JPWO2007119404A1 - Ni基超合金とその製造方法およびタービンブレードまたはタービンベーン部品 - Google Patents

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Abstract

化学成分組成が、Cr:3.0−5.0wt%、Co:5.0−10.0wt%、Mo:0.5−3.0wt%、W:8.0−10.0wt%、Ta:5.0−8.0wt%、Nb:3.0wt%以下、Al:4.5−6.0wt%、Ti:0.1−2.0wt%、Re:3.0超−4.0wt%、Ru:0.2−4.0wt%、Hf:0.01−0.2wt%、残部がNiと不可避的不純物からなる。

Description

本発明は、Ni基超合金とその製造方法およびタービンブレードまたはタービンベーン部品に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、高温での組織安定性とクリープ特性に優れ、ジェットエンジンやガスタービンなどのタービンブレードやタービンベーンなどの高温、高応力下で使用される部材として好適な新しいNi基超合金とその製造方法およびタービンブレードまたはタービンベーン部品に関するものである。
ガスタービンの高効率化にともなう燃焼温度の上昇によりタービンの動翼および静翼材料は、普通鋳造合金から、応力軸方向の結晶粒界をなくし、高温でのクリープ強度を向上させた一方向凝固合金、さらに、結晶粒界そのものをなくした単結晶合金へと変遷してきた。そして、単結晶合金は、より一層のクリープ強度の向上を目指し、第1世代単結晶合金から第2世代、第3世代の単結晶合金へと開発が進められてきた。第1世代単結晶合金はレニウム(Re)未添加の合金であり、CMSX−2(特許文献1)、Rene’N4(特許文献2)、PWA−1480(特許文献3)などがある。
第2世代単結晶合金は、レニウムを3%程度添加することで、第1世代単結晶合金より約30℃クリープ耐用温度を向上させた合金であり、CMSX−4(特許文献4)、PWA−1484(特許文献5)、Rene’N5(特許文献6)などがある。
第3世代単結晶合金は、レニウムを5〜6%添加することでクリープ耐用温度の向上を図った合金であり、CMSX−10(特許文献7)などがある。上記単結晶超合金は、主として航空機用のジェットエンジンの翼材料としてめざましく発展したものであるが、産業用の大型ガスタービンにも、燃焼効率の向上を目的とした高温化の要請により技術転用が図られている。
特開昭59−19032号公報 US特許5399313公報 特開昭53−146223号公報 US特許4643782公報 US特許4719080公報 特開平5−59474号公報 特開平7−138683号公報
ジェットエンジンやガスタービンなどの翼材料には、高温での使用時にTCP(Topologically Close-Packed phase)相が生成しないこと、すなわち良好な組織安定性が求められる。
第3世代の単結晶合金ではレニウムを5〜6%添加することにより、第2世代の単結晶に対して高強度化を図ることができた。しかしながら、その反面、長時間の使用によりクリープおよび低サイクル破壊の起点となるTCP相が生成しやすい。この点から第3世代の単結晶超合金を大型ガスタービンに適用するのは困難であり、燃焼温度の上昇にともなうよりクリープ強度の高い材料の実現という要望に応えられない。
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、高温環境下でのクリープ強度および組織安定性を向上させたNi基超合金とその製造方法およびNi基超合金から作製されたガスタービン用の高温部品、すなわち、タービンブレードまたはタービンベーン部品を提供することを課題としている。
本発明は、上記の課題を解決するためのものとして、以下のことを特徴としている。
第1には、Cr:3.0−5.0wt%、Co:5.0−10.0wt%、Mo:0.5−3.0wt%、W:8.0−10.0wt%、Ta:5.0−8.0wt%、Nb:3.0wt%以下、Al:4.5−6.0wt%、Ti:0.1−2.0wt%、Re:3.0超−4.0wt%、Ru:0.2−4.0wt%、Hf:0.01−0.2wt%、残部がNiと不可避的不純物からなる化学成分組成を有する。
