本発明は、情報を高速かつ高密度に記録および再生する情報記録媒体(以下、単に「記録媒体」とも呼ぶ)、およびその製造方法に関するものである。
発明者は、レーザ光の照射により情報を記録再生する、ディスク形状の大容量相変化情報記録媒体(以下、「光ディスク」とも呼ぶ)として、4.7GB/DVD−RAM、および片面単層25GB(1倍速)/Blu−rayディスクを開発した。これらは、データファイルや画像ファイルとして用いることができる。さらに、発明者は、光ディスクの記録容量を増加させることを目的として、ディスクの片面側に情報層を2層有する、片面2層50GB(1倍速)/Blu−rayディスクを開発した。これらは既に商品化されている。
これらのDVD−RAMおよびBlu−rayディスクにおいては、記録方式として、相変化記録方式を採用している。この記録方式は、記録層がレーザ光線の照射によって、アモルファスと結晶との間で(あるいは結晶とさらに異なる構造の結晶との間)で可逆的に状態変化を起こす性質を利用する。より具体的には、情報の記録は、レーザ光照射により、薄膜である記録層の屈折率および消衰係数の少なくとも一方を変化させて、記録マークを形成して実施する。記録マークが形成されると、当該マークとそれ以外の部分では、照射された光の透過光または反射光の振幅に差が生じる。情報(信号)の再生は、そのような差を検出することにより実施される。
一般には、記録層の材料が結晶状態にあるときが未記録状態とされる。信号の記録は、レーザ光を照射して、記録層材料を溶融した後、急冷してアモルファス状態とすることにより実施する。また、信号の消去は、記録時よりも低いパワーのレーザ光を照射し、記録層を結晶状態とすることにより実施する。
相変化型の光ディスクは一般的に、基板上に、誘電体層、記録層、および反射層を有する構成を有する。そのディスク構成の一例としては、基板上に第一の誘電体層、記録層、第二の誘電体層、そして反射層を順に積層したものがある。以下に、各層の役割について述べる。誘電体層は、誘電材料を含む層であり、外部からの機械的なダメージから記録層を保護する役割、多重反射による干渉効果を利用して光学的変化を強調する役割、外気からの影響を遮断し、記録層の化学的な変化を防止する役割、および信号を繰り返し記録する場合に生じる基板表面の荒れ及び記録層の熱的ダメージを低減する役割等を有している。そのため、誘電体層は、保護層とよばれることもある。
誘電体層が二層構成を有する場合、記録層と接する誘電体層(この層は界面層ともよばれる)は、その組成が適宜選択されることにより、記録層が結晶―アモルファス間で状態変化する際、その状態変化のスピードを変化させ得る。よって、記録層と接する誘電体層は、結晶化速度を制御するという重要な役割も有している。
記録層は、先述のようにレーザ光を吸収して、相変化を起こす層であり、主にこの層に情報が記録されることとなる。反射層は、情報を記録消去する際には、レーザ光を吸収して高温となった記録層から、熱を吸収して、放熱する役割を有する。
各層の特性は、その材料組成だけでなく、その厚さによっても、変化する。即ち、材料組成が同じであっても、厚さが異なる層は、異なる特性を示す。例えば、反射層の厚さをより厚くすると、情報を記録する際に記録層が吸収した熱が効率的に放熱されることを可能にする。その結果、アモルファス部分がより容易に形成されて、信号品質が向上する。
前述の片面2層Blu−rayディスクのような片面2層光ディスクに代表される片面多層情報記録媒体は、図2に示すように、基板20上に、第1の情報層21、第2の情報層22、第3の情報層23、・・・・・第nの情報層nを有し、各情報層がUV硬化樹脂等から成る透明な光学分離層により光学的に分離され、第n情報層の上にUV硬化樹脂等から成るカバー層28(光透過層)が設けられた構成を有する。各情報層について、情報の記録再生は、カバー層28側からレーザ光29を入射して行う。
片面多層記録媒体に求められる特性は、レーザ光入射側に近い情報層が高い透過率を有していることである。例えば、片面2層記録媒体の場合、奥側(レーザ光(またはレーザ光源)からより遠い側)の情報層(これを「第1の情報層」と呼ぶ)について、情報の記録再生は、レーザ光入射側に近い情報層(これを「第2の情報層」と呼ぶ)を透過したレーザ光を用いて行う。そのため、第1の情報層に情報を記録する際に必要なレーザパワーは、第1の情報層が単独で設けられている記録媒体への情報の記録に必要なレーザパワーを、第2の情報層の透過率で除した値となる。すなわち、2層構成の媒体は、記録再生のために、より多くのレーザ光パワーを必要とする。また、2層構成の媒体においては、第2の情報層が、高透過率(例えば50%)を有する必要がある。これに対し、第1の情報層は、高い反射率を有する必要がある。
我々は、レーザ光の入射側からみて、少なくとも記録層と反射層とをこの順に備えた情報層において、誘電体からなる透過率調整層を反射層のレーザ光入射側と反対側に接して設ける技術を検討した。さらに、我々は、前記透過率調整層と反射層の屈折率、および消衰係数を最適化した。その結果、第1の情報層の高透過率を実現した。さらに、高透過率を実現するためには、レーザ光を吸収する層(記録層、反射層)を薄膜化するというアプローチもある。
これまでに報告されている片面2層記録媒体の例を説明する。日本国特許公開特開2001−266402号公報には、第1の情報層の構成が、膜を形成する基板(成膜装置に取り付けられる基板)に近い側から順に、AlCr/ZnS−SiO2/GeSbTe/ZnS−SiO2であり、第2の情報層の構成が、ZnS−SiO2/InSbTe/ZnS−SiO2である、片面2層の光ディスクが示されている。ここで、「/」は積層されていることを示し、「−」は混合されていることを示す。この文献に記載された記録媒体においては、それぞれの情報層の記録層組成が互いに異なる。
日本国特許公開特開2002−298433号公報には、第1の情報層の構成が、SiC(透明放熱層)/Au(反射層)/ZnS−SiO2(誘電体層)/GeN(結晶化促進層)/Ge5Sb76Te19(記録層)/GeN(結晶化促進層)/ZnS−SiO2(誘電体層)であり、第2の情報層の構成が、Ag合金(反射層)/ZnS−SiO2(誘電体層)/GeSiN(結晶化促進層)/Ge2Sb2Te5(記録層)/GeSiN(結晶化促進層)/ZnS−SiO2(誘電体層)である、片面2層の光記録媒体が示されている。この文献に記載された記録媒体において、第1の情報層における反射層、記録層、および記録層と接する結晶化促進層の組成は、第2の情報層のそれらとは異なっている。
また、本出願人(米国における譲受人)が開発した片面2層の光ディスクの一形態が、International Symposium Optical Memory(ISOM2000) Technical Digest、pp16−17に開示されている。この片面2層の光ディスクにおいて、第1の情報層の構成は、Al合金(反射層)/ZnS−SiO2(保護層)/GeN(界面層)/GeSbTe(記録層)/GeN(界面層)/ZnS−SiO2(保護層)であり、第2の情報層の構成は、Ag合金(反射層)/ZnS−SiO2(保護層)/GeN(界面層)/GeSbTeSn(記録層)/GeN(界面層)/ZnS−SiO2(界面層)である。この光ディスクにおいて、第1の情報層の記録層および反射層の組成は、第2の情報層のそれらとは異なっている。
上記の文献に記載された片面2層構成の記録媒体はいずれも、一方の情報層を構成する層のうち、1または複数の層の組成が、他の情報層の対応する層の組成と異なっている。これは、前述のとおり、第2の情報層と第1の情報層に要求される特性が異なることによる。
日本国特許公開特開2005−122872号公報には、第1の情報層の構成が、Al−Ti(反射層)/ZnS−SiO2(保護層)/Ge5Ag1In2Sb70Te22(記録層)/ZnS−SiO2(保護層)であり、第2の情報層が、In2O3−ZnO(熱拡散層)/Ag−Zn−Al(反射層)/ZnS−SiO2(保護層)/Ge5Ag1In2Sb70Te22(記録層)/ZnS−SiO2(保護層)/In2O3−ZnO(熱拡散層層)である、2層相変化型の情報記録媒体が開示されている(実施例1)。この文献に記載された記録媒体において、第1の情報層における記録層は第2の情報層のそれと同じであり、また、両方の情報層において、記録層はZnS−SiO2で挟まれている。このディスクは、第1および第2の情報層の反射層の組成は互いに異なるものの、第1の情報層の記録層および保護層の組成は、第2の情報層のそれらと同じであり、その点で、上記3つの文献に開示された媒体とは異なる。
スパッタリングにより、情報記録媒体の記録層、反射層、誘電体層およびその他の薄膜(例えば、透過率調整層等)を形成する際、その量産性の良さから、枚葉式スパッタリング装置がしばしば用いられる。枚葉式スパッタリング装置を模式的に示す平面図を図3に示す。この装置において、スパッタリングは、成膜室32−38で実施され、1枚の基板が、成膜室32−38を一巡すると、7つの層が形成されることとなる。基板は、真空チャンバー内(メインチャンバー31)に投入され、ロードロック室30を介して、成膜室(成膜室32または38)に搬送される。各成膜室においては、1つの基板のスパッタリングが終了してこれが次の成膜室に入ると、別の基板が送られてくる。
枚葉式スパッタリング装置を用いて、片面2層構造の記録媒体を製造する場合、第1の情報層を複数の成膜室を一巡させて形成した後、第2の情報層を同じ成膜室をさらに一巡させて形成する方法がある。この場合、第2の情報層の形成の前に、第1の情報層とは異なる組成とすべき層を形成する成膜室のターゲットを交換する。3つ以上の情報層を有する媒体も同様の方法で、製造し得る。よって、記録層の組成が、第1の情報層と第2の情報層とで異なるときには、記録層を形成する成膜室のターゲットを取り替える必要がある。
この方法は、1台の比較的小型なスパッタリング装置で、片面多層構造の記録媒体の製造を可能にするという利点を有するが、ターゲット交換を必要とするために、下記のような問題を有する。
(1)ターゲット交換の間、生産がストップするため、生産稼働率が低下する。
(2)ターゲット交換に伴う成膜室の開放により、成膜室内に真空排気してもなかなか排気されない微量の水分が残存する。さらに、この水分が、ターゲット交換した成膜室だけでなく、メインチャンバーを介してつながっている他の成膜室にも、影響を及ぼす。成膜室中の残留水分は、僅かであっても、特に、記録再生特性を主に支配する記録層及びそれに接する誘電体層の膜質に大きく影響し、ひいては媒体の特性に悪影響を与え得る。また、残留水分の影響は、高倍速対応の媒体において、より大きくなる。
ターゲット交換を不要にすれば、かかる問題を回避し得る。具体的には、例えば、成膜室の数を増やして、1つの媒体においてスパッタリングにより形成すべき層を、別個の成膜室で形成することが考えられる。例えば、第1および第2の情報層がそれぞれ6層構成である場合には、12個の成膜室を有するスパッタリング装置を使用すれば、上記問題は回避できる。あるいは、枚葉式スパッタリング装置を増やし、各情報層をそれぞれ別個の装置で形成してもよい。しかし、そのように装置を変更する又は増やすことは、装置を高額にし、および/または生産コストを上昇させる。
あるいは、各機能層(特に、記録層)がすべての情報層において共通した組成を有するように、媒体を設計すれば、ターゲット交換を不要にする又はその回数を減らすことができる。しかしながら、そのような媒体は、多くの文献において、提案されていない。それは、前述のように、例えば、片面2層構造の記録媒体においては、第1の情報層と第2の情報層は、有するべき特性が異なることによる。
日本国特許公開特開2005−122872号公報に開示された媒体は、第1の情報層の記録層および保護層の組成が、第2の情報層のそれらと同じであるから、他の文献に開示された媒体と比較して、枚葉式スパッタリング装置を用いて、より効率的に製造されると予想される。しかし、発明者らの試験によれば、この文献に記載の媒体は、環境試験後の特性(ライフ特性)が良好でないことが判明した。
本発明は、すべての情報層において、記録層の組成が同じであり、かつそれに接する層の組成が同じであり、保存特性の良好な情報記録媒体を提供することを目的とする。
本発明の情報記録媒体は、それぞれ記録層を有する少なくとも2つの情報層を含み、各記録層が光学的に検出可能な相変化を生じ得る情報記録媒体であって、光の入射側に近い方を情報層a、遠い方を情報層bとしたとき、前記情報層aは、光が入射する側に近い方から、誘電体層a1、記録層a、誘電体層a2、および反射層aをこの順に少なくとも有し、前記情報層bは、光が入射する側に近い方から、誘電体層1b、記録層b、誘電体層2b、および反射層bをこの順に少なくとも有し、
前記誘電体層1aおよび2aは記録層aと接しており、かつ前記誘電体層1bおよび2bは記録層bと接しており、
前記誘電体層1aおよび前記誘電体層1bが、酸素原子、窒素原子およびフッ素原子から選択される少なくとも1つの原子を含み、かつ、酸素原子を含むときには、Al、Si、Cr、Ta、Mo、W、Zr、およびHfから選択される少なくとも1つの元素を含み、窒素原子を含むときには、Al、B、Ge、Si、Ti、およびZrから選択される少なくとも1つの原子を含み、フッ素原子を含むときには、Dy、Er、Eu、Ce、Bi、およびLaから選択される少なくとも1つの元素を含み、
前記誘電体層2aおよび前記誘電体層2bが、Zr、Si、Cr、In、Ga、およびHfから選択される少なくとも1つの元素、および酸素原子を含み、
前記誘電体層1aの組成が前記誘電体層1bの組成と同じであり、前記記録層aの組成が前記記録層bの組成と同じであり、かつ前記誘電体層2aの組成が前記誘電体層2bの組成と同じである、情報記録媒体を提供する。
本発明の情報記録媒体は、各情報層に含まれる記録層に接して設けられている誘電体層を特定の元素を含むように構成することによって、レーザ光が入射する側に近い方から、誘電体層1/記録層/誘電体層2の構成をそれぞれ有する2つの情報層aおよびbにおいて、これらの情報層の記録層aおよびbの組成を同じにし、誘電体層1aと誘電体層1bの組成を同じにし、かつ誘電体層2aと誘電体層2bの組成を同じにしても、情報の良好な記録再生を可能にし、また、良好なライフ特性を示す。よって、本発明は、2またはそれ以上の情報層を含む、記録再生特性およびライフ特性の良好な記録媒体を、スパッタリング法により、より効率的に製造することを可能にする。
本発明の情報記録媒体において、誘電体層1aおよび誘電体層1bに含まれる酸素原子は、酸化物の形態として、窒素原子は、窒化物の形態として、フッ化物は、フッ化物の形態で、一般には存在し得る。したがって、本発明の情報記録媒体は、前記誘電体層1aおよび前記誘電体層1bが、Al、Si、Cr、Ta、Mo、W、Zr、およびHfの酸化物、Al、B、Ge、Si、Ti、およびZrの窒化物、Dy、Er、Eu、Ce、Bi、およびLaのフッ化物から選ばれる、少なくとも1つの化合物を含むものであり、前記誘電体層2aおよび前記誘電体層2bが、Zr、Si、Cr、In、Ga、およびHfの酸化物から選ばれる、少なくとも1つの化合物を含むものであることが好ましい。
本発明の情報記録媒体においては、前記反射層aの組成が前記反射層bの組成と実質的に同じであることが好ましい。2つの情報層の反射層の組成が同じであれば、より高い製造効率で、記録媒体を製造することが可能となる。
本発明の情報記録媒体において、誘電体層1aと誘電体層1bとの組み合わせ、記録層aと記録層bの組み合わせ、および誘電体層2aと誘電体層2bとの組み合わせから選択される、少なくとも1つの組み合わせにおいて、層の厚さが互いに異なることが好ましい。層の厚さを変えることにより、組成が同じであっても、互いに異なる光学特性を有する情報層aおよびbを得ることができる。その場合、記録層1aの厚さ<記録層1bの厚さであることが好ましい。情報層aにおける光の吸収を小さくするためである。
あるいは、本発明の情報記録媒体において、反射層aと反射層bの組成が同じであるときに、2つの反射層の厚さが互いに異なるようにしてもよい。その場合、反射層aの厚さ<反射層bの厚さであることが好ましい。情報層aにおける光の吸収を小さくするためである。
反射層aと反射層bは、Ag、AlおよびAuから選ばれる少なくとも1つの元素を主成分(90at%以上)として含むことが好ましい。
本発明の情報記録媒体は、誘電体層1aの記録層aと接する側とは反対の側に接している、誘電体層3a、および誘電体層1bの記録層bと接する側とは反対の側に接している、誘電体層3bをさらに含んでよい。その場合、誘電体層3aの組成と誘電体層3bの組成は、同じであることが好ましい。誘電体層3aおよび3bを有する記録媒体において、誘電体層1aおよび1bは界面層と呼んでもよい。
本発明の情報記録媒体は、情報層aが、高屈折率層aをさらに有し、光が入射される側から、誘電体層2a、反射層aおよび高屈折率層aがこの順に位置し、且つ記録再生に使用する光の波長における、誘電体層1aの屈折率をna1、誘電体層2aの屈折率をna2、および高屈折率層の屈折率をna3としたときに、n1a<n3aおよびn2a<n3aを満たすことが好ましい。高屈折率層は、情報層aの光の透過率を高くして、情報層bでの記録再生がより良好に実施されるようにする。
高屈折率層は、好ましくは、TiおよびNbから選択される少なくとも1つの元素、酸素原子および窒素原子のいずれか一方または両方を含むことが好ましい。そのような高屈折率層において、TiおよびNbは、一般に、酸化物および/または窒化物として存在し得る。
本発明の情報記録媒体において、記録層aおよびbは、TeおよびGeを含むことが好ましい。そのような記録層は、前記特定の元素を含む2つの誘電体層1および誘電体層2とともに使用する場合に、誘電体層1aおよび1bの組成が同じであり、記録層aおよびbの組成が同じであり、かつ誘電体層2aおよび2bの組成が同じである記録媒体を、都合良く構成できる。記録層aおよびbは、より好ましくは、In、Bi、Sn、Ag、Sb、GaおよびAlから選ばれる少なくとも1つの元素をさらに含む。
本発明は、情報層の数が2つである情報記録媒体として、好ましく実現され得る。具体的には、情報層の数が2つである媒体は、DVDまたはBD−REとして、実現され得る。
あるいは、本発明は、情報層の数によらず、情報層aおよびbが連続する、情報記録媒体として、好ましく実現され得る。特に、情報層aおよびbが連続する場合に、枚葉式スパッタリング装置を用いて、ターゲットの交換を必要とせずに又はその回数を減らして、効率よく情報記録媒体を製造することができる。
本発明はさらに、本発明の情報記録媒体の製造方法を提供する。本発明の記録媒体の製造方法は、情報層aの誘電体層1a、記録層aおよび誘電体層2a、ならびに情報層bの誘電体層1b、記録層bおよび誘電体層2bを、それぞれスパッタリング法、蒸着法およびCVD法から選択されるいずれか一つの方法で形成することを含み、
誘電体層1aおよび1bを、同じ組成のターゲットを用いて形成し、
記録層aおよびbを、同じ組成のターゲットを用いて形成し、
誘電体層2aおよび2bを、同じ組成のターゲットを用いて形成することを特徴とする。この製造方法によれば、例えば、1つの成膜室において、ターゲット交換をすることなく、誘電体層1aおよび1bを形成することができ、別の共通する成膜室において、ターゲット交換をすることなく、記録層aおよびbを形成することができ、さらに別の共通する成膜室において、ターゲット交換をすることなく、誘電体層2aおよび2bを形成することができ、製造効率を高くし得る。
本発明の製造方法においては、情報層aの反射層aと情報層bの反射層bを、同じ組成のターゲットを用いて形成することが好ましい。それにより、記録媒体の製造中のターゲットの交換をより少なくして、より効率的に、記録媒体を製造することが可能となる。
