JPWO2008123410A1 - 検体薄片の保存具及びこれを備えた顕微鏡観察用具 - Google Patents
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Abstract
Description
特に、免疫染色やin situ分析等に好適な薄片の保存具及び、この保存具にスライドガラス等を設けた顕微鏡観察用具に係る。
その際に作製される試料ブロックとして、動植物から採取・摘出した組織または臓器をパラフィンに包埋したパラフィン組織ブロックがあり、培養細胞等の細胞を固定、脱水、パラフィン処理したパラフィン細胞ブロックがある(以下、パラフィンブロックと総称する。)。
また、目的に応じて、そのまま凍結した凍結ブロックが作製される。
試料ブロックとして、パラフィンブロック及び凍結ブロッック等のドナーブロック中の組織または臓器の病巣部等に中空針を刺入して直径0.6〜3mmの円筒形組織芯(以下、コアという。)を採取し、このコアを別の直方体パラフィンブロックに格子点状に配置したもの(以下、アレイブロックという。)がある。
そして、免疫染色やin situ分析を行うとき、即ちパラフィンブロック又は凍結ブロックから切り出された組織薄切り片やアレイブロックから切り出された薄切りコア(以下、薄片という。)が必要になった場合、試料ブロックを整理箱から取り出し、ミクロトームや凍結切片作製装置の鋭利なナイフで薄切りし、パラフィンブロックではこの薄片を水槽に浮かべてスライドガラスで掬い取り、凍結ブロックではそのままスライドガラスに貼り付けていた。
ここで、試料ブロックがアレイブロックであれば、掬い取る薄片または貼り付ける薄片に複数個の薄切りコアが包埋または凍結されているから、スライドガラス上に多数の薄切りコアが格子状に配列されたもの(以下、組織アレイという。)となる。
このような問題は下記する粘着テープ薄切り方式によって解決されている。
粘着テープ薄切り方式は、粘着テープを試料ブロックの上面に押し付け、テープが粘着固定した部分のわずかな下方位置で鋭利なナイフを水平方向に移動させて、粘着テープとともに薄片を切り取るというものである。
この粘着テープは、切り取った薄片を貼り付けた状態のまま染色、脱水、透徹等の操作を行ったあと、天地逆にし、表面に封入剤層を形成したスライドガラスに密着させて、粘着テープとスライドガラスの間に薄片を封止することにより、顕微鏡観察をするための検査用スライドを作成していた(特許文献1)。
この支持体は、その表面に組織切片又は細胞を接着させ、組織切片又は細胞を染色した後、顕微鏡観察に使用する(特許文献2)。
また、粘着テープとスライドガラスの間に薄片を封止するものであるから、全体としての形状及び重量が大きくなって整理箱への収容数が制限されるという問題がある。
また、検査用スライドの主材料がガラスであるから破損しやすく取り扱いが面倒であるという問題がある。
また、テープを剥がす必要性が生じた場合、粘着テープから薄片を剥がすことが困難であるという問題がある。
また、特許文献2の高分子支持体は、単にスライドガラスの代わりとして使用するものである。
更に、この保存具と接着剤層を形成した透明プレート体とを設けた顕微鏡観察用具を提供することを目的としている。
本発明において試料ブロックとは、動植物から採取・摘出した組織又は臓器等を、パラフィンに包埋したパラフィン組織ブロック、アクリル樹脂等の樹脂に包埋した樹脂ブロック、試料をそのまま凍結した凍結ブロックの他に培養細胞等の細胞を固定、脱水、パラフィン処理といった組織の包埋処理に準じた方法で作製されたパラフィン細胞ブロックも包含する。
また、細胞ブロックの薄片とは、検体となる細胞を培養し、ゲル化物とし、フイルム又はシート状にしたものをいい、本発明の対象を凍結ブロック及び包埋処理したものに限定しないことを明確にする趣旨である。
したがって接着剤と粘着剤とは、組成はもちろんこと、強度その他の力学的特性をはじめとする物理的・化学的性状が大きく異なる。
更に、接着剤層は、いったん破壊したならば、これの再生にはそれなりの処理が必要とされるのに対して、粘着剤層は、接合部位を破壊(剥がすこと)しても表面を汚さない限り繰り返し再利用できるという特徴がある。
後続する溶剤処理を考慮すると化学反応型が望ましい。