第2には、上記第1の特徴において、Cr:4.0−5.0wt%、Co:7.0−8.0wt%、Mo:1.2−2.2wt%、W:8.0−8.8wt%、Ta:5.7−6.7wt%、Al:4.8−5.6wt%、Ti:0.2−0.8wt%、Re:3.2−3.8wt%、Ru:1.5−2.5wt%である。
第3には、上記第1または第2の特徴に加え、C:0.05wt%以下、Zr:0.1wt%以下、V:0.5wt%以下、B:0.02wt%以下、Si:0.1wt%以下、Y:0.2wt%以下、La:0.2wt%以下、Ce:0.2wt%以下の元素を単独または複合的に含有する。
第4には、上記第1ないし第3のいずれか一つの特徴を有するNi基超合金を、普通鋳造法、一方向凝固法または単結晶凝固法により鋳造する。
第5には、上記第4に特徴において、鋳造後に、1260−1300℃で20分−2時間の予備熱処理を施し、次いで1300−1350℃での3−10時間の溶体化処理、さらに、1050−1150℃での2−8時間の1次時効処理および800−900℃での10−24時間の2次時効処理を施す。
第6には、タービンブレードまたはタービンベーン部品は、上記第1ないし第3のいずれかの一つの特徴を有するNi基超合金を少なくともその構成の一部とする。
本発明によれば、大型ガスタービンのタービンブレードまたはタービンベーン部品等への適用性に優れた、高温環境下でのクリープ強度および組織安定性の高いNi基超合金が実現され、このようなNi基超合金から作製された大型のガスタービン部品が提供されることになる。
図1は、実施例で作製した本発明のNi基超合金および従来合金CMSX−4のクリープ強度をラーソンミラー線図で比較した図である。
第1の発明のNi基超合金において、Coは、ガンマ相のNiと置換してマトリックスを固溶強化し、高温強度を高める。Coの含有量は5.0−10.0wt%である。5wt%未満では高いクリープ強度を期待することができない。Coの含有量が10wt%を超えると、ガンマプライム量が低減し、高いクリープ強度を期待することができない。
Crは、耐高温腐食性を向上させる有効な元素として必要である。Crの含有量は3.0−5.0wt%とすることが必要である。本発明においてCrの含有量を3.0wt%以上と規定したのは、含有量が3.0wt%未満では所望の耐高温腐食性を確保することができないためである。Crの含有量が5.0wt%を超えると、ガンマプライム相の析出が抑制されるとともに、σ相やμ相などの有害相が生成し、高温強度が低下する。
Moは、格子定数ミスフィットを負に移行させて、ガンマ相とガンマプライム相の界面に緻密な転位網を形成させ、高温のクリープ強度を向上させる有効な元素として必要である。Moの含有量は0.5−3.0wt%とすることが必要である。
Wは、高温から低温までのクリープ強度を向上させる効果があるので、本発明のNi基超合金に8.0−10.0wt%添加することが必要である。一方、含有量が10.0wt%を超えると有害相の生成を助長するため、含有量の上限は10.0wt%とする。
Alは、高温強度向上に不可欠なガンマプライム相を形成させるために4.5wt%以上必要である。しかし6.0wt%を超えると共晶ガンマプライムと呼ばれる粗大な結晶が生成しクリープ強度が低下する。このため、含有量は4.5−6.0wt%とする。
Taは、ガンマプライム相を強化してクリープ強度を向上させる有効な元素である。したがって、5.0−8.0wt%の含有が必要である。8.0wt%を超えると有害相の生成が助長されるので、上限は8.0wt%とする。
Nbは、ガンマプライム相を強化してクリープ強度を向上させる有効な元素である。本発明のNi基超合金では、ガンマプライム相の固溶強化が主としてTaによってなされるが、Nbによっても同様の機能が得られる。Taを単独で含有する場合に比べ、Nbを複合含有する場合には固溶量を増大させることができる利点がある。ただし、含有量が3.0wt%を超えると有害相の生成が助長されるので、含有量は3.0wt%以下とする。
Tiは、ガンマプライム相を強化してクリープ強度を向上させる有効な元素である。したがって、Tiの含有量は0.1−2.0wt%である必要がある。含有量が2.0wt%を超えると有害相の生成が助長されるので、上限は2.0wt%とする。
Reは、ガンマ相を固溶強化して耐高温腐食性を向上させる元素である。含有量が3.0wt%以下ではクリープ強度が低下し、4.0wt%を超えると、Re−Mo、Re−W、Re−Cr−WなどのTCP相の生成を促進させクリープ強度が低下するので、3.0超−4.0wt%とする必要がある。
