JPWO2007114108A1 - アクリルゴムおよびその製造方法 - Google Patents

アクリルゴムおよびその製造方法

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Abstract

付加開裂型連鎖移動剤の存在下で、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分として含有する単量体混合物を重合して得られるアクリルゴムであって、前記単量体混合物100重量部に対する、前記付加開裂型連鎖移動剤の使用量が0.0001〜1重量部であるアクリルゴム。この発明によると、常態物性および耐熱性を良好に保ちつつ、ロール加工性および成形加工性の向上されたアクリルゴムを提供することできる。

Description

本発明は、アクリルゴムおよびその製造方法に係り、さらに詳しくは、ロール加工性および成形加工性に優れたアクリルゴムおよびその製造方法に関する。
アクリルゴムは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主単量体単位として有するゴムであり、耐熱性や耐油性などに優れるという性質を有している。そのため、自動車関連の分野等において、シール、ホース、チューブ、ベルト等の、オイルと接触して使用されるゴム部品の材料として広く用いられている。アクリルゴムには、これらのゴム部品として使用できるように架橋させてゴム弾性を付与しているが、そのために活性な架橋点を有する架橋性モノマーが通常1〜5重量%程度共重合されている。架橋性モノマーとしては、一般的には、2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルクロロアセテートなどの塩素系モノマーや、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ系モノマーが使用されている。
このような架橋性アクリルゴムは、通常、カーボンブラック等の充填材や架橋剤などを混合して、架橋性アクリルゴム組成物とし、所望の形状を有する成型体に成形され、種々の用途に用いられている。そのため、このような架橋性アクリルゴムには、優れた耐熱性および耐油性と共に、ロール加工性(ロールで混練する際におけるゴムの付着度合い)や成形加工性(成形時におけるゴムの流動性やバリの発生の度合い等)に優れていることが求められている。さらには、製造コストの低減という観点から、短い重合時間で所望の特性を有するアクリルゴムを得ることなども求められている。
たとえば、特許文献1には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主単量体単位として有する共重合体ラテックスを製造する際に、重合連鎖移動剤として1,1−ジフェニルエチレンを含有するものを使用する方法が開示されている。この文献では、このような方法を採用することで、得られるラテックスのべとつきを防止することを目的としている。しかしながら、その一方で、その具体的な実施例では、乳化重合を2段階で行っているとともに、さらには、その重合時間も10時間以上としており、生産性に劣るという問題がある。特に、この文献記載の方法では、たとえば、重合時間を5時間程度と短くした場合には、得られるゴムのロール加工性や成形加工性が悪化する結果となってしまう。
特開平11−217409号公報
本発明の目的は、常態物性および耐熱性を良好に保ちつつ、ロール加工性(ロールで混練する際におけるゴムの付着度合い)および成形加工性(成形時におけるゴムの流動性やバリの発生の度合い等)の向上されたアクリルゴムおよびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を進めた結果、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分として含有する単量体混合物を重合して得られるアクリルゴムにおいて、特定量の付加開裂型連鎖移動剤を用いて、単量体混合物の重合を行うことにより、上記目的を達成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、付加開裂型連鎖移動剤の存在下で、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分として含有する単量体混合物を重合して得られるアクリルゴムであって、
前記単量体混合物100重量部に対する、前記付加開裂型連鎖移動剤の使用量が0.0001〜1重量部であるアクリルゴムが提供される。
好ましくは、前記アクリルゴムは、前記付加開裂型連鎖移動剤とともに、チオール基を有する化合物の存在下で、前記単量体混合物を重合して得られるものである。
好ましくは、前記付加開裂型連鎖移動剤(A)と、前記チオール基を有する化合物(B)と、の比率(B/A)が、重量比で0.1〜100である。
好ましくは、前記付加開裂型連鎖移動剤が、α−メチルスチレンダイマーである。
好ましくは、前記チオール基を有する化合物が、t−ドデシルメルカプタンである。
好ましくは、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルから選択される少なくとも1種である。
好ましくは、全単量体100重量%に対する、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の使用量が、80〜99.9重量%である。
好ましくは、前記単量体混合物が、さらにエチレン性不飽和ニトリル単量体を含有し、より好ましくは、前記エチレン性不飽和ニトリル単量体が、アクリロニトリルである。
