本発明は、病院や家庭等において人が行う移乗作業を支援する移乗支援装置に関する。
病院や家庭において、ベッド上に横たわった患者の運搬を介護する移乗支援装置や入浴用の看護介助ロボットが提案されている(例えば、特許文献1、2を参照)。これらは、力作業をアシストし、介護者の肉体的負担を軽減することを目的として提案されている。
実開昭62−64525号公報
特公平6−9587号公報
移乗支援装置は、例えば病院や家庭等において、介護者が被介護者をベッドなどに移乗する作業を支援する装置である。移乗支援装置は、習熟度が低い介護者が操作した場合には、被介護者の身体が無理な姿勢になるなど、被介護者に負担を強いるような操作がなされる可能性がないとは言えない。
本発明は、より簡単に操作できる移乗支援装置を提供することを課題とする。
本発明に係る移乗支援装置は、人を支承する支え具と、支え具を操作する操作部とを備えている。そして、操作者の操作に基づいて支え具を動作させ、支え具によって人を抱き上げる。この移乗支援装置は、支え具を動作させるアクチュエータと、操作部の操作に基づいてアクチュエータを制御する制御装置とを備えている。制御装置は、支え具を動作させる動作経路を設定する動作経路設定部を備えている。さらに制御装置は、動作経路設定部で設定された動作経路に沿って支え具が動作するように、アクチュエータを駆動させることにより、操作部の操作に基づく支え具の動作を補正する操作補正部を備えている。
本発明の実施の形態における移乗支援装置の使用時の状況を示す斜視図である。
同移乗支援装置の要部の構造を示す斜視図である。
同移乗支援装置の電気的な構成を示すブロック図である。
同移乗支援装置の動作制御にかかわる構成を示すブロック図である。
同移乗支援装置の動作姿勢経路の定義を示す斜視図である。
同移乗支援装置の動作制御情報生成部のブロック図である。
同移乗支援装置における被介護者と支え具との相対的な位置関係を示す説明図である。
同移乗支援装置の第1の動作姿勢経路上の点における仮想ポテンシャルエネルギを示す説明図である。
同移乗支援装置の被介護者の姿勢と仮想ポテンシャルエネルギとの関係を示す説明図である。
同移乗支援装置の第2の動作姿勢経路上の点における仮想ポテンシャルエネルギを示す説明図である。
同移乗支援装置の動作を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態における移乗支援装置を示す斜視図である。
同移乗支援装置の使用時の状況を示す斜視図である。
同移乗支援装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
同移乗支援装置の構成を示す側面図である。
同移乗支援装置の使用時の状況を示す平面図である。
同移乗支援装置に設定される動作経路を示す平面図である。
同移乗支援装置に設定される動作経路を示す側面図である。
同移乗支援装置に設定される仮想ポテンシャルエネルギを示す平面図である。
同移乗支援装置に設定される仮想ポテンシャルエネルギを示す側面図である。
同実施形態の移乗支援装置における被介護者の屈曲角度を示す側面図である。
同実施形態の移乗支援装置における被介護者の屈曲角度を示す側面図である。
同実施形態の移乗支援装置における抱き上げ動作において設定される動作経路を示す側面図である。
同実施形態の移乗支援装置における抱き上げ動作において設定される動作経路を示す側面図である。
(a)は同実施形態の移乗支援装置における仮想ポテンシャルエネルギの概念を示す図であり、(b)は仮想ポテンシャルエネルギに応じて力F(x1)を算出する際のモデルの一例を説明するための図である。
同実施形態の移乗支援装置における体格情報と設定される仮想ポテンシャルエネルギとの関係を示す図である。
同実施形態の移乗支援装置において設定される仮想ポテンシャルエネルギの一例を示す図である。
同実施形態の移乗支援装置おいて設定される仮想ポテンシャルエネルギの一例を示す図である。
同実施形態の移乗支援装置おいて設定される制御装置に設定されたモード移行を示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係る移乗支援装置を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を例示的に説明したものであり、本発明は、以下に記載する実施形態に限定されるものではない。また、本明細書において、移乗支援装置について「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」というときは移乗支援装置を操作する操作者の通常の操作姿勢における前後左右上下の方向に従う。図面中、必要に応じて適宜、前を「Fr」、後を「Rr」、左を「L」、右「R」で示す。また、各図面は符号の向きに見ることを前提に図示している。
この実施形態では、移乗支援装置200は、図12に示すように、支え具201と、操作部202と、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)と、制御装置310とを備えている。
支え具201は、人を支承する部材である。この実施形態では、支え具201は、当該移乗支援装置200の移動を補助する移動体205に支持されている。
移動体205は、左右一対のベース211、212と、連結部213、214とを備えている。左右のベース211、212は、車輪215と、当該車輪215を駆動させる第1駆動装置301a、301bとを備えている。この実施形態では、車輪215として、全方位に移動可能な車輪が取り付けられている。具体的には、車輪215には、全方位に移動可能な車輪として、オムニホイールやメカナムホイールを用いることができる。連結部213、214は左右のベース211、212を連結する部材であり、左右のベース211、212の前後2箇所に架け渡されている。連結部213、214は、伸縮自在な機構を備えていて、左右のベース211、212の間隔に応じて伸縮する。なお、この実施形態では、左右のベース211、212を連結する連結部を、左右のベース211、212の前後2箇所に設けているが、連結部の数は2つに限らず、例えば1つでもよい。また、連結部は、移乗支援装置を操作する操作者の操作の邪魔にならない位置に配設するとよい。この実施形態では、連結部213、214は、移乗支援装置200の下部に配設されており、操作者がまたぐことができる高さとなっている。これにより、操作者の操作位置へのアクセス性をよくしている。
この移乗支援装置200は、支え具201として第1支え具201aと第2支え具201bを備えている。この実施形態では、第1支え具201aは左側のベース211に取り付けられ、第2支え具201bは右側のベース212に取り付けられている。この実施形態では、第1支え具201aおよび第2支え具201bは、それぞれ腕部221a、221bとハンド部222a、222bとを備えている。腕部221a、221bの基端は、それぞれ左右のベース211、212に取り付けられている。腕部221a、221bは、基端側から順に、第1腕部231a、231bと、第1関節部232a、232bと、第2腕部233a、233bと、第2関節部234a、234bとを備えている。
第1腕部231a、231bは、伸縮自在なスライド機構235a、235bと、スライド機構235a、235bを駆動させる第2駆動装置302a、302bとを備えている。この実施形態では、スライド機構235a、235bを伸ばすことによって、第1腕部231a、231bの長さが長くなる。また、スライド機構235a、235bを縮めることによって、第1腕部231a、231bの長さが短くなる。この実施形態では、移乗支援装置200は、第1腕部231a、231bの長さを調整することによって、第1支え具201aと第2支え具201bの高さを調整することができる。
第1関節部232a、232bは、第1腕部231a、231bと第2腕部233a、233bとを屈曲自在に連結する部材である。第1関節部232a、232bには、第3駆動装置303a、303bが取り付けられている。第3駆動装置303a、303bは、当該第1関節部232a、232bを駆動させて第1腕部231a、231bと第2腕部233a、233bの屈曲角を変える。
第2腕部233a、233bの先端には、第2関節部234a、234bを介してハンド部222a、222bが取り付けられている。第2関節部234a、234bは、第2腕部233a、233bの長さ方向の軸周りに回動自在にハンド部222a、222bを連結している。当該第2関節部234a、234bには、第4駆動装置304a、304bが取り付けられている。第4駆動装置304a、304bは、当該第2関節部234a、234bを駆動させて、第2腕部233a、233bに対して第2腕部233a、233bの長さ方向の軸周りにハンド部222a、222bの回動角を変える。
ハンド部222a、222bは、図13に示すように、人(被介護者402)を支承する部位である。この実施形態では、移乗支援装置200は、ハンド部222a、222bに、介護者401(操作者)が当該支え具201を操作する操作部202を備えている。この実施形態では、移乗支援装置200は、操作部202として、左右のハンド部222a、222bにそれぞれ操作レバー202a、202bを備えている。この実施形態では、操作レバー202a、202bには、6軸力センサが取り付けられており、並進及び回転の6軸の方向について、操作レバー202a、202bに入力された操作力を検知することができる。操作レバー202a、202bに入力された操作入力の情報は、図14に示すように、制御装置310に送られる。
この移乗支援装置200は、図13に示すように、左右の第1支え具201aと第2支え具201bの間に介護者401(操作者)が入り、左右の操作レバー202a、202bを操作する。介護者401は、操作レバー202a、202bを操作して、移乗支援装置200を移動させ、かつ、第1支え具201aと第2支え具201bを操作することができる。
ハンド部222a、222bは、この実施形態では、平らな形状を有し、先端から上面に掛けて搬送ベルト241a、241bが露出している。ハンド部222a、222bは、搬送ベルト241a、241bを動かす第5駆動装置305a、305bを備えている。また、この実施形態では、ハンド部222a、222bは、当該ハンド部222a、222bが人を支承しているか否かを検知する検知センサ365を備えている。この実施形態では、当該検知センサ365として、図12に示すように、近接センサ366と圧力センサ367を備えている。近接センサ366は、ハンド部222a、222bの基端部に、検知部が先端側に向くように配設されている。また、圧力センサ367には、ハンド部222a、222bの上面に複数の圧力センサ367が分散して配設されている。
これによって、ハンド部222a、222bは、人(被介護者402)を支承している際は、近接センサ366或いは圧力センサ367によって、人を支承している状態を検知することができる。近接センサ366は、主に、被介護者402がハンド部222a、222bの基端部まで載せられているかを検知する。また、ハンド部222a、222bの上面に分散して配設された複数の圧力センサ367は、ハンド部222a、222bの上面が均等な力で被介護者402を支承しているか否かを検知している。この実施形態では、当該近接センサ366或いは圧力センサ367によって、ハンド部222a、222bの上面が適切に被介護者402を支承しているかを検知できる。検知センサ365としての近接センサ366と圧力センサ367の検知情報は、図14に示すように、制御装置310に送られる。
この移乗支援装置200は、介護者401の操作に基づいて支え具201を動作させ、支え具201によって被介護者402を抱き上げる装置である。具体的には、この実施形態では、移乗支援装置200は、例えば、図13に示すように、第1支え具201aと第2支え具201bのうち、一方の支え具201bで被介護者402の上半身を支承し、他方の支え具201aで被介護者402の下半身を支承する。
この移乗支援装置200は、図12に示すように、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)と、制御装置310とを備えている。アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)は、移乗支援装置200および支え具201を動作させる。この実施形態では、移乗支援装置200は、アクチュエータとして上述した第1駆動装置301a、301b〜第5駆動装置305a、305bを備えている。第1駆動装置301a、301b〜第5駆動装置305a、305bは、それぞれ制御装置310によって制御可能なモータで構成されている。
この移乗支援装置200は、図13に示すように、各駆動装置(アクチュエータ301a、301b〜305a、305b)が、当該介護者401の操作に対して力を補助する。これにより、介護者401は、移乗支援装置200を移動させたり、第1支え具201aと第2支え具201bを操作したりすることが容易にできる。また、被介護者402を抱き上げるときも、各駆動装置によって力が補助されるので、容易に被介護者402を抱き上げることができる。なお、この実施形態では、制御装置310によって、介護者401の操作は補正される。
次に、制御装置310を説明する。
制御装置310は、図14に示すように、操作部202の操作に基づいてアクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を制御する。この実施形態では、制御装置310は、動作経路設定部311と、操作補正部312と、仮想ポテンシャルエネルギ設定部313を備えている。さらに、この実施形態では、制御装置310は、体格情報記憶部321と、身体情報記憶部322と、屈曲許容角度設定部323と、屈曲角度算出部324と、補正解除部325と、動作経路修正部326、股関節特定部327、姿勢情報記憶部328などの記憶部と、演算処理部とを備えている。また、制御装置310は、種々の情報を取得するため、第1検知部361と、第2検知部362と、圧力センサ363と、臀部検知部364と、検知センサ365とを備えている。
動作経路設定部311は、支え具201を動作させる動作経路を設定する。かかる動作経路は、予め制御装置310に記憶されたプログラムに沿って設定される。操作補正部312は、動作経路設定部311によって設定された動作経路に沿って支え具201が動作するように、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を駆動させることにより、操作部202の操作に基づく支え具201の動作を補正する。なお、これら制御装置の記憶部や演算処理、および、各種センサについては後で詳述する。
この実施形態における移乗支援装置200は、図15に示すように、ベッド410(載置具)に横になった被介護者402の移乗作業を支援する装置として用いることができる。なお、ここでは、人が横になれる物は、広義に「載置具」という。「載置具」には、この実施形態で例示するベッド、キャスター付のベッド、さらに、人が横になれる形態に変形可能な介護用の車椅子も、ここでは「載置具」に含まれる。
この実施形態では、移乗支援装置200は、図15に示すように、ベッド410と支え具201との距離を検知する第1検知部361を備えている。当該第1検知部361は、例えば、公知の測距センサを用いてベッド410と支え具201との距離を検知するように構成するとよい。第1検知部361で検知された情報は、図14に示すように、制御装置310に送られる。
また、移乗支援装置200は、図15に示すように、ベッド410の載置面411(ベッド面)を検知する第2検知部362を備えている。ここで、「載置面」は、ベッド410に人が寝かされる面をいう。第2検知部362は、ベッド410の載置面411を検知する種々の検知手段を用いることができる。
この実施形態では、当該第2検知部362として、支え具201のハンド部222a、222bの下面に圧力センサや近接スイッチなどが取り付けられている。そして、第2検知部362がハンド部222a、222bの下面が載置面411に着いたことを検知すると、制御装置310は、当該検知したときの高さを載置面411の高さとして記憶する。この場合、上述した支え具201のハンド部222a、222bを予め手動で載置面411に当接させ、載置面411の高さを制御装置310に記憶させるとよい。なお、第2検知部362は、かかる構成に限らない。第2検知部362は、例えば、測距センサによって、ベッド410の載置面411(ベッド面)の高さを検知する構成としてもよい。また、移乗支援装置200に取り付けられたカメラから取得された画像を画像処理することによって、ベッド410の載置面411(ベッド面)の高さを検知する構成としてもよい。
また、この実施形態では、支え具201には、図15に示すように、第1支え具201aと第2支え具201bのハンド部222a、222bの裏面にそれぞれ圧力センサ363が取り付けられている。この圧力センサ363は、支え具201(ハンド部222a、222bの裏面)とベッド410(載置具)との接触圧を検知することができるものである。圧力センサ363で検知された情報は制御装置310に送られる。
この移乗支援装置200は、ベッド410に横になった被介護者402を支え具201(ハンド部222a、222b)に乗せる第1工程と、ベッド410に横になった被介護者を抱き上げる第2工程と、被介護者402を抱き上げた状態で移動させる第3工程と、被介護者402を降ろす第4工程と、支え具201(ハンド部222a、222b)を引き抜く第5工程とを順に行なう。
まず、ベッド410に横になった被介護者402を支え具201(ハンド部222a、222b)に乗せる第1工程を説明する。
制御装置310は、ベッド410に横になった被介護者402を支え具201(ハンド部222a、222b)に乗せる当該第1工程において、支え具201の動作経路を設定する。
この実施形態では、制御装置310は、図14に示すように、体格情報記憶部321を備えている。体格情報記憶部321は、被介護者402の体格に関する体格情報を記憶している。体格情報記憶部321に記憶される体格情報としては、身長情報、体重情報が含まれている。この実施形態では、動作経路設定部311は、体格情報記憶部321に記憶された体格情報に基づいて被介護者402の体格に応じて支え具201を動作させる動作経路を設定する。
さらに、この実施形態では、制御装置310は、身体情報記憶部322を備えている。当該身体情報記憶部322に記憶される身体情報には、身体の異常部位に関する情報が含まれている。かかる身体の異常部位は、例えば、床擦れ部位や、怪我などによって身体の損傷している部位であり、具体的には、支え具201で支承することが出来ない部位である。この実施形態では、当該異常部位が、予め被介護者毎に身体情報記憶部322に記憶されている。
さらに、この実施形態では、移乗支援装置200は、人の臀部403の位置を検知する臀部検知部364を備えている。当該「臀部」には、股関節が含まれる。臀部検知部364は、例えば、移乗支援装置200に備え付けたカメラで撮影された画像に基づいて、所定のプログラムによって、人の臀部403を検知するものでもよい。また、所定のプログラムによって、体格情報記憶部321に記憶された身長情報、および、予め人の標準的な体格に関するデータから、人の臀部403を検知(この場合、人の臀部の位置を推定)するものでもよい。
第1工程では、ベッド410に横になった被介護者の下に支え具201(ハンド部222a、222b)を挿入する。この実施形態では、移乗支援装置200は、動作経路設定部311は、まず、ベッド410に横になった被介護者に対して、支え具201(ハンド部222a、222b)を挿入する位置を特定する。次に、移乗支援装置200は、現在位置から被介護者に対して支え具201を移動させるべき最適な動作経路を設定する。さらに、操作者(介護者)の操作に対して、操作補正部312は、動作経路設定部311によって設定された動作経路に沿って支え具201が動作するように、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を駆動させることにより、操作部202の操作に基づく支え具201の動作を補正する。
具体的には、動作経路設定部311は、まず、ベッド410に横になった被介護者に対して、支え具201(ハンド部222a、222b)を挿入する位置を特定する。この実施形態では、当該身体情報記憶部322に、支え具201で支承することが出来ない部位が身体情報として記憶されている。例えば、床擦れ部位や、怪我などによって身体の損傷している部位が記憶されている。したがって、支え具201(ハンド部222a、222b)を挿入する位置を特定する場合には、当該身体情報記憶部322に記憶された部位が支え具201(ハンド部222a、222b)を挿入する位置から外れるように、支え具201(ハンド部222a、222b)を挿入する位置を特定するとよい。
この移乗支援装置200は、例えば、図13に示すように、第1支え具201aと第2支え具201bのうち一方の支え具201bが臀部403の位置よりも上半身側を支承し、他方の支え具201aが臀部403の位置よりも下半身側を支承する。この実施形態では、例えば、一方の支え具201bで被介護者402の背中の肩甲骨の辺りを支承し、他方の支え具201aで膝裏辺りを支承するとよい。
この実施形態では、体格情報記憶部321に記憶される体格情報には、身長に関する情報(身長情報)が含まれている。そして、動作経路設定部311は、体格情報記憶部321に記憶された身長情報に基づいて、第1支え具201aと第2支え具201bが被介護者402に挿入される際の両支え具201a、201bの間隔が設定される。
具体的には、この実施形態では、制御装置310は、身長を基準にして、第1支え具201aと第2支え具201bの最適な間隔を予め規定した第1データベース351を備えている。制御装置310は、当該第1データベース351および体格情報記憶部321に記憶された身長情報に基づいて、第1支え具201aと第2支え具201bの間隔を設定している。例えば、図26に示すように、身長の高い被介護者402aに比べて、身長の低い被介護者402bでは、被介護者402に挿入される際に両支え具201a、201bに設定される動作経路r1a、r1bの間隔は狭くなる。
なお、この実施形態では、図16に示すように、第1支え具201aと第2支え具201bのうち一方の支え具201が被介護者402の背中の肩甲骨の辺りに挿入され、他方の支え具201が被介護者402の膝裏辺りに挿入されるように、第1支え具201aと第2支え具201bの間隔が設定される。
この実施形態では、移乗支援装置200は、臀部検知部364によって、被介護者402の臀部403の位置を検知する。動作経路設定部311は、図17に示すように、臀部検知部364で検知された臀部403の位置に基づいて、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路をそれぞれ設定する。この実施形態では、動作経路設定部311は、臀部検知部364で検知された臀部403の位置に基づいて、被介護者402の背中の肩甲骨の位置と膝裏の位置を特定する。そして、動作経路設定部311は、当該特定された位置に基づいて、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路r1をそれぞれ設定する。これにより、第1支え具201aと第2支え具201bのうち一方の支え具201が被介護者402の背中の肩甲骨の辺りに挿入され、他方の支え具201が被介護者402の膝裏辺りに挿入されるように、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路r1がそれぞれ設定される。
さらに、この実施形態では、身体情報記憶部322に、身体の異常部位に関する情報が記憶されている。例えば、当該身体情報記憶部322において、被介護者402の背中の肩甲骨の辺り、又は、膝裏辺りが、支え具201で支承することが出来ない部位として記憶されている場合には、当該部位を外して第1支え具201aと第2支え具201bが被介護者402に挿入される位置が設定される。この実施形態では、制御装置310は、図14に示すように、当該設定を行なう第1設定部341を備えている。第1設定部341は、例えば、介護者401が被介護者402の当該事情を考慮して、第1支え具201aと第2支え具201bで被介護者402を支承する位置を設定するとよい。したがって、第1支え具201aと第2支え具201bで被介護者402を支承する位置は、被介護者402の個々の事情などに応じて柔軟に変更が可能である。
なお、この実施形態では、制御装置310は、図14に示すように、第1支え具201aと第2支え具201bで被介護者402を安全に支承できるかをチェックするチェック部342を備えている。この実施形態では、当該チェック部342は、当該体格情報記憶部321に記憶された情報に基づいて、第1支え具201aと第2支え具201bで支承した被介護者402を物理的なモデルにモデル化する。そして、当該物理的なモデルに基づいて、第1支え具201aと第2支え具201bで被介護者402を安定した状態で支承できるかを、所定のプログラムに沿って確認する。これによって、例えば、第1設定部341で、介護者401が第1支え具201aと第2支え具201bで被介護者402を支承する位置が変更された場合でも、その安全性を確保できる。
このように、この実施形態では、第1設定部341によって、第1支え具201aと第2支え具201bを被介護者402に挿入する位置を設定することができる。そして、第1設定部341によって、第1支え具201aと第2支え具201bを被介護者402に挿入する位置が設定されている場合には、制御装置310は、当該位置に、第1支え具201aと第2支え具201bが導かれるように、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路を設定する。
動作経路は、第1支え具201a及び第2支え具201bの現在位置からそれぞれの挿入位置までの動作経路であり、制御装置301は、現在位置から被介護者402の背中の肩甲骨の辺りと被介護者402の膝裏辺りにそれぞれスムーズに挿入されるように各支え具201a,201bの動作経路を設定する。また、この実施形態では、図17に示すように、第1支え具201aと第2支え具201bが略同時に被介護者402の近傍に到達するように動作経路r1が設定される。このため、この実施形態では、移乗支援装置200は、まず支え具201の挿入に適切な位置に移動する。そして、そこから被介護者402に第1支え具201aと第2支え具201bを向けて、被介護者402に近づくように動作経路r1が設定される。
この実施形態では、図17に示すように、被介護者402が横になっているベッド410に対して、ベッド410の横側に真っ直ぐに第1支え具201aと第2支え具201bが向く第1位置P1に、移乗支援装置200を移動させる。なお、移乗支援装置200は、地図情報を有しており、自分の位置及びベッド410の位置を把握している。このため、移乗支援装置200は第1位置P1に自動的に移動することができる。次に、当該第1位置P1から第1支え具201aと第2支え具201bが被介護者402に挿入される位置に向けて動作経路r1が設定される。この際、一方の支え具201が被介護者402の背中の肩甲骨の辺りに挿入され、他方の支え具201が被介護者402の膝裏辺りに挿入されるように、第1支え具201aと第2支え具201bを動作させる動作経路r1が設定される。また、この実施形態では、第1支え具201aと第2支え具201bの間隔は、それぞれ被介護者402に近づくにつれて徐々に被介護者402に挿入される際の所定の間隔になるように、滑らかな経路が設定される。
この実施形態では、移乗支援装置200は、図15に示すように、当該移乗支援装置200とベッド410との距離を検知する第1検知部361と、ベッド410の載置面411を検知する第2検知部362とを備えている。制御装置310の動作経路設定部311は、第1検知部361で検知された移乗支援装置200とベッド410との距離と、第2検知部362で検知されたベッド410の載置面411とに基づいて、図18に示すように、移乗支援装置200とベッド410との距離が近くなるにつれて、支え具(201a、201b)がベッド410の載置面411の高さに近づくように支え具(201a、201b)の動作経路r1を設定する。
この実施形態では、図18に示すように、被介護者402が横になっているベッド410に対して、支え具(201a、201b)が近づく際、ベッド410に対して所定の距離(この実施形態では、50cm)よりも近づくまでに、載置面411よりも少し高い高さ(この実施形態では、載置面411から5cm)になるように、滑らかな経路が設定される。かかる経路r1に沿って、支え具(201a、201b)を動作させることによって、支え具(201a、201b)が被介護者402の目前で急に降下する動作を防止できる。これにより、被介護者402の目前で支え具(201a、201b)が急に降下することを防止でき、被介護者402が感じ得る不安感を軽減できる。
次に、操作の補正について説明する。
この実施形態では、制御装置310は操作補正部312を備えている。操作補正部312は、動作経路設定部311で設定された動作経路r1に沿って支え具201が動作するようにアクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を駆動させることにより、操作部202の操作に基づく支え具201の動作を補正する。
この実施形態では、動作経路設定部311によって、一方の支え具201が被介護者402の背中の肩甲骨の辺りに挿入され、他方の支え具201が被介護者402の膝裏辺りに挿入されるように、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路がそれぞれ設定される。この移乗支援装置200は、図13に示すように、介護者401によって操作される。この際、図17および図18に示すように、動作経路設定部311で設定された動作経路r1に沿って支え具201が動作するように、介護者401による操作が補正される。すなわち、制御装置310は、適宜にアクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を駆動させて、介護者401による操作を補正する。この実施形態では、制御装置310は、介護者401による操作によって、第1支え具201aおよび第2支え具201bが、動作経路設定部311で設定された動作経路から大きく外れることがないように、介護者401による操作を補正する。
かかる補正を具現化するため、この実施形態では、制御装置310は仮想ポテンシャルエネルギ設定部313を備えている。仮想ポテンシャルエネルギ設定部313は、支え具201に作用させる力の大きさを規定する仮想ポテンシャルエネルギを設定する。この実施形態では、仮想ポテンシャルエネルギは、動作経路設定部311で設定された動作経路r1を基準とし、当該動作経路r1から支え具201が離れるにつれて、支え具201を動作経路r1へ近づけるように支え具201に作用させる力の大きさを定めている。言い換えると、支え具201に作用させる力は、動作経路r1から支え具201までの距離に応じた大きさとなる。
