JPWO2007052839A1 - スキンレス多孔膜とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】生理活性物質に代表される有用物と病原性物質に代表される不要物とを含有する液体中から不要物を除去し、有用物を生成することに用いられる分離膜において、分離膜として有用な親水化多孔膜及びその製造方法並びに、その使用方法を提供する。【解決手段】少なくとも高分子及び可塑剤を含む少なくとも高低2種類の高分子濃度を有する組成物を、高分子濃度の低い組成物からなる層が高分子濃度の高い層の両面に位置するように積層した、溶融成膜法で得られた多孔膜であって、高分子濃度の高い組成物からなる層の膜厚方向における中心部の孔径が周辺部に孔径より大であることを特徴とするスキンレス多孔膜。

Description

本発明は、液体中に含まれる微粒子を除去する分離膜において、液体等の透過速度が高く、かつ、高い微粒子の阻止性能を併せて有する、分離膜として有用な多孔膜およびその製造方法に関する。
従来、液体中からサブミクロン程度の微粒子、特に微生物粒子を除去する方法として、ゲル濾過法、遠心分離法、吸着分離法、沈澱法、膜濾過法が利用されている。これら除去方法の中でも膜濾過法は、微粒子の種類に関わらず、特定の大きさ以上の微粒子であればその分画能により除去でき、しかも大量処理が可能であるという点で優れていると言われている。また膜を用いた濾過方法は、医薬品製造や食品製造の中間原料である有用タンパク質含有溶液から不要物を除去する用途にも大いに期待が寄せられている。
さらにヒトまたは動物の血漿は、血漿製剤製造分野、血漿分画製剤製造分野、抗体医薬等のバイオテクノロジー分野等における種々の原料等に用いられるが、細菌やウィルスなどの病原性物質が潜在的に混在している危険性が指摘されている。昨今では、ウィルスの混在した血漿を輸血用製剤として用いたため、輸血された患者がウィルスに感染するというケースが起こり問題となっている。
このような用途に用いる濾過膜、特に血漿のような高い固形分濃度を有する溶液を濾過する膜については、そのウィルス除去能を低下させずに、より高い濾過速度を実現させる工夫が常に求められる。使用する膜の濾過速度が大きくなれば、より短時間に必要量を処理でき、目的物の生産効率を高めることができるからである。
このため、これらウィルスを不活化又は除去するための様々な方法が提案されてきた。ウィルスを不活化する方法としては、加熱処理による殺菌法や、Solvent/Detergent(S/D)法に代表される薬品による化学的処理がある。しかしながら、これら不活化方法は、全てのウィルスに等しく作用する訳ではなく、ウィルスの種類によってはその不活化の効果が制限される。例えば、耐熱性を有するA型肝炎ウィルス等に加熱処理による不活化の効果は期待できない。また、小児まひを起こすポリオウィルスや風邪の症状を起こすアデノウィルス等は、脂質二重膜とエンベロープ蛋白とで構成されるエンベロープを持たないため、脂質二重膜を破壊することによってエンベロープ蛋白を失わせ、感染性を失わせるS/D法は、原理的に効果が無い。さらに化学的処理に用いる薬品が人体に対して有害である場合には、薬品の除去工程が必須となる。
これに対してウィルスを物理的に除去する方法の一つとして、膜濾過法によるウィルスの分離除去方法が挙げられる。この方法が前述した不活化の方法に比べて優れている点は、粒子の大きさに応じた分離機能の制御が可能であるため、ウィルスが偶然に濾過膜を通過する可能性を抑制し、ウィルスの熱的あるいは化学的性質には無関係に全てのウィルスの除去に有効であるという点である。
ウィルスの種類としては、最も小さいもので直径18〜24nm程度のパルボウィルスや直径25〜30nmのポリオウィルス等があり、比較的大きいものでは直径80〜100nmのHIV(ヒト免疫不全ウィルス)等がある。このようなウィルス群を膜濾過法によって物理的に除去するためには、少なくとも最大孔径が100nm以下の微多孔膜が必要である。
一方、輸血用血漿や血漿分画製剤、バイオ医薬品等の精製に用いられるウィルス除去膜にはウィルス除去性能だけでなく、アルブミンやグロブリン等の生理活性物質の透過性が高いことが求められる。このため、孔径が数nm程度の限外濾過膜や、更に孔径が小さい逆浸透膜等はウィルス除去膜として適当でない。
また、ウィルス除去に適した孔径を持つ微多孔膜であっても、表面の開孔性が低いスキン層を有する微多孔膜はフラックスが低い。これは開孔性の低いスキン層の存在によって、膜厚方向内側の孔が十分に利用されないこと、或いはスキン層自体が大きな濾過抵抗となることによって生じるものと考えられる。従って、表面にスキン層を有しないことが望ましいが、特に熱誘起相分離を利用した溶融成膜法によってウィルス除去に適した孔径の膜を得る場合には一般的にポリマーと可塑剤等からなる組成物を溶融後、急冷するために表面にスキン層が生じやすくなる。濃度誘起相分離を利用した湿式成膜法においても、急激にポリマーを析出させることによって同様に表面にスキン層を形成しやすくなる。
特許文献1には特定の物性を有するポリオレフィン樹脂、有機液状体、無機微粉体を混合した後、Tダイ押出成型や射出成型によって溶融成型し、得られた成型物から有機液状体及び無機微粉体を抽出して微孔性ポリオレフィン多孔物を製造する方法が開示されている。該方法によって製造した多孔膜は、図13に示す通り、膜の最表面の開孔性が悪く、液体中に含まれる微粒子を除去するための分離膜としての用途では、高い濾過速度が得られなかった。
特許文献2には開孔率が大きい粗大構造層と、開孔率が小さい緻密構造層を有する、熱可塑性樹脂を含む微多孔膜であって、該粗大構造層と該緻密構造層が一体化している多層微多孔膜およびその製造方法が開示されている。該粗大構造層を形成する方法として、熱可塑性樹脂と可塑剤を含む組成物から形成された未硬化の膜の少なくとも一方の表面を、熱可塑性樹脂に対して部分的な溶解性を持つ不揮発性液体に接触させる方法が開示されている。平膜状に膜を形成する場合、平膜状に押し出された組成物を冷却ロールによって挟み込んで冷却することで、高分子と可塑剤を相分離させ、更に冷却することで孔構造を固定すると共に、押し出しの際に発生しうる膜厚を整えることが一般的に行われているが、該粗大構造層の形成方法では、冷却ロールと組成物の間に可塑剤が存在することで膜厚を整えることが難しくなる上に、可塑剤がロールを伝ってロールの脇へ流れ出たりするために、可塑剤の回収設備が必要となって設備が複雑になるという欠点がある。また、該方法によって製造した多孔膜の表面を親水化処理した多孔膜は、3%ウシ免疫グロブリン溶液を濾過した際、濾過速度の経時的な低下が抑えられているが、血漿のような高い固形分濃度を有する溶液を濾過する用途では、更に濾過性能を向上する必要があった。
特許文献3および4には、再生セルロースの濾過膜を用いる濾過方法およびシステムが開示されている。これらはいずれもウィルスをその大きさにより分離する方法を提案している。しかし、これらの方法は、いずれも中空糸膜等の高価な濾過膜を使用したり、濾過のために特別な装置を必要としたりする。
特許文献5には孔径の大きなプレフィルタ領域と、孔径の小さな適性領域とからなる膜エレメントを適性領域同士が相並ぶように、相分離後に積層される微孔性濾過膜が開示されている。このようにして作製される膜の孔径をウィルス除去可能となるまで小さくするためには、相分離の際の急冷時に適性層表面に開孔率の低いスキン層を生じる可能性が高い。スキン層を有する適性層同士を貼り合わせれば、貼り合わせ領域において、一方の膜エレメントからもう一方の膜エレメントへと孔が連通する確率は、お互いのスキン層の開孔部が重なり合う確率に相当することから、フラックスが大きく低下することは明らかである。また、一方の膜エレメントにスキン層が無い、孔径のやや大きなものを用いた場合においても、もう一方の膜エレメントに存在するスキン層により、やはりフラックスは阻害されることになる。
特許文献6には高分子を溶媒に溶解させた高分子溶液を支持材に塗布後、湿気のある空気を吹き付けた後に、非溶媒に浸漬させることで、膜厚方向内側において孔径が最小となる膜の製造方法が開示されている。該方法では、空気を吹き付ける装置や空気中の湿度を制御するための装置が必要となる上、蒸発した溶媒を排気するための排気ファンやダクトが必要であるため、製造設備が複雑となる。また、蒸発した溶媒を操業者が吸引することで健康を害する可能性がある。
特許文献7には平滑な連続ウェブ上に複数層の高分子溶液を共流延によってコーティングする積層膜の製造方法が開示されている。該方法で溶融成膜を実施する場合、ウェブによって冷却が阻害される上、冷却ロールで膜厚を整える際に、ロール間隙とウェブの厚みが共に均一でないと膜厚に斑を生じるため、厳密な制御が困難である。また、高温での成膜においてはウェブに接している側と反対側の高分子溶液表面から溶剤が蒸発し、成膜の安定性が悪くなる、冷却ロールに接する前に相分離してしまい、孔径が大きくなってしまうといった問題が生じる可能性がある。
特許文献8には複数層の高分子溶液を共流延し、相分離させた後に冷却する積層膜の製造方法が開示されている。コート表面にウェブやフィルムを用いる場合には、特許文献7と同様にウェブ等によって冷却が阻害される上、冷却ロールで膜厚を整える際に、ロール間隙とウェブ等の厚みが共に均一でないと膜厚に斑を生じるため、厳密な制御が困難である。また、高温での成膜においてはウェブ等に接している側と反対側の高分子溶液表面から溶剤が蒸発し、成膜の安定性が悪くなる、冷却ロールに接する前に相分離してしまい、孔径が大きくなってしまうといった問題が生じる可能性がある。また、コート表面にドラムを用いる場合には、コート後に別の冷却用ロールを用意しなくてはならないため、設備が複雑になる他、熱誘起相分離の場合にはコートドラム上でドラムの側と反対側の高分子溶液表面から可塑剤が蒸発して成膜安定性が悪くなる、冷却ロールに接する前に相分離してしまい、孔径が大きくなってしまうといった問題が生じる可能性がある。
特許文献9には高分子濃度が40から80重量部、溶剤が20から60重量部、フッ化合物が少なくとも05重量部以上からなる組成物を溶融し、フィードブロックまたはマルチマニホールドダイを用いて共押し出しすることで微多孔層に多孔性または非多孔性の層を積層する積層膜の製造方法が開示されている。しかし、ウィルス除去能を有し、且つ高い濾過速度を実現させるための条件は一切記載されていない。また、フッ素化合物を含有することにより撥水性を発現するため、液体の濾過には不向きである。