好ましくは、全単量体100重量%に対する、前記エチレン性不飽和ニトリル単量体の使用量が、0〜20重量%(ただし、0重量%は含まない)である。
好ましくは、前記単量体混合物が、さらに架橋性単量体を含有し、より好ましくは、前記架橋性単量体が、ブテンジオン酸モノエステル単量体であり、さらに好ましくは、フマル酸モノブチルである。
好ましくは、全単量体100重量%に対する、前記架橋性単量体の使用量が、0.1〜10重量%である。
また、本発明によれば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分として含有する単量体混合物を重合して得られるアクリルゴムを製造する方法であって、
付加開裂型連鎖移動剤の存在下で、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分として含有する単量体混合物を重合させる工程を有し、
前記単量体混合物100重量部に対する、前記付加開裂型連鎖移動剤の使用量を0.0001〜1重量部とするアクリルゴムの製造方法が提供される。
好ましくは、前記単量体混合物を重合させる工程を、反応に使用する前記単量体混合物のうち少なくとも一部を、反応系に連続的に添加しながら乳化重合させる連続式の工程とし、かつ、乳化重合における前記単量体混合物の添加時間を、5時間以下とする。
あるいは、前記単量体混合物を重合させる工程を、反応に使用する全ての前記単量体混合物を予め反応系に仕込み、バッチ式にて乳化重合を行う工程とすることが好ましい。
なお、本発明において、“(メタ)アクリル酸アルキルエステル”とは、メタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステルの意であり、以下において、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルなども同様である。
本発明のアクリルゴムは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分として含有する単量体混合物を、特定量の付加開裂型連鎖移動剤の存在下で、重合して得られるものである。そのため、本発明のアクリルゴムは、常態物性および耐熱性が良好で、しかもロール加工性および成形加工性が向上されている。特に、本発明では、単量体混合物の重合時間を比較的短くした場合においても、上記特性を達成することができる。すなわち、ロール加工性や成形加工性を悪化させることなく、重合に要する時間を短縮することができ、そのため、生産性の向上を図ることができる。
以下、本発明のアクリルゴム、本発明のアクリルゴムの製造方法、およびこれらに架橋剤を含有してなる架橋性アクリルゴム組成物について説明する。
アクリルゴム
本発明のアクリルゴムは、付加開裂型連鎖移動剤の存在下で、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分として含有する単量体混合物を重合して得られるアクリルゴムである。
まず、本発明で用いる単量体混合物について説明する。
単量体混合物
本発明のアクリルゴムに用いられる単量体混合物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分として含有するものであれば良く、特に限定されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの炭素数1〜8の鎖状または環状飽和炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体;(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチルなどのアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体;などが挙げられる。これらは2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記炭素数1〜8の鎖状または環状飽和炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体のなかでは、アクリル酸エチルおよびアクリル酸ブチルが好ましい。また、上記アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体のなかでは、炭素数2〜8のアルコキシアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物が好ましく、アクリル酸2−メトキシエチルが特に好ましい。
全単量体100重量%中における、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の使用量は、好ましくは80〜99.9重量%であり、より好ましくは90〜99.5重量%である。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が少なすぎると加硫物の強度や伸びが劣る場合があり、逆に多すぎると加硫が困難になる場合がある。
本発明のアクリルゴムに用いられる単量体混合物には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体以外に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と共重合可能な他の単量体が含有されていても良い。
