JPWO2007125671A1 - 電界効果トランジスタ - Google Patents
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Abstract
Description
有機化合物を半導体材料として用いた例としては、これまで各種の検討がなされており、例えばペンタセン、チオフェン又はこれらのオリゴマーやポリマーを利用したものが正孔輸送型(P型)特性を有する材料としてすでに知られている(特許文献1及び2参照)。ペンタセンは5個のベンゼン環が直線状に縮合したアセン系の芳香族炭化水素であり、これを半導体材料として用いた電界効果トランジスタは、現在実用化されているアモルファスシリコンに匹敵する電荷の移動度(キャリア移動度)を示すことが報告されている。しかしその性能は化合物の純度に大きく影響を受け、しかもその精製が困難であり、トランジスタ材料として用いるには製造コストが高いものとなっている。さらにはこの化合物を用いた電界効果トランジスタは、環境による劣化が起こり安定性に問題がある。またチオフェン系の化合物を用いた場合においても同様の問題点があり、それぞれ実用性の高い材料とは言いがたい現状である。その中で、DPh−BDS系化合物及びDPh−BSBS系化合物は優れたP型の半導体特性を示し、さらに安定であると報告されており、実用的な有機半導体材料として、有機電界効果トランジスタとしての期待が高い(特許文献3及び非特許文献1、非特許文献2参照)。
また電子輸送(N型)特性を有する有機半導体材料としては、フッ素化ペンタセンやフッ素化フタロシアニン、C60、ペリレンテトラカルボン酸無水物及びそのイミド誘導体、ナフタレンテトラカルボン酸無水物及びそのイミド誘導体、ジシアノピラジノキノキサリン誘導体などが挙げられる。しかし、これらのN型有機半導体材料は、P型材料に比べまだ研究開発が遅れているため、その種類が限られており、また総じてキャリア移動度が低く、化合物自体のコストや安定性などにも問題が多く残っている。より良好な特性のN型有機半導体が得られれば、P型有機半導体との組み合わせにおいて、回路設計の自由度が向上し、より小型で低消費電力の有機電子回路(相補型集積回路:CMOS)の実用化の可能性が高くなるため、この開発も重要である。
しかしこれらの素子は、N型、P型の両極性とも、またはどちらかの極性が実用的な水準の移動度を有していないことや、大気中での測定時には特性が急激に落ちてしまうという欠点を有する。そのため、これらの欠点を克服した実用的なアンバイポーラー型電界効果トランジスタの開発が望まれている。
(1)下記式(1)、(2)または(3)で表される化合物の少なくとも1種と、電子輸送型の半導体材料を有することを特徴とする電界効果トランジスタ。
(2)電子輸送型の半導体材料がフラーレン、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンからなる群から選ばれるかご状炭素ナノ物質である、上記(1)項に記載の電界効果トランジスタ。
(3)電子輸送型の半導体材料がフラーレンである、上記(2)項に記載の電界効果トランジスタ。
(4)式(1)、(2)または(3)で表される化合物の少なくとも1種を含む層と、電子輸送型の半導体材料を含む層が積層構造を有している、上記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタ。
(5)絶縁体層と、それにより隔離されたゲート電極及びその絶縁体層に接するように設けられたソース電極とドレイン電極を有するボトムコンタクト型構造の電極上に、式(1)、(2)または(3)で表される化合物を含む層、及び電子輸送型の半導体材料を含む層が積層されている、上記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタ。
(6)ゲート電極上に設けられた絶縁体層上に、式(1)、(2)または(3)で表される化合物を含む層、及び電子輸送型の半導体材料を含む層が積層され、さらに該層の最上部に接するようにソース電極及びドレイン電極がそれぞれ設けられているトップコンタクト型の、上記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタ。
