本発明は、物質に対して照射されたX線等の透過量や反射量等に基づいて物質の質量を推定する重量検査装置およびこれを備えた重量検査システムに関する。
近年、被測定物に対してX線を照射し、その透過X線量に基づいて被測定物の質量を推定(算出)するX線質量推定装置が用いられている。
このX線質量推定装置では、被測定物のX線透過画像を取得し、X線透過画像の物質の厚さが大きいほど暗く写るという性質を利用して、そのX線透過画像に含まれる単位領域当たりの明るさに応じて、例えば、明るさが低ければ質量が大きく、明るさが大きければ質量が小さいということから質量を推定する。
例えば、特許文献1,2には、肉製品に含まれる脂肪の割合等を算出するために、物質に対して照射されたX線透過量を検出して、脂肪分の重量値や全体重量を推定する材料物性の放射線監視やX線質量推定装置について開示されている。
特表2002−520593号公報(平成14年7月9日公表)
特開2002−520593号公報(平成14年10月9日公開)
しかしながら、上記従来のX線検査装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたX線検査装置では、物質を透過したX線量だけに基づいて重量値を推定しているため、高精度に正確な重量値を算出することは困難な場合がある。
本発明の課題は、被検査物の重量を高精度に算出することが可能な重量検査装置およびこれを備えた重量検査システムを提供することにある。
第1の発明に係る重量検査装置は、被検査物に対して照射されたエネルギー波を検出して、被検査物の推定重量を算出する重量検査装置であって、重量値取得部と、照射部と、検出部と、推定重量算出部と、偏差量算出部と、を備えている。重量値取得部は、被検査物全体の実際の重量を取得する。照射部は、被検査物に対してエネルギー波を照射する。検出部は、被検査物に対して照射されたエネルギー波を検出する。推定重量算出部は、検出部における検出結果に基づいて、被検査物の全体の推定重量を算出する。偏差量算出部は、実際の重量と推定重量との差を算出する。
ここでは、例えば、前段に配置された重量測定装置から取得した被検査物の実際の重量値(以下、実重量値と示す。)と、重量検査装置において算出された推定重量値とに基づいて、実重量値あるいは推定重量値のずれを早期に検出する。
ここで、重量値取得部は、例えば、上述した生産ライン等の上流側に配置された重量チェッカからの測定値として実重量値を間接的に取得してもよいし、重量検査装置内に重量計を設けて実重量値を直接的に取得してもよい。さらに、推定重量算出部は、被検査物に対して照射されたエネルギー波の透過量や反射量を検出して作成される画像等を用いて推定重量を算出する等の従来の手法を用いることができる。また、上記エネルギー波は、X線やテラヘルツ波に加えて、赤外線や紫外線、可視光等も含まれる。
これにより、実重量値と推定重量値との偏差量が所定値よりも大きい場合には、例えば、これを重量測定装置か重量検査装置における異常の発生として検出したり、重量検査装置における推定重量値を算出するための補正値を調整したり、比重が異なる複数の成分ごとの重量値の算出に使用したりすることができる。この結果、算出される被検査物の重量値の精度を向上させることができる。
第2の発明に係る重量検査装置は、第1の発明に係る重量検査装置であって、検出部は、被検査物を透過したエネルギー波の量を検出する。
ここでは、被検査物に対して照射されたエネルギー波の透過量を検出して、推定重量の算出を行う。
これにより、X線等のエネルギー波の透過量に基づいて作成されるX線画像等を用いて推定重量等の算出を容易に実施することができる。
第3の発明に係る重量検査装置は、第1の発明に係る重量検査装置であって、検出部は、被検査物から反射したエネルギー波の量を検出する。
ここでは、被検査物に対して照射されたエネルギー波の反射量を検出して、推定重量の算出を行う。
これにより、テラヘルツ波等のエネルギー波の反射波の検出によって吸収スペクトルを取得し、被検査物に含まれる各成分ごとのスペクトルデータとの比較によって、各成分の含有比率や推定重量の算出等を容易に実施することができる。
第4の発明に係る重量検査装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る重量検査装置であって、重量値取得部は、被検査物の重量を測定する計量部である。
ここでは、被検査物の実際の重量値を、重量検査物内に設けられた計量部において直接的に取得する。
これにより、推定重量を求めるために必要な被検査物の実際の重量値を、重量検査装置内において容易に取得することができる。
第5の発明に係る重量検査装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る重量検査装置であって、実際の重量と推定重量との差に基づいて、被検査物に含まれる比重が異なる成分ごとの重量値を算出する成分重量算出部を、さらに備えている。
ここでは、例えば、比重が異なる肉部分と脂肪部分とを含む肉製品を被検査物とする場合において、実際の肉製品全体の実重量と、重量検査において得られた推定重量との差に基づいて、肉部分および脂肪部分の重量値をそれぞれ算出する。
ここで、被検査物としては、上述した肉製品に加えて、液体スープのような比重が異なる複数の成分によって構成されるものを用いることができる。そして、成分重量算出部は、実重量値と推定重量値とを所定の計算式に代入することによって求めることができる。なお、成分重量算出部における重量値の算出には、重量値の算出、各成分の含有率の算出の双方、あるいは一方が含まれる。
これにより、検出感度が異なる2つの検出部によってそれぞれ被検査物を透過したX線量だけに基づいて比重が異なる成分ごとの重量値を求める従来の重量検査装置と比較して、実重量値と推定重量値との双方を用いて成分ごとの重量値を求めているため、算出される重量値の精度を向上させることができる。また、複数成分の重量を求めるためにラインセンサ等の検出部を複数設ける必要がないため、重量検査装置としてのコストダウンが図れる。
第6の発明に係る重量検査装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る重量検査装置であって、実際の重量と推定重量との差に基づいて、推定重量算出部における推定重量の算出結果を調整する推定重量調整部を、さらに備えている。
ここでは、例えば、被検査物の実際の重量と、重量検査において得られた推定重量との差が所定値以上である場合には、重量検査装置における推定重量の算出に異常があるものと判定し、推定重量を調整する。つまり、実重量との差の大きさに基づいて、重量検査装置における重量推定の精度を確認しながら、推定重量を調整している。
これにより、重量検査装置における重量推定が精度よく行われているか否かを容易に確認することができる。そして、実重量と推定重量との差が所定値以上になった場合には、例えば、推定重量を算出する際の補正値を調整して、推定重量の算出精度の低下を防止することができる。この結果、実重量を参照しながら、推定重量の算出を行うことで、常に安定した精度で重量推定を実施することができる。
第7の発明に係る重量検査装置は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る重量検査装置であって、重量値取得部は、前段に設けられた重量測定装置から被検査物の重量値を取得する。
ここでは、例えば、本重量検査装置とともに生産ラインを構成する重量測定装置を重量検査装置の上流側に設け、この重量測定装置から被検査物の測定値を取得して、上述した各成分の重量値を算出する。
これにより、生産ライン等に含まれる重量測定装置の後に重量検査装置を配置することで、生産ライン等において被検査物を下流側へと搬送しながら、被検査物の実重量値の検査、各成分の重量値(含有比率)等の検査をスムーズに行うことができる。
第8の発明に係る重量検査装置は、第6の発明に係る重量検査装置であって、成分重量算出部は、以下の関係式(1)に基づいて、被検査物に含まれる複数の成分ごとの含有率を算出する。
r=(1−W2/W1)×100/(1−R) ・・・・・(1)
(ただし、r:特定の成分Aの含有率、R:成分Aが100%のときと0%のときの重量比、実重量値W1、推定重量値W2とする。)
ここでは、成分重量算出部において、特定の成分の含有率を、上記計算式(1)を用いて算出する。
ここで、Rは、被検査物に含まれる特定の成分が100%の場合の重量値に基づいて、予め算出されているものとする。
これにより、重量チェッカ等において取得した実重量値と、重量検査装置において取得した推定重量値とを上記関係式(1)に代入するだけで、容易に各成分の重量値を求めることができる。
第9の発明に係る重量検査装置は、第1から第8の発明のいずれか1つに係る重量検査装置であって、推定重量算出部は、被検査物に対して照射されたX線の透過量に基づいて作成された画像を用いて被検査物の推定重量を算出する。
ここでは、被検査物の推定重量を算出する方法として、ラインセンサ等の検出部において検出された結果に基づいて作成される画像の濃淡等のデータを用いて被検査物の推定重量を求める。
これにより、従来の重量検査装置において作成される画像を用いて推定重量を算出することができるため、各成分の重量値についてもスムーズに算出することができる。
第10の発明に係る重量検査装置は、第1から第9の発明のいずれか1つに係る重量検査装置であって、エネルギー波は、X線である。
ここでは、被検査物に対して照射されるエネルギー波として、X線を用いている。
これにより、商品の価値を損なうことなく、被検査物に含まれる複数の成分の重量値を算出したり、特定の成分の存在の有無を確認したりすることができる。
第11の発明に係る重量検査装置は、第1から第9の発明のいずれか1つに係る重量検査装置であって、エネルギー波は、テラヘルツ波である。
ここでは、被検査物に対して照射されるエネルギー波として、テラヘルツ波を用いている。
ここで、テラヘルツ波は、0.3〜10.0THzの周波数を持つ電磁波である。
これにより、被検査物からの反射波を検出して吸収スペクトルを取得し、被検査物に含まれる各成分ごとのスペクトルデータとの比較によって各成分の含有比率や重量値等を求めることができる。
この結果、商品の価値を損なうことなく、被検査物に含まれる複数の成分の含有比率や重量値を算出したり、特定の成分の存在の有無を確認したりすることができる。