上記において、層に関して「同じ組成」という用語は、「実質的に同じ組成」の意味であり、完全に同じ組成に加えて、分析精度(誤差)および成膜中に混入する微量の不純物に起因して、僅かに異なる組成をも包含する意味で使用される。また、情報記録媒体を構成する各層は特に数十nm以下と極めて薄いために、分析精度は低くなる傾向にある。そのため、本明細書において、「層の組成が同じである」とは、薄膜の状態で測定されるときに、各成分の差が分析精度以内、特に、原子(at)%で表示される場合には、好ましくは各成分の差が0.7at%以内、mol%表示で表示される場合には、好ましくは各成分の差が4mol%以内であることを意味する。
本発明の情報記録媒体は、誘電体層1/記録層/誘電体層2の積層構造を有する情報層を少なくとも2つ有し、これらの2つの情報層aおよびbにおいて、2つの誘電体層1aおよび1bの組成が同じであり、2つの記録層aおよびbの組成が同じであり、かつ2つの誘電体層2aおよび2bの組成が同じである。本発明の記録媒体は、そのように構成しても、優れた記録再生特性およびライフ特性を有する。よって、本発明は、生産性に優れた、片面多層情報記録媒体を実現することを可能にする。また、本発明の製造方法は、そのような記録媒体を、スパッタリング等の方法を用いて、ターゲットの交換を無くす又は減らして、効率的に製造することを可能にする。
本発明の記録媒体(光ディスク)の一形態の構造を示す、部分断面図
本発明の記録媒体(光ディスク)の別の形態の構造を示す、部分断面図
本発明の記録媒体の製造装置の一例を模式的に示す平面図
本発明の記録媒体(光ディスク)のさらに別の構造を示す、部分断面図
符号の説明
1...情報層b、2...情報層a、3...レーザ光、4...基板、5...反射層b、6...誘電体層2b、7...記録層b、8...誘電体層1b、9...光学分離層、10...反射層a、11...誘電体層2a、12...記録層a、13...誘電体層1a、14...カバー層、20...基板、21...第1の情報層、22...第2の情報層、23...第3の情報層、24...光学分離層、25...光学分離層、26...光学分離層、27...第nの情報層、28...カバー層、29...レーザ光、30...ロードロック室、31...メインチャンバー、32...成膜室、33...成膜室、34...成膜室、35...成膜室、36...成膜室、37...成膜室、38...成膜室、40...基板、41...第1の情報層(情報層b)、42...光学分離層、43...第2の情報層(情報層a)、44...カバー層、45...反射層、46...誘電体層(誘電体層4b)、47...界面層(誘電体層2b)、48...記録層(記録層b)、49...界面層(誘電体層1b)、50...誘電体層(誘電体層3b)、51...高屈折率層、52...反射層、53...誘電体層(誘電体層4a)、54...界面層(誘電体層2a)、55...記録層(記録層a)、56...界面層(誘電体層1a)、57...誘電体層(誘電体層3a)、58...レーザ光。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は例示的なものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1として、レーザ光を用いて情報の記録および再生を実施する、ディスク形状の情報記録媒体(光ディスク)の一例を説明する。図4は、その情報記録媒体の一部断面を示す。
図4に示す情報記録媒体は、基板40、ならびに基板40の一方の表面に、情報層bとしての第1の情報層41、光学分離層42、情報層aとしての第2の情報層43、およびカバー層44がこの順に形成された構成を有する。図4において、情報の記録および再生を行うレーザ光はカバー層44側から入射される。
基板40は、円盤状で、透明且つ表面が平滑なものを使用する。基板の材料としては、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィンもしくはポリメチルメタクリレート(PMMA)のような樹脂、またはガラスを挙げることができる。成形性、価格、および機械強度を考慮すると、ポリカーボネートが好ましく使用される。図示した形態において、厚さ約1.1mmおよび直径約120mmの基板40が好ましく用いられる。
基板40の情報層等を形成する側の表面には、レーザ光を導くための凹凸の案内溝が形成されていてもよい。案内溝を基板40に形成した場合、本明細書においては、レーザ光に近い側にある面を便宜的に「グルーブ面」と呼び、レーザ光から遠い側にある面を便宜的に「ランド面」と呼ぶ。たとえば、媒体をBlu−ray Discとして使用する場合、グルーブ面とランド面の段差は、10nm〜30nmであることが好ましい。また、Blu−ray Discでは、グルーブ面のみに記録を行い、グルーブ−グルーブ間の距離(グルーブ面中心からグルーブ面中心まで)は、約0.32μmである。
基板40上には、まず、情報層bとしての第1の情報層41を設ける。第1の情報層41(情報層b)は、少なくとも反射層45、誘電体層46、界面層48、記録層bとしての記録層48、界面層47、および誘電体層50を有する。図示するように、界面層47および49は、記録層48に接しているから、誘電体層2bおよび2aにそれぞれ相当する。誘電体層50は、誘電体層2bとしての界面層49の記録層55と接する側とは反対の側に接して設けられているから、前述の誘電体層3bに相当する。誘電体層46は、便宜的に、誘電体層4bと称してよい。
第1の情報層41の上には、光学分離層42が形成される。光学分離層42は、第1の情報層41と第2の情報層43とを光学的に分離する機能を備える。光学分離層42は、第1の情報層41に信号を記録再生するために照射するレーザ光の波長に対して透明な材料で形成される。光学分離層42は、例えば、アクリル系樹脂またはエポキシ系樹脂のような紫外線硬化樹脂等から成る層をスピンコート法により形成する方法、または透明フィルムを粘着テープあるいは紫外線硬化樹脂等で接着する方法等により、形成される。光学分離層42の表面にも、必要に応じて、第2の情報層43のためのスパイラルまたは同心円状の案内溝等が形成される。光学分離層42の厚さは、5μm〜40μm程度であることが好ましい。
光学分離層42の上には、情報層aとしての第2の情報層43が形成される。第2の情報層43(情報層a)は、少なくとも反射層52、誘電体層53、界面層54、記録層aとしての記録層55、界面層56、および誘電体層57を有する。この形態の記録媒体においては、さらに、高屈折率層51が、第2の情報層43に含まれる。図示するように、界面層54および56は、記録層55に接しているから、誘電体層2aおよび1aにそれぞれ相当する。誘電体層57は、誘電体層1aとしての界面層56の記録層55と接する側とは反対の側に接して設けられているから、前述の誘電体層3aに相当する。誘電体層53は、便宜的に、誘電体層4aと称してよい。
第2の光学情報層43の上には、カバー層44が形成される。カバー層44は、スピンコート法によって、アクリル系樹脂またはエポキシ系樹脂のような紫外線硬化樹脂等から成る層として形成してもよく、または透明フィルムを、粘着テープまたは紫外線硬化樹脂等で、第2の情報層43の上に接着する方法等によって形成してもよい。
以下に、各情報層を構成する層について説明する。誘電体層4aとしての誘電体層46および誘電体層4aとしての誘電体層53は、例えば、Al、Cr、Dy、Ga、Hf、In、Nb、Sn、Y、Zn、Si、Ta、Mo、WおよびZr等の酸化物、ZnS等の硫化物、Al、B、Cr、Ge、Si、Ti、ZrおよびTa等の窒化物、ならびにBi、Ce、Dy、Er、EuおよびLa等のフッ化物等から選択される、1または複数の化合物を含むことが好ましい。より好ましくは、誘電体層46および53は、これらの化合物から選択される1つまたは複数の化合物を33.3mol%以上含む。
誘電体層46および53が、これらの化合物の混合物から形成される場合、例えば、ZnS−SiO2(例えば(ZnS)80(SiO2)20)、ZrO2−SiO2、ZrO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−Ga2O3、ZrO2−SiO2−Ga2O3、ZrO2−SiO2−Cr2O3−LaF、SnO2−Ga2O3、SnO2−In2O3、ZrO2−In2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、HfO2−Cr2O3、HfO2−SiO2、HfO2−SiO2−Cr2O3、SnO2−Nb2O3、SnO2−Si3N4等を用いてもよい。ZrO2を使用する場合、ZrO2として、3mol%のY2O3を含む部分安定化ZrO2((ZrO2)97(Y2O3)3)、または8mol%のY2O3を含む安定化ZrO2((ZrO2)92(Y2O3)8)を用いてもよい。
尤も、これらの層の組成を、X線マイクロアナライザーまたはエネルギー分散型X線分光分析装置で分析するときには、組成は元素組成として表示される。よって、前記特定の元素の酸化物を含む場合には、酸素原子と前記特定の元素が構成元素として検出され、窒化物を含む場合には、窒素原子と前記特定の元素が検出され、フッ化物を含む場合、フッ素原子と前記特定の元素が検出される。このことは、以下に説明する層についてもあてはまる。
誘電体層46の厚さは、ディスク反射率および記録感度の点から、好ましくは10nm〜40nmであり、より好ましくは15nm〜30nmである。誘電体層53の厚さはディスク反射率および記録感度の点から、好ましくは5nm〜30nmであり、より好ましくは10nm〜22nmである。誘電体層53の厚さは、誘電体層46のそれよりも薄いことが好ましい。
誘電体層3bとしての誘電体層50、および誘電体層3aとしての誘電体層57の材料は、誘電体層46および53の材料として例示したものと同じであるから、ここではその詳細を省略する。誘電体層50の厚さは、ディスク反射率および記録感度の点から、好ましくは40nm〜80nmであり、より好ましくは55nm〜75nmである。誘電体層57の厚さは、ディスク反射率および記録感度の点から、好ましくは25nm〜50nmであり、より好ましくは30nm〜45nmである。誘電体層57の厚さは、誘電体層50のそれよりも薄いことが好ましい。
誘電体層2bとしての界面層47、および誘電体層2aとしての界面層49は、記録層48と接し、誘電体層1bとしての界面層54、および誘電体層1aとしての誘電体層56は、記録層55と接している。記録層が相変化材料から成る場合、記録層自身の組成に加えて、記録層と接するこれらの誘電体層の組成は、記録層の結晶−アモルファス間の変化に大きな影響を及ぼす。界面層が記録層に与える影響は、例えば、記録媒体のアーカイバル(archival)特性およびアーカイバルオーバーライト(archival overwrite)特性等のライフ特性から知ることができる。これらの特性は、記録した信号を保存した後、即ち所定の環境試験に付した後に評価される。
アーカイバル特性が劣る記録媒体においては、初期の(アモルファス状態の)記録マーク(即ち、記録媒体が保存される前に形成された記録マーク)が、環境試験に付されている間に結晶化されやすい。そのため、この記録媒体は、保存後に良好な再生信号を与えにくくなる。アーカイバルオーバーライト特性が劣る記録媒体は、環境試験に付されている間に、初期の記録マークが、アモルファス化の進行により結晶化しにくくなる、または記録層自身の結晶化能が変化しやすい。そのため、そのような媒体において、保存後の信号に重ね書きした信号からは、良好な再生信号が得られにくくなる。
これらの特性の良好な記録媒体を得るためには、記録層の組成を考慮し、さらに記録層と隣接する誘電体層(界面層)がレーザ光が入射される側に近い方にあるか、遠い方にあるかを考慮して、誘電体層の組成を適切に選択して、記録媒体を設計する必要がある。本発明の記録媒体は、記録層と接する誘電体層の材料を、後述のように選択することによって、2つの情報層において、誘電体層2/記録層/誘電体層1の組成が共通する構成を有し、かつ良好なライフ特性を示すものとなる。
具体的には、レーザ光が入射される側により近い界面層49および56は、Al、Si、Cr、Ta、Mo、W、Zr、およびHfの酸化物、Al、B、Ge、Si、Ti、およびZrの窒化物、Dy、Er、Eu、Ce、Bi、およびLaのフッ化物から選ばれる、少なくとも1つの化合物を含むことが好ましい。界面層49および56は、これらの化合物から選択される1つの化合物を、好ましくは33.3mol%以上含み、より好ましくは50.0mol%以上含む。界面層49および56は、最も好ましくはこれらの化合物から選択される1または複数の化合物のみから実質的に成る。ここで「実質的に」という用語は、5mol%以下の不純物を含んで良い意味である。あるいは、界面層49および56は、これらの化合物以外に、Dy、Ga、In、Nb、Sn、YおよびZnの酸化物、ならびにGeおよびCrの窒化物から選択される、1または複数の化合物を含んでよい。
また、レーザ光が入射される側からより遠い界面層47および54は、Zr、Si、Cr、In、Ga、およびHfの酸化物から選ばれる、少なくとも1つの化合物を含むことが好ましい。界面層47および54は、これらの化合物から選択される1つの化合物を、好ましくは33.3mol%以上含み、より好ましくは50.0mol%以上含む。界面層47および54は、最も好ましくはこれらの化合物から選択される1または複数の化合物のみから実質的に成る。ここで「実質的に」という用語の意味は、先に説明したとおりである。あるいは、界面層47および54は、これらの酸化物以外に、例えば、先に界面層49および56に関連して説明した、他の元素の酸化物、窒化物、およびフッ化物から選択される、1または複数の化合物を含んでよい。
界面層47、49、54および56が、上記化合物の混合物から形成される場合、例えば、ZrO2−SiO2、ZrO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−Ga2O3、ZrO2−SiO2−Ga2O3、ZrO2−SiO2−Cr2O3−LaF3、SnO2−Ga2O3、SnO2−In2O3、ZrO2−In2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、HfO2−Cr2O3、HfO2−SiO2、HfO2−SiO2−Cr2O3、SnO2−Nb2O3、またはSnO2−Si3N4等を用いてもよい。ZrO2を使用する場合、ZrO2として、3mol%のY2O3を含む部分安定化ZrO2((ZrO2)97(Y2O3)3)、または8mol%のY2O3を含む安定化ZrO2((ZrO2)92(Y2O3)8)を用いてもよい。
界面層47の厚さは、ディスク反射率および記録感度の点から、好ましくは3nm〜30nmであり、より好ましくは5nm〜20nmである。界面層54の厚さはディスク反射率および記録感度の点から、好ましくは3nm〜30nmであり、より好ましくは5nm〜20nmである。界面層54の厚さは、界面層47のそれよりも薄いことが好ましい。
界面層49の厚さは、ディスク反射率および記録感度の点から、好ましくは2nm〜15nmであり、より好ましくは3nm〜10nmである。界面層56の厚さはディスク反射率および記録感度の点から、好ましくは2nm〜15nmであり、より好ましくは3nm〜10nmである。界面層56の厚さは、界面層49のそれよりも薄いことが好ましい。
本発明の記録媒体は、記録層と誘電体層の間に界面層を有する(即ち、誘電体層を2層構造にする)必要はかならずしもない。図示した記録媒体においては、誘電体層3bおよび3aを設けずに、界面層49および56を、それぞれ誘電体層1bおよび1aとして形成してよい。そのような記録媒体は、界面層49および56を設けずに、誘電体層50および57を、誘電体層1bおよび1aとして設けた構成を有するともいえる。あるいは、誘電体層4bおよび4aを設けずに、界面層47および54を、それぞれ誘電体層2bおよび2aとして形成してよい。そのような記録媒体は、界面層47および54を設けずに、誘電体層46および53を、誘電体層2bおよび2aとして設けた構成を有するともいえる。これらの場合、誘電体層1b、1a、2bおよび2aとして形成される、界面層49、56、47および54の好ましい厚さは、それぞれ、誘電体層50、57、46および53に関連して先に説明したとおりである。
記録層と接する誘電体層1および2としての界面層は、例えば、下記のいずれかの式で示される、酸化物の混合物を含むことが好ましい。これらの混合物は、いずれの界面層(図4における誘電体層47、54、49および56)を構成するのにも適している。
(MO2)A(Cr2O3)100−A(mol%) (1)
(式中、MはZrおよびHfの一方または両方を示し、Aは20≦A≦80である)
(MO2)B(Cr2O3)C(SiO2)100-B-C(mol%) (2)
(式中、MはZrおよびHfの一方または両方を示し、BおよびCはそれぞれ、20≦B≦70および20≦C≦60の範囲内にあり、且つ60≦B+C≦90である)
誘電体層1としての界面層(図4における誘電体層49および56)は、例えば、下記のいずれかの式で示される混合物を含むことが好ましい。
(D)x(SiO2)y(Cr2O3)z(LaF3)100-x-y-z(mol%) (3)
(式中、DはZrO2、HfO2およびTa2O5から選択される少なくとも1つの酸化物を示し、x、yおよびzは、20≦x≦70、10≦y≦50、10≦z≦60、50≦x+y+z≦90を満たす)
(Ta2O5)H(SiO2)100-H(mol%) (4)
(式中、Hは、20≦H≦80である)
(In2O3)I(CeF3)100-I(mol%) (5)
(式中、Iは、20≦I≦80を満たす)
誘電体層2としての界面層(図4における誘電体層47および54)は、例えば、下記のいずれかの式で示される混合物を含むことが好ましい。
(MO2)E(SiO2)F(M’O2)100-E-F(mol%) (6)
(式中、MはZrおよびHfの一方または両方を示し、M’は、GaおよびInのいずれか一方または両方を示し、EおよびFはそれぞれ、10≦E≦80および10≦F≦70の範囲内にあり、且つ20≦E+F≦90である)
(MO2)J(M’O2)K(Cr2O3)100−J−K(mol%) (7)
(式中、MはZrおよびHfの一方または両方を示し、M’は、GaおよびInのいずれか一方または両方を示し、JおよびKはそれぞれ、10≦J≦80および10≦K≦70の範囲内にあり、且つ20≦J+K≦90である)
(MO2)G(M’2O3)100−G(mol%) (8)
(式中、MはZrおよびHfの一方または両方を示し、M’は、GaおよびInのいずれか一方または両方を示し、Gは20≦A≦80である)
これらの式で示される混合物は、記録層との密着性が良好であり、かつ記録層と接したときに、物質移動が生じにくい。また、これらの混合物を使用すると、2つの情報層の記録層の組成が同じであっても、良好なアーカイバル特性およびアーカイバルオーバーライト特性を有する記録媒体を得ることができる。
上記例示した酸化物、窒化物、およびフッ化物から選択される化合物を2以上含む混合物を含む層は、後述する方法において、特にスパッタリング法で形成すれば、スパッタリングターゲットの組成と略同じ組成を有する。よって、これらの誘電体層の組成は、通常、スパッタリングターゲットの組成で表わされる。スパッタリングターゲットは、通常、化合物の割合を示して提供される。
記録層48および55は、光の照射により、結晶相と非晶質相との間で相変化を起こし、記録マークが形成される層である。相変化が可逆的であれば、消去や書き換えを行うことができる。可逆的相変化材料としては、Ge、Te、Se、In、およびSbから選択される1または複数の元素を含む材料を用いることが好ましい。具体的には、TeGeSb、TeGeSn、TeGeSnAu、SbSe、SbTe、SbSeTe、InTe、InSe、InSeTl、InSb、InSbSe、GeSbTeAg、GeTe、GeTeIn、GeTeBi、またはGeTeBiIn等を用いることが好ましい。特に、GeおよびTeを含む材料が好ましく用いられる。GeおよびTeを含む材料は、より好ましくは、In、Bi、Sn、Ag、Sb、GaおよびAlから選ばれる少なくとも1つの元素を含む。
