JPWO2007148734A1 - 金属微粒子及び生体物質抽出用の磁気ビーズ、並びにそれらの製造方法 - Google Patents

金属微粒子及び生体物質抽出用の磁気ビーズ、並びにそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

磁性金属の核粒子に二層以上の層を被覆してなる金属微粒子であって、前記二層以上の被覆層のうち最外層はケイ素及びアルミニウムの酸化物を含有し、Al/Si比が原子比で0.01〜0.2であることを特徴とする金属微粒子、及び磁性金属の核粒子と、前記核粒子の外側に第1の被覆層とを有する一次粒子の表面に、ケイ素アルコキシドとアルミニウムアルコキシドとの混合物をコートした後に、これらを加水分解することによりケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層を設けることを特徴とする金属微粒子の製造方法。

Description

本発明は、核酸、蛋白質成分、細胞等の生体物質を抽出する担体等として好適な金属微粒子及び磁気ビーズ、並びにそれらの製造方法に関する。
従来から、核酸、蛋白質成分、細胞等を精製分離する技術として、カラム分離法、遠心分離法、電気泳動法、磁気分離法等が良く知られている。磁気分離法では、生体物質と特異的に結合するリンカーと称される官能基を表面に修飾した磁気ビーズ、又は最表面にケイ素の酸化物からなる被膜層を有する磁気ビーズが用いられる。これらの磁気ビーズを、核酸、蛋白質成分、細胞等の生体物質を含有する溶液と混合し、表面に前記生体物質を吸着させた後、磁力により磁気ビーズを液体から分離し、前記生体物質の回収を行う。磁気ビーズを用いる方法は、使用する器具が簡便であり、短時間かつ容易に生体物質を回収できるという利点を有する。
特開2001-78761号は、超常磁性金属酸化物の表面をシリカで被覆してなる、0.5〜15.0μmの粒子直径、50〜500 nmの細孔直径及び200〜5000 mm3/gの細孔容積を有する核酸結合性磁性シリカ粒子担体を開示している。超常磁性金属酸化物を用いた磁気ビーズは、磁性金属を用いたものに比べると磁気特性が低いために、目的物質の分離精製工程において、磁力を用いた固液分離に長時間を要するといった問題や磁気応答性が低いため目的物質の精製能率が低減するといった問題がある。
特開2004-135678号は、金属酸化物又は金属からなる磁性粒子に表面がSiO2、B2O3、K2O、CaO、Al2O3及びZnOの少なくとも1種から構成されるガラスをコーティングした、粒子の75重量%超が0.5〜15μmの粒子サイズを有する磁気ビーズを開示している。特開2004-135678号は、コアとなる金属粒子として、特にカルボニル鉄が好適であると記載している。カルボニル鉄を粒子核として用いた磁気ビーズは、優れた磁気特性を発揮しうるが、金属粒子核をケイ素酸化物によって被覆しただけでは耐食性は十分とは言えない。特に、生体物質を分離精製する工程において、カオトロピック塩(核酸等の抽出物質とケイ素酸化物とを特異的に吸着させる働きを有するグアニジウム塩等)を含有する高塩濃度の溶液(溶解吸着液)中に磁気ビーズが浸漬されたときに、金属の酸化や溶液中への溶出により磁気特性が低下するという問題が生じる。また、溶出した磁性金属元素が緩衝液と錯体を形成することにより、生体物質の精製分離に支障をきたすという問題も生じる。このため高い耐食性を有する磁気ビーズが望まれている。
上記のような問題を解決するため、欧州特許出願公開第1568427は磁性金属のコアに炭素及び/又は窒化ホウ素を主体とした第一の被覆層及びその外側に酸化ケイ素の第二の被覆層を形成してなる金属微粒子を開示している。この金属微粒子は高い化学安定性と高い飽和磁化を兼ね備えているため、生体物質を分離精製する工程において高い磁気分離速度を有する。しかし、特に核酸等の生体物質の抽出に用いる磁気ビーズには、迅速に磁気分離できること及び化学的に安定であることに加えて、核酸等の回収量が多いことが求められるが、欧州特許出願公開第1568427に記載の金属微粒子は、核酸の回収量は必ずしも十分なものとは言えず、改良が望まれている。
特開2001-78790(対応:米国特許第5,234,809)は、カオトロピック物質の存在下においてシリカ粒子を核酸と結合させて核酸を抽出する方法を開示している。特開2001-78790は、シリカ粒子が小さければ小さいほど核酸と結合する粒子の有効面積が大きくなるため、核酸の高回収には有効であると記載している。しかしながら、例えばヒト全血を対象とするような場合、すなわち核酸含有量が多い場合やヒトゲノムのような長鎖の核酸を抽出する場合においては、例えば粒径が0.2〜10μmの小サイズ粒子を使用すると、凝集物(核酸とシリカ粒子の複合体)が形成され、粒子の再分散性が著しく低下してしまい核酸の回収性能が低減してしまう。この課題を解決するためには、例えば2〜200μmの比較的大きな粒径を有する粒子を採用することが有効であると示されている。しかしながら、大きな粒径の粒子を使用した場合には、核酸の抽出工程において粒子が溶媒中で沈降してしまい核酸との結合反応効率が低減してしまう。
従って本発明の目的は、高い飽和磁化を実現しやすい磁性金属を核粒子として用いた場合でも、化学的安定性に優れるとともに、核酸等の生体物質の抽出能に優れた金属微粒子及び磁気ビーズを提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者等は、磁性金属の核粒子に二層以上の層を被覆してなる金属微粒子において、ケイ素酸化物を主体とする最外層に酸化アルミニウムを含有させることにより核酸の回収率が飛躍的に向上することを見いだし、本発明に想到した。
すなわち本発明の金属微粒子は、磁性金属の核粒子に二層以上の層を被覆してなる金属微粒子であって、前記二層以上の被覆層のうち最外層はケイ素及びアルミニウムの酸化物を含有し、Al/Siの原子比で0.01〜0.2であることを特徴とする。ケイ素酸化物にアルミニウムを含有することにより、強固な被覆を形成することができる。
金属微粒子のX線光電子分光法によって測定したSi2pの結合エネルギーは102.4〜103.4 eVであるのが好ましい。被覆層を構成するSiのSi2p結合エネルギー値を上記範囲内の値とすることにより、生体物質の抽出能が向上する。
前記金属微粒子の50%粒径[体積基準のメディアン径(d50)]が0.1〜10μmであるのが好ましい。前記金属微粒子の90%粒径[体積基準の90%積算値における粒径]が0.15〜15μmであるのが好ましい。
前記核粒子は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれた少なくとも1種の磁性金属を含むのが好ましい。
本発明の金属微粒子のゼータ電位はpH7.5の0.01 M KCl水溶液中において-40〜-10 mVであるのが好ましい。ゼータ電位の値を前記範囲とすることによって、高い生体物質抽出能を発揮する。