第12の発明に係る重量検査システムは、第1から第11の発明のいずれか1つに係る重量検査装置と、重量検査装置の上流側に配置されており、被検査物の実際の重量値を測定する重量測定装置と、を備えている。
これにより、実重量値と推定重量値との偏差量が所定値よりも大きい場合には、例えば、これを重量測定装置か重量検査装置における異常の発生として検出したり、重量検査装置における推定重量値を算出するための補正値を調整したり、比重が異なる複数の成分ごとの重量値の算出に使用したりすることができる。この結果、算出される被検査物の重量値の精度を向上させることが可能な重量検査システムを提供することができる。
本発明の一実施形態に係るX線検査装置を含むX線検査システムの全体の構成を示す斜視図。
図1のX線検査システムに含まれるX線検査装置の構成を示す斜視図。
図1のX線検査装置のシールドボックス内部の簡易構成図。
図1のX線検査装置による異物混入検査の原理を示す模式図。
図1のX線検査装置が備えている制御コンピュータの構成を示す制御ブロック図。
図5の制御コンピュータに含まれるCPUがX線検査プログラムを読み込むことによって作成される機能ブロック図。
X線透過画像に含まれる単位領域当たりの画像の明るさとその部分の物質の厚さとの関係を示すグラフ。
図1のX線検査装置によるX線検査プログラムに基づく質量推定方法の流れを示すフローチャート。
(a)は、係数αを最適化する前のテーブルm(a)を示すグラフ。(b)は、係数αを最適化した後のテーブルm(a)を示すグラフ。
(a)〜(c)は、変換テーブルm(a)を最適化していく過程を示すグラフ。
図2のX線検査装置において成分ごとの重量値を算出する際に用いられる値Rに関するグラフ。
本発明の他の実施形態に係る重量検査装置の構成を示す斜視図。
符号の説明
1 X線検査システム(重量検査システム)
10 X線検査装置(重量検査装置)
11 シールドボックス
11a 開口
12 コンベア
13 X線照射器(照射部)
14 X線ラインセンサ(検出部)
14a 画素
15 光電センサ
16 遮蔽ノレン
20 重量チェッカ(重量測定装置)
21 コンベア
26 モニタ
30 制御コンピュータ(サンプル画像取得部、理想カーブ作成部、カーブ調整部、推定質量算出部、重量値取得部、偏差量算出部、成分重量算出部)
31 CPU
32 ROM
33 RAM
34 USB(外部接続端子)
35 CF(コンパクトフラッシュ:登録商標)
41 サンプル画像取得部
42 テーブル作成部(理想カーブ作成部)
43 テーブル調整部(カーブ調整部)
44 推定質量算出部
45 偏差量算出部
46 成分重量算出部
110 重量検査装置
111 検査ユニット(分光部)
111a 筐体
112 計量部
112a 計量台
113 テラヘルツ波照射部
114 テラヘルツ波検出部
115 表示部
本発明の一実施形態に係るX線検査装置(重量検査装置)10を含むX線検査システム(重量検査システム)について、図1〜図11を用いて説明すれば以下の通りである。
[X線検査システム1の構成]
本実施形態のX線検査システム1は、図1に示すように、X線検査装置10と、重量チェッカ(重量測定装置)20と、を備えている。
X線検査装置10は、上流側に配置された重量チェッカ20から搬送されてくる商品(被検査物)Gに対してX線を照射し、その透過量を検出してX線画像を作成する。そして、X線検査装置10は、作成したX線画像に基づいて商品Gの推定重量を算出する。さらに、X線検査装置10は、上流側に配置された重量チェッカ20から商品Gの実重量値を取得し、この実重量値と上記推定重量との偏差量に基づいて、商品Gに含まれる比重が異なる複数の成分の重量や含有率を算出したり、重量チェッカ20あるいはX線検査装置10における重量測定値(推定値)の異常の有無を検出したりする。なお、本実施形態では、X線検査装置10による商品Gに含まれる比重の異なる成分ごとの重量値(含有率)の算出について、後段にて詳述する。
重量チェッカ20は、X線検査装置10の上流側に配置されており、上流から搬送されてきた商品Gの総重量をコンベア21において搬送しながら測定して、この測定値を直下流側に配置されたX線検査装置10に対して送信する(図5参照)。
[X線検査装置10全体の構成]
本実施形態のX線検査装置10は、図1に示すように、食品等の商品の生産ラインにおいて、連続的に搬送されてくる商品Gに対してX線を照射し、商品を透過したX線量を検出して作成されるX線画像に基づいて商品の質量を推定し、推定した質量が所定範囲内であるか否かの検査を行う。そして、ここで算出された推定重量と実重量値とに基づいて、商品Gに含まれる比重が異なる複数の成分ごとの重量を推定する。なお、以下では、商品Gとして比重が異なる肉部分と脂肪部分とを含む肉製品を用いた例を挙げて説明する。
X線検査装置10は、図2に示すように、主として、シールドボックス11と、コンベア12と、遮蔽ノレン16と、タッチパネル機能付きのモニタ26と、を備えている。そして、その内部には、図3に示すように、X線照射器(照射部)13と、X線ラインセンサ(X線検出部)14と、制御コンピュータ(サンプル画像取得部、テーブル作成部、テーブル調整部、推定質量算出部、重量値取得部、偏差量算出部、成分重量算出部)30(図5参照)とを備えている。
(シールドボックス11)
シールドボックス11は、図2に示すように、商品Gの入口側と出口側の双方の面に、商品を搬出入するための開口11aを有している。このシールドボックス11の中に、図3に示すように、コンベア12、X線照射器13、X線ラインセンサ14、制御コンピュータ30(図5参照)等が収容されている。
また、開口11aは、図2に示すように、シールドボックス11の外部へのX線の漏洩を防止するために、遮蔽ノレン16によって塞がれている。この遮蔽ノレン16は、鉛を含むゴム製のノレン部分を有しており、商品が搬出入される際に商品によって押しのけられる。
また、シールドボックス11の正面上部には、モニタ26の他、キーの差し込み口や電源スイッチ等が配置されている。
(コンベア12)
コンベア12は、シールドボックス11内において商品を搬送するものであって、図5の制御ブロックに含まれるコンベアモータ12fによって駆動される。コンベア12による搬送速度は、作業者が入力した設定速度になるように、制御コンピュータ30によるコンベアモータ12fのインバータ制御によって細かく制御される。
また、コンベア12は、図3に示すように、コンベアベルト12a、コンベアフレーム12bを有しており、シールドボックス11に対して取り外し可能な状態で取り付けられている。これにより、食品等の検査を行う場合においてシールドボックス11内を清潔に保つために、コンベアを取り外して頻繁に洗浄することができる。
コンベアベルト12aは、無端状ベルトであって、ベルトの内側からコンベアフレーム12bによって支持されている。そして、コンベアモータ12fの駆動力を受けて回転することで、ベルト上に載置された物体を所定の方向に搬送する。
コンベアフレーム12bは、無端状のベルトの内側からコンベアベルト12aを支持するとともに、図3に示すように、コンベアベルト12aの内側の面に対向する位置に、搬送方向に対して直角な方向に長く開口した開口部12cを有している。開口部12cは、コンベアフレーム12bにおける、X線照射器13とX線ラインセンサ14とを結ぶ線上に形成されている。換言すれば、開口部12cは、コンベアフレーム12bにおけるX線照射器13からのX線照射領域に、商品Gを透過したX線がコンベアフレーム12bによって遮蔽されないように形成されている。
(X線照射器13)
X線照射器13は、図3に示すように、コンベア12の上方に配置されており、コンベアフレーム12bに形成された開口部12cを介して、コンベア12の下方に配置されたX線ラインセンサ14に向かって扇形形状にX線を照射する(図3の斜線部参照)。
(X線ラインセンサ14)
X線ラインセンサ14は、コンベア12(開口部12c)の下方に配置されており、商品Gやコンベアベルト12aを透過してくるX線を検出する。このX線ラインセンサ14は、図3および図4に示すように、コンベア12による搬送方向に直交する向きに一直線に水平配置された複数の画素14aから構成されている。
なお、図4には、X線検査装置10内におけるX線照射状態と、その時のX線ラインセンサ14を構成する各画素14aにおいて検出されるX線量を示すグラフとがそれぞれ示されている。
(モニタ26)
モニタ26は、フルドット表示の液晶ディスプレイである。また、モニタ26は、タッチパネル機能を有しており、初期設定や質量推定後の判定等に関するパラメータ入力などを促す画面を表示する。
また、モニタ26は、X線ラインセンサ14における検出結果に基づいて作成された後、画像処理が施された商品GのX線透過画像を表示する。これにより、商品Gの袋内における粉末の片寄りなどの状態を、ユーザに対して視覚的に認識させることができる。
(制御コンピュータ30)
制御コンピュータ30は、CPU31において、制御プログラムに含まれる画像処理ルーチン、検査判定処理ルーチンなどを実行する。また、制御コンピュータ30は、CF(コンパクトフラッシュ:登録商標)35等の記憶部に、不良商品に対応するX線画像や検査結果、X線画像の補正用データ等を保存蓄積する。さらに、制御コンピュータ30は、生産ラインにおける上流側に配置された重量チェッカ20から商品Gの実重量値を受信して、実重量取得部として機能する。
具体的な構成として、制御コンピュータ30は、図5に示すように、CPU31を搭載するとともに、このCPU31が制御する主記憶部としてROM32、RAM33、およびCF35を搭載している。
CF35には、各部を制御するための各種プログラムや、質量推定の基になるX線透過画像、理想カーブ、推定質量、商品Gの実重量、実重量と推定重量との偏差量、等に関する各種情報が格納されている。
さらに、制御コンピュータ30は、モニタ26に対するデータ表示を制御する表示制御回路、モニタ26のタッチパネルからのキー入力データを取り込むキー入力回路、図示しないプリンタにおけるデータ印字の制御等を行うためのI/Oポート、外部接続端子としてのUSB34等を備えている。
そして、CPU31、ROM32、RAM33、CF35等は、アドレスバスやデータバス等のバスラインを介して相互に接続されている。