より具体的には、記録層は、下記の式:
GeaBibTedM”100−a−b−d(at%) (11)
(式中、M”はAl、GaおよびInから選択される少なくとも一つの元素を示し、a,bおよびdは、25≦a≦60、0<b≦18、35≦d≦55、82≦a+b+d<100を満たす)
で表わされる、Ge−Bi−Te−M”系材料を含むことが好ましい。この材料を含む記録層は、特に、前記特定の化合物(または元素)を含む誘電体層1および2とともに、誘電体層1/記録層/誘電体層2の各層の組成を、情報層aおよび情報層bにおいて共通させるのに適している。
上記の式で示される材料は、Ge、M”およびBiのテルル化物の混合物(または合金)として、下記の式によっても示され得る。
(GeTe)u[(M”2Te3)v(Bi2Te3)1-v]100-u(mol%) (12)
(式中、M”はAl、GaおよびInから選択される少なくとも一つの元素を示し、uおよびvは、80≦u<100、0<v≦0.9を満たす)
上記(11)および(12)の式で示される材料を含む記録層は、さらにSnを含み、下記の式(13)および(14)の式で示される材料を含んでよい。
GeaSnfBibTedM100−a−b−d−f(原子%) (13)
(式中、MはAl、GaおよびInから選択される少なくとも一つの元素を示し、a、b、dおよびfは、25≦a≦60、0<b≦18、35≦d≦55、0<f≦15、82≦a+b+d<100、82<a+b+d+f<100を満たす)
[(SnTe)t(GeTe)1−t]u[(M2Te3)v(Bi2Te3)1−v]100−u(mol%) (14)
(式中、MはAl、GaおよびInから選択される少なくとも一つの元素を示し、u、vおよびtは、80≦u<100、0<v≦0.9、0<t≦0.3を満たす)
記録層48の厚さは、反射率の点から8nm〜18nmであることが好ましい。また、記録層55の厚さは、情報層aの透過率を考慮すると、5nm〜12nmであることが好ましい。また、記録層48の厚さ>記録層55の厚さの関係を満たすことが好ましい。情報層aの透過率を高くする必要があることによる。
反射層45および52は、Ag、AuおよびAlから選択される1または複数の金属元素を、主成分として、90at%以上含むことが好ましい。これらの元素は、耐食性に優れ、かつ急冷機能を有する反射層を形成することから、好ましく用いられる。反射層45および52は、Ag、AuおよびAlから選択される1または複数の金属元素に加えて、Mg、Ca、Cr、Nd、Pd、Cu、Ni、Co、Pt、Ga、Dy、In、Nb、V、TiおよびLa等から選択される、1または複数の元素を含んでよい。2以上の金属元素は、一般に、合金として、反射層を形成する。
反射層45の厚さは、反射率等の点から50nm〜160nmであることが好ましく、60nm〜100nmであることがより好ましい。反射層52は、情報層aの透過率を考慮すると、6nm〜15nmであることが好ましく、8nm〜12nmであることがより好ましい。反射層の厚さが小さいと、記録層の熱が拡散しにくくなり、したがって記録層が非晶質化しにくくなり、記録層の厚さが大きすぎると、記録層の熱が拡散されすぎて、記録感度が低下することがある。
高屈折率層51は、第2の情報層43(情報層a)の透過率を調整するために設けられる。高屈折率層は、TiおよびNbの酸化物、ならびにTiおよびNbの窒化物から選択される1または複数の化合物を好ましくは含み、より好ましくは当該化合物を主成分として50mol%以上含む。それらの化合物は、例えば、波長400nm程度のレーザ光に対して、高い屈折率を有する。例えば、TiO2は、波長400nmで2.7の屈折率を有する。これに対し、誘電体層46、50、53および57の材料となり得るZnS−20mol%SiO2は2.3の屈折率を有し、界面層47、49、54および56の材料となり得るZrO2−50mol%In2O3は2.2の屈折率を有する。
第2の情報層43において、記録再生に使用する光の波長における、誘電体層54、反射層52および高屈折率層51の屈折率をそれぞれ、na1、na2、およびna3としたときに、n1a<n3aおよびn2a<n3aを満たすことが好ましい。それにより、情報層aの高透過率を実現できる。高屈折率層51の厚さは、情報層aの透過率を考慮すると、15nm〜30nmであることが好ましく、18nm〜25nmであることがより好ましい。
誘電体層、記録層、反射層、界面層および高屈折率層は、通常、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、CVD法、またはレーザスパッタリング法等を適用して形成され、好ましくはスパッタリング法を適用して形成される。スパッタリングは、スパッタリングする材料に応じて、直流電源を用いるDCスパッタリングおよび高周波電源を用いるRFスパッタリングのいずれかを選択して実施する。一般的には、誘電体層(界面層を含む)はRFスパッタリングにより形成し、記録層および反射層はDCスパッタリングにより形成する。また、上記高屈折率層はDCスパッタリングで形成することが好ましい。スパッタリングに必要なスパッタガスとしては、Arに代表される不活性ガスを用い、不活性ガスとともに酸素または窒素等を添加ガスとして用いてもよい。
スパッタリングにより、これらの層を形成する場合には、前述したように枚葉式スパッタリング装置を用いることが好ましい。本発明の記録媒体は、2つの情報層において、記録層およびこれに接する2つの誘電体層がそれぞれ、共通した組成を有する。したがって、枚葉式スパッタリング装置において、少なくともこれらの3つの層を形成する3つの成膜室においてターゲットを取り替えることなく、これらの各層はそれぞれ2回形成され得る。
枚葉式スパッタリング装置の概略は、先に、図3を参照して説明したとおりである。前述のように、従来の情報記録媒体においては、記録層および/またはそれに隣接する誘電体層の組成が、情報層毎に異なっているため、スパッタリング装置の各成膜室を二巡させて二つの情報層を形成するには、ターゲットを交換する必要がある。前述のように、ターゲットの交換の際に、水分が成膜室に入り、それが真空排気後も残存して、スパッタリングにより形成される層の膜質に影響を及ぼすことがある。そこで、安定した特性の媒体を製造するためには、ターゲット交換後、長時間の真空廃棄および長時間のプリスパッタリングを実施する必要がある。
一般に、真空排気およびプリスパッタリングは、ディスクの記録密度および倍速が高いほど、より長い時間実施する必要がある。記録密度および倍速が高いほど、膜質の要求水準が高くなり、僅かな残留水分が膜質の特性に大きく影響し、ひいては記録媒体の記録再生特性および/またはライフ特性に影響を及ぼすことによる。例えば、Blu−ray規格に対応した2倍速ディスクを製造する場合、装置によっては、ターゲット交換に30分、ターゲット交換後の成膜室の真空排気に30分以上を要し、また、プリスパッタリングに1.5時間以上を要することがある。これらの時間は、生産ロスとなる。本発明によれば、ターゲット交換が不要となるので、これらの生産ロスを無くす、または少なくすることができる。
図4に示す形態の媒体においては、少なくとも界面層47および54、記録層48および55、ならびに界面層49および56は、それぞれ組成が同じであるから、これら3種類の層を形成するための3つの成膜室においては、ターゲット交換が必要とされない。よって、本発明の記録媒体は、ターゲット交換およびそれに伴う真空排気およびプリスパッタリングの時間を無くす又は短くして、効率良く製造できる。さらに、反射層45および52の組成が同じであると、それらの層もターゲット交換を伴わずに形成できるので、記録媒体をより効率良く製造できる。誘電体層46および53の組成が同じであるとき、および誘電体層50および57の組成が同じであるときも同様である。即ち、2つの情報層において、共通する組成を有する層の組み合わせの数が多いほど、製造効率は良くなる。
図4に示す形態の媒体は、波長が650nm〜670nmのレーザ光で情報を記録再生する、DVD規格に対応したディスクとして実現してよい。あるいは、この媒体は、波長が395nm〜415nmのレーザ光で情報を記録再生する、Blu−ray規格に対応したディスクとして実現してよい。特に、この媒体は、Blu−ray規格に対応した、2倍速対応のディスクまたはそれよりも高い倍速に対応するディスクとして、好ましく実現される。そのような高密度および高倍速対応の光ディスクにおいては、残留水分による影響を受けやすいために、ターゲット交換無しで2つの情報層が形成されれば、その影響を無くす又は小さくすることができる。
図4に示す形態は、適宜変更してよい。例えば、界面層47および54を無くし、誘電体層46および53のみを誘電体層1bおよび1aとして設けてよい。または、カバー層に代えて基板を使用し、当該基板の上に、図示した下側の層から順に形成して、第2の情報層および第1の情報層をこの順に形成してよい。
(実施の形態2)
本発明の情報記録媒体の別の形態を、その一部断面を示す図1を参照して説明する。図1に示す記録媒体も、図4に示す媒体と同様に、基板4、ならびに基板4の一方の表面に、情報層bとしての第1の情報層1、光学分離層9、情報層aとしての第2の情報層2、およびカバー層13がこの順に形成された構成を有する。図1において、情報の記録および再生を行うレーザ光3はカバー層14側から入射される。第1の情報層1は、反射層5、誘電体層6、記録層7、および誘電体層8を有し、第2の情報層2は、反射層10、誘電体層11、記録層12、および誘電体層13を有する。
図1に示す記録媒体は、誘電体層4bおよび3b、ならびに誘電体層4aおよび3aを有しない点、および高屈折率層を有しない点において、図4に示す記録媒体とは異なる。よって、この形態において、第1の情報層1は、誘電体層2bとしての誘電体層6、および誘電体層1bとしての誘電体層8を有し、第2の情報層2は、誘電体層2aとしての誘電体層11、および誘電体層1aとしての誘電体層13を有する。この形態においても、誘電体層6および11の組成は同じであり、誘電体層8および13の組成は同じであり、記録層7および12の組成は同じである。
この形態において、誘電体層6および11に含まれる好ましい化合物は、図4を参照して説明した界面層47および54に含まれる好ましい化合物と同じである。図1のように、誘電体層6と反射層5との間、および誘電体層11と反射層10との間に別の誘電体層が位置しない場合には、誘電体層6および11は、好ましくは、前記式(1)、(2)、(6)、(7)または(8)で示される材料を含む。誘電体層6および誘電体層11の厚さは、それぞれ40nm〜80nmであることが好ましい。
誘電体層8および13に含まれる好ましい化合物は、図4を参照して説明した界面層49および56に含まれる好ましい化合物と同じである。図1のように、誘電体層8と記録層7との間、および誘電体層13と記録層12との間に別の誘電体層が位置しない場合には、誘電体層8および13は、好ましくは、上記式(1)、(2)、(3)、(4)または(5)で示される材料を含む。誘電体層8および誘電体層13の厚さは、25nm〜50nmであることが好ましい。
その他の要素は、先に図4に関連して説明したとおりであるから、ここではその詳細を省略する。尤も、それらの要素は、誘電体層を一層とすることによって、または高屈折率層を設けないことによって、各情報層の光学特性が図4に示すものとは異なることに留意して、適切な材料を選択して、適切な厚さとなるように形成する必要がある。
(試料1(比較))
図4に示す構成の記録媒体を製造した。基板40として、表面に、ピッチ(グルーブ−グルーブ間の距離)が約0.32μm、溝深さが20nmの凹凸の案内溝が形成された直径120mm、厚さ1.1mmのポリカーボネート基板を用意した。その上に第1の情報層41を形成した。具体的には、反射層45として厚さ100nmのAgを90at%以上含む合金の層を、誘電体層46として厚さ25nmのZnS−20mol%SiO2の層を、界面層47として厚さ2nmのCの層を、記録層48として厚さ12nmのGe43.5Sb7Te49.5の層を、界面層49として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層50として厚さ65nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。
続いて、第1の情報層41の上に紫外線硬化樹脂(アクリル系樹脂)を塗布し、その表面にピッチ(グルーブ−グルーブ間の距離)が約0.32μm、溝深さが20nmの凹凸の案内溝が形成された直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を貼り合わせた。紫外線を照射して、紫外線硬化性樹脂を硬化させた後、ポリカーボネート基板を剥離させて、表面に溝が転写された厚さ25μmの光学分離層を形成した。
続いて、光学分離層の上に、第2の情報層43を形成した。具体的には、高屈折率層51として厚さ24nmのTiO2の層を、反射層52として第1の情報層の反射層45と同じ組成を有する、厚さ10nmのAg合金の層を、誘電体層53として厚さ13nmのZrO2−35mol%SiO2―30mol%Cr2O3の層を、界面層54として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、記録層55として厚さ7nmのGe44Sb6Te50の層を、界面層56として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層57として厚さ35nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、スピンコート法により厚さ0.1mmのカバー層44をアクリル系樹脂を用いて形成した。
第1の情報層41および第2の情報層の各層は、図3に示す7つの成膜室を有する枚葉式スパッタリング装置を用いて形成した。2つの情報層の形成に使用したスパッタリング装置は1台であり、成膜室32で誘電体層50と57を、成膜室33で界面層49と56を、成膜室34で記録層48と55を、成膜室35で界面層47と54を、成膜室36で誘電体層46と53を、成膜室37で反射層45と52を、成膜室38で高屈折率層51を、スパッタリングにより形成した。
この試料においては、共通する成膜室で形成される、誘電体層46と53の組み合わせ、界面層47と54の組み合わせ、および記録層48と55の組み合わせにおいて、層の組成が互いに異なっていた。そのため、第1の情報層41を形成した後、これらの層を形成する成膜室のターゲット交換を行い、それから第2の情報層43を形成した。ターゲット交換に要した時間は30分であった。その後、30分間真空排気を行い、30分間プリスパッタリングを実施した。その後、ディスクのサンプリングを30分毎に行った。各情報層を構成する層と、各層の形成に使用した成膜室および電源、ならびに第2の情報層を形成する前のターゲットの交換の要否を、表1に示す。
(試料2(比較))
図4に示す構成に類似する構成の記録媒体を製造した。基板40として、試料1の製造に使用したものと同じポリカーボネート基板を用意した。その上に第1の情報層41を形成した。具体的には、反射層45として厚さ100nmのAgを90at%以上含む合金の層を、誘電体層46として厚さ25nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、記録層48として厚さ12nmのGe45Sb4Te51の層を、界面層49として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層50として厚さ65nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、第1の情報層41の上に、試料1の製造で採用した手順と同様の手順に従って、厚さ25μmの光学分離層42を形成した。
続いて、光学分離層の上に、第2の情報層43を形成した。具体的には、高屈折率層51としてTiO2から成る厚さ24nmの層を、反射層52として第1の情報層の反射層45と同じ組成を有する、厚さ10nmのAg合金の層を、誘電体層53として厚さ18nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、記録層55として厚さ7nmのGe46Sb3Te51の層を、界面層56として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層57として厚さ35nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、スピンコート法により、厚さ0.1mmのカバー層44を、アクリル系樹脂を用いて形成した。この試料は、試料1と異なり、界面層47および54を有しておらず、誘電体層46および53を、2つの情報層bおよびaの誘電体層2bおよび2aとして形成した。
第1の情報層および第2の情報層の各層は、試料1と同様、図3に示す7つの成膜室32〜38を有する枚葉式スパッタ装置を用いて形成した。この試料は界面層47および54を有しないため、成膜室53は使用しなかった。
この試料の製造においては、同じ成膜室で形成される、記録層48と55の組成が異なるため、第1の情報層41形成後、記録層を形成する成膜室のターゲット交換を行い、それから、第2の情報層43を形成した。ターゲット交換に要する時間は30分であった。その後、30分間真空排気を行い、30分間プリスパッタリングを実施した。その後、ディスクのサンプリングを30分おきに行った。各情報層を構成する層と、各層の形成に使用した成膜室および電源、ならびに第2の情報層を形成する前のターゲットの交換の要否を、表2に示す。
(試料3(比較))
図4に示す構成の記録媒体を製造した。基板40として、試料1の製造に使用したものと同じポリカーボネート基板を用意した。その上に第1の情報層41を形成した。具体的には、反射層45として厚さ80nmのAgを90at%以上含む合金の層を、誘電体層46として厚さ13nmのSnO2−15mol%SiCの層を、界面層47として厚さ5nmのZrO2−15mol%SiO2−70mol%Ga2O3の層を、記録層48として厚さ12nmのGe40Bi4Te51Sn5の層を、界面層49として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層50として厚さ60nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、第1の情報層41の上に、試料1の製造で採用した手順と同様の手順に従って、厚さ25μmの光学分離層42を形成した。
続いて、光学分離層の上に、第2の情報層43を形成した。具体的には、高屈折率層51として厚さ23nmのTiO2の層を、反射層52として第1の情報層の反射層45と同じ組成を有する、厚さ10nmのAg合金の層を、誘電体層53として厚さ6nmのZrO2−25mol%SiO2−50mol%Cr2O3の層を、界面層54として厚さ6nmのZrO2−25mol%SiO2−50mol%Ga2O3の層を、記録層55として厚さ7nmのGe45Bi4Te51の層を、界面層56として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層57として厚さ35nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、スピンコート法により、厚さ0.1mmのカバー層44を、アクリル系樹脂を用いて形成した。