本発明の金属微粒子の飽和磁化は80〜200 A・m2/kgであるのが好ましい。飽和磁化の値が上記範囲内であると、磁力を用いた生体物質の回収を短時間で行うことができる。飽和磁化の値が80 A・m2/kg未満の場合には、生体物質の回収に長時間を要する。磁性金属粒子へ無機材料等の被覆を施すことにより、飽和磁化の値は磁性金属微粒子単体の場合よりも減少する。より好ましくは、100〜200 A・m2/kgとすることで、磁力を用いた生体物質の回収時間を短縮でき、高い生体物質抽出能を発現する。
前記二層以上の被覆層のうち前記磁性金属の核粒子に接する最内側の被覆層は、Si、V、Ti、Al、Nb、Zr及びCrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を主体としてなるのが好ましい。これらの元素は結晶性が高く、緻密な被覆層が得られる。前記被覆層を設けることにより、磁性金属を核粒子としているにもかかわらず、溶媒中においても高い安定性を維持できる。このため最外被覆層としてケイ素とアルミニウムの酸化物を被覆する際にアルカリ溶液に浸漬された場合でも、金属の溶出や腐食を防ぐことができる。
本発明の磁気ビーズは、前記金属微粒子を用いた生体物質抽出用の磁気ビーズである。上記二層以上の被覆を有する磁気ビーズは多重に被覆された構成であるために、溶媒中において高い安定性を有する。そのため、本発明の磁気ビーズは溶媒中に暴露されることとなる生体物質抽出作業工程に用いられる磁気ビーズとして好適である。さらに、高い飽和磁化を有することで磁力を用いた生体物質の回収時間を短縮でき、高い生体物質抽出能を発現する。
金属微粒子を製造する本発明の方法は、磁性金属の核粒子と、前記核粒子の外側に第1の被覆層とを有する一次粒子の表面に、ケイ素アルコキシドとアルミニウムアルコキシドとの混合物をコートした後に、これらを加水分解することによりケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層を設けることを特徴とする。
前記一次粒子は、前記磁性金属の酸化物を含有する粉末と、Si、V、Ti、Al、Nb、Zr及びCrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含む粉末とを混合し、非酸化性雰囲気中で熱処理することにより形成されるのが好ましい。前記第1の被覆はSi、V、Ti、Al、Nb、Zr及びCrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を主体として構成されるのが好ましい。前記の方法により、磁性金属の核粒子が形成されるとともに、Si、V、Ti、Al、Nb、Zr及びCrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素からなる第1の被覆層も形成されるので、簡易な方法で本発明の金属微粒子を製造することができる。
本発明の金属微粒子及び磁気ビーズは、化学的安定性に優れるとともに、核酸抽出能が高い。さらにケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層を有するため、粒子同士の凝集安定性が飛躍的に改善され、再分散性に優れている。このため優れた核酸の回収性能を有する。
一方が閉じた円筒状の容器を用いて磁気分離を行っている状態の一例を示す模式図である。 一方が閉じた円筒状の容器を用いて磁気分離を行っている状態の他の一例を示す模式図である。 一方が閉じた円筒状の容器を用いて核酸を磁気分離法により抽出する工程を説明するための模式図である。 マイクロチップを用いて磁気分離を行っている状態の一例を示す模式図である。 マイクロチップ用いて核酸を磁気分離法により抽出する工程を説明するための模式図である。 AIP添加量とAl/Si比との関係を示すグラフである。 AIP添加量とSi2pの結合エネルギーとの関係を示すグラフである。 AIP添加量とゼータ電位との関係を示すグラフである。 Al/Si比とDNA抽出量との関係を示すグラフである。 ゼータ電位とDNA抽出量との関係を示すグラフである。 実施例1、3及び比較例1の再分散性を評価した結果を示す模式図である。 実施例6、比較例3、4及び参考例1の再分散性を評価した結果を示す模式図である。 参考例1及び比較例3の磁気分離時間と粒子回収率との関係を示すグラフである。 実施例1及び比較例1のヘモグロビンの非特異吸着性の評価結果を示すグラフである。 粒子の粒度分布と積算分布から、50%粒径及び90%粒径を求める方法を説明するグラフである。 溶液中に分散した微粒子の電気二重層を説明するための模式図である。
[1] 金属微粒子
(1) 構成
本発明の金属微粒子は、磁性金属の核粒子と、前記核粒子の外側に二層以上の被覆層を有し、前記二層以上の被覆層のうち最外層はケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層である。
(i) 磁性金属の核粒子
磁性金属の核粒子は、Fe、Co及びNiの単体、これらの合金、並びにこれらと他の元素との合金及び化合物が好ましい。高い飽和磁化を有する磁性金属をからなる核粒子を用いることにより、迅速な磁気分離が可能となる。核粒子は、特に高い飽和磁化を有することからFeを主成分とするもの(Fe単体、Feを含有する合金・化合物)が好ましい。
(ii) 最外被覆層
最外層はケイ素及びアルミニウムの複合酸化物からなる。磁気ビーズによる核酸の回収量は、粒子の表面の性状等に大きく影響し、粒子表面にケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層を設けることで、高い核酸抽出担体性能を持たせることができる。
ケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層において、Al/Si比は0.01〜0.2(原子比)であるのが好ましい。ケイ素にこのような比率のアルミニウムを添加することにより、ケイ素酸化物の被覆の活性度を上げ、生体物質の抽出能が向上する。Al/Si比(原子比)が0.01よりも小さい場合には、アルミニウム添加の実質的な効果は発現されない。Al/Si比(原子比)が0.2よりも大きい場合には、ケイ素酸化物中に含有するアルミニウム以外にAl酸化物のみからなる微小粒子が多く形成してしまい、生体物質の抽出量を低減させてしまう。
最外被覆層に含有するSiとAlの原子比は、X線光電子分光法(XPS)により測定することができる。X線光電子分光法は、粒子の極表面のみのエネルギースペクトルを検出できるため、例えば数10〜数100 nm程度の厚さを有する最外被覆層の組成を測定するのに好適である。
(iii) 中間被覆層
磁性金属の核粒子とケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる最外被覆層との間には、無機材料や樹脂等の中間被覆層を形成する。その種類及び層数は特に限定されない。金属元素を粒子核として用いた場合には、吸着液中における耐溶出性に優れていることが望ましいので、Si、V、Ti、Al、Nb、Zr及びCrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を有する被覆層であるのが好ましい。これらの元素の酸化物等を用いるのが特に好ましい。これらの元素は結晶性が高く、緻密な層を得やすいという利点がある。特にチタン酸化物を主体とする被覆は、緻密であり、層を厚く形成できるため、耐溶出性に優れ好ましい。また、異なる無機材料で多層に被覆を形成することにより、さらに分散性及び耐溶出性を改善することができる。