特許文献10には、面内平均孔径が極小の部分、該極小の部分より面内平均孔径が大きい部分、極小の部分に配列された構造が、中空糸の内壁面から外壁面への膜厚方向に少なくとも1組存在する中空糸膜が開示されている。しかし、実施例において開示されている走査型電子顕微鏡写真及び面内空孔率の測定結果から、その膜構造において2つの極小の部分の間に存在する該極小の部分より面内平均孔径が大きい部分の空孔率が極めて大きいことは明らかである。そのように空孔率の大きな層が膜内部に存在することは、外圧によって潰れてしまう可能性がある。また、該特許文献には上記構造を有する膜の製法として、中空繊維状物の内外から凝固性液体に接触させることで、該中空繊維状物の内外よりミクロ相分離を誘起させる手法が開示されている。このような手法を用いて平膜状の多孔膜の製造を行う場合、ポリマー溶液の両表面に溶剤が存在することになり、ロールで挟み込んで冷却する場合には凝固性液体が流動することでポリマー溶液がしっかりと押さえられず、膜厚を均一にするのが困難となる。また、例えば凝固性液体中に落として相分離させる場合には、平膜の場合、吐出条件によっては不安定な状態で成型することになるため、やはり膜厚を均一にするのが困難となる。更には、接触させた凝固性液体を回収するための設備が必要となることから、製造設備が複雑で高価となるという欠点を有している。
従って、ウィルス除去に適した孔径でありながら、十分な開孔性を持ち、高い透過速度を有する膜を安定に製造する技術はこれまで知られていなかった。
特公昭60−23130号公報 WO03/026779A1パンフレット 特開平1−192368号公報 特開平1−254205号公報 特表2006−503685号公報 GB2199786Aパンフレット 特開2006−7211号公報 US2002/0113006A1パンフレット WO03/104310A2パンフレット 特開昭62−184108号公報
本発明は、液体中に含まれる微粒子を除去する分離膜において、液体等の透過速度が高く、且つ、高い微粒子の阻止性能を併せて有する、分離膜として有用な多孔膜、及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記の課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、少なくとも高分子及び可塑剤を含む少なくとも高低2種類の高分子濃度を有する組成物を、高分子濃度の低い組成物からなる層が高分子濃度の高い層の両面に位置するように積層した溶融成膜法によって、微粒子の阻止性能を有する孔径でありながら、開孔率が高く、透過速度の高い膜が得られることを見出し、本願発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、以下の通りである。
(1)高分子及び可塑剤を含む高低2種の高分子濃度を有する少なくとも2種の組成物を、該高分子の融点以上に加熱して各々独立に均一溶融させる工程、入口側から出口側までが少なくとも3層に区切られた内部構造を有する金型内で該組成物を接触しながら共に押し出すことで、高分子濃度の低い組成物からなる層が高分子濃度の高い層の両面に位置するように積層する工程によって、該高濃度組成物と該低濃度組成物との溶融積層物を得る工程、溶融時の温度より少なくとも80℃以上低い冷却表面に該溶融積層物の両面を直接接触させることで成型物を得る工程、次いで該成型物から実質的に全ての可塑剤を除去する工程、を有するスキンレス多孔膜の製造方法。
(2)高分子及び可塑剤を含む高低2種の高分子濃度を有する少なくとも2種の組成物を用意する工程、各々独立にシート状に成型する工程、高分子濃度の低い組成物からなるシートが高分子濃度の高いシートの両面に位置するように重ね合わせた積層体を得る工程、該積層体を加熱して該高濃度組成物と該低濃度組成物との溶融積層物を得る工程、溶融時の温度より少なくとも80℃以上低い冷却表面に該溶融積層物の両面を直接接触させることで成型物を得る工程、次いで該成型物から実質的に全ての可塑剤を除去する工程、を有するスキンレス多孔膜の製造方法。
(3)溶融時の温度より少なくとも80℃以上低い冷却表面が冷却した金属製のロールであることを特徴とする(1)または(2)に記載のスキンレス多孔膜の製造方法。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のスキンレス多孔膜に電離性放射線を照射した後、2−ヒドロキシプロピルアクリレートを接触させて細孔表面を親水化する工程をさらに有することを特徴とするスキンレス多孔膜の製造方法。
(5)低開孔率層の両面に高開孔率層が積層した多層構造からなる高分子の多孔膜であって、両表面にスキン層がなく、バブルポイント法で求めた最大孔径が10nm以上、100nm以下、透水測定法から求めた平均孔径が該最大孔径より大であり、該低開孔率層中に少なくとも2層以上の最小孔径層を有することを特徴とするスキンレス多孔膜。
(6)低開孔率層と高開孔率層との境界近傍に該最小孔径層が位置することを特徴とする(5)に記載のスキンレス多孔膜。
(7)低開孔率層の膜厚方向の中心部の孔径が、周辺部の孔径より大であることを特徴とする(5)または(6)に記載のスキンレス多孔膜。
(8)高開孔率層の断面開孔率が、低開孔率層の断面開孔率より少なくとも10%以上高いことを特徴とする(5)〜(7)のいずれかに記載のスキンレス多孔膜。
(9)低開孔率層に対する高開孔率層の厚さの比が1/5以上であることを特徴とする(5)〜(8)のいずれかに記載のスキンレス多孔膜。
(10)溶融成膜法によって得られた多孔構造を有することを特徴とする(5)〜(9)のいずれかに記載のスキンレス多孔膜。
(11)両表面の開孔率が10%以上であることを特徴とする(5)〜(10)のいずれかに記載のスキンレス多孔膜。
(12)該高分子がポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、フッ素化炭化水素ポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリエーテルスルホンのいずれかであることを特徴とする(5)〜(11)のいずれかに記載のスキンレス多孔膜。
(13)細孔表面が親水性高分子で被覆されていることを特徴とする(5)〜(12)のいずれかに記載のスキンレス多孔膜。
(14)該親水性高分子が少なくとも水酸基を有することを特徴とする(13)に記載のスキンレス多孔膜。
(15)(5)〜(17)のいずれかに記載の多孔膜を用いて、少なくとも二種の成分を含有する液体から、特定の成分を濾過する方法。
(16)細菌、真菌、ウィルス、病原性プリオン、白血球、及び細胞由来粒子からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、生理活性物質を含む液体から、生理活性物質をのみを透過することを特徴とする(15)に記載の液体の処理方法。
本発明によれば、液体等の透過速度が高く、かつ、液体中に含まれる微粒子、例えばコロイド、不溶性高分子、細菌、ウィルス、病原性プリオン等を阻止する分離膜として有用な膜及びその製造方法を提供することができる。
更に本発明によれば、血漿からのウィルス除去を念頭においた膜による血漿濾過において、高い濾過速度と、高いウィルス除去性能を有する分離膜を提供することができ、安全性の高い血漿を、より高い生産効率で得ることができる。
また、本発明によれば、抗体医薬のようなバイオ医薬品の生産工程において、高い濾過速度と高いウィルス除去性能により、高濃度の医薬品を大量に処理できる分離膜を提供することができ、安全性の高い医薬品を、より高い生産効率で得ることができる。
実施例1で得られた多孔膜の表面を15000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で得られた多孔膜の断面を150倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で得られた多孔膜断面の表面近傍を15000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で得られた多孔膜において、孔径の異なる層の境界付近の断面を3000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で得られた多孔膜において、孔径の異なる層の境界付近の断面を15000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で得られた多孔膜において、膜の中央付近の断面を15000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られた多孔膜の表面を15000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られた多孔膜の断面を150倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られた多孔膜断面の表面近傍を15000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られた多孔膜において、孔径の異なる層の境界付近の断面を3000倍で観察した走杳型電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られた多孔膜において、孔径の異なる層の境界付近の断面を15000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られた多孔膜において、膜の中央付近の断面を15000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 比較例2によって得られた多孔膜の表面を15000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例4で得られた多孔膜の表面を15000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例4で得られた多孔膜の断面を100倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例4で得られた多孔膜断面の表面近傍を5000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例4で得られた多孔膜において、孔径の異なる層の境界付近の断面を3000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例4で得られた多孔膜において、孔径の異なる層の境界付近の断面を10000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例4で得られた多孔膜において、膜の中央付近の断面を10000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例6で得られた多孔膜の表面を15000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例6で得られた多孔膜の断面を200倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例6で得られた多孔膜断面の表面近傍を5000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。 