第1の情報層および第2の情報層の各層は、試料1と同様、図3に示す7つの成膜室を有する枚葉式スパッタ装置を用いて形成した。この試料においては、共通する成膜室で形成される、誘電体層46と53の組み合わせ、界面層47と54の組み合わせ、および記録層48と55の組み合わせにおいて、層の組成が互いに異なっていた。そのため、第1の情報層41を形成した後、これらの層を形成する成膜室のターゲット交換を行い、それから第2の情報層43を形成した。ターゲット交換に要した時間は30分であった。その後、30分間真空排気を行い、30分間プリスパッタリングを実施した。その後、ディスクのサンプリングを30分毎に行った。各情報層を構成する層と、各層の形成に使用した成膜室および電源、ならびに第2の情報層を形成する前のターゲットの交換の要否を、表3に示す。
(試料4)
図4に示す構成に類似する構成の記録媒体を製造した。基板40として、試料1の製造に使用したものと同じポリカーボネート基板を用意した。その上に第1の情報層41を形成した。具体的には、反射層45として厚さ80nmのAgを90at%以上含む合金の層を、誘電体層46として厚さ23nmのZrO2−50mol%In2O3の層を、記録層48として厚さ12nmのGe43Bi4Te51In2の層を、界面層49として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層50として厚さ60nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、第1の情報層41の上に、試料1の製造で採用した手順と同様の手順に従って、厚さ25μmの光学分離層42を形成した。
続いて、光学分離層の上に、第2の情報層43を形成した。具体的には、高屈折率層51として厚さ23nmのTiO2の層を、反射層52として第1の情報層の反射層45と同じ組成を有する、厚さ10nmのAg合金の層を、誘電体層53として厚さ18nmのZrO2−50mol%In2O3の層を、記録層55として厚さ7nmのGe43Bi4Te51In2の層を、界面層56として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層57として厚さ40nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、スピンコート法により、厚さ0.1mmのカバー層44を、アクリル系樹脂を用いて形成した。この試料は、試料1と異なり、界面層47および54を有しておらず、誘電体層46および誘電体層53を、2つの情報層bおよびaの誘電体層2bおよび2aとして形成した。
第1の情報層および第2の情報層の各層は、試料1と同様、図3に示す7つの成膜室を有する枚葉式スパッタ装置を用いて形成した。第1の情報層を構成する層の組成は、高屈折率層51を除いて、第2の情報層の対応する層の組成と同じであるため、各成膜室においてターゲット交換の必要がなかった。そのため、第1の情報層の形成から第2の情報層の形成に装置を切り替える時には、高屈折率層51についてのみ、30分間のプリスパッタリングを実施した。その後、ディスクのサンプリングを30分毎に行った。各情報層を構成する層と、各層の形成に使用した成膜室および電源、ならびに第2の情報層を形成する前のターゲットの交換の要否を、表4に示す。
(試料5)
図4に示す構成に類似する構成の記録媒体を製造した。基板40として、試料1の製造に使用したものと同じポリカーボネート基板を用意した。その上に第1の情報層41を形成した。具体的には、反射層45として厚さ160nmのAlを90at%以上含む合金の層を、誘電体層46として厚さ23nmのZrO2−50mol%In2O3の層を、記録層48として厚さ12nmのGe43Bi4Te51In2の層を、界面層49として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層50として厚さ60nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、第1の情報層41の上に、試料1と同様の手順に従って、厚さ25μmの光学分離層42を形成した。
続いて、光学分離層の上に、第2の情報層43を形成した。具体的には、高屈折率層51として厚さ23nmのTiO2の層を、反射層52として厚さ10nmのAgを90at%以上含む合金の層を、誘電体層53として厚さ18nmのZrO2−50mol%In2O3の層を、記録層55として厚さ7nmのGe43Bi4Te51In2の層を、界面層56として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層57として厚さ40nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、スピンコート法により、厚さ0.1mmのカバー層44を、アクリル系樹脂を用いて形成した。この試料は、試料1と異なり、界面層47および54を有しておらず、誘電体層46および誘電体層53を、2つの情報層bおよびaの誘電体層2bおよび2aとして形成した。
第1の情報層および第2の情報層の各層は、試料1と同様、図3に示す7つの成膜室を有する枚葉式スパッタ装置を用いて形成した。この試料の第1の情報層を構成する層の組成は、高屈折率層51および反射層を除いて、第2の情報層の対応する層の組成と同じである。そのため、第1の情報層41を形成した後、ターゲット交換は反射層45および52を形成する成膜室37においてのみ必要であった。このターゲット交換に要する時間は30分であった。その後、30分間真空排気を行い、高屈折率層51と反射層52についてプリスパッタリングを30分間実施した。その後、ディスクのサンプリングを30分毎に行った。各情報層を構成する層と、各層の形成に使用した成膜室および電源、ならびに第2の情報層を形成する前のターゲットの交換の要否を、表5に示す。
これら5種類の記録媒体につき、プリスパッタリング後30分毎に取り出したサンプリングディスクの第2の情報層の記録パワーマージンを評価した。ここでは、スパッタリング装置を第1の情報層の形成から第2の情報層の形成へ切り替える時の時間的ロスを明確にするため、ターゲット交換後に形成する第2の情報層の特性が基準を満たすまでの時間を比較した。その判定基準は、記録パワーマージンであった。記録パワーマージンとは、10回オーバーライト後の再生ジッタが8.0%以下となる記録パワーのマージンを指し、そのマージンが15%p−p以上であれば基準を満たすと判断した。これらの媒体に信号を記録再生するのに用いたレーザ光の波長は405nmであり、そのNA(開口数)は0.85であった。また、信号方式は(1−7PP)変調方式であり、信号は、線速9.8m/sで基板のグルーブ部に記録した。そのように記録した信号を再生して、ジッタ測定を行った。
試料1〜5の媒体について、第1の情報層の形成から第2の情報層の形成へスパッタリング装置の運転モードを切替え、所定の成膜室のターゲットを交換した後の時間と記録パワーマージンの推移を、表6に示す。なお、表6に示す時間の開始点(ゼロ)は、第1の情報層の形成が終了したときである。試料4のディスクについては、ターゲット交換の必要がないため、第1の情報層の形成後直ちに、第2の情報層を連続して形成できる。しかし、2つの情報層において同じ組成を有する層は厚さが異なり、また、高屈折率層51を形成するため、念のため、第2の情報層の各層のスパッタリングを開始後、30分間プリスパッタリングを実施した。そのため、試料4については、0.5時間後から記録パワーマージンのデータが記載されている。その他のディスクについては、ターゲット交換、真空排気、およびプリスパッタリングにそれぞれ30分を要したため、1.5時間後から記録パワーマージンのデータを示している。
表6より、以下のことがわかる。
(1)第1の情報層(情報層b)の誘電体層4b、誘電体層2bおよび記録層bの組成が、第2の情報層(情報層a)の誘電体層4a、誘電体層2aおよび記録層aの組成とはそれぞれ異なり、3つのスパッタリングターゲットを交換して製造した試料1は、第1の情報層を形成した後、要求される基準を満たすまで時間を多く要した。具体的には、試料1の第1の情報層41を形成してから、1.5時間後から3.5時間後までは、記録パワーマージンが10%以下であり、基準を満たしていなかった。また、4時間後でも、試料1の記録パワーマージンは20%に達しなかった。
(2)2つの情報層の記録層の組成が互いに異なるためにターゲットを交換した試料2については、第1の情報層の形成終了後、1.5時間後から2.5時間後まではパワーマージンが10%以下であり、基準を満たしていなかった。
(3)第1の情報層(情報層b)の誘電体層4b、誘電体層2bおよび記録層bの組成が、第2の情報層(情報層a)の誘電体層4a、誘電体層2aおよび記録層aの組成とそれぞれ異なり、3つのスパッタリングターゲットを交換して製造した試料3については、第1の情報層41を形成してから、1.5時間後から2時間後までは、パワーマージンが10%以下であり、基準を満たしていなかった。
(4)ターゲット交換を行っていない試料4については、第1の情報層を形成してから、0.5時間後には、パワーマージンが20%以上となり、良好な特性が得られた。
(5)2つの情報層の反射層の組成が互いに異なるためにターゲット交換した試料5については、第1の情報層を形成してから、1.5時間後にはパワーマージンが15%以上となり、良好な特性が得られた。
すなわち、ターゲット交換を行わないことにより、スパッタリング装置の運転条件を変更した後(即ち、形成する情報層の種類を変更した後)の生産ロス時間が、最大で3時間から30分に短縮された。成膜タクト(1枚のディスクを成膜するために必要な時間)を10秒とすると、生産枚数ロスが最大900枚改善できたことになる。このように、ターゲット交換を行わずに、第1の情報層と第2の情報層が形成され得る記録媒体を構成することによって、生産ロスが大幅に改善される。
また、試料5のように反射層を形成する成膜室のターゲットのみを交換した場合、サンプリング直後からパワーマージンが15%となり、基準を満たした。これに対し、試料1は、パワーマージンが20%を満たすまでに多くの時間を要した。このことから、反射層を形成する成膜室でターゲットを交換する場合、それに伴う残留ガスによる記録媒体の特性への影響は、記録層および記録層に接する誘電体層(界面層)を形成する成膜室でターゲット交換する場合と比較して、小さく、生産効率のロスも小さいことがわかる。なお、いずれの試料についても、パワーマージンが15%以上となった後は、第1および第2の情報層は、Blu−ray規格を満足する特性を有していた。
試料5では、第1の情報層を構成する各層の組成を、第2の情報層の対応する各層の組成と同じにしたため、ターゲット交換が不要となり、それゆえ生産ロスが小さくなった。また、試料6は、第1の情報層の記録層とそれに隣接する誘電体層(界面層)の組成を、第2の情報層の対応する各層の組成と同じにしたため、ターゲット交換は必要であるものの、生産ロスを比較的小さくすることができた。これらの試料は、記録層に接する各誘電体層(誘電体層と記録層との間に界面層が存在する場合には、界面層)の組成を特定のものに限定したことによる。
(試料6(比較))
図4に示す構成の媒体を製造した。基板40として、試料1の製造に使用したものと同じポリカーボネート基板を用意した。その上に第1の情報層41を形成した。具体的には、反射層45として厚さ80nmのAgを90at%以上含む合金の層を、誘電体層46として厚さ20nmのZnS−20mol%SiO2の層を、界面層47して厚さ5nmのGeNの層を、記録層48として厚さ12nmのGe43Bi4Te51In2の層を、界面層49として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層50として厚さ60nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、第1の情報層41の上に、試料1の製造で採用した手順と同様の手順に従って、厚さ25μmの光学分離層42を形成した。
続いて、光学分離層の上に、第2の情報層43を形成した。具体的には、高屈折率層51としてTiO2から成る厚さ23nmの層を、反射層52として第1の情報層の反射層45と同じ組成を有する、厚さ10nmのAg合金の層を、誘電体層53として厚さ13nmのZnS−20mol%SiO2の層を、界面層54として厚さ5nmのGeNの層を、記録層55として厚さ7nmのGe43Bi4Te51In2の層を、界面層56として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層57として厚さ40nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、スピンコート法により、厚さ0.1mmのカバー層44を、アクリル系樹脂を用いて形成した。
第1の情報層および第2の情報層の各層は、試料1と同様、図3に示す7つの成膜室を有する枚葉式スパッタ装置を用いて形成した。第1の情報層を構成する層の組成は、高屈折率層51を除いて、第2の情報層の対応する層の組成と同じであるため、各成膜室においてターゲット交換の必要がなかった。そのため、第1の情報層の形成から第2の情報層の形成に装置を切り替える時には、高屈折率層51についてのみ、30分間のプリスパッタリングを実施した。その後、ディスクのサンプリングを30分毎に行った。各情報層を構成する層と、各層の形成に使用した成膜室および電源、ならびに第2の情報層を形成する前のターゲットの交換の要否を、表7に示す。
この試料6の初期特性およびライフ特性を、試料4のそれらと比較した。初期特性は、記録パワーマージンとボトムジッタにより判断した。記録パワーマージンは、10回オーバーライト後の再生ジッタが、第2の情報層については8.0%以下となる記録パワーのマージンを指し、第1の情報層については6.0%以下となる記録パワーマージンを指す。このマージンが15%p−p以上である媒体は、実用上、必要な初期特性を有しているといえる。ボトムジッタは、10回オーバーライト後の再生ジッタのボトム値とした。記録パワーマージンおよびボトムジッタを測定するために、波長405nmおよびNA(開口数)0.85のレーザ光を用いた。信号方式は(1−7PP)変調方式であり、信号は基板のグルーブ部に記録した。初期特性は、信号を線速4.9m/sおよび9.8m/sで記録した場合について、それぞれ測定した。
ライフ特性は、初期特性評価と同じ条件で、初期に記録しておいた信号の環境試験後(温度90℃、相対湿度20%、24時間)、読み出し特性(アーカイバル特性)、およびその信号の上に重ねて記録した信号の読み出し特性(アーカイバルオーバーライト特性)を、第1の情報層および第2の情報層それぞれについて、測定した。また、ライフ特性は、信号を線速4.9m/sおよび9.8m/sで記録した場合について、それぞれ評価した。アーカイバル特性およびアーカイバルオーバーライト特性はいずれも、初期ジッタに対して、ジッタ値の増加が2%以下である場合を○、2%を越える場合を×とした。結果を表8に示す。
試料4および試料6ともに、各線速において、初期特性は良好であった。しかし、試料6は、試料4と比較してライフ特性の点で劣っており、特に低線速でのアーカイバル特性、および高線速でのアーカイバルオーバーライト特性が試料4よりも劣っていた。これは、試料6において、レーザ光が入射される側から遠い側の誘電体層1(界面層47および54)に用いた材料がGeNであり、特定の元素の酸化物を含まないことによると考えられる。
以上の実施例において、本発明の媒体に相当する試料4および5の誘電体層1aおよび誘電体層1bは、ZrO2-50mol%Cr2O3から成る層として形成した。誘電体層1aおよび1bは、それ以外の組成であってよく、例えば、Al2O3、SiO2、Ta2O5、Mo―O、WO3、ZrO2、HfO2、Al―N、B―N、Ge―N、Si―N、Ti―N、Zr―N、DyF3、ErF3、EuF3、CeF3、BiF3、およびLaF3から選ばれる少なくとも1つの酸化物、窒化物またはフッ化物を含む組成を有してよい。具体的には、誘電体層1aおよび1bが、Ta2O5−50mol%SiO2、HfO2−30mol%SiO2−40mol%Cr2O3、AlN−50mol%SnO2、ZrO2−20mol%SiO2−30mol%Cr2O3−20mol%LaF3、またはCeF3−80mol%In2O3等を含む場合にも、同様の結果が得られた。
試料4および5の記録層aおよび記録層bは、いずれもGeBiTeIn材料から成る層として形成した。記録層aおよび記録層bは、GeおよびTeを主たる成分として含み(合わせて、好ましくは82at%以上)、さらに、Sn、Ag、Sb、Ga、Al、BiおよびInから選ばれる少なくとも1つの元素をさらに含む他の材料から成ってよい。具体的には、記録層aおよび記録層bが、Ge45Sn1Sb4Te50(at%)、またはGe43Bi4Te51Ga2(at%)等を含む場合にも、同様の結果が得られた。
試料4および5の誘電体層2aおよび2b(誘電体層46および53)は、いずれもZrO2−In2O3から成る層として形成した。誘電体層2aおよび2bは、これ以外の組成であってよく、SiO2、Cr2O3、Ga2O3、HfO2、ZrO2およびIn2O3から選ばれる少なくとも1つの酸化物を含む組成であってよい。具体的には、界面層2aおよび2bは、ZrO2−25mol%SiO2−50mol%In2O3、ZrO2−50mol%Ga2O3、ZrO2−30mol%In2O3−40mol%Cr2O3、またはHfO2−30mol%SiO2−40mol%Cr2O3等を含む場合にも、同様の結果が得られた。
試料4および5の反射層aおよび反射層bは、いずれもAg合金から成る層として形成した。反射層aおよびbは、これ以外の材料から成る層であってよい。具体的には、Ag、AlおよびAuから選ばれる少なくとも1つの元素を主成分(90at%以上)として含む材料として、Al―Cr合金、Ag−Ga−Cu合金、Ag−Pd−Cu合金を用いて、反射層aおよびbを形成した場合にも、同様の結果が得られた。
試料4および5の高屈折率層は、Tiの酸化物の層として形成した。高屈折率層は、これ以外の材料から成る層であってよい。具体的には、TiO2およびNb2O5から選ばれる少なくとも1つの酸化物を主成分として含む材料として、TiO2−10mol%SiO2、TiO2−50mol%Nb2O5を用いて、高屈折率層を形成した場合にも、同様の結果が得られた。また、記録媒体の構成によっては、この高屈折率層のない構成であってよく、そのような記録媒体についても、同様の結果が得られた。
試料4および5の2つの情報層は、界面層49および界面層56をそれぞれ有する層として形成した。これらの両方の界面層を形成せずに、誘電体層50および557を記録層に接する誘電体層1bおよび1aとして形成してよい。具体的には、誘電体層1bおよび1aが、上記界面層49および界面層56に関して列挙した、特定の酸化物、窒化物またはフッ化物を有する組成となるように形成した媒体についても、同様の結果が得られた。あるいは、界面層56のみを設け、これの組成を誘電体層50の組成と同じにしてよい。あるいは、界面層49のみを設け、これの組成を誘電体層57の組成と同じにしてよい。
試料5および試料6の2つの情報層は、界面層47および界面層54が設けられず、誘電体層46および誘電体層53を記録層に接する誘電体層2bおよび2bとして形成した。これらの界面層47および界面層54をそれぞれ誘電体層2aおよび2bとして形成して、誘電体層46および誘電体層53を誘電体層3aおよび3bとして形成する媒体についても、同様の結果が得られた。あるいは、界面層47のみを設け、これの組成を誘電体層53の組成と同じにしてもよい。あるいは、界面層54のみを設け、これの組成を誘電体層46の組成と同じにしてよもよい。
本発明の情報記録媒体およびその製造方法は、片面2層Blu-rayディスク(書き換え型、追記型)、片面4層ディスク(書き換え型、追記型)等の片面多層光ディスクの製造において、その生産性向上およびコストダウンの観点から有用である。さらに、本発明の情報記録媒体およびその製造方法は、片面2層DVD-RW、DVD+RW、およびDVD-RAMの製造においても有用である。
