本発明は、無線受信装置に関する。
従来より、位相雑音特性に優れた無線システムを提供するために様々な方策が採られている。この従来の位相雑音特性に優れた無線システムの一例が、特許文献1に記載されている。この無線システムでは、位相雑音特性を改善するために、図1に示すローカル・ノイズ・キャンセラを具備している。
このローカル・ノイズ・キャンセラの動作を、図1および図2を参照して説明する。図2は、図1に示すローカル・ノイズ・キャンセラの各構成部分の周波数特性を示す特性図である。
入力信号は、図2(A)に示すように、変調されたIF信号(BST−OFDM)とパイロット・キャリア(PILOT)とが多重化されており、入力位相雑音(太斜め線部分)が重畳されているものとする。
ここで、入力パイロット・キャリアの周波数をfPLT、入力信号の周波数をfsigとし、入力位相雑音をθ(t)とすると、fPLTおよびfsigには、入力位相雑音θ(t)が重畳されているので、次のように示される。
fPLT∠θ(t)
fsig∠θ(t)
そして、入力信号Aは、分配器50で分配され、一方がパイロットブランチ、他方がシグナルブランチへと出力される。パイロットブランチでは、分配器50で分配された一方の信号が、帯域通過フィルタ51で帯域制限されて、パイロット・キャリア成分のみが通過して抽出され、更にリミッタ増幅器52でリミッタ増幅される。
この時、帯域通過フィルタ51からの出力信号Bおよびリミッタ増幅器52からの出力信号Cの周波数特性は、図2(B・C)に示すように、IF信号成分は除去され、パイロット・キャリア成分とそれに重畳された入力位相雑音θ(t)のみになる。
この時、帯域通過フィルタ51では、遅延が発生し、この遅延時間をτBPF1とすると、入力パイロット・キャリア周波数fPLTには、τBPF1だけ遅延した入力位相雑音θ(t−τBPF1)が重畳されているので、次のように示される。
fPLT∠θ(t−τBPF1)
一方、シグナルブランチでは、局部発振器60から局部発振信号Dが出力される。ここで、局部発振器60から出力される局部発振信号Dの周波数特性は、図2(D)に示すように、局部発振周波数(LO)の信号と、それに重畳された系内局発位相雑音である。
ここで、系内の局部発振信号周波数をfLOとし、系内の局部発振信号位相雑音をφ(t)とすると、系内の局部発振信号周波数fLOには、系内の局部発振信号位相雑音φ(t)が重畳されているので、次のように示される。
fLO∠φ(t)
そして、シグナルブランチでは、分配器50から出力された信号が、周波数変換器61において、局部発振器60からの局部発振信号Dで周波数変換(乗算)されて信号Eが出力される。
ここで、周波数変換器61から出力される信号Eの周波数特性は、図2(E)に示すように、入力信号Aと局部発振信号Dとの和成分と差成分とが存在する。よって、信号Eに含まれる各信号成分と重畳される位相雑音との関係は、次のようになる。
fPLT−fLO∠θ(t)−φ(t)
fsig−fLO∠θ(t)−φ(t)
fPLT+fLO∠θ(t)+φ(t)
fsig+fLO∠θ(t)+φ(t)
そして、周波数変換された信号Eは、帯域通過フィルタ62で差成分のみが通過するように帯域制限されているので、帯域通過フィルタ62から信号Fとして出力され、信号Fの周波数特性は、図2(F)に示されるように、Eにおける和成分が除去されて差成分のみが存在する。
この時、帯域通過フィルタ62では、遅延が発生し、この遅延時間をτBPF2とすると、抽出される差成分に重畳される位相雑音には、τBPF2だけ遅延が発生し、信号Fに含 まれる各信号成分と重畳される位相雑音との関係は、次のようになる。
fPLT−fLO∠θ(t−τBPF2)−φ(t−τBPF2)
fsig−fLO∠θ(t−τBPF2)−φ(t−τBPF2)
そして、信号Fは、遅延補正器63で、パイロットブランチの帯域通過フィルタ51における遅延時間と等価になるように遅延が加えられ、信号Gとして出力される。
ここで、帯域通過フィルタ51の遅延時間τBPF1に対して、帯域通過フィルタ62の遅延時間をτBPF2とし、遅延補正器63における遅延時間をΔtとすると、
τBPF1=τBPF2+Δt
となるように、遅延補正器63は、信号Fに対して遅延Δtを加え、パイロットブランチとの遅延時間差を等価する。
その結果、信号Gの周波数特性は変化せず、図2(G)に示されるようになり、信号Gに含まれる各信号成分と重畳される位相雑音との関係は、位相雑音に遅延Δtが加わって次のようになる。
fPLT−fLO∠θ(t−τBPF2−Δt)−φ(t−τBPF2−Δt)
fsig−fLO∠θ(t−τBPF2−Δt)−φ(t−τBPF2−Δt)
そして、シグナルブランチの信号Gと、上記のリミッタ増幅器52から出力されるパイロットブランチの信号Cとが、周波数変換器70で周波数変換(乗算)されて、信号Hとして出力される。
ここで、周波数変換器70から出力される信号Hの周波数特性は、図2(H)に示すように、信号Gと信号Cとの和成分と差成分とが存在する。よって、信号Hに含まれる各信号成分と重畳される位相雑音との関係は、次のようになる。
fPLT−(fPLT−fLO)∠θ(t−τBPF1)−{θ(t−τBPF2−Δt)−φ(t−τBPF2−Δt)}
fPLT−(fsig−fLO)∠θ(t−τBPF1)−{θ(t−τBPF2−Δt)−φ(t−τBPF2−Δt)}