このような単量体としては、たとえば、エチレン性不飽和ニトリル単量体、ならびに、架橋性単量体である、ブテンジオン酸モノエステル単量体、エポキシ基含有単量体およびハロゲン含有単量体などが挙げられる。これらの架橋性単量体(ブテンジオン酸モノエステル単量体、エポキシ基含有単量体、ハロゲン含有単量体)を用いることにより、アクリルゴムに架橋性基を導入することができる。そして、後に説明するように架橋剤と組み合わせることで、架橋性アクリルゴム組成物とすることもできる。
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−クロロプロペンニトリル、2−ブテンニトリルなどが挙げられる。これらのなかでも、アクリロニトリルが好ましい。
全単量体100重量%中における、エチレン性不飽和ニトリル単量体の使用量は、好ましくは0〜20重量%であり、より好ましくは0〜10重量%である。エチレン性不飽和ニトリル単量体の使用量が多すぎると、得られるアクリルゴムの耐寒性に劣る場合がある。
ブテンジオン酸モノエステル単量体は、ブテンジオン酸、すなわちマレイン酸またはフマル酸の一つのカルボキシル基と、アルコールとを反応させて得られるモノエステル構造を有する化合物である。
マレイン酸モノエステル単量体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノペンチル、マレイン酸モノデシルなどのマレイン酸モノアルキルエステル単量体;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチル、マレイン酸モノシクロオクチル、マレイン酸モノメチルシクロヘキシル、マレイン酸モノ−3,5−ジメチルシクロヘキシル、マレイン酸モノジシクロペンタニル、マレイン酸モノイソボルニルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル単量体;マレイン酸モノシクロペンテニル、マレイン酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロヘプテニル、マレイン酸モノシクロオクテニル、マレイン酸ジシクロペンタジエニルなどのマレイン酸モノシクロアルケニルエステル単量体;などが挙げられる。
フマル酸モノエステル単量体としては、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノヘキシル、フマル酸モノオクチルなどのフマル酸モノアルキルエステル単量体;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチル、フマル酸モノシクロオクチル、フマル酸モノメチルシクロヘキシル、フマル酸モノ−3,5−ジメチルシクロヘキシル、フマル酸ジシクロペンタニル、フマル酸イソボニルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル単量体;フマル酸モノシクロペンテニル、フマル酸モノシクロヘキセニル、フマル酸モノシクロヘプテニル、フマル酸モノシクロオクテニル、フマル酸モノジシクロペンタジエニルなどのフマル酸モノシクロアルケニルエステル単量体;などが挙げられる。
エポキシ基含有単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらのなかでも、グリシジル(メタ)アクリレート及びアリルグリシジルエーテルが好ましい。
ハロゲン含有単量体としては、ビニルクロロアセテート、ビニルブロモアセテート、アリルクロロアセテート、ビニルクロロプロピオネート、ビニルクロロブチレート、ビニルブロモブチレート、2−クロロエチルアクリレート、3−クロロプロピルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、2−ヨードエチルアクリレート、2−クロロエチルビニルエーテル、クロロメチルビニルエーテル、4−クロロ−2−ブテニルアクリレート、ビニルベンジルクロリド、5−クロロメチル−2−ノルボルネン、5−クロロアセトキシメチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。これらのなかでも、ビニルクロロアセテート、ビニルベンジルクロリド、2−クロロエチルアクリレート及び2−クロロエチルビニルエーテルが好ましい。
上記架橋性単量体のなかでも、ブテンジオン酸モノエステル単量体が好ましく、フマル酸モノエステル単量体がより好ましく、フマル酸モノブチルが特に好ましい。
全単量体100重量%中における、架橋性単量体の使用量は、好ましくは0.1〜10重量%であり、より好ましくは0.5〜5重量%である。架橋性単量体の使用量が少なすぎると、得られる架橋物の架橋密度が十分でなくなるおそれがあり、良好な機械的特性が得られなくなるおそれがある。一方、多すぎると、得られる架橋物の伸びが低下する場合や、圧縮永久歪みが増大する場合がある。
単量体混合物の重合
本発明のアクリルゴムは、上記した各単量体からなる単量体混合物を、付加開裂型連鎖移動剤の存在下で、ラジカル重合することにより得ることができる。重合反応の形態としては、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法および溶液重合法のいずれも用いることができるが、重合反応の制御の容易性等から、従来公知のアクリルゴムの製造法として一般的に用いられている常圧下での乳化重合法によるのが好ましい。
本発明で用いられる付加開裂型連鎖移動剤は、ラジカル重合において、成長ラジカルに付加した後、可逆的に付加および開裂を繰り返すものである。具体的には、付加開裂連鎖移動剤が末端の成長ラジカルに付加した状態では成長が停止し、付加開裂連鎖移動剤が末端の成長ラジカルから開裂した状態では成長が進行することとなる。すなわち、成長ラジカルの再結合や不均化による反応停止が生じにくくなるものである。