(2) 粒径
良好な分散性を実現するために、上記金属微粒子の50%粒径[体積基準のメディアン径(d50)]は10μm以下であるのが好ましい。50%粒径の下限は特に限定されるものではないが、核酸抽出担体の媒介として使用する目的においては、磁力を利用した生体物質の回収及び分散等の磁気分離操作を迅速に行うために必要な磁気特性を維持する観点からは0.1μm以上であることが望ましい。50%粒径はさらに好ましくは、0.1〜8μmであり、より好ましくは0.2〜5μmである。金属微粒子の90%粒径[体積基準の90%積算値における粒径(d90)]は15μm以下であるのが好ましい。90%粒径は、さらに好ましくは0.15〜15μmであり、より好ましくは0.15〜10μmである。
50%粒径及び90%粒径は、金属微粒子の試料粉末を溶媒中に分散させて、レーザー回折・散乱法により測定した粒度分布から求めることができる。図12に示すように、粒度分布の測定結果から得られた積算分布曲線において、50%の積算値における粒子径が50%粒径(d50)、90%の積算値における粒子径が90%粒径(d90)である。50%粒径は一般にメディアン径とも言われている。粒径が500 nm以下と小さい場合は、試料を透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で観察し、その粒度分布から50%粒径及び90%粒径を求めることができる。電子顕微鏡を用いる方法では、50個以上の粒子を測定するのが望ましい。個々の粒子の粒径(直径)とは、被覆層を有する微粒子の外径に相当するが、投影面が円形でない場合には最大長さと最小長さの平均値をその微粒子の粒径と見なす。
(3) 特性
(i) 結合エネルギー
本発明の金属微粒子では、ケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層の、X線光電子分光法によって測定したSi2pの結合エネルギーが102.4〜103.4 eVであるのが好ましい。X線光電子分光法は前述のように極表面のみのエネルギースペクトルを検出できるため、最外被膜層中のSiの結合エネルギーを特徴づけるSi2pの結合エネルギーを測定するのに好適である。Si2pの結合エネルギーが103.4 eVより大きい場合には被覆層はケイ素酸化物が主体となり、生体物質との活性は発現するもののその活性度は十分ではない。一方、102.4 eVより小さい場合には、アルミニウムが多すぎるため磁気ビーズ表面の活性度は低下してしまう。Si2p結合エネルギーが上記範囲であると、磁気ビーズと生体物質との活性度が高くなり、高い生体物質の抽出能を発現する。ケイ素酸化物の被覆にアルミニウムを含有させることによって、Si2p結合エネルギーをケイ素酸化物の通常のSi2p結合エネルギーの値よりも低く制御し、生体物質の抽出量の向上を図ることができる。また、X線光電子分光法によりケイ素並びにアルミニウムの酸化物の形成を確認することもできる。
(ii) 飽和磁化
金属微粒子の飽和磁化は80〜200 A・m2/kgであるのが好ましい。飽和磁化の値がこの範囲内であると、磁力を用いた生体物質の回収を短時間で行うことができる。飽和磁化の値が80 A・m2/kg未満の場合には、生体物質の回収に長時間を要する。また、磁性金属粒子へ無機材料等の被覆を施すと、飽和磁化の値は磁性金属微粒子単体の場合よりも減少するが、飽和磁化の値が200 A・m2/kgよりも大きな値を示す場合には、被覆が十分に形成されていない可能性があり、生体物質の抽出能を阻害してしまう。より好ましくは、100〜200 A・m2/kgである。マグネタイト等の酸化物系の磁性体を核粒子として用いた場合には、前記の飽和磁化を実現することはできず、磁気分離性能が劣る。被覆による耐溶出性とのバランスを考慮すれば、さらに好ましくは、100〜180 A・m2/kgである。
(iii) ゼータ電位
溶液中に分散された荷電微粒子は電気二重層を形成し、この電気二重層は微粒子の表面に形成された固定層とその回りに分布する拡散層とからなる(図13参照)。微粒子が溶液中を移動している場合、固定層と拡散層の一部は微粒子と共に移動する。この移動が起こる面をすべり面と言う。このすべり面と微粒子界面から十分に離れた溶液の部分との電位差をゼータ電位という。ゼータ電位は分散物の分散・凝集性、相互作用、表面改質を評価する上での指標となる。特にゼータ電位は粒子間の静電的な反発の大きさに対応しているため、微粒子の分散性の指標として有効である。ゼータ電位がゼロに近づくと微粒子の凝集が起こる。逆にゼータ電位の絶対値を大きくするように微粒子表面の改質を行うと、微粒子の分散性を増すことができる。
ゼータ電位は水中に分散した金属微粒子に電場をかけたときの粒子の移動速度をレーザードップラー法によって測定することにより求めることができる。本願において、pH7.5に調製した0.01 M KCl水溶液に金属微粒子を分散して測定する。測定されるゼータ電位ζ(mV)はSmoluchowskiの式により、ζ=ηue/εε0{η:液体の粘度(poise)、ueは粒子の泳動度(=V/E)、V:微粒子の移動速度(cm/sec)、E:電圧(V)、ε:溶液の比誘電率、ε0:真空の誘電率}で表される。
金属微粒子において、pH7.5の0.01 M KCl水溶液中におけるゼータ電位は、-40〜-10 mVであるのが好ましい。DNA等の生体物質の抽出を行う工程において、pH6〜8の水溶液中において金属微粒子と生体物質を吸着させるため、ゼータ電位をこの範囲に調節することにより、金属微粒子と生体物質との吸着性及び金属微粒子同士の凝集安定性が良好となる。上記ゼータ電位の値が、-10 mVよりも大きい場合には、溶媒中において金属微粒子が凝集しやすくなるため、金属微粒子の再分散性が低減してしまうことに加えて、金属微粒子と生体物質との吸着力が大きすぎるため、金属微粒子から生体物質を離脱させにくくなり、生体物質の抽出量が低減してしまう。一方、金属微粒子のゼータ電位が-40 mVよりも小さい場合には、溶媒中における再分散性は優れているものの、金属微粒子と生体物質との吸着力が低くなり生体物質の抽出量が低下する。上記ゼータ電位の値は、より好ましくは-30〜-17 mVであり、さらに好ましくは-30〜-27 mVである。
本発明の金属微粒子は、最表面を被覆するケイ素酸化物にAlを添加することにより、粒子表面のSiの結合状態を変え、ゼータ電位を最適化したものである。これにより50%粒径が10μm以下と従来使用されているケイ素酸化物被覆磁気ビーズと比べて小さい粒子サイズを有するにも関わらず、従来課題とされていた粒子の再分散性を飛躍的に改善することができる。
[2] 磁気ビーズ
本発明の磁気ビーズは、磁性金属粒子表面がケイ素及びアルミニウムの酸化物で被覆されてなり、目的とする生体物質を直接又は表面に修飾された抗体などを介して間接に捕捉することができる。本発明の金属微粒子を磁気ビーズとして用いるのが好適である。
[3] 金属微粒子及び磁気ビーズの製造方法
(1) 一次粒子
(i) 無機被覆層