さらに、制御コンピュータ30は、コンベアモータ12f、ロータリーエンコーダ12g、X線照射器13、X線ラインセンサ14、光電センサ15等と接続されている。
制御コンピュータ30では、コンベアモータ12fに装着されたロータリエンコーダ12gにおいて検出されたコンベア12の搬送速度を受信する。
また、制御コンピュータ30は、コンベアを挟んで配置される一対の投光器および受光器から構成される同期センサとしての光電センサ15からの信号を受信して、被検査物である商品GがX線ラインセンサ14の位置にくるタイミングを検出する。
(制御コンピュータ30によって作成される機能ブロック)
本実施形態では、制御コンピュータ30に含まれるCPU31が、CF35に格納されたX線検査プログラムを読み込んで、図6に示すような機能ブロックを作成する。
具体的には、制御コンピュータ30内に、機能ブロックとして、図6に示すように、サンプル画像取得部41、テーブル作成部(理想カーブ作成部)42、テーブル調整部(カーブ調整部)43、推定質量算出部44、偏差量算出部45、および成分重量算出部46が作成される。
サンプル画像取得部41は、予め質量が分かっている商品G10個分についてX線透過画像を取得する(以下、10個の商品Gのそれぞれの質量を「実質量」と示す)。
テーブル作成部42は、サンプル画像取得部41において取得された単位領域(1画素)ごとの明るさaについて、その領域における推定質量mを算出するための以下の数式(2)に基づいてテーブル(理想カーブ)m(a)を作成する。
m=ct=−c/μ×In(I/I0)=−αIn(I/I0) ・・・(2)
(ただし、m:推定質量、c:物の厚さから質量に変換するための係数、t:物質の厚さ、I:物質がないときの明るさ、I0:物質を透過したときの明るさ、μ:線吸収係数)
テーブル調整部43は、モニタ26を通じて入力された10個の商品Gのそれぞれの実質量と、上記テーブル(理想カーブ)によって求められる各階調の推定質量を合計した合計推定質量とを比較して、合計推定質量が実質量に近くなるようにテーブルを調整する。
推定質量算出部44は、テーブル調整部43において調整されたテーブル(理想カーブ)に基づいて、各単位領域(1画素)ごとの明るさに応じて各単位領域ごとに推定質量を取得し、これらを合計して商品Gの推定質量を算出する。
なお、これらの各機能ブロック41〜44による質量推定の方法については、後段にて詳述する。
偏差量算出部45は、上述した重量チェッカ20において測定された商品Gの実重量と、上記推定質量算出部44において算出された推定重量との偏差量を算出する。
成分重量算出部46は、上述した重量チェッカ20において測定された商品Gの実重量と、上記推定質量算出部44において算出された推定重量とに基づいて、以下の関係式(1)によって、肉製品である商品Gに含まれる肉部分(成分B)および脂肪部分(成分A)のそれぞれの重量を算出する。
r=(1−W2/W1)×100/(1−R) ・・・・・(1)
(ただし、r:特定の成分Aの含有率、R:成分Aが100%のとき0%のときの重量比、実重量値W1、推定重量値W2とする。)
なお、Rについては、商品ごとに予め算出されているものとする。
<制御コンピュータ30による質量推定の流れ>
ここでは、まず、X線検査装置10における商品Gの推定質量の算出の流れについて、説明すれば以下の通りである。
一般的に、取得したX線透過画像において物質の厚みとその部分の明るさ(物質がないときを1.0として正規化された明るさ)との関係は、上述した数式(2)のような指数関数によって表されるグラフ(I/I0=e-μt)と、実際の質量を示すグラフとを比較すると、図7に示すような誤差が生じることが分かっている。特に、実際の質量を示すグラフでは、厚さtが比較的小さい領域において明るさが急激に低下している。これは、比較的エネルギーの小さいX線が先に吸収され、物質を通過するごとにX線の線質が硬くなることに起因するものである。さらに、上述したように、X線透過画像の明るさは、X線のエネルギー分布や物質の厚さ以外にも、固有フィルタの使用の有無、X線検出装置のエネルギー特性、ガンマ補正等の画像処理等のような不確定要因を含んでいる。
本実施形態のX線検査装置10では、商品Gについて各成分の片寄りや各種の不確定要因等の影響を排除して高精度な質量の推定を行うために、図8に示すフローチャートに従って質量の推定を行う。
すなわち、ステップS1では、上述した数式(2)のαに、例えば1.0を代入し、画像明るさ(階調)a(0〜220)に対応する推定質量m(a)をテーブル化する。数式(2)に基づいて作成されるテーブルは、まず、明るさaを10階調ごとに変化させてm(a)に相当するテーブル上に格納し、その間の数値を線形補間によって求める。これにより、制御コンピュータ30のテーブル作成部42において、図9(a)に示すような、明るさと推定質量m(a)との関係を示すテーブル(理想カーブ)が作成される。なお、数式(2)に従って各明るさにおける推定質量を全て求めたのでは時間がかかりすぎることを考慮して、ここでは10階調ごとに数式(2)によって推定質量を求めた後、その間を線形補間によって求めている。
ステップS2では、予め実質量が200gであることが分かっている10個の商品Gに対してX線を照射して、サンプル画像取得部41において10枚のX線透過画像を取得する。そして、取得した10枚のX線透過画像について、テーブルm(a)変換で推定質量を算出し、これらの平均値Maveを求める。なお、幅広い明るさのデータを得るために、10個のサンプル画像は袋内において粉末が片寄ったものや均一なもの等が混在していることが好ましい。
ステップS3では、ステップS2において求められた平均値Maveが、以下の関係式(3)に従って検査物質量Mtと等しくなるようにm(a)を変更していき、図9(b)に実線で示すような変更後のテーブルを初期テーブル(理想カーブ)とする。なお、図9(b)では、破線で変更前のテーブル、実線で変更後の初期テーブル(理想カーブ)を示している。
m(a)=m(a)×Mt/Mave ・・・(3)
ステップS4では、数式(2)の明るさaに10を代入して推定質量m(a)を求める。ここで、明るさaを10からスタートして20,30,・・・と代入していくのは、明るさ0では推定質量が無限大となってしまうためである。このため、明るさaに1を代入するところからスタートして、以下11,21,31,・・・と代入して推定質量を求めるようにしてもよい。
ステップS5では、テーブルm(a)を上下に少しずつずらしてみてどう変化するかを調べるために、テーブルm(a)を±10%して新たにテーブルm+(a)とテーブルm−(a)とを作成する。このとき、a−10とaとの間のテーブルは、m(a−10)とm(a)との間を線形補間することで求め、aとa+10との間のテーブルはm(a)とm(a+10)との間の線形補間によって求めて各テーブルm+(a),m−(a)を作成する。
ステップS6では、ステップS5において新たに作成した2つのテーブルm+(a)およびm−(a)と、元のテーブルm(a)とに基づいて、それぞれ10枚のX線透過画像について推定質量を算出する。
ステップS7では、ステップS6において3つのテーブルm(a),m+(a),m−(a)によって算出された10枚のX線透過画像についての推定質量から、最も標準偏差が小さい(ばらつきが少ない)テーブルを選択し、そのテーブルをm(a)と置き換える。
例えば、ある明るさ(階調)aにおいては、m(a)よりもm+(a)の方が標準偏差が小さい場合には、その明るさaに相当する部分については、テーブルm(a)をテーブルm+(a)に置き換える。一方、m(a)がm+(a)よりも標準偏差が小さい場合には、その明るさaに相当する部分については、テーブルm(a)を置き換えることなくそのまま維持する。
具体的には、図10(a)に示すように、明るさa=10の部分において、実線で示すテーブルm(10)、上側の破線で示すテーブルm+(10)、下側の破線で示すテーブルm−(10)の標準偏差を比較して、最も標準偏差が小さいm+(10)を選択する。すると、図10(b)に示すように、明るさa=10の部分についてはテーブルm(10)がテーブルm+(10)へと置き換えられる。
ステップS8では、明るさaが210であるか否かを判定し、Noの場合には、ステップS10へと進んで明るさaを10ずつ増やしながらa=210になるまで上記ステップS7におけるm(a)の置き換え処理を繰り返す。
つまり、明るさa=20,30,40,・・・について同様にしてテーブルの置き換えを繰り返し行い、図10(c)に実線で示すようなテーブルを作成する。
なお、このステップS7における処理が、テーブル調整部43によるテーブル、すなわち理想カーブの調整処理に相当する。
ステップS9では、置き換え処理によって調整後のテーブルm(a)に従って10枚のX線透過画像の質量を求め、そのばらつきが0.1g以下になるか否かを判定する。ここで、0.1gより大きい場合には、ステップS4まで戻ってばらつきが0.1g以下になるまで上述した処理を繰り返し行う。
本発明のX線検査装置10では、以上のような処理を経て、商品Gを撮像したX線透過画像から商品Gの質量を推定するための変換テーブルm(a)(図10(c)参照)を作成する。これにより、図10(c)に示すような最適化された調整後の変換テーブルm(a)を用いて検査対象となる商品Gの質量の推定を行うことで、従来の数式に依存した質量推定方法と比較して、高精度な質量推定結果を得ることができる。
<制御コンピュータ30による成分ごと重量の算出の流れ>
本実施形態では、さらに上述した推定重量の算出に加えて、重量チェッカ20において測定された実重量値を用いて、商品Gに含まれる比重が異なる肉部分、脂肪部分のそれぞれの重量値を算出する。
具体的には、肉製品である商品Gの実重量を200g、上述したX線検査装置10において算出された推定重量を192gであったとすると、上述した以下の関係式(1)に基づいて、成分(脂肪部分の重量)ごとの含有率が算出される。
r=(1−W2/W1)×100/(1−R) ・・・・・(1)
(ただし、r:脂肪部分の含有率、R:脂肪部分が100%のときと0%のときの重量比(ここでは、R=0.9とする。)、実重量値W1、推定重量値W2とする。)