この実施形態では、図19および図20に示すように、動作経路設定部311において、第1支え具201aの動作に対する動作経路r1aと、第2支え具201bの動作に対する動作経路r1bがそれぞれ設定されている。そして、当該動作経路r1a、r1bのそれぞれに対して、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebが設定される。
操作補正部312は、仮想ポテンシャルエネルギ設定部313で設定された仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebに基づいて、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を駆動させて、支え具201を動作経路r1へ近づけるように支え具201に力を作用させている。これにより、操作レバー202a,202bによる操作に基づく支え具201a,201bの動作が補正される。
この実施形態では、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebとして、例えば、図25(a)に示すように、仮想的なエネルギ場が設定されている。すなわち、図25(a)では、横軸は、動作経路r1からのずれ量に相当する変位量xを示し、縦軸はエネルギEを示している。図25(a)で例示されている仮想ポテンシャルエネルギEa(Eb)は、動作経路r1上に支え具201aが位置している状態では、支え具201aの変位量xは0となるので、支え具201aに作用させる力は0になる。一方、支え具201aが同図中x1の位置に変位している場合には、E(x1)の仮想ポテンシャルエネルギが設定される。仮想ポテンシャルエネルギは、動作経路r1からの変位量xが増大するにつれて次第に増大するように設定されている。この場合、E(x1)の仮想ポテンシャルエネルギに応じて、支え具201aに作用させる力F(x1)が求められる。この実施形態では、F(x1)は、図25(a)で例示されている仮想ポテンシャルエネルギEa(Eb)のx1の位置でのエネルギ状態に応じた方向及び大きさの力が算出される。したがって、支え具201aが動作経路r1から大きく変位するに従って、支え具201aを動作経路r1に引き戻そうとする力が大きくなる。この力F(x1)の算出は、例えば図25(b)に示すように、バネ・マス・ダンパー系の仮想モデルを表す下記式(1)を用いて計算することによって行うことができる。そして、制御装置310は、当該算出された力F(x1)を支え具201に作用させる。
この実施形態では、図19および図20に示すように、移乗支援装置200がベッド410に近づくにつれて、支え具201a、201bの動作経路r1a、r1bに対して支え具201a、201bの移動が許容される変位幅が狭くなるように、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebが設定されている。なお、仮想ポテンシャルエネルギ設定部313は、第1検知部361で検知された移乗支援装置200とベッド410との距離に基づいて、このような仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebを設定する。なお、図19および図20では、便宜上、仮想ポテンシャルエネルギを示す線Ea、Ebとして、仮想ポテンシャルエネルギ設定部313で設定される仮想ポテンシャルエネルギによって、第1支え具201aと第2支え具201bの操作が許容される幅が示されている。
すなわち、この実施形態では、図19および図20に示すように、仮想ポテンシャルエネルギ設定部313で設定される仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebは、移乗支援装置200とベッド410との距離が近くなるにつれて、幅が狭くなっている。すなわち、移乗支援装置200がベッド410に近づくにつれて、第1支え具201aと第2支え具201bの操作が許容される幅が狭くなるように、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebが設定されている。このため、移乗支援装置200がベッド410に近づくにつれて、支え具201は動作経路r1a、r1bへ近づくように操作補正される。
この実施形態では、支え具201がベッド410から離れている状態では、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebの幅が広く、介護者401が支え具201を操作できる自由度が大きい。これに対し、支え具201がベッド410に近づくにつれて、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebの幅が狭くなっており、介護者401が支え具201を操作できる自由度は徐々に小さくなる。これによって、支え具201が被介護者402に到達する直前では、第1支え具201aと、第2支え具201bは、略動作経路r1a、r1b上に操作される。
また、制御装置310に警告機能を持たせてもよい。すなわち、操作レバー202a,202bによる操作が操作補正部によって補正されることによって、支え具201a,201bの動きが操作レバー202a,202bによる操作に合致した動きにならないことがあるので、そのことが分かるような表示を表示部に表示したり、音声案内を発するようにしてもよい。
また、この実施形態では、制御装置310は、被介護者402の体格情報を記憶する体格情報記憶部321を備えている。仮想ポテンシャルエネルギ設定部313は、体格情報記憶部321に記憶された体格情報に基づいて、人の体格に応じた仮想ポテンシャルエネルギを設定する。例えば、図26に示すように、支え具201a、201bの動作経路r1a、r1bに対して支え具201a、201bの操作が許容される変位幅xa,xbは、身長が高い被介護者402aの場合に比べて、身長が低い被介護者402bの場合に小さくなる。
また、この実施形態では、制御装置310は、操作部202において支え具201を操作する操作の入力がない場合に、支え具201の位置を維持する制御を実行する。すなわち、この実施形態では、図14に示すように、操作レバー202a、202bからの操作入力の信号がない場合に、制御装置310は、予め設定されたプログラムに沿って支え具201の位置を維持する処理を行う。支え具201の位置を維持する処理としては、この実施形態では、操作レバー202a、202bからの操作入力の信号がない場合に、支え具201の位置が維持されるように、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)によって支え具201に力を作用させる。これにより、操作レバー202a、202bから操作入力の信号がない場合に、支え具201の位置が維持される。なお、支え具の位置を維持する処理としては、支え具201の位置をロックするロック機構(例えば、各機構に設けたブレーキ)を作動させてもよい。これにより、介護者401が不意に操作レバー202a、202bから手を離した場合に支え具201は停止し、支え具201が不測の動作を行なうことがない。
また、この実施形態では、制御装置310は、図14に示すように、操作補正部312の機能を解除する補正解除部325を備えている。補正解除部325は、介護者401(操作者)が適宜に操作補正部312の機能を解除する制御処理部である。この実施形態では、補正解除部325は、図14に示すように、解除ボタン371を押すことによって、介護者401(操作者)が適宜に操作補正部312の機能を解除できるように構成されている。かかる解除ボタン371は、操作レバー202a、202bの近傍に設けるとよい。当該解除ボタン371が押されると、制御装置310において補正解除部325が機能して、操作補正部312の機能が解除される。このため、上述した仮想ポテンシャルエネルギEa、Eb(図19および図20参照)に基づいたアクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)の力が解除される。これにより、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebによる支え具201の拘束が外れ、介護者401(操作者)が支え具201を自由に操作できるようになる。
かかる補正解除部325は、例えば、当該介護者401が、操作補正部312の機能によって、適切に支え具201を操作できない場合に、適宜に操作補正部312の機能を解除することができる。このように、この移乗支援装置200は、この装置の操作に熟練した介護者401が自由に支え具201を操作することも可能である。
また、この実施形態では、制御装置310は、図14に示すように、動作経路設定部311で設定される動作経路r1a、r1b(図19〜図20参照)を修正する動作経路修正部326を備えている。動作経路修正部326は、例えば、介護者401(操作者)が適宜に適切な動作経路を設定できるようにする制御処理部である。この実施形態では、動作経路修正部326は、介護者401が動作経路設定部311によって設定された動作経路を修正するべく、介護者401が手動で動作経路を設定する手動設定部372を備えている。かかる動作経路修正部326によって、例えば、当該移乗支援装置200の操作に熟練した介護者401が操作する場合において、当該介護者401が、移乗支援装置200で自動的に設定される動作経路を適宜に修正したい場合に、当該修正が許容される。これにより、介護者401は自由に支え具201の動作経路を設定することができる。
そして、操作補正部312は、動作経路修正部326によって動作経路r1a、r1bが修正された場合に、修正された動作経路に沿って支え具201が動作するように支え具201の動作を補正する。すなわち、操作補正部312は、動作経路修正部326によって修正された動作経路に沿って支え具201が動作するように、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を駆動させて、操作部202の操作に基づく支え具201の動作を補正する。この移乗支援装置200によれば、介護者401が設定した動作経路に沿って、支え具201が動作するように、操作補正部312は操作レバー202a、202bの操作に基づく支え具201の動作を補正する。これにより、移乗支援装置200は、介護者401の意図に沿った操作が可能になる。例えば、制御装置310が設定した動作経路上に移乗支援装置200の動作の支障となる障害物等を発見した場合には、操作者(介護者401)は、制御装置310が設定した動作経路を適宜に修正することができる。
以下、この移乗支援装置200の動作及び機能を説明する。
この移乗支援装置200は、図17、図18に示すように、制御装置310(動作経路設定部311)によって支え具(201a、201b)の動作経路r1が設定される。そして、当該動作経路r1に沿って支え具201が動作するように、制御装置310(操作補正部312)は、アクチュエータ301a、301b〜305a、305bを駆動させる。これにより、移乗支援装置200は、操作部202の操作に基づく支え具201a、201bの動作を補正しつつ、ベッド410に近づいていく。
次に、ベッド410と被介護者402との間に支え具201が挿入される。この実施形態では、移乗支援装置200は、支え具201に圧力センサ363を備えている。圧力センサ363は、被介護者402が寝かされるベッド410の載置面411と支え具201との接触圧を検知する。そして、操作補正部312は、当該検知された接触圧が、制御装置310に予め定められた接触圧よりも高くならないように、支え具201の動作を補正する。これによって、ベッド410と被介護者402との間に支え具201を挿入する際に、支え具201がベッドを押さえつけ過ぎることがない。なお、制御装置310には、かかる動作補正のため、予め所定の接触圧を記憶しているとよい。また、かかる接触圧は、操作者が予め設定する設定部を備えていてもよい。
この実施形態では、移乗支援装置200は、支え具201は先端のハンド部222a、222bに、被介護者402を乗せる。
この実施形態では、ハンド部222a、222bは、平らな形状を有し、先端から上面に掛けて搬送ベルト241a、241bが露出している。ハンド部222a、222bは、搬送ベルト241a、241bを動かす第5駆動装置305a、305bを備えている。このため、ハンド部222a、222bの先端を被介護者402に挿入し、搬送ベルト241a、241bを動かすことにより、簡単にハンド部222a、222bの上に被介護者402を乗せることができる。
この実施形態では、ハンド部222a、222bを被介護者402とベッド410との間に挿入する際、制御装置310は当該挿入動作と同期して搬送ベルト241a、241bを反転動作させる。これにより、ベッド410と被介護者402との間に、支え具201をスムーズに挿入することができる。また、これによって、ハンド部222a、222bを被介護者402とベッド410との間に挿入する際、ハンド部222a、222bと被介護者402の両者の接触面の相対速度を0にすることができる。これにより、ハンド部222a、222bを被介護者402とベッド410との間に挿入する際、ハンド部222a、222bと被介護者402との摩擦をほとんど生じさせず、被介護者402の負担を軽減することができる。
なお、この実施形態では、制御装置310は、上述したように被介護者402とベッド410との間にハンド部222a、222bを挿入する際、被介護者402に対して、ハンド部222a、222bが真っ直ぐ挿入されるように、ハンド部222a、222bが上下方向、左右方向に動いたり、傾いたりしないように、仮想ポテンシャルエネルギに応じて作用する力によって、ハンド部222a、222bの操作を強く拘束する。これによって、被介護者402に対して、ハンド部222a、222bが真っ直ぐ挿入される。この点は、被介護者402からハンド部222a、222bを引き抜く動作(第5工程)においても同様である。
次に、被介護者を抱き上げる第2工程について説明する。
制御装置310は、屈曲許容角度設定部323と、屈曲角度算出部324とを備えている。この実施形態では、屈曲許容角度設定部323は、第1支え具201aと第2支え具201bによって被介護者402を支承した状態で抱き上げる動作(抱き上げ動作)において、被介護者402の股関節404の屈曲許容角度を設定する。
なお、ここでは、図22に示すように、「股関節の屈曲角度」は、股関節で上半身を前側に傾けた前傾角度をいう。図21および図22に示すように、被介護者402の股関節404の屈曲角度θxは、便宜上、第1支え具201aと第2支え具201bによって掬い上げられる被介護者402の股関節404の屈曲角度と推定している。この実施形態では、屈曲許容角度設定部323は、当該抱き上げ動作における股関節404の屈曲許容角度が予め設定されており、当該抱き上げ動作において、被介護者402の股関節404の屈曲角度θxが0°≦θx≦30°になるように設定されている。
屈曲角度算出部324は、第1支え具201aと第2支え具201bによって掬い上げられる被介護者402の股関節404の屈曲角度を算出する。この実施形態では、第1支え具201aと第2支え具201bは、平坦なハンド部222a、222bで被介護者402の上半身と下半身を支承している。そして、屈曲角度算出部324は、第1支え具201aと第2支え具201bのハンド部222a、222bの平坦な面Pa、Pbが成す角度をθ1とし、当該角度θ1を180度から差し引くことにより、第1支え具201aと第2支え具201bによって掬い上げられる被介護者402の股関節404の屈曲角度θxを算出している。すなわち屈曲角度θxは、θx=180−θ1によって算出される。
制御装置は、第1支え具201aと第2支え具201bによる人の抱き上げ動作時において、屈曲角度算出部324によって算出された屈曲角度が、屈曲許容角度設定部323によって設定された屈曲許容角度の範囲内になるように、操作部202の操作に基づく支え具201の動作を補正する。この実施形態では、屈曲許容角度設定部323では、例えば、屈曲許容角度が30°として設定されている。このため、操作補正部312は、第1支え具201aと第2支え具201bによって掬い上げられる被介護者402の股関節404の屈曲角度θxが0°≦θx≦30°となるように、操作部202の操作に基づく支え具201a、201bの動作を補正する。
すなわち、この実施形態では、制御装置310は、アクチュエータ301a、301b〜305a、305bを駆動させることにより、操作部202の操作に基づく支え具201a、201bの動作を補正する。この実施形態では、かかる補正を具現化するため、制御装置310は仮想ポテンシャルエネルギ設定部313において、支え具201a、201bに作用させる力の大きさを規定する仮想ポテンシャルエネルギを設定している。
この実施形態では、仮想ポテンシャルエネルギは、屈曲許容角度設定部323によって設定された屈曲許容角度(この実施形態では、30°)の近くになると、それ以上、屈曲角度θxが大きくならないように、支え具201a、201bの動作を規制する。すなわち、この実施形態では、図27に示すように、屈曲角度θxに対して、支え具201a、201bに作用させる力の大きさを規定する仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebが設定される。そして、図27に示すように、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebが設定されている場合には、屈曲角度θxが0°と30°の近傍を除いて、0°<θx<30°の範囲で支え具201a、201bに作用させる力は小さい。そして、0°と30°の近傍において、徐々に仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebが大きくなり、屈曲角度θxが0°よりも小さくならないように、または、30°よりも大きくならないようになっている。
次に、屈曲角度θxが30°よりも小さい屈曲角度から30°よりも大きくならず、かつ、屈曲角度θxが30°になるように、支え具201a、201bを操作する場合を説明する。この場合は、図28に示すように、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebを設定するとよい。図28に示すように仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebが設定されている場合には、屈曲角度θxが30°よりも小さい屈曲角度から、屈曲角度θxが30°に近づくように支え具201a、201bに力が作用する。また、屈曲角度θxが30°を超えると急激に仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebが高くなり、屈曲角度θxが30°を超えるような操作に対しては、大きな反力が作用し、屈曲角度θxが30°を超えるような操作が規制される。
このため、この実施形態では、屈曲許容角度設定部323によって設定された屈曲許容角度の近くになると、制御装置310は、被介護者402の股関節404の屈曲角度が屈曲許容角度を超えないようにアクチュエータ301a、301b〜305a、305bを駆動させる。このとき、操作部202の操作に基づく支え具201a、201bの動作を補正する力が大きくなることにより、屈曲許容角度が超えないようにする。
これにより、被介護者402の股関節404の屈曲角度が屈曲許容角度を超えないように、支え具201a、201bの動作が規制される。すなわち、仮想ポテンシャルエネルギの作用によって、図21に示すように、被介護者402の股関節404の屈曲角度θxが0°の状態よりも小さくなって被介護者402の背中が反った状態になるのを防止することができる。また、図22に示すように、被介護者402の股関節404の屈曲角度θxが30°の状態よりも大きくなって被介護者402の腹部が圧迫される状態になるのを防止することができる。なお、この実施形態では、屈曲許容角度の下限値及び上限値として0°と30°が設定されているが、これに限定されない。この実施形態では、屈曲許容角度は、屈曲許容角度設定部323において、適当な角度を適宜に設定できる。
また、この実施形態では、当該第2工程において、図21および図22に示すように、制御装置310は、第1支え具201aと第2支え具201bによって被介護者402を支承した状態で抱き上げる動作を制御する。当該動作において、制御装置310は、第1支え具201aと第2支え具201bの高さ方向の動作と、被介護者402の股関節404を屈曲させる動作を連動させる。すなわち、被介護者402を抱き上げる動作において、被介護者402を抱き上げる高さが高くなるにつれて、第1支え具201aと第2支え具201bが徐々に回動し、被介護者402の股関節404が徐々に屈曲して適切な屈曲角になる。
このように、この移乗支援装置200によれば、第1支え具201aと第2支え具201bによって被介護者402を抱き上げる高さに応じて、被介護者402の股関節404を屈曲させることができる。これによって、被介護者402にとって楽な姿勢で被介護者402を抱き上げることができる。また、被介護者を降ろす第4工程においては、第1支え具201aと第2支え具201bによって被介護者402を降ろす際の下向きの移動動作と、被介護者402の股関節404の屈曲を戻す動作を連動させるとよい。
また、この実施形態では、図23、図24に示すように、制御装置310は、第1支え具201aと第2支え具201bによって被介護者402を抱き上げる動作において、第1支え具201aと第2支え具201bが被介護者402を支持する位置が、被介護者402に対して変化しないように、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路r1a、r1bを設定している。
すなわち、この実施形態では、制御装置310は、図23、24に示すように、支え具201a、201bで支承した被介護者402の股関節404の位置を特定する股関節特定部327を備えている。なお、この実施形態では、股関節特定部327は、例えば、体格情報記憶部321に記憶された体格情報(例えば、身長情報、体重情報)に基づいて、予め定められたプログラムによって被介護者402の股関節の位置404の位置を特定している。
制御装置310は、支え具201a、201bで支承した被介護者402を屈曲させる動作において、股関節特定部327によって特定された被介護者402の股関節の位置404に基づいて、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路r1a、r1bをそれぞれ設定する。この実施形態では、制御装置310の股関節特定部327は、図23、図24に示すように、被介護者402の股関節の位置404を特定し、動作経路設定部311は第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路r1a、r1bを設定する。この実施形態では、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路r1a、r1bは、それぞれ特定された被介護者402の股関節の位置404に対して、被介護者402の股関節の位置404を中心とした円弧になるように設定される。換言すれば、被介護者402を支承する支え具201a及び201bと被介護者402の人体との接触状態を維持しつつ、第1支え具201a及び第2支え具201bがそれぞれ股関節の位置404から一定の距離を維持しながら移動するように、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路がそれぞれ設定される。
さらに、この実施形態では、制御装置310は、被介護者402を屈曲させる動作において、ハンド部222a、222bと被介護者402の当接状態が維持されるように、ハンド部222a、222bを第2腕部233a、233bの長さ方向の軸周りに回動させる。
すなわち、この実施形態では、ハンド部222a、222bは、図12に示すように、当該ハンド部222a、222bが人を支承しているか否かを検知する検知センサ365(近接センサ366および圧力センサ367)を備えている。制御装置310は、当該検知センサ365によって、ハンド部222a、222bが被介護者402の背中および膝裏に当接した状態を検知する。そして、被介護者402を屈曲させる動作において、制御装置310は、当該検知をしつつ、当該当接状態が維持されるように、ハンド部222a、222bの回動角を変える。これによって、被介護者402を屈曲させる動作において、ハンド部222a、222bと被介護者402との当接状態が維持される。これによって、被介護者402を屈曲させる際、ハンド部222a、222bと被介護者402とのずれや摩擦を小さく抑えることができる。
なお、この実施形態では、制御装置310は、上述したように被介護者402を抱き上げる動作において、ハンド部222a、222bが設定された動作経路に沿って適切に動くように、仮想ポテンシャルエネルギによって、ハンド部222a、222bの操作を強く拘束する。これによって、被介護者402に負担を生じさせないように、被介護者402に対して、ハンド部222a、222bを適切に操作することができる。この点は、被介護者402を降ろす動作(第4工程)においても同様である。
また、制御装置310は、被介護者402を抱き上げた状態で移動させる第3工程においては、第1支え具201aと第2支え具201bで支承した被介護者402が障害物に当たらないように、操作部202の操作に基づく支え具201の動作を補正する。この実施形態では、制御装置310は、図14に示すように、移動経路上の障害物を検知する障害物検知部342を備えている。制御装置310は、第1支え具201aと第2支え具201bで支承した被介護者402が、当該障害物検知部342で検知された障害物に当たらないように、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路を設定する。
具体的には、この実施形態では、制御装置310は、姿勢情報記憶部328を備えている。姿勢情報記憶部328は、支え具201a、201bによって支承された被介護者402の姿勢に関する情報を記憶する。支え具201a、201bに支承された被介護者402の姿勢に関する情報は、例えば、操作部202の近傍に設けられた姿勢操作部(図示省略)によって、操作者(介護者401)によって入力される。例えば、操作者(介護者401)は、支え具201a、201bに支承された被介護者402の姿勢を見て、被介護者402の頭が左右どちらに向いているかなど、被介護者402の姿勢に関する情報を入力するとよい。
制御装置310(動作経路設定部)は、支え具201a、201bで被介護者402を支承した状態において、姿勢情報記憶部328に記憶された被介護者402の姿勢に関する情報に基づいて、被介護者402の頭の高さが足よりも上になるように支え具201a、201bを動作させる動作経路を設定する。なお、この実施形態では、制御装置310は、体格情報記憶部321に記憶された体格情報(例えば、身長情報、体重情報)と、支え具201a、201bの位置及び姿勢とに基づいて、予め定められたプログラムによって、被介護者402の概ねの姿勢(具体的には、被介護者402の頭の位置や、足の位置など)を認識することができる。このため、動作経路を設定する際は、被介護者402が、障害物検知部342で検知された障害物に当たらないように、適切な動作経路を設定することができる。
そして、制御装置310は、当該設定された動作経路に沿って、第1支え具201aと第2支え具201bが動作するように、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を駆動させて、操作部202の操作に基づく支え具201の動作を補正する。
これにより、第1支え具201aと第2支え具201bで被介護者402を支承した状態でも、被介護者402が、当該障害物検知部342で検知された障害物に当たらないように、第1支え具201aと第2支え具201bを動作させることが容易になる。
なお、この実施形態では、制御装置310は、上述したように被介護者402を抱き上げた状態で移動する動作において、ハンド部222a、222bが設定された動作経路に沿って適切に動くように、仮想ポテンシャルエネルギによって、ハンド部222a、222bの操作を強く拘束する。特に、左右のハンド部222a、222bの間隔や、左右のハンド部222a、222bの傾きなどに対して、仮想ポテンシャルエネルギによって、ハンド部222a、222bの操作を強く拘束する。これによって、被介護者402が不安定な姿勢になるのを防止できる。
次に、被介護者を降ろす第4工程では、移乗支援装置200は、ハンド部222a、222bが所定の距離よりもベッド410に近づくと、ハンド部222a、222bがゆっくりと動作するように(早く動かないように)、支え具201の動作速度が制限される。
すなわち、この実施形態では、移乗支援装置200は、図15に示すように、移乗支援装置200とベッド410との距離を検知する第1検知部361およびベッド410の載置面411に対する支え具201の高さを検知する第2検知部362を備えている。制御装置310は、当該第1検知部361によって検知された、移乗支援装置とベッド410との距離に基づいて、移乗支援装置200が、制御装置310に予め定められた距離よりもベッド410に近づくと、移乗支援装置200がゆっくり近づくように、移動体205の動作速度を制御装置310に予め定められた速度よりも遅い速度に制限する。また、制御装置310は、当該第2検知部362によって検知された、載置面411に対する支え具201の高さに基づいて、支え具201が、制御装置310に予め定められた高さよりもベッド410に近づくと、支え具201がゆっくりと動作するように、支え具201の動作速度を制御装置310に予め定められた速度よりも遅い速度に制限する。
これにより、被介護者402は、例えば、ベッド410に降ろされる際に、ハンド部222a、222bがベッド410に近づくと、ハンド部222a、222bの動作が遅くなり、ゆっくりとベッド410に降ろされる。このため、ベッド410に降ろされる際に、被介護者402が感じ得る不安感が軽減される。また、ハンド部222a、222bがベッド410に近づくと、ハンド部222a、222bの動作が遅くなるので、操作者(介護者401)にとっては、移乗支援装置200の操作がし易くなり、ハンド部222a、222bをベッド410に対して適切な位置に操作し易くなる。
次に、支え具201(ハンド部222a、222b)を引き抜く第5工程では、この実施形態では、ハンド部222a、222bに備え付けられた搬送ベルト241a、241bによって、被介護者402をベッド410の上に移動させるとよい。