化学反応型として、熱硬化型、嫌気硬化型、紫外線硬化型、縮合反応型、付加反応型、ラジカル重合型などがある。
また、接着剤は、免疫染色やin situ分析等に先立って行われる各種の処理によって影響を受けるものであってはならず、薄片の染色に使用する染色液に染色されないことが望ましい。
更に薄片を脱水、透徹、封入等で使用する有機溶剤に浸漬しても溶解せず、かつ膨大の少ない透明な層を形成するものが望ましい。
また、生体適合性の良いものが好ましく、例えば、フィブリン糊、ゼラチン糊、ポリ−L−リジンなどのポリペプチド系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ウレタン系接着剤、合成ゴムなどを挙げることができる。
例えば天然ゴムや合成ゴム、アクリル系ポリマーなどといったガラス転移温度が室温以下の高分子がある。
耐熱性を必要とする場合、シリコーンゴム系のものがポリエステルテープなどに用いられる。
ポリエステルテープは、耐熱・耐寒性、耐薬品性などに優れた性能を持っている。
好ましいのはポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを主成分とするフィルムである。
また、樹脂製フィルムの厚さは、上面に薄切り片を載せ、かつスライドグラスなどに貼付することから、25μm以下が好ましく、10μm〜20μmがより好ましい。
ここで親水化処理とは、グロー処理、コロナ処理、紫外線処理、火焔処理、高周波処理などの1またはは2以上の操作により高分子支持体の表面を親水性にする処理のほか、必要により親水性の物質を塗布することによって親水性を付与する方法、砂状のものを吹きつけ、フィルム表面を微細な凹凸状とする方法などを含むものである。
また、親水化処理として、2以上の処理を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステル系樹脂フィルムのグロー処理、コロナ処理の方法は、例えば、上記特許文献2に記載の方法で行えばよい。
親水性の薄膜は1層または多層のいずれでもよい。
塗布方法は特に限定されず、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法などが挙げられる。
また、支持体は、組織切片を可視化しやすくするために暗色調のものが好ましい。
また、細胞ブロックの場合には上記のように包埋処理したものの他に、培養ゲル化物とし、シート状またはフィルム状とした薄片でもよい。
また、培養する細胞は、不死化した細胞、遺伝子導入された細胞のいずれでもよい。
このようなカバーフイルムは、粘着剤層の汚れの付着を防止することができるので、粘着力の低下を防止することができる。
ここで、粘着剤層を支持体の全面に形成すると、フイルム小片を任意の位置に粘着することができる。
フイルム小片と同形ないし一回り狭い平面形状の両面テープを使用することにより、支持体に粘着剤層を形成するという手間を省くことができる。
これにより支持体に複数個の薄片を配置することができる。
フイルム小片が多数のコアを配置したものであり、かつ、支持体が多数のフイルム小片を配置したものであれば高集積組織アレイにすることができる。
ここで、透明プレート体はスライドガラスを代表例とし、有色透明、無色透明な硬質系の樹脂製でもよい。
薄片の保存具に加えて、上記スライドガラス等の透明プレート体を設けたので、薄片の保存具から取り出したフイルム片を透明プレート体上に接着固定して各種処理を行うことができ、顕微鏡観察スライドを素早く作成することができる。
ここで使用する接着剤は、樹脂製フイルム小片と透明プレート体とを接着するものであり、多種多様なものが市販されている。
例えば、紫外線硬化型のアクリル系接着剤など上記した接着剤層に使用される接着剤の他、キシレンにカナダバルサムを溶解したものなどを例示することができる。
また、ゲル化物とした細胞ブロック薄片を予め支持体に粘着保存しておくことも可能である。
フイルム小片及び支持体が樹脂製であるから、収納箱に多数収容収納しても重くなく、破損しにくいので取り扱いに便利である。
しかもフイルム小片は着脱可能であるから、必要な部位の薄片を必要な数量だけ素早く無駄なく提供することができる。