本発明で用いられる付加開裂型連鎖移動剤としては、例えば、α−ブロモメチルスチレン、α−フェノキシメチルスチレン、α−(t−ブチルチオメチル)スチレン、α−アルキルチオメチルスチレン、α−t−ブチルペルオキシメチルスチレン、α−ベンジルオキシスチレン、メチル−α−フェノキシメチルアクリレート、メチル−α−アルキルチオメチルアクリレート、メチル−α−t−ブチルペルオキシメチルアクリレート、メチル−α−ベンジルオキシアクリレート、α−ブロモメチルアクリロニトリルなどのα−置換不飽和単量体;α−メチルスチレンダイマー、メチルメタクリレートダイマー、メタクリロニトリルダイマーなどのα−置換二量体;メチルメタクリレートトリマー、メタクリロニトリルトリマーなどのα−置換三量体;ベンジルジチオベンゾエート 、1−フェニルエチルジチオベンゾエート 、2−フェニル−2−プロピニルジチオベンゾエート 、1−アセトキシエチルジチオベンゾエート 、ベンジルジチオアセテート、t−ブチルジチオベンゾエート 、2−シアノ−2−プロピニルジチオベンゾエート、クミルジチオベンゾエート、ジチオ脂肪酸エステル若しくはその誘導体、ジチオ安息香酸エステル若しくはその誘導体などのジチオ化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、着色などの問題がないため、臭素や硫黄を含有しないものが好ましく、さらにまた、入手が容易であることから、α−置換二量体がより好ましく、α−メチルスチレンダイマーおよびメチルメタクリレートダイマーが、特に好ましく用いることができる。
単量体混合物を重合させる際に用いる付加開裂型連鎖移動剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.0001〜1重量部であり、好ましくは0.0005〜0.5重量部、より好ましくは0.0008〜0.25重量部、特に好ましくは0.001〜0.05重量部である。単量体混合物を重合させる際に、上記所定量の付加開裂型連鎖移動剤を存在させることにより、重合反応の進行を効果的に制御することができ、そのため、常態物性、耐熱性を良好に保ちつつ、得られるアクリルゴムのロール加工性および成形加工性を向上させることができる。
付加開裂型連鎖移動剤の使用量が少なすぎると、上記効果が得難くなる傾向にある。一方、使用量が多すぎると、重合反応を抑制しすぎるため、生産性が低下する傾向にある。
本発明においては、重合遅延剤として、付加開裂型連鎖移動剤に加えて、チオール基を有する化合物をさらに使用しても良い。チオール基を有する化合物を併用することにより、上記効果をより高めることができる。
このようなチオール基を有する化合物としては、たとえば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタンなどが挙げられる。これらのなかでも、t−ドデシルメルカプタンが特に好ましい。
チオール基を有する化合物を使用する場合における、その使用量は、付加開裂型連鎖移動剤の使用量をA[重量部]、チオール基を有する化合物の使用量をB[重量部]とした場合に、これらの比率(B/A)が、重量比で、好ましくは0.1〜100、より好ましくは0.5〜80である。比率(B/A)が大きすぎると、ロール加工性または成形加工性が悪くなる傾向にあり、一方、小さすぎると、チオール基を有する化合物を添加した効果が得られなくなる傾向にある。
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよく、重合は通常0〜70℃、好ましくは5〜50℃の温度範囲で行なわれる。
乳化重合に際しては、単量体混合物を、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下、さらに好ましくは2時間以下という短時間の間に、反応系に連続的に添加しながら重合させる方法を採用することが好ましい。本発明では、乳化重合を特定量の付加開裂型連鎖移動剤の存在下で行うため、単量体混合物の添加をこのような短時間で行い、重合反応時間の短縮化を図った場合においても、重合反応の急激な進行や、それに伴う重合系の発熱を有効に抑制することができる。特に、短い時間で重合反応を行った場合においても、重合の結果得られるアクリルゴムのロール加工性および成形加工性を良好に保つことができ、そのため、これらの特性を保ちながら、生産性の向上を図ることができる。
なお、この場合においては、単量体混合物の添加終了後、重合転化率が所望の値となるまで反応を継続させる(たとえば、0.5〜2時間程度)ことが好ましい。
さらに、本発明では、特定量の付加開裂型連鎖移動剤の使用量を調整することにより、乳化重合する際に、単量体混合物を反応系に除々に添加する方法に代えて、反応に使用する全ての単量体混合物を予め反応系に仕込み、バッチ式で重合反応を行うことも可能である。バッチ式で反応させることにより、重合時間のさらなる低減が可能となり、生産性のさらなる向上を図ることができる。バッチ式で重合反応を行う方法においても、単量体混合物を反応系に仕込んだ後、重合転化率が所望の値となるまで反応を継続させる(たとえば、0.5〜2時間程度)ことが好ましい。
また、付加開裂型連鎖移動剤、および必要に応じて添加するチオール基を有する化合物の添加時期としては、初期一括添加法、分割添加法、連続添加法などいずれの方法でも採用することができるが、本発明では、好ましくは初期一括添加法とする。