ここで、X線検査装置10における重量変換関数は、予め脂肪率0%の肉製品について学習させておくため、脂肪部分が少ないほど、重量チェッカ20において測定された実重量値と、X線検査装置10において推定された推定重量とは、近い値となる。
一方、予め脂肪部分100%の場合と0%の場合の比(R)を持たせておくことで(図11参照)、上記関係式(1)によって、比重が異なる肉部分と脂肪部分との含有率、およびその重量を算出することができる。
この関係式(1)に、実重量200gと推定重量192g、R=0.9を代入すると、脂肪部分の重量含有率rは、以下のような値となる。
r=(1−192/200)×100/(1−0.9)
=4/0.1
=40.0(%)
よって、肉製品である商品Gに含まれる脂肪部分の重量が40.0%で、残りの肉部分の重量は60.0%と、算出することができる。
この結果、商品Gの重量200gに対して、肉部分が60.0%、脂肪部分が40.0%であるから、肉部分の重量は120g、脂肪部分の重量は80gと、算出することができる。
[本X線検査装置10の特徴]
(1)
本実施形態のX線検査装置10では、外部から取得した商品Gの実重量値と、図6に示すように、制御コンピュータ30内に形成された各機能ブロック41〜44において算出された商品Gの推定重量とに基づいて、偏差量算出部45が、推定重量の実重量からのずれの大きさを算出する。
これにより、X線画像等を用いて算出される推定重量をそのまま用いるのではなく、実重量との大きさの比較結果を用いて推定重量や各成分ごとの重量を算出することで、従来のX線検査装置における重量算出と比較して、測定精度を向上させることができる。また、実重量を取得して推定重量値の比較を行うことで、推定重量の精度低下を容易に検出することができる。よって、例えば、実重量と推定重量との偏差の大きさに基づいて、推定重量を算出する際の補正値を調整する等の対策を講ずることができる。
(2)
本実施形態のX線検査装置10では、上述した外部から取得した商品Gの実重量値と、図6に示すように、制御コンピュータ30内に形成された各機能ブロック41〜44において算出された商品Gの推定重量とに基づいて、成分重量算出部46が、商品Gに含まれる比重が異なる成分ごとの重量を算出する。
これにより、商品Gが肉製品であれば、肉の部分、脂肪の部分のそれぞれの重量(含有率)を容易かつ高精度に算出することができる。この結果、骨付き肉の骨の部分の量や肉の霜降りの度合いを判定や、脂肪部分が所定の割合以上の商品の選別、廃棄等を実施して、商品Gの品質管理を向上させることができる。また、比重が異なる複数の成分の重量を算出する場合でも、単一のX線ラインセンサ14を用いることができるため、複数のX線ラインセンサを備えた従来のX線検査装置と比較して、装置の構成を簡略化するとともにコストダウンが図れる。
(3)
本実施形態のX線検査装置10では、図1および図5に示すように、生産ラインにおける上流側に配置された重量チェッカ20から商品Gの実重量を取得する。
これにより、生産ライン上で商品Gを搬送しながら、実重量の取得、推定重量の算出、および商品Gに含まれる比重が異なる成分ごとの重量の算出までを実施することができる。
(4)
本実施形態のX線検査装置10では、図6に示す機能ブロックに含まれる成分重量算出部46は、上述した関係式(1)に基づいて、商品Gに含まれる比重が異なる成分ごとの重量を算出する。
これにより、X線検査装置10において算出された推定重量と、重量チェッカ20等において取得された実重量とを組み合わせることで、成分ごとの重量を容易に算出することができる。
(5)
本実施形態のX線検査装置10では、図6に示す機能ブロックに含まれる各部41〜44によって、X線画像における各画素ごとの明るさ等に基づいて商品Gの推定重量を算出する。
これにより、X線検査装置10において作成されるX線画像を用いて推定重量を算出することができるため、実重量と推定重量とを容易に取得することができる。
(6)
本実施形態のX線検査システム1では、図1および図5に示すように、生産ラインを構成する前段に配置された重量チェッカ20から商品Gの実重量を取得して、X線検査装置10において算出された推定重量と実重量とに基づいて、X線検査装置10において比重が異なる成分ごとの重量を算出する。
これにより、生産ライン上で商品Gを搬送しながら、実重量の取得、推定重量の算出、および商品Gに含まれる比重が異なる成分ごとの重量の算出までを実施することが可能なX線検査システム1を構築することができる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、商品(被検査物)Gに対して照射されたX線の透過量を検出して、商品Gの推定重量を算出するX線検査装置10に対して本発明を適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、被検査物に対して照射されるX線の代わりに、テラヘルツ波やミリ波、サブミリ波、赤外線等の他のエネルギー波を用いて重量検査を実施する重量検査装置に対して、本発明を適用することも可能である。
ここで、被検査物に対してテラヘルツ波を照射して重量検査を実施する場合には、図12に示すような重量検査装置110を用いることができる。具体的には、重量検査装置110は、商品Gの計量を行うとともに、商品Gに含まれる複数の成分の含有比率および重量値を算出する装置であって、主として、検査ユニット(分光部)111と、計量部112と、表示部115と、制御部と、を備えている。
検査ユニット111は、商品Gが載置される計量台112aの上方に、筐体111aに支持された状態で配置されており、商品Gに対して電磁波の一種であるテラヘルツ波を照射し、その反射波を複数の波長成分を含む吸収スペクトルとして検出する。また、検査ユニット111は、内部に、テラヘルツ波照射部113と、テラヘルツ波検出部114と、を有している。テラヘルツ波照射部113は、計量台112a上に載置された商品Gに対して、上方からテラヘルツ波を照射する。テラヘルツ波検出部114は、テラヘルツ波照射部113から商品Gに対して照射されたテラヘルツ波の反射波を、複数の波長成分を含む吸収スペクトルとして検出し、図示しない制御部に対して検出結果を送信する。
計量部112は、内部にロードセル(図示せず)を搭載した計量装置であって、計量台112a上に載置された商品Gの計量を行う。また、計量部112は、制御部に対して商品Gごとの計量結果を送信する。
これにより、制御部において、テラヘルツ波の商品Gからの反射波を検出して吸収スペクトルを取得し、被検査物に含まれる各成分ごとの吸収スペクトルを比較することで、各成分の推定重量や含有比率等を求めることができる。
(B)
上記実施形態では、重量チェッカ20において測定された実重量と、X線検査装置(重量検査装置)10において算出された推定重量とに基づいて、商品Gに含まれる比重が異なる成分(肉部分、脂肪部分)ごとの重量を算出する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、重量チェッカにおいて測定された実重量と、重量検査装置において算出された推定重量との差を算出し、これが所定値以上である場合には、例えば、重量チェッカにおける実重量の測定異常有りと判定するような構成であってもよい。あるいは、上記実重量と推定重量との差が所定量以上である場合には、その差の大きさに応じて重量検査装置における推定重量を補正するような構成であってもよい。なお、この場合には、上述した制御コンピュータ30が、推定重量算出に関する異常の有無を判定する判定部として機能させればよい。
これらの場合でも、計測あるいは推定した重量値の精度を向上させることができるという、上記と同様の効果を得ることができる。
(C)
上記実施形態では、被検査物としての商品Gに含まれる各成分の重量を算出するために、上流側に配置された重量チェッカ20における測定結果を取得する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、重量検査装置内に被検査物の実重量値を計測する計量部を設けて、そこで測定された重量値を用いて、各成分の重量値や含有率を求めることもできる。
また、既に測定された被検査物のデータをメディア等を介して取得して、そのデータを実重量値として用いることもできる。
(D)
上記実施形態では、商品Gに対して照射されたX線(エネルギー波)を検出する検出部として、X線ラインセンサ14を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、エネルギー波の検出部としては、X線ラインセンサに限らず、反射波を撮影するカメラ等を用いることも可能である。
(E)
上記実施形態では、商品(被検査物)Gの推定重量を求める手法として、X線画像を用いた方法を採用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、X線画像を用いることなく、被検査物を透過したX線のラインセンサの各画素における検出量に基づいて、推定重量を算出することもできる。
(F)
上記実施形態では、商品(被検査物)Gの推定重量を求める際に、理想カーブを補正しながら推定重量の算出精度を向上させる例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、より簡易な方法によって推定重量を算出する重量検査装置であってもよい。
この場合でも、実重量と推定重量との比較によって、互いの測定精度の低下を判定したり、被検査物に含まれる成分ごとの重量値を高精度に算出したりすることができる。
(G)
上記実施形態では、成分ごとの重量値が算出される対象となる商品(被検査物)Gとして、肉部分と脂肪部分とを含む肉製品を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、袋入り粉末スープ等に含まれる比重が異なる複数の成分を含む他の被検査物であっても、上記と同様に各成分の質量を算出することができる。
また、被検査物に含まれる複数の成分についても、2種類に限定されるものではなく、3種類以上の比重が異なる成分を含む商品を、被検査物として用いることも可能である。
本発明の重量検査装置は、比重の異なる複数の成分を含む被検査物の成分ごとの重量を高精度に算出することができるという効果を奏することから、食料品や工業製品等の各種検査装置として広く適用可能である。