磁性金属の核粒子、及びSi、V、Ti、Al、Nb、Zr及びCrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を主体とした被覆層からなる一次粒子の作製方法について説明する。一次粒子の作製方法は特に限定されないが、例えば、磁性金属の酸化物を含有する粉末と、Si、V、Ti、Al、Nb、Zr及びCrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含む粉末とを混合し、非酸化性雰囲気中で熱処理することによって作製することができる。この工程によって、磁性金属の核粒子が生成するとともに、Si、V、Ti、Al、Nb、Zr及びCrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を主体として構成される第1の被覆が形成される。非酸化性雰囲気としては、例えばAr、He等の不活性ガス中やH2、N2、CO2、NH3、又はそれらを混合したガス中が挙げられる。
上記熱処理において、磁性金属の元素M1、及びSi、V、Ti、Al、Nb、Zr及びCrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素M2として、それらの酸化物の標準生成自由エネルギーをそれぞれΔGM1-0及びΔGM2-0とすると、ΔGM1-0>ΔGM2-0の関係を満足するとき、M1酸化物はM2によって還元することができる。例えばM1酸化物(磁性金属の酸化物)としてFe2O3を使用した場合、ΔGFe2O3=-740 kJ/molよりも小さい標準生成自由エネルギーΔGM2-0を有する化合物としては、SiO2、V2O3、V2O5、V3O5、TiO2、Ti2O3、Ti3O5、Al2O3、Nb2O5、ZrO2及びCr2O3等が挙げられる。従って、元素M2としてSi、V、Ti、Al、Nb、Zr及びCrからなる群から選ばれる粉末を用いれば、Fe2O3が還元されてFeの核粒子が生成するとともに、M2元素を主体とした被覆層が形成される。
磁性金属の酸化物の粒径は、目標とする金属微粒子又は磁気ビーズの粒径に応じて選択することができるが、実用的には1〜1000 nmの範囲が好適である。Feを主成分としてCo及び/又はNiを含む組成の金属粒子を得る場合は、Feの酸化物とCo及び/又はNiの酸化物粉末との混合粉末、若しくはFeとCoと酸素を含んだ化合物粉末及び/又はFeとNiと酸素を含んだ化合物粉末を用いることができる。Feの酸化物粉末としては、例えばFe2O3、Fe3O4、FeOが挙げられ、Coの酸化物としては、例えばCo2O3、Co3O4が挙げられ、Niの酸化物としては、例えばNiOが挙げられる。FeとCoと酸素を含んだ化合物としては、例えばCoFe2O4が挙げられ、FeとNiと酸素を含んだ化合物としては例えばNiFe2O4等が挙げられる。
なお、Si、V、Ti、Al、Nb、Zr及びCrのうち少なくとも1種の元素を含む粉末は、この元素(M2元素とする)単体であっても構わないが、炭化物(M2-C)、ほう化物(M2-B)又は窒化物(M2-N)であっても構わない。M2元素を含有する金属粉末の粒径は1 nm〜100μmの範囲内にあるのが好ましく、還元反応をさらに効率的に行うためには1 nm〜10μmの範囲内がより好ましい。
Fe、Co及びNiを含む酸化物粉末と、M2元素を含む粉末との混合比は、Fe、Co及びNiの酸化物を還元するに足る化学量論比の近傍とするのが好ましい。より好ましくはM2元素を含む粉末が上記化学量論比よりも過剰となるのが好ましい。M2元素を含む粉末が不足すると、熱処理中にFe、Co及びNiを含む酸化物が十分に還元されず、上記M2元素の粒子が焼結してしまい、最終的にバルク化してしまうので不都合である。
熱処理は管状芯を有する固定静止型電気炉、ロータリーキルン等のように炉心管が熱処理時に動的に動く機能を有する電気炉、流動層等のように粉体自体が飛散された状態で熱を印加される機構を有する装置、微粒子を重力を利用して落下させる途上で高周波プラズマ等高エネルギーを印加させる手段を有する装置等により行うことができる。いずれも酸化物原料が還元されることにより金属核及び第一の被覆層が同時に形成される。
加熱による反応によって形成された被覆層は、ゾルゲル法等によって形成された被覆等に比べて、結晶性が高く、緻密な被膜となる。このため金属の核粒子の酸化等による劣化が抑制される。従って、耐食性や耐酸化性に乏しい金属を核として用いた場合にも、耐食性、耐酸化性が極めて高い金属微粒子又は磁気ビーズを得ることができる。
この一次粒子を用いることにより、第一の被覆層の表面へケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層を形成させる工程中において、金属の核粒子の劣化を防ぐ効果が極めて高くなる。ケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層を施した粒子は、金属を粒子核としていても酸化等による劣化が抑制されているため、核酸抽出媒体として使用する際に、磁気特性、耐食性及び耐酸化性が極めて高い。
(ii) 樹脂被覆層
金属の核粒子に前述の無機被覆層の代わりに樹脂被覆層を設けても良い。又は前述の無機被覆層に加えて樹脂被覆層を設けてもよい。無機被覆層の上に樹脂被覆層を設けることによって、耐食性がさらに向上し、高塩濃度のカオトロピック塩溶液中においても飽和磁化の劣化が抑制される。また、比重が下がるため分散性が向上する。樹脂被覆層は熱可塑性樹脂からなるのが好ましい。また、複数の核粒子、又は無機材料で被覆された核粒子を樹脂が内包した構成とすることもできる。
熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等が挙げられる。このうちポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂は2種以上の樹脂の混合物であっても良い。
樹脂の被覆は、熱可塑性樹脂を分散した分散物、及び核粒子又は無機材料で被覆された核粒子を混合し、熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱した後、融点よりも低い温度に冷却して行う。熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂と相溶性のない分散媒体に分散して用いるのが好ましい。分散媒体は、ポリエチレングリコール等のポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール等を用いることができ、2種以上の混合物であっても良い。加熱は融点より10〜150℃高い温度で行うのが好ましい。加熱温度が高すぎると樹脂の分解や一次粒子の酸化が起こる。加熱温度が低すぎると均一な被覆が得られない。分散は、例えばニーダー等の混練機を用いて行うことができる。融点よりも低い温度に冷却した後は、例えば磁気分離等によって樹脂を被覆した金属微粒子(磁気ビーズ)を分離することができる。
樹脂被膜は、単官能ビニル系モノマーを原料モノマーとして用いて、重合により形成することもできる。この単官能ビニル系モノマーに、多官能ビニル系モノマーを添加して用いても良い。この樹脂被膜としては、特にポリスチレン樹脂被膜が好適である。
(2) 最外被覆層
ケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層は、通常のゾルゲル法によって形成することができる。上述のケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層におけるSi2pの結合エネルギーやゼータ電位は、被覆層の形成条件(例えば、ケイ素酸化物とアルミニウム酸化物の使用量の調整)により制御することができる。
ケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層は、例えばケイ素アルコキシドとアルミニウムアルコキシドの加水分解反応で得られる。すなわち、アルミニウムアルコキシドを原料とすることにより、アルミニウムは容易にケイ素酸化物との化合物を形成する。
ケイ素アルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。テトラエトキシシランは、生成した被膜の絶縁性が高く、コストも比較的安いので特に好ましい。
アルミニウムアルコキシドの具体例としては、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムメチルジメトキシド、アルミニウムメチルジエトキシド、アルミニウムメチルジブトキシド、アルミニウムフェニルジメトキシド、アルミニウムフェニルジエトキシドアルミニウム等が挙げられる。アルミニウムイソプロポキシドは、ケイ素酸化物との化合物を生成しやすく、緻密な構造を形成するので特に好ましい。
テトラエトキシシラン及びアルミニウムイソプロポキシドを採用する場合を例に、ケイ素化合物被覆の形成方法を説明する。上述の表面がチタン酸化物等で被覆された一次粒子を、テトラエトキシシラン及びアルミニウムイソプロポキシドを含有するアルコールに分散させる。アルコールとしては、エタノール、メタノール、イソプロパノール等の低級アルコールが好ましい。テトラエトキシシランとアルミニウムイソプロポキシドの総量100重量部に対して100〜10000重量部のアルコールを使用するのが好ましい。反応を促進させるための触媒としてアンモニア水を添加し、テトラエトキシシラン及びアルミニウムイソプロポキシドの加水分解を行わせる。アンモニア水の添加により、テトラエトキシシラン及びアルミニウムイソプロポキシドを理論上100%加水分解可能な量以上の水が供給される。具体的にはテトラエトキシシランとアルミニウムイソプロポキシドの総量1 molに対して2 mol以上の水を添加する。
一次粒子100重量部に対してテトラエトキシシランとアルミニウムイソプロポキシドの総量は5〜150重量部であるのが好ましく、より好ましくは5〜80重量部であり、さらに好ましくは10〜60重量部である。テトラエトキシシランとアルミニウムイソプロポキシドの総量が5重量部未満であると、一次粒子の表面をケイ素化合物被覆により均一に被覆することが困難となる。150重量部を超える場合は、一次粒子を含まない、ケイ素化合物単独、アルミニウム化合物単独、又はケイ素化合物及びアルミニウム化合物の複合体のみの微粒子が多量に形成され、生体物質の抽出効率が低下する。
Si2p結合エネルギー等を制御して、高い核酸抽出能を有する金属微粒子(磁気ビーズ)を得る観点からは、テトラエトキシシランとアルミニウムイソプロポキシドの総量に対するアルミニウムイソプロポキシドの割合は、5〜40質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましい。テトラエトキシシランとアルミニウムイソプロポキシドの総量の加水分解に用いられる水の使用量は、テトラエトキシシランとアルミニウムイソプロポキシドの総量100重量部に対して、好ましくは17〜1000重量部である。水の使用量が17重量部未満の場合には、テトラエトキシシラン及びアルミニウムイソプロポキシドの加水分解の進行が遅くなり、製造効率が低下する。1000重量部を越えると、ケイ素酸化物を主体として構成される単離球が多量に形成されてしまう。触媒として用いられるアンモニア水の使用量は、例えば、濃度28%のアンモニア水を使用した場合には、テトラエトキシシランとアルミニウムイソプロポキシドの総量100重量部に対して、10〜100重量部が好ましい。10重量部よりも少ない場合には、触媒としての作用が十分に発揮されない。100重量部よりも多い場合には、ケイ素化合物を主体として構成される単離球が多量に形成されてしまう。上記ゾルゲル法において、触媒として使用するアンモニア水により、pHが約11と弱アルカリ性であるため、金属粒子が腐食することが懸念される。しかし、表面にチタン酸化物等の被覆が形成された一次粒子を採用することにより、ケイ素化合物被覆を作製する際の金属の核粒子の腐食を防ぐことができる。
一次粒子に均一にケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層を形成するためには、ボールミル混合機、V型混合機、モータ攪拌機、ディゾルバー攪拌機又は超音波印加装置等を用いて、溶液と一次粒子を十分混合する。混合はテトラエトキシシランとアルミニウムイソプロポキシドの加水分解反応が十分に進行する時間以上行う必要がある。本発明の金属微粒子(磁気ビーズ)は、ケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層が形成されると十分な性能を発揮するため必ずしも熱処理を必要としないが、生成する残留水和物を除去し、被覆膜の強度を増加させるため熱処理を行ってもよい。加熱は水和物を除去可能な温度以上で行えばよく、80〜500℃が好ましい。また、ケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層を形成させる工程を2回以上繰り返すことで、ケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層をより均一に形成することができる。
ケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被膜層の厚みは平均で5〜400 nmであるのが好ましい。十分な磁力を得るためには、金属微粒子(磁気ビーズ)の飽和磁化は、磁性金属の核粒子の飽和磁化の50〜100%であることが望ましいが、400 nmを超えると飽和磁化の低下が大きくなり、それが困難となる。より好ましくは100 nm以下、さらに好ましくは80 nm以下である。被覆層の厚みが5 nm以下では、ケイ素及びアルミニウムの酸化物の化学的性質が十分に発揮されず、生体物質抽出の媒体としての効果が低下する。被覆層の化学的性質は表面電位(ゼータ電位)を測定することによって確認できる。
ケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層は粒子の最表面に形成されている必要がある。例えば、一次粒子表面にケイ素酸化物のみを被覆し、さらにその上にケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被膜層を形成してなる構成でもよい。
ケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層の厚さは、例えば透過型電子顕微鏡の観察により測定することができる。試料粒子を透過型電子顕微鏡で観察すると、一次粒子の核部分とケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる膜部分とでは電子線の透過率が大きく異なり、コントラストが生じるため被覆層の厚さを容易に測定できる。本願においては、10個以上の粒子について各々の被覆層の厚さを測定しその平均値を求める。ここで各々の粒子の被覆層の厚さは、1個の粒子について4箇所以上計測し、その平均値を求める。
一次粒子表面にケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層が形成されていることは、例えばエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX分析)、オージェ電子分光測定、X線光電子分光測定等の元素分析、又は赤外分光光度計で測定を行うことで確認できる。例えば、金属微粒子を透過型電子顕微鏡観察しながら、形成された被覆層のEDX分析又はオージェ電子分光分析により、粒子の半径方向の組成分布の測定を行うことにより、被覆層がケイ素及びアルミニウムの酸化物によって構成されていることを確認できる。また、赤外分光光度計で金属微粒子又は磁気ビーズの吸収スペクトルを測定すると、波数1250〜2020 cm-1の範囲でケイ素及びアルミニウムの酸化物に起因する吸収ピークを観察することができ、このことによりケイ素及びアルミニウムの酸化物を有する被覆層の形成を確認できる。
ケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層の厚さは、テトラエトキシシランとアルミニウムイソプロポキシドの加水分解反応を利用して形成する場合には、テトラエトキシシランとアルミニウムイソプロポキシドの使用量に加えて、水、触媒の量等にも依存する。しかし、これらの量が過剰であると、被覆層の膜厚は大きくなるが、被覆層を形成しない過剰なシリカが単独で形成されてしまうため好ましくない。ケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層の膜厚は、反応時にKCl、NaCl、LiCl、NaOH等の電解質を添加することにより増加する。
[4] 生体物質からの核酸抽出方法
本発明の磁気ビーズにより、生体物質から核酸等の目的物質を抽出・単離することができる。この方法は磁気分離法と呼ばれ、磁気ビーズ及び試薬を投入した容器の外側から永久磁石を近づけ、磁場を作用させて磁気ビーズの捕集を行う方法である(例えば、特開平9-19292号を参照。)。図1(a)に示すように、一方が閉じた円筒状の容器12に磁気ビーズ、核酸を含有する試料及び抽出液を投入し混合後、永久磁石を容器外壁へ接近させ、液中の核酸が吸着した磁気ビーズを磁力13により容器12の側面に集め、溶液から磁気ビーズのみを分離する。永久磁石は図1(a)に示されたように単一の永久磁石11を用いてもよいが、図1(b)に示されたように複数の永久磁石11a,11bを組み合わせて用いてもよい。
磁気分離法を利用した核酸の抽出法について、図1(c)により、さらに詳細に説明する。具体的な手順は以下の(A1)〜(A6)のとおりである。
(A1) 容器2中に磁気ビーズ5、核酸を含有する試料及び抽出液を投入し、容器を振動させることにより混合する(吸着)。
(A2) 磁気分離を行い、核酸の吸着した磁気ビーズ5を容器内の壁面に保持し、抽出後の目的外の物質を含有する溶媒6を分離して除去する(磁気分離)。
(A3) 洗浄溶媒を投入し、容器を振動させることにより目的外の物質を洗浄し、磁気分離を行い除去する(洗浄1及び磁気分離)。
(A4) 上記(A3)に記載の洗浄及び磁気分離を所定回数繰り返す(洗浄2及び磁気分離)。図1(c)では洗浄回数が2回の場合を記載したが、必要に応じてさらに繰り返すことができ、通常2〜5回行うのが好ましい。
(A5) 核酸を磁気ビーズから脱離させるのに適した溶媒を投入し、容器を振動させることにより核酸を磁気ビーズ表面から脱離させる(脱離)。
(A6) 磁気分離を行い磁気ビーズと核酸が含まれる溶媒を分離し、核酸を含む抽出液7を得る(抽出)。
また、国際公開第97/44671号に記載されているように、マイクロチップを用いて磁気ビーズの捕集を行うこともできる。図2(a)に示すように、マイクロチップ2の一方に溶媒を吸引するための分注器4を装着し、相対する先端から別容器中の磁気ビーズ、核酸を含有する試料及び抽出液を吸引し、溶媒の吸引及び排出を連続して行うことにより磁気ビーズを溶媒中へ分散させた後、マイクロチップ2中に磁気ビーズの懸濁液を吸引して、マイクロチップ2中に懸濁液が貯留している状態で、又は溶液の吸引及び排出を行いながら永久磁石1を容器外壁へ接近させることにより磁気ビーズの磁気分離を行う。
マイクロチップを用いた磁気分離法の具体的な手順は以下の(B1)〜(B6)のとおりである。
(B1) 吸引排出を繰り返すことで磁気ビーズ5、核酸を含有する試料及び抽出液の混合溶液を攪拌する(吸着)。
(B2) 磁気分離を行い、核酸の吸着した磁気ビーズを容器内の壁面に保持し、抽出後の目的外の物質を含有する溶媒を排出し除去する(磁気分離)。
(B3) 洗浄溶媒を吸引し、吸引排出を繰り返すことにより目的外の物質を洗浄し、磁気分離を行い除去する(洗浄1及び磁気分離)。
(B4) 上記(B3)に記載の洗浄及び磁気分離を所定回数繰り返す(洗浄2及び磁気分離)。図1(c)では洗浄回数が2回の場合を記載したが、必要に応じてさらに繰り返すことができ、通常2〜5回行うのが好ましい。
(B5) 核酸を磁気ビーズから脱離させるために適した溶媒を吸引し、吸引排出を繰り返すことで核酸を磁気ビーズ表面から脱離させる(脱離)。
(B6) 磁気分離を行い磁気ビーズと核酸が含まれる溶媒を分離し、核酸を含む抽出液7を得る(抽出)。
血液等の核酸を含有する試料から抽出した核酸の回収量を測定する方法をDNAの場合について説明する。DNAを構成する塩基は260 nm付近に極大吸収を持つため、抽出液の吸光度を測定することによりDNA量を定量することができる。260 nmにおけるDNAの吸光係数から、抽出液中のDNAの濃度を算出し回収量を求めることができる。また、DNAの抽出工程においては、抽出液中に含まれるタンパク質等のDNA以外の物質(不純物)が少ないことが要求される。抽出液中のDNAの純度は、タンパク質は280 nm付近に強い吸収を持つことから、DNAの260 nmにおける吸収(OD260 nm)とタンパク質の280 nm(OD280 nm)における吸収との比(OD260 nm/OD280 nm)によって求められる。また、DNAを含む抽出液中に260 nm近傍の広い範囲で吸光ピークを有するような試薬が混入し、吸光度測定法では正確なDNAの濃度を求めることができない場合には、核酸を選択的に染色することができる蛍光試薬で核酸を染色し、その蛍光強度を測定することで核酸の濃度を求めるのが好ましい。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