実施例6で得られた多孔膜において、孔径の異なる層の境界付近の断面を5000倍で観察した走査型電子顕微鏡写真である。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のスキンレス多孔膜は、低開孔率層の両面に高開孔率層が積層した3層構造からなる高分子の多孔膜であって、両表面にスキン層がなく、バブルポイント法で求めた最大孔径が10nm以上、100nm以下、透水測定法から求めた平均孔径が該最大孔径より大であり、該低開孔率層中に少なくとも2層以上の小孔径層を有することを特徴とする。
本発明のスキンレス多孔膜は、少なくとも高分子及び可塑剤を含む高低2種の高分子濃度を有する少なくとも2種の組成物を用意し、該低濃度組成物の層が該高濃度組成物の層の両面に位置するように積層し、溶融成膜法を用いることで得ることができる。溶融成膜法とは、該高分子の融点以上に該組成物を加熱して均一に溶融する工程、溶融した組成物を膜状に成型する工程、膜中に可塑剤、場合によっては無機粒子を含有するため、引き続き可塑剤、無機粒子を膜中から除去する工程からなる。
高分子の種類や状態によっては、明確な融点が観測されない場合もあるが、そのような高分子を用いる場合においては、可塑剤等と均一に溶融しており、且つ成型するにあたって十分な流動性を有するようになっていればよいものとし、その判断は当業者であれば容易になせるものである。
本発明において高分子とは、膜を形成するための素材であって、通常、膜素材として用いられる高分子を用いることができ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル1−ペンテン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、エチレン/テトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素化炭化水素ポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリエーテルスルホンまたはそれらの混合物を意味する。中でもポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンを素材とすることは、成膜性に優れ、強度の大きい膜を得ることができる点から好ましい。またこれらの高分子は他の高分子との共重合体でもよく、さらにその側鎖に他の高分子がグラフト重合されていても良い。さらには、エチレンビニルアルコール共重合体やポリビニルアルコールのような表面が親水性の高分子を用いることもでき、親水化工程を省略することができることから好ましい。
本発明に用いる可塑剤としては、膜素材として用いる高分子と混合して加熱した際、該高分子の結晶融点以上の温度で均一溶融し得るものであって、該均一溶融物を冷却した際に、常温以上の温度で熱誘起型相分離点を有するものを用いる。そのような可塑剤としては、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(以下、「DOP」と略す)、フタル酸ジイソノニル(以下、「DINP」と略す)、フタル酸ジイソデシル(以下、「DIDP」と略す)、フタル酸ジ(n−オクチル)(以下、「DnOP」と略す)、フタル酸ジ(n−ブチル)(以下、「DBP」と略す)、フタル酸ジシクロヘキシル(以下、「DCHP」と略す)等のフタル酸エステル類、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)等のトリメリット酸エステル類、セバシン酸ジブチル等のセバシン酸エステル類、アジピン酸ジブチル等のアジピン酸エステル類、リン酸トリ(2−エチルヘキシル)等のリン酸エステル類、タローアミン類、ステアリン酸エステル等の長鎖アルキルエステル類、ステアリルアルコール等の高級脂肪酸アルコール類、流動パラフィンやパラフィンワックス等の炭化水素系可塑剤等が好ましい。特に高分子素材として前記のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンを用いる場合は、これらと相溶性の大きい、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ビス(n−ブチル)を用いることがより好ましい。またこれらの可塑剤は単独でなく、得られる膜の孔径を調整するために混合して用いても良い。
本発明においては、高分子と可塑剤の混合比は、その重量比として、高分子の割合が10〜80%となるように選択するのが好ましく、15〜70%とするのがより好ましく、20〜60%とするのが特に好ましい。高分子の割合が10重量%未満では、成膜性が低下する、実用的な強度が得られない等の不都合が生じる。また高分子の割合が80重量%を越えると、気孔率が小さくなるため、純水の透過速度が低下する。
本発明の多孔膜を成型するために必要な組成物において、該組成物中に高分子、可塑剤の他に微小な粒子径を有する無機粒子を含有させてもよい。該組成物中に無機粒子を含めば、無機粒子が可塑剤の担持体となり、該組成物中における高分子と可塑剤の分散性を向上させ、加熱溶融時の均一性の向上、ならびに冷却時における熱誘起型相分離の均一性の向上に寄与する。無機粒子としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、およびこれらの誘導体で構成された粒子が挙げられ、炭酸カルシウム、二酸化チタン、非晶質二酸化珪素(以下、「シリカ粒子」と称す)が好ましい。特にシリカ粒子は成膜の後、アルカリ溶液で容易に抽出できる点からより好ましい。無機粒子の粒径としては一次粒子径として1nm〜1mmが好ましく、1nm〜1μmがより好ましく、1nm〜0.1μmが特に好ましい。また無機粒子は高分子との相溶性を上げるため、その粒子表面を化学修飾しても良い。例えばシリカ粒子の場合、一般に疎水性シリカ粒子と総称される種類がこれに相当し、アエロジル疎水品(製品グレード例:R972)、レオロシール疎水品(製品グレード例:DM−10)などが挙げられる。また、これらシリカ粒子の製造方法については湿式法、乾式法など特に限定されない。
無機粒子と可塑剤の重量比は1対10〜10対1となるように選択するのが好ましく、1対5〜5対1とするのがより好ましく、1対3〜3対1とするのが特に好ましい。この範囲で重量比を選択することによって実用的な透過速度を持つために必要な開孔性を有する膜を得ることが可能となる。
本発明においては、高分子、可塑剤、無機粒子の他に、その他の添加剤、例えば酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、等を混合しても良い。特に高分子の熱劣化を抑制するための酸化防止剤、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤を添加することは好ましく、例えばイルガノックス(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)を高分子に対して重量比で0.01〜10%添加することは、得られる膜の強度保持のため推奨される。
上記組成物を均一に溶融するための第一の方法は、該高分子と必要に応じて添加剤を加熱したスクリュー式押出機等の連続式樹脂混錬装置に投入し、該高分子を加熱溶融させながら、任意の比率で可塑剤を導入して加熱・混錬することにより、均一に溶融する方法である。該高分子の投入形態としては、粉末状、顆粒状、ペレット状のいずれでも良い。また該方法によって均一に溶融させる場合は、可塑剤の形態は常温で液体であることが好ましい。押出機としては、単軸スクリュー式押出機、二軸異方向スクリュー式押出機、二軸同方向スクリュー式押出機等が使用できる。
均一溶融するための第二の方法は、高分子、可塑剤、または必要に応じて添加剤をヘンシェルミキサー等の撹拌装置を用いて予め混合し、各原料を分散させて得られた組成物を加熱したスクリュー式押出機に投入し、加熱・混錬しながら均一に溶融する方法である。該組成物の投入形態としては、可塑剤が常温で液体である場合はスラリー状とし、可塑剤が常温で液体であって該組成物中にシリカ等の無機粒子を含む場合は顆粒状とし、可塑剤が常温で固体である場合は粉末状や顆粒状等とすればよい。
均一溶融するための第三の方法は、ブラベンダーやミル等の簡易型樹脂混錬装置を用いる方法や、その他ミキサー等のバッチ式混錬容器内で溶融混錬する方法である。該方法によれば、バッチ式の工程となるため生産性は良好とは言えないが、多種多様な組成物を簡便に成膜でき、自由度が高いという利点がある。
上記のように均一に溶融された組成物は、引き続き以下の方法によって積層した状態で成膜される。
