本発明は内燃機関システムの故障判定装置及び安全装置に関し、特にパルス過給手段を備えた内燃機関システムの故障判定装置及び安全装置に関する。
吸気弁よりも上流側の吸気通路に該吸気通路を連通、遮蔽してパルス過給を行うパルス過給手段を備えた内燃機関が知られている。吸気行程で吸気を行う際にこのパルス過給手段が吸気通路を全閉に遮蔽していると、吸気弁が開弁した後も燃焼室の負圧は増大する。さらに負圧が増大した状態でパルス過給手段が吸気通路を全開に連通すると、燃焼室に流入する吸気の流速が高められる。そしてこのとき吸気は一気に燃焼室に流入するため、一種の慣性過給効果が得られる。パルス過給はこのように吸気通路を連通、遮蔽することで行われ、例えば排気駆動式過給機による過給と比較して応答性が優れているという特徴を有している。このパルス過給に関し、例えば特許文献1ではパルス過給手段の構成例が開示されている。また特許文献2ではスロットル弁を構成要素とし、内燃機関の負荷に応じてスロットル弁の開度及び吸気制御弁(パルス過給手段に相当)の開弁時期を制御する内燃機関の吸気制御装置が提案されている。
特開2000−248946号公報
特開2005−61285号公報
ところで、パルス過給が上述したようにして行われることに起因して、パルス過給に係る故障が発生したときには以下に示すような問題が発生する。例えばパルス過給手段が全閉で流路を遮蔽したままの状態になってしまうと、筒内に吸気が供給されなくなることから、吸気が不足し燃焼ができなくなる。係る状態では気筒間の燃焼状態がアンバランスになることから内燃機関の振動が大きくなるほか、エミッションも悪化する。また、係る状態では内燃機関のトルクも低下してしまうことから、運転者がアクセルペダルを余計に踏み込み、さらに失火した筒内には燃料だけが噴射されるようになることから燃費も悪化する。
このようなパルス過給に係る故障が、例えばパルス過給手段の可動部の固着やパルス過給手段を駆動するためのアクチュエータの断線接触不良などを原因として散発的に発生すると、燃料過多の状態で燃焼が再開されることから異常燃焼が発生してしまい、最悪内燃機関が破損する虞がある。また、パルス過給手段が流路を全閉に遮蔽しないまでもある程度遮蔽したままの状態になれば、仮に失火を免れることができても、気筒間で発生する燃焼状態のアンバランスは避けられない。同様にパルス過給手段の作動に渋りや引っ掛かりといった動作不良が発生した場合にも、気筒間で燃焼状態のアンバランスが発生する。このため、これらの故障が発生した場合にも、内燃機関の振動が増大するほか、エミッションや燃費の悪化を招く虞がある。なお、図18に上記のパルス過給に係る故障をまとめた分析表を示す。
さらに万が一パルス過給に係る故障が発生した場合には、その故障が及ぼす影響を回避、或いは抑制だけでなく、最悪内燃機関が破損した場合などには車両の走行安全性が著しく損なわれるなどの重大性に鑑み、運転者が少なくとも安全な場所まで車両を退避できるような、或いは自走が十分可能な程度の故障であれば例えばサービス工場まで安全に自走できるような適切な手段を確保すべきである。しかしながら、このようにパルス過給に係る故障はその影響が比較的深刻な事態を招く虞があるにも関わらず、係る故障に配慮した技術は特に見当たらない。
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、パルス過給に係る故障及び該故障の故障状態や、パルス過給に係る故障及び該故障の程度を判定することが可能な内燃機関システムの故障判定装置、及びパルス過給手段に係る故障の故障状態や程度に応じて車両を好適に退避走行させることを可能にする内燃機関システムの安全装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明は内燃機関と、該内燃機関の吸気弁よりも上流側の吸気通路を連通、遮蔽してパルス過給を行うパルス過給手段とを有して構成される内燃機関システムで、パルス過給に係る故障を判定する内燃機関システムの故障判定装置であって、前記内燃機関の各気筒の燃焼状態に基づいて、パルス過給に係る故障の有無を判定するパルス過給故障判定手段を備えることを特徴とする。ここでパルス過給に係る故障が発生した場合には、パルス過給が意図通りに行われないことに起因して、故障したパルス過給手段に対応する気筒の燃焼状態は、他の気筒の燃焼状態と比較して異なってくることになる。係る現象に着目した本発明によれば、パルス過給に係る故障の有無を判定することが可能である。
また本発明は前記パルス過給故障判定手段が、前記パルス過給手段がパルス過給を行うように制御される運転状態と、前記パルス過給手段がパルス過給を行うように制御されない運転状態とで気筒間の燃焼状態を判定することで、パルス過給に係る故障であるか否かを判別してもよい。ここで気筒間の燃焼状態に異常が発生する場合としては、パルス過給に係る故障による場合だけでなく、例えば燃料噴射弁の故障など燃料噴射に係る故障による場合も考えられる。これに対して本発明によれば、パルス過給に係る故障であるか否かを判別することが可能である。
また本発明はさらに前記パルス過給故障判定手段が、パルス過給に係る故障あり、と判定した場合に、パルス過給に係る故障の故障状態を判定する故障状態判定手段を備えてもよい。本発明によれば、判定した故障状態に応じて適宜の対応を取ることが可能である。
また本発明は前記内燃機関の各気筒の燃焼状態を、燃焼圧センサを利用して燃焼圧で検知してもよい。また燃焼状態を検知するにあたっては、具体的には例えば本発明のように燃焼圧センサを利用して燃焼圧で検知することが好適である。
また本発明は内燃機関と、該内燃機関の吸気弁よりも上流側の吸気通路を連通、遮蔽してパルス過給を行うパルス過給手段とを有して構成される内燃機関システムでパルス過給に係る故障が発生した場合に、前記内燃機関システムを備える車両を退避走行させることを可能にするための内燃機関システムの安全装置であって、前記パルス過給に係る故障の故障状態に応じて、前記車両を退避走行させるための条件を決定する退避走行条件決定手段を備えることを特徴とする。
本発明によれば、例えば内燃機関の破損にまで至らない故障に対しては、車両を退避走行させるための条件(以下、単に退避走行条件とも称す)を、警告灯を点灯することとすることで、運転者は係る故障の発生を知ることができ、以って車両を退避走行させることが可能になる。またこのように警告灯を点灯すれば、サービス工場などで早期にメンテナンスを受けることを促すことができ、軽度の故障であれば自走してメンテナンスを受けに行くことも可能になる。なお、退避走行条件として運転者に故障を知らせるための手段を利用することは、警告灯を点灯することに限られず、例えば音声で知らせることや所謂ナビゲーションシステムの表示部を利用して知らせるなど、適宜の手段を利用することとしてよい。
また本発明によれば、故障したパルス過給手段の故障状態が流路を全閉で遮蔽したままの状態である場合には、退避走行条件にさらに例えば内燃機関に対する燃料噴射量の総量を制限することや、故障したパルス過給手段に対応する気筒への燃料噴射を停止することなどを含めるようにすることで、故障の影響が内燃機関の破損といった事態にまで及ぶことを抑制できるとともに、車両を安全な場所まで退避走行させることが可能になる。すなわち本発明によれば、このようにして故障状態に応じて車両を好適に退避走行させることを可能にできる。
この点、本発明は前記パルス過給に係る故障の故障状態が閉故障である場合に、前記退避走行条件決定手段が、前記パルス過給手段のうち、閉故障が発生しているパルス過給手段に対応する気筒への燃料噴射を禁止すること、及び前記内燃機関に対する燃料噴射量の総量を制限することを、前記車両を退避走行させるための条件として決定することが好ましい。
また本発明は内燃機関と、該内燃機関の吸気弁よりも上流側の吸気通路を連通、遮蔽してパルス過給を行うパルス過給手段とを有して構成される内燃機関システムで、パルス過給に係る故障を判定する内燃機関システムの故障判定装置であって、前記パルス過給手段の作動に応じて変化する前記内燃機関システムの所定の状態について検出された検出値と、該検出値に対応するとともに、パルス過給に係る故障がない場合に前記内燃機関システムの状態に応じて予測される予測値とを比較することで、パルス過給に係る故障について判定するパルス過給故障判定手段を備えることを特徴とする。
ここでパルス過給に係る故障が発生した場合には、パルス過給が意図通りに行われないことに起因して、パルス過給手段の作動に応じて変化する内燃機関システムの所定の状態に変化が表れる。このため係る所定の状態について検出した検出値はパルス過給に係る故障と相関関係があるといえる。したがってこの検出値をパルス過給に係る故障がない場合に予測される予測値と比較すれば、パルス過給に係る故障の有無を判定することができる。本発明は係る点に着目したものであり、本発明によれば、パルス過給に係る故障について判定することができる。また本発明によれば、判定結果に基づき警告灯を点灯させることなどによって、パルス過給手段に係る故障の発生について運転者に知らせることも可能になる。
また本発明は具体的には例えば、前記パルス過給手段の作動に応じて変化する前記内燃機関システムの所定の状態が、前記パルス過給手段の状態であり、前記検出値が前記パルス過給手段が吸気通路を連通する動作に要した時間であってよい。そしてこの場合には検出値の性質上、前記パルス過給故障判定手段が、前記検出値と前記予測値とを比較することで、前記パルス過給手段に係る吸気通路連通時の応答遅れについて判定することが好適である。なお、この応答遅れは具体的には例えばパルス過給手段の渋りによる動作不良に基づき発生するため、本発明によれば具体的にはパルス過給手段の渋りによる動作不良を応答遅れに含んだ形で判定できる。
また本発明は前記パルス過給故障判定手段が、前記パルス過給手段に応答遅れがあることを判定した場合には、該応答遅れの程度について判定する故障程度判定手段をさらに備えることが好適である。これにより、応答遅れの程度に応じて異なるフェールセーフ制御等を適用することが可能になる。