また、この実施形態では、制御装置310には、図29に示すように、挿入モード(第1工程)、抱上モード(第2工程)、積載移動モード(第3工程)、抱下モード(第4工程)および引抜モード(第5工程)がそれぞれ設定されている。そして、各モードそれぞれにおいて、支え具201a、201bの動作経路が設定される。そして、動作経路r1a、r1bに沿って支え具201a、201bが動作するように、アクチュエータ301a、301b〜305a、305bを駆動させることにより、操作部202の操作に基づく支え具201a、201bの動作が補正される。
この実施形態では、図29に示すように、挿入モード(第1工程)、抱上モード(第2工程)、積載移動モード(第3工程)、抱下モード(第4工程)および引抜モード(第5工程)が、自動で切り替わる。
例えば、制御装置310は、挿入モード(第1工程)において、第2検知部362によりハンド部222a、222bの下面が載置面411に着いたことを検知し、かつ、人を支承しているか否かを検知する検知センサ365が人を支承していることを検知しているときに、操作レバー202a,202bにより抱上げ動作を行うための操作入力情報が入力されると、挿入動作が完了したと判断し、抱上モード(第2工程)に移行する。次に、抱上モード(第2工程)において、抱上げ動作を行い、同モードにおいて生成された経路の終点近傍に到着後、移動動作するための操作入力情報が入力されると、抱き上げ動作が完了したと判断し、積載移動モード(第3工程)に移行する。また、積載移動モード(第3工程)において、移動動作を行い、同モードにおいて生成された経路の終点近傍に到着後、抱き下ろし動作を行うための操作入力情報が入力されると、積載移動動作が完了したと判断し、抱下モード(第4工程)に移行する。さらに、抱下モード(第4工程)において、第2検知部362によりハンド部222a、222bの下面が載置面411に着いたことを検知し、かつ、引き抜き動作を行うための操作入力情報が入力されると、被介護者402を降ろす動作が完了したと判断し、引抜モード(第5工程)に移行する。制御装置310は、移乗支援装置200の各種センサの信号に基づいて、予め設定されたプログラムに基づいて各動作の完了を検知する。
このように、各モードが自動で行なわれると、スムーズにモードが切り替わり、操作性がよい。なお、各モードは、操作者が手動で切り替えるようにしてもよい。この場合、制御装置310は、移乗支援装置200の各種センサ信号に基づいて、手動でモードの切り替えをしてよい状態かどうかのチェックを行う。例えば、抱下モード(第4工程)から引抜モード(第5工程)に手動で切り替える場合には、第2検知部362によりハンド部222a、222bの下面が載置面411に着いていることを検知しているときにのみ、手動による引抜モード(第5工程)への移行を許可している。これによって、ハンド部222a、222bの下面が載置面411に着いていない状態にも拘らず、ベルトの回転を伴う引抜動作が行われることを防ぐことができる。すなわち、人を持ち上げた状態で誤ってベルトを回転させることを防ぐことができ、その安全性を確保できる。また、挿入モード(第1工程)と引抜モード(第5工程)の相互間の移行、および、抱上モード(第2工程)と抱下モード(第4工程)の相互間の移行も可能に設定してもよい。これにより、モードをまたぐ各種動作のやり直しを行うことができる。例えば、抱上モード(第2工程)時に、もう少し抱き下ろした状態にしたい場合には、抱下モード(第4工程)に移行し、そのまま抱き下ろし動作を行うことができる。
以上のとおり、この移乗支援装置200は、制御装置310が支え具201a、201bの動作経路r1a、r1bを設定する。さらに、動作経路r1a、r1bに沿って支え具201a、201bが動作するように、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を駆動させることにより、操作部202の操作に基づく支え具201a、201bの動作を補正する。このため、当該移乗支援装置200の操作の習熟度が低い操作者(介護者401)が操作した場合であっても、当該介護者401の操作が、制御装置310によって補正されるので、移乗支援を受ける人(被介護者402)の身体が無理な姿勢になるなど、移乗支援を受ける被介護者402に負担を強いるような操作を抑制できる。このため、操作者(介護者401)にとっては移乗支援装置200の操作が簡単であり、移乗支援を受ける被介護者402にとっても安心に介護を委ねることができる。
以上、本発明の一実施形態に係る移乗支援装置を説明したが、本発明の移乗支援装置は上記の実施形態に限定されない。
例えば、移乗支援装置の構造は上述した構造に限定されない。例えば、上述した実施形態では、支え具は、一方の支え具によって人の上半身を支承し、他方の支え具によって人の下半身を支承する、第1支え具と第2支え具を備えた構成を例示した。本発明においては、支え具は、人を支承できる構造を有していればよく、上述した実施形態に限定されない。また、制御装置の構成についても上述した実施形態に限定されない。上述した制御上の種々の特徴は、一つの移乗支援装置において具現化されている。
以下、本発明の他の実施形態に係る移乗支援装置を説明する。
(他の実施形態)
まず、図1により、介護者3が本実施の形態の移乗支援装置1を使用して、被介護者2の介護を行う場合の概要を説明する。図1は移乗支援装置1の使用時の状況を示す斜視図である。ここでは、病気の人、怪我をした人などを被介護者として説明する。
図1に示すように、本実施の形態の移乗支援装置1は、基本の移乗動作として、載置具上に載置されている被介護者2と載置具との間に左右の支え具16a、16bを挿入する動作(挿入動作)、支え具16a、16bの掬い面上に被介護者2を掬い上げる動作(抱上動作)、別の場所にある載置具のところまで任意の姿勢で移動する動作(積載移動動作)、支え具16a、16bを降下させ、載置具に降ろす動作(抱下動作)、載置具と被介護者2との間から支え具16a、16bを引き抜く動作(引抜動作)がある。これにより、介護者3は被介護者2を他の載置具に任意の姿勢で移乗させることができる。
これらの基本の移乗動作を行うにあたって、介護者3は、被介護者2に無理のない、負担の少ない動作を行う必要がある。
このため、本実施の形態の移乗支援装置1は、載置具に載置されている被介護者2を支え具16a、16bで掬い上げ他の載置具に移乗させるとき、被介護者2の身体に係わる特徴を示す身体情報を取得し、被介護者2を支え具16a、16bで保持するとき、身体情報に基づいて支え具16a、16bの目標位置および目標姿勢を決定するための動作姿勢経路の情報を生成し、動作姿勢経路情報に基づいて支え具16a、16bを目標位置および目標姿勢をとるように支持することを特徴とする。
これにより、移乗支援装置1は、被介護者2の身体情報に基づいて、習熟度の低い操作者が操作した場合であっても、被介護者2にとって無理のない動作を行い、負担が少ない姿勢を取らせて移乗することができる。
また、移乗支援装置1は、被介護者2の身体情報(体格情報)に基づいて、被介護者2にとって極めて負担となる極端な姿勢がないように動作制限を設け、この動作制限の範囲の中で支え具16a、16bの位置/姿勢を制御している。この動作制限の範囲内でスムーズな動作を行うため、後述するように、動作姿勢経路上の各位置ごとに仮想ポテンシャルエネルギの考えを導入し、動作制限からくる限界の姿勢に対して仮想ポテンシャルエネルギを急激に高めるようしている。これにより、移乗支援装置1は、動作制限内で仮想ポテンシャルエネルギが低くなる側へ支え具16a、16bを動作するように制御される。これにより、被介護者2に負担を強いることはない、安全で安心な移乗支援装置1を提供できる。また、移乗支援装置1は、仮想ポテンシャルエネルギの勾配の持たせ方によりスムーズに操作することができる。
以下、左右の支え具を用いて載置具に載置されている人体を掬い上げ他の載置具に移乗させる場合について説明する。
つぎに、本実施の形態における移乗支援装置1の構造について図2を用いて説明する。図2は移乗支援装置1の要部の構造を示す斜視図である。
まず、図2を用いて、移乗支援装置1の構成を説明する。なお、図2において、互いに直交する3つの軸(X軸、Y軸およびZ軸)は、XY平面が地面に対して平行な水平面であり、移乗支援装置1は正面がX方向を向いている。
移乗支援装置1は、左右の支え具16a、16bと、被介護者2の身体にかかわる特徴を示す身体情報を取得する身体情報取得部600と、被介護者2を支え具16a、16bで保持するとき、身体情報に基づいて支え具16a、16bの目標位置および目標姿勢を制御するための動作制御情報(以下、「動作姿勢経路情報」という)を生成する制御装置110と、動作姿勢経路情報に応じて支え具16a、16bが目標位置および目標姿勢をとるように支え具16a,16bを支持する支持部4a、4bと、支え具16a,16bを操作するための指示情報を入力するための操作部14a、14b(入力部)とを備えている。
支え具16a、16bは、載置具に載置された被介護者2と載置具の載置面の間に挿入し、被介護者2を掬う目的で配設されている。支え具16a、16bは、支え具16a、16b上に掬い上げた被介護者2を支えている位置を変えるためのベルト部23a、23b(搬送ベルト)と、支え具16a、16bの下面が載置具の戴置面の上面に着床したことを検知するための着床検知手段としての着床検知センサ32a、32b(例えば、圧力センサ)とを備えている。
ベルト部23a、23bは、後述するベルト駆動部25(図3)により、支え具16a、16bを挿入または引き抜くときに、挿入または引き抜きに同期して駆動され、回転する。これにより、接触面における被介護者2との相対速度を「0」にし、被介護者2の背面と載置具の載置面との位置ずれを防止できる。ここで、支え具16aに係るものをベルト部23aとし、支え具16bに係るものをベルト部23bとする。また、ベルト部23a、23bは支え具16a、16bの上側の表面に露出しており、被介護者2をベルト部23a、23bに乗せた状態で移動させることができる。
着床検知センサ32a、32bは、支え具16a、16bの挿入方向について前側下面の両端部近傍に各々複数設けられ、支え具16aに設けられた着床検知センサを着床検知センサ32aとし、支え具16bにある着床検知センサを着床検知センサ32bとする。
支持部4a、4bは、支え具16a、16bを被介護者2と載置具の載置面との間に挿入するための支え具挿入手段としてのベース6a、6bと、支え具16a、16bを昇降させる昇降手段としての脚部8a、8bと、支え具16a、16bの姿勢を変更する関節部13a、13b、関節部15a、15bおよびアーム部12a、12bとを備えている。これにより、支持部4a、4bは、支え具16a、16bが目標位置および目標姿勢になるように支持することができる。ここで、支え具16aに係るものを支持部4aとし、支え具16bに係るものを支持部4bとする。
関節部13a、13bは、支え具16a、16bの姿勢をかえる第1の回動手段として設けられ、位置/姿勢の基準となる支持部4a、4bに対してX軸回りに回動動作を行う。ここで、支え具16aに対して回動動作を行うものを関節部13aとし、支え具16bに対して回動動作を行うものを関節部13bとする。同様に、関節部15a、15bは、支え具16a、16bの姿勢をかえるための第2の回動手段として設けられ、支持部4a、4bに対してY軸回りに回動動作を行う。ここで、支え具16aに対して回動動作を行うものを関節部15aとし、支え具16bに対して回動動作を行うものを関節部15bとする。関節部13a、13b、15a、15bには、それぞれに1軸方向に回転可能な公知の軸受機構を用いることができ、モータ等を動力源とした関節駆動部114により駆動される。
アーム部12a、12bは、関節部13a、13bと関節部15a、15bとを連結する。ここで、関節部13a、15aに連結されるものをアーム部12aとし、関節部13b、15bに連結されるものをアーム部12bとする。なお、アーム部12a、12bに伸縮機構を設け、このアーム部12a、12bの伸縮動作によって支え具16a、16bの相対位置を変更可能にしてもよい。
ベース6a、6bには、複数の車輪5が配設されている。車輪5は、モータ等を動力源とした位置駆動部116により駆動され、移乗支援装置1の全体を自立して前後左右に移動させ、Z軸の回りに回動させ、絶対姿勢を変更することができる。ここで、支え具16a側にあるものをベース6aとし、支え具16b側にあるものをベース6bとする。ベース6aとベース6bとは連結部10により連結され、連結部10は必要に応じて、車輪5の動作に合わせて伸縮し、支え具16aと支え具16bとの間隔を調整し、相対位置をかえる。なお、支え具挿入手段としては、車輪5とアーム部12a、12bとを併用する構成や、アーム部12a、12bのみの構成でもよい。アーム部12a、12bのみを使用する場合には、アーム部12a、12bの伸縮動作によって支え具16a、16bの位置を変更する。
脚部8a、8bは、ベース6a、6bと関節部15a、15bとを連結し、スライド機構により支え具16a、16bを昇降させる。スライド機構はモータ等を動力源とした昇降駆動部118により駆動される。ここで、支え具16aに係るものを脚部8aとし、支え具16bに係るものを脚部8bとする。なお、他の昇降手段として、複数のリンクを組み合わせて、連結した部分の角度を変更可能にすることで支え具16a、16bを昇降させ、相対位置をかえるようにしてもよい。
身体情報取得部600は、公知の取得手段により、被介護者2の身体にかかわる特徴を示す身体情報を取得する。例えば、介護者3の手入力によって入力された情報を取得するようにしてもよい。また、無線ICタグにより管理されている被介護者2の情報を取得するようにしてもよい。他の例では、被介護者2を管理しているICカードから取得するようにしてよい。移乗支援装置1は、被介護者2の身長情報、関節位置情報および肉厚情報を身体情報として取得することによって、被介護者2を救い上げて支えるときの支え具16a、16bの最適な位置/姿勢を設定でき、さらに、被介護者2にとって無理のない動作と、負担の少ない姿勢をとることができる。
なお、取得された身長情報および体重情報に基づいて標準的な関節位置情報および肉厚情報を生成することができる場合には、身体情報として、身長情報および体重情報を取得するようにしてもよい。例えば、標準身長および標準体重に対する標準関節位置情報および標準肉厚情報をもつ標準人体テーブルを備え、この標準人体テーブルに基づいて、標準関節位置情報および標準肉厚情報を得ることができる。
さらに、被介護者2の動かすことができない怪我や負傷部分の位置などの部位情報を取得するようにしてもよい。この部位情報を予め取得することで、移乗支援装置1が行う基本の移乗動作に対して、被介護者2にとって無理のない動作と負担の少ない姿勢を予め動作条件として設定することが可能となる。詳細については後述する。
制御装置110は、支え具16a、16bを動作させる動作経路を設定する。すなわち、制御装置110は、被介護者2を支え具16a、16bで保持するとき、取得した身体情報に基づいて支え具16a、16bの目標位置および目標姿勢を決定するための動作姿勢経路情報を生成する。また、制御装置110は、動作姿勢経路情報に基づいて、関節駆動部114、位置駆動部116、昇降駆動部118およびベルト駆動部25の制御を行う。これにより、支え具16a、16bの位置/姿勢が目標位置および目標姿勢をとるように制御することができる。
操作部14a、14b(入力部)は、移乗支援装置1を操作するための指示情報を入力するためのものである。操作部14a、14bは、操作意思の一例として、操作力の検知を前後左右上下方向および各方向における回転を含む6軸力センサなどで指示情報を取得する。この指示情報は制御装置110に伝達され、制御装置110は上記した各駆動部分を制御する。なお、操作部14a、14bは、仮想的に外力を生成することができるものであればよい。例えば、必要な指示情報に応じて、ジョイスティック、レバー、プッシュスイッチ、タッチパネルなどの公知の入力手段が使用できる。介護者3は、この操作部14a、14bを操作することにより、移乗支援装置1を操縦することができる。なお、操作部14a、14bに、入力操作を補助するための報知手段または表示手段をさらに備えてもよい。
つぎに、移乗支援装置1の電気的な構成について、図3を用いて説明する。図3に示すように、移乗支援装置1は、操作指令を入力するための操作部14a、14bと、関節部13a、13b、15a、15bを駆動する関節駆動部114と、ベルト部23a、23bを駆動するベルト駆動部25と、脚部8a、8bをスライドさせる昇降駆動部118と、ベース6a、6bを駆動する位置駆動部116と、制御装置110とを備えている。さらに、移乗支援装置1は入出力手段として、被介護者2の身体情報を取得する身体情報取得部600と、支え具16a、16bの着床状態を検知するための複数の着床検知センサ32a、32bとを備えている。関節駆動部114、ベルト駆動部25、昇降駆動部118および位置駆動部116には、それぞれ公知のモータ等を動力源とした駆動手段を用いることができる。
つぎに、移乗支援装置1の機能について説明する。
まず、上記の構成により、本発明の実施の形態における移乗支援装置1では、制御装置110により、被介護者2の身体特徴を示す身体情報を身体情報取得部600から取得し、取得した身体情報に基づいて複数の支え具16a、16bの目標位置および目標姿勢を決定するための動作姿勢経路情報を生成する。そして、制御装置110は、生成された動作姿勢経路情報(動作経路)に沿って支え具16a、16bが動作するように、上記の各駆動部114、116、118(アクチュエータ)を駆動させることにより、操作部14a、14bの操作に基づく支え具16a、16bの動作を補正する操作補正部として機能する。すなわち、制御装置110は、動作姿勢経路情報にもとづいて、関節駆動部114、位置駆動部116、昇降駆動部118およびベルト駆動部25の制御を行う。これにより、移乗支援装置1は、支え具16a、16bの位置/姿勢が目標位置および目標姿勢となるように制御することができる。
また、移乗支援装置1は、支え具16a、16bそれぞれの下面に着床検知センサ32a、32bを離間して設け、脚部8a、8bのスライド動作によって支え具16a、16bが載置面に着床したことを検知することができる。
つぎに、移乗支援装置1の動作姿勢経路情報に基づく動作制御について詳細に説明する。図4は、本発明の実施の形態における移乗支援装置1の動作制御にかかわる構成を示すブロック図である。
図4に示すように、操作部14a、14bは、介護者3の操作意思を検出する操作意思検出部609と、介護者3が動作姿勢経路を修正するときの修正意思を検出する修正意思検出部607と、動作モードを設定する動作モード設定部611と、被介護者2の頭の向きを取得する人体方向検出部627とを備えており、移乗支援装置1の動作に合わせて、各種操作指示が入力される。
操作意思検出部609は、介護者3によって、操作部14a、14bが所定の方向に所定の操作力で所定の期間操作されたとき、介護者3の操作意思があると判定する。操作意思検出部609は、介護者3の操作意思に応じて、移乗支援装置1の動作/維持の操作意思情報を制御装置110に出力する。移乗支援装置1を動作させない場合には、移乗支援装置1はその操作前の状態を維持する。また、操作意思情報は、介護者3の意思にかかわる情報であり、操作開始、操作停止、操作維持などを操作意思判断部610を介して、動作経路生成部604に反映される。
なお、操作部14a、14bの操作に対して、過敏な装置の応答をさけるため、操作方向、操作力に対して所定の不感帯を設けるようにしてもよい。
修正意思検出部607は、介護者3によって、動作姿勢経路情報に基づいて設定された目標位置および目標姿勢に対して、決定された動作経路から離れる方向に操作部14a、14bが操作されたときに介護者3の修正意思があると検出する。ここで、修正意思検出部607は、所定の操作力で所定の期間、操作部14a、14bが操作されたときに入力ありと判断する。修正意思検出部607は、介護者3の修正意思に応じて、移乗支援装置1の設定された目標位置および目標姿勢を修正するための修正意思情報を制御装置110に出力する。移乗支援装置1の目標位置および目標姿勢を修正しない場合には、動作姿勢経路情報は修正されない。
動作モード設定部611では、被介護者2を移乗させるときに、各動作に応じた動作モードを設定する。例えば、支え具16a、16bを載置具に着床させ被介護者2と載置具との間に挿入する第1の動作モード(挿入モード)と、支え具16a、16bを上昇させ、被介護者2を掬う第2の動作モード(抱上モード)と、支え具16a、16bを移動させ、被介護者2を第2の載置具(図示せず)まで移動する第3の動作モード(積載移動モード)と、支え具16a、16bを降下させ、被介護者2を第2の載置具の載置面まで下げる第4の動作モード(抱下モード)と、支え具16a、16bを被介護者2と載置具との間から引き抜く第5の動作モード(引抜モード)等、移乗時の基本動作に対して動作モードを設定する。介護者3は、被介護者2を移乗させる場合、この5つに区分された移乗形態に応じて、各動作モードを選択することにより、移乗時の一連の基本動作に対して移乗支援装置1を操作することができる。なお、これらの移乗の基本動作に加えて、操作前後の準備その他のステップを考慮してさらに細分化できることはいうまでもない。
制御装置110は、被介護者2の身体にかかわる特徴を示す身体情報を身体情報取得部600から取得する。例えば、動作経路生成部604は、身体情報として、身長情報、関節位置情報および肉厚情報を直接に取得する。可動域情報生成部605は、この取得された身長情報、関節位置情報および肉厚情報に基づいて、被介護者2の関節における屈曲方向および可動範囲を示す可動域情報を生成する。動作経路生成部604は、生成された可動域情報に基づいて支え具16a、16bの位置/姿勢に対して制限を設けた第1の動作姿勢経路の情報を生成する。
なお、動作経路生成部604は、身長情報、関節位置情報および肉厚情報を間接的に取得するようにしてもよい。この場合には、身長情報および体重情報に基づき標準関節位置情報および標準肉厚情報を生成する。
例えば、図4に示すように、標準身長および標準体重に対応付けられた標準関節位置情報および標準肉厚情報をもつ標準人体テーブルを標準人体情報記憶部602に記憶しておき、個別人体情報作成部601はこの標準人体テーブルに従って、身長情報および体重情報から標準関節位置情報および標準肉厚情報を生成し、身長情報、標準関節位置情報および標準肉厚情報を個別人体情報記憶部603に記憶する。
可動域情報生成部605は、個別人体情報記憶部603に記憶されている、身長情報、標準関節位置情報および標準肉厚情報に基づいて被介護者2の関節における屈曲方向および可動範囲を示す可動域情報を生成する。動作経路生成部604は、生成された可動域情報に基づいて位置/姿勢に対して制限を設けた第1の動作姿勢経路の情報を生成する。
これにより、身体情報として、一般的な情報として管理される、身長情報および体重情報を利用することができる。
さらに、制御装置110で、被介護者2の動かすことができない怪我や負傷部分の位置等の部位情報を取得するようにしてもよい。この場合には、可動域情報生成部605は、部位情報に基づいて被介護者2の関節における屈曲方向および可動範囲を示す可動域情報を生成し、動作経路生成部604は、可動域情報生成部605で生成された可動域情報に基づいて支え具16a、16bの位置/姿勢に対して制限を設けた第1の動作姿勢経路の情報を生成する。
このように部位情報を予め取得することで、移乗支援装置1が行う基本の移乗動作に対して、被介護者2にとって無理のない動作と負担の少ない姿勢を予め動作条件として設定することが可能となる。これにより、被介護者2をベッドなどから掬い上げるときに、部位情報から怪我や負傷部分の位置を避けた可動域情報を生成し、生成された可動域情報に基づいて相対位置および相対姿勢に対して制限を設けた第1の動作姿勢経路情報を生成し、第1の動作姿勢経路情報に基づく動作姿勢経路に沿った動きになるように支え具16a、16bの間隔を設定して掬い上げることができる。また、被介護者2が腰を痛めていることを示す部位情報が含まれている場合には、支え具16a、16bの屈曲角度に制限を持たせた動作条件を設定し、制限を設けた第1の動作姿勢経路情報を生成することができる。これにより、被介護者2にとって、より安全で安心することできる移乗支援装置1を実現することができる。
動作モード設定部611によって設定された動作モードに応じて、動作モード情報記憶部606から基本動作を行うための基本動作姿勢経路情報を取得し、その動作モードに係る基本動作をアシストするための情報が動作経路生成部604に出力される。
動作モード設定部611は、設定された動作モードを開始の動作モードとし、上述した第1〜第5の動作モードをシーケンシャルに全部または一部を自動で設定して実行することができる。これにより、移乗支援装置1は、移乗動作を行う場合には、上述した第1〜第5の動作モードをシーケンシャルに全部または一部を自動で実行することができる。介護者3は、移乗形態に応じて、必要とする動作モードから実行すればよい。また、特定の動作モードを選んで実行すればよい。
基本動作経路情報切替部612は、実行する動作モードに応じて動作モード情報記憶部606にあらかじめ記憶されている基本動作姿勢経路情報を選択して取得し、動作経路生成部604に送信する。したがって、介護者3は、複数の動作モードの中から必要な動作モードを選択するだけで、第1〜第5の動作モードに係る基本動作に係る動作のアシストを受けることができる。
制御装置110は、第1〜第5の動作モードごとに、移乗支援装置1が被介護者2を移乗するために必要な動作に係る第1の動作姿勢経路情報613、第2の動作姿勢経路情報614を動作経路生成部604から出力する。
なお、制御装置110は、操作意思判断部610により、操作意思検出部609からの操作意思情報を判断し、介護者3の操作意思に応じて、移乗支援装置1を動作させるか否かを決定する。移乗支援装置1を動作させない場合には、移乗支援装置1はその操作前の状態の動作を維持する。また、制御装置110は、動作経路修正部608により、修正意思検出部607からの修正意思情報を判断し、介護者3の修正意思に応じて、移乗支援装置1の位置/姿勢、支え具の位置/姿勢を修正するか否かを決定する。移乗支援装置1の位置/姿勢をさらに修正する場合には、動作経路生成部604にその修正内容を通知する。修正しない場合には、動作経路生成部604に対して何もせず、結果、動作姿勢経路情報は修正されない。
動作制御情報生成部615は、上述の第1の動作姿勢経路情報613に基づいて複数の支え具16a、16bの位置/姿勢動作を制御するための動作制御情報を生成する第1動作制御情報生成部616と、第2の動作姿勢経路情報614に基づいて装置全体の位置/姿勢を制御するための動作制御情報を生成する第2動作制御情報生成部617とを備えている。
第1動作制御情報生成部616で生成された動作制御情報(F1、F2)は支え具制御部618に出力され、支え具16a、16bを協調動作させながら、支え具16a、16bの位置/姿勢動作を制御する。支え具制御部618は、第1の動作姿勢経路情報613に基づく動作制御情報(F1、F2)により、被介護者2と左右の支え具16a、16bとの相対位置および姿勢の制御を行う。これにより、支え具制御部618は、脚部8a、8bを動作させて支え具16a、16bを上下に移動するほか、関節部13a、13b、15a、15bに備えた回転機構により、支え具16a、16bをX軸回りに回転させ、必要に応じてY軸回りに傾斜させる。
第2動作制御情報生成部617で生成された動作制御情報(F3)は装置全体の位置/姿勢を制御する協調動作制御部626に送信される。
協調動作制御部626は、装置全体の位置/対姿勢の情報に基づいて、支え具16a、16bの位置/姿勢動作を補正するために制御信号を支え具制御部618に送信し、さらに、移動ベース制御部619に装置全体の位置を制御するための制御信号を送信する。これにより、協調動作制御部626は、第2の動作姿勢経路情報614に基づく動作制御情報(F3)に基づき、装置全体の位置/姿勢と、それに応じて支え具16a、16bの位置/姿勢動作を補正するように制御する。
支え具16a、16bの現在位置およびそのときの姿勢は、逐次検出部(図示せず)で検出され、支え具制御部618および移動ベース制御部619にフィードバックされ、さらに、身体情報に基づいた可動域情報生成部605に反映され、被介護者2にとって負担が少ない姿勢になるように移乗支援装置1の姿勢が制御される。
以上述べたように、移乗支援装置1は、身体情報に基づいて左右の支え具16a、16bの目標位置および目標姿勢を決定するための第1および第2の動作姿勢経路情報を動作経路生成部604で生成する。また、移乗支援装置1は、この第1および第2の動作姿勢経路情報および操作意思情報に基づいて、その動作を制御する。
つぎに、被介護者2と支え具16a、16bとの相対位置および相対姿勢に関する処置について説明する。
動作経路生成部604は、被介護者2と支え具16a、16bとの相対位置および相対姿勢に関し、あらかじめ定められた動作条件を維持する第1の動作姿勢経路を決定するための第1の動作姿勢経路情報613を生成する。また、動作経路生成部604は、第1の動作姿勢経路を定義するための第2の動作姿勢経路を決定するための第2の動作姿勢経路情報614を生成する。この第1の動作姿勢経路と第2の動作姿勢経路の詳細については後述する。
支え具16a、16bは、被介護者2との接触位置において、それぞれ被介護者2と略平行であり、支え具16a、16bと被介護者2とは相対位置ずれまたは相対姿勢ずれのないことを動作条件としている。したがって、支え具16a、16bは、被介護者2に対して、動作時に皮膚の擦れを発生させ難い。
なお、動作経路生成部604は、人体方向検出部627により被介護者2の頭の向きを検出し、被介護者2の足部の高さが頭部の高さより上になるのを防止するように第1または第2の動作姿勢経路情報613を設定している。これにより、被介護者2に負担をかける姿勢になり難くしている。
つぎに、動作経路生成部604において移乗支援装置1の支え具16a、16bおよび移乗支援装置1全体の絶対位置ならびに絶対姿勢を制御するための動作制御情報である第1の動作姿勢経路情報613、第2の動作姿勢経路情報614を生成する方法について、図5〜図11により説明する。
図5は、移乗支援装置1の動作姿勢経路の定義を示す斜視図である。図5において、S1、S2は被介護者2と支え具16a、16bとの相対位置および相対姿勢に関する動作経路である第1の動作姿勢経路を示している。第1の動作姿勢経路S1,S2は第1の動作姿勢経路情報613に基づき決定される。また、S3は第1の動作姿勢経路を定義する第2の動作姿勢経路を示している。第2の動作姿勢経路S3は、移乗支援装置1全体の絶対位置ならびに絶対姿勢を制御する第2の動作姿勢経路情報614に基づき決定される。本実施の形態における移乗支援装置1は、移乗支援装置1の運動に関し、仮想ポテンシャルエネルギを用いることによって支え具16a、16bおよび移乗支援装置1に作用する仮想外力を算出し、動作姿勢経路および動作可動域を決定している。
ここで、図5および図7に示す各記号を説明する。