成膜する第−の方法としては、少なくとも高低2種類の高分子濃度の組成物を、それぞれ別々の加熱したスクリュー式押出機に投入し、加熱・混錬しながら均一に溶融させた後、平膜成型用のダイスを通してそれぞれ別々にシート状に押し出し、次いで高分子濃度の高いシートの両表面に該高分子濃度より低濃度のシートを接触させながらキャストロールに導き入れ、圧延接合して巻き取り機で巻き取る方法である。
成膜する第二の方法としては、少なくとも高低2種類の高分子濃度の組成物を、それぞれ別々の加熱したスクリュー式押出機に投入し、加熱・混錬しながら均一に溶融させた後、金型内で接触させながら共に押し出し、巻き取り機で巻き取る方法である。このとき別々の押出機で溶融された組成物を成型するための金型は、入口側から出口側までが少なくとも3層に区切られた内部構造を有するものを用いる。但し、それぞれの組成物が合流する点は金型の入口から出口の間に任意に設けることができる。
成膜する第三の方法としては、少なくとも高低2種類の高分子濃度の組成物を調製し、それぞれ別々に加熱したスクリュー式押出機に投入し、加熱・混錬しながら均一に溶融させた後、平膜成型用のダイスを用いてそれぞれ別々にシート状に押し出し、次いで高分子濃度の高いシートの両表面に該高分子濃度より低高分子濃度のシートを重ね合わせた積層体を圧縮成型機等の中で加熱して再溶融させた後、冷却する方法である。なお、いずれの方法においても溶融する組成物にさらに無機粒子を含有させてもよい。
以上のいずれの方法においても、平膜成型用のダイスを通してシート状に押し出す場合、ダイスから押し出されたシート状の膜は、通常、キャスト装置と呼ばれる冷却及び圧延可能な装置のロール部で該溶融積層物を挟み押し出すことで冷却及び厚みの調整を行いながら、適度な巻き取り張力となるように巻き取り速度を調整した巻き取り機で巻き取られる。ウィルス除去が可能な孔径とするためには、キャスト装置のロール部において急冷することが好ましいことから、ロールの表面温度は上記溶融温度より80℃以上低いことが好ましい。
以上の成膜方法によって得られた膜は、膜中に可塑剤、場合によっては、無機粒子を含有するため、引き続き、可塑剤、無機粒子を膜中から除去する。そこで、次に、その除去方法について説明する。
可塑剤を抽出するための抽出溶剤としては、膜素材として用いる高分子に対して貧溶媒であり、かつ可塑剤に対して良溶媒であり、沸点が膜素材として用いる高分子の融点より低いことが望ましい。例えば可塑剤がフタル酸エステル類であれば、n−ヘキサンやシクロヘキサン等の炭化水素類、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、エタノールやイソプロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類が適当であり、特に塩化メチレンはその抽出力が優れている点で好ましい。可塑剤を抽出する場合、室温より高い温度で浸漬処理をするとより効果的に抽出を行うことができる。以上の抽出工程により、可塑剤を除去した多孔膜が得られる。
また膜中に含有される無機粒子を抽出するためには、無機粒子を溶解することのできる溶液に膜を浸漬させる方法が推奨される。無機粒子を抽出する場合も、可塑剤を抽出する時と同様、室温より高い温度で浸漬処理をするとより効果的に抽出を行うことができる。特に無機粒子がシリカ粒子の場合は20〜60質量%程度の水酸化ナトリウム水溶液に30〜60分程度、膜を浸漬する方法が効果的である。
なお本発明では、可塑剤と無機粒子の双方が膜中に含有されている場合、抽出する順序は特に限定されないが、その作業性から、無機粒子よりも可塑剤の抽出を先に行うことが好ましい。以上の除去方法により、可塑剤、場合によっては可塑剤と無機粒子の双方を膜中より除去して多孔膜を得ることができる。可塑剤、場合によっては可塑剤と無機粒子の双方を抽出した膜は、更に親水性高分子で表面処理してもよい。
上記のような溶融成膜法によって得られる膜を1種類の組成物のみから製造した場合、本発明の高分子濃度の高い組成物のみを使用する等して得られる膜の孔径を小さくすると、表面に図13に示すように開孔率の低いスキン層を形成し、液体等の透過速度が大幅に小さくなる。一方、本発明の高分子濃度の低い組成物のみを使用する等して得られる膜は、開孔率は高くなり、スキン層の形成を防ぐことはできるが、孔径を小さくすることができない。上記の製造方法のようにして積層した状態で成膜することによって、スキン層の形成を防ぎながら、ウィルス等の粒子を阻止可能な孔径の膜を得ることができる。
本発明の多孔膜のバブルポイント法で求めた最大孔径は、10nm以上、100nm以下であることが好ましい。バブルポイント法とは、膜を液体で満たした状態で気体の透過挙動を測定し、膜にある最も大きな孔の大きさを評価する方法である。本発明における最大孔径は、ASTM F316−86に準拠したバブルポイント法で測定した値である。具体的には、フィルターホルダーにセットした評価膜を試験液に浸漬して湿潤し、フィルターの片側を空気でゆっくりと加圧していく。フィルターのガス透過側に設置した流量計が安定した流れの泡の上昇を検知する最低の圧力をバブルポイントとして記録し、後で述べる式を用いて最大孔径として換算する。
膜の最大孔径を100nm以下とすることによって、除去すべき粒子、例えばウィルスを含んだ溶液を濾過する際、エイズウィルスなど大きさが比較的大きなウィルスの溶液中濃度を低下させることができる。また除去したい粒子の大きさによって、最大孔径はもっと小さく設計することも可能であり、大きさがより広範囲のウィルスを除去しようとするなら、最大孔径は75nm以下が好ましく、55nm以下がより好ましく、45nm以下が特に好ましい。
本発明の多孔膜の透水測定法から求めた平均孔径は、バブルポイント法で求めた最大孔径より大きいことが好ましい。透水測定法とは、膜に圧力をかけた時の純水の透水量、気孔率、膜厚から膜の平均孔径を計算する方法であり、その測定方法については後で詳細に述べる。
最大孔径が小さいほどウィルス等の微粒子阻止性能が高くなる。透水測定法から求めた平均孔径が大きいほど、微粒子を含む液体から濾過によって該微粒子を除去する際、単位時間あたりの処理量が高くなる。透水測定法から求めた平均孔径がバブルポイント法で求めた最大孔径より大きいことにより、サブミクロン以下の粒子を含む液体から該粒子を除去するに際し、高い濾過速度と高い阻止性能を兼ね備えた分離膜として有用となる。
なお、前記の特許文献9に記載される膜は、バブルポイント法で求めた最大孔径が10nm以上、100nm以下である点においては本発明と共通しているが、透水測定法から求めた平均孔径がバブルポイント法で求めた最大孔径より大きいという本発明の特徴を有していないので、血漿のような固形分濃度の高い溶液を濾過するためには、所望の性能が得られない場合もあり得ることが考えられる。
本発明において透水測定法から求めた平均孔径は少なくともバブルポイント法で求めた最大孔径より大きいことが望まれるが、好ましくは最大孔径の1.1倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2.0倍以上である。なお本発明においては最大孔径と平均孔径の値を用いて膜を特徴付けるが、これらの値は必ずしも膜の細孔分布の特徴を反映しているものではない。
本発明の多孔膜は、透水測定法によって求めた平均孔径が上記の条件を満たした上で、さらにその用途に応じ一定の範囲にあることが好ましい。本発明において平均孔径は10〜200nm、好ましくは15〜180nm、更に好ましくは20〜160nmの範囲にあると良い。平均孔径をこの範囲とすることによって、除去すべき粒子、例えばウィルス、の除去性能を維持しながら、実用的な濾過速度を実現することが可能となる。
本発明の多孔膜の透水量は、孔径によって変化するが、1〜3000、好ましくは10〜2000、更に好ましくは100〜1000の範囲にあると良い。該透水量は膜厚を100μmに換算した値であり、単位はL/m/hr/(0.1MPa)/100μmである。なお該単位中、「hr」は単位時間として「1時間」を意味する。透水量をこの範囲とすることによって、除去すべき粒子、例えばウィルス、の除去性能を維持しながら、実用的な濾過速度を実現することが可能となる。
本発明の多孔膜は、膜表面の開孔率が10%以上であることが好ましい。本発明において膜表面の開孔率とは、膜の表面における空隙部分の占める面積比率であり、膜表面の走査型電子顕微鏡写真の画像解析から求められる。膜表面の開孔率が10%未満であると、濾過すべき溶液に対する抵抗となり、濾過速度が不充分となる。
本発明の多孔膜は、少なくとも3つ以上の、開孔率の異なる層から成る膜も包含される。本発明において層とは、膜の断面において、膜厚方向に一定の厚み毎に測定された空隙部分の占める面積比率が一定の範囲にある領域であり、膜断面の走査型電子顕微鏡写真の画像解析から求められる。本発明においては、測定の精度から厚み1μm毎に測定した空隙部分の面積比率の差が5%以下の範囲にある領域は同一の層とする。また膜断面における1つの層に対して、空隙部分の面積比率の差が5%を越える領域を有する場合、膜は開孔率の異なる2つの層から成るものとする。2つの高開孔率層の間に低開孔率層が存在することは、低開孔率層中の空間では高分子の占める割合が高いため、膜の強度を高め、外力によって膜が潰れてしまうことを防ぐことができるため好ましい。適切な強度を与えるためには、該高開孔率層の断面開孔率が該低開孔率層の断面開孔率より少なくとも10%以上大であることが好ましい。
一般に孔径の小さな層は開孔率の低い部分に現れるが、上記のような本発明の3層構造の低開孔率層において、そのような小孔径層が2つ以上存在することは、仮に一方に欠陥を生じ、十分な粒子除去性が発現されなかったとしても、別の小孔径層が更なる粒子除去性を発現することで、粒子の漏出を防ぐことができる。本発明に用いる多孔膜を成膜するに際し、特にシート状組成物の厚みを200μm以上に調整した場合、該シート状組成物の中心部の方が該中心部の周辺部より冷却速度が遅くなるため、膜の中心部の孔径が該中心部の周辺部の孔径より大きいという特徴を有する。また、上記中心部の周辺部から中心部へ向かって孔径が連続的に大きくなる特徴も有する。そして、このような孔径分布の特徴は、高分子濃度の高い組成物と、高分子濃度の低い組成物を共押出しして成膜する場合には、特に、高分子濃度の高い組成物から得られる低開孔率層中にみられる。