本発明は、情報を高速かつ高密度に記録および再生する情報記録媒体(以下、単に「記録媒体」とも呼ぶ)、およびその製造方法に関するものである。
発明者は、レーザ光の照射により情報を記録再生する、ディスク形状の大容量相変化情報記録媒体(以下、「光ディスク」とも呼ぶ)として、4.7GB/DVD−RAM、および片面単層25GB(1倍速)/Blu−rayディスクを開発した。これらは、データファイルや画像ファイルとして用いることができる。さらに、発明者は、光ディスクの記録容量を増加させることを目的として、ディスクの片面側に情報層を2層有する、片面2層50GB(1倍速)/Blu−rayディスクを開発した。これらは既に商品化されている。
これらのDVD−RAMおよびBlu−rayディスクにおいては、記録方式として、相変化記録方式を採用している。この記録方式は、記録層がレーザ光線の照射によって、アモルファスと結晶との間で(あるいは結晶とさらに異なる構造の結晶との間)で可逆的に状態変化を起こす性質を利用する。より具体的には、情報の記録は、レーザ光照射により、薄膜である記録層の屈折率および消衰係数の少なくとも一方を変化させて、記録マークを形成して実施する。記録マークが形成されると、当該マークとそれ以外の部分では、照射された光の透過光または反射光の振幅に差が生じる。情報(信号)の再生は、そのような差を検出することにより実施される。
一般には、記録層の材料が結晶状態にあるときが未記録状態とされる。信号の記録は、レーザ光を照射して、記録層材料を溶融した後、急冷してアモルファス状態とすることにより実施する。また、信号の消去は、記録時よりも低いパワーのレーザ光を照射し、記録層を結晶状態とすることにより実施する。
相変化型の光ディスクは一般的に、基板上に、誘電体層、記録層、および反射層を有する構成を有する。そのディスク構成の一例としては、基板上に第一の誘電体層、記録層、第二の誘電体層、そして反射層を順に積層したものがある。以下に、各層の役割について述べる。誘電体層は、誘電材料を含む層であり、外部からの機械的なダメージから記録層を保護する役割、多重反射による干渉効果を利用して光学的変化を強調する役割、外気からの影響を遮断し、記録層の化学的な変化を防止する役割、および信号を繰り返し記録する場合に生じる基板表面の荒れ及び記録層の熱的ダメージを低減する役割等を有している。そのため、誘電体層は、保護層とよばれることもある。
誘電体層が二層構成を有する場合、記録層と接する誘電体層(この層は界面層ともよばれる)は、その組成が適宜選択されることにより、記録層が結晶―アモルファス間で状態変化する際、その状態変化のスピードを変化させ得る。よって、記録層と接する誘電体層は、結晶化速度を制御するという重要な役割も有している。
記録層は、先述のようにレーザ光を吸収して、相変化を起こす層であり、主にこの層に情報が記録されることとなる。反射層は、情報を記録消去する際には、レーザ光を吸収して高温となった記録層から、熱を吸収して、放熱する役割を有する。
各層の特性は、その材料組成だけでなく、その厚さによっても、変化する。即ち、材料組成が同じであっても、厚さが異なる層は、異なる特性を示す。例えば、反射層の厚さをより厚くすると、情報を記録する際に記録層が吸収した熱が効率的に放熱されることを可能にする。その結果、アモルファス部分がより容易に形成されて、信号品質が向上する。
前述の片面2層Blu−rayディスクのような片面2層光ディスクに代表される片面多層情報記録媒体は、図2に示すように、基板20上に、第1の情報層21、第2の情報層22、第3の情報層23、・・・・・第nの情報層nを有し、各情報層がUV硬化樹脂等から成る透明な光学分離層により光学的に分離され、第n情報層の上にUV硬化樹脂等から成るカバー層28(光透過層)が設けられた構成を有する。各情報層について、情報の記録再生は、カバー層28側からレーザ光29を入射して行う。
片面多層記録媒体に求められる特性は、レーザ光入射側に近い情報層が高い透過率を有していることである。例えば、片面2層記録媒体の場合、奥側(レーザ光(またはレーザ光源)からより遠い側)の情報層(これを「第1の情報層」と呼ぶ)について、情報の記録再生は、レーザ光入射側に近い情報層(これを「第2の情報層」と呼ぶ)を透過したレーザ光を用いて行う。そのため、第1の情報層に情報を記録する際に必要なレーザパワーは、第1の情報層が単独で設けられている記録媒体への情報の記録に必要なレーザパワーを、第2の情報層の透過率で除した値となる。すなわち、2層構成の媒体は、記録再生のために、より多くのレーザ光パワーを必要とする。また、2層構成の媒体においては、第2の情報層が、高透過率(例えば50%)を有する必要がある。これに対し、第1の情報層は、高い反射率を有する必要がある。
我々は、レーザ光の入射側からみて、少なくとも記録層と反射層とをこの順に備えた情報層において、誘電体からなる透過率調整層を反射層のレーザ光入射側と反対側に接して設ける技術を検討した。さらに、我々は、前記透過率調整層と反射層の屈折率、および消衰係数を最適化した。その結果、第1の情報層の高透過率を実現した。さらに、高透過率を実現するためには、レーザ光を吸収する層(記録層、反射層)を薄膜化するというアプローチもある。
これまでに報告されている片面2層記録媒体の例を説明する。日本国特許公開特開2001−266402号公報には、第1の情報層の構成が、膜を形成する基板(成膜装置に取り付けられる基板)に近い側から順に、AlCr/ZnS−SiO2/GeSbTe/ZnS−SiO2であり、第2の情報層の構成が、ZnS−SiO2/InSbTe/ZnS−SiO2である、片面2層の光ディスクが示されている。ここで、「/」は積層されていることを示し、「−」は混合されていることを示す。この文献に記載された記録媒体においては、それぞれの情報層の記録層組成が互いに異なる。
日本国特許公開特開2002−298433号公報には、第1の情報層の構成が、SiC(透明放熱層)/Au(反射層)/ZnS−SiO2(誘電体層)/GeN(結晶化促進層)/Ge5Sb76Te19(記録層)/GeN(結晶化促進層)/ZnS−SiO2(誘電体層)であり、第2の情報層の構成が、Ag合金(反射層)/ZnS−SiO2(誘電体層)/GeSiN(結晶化促進層)/Ge2Sb2Te5(記録層)/GeSiN(結晶化促進層)/ZnS−SiO2(誘電体層)である、片面2層の光記録媒体が示されている。この文献に記載された記録媒体において、第1の情報層における反射層、記録層、および記録層と接する結晶化促進層の組成は、第2の情報層のそれらとは異なっている。
また、本出願人(米国における譲受人)が開発した片面2層の光ディスクの一形態が、International Symposium Optical Memory(ISOM2000) Technical Digest、pp16−17に開示されている。この片面2層の光ディスクにおいて、第1の情報層の構成は、Al合金(反射層)/ZnS−SiO2(保護層)/GeN(界面層)/GeSbTe(記録層)/GeN(界面層)/ZnS−SiO2(保護層)であり、第2の情報層の構成は、Ag合金(反射層)/ZnS−SiO2(保護層)/GeN(界面層)/GeSbTeSn(記録層)/GeN(界面層)/ZnS−SiO2(界面層)である。この光ディスクにおいて、第1の情報層の記録層および反射層の組成は、第2の情報層のそれらとは異なっている。
上記の文献に記載された片面2層構成の記録媒体はいずれも、一方の情報層を構成する層のうち、1または複数の層の組成が、他の情報層の対応する層の組成と異なっている。これは、前述のとおり、第2の情報層と第1の情報層に要求される特性が異なることによる。
日本国特許公開特開2005−122872号公報には、第1の情報層の構成が、Al−Ti(反射層)/ZnS−SiO2(保護層)/Ge5Ag1In2Sb70Te22(記録層)/ZnS−SiO2(保護層)であり、第2の情報層が、In2O3−ZnO(熱拡散層)/Ag−Zn−Al(反射層)/ZnS−SiO2(保護層)/Ge5Ag1In2Sb70Te22(記録層)/ZnS−SiO2(保護層)/In2O3−ZnO(熱拡散層層)である、2層相変化型の情報記録媒体が開示されている(実施例1)。この文献に記載された記録媒体において、第1の情報層における記録層は第2の情報層のそれと同じであり、また、両方の情報層において、記録層はZnS−SiO2で挟まれている。このディスクは、第1および第2の情報層の反射層の組成は互いに異なるものの、第1の情報層の記録層および保護層の組成は、第2の情報層のそれらと同じであり、その点で、上記3つの文献に開示された媒体とは異なる。
スパッタリングにより、情報記録媒体の記録層、反射層、誘電体層およびその他の薄膜(例えば、透過率調整層等)を形成する際、その量産性の良さから、枚葉式スパッタリング装置がしばしば用いられる。枚葉式スパッタリング装置を模式的に示す平面図を図3に示す。この装置において、スパッタリングは、成膜室32−38で実施され、1枚の基板が、成膜室32−38を一巡すると、7つの層が形成されることとなる。基板は、真空チャンバー内(メインチャンバー31)に投入され、ロードロック室30を介して、成膜室(成膜室32または38)に搬送される。各成膜室においては、1つの基板のスパッタリングが終了してこれが次の成膜室に入ると、別の基板が送られてくる。
枚葉式スパッタリング装置を用いて、片面2層構造の記録媒体を製造する場合、第1の情報層を複数の成膜室を一巡させて形成した後、第2の情報層を同じ成膜室をさらに一巡させて形成する方法がある。この場合、第2の情報層の形成の前に、第1の情報層とは異なる組成とすべき層を形成する成膜室のターゲットを交換する。3つ以上の情報層を有する媒体も同様の方法で、製造し得る。よって、記録層の組成が、第1の情報層と第2の情報層とで異なるときには、記録層を形成する成膜室のターゲットを取り替える必要がある。
この方法は、1台の比較的小型なスパッタリング装置で、片面多層構造の記録媒体の製造を可能にするという利点を有するが、ターゲット交換を必要とするために、下記のような問題を有する。
(1)ターゲット交換の間、生産がストップするため、生産稼働率が低下する。
(2)ターゲット交換に伴う成膜室の開放により、成膜室内に真空排気してもなかなか排気されない微量の水分が残存する。さらに、この水分が、ターゲット交換した成膜室だけでなく、メインチャンバーを介してつながっている他の成膜室にも、影響を及ぼす。成膜室中の残留水分は、僅かであっても、特に、記録再生特性を主に支配する記録層及びそれに接する誘電体層の膜質に大きく影響し、ひいては媒体の特性に悪影響を与え得る。また、残留水分の影響は、高倍速対応の媒体において、より大きくなる。
ターゲット交換を不要にすれば、かかる問題を回避し得る。具体的には、例えば、成膜室の数を増やして、1つの媒体においてスパッタリングにより形成すべき層を、別個の成膜室で形成することが考えられる。例えば、第1および第2の情報層がそれぞれ6層構成である場合には、12個の成膜室を有するスパッタリング装置を使用すれば、上記問題は回避できる。あるいは、枚葉式スパッタリング装置を増やし、各情報層をそれぞれ別個の装置で形成してもよい。しかし、そのように装置を変更する又は増やすことは、装置を高額にし、および/または生産コストを上昇させる。
あるいは、各機能層(特に、記録層)がすべての情報層において共通した組成を有するように、媒体を設計すれば、ターゲット交換を不要にする又はその回数を減らすことができる。しかしながら、そのような媒体は、多くの文献において、提案されていない。それは、前述のように、例えば、片面2層構造の記録媒体においては、第1の情報層と第2の情報層は、有するべき特性が異なることによる。
日本国特許公開特開2005−122872号公報に開示された媒体は、第1の情報層の記録層および保護層の組成が、第2の情報層のそれらと同じであるから、他の文献に開示された媒体と比較して、枚葉式スパッタリング装置を用いて、より効率的に製造されると予想される。しかし、発明者らの試験によれば、この文献に記載の媒体は、環境試験後の特性(ライフ特性)が良好でないことが判明した。
本発明は、すべての情報層において、記録層の組成が同じであり、かつそれに接する層の組成が同じであり、保存特性の良好な情報記録媒体を提供することを目的とする。
本発明の情報記録媒体は、それぞれ記録層を有する少なくとも2つの情報層を含み、各記録層が光学的に検出可能な相変化を生じ得る情報記録媒体であって、光の入射側に近い方を情報層a、遠い方を情報層bとしたとき、前記情報層aは、光が入射する側に近い方から、誘電体層a1、記録層a、誘電体層a2、および反射層aをこの順に少なくとも有し、前記情報層bは、光が入射する側に近い方から、誘電体層1b、記録層b、誘電体層2b、および反射層bをこの順に少なくとも有し、
前記誘電体層1aおよび2aは記録層aと接しており、かつ前記誘電体層1bおよび2bは記録層bと接しており、
前記誘電体層1aおよび前記誘電体層1bが、酸素原子、窒素原子およびフッ素原子から選択される少なくとも1つの原子を含み、かつ、酸素原子を含むときには、Al、Si、Cr、Ta、Mo、W、Zr、およびHfから選択される少なくとも1つの元素を含み、窒素原子を含むときには、Al、B、Ge、Si、Ti、およびZrから選択される少なくとも1つの原子を含み、フッ素原子を含むときには、Dy、Er、Eu、Ce、Bi、およびLaから選択される少なくとも1つの元素を含み、
前記誘電体層2aおよび前記誘電体層2bが、Zr、Si、Cr、In、Ga、およびHfから選択される少なくとも1つの元素、および酸素原子を含み、
前記誘電体層1aの組成が前記誘電体層1bの組成と同じであり、前記記録層aの組成が前記記録層bの組成と同じであり、かつ前記誘電体層2aの組成が前記誘電体層2bの組成と同じである、情報記録媒体を提供する。
本発明の情報記録媒体は、各情報層に含まれる記録層に接して設けられている誘電体層を特定の元素を含むように構成することによって、レーザ光が入射する側に近い方から、誘電体層1/記録層/誘電体層2の構成をそれぞれ有する2つの情報層aおよびbにおいて、これらの情報層の記録層aおよびbの組成を同じにし、誘電体層1aと誘電体層1bの組成を同じにし、かつ誘電体層2aと誘電体層2bの組成を同じにしても、情報の良好な記録再生を可能にし、また、良好なライフ特性を示す。よって、本発明は、2またはそれ以上の情報層を含む、記録再生特性およびライフ特性の良好な記録媒体を、スパッタリング法により、より効率的に製造することを可能にする。
本発明の情報記録媒体において、誘電体層1aおよび誘電体層1bに含まれる酸素原子は、酸化物の形態として、窒素原子は、窒化物の形態として、フッ化物は、フッ化物の形態で、一般には存在し得る。したがって、本発明の情報記録媒体は、前記誘電体層1aおよび前記誘電体層1bが、Al、Si、Cr、Ta、Mo、W、Zr、およびHfの酸化物、Al、B、Ge、Si、Ti、およびZrの窒化物、Dy、Er、Eu、Ce、Bi、およびLaのフッ化物から選ばれる、少なくとも1つの化合物を含むものであり、前記誘電体層2aおよび前記誘電体層2bが、Zr、Si、Cr、In、Ga、およびHfの酸化物から選ばれる、少なくとも1つの化合物を含むものであることが好ましい。
本発明の情報記録媒体においては、前記反射層aの組成が前記反射層bの組成と実質的に同じであることが好ましい。2つの情報層の反射層の組成が同じであれば、より高い製造効率で、記録媒体を製造することが可能となる。
本発明の情報記録媒体において、誘電体層1aと誘電体層1bとの組み合わせ、記録層aと記録層bの組み合わせ、および誘電体層2aと誘電体層2bとの組み合わせから選択される、少なくとも1つの組み合わせにおいて、層の厚さが互いに異なることが好ましい。層の厚さを変えることにより、組成が同じであっても、互いに異なる光学特性を有する情報層aおよびbを得ることができる。その場合、記録層1aの厚さ<記録層1bの厚さであることが好ましい。情報層aにおける光の吸収を小さくするためである。
あるいは、本発明の情報記録媒体において、反射層aと反射層bの組成が同じであるときに、2つの反射層の厚さが互いに異なるようにしてもよい。その場合、反射層aの厚さ<反射層bの厚さであることが好ましい。情報層aにおける光の吸収を小さくするためである。
反射層aと反射層bは、Ag、AlおよびAuから選ばれる少なくとも1つの元素を主成分(90at%以上)として含むことが好ましい。
本発明の情報記録媒体は、誘電体層1aの記録層aと接する側とは反対の側に接している、誘電体層3a、および誘電体層1bの記録層bと接する側とは反対の側に接している、誘電体層3bをさらに含んでよい。その場合、誘電体層3aの組成と誘電体層3bの組成は、同じであることが好ましい。誘電体層3aおよび3bを有する記録媒体において、誘電体層1aおよび1bは界面層と呼んでもよい。
本発明の情報記録媒体は、情報層aが、高屈折率層aをさらに有し、光が入射される側から、誘電体層2a、反射層aおよび高屈折率層aがこの順に位置し、且つ記録再生に使用する光の波長における、誘電体層1aの屈折率をn1a、誘電体層2aの屈折率をn2a、および高屈折率層の屈折率をn3aとしたときに、n1a<n3aおよびn2a<n3aを満たすことが好ましい。高屈折率層は、情報層aの光の透過率を高くして、情報層bでの記録再生がより良好に実施されるようにする。
高屈折率層は、好ましくは、TiおよびNbから選択される少なくとも1つの元素、酸素原子および窒素原子のいずれか一方または両方を含むことが好ましい。そのような高屈折率層において、TiおよびNbは、一般に、酸化物および/または窒化物として存在し得る。
本発明の情報記録媒体において、記録層aおよびbは、TeおよびGeを含むことが好ましい。そのような記録層は、前記特定の元素を含む2つの誘電体層1および誘電体層2とともに使用する場合に、誘電体層1aおよび1bの組成が同じであり、記録層aおよびbの組成が同じであり、かつ誘電体層2aおよび2bの組成が同じである記録媒体を、都合良く構成できる。記録層aおよびbは、より好ましくは、In、Bi、Sn、Ag、Sb、GaおよびAlから選ばれる少なくとも1つの元素をさらに含む。
本発明は、情報層の数が2つである情報記録媒体として、好ましく実現され得る。具体的には、情報層の数が2つである媒体は、DVDまたはBD−REとして、実現され得る。
あるいは、本発明は、情報層の数によらず、情報層aおよびbが連続する、情報記録媒体として、好ましく実現され得る。特に、情報層aおよびbが連続する場合に、枚葉式スパッタリング装置を用いて、ターゲットの交換を必要とせずに又はその回数を減らして、効率よく情報記録媒体を製造することができる。
本発明はさらに、本発明の情報記録媒体の製造方法を提供する。本発明の記録媒体の製造方法は、情報層aの誘電体層1a、記録層aおよび誘電体層2a、ならびに情報層bの誘電体層1b、記録層bおよび誘電体層2bを、それぞれスパッタリング法、蒸着法およびCVD法から選択されるいずれか一つの方法で形成することを含み、
誘電体層1aおよび1bを、同じ組成のターゲットを用いて形成し、
記録層aおよびbを、同じ組成のターゲットを用いて形成し、
誘電体層2aおよび2bを、同じ組成のターゲットを用いて形成することを特徴とする。この製造方法によれば、例えば、1つの成膜室において、ターゲット交換をすることなく、誘電体層1aおよび1bを形成することができ、別の共通する成膜室において、ターゲット交換をすることなく、記録層aおよびbを形成することができ、さらに別の共通する成膜室において、ターゲット交換をすることなく、誘電体層2aおよび2bを形成することができ、製造効率を高くし得る。
本発明の製造方法においては、情報層aの反射層aと情報層bの反射層bを、同じ組成のターゲットを用いて形成することが好ましい。それにより、記録媒体の製造中のターゲットの交換をより少なくして、より効率的に、記録媒体を製造することが可能となる。