Σ0は、静止座標系である基準座標系を示している。
Σ2は、両支え具16a、16b全体を代表する点を原点とし、支え具16a,16bと共に動く支え具16a、16b全体の座標系を示している。
Σ1は、原点が支え具16a、16bの代表点と一致し、X軸がΣ2のX軸と一致する座標系である。Σ1は、Σ2の基準となる座標系である。
Σhrは、支え具16aに固定され、支え具16aと共に動く支え具16aの座標系を示している。
Σhlは、支え具16bに固定され、支え具16bと共に動く支え具16bの座標系を示している。
0r2は、Σ0からΣ2への位置ベクトルである。
2rhrは、Σ2からΣhrへの位置ベクトルである。
2rhlは、Σ2からΣhlへの位置ベクトルである。
0R2は、Σ0から見たΣ2の姿勢を表す回転行列である。
2Rhrは、Σ2から見たΣhrの姿勢を表す回転行列である。
2Rhlは、Σ2から見たΣhlの姿勢を表す回転行列である。
図6に示すように、第1の仮想ポテンシャルエネルギ生成部620及び第2の仮想ポテンシャルエネルギ生成部622は、第1の動作姿勢経路情報613が入力され、第1の動作姿勢経路情報613に基づく第1の動作姿勢経路上の各点における仮想ポテンシャルエネルギをそれぞれ生成する。第1の仮想外力算出部621及び第2の仮想外力算出部623は、この仮想ポテンシャルエネルギに基づく仮想外力情報F1、F2をそれぞれ支え具制御部618に出力する。
同様に、第3の仮想ポテンシャルエネルギ生成部624は、第2の動作姿勢経路情報614が入力され、第2の動作姿勢経路情報614に基づく第2の動作姿勢経路上の各点における仮想ポテンシャルエネルギを生成する。第3の仮想外力算出部625は、この仮想ポテンシャルエネルギに基づく仮想外力情報F3を協調動作制御部626に送信する。協調動作制御部626は、移乗支援装置1全体に係るかかるものは移動ベース制御部619に出力し、支え具16a、16bに係るものは支え具制御部618に出力する。
図7は、被介護者2と支え具16a、16bとの相対的な位置関係を示している。ここで、Σ2の座標系はΣ1の座標系に対してX軸周りに0θx回転したものである。身体情報に基づく支え具16a、16bの動作制限に関し、頭部の高さを足部の高さより上にするための条件は、下記式(2)のようになる。
以下、図7中の各記号を説明する。
Oは、被介護者2の関節位置(股関節の位置)を示している。
srは、支え具16aの中心caを通り、支え具16aが被介護者2を支承する面に平行な直線を示している。
hrは、被介護者2の関節位置Oと支え具16aの中心caとを結んだ直線を示している。
slは、支え具16bの中心cbを通り、支え具16bが被介護者2を支承する面に平行な直線を示している。
hlは、被介護者2の関節位置Oと支え具16bの中心cbとを結んだ直線を示している。
1θhlは、Σ1のy軸(y1)とhl軸の間のΣ1のx軸周りの角度を示している。1θhlは、図7において時計回りの方向を正とする。
2θhlは、Σ2のy軸(y2)とhl軸の間のΣ1のx軸周りの角度を示している。2θhlは、図7において時計回りの方向を正とする。
hlθslは、hl軸とsl軸の間のΣ1のx軸周りの角度を示している。hlθslは、図7において時計回りの方向を正とする。
1θhrは、Σ1のy軸(y1)とhr軸の間のΣ1のx軸周りの角度を示している。1θhrは、図7において反時計回りの方向を正とする。
2θhrは、Σ2のy軸(y2)とhr軸の間のΣ1のx軸周りの角度を示している。2θhrは、図7において反時計回りの方向を正とする。
hrθsrは、hr軸とsr軸の間のΣ1のx軸周りの角度を示している。hrθsrは、図7において反時計回りの方向を正とする。
0θxは、Σ1のy軸(y1)とΣ2のy軸(y2)の間のΣ1のx軸周りの角度を示している。0θxは、図7において反時計回りの方向を正とするが、時計回りの方向を正としてもよい。
また、被介護者2の屈曲角度を例えば0〜90度とする条件は、下記式(3)のようになる。
被介護者2の関節位置O(股関節の位置)から支え具16a、16bの中心ca,cbまでの距離をそれぞれRr、Rlとし、身長情報に基づく長さLbr、Lbl、被介護者2の厚み(例えば、背中から胸までの厚みを半分にした値)を示す肉厚情報に基づく厚みをLtr、Ltlとすると、下記式(4)、(5)の条件のようになる。
ここで、右側支え具は反時計周りを正方向、左側支え具は時計回りを正方向とする。また、支え具16a、16bは、それぞれ第1の動作姿勢経路S1、S2上にあり、被介護者2との接触位置において被介護者2と略平行となる姿勢を維持する。
図8は、座標系Σ2から見た第1の動作姿勢経路上の点Pa(位置/姿勢)における仮想ポテンシャルエネルギの例を示す。第1の動作姿勢経路(S1)上の点Pa(図7)の位置/姿勢をPa(a、b、c)とした場合、図8(a)では、位置y2に関する仮想ポテンシャルエネルギ、位置z2に関する仮想ポテンシャルエネルギ、姿勢2θhrに関する仮想ポテンシャルエネルギの状態を示す。
また、図8(b)は、第1の動作姿勢経路(S1)上の各点における支え具16aの姿勢に関し、身体情報に基づく姿勢制限を示している。ここでは、0θx、2θhl、hrθsr、hlθslがある値のとき支え具16aの姿勢を定義する2θhrが取りうる範囲の例を示している。
図9(a)(b)に示すように、姿勢cに対する制限条件は、被介護者2が支え具16a、16bで保持されるときの屈曲角度により異なる。例えば、図9(a)に示すように、被介護者2が支え具16a、16bによって90度の姿勢で持ち上げられている場合には、姿勢2θhrに関する仮想ポテンシャルエネルギは図9(b)に示すようになる。被介護者2の屈曲角度が90度よりも大きくなる姿勢になると、被介護者2に負担を強いることになる。このため、図9(b)に示すように、姿勢cがCmax以上にならないように、仮想ポテンシャルエネルギをCmax以上で急激に高くするようにしている。移乗支援装置1は、仮想ポテンシャルエネルギが低くなる側へ支え具16a、16bを動作すべく制御するため、屈曲角度が90度未満になるように制御され、被介護者2に負担を強いることはない、安全で安心な移乗支援装置1を提供できる。
同様に、図9(c)は、被介護者2が支え具16a、16bによって0度の姿勢で持ち上げられる場合の姿勢2θhrに関する仮想ポテンシャルエネルギの例を示すもので、図9(d)に示すように、Cmin以下となる姿勢cでは、被介護者2の身体を逆にそらせた姿勢(さば折状態)になるため、被介護者2の身体を逆にそらせない姿勢cをとるように、Cmin以下で仮想ポテンシャルエネルギを急激に高くするよう生成する。
つぎに、図10を用いて第2の動作姿勢経路上の位置における仮想ポテンシャルエネルギについて説明する。
図10(a)において、第2の動作姿勢経路上の点Pcの絶対位置および絶対姿勢をPc(A、B、C、D、E)とした場合、図10(b)は、各位置A、B、Cおよび姿勢D、Eでの仮想ポテンシャルを示す。ここで、姿勢Dは移乗支援装置1の進行方向の姿勢であり、姿勢Eは移乗支援装置1の傾き姿勢とする。図10(c)は、第2の動作姿勢経路上の各位置における姿勢Eに関し、身体情報に基づき、第1の動作姿勢経路に基づく支え具16a、16bの位置/姿勢においてあらかじめ定めた動作条件を満足する範囲を示したものである。移乗支援装置1は、決定された姿勢Eに対応して、適切な仮想ポテンシャルエネルギを生成し、この仮想ポテンシャルエネルギが低くなる側への移乗支援装置1の傾き姿勢を制御する。
つぎに、移乗支援装置1の動作について説明する。図11は、本実施の形態における移乗支援装置1の動作を示すフローチャートである。
図11に示すように、移乗支援装置1は、装置全体が載置具に近づくと、被介護者2の身体情報を身体情報取得部600を用いて取得する(S100)。
つぎに、移乗支援装置1は、移乗形態に応じて、その基本動作を設定するための動作モードを設定する(S102)。新たに動作モードが設定された場合には、基本動作経路情報切替部612により、動作モード情報記憶部606から設定された動作モードに応じた基本動作経路情報を選択して取得し、動作経路生成部604に送信する。設定されている動作モードが同じ場合には、S106とS108はスキップされる(S104、106、S108)。
つぎに、移乗支援装置1は、支え具16a、16bの現在の位置/姿勢の情報を取得するとともに移乗支援装置1全体の現在の位置/姿勢の情報を取得し(S110)、身体情報に基づいて、可動域情報生成部605により、支え具16a、16bの現在の位置/姿勢情報および移乗支援装置1全体の現在の位置/姿勢の情報に応じて動作制限情報(以下、この可動可能な範囲を示す動作制限情報を「可動域情報」という)を生成する(S112)。
つぎに、移乗支援装置1は、動作経路生成部604により、各動作モードごとに、可動域情報に基づいて、支え具16a、16bの位置/姿勢を決定するための第1の動作姿勢経路の情報として第1の動作姿勢経路情報613を出力するとともに、移乗支援装置1全体の現在の位置/姿勢を決定するための第2の動作姿勢経路の情報として第2の動作姿勢経路情報614を出力する(S114)。
つぎに、移乗支援装置1は、第1の動作姿勢経路情報613に基づいて、第1の仮想ポテンシャルエネルギ生成部620及び第2の仮想ポテンシャルエネルギ生成部622で仮想ポテンシャルエネルギを生成する。第1の仮想外力算出部621、第2の仮想外力算出部623は、仮想ポテンシャルエネルギに基づいて、仮想ポテンシャルエネルギが低くなる側へ支え具16a、16bを動作すべく、仮想外力情報F1、F2を支え具制御部618に送信する。これにより、移乗支援装置1は、身体情報にもとづき、基本動作に適切な第1の動作姿勢経路に沿うように支え具16a、16bの位置/姿勢を制御する。これにより、介護者3は、被介護者と2と支え具16a、16bの関係を逐一意識することなく移乗支援装置1をすることができる。同様に、移乗支援装置1は、第2の動作姿勢経路情報614に基づく第2の動作姿勢経路上における移乗支援装置1の姿勢を制御するため、第3の仮想ポテンシャルエネルギ生成部624で仮想ポテンシャルエネルギを生成し、第3の仮想外力算出部625でこの仮想ポテンシャルエネルギが低くなる側への移乗支援装置1の姿勢を変えるべく、仮想外力情報F3を協調動作制御部626に送信する。協調動作制御部626は、移乗支援装置1全体に係るものは移動ベース制御619に送信する。また、協調動作制御部626は、支え具16a、16bの位置/相対に係るものは支え具制御部618に送信する(S116、S118)。
つぎに、移乗支援装置1は、操作意思判断部610により、介護者3が一定の期間の間、所定の力で操作入力を継続して操作部14a、14bに作用させているか否かの操作意思検出部609からの情報に基づいて操作意思の有無を判断する(S120、S122)。移乗支援装置1を動作させない場合には、移乗支援装置1はその操作入力前の位置および姿勢状態を維持する。移乗支援装置1を動作させる場合には、支え具16a、16bの位置/姿勢、移乗支援装置1全体の位置/姿勢の制御を行う(S124)。
つぎに、移乗支援装置1は、動作経路修正部608により、修正意思検出部607で介護者3が一定の期間の間、所定の力で修正意思入力を継続して操作部14a、14bに作用させているか否かの情報から修正意思の有無を判断する(S126、S128)。介護者3が支え具16a、16bの位置/姿勢、移乗支援装置1全体の位置/姿勢の修正意思がある場合には、動作経路生成部604にその修正内容を通知する(S130)。動作経路生成部604はこの修正内容に応じて基本動作姿勢経路情報に基づく第1および第2の動作姿勢経路を修正し、再度、S114に戻り、第1および第2の動作姿勢経路を生成する。動作経路修正部608は、動作姿勢経路情報を修正しない場合には、動作経路生成部604に対して何も送信しない。
つぎに、移乗動作が完了したかを判断する(S132)。第5の動作モードが完了し、第5の動作モードにおける目標位置/目標姿勢を完了した場合には、処理を終了する。他方、完了していない場合には、S104に戻る。
以下、処理を終了するまで、S104からS132を繰り返して行う。
支え具16a、16bの現在の位置/姿勢は、逐次検出され、都度、第1および第2の動作姿勢経路上における適切な仮想ポテンシャルを生成し、仮想ポテンシャルエネルギが低くなる側へ支え具16a、16bおよび移乗支援装置1を動作すべく制御する。これにより、移乗支援装置1は、被介護者2の身体情報に基づいて、第1および第2の動作姿勢経路上のどの点においても被介護者2にとって負担が少ない姿勢になるように支え具16a、16bの位置/姿勢、移乗支援装置1の位置/姿勢制御できる。
なお、着床検知センサ32a、32bを用いて、動作モードを自動で切り替えるようにしてもよい。例えば、支え具16a、16bで被介護者2を掬い上げ、移動し、他のベッド等に移乗させる場合について説明する。この場合には、通常、介護者3は、第4の動作モードを操作部14a、14bから入力し、支え具16a、16bを降下させ、被介護者2をベッド面まで下げる。介護者3は、支え具16a、16bがベッド面に着床したことを確認すると第4の動作モードを完了させる。つぎに、第5の動作モードを操作部14a、14bから入力し、支え具16a、16bを被介護者2とベッドとの間から引き抜く動作を行うことになる。よって、この第4の動作モードから第5の動作モードに自動でシーケンシャルに移行するモード(例えば自動モード)では、移乗支援装置1は、第4の動作モードで支え具16a、16bを降下させ、被介護者2をベッド面まで下げ、着床検知センサ32a、32bで支え具16a、16bがベッド面に着床したことを検知すると、自動で第5の動作モードに切り替え、支え具16a、16bを被介護者2とベッドとの間から引き抜く動作を行う。これにより、介護者3の負担を減らすことができ、スムーズに操作することができる。
以上の本実施の形態の移乗支援装置1によれば、被介護者2の身体にかかわる特徴を示す身体情報に基づいて操作者の操作を補助することができるので、習熟度の低い介護者3が操作した場合であっても、被介護者2にとって無理のない動作を行い負担が少ない姿勢を取らせることを可能にする移乗支援装置1を提供することができる。
なお、本実施の形態における移乗支援装置1は、介護が必要な被介護者2を移乗するとしたが、人体であればよく、例えば、自ら移動したり、体を動かすことが困難な者に対しても、同様に応用でき、載置具からその人体を掬い上げ、移乗させることができる。
また、本実施の形態における移乗支援装置1は、身体情報により移乗支援装置1の位置/姿勢を制御する場合をについて説明したが、移乗支援装置1の周囲の環境情報を利用することで、移乗支援装置1の位置/姿勢を制御するようにしてもよい。これにより、周囲との接触を回避可能な位置/姿勢を制御する移乗支援装置1を実現できる。
すなわち、当該他の実施形態では、移乗支援装置は、載置具に載置されている人体を掬い上げるための複数の支え具と、人体の身体に係わる特徴を示す身体情報を取得する身体情報取得部と、人体を複数の支え具で保持するとき、複数の支え具の目標位置および目標姿勢を決定するための動作姿勢経路情報を前記身体情報に基づいて生成する動作姿勢経路生成部と、前記動作姿勢経路情報に基づいて前記複数の支え具を前記目標位置および目標姿勢をとるように支持する支持部とを備えたことを特徴とする。
このような構成によれば、習熟度の低い操作者が操作した場合であっても、人体の身体にかかわる特徴を示す身体情報に基づいて動作するため、習熟度の高い操作者が操作した場合と同様に、人体にとって無理のない動作を行い、負担が少ない姿勢を取らせることを可能にする。
また、当該他の実施形態では、動作姿勢経路生成部は、人体と複数の支え具との相対位置および相対姿勢に関し、所定の動作条件を維持するように第1の動作姿勢経路情報を生成している。これによれば、さらに、所定の動作条件にしたがって人体と複数の支え具との相対的な位置および姿勢を維持することが可能となり、一層、介護者に習熟度を要求することなく操作が可能となる。
また、当該他の実施形態では、特に所定の動作条件として、支え具が人体との接触位置において人体と略平行であり、支え具と人体とが相対位置ずれまたは相対姿勢ずれがないようにしている。これによれば、支え具と人体とは相対的な位置ずれまたは相対的姿勢ずれがないように動作するため、被介護者に対して、さらに、支え具で保持されたときの人体の負担を少なくできる。
また、当該他の実施形態では、身体情報として、身長情報、関節位置情報および肉厚情報が取得され、動作姿勢経路生成部は、取得された前記身長情報、関節位置情報および肉厚情報に基づいて人体の各々の関節における屈曲方向および可動範囲を示す可動域情報を生成し、生成された可動域情報に基づいて相対位置および相対姿勢に対して制限が設けられた第1の動作姿勢経路情報を生成している。これによれば、さらに、支え具で保持されたときの被介護者における姿勢の負担を少なくできる。
また、当該他の実施形態では、身体情報として、身長情報および体重情報が取得され、動作姿勢経路生成部は、取得された身長情報および体重情報に基づいて標準的な関節位置情報および肉厚情報を設定し、設定された身長情報、標準的な関節位置情報および肉厚情報に基づいて人体の各々の関節における屈曲方向および可動範囲を示す可動域情報を生成し、生成された可動域情報に基づいて相対位置および相対姿勢に対して制限が設けられた第1の動作姿勢経路情報を生成している。これによれば、さらに、取得する身体情報が身長情報および体重情報であった場合でも、人体の各々の関節における屈曲方向および可動範囲を示す可動域情報を生成でき、支え具で保持されたときの人体における姿勢の負担を少なくできる。
また、当該他の実施形態では、標準的な関節位置情報および肉厚情報は、標準身長および標準体重に対応付けされている標準関節位置情報および標準肉厚情報が記録されている標準人体テーブルに従って設定されている。これによれば、さらに、取得する身体情報が身長情報および体重情報であった場合でも、標準人体テーブル従って、人体の各々の関節における屈曲方向および可動範囲を示す可動域情報を生成でき、支え具で保持されたときの人体における姿勢の負担を少なくできる。
また、当該他の実施形態では、身体情報として、人体で動かすことが制限されている部位情報がさらに取得され、動作姿勢経路生成部は、部位情報に基づいて相対位置および相対姿勢に対して制限が設けられた第1の動作姿勢経路情報を生成している。これによれば、さらに、人体で動かすことが制限されている部位情報に基づいて、人体の各々の関節における屈曲方向および可動範囲を示す可動域情報を生成でき、支え具で保持されたときの人体における姿勢の負担を少なくできる。たとえば、人体が怪我をしている場合や人体が損傷している場合等に効果を発揮する。
また、当該他の実施形態では、動作姿勢経路情報は、複数の支え具の絶対位置および絶対姿勢を定義する第2の動作姿勢経路を含み、動作姿勢経路生成部は、第2の動作姿勢経路上の各位置ごとに、第1の動作姿勢経路情報に応じた複数の支え具の目標位置および目標姿勢が維持されるように動作姿勢経路情報を生成するようにしている。
これによれば、操作者は、身体特徴を考慮した支え具の位置/姿勢を都度意識することなく、効率よく操作を行うことができる。
また、当該他の実施形態では、動作姿勢経路生成部は、人体の向き情報を取得する人体方向検出部をさらに備え、人体の向き情報に基づいて、人体の頭部の高さが足部の高さより上になるように第1または第2の動作姿勢経路情報を設定するようにしている。
これによれば、常に人体の頭部の高さより足部の高さが上になるのを防止できる。したがって、介護者は、意識することなく、被介護者にとって負担となる不自然な動作を防止することができる。
また、当該他の実施形態では、操作者の操作意思情報を検出する操作意思検出部と、操作意思情報に基づいて支持部を制御する制御装置とをさらに備え、制御装置は、操作意思情報が検出されたときには動作姿勢経路情報に基づいて複数の支え具が目標位置および目標姿勢になるように支持部を制御し、操作意思情報が検出されなかったときには複数の支え具の位置および姿勢をそのまま維持するように支持部を制御するようにしている。
これによれば、さらに、操作者の操作意思がない場合には、装置の位置および姿勢を維持するように動きを制御でき、安全な装置を実現できる。
また、当該他の実施形態では、操作者が動作姿勢経路情報を修正しようとする修正意思情報を検出する修正意思検出部と、修正意思情報に基づいて動作姿勢経路情報に基づく動作姿勢経路を修正する動作姿勢経路修正部とをさらに備えている。
このような構成によれば、あらかじめ想定したものと動作姿勢経路が異なる場合には、修正することができる。
また、当該他の実施形態では、異なった複数の動作モードを有し、動作姿勢経路生成部は、動作モードごとに異なった動作姿勢経路情報を生成するようにしている。
これによれば、複数の動作モードごとに最適な基本動作姿勢経路情報を設定することができる。これにより、あらかじめ想定される動作を容易に実現することができる。
また、当該他の実施形態では、複数の動作モードとして、複数の支え具を人体と載置具との間に挿入する第1の動作モードと、複数の支え具を上昇させ、人体を掬う第2の動作モードと、複数の支え具を移動させ、人体を第2の載置具まで移動する第3の動作モードと、複数の支え具を降下させ、前記人体を第2の載置具の載置面まで下げる第4の動作モードと、複数の支え具を人体と載置具との間から引き抜く第5の動作モードとを備えている。
このような構成によれば、さらに、一連に移乗動作をスムーズに実行することができる。
また、当該他の実施形態では、前記支持部は、前記動作姿勢経路情報に基づく動作姿勢経路を中心として、前記動作姿勢経路から離れるほど高くなる仮想ポテンシャルエネルギを生成し、前記仮想ポテンシャルエネルギが低くなる側へ前記複数の支え具を動作すべく、前記複数の支え具を制御するようにしている。これによれば、複数の支え具を目標位置および目標姿勢に容易に、かつ人体にとって無理がないようにアシストすることができる。
また、当該他の実施形態では、仮想ポテンシャルエネルギは、身体情報に基づいて生成している。これによれば、さらに、操作者の誤操作があった場合でも、身体情報に基づいて人体にとって無理がないように複数の支え具が制御されるため、安全性を高めることができる。
[実施の形態の概要]
ここで、本実施の形態の概要について、以下に説明する。
(1) 以上説明したように、この移乗支援装置では、制御装置が支え具を動作させる動作経路を設定し、さらに、動作経路に沿って支え具が動作するように、アクチュエータを駆動させて、操作部の操作に基づく支え具の動作を補正する。このため、当該移乗支援装置の操作の習熟度が低い操作者が操作した場合であっても、当該操作者の操作が、制御装置によって補正される。これにより、移乗支援を受ける人の身体が無理な姿勢になるなど、移乗支援を受ける人に負担を強いるような操作を抑制できる。このため、操作者にとっては移乗支援装置の操作が簡単であり、移乗支援を受ける人にとっても安心して介護を受けることができる。
(2) 前記制御装置は、前記人の体格情報を記憶する体格情報記憶部を備え、前記動作経路設定部は、前記体格情報記憶部に記憶された体格情報に基づいて前記人の体格に応じて前記支え具を動作させる動作経路を設定する。したがって、支え具を人の体格に応じた目標位置及び目標姿勢に到達させ易くすることができる。
(3) 前記制御装置は、身体情報記憶部を備え、前記身体情報記憶部に記憶される身体情報には、身体の異常部位に関する情報が含まれており、前記動作経路設定部は、前記身体情報記憶部に記憶された身体の異常部位に関する情報に基づいて、前記支え具を動作させる動作経路を設定する。したがって、人体が怪我をしている場合や人体が損傷している場合等に効果を発揮する。
(4) 本実施形態の移乗支援装置は、当該移乗支援装置と載置具との距離を検知する第1検知部と、前記載置具の載置面に対する前記支え具の高さを検知する第2検知部とを備え、前記動作経路設定部は、前記第1検知部によって検知された当該移乗支援装置と前記載置具との距離が近くなるにつれて、前記第2検知部によって検知された前記支え具の高さが前記載置面の高さに近づくように、前記支え具の動作経路を設定する。したがって、被介護者の目前で支え具が急に降下することを防止でき、被介護者が感じ得る不安感を軽減することができる。
(5) 本実施形態の移乗支援装置は、前記支え具に配設され、人が支承される載置具の載置面と前記支え具との接触圧を検知可能な圧力センサを備え、前記操作補正部は、前記圧力センサによって検知された前記接触圧が、前記制御装置に予め定められた接触圧よりも高くならないように、前記操作部の操作に基づく前記支え具の動作を補正する。したがって、載置具と被介護者との間に支え具を挿入する際に、支え具が載置具を押さえつけ過ぎることを防止することができる。
(6) 本実施形態の移乗支援装置は、前記支え具は、第1支え具と第2支え具とを備えており、前記第1支え具と第2支え具のうち一方の支え具によって人の上半身を支承し、他方の支え具によって人の下半身を支承する。
(7) 本実施形態の移乗支援装置は、前記支え具は、第1支え具と第2支え具とを備えており、前記第1支え具と第2支え具のうち一方の支え具によって人の上半身を支承し、他方の支え具によって人の下半身を支承し、前記体格情報記憶部に記憶される体格情報には身長に関する身長情報が含まれており、前記制御装置は、前記体格情報記憶部に記憶された身長情報に基づいて、前記第1支え具と第2支え具の間隔を設定する。したがって、第1支え具と第2支え具の間隔を、人の身長に応じた間隔に設定し易くすることができる。
(8) 本実施形態の移乗支援装置は、人の臀部の位置を検知する臀部検知部を備え、前記動作経路設定部は、前記臀部検知部によって検知された人の臀部の位置に基づいて、前記第1支え具と第2支え具のうち一方の支え具が前記臀部の位置よりも上半身側を支承し、他方の支え具が前記臀部の位置よりも下半身側を支承するように、前記第1支え具と第2支え具の動作経路を設定する。
(9) 前記制御装置は、前記支え具によって支承された人の股関節の位置を特定する股関節特定部を備え、前記支え具によって支承された人を屈曲させる動作において、前記股関節特定部で特定された人の股関節の位置に基づいて、前記支え具の動作経路を設定する。
(10)前記動作経路設定部は、前記人を支承する支え具と前記人との接触状態を維持しつつ、前記第1支え具及び第2支え具がそれぞれ前記股関節の位置から一定の距離を維持しながら移動するように、前記第1支え具と第2支え具の動作経路をそれぞれ設定する。したがって、人を屈曲させる際に、支え具と人の背中とがずれるのを発生し難くすることができる。
(11)前記制御装置は、前記第1支え具と第2支え具による前記人の抱き上げ動作時における前記人の股関節の屈曲許容角度を設定する屈曲許容角度設定部と、前記第1支え具と第2支え具によって掬い上げられる人の股関節の屈曲角度を算出する屈曲角度算出部とを備え、前記第1支え具と第2支え具によって前記人を抱き上げる動作において、前記屈曲角度算出部で算出された屈曲角度が、前記屈曲許容角度設定部で設定された屈曲許容角度の範囲内になるように、前記操作部の操作に基づく前記支え具の動作を補正する。したがって、背中が反った状態や腹部が圧迫される状態等、人が取りづらい姿勢になることを未然に防止することができる。
(12)前記制御装置は、前記第1支え具と第2支え具によって前記人を抱き上げる動作において、前記第1支え具と第2支え具の高さ方向の動作と、前記第1支え具と第2支え具によって人の股関節を屈曲させる動作とを連動させる。したがって、第1支え具と第2支え具によって人を抱き上げる高さに応じて、人の股関節を屈曲させることができる。これにより、人にとって楽な姿勢で人を抱き上げることができる。
(13)前記制御装置は、前記動作経路設定部によって設定された動作経路から前記支え具までの距離に応じて、当該支え具に作用させる力の大きさで規定される仮想ポテンシャルエネルギを設定する仮想ポテンシャルエネルギ設定部を備え、前記操作補正部は、前記仮想ポテンシャルエネルギ設定部で設定された仮想ポテンシャルエネルギに基づいて、前記支え具が前記動作経路へ近づくように当該支え具に力を作用させることにより、前記操作部の操作に基づく前記支え具の動作を補正する。したがって、人が取りづらい姿勢になることを、仮想ポテンシャルエネルギの作用によって未然に防止することができる。
(14) 本実施形態の移乗支援装置は、当該移乗支援装置と前記載置具との距離を検知する第1検知部を備え、前記仮想ポテンシャルエネルギ設定部は、前記第1検知部で検知された前記距離が小さくなるにつれて、前記支え具に作用させる力が大きくなるように、前記仮想ポテンシャルエネルギを設定する。したがって、移乗支援装置が載置具から離れた場所では支え具の操作に対する自由度を確保して操作者にとって使い勝手のいいものにする一方、移乗支援装置が載置具に近づくにつれて支え具に作用させる力を大きくすることで、支え具が目標位置又は目標姿勢に確実に到達するようにすることができる。
(15)前記制御装置は、前記人の体格情報を記憶する体格情報記憶部を備え、前記仮想ポテンシャルエネルギ設定部は、前記体格情報記憶部に記憶された体格情報に基づいて、人の体格に応じた仮想ポテンシャルエネルギを設定する。したがって、支え具を体格に応じた目標位置及び目標姿勢に到達させることができる。
(16)前記制御装置は、前記操作部において前記支え具を操作する操作の入力がない場合に、前記支え具の位置及び姿勢を維持する。したがって、操作者が不意に操作部から手を離した場合に、支え具が不測の動作を行なうことを防止することができる。
(17)前記制御装置は、前記操作補正部の機能を解除する補正解除部を備える。しがたって、仮想ポテンシャルエネルギによる支え具の拘束を一時的に外すことができ、その場合に操作者が支え具を自由に操作できるようになる。
(18)前記制御装置は、前記動作経路設定部で設定される動作経路を修正する動作経路修正部を備え、前記操作補正部は、前記動作経路修正部によって動作経路が修正された場合に、当該動作経路修正部によって修正された動作経路に沿って前記支え具が動作するように前記アクチュエータを駆動させることにより、前記操作部の操作に基づく前記支え具の動作を補正する。したがって、移乗支援装置で自動的に設定される動作経路を適宜に修正したい場合に、当該修正が許容されることになる。このため、操作者の意図に沿った操作が可能になる。
(19) 本実施形態の移乗支援装置は、前記支え具によって支承された人の姿勢に関する情報を記憶する姿勢情報記憶部を備え、前記動作経路設定部は、前記姿勢情報記憶部に記憶された人の姿勢に関する情報に基づいて、前記支え具に支承された人の頭の高さが足よりも上になるように、前記動作経路を設定する。したがって、操作者が意識していなくても、人にとって負担となる不自然な姿勢になることを防止することができる。
以上述べたように、本発明の移乗支援装置によれば、習熟度の低い操作者が操作した場合であっても、人体の身体にかかわる特徴を示す身体情報/体格情報に基づいて動作するため、習熟度の高い操作者が操作した場合と同様に、人体にとって無理のない動作を行い、負担が少ない姿勢を取らせることができる。したがって、操作が容易で安全性の高い移乗支援装置および介護ロボット装置等として有用である。