上記のような、膜は、例えば、高分子濃度の高い組成物の高分子濃度を32質量%、高分子濃度の低い組成物の高分子濃度を10質量%、成型物の厚みを300〜550μm、冷却速度を30〜170℃/分とした場合、高分子濃度の高い組成物からなる層が、その片方の高分子濃度の低い組成物からなる組成物からなる層との一方の境界からもう一方の境界に向けて、膜厚方向に孔径の小さな層、孔径の大きな層、孔径の小さな層の順で3層に分かれるという内部構造を有する多孔膜が得られる。
上記のように、膜の中心部の孔径が該中心部の周辺部の孔径より大きいことにより、サブミクロン以下の粒子を含む液体から該粒子を除去するに際し、膜内部での目詰まりを抑制しながら高い濾過速度を維持し得る分離膜として有用となる。
本発明の多孔膜は、その気孔率が一定の範囲にあることが好ましく、その値は20〜80%、好ましくは30〜80%、より好ましくは40〜80%であると良い。気孔率をこの範囲とすることによって、濾過に必要な機械的強度を維持しながら、実用的な濾過速度を実現することができる。本発明において気孔率とは、膜を10cm四方で切り出し、その厚みと質量、および膜素材となる高分子の密度の値から求められる数値であり、後で詳細に述べる。
本発明の多孔膜は、その膜厚が10〜1000μm、好ましくは20〜500μm、より好ましくは30〜300μmの範囲にあると良い。膜厚をこの範囲とすることによって気孔率同様、濾過に必要な機械的強度を維持しながら、実用的な濾過速度を実現することができる。なお本発明において、膜厚とは、膜厚計を用いて多孔膜の異なる箇所の厚みを10点計測した数値の平均値である。
また、走査型電子顕微鏡の構造観察結果から、低開孔率層に対する高開孔率層の厚さの比を容易に計算することが可能であるが、該高開孔率層によって内部の緻密領域を保護するためには、該厚さの比が1/5以上であることは、十分な表面開孔性を与えるとともに、内部の緻密層の保護に有用であるため、好ましい。
本発明の多孔膜の細孔表面は親水性高分子で被覆されていてもよいが、本発明において、細孔表面とは、多孔膜を液体に浸漬し、膜の細孔内を全て液体で満たした状態において、接液している部分を意味する。
そして、上述細孔表面を被覆する親水性高分子とは、該分子構造中に親水性基を含有する高分子を意味する。親水性基としては水酸基、アミド基、カルボキシル基、スルホン酸基、繰り返し単位数1〜4程度のポリオキシエチレン基等が挙げられ、中でも水酸基を含有する高分子は特に好ましい。これは水酸基を含有する高分子が細孔表面に存在することにより、水の自発的浸透を可能とするに十分な親水性を有するため、膜の目詰まりを防止し、血漿のような固形分濃度の高い溶液を濾過する際の透過速度を高く保つことができるためである。
水酸基を含有する高分子としては、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、ポリ(1−ヒドロキシエチレンオキシド)、ポリ(2−ヒドロキシエチレンオキシド)等のポリ(エチレンオキシド)誘導体などの高分子、または2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸と多価アルコールとのエステル類を重合して高分子としたもの、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。特に2−ヒドロキシプロピルアクリレートを重合して高分子としたものは十分な親水性を有し、血漿のような固形分濃度の高い溶液を濾過する際の透過速度を高く保つ効果が大きいため、好適に用いられる。
本発明に用いる多孔膜の細孔表面を被覆する親水性高分子の量としては、多孔膜の細孔表面を被覆する親水性高分子の質量が、被覆される前の多孔膜に対して3〜200質量%の範囲にあることが好ましく、5〜100質量%がより好ましく、10〜70質量%とするのが特に好ましい。被覆する親水性高分子の量をこの範囲とすることによって、血漿のような固形分濃度の高い溶液を濾過する際の透過速度を高く保つことができる。該親水性高分子の質量比は親水化前後で乾燥状態の膜の質量を測定することによって得られる値である。なお以下本明細書では、親水性高分子の質量の、親水化前の多孔膜の質量に対する質量比を「親水化率」と称する場合がある。
本発明に用いる多孔膜の細孔表面を親水性高分子で被覆する方法としては、多孔膜となる膜表面に親水性高分子原料のモノマーをコーティングしてから熱、放射線、架橋剤等で架橋する方法、親水性高分子を適当な溶剤に溶解して膜表面にコーティングする方法、低温下で電子線やガンマ線等の電離性放射線を膜に照射してラジカルを発生させ、次いで液状または気体状のモノマーと接触させる方法(以下、前照射法と称す)、膜を予めモノマーと接触させた状態で電離性放射線を照射してモノマーを重合させる方法(以下、同時照射法と称す)等、公知の方法を用いることができるが、中でも、多孔膜に電離性放射線を照射した後にモノマーと接触させる方法は、細孔表面を均一に被覆することが可能であるため、特に好ましい。
本発明に用いる多孔膜に電離性放射線を照射する方法としては、膜周辺の酸素濃度をできるだけ低く抑えた状態で、放射線を照射することが推奨される。照射する放射線量は、本発明に用いる多孔膜においては10〜500kGyが好ましく、50〜300kGyがより好ましい。照射後の多孔膜にモノマーを接触させる方法としては、モノマーを溶媒に溶解させて溶液とし、該溶液に多孔膜を一定時間浸漬する方法が推奨される。モノマーを溶解させる溶媒としては、例えばモノマーが前述の2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸と多価アルコールとのエステル類である場合、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、水、またはこれらの混合物が適している。
被覆する親水性高分子の量を先述した範囲(被覆される前の多孔膜に対して3〜200質量%)に被覆する方法としては、多孔膜とモノマーとを接触させる時間と温度を変化させる、あるいはモノマーを溶媒に溶解させる際のモノマー濃度を変化させる等で調整することが可能である。また本発明では上記モノマーに、ポリエチレングリコールジアクリレート等のジアクリレート系化合物を添加してから反応を行い、モノマーの重合の結果生じた高分子鎖を架橋しても良い。この方法は細孔表面を被覆する親水性高分子の量が大きくなった場合、透水性を高く保つために有効である。
以上の製造条件により本発明の親水化多孔膜を製造することが可能となる。
本発明の親水化多孔膜を利用した代表的な用途を、以下に詳しく説明する。
本発明の親水化多孔膜は、少なくとも有用物と不要物とを含有する液体中から、不要物を除去することにより有用物を精製することを含む、従来の精密濾過膜あるいは一部の限外濾過膜が現在利用されている用途に幅広く使用できる。そのような用途としては、汚泥あるいは油水混合液中からの水の精製、医薬品製造あるいは食品製造分野における中間原料の精製などが挙げられるが、本発明の親水化多孔膜は固形分濃度の高い溶液に対しても濾過速度が高く、かつ、ウィルスおよびこれに類する大きさの粒子に対する阻止性能が高いことからみて、該粒子が潜在的に混入している恐れのある生理活性物質の精製に特に有用である。該生理活性物質としては、血漿分画製剤の原料に有用な血漿中のタンパクが挙げられ、そのような例としては、アルブミン、免疫グロブリン、フィブリノーゲン、血液凝固因子、アンチトロンビンIII、フィブリン糊、ハプトグロビン、活性化プロテインC、又はC1−インアクチベーター等が挙げられるが、これら例示したものに限定されない。該生理活性物質に潜在的に混入している恐れのある不要物としては、細菌、真菌、ウィルス、病原性プリオン、白血球、及び細胞由来粒子が挙げられる。従って、本発明の親水化多孔膜を使用すれば、少なくとも有用物と不要物とを含有する液体を濾過することにより、不要物を除去して精製された有用物含有液体を提供することができる。さらに本発明は、少なくとも有用物と不要物とを含有する液体を本発明の親水化多孔膜で濾過することにより、不要物を除去するという液体の処理方法をも提供する。また逆の観点からの用途として、ウィルスの同定又は試験等のために、本発明の親水化多孔膜を用いて流体からウィルスを採集及び濃縮することもできる。
本発明の親水化多孔膜は単独で使用することができ、又は適切な支持構造体と組み合わせて使用することができる。適切な支持構造体の例としては、織布又は不織布のような多孔質支持体が挙げられる。
また本発明は、本発明の親水化多孔膜を用いた濾過を簡便に実施する目的のため、該膜を少なくとも1枚含む濾過用フィルターの形態をとることを含む。本発明の濾過用フィルターは、該フィルターに含む本発明の親水化多孔膜がプリーツ状に成形されているものも含む。膜がプリーツ状に成形されている場合、平膜状の膜に比べてフィルター容量に対して大きな膜表面を提供することができるため好ましい。
さらに本発明は、少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を有するハウジング(a)、並びに該ハウジング(a)の内部空間を、該入口に連通する第1の空間(c)と該出口に連通する第2の空間(d)に分割する隔膜(b)を包含する濾過用カートリッジであって、該隔膜(b)の少なくとも一部が本発明の親水化多孔膜により構成されていることを特徴とする濾過用カートリッジも提供する。
なお本発明の濾過用フィルター及び濾過用カートリッジにおいては、本発明の親水化多孔膜以外の構成要素は、ハウジング形成素材として通常用いられる材料であれば特に限定されずに用いることができる。
なお以下の実施例および比較例において、それぞれの値は次の定義に基づき測定した。
[親水化率]
電離性放射線を照射する前に、予め多孔膜の質量を電子天秤で秤量した。電離性放射線を照射してラジカルを発生させ、次いで液状または気体状のモノマーと接触させて親水化多孔膜を得た。得られた親水化多孔膜の質量を前述の電子天秤で秤量し、(1)式によって算出された質量変化率を親水化率(wt%)とした。
親水化率(wt%)=(親水化多孔膜の質量−親水化前の多孔膜の質量)/(親水化前の多孔膜の質量)×100・・・(1)
[膜厚]
膜厚計(Mitutoyo社製 Digimatic Indicator IDF−130製品名)を用いて多孔膜の厚みを測定した。異なる10点の箇所で計測した数値の平均値を多孔膜の膜厚とした。