fPLT+(fPLT−fLO)∠θ(t−τBPF1)+{θ(t−τBPF2−Δt)−φ(t−τBPF2−Δt)}
fPLT+(fsig−fLO)∠θ(t−τBPF1)+{θ(t−τBPF2−Δt)−φ(t−τBPF2−Δt)}
ここで、上記のように遅延補正器63は、
τBPF1=τBPF2+Δt
となるように、遅延Δtを加えてシグナルブランチとパイロットブランチとの遅延時間差を等価するので、式を整理すると次のようになる。
fLO∠φ(t−τBPF2−Δt)
fLO−(fsig−fPLT)∠φ(t−τBPF2−Δt)
2×fPLT−fLO∠2×θ(t−τBPF1)−φ(t−τBPF2−Δt)
fPLT+(fsig−fLO)∠2×θ(t−τBPF1)−φ(t−τBPF2−Δt)
ここで、差成分に着目すると、出力信号成分の周波数は、入力信号の周波数に関係なく、系内の局部発振信号の周波数(fLO)であり、つまり一定である。また、パイロット・キャリアに着目した場合の信号のサイドバンドは、入出力で反転する。
また、出力信号の位相雑音は、入力された位相雑音θ(x)がキャンセルされ、代わりに系内の局部発振信号の位相雑音φ(x)となる。つまり、系内の局部発振信号の位相雑音φ(x)が十分小さければ、入力された信号の位相雑音は、十分軽減されて出力されることがわかる。
そこで、周波数変換器70で周波数変換された信号Hは、帯域通過フィルタ71で、差成分のみ、且つ信号成分のみが通過するように帯域制限されて信号Iが出力され、信号Iの周波数特性は、図2(I)に示されるように、Hにおける和成分及び差成分内のパイロット・キャリア成分が除去されて差成分の信号成分のみが存在し、信号Iに含まれる信号成分と重畳される位相雑音との関係は、次のようになる。
fLO−(fsig−fPLT)∠φ(t−τBPF2−Δt)
上記ローカル・ノイズ・キャンセラの周波数同期及び雑音除去の原理により、例えば入力信号に周波数偏差が生じていたとしても、局部発振器60が発生する高い周波数精度で高い安定度を持つ局部発振周波数に従う周波数の出力信号が得られるので、入力信号の周波数偏差が解消できる。
また、出力信号の位相雑音は、入力信号に重畳されていた位相雑音θ(x)がキャンセルされて、代わりに系内の局部発振信号の位相雑音φ(x)のみとなるので、系内の局部発振信号の位相雑音φ(x)が十分小さければ、入力された信号の位相雑音は、十分軽減されて出力される。
特開2002−152158号公報
しかしながら、従来の無線システムにおいては、局部発振器60で発生する位相雑音φ(x)はキャンセルされておらず、また、位相雑音は20*log(周波数の逓倍分)の割合で増加するので、局部発振器60の周波数が高い場合には、位相雑音φ(x)の影響により通信品質の劣化が生じる問題がある。
そこで本発明者らは、かかる問題を解決するために先の出願(特開2005−312021)において、中心周波数に信号が載らない変調信号と前記中心周波数と同一の中心周波数を持つパイロット信号とが多重された無線信号を送信する無線送信装置と、中心周波数に信号が載らない変調信号と前記中心周波数と同一の中心周波数を持つパイロット信号とが多重された無線信号を受信するアンテナと、アンテナにて受信した受信信号を2方向に分配する分配器と、分配器により分配された一方の信号からその中心周波数と同一の中心周波数を持つパイロット信号に対応する信号成分を抽出するバンドパスフィルタと、分配器により分配された他方の信号に遅延を与える遅延補正器と、バンドパスフィルタにより抽出された前記パイロット信号に対応する信号成分と遅延補正器にて遅延が付加された前記他方の信号とを周波数乗算し、かつ、直交復調を行う直交復調器とを具備する無線受信装置と、からなる通信システムを提案した。
しかしながら、上記従来の無線システムおよび上記発明者らが提案した通信システムにおいては、受信信号のスペクトルは、伝搬環境が静特性の時には大きなピークとして現れるが、伝搬環境が動特性のときにはフェージングの影響により、受信信号レベルが10〜30dB程度劣化する場合がある。この場合には、パイロット信号の受信レベルも劣化することとなり、最悪の場合パイロット信号を抽出することができず、受信特性が劣化する可能性がある。
本発明の目的は、受信特性を向上する無線受信装置を提供することである。
本発明の無線受信装置は、変調信号と、当該変調信号の周波数と異なる周波数を持つパイロット信号とを含む無線信号を受信するアンテナと、前記アンテナにて受信した受信信号を2方向に分配する分配手段と、前記分配手段により分配された一方の信号から前記パイロット信号に対応する信号成分を抽出する抽出手段と、前記分配手段により分配された他方の信号に遅延を与える遅延付加手段と、前記抽出手段からの信号成分と前記遅延付加手段にて遅延が付加された前記他方の信号とを周波数乗算し、かつ、直交復調を行う直交復調手段と、前記直交復調手段の前段に設けられ、前記抽出手段からの信号成分に当該信号成分と同じ周波数を持つ発振信号を合成する合成手段と、を具備する構成を採る。
本発明によれば、受信特性を向上する無線受信装置を提供することができる。
従来の無線システムが備えるローカル・ノイズ・キャンセラの構成を示すブロック図
図1のローカル・ノイズ・キャンセラの各構成部分の周波数特性を示す特性図