上記において、層に関して「同じ組成」という用語は、「実質的に同じ組成」の意味であり、完全に同じ組成に加えて、分析精度(誤差)および成膜中に混入する微量の不純物に起因して、僅かに異なる組成をも包含する意味で使用される。また、情報記録媒体を構成する各層は特に数十nm以下と極めて薄いために、分析精度は低くなる傾向にある。そのため、本明細書において、「層の組成が同じである」とは、薄膜の状態で測定されるときに、各成分の差が分析精度以内、特に、原子(at)%で表示される場合には、好ましくは各成分の差が0.7at%以内、mol%表示で表示される場合には、好ましくは各成分の差が4mol%以内であることを意味する。
本発明の情報記録媒体は、誘電体層1/記録層/誘電体層2の積層構造を有する情報層を少なくとも2つ有し、これらの2つの情報層aおよびbにおいて、2つの誘電体層1aおよび1bの組成が同じであり、2つの記録層aおよびbの組成が同じであり、かつ2つの誘電体層2aおよび2bの組成が同じである。本発明の記録媒体は、そのように構成しても、優れた記録再生特性およびライフ特性を有する。よって、本発明は、生産性に優れた、片面多層情報記録媒体を実現することを可能にする。また、本発明の製造方法は、そのような記録媒体を、スパッタリング等の方法を用いて、ターゲットの交換を無くす又は減らして、効率的に製造することを可能にする。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は例示的なものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1として、レーザ光を用いて情報の記録および再生を実施する、ディスク形状の情報記録媒体(光ディスク)の一例を説明する。図4は、その情報記録媒体の一部断面を示す。
図4に示す情報記録媒体は、基板40、ならびに基板40の一方の表面に、情報層bとしての第1の情報層41、光学分離層42、情報層aとしての第2の情報層43、およびカバー層44がこの順に形成された構成を有する。図4において、情報の記録および再生を行うレーザ光はカバー層44側から入射される。
基板40は、円盤状で、透明且つ表面が平滑なものを使用する。基板の材料としては、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィンもしくはポリメチルメタクリレート(PMMA)のような樹脂、またはガラスを挙げることができる。成形性、価格、および機械強度を考慮すると、ポリカーボネートが好ましく使用される。図示した形態において、厚さ約1.1mmおよび直径約120mmの基板40が好ましく用いられる。
基板40の情報層等を形成する側の表面には、レーザ光を導くための凹凸の案内溝が形成されていてもよい。案内溝を基板40に形成した場合、本明細書においては、レーザ光に近い側にある面を便宜的に「グルーブ面」と呼び、レーザ光から遠い側にある面を便宜的に「ランド面」と呼ぶ。たとえば、媒体をBlu−ray Discとして使用する場合、グルーブ面とランド面の段差は、10nm〜30nmであることが好ましい。また、Blu−ray Discでは、グルーブ面のみに記録を行い、グルーブ−グルーブ間の距離(グルーブ面中心からグルーブ面中心まで)は、約0.32μmである。
基板40上には、まず、情報層bとしての第1の情報層41を設ける。第1の情報層41(情報層b)は、少なくとも反射層45、誘電体層46、界面層47、記録層bとしての記録層48、界面層49、および誘電体層50を有する。図示するように、界面層47および49は、記録層48に接しているから、誘電体層2bおよび2aにそれぞれ相当する。誘電体層50は、誘電体層2bとしての界面層49の記録層48と接する側とは反対の側に接して設けられているから、前述の誘電体層3bに相当する。誘電体層46は、便宜的に、誘電体層4bと称してよい。
第1の情報層41の上には、光学分離層42が形成される。光学分離層42は、第1の情報層41と第2の情報層43とを光学的に分離する機能を備える。光学分離層42は、第1の情報層41に信号を記録再生するために照射するレーザ光の波長に対して透明な材料で形成される。光学分離層42は、例えば、アクリル系樹脂またはエポキシ系樹脂のような紫外線硬化樹脂等から成る層をスピンコート法により形成する方法、または透明フィルムを粘着テープあるいは紫外線硬化樹脂等で接着する方法等により、形成される。光学分離層42の表面にも、必要に応じて、第2の情報層43のためのスパイラルまたは同心円状の案内溝等が形成される。光学分離層42の厚さは、5μm〜40μm程度であることが好ましい。
光学分離層42の上には、情報層aとしての第2の情報層43が形成される。第2の情報層43(情報層a)は、少なくとも反射層52、誘電体層53、界面層54、記録層aとしての記録層55、界面層56、および誘電体層57を有する。この形態の記録媒体においては、さらに、高屈折率層51が、第2の情報層43に含まれる。図示するように、界面層54および56は、記録層55に接しているから、誘電体層2aおよび1aにそれぞれ相当する。誘電体層57は、誘電体層1aとしての界面層56の記録層55と接する側とは反対の側に接して設けられているから、前述の誘電体層3aに相当する。誘電体層53は、便宜的に、誘電体層4aと称してよい。
第2の光学情報層43の上には、カバー層44が形成される。カバー層44は、スピンコート法によって、アクリル系樹脂またはエポキシ系樹脂のような紫外線硬化樹脂等から成る層として形成してもよく、または透明フィルムを、粘着テープまたは紫外線硬化樹脂等で、第2の情報層43の上に接着する方法等によって形成してもよい。
以下に、各情報層を構成する層について説明する。誘電体層4bとしての誘電体層46および誘電体層4aとしての誘電体層53は、例えば、Al、Cr、Dy、Ga、Hf、In、Nb、Sn、Y、Zn、Si、Ta、Mo、WおよびZr等の酸化物、ZnS等の硫化物、Al、B、Cr、Ge、Si、Ti、ZrおよびTa等の窒化物、ならびにBi、Ce、Dy、Er、EuおよびLa等のフッ化物等から選択される、1または複数の化合物を含むことが好ましい。より好ましくは、誘電体層46および53は、これらの化合物から選択される1つまたは複数の化合物を33.3mol%以上含む。
誘電体層46および53が、これらの化合物の混合物から形成される場合、例えば、ZnS−SiO2(例えば(ZnS)80(SiO2)20)、ZrO2−SiO2、ZrO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−Ga2O3、ZrO2−SiO2−Ga2O3、ZrO2−SiO2−Cr2O3−LaF、SnO2−Ga2O3、SnO2−In2O3、ZrO2−In2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、HfO2−Cr2O3、HfO2−SiO2、HfO2−SiO2−Cr2O3、SnO2−Nb2O3、SnO2−Si3N4等を用いてもよい。ZrO2を使用する場合、ZrO2として、3mol%のY2O3を含む部分安定化ZrO2((ZrO2)97(Y2O3)3)、または8mol%のY2O3を含む安定化ZrO2((ZrO2)92(Y2O3)8)を用いてもよい。
尤も、これらの層の組成を、X線マイクロアナライザーまたはエネルギー分散型X線分光分析装置で分析するときには、組成は元素組成として表示される。よって、前記特定の元素の酸化物を含む場合には、酸素原子と前記特定の元素が構成元素として検出され、窒化物を含む場合には、窒素原子と前記特定の元素が検出され、フッ化物を含む場合、フッ素原子と前記特定の元素が検出される。このことは、以下に説明する層についてもあてはまる。
誘電体層46の厚さは、ディスク反射率および記録感度の点から、好ましくは10nm〜40nmであり、より好ましくは15nm〜30nmである。誘電体層53の厚さはディスク反射率および記録感度の点から、好ましくは5nm〜30nmであり、より好ましくは10nm〜22nmである。誘電体層53の厚さは、誘電体層46のそれよりも薄いことが好ましい。
誘電体層3bとしての誘電体層50、および誘電体層3aとしての誘電体層57の材料は、誘電体層46および53の材料として例示したものと同じであるから、ここではその詳細を省略する。誘電体層50の厚さは、ディスク反射率および記録感度の点から、好ましくは40nm〜80nmであり、より好ましくは55nm〜75nmである。誘電体層57の厚さは、ディスク反射率および記録感度の点から、好ましくは25nm〜50nmであり、より好ましくは30nm〜45nmである。誘電体層57の厚さは、誘電体層50のそれよりも薄いことが好ましい。
誘電体層2bとしての界面層47、および誘電体層2aとしての界面層49は、記録層48と接し、誘電体層1bとしての界面層54、および誘電体層1aとしての界面層56は、記録層55と接している。記録層が相変化材料から成る場合、記録層自身の組成に加えて、記録層と接するこれらの誘電体層の組成は、記録層の結晶−アモルファス間の変化に大きな影響を及ぼす。界面層が記録層に与える影響は、例えば、記録媒体のアーカイバル(archival)特性およびアーカイバルオーバーライト(archival overwrite)特性等のライフ特性から知ることができる。これらの特性は、記録した信号を保存した後、即ち所定の環境試験に付した後に評価される。
アーカイバル特性が劣る記録媒体においては、初期の(アモルファス状態の)記録マーク(即ち、記録媒体が保存される前に形成された記録マーク)が、環境試験に付されている間に結晶化されやすい。そのため、この記録媒体は、保存後に良好な再生信号を与えにくくなる。アーカイバルオーバーライト特性が劣る記録媒体は、環境試験に付されている間に、初期の記録マークが、アモルファス化の進行により結晶化しにくくなる、または記録層自身の結晶化能が変化しやすい。そのため、そのような媒体において、保存後の信号に重ね書きした信号からは、良好な再生信号が得られにくくなる。
これらの特性の良好な記録媒体を得るためには、記録層の組成を考慮し、さらに記録層と隣接する誘電体層(界面層)がレーザ光が入射される側に近い方にあるか、遠い方にあるかを考慮して、誘電体層の組成を適切に選択して、記録媒体を設計する必要がある。本発明の記録媒体は、記録層と接する誘電体層の材料を、後述のように選択することによって、2つの情報層において、誘電体層2/記録層/誘電体層1の組成が共通する構成を有し、かつ良好なライフ特性を示すものとなる。
具体的には、レーザ光が入射される側により近い界面層49および56は、Al、Si、Cr、Ta、Mo、W、Zr、およびHfの酸化物、Al、B、Ge、Si、Ti、およびZrの窒化物、Dy、Er、Eu、Ce、Bi、およびLaのフッ化物から選ばれる、少なくとも1つの化合物を含むことが好ましい。界面層49および56は、これらの化合物から選択される1つの化合物を、好ましくは33.3mol%以上含み、より好ましくは50.0mol%以上含む。界面層49および56は、最も好ましくはこれらの化合物から選択される1または複数の化合物のみから実質的に成る。ここで「実質的に」という用語は、5mol%以下の不純物を含んで良い意味である。あるいは、界面層49および56は、これらの化合物以外に、Dy、Ga、In、Nb、Sn、YおよびZnの酸化物、ならびにGeおよびCrの窒化物から選択される、1または複数の化合物を含んでよい。
また、レーザ光が入射される側からより遠い界面層47および54は、Zr、Si、Cr、In、Ga、およびHfの酸化物から選ばれる、少なくとも1つの化合物を含むことが好ましい。界面層47および54は、これらの化合物から選択される1つの化合物を、好ましくは33.3mol%以上含み、より好ましくは50.0mol%以上含む。界面層47および54は、最も好ましくはこれらの化合物から選択される1または複数の化合物のみから実質的に成る。ここで「実質的に」という用語の意味は、先に説明したとおりである。あるいは、界面層47および54は、これらの酸化物以外に、例えば、先に界面層49および56に関連して説明した、他の元素の酸化物、窒化物、およびフッ化物から選択される、1または複数の化合物を含んでよい。
界面層47、49、54および56が、上記化合物の混合物から形成される場合、例えば、ZrO2−SiO2、ZrO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−Ga2O3、ZrO2−SiO2−Ga2O3、ZrO2−SiO2−Cr2O3−LaF3、SnO2−Ga2O3、SnO2−In2O3、ZrO2−In2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、HfO2−Cr2O3、HfO2−SiO2、HfO2−SiO2−Cr2O3、SnO2−Nb2O3、またはSnO2−Si3N4等を用いてもよい。ZrO2を使用する場合、ZrO2として、3mol%のY2O3を含む部分安定化ZrO2((ZrO2)97(Y2O3)3)、または8mol%のY2O3を含む安定化ZrO2((ZrO2)92(Y2O3)8)を用いてもよい。
界面層47の厚さは、ディスク反射率および記録感度の点から、好ましくは3nm〜30nmであり、より好ましくは5nm〜20nmである。界面層54の厚さはディスク反射率および記録感度の点から、好ましくは3nm〜30nmであり、より好ましくは5nm〜20nmである。界面層54の厚さは、界面層47のそれよりも薄いことが好ましい。
界面層49の厚さは、ディスク反射率および記録感度の点から、好ましくは2nm〜15nmであり、より好ましくは3nm〜10nmである。界面層56の厚さはディスク反射率および記録感度の点から、好ましくは2nm〜15nmであり、より好ましくは3nm〜10nmである。界面層56の厚さは、界面層49のそれよりも薄いことが好ましい。
本発明の記録媒体は、記録層と誘電体層の間に界面層を有する(即ち、誘電体層を2層構造にする)必要はかならずしもない。図示した記録媒体においては、誘電体層3bおよび3aを設けずに、界面層49および56を、それぞれ誘電体層1bおよび1aとして形成してよい。そのような記録媒体は、界面層49および56を設けずに、誘電体層50および57を、誘電体層1bおよび1aとして設けた構成を有するともいえる。あるいは、誘電体層4bおよび4aを設けずに、界面層47および54を、それぞれ誘電体層2bおよび2aとして形成してよい。そのような記録媒体は、界面層47および54を設けずに、誘電体層46および53を、誘電体層2bおよび2aとして設けた構成を有するともいえる。これらの場合、誘電体層1b、1a、2bおよび2aとして形成される、界面層49、56、47および54の好ましい厚さは、それぞれ、誘電体層50、57、46および53に関連して先に説明したとおりである。
記録層と接する誘電体層1および2としての界面層は、例えば、下記のいずれかの式で示される、酸化物の混合物を含むことが好ましい。これらの混合物は、いずれの界面層(図4における誘電体層47、54、49および56)を構成するのにも適している。
(MO2)A(Cr2O3)100−A(mol%) (1)
(式中、MはZrおよびHfの一方または両方を示し、Aは20≦A≦80である)
(MO2)B(Cr2O3)C(SiO2)100-B-C(mol%) (2)
(式中、MはZrおよびHfの一方または両方を示し、BおよびCはそれぞれ、20≦B≦70および20≦C≦60の範囲内にあり、且つ60≦B+C≦90である)
誘電体層1としての界面層(図4における誘電体層49および56)は、例えば、下記のいずれかの式で示される混合物を含むことが好ましい。
(D)x(SiO2)y(Cr2O3)z(LaF3)100-x-y-z(mol%) (3)
(式中、DはZrO2、HfO2およびTa2O5から選択される少なくとも1つの酸化物を示し、x、yおよびzは、20≦x≦70、10≦y≦50、10≦z≦60、50≦x+y+z≦90を満たす)
(Ta2O5)H(SiO2)100-H(mol%) (4)
(式中、Hは、20≦H≦80である)
(In2O3)I(CeF3)100-I(mol%) (5)
(式中、Iは、20≦I≦80を満たす)
誘電体層2としての界面層(図4における誘電体層47および54)は、例えば、下記のいずれかの式で示される混合物を含むことが好ましい。
(MO2)E(SiO2)F(M’O2)100-E-F(mol%) (6)
(式中、MはZrおよびHfの一方または両方を示し、M’は、GaおよびInのいずれか一方または両方を示し、EおよびFはそれぞれ、10≦E≦80および10≦F≦70の範囲内にあり、且つ20≦E+F≦90である)
(MO2)J(M’O2)K(Cr2O3)100−J−K(mol%) (7)
(式中、MはZrおよびHfの一方または両方を示し、M’は、GaおよびInのいずれか一方または両方を示し、JおよびKはそれぞれ、10≦J≦80および10≦K≦70の範囲内にあり、且つ20≦J+K≦90である)
(MO2)G(M’2O3)100−G(mol%) (8)
(式中、MはZrおよびHfの一方または両方を示し、M’は、GaおよびInのいずれか一方または両方を示し、Gは20≦G≦80である)
これらの式で示される混合物は、記録層との密着性が良好であり、かつ記録層と接したときに、物質移動が生じにくい。また、これらの混合物を使用すると、2つの情報層の記録層の組成が同じであっても、良好なアーカイバル特性およびアーカイバルオーバーライト特性を有する記録媒体を得ることができる。
上記例示した酸化物、窒化物、およびフッ化物から選択される化合物を2以上含む混合物を含む層は、後述する方法において、特にスパッタリング法で形成すれば、スパッタリングターゲットの組成と略同じ組成を有する。よって、これらの誘電体層の組成は、通常、スパッタリングターゲットの組成で表わされる。スパッタリングターゲットは、通常、化合物の割合を示して提供される。
記録層48および55は、光の照射により、結晶相と非晶質相との間で相変化を起こし、記録マークが形成される層である。相変化が可逆的であれば、消去や書き換えを行うことができる。可逆的相変化材料としては、Ge、Te、Se、In、およびSbから選択される1または複数の元素を含む材料を用いることが好ましい。具体的には、TeGeSb、TeGeSn、TeGeSnAu、SbSe、SbTe、SbSeTe、InTe、InSe、InSeTl、InSb、InSbSe、GeSbTeAg、GeTe、GeTeIn、GeTeBi、またはGeTeBiIn等を用いることが好ましい。特に、GeおよびTeを含む材料が好ましく用いられる。GeおよびTeを含む材料は、より好ましくは、In、Bi、Sn、Ag、Sb、GaおよびAlから選ばれる少なくとも1つの元素を含む。
より具体的には、記録層は、下記の式:
GeaBibTedM”100−a−b−d(at%) (11)
(式中、M”はAl、GaおよびInから選択される少なくとも一つの元素を示し、a,bおよびdは、25≦a≦60、0<b≦18、35≦d≦55、82≦a+b+d<100を満たす)
で表わされる、Ge−Bi−Te−M”系材料を含むことが好ましい。この材料を含む記録層は、特に、前記特定の化合物(または元素)を含む誘電体層1および2とともに、誘電体層1/記録層/誘電体層2の各層の組成を、情報層aおよび情報層bにおいて共通させるのに適している。
上記の式で示される材料は、Ge、M”およびBiのテルル化物の混合物(または合金)として、下記の式によっても示され得る。
(GeTe)u[(M”2Te3)v(Bi2Te3)1-v]100-u(mol%) (12)
(式中、M”はAl、GaおよびInから選択される少なくとも一つの元素を示し、uおよびvは、80≦u<100、0<v≦0.9を満たす)
上記(11)および(12)の式で示される材料を含む記録層は、さらにSnを含み、下記の式(13)および(14)の式で示される材料を含んでよい。
GeaSnfBibTedM100−a−b−d−f(原子%) (13)
(式中、MはAl、GaおよびInから選択される少なくとも一つの元素を示し、a、b、dおよびfは、25≦a≦60、0<b≦18、35≦d≦55、0<f≦15、82≦a+b+d<100、82<a+b+d+f<100を満たす)
