや回転ステージを用いずに構成し、さらなる高速化を図ることができる。
図2には、この顕微鏡装置を、通常の蛍光顕微鏡として使用する場合の光線が示されている。なお、以下の図において、前出の図に示された構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付して、その説明を省略することがある。図1と図2を比較すると、図2においては、反射部材である反射ミラー205が光路から取り外され、その代わりに、照明光の波長を選択する励起フィルタ201、照明光/結像光分離手段であるダイクロイックミラー202、及びバリアフィルタを203が1つのブロック204に納められて光路に挿入されている。又、回折格子8は光路から取り外されている。
よって、光源1から放出された照明光は、回折格子8があった位置までは、図1に示したのと同じ光路をたどるが、回折格子8の影響を受けることなくそのまま進み、第2対物レンズ9を透過し、さらに励起フィルタ201を透過し、ダイクロイックミラー202で反射されて第1対物レンズ10により、標本11面をケーラー照明する。
照明光により標本11の表面から発生した蛍光は、第1対物レンズ10を通り、ダイクロイックミラー202を透過し、さらにバリアフィルタ203を透過した後、結像レンズ52により、標本11の表面の像54を、撮像装置53の撮像面に結像する。すなわち、通常の蛍光顕微鏡として使用することができる。
図1及び図2に示したように、反射部材である反射ミラー205と照明光/結像光分離手段であるダイクロイックミラー202との入れ替え、及び回折格子8の光路よりの挿脱のみの操作により、回折光を利用した超解像顕微鏡装置、通常の蛍光顕微鏡として切り換えて使用することができる。
図3に、照明光/結像光分離手段の例の概要を示す。この照明光/結像光分離手段は、照明光の波長を選択する励起フィルタ201、ダイクロイックミラー202、バリアフィルタ203が1つのブロック204に収められ、ブロック204は不図示のターレットにより、選択されて光路に挿入される。
図4は、この顕微鏡装置を空間変調された照明光を使用した超解像顕微鏡として使用する場合に用いるブロック206を示す。励起フィルタとバリアフィルタはなく、ダイクロイックミラーの代わりに反射ミラー205を収めている。このブロック206を光路に挿入すると、構造化照明光は100%反射して標本を照明し、標本からの変調された蛍光もまた100%反射して、照明装置の方へ進む(通常の蛍光顕微鏡の観察部へは進まない)。そして、前述のように、空間変調素子によって再変調され、撮像装置により時間積分データを画像取得されて超解像画像を得る。
したがって、ブロック204を光路に挿入すれば、標本の蛍光を通常の蛍光顕微鏡の観察部へ導くことができ、ブロック206に切り換えれば、空間変調素子8によって再変調された画像を撮像装置25へ導くことができる。
このような顕微鏡装置において、反射ミラー205を、ダイクロイックミラー202と同じ形状とし、蒸着膜の仕様をダイクロイックミラーから反射ミラーに変更すれば、基板ガラスやホールド金物を共通化してコストダウンできるという効果がある。しかし以下に示す考察により、反射ミラー205はダイクロイックミラー202よりも厚くする方が望ましいことがわかった。
通常の顕微鏡では、ダイクロイックミラー202の形状は厚さ1mm前後、外径が25mm×35mm前後である。その理由はスペースを節約して、広視野観察をするためであるが、外径に比して厚みが薄いため、特に長径方向が撓みやすい。ダイクロイックミラーが撓んだ場合、反射光路については、ダイクロイックミラーの反射面のみの影響を受けるため、入射する光束が反射面の長径方向と短径方向で与えられる光学パワーが異なり、反射後の結像性能に非点収差が生じてしまう。一方透過光路については、ダイクロイックミラーの反射面と裏面の双方を透過するため、両面がそろって撓んでいれば、結像性能にほとんど影響がない。そして通常は、照明光は高性能な結像性能を要求されないから、撓んだダイクロイックミラーによって非点収差が生じても問題にならない。
しかしながら、本顕微鏡装置の場合は、照明光学系で縞パターンを投影しているため、高い結像性能が要求される上、標本からの結像光も反射ミラーで反射するから、撓みによる結像性能の劣化は避けなければならない。そのため、本実施の形態では、ダイクロイックミラーの基板を厚くしてたわまないようにした。
反射ミラー205は、空間変調された照明光を使用した超解像顕微鏡用として使用される。この場合には、上述ように、照明光学系で縞パターンを投影しているため、高い結像性能が要求される上、標本からの結像光は反射ミラー205で反射するから、撓みによる結像性能の劣化は避けなければならない。この理由により、反射ミラー205の厚さは、通常のダイクロイックミラー202の厚さより厚い、1.5mm超えとすることが好ましい。又は、反射ミラーの代わりに反射プリズムを使用することが好ましい。