本発明は、病院や家庭等において人が行う移乗作業を支援する移乗支援装置に関する。
病院や家庭において、ベッド上に横たわった患者の運搬を介護する移乗支援装置や入浴用の看護介助ロボットが提案されている(例えば、特許文献1、2を参照)。これらは、力作業をアシストし、介護者の肉体的負担を軽減することを目的として提案されている。
実開昭62−64525号公報
特公平6−9587号公報
移乗支援装置は、例えば病院や家庭等において、介護者が被介護者をベッドなどに移乗する作業を支援する装置である。移乗支援装置は、習熟度が低い介護者が操作した場合には、被介護者の身体が無理な姿勢になるなど、被介護者に負担を強いるような操作がなされる可能性がないとは言えない。
本発明は、より簡単に操作できる移乗支援装置を提供することを課題とする。
本発明に係る移乗支援装置は、人を支承する支え具と、支え具を操作する操作部とを備えている。そして、操作者の操作に基づいて支え具を動作させ、支え具によって人を抱き上げる。この移乗支援装置は、支え具を動作させるアクチュエータと、操作部の操作に基づいてアクチュエータを制御する制御装置とを備えている。制御装置は、支え具を動作させる動作経路を設定する動作経路設定部を備えている。さらに制御装置は、動作経路設定部で設定された動作経路に沿って支え具が動作するように、アクチュエータを駆動させることにより、操作部の操作に基づく支え具の動作を補正する操作補正部を備えている。
本発明によれば、より簡単に操作できる移乗支援装置を提供することができる。
本発明の実施の形態における移乗支援装置の使用時の状況を示す斜視図である。
同移乗支援装置の要部の構造を示す斜視図である。
同移乗支援装置の電気的な構成を示すブロック図である。
同移乗支援装置の動作制御にかかわる構成を示すブロック図である。
同移乗支援装置の動作姿勢経路の定義を示す斜視図である。
同移乗支援装置の動作制御情報生成部のブロック図である。
同移乗支援装置における被介護者と支え具との相対的な位置関係を示す説明図である。
同移乗支援装置の第1の動作姿勢経路上の点における仮想ポテンシャルエネルギを示す説明図である。
同移乗支援装置の被介護者の姿勢と仮想ポテンシャルエネルギとの関係を示す説明図である。
同移乗支援装置の第2の動作姿勢経路上の点における仮想ポテンシャルエネルギを示す説明図である。
同移乗支援装置の動作を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態における移乗支援装置を示す斜視図である。
同移乗支援装置の使用時の状況を示す斜視図である。
同移乗支援装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
同移乗支援装置の構成を示す側面図である。
同移乗支援装置の使用時の状況を示す平面図である。
同移乗支援装置に設定される動作経路を示す平面図である。
同移乗支援装置に設定される動作経路を示す側面図である。
同移乗支援装置に設定される仮想ポテンシャルエネルギを示す平面図である。
同移乗支援装置に設定される仮想ポテンシャルエネルギを示す側面図である。
同実施形態の移乗支援装置における被介護者の屈曲角度を示す側面図である。
同実施形態の移乗支援装置における被介護者の屈曲角度を示す側面図である。
同実施形態の移乗支援装置における抱き上げ動作において設定される動作経路を示す側面図である。
同実施形態の移乗支援装置における抱き上げ動作において設定される動作経路を示す側面図である。
(a)は同実施形態の移乗支援装置における仮想ポテンシャルエネルギの概念を示す図であり、(b)は仮想ポテンシャルエネルギに応じて力F(x1)を算出する際のモデルの一例を説明するための図である。
同実施形態の移乗支援装置における体格情報と設定される仮想ポテンシャルエネルギとの関係を示す図である。
同実施形態の移乗支援装置において設定される仮想ポテンシャルエネルギの一例を示す図である。
同実施形態の移乗支援装置おいて設定される仮想ポテンシャルエネルギの一例を示す図である。
同実施形態の移乗支援装置おいて設定される制御装置に設定されたモード移行を示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係る移乗支援装置を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を例示的に説明したものであり、本発明は、以下に記載する実施形態に限定されるものではない。また、本明細書において、移乗支援装置について「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」というときは移乗支援装置を操作する操作者の通常の操作姿勢における前後左右上下の方向に従う。図面中、必要に応じて適宜、前を「Fr」、後を「Rr」、左を「L」、右「R」で示す。また、各図面は符号の向きに見ることを前提に図示している。
この実施形態では、移乗支援装置200は、図12に示すように、支え具201と、操作部202と、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)と、制御装置310とを備えている。
支え具201は、人を支承する部材である。この実施形態では、支え具201は、当該移乗支援装置200の移動を補助する移動体205に支持されている。
移動体205は、左右一対のベース211、212と、連結部213、214とを備えている。左右のベース211、212は、車輪215と、当該車輪215を駆動させる第1駆動装置301a、301bとを備えている。この実施形態では、車輪215として、全方位に移動可能な車輪が取り付けられている。具体的には、車輪215には、全方位に移動可能な車輪として、オムニホイールやメカナムホイールを用いることができる。連結部213、214は左右のベース211、212を連結する部材であり、左右のベース211、212の前後2箇所に架け渡されている。連結部213、214は、伸縮自在な機構を備えていて、左右のベース211、212の間隔に応じて伸縮する。なお、この実施形態では、左右のベース211、212を連結する連結部を、左右のベース211、212の前後2箇所に設けているが、連結部の数は2つに限らず、例えば1つでもよい。また、連結部は、移乗支援装置を操作する操作者の操作の邪魔にならない位置に配設するとよい。この実施形態では、連結部213、214は、移乗支援装置200の下部に配設されており、操作者がまたぐことができる高さとなっている。これにより、操作者の操作位置へのアクセス性をよくしている。
この移乗支援装置200は、支え具201として第1支え具201aと第2支え具201bを備えている。この実施形態では、第1支え具201aは左側のベース211に取り付けられ、第2支え具201bは右側のベース212に取り付けられている。この実施形態では、第1支え具201aおよび第2支え具201bは、それぞれ腕部221a、221bとハンド部222a、222bとを備えている。腕部221a、221bの基端は、それぞれ左右のベース211、212に取り付けられている。腕部221a、221bは、基端側から順に、第1腕部231a、231bと、第1関節部232a、232bと、第2腕部233a、233bと、第2関節部234a、234bとを備えている。
第1腕部231a、231bは、伸縮自在なスライド機構235a、235bと、スライド機構235a、235bを駆動させる第2駆動装置302a、302bとを備えている。この実施形態では、スライド機構235a、235bを伸ばすことによって、第1腕部231a、231bの長さが長くなる。また、スライド機構235a、235bを縮めることによって、第1腕部231a、231bの長さが短くなる。この実施形態では、移乗支援装置200は、第1腕部231a、231bの長さを調整することによって、第1支え具201aと第2支え具201bの高さを調整することができる。
第1関節部232a、232bは、第1腕部231a、231bと第2腕部233a、233bとを屈曲自在に連結する部材である。第1関節部232a、232bには、第3駆動装置303a、303bが取り付けられている。第3駆動装置303a、303bは、当該第1関節部232a、232bを駆動させて第1腕部231a、231bと第2腕部233a、233bの屈曲角を変える。
第2腕部233a、233bの先端には、第2関節部234a、234bを介してハンド部222a、222bが取り付けられている。第2関節部234a、234bは、第2腕部233a、233bの長さ方向の軸周りに回動自在にハンド部222a、222bを連結している。当該第2関節部234a、234bには、第4駆動装置304a、304bが取り付けられている。第4駆動装置304a、304bは、当該第2関節部234a、234bを駆動させて、第2腕部233a、233bに対して第2腕部233a、233bの長さ方向の軸周りにハンド部222a、222bの回動角を変える。
ハンド部222a、222bは、図13に示すように、人(被介護者402)を支承する部位である。この実施形態では、移乗支援装置200は、ハンド部222a、222bに、介護者401(操作者)が当該支え具201を操作する操作部202を備えている。この実施形態では、移乗支援装置200は、操作部202として、左右のハンド部222a、222bにそれぞれ操作レバー202a、202bを備えている。この実施形態では、操作レバー202a、202bには、6軸力センサが取り付けられており、並進及び回転の6軸の方向について、操作レバー202a、202bに入力された操作力を検知することができる。操作レバー202a、202bに入力された操作入力の情報は、図14に示すように、制御装置310に送られる。
この移乗支援装置200は、図13に示すように、左右の第1支え具201aと第2支え具201bの間に介護者401(操作者)が入り、左右の操作レバー202a、202bを操作する。介護者401は、操作レバー202a、202bを操作して、移乗支援装置200を移動させ、かつ、第1支え具201aと第2支え具201bを操作することができる。
ハンド部222a、222bは、この実施形態では、平らな形状を有し、先端から上面に掛けて搬送ベルト241a、241bが露出している。ハンド部222a、222bは、搬送ベルト241a、241bを動かす第5駆動装置305a、305bを備えている。また、この実施形態では、ハンド部222a、222bは、当該ハンド部222a、222bが人を支承しているか否かを検知する検知センサ365を備えている。この実施形態では、当該検知センサ365として、図12に示すように、近接センサ366と圧力センサ367を備えている。近接センサ366は、ハンド部222a、222bの基端部に、検知部が先端側に向くように配設されている。また、圧力センサ367には、ハンド部222a、222bの上面に複数の圧力センサ367が分散して配設されている。
これによって、ハンド部222a、222bは、人(被介護者402)を支承している際は、近接センサ366或いは圧力センサ367によって、人を支承している状態を検知することができる。近接センサ366は、主に、被介護者402がハンド部222a、222bの基端部まで載せられているかを検知する。また、ハンド部222a、222bの上面に分散して配設された複数の圧力センサ367は、ハンド部222a、222bの上面が均等な力で被介護者402を支承しているか否かを検知している。この実施形態では、当該近接センサ366或いは圧力センサ367によって、ハンド部222a、222bの上面が適切に被介護者402を支承しているかを検知できる。検知センサ365としての近接センサ366と圧力センサ367の検知情報は、図14に示すように、制御装置310に送られる。
この移乗支援装置200は、介護者401の操作に基づいて支え具201を動作させ、支え具201によって被介護者402を抱き上げる装置である。具体的には、この実施形態では、移乗支援装置200は、例えば、図13に示すように、第1支え具201aと第2支え具201bのうち、一方の支え具201bで被介護者402の上半身を支承し、他方の支え具201aで被介護者402の下半身を支承する。
この移乗支援装置200は、図12に示すように、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)と、制御装置310とを備えている。アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)は、移乗支援装置200および支え具201を動作させる。この実施形態では、移乗支援装置200は、アクチュエータとして上述した第1駆動装置301a、301b〜第5駆動装置305a、305bを備えている。第1駆動装置301a、301b〜第5駆動装置305a、305bは、それぞれ制御装置310によって制御可能なモータで構成されている。
この移乗支援装置200は、図13に示すように、各駆動装置(アクチュエータ301a、301b〜305a、305b)が、当該介護者401の操作に対して力を補助する。これにより、介護者401は、移乗支援装置200を移動させたり、第1支え具201aと第2支え具201bを操作したりすることが容易にできる。また、被介護者402を抱き上げるときも、各駆動装置によって力が補助されるので、容易に被介護者402を抱き上げることができる。なお、この実施形態では、制御装置310によって、介護者401の操作は補正される。
次に、制御装置310を説明する。
制御装置310は、図14に示すように、操作部202の操作に基づいてアクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を制御する。この実施形態では、制御装置310は、動作経路設定部311と、操作補正部312と、仮想ポテンシャルエネルギ設定部313を備えている。さらに、この実施形態では、制御装置310は、体格情報記憶部321と、身体情報記憶部322と、屈曲許容角度設定部323と、屈曲角度算出部324と、補正解除部325と、動作経路修正部326、股関節特定部327、姿勢情報記憶部328などの記憶部と、演算処理部とを備えている。また、制御装置310は、種々の情報を取得するため、第1検知部361と、第2検知部362と、圧力センサ363と、臀部検知部364と、検知センサ365とを備えている。
動作経路設定部311は、支え具201を動作させる動作経路を設定する。かかる動作経路は、予め制御装置310に記憶されたプログラムに沿って設定される。操作補正部312は、動作経路設定部311によって設定された動作経路に沿って支え具201が動作するように、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を駆動させることにより、操作部202の操作に基づく支え具201の動作を補正する。なお、これら制御装置の記憶部や演算処理、および、各種センサについては後で詳述する。
この実施形態における移乗支援装置200は、図15に示すように、ベッド410(載置具)に横になった被介護者402の移乗作業を支援する装置として用いることができる。なお、ここでは、人が横になれる物は、広義に「載置具」という。「載置具」には、この実施形態で例示するベッド、キャスター付のベッド、さらに、人が横になれる形態に変形可能な介護用の車椅子も、ここでは「載置具」に含まれる。
この実施形態では、移乗支援装置200は、図15に示すように、ベッド410と支え具201との距離を検知する第1検知部361を備えている。当該第1検知部361は、例えば、公知の測距センサを用いてベッド410と支え具201との距離を検知するように構成するとよい。第1検知部361で検知された情報は、図14に示すように、制御装置310に送られる。
また、移乗支援装置200は、図15に示すように、ベッド410の載置面411(ベッド面)を検知する第2検知部362を備えている。ここで、「載置面」は、ベッド410に人が寝かされる面をいう。第2検知部362は、ベッド410の載置面411を検知する種々の検知手段を用いることができる。
この実施形態では、当該第2検知部362として、支え具201のハンド部222a、222bの下面に圧力センサや近接スイッチなどが取り付けられている。そして、第2検知部362がハンド部222a、222bの下面が載置面411に着いたことを検知すると、制御装置310は、当該検知したときの高さを載置面411の高さとして記憶する。この場合、上述した支え具201のハンド部222a、222bを予め手動で載置面411に当接させ、載置面411の高さを制御装置310に記憶させるとよい。なお、第2検知部362は、かかる構成に限らない。第2検知部362は、例えば、測距センサによって、ベッド410の載置面411(ベッド面)の高さを検知する構成としてもよい。また、移乗支援装置200に取り付けられたカメラから取得された画像を画像処理することによって、ベッド410の載置面411(ベッド面)の高さを検知する構成としてもよい。
また、この実施形態では、支え具201には、図15に示すように、第1支え具201aと第2支え具201bのハンド部222a、222bの裏面にそれぞれ圧力センサ363が取り付けられている。この圧力センサ363は、支え具201(ハンド部222a、222bの裏面)とベッド410(載置具)との接触圧を検知することができるものである。圧力センサ363で検知された情報は制御装置310に送られる。
この移乗支援装置200は、ベッド410に横になった被介護者402を支え具201(ハンド部222a、222b)に乗せる第1工程と、ベッド410に横になった被介護者を抱き上げる第2工程と、被介護者402を抱き上げた状態で移動させる第3工程と、被介護者402を降ろす第4工程と、支え具201(ハンド部222a、222b)を引き抜く第5工程とを順に行なう。
まず、ベッド410に横になった被介護者402を支え具201(ハンド部222a、222b)に乗せる第1工程を説明する。
制御装置310は、ベッド410に横になった被介護者402を支え具201(ハンド部222a、222b)に乗せる当該第1工程において、支え具201の動作経路を設定する。
この実施形態では、制御装置310は、図14に示すように、体格情報記憶部321を備えている。体格情報記憶部321は、被介護者402の体格に関する体格情報を記憶している。体格情報記憶部321に記憶される体格情報としては、身長情報、体重情報が含まれている。この実施形態では、動作経路設定部311は、体格情報記憶部321に記憶された体格情報に基づいて被介護者402の体格に応じて支え具201を動作させる動作経路を設定する。
さらに、この実施形態では、制御装置310は、身体情報記憶部322を備えている。当該身体情報記憶部322に記憶される身体情報には、身体の異常部位に関する情報が含まれている。かかる身体の異常部位は、例えば、床擦れ部位や、怪我などによって身体の損傷している部位であり、具体的には、支え具201で支承することが出来ない部位である。この実施形態では、当該異常部位が、予め被介護者毎に身体情報記憶部322に記憶されている。
さらに、この実施形態では、移乗支援装置200は、人の臀部403の位置を検知する臀部検知部364を備えている。当該「臀部」には、股関節が含まれる。臀部検知部364は、例えば、移乗支援装置200に備え付けたカメラで撮影された画像に基づいて、所定のプログラムによって、人の臀部403を検知するものでもよい。また、所定のプログラムによって、体格情報記憶部321に記憶された身長情報、および、予め人の標準的な体格に関するデータから、人の臀部403を検知(この場合、人の臀部の位置を推定)するものでもよい。
第1工程では、ベッド410に横になった被介護者の下に支え具201(ハンド部222a、222b)を挿入する。この実施形態では、移乗支援装置200は、動作経路設定部311は、まず、ベッド410に横になった被介護者に対して、支え具201(ハンド部222a、222b)を挿入する位置を特定する。次に、移乗支援装置200は、現在位置から被介護者に対して支え具201を移動させるべき最適な動作経路を設定する。さらに、操作者(介護者)の操作に対して、操作補正部312は、動作経路設定部311によって設定された動作経路に沿って支え具201が動作するように、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を駆動させることにより、操作部202の操作に基づく支え具201の動作を補正する。
具体的には、動作経路設定部311は、まず、ベッド410に横になった被介護者に対して、支え具201(ハンド部222a、222b)を挿入する位置を特定する。この実施形態では、当該身体情報記憶部322に、支え具201で支承することが出来ない部位が身体情報として記憶されている。例えば、床擦れ部位や、怪我などによって身体の損傷している部位が記憶されている。したがって、支え具201(ハンド部222a、222b)を挿入する位置を特定する場合には、当該身体情報記憶部322に記憶された部位が支え具201(ハンド部222a、222b)を挿入する位置から外れるように、支え具201(ハンド部222a、222b)を挿入する位置を特定するとよい。
この移乗支援装置200は、例えば、図13に示すように、第1支え具201aと第2支え具201bのうち一方の支え具201bが臀部403の位置よりも上半身側を支承し、他方の支え具201aが臀部403の位置よりも下半身側を支承する。この実施形態では、例えば、一方の支え具201bで被介護者402の背中の肩甲骨の辺りを支承し、他方の支え具201aで膝裏辺りを支承するとよい。
この実施形態では、体格情報記憶部321に記憶される体格情報には、身長に関する情報(身長情報)が含まれている。そして、動作経路設定部311は、体格情報記憶部321に記憶された身長情報に基づいて、第1支え具201aと第2支え具201bが被介護者402に挿入される際の両支え具201a、201bの間隔が設定される。
具体的には、この実施形態では、制御装置310は、身長を基準にして、第1支え具201aと第2支え具201bの最適な間隔を予め規定した第1データベース351を備えている。制御装置310は、当該第1データベース351および体格情報記憶部321に記憶された身長情報に基づいて、第1支え具201aと第2支え具201bの間隔を設定している。例えば、図26に示すように、身長の高い被介護者402aに比べて、身長の低い被介護者402bでは、被介護者402に挿入される際に両支え具201a、201bに設定される動作経路r1a、r1bの間隔は狭くなる。
なお、この実施形態では、図16に示すように、第1支え具201aと第2支え具201bのうち一方の支え具201b,201aが被介護者402の背中の肩甲骨の辺りに挿入され、他方の支え具201a,201bが被介護者402の膝裏辺りに挿入されるように、第1支え具201aと第2支え具201bの間隔が設定される。
この実施形態では、移乗支援装置200は、臀部検知部364によって、被介護者402の臀部403の位置を検知する。動作経路設定部311は、図17に示すように、臀部検知部364で検知された臀部403の位置に基づいて、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路をそれぞれ設定する。この実施形態では、動作経路設定部311は、臀部検知部364で検知された臀部403の位置に基づいて、被介護者402の背中の肩甲骨の位置と膝裏の位置を特定する。そして、動作経路設定部311は、当該特定された位置に基づいて、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路r1をそれぞれ設定する。これにより、第1支え具201aと第2支え具201bのうち一方の支え具201b,201aが被介護者402の背中の肩甲骨の辺りに挿入され、他方の支え具201a,201bが被介護者402の膝裏辺りに挿入されるように、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路r1がそれぞれ設定される。
さらに、この実施形態では、身体情報記憶部322に、身体の異常部位に関する情報が記憶されている。例えば、当該身体情報記憶部322において、被介護者402の背中の肩甲骨の辺り、又は、膝裏辺りが、支え具201で支承することが出来ない部位として記憶されている場合には、当該部位を外して第1支え具201aと第2支え具201bが被介護者402に挿入される位置が設定される。この実施形態では、制御装置310は、図14に示すように、当該設定を行なう第1設定部341を備えている。第1設定部341は、例えば、介護者401が被介護者402の当該事情を考慮して、第1支え具201aと第2支え具201bで被介護者402を支承する位置を設定するとよい。したがって、第1支え具201aと第2支え具201bで被介護者402を支承する位置は、被介護者402の個々の事情などに応じて柔軟に変更が可能である。
なお、この実施形態では、制御装置310は、図14に示すように、第1支え具201aと第2支え具201bで被介護者402を安全に支承できるかをチェックするチェック部342を備えている。この実施形態では、当該チェック部342は、当該体格情報記憶部321に記憶された情報に基づいて、第1支え具201aと第2支え具201bで支承した被介護者402を物理的なモデルにモデル化する。そして、当該物理的なモデルに基づいて、第1支え具201aと第2支え具201bで被介護者402を安定した状態で支承できるかを、所定のプログラムに沿って確認する。これによって、例えば、第1設定部341で、介護者401が第1支え具201aと第2支え具201bで被介護者402を支承する位置が変更された場合でも、その安全性を確保できる。
このように、この実施形態では、第1設定部341によって、第1支え具201aと第2支え具201bを被介護者402に挿入する位置を設定することができる。そして、第1設定部341によって、第1支え具201aと第2支え具201bを被介護者402に挿入する位置が設定されている場合には、制御装置310は、当該位置に、第1支え具201aと第2支え具201bが導かれるように、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路を設定する。
動作経路は、第1支え具201a及び第2支え具201bの現在位置からそれぞれの挿入位置までの動作経路であり、制御装置301は、現在位置から被介護者402の背中の肩甲骨の辺りと被介護者402の膝裏辺りにそれぞれスムーズに挿入されるように各支え具201a,201bの動作経路を設定する。また、この実施形態では、図17に示すように、第1支え具201aと第2支え具201bが略同時に被介護者402の近傍に到達するように動作経路r1が設定される。このため、この実施形態では、移乗支援装置200は、まず支え具201の挿入に適切な位置に移動する。そして、そこから被介護者402に第1支え具201aと第2支え具201bを向けて、被介護者402に近づくように動作経路r1が設定される。
この実施形態では、図17に示すように、被介護者402が横になっているベッド410に対して、ベッド410の横側に真っ直ぐに第1支え具201aと第2支え具201bが向く第1位置P1に、移乗支援装置200を移動させる。なお、移乗支援装置200は、地図情報を有しており、自分の位置及びベッド410の位置を把握している。このため、移乗支援装置200は第1位置P1に自動的に移動することができる。次に、当該第1位置P1から第1支え具201aと第2支え具201bが被介護者402に挿入される位置に向けて動作経路r1が設定される。この際、一方の支え具201b,201aが被介護者402の背中の肩甲骨の辺りに挿入され、他方の支え具201a,201bが被介護者402の膝裏辺りに挿入されるように、第1支え具201aと第2支え具201bを動作させる動作経路r1が設定される。また、この実施形態では、第1支え具201aと第2支え具201bの間隔は、それぞれ被介護者402に近づくにつれて徐々に被介護者402に挿入される際の所定の間隔になるように、滑らかな経路が設定される。
この実施形態では、移乗支援装置200は、図15に示すように、当該移乗支援装置200とベッド410との距離を検知する第1検知部361と、ベッド410の載置面411を検知する第2検知部362とを備えている。制御装置310の動作経路設定部311は、第1検知部361で検知された移乗支援装置200とベッド410との距離と、第2検知部362で検知されたベッド410の載置面411とに基づいて、図18に示すように、移乗支援装置200とベッド410との距離が近くなるにつれて、支え具(201a、201b)がベッド410の載置面411の高さに近づくように支え具(201a、201b)の動作経路r1を設定する。
この実施形態では、図18に示すように、被介護者402が横になっているベッド410に対して、支え具(201a、201b)が近づく際、ベッド410に対して所定の距離(この実施形態では、50cm)よりも近づくまでに、載置面411よりも少し高い高さ(この実施形態では、載置面411から5cm)になるように、滑らかな経路が設定される。かかる経路r1に沿って、支え具(201a、201b)を動作させることによって、支え具(201a、201b)が被介護者402の目前で急に降下する動作を防止できる。これにより、被介護者402の目前で支え具(201a、201b)が急に降下することを防止でき、被介護者402が感じ得る不安感を軽減できる。
次に、操作の補正について説明する。
この実施形態では、制御装置310は操作補正部312を備えている。操作補正部312は、動作経路設定部311で設定された動作経路r1に沿って支え具201が動作するようにアクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を駆動させることにより、操作部202の操作に基づく支え具201の動作を補正する。
この実施形態では、動作経路設定部311によって、一方の支え具201b,201aが被介護者402の背中の肩甲骨の辺りに挿入され、他方の支え具201a,201bが被介護者402の膝裏辺りに挿入されるように、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路がそれぞれ設定される。この移乗支援装置200は、図13に示すように、介護者401によって操作される。この際、図17および図18に示すように、動作経路設定部311で設定された動作経路r1に沿って支え具201が動作するように、介護者401による操作が補正される。すなわち、制御装置310は、適宜にアクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を駆動させて、介護者401による操作を補正する。この実施形態では、制御装置310は、介護者401による操作によって、第1支え具201aおよび第2支え具201bが、動作経路設定部311で設定された動作経路から大きく外れることがないように、介護者401による操作を補正する。