また本発明は請求項10記載の内燃機関システムの故障判定装置とともに用いられる内燃機関システムの安全装置であって、前記故障程度判定手段が、応答遅れの程度が軽度であることを判定した場合に、当該判定に係るパルス過給手段の制御動作を補正する制御動作補正手段を備えることを特徴とする。
ここで、応答遅れの程度が軽度である場合とは、応答遅れがあっても、その程度がパルス過給手段の制御動作を補正することにより、所望の空気量を確保できる程度の遅れである場合を意味するものである。この点、パルス過給手段に応答遅れがあった場合に、その程度が軽度であるにも関わらず、燃料噴射を禁止したり燃料噴射量を制限したりすると、内燃機関のトルクが低下することから、車両を退避走行させようとする運転者にとって却って不都合な結果になる虞がある。しかしながら、そのままの状態では気筒間の燃焼状態がアンバランスになり、この結果、内燃機関の振動や排気エミッションが悪化することを許容することになってしまう。
これに対して本発明によれば、所望の空気量が確保できるようにパルス過給手段の制御動作を補正することで、内燃機関の振動や排気エミッションが悪化することを抑制できる。また本発明によれば、警告灯の点灯などによって故障の発生に気付いた運転者が車両を退避走行させるにあたって、却って不都合な結果になることを回避できる。なお、請求項記載の「とともに用いられる」とは、内燃機関システムの故障判定装置と内燃機関システムの安全装置とが例えば同じ制御装置で実現されている場合も含むものである。
また本発明は請求項10記載の内燃機関システムの故障判定装置とともに用いられる内燃機関システムの安全装置であって、前記故障程度判定手段が、応答遅れの程度が軽度でないことを判定した場合に、少なくとも当該判定に係るパルス過給手段に対応する気筒へ噴射する燃料の噴射量を制限する燃料噴射量制限手段を備えることを特徴とする。本発明によれば、応答遅れの程度が軽度でなかった場合でも、燃料噴射量を制限することで気筒間の燃焼状態のアンバランス度合いを低減することができ、これにより内燃機関の振動や排気エミッションの悪化を抑制しつつ、車両の退避走行を可能にすることができる。
なお、本発明は故障程度判定手段が、応答遅れの程度が軽度でないことを判定した場合に、当該判定に係るパルス過給手段の制御動作を補正する制御動作補正手段をさらに備えてもよい。本発明によれば、制御動作を補正することによって所望の空気量までは得られないものの、相応の空気量をパルス過給によって確保できる。このため本発明によれば、燃料噴射量の制限度合いを緩和できることから、内燃機関の出力をより大きく確保でき、以って車両の退避走行をより好適に可能にすることができる。
また本発明は前記パルス過給手段の作動に応じて変化する前記内燃機関システムの所定の状態が、前記パルス過給手段よりも下流側の吸気通路の状態であり、前記検出値が、前記パルス過給手段が吸気通路を連通するときに対応する圧力であってもよい。そしてこの場合には検出値の性質上、前記パルス過給故障判定手段が、前記検出値と前記予測値とを比較することで、前記パルス過給手段に係る吸気通路遮蔽時の密閉不良について判定することが好適である。なお、この密閉不良は具体的には例えばパルス過給手段へのデポジットの固着や異物噛み込みによって発生するため、本発明によれば具体的にはパルス過給手段へのデポジットの固着や異物噛み込みを密閉不良に含んだ形で判定できる。
また本発明は前記パルス過給故障判定手段が、前記パルス過給手段に密閉不良があることを判定した場合に、該密閉不良の程度について判定する故障程度判定手段をさらに備えることが好適である。これにより、密閉不良の程度に応じて異なるフェールセーフ制御等を適用することが可能になる。
また本発明は請求項15記載の内燃機関システムの故障判定装置とともに用いられる内燃機関システムの安全装置であって、前記故障判定手段が、密閉不良の程度が軽度でないことを判定した場合に、当該判定に係るパルス過給手段でパルス過給を行うための制御を禁止するパルス過給制御禁止手段と、少なくとも当該判定に係るパルス過給手段に対応する気筒へ噴射する燃料の噴射量を制限する燃料噴射量制限手段とを備えることを特徴とする。
ここで、密閉不良の程度が軽度である場合とは、密閉不良があっても、その程度がパルス過給によって所望の空気量を確保できる程度の不良である場合を意味するものである。この点、本発明によれば、密閉不良の程度が軽度ではなかった場合には、パルス過給制御を禁止するとともに燃料噴射量を制限することで気筒間の燃焼状態のアンバランス度合いを低減することができ、以って内燃機関の振動や排気エミッションの悪化を抑制しつつ、車両の退避走行を可能にすることができる。また本発明によれば、密閉不良の程度が軽度であった場合には特段の制御を行わないため、軽度の密閉不良が発生しているパルス過給手段で継続してパルス過給を行うことができる。このため本発明によれば、警告灯の点灯などによって故障の発生に気付いた運転者が車両を退避走行させるにあたって、却って不都合な結果になることを回避できる。
なお、パルス過給制御禁止手段は、当該判定に係るパルス過給手段でパルス過給を行うための制御を禁止するとともに、さらに吸気通路を連通するように当該判定に係るパルス過給手段を制御することが好ましい。これにより、当該判定に係るパルス過給手段が吸気の妨げにならないようにして、より多くの空気量を確保できる。そしてこの場合には燃料噴射量の制限度合いを緩和できることから、内燃機関の出力をより大きく確保でき、以って車両の退避走行をより好適に可能にすることができる。
また本発明は前記パルス過給手段の作動に応じて変化する前記内燃機関システムの所定の状態が、判定対象とする前記パルス過給手段に対応する気筒で燃焼が行われたときの前記内燃機関の運転状態であり、前記検出値が、判定対象とする前記パルス過給手段に対応する気筒で燃焼が行われたときに発生するトルクと相関関係を有するトルク相関値であってもよい。そしてこの場合には検出値の性質上、前記パルス過給故障判定手段が、前記検出値と前記予測値とを比較することで、前記パルス過給手段に閉故障があるか否か(パルス過給手段が吸気通路を遮蔽したままの状態になっているか否か)を判定することが好適である。
また本発明は請求項18記載の内燃機関システムの故障判定装置とともに用いられる内燃機関システムの安全装置であって、前記パルス過給故障判定手段が、前記パルス過給手段に閉故障があることを判定した場合に、当該判定に係るパルス過給手段に対応する気筒への燃料噴射を禁止する燃料噴射禁止手段と、前記内燃機関に対する燃料噴射量の総量を制限する燃料噴射量制限手段とを備えることを特徴とする。本発明によれば、閉故障があった場合には、上記のように燃料噴射量を禁止及び制限することで故障の影響が内燃機関の破損といった事態にまで及ぶことを抑制できるとともに、車両を安全な場所まで退避走行させることが可能になる。
本発明によれば、パルス過給に係る故障及び該故障の故障状態や、パルス過給に係る故障及び該故障の程度を判定することが可能な内燃機関システムの故障判定装置、及びパルス過給手段に係る故障の故障状態や程度に応じて車両を好適に退避走行させることを可能にする内燃機関システムの安全装置を提供できる。
ECU1Aを内燃機関システム100Aとともに模式的に示す図である。
ECU1Aで行われる処理をフローチャートで示す図である。
気筒間異常判別関数をフローチャートで示す図である。
パルスチャージ異常対応関数をフローチャートで示す図である。
故障状態がパルスチャージ弁15Aに係る断線である場合に対応してECU1Aで行われる処理をフローチャートで示す図である。
クランク角度の変化に応じた燃焼圧の変化の一例を示す図である。
パルスチャージ弁15B作動時の開度変化を模式的に示す図である。
補正後のパルスチャージ弁15Bの開度変化を模式的に示す図である。
パルスチャージ使用領域のマップデータを模式的に示す図である。
ECU1Bで行われる処理をフローチャートで示す図である。
サブルーチンとして定義した動作不良検出関数をフローチャートで示す図である。
サブルーチンとして定義したパルスチャージ動作不良時対応関数をフローチャートで示す図である。
パルスチャージ弁15C作動時のポート圧力の変化を開度変化とともに模式的に示す図である。
密閉不良が発生していた場合のパルスチャージ弁15C作動時のポート圧力の変化を開度変化とともに模式的に示す図である。
ECU1Cで行われる処理をフローチャートで示す図である。
サブルーチンとして定義した動作不良検出関数をフローチャートで示す図である。
サブルーチンとして定義したパルスチャージ動作不良時対応関数をフローチャートで示す図である。
パルス過給に係る故障を分析表で示す図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、ECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)1Aで実現されている本実施例に係る内燃機関システムの故障判定装置及び安全装置を、内燃機関システム100とともに模式的に示す図である。すなわち本実施例では、内燃機関システムの故障判定装置及び安全装置はともにECU1Aで実現されている。内燃機関システム100は吸気系10と、排気系20と、過給機30と、排気還流系40と、内燃機関50Aとを有して構成されている。吸気系10は、図示しないエアクリーナと、エアフロメータ11と、インタークーラ12と、ディーゼルスロットル13と、内燃機関50Aの各気筒に連通する吸気ポート及びインテークマニホールド14と、パルスチャージ弁15Aと、これらの構成の間に適宜配設される吸気管などを有して構成されている。エアフロメータ11はエアフロセンサ11aと大気温センサ11bとを有して構成されており、吸気流量を計測するとともに計測した吸気流量に応じた信号を出力する。インタークーラ12は、過給機30によって圧縮された吸気を冷却するための構成である。
ディーゼルスロットル13は、ECU1Aの制御のもと内燃機関50Aに供給する全吸気流量を調整するための構成であり、スロットル弁13a及び電動モータ13bや図示しないスロットル開度センサなどを有して構成されている。インテークマニホールドは吸気を内燃機関50Aの各気筒に分配するための構成である。またインテークマニホールドの上流側には後述する排気還流系40を構成する接続管が接続されている。パルスチャージ弁15Aは、インテークマニホールドの各気筒に対応する吸気通路夫々に個別に配設されている。パルスチャージ弁15Aは吸気通路を連通、遮蔽してパルス過給を行うための構成である。パルスチャージ弁15Aは弁体15Aaとアクチュエータ15Abとを有して構成されている。