また、乳化重合に際しては、上記した重合遅延剤の他、重合開始剤、重合停止剤、乳化剤等の通常用いられる重合副資材を使用することができる。
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.01〜1.0重量部であることが好ましい。
また、過酸化物開始剤は還元剤との組み合わせで、レドックス系重合開始剤として使用することができる。この還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物1重量部に対して0.03〜10重量部であることが好ましい。
重合停止剤としては、たとえば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムなどが挙げられる。重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、通常、単量体混合物100重量部に対して、0.1〜2重量部である。
乳化剤としては、乳化重合に一般的に用いられている化合物であればいずれでもよい。たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸などの脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤などを挙げることができる。なかでも、アニオン性乳化剤が好適に用いられる。乳化剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.1〜10重量部である。
水の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、80〜500重量部、好ましくは100〜300重量部である。
乳化重合に際して、必要に応じて、分子量調整剤、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等のその他の重合副資材を使用することができる。
本発明のアクリルゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは10〜70、より好ましくは20〜60、特に好ましくは30〜50である。ムーニー粘度が小さすぎても、一方、大きすぎても、成形加工性に劣る場合がある。
架橋性アクリルゴム組成物
本発明のアクリルゴムは、好ましくは、ブテンジオン酸モノエステル単量体を用いて、架橋性基を導入し、さらには、架橋剤を配合することにより、架橋性アクリルゴム組成物とすることができる。このような架橋性アクリルゴム組成物を架橋反応により架橋物にして種々のゴム部品に使用することができる。
以下、このような構成を有する架橋性アクリルゴム組成物について、説明する。
架橋剤としては、アクリルゴムの架橋剤として一般的に用いられている化合物であればいずれでもよいが、架橋性を有する単量体として、ブテンジオン酸モノエステル単量体を用いる場合には、ブテンジオン酸モノエステル単量体のカルボキシル基等と比較的容易に架橋構造を形成し得るという理由より、アミン化合物が好ましく、多価アミン化合物が最も好ましい。
このような多価アミン化合物として、具体的には脂肪族多価アミン架橋剤、芳香族多価アミン架橋剤などが挙げられる。ただし、グアニジン化合物のように非共役の窒素−炭素二重結合を有するものは含まれない。
脂肪族多価アミン架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。
芳香族多価アミン架橋剤としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチルなどが挙げられる。
架橋性アクリルゴム組成物中における、架橋剤の配合量は、アクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.2〜7重量部、特に好ましくは0.3〜5重量部である。架橋剤の配合量が少なすぎると、架橋が十分に行われないおそれがあり、得られる架橋物の形状維持が困難になるおそれがある。一方、含有量が多すぎると、架橋物が硬くなりすぎるおそれがあり、架橋ゴムとしての弾性などが損なわれるおそれがある。
本発明の架橋性アクリルゴム組成物においては、さらに架橋促進剤を配合して上記架橋剤に組み合わせて用いてもよい。
架橋促進剤も限定はないが、前記多価アミン架橋剤と組み合わせて用いることができる架橋促進剤であることが好ましく、具体的には、水中、25℃での塩基解離定数が10−12〜10であるものが好ましい。このような架橋促進剤としては、たとえば、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。
グアニジン化合物としては、1,3−ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジンなどが挙げられる。
イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。
第四級オニウム塩としては、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリn−ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。
多価第三級アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7などが挙げられる。
第三級ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。