Ruは、低温側のクリープ強度を向上させる元素である。Ruの含有量は0.2−4.0wt%とする必要がある。含有量が0.2wt%未満では有害相を防ぐ効果がなく、4.0wt%を超えるとクリープ強度が低下する。
Hfは、耐酸化性を向上させる効果があるので、本発明のNi基超合金に添加することが有効である。しかしながら、含有量が0.2wt%を超えると有害相の生成を助長するので、含有量は0.01−0.2wt%とする必要がある。
第2の発明は、Ni基超合金のより好ましい組成範囲について規定している。すなわち、Cr:4.0−5.0wt%、Co:7.0−8.0wt%、Mo:1.2−2.2wt%、W:8.0−8.8wt%、Ta:5.7−6.7wt%、Al:4.8−5.6wt%、Ti:0.2−0.8wt%、Re:3.2−3.8wt%、Ru:1.5−2.5wt%である。
また、第3の発明のように、上記の第1または第2の発明のNi基超合金が、さらに以下のような特定の範囲の元素を含有させることが考慮される。
Vは、低温側のクリープ強度を向上させる効果があるので、本発明のNi基合金に添加することが有効である。しかしながら、添加量が0.5wt%を超えると有害相の生成を助長するので、添加量は0.5wt%以下とする必要がある。
Zrは、結晶粒界強度を向上させる効果があるので、本発明のNi基超合金に添加することが有効である。しかしながら、添加量が0.1wt%を超えると有害相の生成を助長するので、添加量は0.1wt%以下とする必要がある。
Siは、耐酸化性を向上させる効果があるので、本発明のNi基超合金に添加することが有効である。しかしながら、添加量が0.1wt%を超えると有害相の生成を助長するので、添加量は0.1wt%以下とする必要がある。
Cは、炭化物を結晶粒界に生成させクリープ強度を向上させる効果があるので、本発明のNi基超合金に添加することが有効である。しかしながら、添加量が0.05wt%を超えると炭化物量が過多となり合金が脆化するので、添加量は0.05wt%以下とする必要がある。
Bは、結晶粒界に偏析して強度を向上させる効果があるので、本発明のNi基超合金に添加することが有効である。しかしながら、添加量が0.02wt%を超えると融点の低下を招くので、添加量は0.02wt%以下とする必要がある。
Yは、耐酸化性を向上させる効果があるので、本発明のNi基超合金に添加することが有効である。しかしながら、添加量が0.2wt%を超えるとかえって耐酸化性を低下させるので、添加量は0.2wt%以下とする必要がある。
Laは、耐酸化性を向上させる効果があるので、本発明のNi基合金に添加することが有効である。しかしながら、添加量が0.2wt%を超えるとかえって耐酸化性を低下させるので、添加量は0.2wt%以下とする必要がある。
Ceは、耐酸化性を向上させる効果があるので、本発明のNi基超合金に添加することが有効である。しかしながら、添加量が0.2wt%を超えるとかえって耐酸化性を低下させるので、添加量は0.2wt%以下とする必要がある。
以上のような化学成分組成を有する本発明のNi基超合金は、鋳造により製造することができる。そして、鋳造に際しては、たとえば、普通鋳造法、一方向凝固法または単結晶凝固法によって多結晶合金、一方向凝固合金または単結晶合金としてNi基超合金を製造することができる。普通鋳造法は、基本的に所望の化学成分組成に調合されたインゴットを用いて鋳造する方法である。一方向凝固法は、所望の化学成分組成に調合されたインゴットを用いて鋳造する方法であるが、鋳型温度を超合金の凝固温度である約1500℃以上に加熱しておき、超合金を鋳込んだ後に、たとえば加熱炉から徐々に遠ざけて温度勾配を与え、多数の結晶を一方向に成長させる方法である。単結晶凝固法は、一方向凝固法とほぼ同様であるが、所望の品物が凝固する手前にジグザグまたは螺旋型のセレクター部を設け、一方向で凝固してきた多数の結晶をセレクター部で一つの結晶にし、所望の品物を製造する方法である。