本発明は、物質に対して照射されたX線等の透過量や反射量等に基づいて物質の質量を推定する重量検査装置およびこれを備えた重量検査システムに関する。
近年、被測定物に対してX線を照射し、その透過X線量に基づいて被測定物の質量を推定(算出)するX線質量推定装置が用いられている。
このX線質量推定装置では、被測定物のX線透過画像を取得し、X線透過画像の物質の厚さが大きいほど暗く写るという性質を利用して、そのX線透過画像に含まれる単位領域当たりの明るさに応じて、例えば、明るさが低ければ質量が大きく、明るさが大きければ質量が小さいということから質量を推定する。
例えば、特許文献1,2には、肉製品に含まれる脂肪の割合等を算出するために、物質に対して照射されたX線透過量を検出して、脂肪分の重量値や全体重量を推定する材料物性の放射線監視やX線質量推定装置について開示されている。
特表2002−520593号公報(平成14年7月9日公表)
特開2002−520593号公報(平成14年10月9日公開)
しかしながら、上記従来のX線検査装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたX線検査装置では、物質を透過したX線量だけに基づいて重量値を推定しているため、高精度に正確な重量値を算出することは困難な場合がある。
本発明の課題は、被検査物の重量を高精度に算出することが可能な重量検査装置およびこれを備えた重量検査システムを提供することにある。
第1の発明に係る重量検査装置は、被検査物に対して照射されたエネルギー波を検出して、被検査物の推定重量を算出する重量検査装置であって、重量値取得部と、照射部と、検出部と、推定重量算出部と、偏差量算出部と、を備えている。重量値取得部は、被検査物全体の実際の重量を取得する。照射部は、被検査物に対してエネルギー波を照射する。検出部は、被検査物に対して照射されたエネルギー波を検出する。推定重量算出部は、検出部における検出結果に基づいて、被検査物の全体の推定重量を算出する。偏差量算出部は、実際の重量と推定重量との差を算出する。
ここでは、例えば、前段に配置された重量測定装置から取得した被検査物の実際の重量値(以下、実重量値と示す。)と、重量検査装置において算出された推定重量値とに基づいて、実重量値あるいは推定重量値のずれを早期に検出する。
ここで、重量値取得部は、例えば、上述した生産ライン等の上流側に配置された重量チェッカからの測定値として実重量値を間接的に取得してもよいし、重量検査装置内に重量計を設けて実重量値を直接的に取得してもよい。さらに、推定重量算出部は、被検査物に対して照射されたエネルギー波の透過量や反射量を検出して作成される画像等を用いて推定重量を算出する等の従来の手法を用いることができる。また、上記エネルギー波は、X線やテラヘルツ波に加えて、赤外線や紫外線、可視光等も含まれる。
これにより、実重量値と推定重量値との偏差量が所定値よりも大きい場合には、例えば、これを重量測定装置か重量検査装置における異常の発生として検出したり、重量検査装置における推定重量値を算出するための補正値を調整したり、比重が異なる複数の成分ごとの重量値の算出に使用したりすることができる。この結果、算出される被検査物の重量値の精度を向上させることができる。
第2の発明に係る重量検査装置は、第1の発明に係る重量検査装置であって、検出部は、被検査物を透過したエネルギー波の量を検出する。
ここでは、被検査物に対して照射されたエネルギー波の透過量を検出して、推定重量の算出を行う。
これにより、X線等のエネルギー波の透過量に基づいて作成されるX線画像等を用いて推定重量等の算出を容易に実施することができる。
第3の発明に係る重量検査装置は、第1の発明に係る重量検査装置であって、検出部は、被検査物から反射したエネルギー波の量を検出する。
ここでは、被検査物に対して照射されたエネルギー波の反射量を検出して、推定重量の算出を行う。
これにより、テラヘルツ波等のエネルギー波の反射波の検出によって吸収スペクトルを取得し、被検査物に含まれる各成分ごとのスペクトルデータとの比較によって、各成分の含有比率や推定重量の算出等を容易に実施することができる。
第4の発明に係る重量検査装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る重量検査装置であって、重量値取得部は、被検査物の重量を測定する計量部である。
ここでは、被検査物の実際の重量値を、重量検査物内に設けられた計量部において直接的に取得する。
これにより、推定重量を求めるために必要な被検査物の実際の重量値を、重量検査装置内において容易に取得することができる。
第5の発明に係る重量検査装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る重量検査装置であって、実際の重量と推定重量との差に基づいて、被検査物に含まれる比重が異なる成分ごとの重量値を算出する成分重量算出部を、さらに備えている。
ここでは、例えば、比重が異なる肉部分と脂肪部分とを含む肉製品を被検査物とする場合において、実際の肉製品全体の実重量と、重量検査において得られた推定重量との差に基づいて、肉部分および脂肪部分の重量値をそれぞれ算出する。
ここで、被検査物としては、上述した肉製品に加えて、液体スープのような比重が異なる複数の成分によって構成されるものを用いることができる。そして、成分重量算出部は、実重量値と推定重量値とを所定の計算式に代入することによって求めることができる。なお、成分重量算出部における重量値の算出には、重量値の算出、各成分の含有率の算出の双方、あるいは一方が含まれる。
これにより、検出感度が異なる2つの検出部によってそれぞれ被検査物を透過したX線量だけに基づいて比重が異なる成分ごとの重量値を求める従来の重量検査装置と比較して、実重量値と推定重量値との双方を用いて成分ごとの重量値を求めているため、算出される重量値の精度を向上させることができる。また、複数成分の重量を求めるためにラインセンサ等の検出部を複数設ける必要がないため、重量検査装置としてのコストダウンが図れる。
第6の発明に係る重量検査装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る重量検査装置であって、実際の重量と推定重量との差に基づいて、推定重量算出部における推定重量の算出結果を調整する推定重量調整部を、さらに備えている。
ここでは、例えば、被検査物の実際の重量と、重量検査において得られた推定重量との差が所定値以上である場合には、重量検査装置における推定重量の算出に異常があるものと判定し、推定重量を調整する。つまり、実重量との差の大きさに基づいて、重量検査装置における重量推定の精度を確認しながら、推定重量を調整している。
これにより、重量検査装置における重量推定が精度よく行われているか否かを容易に確認することができる。そして、実重量と推定重量との差が所定値以上になった場合には、例えば、推定重量を算出する際の補正値を調整して、推定重量の算出精度の低下を防止することができる。この結果、実重量を参照しながら、推定重量の算出を行うことで、常に安定した精度で重量推定を実施することができる。
第7の発明に係る重量検査装置は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る重量検査装置であって、重量値取得部は、前段に設けられた重量測定装置から被検査物の重量値を取得する。
ここでは、例えば、本重量検査装置とともに生産ラインを構成する重量測定装置を重量検査装置の上流側に設け、この重量測定装置から被検査物の測定値を取得して、上述した各成分の重量値を算出する。
これにより、生産ライン等に含まれる重量測定装置の後に重量検査装置を配置することで、生産ライン等において被検査物を下流側へと搬送しながら、被検査物の実重量値の検査、各成分の重量値(含有比率)等の検査をスムーズに行うことができる。
第8の発明に係る重量検査装置は、第6の発明に係る重量検査装置であって、成分重量算出部は、以下の関係式(1)に基づいて、被検査物に含まれる複数の成分ごとの含有率を算出する。
r=(1−W2/W1)×100/(1−R) ・・・・・(1)
(ただし、r:特定の成分Aの含有率、R:成分Aが100%のときと0%のときの重量比、実重量値W1、推定重量値W2とする。)
ここでは、成分重量算出部において、特定の成分の含有率を、上記計算式(1)を用いて算出する。
ここで、Rは、被検査物に含まれる特定の成分が100%の場合の重量値に基づいて、予め算出されているものとする。
これにより、重量チェッカ等において取得した実重量値と、重量検査装置において取得した推定重量値とを上記関係式(1)に代入するだけで、容易に各成分の重量値を求めることができる。
第9の発明に係る重量検査装置は、第1から第8の発明のいずれか1つに係る重量検査装置であって、推定重量算出部は、被検査物に対して照射されたX線の透過量に基づいて作成された画像を用いて被検査物の推定重量を算出する。
ここでは、被検査物の推定重量を算出する方法として、ラインセンサ等の検出部において検出された結果に基づいて作成される画像の濃淡等のデータを用いて被検査物の推定重量を求める。
これにより、従来の重量検査装置において作成される画像を用いて推定重量を算出することができるため、各成分の重量値についてもスムーズに算出することができる。
第10の発明に係る重量検査装置は、第1から第9の発明のいずれか1つに係る重量検査装置であって、エネルギー波は、X線である。
ここでは、被検査物に対して照射されるエネルギー波として、X線を用いている。
これにより、商品の価値を損なうことなく、被検査物に含まれる複数の成分の重量値を算出したり、特定の成分の存在の有無を確認したりすることができる。
第11の発明に係る重量検査装置は、第1から第9の発明のいずれか1つに係る重量検査装置であって、エネルギー波は、テラヘルツ波である。
ここでは、被検査物に対して照射されるエネルギー波として、テラヘルツ波を用いている。
ここで、テラヘルツ波は、0.3〜10.0THzの周波数を持つ電磁波である。
これにより、被検査物からの反射波を検出して吸収スペクトルを取得し、被検査物に含まれる各成分ごとのスペクトルデータとの比較によって各成分の含有比率や重量値等を求めることができる。
この結果、商品の価値を損なうことなく、被検査物に含まれる複数の成分の含有比率や重量値を算出したり、特定の成分の存在の有無を確認したりすることができる。