弁体15Aaは弁軸を介して吸気通路に回動自在に配設されている。パルスチャージ弁15A夫々の弁軸は互いに独立しており、これら弁軸にはアクチュエータ15Ab各々が個別に連結されている。このアクチュエータ15Abは、ECU1Aの制御のもと弁軸を駆動し、これにより弁体15Aaはパルス過給を行うように制御される。本実施例ではこのアクチュエータ15Abにステップモータを採用しているが、これに限られず、他の適宜のアクチュエータをアクチュエータ15Abとして適用してよい。また本実施例ではアクチュエータ15Abは図示しない弁状態検出センサを備えている。この弁状態検出センサは、弁体15Aaが流路を全閉に遮蔽している状態を検知する。本実施例ではパルスチャージ弁15Aでパルス過給手段を実現している。
排気系20は、内燃機関50Aの各気筒に連通する排気ポート及びエキゾーストマニホールド21と、図示しない触媒や消音器と、これらの構成の間に適宜配設される排気管などを有して構成されている。エキゾーストマニホールドは、各気筒からの排気を合流させるための構成であり、各気筒に対応させて分岐した排気通路を下流側で一つの排気通路に集合させている。また排気管には後述する排気還流系40を構成する接続管が接続されている。
過給機30は可変容量型ターボチャージャであり、コンプレッサロータ31と、タービンロータ32と、VN(Variable Nozzle)33と、VNアクチュエータ34とを有して構成されている。過給機30は、コンプレッサロータ31を収納するコンプレッサ部が吸気系10に、タービンロータ32を収納するタービン部が排気系20に、夫々介在するようにして配設されている。コンプレッサロータ31とタービンロータ32とは回転軸35で連結されており、タービンロータ32が排気によって駆動されると、回転軸35を介してコンプレッサロータ31が駆動し吸気を圧縮する。過給機30はタービン部にVN33を備えている。VN33はタービン容量を変更するための構成である。VNアクチュエータ34はECU1Aの制御のもと、VN33を駆動するための構成である。
本実施例では、過給機30をタービンロータ32の外周周りに複数のVN33を備えた構造の可変容量型ターボチャージャで実現している。この可変容量型ターボチャージャでは、タービンロータ32に排気を導くための流路が隣り合うVN33間夫々に形成されており、これら流路夫々の面積をVN33で同時に変更することでタービン容量が変更されるようになっている。但しこれに限られず、過給機30は例えばタービン部のスクロール入口に、スクロール入口の流路面積を変更する可変ノズルを備えた構造の可変容量型ターボチャージャであってもよい。また、過給機30は可変容量型ターボチャージャ以外のターボチャージャであってもよい。
排気還流系40はEGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラ41と、EGRバルブ42と、これらの間に適宜配設される接続管などを有して構成されている。EGRクーラ41は排気還流される排気を冷却するための構成である。EGRバルブ42は排気還流を行うための構成であり、ECU1Aの制御のもと流路を連通、遮蔽する。内燃機関50Aはシリンダブロック51と、図示しないシリンダヘッドと、ピストン52と、燃料噴射弁53と、グロープラグ54と、燃焼圧センサ55と、カムシャフト56と、コネクティングロッド57と、クランクシャフト58と、オイルパン59とを有して構成されている。本実施例に示す内燃機関50Aは直列4気筒のディーゼルエンジンである。但しこれに限られず、内燃機関50Aは本発明を実施可能な内燃機関であれば特に限定されず、例えばガソリンエンジンなど他の適宜の内燃機関であってよい。また内燃機関50Aは他の適宜の気筒配列構造及び気筒数を有していてもよい。また図1では内燃機関50Aに関し、各気筒の代表としてシリンダ51aについて要部を示しているが本実施例では他の気筒についても同様の構造となっている。
シリンダブロック51には、略円筒状のシリンダ51aが形成されている。シリンダ51a内には、ピストン52が収容されている。シリンダブロック51の上面にはシリンダヘッドが固定されている。燃焼室(図示省略)は、シリンダブロック51、シリンダヘッド及びピストン52に囲まれた空間として形成されている。シリンダヘッドには燃焼室に吸気を導くための吸気ポートのほか、燃焼したガスを燃焼室から排気するための排気ポートが形成され、これら吸排気ポートの流路を開閉するための図示しない吸気弁及び排気弁が配設されている。なお、内燃機関50Aは1気筒あたりに適宜の数量の吸排気弁を備えた吸排気弁構造であってよい。
燃料噴射弁53は、燃焼室の上方略中央から燃焼室内に噴射孔を突出させた状態でシリンダヘッドに配設されている。燃料噴射弁53は燃料を噴射するための構成であり、ECU1Aの制御のもと、適宜の燃料噴射時期に開弁されて燃料を噴射する。また、燃料噴射量はECU1Aの制御のもと燃料噴射弁53が閉弁されるまでの間の開弁時間の長さで調節される。なお燃料の噴射圧は図示しない燃料噴射ポンプによって調節され、燃料噴射ポンプはECU1Aの制御のもと噴射圧を適宜の噴射圧に調節する。グロープラグ54は内燃機関50A始動時に燃焼室を暖め燃料の自然着火性を向上させるための構成である。燃焼圧センサ55は燃焼圧(以下、筒内圧とも称す)を検出するための構成であり、燃焼で発生した燃焼圧を検知する。カムシャフト56は図示しないカムを備え、クランクシャフト58の回転と同期して回転する。カムシャフト56の回転に伴い、カムは吸排気弁を適宜開閉する。またカムシャフト56には、気筒判別センサ60が検知するためのドグ56aを備えた図示しない検知用部材が設けられている。ECU1Aでは、この気筒判別センサ60と回転数NEに比例した出力パルスを発生するクランク角センサ61との出力信号に基づいて、気筒を判別するとともに各気筒の上死点等を認識する。なお、図示省略してある動弁機構については適宜のものが適用されてよい。
ピストン52は、コネクティングロッド57を介してクランクシャフト58に連結されており、ピストン52の往復運動はクランクシャフト58で回転運動に変換される。オイルパン59は潤滑オイルを貯留するための構成であり、シリンダブロック51下部に固定されている。また内燃機関50Aには、上述の燃焼圧センサ55や気筒判別センサ60やクランク角センサ61のほか、内燃機関50Aの水温を検出するための水温センサ62など各種のセンサが配設されている。
ECU1Aは、図示しないCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、入出力回路などを有して構成されている。ECU1Aは主として内燃機関50Aを制御するための構成であり、本実施例では燃料噴射弁53やグロープラグ54や燃料噴射ポンプのほか、電動モータ13bやアクチュエータ15AbやVNアクチュエータ34やEGRバルブ42なども制御している。ECU1Aにはこれらの構成のほか、各種の制御対象が駆動回路(図示省略)を介して接続されている。また、ECU1Aにはスロットル開度センサや、弁状態検出センサや、エアフロセンサ11aや、大気温センサ11bや、燃焼圧センサ55や、気筒判別センサ60や、クランク角センサ61や、水温センサ62などの各種のセンサが接続されている。なお、図示の都合上これらの接続は適宜省略してある。
ROMはCPUが実行する種々の処理が記述されたプログラムを格納するための構成であり、本実施例では燃料噴射弁53から噴射する燃料の噴射時期や噴射量や噴射圧を制御するための燃料噴射弁制御用プログラムなどで構成された内燃機関50制御用のプログラムのほか、パルス過給を行うためのパルスチャージ弁15制御用プログラムや、内燃機関50Aの各気筒の燃焼状態に基づき、パルス過給に係る故障の有無を判定するためのパルス過給故障判定用プログラムや、パルス過給故障判定用プログラムに基づき、パルス過給に係る故障あり、と判定された場合に、パルス過給に係る故障の故障状態を判定するための故障状態判定用プログラムや、後述する燃料噴射量制限用プログラムや、燃料噴射停止用プログラムや、退避走行条件決定用プログラムなども格納している。但し、これらのプログラムは一体として組み合わされていてもよい。
パルス過給故障判定用プログラムは、具体的には内燃機関50Aの各気筒の燃焼状態に基づき、パルスチャージ弁15Aがパルス過給を行うように制御される運転状態(以下、単にパルスチャージ使用領域とも称す)と、またはパルスチャージ弁15Aがパルス過給を行うように制御されない運転状態(以下、単にパルスチャージ使用領域外とも称す)とで気筒間の燃焼状態を判定することで、パルス過給に係る故障であるか否かを判別するように作成されている。本実施例では内燃機関50Aの各気筒の燃焼状態は燃焼圧センサ55により燃焼圧で検知され、燃焼圧の異常(以下、気筒異常とも称す)の有無を判定することで気筒間の燃焼状態が判定される。
故障状態判定用プログラムは、具体的には故障状態が故障判定されたパルスチャージ弁15Aが流路を全閉で遮蔽している状態(以下、単に閉故障とも称す)であるか否かを判定するためのプログラムと、パルスチャージ弁15Aに係る断線を検出するためのプログラムとを有して構成されている。但しこれに限られず、さらに例えば故障判定されたパルスチャージ弁15Aの流路の遮蔽度合いや、故障判定されたパルスチャージ弁15Aの渋りや引っ掛かりなどを判定するためのプログラムを有して構成されていてもよい。この場合には例えば異常判定した燃焼圧の大きさや燃焼圧の異常の発生頻度などによって故障状態を推定するようにこれらのプログラムを作成することが好ましい。なお、パルスチャージ弁15Aはパルス過給を行う際に高速で全開、全閉に弁体15Aaを駆動するといった構成上の性質から、正常な使用状態では通常開度を検出することまで要しない。これに対して例えば、敢えて全閉状態だけでなく流路の遮蔽度合いを検知可能な弁状態検出センサを備えることで、このセンサの出力信号に基づき故障判定されたパルスチャージ弁15Aの流路の遮蔽度合いを判定するようにすることも可能である。