本発明の実施の形態1に係る無線システムの構成を示すブロック図
図3の直交復調器における入力レベルとIQ出力レベルとの関係を示す図
図3の無線システムにおける各信号の周波数特性を示す特性図
図3の直交復調器における復調特性の説明に供する図
図3の無線システムにおける各信号の周波数特性を示す特性図
図3の無線システムにおける誤り特性の説明に供する図
実施の形態2に係る無線システムの構成を示すブロック図
図9の無線システムにおける誤り特性の説明に供する図
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
(実施の形態1)
まず、本実施の形態に係る無線システムについて、図面を参照して説明する。
図3は、本実施の形態に係る無線システムの構成を示すブロック図である。図3に示すように、無線システム100は、無線送信装置101および無線受信装置151を備える。
この無線送信装置101は、ベースバンド信号を生成する送信ベースバンド部110と、そのベースバンド信号に所定の処理を施してRF信号として送信する送信部120とを有する。
この送信ベースバンド部110では、変調信号発生部111は、変調信号を発生し、パイロット信号合成部112に与える。なお、ここでは、変調信号をマルチキャリアのCDMAとして説明するが、周波数軸上の中心周波数部分に信号が載せられていないものであればどのような変調信号でも取り扱うことができ、例えば、OFDM信号等でもよい。
このパイロット信号合成部112は、変調信号発生部111から受け取る変調信号(M−CDMA)と、パイロット信号発生部113から受け取るパイロット信号(PILOT)とを合成し、送信部120へ与える。
なお、パイロット信号は、変調信号の周波数軸上の中心に位置するようにされており、パイロット信号の周波数をfPILOTとすると、fPILOT=0[Hz]とされている。
一方、送信部120では、局部発振部121は、基準信号発振器122から発せられる基準信号を用いて、局部発振信号を発生し直交変調器123に与える。
直交変調器123は、局部発振部121からの局部発振信号を用いて、上記送信ベースバンド部110のパイロット信号合成部112から出力された変調信号とパイロット信号との合成信号を直交変調して、乗算器124に与える。
乗算器124は、局部発振部125から受け取る局部発振信号を用いて、直交変調器123において直交変調された信号を無線信号へと変換する。この無線信号は、増幅器126にて増幅された後に、アンテナ127を介して送信される。なお、ここでは、局部発振部125は、基準信号発振器122から発せられる基準信号を用いて、局部発振信号を発生するものとし、局部発振部121および局部発振部125による局部発振信号の発生が同期している。
一方、無線受信装置151では、アンテナ152は、無線送信装置101から送信された無線信号を受信する。この受信された無線信号は、増幅器153で増幅された後、乗算器154に与えられる。
乗算器154は、局部発振部155により発せられた局部発振信号を用いて、増幅器153にて増幅された無線信号を周波数変換し、バンドパスフィルタ156へ与える。なお、局部発振部155は、基準信号発振器157により発せられる基準信号を用いて、局部発振信号を発振する。
バンドパスフィルタ156は、乗算器154にて周波数変換された信号から所望の周波数帯域の信号のみ抽出する。バンドパスフィルタ156により抽出された信号は、増幅器158にて増幅された後、分配器159に与えられる。
分配器159は、バンドパスフィルタ156から増幅器158を介して受け取る信号を、変調信号ブランチおよびパイロットブランチという2つのルートに分配する。
パイロットブランチでは、バンドパスフィルタ160は、分配器159にて分配された信号からパイロット信号成分のみを抽出する。この抽出されたパイロット信号成分は、増幅器161にて増幅された後、合成器165に入力され、局部発振部166から出力される局部発振信号と合成される。なお、局部発振部166は基準信号発振器157により発せられる基準信号を用いて、局部発振信号を出力する。
合成器165から出力されたパイロット信号成分と局部発振信号は、直交復調器163に入力される。
一方、変調信号ブランチでは、遅延補正器162は、パイロットブランチを通して直交復調器163へ到達する信号と同期するように、分配器159から受け取る信号を遅延させて直交復調器163に与える。
直交復調器163は、パイロットブランチおよび変調信号ブランチから受け取る信号を乗算した後、直交復調して受信ベースバンド部164に与える。
この直交復調器163のLo(ローカル)入力レベルに対するIQ出力レベルの関係を図4に示す。図4に示すように、Lo入力レベルが十分大きい領域Aの範囲では、直交復調器163は、IQ出力レベルが一定で復調可能となる。また、Lo入力レベルが領域Bの範囲になると直交復調器163のIQ出力レベルは、劣化する。そして、IQレベルが復調可能なレベル以下となる領域Cの範囲では、直交復調器163は、変調信号を復調することができない。なお、直交復調器163のローカルにはパイロット信号が入力されるので、本実施の形態においてLo入力レベルとはパイロット信号成分の電力レベルのことを指す。パイロット信号成分の電力レベルが十分大きいレベルであれば、Lo入力レベルは図4の領域Aとなり良好な受信特性が得られる。すなわち、理想的な電力レベルを持つパイロット信号成分であれば、良好な受信特性が得られる。しかしながらフェージングの影響によりパイロット信号成分の電力レベルが図4の領域Cの範囲になると復調することができず、受信特性が大幅に劣化することになる。