第12の発明に係る重量検査システムは、第1から第11の発明のいずれか1つに係る重量検査装置と、重量検査装置の上流側に配置されており、被検査物の実際の重量値を測定する重量測定装置と、を備えている。
これにより、実重量値と推定重量値との偏差量が所定値よりも大きい場合には、例えば、これを重量測定装置か重量検査装置における異常の発生として検出したり、重量検査装置における推定重量値を算出するための補正値を調整したり、比重が異なる複数の成分ごとの重量値の算出に使用したりすることができる。この結果、算出される被検査物の重量値の精度を向上させることが可能な重量検査システムを提供することができる。
本発明の一実施形態に係るX線検査装置を含むX線検査システムの全体の構成を示す斜視図。
図1のX線検査システムに含まれるX線検査装置の構成を示す斜視図。
図1のX線検査装置のシールドボックス内部の簡易構成図。
図1のX線検査装置による異物混入検査の原理を示す模式図。
図1のX線検査装置が備えている制御コンピュータの構成を示す制御ブロック図。
図5の制御コンピュータに含まれるCPUがX線検査プログラムを読み込むことによって作成される機能ブロック図。
X線透過画像に含まれる単位領域当たりの画像の明るさとその部分の物質の厚さとの関係を示すグラフ。
図1のX線検査装置によるX線検査プログラムに基づく質量推定方法の流れを示すフローチャート。
(a)は、係数αを最適化する前のテーブルm(a)を示すグラフ。(b)は、係数αを最適化した後のテーブルm(a)を示すグラフ。
(a)〜(c)は、変換テーブルm(a)を最適化していく過程を示すグラフ。
図2のX線検査装置において成分ごとの重量値を算出する際に用いられる値Rに関するグラフ。
本発明の他の実施形態に係る重量検査装置の構成を示す斜視図。
1 X線検査システム(重量検査システム)
10 X線検査装置(重量検査装置)
11 シールドボックス
11a 開口
12 コンベア
13 X線照射器(照射部)
14 X線ラインセンサ(検出部)
14a 画素
15 光電センサ
16 遮蔽ノレン
20 重量チェッカ(重量測定装置)
21 コンベア
26 モニタ
30 制御コンピュータ(サンプル画像取得部、理想カーブ作成部、カーブ調整部、推定質量算出部、重量値取得部、偏差量算出部、成分重量算出部)
31 CPU
32 ROM
33 RAM
34 USB(外部接続端子)
35 CF(コンパクトフラッシュ:登録商標)
41 サンプル画像取得部
42 テーブル作成部(理想カーブ作成部)
43 テーブル調整部(カーブ調整部)
44 推定質量算出部
45 偏差量算出部
46 成分重量算出部
110 重量検査装置
111 検査ユニット(分光部)
111a 筐体
112 計量部
112a 計量台
113 テラヘルツ波照射部
114 テラヘルツ波検出部
115 表示部
本発明の一実施形態に係るX線検査装置(重量検査装置)10を含むX線検査システム(重量検査システム)について、図1〜図11を用いて説明すれば以下の通りである。
[X線検査システム1の構成]
本実施形態のX線検査システム1は、図1に示すように、X線検査装置10と、重量チェッカ(重量測定装置)20と、を備えている。
X線検査装置10は、上流側に配置された重量チェッカ20から搬送されてくる商品(被検査物)Gに対してX線を照射し、その透過量を検出してX線画像を作成する。そして、X線検査装置10は、作成したX線画像に基づいて商品Gの推定重量を算出する。さらに、X線検査装置10は、上流側に配置された重量チェッカ20から商品Gの実重量値を取得し、この実重量値と上記推定重量との偏差量に基づいて、商品Gに含まれる比重が異なる複数の成分の重量や含有率を算出したり、重量チェッカ20あるいはX線検査装置10における重量測定値(推定値)の異常の有無を検出したりする。なお、本実施形態では、X線検査装置10による商品Gに含まれる比重の異なる成分ごとの重量値(含有率)の算出について、後段にて詳述する。
重量チェッカ20は、X線検査装置10の上流側に配置されており、上流から搬送されてきた商品Gの総重量をコンベア21において搬送しながら測定して、この測定値を直下流側に配置されたX線検査装置10に対して送信する(図5参照)。
[X線検査装置10全体の構成]
本実施形態のX線検査装置10は、図1に示すように、食品等の商品の生産ラインにおいて、連続的に搬送されてくる商品Gに対してX線を照射し、商品を透過したX線量を検出して作成されるX線画像に基づいて商品の質量を推定し、推定した質量が所定範囲内であるか否かの検査を行う。そして、ここで算出された推定重量と実重量値とに基づいて、商品Gに含まれる比重が異なる複数の成分ごとの重量を推定する。なお、以下では、商品Gとして比重が異なる肉部分と脂肪部分とを含む肉製品を用いた例を挙げて説明する。
X線検査装置10は、図2に示すように、主として、シールドボックス11と、コンベア12と、遮蔽ノレン16と、タッチパネル機能付きのモニタ26と、を備えている。そして、その内部には、図3に示すように、X線照射器(照射部)13と、X線ラインセンサ(X線検出部)14と、制御コンピュータ(サンプル画像取得部、テーブル作成部、テーブル調整部、推定質量算出部、重量値取得部、偏差量算出部、成分重量算出部)30(図5参照)とを備えている。
(シールドボックス11)
シールドボックス11は、図2に示すように、商品Gの入口側と出口側の双方の面に、商品を搬出入するための開口11aを有している。このシールドボックス11の中に、図3に示すように、コンベア12、X線照射器13、X線ラインセンサ14、制御コンピュータ30(図5参照)等が収容されている。
また、開口11aは、図2に示すように、シールドボックス11の外部へのX線の漏洩を防止するために、遮蔽ノレン16によって塞がれている。この遮蔽ノレン16は、鉛を含むゴム製のノレン部分を有しており、商品が搬出入される際に商品によって押しのけられる。
また、シールドボックス11の正面上部には、モニタ26の他、キーの差し込み口や電源スイッチ等が配置されている。
(コンベア12)
コンベア12は、シールドボックス11内において商品を搬送するものであって、図5の制御ブロックに含まれるコンベアモータ12fによって駆動される。コンベア12による搬送速度は、作業者が入力した設定速度になるように、制御コンピュータ30によるコンベアモータ12fのインバータ制御によって細かく制御される。
また、コンベア12は、図3に示すように、コンベアベルト12a、コンベアフレーム12bを有しており、シールドボックス11に対して取り外し可能な状態で取り付けられている。これにより、食品等の検査を行う場合においてシールドボックス11内を清潔に保つために、コンベアを取り外して頻繁に洗浄することができる。
コンベアベルト12aは、無端状ベルトであって、ベルトの内側からコンベアフレーム12bによって支持されている。そして、コンベアモータ12fの駆動力を受けて回転することで、ベルト上に載置された物体を所定の方向に搬送する。
コンベアフレーム12bは、無端状のベルトの内側からコンベアベルト12aを支持するとともに、図3に示すように、コンベアベルト12aの内側の面に対向する位置に、搬送方向に対して直角な方向に長く開口した開口部12cを有している。開口部12cは、コンベアフレーム12bにおける、X線照射器13とX線ラインセンサ14とを結ぶ線上に形成されている。換言すれば、開口部12cは、コンベアフレーム12bにおけるX線照射器13からのX線照射領域に、商品Gを透過したX線がコンベアフレーム12bによって遮蔽されないように形成されている。
(X線照射器13)
X線照射器13は、図3に示すように、コンベア12の上方に配置されており、コンベアフレーム12bに形成された開口部12cを介して、コンベア12の下方に配置されたX線ラインセンサ14に向かって扇形形状にX線を照射する(図3の斜線部参照)。
(X線ラインセンサ14)
X線ラインセンサ14は、コンベア12(開口部12c)の下方に配置されており、商品Gやコンベアベルト12aを透過してくるX線を検出する。このX線ラインセンサ14は、図3および図4に示すように、コンベア12による搬送方向に直交する向きに一直線に水平配置された複数の画素14aから構成されている。
なお、図4には、X線検査装置10内におけるX線照射状態と、その時のX線ラインセンサ14を構成する各画素14aにおいて検出されるX線量を示すグラフとがそれぞれ示されている。
(モニタ26)
モニタ26は、フルドット表示の液晶ディスプレイである。また、モニタ26は、タッチパネル機能を有しており、初期設定や質量推定後の判定等に関するパラメータ入力などを促す画面を表示する。
また、モニタ26は、X線ラインセンサ14における検出結果に基づいて作成された後、画像処理が施された商品GのX線透過画像を表示する。これにより、商品Gの袋内における粉末の片寄りなどの状態を、ユーザに対して視覚的に認識させることができる。
(制御コンピュータ30)
制御コンピュータ30は、CPU31において、制御プログラムに含まれる画像処理ルーチン、検査判定処理ルーチンなどを実行する。また、制御コンピュータ30は、CF(コンパクトフラッシュ:登録商標)35等の記憶部に、不良商品に対応するX線画像や検査結果、X線画像の補正用データ等を保存蓄積する。さらに、制御コンピュータ30は、生産ラインにおける上流側に配置された重量チェッカ20から商品Gの実重量値を受信して、実重量取得部として機能する。
具体的な構成として、制御コンピュータ30は、図5に示すように、CPU31を搭載するとともに、このCPU31が制御する主記憶部としてROM32、RAM33、およびCF35を搭載している。
CF35には、各部を制御するための各種プログラムや、質量推定の基になるX線透過画像、理想カーブ、推定質量、商品Gの実重量、実重量と推定重量との偏差量、等に関する各種情報が格納されている。
さらに、制御コンピュータ30は、モニタ26に対するデータ表示を制御する表示制御回路、モニタ26のタッチパネルからのキー入力データを取り込むキー入力回路、図示しないプリンタにおけるデータ印字の制御等を行うためのI/Oポート、外部接続端子としてのUSB34等を備えている。
そして、CPU31、ROM32、RAM33、CF35等は、アドレスバスやデータバス等のバスラインを介して相互に接続されている。