(7)大気下で電子と正孔の電荷において0.01cm2/Vs以上の移動度を示す、上記(1)〜(6)項のいずれか1項に記載のアンバイポーラー型電界効果トランジスタ。
置換されていてもよい芳香族基における芳香族基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、ベンゾピレニル基などの芳香族炭化水素基や、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピロリル基、インドレニル基、イミダゾリル基、カルバゾリル基、チエニル基、フリル基、ピラニル基、ピリドニル基などの複素環基、ベンゾキノリル基、アントラキノリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基のような縮合系複素環基が挙げられる。これらのうち、好ましいものとしてはフェニル基、ナフチル基、ピリジル基及びチエニル基が挙げられる。最も好ましいものとしてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
また上記において、芳香族基としては、置換されていてもよい芳香族基における芳香族基の例と同様である。
好ましくは、有機系半導体であり、更に好ましくはフラーレン類及びカーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどのかご状炭素ナノ物質が挙げられる。特に好ましくはC60やC70などのフラーレンが挙げられる。
図1に、本発明の電界効果トランジスタ(素子)のいくつかの態様例を示す。各例において、1がソース電極、2が半導体層、3がドレイン電極、4が絶縁体層、5がゲート電極、6が基板をそれぞれ表す。尚、各層や電極の配置は、素子の用途により適宜選択できる。A〜Dは基板と並行方向に電流が流れるので、横型FETと呼ばれる。Aはボトムコンタクト型構造、Bはトップコンタクト型構造と呼ばれる。また、Cは有機単結晶のFET作成によく用いられる構造で、半導体上にソース及びドレイン電極、絶縁体層を設け、さらにその上にゲート電極を形成している。Dはトップ&ボトムコンタクト型トランジスタと呼ばれる構造である。Eは縦型の構造をもつFETである静電誘導トランジスタ(SIT)の模式図である。このSIT構造によれば、電流の流れが平面状に広がるので一度に大量のキャリアが移動できる。またソース電極とドレイン電極が縦に配されているので電極間距離を小さくできるため応答が高速である。従って、大電流を流す、あるいは高速のスイッチングを行うなどの用途に好ましく適用できる。
基板6は、その上に形成される各層が剥離することなく保持できることが必要である。例えば樹脂フィルム、紙、ガラス、石英、セラミックなどの絶縁性材料、金属や合金などの導電性基板上にコーティング等により絶縁層を形成した物、樹脂と無機材料など各種組合せからなる材料等が使用しうる。使用しうる樹脂フィルムの例としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、ポリエーテルイミドなどが挙げられる。樹脂フィルムや紙を用いると、素子に可撓性を持たせることができ、フレキシブルで、軽量となり、実用性が向上する。基板の厚さとしては、通常1μm〜10mmであり、好ましくは5μm〜5mmである。
各電極1、3、5には配線が連結されているが、配線も電極とほぼ同様の材料により作製される。
半導体層2の膜厚は、必要な機能を失わない範囲で、薄いほど好ましい。A、B及びDに示すような横型の電界効果トランジスタにおいては、所定以上の膜厚があれば素子の特性は膜厚に依存しない一方、膜厚が厚くなると漏れ電流が増加してくることもあるためである。必要な機能を示すために、通常、1nm〜10μm、好ましくは5nm〜5μm、より好ましくは10nm〜3μmである。前記式(1)、(2)又は(3)で表される化合物と前述の電子輸送型の半導体材料が積層構造をとっている場合、トータルの膜厚は前述と同じでよい。それぞれの膜厚は必要な機能を失わない範囲で任意に調整できる。またこれらの材料の混合比率や膜厚を調整することによって、電子及び正孔の移動度が変化すると考えられ、良好なアンバイポーラー特性を有する電界効果トランジスタが得られる。