弱酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、炭酸塩などの無機弱酸塩あるいはステアリン酸塩、ラウリル酸塩などの有機弱酸塩が挙げられる。
架橋性アクリルゴム組成物中における、架橋促進剤の使用量は、アクリルゴム100重量部あたり、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.2〜15重量部、特に好ましくは0.3〜10重量部である。架橋促進剤が多すぎると、架橋時に架橋速度が早くなりすぎる場合があり、架橋物表面ヘの架橋促進剤のブルームが生る場合があり、架橋物が硬くなりすぎたりする場合がある。架橋促進剤が少なすぎると、架橋物の引張強さが著しく低下する場合があり、熱負荷後の伸び変化または引張強さ変化が大きすぎたりする場合がある。
本発明に係る架橋性のアクリルゴム組成物には、必要に応じて、補強材、充填剤、老化防止剤、光安定剤、可塑剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤などの添加剤を含有させてもよい。
本発明に係る架橋性アクリルゴム組成物の調製にあたっては、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、溶液混合などの適宜の混合方法が採用でき、なかでも、ロール混合が好ましい。配合順序は特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応しやすい成分あるいは分解しやすい成分として、たとえば架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合すればよい。本発明では、上記構成を有するアクリルゴムを用いるため、ロールで混練する際におけるロールへのゴムの付着度合いが少なく、加工性に優れるという利点を有する。
架橋性アクリルゴム組成物の成形方法は、特に限定されない。圧縮成形、射出成形、トランスファー成形あるいは押出成形など、いずれの方法を用いることも可能である。また、架橋方法は、架橋物の形状などに応じて選択すればよく、成形と架橋を同時に行う方法、成形後に架橋を行う方法のいずれでもよい。本発明では、上記構成を有するアクリルゴムを用いるため、成形時におけるゴムの流動性に優れ、成形時におけるバリの発生の度合いも低く、さらには得られる成形体の成形精度を高いものとすることができるという利点を有する。
本発明に係る架橋性アクリルゴム組成物は、加熱することにより架橋物とすることができる。加熱温度は、好ましくは130〜220℃、より好ましくは140℃〜200℃であり、架橋時間は好ましくは30秒〜5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。また、一度架橋した後に、架橋物の内部まで確実に架橋させるために、後架橋を行ってもよい。後架橋は、加熱方法、架橋温度、形状などにより異なるが、好ましくは1〜48時間行う。後架橋を行う際の加熱方法、加熱温度は適宜選択すればよい。
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。これらの例中の〔部〕および〔%〕は、特に断わりのない限り重量基準である。ただし本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、アクリルゴム、架橋性アクリルゴム組成物およびその架橋物は、以下の方法により評価した。
ムーニー粘度
JIS K6300の未架橋ゴム物理試験法のムーニー粘度試験に従って、測定温度100℃におけるアクリルゴムのムーニー粘度ML1+4を測定した。
ロール加工性
架橋性アクリルゴム組成物をオープンロールで混練する際における、架橋性アクリルゴム組成物のロールへの付着の程度を以下の基準で評価した。
◎:ロールへの付着性が低く、混練し易い。
○:ロールへの付着性があるが、混練は可能。
△:ロールへの粘着性が高いが、混練はなんとか可能。
×:ロールへの粘着性が高く、混練できない。
金型充填性(成形加工性)
25t射出成形機(STI−0.1−25VA:三友工業社製)にて、スパイラルフロー金型を用いて、スクリュー部温度70℃、スクリュー回転数50rpm、金型温度190℃、架橋時間1分、射出量13ml、金型圧力20MPaの条件で、架橋性アクリルゴム組成物を射出成形した。射出成形により、スパイラルフロー金型の入り口から架橋性アクリルゴム組成物が到達した地点までの距離を、スパイラスフロー金型に刻まれた目盛りにて測定し、その到達した地点における目盛りの数値を読み取り、これを流動性の指標とした。この数値が大きいほど、流動性に優れ、金型への充填性に優れる。
バリ(成形加工性)
上記金型充填性評価に用いたものと同様の金型を用い、金型温度190℃、架橋時間1分、金型圧力20MPaの条件でプレス架橋を行い、得られた架橋物のバリの有無を観察した。そして、この操作を10個のサンプルについて行い、得られた架橋物に少しでもバリが存在した場合を不良とし、不良となったサンプルの数を評価した。不良となったサンプル数が少ないほど、成形加工性に優れる。
押出成形(成形加工性)
架橋性アクリルゴム組成物を押出機(型式D20−10、東洋精機製作所社製、単軸バレル径20mm、圧縮比1.6、バレル温度60℃、ヘッド温度80℃)を用いて押出成形した。そして、ASTM D2230―77 A法(ガーベダイ押出試験、採点法A)に従い、得られた押出成形品の状態を評価した。具体的には、押出成形品の表面肌の平滑性、30°エッジの連続性と鋭さ、およびエッジ以外の角(コーナー)の連続性と鋭さについて評価した。これらは、その良否を、最も良いものについては「4点」とし、最も悪いものを「1点」として、1点〜4点の4段階で評価した。