図5には、ミラーの代わりに反射プリズムを配置したブロックを示すものである。図5(a)は斜面に蒸着をしていない、全反射プリズムの例、図5(b)は斜面に反射膜を蒸着し、光束はプリズム内部に入らない構成の例である。図5(a)に示すものの方が、反射率を高くできるが、プリズム入射面と射出面での反射光がノイズとなる場合があるので、図5(b)に示す構成がより好ましい。
以下、図1に示された、制御・演算装置42の制御に関する動作を説明する。図6は、制御・演算装置42の制御に関する動作フローチャートである。図6に示すとおり、制御・演算装置42は、再変調像の画像データを取得するに当たり、撮像装置25の露光開始(ステップS11)から露光終了(ステップS13)までの期間に、構造化照明の位相を1周期分だけ変化させる(ステップS12)。
このようにして取得された画像データは、構造化照明の位相変化中における再変調像の時間積分であり、構造化照明の輝度分布は正弦波状なので、この画像データからは、構造化照明のパターンは消去される。また、この画像データからは、再変調時に生じた不要な回折成分も消去される。よって、この画像データは、復調像を表す。なお、これらの消去には、これ以外にも、上述したとおり何通りかの方法が適用可能である。
さらに、制御・演算装置42は、構造化照明の方向を変化させてから(ステップS15)、再びステップS11〜S13の処理を行い、構造化照明のパターンの消去された別の復調像の画像データを取得する。
そして、以上のステップS11〜S13における復調像の画像データの取得処理は、構造化照明の方向が予め決められた全方向に設定されるまで(ステップS14がYESとなるまで)繰り返され、構造化照明のパターンの消去された復調像の画像データが、設定された方向の数だけ取得される。
例えば、制御・演算装置42は、ステップS11〜S13の処理を、構造化照明の方向が0°,120°,240°の3方向に設定されるまで繰り返し、構造化照明のパターンの消去された3つの復調像の画像データI、I、Iを取得する。これらの復調像の画像データI、I、Iの間では、超解像の方向が120°ずつ異なる。
図7は、制御・演算装置42の演算に関する動作フローチャートである。ここでは、超解像の方向が120°ずつ異なる3つの復調像の画像データI、I、Iを取得した場合の演算を説明する。
先ず、制御・演算装置42は、3つの復調像の画像データI、I、Iの各々をフーリエ変換し、波数空間で表現された3つの復調像の画像データIk1、Ik2、Ik3を得る(ステップS21)。これら復調像の画像データIk1、Ik2、Ik3を図8(A),(B),(C)に示した。
図8(A),(B),(C)において符号Ik+1、Ik−1は、変調された状態で(±1次回折光として)対物光学系LS21によって伝達された成分(±1次変調成分)を示し、符号Ik0は、変調されない状態で(0次回折光として)対物光学系LS21によって伝達された成分(0次変調成分)を示す。各々の円内は、MTF(Modulation Transfer Function)が0でない領域を示す。また、符号Dbは、超解像の方向(構造化照明の方向)を示し、符号Kは、構造化照明の空間周波数を示す。
続いて、制御・演算装置42は、3つの復調像の画像データIk1、Ik2、Ik3を、図9に示すとおり波数空間上で合成し、1つの合成画像データIを得る(ステップS22)。この演算は、単純な加算でもよいが、MTFを考慮してデコンボリューションを施す処理であることが望ましい。デコンボリューション処理としては、例えばウィナーフィルタを利用した手法があるが、このとき、Iは、周波数fの関数として以下のように計算される。
Figure 2008132976
ただし、jは回折格子8の方向(0°、120°、240°)、MTF(f)は、回折格子の各方向における復調後の実効MTFであり、対物光学系のNTF(f)を用いて以下の(3)式で表される。ただし、G、Gはそれぞれ回折格子の0次、1次回折効率、fは回鉄格子による変調周波数である。また、MTF (f)の*は、このMTFが複素数であることを示す。
Figure 2008132976
kj(f)は空間周波数fにおけるj番目の画像の信号強度、Cは、ノイズのパワースペクトルから決まる定数を示す。
この処理によって、合成画像データIの低周波数成分の寄与が大きくなりすぎるのを抑えることで、高周波数成分の相対的な寄与が小さくなるのを防ぐことができる。
続いて、制御・演算装置42は、合成画像データIを逆フーリエ変換し、実空間で表現された画像データIを得る。この画像データIは、120°ずつ異なる3方向に亘る標本11の超解像画像を表現する(ステップS23)。制御・演算装置42は、この画像データIを画像表示装置43へ送出し、超解像画像を表示する。
以上、本実施の形態における顕微鏡装置では、標本11からの光が回折格子8で再変調され、さらに回折格子8を動かして平均化して不要な回折成分を除去することによって復調像を得ている。従って、復調演算をしない分だけ復調像の画像データは高速に得られる。