かかる補正を具現化するため、この実施形態では、制御装置310は仮想ポテンシャルエネルギ設定部313を備えている。仮想ポテンシャルエネルギ設定部313は、支え具201に作用させる力の大きさを規定する仮想ポテンシャルエネルギを設定する。この実施形態では、仮想ポテンシャルエネルギは、動作経路設定部311で設定された動作経路r1を基準とし、当該動作経路r1から支え具201が離れるにつれて、支え具201を動作経路r1へ近づけるように支え具201に作用させる力の大きさを定めている。言い換えると、支え具201に作用させる力は、動作経路r1から支え具201までの距離に応じた大きさとなる。
この実施形態では、図19および図20に示すように、動作経路設定部311において、第1支え具201aの動作に対する動作経路r1aと、第2支え具201bの動作に対する動作経路r1bがそれぞれ設定されている。そして、当該動作経路r1a、r1bのそれぞれに対して、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebが設定される。
操作補正部312は、仮想ポテンシャルエネルギ設定部313で設定された仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebに基づいて、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を駆動させて、支え具201を動作経路r1へ近づけるように支え具201に力を作用させている。これにより、操作レバー202a,202bによる操作に基づく支え具201a,201bの動作が補正される。
この実施形態では、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebとして、例えば、図25(a)に示すように、仮想的なエネルギ場が設定されている。すなわち、図25(a)では、横軸は、動作経路r1からのずれ量に相当する変位量xを示し、縦軸はエネルギEを示している。図25(a)で例示されている仮想ポテンシャルエネルギEa(Eb)は、動作経路r1上に支え具201aが位置している状態では、支え具201aの変位量xは0となるので、支え具201aに作用させる力は0になる。一方、支え具201aが同図中x1の位置に変位している場合には、E(x1)の仮想ポテンシャルエネルギが設定される。仮想ポテンシャルエネルギは、動作経路r1からの変位量xが増大するにつれて次第に増大するように設定されている。この場合、E(x1)の仮想ポテンシャルエネルギに応じて、支え具201aに作用させる力F(x1)が求められる。この実施形態では、F(x1)は、図25(a)で例示されている仮想ポテンシャルエネルギEa(Eb)のx1の位置でのエネルギ状態に応じた方向及び大きさの力が算出される。したがって、支え具201aが動作経路r1から大きく変位するに従って、支え具201aを動作経路r1に引き戻そうとする力が大きくなる。この力F(x1)の算出は、例えば図25(b)に示すように、バネ・マス・ダンパー系の仮想モデルを表す下記式(1)を用いて計算することによって行うことができる。そして、制御装置310は、当該算出された力F(x1)を支え具201に作用させる。
この実施形態では、図19および図20に示すように、移乗支援装置200がベッド410に近づくにつれて、支え具201a、201bの動作経路r1a、r1bに対して支え具201a、201bの移動が許容される変位幅が狭くなるように、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebが設定されている。なお、仮想ポテンシャルエネルギ設定部313は、第1検知部361で検知された移乗支援装置200とベッド410との距離に基づいて、このような仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebを設定する。なお、図19および図20では、便宜上、仮想ポテンシャルエネルギを示す線Ea、Ebとして、仮想ポテンシャルエネルギ設定部313で設定される仮想ポテンシャルエネルギによって、第1支え具201aと第2支え具201bの操作が許容される幅が示されている。
すなわち、この実施形態では、図19および図20に示すように、仮想ポテンシャルエネルギ設定部313で設定される仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebは、移乗支援装置200とベッド410との距離が近くなるにつれて、幅が狭くなっている。すなわち、移乗支援装置200がベッド410に近づくにつれて、第1支え具201aと第2支え具201bの操作が許容される幅が狭くなるように、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebが設定されている。このため、移乗支援装置200がベッド410に近づくにつれて、支え具201は動作経路r1a、r1bへ近づくように操作補正される。
この実施形態では、支え具201がベッド410から離れている状態では、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebの幅が広く、介護者401が支え具201を操作できる自由度が大きい。これに対し、支え具201がベッド410に近づくにつれて、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebの幅が狭くなっており、介護者401が支え具201を操作できる自由度は徐々に小さくなる。これによって、支え具201が被介護者402に到達する直前では、第1支え具201aと、第2支え具201bは、略動作経路r1a、r1b上に操作される。
また、制御装置310に警告機能を持たせてもよい。すなわち、操作レバー202a,202bによる操作が操作補正部によって補正されることによって、支え具201a,201bの動きが操作レバー202a,202bによる操作に合致した動きにならないことがあるので、そのことが分かるような表示を表示部に表示したり、音声案内を発するようにしてもよい。
また、この実施形態では、制御装置310は、被介護者402の体格情報を記憶する体格情報記憶部321を備えている。仮想ポテンシャルエネルギ設定部313は、体格情報記憶部321に記憶された体格情報に基づいて、人の体格に応じた仮想ポテンシャルエネルギを設定する。例えば、図26に示すように、支え具201a、201bの動作経路r1a、r1bに対して支え具201a、201bの操作が許容される変位幅xa,xbは、身長が高い被介護者402aの場合に比べて、身長が低い被介護者402bの場合に小さくなる。
また、この実施形態では、制御装置310は、操作部202において支え具201を操作する操作の入力がない場合に、支え具201の位置を維持する制御を実行する。すなわち、この実施形態では、図14に示すように、操作レバー202a、202bからの操作入力の信号がない場合に、制御装置310は、予め設定されたプログラムに沿って支え具201の位置を維持する処理を行う。支え具201の位置を維持する処理としては、この実施形態では、操作レバー202a、202bからの操作入力の信号がない場合に、支え具201の位置が維持されるように、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)によって支え具201に力を作用させる。これにより、操作レバー202a、202bから操作入力の信号がない場合に、支え具201の位置が維持される。なお、支え具の位置を維持する処理としては、支え具201の位置をロックするロック機構(例えば、各機構に設けたブレーキ)を作動させてもよい。これにより、介護者401が不意に操作レバー202a、202bから手を離した場合に支え具201は停止し、支え具201が不測の動作を行なうことがない。
また、この実施形態では、制御装置310は、図14に示すように、操作補正部312の機能を解除する補正解除部325を備えている。補正解除部325は、介護者401(操作者)が適宜に操作補正部312の機能を解除する制御処理部である。この実施形態では、補正解除部325は、図14に示すように、解除ボタン371を押すことによって、介護者401(操作者)が適宜に操作補正部312の機能を解除できるように構成されている。かかる解除ボタン371は、操作レバー202a、202bの近傍に設けるとよい。当該解除ボタン371が押されると、制御装置310において補正解除部325が機能して、操作補正部312の機能が解除される。このため、上述した仮想ポテンシャルエネルギEa、Eb(図19および図20参照)に基づいたアクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)の力が解除される。これにより、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebによる支え具201の拘束が外れ、介護者401(操作者)が支え具201を自由に操作できるようになる。
かかる補正解除部325は、例えば、当該介護者401が、操作補正部312の機能によって、適切に支え具201を操作できない場合に、適宜に操作補正部312の機能を解除することができる。このように、この移乗支援装置200は、この装置の操作に熟練した介護者401が自由に支え具201を操作することも可能である。
また、この実施形態では、制御装置310は、図14に示すように、動作経路設定部311で設定される動作経路r1a、r1b(図19〜図20参照)を修正する動作経路修正部326を備えている。動作経路修正部326は、例えば、介護者401(操作者)が適宜に適切な動作経路を設定できるようにする制御処理部である。この実施形態では、動作経路修正部326は、介護者401が動作経路設定部311によって設定された動作経路を修正するべく、介護者401が手動で動作経路を設定する手動設定部372を備えている。かかる動作経路修正部326によって、例えば、当該移乗支援装置200の操作に熟練した介護者401が操作する場合において、当該介護者401が、移乗支援装置200で自動的に設定される動作経路を適宜に修正したい場合に、当該修正が許容される。これにより、介護者401は自由に支え具201の動作経路を設定することができる。
そして、操作補正部312は、動作経路修正部326によって動作経路r1a、r1bが修正された場合に、修正された動作経路に沿って支え具201が動作するように支え具201の動作を補正する。すなわち、操作補正部312は、動作経路修正部326によって修正された動作経路に沿って支え具201が動作するように、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を駆動させて、操作部202の操作に基づく支え具201の動作を補正する。この移乗支援装置200によれば、介護者401が設定した動作経路に沿って、支え具201が動作するように、操作補正部312は操作レバー202a、202bの操作に基づく支え具201の動作を補正する。これにより、移乗支援装置200は、介護者401の意図に沿った操作が可能になる。例えば、制御装置310が設定した動作経路上に移乗支援装置200の動作の支障となる障害物等を発見した場合には、操作者(介護者401)は、制御装置310が設定した動作経路を適宜に修正することができる。
以下、この移乗支援装置200の動作及び機能を説明する。
この移乗支援装置200は、図17、図18に示すように、制御装置310(動作経路設定部311)によって支え具(201a、201b)の動作経路r1が設定される。そして、当該動作経路r1に沿って支え具201が動作するように、制御装置310(操作補正部312)は、アクチュエータ301a、301b〜305a、305bを駆動させる。これにより、移乗支援装置200は、操作部202の操作に基づく支え具201a、201bの動作を補正しつつ、ベッド410に近づいていく。
次に、ベッド410と被介護者402との間に支え具201が挿入される。この実施形態では、移乗支援装置200は、支え具201に圧力センサ363を備えている。圧力センサ363は、被介護者402が寝かされるベッド410の載置面411と支え具201との接触圧を検知する。そして、操作補正部312は、当該検知された接触圧が、制御装置310に予め定められた接触圧よりも高くならないように、支え具201の動作を補正する。これによって、ベッド410と被介護者402との間に支え具201を挿入する際に、支え具201がベッドを押さえつけ過ぎることがない。なお、制御装置310には、かかる動作補正のため、予め所定の接触圧を記憶しているとよい。また、かかる接触圧は、操作者が予め設定する設定部を備えていてもよい。
この実施形態では、移乗支援装置200は、支え具201は先端のハンド部222a、222bに、被介護者402を乗せる。
この実施形態では、ハンド部222a、222bは、平らな形状を有し、先端から上面に掛けて搬送ベルト241a、241bが露出している。ハンド部222a、222bは、搬送ベルト241a、241bを動かす第5駆動装置305a、305bを備えている。このため、ハンド部222a、222bの先端を被介護者402に挿入し、搬送ベルト241a、241bを動かすことにより、簡単にハンド部222a、222bの上に被介護者402を乗せることができる。
この実施形態では、ハンド部222a、222bを被介護者402とベッド410との間に挿入する際、制御装置310は当該挿入動作と同期して搬送ベルト241a、241bを反転動作させる。これにより、ベッド410と被介護者402との間に、支え具201をスムーズに挿入することができる。また、これによって、ハンド部222a、222bを被介護者402とベッド410との間に挿入する際、ハンド部222a、222bと被介護者402の両者の接触面の相対速度を0にすることができる。これにより、ハンド部222a、222bを被介護者402とベッド410との間に挿入する際、ハンド部222a、222bと被介護者402との摩擦をほとんど生じさせず、被介護者402の負担を軽減することができる。
なお、この実施形態では、制御装置310は、上述したように被介護者402とベッド410との間にハンド部222a、222bを挿入する際、被介護者402に対して、ハンド部222a、222bが真っ直ぐ挿入されるように、ハンド部222a、222bが上下方向、左右方向に動いたり、傾いたりしないように、仮想ポテンシャルエネルギに応じて作用する力によって、ハンド部222a、222bの操作を強く拘束する。これによって、被介護者402に対して、ハンド部222a、222bが真っ直ぐ挿入される。この点は、被介護者402からハンド部222a、222bを引き抜く動作(第5工程)においても同様である。
次に、被介護者を抱き上げる第2工程について説明する。
制御装置310は、屈曲許容角度設定部323と、屈曲角度算出部324とを備えている。この実施形態では、屈曲許容角度設定部323は、第1支え具201aと第2支え具201bによって被介護者402を支承した状態で抱き上げる動作(抱き上げ動作)において、被介護者402の股関節404の屈曲許容角度を設定する。
なお、ここでは、図22に示すように、「股関節の屈曲角度」は、股関節で上半身を前側に傾けた前傾角度をいう。図21および図22に示すように、被介護者402の股関節404の屈曲角度θxは、便宜上、第1支え具201aと第2支え具201bによって掬い上げられる被介護者402の股関節404の屈曲角度と推定している。この実施形態では、屈曲許容角度設定部323は、当該抱き上げ動作における股関節404の屈曲許容角度が予め設定されており、当該抱き上げ動作において、被介護者402の股関節404の屈曲角度θxが0°≦θx≦30°になるように設定されている。
屈曲角度算出部324は、第1支え具201aと第2支え具201bによって掬い上げられる被介護者402の股関節404の屈曲角度を算出する。この実施形態では、第1支え具201aと第2支え具201bは、平坦なハンド部222a、222bで被介護者402の上半身と下半身を支承している。そして、屈曲角度算出部324は、第1支え具201aと第2支え具201bのハンド部222a、222bの平坦な面Pa、Pbが成す角度をθ1とし、当該角度θ1を180度から差し引くことにより、第1支え具201aと第2支え具201bによって掬い上げられる被介護者402の股関節404の屈曲角度θxを算出している。すなわち屈曲角度θxは、θx=180−θ1によって算出される。
制御装置は、第1支え具201aと第2支え具201bによる人の抱き上げ動作時において、屈曲角度算出部324によって算出された屈曲角度が、屈曲許容角度設定部323によって設定された屈曲許容角度の範囲内になるように、操作部202の操作に基づく支え具201の動作を補正する。この実施形態では、屈曲許容角度設定部323では、例えば、屈曲許容角度が30°として設定されている。このため、操作補正部312は、第1支え具201aと第2支え具201bによって掬い上げられる被介護者402の股関節404の屈曲角度θxが0°≦θx≦30°となるように、操作部202の操作に基づく支え具201a、201bの動作を補正する。
すなわち、この実施形態では、制御装置310は、アクチュエータ301a、301b〜305a、305bを駆動させることにより、操作部202の操作に基づく支え具201a、201bの動作を補正する。この実施形態では、かかる補正を具現化するため、制御装置310は仮想ポテンシャルエネルギ設定部313において、支え具201a、201bに作用させる力の大きさを規定する仮想ポテンシャルエネルギを設定している。
この実施形態では、仮想ポテンシャルエネルギは、屈曲許容角度設定部323によって設定された屈曲許容角度(この実施形態では、30°)の近くになると、それ以上、屈曲角度θxが大きくならないように、支え具201a、201bの動作を規制する。すなわち、この実施形態では、図27に示すように、屈曲角度θxに対して、支え具201a、201bに作用させる力の大きさを規定する仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebが設定される。そして、図27に示すように、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebが設定されている場合には、屈曲角度θxが0°と30°の近傍を除いて、0°<θx<30°の範囲で支え具201a、201bに作用させる力は小さい。そして、0°と30°の近傍において、徐々に仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebが大きくなり、屈曲角度θxが0°よりも小さくならないように、または、30°よりも大きくならないようになっている。
次に、屈曲角度θxが30°よりも小さい屈曲角度から30°よりも大きくならず、かつ、屈曲角度θxが30°になるように、支え具201a、201bを操作する場合を説明する。この場合は、図28に示すように、仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebを設定するとよい。図28に示すように仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebが設定されている場合には、屈曲角度θxが30°よりも小さい屈曲角度から、屈曲角度θxが30°に近づくように支え具201a、201bに力が作用する。また、屈曲角度θxが30°を超えると急激に仮想ポテンシャルエネルギEa、Ebが高くなり、屈曲角度θxが30°を超えるような操作に対しては、大きな反力が作用し、屈曲角度θxが30°を超えるような操作が規制される。
このため、この実施形態では、屈曲許容角度設定部323によって設定された屈曲許容角度の近くになると、制御装置310は、被介護者402の股関節404の屈曲角度が屈曲許容角度を超えないようにアクチュエータ301a、301b〜305a、305bを駆動させる。このとき、操作部202の操作に基づく支え具201a、201bの動作を補正する力が大きくなることにより、屈曲許容角度が超えないようにする。
これにより、被介護者402の股関節404の屈曲角度が屈曲許容角度を超えないように、支え具201a、201bの動作が規制される。すなわち、仮想ポテンシャルエネルギの作用によって、図21に示すように、被介護者402の股関節404の屈曲角度θxが0°の状態よりも小さくなって被介護者402の背中が反った状態になるのを防止することができる。また、図22に示すように、被介護者402の股関節404の屈曲角度θxが30°の状態よりも大きくなって被介護者402の腹部が圧迫される状態になるのを防止することができる。なお、この実施形態では、屈曲許容角度の下限値及び上限値として0°と30°が設定されているが、これに限定されない。この実施形態では、屈曲許容角度は、屈曲許容角度設定部323において、適当な角度を適宜に設定できる。
また、この実施形態では、当該第2工程において、図21および図22に示すように、制御装置310は、第1支え具201aと第2支え具201bによって被介護者402を支承した状態で抱き上げる動作を制御する。当該動作において、制御装置310は、第1支え具201aと第2支え具201bの高さ方向の動作と、被介護者402の股関節404を屈曲させる動作を連動させる。すなわち、被介護者402を抱き上げる動作において、被介護者402を抱き上げる高さが高くなるにつれて、第1支え具201aと第2支え具201bが徐々に回動し、被介護者402の股関節404が徐々に屈曲して適切な屈曲角になる。
このように、この移乗支援装置200によれば、第1支え具201aと第2支え具201bによって被介護者402を抱き上げる高さに応じて、被介護者402の股関節404を屈曲させることができる。これによって、被介護者402にとって楽な姿勢で被介護者402を抱き上げることができる。また、被介護者を降ろす第4工程においては、第1支え具201aと第2支え具201bによって被介護者402を降ろす際の下向きの移動動作と、被介護者402の股関節404の屈曲を戻す動作を連動させるとよい。
また、この実施形態では、図23、図24に示すように、制御装置310は、第1支え具201aと第2支え具201bによって被介護者402を抱き上げる動作において、第1支え具201aと第2支え具201bが被介護者402を支持する位置が、被介護者402に対して変化しないように、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路r1a、r1bを設定している。
すなわち、この実施形態では、制御装置310は、図23、24に示すように、支え具201a、201bで支承した被介護者402の股関節404の位置を特定する股関節特定部327を備えている。なお、この実施形態では、股関節特定部327は、例えば、体格情報記憶部321に記憶された体格情報(例えば、身長情報、体重情報)に基づいて、予め定められたプログラムによって被介護者402の股関節404の位置を特定している。
制御装置310は、支え具201a、201bで支承した被介護者402を屈曲させる動作において、股関節特定部327によって特定された被介護者402の股関節404の位置に基づいて、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路r1a、r1bをそれぞれ設定する。この実施形態では、制御装置310の股関節特定部327は、図23、図24に示すように、被介護者402の股関節404の位置を特定し、動作経路設定部311は第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路r1a、r1bを設定する。この実施形態では、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路r1a、r1bは、それぞれ特定された被介護者402の股関節404の位置に対して、被介護者402の股関節404の位置を中心とした円弧になるように設定される。換言すれば、被介護者402を支承する支え具201a及び201bと被介護者402の人体との接触状態を維持しつつ、第1支え具201a及び第2支え具201bがそれぞれ股関節404の位置から一定の距離を維持しながら移動するように、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路がそれぞれ設定される。
さらに、この実施形態では、制御装置310は、被介護者402を屈曲させる動作において、ハンド部222a、222bと被介護者402の当接状態が維持されるように、ハンド部222a、222bを第2腕部233a、233bの長さ方向の軸周りに回動させる。
すなわち、この実施形態では、ハンド部222a、222bは、図12に示すように、当該ハンド部222a、222bが人を支承しているか否かを検知する検知センサ365(近接センサ366および圧力センサ367)を備えている。制御装置310は、当該検知センサ365によって、ハンド部222a、222bが被介護者402の背中および膝裏に当接した状態を検知する。そして、被介護者402を屈曲させる動作において、制御装置310は、当該検知をしつつ、当該当接状態が維持されるように、ハンド部222a、222bの回動角を変える。これによって、被介護者402を屈曲させる動作において、ハンド部222a、222bと被介護者402との当接状態が維持される。これによって、被介護者402を屈曲させる際、ハンド部222a、222bと被介護者402とのずれや摩擦を小さく抑えることができる。
なお、この実施形態では、制御装置310は、上述したように被介護者402を抱き上げる動作において、ハンド部222a、222bが設定された動作経路に沿って適切に動くように、仮想ポテンシャルエネルギによって、ハンド部222a、222bの操作を強く拘束する。これによって、被介護者402に負担を生じさせないように、被介護者402に対して、ハンド部222a、222bを適切に操作することができる。この点は、被介護者402を降ろす動作(第4工程)においても同様である。
また、制御装置310は、被介護者402を抱き上げた状態で移動させる第3工程においては、第1支え具201aと第2支え具201bで支承した被介護者402が障害物に当たらないように、操作部202の操作に基づく支え具201の動作を補正する。この実施形態では、制御装置310は、図14に示すように、移動経路上の障害物を検知する障害物検知部342を備えている。制御装置310は、第1支え具201aと第2支え具201bで支承した被介護者402が、当該障害物検知部342で検知された障害物に当たらないように、第1支え具201aと第2支え具201bの動作経路を設定する。
具体的には、この実施形態では、制御装置310は、姿勢情報記憶部328を備えている。姿勢情報記憶部328は、支え具201a、201bによって支承された被介護者402の姿勢に関する情報を記憶する。支え具201a、201bに支承された被介護者402の姿勢に関する情報は、例えば、操作部202の近傍に設けられた姿勢操作部(図示省略)によって、操作者(介護者401)によって入力される。例えば、操作者(介護者401)は、支え具201a、201bに支承された被介護者402の姿勢を見て、被介護者402の頭が左右どちらに向いているかなど、被介護者402の姿勢に関する情報を入力するとよい。
制御装置310(動作経路設定部)は、支え具201a、201bで被介護者402を支承した状態において、姿勢情報記憶部328に記憶された被介護者402の姿勢に関する情報に基づいて、被介護者402の頭の高さが足よりも上になるように支え具201a、201bを動作させる動作経路を設定する。なお、この実施形態では、制御装置310は、体格情報記憶部321に記憶された体格情報(例えば、身長情報、体重情報)と、支え具201a、201bの位置及び姿勢とに基づいて、予め定められたプログラムによって、被介護者402の概ねの姿勢(具体的には、被介護者402の頭の位置や、足の位置など)を認識することができる。このため、動作経路を設定する際は、被介護者402が、障害物検知部342で検知された障害物に当たらないように、適切な動作経路を設定することができる。
そして、制御装置310は、当該設定された動作経路に沿って、第1支え具201aと第2支え具201bが動作するように、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を駆動させて、操作部202の操作に基づく支え具201の動作を補正する。
これにより、第1支え具201aと第2支え具201bで被介護者402を支承した状態でも、被介護者402が、当該障害物検知部342で検知された障害物に当たらないように、第1支え具201aと第2支え具201bを動作させることが容易になる。
なお、この実施形態では、制御装置310は、上述したように被介護者402を抱き上げた状態で移動する動作において、ハンド部222a、222bが設定された動作経路に沿って適切に動くように、仮想ポテンシャルエネルギによって、ハンド部222a、222bの操作を強く拘束する。特に、左右のハンド部222a、222bの間隔や、左右のハンド部222a、222bの傾きなどに対して、仮想ポテンシャルエネルギによって、ハンド部222a、222bの操作を強く拘束する。これによって、被介護者402が不安定な姿勢になるのを防止できる。
次に、被介護者を降ろす第4工程では、移乗支援装置200は、ハンド部222a、222bが所定の距離よりもベッド410に近づくと、ハンド部222a、222bがゆっくりと動作するように(早く動かないように)、支え具201の動作速度が制限される。
すなわち、この実施形態では、移乗支援装置200は、図15に示すように、移乗支援装置200とベッド410との距離を検知する第1検知部361およびベッド410の載置面411に対する支え具201の高さを検知する第2検知部362を備えている。制御装置310は、当該第1検知部361によって検知された、移乗支援装置とベッド410との距離に基づいて、移乗支援装置200が、制御装置310に予め定められた距離よりもベッド410に近づくと、移乗支援装置200がゆっくり近づくように、移動体205の動作速度を制御装置310に予め定められた速度よりも遅い速度に制限する。また、制御装置310は、当該第2検知部362によって検知された、載置面411に対する支え具201の高さに基づいて、支え具201が、制御装置310に予め定められた高さよりもベッド410に近づくと、支え具201がゆっくりと動作するように、支え具201の動作速度を制御装置310に予め定められた速度よりも遅い速度に制限する。
これにより、被介護者402は、例えば、ベッド410に降ろされる際に、ハンド部222a、222bがベッド410に近づくと、ハンド部222a、222bの動作が遅くなり、ゆっくりとベッド410に降ろされる。このため、ベッド410に降ろされる際に、被介護者402が感じ得る不安感が軽減される。また、ハンド部222a、222bがベッド410に近づくと、ハンド部222a、222bの動作が遅くなるので、操作者(介護者401)にとっては、移乗支援装置200の操作がし易くなり、ハンド部222a、222bをベッド410に対して適切な位置に操作し易くなる。
次に、支え具201(ハンド部222a、222b)を引き抜く第5工程では、この実施形態では、ハンド部222a、222bに備え付けられた搬送ベルト241a、241bによって、被介護者402をベッド410の上に移動させるとよい。