[(SnTe)t(GeTe)1−t]u[(M2Te3)v(Bi2Te3)1−v]100−u(mol%) (14)
(式中、MはAl、GaおよびInから選択される少なくとも一つの元素を示し、u、vおよびtは、80≦u<100、0<v≦0.9、0<t≦0.3を満たす)
記録層48の厚さは、反射率の点から8nm〜18nmであることが好ましい。また、記録層55の厚さは、情報層aの透過率を考慮すると、5nm〜12nmであることが好ましい。また、記録層48の厚さ>記録層55の厚さの関係を満たすことが好ましい。情報層aの透過率を高くする必要があることによる。
反射層45および52は、Ag、AuおよびAlから選択される1または複数の金属元素を、主成分として、90at%以上含むことが好ましい。これらの元素は、耐食性に優れ、かつ急冷機能を有する反射層を形成することから、好ましく用いられる。反射層45および52は、Ag、AuおよびAlから選択される1または複数の金属元素に加えて、Mg、Ca、Cr、Nd、Pd、Cu、Ni、Co、Pt、Ga、Dy、In、Nb、V、TiおよびLa等から選択される、1または複数の元素を含んでよい。2以上の金属元素は、一般に、合金として、反射層を形成する。
反射層45の厚さは、反射率等の点から50nm〜160nmであることが好ましく、60nm〜100nmであることがより好ましい。反射層52は、情報層aの透過率を考慮すると、6nm〜15nmであることが好ましく、8nm〜12nmであることがより好ましい。反射層の厚さが小さいと、記録層の熱が拡散しにくくなり、したがって記録層が非晶質化しにくくなり、記録層の厚さが大きすぎると、記録層の熱が拡散されすぎて、記録感度が低下することがある。
高屈折率層51は、第2の情報層43(情報層a)の透過率を調整するために設けられる。高屈折率層は、TiおよびNbの酸化物、ならびにTiおよびNbの窒化物から選択される1または複数の化合物を好ましくは含み、より好ましくは当該化合物を主成分として50mol%以上含む。それらの化合物は、例えば、波長400nm程度のレーザ光に対して、高い屈折率を有する。例えば、TiO2は、波長400nmで2.7の屈折率を有する。これに対し、誘電体層46、50、53および57の材料となり得るZnS−20mol%SiO2は2.3の屈折率を有し、界面層47、49、54および56の材料となり得るZrO2−50mol%In2O3は2.2の屈折率を有する。
第2の情報層43において、記録再生に使用する光の波長における、誘電体層54、反射層52および高屈折率層51の屈折率をそれぞれ、n1a、n2a、およびn3aとしたときに、n1a<n3aおよびn2a<n3aを満たすことが好ましい。それにより、情報層aの高透過率を実現できる。高屈折率層51の厚さは、情報層aの透過率を考慮すると、15nm〜30nmであることが好ましく、18nm〜25nmであることがより好ましい。
誘電体層、記録層、反射層、界面層および高屈折率層は、通常、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、CVD法、またはレーザスパッタリング法等を適用して形成され、好ましくはスパッタリング法を適用して形成される。スパッタリングは、スパッタリングする材料に応じて、直流電源を用いるDCスパッタリングおよび高周波電源を用いるRFスパッタリングのいずれかを選択して実施する。一般的には、誘電体層(界面層を含む)はRFスパッタリングにより形成し、記録層および反射層はDCスパッタリングにより形成する。また、上記高屈折率層はDCスパッタリングで形成することが好ましい。スパッタリングに必要なスパッタガスとしては、Arに代表される不活性ガスを用い、不活性ガスとともに酸素または窒素等を添加ガスとして用いてもよい。
スパッタリングにより、これらの層を形成する場合には、前述したように枚葉式スパッタリング装置を用いることが好ましい。本発明の記録媒体は、2つの情報層において、記録層およびこれに接する2つの誘電体層がそれぞれ、共通した組成を有する。したがって、枚葉式スパッタリング装置において、少なくともこれらの3つの層を形成する3つの成膜室においてターゲットを取り替えることなく、これらの各層はそれぞれ2回形成され得る。
枚葉式スパッタリング装置の概略は、先に、図3を参照して説明したとおりである。前述のように、従来の情報記録媒体においては、記録層および/またはそれに隣接する誘電体層の組成が、情報層毎に異なっているため、スパッタリング装置の各成膜室を二巡させて二つの情報層を形成するには、ターゲットを交換する必要がある。前述のように、ターゲットの交換の際に、水分が成膜室に入り、それが真空排気後も残存して、スパッタリングにより形成される層の膜質に影響を及ぼすことがある。そこで、安定した特性の媒体を製造するためには、ターゲット交換後、長時間の真空廃棄および長時間のプリスパッタリングを実施する必要がある。
一般に、真空排気およびプリスパッタリングは、ディスクの記録密度および倍速が高いほど、より長い時間実施する必要がある。記録密度および倍速が高いほど、膜質の要求水準が高くなり、僅かな残留水分が膜質の特性に大きく影響し、ひいては記録媒体の記録再生特性および/またはライフ特性に影響を及ぼすことによる。例えば、Blu−ray規格に対応した2倍速ディスクを製造する場合、装置によっては、ターゲット交換に30分、ターゲット交換後の成膜室の真空排気に30分以上を要し、また、プリスパッタリングに1.5時間以上を要することがある。これらの時間は、生産ロスとなる。本発明によれば、ターゲット交換が不要となるので、これらの生産ロスを無くす、または少なくすることができる。
図4に示す形態の媒体においては、少なくとも界面層47および54、記録層48および55、ならびに界面層49および56は、それぞれ組成が同じであるから、これら3種類の層を形成するための3つの成膜室においては、ターゲット交換が必要とされない。よって、本発明の記録媒体は、ターゲット交換およびそれに伴う真空排気およびプリスパッタリングの時間を無くす又は短くして、効率良く製造できる。さらに、反射層45および52の組成が同じであると、それらの層もターゲット交換を伴わずに形成できるので、記録媒体をより効率良く製造できる。誘電体層46および53の組成が同じであるとき、および誘電体層50および57の組成が同じであるときも同様である。即ち、2つの情報層において、共通する組成を有する層の組み合わせの数が多いほど、製造効率は良くなる。
図4に示す形態の媒体は、波長が650nm〜670nmのレーザ光で情報を記録再生する、DVD規格に対応したディスクとして実現してよい。あるいは、この媒体は、波長が395nm〜415nmのレーザ光で情報を記録再生する、Blu−ray規格に対応したディスクとして実現してよい。特に、この媒体は、Blu−ray規格に対応した、2倍速対応のディスクまたはそれよりも高い倍速に対応するディスクとして、好ましく実現される。そのような高密度および高倍速対応の光ディスクにおいては、残留水分による影響を受けやすいために、ターゲット交換無しで2つの情報層が形成されれば、その影響を無くす又は小さくすることができる。
図4に示す形態は、適宜変更してよい。例えば、界面層47および54を無くし、誘電体層46および53のみを誘電体層1bおよび1aとして設けてよい。または、カバー層に代えて基板を使用し、当該基板の上に、図示した下側の層から順に形成して、第2の情報層および第1の情報層をこの順に形成してよい。
(実施の形態2)
本発明の情報記録媒体の別の形態を、その一部断面を示す図1を参照して説明する。図1に示す記録媒体も、図4に示す媒体と同様に、基板4、ならびに基板4の一方の表面に、情報層bとしての第1の情報層1、光学分離層9、情報層aとしての第2の情報層2、およびカバー層13がこの順に形成された構成を有する。図1において、情報の記録および再生を行うレーザ光3はカバー層14側から入射される。第1の情報層1は、反射層5、誘電体層6、記録層7、および誘電体層8を有し、第2の情報層2は、反射層10、誘電体層11、記録層12、および誘電体層13を有する。
図1に示す記録媒体は、誘電体層4bおよび3b、ならびに誘電体層4aおよび3aを有しない点、および高屈折率層を有しない点において、図4に示す記録媒体とは異なる。よって、この形態において、第1の情報層1は、誘電体層2bとしての誘電体層6、および誘電体層1bとしての誘電体層8を有し、第2の情報層2は、誘電体層2aとしての誘電体層11、および誘電体層1aとしての誘電体層13を有する。この形態においても、誘電体層6および11の組成は同じであり、誘電体層8および13の組成は同じであり、記録層7および12の組成は同じである。
この形態において、誘電体層6および11に含まれる好ましい化合物は、図4を参照して説明した界面層47および54に含まれる好ましい化合物と同じである。図1のように、誘電体層6と反射層5との間、および誘電体層11と反射層10との間に別の誘電体層が位置しない場合には、誘電体層6および11は、好ましくは、前記式(1)、(2)、(6)、(7)または(8)で示される材料を含む。誘電体層6および誘電体層11の厚さは、それぞれ40nm〜80nmであることが好ましい。
誘電体層8および13に含まれる好ましい化合物は、図4を参照して説明した界面層49および56に含まれる好ましい化合物と同じである。図1のように、誘電体層8と記録層7との間、および誘電体層13と記録層12との間に別の誘電体層が位置しない場合には、誘電体層8および13は、好ましくは、上記式(1)、(2)、(3)、(4)または(5)で示される材料を含む。誘電体層8および誘電体層13の厚さは、25nm〜50nmであることが好ましい。
その他の要素は、先に図4に関連して説明したとおりであるから、ここではその詳細を省略する。尤も、それらの要素は、誘電体層を一層とすることによって、または高屈折率層を設けないことによって、各情報層の光学特性が図4に示すものとは異なることに留意して、適切な材料を選択して、適切な厚さとなるように形成する必要がある。
(試料1(比較))
図4に示す構成の記録媒体を製造した。基板40として、表面に、ピッチ(グルーブ−グルーブ間の距離)が約0.32μm、溝深さが20nmの凹凸の案内溝が形成された直径120mm、厚さ1.1mmのポリカーボネート基板を用意した。その上に第1の情報層41を形成した。具体的には、反射層45として厚さ100nmのAgを90at%以上含む合金の層を、誘電体層46として厚さ25nmのZnS−20mol%SiO2の層を、界面層47として厚さ2nmのCの層を、記録層48として厚さ12nmのGe43.5Sb7Te49.5の層を、界面層49として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層50として厚さ65nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。
続いて、第1の情報層41の上に紫外線硬化樹脂(アクリル系樹脂)を塗布し、その表面にピッチ(グルーブ−グルーブ間の距離)が約0.32μm、溝深さが20nmの凹凸の案内溝が形成された直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を貼り合わせた。紫外線を照射して、紫外線硬化性樹脂を硬化させた後、ポリカーボネート基板を剥離させて、表面に溝が転写された厚さ25μmの光学分離層を形成した。
続いて、光学分離層の上に、第2の情報層43を形成した。具体的には、高屈折率層51として厚さ24nmのTiO2の層を、反射層52として第1の情報層の反射層45と同じ組成を有する、厚さ10nmのAg合金の層を、誘電体層53として厚さ13nmのZrO2−35mol%SiO2―30mol%Cr2O3の層を、界面層54として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、記録層55として厚さ7nmのGe44Sb6Te50の層を、界面層56として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層57として厚さ35nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、スピンコート法により厚さ0.1mmのカバー層44をアクリル系樹脂を用いて形成した。
第1の情報層41および第2の情報層の各層は、図3に示す7つの成膜室を有する枚葉式スパッタリング装置を用いて形成した。2つの情報層の形成に使用したスパッタリング装置は1台であり、成膜室32で誘電体層50と57を、成膜室33で界面層49と56を、成膜室34で記録層48と55を、成膜室35で界面層47と54を、成膜室36で誘電体層46と53を、成膜室37で反射層45と52を、成膜室38で高屈折率層51を、スパッタリングにより形成した。
この試料においては、共通する成膜室で形成される、誘電体層46と53の組み合わせ、界面層47と54の組み合わせ、および記録層48と55の組み合わせにおいて、層の組成が互いに異なっていた。そのため、第1の情報層41を形成した後、これらの層を形成する成膜室のターゲット交換を行い、それから第2の情報層43を形成した。ターゲット交換に要した時間は30分であった。その後、30分間真空排気を行い、30分間プリスパッタリングを実施した。その後、ディスクのサンプリングを30分毎に行った。各情報層を構成する層と、各層の形成に使用した成膜室および電源、ならびに第2の情報層を形成する前のターゲットの交換の要否を、表1に示す。
(試料2(比較))
図4に示す構成に類似する構成の記録媒体を製造した。基板40として、試料1の製造に使用したものと同じポリカーボネート基板を用意した。その上に第1の情報層41を形成した。具体的には、反射層45として厚さ100nmのAgを90at%以上含む合金の層を、誘電体層46として厚さ25nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、記録層48として厚さ12nmのGe45Sb4Te51の層を、界面層49として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層50として厚さ65nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、第1の情報層41の上に、試料1の製造で採用した手順と同様の手順に従って、厚さ25μmの光学分離層42を形成した。
続いて、光学分離層の上に、第2の情報層43を形成した。具体的には、高屈折率層51としてTiO2から成る厚さ24nmの層を、反射層52として第1の情報層の反射層45と同じ組成を有する、厚さ10nmのAg合金の層を、誘電体層53として厚さ18nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、記録層55として厚さ7nmのGe46Sb3Te51の層を、界面層56として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層57として厚さ35nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、スピンコート法により、厚さ0.1mmのカバー層44を、アクリル系樹脂を用いて形成した。この試料は、試料1と異なり、界面層47および54を有しておらず、誘電体層46および53を、2つの情報層bおよびaの誘電体層2bおよび2aとして形成した。
第1の情報層および第2の情報層の各層は、試料1と同様、図3に示す7つの成膜室32〜38を有する枚葉式スパッタ装置を用いて形成した。この試料は界面層47および54を有しないため、成膜室53は使用しなかった。
この試料の製造においては、同じ成膜室で形成される、記録層48と55の組成が異なるため、第1の情報層41形成後、記録層を形成する成膜室のターゲット交換を行い、それから、第2の情報層43を形成した。ターゲット交換に要する時間は30分であった。その後、30分間真空排気を行い、30分間プリスパッタリングを実施した。その後、ディスクのサンプリングを30分おきに行った。各情報層を構成する層と、各層の形成に使用した成膜室および電源、ならびに第2の情報層を形成する前のターゲットの交換の要否を、表2に示す。
(試料3(比較))
図4に示す構成の記録媒体を製造した。基板40として、試料1の製造に使用したものと同じポリカーボネート基板を用意した。その上に第1の情報層41を形成した。具体的には、反射層45として厚さ80nmのAgを90at%以上含む合金の層を、誘電体層46として厚さ13nmのSnO2−15mol%SiCの層を、界面層47として厚さ5nmのZrO2−15mol%SiO2−70mol%Ga2O3の層を、記録層48として厚さ12nmのGe40Bi4Te51Sn5の層を、界面層49として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層50として厚さ60nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、第1の情報層41の上に、試料1の製造で採用した手順と同様の手順に従って、厚さ25μmの光学分離層42を形成した。
続いて、光学分離層の上に、第2の情報層43を形成した。具体的には、高屈折率層51として厚さ23nmのTiO2の層を、反射層52として第1の情報層の反射層45と同じ組成を有する、厚さ10nmのAg合金の層を、誘電体層53として厚さ6nmのZrO2−25mol%SiO2−50mol%Cr2O3の層を、界面層54として厚さ6nmのZrO2−25mol%SiO2−50mol%Ga2O3の層を、記録層55として厚さ7nmのGe45Bi4Te51の層を、界面層56として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層57として厚さ35nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、スピンコート法により、厚さ0.1mmのカバー層44を、アクリル系樹脂を用いて形成した。
第1の情報層および第2の情報層の各層は、試料1と同様、図3に示す7つの成膜室を有する枚葉式スパッタ装置を用いて形成した。この試料においては、共通する成膜室で形成される、誘電体層46と53の組み合わせ、界面層47と54の組み合わせ、および記録層48と55の組み合わせにおいて、層の組成が互いに異なっていた。そのため、第1の情報層41を形成した後、これらの層を形成する成膜室のターゲット交換を行い、それから第2の情報層43を形成した。ターゲット交換に要した時間は30分であった。その後、30分間真空排気を行い、30分間プリスパッタリングを実施した。その後、ディスクのサンプリングを30分毎に行った。各情報層を構成する層と、各層の形成に使用した成膜室および電源、ならびに第2の情報層を形成する前のターゲットの交換の要否を、表3に示す。
(試料4)
図4に示す構成に類似する構成の記録媒体を製造した。基板40として、試料1の製造に使用したものと同じポリカーボネート基板を用意した。その上に第1の情報層41を形成した。具体的には、反射層45として厚さ80nmのAgを90at%以上含む合金の層を、誘電体層46として厚さ23nmのZrO2−50mol%In2O3の層を、記録層48として厚さ12nmのGe43Bi4Te51In2の層を、界面層49として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層50として厚さ60nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、第1の情報層41の上に、試料1の製造で採用した手順と同様の手順に従って、厚さ25μmの光学分離層42を形成した。