[気孔率]
多孔膜の質量および体積を測定し、(2)式によって気孔率(%)を算出した。
気孔率(%)={1−(多孔膜の質量)/(多孔膜の比重)/(多孔膜の体積)}×100・・・(2)
[透水量]
多孔膜から任意に直径25mmの円形状に切り抜いた膜を評価膜とし、この質量を電子天秤で秤量した。膜厚は前述の膜厚計で測定した。評価膜をフィルターホルダー(アドバンテック株式会社製 PP−25 商品名)にセットし、温度25℃の純水を空気圧0.1MPaで加圧して一定時間透過させ、その透過量を測定した。評価膜の膜面積、膜厚から、(3)式によって透水量を算出した。
透水量(L/m/hr/(0.1MPa)/100μm)
=(純水の透過量[L])/(膜面積[m])/(純水の透過時間[hr])/(膜間差圧[0.1MPa])/{100/(膜厚[μm])}・・・(3)
[平均孔径]
多孔膜の孔に流体が流れるときの個々の流路を円筒管と考え、円筒管内で流体が定常流をなして流れているときに成り立つHagen−Poiseuilleの法則を用いると、多孔膜の個々の孔に流れる純水の流量は(4)式で表される。
孔1個の流量[m/秒]=π×(円筒管の半径[m])/{8×(純水の粘度[Pa・秒])}×(膜間差圧[Pa])/(膜厚[m])・・・(4)
一方、多孔膜の単位面積あたりに存在する孔の数は(5)式で表される。
孔数[−/m]=(気孔率)/{π×(円筒管の半径[m])}・・・(5)
(4)式および(5)式を用いると、単位面積あたりの多孔膜に流れる純水の流量は(6)式で表される。
多孔膜の流量[m/m/秒]=(円筒管の半径[m])×(気孔率)/{8×(純水の粘度[Pa・秒])}×(膜間差圧[Pa])/(膜厚[m])・・・(6)
多孔膜の平均孔径は、(5)式および前述の透水量の算出における各測定値を用いて計算される円筒管の半径の2倍とし、(7)式によって平均孔径を算出した。
平均孔径(nm)=2×(円筒管の半径[m])×10=2×√{(純水の透過量[m])/(膜面積[m])/(純水の透過時間[秒])×8×(純水の粘度[Pa・秒])×(膜厚[m])/(膜間差圧[Pa])/(気孔率)}×10・・・(7)
[最大孔径]
ASTM F316−86に準拠したバブルポイント法から求められるバブルポイント(MPa)をASTM F316−86に記載の次式(8)を基に、次式(9)によって最大孔径(nm)として換算した。多孔膜を浸漬する試験液として、表面張力が12mN/mの炭化フッ素液体(住友スリーエム社製 パーフルオロカーボンクーラントFX−3250商品名)を用いた。
最大孔径(μm)=2860×(表面張力)/(バブルポイント、Pa)・・・(8)
従って、最大孔径(nm)=最大孔径(μm)×1000
={2860×(表面張力)/(バブルポイント、Pa)}×1000
=2.86×(表面張力)/(バブルポイント、MPa)・・・(9)
[多孔膜の構造観察]
10cm四方の多孔膜から任意に適当な大きさに切り取った膜を、導電性両面テープにより試料台に固定し、3〜5nm程度のオスミウムコーティングを施して検視用試料とした。高分解能走査型電子顕微鏡装置(日立社製S−4700)を用い、加速電圧1.0kV、および所定の倍率で多孔膜の表面および断面の構造観察を実施した。
[膜表面および断面の開孔率]
前述した表面の構造観察結果から、画像解析処理によって膜の表面における空隙部分の占める面積比率を計測した。このときの電子顕微鏡撮影は倍率15000倍で実施した。
膜断面における孔径の異なる層の判定
前述した断面の構造観察結果から、画像解析処理によって膜の断面における空隙部分の占める面積比率を計測した。このときの電子顕微鏡撮影は倍率3000倍および5000倍、10000倍、15000倍で実施した。
[膜断面における孔径の異なる層の判定]
前述した断面の構造観察結果から、画像解析処理によって膜の断面における空隙部分の占める面積比率を計測した。このときの電子顕微鏡撮影は倍率3000倍および5000倍、10000倍、15000倍で実施した。
[ヒト新鮮血漿の濾過速度]
親水化多孔膜から任意に直径25mmの円形状に切り抜いた膜を評価膜とし、この質量を電子天秤で秤量した。試験液として用いるヒト新鮮血漿は、ドナーより採血した血液100mLに対し、抗凝固剤として濾過済みCPD溶液(クエン酸三ナトリウム二水和物26.3g、クエン酸一水和物3.27g、グルコース23.2g、およびリン酸二水素ナトリウム二水和物2.51gを注射用蒸留水1Lに溶解させ、孔径0.2μmのフィルターで濾過した溶液)を14mL加えて混和した血液を、3000rpmで20分間遠心分離し、上澄みを採取することにより得た。該試験液中に混在している浮遊物を取り除くため、親水性デュラポアメンブレンフィルター(ミリポア社製 製品コード:VVLP、公称孔径100nm)、次いで再生セルロース製中空糸膜フィルター(旭化成ファーマ株式会社製 プラノバ75Nフィルター 製品名)で前濾過して夾雑物を除いたものを濾過原液として用いた。該濾過原液の温度を25℃に調整し、空気圧0.1MPaで加圧して30分間濾過した。30分間の積算濾過液量を測定し、(10)式によってヒト新鮮血漿の濾過速度(L/m)を算出した。
血漿の濾過速度(L/m)=(血漿の30分間の積算濾過液量)/(膜面積×血漿の濾過時間×膜間差圧)・・・(10)
[濾過血漿中の固形分率]
濾過速度を測定した後の濾過血漿を1g程度採取し、その質量を電子天秤で秤量した。採取した濾過血漿を60℃の真空乾燥機中で6時間程度、恒量になるまで乾燥させると、残渣として濾過血漿中の固形分が得られた。残渣を前述の電子天秤で秤量し、(11)式によって濾過血漿中の固形分率(wt%)を算出した。
濾過血漿中の固形分率(wt%)=(乾燥後の残渣の質量)/(乾燥前の濾過血漿の質量)×100・・・(11)
[金コロイド粒子の除去率]
親水性多孔膜から任意に直径25mmの円形状に切り抜いた膜を評価膜とした。試験液の調製に用いる金コロイド原液は以下のようにして調製した。テトラクロロ金(III)酸四水和物(和光純薬株式会社製 特級)を注射用水(日本薬局方)に溶解して6.0mMの塩化金酸水溶液を調製し、該水溶液80gに注射用水を320g加え、スターラーで撹拌しながら80℃に加温した。該水溶液が80℃に昇温された後、20分以内にクエン酸ナトリウム二水和物(和光純薬株式会社製 特級)を注射用水に溶解して調製した4%クエン酸ナトリウム水溶液を14g加え、80℃で保温しながら30分間撹拌した。これを冷水で15分間冷却した後、ポリビニルピロリドンK15(東京化成工業株式会社製)を注射用水に溶解して調製した30%ポリビニルピロリドン水溶液を18mL加えて1分間撹拌したものを金コロイド原液とした。TEM観察によって求めた金コロイドの平均粒径は34.5nmであった。試験液として用いる金コロイド溶液は、注射用水を用いて該原液を約10倍に希釈し、該希釈液の535nmにおける吸光度が1.0〜1.2の範囲にあるものを用いた。なお吸光度は紫外可視分光光度計(島津製作所製UV−1700)を用いて測定した。試験液の温度を25℃に調整し、空気圧0.1MPaで加圧して3mL透過させた。得られた透過液の吸光度を測定し、(12)式によって金コロイド粒子の除去率を算出した。
金コロイド粒子の除去率(−Log)=−Log[(透過液の吸光度)/(試験液の吸光度)]・・・(12)
[ウシ下痢症ウィルスの除去性能]
親水化多孔膜から任意に直径25mmの円形状に切り抜いた膜を評価膜とし、この質量を電子天秤で秤量した。試験液の調製に用いるウシ下痢症ウィルス(以下、「BVDV」と称す)原液は、0.5%のウマ血清にBVDVを添加することにより得た。該BVDV原液中に混在している浮遊物を取り除くため、前述のプラノバ75Nフィルターで前濾過して夾雑物を除いたものを試験液として用いた。該試験液の温度を25℃に調整し、空気圧0.0272MPaで加圧して約2mL透過させた。得られた濾液と試験液中のBVDV濃度の測定は、それぞれの液を細胞に加えて3〜4日間培養した後、凝集反応を利用して、TCID50測定法により(13)式によってBVDVの除去性能を算出した。
BVDVの除去性能(−Log)=−Log[(濾液中のBVDV濃度)/(試験液中のBVDV濃度)]・・・(13)
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定
されるものではない。
〔製造例1〕
ポリエチレン樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製 サンファイン、製品名)32重量%、可塑剤(シージーエスター株式会社製 DOP、工業品)37重量%、シリカ粒子(株式会社トクヤマ製 レオロシールDM−10、製品名)31重量%、酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 イルガノックス1010FP、製品名)0.32重量%を混合し、ミキサー(カワタ製スーパーミキサー 容量100L)を用いて室温で10分間撹拌混合した。得られた混合原料を押出機(株式会社プラスチック工学研究所製 BT−40−S−30−L型2軸押出機、特注品)に投入し、200℃で平膜押し出し用のダイスからシート状に押し出し、キャスト装置(大機工業株式会社製 特注品)でキャストロールの温度を120℃とし、キャストロールの隙間をシートの厚みが約100μmとなるように調整しながら、毎分3.5mの速度で巻き取り機にて巻き取った。シートの作製条件を表1に示した。
〔製造例2〕
以下は製造例1と同じ原料と機器を用いた。ポリエチレン樹脂40重量%、可塑剤37重量%、シリカ粒子23重量%、酸化防止剤0.40重量%を混合し、ミキサーを用いて室温で5分間撹拌混合した。得られた混合原料を押出機に投入し、200℃で平膜押し出し用のダイスからシート状に押し出し、キャスト装置でキャストロールの温度を140℃とし、キャストロールの隙間をシートの厚みが約100μmとなるように調整しながら、毎分4.2mの速度で巻き取り機にて巻き取った。シートの作製条件を表1に示した。
〔製造例3〕