次いで、無線システム100の動作を、図3乃至図5を参照して説明する。
図5は、無線システム100における各信号の周波数特性を示す特性図である。なお、図5(A)〜(I)は、図3において対応するアルファベットが付加された部分の信号の周波数特性を示したものである。
送信ベースバンド部110から出力される変調信号とパイロット信号との合成信号Aは、図5(A)に示す周波数特性を持つ。なお、上述のとおり、ここでは、パイロット信号は、変調信号の周波数軸上の中心に位置するようにされており、パイロット信号の周波数をfPILOTとすると、fPILOT=0[Hz]とされている。
合成信号Aは、送信部120で無線信号に周波数変換され、アンテナ127から出力される。
アンテナ127から出力された無線信号に含まれる変調信号の無線周波数fRFと、パイロット信号の無線周波数fRF_PILOTは、以下のように表される。
fRF=fCDMA+fLo1+fLo2
fRF_PIPOT=fPILOT+fLo1+fLo2
なお、変調信号発生部111で発生された変調信号の周波数をfCDMA、局部発振部125にて発振された局部発振信号の周波数をfLo1、局部発振部121にて発振された局部発振信号の周波数をfLo2とする。
ここで、送信部120では、合成信号Aは、直交変調器123における局部発振部121の位相雑音および乗算器124における局部発振部125の位相雑音が重畳されて、無線信号として出力される。また、アンテナ127から出力されてからアンテナ152で受信される間の伝搬路においても、無線信号に位相雑音が重畳される。
よって、送信部120および伝搬路で重畳される位相雑音の総和をθ(t)とすると、アンテナ152で受信される無線信号Bは、図5(B)に示す周波数特性を持ち、次のように表される。
fRF∠θ(t)
fRF_PILOT∠θ(t)
アンテナ152で受信された無線信号Bは、増幅器153にて増幅され、乗算器154で周波数変換される。ここで、局部発振部155は、位相雑音φ(t)を有するローカル信号を発振するので、このローカル信号は、図5(C)に示すような周波数特性を持ち、次のように表される。
fLo1∠φ(t)
そのため、乗算器154で周波数変換された信号には、局部発振部155の位相雑音φ(t)が重畳され、バンドパスフィルタ156へ与えられる。
このバンドパスフィルタ156のバンド幅は、乗算器154で出力される差成分の周波数、すなわち、fRF−fLo1およびfRF_PILOT−fLo1が抽出されるように設定してある。そのため、増幅器158から出力される信号Dは、図5(D)に示す周波数特性を持ち、次のように表される。
fRF−fLo1∠θ(t)−φ(t)
fRF_PILOT−fLo1∠θ(t)−φ(t)
次いで、信号Dは、分配器159にて分配され、一方は変調信号ブランチ、他方はパイロットブランチへと出力される。
パイロットブランチでは、バンドパスフィルタ160はパイロット信号成分のみを抽出するように設定されているので、バンドパスフィルタ160は、分配された信号Dからパイロット信号成分のみを抽出して増幅器161へ出力する。このときパイロット信号成分は図5(E)に示す周波数特性を有する。
増幅器161から出力されたパイロット信号成分は、図5(F)に示す局部発振部166から出力された信号と合成器165にて合成され、直交復調器163のローカル部に入力される。ここで局部発振部166の出力周波数fLo2とパイロット信号成分の周波数とは同一とするので、fLo2=fRF_PILOT−fLo1となる。また、局部発振部166は、位相雑音ψ(t)を有する。また、局部発振部166の出力レベルを図4の領域Bの範囲のレベルにするものとする。
このとき、パイロット信号成分Gには、バンドパスフィルタ160、増幅器161、および合成器165を通過することで、遅延τ1が重畳される。そのため、合成器165の出力信号Gは、次のように表される。
fRF_PILOT−fLo1∠θ(t−τ1)−φ(t−τ1)
fRF_PILOT−fLo1∠ψ(t)
一方、変調信号ブランチでは、信号Dには、遅延補正器162において、Δt=τ1となるような遅延が重畳される。そのため、遅延補正器162から出力される信号Hは、図5(H)に示すような周波数特性を持ち、次式のように表すことができる。
fRF−fLo1∠θ(t−Δt)−φ(t−Δt)
そして、信号Hと信号Gとは、直交復調器163にて、乗算された後、直交復調される。そのため、直交復調器163から出力される信号Iは、図5(I)に示すような周波数特性を持ち、次式で表すことができる。
(fRF−fLo1)−(fRF_PILOT−fLo1)
∠θ(t−τ1)−φ(t−τ1)−{θ(t−Δt)−φ(t−Δt)}
(fRF−fLo1)−fLo2
∠θ(t−τ1)−φ(t−τ1)−ψ(t)
これをfPILOT=0HzおよびΔt=τ1という条件を用いて整理すると、次のようになる。
fCDMA∠0・・・(1)
fCDMA∠θ(t−τ1)−φ(t−τ1)−ψ(t)・・・(2)