具体的には、薄片または細胞ブロックが保持された樹脂製フィルムと新たに薄切りされた組織切片とを1枚のスライドガラス上に載せ、次いで、特異的抗体を用いた免疫染色法で蛍光標識あるいは金コロイド標識などの手段により目的抗原を可視化する方法を用い、両者を比較することで、例えば、癌などで特異的に発現するタンパク質を定性的または半定量的に測定することができる。
2、2a 摘み
3、3a 接着剤層
4、4a 支持体
5、5a 粘着剤層
6、6a カバーフイルム
7 離型紙
12 パラフィンブロック
13 ドナーブロック
15 薄片
21 アレイブロック
22 コア
23 パラフィンブロック
25 薄片
26 接着剤層
27 フイルム小片
29 支持体
31 粘着剤層
32 保存用スライド
33 データ表示部
図1〜図3は本発明の実施の形態1を示したものであり、図1は薄切り片の保存装置の斜視図、図2はその変形例、図3は作成方法の説明図である。
このフイルム小片1の物性値は、引っ張り強度14〜24.6kg/mm2、線膨張係数6×10−5/℃、熱収縮<0.5%、100℃、30min、耐熱温度150℃、耐寒温度−60℃、ガラス転移温度81℃、融点264℃である。
接着剤層3は、ポリ−L−リジン(武藤化学株式会社製)で形成されており、フイルム小片と薄切り片とを接着している接着剤は、アルコールやキシレンに溶けず、熱収縮率が少なく、かつ、透明である。
支持体4は水平で反っておらず、上面に形成された粘着剤層は汎用粘着タイプのアクリル系ポリマーである。
図2において、1aは厚さ16μmで、縦横5mmのポリエステル製の正方形フイルム小片であり、2aはフイルム小片の奥側一辺に設けられた摘み、3aはアクリルオリゴマーに光開始剤を添加した紫外線硬化型の接着剤層、4aは厚さ2.5mmで、縦20mm、横25mmの長方形のアクリル樹脂製の支持体である。
粘着剤層5aは、上下の面に離型紙をそれぞれ貼り付けた両面粘着テープを利用してつくられたものであり、上面の離型紙を剥がしてフイルム小片の裏面に貼り付けることにより形成される。
下面には離型紙がそのまま貼付されている。
8は支持体4aの上面をフイルム小片と同形に区画している目印線であり、上面には粘着剤層は設けられていない。
20は各薄片の識別記号を表示する領域である。
別人の同種摘出部位の薄片を9つ有する保管用スライドを多数枚の保管箱に蓄積しておくことにより、癌に関する摘出部位ごとのデーターベースを構築することができる。
1.細胞株をシャーレに培養する。
2.細胞がコンフルエントになれば、培養液を捨て、一度リン酸緩衝食塩液で洗う。
3.スクレイパーで細胞を掻きとる。
4.掻き取られた細胞をピペットでエッペンチューブに移す。
5.遠心器で2500rpm/3分、遠沈する。
6.上清をすて、ホルマリンを注ぎ、24時間室温で固定する
7.ホルマリンを静かに捨て、70%エタノールを入れ、1時間振とうする。
8.70%エタノールを捨て、100%エタノールを入れる1時間×2回、振とうする。
9.100%エタノールに変えて、一夜静置。
10.エタノールを捨て、キシレンを入れ、30分間静置。この際に細胞塊が浮く。
11.キシレンを2度交換する。各20分間静置。
12.細胞塊をフラン器に入った高温槽で暖めた約65℃のパラフィンの中に入れる。これを15分ごとに3槽分移動させなじませる。
13.包埋皿に細胞塊を入れ、パラフィンを適量注入し、カセットを被せ、冷却する。
このようにして得られた塊状のパラフィン細胞ブロックはミクロトーム等にて薄片に切り出す。
また、詳細は省略するが培養細胞の水分をヒアルロン酸のようなムコ多糖で置換した細胞ゲル化物をシート状又はフイルム状にして、細胞ブロックの薄片とすることもできる。
患者から摘出した組織にがん細胞が含まれているか否の検査をする場合、摘出した直径2mmの組織11をパラフィンブロック12に包埋してパラフィンドナーブロック13を作成し(A)、このドナーブロックの表層を鋭利なナイフ14でパラフィンブロック12a及び組織切片11aが厚さ0.6mmとなる薄片15を切り出す(B)。
切り出された薄片15をフイルム小片の接着剤層3に貼り付け、加熱して接着剤層5を硬化する。
はみ出した部分はけずりおとして薄片が接着された保持用のフイルム小片16を作成する(C)。
カバーフイルム6を閉じて表面を指でなでると、カバーフイルム6が静電気により支持体4に張り付く。