常態物性(引張り特性、伸びおよび硬さ)
架橋性アクリルゴム組成物を170℃、20分間のプレスによって成形、架橋し、さらに後架橋のために170℃に4時間放置して、15cm×15cm×2mmのシート状の架橋物を得た。そして、得られたシート状の架橋物を、所定の形状に打ち抜くことにより試験片を作製し、この試験片を用いて、JIS K6301およびJIS K6253に従い、架橋物の引張り特性、伸びおよび硬さを測定した。
耐熱性(伸び変化率および硬さ変化量)
常態物性測定用の試験片と同様にして作製した試験片について、JIS K6257に従い、175℃の環境下、70時間の条件で空気加熱老化を行い、耐熱性評価用の試験片とした。そして、得られた試験片を用いて、上記の常態物性評価と同様の方法により、加熱後の伸びおよび硬度を測定し、加熱前後の各物性の変化率を算出した。各物性の加熱前後における変化率が小さいほど、耐熱性に優れる。
合成例1(実施例1に係るアクリルゴムAの合成例)
まず、アクリル酸エチル50部、アクリル酸ブチル30部、アクリル酸メトキシエチル17部、アクリロニトリル1部、およびモノブチルフマレート2部からなる単量体混合物を準備した。
次いで、温度計、攪拌装置、窒素導入管および減圧装置を備えた重合反応器に、上記にて準備した単量体混合物10部と、水200部と、ラウリル硫酸ナトリウム3部と、を仕込んだ。そして、減圧による脱気および窒素置換をくり返して酸素を十分除去した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.002部およびクメンハイドロパーオキシド0.01部、硫酸第一鉄0.002部、t−ドデシルメルカプタン0.02部およびα−メチルスチレンダイマー0.02部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させた。重合反応開始後、直ちに上記にて準備した単量体混合物90部を、5時間かけて重合反応器に滴下した。滴下終了後、重合転化率が95%に達するまで約60分間撹拌を継続した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥することによりアクリルゴムAを得た。アクリルゴムAのムーニー粘度ML1+4は39であった。
合成例2(実施例2に係るアクリルゴムBの合成例)
α−メチルスチレンダイマー0.005部、t−ドデシルメルカプタン0.06部用い、重合反応開始後、単量体混合物90部を約1時間かけて滴下した以外は、合成例1と同様にして、アクリルゴムBを得た。アクリルゴムBのムーニー粘度ML1+4は35であった。
合成例3(実施例3に係るアクリルゴムCの合成例)
温度計、攪拌装置、窒素導入管および減圧装置を備えた重合反応器に、合成例1で用いたものと同じ単量体混合物100部と、水200部と、ラウリル硫酸ナトリウム3部と、を仕込んだ。そして、減圧による脱気および窒素置換をくり返して酸素を十分除去した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.002部およびクメンハイドロパーオキシド0.01部、硫酸第一鉄0.002部、t−ドデシルメルカプタン0.04部およびα−メチルスチレンダイマー0.01部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させた。重合反応が始まり温度上昇後、重合転化率が95%に達するまで約60分間撹拌を継続した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムCを得た。アクリルゴムCのムーニー粘度ML1+4は37であった。
合成例4(実施例4に係るアクリルゴムDの合成例)
アクリル酸エチル65部、アクリル酸ブチル28.5部、アクリル酸メトキシエチル5部、およびモノブチルフマレート1.5部からなる単量体混合物、並びに、α−メチルスチレンダイマー0.001重量部、t−ドデシルメルカプタン0.08部を用い、重合転化率が95%に達するまでの45分間攪拌を継続させた以外は合成例3と同様にして、アクリルゴムDを得た。アクリルゴムDのムーニー粘度ML1+4は31であった。
合成例5(比較例1に係るアクリルゴムEの合成例)
α−メチルスチレンダイマーを使用しなかった以外は、合成例1と同様にして、アクリルゴムEを得た。アクリルゴムEのムーニー粘度ML1+4は38であった。
合成例6(比較例2に係るアクリルゴムFの合成例)
α−メチルスチレンダイマーを使用しなかった以外は、合成例3と同様にして、アクリルゴムFを得た。アクリルゴムFのムーニー粘度ML1+4は34であった。
合成例7(比較例3に係るアクリルゴムGの合成例)
α−メチルスチレンダイマーの代わりに4−イソプロピリデン−1−メチルシクロヘキセン(テルピノーレン)を使用した以外は、合成例3と同様にして、アクリルゴムGを得た。アクリルゴムGのムーニー粘度ML1+4は37であった。
実施例1
合成例1で得られたアクリルゴムA100部に、それぞれカーボンブラック(ASTM D1765による分類;N550)60部、ステアリン酸(カーボンブラックの分散剤、軟化剤)2部および4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(老化防止剤)2部を50℃にてバンバリーで混練して、その後、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト(架橋剤)0.6部、ジ−o−トリルグアニジン2部を加えて、40℃にてオープンロールで混練して、架橋性アクリルゴム組成物を調製した。そして、得られた架橋性アクリルゴム組成物、およびこれを架橋して得られた架橋物について、上記した各方法により評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2〜4、比較例1〜3