しかも、変調と再変調とに同一の回折格子8の同一の領域が用いられるので、仮にその回折格子8に形状誤差や配置誤差、あるいはその回転角に誤差があったとしても、変調のパターンと再変調のパターンとを同一にすることができる。従って、回折格子8の形状誤差や配置誤差、回転調整誤差は、復調像の画像データに対しノイズを殆ど与えない。このことは、構造化照明の位相を変化させたときや、構造化照明の方向を変化させたときにも同様に当てはまる。したがって、本顕微鏡装置では超解像画像が高精度に得られる。
また、本顕微鏡装置では、複数の画像データを合成する際に(図7ステップS22)、
デコンボリューションを行うので、高周波数成分の減衰の少ない良好な超解像画像を得ることができる。
なお、以上の実施の形態においては、蛍光顕微鏡を例として説明したが、本発明は蛍光顕微鏡に限定されるものではなく、反射顕微鏡にも適用することができる。その場合には、光分散手段として、ダイクロイックミラーではなく、ハーフミラーを用いる。そして、反射部材とハーフミラーを切り替えることで、反射照明と構造化照明を切り替えることができるようになる。
また、図1に示す顕微鏡装置において、結像レンズ52、撮像装置53が存在せず、反射ミラー25とダイクロイックミラー202との切替機構がなく、反射ミラー25のみを固定配置する構成で、回折格子8が挿脱可能な機構となっている顕微鏡装置に変更してもよい。
すなわち、超解像観察の場合は、回折格子8を挿入した状態の照明光学系LS1を用いて標本11を構造化照明し、そこから発生した蛍光を回折格子8を介して、観察光学系LS2を用いて撮像装置25に結像させる。一方、通常の蛍光観察の場合は、回折格子8を挿入しない状態の照明光学系LS1を用いて標本11をケーラー照明し、そこから発生した蛍光を観察光学系LS2を用いて撮像装置25に結像させる。

Claims (7)

  1. 照射光を受光して、回折光を形成する空間変調素子と、
    前記回折光を試料面の同一位置で干渉させて干渉縞を形成し、前記干渉縞によって変調を受けた前記試料面からの光を前記空間変調素子面に結像させる対物光学系と、
    撮像手段と、
    前記空間変調素子面で再変調された光の像を前記撮像手段の撮像面に結像させるリレー光学系と、
    を有する顕微鏡装置であって、
    前記対物光学系中には、光分離手段と反射部材とが、択一的に光路に挿脱可能に配置されており、前記光分離手段が光路に挿入されたときに前記試料面からの光が向かう方向と、前記反射部材が光路に挿入されたときに前記試料面からの光が向かう方向とが、異なる方向とされていることを特徴とする顕微鏡装置。
  2. 照射光を受光して、回折光を形成する空間変調素子と、前記回折光を試料面の同一位置で干渉させて干渉縞を形成し、前記干渉縞によって変調を受けた前記試料面からの光を前記空聞変調素子面に結像させる対物光学系と、
    撮像手段と、
    前記空間変調素子面で再変調された光の像を前記撮像手段の撮像面に結像させるリレー光学系と、
    を有することを特徴とする顕微鏡装置であって、
    前記空問変調素子は、光路に挿脱可能に配置され、
    前記対物光学系中には、光分離手段と反射部材とが、択一的に前記光路に挿脱可能に配置さており、前記光分離手段が前記光路に挿入されたときには、前記空問変調素子は前記光路から取り除かれ、前記反射部材が前記光路に挿入されたときには、前記空間変調素子は前記光路に挿入されていることを特徴とする顕微鏡装置。
  3. 請求項1に記載の顕微鏡装置であって、前記反射部材が光路に挿入されたときには、前記試料面からの光は前記空間変調素子面に結像し、前記光分離手段が光路に挿入されたときには、前記リレー光学系とは別のリレー光学系を介して、前記試料面から発生した光による試料面の像を、前記撮像手段とは別の撮像手段の撮像面に結像するようにされていることを特徴とする顕微鏡装置。
  4. 請求項2に記載の顕微鏡装置であって、前記反射部材が光路に挿入されたときには、前記試料面からの光は前記空間変調素子面に結像し、前記光分離手段が光路に挿入されたときには、前記リレー光学系とは別のリレー光学系を介して、前記試料面から発生した光による試料面の像を、前記撮像手段とは別の撮像手段の撮像面に結像するようにされていることを特徴とする顕微鏡装置。
  5. 前記反射部材は、厚さが1.5mmより厚い反射ミラーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の顕微鏡装置。
  6. 前記反射部材は、反射プリズムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の顕微鏡装置。
  7. 照射光を受光して、回折光を形成する空間変調素子と、
    前記回折光を試料面の同一位置で干渉させて干渉縞を形成し、前記干渉縞によって変調を受けた前記試料面からの光を前記空問変調素子面に結像させる対物光学系と、
    撮像装置と、
    前記空間変調素子面で再変調された光の像を前記撮像装置の撮像面に結像させるリレー光学系と、
    を有する顕微鏡装置であって、
    前記空間変調素子は挿脱可能に配置されていることを特徴とする顕微鏡装置。
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