保護層の材料としては特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリオレフィン等の各種樹脂からなる膜や、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素等、無機酸化膜や窒化膜等の誘電体からなる膜が好ましく用いられる。特に、酸素や水分の透過率や吸水率の小さな樹脂(ポリマー)が好ましい。近年、有機ELディスプレイ用に開発されている保護材料も使用が可能である。保護層の膜厚は、その目的に応じて任意の膜厚を採用できるが、通常100nm〜1mmである。
この製造方法は前記した他の態様の電界効果トランジスタ等にも同様に適用しうるものである。
基板6上に必要な層や電極を設けることで作製される(図2(1)参照)。基板としては上記で説明したものを用いうる。この基板上に前述の表面処理などを行うことも可能である。基板6の厚みは、必要な機能を妨げない範囲で薄い方が好ましい。材料によっても異なるが、通常1μm〜10mmであり、好ましくは5μm〜5mmである。又、必要により、基板に電極の機能を持たせるようにしてもよい。
基板6上にゲート電極5を形成する(図2(2)参照)。電極材料としては上記で説明したものが用いられる。電極膜を成膜する方法としては、各種の方法を用いることが出来、例えば真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、熱転写法、印刷法、ゾルゲル法等が採用される。成膜時又は成膜後、所望の形状になるよう必要に応じてパターニングを行うのが好ましい。パターニングの方法としても各種の方法を用いうるが、例えばフォトレジストのパターニングとエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法等が挙げられる。又、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法、及びこれら手法を複数組み合わせた手法を利用し、パターニングすることも可能である。ゲート電極5の膜厚は、材料によっても異なるが、通常0.1nm〜10μmであり、好ましくは0.5nm〜5μmであり、より好ましくは1nm〜3μmである。又、ゲート電極と基板を兼ねる場合は上記の膜厚より大きくてもよい。
ゲート電極5上に絶縁層4を形成する(図2(3)参照)。絶縁体材料としては上記で説明したもの等が用られる。絶縁体層4を形成するにあたっては各種の方法を用いうる。例えばスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、キャスト、バーコート、ブレードコーティングなどの塗布法、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット等の印刷法、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法、CVD法などのドライプロセス法が挙げられる。その他、ゾルゲル法やアルミニウム上のアルマイト、シリコンの熱酸化膜のように金属上に酸化物膜を形成する方法等が採用される。
尚、絶縁体層と半導体層が接する部分においては、両層の界面で半導体分子を良好に配向させるために、絶縁体層に所定の表面処理を行うことができる。表面処理の手法は、基板の表面処理と同様のものが用いうる。絶縁体層4の膜厚は、その機能を損なわない範囲で薄い方が好ましい。通常0.1nm〜100μmであり、好ましくは0.5nm〜50μmであり、より好ましくは5nm〜10μmである。
ソース電極1及びドレイン電極3の形成方法等はゲート電極5の場合に準じて形成することが出来る(図2(4)参照)。
半導体材料としては上記で説明したような材料が使用される。半導体層を成膜するにあたっては、各種の方法を用いることが出来る。スパッタリング法、CVD法、分子線エピタキシャル成長法、真空蒸着法等の真空プロセスでの形成方法と、ディップコート法、ダイコーター法、ロールコーター法、バーコーター法、スピンコート法等の塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法などの溶液プロセスでの形成方法に大別される。以下、半導体層の形成方法について詳細に説明する。