さらに、制御コンピュータ30は、コンベアモータ12f、ロータリーエンコーダ12g、X線照射器13、X線ラインセンサ14、光電センサ15等と接続されている。
制御コンピュータ30では、コンベアモータ12fに装着されたロータリエンコーダ12gにおいて検出されたコンベア12の搬送速度を受信する。
また、制御コンピュータ30は、コンベアを挟んで配置される一対の投光器および受光器から構成される同期センサとしての光電センサ15からの信号を受信して、被検査物である商品GがX線ラインセンサ14の位置にくるタイミングを検出する。
(制御コンピュータ30によって作成される機能ブロック)
本実施形態では、制御コンピュータ30に含まれるCPU31が、CF35に格納されたX線検査プログラムを読み込んで、図6に示すような機能ブロックを作成する。
具体的には、制御コンピュータ30内に、機能ブロックとして、図6に示すように、サンプル画像取得部41、テーブル作成部(理想カーブ作成部)42、テーブル調整部(カーブ調整部)43、推定質量算出部44、偏差量算出部45、および成分重量算出部46が作成される。
サンプル画像取得部41は、予め質量が分かっている商品G10個分についてX線透過画像を取得する(以下、10個の商品Gのそれぞれの質量を「実質量」と示す)。
テーブル作成部42は、サンプル画像取得部41において取得された単位領域(1画素)ごとの明るさaについて、その領域における推定質量mを算出するための以下の数式(2)に基づいてテーブル(理想カーブ)m(a)を作成する。
m=ct=−c/μ×ln(I/I0)=−αln(I/I0) ・・・(2)
(ただし、m:推定質量、c:物の厚さから質量に変換するための係数、t:物質の厚さ、I:物質がないときの明るさ、I0:物質を透過したときの明るさ、μ:線吸収係数)
テーブル調整部43は、モニタ26を通じて入力された10個の商品Gのそれぞれの実質量と、上記テーブル(理想カーブ)によって求められる各階調の推定質量を合計した合計推定質量とを比較して、合計推定質量が実質量に近くなるようにテーブルを調整する。
推定質量算出部44は、テーブル調整部43において調整されたテーブル(理想カーブ)に基づいて、各単位領域(1画素)ごとの明るさに応じて各単位領域ごとに推定質量を取得し、これらを合計して商品Gの推定質量を算出する。
なお、これらの各機能ブロック41〜44による質量推定の方法については、後段にて詳述する。
偏差量算出部45は、上述した重量チェッカ20において測定された商品Gの実重量と、上記推定質量算出部44において算出された推定重量との偏差量を算出する。
成分重量算出部46は、上述した重量チェッカ20において測定された商品Gの実重量と、上記推定質量算出部44において算出された推定重量とに基づいて、以下の関係式(1)によって、肉製品である商品Gに含まれる肉部分(成分B)および脂肪部分(成分A)のそれぞれの重量を算出する。
r=(1−W2/W1)×100/(1−R) ・・・・・(1)
(ただし、r:特定の成分Aの含有率、R:成分Aが100%のとき0%のときの重量比、実重量値W1、推定重量値W2とする。)
なお、Rについては、商品ごとに予め算出されているものとする。
<制御コンピュータ30による質量推定の流れ>
ここでは、まず、X線検査装置10における商品Gの推定質量の算出の流れについて、説明すれば以下の通りである。
一般的に、取得したX線透過画像において物質の厚みとその部分の明るさ(物質がないときを1.0として正規化された明るさ)との関係は、上述した数式(2)のような指数関数によって表されるグラフ(I/I0=e-μt)と、実際の質量を示すグラフとを比較すると、図7に示すような誤差が生じることが分かっている。特に、実際の質量を示すグラフでは、厚さtが比較的小さい領域において明るさが急激に低下している。これは、比較的エネルギーの小さいX線が先に吸収され、物質を通過するごとにX線の線質が硬くなることに起因するものである。さらに、上述したように、X線透過画像の明るさは、X線のエネルギー分布や物質の厚さ以外にも、固有フィルタの使用の有無、X線検出装置のエネルギー特性、ガンマ補正等の画像処理等のような不確定要因を含んでいる。
本実施形態のX線検査装置10では、商品Gについて各成分の片寄りや各種の不確定要因等の影響を排除して高精度な質量の推定を行うために、図8に示すフローチャートに従って質量の推定を行う。
すなわち、ステップS1では、上述した数式(2)のαに、例えば1.0を代入し、画像明るさ(階調)a(0〜220)に対応する推定質量m(a)をテーブル化する。数式(2)に基づいて作成されるテーブルは、まず、明るさaを10階調ごとに変化させてm(a)に相当するテーブル上に格納し、その間の数値を線形補間によって求める。これにより、制御コンピュータ30のテーブル作成部42において、図9(a)に示すような、明るさと推定質量m(a)との関係を示すテーブル(理想カーブ)が作成される。なお、数式(2)に従って各明るさにおける推定質量を全て求めたのでは時間がかかりすぎることを考慮して、ここでは10階調ごとに数式(2)によって推定質量を求めた後、その間を線形補間によって求めている。
ステップS2では、予め実質量が200gであることが分かっている10個の商品Gに対してX線を照射して、サンプル画像取得部41において10枚のX線透過画像を取得する。そして、取得した10枚のX線透過画像について、テーブルm(a)変換で推定質量を算出し、これらの平均値Maveを求める。なお、幅広い明るさのデータを得るために、10個のサンプル画像は袋内において粉末が片寄ったものや均一なもの等が混在していることが好ましい。
ステップS3では、ステップS2において求められた平均値Maveが、以下の関係式(3)に従って検査物質量Mtと等しくなるようにm(a)を変更していき、図9(b)に実線で示すような変更後のテーブルを初期テーブル(理想カーブ)とする。なお、図9(b)では、破線で変更前のテーブル、実線で変更後の初期テーブル(理想カーブ)を示している。
m(a)=m(a)×Mt/Mave ・・・(3)
ステップS4では、図9(b)の理想カーブにおいて明るさaに10を代入して推定質量m(a)を求める。ここで、明るさaを10からスタートして20,30,・・・と代入していくのは、明るさ0では推定質量が無限大となってしまうためである。このため、明るさaに1を代入するところからスタートして、以下11,21,31,・・・と代入して推定質量を求めるようにしてもよい。
ステップS5では、テーブルm(a)を上下に少しずつずらしてみてどう変化するかを調べるために、テーブルm(a)を±10%して新たにテーブルm+(a)とテーブルm−(a)とを作成する。このとき、a−10とaとの間のテーブルは、m(a−10)とm(a)との間を線形補間することで求め、aとa+10との間のテーブルはm(a)とm(a+10)との間の線形補間によって求めて各テーブルm+(a),m−(a)を作成する。
ステップS6では、ステップS5において新たに作成した2つのテーブルm+(a)およびm−(a)と、元のテーブルm(a)とに基づいて、それぞれ10枚のX線透過画像について推定質量を算出する。
ステップS7では、ステップS6において3つのテーブルm(a),m+(a),m−(a)によって算出された10枚のX線透過画像についての推定質量から、最も標準偏差が小さい(ばらつきが少ない)テーブルを選択し、そのテーブルをm(a)と置き換える。
例えば、ある明るさ(階調)aにおいては、m(a)よりもm+(a)の方が標準偏差が小さい場合には、その明るさaに相当する部分については、テーブルm(a)をテーブルm+(a)に置き換える。一方、m(a)がm+(a)よりも標準偏差が小さい場合には、その明るさaに相当する部分については、テーブルm(a)を置き換えることなくそのまま維持する。
具体的には、図10(a)に示すように、明るさa=10の部分において、実線で示すテーブルm(10)、上側の破線で示すテーブルm+(10)、下側の破線で示すテーブルm−(10)の標準偏差を比較して、最も標準偏差が小さいm+(10)を選択する。すると、図10(b)に示すように、明るさa=10の部分についてはテーブルm(10)がテーブルm+(10)へと置き換えられる。
ステップS8では、明るさaが210であるか否かを判定し、Noの場合には、ステップS10へと進んで明るさaを10ずつ増やしながらa=210になるまで上記ステップS7におけるm(a)の置き換え処理を繰り返す。
つまり、明るさa=20,30,40,・・・について同様にしてテーブルの置き換えを繰り返し行い、図10(c)に実線で示すようなテーブルを作成する。
なお、このステップS7における処理が、テーブル調整部43によるテーブル、すなわち理想カーブの調整処理に相当する。
ステップS9では、置き換え処理によって調整後のテーブルm(a)に従って10枚のX線透過画像の質量を求め、そのばらつきが0.1g以下になるか否かを判定する。ここで、0.1gより大きい場合には、ステップS4まで戻ってばらつきが0.1g以下になるまで上述した処理を繰り返し行う。
本発明のX線検査装置10では、以上のような処理を経て、商品Gを撮像したX線透過画像から商品Gの質量を推定するための変換テーブルm(a)(図10(c)参照)を作成する。これにより、図10(c)に示すような最適化された調整後の変換テーブルm(a)を用いて検査対象となる商品Gの質量の推定を行うことで、従来の数式に依存した質量推定方法と比較して、高精度な質量推定結果を得ることができる。
<制御コンピュータ30による成分ごと重量の算出の流れ>
本実施形態では、さらに上述した推定重量の算出に加えて、重量チェッカ20において測定された実重量値を用いて、商品Gに含まれる比重が異なる肉部分、脂肪部分のそれぞれの重量値を算出する。
具体的には、肉製品である商品Gの実重量を200g、上述したX線検査装置10において算出された推定重量を192gであったとすると、上述した以下の関係式(1)に基づいて、成分(脂肪部分の重量)ごとの含有率が算出される。
r=(1−W2/W1)×100/(1−R) ・・・・・(1)
(ただし、r:脂肪部分の含有率、R:脂肪部分が100%のときと0%のときの重量比(ここでは、R=0.9とする。)、実重量値W1、推定重量値W2とする。)