TiC粉末とFe2O3粉末とを混合し、窒素中800℃で8時間熱処理することにより表面がTi酸化物で被覆されたFeの一次粒子(50%粒径1.5μm)を作製した。この一次粒子5gを100 mlのエタノール溶媒中に分散し、これに表1に示す量のテトラエトキシシラン(TEOS)及びアルミニウムイソプロポキシド(AIP)を添加した。この溶媒を攪拌しながら混合溶液(22.52gのイオン交換水、4.57gの28%アンモニア水及び0.03gのKClを含有する。)を5分間かけて滴下した。その後1時間攪拌しながらTEOS及びAIPの加水分解を行った。反応終了後、IPAによる洗浄を3回行った。その後濾過することにより固液分離し、大気中において30℃以上に加熱して乾燥し、ケイ素及びアルミニウムの酸化物が被覆された金属微粒子を得た。
実施例2〜5、比較例1及び2
テトラエトキシシラン(TEOS)及びアルミニウムイソプロポキシド(AIP)の添加量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜5、比較例1及び2の金属微粒子を作製した。比較例1はアルミニウムイソプロポキシドを添加しないでテトラエトキシシランのみを使用して被覆層を形成した例である。
得られた実施例1〜5、比較例1及び2の金属微粒子の、50%粒径及び90%粒径、Si2pの結合エネルギー、Al/Si比、ゼータ電位、及び磁気特性を測定し、生体物質抽出用の磁気ビーズとして用いた場合のDNA抽出性能及び再分散性を評価した。結果を表1に示す。
<評価方法>
(1) 粒径測定
50%粒径(d50)及び90%粒径(d90)は、レーザー回折型粒度分布測定装置(HORIBA製LA-920)で測定した。
(2) Si2pの結合エネルギー
形成された被覆のケイ素の結合状態はX線光電子分光分析(クレイトス社製 AXIS-HSを使用し、X線源:単色化アルミニウムKα線、及びスポット径:直径400μmで測定。)により行った。検出器のアナライザー・パスエネルギーは100 eVであり、測定分解能はAg3d5/2ピークにて約0.9 eVであった。
(3) Al/Si比
Al/Si比はX線光電子分光分析により、Si2pの結合エネルギーと同様の測定条件でAl及びSiのスペクトルの強度比から求めた。
(4) ゼータ電位
pH7.5に調製した0.01 M KCl水溶液に金属微粒子を分散して、ベックマンコールター社製ゼータ電位計DELSA440により測定した。
(5) 磁気特性
金属微粒子の25℃における磁気特性(飽和磁化及び保磁力)はVSM(振動型磁力計)により1.6 MA/mの印加磁界で測定した。
(6) DNA抽出性能
得られた磁気ビーズを用いた全血からのDNA抽出性能の評価は、市販の核酸抽出用キット「MagnaPure LC DNA Isolation Kit I(登録商標)」(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製)を使用して行った。2 mlのマイクロチューブへ100μlの馬血を分注し、上記キットに付属したProtenase K溶液100μl及びLysis Binding Buffer 300μlを添加した後、室温にて3分間振盪した。磁気ビーズ20 mgを99.5%のイソプロピルアルコール150μlへ分散させて磁気ビーズの分散液を調製し、上記マイクロチューブへ分散液を分注して、室温にて8分間攪拌混合しDNAを磁気ビーズへ吸着させた。その後、上記キット付属のWash Buffer I(850μl)で洗浄して磁気分離を行い固液分離した。次に、上記キット付属のWash Buffer II(450μl)で洗浄して磁気分離を行い固液分離した。Wash Buffer IIによる洗浄は2回繰り返し行った。磁気ビーズからDNAを離脱させるために、DNAが吸着した磁気ビーズを上記キットに付属したElution Buffer(100μl)に分散させ、室温で8分間攪拌混合した後、固液分離を行うことによりDNAを抽出した溶液を回収した。上記の工程において、固液分離操作を行う際には磁気分離法で行った。DNAを抽出した溶液の波長260 nmの吸光度を測定することによりDNA抽出量を測定しDNA抽出性能評価した。
(7) 再分散性
磁気ビーズの再分散性は、図2(b)に示すようにマイクロチップの外側から磁場を作用させて磁気ビーズを磁気捕集する方法でDNA抽出操作を行い、2回目の洗浄(洗浄2)後のマイクロチップ内での磁気ビーズの固着状態を観察して評価した。再分散性の良い試料はマイクロチップ内に磁気ビーズが残らない(図8の実施例1)が、再分散性の悪い試料はマイクロチップ内に磁気ビーズが凝集した状態(図8の比較例1)となる。
Figure 2007148734
注:数値の記載のない部分は未測定である。
表1(続き)
Figure 2007148734
注:数値の記載のない部分は未測定である。
AIP添加量に対するAl/Si比、Si2pの結合エネルギー及びゼータ電位の関係をプロットしたグラフをそれぞれ図3、図4及び図5に示す。AIPの添加量(仕込み値)とAl/Si比はよく相関(図3)しており、設計したとおりの表面組成を有する被覆層が形成されていることが分かる。また、AIPの添加量とSi2pの結合エネルギーの関係(図4)から、AIPの添加量に応じてSi-O-Alの結合が形成されていることが分かる。AIPの添加量とゼータ電位の関係(図5)から、AIPを極微量添加することによって大きくゼータ電位が変化しており、AIPによって金属微粒子の表面性状が変化することが示唆される。
図6にAl/Si比とDNA抽出量との関係を示す。アルミニウムを含有しない磁気ビーズ(金属微粒子)(比較例1)に対して、AIPを添加して被覆層を形成した実施例1〜4の磁気ビーズ(金属微粒子)はDNA抽出量が増加しており、良好な性能を示すことが分かる。この結果から、Al/Si比が0.01〜0.2の範囲の被覆層を有する磁気ビーズ(金属微粒子)が特にDNA抽出に優れていることが分かる。
ゼータ電位は溶液中の粒子の分散安定性及び生体物質等の吸着能を評価する上での指標となる物性値であるので、得られた各試料のゼータ電位とDNA抽出量の関係について考察した。結果を図7に示す。図7から、DNAの抽出量は磁気ビーズのゼータ電位が-30mV付近に極大点を持つ、上に凸の曲線を描いた。最外被覆層にAlを含有しない磁気ビーズ(比較例1)に対して、AIPを添加して被覆層を形成した実施例1、2及び4の磁気ビーズはDNA抽出量が増加しており、良好な性能を示すことが分かる。しかし、AIP添加量がさらに多い比較例2の磁気ビーズは逆にDNA抽出量が低下している。これらの結果から、従来のシリカのみの被覆層を有する比較例1の磁気ビーズは、生体物質との吸着力が低いためDNAの抽出量が少ないと考えられる。またAIPを多く含有する比較例2の磁気ビーズは、溶媒中において凝集しやすくなることに加えて、生体物質との吸着力が大きすぎるため、生体物質を離脱させにくくなり、DNAの抽出量が低減してしまうと考えられる。従って、ゼータ電位が-40〜-10 mVの範囲にある磁気ビーズは、吸着力と分散安定性が良いバランスを保っているため、高いDNA抽出性能が得られると考えられる。
DNA抽出操作において磁気分離した磁気ビーズの再分散性を評価したところ、図8に示すように、本発明の実施例1及び3の磁気ビーズはマイクロチップ内で固着せず、良好な再分散性を示すことが確認された。これに対して、AIPを使用していない比較例1の磁気ビーズは固着が起こり、再分散性が悪かった。