前記半導体材料をルツボや金属のボート中で真空下、加熱し、蒸発した半導体材料を基板(絶縁体層、ソース電極及びドレイン電極の露出部)に付着(蒸着)させる方法(真空蒸着法)が好ましく採用される。この際、真空度は、通常1.0×10−1Pa以下、好ましくは1.0×10−4Pa以下である。また、蒸着時の基板温度によって半導体膜、ひいては電界効果トランジスタの特性が変化するので、注意深く基板温度を選択するのが好ましい。蒸着時の基板温度は通常、0〜200℃、好ましくは10〜150℃である。また、蒸着速度は、通常0.001nm/秒〜10nm/秒であり、好ましくは0.01nm/秒〜1nm/秒である。半導体材料から形成される半導体層の膜厚は、通常1nm〜10μm、好ましくは5nm〜1μmである。
尚、半導体層形成のための材料を加熱、蒸発させ基板に付着させる方法に代えて、加速したアルゴン等のイオンを材料ターゲットに衝突させて材料原子を叩きだし基板に付着させるスパッタリング法を用いてもよい。特に無機系の半導体材料は沸点が高く、蒸着が困難なこともあり、様々なプロセスが使用できる。
また半導体材料を積層構造とするためには、順次に各々の材料を加熱、蒸発させ、積層させることにより得られる。混合する場合には、通常、各々の材料を同時に加熱、蒸発させる共蒸着により材料の混合した構造の半導体層を得ることが出来る。
この方法では、前記材料を溶媒に溶解又は分散し、基板(絶縁体層、ソース電極及びドレイン電極の露出部)に塗布する。塗布の方法としては、キャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等のコーティング法や、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法等、さらにはこれらの手法を複数組み合わせた方法を採用しうる。更に、塗布方法に類似した方法として水面上に形成した単分子膜を基板に移し積層するラングミュアプロジェクト法、液晶や融液状態を2枚の基板で挟んだり毛管現象で基板間に導入する方法等も採用出来る。これらの方法により形成される半導体層の膜厚は、機能を損なわない範囲で薄い方が好ましい。膜厚が大きくなると漏れ電流が大きくなる懸念がある。半導体層の膜厚は、通常1nm〜10μm、好ましくは5nm〜5μm、より好ましくは10nm〜3μmである。
また半導体材料の混合膜は、各材料を一緒に溶解させ、上記のプロセスで成膜することによって容易に得られる。しかし積層構造とするためには、それぞれの材料の溶媒への溶解度の問題や、積層時に先に出来た膜が後から成膜する材料の溶液に浸食されてしまうこともあり、成膜条件の最適化が必要となる。半導体層を形成するにあたり、このような溶液プロセスを用いると、比較的安価な設備で大面積の電界効果トランジスタを製造できるという利点がある。
半導体層上に保護層7を形成すると、外気の影響を最小限にでき、又、電界効果トランジスタの電気的特性を安定化できるという利点がある(図2(6)参照)。保護層材料としては前記のものが使用される。保護層7の膜厚は、その目的に応じて任意の膜厚を採用できるが、通常100nm〜1mmである。
保護層を成膜するにあたっては各種の方法を採用しうる。保護層が樹脂からなる場合は、例えば、樹脂溶液を塗布後、乾燥させて樹脂膜とする方法、樹脂モノマーを塗布あるいは蒸着したのち重合する方法などが挙げられる。成膜後に架橋処理を行ってもよい。保護層が無機物からなる場合は、例えば、スパッタリング法、蒸着法等の真空プロセスでの形成方法や、ゾルゲル法等の溶液プロセスでの形成方法も用いることができる。
本発明の電界効果トランジスタにおいては半導体層上の他、各層の間にも必要に応じて保護層を設けることが出来る。それらの層は電界効果トランジスタの電気的特性の安定化に役立つ。
また、本発明の電界効果トランジスタによって形成されたCMOS回路は、メモリー回路素子、信号ドライバー回路素子、信号処理回路素子などのデジタル素子やアナログ素子としても利用できる。さらにこれらを組み合わせることによりICカードやICタグの作製が可能となる。更に、本発明の電界効果トランジスタは、化学物質等の外部刺激によりその特性に変化を起こすことができるので、FETセンサーとしての利用も可能である。