以下は製造例1と同じ原料と機器を用いた。ポリエチレン樹脂32重量%、可塑剤42重量%、シリカ粒子26重量%、酸化防止剤0.32重量%を混合し、ミキサーを用いて室温で5分間撹拌混合した。得られた混合原料を押出機に投入し、200℃で平膜押し出し用のダイスからシート状に押し出し、キャスト装置でキャストロールの温度を120℃とし、キャストロールの隙間をシートの厚みが約100μmとなるように調整しながら、毎分4.2mの速度で巻き取り機にて巻き取った。シートの作製条件を表1に示した。
〔製造例4〕
以下は製造例1と同じ原料を用いた。ポリエチレン樹脂10重量%、可塑剤43.5重量%、シリカ粒子26.5重量%、酸化防止剤0.10重量%を混合し、ミキサーを用いて室温で5分間撹拌混合した。得られた混合原料を押出機(ウェルナー製 ZSK40MC 同方向噛合型2軸押出機)に投入し、残りの可塑剤20重量%をフィーダー(クボタ製ロスインウェイトフィーダー プランジャーポンプ2連式)を用いて押出機に導入しながら、スクリューで加熱・混錬して、200℃でペレット成型用のストランドダイスから押し出した。押出された成型物を25℃の冷却槽に通し、ファンカッター(星プラスチック製)を用いてペレット状に成型した。以下は製造例1と同じ機器を用いた。得られたペレット原料を押出機に投入し、200℃で平膜押し出し用のダイスからシート状に押し出し、キャスト装置でキャストロールの温度を120℃とし、キャストロールの隙間をシートの厚みが約100μmとなるように調整しながら、毎分3.2mの速度で巻き取り機にて巻き取った。シートの作製条件を表1に示した。
[実施例1]
製造例1および製造例4で得られたシートからそれぞれ12cm四方に2枚ずつ切り出し、製造例1のシートを2枚重ねた上下に製造例4のシートを配置して計4枚のシートを重ねた積層体とした。該積層体の周囲に厚みが200μmの金枠を配置し、圧縮板(鉄製30cm四方、重量8kg)に挟んで200℃の圧縮成型機(東邦マシナリー株式会社製 油圧成形機 TD−37)に導入し、1分間予熱した後、5kg/cmの圧力を掛けて5分間保持した。次いで25℃の圧縮成型機(王子株式会社製 油圧成型機)に導入し、5kg/cmの圧力を掛けて室温程度になるまで冷却して積層一体型シートを得た。該シートを11cm四方に裁断して金枠に固定し、メチルエチルケトン(和光純薬株式会社製、工業品)に室温で30分浸漬する操作を4回繰り返し、更に80℃にした20重量%水酸化ナトリウム(和光純薬株式会社製、工業品)水溶液に30分浸漬する操作を2回繰り返して可塑剤とシリカ粒子を抽出し、室温で一晩乾燥することにより、平膜状の多孔膜を得た。得られた多孔膜の平均孔径、最大孔径、膜厚、気孔率を前述の方法で測定した。測定結果を膜の作製条件、膜の基本物性とともに表2に示した。また前述の走査型電子顕微鏡を用いて多孔膜の表面構造を観察した結果、図1により、膜表面の開孔率は22%であり、膜断面の膜厚方向に図2に示すように3層の開孔率の異なる層が観察された。また、図5と図6を対比させることで明らかなように、内側の層において、外側の層との境界付近では孔径が小さく、中心部では孔径が大きくなっていた。図3により、外側の層における空隙部分の面積比率は43%、図5により、内側の層における空隙部分の面積比率は20%であった。更に図6により、内側の層の中心部における空隙部分の面積比率は27%であった。
[実施例2]
製造例2および製造例4で得られたシートからそれぞれ12cm四方に2枚ずつ切り出し、製造例2のシートを2枚重ねた上下に製造例4のシートを配置して計4枚のシートを重ねて積層体とする以外は実施例1に従って平膜状の多孔膜を得た。得られた多孔膜の基本物性を表2に示す。また前述の走査型電子顕微鏡を用いて多孔膜の表面構造を観察した結果、図7により、膜表面の開孔率は20%であり、膜断面の膜厚方向に図8に示すように3層の開孔率の異なる層が観察された。また、図11と図12を対比させることで明らかなように、内側の層において、外側の層との境界付近では孔径が小さく、中心部では孔径が大きくなっていた。図9により、外側の層における空隙部分の面積比率は40%、図11により、内側の層における空隙部分の面積比率は24%であった。更に図12により、内側の層の中心部における空隙部分の面積比率は26%であった。
[実施例3]
製造例3および製造例4で得られたシートからそれぞれ12cm四方に2枚ずつ切り出し、製造例3のシートを2枚重ねた上下に製造例4のシートを配置して計4枚のシートを重ねて積層体とする以外は実施例1に従って平膜状の多孔膜を得た。得られた多孔膜の基本物性を表2に示す。また前述の走査型電子顕微鏡を用いて多孔膜の表面構造を観察した結果、膜表面の開孔率は20%であり、膜断面の膜厚方向に3層の開孔率が異なる層が観察された。また、内側の層において、外側の層との境界付近では孔径が小さく、中心部では孔径が大きくなっていた。外側の層における空隙部分の面積比率は47%、内側の層における空隙部分の面積比率は29%であった。更に、内側の層の中心部における空隙部分の面積比率は35%であった。
[比較例1]
製造例3で得られたシートを単独で実施例1と同様に抽出工程を実施することにより、平膜状の多孔膜を得た。得られた多孔膜の基本物性を表3に示す。また前述の走査型電子顕微鏡を用いて多孔膜の表面構造を観察した結果、膜表面の開孔率は8%であった。この比較例は本発明において膜表面の開孔率が低下すると透水量が低下し、平均孔径が小さくなるために、高固形分濃度を有する液体の濾過には不適となる例を示すものである。
[比較例2]
特許文献1の実施例1に準じて、多孔膜を製造した。すなわち、使用するシリカ粒子が東ソーシリカ株式会社製Nipsil LP(親水性シリカ)である点以外は、製造例1と同じ原料と機器を用いて、ポリエチレン樹脂32重量%、可塑剤48重量%、シリカ粒子20重量%、酸化防止剤0.32重量%を常温で30分混合して得られた混合原料を押出機に投入し、200℃で平膜押出し用のダイスからシート状に押出して成型して、得られたシートから実施例1と同様に抽出工程を実施した。得られた膜の電子顕微鏡写真を図13に示す。図13から分かるように、特許文献1の実施例1に準じて製造した多孔膜では、膜の最表面の開孔性が悪かった。
[実施例4]
ポリエチレン樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製 サンファイン 製品名)32.0質量%、可塑剤(シージーエスター株式会社製 DOP 工業品)37.1質量%、シリカ粒子(株式会社トクヤマ製 レオロシールDM−10 製品名)30.9質量%、酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 イルガノックス1010FP 製品名)0.32質量%を混合し、ミキサー(カワタ製スーパーミキサー 容量100L)を用いて室温で10分間撹拌混合した。得られた混合原料をA−1とする。一方、ポリエチレン樹脂15.0質量%、可塑剤52.3質量%、シリカ粒子32.7質量%、酸化防止剤0.15質量%を混合し、同様にミキサーを用いて室温で5分間撹拌混合した。得られた混合原料をB−1とする。混合原料A−1を220℃に昇温した第1押出機(株式会社プラスチック工学研究所製 BTN−25−S2−45−L型 同方向2軸押出機 特注品)に、混合原料B−1を200℃に昇温した第2押出機(装置名は第1押出機と同一)にそれぞれ投入し、220℃の平膜共押し出し用2種3層ダイスからシート状に押し出し、キャストロールの温度を100℃としたキャスト装置(大機工業株式会社製 特注品)により、キャストロールの隙間をシートの厚みが約600μmとなるように調整しながら、毎分1.3mの速度で巻き取り機の張力を4.7kgf/cmに設定して巻き取った。得られたシートを30cm四方に裁断して金枠に固定し、塩化メチレン(和光純薬株式会社製工業品)に38℃で1時間浸漬する操作を4回繰り返し、更に80℃の20質量%水酸化ナトリウム(和光純薬株式会社製 工業品)水溶液に1時間浸漬する操作を2回繰り返して可塑剤とシリカ粒子を抽出し、室温で一晩乾燥することにより、平膜状の多孔膜を得た。
得られた多孔膜を窒素封入したアルミ袋に入れ、−80℃の温度下でガンマ線を100キログレイの線量となるように照射した。膜を袋から取り出し、5.5質量%の2−ヒドロキシプロピルアクリレート(和光純薬株式会社製)のt−ブタノール(和光純薬株式会社製 特級)/水(1:3)溶液に40℃で20分浸漬した後、イソプロピルアルコール(和光純薬株式会社製 特級)/水(1:1)溶液で良く洗浄し親水化多孔膜を得た。得られた親水化多孔膜の親水化率、膜厚、気孔率、透水量、平均孔径、最大孔径、を前述の方法で測定した。測定結果を膜の作製条件とともに表4に示した。
また前述の走査型電子顕微鏡を用いて親水化多孔膜の表面構造を観察した結果、図14により、膜表面の開孔率は22%であり、膜断面の膜厚方向に図15に示すように3層の開孔率の異なる層が観察された。また、図18と図19を対比させることで明らかなように、内側の層において、外側の層との境界付近では孔径が小さく、中心部では孔径が大きくなっていた。図16により、外側の層における空隙部分の面積比率は43%、図18により、内側の層における空隙部分の面積比率は20%であった。更に図19により、内側の層の中心部における空隙部分の面積比率は27%であった。
[実施例5]
以下は実施例4と同じ原料と機器を用いた。ポリエチレン樹脂32質量%、可塑剤41.8質量%、シリカ粒子26.2質量%、酸化防止剤0.32質量%を混合し、ミキサーを用いて室温で5分間撹拌混合した。得られた混合原料をA−2とする。一方、実施例5のB−1と同じ組成の原料も調製した。混合原料A−2を220℃に昇温した第1押出機に、混合原料B−1を200℃に昇温した第2押出機にそれぞれ投入し、220℃の平膜共押し出し用2種3層ダイスからシート状に押し出し、キャストロールの温度を100℃としたキャスト装置により、キャストロールの隙間をシートの厚みが約550μmとなるように調整しながら、毎分1.0mの速度で巻き取り機の張力を5.1kgf/cmに設定して巻き取った。得られたシートから実施例1と同様に抽出工程、次いで親水化処理を実施することにより、平膜状の親水化多孔膜を得た。得られた親水化多孔膜の基本物性を表4に示す。
[製造例5]