また、この実施形態では、制御装置310には、図29に示すように、挿入モード(第1工程)、抱上モード(第2工程)、積載移動モード(第3工程)、抱下モード(第4工程)および引抜モード(第5工程)がそれぞれ設定されている。そして、各モードそれぞれにおいて、支え具201a、201bの動作経路が設定される。そして、動作経路r1a、r1bに沿って支え具201a、201bが動作するように、アクチュエータ301a、301b〜305a、305bを駆動させることにより、操作部202の操作に基づく支え具201a、201bの動作が補正される。
この実施形態では、図29に示すように、挿入モード(第1工程)、抱上モード(第2工程)、積載移動モード(第3工程)、抱下モード(第4工程)および引抜モード(第5工程)が、自動で切り替わる。
例えば、制御装置310は、挿入モード(第1工程)において、第2検知部362によりハンド部222a、222bの下面が載置面411に着いたことを検知し、かつ、人を支承しているか否かを検知する検知センサ365が人を支承していることを検知しているときに、操作レバー202a,202bにより抱上げ動作を行うための操作入力情報が入力されると、挿入動作が完了したと判断し、抱上モード(第2工程)に移行する。次に、抱上モード(第2工程)において、抱上げ動作を行い、同モードにおいて生成された経路の終点近傍に到着後、移動動作するための操作入力情報が入力されると、抱き上げ動作が完了したと判断し、積載移動モード(第3工程)に移行する。また、積載移動モード(第3工程)において、移動動作を行い、同モードにおいて生成された経路の終点近傍に到着後、抱き下ろし動作を行うための操作入力情報が入力されると、積載移動動作が完了したと判断し、抱下モード(第4工程)に移行する。さらに、抱下モード(第4工程)において、第2検知部362によりハンド部222a、222bの下面が載置面411に着いたことを検知し、かつ、引き抜き動作を行うための操作入力情報が入力されると、被介護者402を降ろす動作が完了したと判断し、引抜モード(第5工程)に移行する。制御装置310は、移乗支援装置200の各種センサの信号に基づいて、予め設定されたプログラムに基づいて各動作の完了を検知する。
このように、各モードが自動で行なわれると、スムーズにモードが切り替わり、操作性がよい。なお、各モードは、操作者が手動で切り替えるようにしてもよい。この場合、制御装置310は、移乗支援装置200の各種センサ信号に基づいて、手動でモードの切り替えをしてよい状態かどうかのチェックを行う。例えば、抱下モード(第4工程)から引抜モード(第5工程)に手動で切り替える場合には、第2検知部362によりハンド部222a、222bの下面が載置面411に着いていることを検知しているときにのみ、手動による引抜モード(第5工程)への移行を許可している。これによって、ハンド部222a、222bの下面が載置面411に着いていない状態にも拘らず、ベルトの回転を伴う引抜動作が行われることを防ぐことができる。すなわち、人を持ち上げた状態で誤ってベルトを回転させることを防ぐことができ、その安全性を確保できる。また、挿入モード(第1工程)と引抜モード(第5工程)の相互間の移行、および、抱上モード(第2工程)と抱下モード(第4工程)の相互間の移行も可能に設定してもよい。これにより、モードをまたぐ各種動作のやり直しを行うことができる。例えば、抱上モード(第2工程)時に、もう少し抱き下ろした状態にしたい場合には、抱下モード(第4工程)に移行し、そのまま抱き下ろし動作を行うことができる。
以上のとおり、この移乗支援装置200は、制御装置310が支え具201a、201bの動作経路r1a、r1bを設定する。さらに、動作経路r1a、r1bに沿って支え具201a、201bが動作するように、アクチュエータ(301a、301b〜305a、305b)を駆動させることにより、操作部202の操作に基づく支え具201a、201bの動作を補正する。このため、当該移乗支援装置200の操作の習熟度が低い操作者(介護者401)が操作した場合であっても、当該介護者401の操作が、制御装置310によって補正されるので、移乗支援を受ける人(被介護者402)の身体が無理な姿勢になるなど、移乗支援を受ける被介護者402に負担を強いるような操作を抑制できる。このため、操作者(介護者401)にとっては移乗支援装置200の操作が簡単であり、移乗支援を受ける被介護者402にとっても安心に介護を委ねることができる。
以上、本発明の一実施形態に係る移乗支援装置を説明したが、本発明の移乗支援装置は上記の実施形態に限定されない。
例えば、移乗支援装置の構造は上述した構造に限定されない。例えば、上述した実施形態では、支え具は、一方の支え具によって人の上半身を支承し、他方の支え具によって人の下半身を支承する、第1支え具と第2支え具を備えた構成を例示した。本発明においては、支え具は、人を支承できる構造を有していればよく、上述した実施形態に限定されない。また、制御装置の構成についても上述した実施形態に限定されない。上述した制御上の種々の特徴は、一つの移乗支援装置において具現化されている。
以下、本発明の他の実施形態に係る移乗支援装置を説明する。
(他の実施形態)
まず、図1により、介護者3が本実施の形態の移乗支援装置1を使用して、被介護者2の介護を行う場合の概要を説明する。図1は移乗支援装置1の使用時の状況を示す斜視図である。ここでは、病気の人、怪我をした人などを被介護者として説明する。
図1に示すように、本実施の形態の移乗支援装置1は、基本の移乗動作として、載置具上に載置されている被介護者2と載置具との間に左右の支え具16a、16bを挿入する動作(挿入動作)、支え具16a、16bの掬い面上に被介護者2を掬い上げる動作(抱上動作)、別の場所にある載置具のところまで任意の姿勢で移動する動作(積載移動動作)、支え具16a、16bを降下させ、載置具に降ろす動作(抱下動作)、載置具と被介護者2との間から支え具16a、16bを引き抜く動作(引抜動作)がある。これにより、介護者3は被介護者2を他の載置具に任意の姿勢で移乗させることができる。
これらの基本の移乗動作を行うにあたって、介護者3は、被介護者2に無理のない、負担の少ない動作を行う必要がある。
このため、本実施の形態の移乗支援装置1は、載置具に載置されている被介護者2を支え具16a、16bで掬い上げ他の載置具に移乗させるとき、被介護者2の身体に係わる特徴を示す身体情報を取得し、被介護者2を支え具16a、16bで保持するとき、身体情報に基づいて支え具16a、16bの目標位置および目標姿勢を決定するための動作姿勢経路の情報を生成し、動作姿勢経路情報に基づいて支え具16a、16bを目標位置および目標姿勢をとるように支持することを特徴とする。
これにより、移乗支援装置1は、被介護者2の身体情報に基づいて、習熟度の低い操作者が操作した場合であっても、被介護者2にとって無理のない動作を行い、負担が少ない姿勢を取らせて移乗することができる。
また、移乗支援装置1は、被介護者2の身体情報(体格情報)に基づいて、被介護者2にとって極めて負担となる極端な姿勢がないように動作制限を設け、この動作制限の範囲の中で支え具16a、16bの位置/姿勢を制御している。この動作制限の範囲内でスムーズな動作を行うため、後述するように、動作姿勢経路上の各位置ごとに仮想ポテンシャルエネルギの考えを導入し、動作制限からくる限界の姿勢に対して仮想ポテンシャルエネルギを急激に高めるようしている。これにより、移乗支援装置1は、動作制限内で仮想ポテンシャルエネルギが低くなる側へ支え具16a、16bを動作するように制御される。これにより、被介護者2に負担を強いることはない、安全で安心な移乗支援装置1を提供できる。また、移乗支援装置1は、仮想ポテンシャルエネルギの勾配の持たせ方によりスムーズに操作することができる。
以下、左右の支え具を用いて載置具に載置されている人体を掬い上げ他の載置具に移乗させる場合について説明する。
つぎに、本実施の形態における移乗支援装置1の構造について図2を用いて説明する。図2は移乗支援装置1の要部の構造を示す斜視図である。
まず、図2を用いて、移乗支援装置1の構成を説明する。なお、図2において、互いに直交する3つの軸(X軸、Y軸およびZ軸)は、XY平面が地面に対して平行な水平面であり、移乗支援装置1は正面がX方向を向いている。
移乗支援装置1は、左右の支え具16a、16bと、被介護者2の身体にかかわる特徴を示す身体情報を取得する身体情報取得部600と、被介護者2を支え具16a、16bで保持するとき、身体情報に基づいて支え具16a、16bの目標位置および目標姿勢を制御するための動作制御情報(以下、「動作姿勢経路情報」という)を生成する制御装置110と、動作姿勢経路情報に応じて支え具16a、16bが目標位置および目標姿勢をとるように支え具16a,16bを支持する支持部4a、4bと、支え具16a,16bを操作するための指示情報を入力するための操作部14a、14b(入力部)とを備えている。
支え具16a、16bは、載置具に載置された被介護者2と載置具の載置面の間に挿入し、被介護者2を掬う目的で配設されている。支え具16a、16bは、支え具16a、16b上に掬い上げた被介護者2を支えている位置を変えるためのベルト部23a、23b(搬送ベルト)と、支え具16a、16bの下面が載置具の戴置面の上面に着床したことを検知するための着床検知手段としての着床検知センサ32a、32b(例えば、圧力センサ)とを備えている。
ベルト部23a、23bは、後述するベルト駆動部25(図3)により、支え具16a、16bを挿入または引き抜くときに、挿入または引き抜きに同期して駆動され、回転する。これにより、接触面における被介護者2との相対速度を「0」にし、被介護者2の背面と載置具の載置面との位置ずれを防止できる。ここで、支え具16aに係るものをベルト部23aとし、支え具16bに係るものをベルト部23bとする。また、ベルト部23a、23bは支え具16a、16bの上側の表面に露出しており、被介護者2をベルト部23a、23bに乗せた状態で移動させることができる。
着床検知センサ32a、32bは、支え具16a、16bの挿入方向について前側下面の両端部近傍に各々複数設けられ、支え具16aに設けられた着床検知センサを着床検知センサ32aとし、支え具16bにある着床検知センサを着床検知センサ32bとする。
支持部4a、4bは、支え具16a、16bを被介護者2と載置具の載置面との間に挿入するための支え具挿入手段としてのベース6a、6bと、支え具16a、16bを昇降させる昇降手段としての脚部8a、8bと、支え具16a、16bの姿勢を変更する関節部13a、13b、関節部15a、15bおよびアーム部12a、12bとを備えている。これにより、支持部4a、4bは、支え具16a、16bが目標位置および目標姿勢になるように支持することができる。ここで、支え具16aに係るものを支持部4aとし、支え具16bに係るものを支持部4bとする。
関節部13a、13bは、支え具16a、16bの姿勢をかえる第1の回動手段として設けられ、位置/姿勢の基準となる支持部4a、4bに対してX軸回りに回動動作を行う。ここで、支え具16aに対して回動動作を行うものを関節部13aとし、支え具16bに対して回動動作を行うものを関節部13bとする。同様に、関節部15a、15bは、支え具16a、16bの姿勢をかえるための第2の回動手段として設けられ、支持部4a、4bに対してY軸回りに回動動作を行う。ここで、支え具16aに対して回動動作を行うものを関節部15aとし、支え具16bに対して回動動作を行うものを関節部15bとする。関節部13a、13b、15a、15bには、それぞれに1軸方向に回転可能な公知の軸受機構を用いることができ、モータ等を動力源とした関節駆動部114により駆動される。
アーム部12a、12bは、関節部13a、13bと関節部15a、15bとを連結する。ここで、関節部13a、15aに連結されるものをアーム部12aとし、関節部13b、15bに連結されるものをアーム部12bとする。なお、アーム部12a、12bに伸縮機構を設け、このアーム部12a、12bの伸縮動作によって支え具16a、16bの相対位置を変更可能にしてもよい。
ベース6a、6bには、複数の車輪5が配設されている。車輪5は、モータ等を動力源とした位置駆動部116により駆動され、移乗支援装置1の全体を自立して前後左右に移動させ、Z軸の回りに回動させ、絶対姿勢を変更することができる。ここで、支え具16a側にあるものをベース6aとし、支え具16b側にあるものをベース6bとする。ベース6aとベース6bとは連結部10により連結され、連結部10は必要に応じて、車輪5の動作に合わせて伸縮し、支え具16aと支え具16bとの間隔を調整し、相対位置をかえる。なお、支え具挿入手段としては、車輪5とアーム部12a、12bとを併用する構成や、アーム部12a、12bのみの構成でもよい。アーム部12a、12bのみを使用する場合には、アーム部12a、12bの伸縮動作によって支え具16a、16bの位置を変更する。
脚部8a、8bは、ベース6a、6bと関節部15a、15bとを連結し、スライド機構により支え具16a、16bを昇降させる。スライド機構はモータ等を動力源とした昇降駆動部118により駆動される。ここで、支え具16aに係るものを脚部8aとし、支え具16bに係るものを脚部8bとする。なお、他の昇降手段として、複数のリンクを組み合わせて、連結した部分の角度を変更可能にすることで支え具16a、16bを昇降させ、相対位置をかえるようにしてもよい。
身体情報取得部600は、公知の取得手段により、被介護者2の身体にかかわる特徴を示す身体情報を取得する。例えば、介護者3の手入力によって入力された情報を取得するようにしてもよい。また、無線ICタグにより管理されている被介護者2の情報を取得するようにしてもよい。他の例では、被介護者2を管理しているICカードから取得するようにしてよい。移乗支援装置1は、被介護者2の身長情報、関節位置情報および肉厚情報を身体情報として取得することによって、被介護者2を救い上げて支えるときの支え具16a、16bの最適な位置/姿勢を設定でき、さらに、被介護者2にとって無理のない動作と、負担の少ない姿勢をとることができる。
なお、取得された身長情報および体重情報に基づいて標準的な関節位置情報および肉厚情報を生成することができる場合には、身体情報として、身長情報および体重情報を取得するようにしてもよい。例えば、標準身長および標準体重に対する標準関節位置情報および標準肉厚情報をもつ標準人体テーブルを備え、この標準人体テーブルに基づいて、標準関節位置情報および標準肉厚情報を得ることができる。
さらに、被介護者2の動かすことができない怪我や負傷部分の位置などの部位情報を取得するようにしてもよい。この部位情報を予め取得することで、移乗支援装置1が行う基本の移乗動作に対して、被介護者2にとって無理のない動作と負担の少ない姿勢を予め動作条件として設定することが可能となる。詳細については後述する。
制御装置110は、支え具16a、16bを動作させる動作経路を設定する。すなわち、制御装置110は、被介護者2を支え具16a、16bで保持するとき、取得した身体情報に基づいて支え具16a、16bの目標位置および目標姿勢を決定するための動作姿勢経路情報を生成する。また、制御装置110は、動作姿勢経路情報に基づいて、関節駆動部114、位置駆動部116、昇降駆動部118およびベルト駆動部25の制御を行う。これにより、支え具16a、16bの位置/姿勢が目標位置および目標姿勢をとるように制御することができる。
操作部14a、14b(入力部)は、移乗支援装置1を操作するための指示情報を入力するためのものである。操作部14a、14bは、操作意思の一例として、操作力の検知を前後左右上下方向および各方向における回転を含む6軸力センサなどで指示情報を取得する。この指示情報は制御装置110に伝達され、制御装置110は上記した各駆動部分を制御する。なお、操作部14a、14bは、仮想的に外力を生成することができるものであればよい。例えば、必要な指示情報に応じて、ジョイスティック、レバー、プッシュスイッチ、タッチパネルなどの公知の入力手段が使用できる。介護者3は、この操作部14a、14bを操作することにより、移乗支援装置1を操縦することができる。なお、操作部14a、14bに、入力操作を補助するための報知手段または表示手段をさらに備えてもよい。
つぎに、移乗支援装置1の電気的な構成について、図3を用いて説明する。図3に示すように、移乗支援装置1は、操作指令を入力するための操作部14a、14bと、関節部13a、13b、15a、15bを駆動する関節駆動部114と、ベルト部23a、23bを駆動するベルト駆動部25と、脚部8a、8bをスライドさせる昇降駆動部118と、ベース6a、6bを駆動する位置駆動部116と、制御装置110とを備えている。さらに、移乗支援装置1は入出力手段として、被介護者2の身体情報を取得する身体情報取得部600と、支え具16a、16bの着床状態を検知するための複数の着床検知センサ32a、32bとを備えている。関節駆動部114、ベルト駆動部25、昇降駆動部118および位置駆動部116には、それぞれ公知のモータ等を動力源とした駆動手段を用いることができる。
つぎに、移乗支援装置1の機能について説明する。
まず、上記の構成により、本発明の実施の形態における移乗支援装置1では、制御装置110により、被介護者2の身体特徴を示す身体情報を身体情報取得部600から取得し、取得した身体情報に基づいて複数の支え具16a、16bの目標位置および目標姿勢を決定するための動作姿勢経路情報を生成する。そして、制御装置110は、生成された動作姿勢経路情報(動作経路)に沿って支え具16a、16bが動作するように、上記の各駆動部114、116、118(アクチュエータ)を駆動させることにより、操作部14a、14bの操作に基づく支え具16a、16bの動作を補正する操作補正部として機能する。すなわち、制御装置110は、動作姿勢経路情報にもとづいて、関節駆動部114、位置駆動部116、昇降駆動部118およびベルト駆動部25の制御を行う。これにより、移乗支援装置1は、支え具16a、16bの位置/姿勢が目標位置および目標姿勢となるように制御することができる。
また、移乗支援装置1は、支え具16a、16bそれぞれの下面に着床検知センサ32a、32bを離間して設け、脚部8a、8bのスライド動作によって支え具16a、16bが載置面に着床したことを検知することができる。
つぎに、移乗支援装置1の動作姿勢経路情報に基づく動作制御について詳細に説明する。図4は、本発明の実施の形態における移乗支援装置1の動作制御にかかわる構成を示すブロック図である。
図4に示すように、操作部14a、14bは、介護者3の操作意思を検出する操作意思検出部609と、介護者3が動作姿勢経路を修正するときの修正意思を検出する修正意思検出部607と、動作モードを設定する動作モード設定部611と、被介護者2の頭の向きを取得する人体方向検出部627とを備えており、移乗支援装置1の動作に合わせて、各種操作指示が入力される。
操作意思検出部609は、介護者3によって、操作部14a、14bが所定の方向に所定の操作力で所定の期間操作されたとき、介護者3の操作意思があると判定する。操作意思検出部609は、介護者3の操作意思に応じて、移乗支援装置1の動作/維持の操作意思情報を制御装置110に出力する。移乗支援装置1を動作させない場合には、移乗支援装置1はその操作前の状態を維持する。また、操作意思情報は、介護者3の意思にかかわる情報であり、操作開始、操作停止、操作維持などを操作意思判断部610を介して、動作経路生成部604に反映される。
なお、操作部14a、14bの操作に対して、過敏な装置の応答をさけるため、操作方向、操作力に対して所定の不感帯を設けるようにしてもよい。
修正意思検出部607は、介護者3によって、動作姿勢経路情報に基づいて設定された目標位置および目標姿勢に対して、決定された動作経路から離れる方向に操作部14a、14bが操作されたときに介護者3の修正意思があると検出する。ここで、修正意思検出部607は、所定の操作力で所定の期間、操作部14a、14bが操作されたときに入力ありと判断する。修正意思検出部607は、介護者3の修正意思に応じて、移乗支援装置1の設定された目標位置および目標姿勢を修正するための修正意思情報を制御装置110に出力する。移乗支援装置1の目標位置および目標姿勢を修正しない場合には、動作姿勢経路情報は修正されない。
動作モード設定部611では、被介護者2を移乗させるときに、各動作に応じた動作モードを設定する。例えば、支え具16a、16bを載置具に着床させ被介護者2と載置具との間に挿入する第1の動作モード(挿入モード)と、支え具16a、16bを上昇させ、被介護者2を掬う第2の動作モード(抱上モード)と、支え具16a、16bを移動させ、被介護者2を第2の載置具(図示せず)まで移動する第3の動作モード(積載移動モード)と、支え具16a、16bを降下させ、被介護者2を第2の載置具の載置面まで下げる第4の動作モード(抱下モード)と、支え具16a、16bを被介護者2と載置具との間から引き抜く第5の動作モード(引抜モード)等、移乗時の基本動作に対して動作モードを設定する。介護者3は、被介護者2を移乗させる場合、この5つに区分された移乗形態に応じて、各動作モードを選択することにより、移乗時の一連の基本動作に対して移乗支援装置1を操作することができる。なお、これらの移乗の基本動作に加えて、操作前後の準備その他のステップを考慮してさらに細分化できることはいうまでもない。
制御装置110は、被介護者2の身体にかかわる特徴を示す身体情報を身体情報取得部600から取得する。例えば、動作経路生成部604は、身体情報として、身長情報、関節位置情報および肉厚情報を直接に取得する。可動域情報生成部605は、この取得された身長情報、関節位置情報および肉厚情報に基づいて、被介護者2の関節における屈曲方向および可動範囲を示す可動域情報を生成する。動作経路生成部604は、生成された可動域情報に基づいて支え具16a、16bの位置/姿勢に対して制限を設けた第1の動作姿勢経路の情報を生成する。
なお、動作経路生成部604は、身長情報、関節位置情報および肉厚情報を間接的に取得するようにしてもよい。この場合には、身長情報および体重情報に基づき標準関節位置情報および標準肉厚情報を生成する。
例えば、図4に示すように、標準身長および標準体重に対応付けられた標準関節位置情報および標準肉厚情報をもつ標準人体テーブルを標準人体情報記憶部602に記憶しておき、個別人体情報作成部601はこの標準人体テーブルに従って、身長情報および体重情報から標準関節位置情報および標準肉厚情報を生成し、身長情報、標準関節位置情報および標準肉厚情報を個別人体情報記憶部603に記憶する。
可動域情報生成部605は、個別人体情報記憶部603に記憶されている、身長情報、標準関節位置情報および標準肉厚情報に基づいて被介護者2の関節における屈曲方向および可動範囲を示す可動域情報を生成する。動作経路生成部604は、生成された可動域情報に基づいて位置/姿勢に対して制限を設けた第1の動作姿勢経路の情報を生成する。
これにより、身体情報として、一般的な情報として管理される、身長情報および体重情報を利用することができる。
さらに、制御装置110で、被介護者2の動かすことができない怪我や負傷部分の位置等の部位情報を取得するようにしてもよい。この場合には、可動域情報生成部605は、部位情報に基づいて被介護者2の関節における屈曲方向および可動範囲を示す可動域情報を生成し、動作経路生成部604は、可動域情報生成部605で生成された可動域情報に基づいて支え具16a、16bの位置/姿勢に対して制限を設けた第1の動作姿勢経路の情報を生成する。
このように部位情報を予め取得することで、移乗支援装置1が行う基本の移乗動作に対して、被介護者2にとって無理のない動作と負担の少ない姿勢を予め動作条件として設定することが可能となる。これにより、被介護者2をベッドなどから掬い上げるときに、部位情報から怪我や負傷部分の位置を避けた可動域情報を生成し、生成された可動域情報に基づいて相対位置および相対姿勢に対して制限を設けた第1の動作姿勢経路情報を生成し、第1の動作姿勢経路情報に基づく動作姿勢経路に沿った動きになるように支え具16a、16bの間隔を設定して掬い上げることができる。また、被介護者2が腰を痛めていることを示す部位情報が含まれている場合には、支え具16a、16bの屈曲角度に制限を持たせた動作条件を設定し、制限を設けた第1の動作姿勢経路情報を生成することができる。これにより、被介護者2にとって、より安全で安心することできる移乗支援装置1を実現することができる。
動作モード設定部611によって設定された動作モードに応じて、動作モード情報記憶部606から基本動作を行うための基本動作姿勢経路情報を取得し、その動作モードに係る基本動作をアシストするための情報が動作経路生成部604に出力される。
動作モード設定部611は、設定された動作モードを開始の動作モードとし、上述した第1〜第5の動作モードをシーケンシャルに全部または一部を自動で設定して実行することができる。これにより、移乗支援装置1は、移乗動作を行う場合には、上述した第1〜第5の動作モードをシーケンシャルに全部または一部を自動で実行することができる。介護者3は、移乗形態に応じて、必要とする動作モードから実行すればよい。また、特定の動作モードを選んで実行すればよい。
基本動作経路情報切替部612は、実行する動作モードに応じて動作モード情報記憶部606にあらかじめ記憶されている基本動作姿勢経路情報を選択して取得し、動作経路生成部604に送信する。したがって、介護者3は、複数の動作モードの中から必要な動作モードを選択するだけで、第1〜第5の動作モードに係る基本動作に係る動作のアシストを受けることができる。
制御装置110は、第1〜第5の動作モードごとに、移乗支援装置1が被介護者2を移乗するために必要な動作に係る第1の動作姿勢経路情報613、第2の動作姿勢経路情報614を動作経路生成部604から出力する。
なお、制御装置110は、操作意思判断部610により、操作意思検出部609からの操作意思情報を判断し、介護者3の操作意思に応じて、移乗支援装置1を動作させるか否かを決定する。移乗支援装置1を動作させない場合には、移乗支援装置1はその操作前の状態の動作を維持する。また、制御装置110は、動作経路修正部608により、修正意思検出部607からの修正意思情報を判断し、介護者3の修正意思に応じて、移乗支援装置1の位置/姿勢、支え具の位置/姿勢を修正するか否かを決定する。移乗支援装置1の位置/姿勢をさらに修正する場合には、動作経路生成部604にその修正内容を通知する。修正しない場合には、動作経路生成部604に対して何もせず、結果、動作姿勢経路情報は修正されない。
動作制御情報生成部615は、上述の第1の動作姿勢経路情報613に基づいて複数の支え具16a、16bの位置/姿勢動作を制御するための動作制御情報を生成する第1動作制御情報生成部616と、第2の動作姿勢経路情報614に基づいて装置全体の位置/姿勢を制御するための動作制御情報を生成する第2動作制御情報生成部617とを備えている。
第1動作制御情報生成部616で生成された動作制御情報(F1、F2)は支え具制御部618に出力され、支え具16a、16bを協調動作させながら、支え具16a、16bの位置/姿勢動作を制御する。支え具制御部618は、第1の動作姿勢経路情報613に基づく動作制御情報(F1、F2)により、被介護者2と左右の支え具16a、16bとの相対位置および姿勢の制御を行う。これにより、支え具制御部618は、脚部8a、8bを動作させて支え具16a、16bを上下に移動するほか、関節部13a、13b、15a、15bに備えた回転機構により、支え具16a、16bをX軸回りに回転させ、必要に応じてY軸回りに傾斜させる。
第2動作制御情報生成部617で生成された動作制御情報(F3)は装置全体の位置/姿勢を制御する協調動作制御部626に送信される。
協調動作制御部626は、装置全体の位置/対姿勢の情報に基づいて、支え具16a、16bの位置/姿勢動作を補正するために制御信号を支え具制御部618に送信し、さらに、移動ベース制御部619に装置全体の位置を制御するための制御信号を送信する。これにより、協調動作制御部626は、第2の動作姿勢経路情報614に基づく動作制御情報(F3)に基づき、装置全体の位置/姿勢と、それに応じて支え具16a、16bの位置/姿勢動作を補正するように制御する。
支え具16a、16bの現在位置およびそのときの姿勢は、逐次検出部(図示せず)で検出され、支え具制御部618および移動ベース制御部619にフィードバックされ、さらに、身体情報に基づいた可動域情報生成部605に反映され、被介護者2にとって負担が少ない姿勢になるように移乗支援装置1の姿勢が制御される。
以上述べたように、移乗支援装置1は、身体情報に基づいて左右の支え具16a、16bの目標位置および目標姿勢を決定するための第1および第2の動作姿勢経路情報を動作経路生成部604で生成する。また、移乗支援装置1は、この第1および第2の動作姿勢経路情報および操作意思情報に基づいて、その動作を制御する。
つぎに、被介護者2と支え具16a、16bとの相対位置および相対姿勢に関する処置について説明する。
動作経路生成部604は、被介護者2と支え具16a、16bとの相対位置および相対姿勢に関し、あらかじめ定められた動作条件を維持する第1の動作姿勢経路を決定するための第1の動作姿勢経路情報613を生成する。また、動作経路生成部604は、第1の動作姿勢経路を定義するための第2の動作姿勢経路を決定するための第2の動作姿勢経路情報614を生成する。この第1の動作姿勢経路と第2の動作姿勢経路の詳細については後述する。
支え具16a、16bは、被介護者2との接触位置において、それぞれ被介護者2と略平行であり、支え具16a、16bと被介護者2とは相対位置ずれまたは相対姿勢ずれのないことを動作条件としている。したがって、支え具16a、16bは、被介護者2に対して、動作時に皮膚の擦れを発生させ難い。
なお、動作経路生成部604は、人体方向検出部627により被介護者2の頭の向きを検出し、被介護者2の足部の高さが頭部の高さより上になるのを防止するように第1または第2の動作姿勢経路情報613を設定している。これにより、被介護者2に負担をかける姿勢になり難くしている。
つぎに、動作経路生成部604において移乗支援装置1の支え具16a、16bおよび移乗支援装置1全体の絶対位置ならびに絶対姿勢を制御するための動作制御情報である第1の動作姿勢経路情報613、第2の動作姿勢経路情報614を生成する方法について、図5〜図11により説明する。
図5は、移乗支援装置1の動作姿勢経路の定義を示す斜視図である。図5において、S1、S2は被介護者2と支え具16a、16bとの相対位置および相対姿勢に関する動作経路である第1の動作姿勢経路を示している。第1の動作姿勢経路S1,S2は第1の動作姿勢経路情報613に基づき決定される。また、S3は第1の動作姿勢経路を定義する第2の動作姿勢経路を示している。第2の動作姿勢経路S3は、移乗支援装置1全体の絶対位置ならびに絶対姿勢を制御する第2の動作姿勢経路情報614に基づき決定される。本実施の形態における移乗支援装置1は、移乗支援装置1の運動に関し、仮想ポテンシャルエネルギを用いることによって支え具16a、16bおよび移乗支援装置1に作用する仮想外力を算出し、動作姿勢経路および動作可動域を決定している。
ここで、図5および図7に示す各記号を説明する。