これまでにも比較的高い移動度を真空中で示す素子の報告は幾つかあったが、大気中で安定に高移動度のアンバイポーラー特性を示す報告はされていなかった。それに対して、本発明における式(1)、式(2)または式(3)で表される化合物を少なくとも1種と電子輸送型の半導体材料を有することを特徴とする電界効果トランジスタは、大気中で高い移動度を示し、アンバイポーラー特性を有する。特に各々の材料を積層構造とすることで、単層の状態と比較して高い移動度と、大気中における高い安定性を示す。さらに、本発明の電界効果トランジスタは長期間にわたって劣化が少ない安定なアンバイポーラー特性を示す。また、本発明の電界効果トランジスタは、複雑な製造プロセスを経ずに安価な半導体回路が作製でき、さらに長期間にわたって安定な電気特性を有し、安定性が高く寿命が長い電子回路が得られるという利点がある。
J.Am.Chem.Soc.,1997,119,4578. に記載の方法に従って得られた1,4−ジブロモ−2,5−ビス(フェニルエチニル)ベンゼン1部をテトラヒドロフラン18部に溶解し、−78℃で1.6モルt−ブチルリチウム(ペンタン溶液)6部を加えてリチオ化した後、セレン粉末0.2部と反応させることにより黄色粉末を得た。得られた粉末を真空昇華精製を行い、化合物(34)の精製物0.3gを得た。
合成例2
合成例1のセレン粉末の代わりに硫黄粉末を用いることで、化合物(1)の精製物0.3gを得た。
非特許文献 S.Y.Zherdeva et al.,Zh.Organi.Khimi,1980,16,430 を参考に、1から4の合成を以下のように行った。市販の化合物である1をクロロスルホン酸中で加熱することで2へと定量的に変換した。続いて2を酢酸中に懸濁し、55%ヨウ化水素酸を加えて加熱し、生成した沈殿を一旦濾取後、再度、沈殿物を酢酸中に臭素とともに混合・加熱して3を黄色の沈殿物として得た。さらに、3と薄片状の錫を酢酸中に加え加熱し、濃塩酸を徐々に加えることで4を白色の沈殿として得た。
4(2g)をエタノール(60mL)、硫酸(4.0mL)と混合し、これに亜硝酸イソアミル(3.0mL)を加えた後、ヨウ化カリウム(3.6g)と反応させることで、ジヨード体5(2.9g)を得た。続いて、5(0.5g)とフェニルボロン酸(0.3g)、リン酸三カリウム(3.4g)をDMF(20ml)中で、パラジウム・テトラキストリフェニルホスフィン(0.1g)存在下、反応させることでDPh−BTBT(0.2g)を得た。
ヘキサメチルジシラザン処理を行った300nmのSiO2熱酸化膜付きnドープシリコンウェハー(面抵抗0.02Ω・cm以下)上に、レジスト材料を塗布、露光パターニングし、ここにクロムを1nm、さらに金を40nm蒸着した。次いでレジストを剥離して、ソース電極(1)及びドレイン電極(3)を形成させた(チャネル長25μm×チャネル幅4mm×19個であるくし型電極)。この電極の設けられたシリコンウェハーを真空蒸着装置内に設置し、装置内の真空度が1.0×10−3Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱蒸着法によって、化合物No.34(式(4)及び表1参照)を30nmの厚さに、次いでC60フラーレンを30nmの厚さに室温(25℃)にて蒸着し、半導体層(2)を形成して本発明の電界効果トランジスタを得た。本実施例の有機系電界効果トランジスタにおいては、熱酸化膜付きnドープシリコンウェハーにおける熱酸化膜が絶縁層(4)の機能を有し、nドープシリコンウェハーが基板(6)及びゲート層(5)の機能を有している(図3を参照)。
実施例1において、化合物No.34を化合物No.1(式(4)及び表1参照)に変更した以外は実施例1と同様にして、本発明の電界効果トランジスタを作製した。半導体特性を測定した結果、電流飽和が観測された。得られた電圧電流曲線より、本素子はアンバイポーラー型の特性を示し、その正孔移動度は0.10cm2/V・s、電子移動度は0.17cm2/V・sであった。また、同じ素子を大気中で測定した場合の正孔移動度は1.2×10−2cm2/V・sで電子移動度は1.2×10−3cm2/V・sのアンバイポーラー特性を示した。