燃料噴射量制限用プログラムは、内燃機関50Aに対する燃料噴射量の総量を制限するためのプログラムである。また燃料噴射停止用プログラムは、故障判定されたパルスチャージ弁15Aに対応する気筒への燃料噴射を停止するためのプログラムである。なお、これらのプログラムは燃料噴射弁制御用プログラムの一部として構成されていてもよい。退避走行条件決定用プログラムは、故障状態判定用プログラムに基づき判定されたパルス過給に係る故障の故障状態に応じて、退避走行条件を決定するためのプログラムとなっている。本実施例では退避走行条件は以下のように設定されている。
まず、故障状態が閉故障である場合には、警告灯であるダイアグノーシス兼エンジンチェックランプを点灯することと、内燃機関50Aに対する燃料噴射量の総量を制限することと、故障判定されたパルスチャージ弁15Aに対応する気筒への燃料噴射を停止することとを退避走行条件としている。また、故障状態がパルスチャージ弁15Aに係る断線である場合には、ダイアグノーシス兼エンジンチェックランプを点灯することと、内燃機関50Aに対する燃料噴射量の総量を制限することとを退避走行条件としている。また、故障状態がそれ以外の場合には、ダイアグノーシス兼エンジンチェックランプを点灯することを退避走行条件としている。なお、故障状態の分類と故障状態の分類に対応させる退避走行条件とはこれらに限定されるものではなく、適宜のものとしてよい。本実施例ではCPUとROMとRAM(以下、単にCPU等と称す)と内燃機関50制御用のプログラムとで、各種の検出手段や判定手段や制御手段などが実現されており、特にCPU等とパルス過給故障判定用プログラムとでパルス過給故障判定手段が、CPU等と故障状態判定用プログラムとで故障状態判定手段が、CPU等と退避走行条件決定用プログラムとで退避走行条件決定手段が夫々実現されている。
次に、パルス過給に係る故障の有無と故障状態とを判定するとともに、判定された故障状態に応じて車両を退避走行させることを可能にするにあたって、ECU1Aで行われる処理を図2に示すフローチャートを用いて詳述する。ECU1Aは、ROMに格納された上述のパルス過給故障判定用プログラム等に基づき、CPUがフローチャートに示す処理を実行することで、パルス過給に係る故障を判定するとともに故障状態に応じて車両を退避走行させることを可能にする。なお、本実施例では、本フローチャートに示す処理を内燃機関50A始動中に常時繰り返し実行するようにしているが、これに限られず例えば所定の条件に基づき本フローチャートに示す処理を実行するようにしてもよい。
CPUは燃焼圧センサ55の出力電圧に基づき各気筒の燃焼圧をピークホールドして検出するとともに記憶する処理を実行する(ステップSa11)。本ステップで1燃焼サイクルに亘って発生した燃焼圧のピーク値が気筒毎に検出される。図6はクランク角度の変化に応じた燃焼圧の変化の一例を示す図である。図6に示す例では、本ステップで燃焼圧のピーク値は略6,000kPaと検出される。なお、燃焼圧のピーク値は圧力単位に換算した上で検出する必要はなく、燃焼圧を指標する燃焼圧センサ55の出力電圧の大きさで検出すればよい。したがって図6に示す例では、燃焼圧のピーク値は6Vとして検出されるとともに記憶される。また各気筒の燃焼圧のピーク値は、少なくとも1燃焼サイクル以上記憶できるようにすることが好ましい。
続いてCPUは、燃料噴射量が一定であるか否かを判定する処理を実行する(ステップSa12)。本ステップで、各気筒すべてで燃焼が行われたときに燃料噴射量が一定であったか否かが判定され、これにより、気筒間で燃焼圧を比較判定できる状態であるか否かが判定される。ステップSa12で否定判定であれば、CPUはステップSa12で肯定判定されるまでの間、繰り返しステップSa11及びSa12に示す処理を実行する。一方ステップSa12で肯定判定であれば、CPUは各気筒の燃焼圧を比較する処理を実行する(ステップSa13)。続いてCPUは、ステップSa13の比較処理の結果に基づき、気筒異常の有無を判定する処理を実行する(ステップSa14)。具体的には各気筒の燃焼圧が同等である場合には、気筒異常なし、と判定する。一方、パルスチャージ弁15Aが故障して流路を大きく遮蔽しているような場合には、故障したパルスチャージ弁15Aに対応する気筒で吸気不足や失火が発生するため、その気筒の燃焼圧は他の気筒の燃焼圧と比較して大きく低下する。このため、本ステップでは燃焼圧が同等でない場合には、さらに燃焼圧が他の気筒と比較して1気筒のみ低いときにその燃焼圧が低い気筒を、気筒異常あり、と判定する。ステップSa14で否定判定であれば、本フローチャートに示す処理は終了する。一方ステップSa14で肯定判定であれば、CPUはサブルーチンとして定義した気筒間異常判別関数を実行する(ステップSa15)。
図3はサブルーチンとして定義した気筒間異常判別関数をフローチャートで示す図である。CPUはパルスチャージ使用領域であるか否かを判定する処理を実行する(ステップSa21)。具体的には内燃機関50Aの運転状態(本実施例では回転数NE及び負荷)に応じて定義したパルスチャージ使用領域のマップデータをROMに格納しており、CPUはこのマップデータを参照することでパルスチャージ使用領域であるか否かを判定する。なお、本実施例ではこのマップデータで、パルスチャージ使用領域を低回転数、高負荷運転領域に設定している。ステップSa21で否定判定であれば、CPUは燃料噴射に係る異常と判別及び判定する処理を実行し(ステップSa24)、燃料噴射に係る異常があることを示す燃料噴射異常フラグをONにする処理を実行する(ステップSa25)。
なお本実施例では、内燃機関50A始動中に図2に示すフローチャートを常時実行するようにしていることから、低回転数、高負荷運転領域のパルスチャージ使用領域の前にまずパルスチャージ使用領域外でステップSa14に示す気筒異常の判定が行われることになる。これにより本実施例ではパルスチャージ使用領域とパルスチャージ使用領域外とで燃焼状態を判定できるようになっており、このためステップSa21に示す判定処理を行うことで、気筒異常の原因がパルス過給に係る故障であるか否かを判別及び判定することができるようになっている。また、本実施例では燃料噴射に係る異常も検出できることから、燃料噴射に係る異常が発生したときの現象に着目し、例えばステップSa14でさらにある気筒の燃焼圧が他の気筒と比較して相対的に高いか否かや、ある閾値よりも全体的に高いか否かなどを判定してもよく、その結果、いずれかの判定で肯定判定した場合にステップSa15に示す気筒間異常判別関数を実行するようにしてもよい。
一方、ステップSa21で肯定判定であれば、パルス過給に係る故障あり、と判別及び判定され、CPUはさらにパルスチャージ弁15Aが全閉状態であるか否かを判定する処理を実行する(ステップSa22)。パルスチャージ弁15Aが全閉状態であるか否かは、弁状態検出センサの出力信号に基づき判定可能である。ステップSa22で肯定判定であれば、CPUは閉故障であることを示すパルスチャージ閉フラグをONにする処理を実行する(ステップSa23)。ステップSa23に続き、またはステップSa22で否定判定である場合には、CPUはサブルーチンとして定義したパルスチャージ異常対応関数を実行する(ステップSa26)。
図4はサブルーチンとして定義したパルスチャージ異常対応関数をフローチャートで示す図である。CPUは故障要因をSRAM(Static Random Access Memory)に書き込む処理を実行する(ステップSa31)。具体的には本ステップで、例えばエラー内容やエラーコードを書き込むようにすることが可能である。なお、SRAMはバッテリー電源が切れない限り記憶が保持できるようになっており、本実施例ではECU1AはこのSRAMも備えている。続いてCPUは図示しないインストゥルメントパネルに設けられたダイアグノーシス兼エンジンチェックランプを点灯する処理を実行する(ステップSa32)。これにより、運転者に故障を知らせることができるとともに、サービス工場などでは故障原因を確認可能なことを知らせることができる。続いてCPUはパルスチャージ閉フラグがONになっているか否かを判定する処理を実行する(ステップSa33)。否定判定であれば、故障状態が内燃機関50Aの破損に繋がる虞のある深刻な故障状態ではないと判定され、CPUはチェックランプの点灯以外に特段の処理を行うことなく、パルスチャージ異常対応関数を終了する。
一方、ステップSa33で肯定判定であれば、CPUはアクセル開度に対応するセンサ出力の大きさを制限する処理、換言すれば内燃機関50Aに対する燃料噴射量の総量を制限する処理を実行する(ステップSa34)。さらにCPUは、故障判定した気筒に対応する燃料噴射弁53からの燃料噴射を停止する処理を実行する(ステップSa35)。ステップSa34及びSa35で燃料噴射量の総量を制限するとともに燃料噴射を停止することで、故障から回復した際に異常燃焼が発生し、最悪内燃機関50Aが破損することを回避できる。ステップSa35に示す処理を実行した後には、パルスチャージ異常対応関数を終了する。これにより図3に示す気筒間異常判別関数も終了し、さらに図2に示すフローチャートも終了する。
上述した図2から図4に示すフローチャートでは、気筒異常の原因が燃料噴射弁53に係る故障であるか、パルス過給に係る故障であるかを判別し、さらにパルス過給に係る故障である場合には、故障状態が閉故障であるか否かまでを判定した。一方、故障状態はさらに詳細には、パルスチャージ弁15Aに係る断線や弁体15Aaや弁軸などの可動部の固着などがある。例えば排気還流系40や過給機30のコンプレッサ部入口側から排気循環をさせるLPL(Low Pressure Loop)EGRシステムなどを内燃機関システム100が備えている場合には、HC(未燃燃料)やPM(粒子状物質)が可動部に付着するため、特に可動部の固着が発生しやすい。これに対して可動部が固着して閉故障が発生した場合には、上述した図2から図4のフローチャートに示す処理で故障及び故障状態を判定できるとともに、車両を退避走行させることも可能になる。一方、故障状態が断線である場合には、図2から図4のフローチャートに示す処理とは別個に例えば次に示すフローチャート処理を実行することで対処できる。図5は故障状態がパルスチャージ弁15Aに係る断線である場合に対応してECU1Aで行われる処理をフローチャートで示す図である。