なお、支持体の周縁部に破線で示す枠形の粘着剤層17を設けておけばカバーフイルム6を閉じることにより、薄片15を外気から封鎖することができる。
このようにして、カバーフイルム16を閉じることにより長期に亘って保存できる薄片の保存用スライド18を作成することができる(E)。
通常はこの保存用スライドに患者のカルテ番号、採取の部位や日付、連続番号、管理日付なのデータとリンクする識別番号をつけて保管箱19に収納し保管する(F)。
その後スライドガラスを水に浸漬してキシレンを除去したのち、免疫染色を行う。
スライドガラスの上に、紫外線硬化型接着剤GL−1002(有限会社グルーラボ製、主成分はアクリル樹脂、硬化収縮率7.3、接着強さ>250N/cm2)を塗布しておき、フイルム小片を貼り付けた後、カバーガラス(22×22mm)を載置して硬化させてカバーガラスが浮き上がるのを防止して検査用スライドガラスを作成する。
このように作成された検査用スライドを通常のスライドガラスと同様な操作で光学顕微鏡で観察する。
染色領域があると悪性と判断され、化学療法、外科手術その他の治療が行われる。
なお、検査用スライドには、同様な方法で作成した標準試料(コントロールと呼ばれている。)を並置することがある。
21はパラフィン製のアレイブロックであり、このアレイブロック21は、手術により摘出した肝臓の癌をパラフィンに包埋した後、内径2mmの中空針を差し込んで、その中空部に取り込まれた直径2mmの円筒状コア22を採取し、このコアを別体の直方体形パラフィンブロック23に格子点状に包埋したものである(A)。
このアレイブロック21をナイフ14で薄片25を切り出し(B)、切り出された薄片25をフイルム小片に貼り付け(C)、接着剤層を硬化させて薄片25を接着固定したフイルム小片27を作成する(D)。
28はフイルム小片の奥辺の突設された摘み、29はアクリル樹脂製の支持体である。
薄片25が支持体29の粘着剤層31で粘着固定されて保存用スライド32が作成される(E)。
この支持体29に薄片を接着したフイルム小片27を、その裏面を介して順序よく粘着固定して高集積組織アレイを作成することができる。
必要があればカバーフイルムを貼り付けて保存用スライドが完成される。
この高集積組織アレイは、検体数(コア数)が多く、統計学的有用性と考えられており、試験研究に好適である。
しかも、カバーフイルムを剥がし、目的の薄片を接着したフイルム小片を剥がして、素早くスライドガラスに接着して検査用スライドを作成することが出来るから、必要なときに必要な数量の薄片を接着した検査用スライドを簡易迅速に作成することができるからきわめて有用である。
また、簡易迅速な高集積組織アレイの作製に有用である。
Claims (7)
- 試料ブロックから切り出された薄片または細胞ブロックの薄片を、接着固定する樹脂製のフイルム小片と、当該フイルム小片の裏面で着脱可能に粘着固定する樹脂製の支持体とを備えていることを特徴とする、検体薄片の保存具。
- 支持体は、一辺が止着された開閉自在なカバーフイルムを備えており、当該カバーフイルムが支持体の表面に粘着固定されたフイルム小片を覆う大きさに形成されていることを特徴とする、請求の範囲1の検体薄片の保存具。
- 支持体は、表面に粘着剤層を形成したものであることを特徴とする、請求の範囲1又は2記載の検体薄片の保存具。
- 支持体表面にフイルム小片を粘着固定する手段は、両面粘着テープであることを特徴とする、請求の範囲1又は2記載の検体薄片の保存具。
- 支持体は、複数のフイルム小片を粘着固定することができることを特徴とする、請求の範囲1〜4のいずれかに記載の検体薄片の保存具。
- 試料ブロックがパラフィンブロックに直径0.5から3mmの複数個のコアを格子点状に包埋したものであり、当該試料ブロックから切り出された薄片をフイルム小片の表面に接着固定したことを特徴とする、請求の範囲1〜5のいずれかに記載の検体薄片の保存具。
- 請求の範囲1ないし6のいずれかに記載した検体薄片の保存具と当該保存具からフイルム小片を剥離し、表面に接着固定する透明プレート体とを備えたこと特徴とする、顕微鏡観察用具。
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