実施例1において、半導体層(2)として化合物No.34(式(4)及び表1参照)を30nmの厚さに、次いでC60フラーレンとCuPc(1:1)の共蒸着層を10nmの厚さに、さらにC60を20nmの厚さにさらに2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンを10nmの厚さに室温(25℃)にて蒸着した以外は実施例1と同様にして、本発明の電界効果トランジスタを作製した。大気下にて半導体特性を測定した結果、電流飽和が観測された。得られた電圧電流曲線より、本素子はアンバイポーラー型の特性を示し、その正孔移動度は1.2×10−1cm2/V・s、電子移動度は7.0×10−2cm2/V・sであった。
実施例1において、半導体層(2)として化合物No.1(式(4)及び表1参照)を10nmの厚さに、次いでC60を10nmの厚さに、さらに化合物No.1を60nmの厚さに室温(25℃)にて蒸着した以外は実施例1と同様にして、本発明の電界効果トランジスタを作製した。半導体特性を測定した結果、電流飽和が観測され、得られた電圧電流曲線より、本素子はアンバイポーラー型の特性を示し、その正孔移動度は5.8×10−2cm2/V・s、電子移動度は0.25cm2/V・sであった。
実施例1において、化合物No.34を化合物No.152(式(6)及び表3参照)に変更した以外は実施例1と同様にして、本発明の電界効果トランジスタを作製した。半導体特性を測定した結果、電流飽和が観測され、得られた電圧電流曲線より、本素子はアンバイポーラー型の特性を示し、その正孔移動度は8.5×10−4cm2/V・s、電子移動度は6.6×10−2cm2/V・sであった。また同じ素子を大気中で測定した場合の正孔移動度は2.5×10−4cm2/V・sで電子移動度は6.1×10−4cm2/V・sのアンバイポーラー特性を示した。
実施例1において、半導体層(2)として化合物No.34(式(4)及び表1参照)を30nmの厚さに、次いでC60を30nmの厚さに、さらに2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンを30nmの厚さに室温(25℃)にて蒸着した以外は実施例1と同様にして、本発明の電界効果トランジスタを作製した。半導体特性を測定した結果、電流飽和が観測され、得られた電圧電流曲線より、本素子はアンバイポーラー型の特性を示し、その正孔移動度は9.4×10−2cm2/V・s、電子移動度は0.14cm2/V・sであった。また同じ素子を大気中で測定した場合の正孔移動度は2.0×10−2cm2/V・sで電子移動度は2.0×10−2cm2/V・sのアンバイポーラー特性を示した。
300nmのSiO2熱酸化膜付きnドープシリコンウェハー(面抵抗0.02Ω・cm以下)を真空蒸着装置内に設置し、装置内の真空度が1.0×10−3Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱蒸着法によって、化合物No.34(式(4)及び表1参照)を15nmの厚さに、次いでC60フラーレンを40nmの厚さに室温(25℃)にて蒸着し、半導体層(2)を形成した。引き続き電極作製の為、マスクを設置した後、抵抗加熱蒸着法によって、金の電極(ソース及びドレイン電極:チャネル長100μm×チャネル幅2mm)を40nmの厚さに蒸着し、本発明の電界効果トランジスタを得た。本実施例における電界効果トランジスタはトップコンタクト型であり、熱酸化膜付きnドープシリコンウェハーにおける熱酸化膜が絶縁体層(4)の機能を有し、nドープシリコンウェハーが基板(6)及びゲート電極(5)の機能を有している(図1−Bを参照)。
得られた電界効果トランジスタを真空プローバー内に設置し、真空ポンプで約5×10−3Paに減圧し、半導体パラメーターアナライザー4155C(Agilent社製)を用いて半導体特性を測定した。半導体特性はゲート電圧を10Vから−60Vまで10Vステップで走査し、又ドレイン電圧を10Vから−60Vまで走査し、ドレイン電流−ドレイン電圧を測定した。その結果、電流飽和が観測され、その飽和領域から求めた正孔移動度は0.13cm2/Vs、閾値電圧は−33Vであった。逆にゲート電圧を−10Vから60Vまで10Vステップで走査し、又ドレイン電圧を−10Vから60Vまで走査し、ドレイン電流−ドレイン電圧を測定した。その結果、電流飽和が観測され、その飽和領域から求めた電子移動度は2.95cm2/Vs、閾値電圧は37Vであり、アンバイポーラー特性の発現が観測された。