CPUはパルスチャージ弁15Aに係る断線を検出する、すなわち断線しているか否かを判定する処理を実行する(ステップSa41)。具体的には例えばパルスチャージ弁15Aに対して断線検出用の電流を通電する処理を実行し、導通確認を行うことで断線しているか否かを判定することができる。ステップSa41で否定判定であれば、CPUは本フローチャートに示す処理を終了する。一方ステップSa41で肯定判定であれば、CPUはダイアグノーシス兼エンジンチェックランプを点灯する処理を実行する(ステップSa42)。これにより、運転者に故障を知らせることができる。続いてCPUは燃料噴射量の総量を制限する処理を実行する(ステップSa43)。本ステップでは、燃料噴射量の総量を制限することで、例えばパルス過給を行わない運転領域のみで内燃機関50Aを運転できるようにすることなどが可能である。これにより、車両を退避走行させることが可能になるとともにさらにエミッションや燃費の悪化を抑制することができる。ステップSa43に示す処理を実行した後には、CPUは本フローチャートに示す処理を終了する。
なお、故障状態については閉故障のほか、さらにパルスチャージ弁15Aがある程度流路を連通したままの状態で動作しなくなる状態や、渋りやひっかかりといったパルスチャージ弁15Aの動作不良なども故障状態の一態様として挙げられる。これらの故障状態に関しては、本実施例では閉故障と比較して車両の走行安全性に及ぶ悪影響が比較的小さいものとしてステップSa33で閉故障と大別している。すなわち本実施例では、これらの故障状態ではチェックランプを点灯し運転者に早期のメンテナンスを促す以外、特段の処理を実行しないようにしている。但しこれに限られず、これらの故障状態であると判定した場合に、例えば図5に示したフローチャートと同様に燃料噴射量の総量を制限したりするようにしてもよい。これにより、車両を退避走行させることが可能になるとともにエミッションや燃費の悪化を抑制することができる。以上により、パルス過給に係る故障及び該故障の故障状態を判定することが可能な、またパルス過給手段に係る故障の故障状態に応じて車両を退避走行させることを好適に可能にするECU1Aを実現可能である。
本実施例に係る内燃機関システム100Bは内燃機関50Aの代わりに内燃機関50Bを、ECU1Aの代わりにECU1Bを有して構成されている点以外、内燃機関システム100Aと実質的に同一のものとなっている。内燃機関50Bは、パルスチャージ弁15Aの代わりにパルスチャージ弁15Bを備えている点以外、実施例1に係る内燃機関50Aと実質的に同一のものとなっている。またパルスチャージ弁15Bは弁状態検出センサとして全閉状態だけでなく、吸気通路の遮蔽度合いを検知可能な弁状態検出センサを備えている点以外、パルスチャージ弁15Aと実質的に同一のものとなっている。この弁状態検出センサはECU1Bに接続されている。なお、これら内燃機関システム100B、内燃機関50B、ECU1B及びパルスチャージ弁15Bについては図示省略する。
ECU1Bは、ROMが実施例1で前述したパルス過給故障判定用プログラム、故障状態判定用プログラム及び退避走行条件決定用プログラムの代わりに、以下に示すパルス過給故障判定用プログラムと、予測値算出用プログラムと、故障程度判定用プログラムと、制御動作補正用プログラムと、燃料噴射量制限用プログラムと、これらのプログラムに関連する検出用プログラムとを格納している点以外、実施例1に係るECU1Aと実質的に同一のものとなっている。なお、ECU1AのROMにさらにこれらのプログラムを格納することも可能である。次にROMが格納するプログラムについて説明するにあたって、まずパルスチャージ弁15B作動時の開度変化について図7を用いて詳述する。
図7は、パルスチャージ弁15Bの開度変化を模式的に示す図である。図7では渋りによる動作不良が発生した場合のパルスチャージ弁15Bの開度変化を実線で示すとともに、パルス過給に係る故障がない場合のパルスチャージ弁15Bの開度変化を比較のために破線で同時に示している。
dT_CONVENTIONAL_OPENは目標開度到達時間であり、パルス過給に係る故障がない場合に、パルスチャージ弁15Bが吸気通路を連通する動作に要する時間を示している。目標開度到達時間はROMに格納された目標開度到達時間マップデータに燃料噴射量及び回転数NEに応じて予め設定されている。
dT_real_open_pulseは実目標開度到達時間であり、パルスチャージ弁15Bが吸気通路を連通する動作に実際に要した時間を示している。この点、パルスチャージ弁15Bに渋りによる動作不良が発生した場合には、目標開度に到達するまでの時間が長くなる結果、図示のように実目標開度到達時間が目標開度到達時間よりも長くなる。この実目標開度到達時間は、弁状態検出センサの出力に基づきECU1Bで検出される。
dT_OPEN_PULSEはパルス過給に係る故障がない場合のパルスチャージ弁15Bの開弁時間を示している。これに対してdT_open_pulseはパルスチャージ弁15Bの実開弁時間であり、パルスチャージ弁15Bに渋りによる動作不良が発生した場合には、パルスチャージ弁15Bの実開弁時間(dT_open_pulse)はdT_OPEN_PULSEよりも短くなる。
上記を踏まえ、次にROMが格納するプログラムについて詳述する。本実施例に係るパルス過給故障判定用プログラムは、パルスチャージ弁15Bの作動に応じて変化する内燃機関システム100Bの所定の状態について検出された検出値と、この検出値に対応するとともに、内燃機関システム100Bの状態に応じてパルス過給に係る故障がない場合に予測される予測値とを比較することで、パルス過給に係る故障について判定するように作成されている。
この点、本実施例ではこのパルス過給故障判定用プログラムにおいて、パルスチャージ弁15Bの作動に応じて変化する内燃機関システム100Bの所定の状態が、作動時のパルスチャージ弁15Bの状態となっており、また検出値が実目標開度到達時間(dT_real_open_pulse)となっている。
予測値算出用プログラムは、目標開度到達時間マップデータから、パルスチャージ弁15B作動時の内燃機関システム100Bの状態に応じて実目標開度到達時間に対応する目標開度到達時間を取得することで、予測値を予測するように作成されている。すなわち本実施例では目標開度到達時間が予測値となっている。この予測値算出用プログラムは具体的にはまずパルスチャージ弁15B作動時に燃料噴射量及び回転数NEを取得するとともに、取得した燃料噴射量及び回転数NEに基づき、目標開度到達時間マップデータから目標開度到達時間を取得するように作成されている。これにより、パルスチャージ弁15B作動時の内燃機関システム100Bの状態に応じて予測値が予測されることになる。
一方、パルス過給故障判定用プログラムはパルスチャージ弁15Bに係る吸気通路連通時の応答遅れについて判定するように作成されている。この点、応答遅れについて判定するために、パルス過給故障判定用プログラムは具体的には実目標開度到達時間が、目標開度到達時間(dT_CONVENTIONAL_OPEN)と許容誤差(dT_CONTROL)の和よりも大きいか否かを判定することによって、実目標開度到達時間と目標開度到達時間とを比較するとともに、これによって応答遅れがあるか否かを判定するように作成されている。なお、許容誤差は実目標開度到達時間のばらつきを考慮して予め設定されている。
故障程度判定用プログラムは、パルス過給故障判定用プログラムに基づき応答遅れがあると判定された場合に、この応答遅れの程度について判定するように作成されている。この点、応答遅れの程度について判定するために、故障程度判定用プログラムは、具体的には実目標開度到達時間から目標開度到達時間を引くことによって、パルスチャージ弁追加作動時間(pulse_add_need_time)を算出するとともに、算出したパルスチャージ弁追加作動時間が第1の所定値(ADD_NEED_TIME_LIMIT)よりも小さいか否かを判定するように作成されている。
パルスチャージ弁追加作動時間が第1の所定値よりも小さい場合には、応答遅れの程度が軽度であると判定され、パルスチャージ弁追加作動時間が第1の所定値よりも大きい場合には、応答遅れの程度が軽度でないと判定される。
制御動作補正用プログラムは、故障判定用プログラムに基づき応答遅れの程度が軽度であることが判定された場合に、当該判定に係るパルスチャージ弁15Bの制御動作を補正するように作成されている。この点、パルスチャージ弁15Bの制御動作を補正するために、制御動作補正用プログラムは具体的には、実開弁時間(dT_open_pulse)にパルスチャージ弁追加作動時間(pulse_add_need_time)を加えることにより、実開弁時間を補正及び更新するように作成されている。これにより、実開弁時間(dT_open_pulse)が開弁時間(dT_OPEN_PULSE)と同等になるように補正及び更新される結果、パルスチャージ弁15Bの制御動作がパルスチャージ弁追加作動時間を加えた分だけ遅れて吸気通路を遮蔽するように補正される。補正後のパルスチャージ弁15Bの開度変化を参考として図8に模式的に示す。
なお、パルスチャージ弁15Bの開弁タイミングを早めることで実開弁時間を補正及び更新することもできるが、上記のように実開弁時間を補正及び更新すれば、パルスチャージ弁15Bが作動する直前のパルスチャージ弁15Bの前後差圧が小さくなってしまうことを回避できる。すなわち、パルスチャージ弁15Bの閉弁タイミングを遅らせることで実開弁時間を補正及び更新すれば、パルス過給効果が小さくなってしまうことを回避できる。