続いて、光学分離層の上に、第2の情報層43を形成した。具体的には、高屈折率層51として厚さ23nmのTiO2の層を、反射層52として第1の情報層の反射層45と同じ組成を有する、厚さ10nmのAg合金の層を、誘電体層53として厚さ18nmのZrO2−50mol%In2O3の層を、記録層55として厚さ7nmのGe43Bi4Te51In2の層を、界面層56として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層57として厚さ40nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、スピンコート法により、厚さ0.1mmのカバー層44を、アクリル系樹脂を用いて形成した。この試料は、試料1と異なり、界面層47および54を有しておらず、誘電体層46および誘電体層53を、2つの情報層bおよびaの誘電体層2bおよび2aとして形成した。
第1の情報層および第2の情報層の各層は、試料1と同様、図3に示す7つの成膜室を有する枚葉式スパッタ装置を用いて形成した。第1の情報層を構成する層の組成は、高屈折率層51を除いて、第2の情報層の対応する層の組成と同じであるため、各成膜室においてターゲット交換の必要がなかった。そのため、第1の情報層の形成から第2の情報層の形成に装置を切り替える時には、高屈折率層51についてのみ、30分間のプリスパッタリングを実施した。その後、ディスクのサンプリングを30分毎に行った。各情報層を構成する層と、各層の形成に使用した成膜室および電源、ならびに第2の情報層を形成する前のターゲットの交換の要否を、表4に示す。
(試料5)
図4に示す構成に類似する構成の記録媒体を製造した。基板40として、試料1の製造に使用したものと同じポリカーボネート基板を用意した。その上に第1の情報層41を形成した。具体的には、反射層45として厚さ160nmのAlを90at%以上含む合金の層を、誘電体層46として厚さ23nmのZrO2−50mol%In2O3の層を、記録層48として厚さ12nmのGe43Bi4Te51In2の層を、界面層49として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層50として厚さ60nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、第1の情報層41の上に、試料1と同様の手順に従って、厚さ25μmの光学分離層42を形成した。
続いて、光学分離層の上に、第2の情報層43を形成した。具体的には、高屈折率層51として厚さ23nmのTiO2の層を、反射層52として厚さ10nmのAgを90at%以上含む合金の層を、誘電体層53として厚さ18nmのZrO2−50mol%In2O3の層を、記録層55として厚さ7nmのGe43Bi4Te51In2の層を、界面層56として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層57として厚さ40nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、スピンコート法により、厚さ0.1mmのカバー層44を、アクリル系樹脂を用いて形成した。この試料は、試料1と異なり、界面層47および54を有しておらず、誘電体層46および誘電体層53を、2つの情報層bおよびaの誘電体層2bおよび2aとして形成した。
第1の情報層および第2の情報層の各層は、試料1と同様、図3に示す7つの成膜室を有する枚葉式スパッタ装置を用いて形成した。この試料の第1の情報層を構成する層の組成は、高屈折率層51および反射層を除いて、第2の情報層の対応する層の組成と同じである。そのため、第1の情報層41を形成した後、ターゲット交換は反射層45および52を形成する成膜室37においてのみ必要であった。このターゲット交換に要する時間は30分であった。その後、30分間真空排気を行い、高屈折率層51と反射層52についてプリスパッタリングを30分間実施した。その後、ディスクのサンプリングを30分毎に行った。各情報層を構成する層と、各層の形成に使用した成膜室および電源、ならびに第2の情報層を形成する前のターゲットの交換の要否を、表5に示す。
これら5種類の記録媒体につき、プリスパッタリング後30分毎に取り出したサンプリングディスクの第2の情報層の記録パワーマージンを評価した。ここでは、スパッタリング装置を第1の情報層の形成から第2の情報層の形成へ切り替える時の時間的ロスを明確にするため、ターゲット交換後に形成する第2の情報層の特性が基準を満たすまでの時間を比較した。その判定基準は、記録パワーマージンであった。記録パワーマージンとは、10回オーバーライト後の再生ジッタが8.0%以下となる記録パワーのマージンを指し、そのマージンが15%p−p以上であれば基準を満たすと判断した。これらの媒体に信号を記録再生するのに用いたレーザ光の波長は405nmであり、そのNA(開口数)は0.85であった。また、信号方式は(1−7PP)変調方式であり、信号は、線速9.8m/sで基板のグルーブ部に記録した。そのように記録した信号を再生して、ジッタ測定を行った。
試料1〜5の媒体について、第1の情報層の形成から第2の情報層の形成へスパッタリング装置の運転モードを切替え、所定の成膜室のターゲットを交換した後の時間と記録パワーマージンの推移を、表6に示す。なお、表6に示す時間の開始点(ゼロ)は、第1の情報層の形成が終了したときである。試料4のディスクについては、ターゲット交換の必要がないため、第1の情報層の形成後直ちに、第2の情報層を連続して形成できる。しかし、2つの情報層において同じ組成を有する層は厚さが異なり、また、高屈折率層51を形成するため、念のため、第2の情報層の各層のスパッタリングを開始後、30分間プリスパッタリングを実施した。そのため、試料4については、0.5時間後から記録パワーマージンのデータが記載されている。その他のディスクについては、ターゲット交換、真空排気、およびプリスパッタリングにそれぞれ30分を要したため、1.5時間後から記録パワーマージンのデータを示している。
表6より、以下のことがわかる。
(1)第1の情報層(情報層b)の誘電体層4b、誘電体層2bおよび記録層bの組成が、第2の情報層(情報層a)の誘電体層4a、誘電体層2aおよび記録層aの組成とはそれぞれ異なり、3つのスパッタリングターゲットを交換して製造した試料1は、第1の情報層を形成した後、要求される基準を満たすまで時間を多く要した。具体的には、試料1の第1の情報層41を形成してから、1.5時間後から3.5時間後までは、記録パワーマージンが10%以下であり、基準を満たしていなかった。また、4時間後でも、試料1の記録パワーマージンは20%に達しなかった。
(2)2つの情報層の記録層の組成が互いに異なるためにターゲットを交換した試料2については、第1の情報層の形成終了後、1.5時間後から2.5時間後まではパワーマージンが10%以下であり、基準を満たしていなかった。
(3)第1の情報層(情報層b)の誘電体層4b、誘電体層2bおよび記録層bの組成が、第2の情報層(情報層a)の誘電体層4a、誘電体層2aおよび記録層aの組成とそれぞれ異なり、3つのスパッタリングターゲットを交換して製造した試料3については、第1の情報層41を形成してから、1.5時間後から2時間後までは、パワーマージンが10%以下であり、基準を満たしていなかった。
(4)ターゲット交換を行っていない試料4については、第1の情報層を形成してから、0.5時間後には、パワーマージンが20%以上となり、良好な特性が得られた。
(5)2つの情報層の反射層の組成が互いに異なるためにターゲット交換した試料5については、第1の情報層を形成してから、1.5時間後にはパワーマージンが15%以上となり、良好な特性が得られた。
すなわち、ターゲット交換を行わないことにより、スパッタリング装置の運転条件を変更した後(即ち、形成する情報層の種類を変更した後)の生産ロス時間が、最大で3時間から30分に短縮された。成膜タクト(1枚のディスクを成膜するために必要な時間)を10秒とすると、生産枚数ロスが最大900枚改善できたことになる。このように、ターゲット交換を行わずに、第1の情報層と第2の情報層が形成され得る記録媒体を構成することによって、生産ロスが大幅に改善される。
また、試料5のように反射層を形成する成膜室のターゲットのみを交換した場合、サンプリング直後からパワーマージンが15%となり、基準を満たした。これに対し、試料1は、パワーマージンが20%を満たすまでに多くの時間を要した。このことから、反射層を形成する成膜室でターゲットを交換する場合、それに伴う残留ガスによる記録媒体の特性への影響は、記録層および記録層に接する誘電体層(界面層)を形成する成膜室でターゲット交換する場合と比較して、小さく、生産効率のロスも小さいことがわかる。なお、いずれの試料についても、パワーマージンが15%以上となった後は、第1および第2の情報層は、Blu−ray規格を満足する特性を有していた。
試料4では、第1の情報層を構成する各層の組成を、第2の情報層の対応する各層の組成と同じにしたため、ターゲット交換が不要となり、それゆえ生産ロスが小さくなった。また、試料5は、第1の情報層の記録層とそれに隣接する誘電体層(界面層)の組成を、第2の情報層の対応する各層の組成と同じにしたため、ターゲット交換は必要であるものの、生産ロスを比較的小さくすることができた。これらの試料は、記録層に接する各誘電体層(誘電体層と記録層との間に界面層が存在する場合には、界面層)の組成を特定のものに限定したことによる。
(試料6(比較))
図4に示す構成の媒体を製造した。基板40として、試料1の製造に使用したものと同じポリカーボネート基板を用意した。その上に第1の情報層41を形成した。具体的には、反射層45として厚さ80nmのAgを90at%以上含む合金の層を、誘電体層46として厚さ20nmのZnS−20mol%SiO2の層を、界面層47して厚さ5nmのGeNの層を、記録層48として厚さ12nmのGe43Bi4Te51In2の層を、界面層49として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層50として厚さ60nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、第1の情報層41の上に、試料1の製造で採用した手順と同様の手順に従って、厚さ25μmの光学分離層42を形成した。
続いて、光学分離層の上に、第2の情報層43を形成した。具体的には、高屈折率層51としてTiO2から成る厚さ23nmの層を、反射層52として第1の情報層の反射層45と同じ組成を有する、厚さ10nmのAg合金の層を、誘電体層53として厚さ13nmのZnS−20mol%SiO2の層を、界面層54として厚さ5nmのGeNの層を、記録層55として厚さ7nmのGe43Bi4Te51In2の層を、界面層56として厚さ5nmのZrO2−50mol%Cr2O3の層を、誘電体層57として厚さ40nmのZnS−20mol%SiO2の層を、この順にマグネトロンスパッタ法で形成した。続いて、スピンコート法により、厚さ0.1mmのカバー層44を、アクリル系樹脂を用いて形成した。
第1の情報層および第2の情報層の各層は、試料1と同様、図3に示す7つの成膜室を有する枚葉式スパッタ装置を用いて形成した。第1の情報層を構成する層の組成は、高屈折率層51を除いて、第2の情報層の対応する層の組成と同じであるため、各成膜室においてターゲット交換の必要がなかった。そのため、第1の情報層の形成から第2の情報層の形成に装置を切り替える時には、高屈折率層51についてのみ、30分間のプリスパッタリングを実施した。その後、ディスクのサンプリングを30分毎に行った。各情報層を構成する層と、各層の形成に使用した成膜室および電源、ならびに第2の情報層を形成する前のターゲットの交換の要否を、表7に示す。
この試料6の初期特性およびライフ特性を、試料4のそれらと比較した。初期特性は、記録パワーマージンとボトムジッタにより判断した。記録パワーマージンは、10回オーバーライト後の再生ジッタが、第2の情報層については8.0%以下となる記録パワーのマージンを指し、第1の情報層については6.0%以下となる記録パワーマージンを指す。このマージンが15%p−p以上である媒体は、実用上、必要な初期特性を有しているといえる。ボトムジッタは、10回オーバーライト後の再生ジッタのボトム値とした。記録パワーマージンおよびボトムジッタを測定するために、波長405nmおよびNA(開口数)0.85のレーザ光を用いた。信号方式は(1−7PP)変調方式であり、信号は基板のグルーブ部に記録した。初期特性は、信号を線速4.9m/sおよび9.8m/sで記録した場合について、それぞれ測定した。
ライフ特性は、初期特性評価と同じ条件で、初期に記録しておいた信号の環境試験後(温度90℃、相対湿度20%、24時間)、読み出し特性(アーカイバル特性)、およびその信号の上に重ねて記録した信号の読み出し特性(アーカイバルオーバーライト特性)を、第1の情報層および第2の情報層それぞれについて、測定した。また、ライフ特性は、信号を線速4.9m/sおよび9.8m/sで記録した場合について、それぞれ評価した。アーカイバル特性およびアーカイバルオーバーライト特性はいずれも、初期ジッタに対して、ジッタ値の増加が2%以下である場合を○、2%を越える場合を×とした。結果を表8に示す。
試料4および試料6ともに、各線速において、初期特性は良好であった。しかし、試料6は、試料4と比較してライフ特性の点で劣っており、特に低線速でのアーカイバル特性、および高線速でのアーカイバルオーバーライト特性が試料4よりも劣っていた。これは、試料6において、レーザ光が入射される側から遠い側の誘電体層1(界面層47および54)に用いた材料がGeNであり、特定の元素の酸化物を含まないことによると考えられる。
以上の実施例において、本発明の媒体に相当する試料4および5の誘電体層1aおよび誘電体層1bは、ZrO2-50mol%Cr2O3から成る層として形成した。誘電体層1aおよび1bは、それ以外の組成であってよく、例えば、Al2O3、SiO2、Ta2O5、Mo―O、WO3、ZrO2、HfO2、Al―N、B―N、Ge―N、Si―N、Ti―N、Zr―N、DyF3、ErF3、EuF3、CeF3、BiF3、およびLaF3から選ばれる少なくとも1つの酸化物、窒化物またはフッ化物を含む組成を有してよい。具体的には、誘電体層1aおよび1bが、Ta2O5−50mol%SiO2、HfO2−30mol%SiO2−40mol%Cr2O3、AlN−50mol%SnO2、ZrO2−20mol%SiO2−30mol%Cr2O3−20mol%LaF3、またはCeF3−80mol%In2O3等を含む場合にも、同様の結果が得られた。
試料4および5の記録層aおよび記録層bは、いずれもGeBiTeIn材料から成る層として形成した。記録層aおよび記録層bは、GeおよびTeを主たる成分として含み(合わせて、好ましくは82at%以上)、さらに、Sn、Ag、Sb、Ga、Al、BiおよびInから選ばれる少なくとも1つの元素をさらに含む他の材料から成ってよい。具体的には、記録層aおよび記録層bが、Ge45Sn1Sb4Te50(at%)、またはGe43Bi4Te51Ga2(at%)等を含む場合にも、同様の結果が得られた。
試料4および5の誘電体層2aおよび2b(誘電体層46および53)は、いずれもZrO2−In2O3から成る層として形成した。誘電体層2aおよび2bは、これ以外の組成であってよく、SiO2、Cr2O3、Ga2O3、HfO2、ZrO2およびIn2O3から選ばれる少なくとも1つの酸化物を含む組成であってよい。具体的には、界面層2aおよび2bは、ZrO2−25mol%SiO2−50mol%In2O3、ZrO2−50mol%Ga2O3、ZrO2−30mol%In2O3−40mol%Cr2O3、またはHfO2−30mol%SiO2−40mol%Cr2O3等を含む場合にも、同様の結果が得られた。
試料4および5の反射層aおよび反射層bは、いずれもAg合金から成る層として形成した。反射層aおよびbは、これ以外の材料から成る層であってよい。具体的には、Ag、AlおよびAuから選ばれる少なくとも1つの元素を主成分(90at%以上)として含む材料として、Al―Cr合金、Ag−Ga−Cu合金、Ag−Pd−Cu合金を用いて、反射層aおよびbを形成した場合にも、同様の結果が得られた。
試料4および5の高屈折率層は、Tiの酸化物の層として形成した。高屈折率層は、これ以外の材料から成る層であってよい。具体的には、TiO2およびNb2O5から選ばれる少なくとも1つの酸化物を主成分として含む材料として、TiO2−10mol%SiO2、TiO2−50mol%Nb2O5を用いて、高屈折率層を形成した場合にも、同様の結果が得られた。また、記録媒体の構成によっては、この高屈折率層のない構成であってよく、そのような記録媒体についても、同様の結果が得られた。
試料4および5の2つの情報層は、界面層49および界面層56をそれぞれ有する層として形成した。これらの両方の界面層を形成せずに、誘電体層50および57を記録層に接する誘電体層1bおよび1aとして形成してよい。具体的には、誘電体層1bおよび1aが、上記界面層49および界面層56に関して列挙した、特定の酸化物、窒化物またはフッ化物を有する組成となるように形成した媒体についても、同様の結果が得られた。あるいは、界面層56のみを設け、これの組成を誘電体層50の組成と同じにしてよい。あるいは、界面層49のみを設け、これの組成を誘電体層57の組成と同じにしてよい。
試料4および試料5の2つの情報層は、界面層47および界面層54が設けられず、誘電体層46および誘電体層53を記録層に接する誘電体層2aおよび2bとして形成した。これらの界面層47および界面層54をそれぞれ誘電体層2aおよび2bとして形成して、誘電体層46および誘電体層53を誘電体層3aおよび3bとして形成する媒体についても、同様の結果が得られた。あるいは、界面層47のみを設け、これの組成を誘電体層53の組成と同じにしてもよい。あるいは、界面層54のみを設け、これの組成を誘電体層46の組成と同じにしてよもよい。
本発明の情報記録媒体およびその製造方法は、片面2層Blu-rayディスク(書き換え型、追記型)、片面4層ディスク(書き換え型、追記型)等の片面多層光ディスクの製造において、その生産性向上およびコストダウンの観点から有用である。さらに、本発明の情報記録媒体およびその製造方法は、片面2層DVD-RW、DVD+RW、およびDVD-RAMの製造においても有用である。
本発明の記録媒体(光ディスク)の一形態の構造を示す、部分断面図
本発明の記録媒体(光ディスク)の別の形態の構造を示す、部分断面図
本発明の記録媒体の製造装置の一例を模式的に示す平面図
本発明の記録媒体(光ディスク)のさらに別の構造を示す、部分断面図
符号の説明
1...情報層b、2...情報層a、3...レーザ光、4...基板、5...反射層b、6...誘電体層2b、7...記録層b、8...誘電体層1b、9...光学分離層、10...反射層a、11...誘電体層2a、12...記録層a、13...誘電体層1a、14...カバー層、20...基板、21...第1の情報層、22...第2の情報層、23...第3の情報層、24...光学分離層、25...光学分離層、26...光学分離層、27...第nの情報層、28...カバー層、29...レーザ光、30...ロードロック室、31...メインチャンバー、32...成膜室、33...成膜室、34...成膜室、35...成膜室、36...成膜室、37...成膜室、38...成膜室、40...基板、41...第1の情報層(情報層b)、42...光学分離層、43...第2の情報層(情報層a)、44...カバー層、45...反射層、46...誘電体層(誘電体層4b)、47...界面層(誘電体層2b)、48...記録層(記録層b)、49...界面層(誘電体層1b)、50...誘電体層(誘電体層3b)、51...高屈折率層、52...反射層、53...誘電体層(誘電体層4a)、54...界面層(誘電体層2a)、55...記録層(記録層a)、56...界面層(誘電体層1a)、57...誘電体層(誘電体層3a)、58...レーザ光。