実施例5のA−1と同じ組成の混合原料を調製した。該混合原料を押出機(株式会社プラスチック工学研究所製 BT−40−S−30−L型2軸押出機 特注品)に投入して、200℃で平膜押し出し用のダイスからシート状に押し出し、キャスト装置(大機工業株式会社製 特注品)でキャストロールの温度を120℃とし、キャストロールの隙間をシートの厚みが約100μmとなるように調整しながら、毎分3.5mの速度で巻き取り機にて巻き取った。シートの作製条件を表5に示した。
[製造例6]
以下は実施例5と同じ原料を用いた。ポリエチレン樹脂10質量%、可塑剤43.5質量%、シリカ粒子26.5質量%、酸化防止剤0.10質量%を混合し、実施例5と同じミキサーを用いて室温で5分間撹拌混合した。得られた混合原料を押出機(ウェルナー製 ZSK40MC 同方向噛合型2軸押出機)に投入し、残りの可塑剤20質量%をフィーダー(クボタ製ロスインウェイトフィーダー プランジャーポンプ2連式)を用いて押出機に導入しながら、スクリューで加熱・混錬して、200℃でペレット成型用のストランドダイスから押し出した。押出された成型物を25℃の冷却槽に通し、ファンカッター(星プラスチック製)を用いてペレット状に成型した。以下は製造例5と同じ機器を用いた。得られたペレット原料を押出機に投入し、200℃で平膜押し出し用のダイスからシート状に押し出し、キャスト装置でキャストロールの温度を120℃とし、キャストロールの隙間をシートの厚みが約100μmとなるように調整しながら、毎分3.2mの速度で巻き取り機にて巻き取った。シートの作製条件を表5に示した。
[実施例6]
製造例5および製造例6で得られたシートからそれぞれ12cm四方に2枚ずつ切り出し、製造例5のシートを1枚、製造例6のシートを2枚用意し、製造例5のシートを製造例6のシートで挟み込むことにより、計3枚のシートを重ねた積層体とした。該積層体の周囲に厚みが200μmの金枠を配置し、圧縮板(鉄製30cm四方、質量8kg)に挟んで200℃の圧縮成型機(東邦マシナリー株式会社製 油圧成形機 TD−37)に導入し、5kg/cmの圧力を掛けて4分間保持した。次いで25℃の圧縮成型機(王子株式会社製 油圧成型機)に導入し、5kg/cmの圧力を掛けて室温程度になるまで冷却して積層一体型シートを得た。該シートを11cm四方に裁断して金枠に固定し、実施例5と同様に抽出工程、次いで親水化処理を実施することにより、平膜状の親水化多孔膜を得た。得られた親水化多孔膜の基本物性を表6に示す。また前述の走査型電子顕微鏡を用いて親水化多孔膜の表面構造を観察した結果、図20により、膜表面の開孔率は22%であり、膜断面の膜厚方向に図21に示すように3層の開孔率の異なる層が観察された。また、図23により、内側の層において、外側の層との境界から中心部へ向かうにつれ、孔径が徐々に大きくなっていることが分かる。図22により、外側の層における空隙部分の面積比率は43%、図23により、内側の層における空隙部分の面積比率は20%であった。
[実施例7]
以下は実施例4と同じ原料を用いた。ポリエチレン樹脂20質量%、可塑剤46.7質量%、シリカ粒子33.3質量%、酸化防止剤0.20質量%を混合し、実施例5と同じミキサーを用いて室温で5分間撹拌混合した。得られた混合原料を押出機(ウェルナー製 ZSK40MC 同方向噛合型2軸押出機)に投入し、スクリューで加熱・混錬して、200℃でペレット成型用のストランドダイスから押し出した。押出された成型物を25℃の冷却槽に通し、ファンカッター(星プラスチック製)を用いてペレット状に成型した。これをペレットB−2と称す。一方、実施例5のA−1と同じ組成の原料も調製した。
以下は実施例5と同じ機器を用いた。混合原料A−1を220℃に昇温した第1押出機に、ペレットB−2を200℃に昇温した第2押出機にそれぞれ投入し、B−2の押出量と同量の可塑剤をフィーダー(クボタ製ロスインウェイトフィーター プランジャーポンプ2連式)を用いて第2押出機に導入(該操作により、溶融混錬物中のポリエチレン樹脂濃度は10質量%となる)しながら、220℃の平膜共押し出し用2種3層ダイスからシート状に押し出し、キャストロールの温度を100℃としたキャスト装置により、キャストロールの隙間をシートの厚みが約610μmとなるように調整しながら、毎分1.3mの速度で巻き取り機の張力を4.6kgf/cmに設定して巻き取った。得られたシートから実施例4と同様に抽出工程、次いで親水化処理を実施することにより、平膜状の親水化多孔膜を得た。得られた親水化多孔膜の基本物性を表4に示す。
[実施例8]
実施例4〜6で得られた親水化多孔膜、及び比較例2で得られた多孔膜を実施例4と同様に親水化処理することにより得られた親水化多孔膜を用いて、ヒト新鮮血漿の濾過速度、及び金コロイド粒子の除去率を前述の方法で測定した。測定結果を膜の基本物性とともに表7に示した。
なお再生セルロース製中空糸膜フィルターで濾過した後の濾過原液は透明性を増し、肉眼で見える浮遊物が取り除かれていたが、固形分濃度は8.5%を保持しており血漿として必要な成分は失われていなかった。
[実施例9]
実施例4、7で得られた親水化多孔膜、及び比較例2で得られた多孔膜を実施例4と同様に親水化処理することにより得られた親水化多孔膜を用いて、BVDVの除去性能を前述の方法で測定した。測定結果を膜の基本物性とともに表8に示した。
本発明は、液体中に含まれるサブミクロン以下の粒子を阻止する分離膜として有用であり、性能として高い透過速度が求められる分野、特に血漿等の生理活性溶液からウィルスや細菌、病原性プリオン等を高い阻止性能で除去できる医用分離膜として利用できる。こうして得られた血漿は血漿製剤製造分野、血漿分画製剤製造分野、バイオテクノロジー分野等における種々の原料等に用いることができる。
さらに本発明は、薬液や処理水等から微粒子を除去する産業プロセス用フィルター、油水分離膜や液ガス分離膜、上下水等の浄化用分離膜、リチウムイオン電池等のバッテリーセパレータ、及びポリマー電池用の固体電解質支持体等、広範囲な用途に利用できるものである。

Claims (16)

  1. 高分子及び可塑剤を含む高低2種の高分子濃度を有する少なくとも2種の組成物を、該高分子の融点以上に加熱して各々独立に均一溶融させる工程、入口側から出口側までが少なくとも3層に区切られた内部構造を有する金型内で該組成物を接触しながら共に押し出すことで、高分子濃度の低い組成物からなる層が高分子濃度の高い層の両面に位置するように積層する工程によって、該高濃度組成物と該低濃度組成物との溶融積層物を得る工程、溶融時の温度より少なくとも80℃以上低い冷却表面に該溶融積層物の両面を直接接触させることで成型物を得る工程、次いで該成型物から実質的に全ての可塑剤を除去する工程、を有するスキンレス多孔膜の製造方法。
  2. 高分子及び可塑剤を含む高低2種の高分子濃度を有する少なくとも2種の組成物を用意する工程、各々独立にシート状に成型する工程、高分子濃度の低い組成物からなるシートが高分子濃度の高いシートの両面に位置するように重ね合わせた積層体を得る工程、該積層体を加熱して該高濃度組成物と該低濃度組成物との溶融積層物を得る工程、溶融時の温度より少なくとも80℃以上低い冷却表面に該溶融積層物の両面を直接接触させることで成型物を得る工程、次いで該成型物から実質的に全ての可塑剤を除去する工程、を有するスキンレス多孔膜の製造方法。
  3. 溶融時の温度より少なくとも80℃以上低い冷却表面が冷却した金属製のロールであることを特徴とする請求項1または2に記載のスキンレス多孔膜の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のスキンレス多孔膜に電離性放射線を照射した後、2−ヒドロキシプロピルアクリレートを接触させて細孔表面を親水化する工程をさらに有することを特徴とするスキンレス多孔膜の製造方法。
  5. 低開孔率層の両面に高開孔率層が積層した多層構造からなる高分子の多孔膜であって、両表面にスキン層がなく、バブルポイント法で求めた最大孔径が10nm以上、100nm以下、透水測定法から求めた平均孔径が該最大孔径より大であり、該低開孔率層中に少なくとも2層以上の最小孔径層を有することを特徴とするスキンレス多孔膜。
  6. 低開孔率層と高開孔率層との境界近傍に該最小孔径層が位置することを特徴とする請求項5に記載のスキンレス多孔膜。
  7. 低開孔率層の膜厚方向の中心部の孔径が、周辺部の孔径より大であることを特徴とする請求項5または6に記載のスキンレス多孔膜。
  8. 高開孔率層の断面開孔率が、低開孔率層の断面開孔率より少なくとも10%以上高いことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のスキンレス多孔膜。
  9. 低開孔率層に対する高開孔率層の厚さの比が1/5以上であることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載のスキンレス多孔膜。
  10. 溶融成膜法によって得られた多孔構造を有することを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載のスキンレス多孔膜。
  11. 両表面の開孔率が10%以上であることを特徴とする請求項5〜10のいずれかに記載のスキンレス多孔膜。
  12. 該高分子がポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、フッ素化炭化水素ポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリエーテルスルホンのいずれかであることを特徴とする請求項5〜11のいずれかに記載のスキンレス多孔膜。
  13. 細孔表面が親水性高分子で被覆されていることを特徴とする請求項5〜12のいずれかに記載のスキンレス多孔膜。
  14. 該親水性高分子が少なくとも水酸基を有することを特徴とする請求項13に記載のスキンレス多孔膜。
  15. 請求項5〜17のいずれかに記載の多孔膜を用いて、少なくとも二種の成分を含有する液体から、特定の成分を濾過する方法。
  16. 細菌、真菌、ウィルス、病原性プリオン、白血球、及び細胞由来粒子からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、生理活性物質を含む液体から、生理活性物質をのみを透過することを特徴とする請求項15に記載の液体の処理方法。
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