一方、制御動作補正用プログラムは、故障程度判定用プログラムに基づき、応答遅れの程度が軽度でないことが判定された場合にも、当該判定に係るパルスチャージ弁15Bの制御動作を補正するように作成されている。このとき制御動作補正用プログラムは具体的には、実開弁時間(dT_open_pulse)に第1の所定値(ADD_NEED_TIME_LIMIT)を加えることにより、実開弁時間を補正及び更新するように作成されている。これにより、実開弁時間(dT_open_pulse)が開弁時間(dT_OPEN_PULSE)に近づくように補正及び更新されるとともに、パルスチャージ弁15Bの制御動作が第1の所定値(ADD_NEED_TIME_LIMIT)を加えた分だけ遅れて吸気通路を遮蔽するように補正される。このように実開弁時間を補正すれば、パルス過給によって相応の空気量を確保できるようになることから、燃料噴射量の制限度合いを緩和でき、この結果、内燃機関の出力をより大きく確保できる。
燃料噴射量制限用プログラムは、故障程度判定用プログラムに基づき、応答遅れの程度が軽度でないことが判定された場合に、当該判定に係るパルスチャージ弁15Bに対応する気筒へ噴射する燃料の噴射量を制限するように作成されている。またこの燃料噴射量制限用プログラムは、さらに当該判定に係るパルスチャージ弁15Bに対応する気筒以外の気筒へ噴射する燃料の噴射量も制限するように作成されている。これにより、排気エミッションの悪化及びトルクの変動を抑制できる。
本実施例ではCPU等とROMに格納されたプログラムとで各種の制御手段や判定手段や検出手段や算出手段などが実現されており、特にCPU等とパルス過給故障判定用プログラムとでパルス過給故障判定手段が、CPU等と故障程度判定用プログラムとで故障程度判定手段が、CPU等と制御動作補正用プログラムとで制御動作補正手段が、CPU等と燃料噴射量制限用プログラムとで燃料噴射量制限手段が夫々実現されている。また本実施例ではECU1Bで内燃機関システムの故障判定装置及び安全装置がともに実現されている。
次にECU1Bで行われる処理を図10に示すフローチャートを用いて詳述する。ECU1Bは、ROMに格納された上述のパルス過給故障判定用プログラム等に基づき、CPUがフローチャートに示す処理を実行することで、パルスチャージ弁15Bに係る吸気通路連通時の応答遅れ及びその程度について判定するとともに、燃料噴射量を制限して内燃機関システム100Bを備える車両の好適な退避走行を可能にする。なお、本実施例では本フローチャートに示す処理を所定の条件に基づき実行できるように構成しているが、これに限られず例えば本フローチャートに示す処理を内燃機関50B始動中に常時繰り返し実行するようにしてもよい。また本フローチャートに示す処理の中には周知技術であることなどから、これまでの記載で特段明示しなかったプログラムに基づいて行われる処理もあるが、本フローチャートに示す処理はすべてROMに格納されたプログラムに基づきCPUが実行するものとなっている。
CPUはパルスチャージ使用領域であるか否かを判定する処理を実行する(ステップSb11)。パルスチャージ使用領域はROMに格納されたパルスチャージ使用領域のマップデータ(図9参照)に内燃機関50の運転状態(本実施例では回転数NE及び燃料噴射量)に応じて予め設定されており、CPUは本ステップでこのマップデータを参照することでパルスチャージ使用領域であるか否かを判定する。ステップSb11で否定判定であれば、特段の処理を要しないため本フローチャートに示す処理を終了する。
一方、ステップSb11で肯定判定であれば、CPUはサブルーチンとして定義した動作不良検出関数を実行する(ステップSb12)。図11はサブルーチンとして定義した動作不良検出関数をフローチャートで示す図である。CPUはパルスチャージ弁渋りフラグ(Flag_pulse_rough)をOFFにすることで、フラグを初期化する処理を実行する(ステップSb21)。続いてCPUは燃料噴射量及び回転数NEを取得するとともに、目標開度到達時間マップデータから目標開度到達時間(dT_CONVENTIONAL_OPEN)を取得する処理を実行する(ステップSb22)。さらにCPUは弁状態検出センサの出力に基づき、実目標開度到達時間(dT_real_open_pulse)を検出する処理を実行する(ステップSb23)。
続いてCPUは実目標開度到達時間と目標開度到達時間とを比較する処理を実行する(ステップSb24)。本ステップでCPUは、具体的には実目標開度到達時間(dT_real_open_pulse)が、目標開度到達時間と許容誤差の和(式:dT_CONVENTIONAL_OPEN+dT_CONTROL)よりも大きいか否かを判定する処理を実行する。すなわち実目標開度到達時間と目標開度到達時間との比較には、誤差を考慮して行われる比較も含まれる。ステップSb24で肯定判定であれば、パルスチャージ弁15Bに吸気通路連通時の応答遅れが発生していると判定される。この場合、CPUはパルスチャージ弁渋りフラグ(Flag_pulse_rough)をONにするとともに、車両のインストゥルメントパネルに設けられたチェックランプを点灯するための処理を実行し(ステップSb25)、その後、本フローチャートに示す処理を終了する。これにより異常が発生していることを運転者に知らせることができる。
一方、ステップSb24で否定判定であれば、パルスチャージ弁15Bに吸気通路連通時の応答遅れが発生していないと判定され、CPUはそのまま本フローチャートに示す処理を終了する。動作不良検出関数の終了により、CPUは図10のフローチャートに示す処理を再開する。CPUはパルスチャージ弁渋りフラグ(Flag_pulse_rough)がONになっているか否かを判定する処理を実行する(ステップSb13)。否定判定であれば、特段の処理を要しないため本フローチャートに示す処理を終了する。一方、肯定判定であれば、CPUはサブルーチンとして定義したパルスチャージ動作不良時対応関数を実行する(ステップSb14)。
図12はサブルーチンとして定義したパルスチャージ動作不良時対応関数をフローチャートで示す図である。CPUは実目標開度到達時間(dT_real_open_pulse)から目標開度到達時間(dT_CONVENTIONAL_OPEN)を引くことによって、パルスチャージ弁追加作動時間(pulse_add_need_time)を算出する処理を実行する(ステップSb31)。続いてCPUはパルスチャージ弁追加作動時間が制御範囲内にあるか否かを判定する処理を実行する(ステップSb32)。パルスチャージ弁追加作動時間が制御範囲内であるか否かを判定するにあたって、CPUは具体的にはパルスチャージ弁追加作動時間(pulse_add_need_time)が第1の所定値(ADD_NEED_TIME_LIMIT)よりも小さいか否かを判定する処理を実行する(ステップSb32)。肯定判定であれば、応答遅れの程度が軽度であると判定される。このときCPUは実際の開弁時間(dT_open_pulse)にパルスチャージ弁追加作動時間(pulse_add_need_time)を加えることによって、実際の開弁時間(dT_open_pulse)を補正及び更新する処理を実行する(ステップSb33)。
これにより、パルスチャージ弁15Bの制御動作がパルスチャージ弁追加作動時間を加えた分だけ遅れて吸気通路を遮蔽するように補正される。またこれにより、気筒間の空気量を同等にすることができることから、内燃機関の振動や排気エミッションが悪化することを抑制できる。また応答遅れの程度が軽度であった場合には、燃料噴射量が特段制限されないため、内燃機関のトルクも低下しない。このためチェックランプの点灯に気付いた運転者が車両を退避走行させるにあたって、却って不都合な結果になることを回避できる。ステップSb33に示す処理を実行した後、CPUは本フローチャートに示す処理を終了する。
一方、ステップSb32で否定判定であれば、応答遅れの程度が軽度でないと判定される。このときCPUは実開弁時間(dT_open_pulse)に第1の所定値(ADD_NEED_TIME_LIMIT)を加えることによって、実開弁時間(dT_open_pulse)を補正及び更新する処理を実行する(ステップSb34)。これにより、パルスチャージ弁15Bの制御動作が第1の所定値を加えた分だけ遅れて吸気通路を遮蔽するように補正される。またこれにより、相応の空気量をパルス過給によって確保できることから、燃料噴射量の制限を緩和することができ、以って応答遅れの程度が軽度でなかった場合でも、内燃機関のトルクをより大きく確保できるようになる。
続いてCPUは更新した実開弁時間(dT_open_pulse)と、過給圧(eqa_epim)とに基づき、過給空気量(eqafm_egnpulse)を算出する処理を実行する(ステップSb35)。この過給空気量(eqafm_egnpulse)は、ROMに格納された過給空気量マップデータに実開弁時間(dT_open_pulse)と、過給圧(eqa_epim)とに応じて予め設定されている。さらにCPUは算出した過給空気量に基づき、空燃比最大噴射量(eqafm_eqafm)を算出する処理を実行する(ステップSb36)。この空燃比最大噴射量(eqafm_eqafm)はROMに格納された空燃比最大噴射量マップデータに過給空気量(eqafm_egnpulse)に応じて予め設定されている。これにより燃料噴射量が適正な量に制限される。
このため応答遅れの程度が軽度でなかった場合でも、内燃機関の振動や排気エミッションが悪化することを抑制しつつ、車両の退避走行を可能にすることができる。その後、パルスチャージ動作不良時対応関数の終了により、図10に示すフローチャートも終了する。以上により、パルス過給に係る故障及び該故障の程度を判定することが可能な、またパルス過給手段に係る故障の故障状態及び程度に応じて車両を好適に退避走行させることを可能にするECU1Bを実現できる。
本実施例に係る内燃機関システム100Cは内燃機関50Aの代わりに内燃機関50Cを、ECU1Aの代わりにECU1Cを有して構成されている点以外、内燃機関システム100Aと実質的に同一のものとなっている。内燃機関50Cは、パルスチャージ弁15Aよりも下流側の吸気ポートの圧力を検知するための圧力センサをさらに備えている点以外、内燃機関50Aと実質的に同一のものとなっている。この圧力センサはECU1Cに接続されている。なお、内燃機関50Cはパルスチャージ弁15Aの代わりに、パルスチャージ弁15Bを備えていてもよい。またこれら内燃機関システム100C、内燃機関50C、ECU1C及び圧力センサについては図示省略する。また本実施例では説明の便宜上、以下、パルスチャージ弁15Aをパルスチャージ弁15Cと称することにする。