すなわち、直交復調器163は、式(1)で表される復調信号と、式(2)で表される復調信号という異なる位相雑音を有する2つの信号を復調することができる。
ここでパイロット信号成分Eの電力レベルが、図4の領域Aの範囲であれば、式(1)で表される復調信号が支配的となるので、復調される信号は式(1)で表される復調信号となる。
fCDMA∠0
これは、送信部120、伝搬路および局部発振部155において重畳される位相雑音が完全にキャンセルされて、変調信号発生部111にて発生された変調信号が、無線受信装置151にて復調されていることを意味する。図6に示すコンスタレーションの概念図で示すと、図6(A)に示すように理想値又はその近傍のシンボルを得ることができる。すなわち、パイロット信号成分Eが理想的な電力レベルであれば、理想値又はその近傍のシンボルを得ることができる。
一方、パイロット信号Eのレベルが図4の領域Cの範囲であれば、式(2)で表される復調信号が支配的となるので、復調される信号は式(2)で表される復調信号となる。なお、パイロット信号成分の電力レベルが図4の領域Cのように低い場合の図5に対応する図を図7に示す。
これは、送信部120、伝搬路および局部発振部155、局部発振部166において位相雑音が重畳されて、変調信号発生部111にて発生された変調信号が、無線受信装置151にて復調されていることを意味しており、通常のスーパーヘテロダイン方式を用いた場合と同じ位相雑音を有する復調信号を得ることができる。また、この時のコンスタレーションは図6(C)となる。
また、パイロット信号Eのレベルが図4の領域Bの範囲であれば、異なる位相雑音を有する2つの復調信号が復調される。このときのコンスタレーションは、図6(B)となるが、誤差ベクトルの大きさは図6(C)よりも小さいことが分かる。
よって、直交復調器163のLo入力レベルに対する誤り率特性は、図8に示すようになる。すなわち、Lo入力レベルが大きいときには、Lo入力にパイロット信号成分のみを用いたときと同等の特性となり、一方、Lo入力レベルが小さいときには、局部発振部166の局部発振信号のみを用いたときと同等の特性となる。すなわち、一般に用いられるスーパーヘテロダイン方式と同等以上の受信特性を実現することができる。なお、図8においては、原点から縦軸方向に誤り率特性が悪化する方向にあり、原点から横軸方向にLo入力レベルは大きくなる。
このように実施の形態1によれば、無線受信装置151に、変調信号と当該変調信号の周波数と異なる周波数を持つパイロット信号とを含む無線信号を受信するアンテナ152と、アンテナ152にて受信した受信信号を2方向に分配する分配器159と、分配器159にて分配された一方の信号から前記パイロット信号に対応する信号成分を抽出するバンドパスフィルタ160と、分配器159にて分配された他方の信号に遅延を与える遅延補正器162と、バンドパスフィルタ160からの信号成分と遅延補正器162にて遅延が付加された前記他方の信号とを周波数乗算し且つ直交復調を行う直交復調器163と、直交復調器163の前段に設けられ、バンドパスフィルタ160からの信号成分に当該信号成分に相当する周波数を持つ局部発振信号を合成する合成器165とを設けた。
こうすることにより、パイロット信号成分とパイロット信号成分に相当する周波数を持つ局部発振信号とを合成した信号と、遅延が付加された受信信号とを周波数乗算し且つ直交復調するので、パイロット信号成分の電力レベルが復調に利用することの困難なレベルであってもパイロット信号成分に相当する周波数を持つ局部発振信号を用いることができるため、フェージングなどの影響によりパイロット信号レベルが劣化しても、受信特性の大幅な劣化を防ぐことができ、受信特性を向上することができる。
そして、アンテナ152にて受信する無線信号は、中心周波数に信号が載らない変調信号と前記中心周波数と同一の中心周波数を持つパイロット信号とを多重した多重信号である。
こうすることにより、受信する無線信号が中心周波数に信号が載らない変調信号と前記中心周波数と同一の中心周波数を持つパイロット信号とが多重されたものであるので、従来例に示すローカルノイズキャンセラのシグナルブランチにある局部発振部60および周波数変換器61が必要なくなるため、この局部発振部60にて発生する局部発振信号に含まれる位相雑音がシグナルブランチの信号(信号F)に載らない。そのため、系内で発生する位相誤差も完全に除去することができるので、位相雑音特性に優れた無線システムを実現することができる。
(実施の形態2)
実施の形態1においては、パイロットブランチにて抽出されたパイロット成分と、同じ周波数を持ちかつ抽出されたパイロット成分の電力レベルが低くても直交復調器163にて従来の受信方式と同等以上の受信特性を得ることができる電力レベルを持つ局部発振信号とを合成器165にて合成した後に直交復調器163へ入力した。これに対して、実施の形態2においては、抽出されたパイロット成分の電力レベルに応じて、局部発振信号を合成するかしないかを切り換えるようにする。
図9は、本実施の形態に係る無線システムの構成を示すブロック図である。図9に示すように無線システム200は、無線送信装置101および無線受信装置251を備える。この無線受信装置251は、方向性結合器252と、電力レベル演算部253と、スイッチ制御部254と、スイッチ255とを有する。