実施例7において、化合物No.34の膜厚を60nmに変更した以外は実施例7と同様にして、本発明の電界効果トランジスタを作製した。得られた電界効果トランジスタを真空プローバー内に設置し、同様に半導体特性を測定した。その結果、電流飽和が観測され、その飽和領域から求めた正孔移動度は0.15cm2/Vs、電子移動度は1.03cm2/Vsでありアンバイポーラー特性の発現が観測された。
ヘキサメチルジシラザン処理を行った300nmのSiO2熱酸化膜付きnドープシリコンウェハー(面抵抗0.02Ω・cm以下)を真空蒸着装置内に設置し、装置内の真空度が1.0×10−3Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱蒸着法によって、化合物No.152(式(6)及び表3参照)を40nmの厚さに、次いでC60フラーレンを40nmの厚さに室温(25℃)にて蒸着し、半導体層(2)を形成した。引き続き電極作製の為、マスクを設置した後、抵抗加熱蒸着法によって、金の電極(ソース及びドレイン電極:チャネル長50μm×チャネル幅2mm)を40nmの厚さに蒸着し、本発明の電界効果トランジスタを得た。本実施例における電界効果トランジスタはトップコンタクト型であり、熱酸化膜付きnドープシリコンウェハーにおける熱酸化膜が絶縁体層(4)の機能を有し、nドープシリコンウェハーが基板(6)及びゲート電極(5)の機能を有している(図1−Bを参照)。
得られた電界効果トランジスタを真空プローバー内に設置し、大気下における半導体特性を測定した。半導体特性はゲート電圧を10Vから−100Vまで20Vステップで走査し、又ドレイン電圧を10Vから−100Vまで走査し、ドレイン電流−ドレイン電圧を測定した。その結果、電流飽和が観測され、その飽和領域から求めた正孔移動度は0.23cm2/Vs、閾値電圧は−45Vであった。逆にゲート電圧を−10Vから100Vまで20Vステップで走査し、又ドレイン電圧を−10Vから100Vまで走査し、ドレイン電流−ドレイン電圧を測定した。その結果、電流飽和が観測され、その飽和領域から求めた電子移動度は0.21cm2/Vs、閾値電圧は34Vであり、アンバイポーラー特性の発現が観測された。
2半導体層
3ドレイン電極
4絶縁体層
5ゲート電極
6基板
7保護層
Claims (7)
- 電子輸送型の半導体材料がフラーレン、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンからなる群から選ばれるかご状炭素ナノ物質である、請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
- 電子輸送型の半導体材料がフラーレンである、請求項2に記載の電界効果トランジスタ。
- 式(1)、(2)または(3)で表される化合物の少なくとも1種を含む層と、電子輸送型の半導体材料を含む層が積層構造を有している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタ。
- 絶縁体層と、それにより隔離されたゲート電極及びその絶縁体層に接するように設けられたソース電極とドレイン電極を有するボトムコンタクト型構造の電極上に、式(1)、(2)または(3)で表される化合物を含む層、及び電子輸送型の半導体材料を含む層が積層されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタ。
- ゲート電極上に設けられた絶縁体層上に、式(1)、(2)または(3)で表される化合物を含む層、及び電子輸送型の半導体材料を含む層が積層され、さらに該層の最上部に接するようにソース電極及びドレイン電極がそれぞれ設けられているトップコンタクト型の、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタ。
- 大気下で電子と正孔の電荷において0.01cm2/Vs以上の移動度を示す、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアンバイポーラー型電界効果トランジスタ。
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