本発明のNi基超合金は、鋳造後に熱処理を施すことにより高クリープ強度が得られる。標準的な熱処理は以下の通りである。1260−1300℃で20分−2時間の予備熱処理を施した後、1300−1350℃で3−10時間の溶体化処理を行う。次いで、ガンマプライム相析出を目的にした1次時効処理を1050−1150℃の温度域に2−8時間加熱して行う。この1時時効処理は耐熱・耐酸化を目的としたコーティング処理と兼ねることが可能である。空冷した後、引き続きガンマプライム相安定化を目的とした2次時効処理を800−900℃で10−24時間実施した後、空冷する。それぞれの空冷は、不活性ガス下での冷却に置き換えることもできる。以上の製造方法により作製されたNi基超合金によりガスタービンのタービンブレードまたはタービンベーン部品などの高温部品が実現される。
以下実施例を示し、本発明についてさらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって本発明が限定されることはない。
単結晶凝固法による鋳造によって本発明のNi基超合金(実施例の組成:4.5wt%Cr、7.5wt%Co、1.7wt%Mo、8.3wt%W、5.2wt%Al、6.2wt%Ta、0.5wt%Ti、0.1wt%Hf、3.5wt%Re、2.0wt%Ru、残部Ni)の単結晶を製造し、1280℃で1時間の予備熱処理を施した後、溶体化処理および時効処理を行った。溶体化処理は、1300℃に1時間保持した後、1320℃まで昇温し、5時間保持して行った。時効処理は、1100℃で4時間保持する1次時効処理と、その後の870℃で20時間保持する2次時効処理とした。
このように溶体化処理および時効処理を施した試料についてクリープ強度を測定した。クリープ試験では、温度900℃、応力392MPaと温度1000℃、応力245MPaおよび温度1100℃、応力137MPaの3条件で試料がクリープ破断するまでの時間を寿命とした。破断後の金属組織にTCPの析出は観察されなかった。
商用のNi基単結晶合金CMSX−4と比較した。
作製した試料のクリープ試験結果を従来合金とともに図1に示した。
図1は、クリープ試験結果から求めたラーソンミラープロット(たとえば、丸山公一、中島英治:高温強度の材料科学(内田老鶴圃出版)、1997、pp.251−270を参照)で整理して示した。図1から明らかなように、本発明のNi基超合金は、従来合金CMSX−4に比べ,高いクリープ強度を有していることがわかる。
大型ガスタービンのタービンブレードまたはタービンベーン部品などへの適用性に優れた、高温環境下でのクリープ強度および組織安定性の高いNi基超合金が実現され、このようなNi基超合金から作製された大型ガスタービン部品が提供される。

Claims (6)

  1. Cr:3.0−5.0wt%、Co:5.0−10.0wt%、Mo:0.5−3.0wt%、W:8.0−10.0wt%、Ta:5.0−8.0wt%、Nb:3.0wt%以下、Al:4.5−6.0wt%、Ti:0.1−2.0wt%、Re:3.0超−4.0wt%、Ru:0.2−4.0wt%、Hf:0.01−0.2wt%、残部がNiと不可避的不純物からなる化学成分組成を有することを特徴とするNi基超合金。
  2. Cr:4.0−5.0wt%、Co:7.0−8.0wt%、Mo:1.2−2.2wt%、W:8.0−8.8wt%、Ta:5.7−6.7wt%、Al:4.8−5.6wt%、Ti:0.2−0.8wt%、Re:3.2−3.8wt%、Ru:1.5−2.5wt%であることを特徴とする請求項1に記載のNi基超合金。
  3. さらに、C:0.05wt%以下、Zr:0.1wt%以下、V:0.5wt%以下、B:0.02wt%以下、Si:0.1wt%以下、Y:0.2wt%以下、La:0.2wt%以下、Ce:0.2wt%以下の元素を単独または複合的に含有することを特徴とする請求項1または2に記載のNi基超合金。
  4. 請求項1ないし3いずれかに一項に記載のNi基超合金を、普通鋳造法、一方向凝固法または単結晶凝固法により鋳造することを特徴とするNi基超合金の製造方法。
  5. 鋳造後に、1260−1300℃で20分−2時間の予備熱処理を施し、次いで1300−1350℃での3−10時間の溶体化処理、さらに、1050−1150℃での2−8時間の1次時効処理および800−900℃での10−24時間の2次時効処理を施すことを特徴とする請求項4に記載のNi基超合金の製造方法。
  6. 請求項1ないし3のいずれか一項に記載のNi基超合金を少なくともその構成の一部としていることを特徴とするタービンブレードまたはタービンベーン部品。
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