パイロットブランチのバンドパスフィルタ160にて抽出されたパイロット信号成分は、増幅器161にて増幅されたのち方向性結合器252を介して合成器165に入力される。
合成器165と局部発振部166との間には、スイッチ255が配設されており、このスイッチ255が閉じているときには、局部発振部166の局部発振信号が合成器165に入力される。なお、スイッチ255は、スイッチ制御部254の制御により開閉する。
電力レベル演算部253は、方向性結合器252からのパイロット信号成分を入力し、その電力レベルを算出し、スイッチ制御部254に出力する。
スイッチ制御部254は、電力レベル演算部253にて算出されたパイロット信号成分の電力レベルに応じて、スイッチ255の開閉を制御する。
次いで、無線システム200の動作について説明する。なお実施の形態1と同じ動作をする部分については、説明を省略する。
アンテナ152で受信された無線信号Bは、増幅器153にて増幅され、乗算器154で周波数変換される。ここで、局部発振部155は、位相雑音φ(t)を有するローカル信号を発振するので、このローカル信号は、図5(C)に示すような周波数特性を持ち、次のように表される。
fLo1∠φ(t)
そのため、乗算器154で周波数変換された信号には、局部発振部155の位相雑音φ(t)が重畳され、バンドパスフィルタ156へ与えられる。
このバンドパスフィルタ156のバンド幅は、乗算器154で出力される差成分の周波数、すなわち、fRF−fLo1およびfRF_PILOT−fLo1が抽出されるように設定してある。そのため、増幅器158から出力される信号Dは、図5(D)に示す周波数特性を持ち、次のように表される。
fRF−fLo1∠θ(t)−φ(t)
fRF_PILOT−fLo1∠θ(t)−φ(t)
次いで、信号Dは、分配器159にて分配され、一方は変調信号ブランチ、他方はパイロットブランチへと出力される。
パイロットブランチでは、バンドパスフィルタ160はパイロット信号成分のみを抽出するように設定されているので、バンドパスフィルタ160は、分配された信号Dからパイロット信号成分のみを抽出して増幅器161へ出力する。増幅器161の出力は方向性結合器252を介して電力レベル演算部253に入力され、電力レベル演算部253にてパイロット信号成分の電力レベルが算出される。このパイロット信号成分の電力レベルにより、以下の動作が異なる。
1)パイロット信号の電力レベルが図4の領域A、Bに相当する場合
パイロット信号の電力レベルが図4の領域AおよびBに相当する場合には、スイッチ制御部254は、スイッチ255が開くように制御する。なお、このとき局部発振部166の電源もOFFにする制御を行ってもよく、これにより省電力化を図ることができる。
このときパイロット信号成分は図5(E)に示す周波数特性を有する。方向性結合器252から出力されたパイロット信号成分は、合成器165を介して直交復調器163のローカル部に入力される。ここで信号Gの周波数特性は、図5(E)と同じである。
このとき、パイロット信号成分Eには、バンドパスフィルタ160、増幅器161、方向性結合器252、および合成器165を通過することで、遅延τ2が重畳される。そのため、合成器165の出力信号Gは、次のように表される。
fRF_PILOT−fLo1∠θ(t−τ2)−φ(t−τ2)
一方、変調信号ブランチでは、信号Dには、遅延補正器162において、Δt=τ2となるような遅延が重畳される。そのため、遅延補正器162から出力される信号Hは、図5(H)に示すような周波数特性を持ち、次式のように表すことができる。
fRF−fLo1∠θ(t−Δt)−φ(t−Δt)
そして、信号Gと信号Fとは、直交復調器163にて乗算された後、直交復調される。そのため、直交復調器163から出力される信号Iは、図5(I)に示すような周波数特性を持ち、次式で表すことができる。
(fRF−fLo1)−(fRF_PILOT−fLo1)
∠θ(t−τ1)−φ(t−τ1)−{θ(t−Δt)−φ(t−Δt)}
(fRF−fLo1)−fLo2
これをfPILOT=0HzおよびΔt=τ2という条件を用いて整理すると、次のようになる。
fCDMA∠0
これは、送信部120、伝搬路および局部発振部155において重畳される位相雑音が完全にキャンセルされて、変調信号発生部111にて発生された変調信号が、無線受信装置151にて復調されていることを意味する。図6に示すコンスタレーションの概念図で示すと、図6(A)に示すように理想値のシンボルを得ることができる。
2)パイロット信号の電力レベルが図4の領域Cに相当する場合
パイロット信号の電力レベルが図4の領域Cに相当する場合には、スイッチ制御部254は、スイッチ255を閉じる制御を行う。なお、このとき増幅器161の電源をOFFにする制御も同時に行ってよく、これにより省電力化を図ることができる。
このときパイロット信号成分は図7(E)に示す周波数特性を有する。方向性結合器252から出力されたパイロット信号成分は、図7(F)に示す局部発振部166から出力された信号と合成器165にて合成され、直交復調器163のローカル部に入力される。ここで信号Gの周波数特性は、図7(F)と同じとなる。よって、合成器165の出力信号Gは、次のように表される。