ECU1Cは、ROMが実施例1で前述したパルス過給故障判定用プログラム、故障状態判定用プログラム及び退避走行条件決定用プログラムの代わりに、以下に示すパルス過給故障判定用プログラムと、予測値算出用プログラムと、故障程度判定用プログラムと、パルス過給制御禁止用プログラムと、燃料噴射量制限用プログラムと、これらのプログラムに関連する検出用プログラムとを格納している点以外、実施例1に係るECU1Aと実質的に同一のものとなっている。なお、ECU1AまたはECU1BのROMにさらにこれらのプログラムを格納することも可能である。次にROMが格納するプログラムについて説明するにあたって、まずパルスチャージ弁15C作動時のポート圧力の変化について図13を用いて詳述する。
図13はパルスチャージ弁15C作動時のポート圧力の変化を開度変化とともに模式的に示す図である。ポート圧力は吸気通路のうち、パルスチャージ弁15Cよりも下流側の吸気ポートにおける吸気管圧力である。本実施例ではこのポート圧力が圧力センサで検知されるとともにECU1Cで検出される。平均インマニ圧力は吸気通路のうち、パルスチャージ弁15Cよりも上流側のインテークマニホールドにおける吸気管圧力の平均値である。パルスチャージ弁15Cが吸気通路を遮蔽しているときには、クランク角度が大きくなるに従ってポート圧力が次第に低下する。次に所定のクランク角度でパルスチャージ弁15Cが吸気通路を連通すると、ポート圧力は上昇する。さらにパルスチャージ弁15Cが開弁している間、ポート圧力は平均インマニ圧力を上回った後、低下し、平均インマニ圧力と同等の大きさになる。
係るパルスチャージ弁15C作動時のポート圧力の変化において、minP_real_pulseは最小吸気管圧力であり、本実施例ではこの最小吸気管圧力が、パルスチャージ弁15Cが吸気通路を連通するときに対応する圧力となっている。
maxP_real_pulseは最大吸気管圧力であり、具体的にはパルスチャージ弁15C作動時の吸気管圧力のうち、最大の吸気管圧力を示している。
dP_real_pulseは吸気管圧力差であり、具体的には最大吸気管圧力と最小吸気管圧力との差を示している。
dT_real_pulse_openは最大吸気管圧力到達時間であり、具体的にはポート圧力が最小吸気管圧力から最大吸気管圧力に到達するまでに要した時間を示している。最大吸気管圧力到達時間は、圧力センサの出力に基づきECU1Cで検出される。
ところで、これに対してパルスチャージ弁15Cにデポジットの固着や異物噛み込み等による密閉不良が発生していた場合には、パルスチャージ弁15C作動時のポート圧力は図14に示すように変化する。図14は密閉不良が発生していた場合のパルスチャージ弁15C作動時のポート圧力の変化を開度変化とともに模式的に示す図である。図14では密閉不良が発生していた場合のポート圧力を実線で示すとともに、密閉不良が発生していない場合のポート圧力を比較のために破線で示している。また図14ではさらにパルスチャージ弁15C作動時の吸入空気量の変化についても参考として同時に示している。
パルスチャージ弁15Cにデポジットの固着や異物の噛み込みがあった場合には、パルスチャージ弁15Cが完全に閉じないため、パルスチャージ弁15Cが吸気通路を遮蔽しているときの開度が若干大きくなり、隙間が発生する。この場合には、隙間を通じて吸気が流通してしまうことから、実線で示す密閉不良時のポート圧力は期待されるポート圧力よりも大きくなってしまう。この結果、密閉不良が発生している場合には、パルスチャージ弁15Cの前後差圧が小さくなる。このためパルスチャージ弁15C作動時には、密閉不良時のポート圧力が期待されるポート圧力よりも小さくなるとともに、密閉不良時の吸入空気量が期待される吸入空気量よりも小さくなってしまう。すなわち、パルス過給効果が小さくなってしまうことになる。
上記を踏まえて、次にROMが格納するプログラムについて詳述する。本実施例に係るパルス過給故障判定用プログラムは、パルスチャージ弁15Cの作動に応じて変化する内燃機関システム100Cの所定の状態について検出された検出値と、この検出値に対応するとともに、内燃機関システム100Cの状態に応じてパルス過給に係る故障がない場合に予測される予測値とを比較することで、パルス過給に係る故障について判定するように作成されている。この点、本実施例ではこのパルス過給故障判定用プログラムにおいて、パルスチャージ弁15Cの作動に応じて変化する内燃機関システム100Cの所定の状態が、パルスチャージ弁15Cよりも下流側の吸気ポートの状態となっており、また検出値が最小吸気管圧力(minP_real_pulse)となっている。
予測値算出用プログラムは、通常最小吸気管圧力マップデータから、パルスチャージ弁15C作動時の内燃機関システム100Cの状態に応じて最小吸気管圧力に対応する通常最小吸気管圧力(P_CONVENTIONAL_PULSE)を取得することで、予測値を予測するように作成されている。すなわち本実施例では通常最小吸気管圧力が予測値となっている。通常最小吸気管圧力は、ROMに格納された通常最小吸気管圧力マップデータに燃料噴射量及び回転数NEに応じて予め設定されている。このため予測値算出用プログラムは具体的にはまずパルスチャージ弁15C作動時に燃料噴射量及び回転数NEを取得するとともに、取得した燃料噴射量及び回転数NEに基づき、通常最小吸気管圧力マップデータから通常最小吸気管圧力を取得するように作成されている。これにより、パルスチャージ弁15C作動時の内燃機関システム100Cの状態に応じて予測値が予測される。
一方、パルス過給故障判定用プログラムはパルスチャージ弁15Cに係る吸気通路遮蔽時の密閉不良について判定するように作成されている。この点、密閉不良について判定するために、パルス過給故障判定用プログラムは具体的には最小吸気管圧力(minP_real_pulse)が、通常最小吸気管圧力(P_CONVENTIONAL_PULSE)よりも大きいか否かを判定することによって、最小吸気管圧力と通常最小吸気管圧力とを比較するとともに、これによって密閉不良があるか否かを判定するように作成されている。
故障程度判定用プログラムは、パルス過給故障判定用プログラムに基づき、パルスチャージ弁15Cに密閉不良があることが判定された場合に、この密閉不良の程度について判定するように作成されている。この点、密閉不良の程度について判定するために、故障程度判定用プログラムは、具体的には慣性過給効果による推定空気量(Ga_cylinder)を算出するとともに、推定空気量が第2の所定値(NEED_GA_LIMIT)よりも大きいか否かを判定するように作成されている。推定空気量は、ROMに格納された推定空気量マップデータに吸気管圧力差(dP_real_pulse)と最大吸気管圧力到達時間(dT_real_pulse_open)とに応じて予め設定されている。
このため故障程度判定用プログラムは、推定空気量を算出するにあたってさらに具体的には、吸気管圧力差と最大吸気管圧力到達時間とに基づき、推定空気量マップデータから推定空気量を算出するように作成されている。
推定空気量が第2の所定値よりも小さい場合には、密閉不良の程度が軽度であると判定され、推定吸気量が第2の所定値よりも大きい場合には、密閉不良が軽度でないと判定される。
パルス過給制御禁止用プログラムは、故障程度判定用プログラムに基づき密閉不良が軽度でないと判定された当該判定に係るパルスチャージ弁15Cでパルス過給を行うための制御を禁止するように作成されている。またパルス過給制御禁止用プログラムは、さらに吸気通路を連通するように当該判定に係るパルスチャージ弁15Cを制御するように作成されている。これにより、当該判定に係るパルスチャージ弁15Cが吸気の妨げにならないようにして、より多くの空気量を確保できる。なお、故障程度判定用プログラムに基づき密閉不良の程度が軽度であることが判定された場合には、特段の制御は行われず、この結果、当該判定に係るパルスチャージ弁15Cでその後も継続してパルス過給が行われることになる。これは、軽度であると判定された場合には所望の空気量が得られるためである。
燃料噴射量制限用プログラムは、故障程度判定用プログラムに基づき、密閉不良の程度が軽度でないことが判定された場合に、当該判定に係るパルスチャージ弁15Cに対応する気筒へ噴射する燃料の噴射量を制限するように作成されている。またこの特定噴射制御用プログラムは、さらに当該判定に係るパルスチャージ弁15Cに対応する気筒以外の気筒へ噴射する燃料の噴射量も制限するように作成されている。これにより、排気エミッションの悪化及びトルクの変動を抑制できる。
本実施例ではCPU等とROMに格納されたプログラムとで各種の制御手段や判定手段や検出手段や算出手段などが実現されており、特にCPU等とパルス過給故障判定用プログラムとでパルス過給故障判定手段が、CPU等と故障程度判定用プログラムとで故障程度判定手段が、CPU等とパルス過給制御禁止用プログラムとでパルス過給制御禁止手段が、CPU等と燃料噴射量制限用プログラムとで燃料噴射量制限手段が夫々実現されている。また本実施例ではECU1Cで内燃機関システムの故障判定装置及び安全装置がともに実現されている。
次にECU1Cで行われる処理を図15に示すフローチャートを用いて詳述する。ECU1Cは、ROMに格納された上述のパルス過給故障判定用プログラム等に基づき、CPUがフローチャートに示す処理を実行することで、パルスチャージ弁15Cの密閉不良及びその程度について判定するとともに、パルス過給制御の禁止及び燃料噴射量の制限を行って内燃機関システム100Cを備える車両の好適な退避走行を可能にする。なお、本実施例では本フローチャートに示す処理を所定の条件に基づき実行できるように構成しているが、これに限られず例えば本フローチャートに示す処理を内燃機関50C始動中に常時繰り返し実行するようにしてもよい。また本フローチャートに示す処理の中には周知技術であることなどから、これまでの記載で特段明示しなかったプログラムに基づいて行われる処理もあるが、本フローチャートに示す処理はすべてROMに格納されたプログラムに基づきCPUが実行するものとなっている。