それぞれ、各合成例2〜7において得られた各アクリルゴムを、表1に記載のように用いた以外は、実施例1と同様にして、架橋性アクリルゴム組成物を調製した。そして、得られた架橋性アクリルゴム組成物、およびこれを架橋して得られた架橋物について、上記した各方法により評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2007114108
表1に示すように、本発明のアクリルゴムを用いて得られた架橋性アクリルゴム組成物は、ロール加工性および成形加工性に優れる結果となり、さらに、その架橋物についても、常態物性および耐熱性に優れる結果となった(実施例1〜4)。
特に、実施例1〜4においては、単量体混合物の滴下を5時間と比較的短くした場合(実施例1)だけでなく、単量体混合物の滴下を1時間とさらに短くした場合(実施例2)、さらにはバッチ式で重合を行った場合(実施例3および4)のいずれにおいても良好な結果が得られた。すなわち、本発明によると、ロール加工性および成形加工性を良好に保ちながら、重合時間を短縮することができ、生産性の向上を図ることができることが確認できた。
一方、α−メチルスチレンダイマーを添加しない場合においては、ロール加工性および成形加工性に劣る結果となった(比較例1および2)。また、α−メチルスチレンダイマーの代わりに、4−イソプロピリデン−1−メチルシクロヘキセンを使用した場合においても、ロール加工性および成形加工性に劣る結果となった(比較例3)。

Claims (17)

  1. 付加開裂型連鎖移動剤の存在下で、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分として含有する単量体混合物を重合して得られるアクリルゴムであって、
    前記単量体混合物100重量部に対する、前記付加開裂型連鎖移動剤の使用量が0.0001〜1重量部であるアクリルゴム。
  2. 前記アクリルゴムは、前記付加開裂型連鎖移動剤とともに、チオール基を有する化合物の存在下で、前記単量体混合物を重合して得られるものである請求項1に記載のアクリルゴム。
  3. 前記付加開裂型連鎖移動剤(A)と、前記チオール基を有する化合物(B)と、の比率(B/A)が、重量比で0.1〜100である請求項2に記載のアクリルゴム。
  4. 前記付加開裂型連鎖移動剤が、α−メチルスチレンダイマーである請求項1〜3のいずれかに記載のアクリルゴム。
  5. 前記チオール基を有する化合物が、t−ドデシルメルカプタンである請求項2〜4のいずれかに記載のアクリルゴム。
  6. 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルから選択される少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載のアクリルゴム。
  7. 全単量体100重量%に対する、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の使用量が、80〜99.9重量%である請求項1〜6のいずれかに記載のアクリルゴム。
  8. 前記単量体混合物が、さらにエチレン性不飽和ニトリル単量体を含有する請求項1〜7のいずれかに記載のアクリルゴム。
  9. 前記エチレン性不飽和ニトリル単量体が、アクリロニトリルである請求項8に記載のアクリルゴム。
  10. 全単量体100重量%に対する、前記エチレン性不飽和ニトリル単量体の使用量が、0〜20重量%(ただし、0重量%は含まない)である請求項8または9に記載のアクリルゴム。
  11. 前記単量体混合物が、さらに架橋性単量体を含有する請求項1〜10のいずれかに記載のアクリルゴム。
  12. 前記架橋性単量体が、ブテンジオン酸モノエステル単量体である請求項11に記載のアクリルゴム。
  13. 前記ブテンジオン酸モノエステル単量体が、フマル酸モノブチルである請求項12に記載のアクリルゴム。
  14. 全単量体100重量%に対する、前記架橋性単量体の使用量が、0.1〜10重量%である請求項11〜13のいずれかに記載のアクリルゴム。
  15. (メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分として含有する単量体混合物を重合して得られるアクリルゴムを製造する方法であって、
    付加開裂型連鎖移動剤の存在下で、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分として含有する単量体混合物を重合させる工程を有し、
    前記単量体混合物100重量部に対する、前記付加開裂型連鎖移動剤の使用量を0.0001〜1重量部とするアクリルゴムの製造方法。
  16. 前記単量体混合物を重合させる工程を、反応に使用する前記単量体混合物のうち少なくとも一部を、反応系に連続的に添加しながら乳化重合させる連続式の工程とし、かつ、乳化重合における前記単量体混合物の添加時間を、5時間以下とする請求項15に記載のアクリルゴムの製造方法。
  17. 前記単量体混合物を重合させる工程を、反応に使用する全ての前記単量体混合物を予め反応系に仕込み、バッチ式にて乳化重合を行う工程とする請求項15に記載のアクリルゴムの製造方法。
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