fRF_PILOT−fLo1∠ψ(t)
一方、変調信号ブランチでは、信号Dには、遅延補正器162において、Δt=τ3となるような任意の遅延が重畳される。そのため、遅延補正器162から出力される信号Hは、図7(H)に示すような周波数特性を持ち、次式のように表すことができる。
fRF−fLo1∠θ(t−Δt)−φ(t−Δt)
そして、信号Gと信号Hとは、直交復調器163にて乗算された後、直交復調される。そのため、直交復調器163から出力される信号Gは、図7(I)に示すような周波数特性を持ち、次式で表すことができる。
(fRF−fLo1)−fLo2
∠θ(t−τ3)−φ(t−τ3)−ψ(t)
これをfPILOT=0HzおよびΔt=τ3という条件を用いて整理すると、次のようになる。
fCDMA∠θ(t−τ3)−φ(t−τ3)−ψ(t)
これは、送信部120、伝搬路、局部発振部155、および局部発振部166において重畳される位相雑音が重畳されて、変調信号発生部111にて発生された変調信号が、無線受信装置251にて復調されていることを意味しており、スーパーヘテロダイン方式を用いた場合と同じ位相雑音を有する復調信号を得ることができる。またこの時のコンスタレーションは図6(C)となる。
以上から、直交復調器163のLo入力レベルに対する誤り率特性は図10のようになり、Lo入力レベルが大きいときにはLo入力にパイロット信号を用いたときと同等の特性となり、図8に示した実施の形態1の場合よりもさらに受信特性を改善することができる。
このように実施の形態2によれば、無線受信装置251に、変調信号と当該変調信号の周波数と異なる周波数を持つパイロット信号とを含む無線信号を受信するアンテナ152と、アンテナ152にて受信した受信信号を2方向に分配する分配器159と、分配器159にて分配された一方の信号から前記パイロット信号に対応する信号成分を抽出するバンドパスフィルタ160と、分配器159にて分配された他方の信号に遅延を与える遅延補正器162と、バンドパスフィルタ160からの信号成分と遅延補正器162にて遅延が付加された前記他方の信号とを周波数乗算し且つ直交復調を行う直交復調器163と、直交復調器163の前段に設けられ、バンドパスフィルタ160からの信号成分に当該信号成分に相当する周波数を持つ局部発振信号を合成する合成器165とを設け、さらに、バンドパスフィルタ160からの信号成分の電力レベルを算出する電力レベル演算部253と、前記算出した電力レベルに応じて、前記局部発振信号の合成器165への入力を停止するスイッチ制御部254と、を設けた。
こうすることにより、パイロット信号成分とパイロット信号成分に相当する周波数を持つ局部発振信号とをパイロット信号成分の電力レベルに応じて合成した信号と、遅延が付加された受信信号とを周波数乗算し且つ直交復調するので、パイロット信号成分の電力レベルが復調に利用することの困難なレベルであってもパイロット信号成分に相当する周波数を持つ局部発振信号を用いることができるため、フェージングなどの影響によりパイロット信号レベルが劣化しても、受信特性の大幅な劣化を防ぐことができ、受信特性を向上することができる。
本明細書は、2005年7月11日出願の特願2005−202030に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
本発明の無線受信装置は、受信特性を向上するものとして有用である。
本発明は、無線受信装置に関する。
従来より、位相雑音特性に優れた無線システムを提供するために様々な方策が採られている。この従来の位相雑音特性に優れた無線システムの一例が、特許文献1に記載されている。この無線システムでは、位相雑音特性を改善するために、図1に示すローカル・ノイズ・キャンセラを具備している。
このローカル・ノイズ・キャンセラの動作を、図1および図2を参照して説明する。図2は、図1に示すローカル・ノイズ・キャンセラの各構成部分の周波数特性を示す特性図である。
入力信号は、図2(A)に示すように、変調されたIF信号(BST−OFDM)とパイロット・キャリア(PILOT)とが多重化されており、入力位相雑音(太斜め線部分)が重畳されているものとする。
ここで、入力パイロット・キャリアの周波数をfPLT、入力信号の周波数をfsigとし、入力位相雑音をθ(t)とすると、fPLTおよびfsigには、入力位相雑音θ(t)が重畳されているので、次のように示される。
fPLT∠θ(t)
fsig∠θ(t)
そして、入力信号Aは、分配器50で分配され、一方がパイロットブランチ、他方がシグナルブランチへと出力される。パイロットブランチでは、分配器50で分配された一方の信号が、帯域通過フィルタ51で帯域制限されて、パイロット・キャリア成分のみが通過して抽出され、更にリミッタ増幅器52でリミッタ増幅される。
この時、帯域通過フィルタ51からの出力信号Bおよびリミッタ増幅器52からの出力信号Cの周波数特性は、図2(B・C)に示すように、IF信号成分は除去され、パイロット・キャリア成分とそれに重畳された入力位相雑音θ(t)のみになる。
この時、帯域通過フィルタ51では、遅延が発生し、この遅延時間をτBPF1とすると、入力パイロット・キャリア周波数fPLTには、τBPF1だけ遅延した入力位相雑音θ(t−τBPF1)が重畳されているので、次のように示される。
fPLT∠θ(t−τBPF1)