また本発明の磁気ビーズ(金属微粒子)は高飽和磁化及び低保磁力を示した。
実施例6
表面がTi酸化物で被覆された50%粒径5.3μmのFe微粒子(一次粒子)を使用した以外は実施例1と同様にして金属微粒子を作製した。得られた金属微粒子の粒径、磁気ビーズとして使用したときのDNA抽出量及び再分散性の結果を表2に示す。実施例6の金属微粒子の50%粒径は6.4μm、90%粒径は9.6μmであった。この磁気ビーズ(金属微粒子)は実施例1と同等なDNA抽出性能を発現し、再分散性も良好であった。
Figure 2007148734
注:数値の記載のない部分は未測定である。
比較例3
市販のシリカ被覆酸化鉄粒子の評価を行った。飽和磁化と保磁力はそれぞれ44 A・m2/kg及び11.5 kA/m、50%粒径は12.9μm、90%粒径は20.9μmであった。この粒子の最表面の組成分析を行った結果、Al、B、Zn、K及びNaが検出され、Al/Si原子比は0.23であった。
比較例4
比較例3の市販のシリカ被覆酸化鉄粒子を、篩により分級し粗大粒子を除去して50%粒径が11.6μm、90%粒径は17.0μmの粒子を得た。
参考例1
表面がTi酸化物で被覆された50%粒径5.3μmのFe微粒子(一次粒子)を使用したことを除いては比較例1と同様にして金属微粒子を作製した。
実施例6、比較例3、4及び参考例1の粒子の再分散性を評価した結果を表2及び図9に示す。比較例4の酸化鉄を核としてアルミニウムを含有するケイ素酸化物の被覆を有する粒子及び参考例1の磁気ビーズ(金属微粒子)においては粒子がマイクロチップ内壁へ固着してしまい、粒子の再分散性が劣ること確認された。一方、実施例6で得られた磁気ビーズ(金属微粒子)は、固着することなく良好な再分散性を示した。比較例3の酸化鉄粒子は固着しなかった。比較例4の粒子は比較例3の粒子を、篩により分級し粗大粒子を除去しているため、特に90%粒径が大きく減少している。この結果から、アルミニウムを含有するシリカ被覆酸化鉄粒子を使用した場合でも、保存時の沈降性を改良するために粗大粒子を除去すると、DNAの抽出工程において再分散性が悪化してしまうことが確認された。
<微粒子の磁場に対する応答性>
参考例1の磁気ビーズ及び比較例3のシリカ被覆酸化鉄粒子の磁場に対する応答性を評価した。図10は粒子を磁気分離する際の、磁場を作用させる時間とその時の粒子の回収率の関係を示す。粒子の回収率は、各時間で磁気分離を4回行い最後まで残った粒子の重量を測定して求めた。比較例3の粒子の場合は酸化鉄を磁性体として採用しているためその飽和磁化の値が低く、全ての粒子を磁気回収するためには30秒以上かかる。一方、参考例1で得られた粒子は鉄微粒子を磁性体としているため飽和磁化が高いので、わずか3秒間でほぼ100%の粒子を回収できる。従って、磁性金属核粒子を磁性体とした本発明の磁気ビーズは飛躍的に磁気分離時間を短縮することができることができる。
<非特異吸着性>
実施例1及び比較例1で得られた磁気ビーズの非特異吸着性(nonspecificity、目的以外の生体物質が粒子表面に吸着する性質)を評価した。ここでは、精製λDNA 2.5μgを投入したTE(10 mM Tris-HCl及び1 mM EDTA-2Na)溶液100μlと全血に含有される物質の一つである核酸の抽出を阻害すると推察されるヘモグロビンを所定量投入した溶媒を検体として使用した。図11はヘモグロビンの添加量に対するDNA回収量を示す。表面がシリカのみで被覆された比較例1の磁気ビーズは、ヘモグロビンを0.25 mg以上添加した場合に著しくDNA回収量が低減した。一方、実施例1の磁気ビーズは、ヘモグロビンを1 mgまで添加した場合でもDNA回収量は変化しなかった。このことから、実施例1のケイ素及びアルミニウムの酸化物を含有する被覆層を有する磁気ビーズは、核酸の抽出を阻害するヘモグロビンの非特異吸着を抑制できると考えられる。
参考例2
Ti酸化物被覆Fe粒子の原料配合を表3のように変更して、一次粒子を作製した。得られた一次粒子の50%粒径、磁気特性及び含有元素を表3に示す。
Figure 2007148734
表3(続き)
Figure 2007148734

Claims (10)

  1. 磁性金属の核粒子に二層以上の層を被覆してなる金属微粒子であって、前記二層以上の被覆層のうち最外層はケイ素及びアルミニウムの酸化物を含有し、Al/Si比が原子比で0.01〜0.2であることを特徴とする金属微粒子。
  2. 請求項1に記載の金属微粒子において、50%粒径[体積基準のメディアン径(d50)]が0.1〜10μmであることを特徴とする金属微粒子。
  3. 請求項1又は2に記載の金属微粒子において、90%粒径[体積基準の90%積算値における粒径]が0.15〜15μmであることを特徴とする金属微粒子。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の金属微粒子において、前記核粒子は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれた少なくとも1種の磁性金属を含むことを特徴とする金属微粒子。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の金属微粒子において、ゼータ電位がpH7.5の0.01 M KCl水溶液中において-40〜-10 mVであることを特徴とする金属微粒子。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の金属微粒子において、飽和磁化が80〜200 A・m2/kgであることを特徴とする金属微粒子。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の金属微粒子において、前記二層以上の被覆層のうち前記磁性金属の核粒子に接する最内側の被覆層は、Si、V、Ti、Al、Nb、Zr及びCrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を主体としたことを特徴とする金属微粒子。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の金属微粒子を用いた生体物質抽出用磁気ビーズ。
  9. 磁性金属の核粒子と、前記核粒子の外側に第1の被覆層とを有する一次粒子の表面に、ケイ素アルコキシドとアルミニウムアルコキシドとの混合物をコートした後に、これらを加水分解することによりケイ素及びアルミニウムの酸化物からなる被覆層を設けることを特徴とする金属微粒子の製造方法。
  10. 請求項9に記載の金属微粒子の製造方法において、前記一次粒子は、前記磁性金属の酸化物を含有する粉末と、Si、V、Ti、Al、Nb、Zr及びCrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含む粉末とを混合し、非酸化性雰囲気中で熱処理することにより形成されることを特徴とする金属微粒子の製造方法。
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