CPUはパルスチャージ使用領域であるか否かを判定する処理を実行する(ステップSc11)。本ステップでCPUは具体的には図8に示すパルスチャージ使用領域のマップデータを参照することでパルスチャージ使用領域であるか否かを判定する。ステップSc11で否定判定であれば、特段の処理を要しないため本フローチャートに示す処理を終了する。一方、ステップSc11で肯定判定であれば、CPUはサブルーチンとして定義した動作不良検出関数を実行する(ステップSc12)。
図16はサブルーチンとして定義した動作不良検出関数をフローチャートで示す図である。CPUはパルスチャージ弁密閉不良フラグ(Flag_pulse_open)をOFFにすることで、フラグを初期化する処理を実行する(ステップSc21)。続いてCPUは燃料噴射量及び回転数NEを取得するとともに、通常最小吸気管圧力マップデータから通常最小吸気管圧力(P_CONVENTIONAL_PULSE)を取得する処理を実行する(ステップSc22)。さらにCPUは圧力センサの出力に基づき、所定のクランク角度において最小吸気管圧力(minP_real_pulse)を検出する処理を実行する(ステップSc23)。
続いてCPUは最小吸気管圧力と通常最小吸気管圧力とを比較する処理を実行する(ステップSc24)。本ステップでCPUは具体的には最小吸気管圧力(minP_real_pulse)が、通常最小吸気管圧力(P_CONVENTIONAL_PULSE)よりも大きいか否かを判定する処理を実行する。ステップSc24で肯定判定であれば、密閉不良が発生していると判定される。この場合、CPUはパルスチャージ弁密閉不良フラグ(Flag_pulse_open)をONにするとともに、車両のインストゥルメントパネルに設けられたチェックランプを点灯するための処理を実行し(ステップSc25)、その後、本フローチャートに示す処理を終了する。これにより異常が発生していることを運転者に知らせることができる。
一方、ステップSc24で否定判定であれば、パルスチャージ弁15Cに密閉不良が発生していないと判定され、CPUはそのまま本フローチャートに示す処理を終了する。動作不良検出関数の終了により、CPUは図15のフローチャートに示す処理を再開する。CPUはパルスチャージ弁密閉不良フラグ(Flag_pulse_open)がONになっているか否かを判定する処理を実行する(ステップSc13)。否定判定であれば、特段の処理を要しないため本フローチャートに示す処理を終了する。一方、肯定判定であれば、CPUはサブルーチンとして定義したパルスチャージ動作不良時対応関数を実行する(ステップSc14)。
図17はサブルーチンとして定義したパルスチャージ動作不良時対応関数をフローチャートで示す図である。CPUは最小吸気管圧力(minP_real_pulse)、最大吸気管圧力(maxP_real_pulse)及び最大吸気管圧力到達時間(dT_real_pulse_open)を取得する処理を実行する(ステップSc31)。続いてCPUは最大吸気管圧力から最小吸気管圧力を引くことによって、吸気管圧力差(dP_real_pulse)を算出する処理を実行する(ステップSc32)。
さらにCPUは吸気管圧力差(dP_real_pulse)と最大吸気管圧力到達時間(dT_real_pulse_open)とに基づき、推定空気量マップデータから推定空気量(Ga_cylinder)を算出する処理を実行する(ステップSc33)。続いてCPUは推定空気量が制御範囲内にあるか否かを判定する処理を実行する(ステップSc34)推定空気量が制御範囲内にあるか否かを判定するにあたって、CPUは具体的には推定空気量(Ga_cylinder)が第2の所定値(NEED_GA_LIMIT)よりも大きいか否かを判定する。
肯定判定であれば、密閉不良の程度が軽度であると判定される。このときには所望の空気量が得られるため、CPUは特段の処理を行うことなく本フローチャートに示す処理を終了する。これにより、パルスチャージ弁15Cに密閉不良が発生していても、その程度が軽度であった場合には、その後継続してパルスチャージ弁15Cでパルス過給を行うことができる。このためチェックランプの点灯に気付いた運転者が車両を退避走行させるにあたって、却って不都合な結果になることを回避できる。
一方、ステップSc34で否定判定であれば、密閉不良の程度が軽度でないと判定される。このときCPUは当該判定に係るパルスチャージ弁15Cでパルス過給を行うための制御を禁止するとともに、当該判定に係るパルスチャージ弁15Cを全開に制御するための処理を実行する(ステップSc35)。これにより、密閉不良が発生しているパルスチャージ弁15Cが筒内に流入する吸気の妨げにならないようにしつつ、パルス過給制御を禁止できる。続いてCPUはエアフロメータ11の出力に基づき、空気量(eafm_ega)を算出する処理を実行する(ステップSc36)。さらにCPUは空気量(eafm_ega)に基づき、空燃比最大噴射量(eqafm_eqafm)を算出する処理を実行する(ステップSc37)。この空燃比最大噴射量(eqafm_eqafm)は、ROMに格納された空燃比最大噴射量マップデータに空気量(eafm_ega)に応じて予め設定されている。
これにより、燃料噴射量が適正な量に制限される。このためパルスチャージ弁15Cに密閉不良が発生し、さらにこの密閉不良の程度が軽度でなかった場合でも、内燃機関の振動や排気エミッションが悪化することを抑制しつつ、車両の退避走行を可能にすることができる。その後、パルスチャージ動作不良時対応関数の終了により、図15に示すフローチャートも終了する。以上により、パルス過給に係る故障及び該故障の程度を判定することが可能な、またパルス過給手段に係る故障の故障状態及び程度に応じて車両を好適に退避走行させることを可能にするECU1Cを実現できる。
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。例えばECU1が格納するパルス過給故障判定用プログラムにつき、パルスチャージ弁15の作動に応じて変化する内燃機関システム100の所定の状態及び検出値は、その他の適宜の状態及び検出値であってよい。具体的には例えばパルスチャージ弁15の作動に応じて変化する内燃機関システム100の所定の状態は、判定対象とするパルスチャージ弁15に対応する気筒で燃焼が行われたときの内燃機関50の運転状態であってもよく、またこのときの検出値は、判定対象とするパルスチャージ弁15に対応する気筒で燃焼が行われたときに発生するトルクと相関関係を有するトルク相関値(例えば筒内圧やクランク角速度)であってもよい。この場合には検出値と予測値とを比較することで、例えばパルスチャージ弁15に閉故障があるか否かを判定できる。
またこの場合には、係るパルス過給故障判定用プログラムに基づき、パルスチャージ弁15に閉故障があることが判定された場合に、当該判定に係るパルスチャージ弁15に対応する気筒への燃料噴射を禁止する燃料噴射禁止用プログラムと、内燃機関50に対する燃料噴射量の総量を制限する燃料噴射量制限用プログラムとをさらにECU1のROMに格納してもよい。そしてこの場合には係るパルス過給故障判定用プログラムとCPU等とでパルス過給故障判定手段を、係る燃料噴射禁止用プログラムとCPU等とで燃料噴射禁止手段を、係る燃料噴射量制限用プログラムとCPU等とで燃料噴射量制限手段を夫々実現することができ、ECU1で内燃機関システムの故障判定装置及び安全装置を実現できる。また内燃機関システムの故障判定装置と安全装置とは、別個のECUで夫々実現されていてもよく、複数のECUで夫々実現されていてもよい。
上記課題を解決するために本発明は内燃機関と、該内燃機関の吸気弁よりも上流側の吸気通路を連通、遮蔽する弁体を備えたパルスチャージ弁を開閉駆動してパルス過給を行うパルス過給手段とを有して構成される内燃機関システムで、パルス過給に係る故障を判定する内燃機関システムの故障判定装置であって、前記パルス過給手段が吸気通路を連通する動作に要した時間を検出する検出手段と、該検出手段の検出値に対応するとともに、前記パルス過給に係る故障がない場合に前記内燃機関システムの状態に応じて予測される予測値とを比較することで、パルス過給に係る故障について判定するパルス過給故障判定手段を備えることを特徴とする。ここでパルス過給に係る故障が発生した場合には、パルス過給が意図通りに行われないことに起因して、故障したパルス過給手段に対応する気筒の燃焼状態は、他の気筒の燃焼状態と比較して異なってくることになる。係る現象に着目した本発明によれば、パルス過給に係る故障の有無を判定することが可能である。
具体的には例えば、前記パルス過給手段の作動に応じて変化する前記内燃機関システムの所定の状態が、前記パルス過給手段の状態であり、前記検出値が、前記パルス過給手段が吸気通路を連通する動作に要した時間である。そしてこの場合には検出値の性質上、前記パルス過給故障判定手段が、前記検出値と前記予測値とを比較することで、前記パルス過給手段に係る吸気通路連通時の応答遅れについて判定することが好適である。なお、この応答遅れは具体的には例えばパルス過給手段の渋りによる動作不良に基づき発生するため、本発明によれば具体的にはパルス過給手段の渋りによる動作不良を応答遅れに含んだ形で判定できる。
また本発明は上記内燃機関システムの故障判定装置とともに用いられる内燃機関システムの安全装置であって、前記故障程度判定手段が、応答遅れの程度が軽度であることを判定した場合に、当該判定に係るパルス過給手段の制御動作を補正する制御動作補正手段を備えることを特徴とする。
前記所定の補正期間とは、前記パルスチャージ弁の開弁指令時点からパルス過給に係る故障がない場合に実際に前記パルスチャージ弁が開弁されることが予測される時点までの開弁予測動作時間に対し、前記パルスチャージ弁の開弁指令時点から実際に前記パルスチャージ弁が開弁されるまでの開弁実測動作時間まで遅延した遅延時間に応じて決定されるものである。
また、前記遅延時間が前記内燃機関システムの運転状態に応じて決定される所定の上限値より大きいと判断される場合には、該所定の上限値を基に前記遅延時間が決定される。