ここで、X線検査装置10における重量変換関数は、予め脂肪率0%の肉製品について学習させておくため、脂肪部分が少ないほど、重量チェッカ20において測定された実重量値と、X線検査装置10において推定された推定重量とは、近い値となる。
一方、予め脂肪部分100%の場合と0%の場合の比(R)を持たせておくことで(図11参照)、上記関係式(1)によって、比重が異なる肉部分と脂肪部分との含有率、およびその重量を算出することができる。
この関係式(1)に、実重量200gと推定重量192g、R=0.9を代入すると、脂肪部分の重量含有率rは、以下のような値となる。
r=(1−192/200)×100/(1−0.9)
=4/0.1
=40.0(%)
よって、肉製品である商品Gに含まれる脂肪部分の重量が40.0%で、残りの肉部分の重量は60.0%と、算出することができる。
この結果、商品Gの重量200gに対して、肉部分が60.0%、脂肪部分が40.0%であるから、肉部分の重量は120g、脂肪部分の重量は80gと、算出することができる。
[本X線検査装置10の特徴]
(1)
本実施形態のX線検査装置10では、外部から取得した商品Gの実重量値と、図6に示すように、制御コンピュータ30内に形成された各機能ブロック41〜44において算出された商品Gの推定重量とに基づいて、偏差量算出部45が、推定重量の実重量からのずれの大きさを算出する。
これにより、X線画像等を用いて算出される推定重量をそのまま用いるのではなく、実重量との大きさの比較結果を用いて推定重量や各成分ごとの重量を算出することで、従来のX線検査装置における重量算出と比較して、測定精度を向上させることができる。また、実重量を取得して推定重量値の比較を行うことで、推定重量の精度低下を容易に検出することができる。よって、例えば、実重量と推定重量との偏差の大きさに基づいて、推定重量を算出する際の補正値を調整する等の対策を講ずることができる。
(2)
本実施形態のX線検査装置10では、上述した外部から取得した商品Gの実重量値と、図6に示すように、制御コンピュータ30内に形成された各機能ブロック41〜44において算出された商品Gの推定重量とに基づいて、成分重量算出部46が、商品Gに含まれる比重が異なる成分ごとの重量を算出する。
これにより、商品Gが肉製品であれば、肉の部分、脂肪の部分のそれぞれの重量(含有率)を容易かつ高精度に算出することができる。この結果、骨付き肉の骨の部分の量や肉の霜降りの度合いを判定や、脂肪部分が所定の割合以上の商品の選別、廃棄等を実施して、商品Gの品質管理を向上させることができる。また、比重が異なる複数の成分の重量を算出する場合でも、単一のX線ラインセンサ14を用いることができるため、複数のX線ラインセンサを備えた従来のX線検査装置と比較して、装置の構成を簡略化するとともにコストダウンが図れる。
(3)
本実施形態のX線検査装置10では、図1および図5に示すように、生産ラインにおける上流側に配置された重量チェッカ20から商品Gの実重量を取得する。
これにより、生産ライン上で商品Gを搬送しながら、実重量の取得、推定重量の算出、および商品Gに含まれる比重が異なる成分ごとの重量の算出までを実施することができる。
(4)
本実施形態のX線検査装置10では、図6に示す機能ブロックに含まれる成分重量算出部46は、上述した関係式(1)に基づいて、商品Gに含まれる比重が異なる成分ごとの重量を算出する。
これにより、X線検査装置10において算出された推定重量と、重量チェッカ20等において取得された実重量とを組み合わせることで、成分ごとの重量を容易に算出することができる。
(5)
本実施形態のX線検査装置10では、図6に示す機能ブロックに含まれる各部41〜44によって、X線画像における各画素ごとの明るさ等に基づいて商品Gの推定重量を算出する。
これにより、X線検査装置10において作成されるX線画像を用いて推定重量を算出することができるため、実重量と推定重量とを容易に取得することができる。
(6)
本実施形態のX線検査システム1では、図1および図5に示すように、生産ラインを構成する前段に配置された重量チェッカ20から商品Gの実重量を取得して、X線検査装置10において算出された推定重量と実重量とに基づいて、X線検査装置10において比重が異なる成分ごとの重量を算出する。
これにより、生産ライン上で商品Gを搬送しながら、実重量の取得、推定重量の算出、および商品Gに含まれる比重が異なる成分ごとの重量の算出までを実施することが可能なX線検査システム1を構築することができる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、商品(被検査物)Gに対して照射されたX線の透過量を検出して、商品Gの推定重量を算出するX線検査装置10に対して本発明を適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、被検査物に対して照射されるX線の代わりに、テラヘルツ波やミリ波、サブミリ波、赤外線等の他のエネルギー波を用いて重量検査を実施する重量検査装置に対して、本発明を適用することも可能である。
ここで、被検査物に対してテラヘルツ波を照射して重量検査を実施する場合には、図12に示すような重量検査装置110を用いることができる。具体的には、重量検査装置110は、商品Gの計量を行うとともに、商品Gに含まれる複数の成分の含有比率および重量値を算出する装置であって、主として、検査ユニット(分光部)111と、計量部112と、表示部115と、制御部と、を備えている。
検査ユニット111は、商品Gが載置される計量台112aの上方に、筐体111aに支持された状態で配置されており、商品Gに対して電磁波の一種であるテラヘルツ波を照射し、その反射波を複数の波長成分を含む吸収スペクトルとして検出する。また、検査ユニット111は、内部に、テラヘルツ波照射部113と、テラヘルツ波検出部114と、を有している。テラヘルツ波照射部113は、計量台112a上に載置された商品Gに対して、上方からテラヘルツ波を照射する。テラヘルツ波検出部114は、テラヘルツ波照射部113から商品Gに対して照射されたテラヘルツ波の反射波を、複数の波長成分を含む吸収スペクトルとして検出し、図示しない制御部に対して検出結果を送信する。
計量部112は、内部にロードセル(図示せず)を搭載した計量装置であって、計量台112a上に載置された商品Gの計量を行う。また、計量部112は、制御部に対して商品Gごとの計量結果を送信する。
これにより、制御部において、テラヘルツ波の商品Gからの反射波を検出して吸収スペクトルを取得し、被検査物に含まれる各成分ごとの吸収スペクトルを比較することで、各成分の推定重量や含有比率等を求めることができる。
(B)
上記実施形態では、重量チェッカ20において測定された実重量と、X線検査装置(重量検査装置)10において算出された推定重量とに基づいて、商品Gに含まれる比重が異なる成分(肉部分、脂肪部分)ごとの重量を算出する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、重量チェッカにおいて測定された実重量と、重量検査装置において算出された推定重量との差を算出し、これが所定値以上である場合には、例えば、重量チェッカにおける実重量の測定異常有りと判定するような構成であってもよい。あるいは、上記実重量と推定重量との差が所定量以上である場合には、その差の大きさに応じて重量検査装置における推定重量を補正するような構成であってもよい。なお、この場合には、上述した制御コンピュータ30が、推定重量算出に関する異常の有無を判定する判定部として機能させればよい。
これらの場合でも、計測あるいは推定した重量値の精度を向上させることができるという、上記と同様の効果を得ることができる。
(C)
上記実施形態では、被検査物としての商品Gに含まれる各成分の重量を算出するために、上流側に配置された重量チェッカ20における測定結果を取得する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、重量検査装置内に被検査物の実重量値を計測する計量部を設けて、そこで測定された重量値を用いて、各成分の重量値や含有率を求めることもできる。
また、既に測定された被検査物のデータをメディア等を介して取得して、そのデータを実重量値として用いることもできる。
(D)
上記実施形態では、商品Gに対して照射されたX線(エネルギー波)を検出する検出部として、X線ラインセンサ14を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、エネルギー波の検出部としては、X線ラインセンサに限らず、反射波を撮影するカメラ等を用いることも可能である。
(E)
上記実施形態では、商品(被検査物)Gの推定重量を求める手法として、X線画像を用いた方法を採用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、X線画像を用いることなく、被検査物を透過したX線のラインセンサの各画素における検出量に基づいて、推定重量を算出することもできる。
(F)
上記実施形態では、商品(被検査物)Gの推定重量を求める際に、理想カーブを補正しながら推定重量の算出精度を向上させる例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、より簡易な方法によって推定重量を算出する重量検査装置であってもよい。
この場合でも、実重量と推定重量との比較によって、互いの測定精度の低下を判定したり、被検査物に含まれる成分ごとの重量値を高精度に算出したりすることができる。
(G)
上記実施形態では、成分ごとの重量値が算出される対象となる商品(被検査物)Gとして、肉部分と脂肪部分とを含む肉製品を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、袋入り粉末スープ等に含まれる比重が異なる複数の成分を含む他の被検査物であっても、上記と同様に各成分の質量を算出することができる。
また、被検査物に含まれる複数の成分についても、2種類に限定されるものではなく、3種類以上の比重が異なる成分を含む商品を、被検査物として用いることも可能である。
本発明の重量検査装置は、比重の異なる複数の成分を含む被検査物の成分ごとの重量を高精度に算出することができるという効果を奏することから、食料品や工業製品等の各種検査装置として広く適用可能である。