Σ0は、静止座標系である基準座標系を示している。
Σ2は、両支え具16a、16b全体を代表する点を原点とし、支え具16a,16bと共に動く支え具16a、16b全体の座標系を示している。
Σ1は、原点が支え具16a、16bの代表点と一致し、X軸がΣ2のX軸と一致する座標系である。Σ1は、Σ2の基準となる座標系である。
Σhrは、支え具16aに固定され、支え具16aと共に動く支え具16aの座標系を示している。
Σhlは、支え具16bに固定され、支え具16bと共に動く支え具16bの座標系を示している。
0r2は、Σ0からΣ2への位置ベクトルである。
2rhrは、Σ2からΣhrへの位置ベクトルである。
2rhlは、Σ2からΣhlへの位置ベクトルである。
0R2は、Σ0から見たΣ2の姿勢を表す回転行列である。
2Rhrは、Σ2から見たΣhrの姿勢を表す回転行列である。
2Rhlは、Σ2から見たΣhlの姿勢を表す回転行列である。
図6に示すように、第1の仮想ポテンシャルエネルギ生成部620及び第2の仮想ポテンシャルエネルギ生成部622は、第1の動作姿勢経路情報613が入力され、第1の動作姿勢経路情報613に基づく第1の動作姿勢経路上の各点における仮想ポテンシャルエネルギをそれぞれ生成する。第1の仮想外力算出部621及び第2の仮想外力算出部623は、この仮想ポテンシャルエネルギに基づく仮想外力情報F1、F2をそれぞれ支え具制御部618に出力する。
同様に、第3の仮想ポテンシャルエネルギ生成部624は、第2の動作姿勢経路情報614が入力され、第2の動作姿勢経路情報614に基づく第2の動作姿勢経路上の各点における仮想ポテンシャルエネルギを生成する。第3の仮想外力算出部625は、この仮想ポテンシャルエネルギに基づく仮想外力情報F3を協調動作制御部626に送信する。協調動作制御部626は、移乗支援装置1全体に係るかかるものは移動ベース制御部619に出力し、支え具16a、16bに係るものは支え具制御部618に出力する。
図7は、被介護者2と支え具16a、16bとの相対的な位置関係を示している。ここで、Σ2の座標系はΣ1の座標系に対してX軸周りに0θx回転したものである。身体情報に基づく支え具16a、16bの動作制限に関し、頭部の高さを足部の高さより上にするための条件は、下記式(2)のようになる。
以下、図7中の各記号を説明する。
Oは、被介護者2の関節位置(股関節の位置)を示している。
srは、支え具16aの中心caを通り、支え具16aが被介護者2を支承する面に平行な直線を示している。
hrは、被介護者2の関節位置Oと支え具16aの中心caとを結んだ直線を示している。
slは、支え具16bの中心cbを通り、支え具16bが被介護者2を支承する面に平行な直線を示している。
hlは、被介護者2の関節位置Oと支え具16bの中心cbとを結んだ直線を示している。
1θhlは、Σ1のy軸(y1)とhl軸の間のΣ1のx軸周りの角度を示している。1θhlは、図7において時計回りの方向を正とする。
2θhlは、Σ2のy軸(y2)とhl軸の間のΣ1のx軸周りの角度を示している。2θhlは、図7において時計回りの方向を正とする。
hlθslは、hl軸とsl軸の間のΣ1のx軸周りの角度を示している。hlθslは、図7において時計回りの方向を正とする。
1θhrは、Σ1のy軸(y1)とhr軸の間のΣ1のx軸周りの角度を示している。1θhrは、図7において反時計回りの方向を正とする。
2θhrは、Σ2のy軸(y2)とhr軸の間のΣ1のx軸周りの角度を示している。2θhrは、図7において反時計回りの方向を正とする。
hrθsrは、hr軸とsr軸の間のΣ1のx軸周りの角度を示している。hrθsrは、図7において反時計回りの方向を正とする。
0θxは、Σ1のy軸(y1)とΣ2のy軸(y2)の間のΣ1のx軸周りの角度を示している。0θxは、図7において反時計回りの方向を正とするが、時計回りの方向を正としてもよい。
また、被介護者2の屈曲角度を例えば0〜90度とする条件は、下記式(3)のようになる。
被介護者2の関節位置O(股関節の位置)から支え具16a、16bの中心ca,cbまでの距離をそれぞれRr、Rlとし、身長情報に基づく長さLbr、Lbl、被介護者2の厚み(例えば、背中から胸までの厚みを半分にした値)を示す肉厚情報に基づく厚みをLtr、Ltlとすると、下記式(4)、(5)の条件のようになる。
ここで、右側支え具は反時計周りを正方向、左側支え具は時計回りを正方向とする。また、支え具16a、16bは、それぞれ第1の動作姿勢経路S1、S2上にあり、被介護者2との接触位置において被介護者2と略平行となる姿勢を維持する。
図8は、座標系Σ2から見た第1の動作姿勢経路上の点Pa(位置/姿勢)における仮想ポテンシャルエネルギの例を示す。第1の動作姿勢経路(S1)上の点Pa(図7)の位置/姿勢をPa(a、b、c)とした場合、図8(a)では、位置y2に関する仮想ポテンシャルエネルギ、位置z2に関する仮想ポテンシャルエネルギ、姿勢2θhrに関する仮想ポテンシャルエネルギの状態を示す。
また、図8(b)は、第1の動作姿勢経路(S1)上の各点における支え具16aの姿勢に関し、身体情報に基づく姿勢制限を示している。ここでは、0θx、2θhl、hrθsr、hlθslがある値のとき支え具16aの姿勢を定義する 2 θhrが取りうる範囲の例を示している。
図9(a)(b)に示すように、姿勢cに対する制限条件は、被介護者2が支え具16a、16bで保持されるときの屈曲角度により異なる。例えば、図9(a)に示すように、被介護者2が支え具16a、16bによって90度の姿勢で持ち上げられている場合には、姿勢2θhrに関する仮想ポテンシャルエネルギは図9(b)に示すようになる。被介護者2の屈曲角度が90度よりも大きくなる姿勢になると、被介護者2に負担を強いることになる。このため、図9(b)に示すように、姿勢cがCmax以上にならないように、仮想ポテンシャルエネルギをCmax以上で急激に高くするようにしている。移乗支援装置1は、仮想ポテンシャルエネルギが低くなる側へ支え具16a、16bを動作すべく制御するため、屈曲角度が90度未満になるように制御され、被介護者2に負担を強いることはない、安全で安心な移乗支援装置1を提供できる。
同様に、図9(c)は、被介護者2が支え具16a、16bによって0度の姿勢で持ち上げられる場合の姿勢2θhrに関する仮想ポテンシャルエネルギの例を示すもので、図9(d)に示すように、Cmin以下となる姿勢cでは、被介護者2の身体を逆にそらせた姿勢(さば折状態)になるため、被介護者2の身体を逆にそらせない姿勢cをとるように、Cmin以下で仮想ポテンシャルエネルギを急激に高くするよう生成する。
つぎに、図10を用いて第2の動作姿勢経路上の位置における仮想ポテンシャルエネルギについて説明する。
図10(a)において、第2の動作姿勢経路上の点Pcの絶対位置および絶対姿勢をPc(A、B、C、D、E)とした場合、図10(b)は、各位置A、B、Cおよび姿勢D、Eでの仮想ポテンシャルを示す。ここで、姿勢Dは移乗支援装置1の進行方向の姿勢であり、姿勢Eは移乗支援装置1の傾き姿勢とする。図10(c)は、第2の動作姿勢経路上の各位置における姿勢Eに関し、身体情報に基づき、第1の動作姿勢経路に基づく支え具16a、16bの位置/姿勢においてあらかじめ定めた動作条件を満足する範囲を示したものである。移乗支援装置1は、決定された姿勢Eに対応して、適切な仮想ポテンシャルエネルギを生成し、この仮想ポテンシャルエネルギが低くなる側への移乗支援装置1の傾き姿勢を制御する。
つぎに、移乗支援装置1の動作について説明する。図11は、本実施の形態における移乗支援装置1の動作を示すフローチャートである。
図11に示すように、移乗支援装置1は、装置全体が載置具に近づくと、被介護者2の身体情報を身体情報取得部600を用いて取得する(S100)。
つぎに、移乗支援装置1は、移乗形態に応じて、その基本動作を設定するための動作モードを設定する(S102)。新たに動作モードが設定された場合には、基本動作経路情報切替部612により、動作モード情報記憶部606から設定された動作モードに応じた基本動作経路情報を選択して取得し、動作経路生成部604に送信する。設定されている動作モードが同じ場合には、S106とS108はスキップされる(S104、106、S108)。
つぎに、移乗支援装置1は、支え具16a、16bの現在の位置/姿勢の情報を取得するとともに移乗支援装置1全体の現在の位置/姿勢の情報を取得し(S110)、身体情報に基づいて、可動域情報生成部605により、支え具16a、16bの現在の位置/姿勢情報および移乗支援装置1全体の現在の位置/姿勢の情報に応じて動作制限情報(以下、この可動可能な範囲を示す動作制限情報を「可動域情報」という)を生成する(S112)。
つぎに、移乗支援装置1は、動作経路生成部604により、各動作モードごとに、可動域情報に基づいて、支え具16a、16bの位置/姿勢を決定するための第1の動作姿勢経路の情報として第1の動作姿勢経路情報613を出力するとともに、移乗支援装置1全体の現在の位置/姿勢を決定するための第2の動作姿勢経路の情報として第2の動作姿勢経路情報614を出力する(S114)。
つぎに、移乗支援装置1は、第1の動作姿勢経路情報613に基づいて、第1の仮想ポテンシャルエネルギ生成部620及び第2の仮想ポテンシャルエネルギ生成部622で仮想ポテンシャルエネルギを生成する。第1の仮想外力算出部621、第2の仮想外力算出部623は、仮想ポテンシャルエネルギに基づいて、仮想ポテンシャルエネルギが低くなる側へ支え具16a、16bを動作すべく、仮想外力情報F1、F2を支え具制御部618に送信する。これにより、移乗支援装置1は、身体情報にもとづき、基本動作に適切な第1の動作姿勢経路に沿うように支え具16a、16bの位置/姿勢を制御する。これにより、介護者3は、被介護者と2と支え具16a、16bの関係を逐一意識することなく移乗支援装置1をすることができる。同様に、移乗支援装置1は、第2の動作姿勢経路情報614に基づく第2の動作姿勢経路上における移乗支援装置1の姿勢を制御するため、第3の仮想ポテンシャルエネルギ生成部624で仮想ポテンシャルエネルギを生成し、第3の仮想外力算出部625でこの仮想ポテンシャルエネルギが低くなる側への移乗支援装置1の姿勢を変えるべく、仮想外力情報F3を協調動作制御部626に送信する。協調動作制御部626は、移乗支援装置1全体に係るものは移動ベース制御619に送信する。また、協調動作制御部626は、支え具16a、16bの位置/相対に係るものは支え具制御部618に送信する(S116、S118)。
つぎに、移乗支援装置1は、操作意思判断部610により、介護者3が一定の期間の間、所定の力で操作入力を継続して操作部14a、14bに作用させているか否かの操作意思検出部609からの情報に基づいて操作意思の有無を判断する(S120、S122)。移乗支援装置1を動作させない場合には、移乗支援装置1はその操作入力前の位置および姿勢状態を維持する。移乗支援装置1を動作させる場合には、支え具16a、16bの位置/姿勢、移乗支援装置1全体の位置/姿勢の制御を行う(S124)。
つぎに、移乗支援装置1は、動作経路修正部608により、修正意思検出部607で介護者3が一定の期間の間、所定の力で修正意思入力を継続して操作部14a、14bに作用させているか否かの情報から修正意思の有無を判断する(S126、S128)。介護者3が支え具16a、16bの位置/姿勢、移乗支援装置1全体の位置/姿勢の修正意思がある場合には、動作経路生成部604にその修正内容を通知する(S130)。動作経路生成部604はこの修正内容に応じて基本動作姿勢経路情報に基づく第1および第2の動作姿勢経路を修正し、再度、S114に戻り、第1および第2の動作姿勢経路を生成する。動作経路修正部608は、動作姿勢経路情報を修正しない場合には、動作経路生成部604に対して何も送信しない。
つぎに、移乗動作が完了したかを判断する(S132)。第5の動作モードが完了し、第5の動作モードにおける目標位置/目標姿勢を完了した場合には、処理を終了する。他方、完了していない場合には、S104に戻る。
以下、処理を終了するまで、S104からS132を繰り返して行う。
支え具16a、16bの現在の位置/姿勢は、逐次検出され、都度、第1および第2の動作姿勢経路上における適切な仮想ポテンシャルを生成し、仮想ポテンシャルエネルギが低くなる側へ支え具16a、16bおよび移乗支援装置1を動作すべく制御する。これにより、移乗支援装置1は、被介護者2の身体情報に基づいて、第1および第2の動作姿勢経路上のどの点においても被介護者2にとって負担が少ない姿勢になるように支え具16a、16bの位置/姿勢、移乗支援装置1の位置/姿勢制御できる。
なお、着床検知センサ32a、32bを用いて、動作モードを自動で切り替えるようにしてもよい。例えば、支え具16a、16bで被介護者2を掬い上げ、移動し、他のベッド等に移乗させる場合について説明する。この場合には、通常、介護者3は、第4の動作モードを操作部14a、14bから入力し、支え具16a、16bを降下させ、被介護者2をベッド面まで下げる。介護者3は、支え具16a、16bがベッド面に着床したことを確認すると第4の動作モードを完了させる。つぎに、第5の動作モードを操作部14a、14bから入力し、支え具16a、16bを被介護者2とベッドとの間から引き抜く動作を行うことになる。よって、この第4の動作モードから第5の動作モードに自動でシーケンシャルに移行するモード(例えば自動モード)では、移乗支援装置1は、第4の動作モードで支え具16a、16bを降下させ、被介護者2をベッド面まで下げ、着床検知センサ32a、32bで支え具16a、16bがベッド面に着床したことを検知すると、自動で第5の動作モードに切り替え、支え具16a、16bを被介護者2とベッドとの間から引き抜く動作を行う。これにより、介護者3の負担を減らすことができ、スムーズに操作することができる。
以上の本実施の形態の移乗支援装置1によれば、被介護者2の身体にかかわる特徴を示す身体情報に基づいて操作者の操作を補助することができるので、習熟度の低い介護者3が操作した場合であっても、被介護者2にとって無理のない動作を行い負担が少ない姿勢を取らせることを可能にする移乗支援装置1を提供することができる。
なお、本実施の形態における移乗支援装置1は、介護が必要な被介護者2を移乗するとしたが、人体であればよく、例えば、自ら移動したり、体を動かすことが困難な者に対しても、同様に応用でき、載置具からその人体を掬い上げ、移乗させることができる。
また、本実施の形態における移乗支援装置1は、身体情報により移乗支援装置1の位置/姿勢を制御する場合をについて説明したが、移乗支援装置1の周囲の環境情報を利用することで、移乗支援装置1の位置/姿勢を制御するようにしてもよい。これにより、周囲との接触を回避可能な位置/姿勢を制御する移乗支援装置1を実現できる。
すなわち、当該他の実施形態では、移乗支援装置は、載置具に載置されている人体を掬い上げるための複数の支え具と、人体の身体に係わる特徴を示す身体情報を取得する身体情報取得部と、人体を複数の支え具で保持するとき、複数の支え具の目標位置および目標姿勢を決定するための動作姿勢経路情報を前記身体情報に基づいて生成する動作姿勢経路生成部と、前記動作姿勢経路情報に基づいて前記複数の支え具を前記目標位置および目標姿勢をとるように支持する支持部とを備えたことを特徴とする。
このような構成によれば、習熟度の低い操作者が操作した場合であっても、人体の身体にかかわる特徴を示す身体情報に基づいて動作するため、習熟度の高い操作者が操作した場合と同様に、人体にとって無理のない動作を行い、負担が少ない姿勢を取らせることを可能にする。
また、当該他の実施形態では、動作姿勢経路生成部は、人体と複数の支え具との相対位置および相対姿勢に関し、所定の動作条件を維持するように第1の動作姿勢経路情報を生成している。これによれば、さらに、所定の動作条件にしたがって人体と複数の支え具との相対的な位置および姿勢を維持することが可能となり、一層、介護者に習熟度を要求することなく操作が可能となる。
また、当該他の実施形態では、特に所定の動作条件として、支え具が人体との接触位置において人体と略平行であり、支え具と人体とが相対位置ずれまたは相対姿勢ずれがないようにしている。これによれば、支え具と人体とは相対的な位置ずれまたは相対的姿勢ずれがないように動作するため、被介護者に対して、さらに、支え具で保持されたときの人体の負担を少なくできる。
また、当該他の実施形態では、身体情報として、身長情報、関節位置情報および肉厚情報が取得され、動作姿勢経路生成部は、取得された前記身長情報、関節位置情報および肉厚情報に基づいて人体の各々の関節における屈曲方向および可動範囲を示す可動域情報を生成し、生成された可動域情報に基づいて相対位置および相対姿勢に対して制限が設けられた第1の動作姿勢経路情報を生成している。これによれば、さらに、支え具で保持されたときの被介護者における姿勢の負担を少なくできる。
また、当該他の実施形態では、身体情報として、身長情報および体重情報が取得され、動作姿勢経路生成部は、取得された身長情報および体重情報に基づいて標準的な関節位置情報および肉厚情報を設定し、設定された身長情報、標準的な関節位置情報および肉厚情報に基づいて人体の各々の関節における屈曲方向および可動範囲を示す可動域情報を生成し、生成された可動域情報に基づいて相対位置および相対姿勢に対して制限が設けられた第1の動作姿勢経路情報を生成している。これによれば、さらに、取得する身体情報が身長情報および体重情報であった場合でも、人体の各々の関節における屈曲方向および可動範囲を示す可動域情報を生成でき、支え具で保持されたときの人体における姿勢の負担を少なくできる。
また、当該他の実施形態では、標準的な関節位置情報および肉厚情報は、標準身長および標準体重に対応付けされている標準関節位置情報および標準肉厚情報が記録されている標準人体テーブルに従って設定されている。これによれば、さらに、取得する身体情報が身長情報および体重情報であった場合でも、標準人体テーブル従って、人体の各々の関節における屈曲方向および可動範囲を示す可動域情報を生成でき、支え具で保持されたときの人体における姿勢の負担を少なくできる。
また、当該他の実施形態では、身体情報として、人体で動かすことが制限されている部位情報がさらに取得され、動作姿勢経路生成部は、部位情報に基づいて相対位置および相対姿勢に対して制限が設けられた第1の動作姿勢経路情報を生成している。これによれば、さらに、人体で動かすことが制限されている部位情報に基づいて、人体の各々の関節における屈曲方向および可動範囲を示す可動域情報を生成でき、支え具で保持されたときの人体における姿勢の負担を少なくできる。たとえば、人体が怪我をしている場合や人体が損傷している場合等に効果を発揮する。
また、当該他の実施形態では、動作姿勢経路情報は、複数の支え具の絶対位置および絶対姿勢を定義する第2の動作姿勢経路を含み、動作姿勢経路生成部は、第2の動作姿勢経路上の各位置ごとに、第1の動作姿勢経路情報に応じた複数の支え具の目標位置および目標姿勢が維持されるように動作姿勢経路情報を生成するようにしている。
これによれば、操作者は、身体特徴を考慮した支え具の位置/姿勢を都度意識することなく、効率よく操作を行うことができる。
また、当該他の実施形態では、動作姿勢経路生成部は、人体の向き情報を取得する人体方向検出部をさらに備え、人体の向き情報に基づいて、人体の頭部の高さが足部の高さより上になるように第1または第2の動作姿勢経路情報を設定するようにしている。
これによれば、常に人体の頭部の高さより足部の高さが上になるのを防止できる。したがって、介護者は、意識することなく、被介護者にとって負担となる不自然な動作を防止することができる。
また、当該他の実施形態では、操作者の操作意思情報を検出する操作意思検出部と、操作意思情報に基づいて支持部を制御する制御装置とをさらに備え、制御装置は、操作意思情報が検出されたときには動作姿勢経路情報に基づいて複数の支え具が目標位置および目標姿勢になるように支持部を制御し、操作意思情報が検出されなかったときには複数の支え具の位置および姿勢をそのまま維持するように支持部を制御するようにしている。
これによれば、さらに、操作者の操作意思がない場合には、装置の位置および姿勢を維持するように動きを制御でき、安全な装置を実現できる。
また、当該他の実施形態では、操作者が動作姿勢経路情報を修正しようとする修正意思情報を検出する修正意思検出部と、修正意思情報に基づいて動作姿勢経路情報に基づく動作姿勢経路を修正する動作姿勢経路修正部とをさらに備えている。
このような構成によれば、あらかじめ想定したものと動作姿勢経路が異なる場合には、修正することができる。
また、当該他の実施形態では、異なった複数の動作モードを有し、動作姿勢経路生成部は、動作モードごとに異なった動作姿勢経路情報を生成するようにしている。
これによれば、複数の動作モードごとに最適な基本動作姿勢経路情報を設定することができる。これにより、あらかじめ想定される動作を容易に実現することができる。
また、当該他の実施形態では、複数の動作モードとして、複数の支え具を人体と載置具との間に挿入する第1の動作モードと、複数の支え具を上昇させ、人体を掬う第2の動作モードと、複数の支え具を移動させ、人体を第2の載置具まで移動する第3の動作モードと、複数の支え具を降下させ、前記人体を第2の載置具の載置面まで下げる第4の動作モードと、複数の支え具を人体と載置具との間から引き抜く第5の動作モードとを備えている。
このような構成によれば、さらに、一連に移乗動作をスムーズに実行することができる。
また、当該他の実施形態では、前記支持部は、前記動作姿勢経路情報に基づく動作姿勢経路を中心として、前記動作姿勢経路から離れるほど高くなる仮想ポテンシャルエネルギを生成し、前記仮想ポテンシャルエネルギが低くなる側へ前記複数の支え具を動作すべく、前記複数の支え具を制御するようにしている。これによれば、複数の支え具を目標位置および目標姿勢に容易に、かつ人体にとって無理がないようにアシストすることができる。
また、当該他の実施形態では、仮想ポテンシャルエネルギは、身体情報に基づいて生成している。これによれば、さらに、操作者の誤操作があった場合でも、身体情報に基づいて人体にとって無理がないように複数の支え具が制御されるため、安全性を高めることができる。
[実施の形態の概要]
ここで、本実施の形態の概要について、以下に説明する。
(1) 以上説明したように、この移乗支援装置では、制御装置が支え具を動作させる動作経路を設定し、さらに、動作経路に沿って支え具が動作するように、アクチュエータを駆動させて、操作部の操作に基づく支え具の動作を補正する。このため、当該移乗支援装置の操作の習熟度が低い操作者が操作した場合であっても、当該操作者の操作が、制御装置によって補正される。これにより、移乗支援を受ける人の身体が無理な姿勢になるなど、移乗支援を受ける人に負担を強いるような操作を抑制できる。このため、操作者にとっては移乗支援装置の操作が簡単であり、移乗支援を受ける人にとっても安心して介護を受けることができる。
(2) 前記制御装置は、前記人の体格情報を記憶する体格情報記憶部を備え、
前記動作経路設定部は、前記体格情報記憶部に記憶された体格情報に基づいて前記人の体格に応じて前記支え具を動作させる動作経路を設定する。したがって、支え具を人の体格に応じた目標位置及び目標姿勢に到達させ易くすることができる。
(3) 前記制御装置は、身体情報記憶部を備え、前記身体情報記憶部に記憶される身体情報には、身体の異常部位に関する情報が含まれており、前記動作経路設定部は、前記身体情報記憶部に記憶された身体の異常部位に関する情報に基づいて、前記支え具を動作させる動作経路を設定する。したがって、人体が怪我をしている場合や人体が損傷している場合等に効果を発揮する。
(4) 本実施形態の移乗支援装置は、当該移乗支援装置と載置具との距離を検知する第1検知部と、前記載置具の載置面に対する前記支え具の高さを検知する第2検知部とを備え、前記動作経路設定部は、前記第1検知部によって検知された当該移乗支援装置と前記載置具との距離が近くなるにつれて、前記第2検知部によって検知された前記支え具の高さが前記載置面の高さに近づくように、前記支え具の動作経路を設定する。したがって、被介護者の目前で支え具が急に降下することを防止でき、被介護者が感じ得る不安感を軽減することができる。
(5) 本実施形態の移乗支援装置は、前記支え具に配設され、人が支承される載置具の載置面と前記支え具との接触圧を検知可能な圧力センサを備え、前記操作補正部は、前記圧力センサによって検知された前記接触圧が、前記制御装置に予め定められた接触圧よりも高くならないように、前記操作部の操作に基づく前記支え具の動作を補正する。したがって、載置具と被介護者との間に支え具を挿入する際に、支え具が載置具を押さえつけ過ぎることを防止することができる。
(6) 本実施形態の移乗支援装置は、前記支え具は、第1支え具と第2支え具とを備えており、前記第1支え具と第2支え具のうち一方の支え具によって人の上半身を支承し、他方の支え具によって人の下半身を支承する。
(7) 本実施形態の移乗支援装置は、前記支え具は、第1支え具と第2支え具とを備えており、前記第1支え具と第2支え具のうち一方の支え具によって人の上半身を支承し、他方の支え具によって人の下半身を支承し、前記体格情報記憶部に記憶される体格情報には身長に関する身長情報が含まれており、前記制御装置は、前記体格情報記憶部に記憶された身長情報に基づいて、前記第1支え具と第2支え具の間隔を設定する。したがって、第1支え具と第2支え具の間隔を、人の身長に応じた間隔に設定し易くすることができる。
(8) 本実施形態の移乗支援装置は、人の臀部の位置を検知する臀部検知部を備え、前記動作経路設定部は、前記臀部検知部によって検知された人の臀部の位置に基づいて、前記第1支え具と第2支え具のうち一方の支え具が前記臀部の位置よりも上半身側を支承し、他方の支え具が前記臀部の位置よりも下半身側を支承するように、前記第1支え具と第2支え具の動作経路を設定する。
(9) 前記制御装置は、前記支え具によって支承された人の股関節の位置を特定する股関節特定部を備え、前記支え具によって支承された人を屈曲させる動作において、前記股関節特定部で特定された人の股関節の位置に基づいて、前記支え具の動作経路を設定する。
(10)前記動作経路設定部は、前記人を支承する支え具と前記人との接触状態を維持しつつ、前記第1支え具及び第2支え具がそれぞれ前記股関節の位置から一定の距離を維持しながら移動するように、前記第1支え具と第2支え具の動作経路をそれぞれ設定する。したがって、人を屈曲させる際に、支え具と人の背中とがずれるのを発生し難くすることができる。
(11)前記制御装置は、前記第1支え具と第2支え具による前記人の抱き上げ動作時における前記人の股関節の屈曲許容角度を設定する屈曲許容角度設定部と、前記第1支え具と第2支え具によって掬い上げられる人の股関節の屈曲角度を算出する屈曲角度算出部とを備え、前記第1支え具と第2支え具によって前記人を抱き上げる動作において、前記屈曲角度算出部で算出された屈曲角度が、前記屈曲許容角度設定部で設定された屈曲許容角度の範囲内になるように、前記操作部の操作に基づく前記支え具の動作を補正する。したがって、背中が反った状態や腹部が圧迫される状態等、人が取りづらい姿勢になることを未然に防止することができる。
(12)前記制御装置は、前記第1支え具と第2支え具によって前記人を抱き上げる動作において、前記第1支え具と第2支え具の高さ方向の動作と、前記第1支え具と第2支え具によって人の股関節を屈曲させる動作とを連動させる。したがって、第1支え具と第2支え具によって人を抱き上げる高さに応じて、人の股関節を屈曲させることができる。これにより、人にとって楽な姿勢で人を抱き上げることができる。
(13)前記制御装置は、前記動作経路設定部によって設定された動作経路から前記支え具までの距離に応じて、当該支え具に作用させる力の大きさで規定される仮想ポテンシャルエネルギを設定する仮想ポテンシャルエネルギ設定部を備え、前記操作補正部は、前記仮想ポテンシャルエネルギ設定部で設定された仮想ポテンシャルエネルギに基づいて、前記支え具が前記動作経路へ近づくように当該支え具に力を作用させることにより、前記操作部の操作に基づく前記支え具の動作を補正する。したがって、人が取りづらい姿勢になることを、仮想ポテンシャルエネルギの作用によって未然に防止することができる。
(14) 本実施形態の移乗支援装置は、当該移乗支援装置と前記載置具との距離を検知する第1検知部を備え、前記仮想ポテンシャルエネルギ設定部は、前記第1検知部で検知された前記距離が小さくなるにつれて、前記支え具に作用させる力が大きくなるように、前記仮想ポテンシャルエネルギを設定する。したがって、移乗支援装置が載置具から離れた場所では支え具の操作に対する自由度を確保して操作者にとって使い勝手のいいものにする一方、移乗支援装置が載置具に近づくにつれて支え具に作用させる力を大きくすることで、支え具が目標位置又は目標姿勢に確実に到達するようにすることができる。
(15)前記制御装置は、前記人の体格情報を記憶する体格情報記憶部を備え、前記仮想ポテンシャルエネルギ設定部は、前記体格情報記憶部に記憶された体格情報に基づいて、人の体格に応じた仮想ポテンシャルエネルギを設定する。したがって、支え具を体格に応じた目標位置及び目標姿勢に到達させることができる。
(16)前記制御装置は、前記操作部において前記支え具を操作する操作の入力がない場合に、前記支え具の位置及び姿勢を維持する。したがって、操作者が不意に操作部から手を離した場合に、支え具が不測の動作を行なうことを防止することができる。
(17)前記制御装置は、前記操作補正部の機能を解除する補正解除部を備える。しがたって、仮想ポテンシャルエネルギによる支え具の拘束を一時的に外すことができ、その場合に操作者が支え具を自由に操作できるようになる。
(18)前記制御装置は、前記動作経路設定部で設定される動作経路を修正する動作経路修正部を備え、前記操作補正部は、前記動作経路修正部によって動作経路が修正された場合に、当該動作経路修正部によって修正された動作経路に沿って前記支え具が動作するように前記アクチュエータを駆動させることにより、前記操作部の操作に基づく前記支え具の動作を補正する。したがって、移乗支援装置で自動的に設定される動作経路を適宜に修正したい場合に、当該修正が許容されることになる。このため、操作者の意図に沿った操作が可能になる。
(19) 本実施形態の移乗支援装置は、前記支え具によって支承された人の姿勢に関する情報を記憶する姿勢情報記憶部を備え、前記動作経路設定部は、前記姿勢情報記憶部に記憶された人の姿勢に関する情報に基づいて、前記支え具に支承された人の頭の高さが足よりも上になるように、前記動作経路を設定する。したがって、操作者が意識していなくても、人にとって負担となる不自然な姿勢になることを防止することができる。
以上述べたように、本発明の移乗支援装置によれば、習熟度の低い操作者が操作した場合であっても、人体の身体にかかわる特徴を示す身体情報/体格情報に基づいて動作するため、習熟度の高い操作者が操作した場合と同様に、人体にとって無理のない動作を行い、負担が少ない姿勢を取らせることができる。したがって、操作が容易で安全性の高い移乗支援装置および介護ロボット装置等として有用である。