一方、シグナルブランチでは、局部発振器60から局部発振信号Dが出力される。ここで、局部発振器60から出力される局部発振信号Dの周波数特性は、図2(D)に示すように、局部発振周波数(LO)の信号と、それに重畳された系内局発位相雑音である。
ここで、系内の局部発振信号周波数をfLOとし、系内の局部発振信号位相雑音をφ(t)とすると、系内の局部発振信号周波数fLOには、系内の局部発振信号位相雑音φ(t)が重畳されているので、次のように示される。
fLO∠φ(t)
そして、シグナルブランチでは、分配器50から出力された信号が、周波数変換器61
において、局部発振器60からの局部発振信号Dで周波数変換(乗算)されて信号Eが出力される。
ここで、周波数変換器61から出力される信号Eの周波数特性は、図2(E)に示すように、入力信号Aと局部発振信号Dとの和成分と差成分とが存在する。よって、信号Eに含まれる各信号成分と重畳される位相雑音との関係は、次のようになる。
fPLT−fLO∠θ(t)−φ(t)
fsig−fLO∠θ(t)−φ(t)
fPLT+fLO∠θ(t)+φ(t)
fsig+fLO∠θ(t)+φ(t)
そして、周波数変換された信号Eは、帯域通過フィルタ62で差成分のみが通過するように帯域制限されているので、帯域通過フィルタ62から信号Fとして出力され、信号Fの周波数特性は、図2(F)に示されるように、Eにおける和成分が除去されて差成分のみが存在する。
この時、帯域通過フィルタ62では、遅延が発生し、この遅延時間をτBPF2とすると、抽出される差成分に重畳される位相雑音には、τBPF2だけ遅延が発生し、信号Fに含まれる各信号成分と重畳される位相雑音との関係は、次のようになる。
fPLT−fLO∠θ(t−τBPF2)−φ(t−τBPF2)
fsig−fLO∠θ(t−τBPF2)−φ(t−τBPF2)
そして、信号Fは、遅延補正器63で、パイロットブランチの帯域通過フィルタ51における遅延時間と等価になるように遅延が加えられ、信号Gとして出力される。
ここで、帯域通過フィルタ51の遅延時間τBPF1に対して、帯域通過フィルタ62の遅延時間をτBPF2とし、遅延補正器63における遅延時間をΔtとすると、
τBPF1=τBPF2+Δt
となるように、遅延補正器63は、信号Fに対して遅延Δtを加え、パイロットブランチとの遅延時間差を等価する。
その結果、信号Gの周波数特性は変化せず、図2(G)に示されるようになり、信号Gに含まれる各信号成分と重畳される位相雑音との関係は、位相雑音に遅延Δtが加わって次のようになる。
fPLT−fLO∠θ(t−τBPF2−Δt)−φ(t−τBPF2−Δt)
fsig−fLO∠θ(t−τBPF2−Δt)−φ(t−τBPF2−Δt)
そして、シグナルブランチの信号Gと、上記のリミッタ増幅器52から出力されるパイロットブランチの信号Cとが、周波数変換器70で周波数変換(乗算)されて、信号Hとして出力される。
ここで、周波数変換器70から出力される信号Hの周波数特性は、図2(H)に示すように、信号Gと信号Cとの和成分と差成分とが存在する。よって、信号Hに含まれる各信号成分と重畳される位相雑音との関係は、次のようになる。
fPLT-(fPLT−fLO)∠θ(t-τBPF1)-{θ(t-τBPF2-Δt)-φ(t-τBPF2-Δt)}
fPLT-(fsig−fLO)∠θ(t-τBPF1)-{θ(t-τBPF2-Δt)-φ(t-τBPF2-Δt)}
fPLT+(fPLT−fLO)∠θ(t-τBPF1)+{θ(t-τBPF2-Δt)-φ(t-τBPF2-Δt)}
fPLT+(fsig−fLO)∠θ(t-τBPF1)+{θ(t-τBPF2-Δt)-φ(t-τBPF2-Δt)}
ここで、上記のように遅延補正器63は、
τBPF1=τBPF2+Δt
となるように、遅延Δtを加えてシグナルブランチとパイロットブランチとの遅延時間差を等価するので、式を整理すると次のようになる。
fLO∠φ(t−τBPF2−Δt)
fLO−(fsig−fPLT)∠φ(t−τBPF2−Δt)
2×fPLT−fLO∠2×θ(t−τBPF1)−φ(t−τBPF2−Δt)
fPLT+(fsig−fLO)∠2×θ(t−τBPF1)−φ(t−τBPF2−Δt)
ここで、差成分に着目すると、出力信号成分の周波数は、入力信号の周波数に関係なく、系内の局部発振信号の周波数(fLO)であり、つまり一定である。また、パイロット・キャリアに着目した場合の信号のサイドバンドは、入出力で反転する。
また、出力信号の位相雑音は、入力された位相雑音θ(x)がキャンセルされ、代わりに系内の局部発振信号の位相雑音φ(x)となる。つまり、系内の局部発振信号の位相雑音φ(x)が十分小さければ、入力された信号の位相雑音は、十分軽減されて出力されることがわかる。
そこで、周波数変換器70で周波数変換された信号Hは、帯域通過フィルタ71で、差成分のみ、且つ信号成分のみが通過するように帯域制限されて信号Iが出力され、信号Iの周波数特性は、図2(I)に示されるように、Hにおける和成分及び差成分内のパイロット・キャリア成分が除去されて差成分の信号成分のみが存在し、信号Iに含まれる信号成分と重畳される位相雑音との関係は、次のようになる。
fLO−(fsig−fPLT)∠φ(t−τBPF2−Δt)
上記ローカル・ノイズ・キャンセラの周波数同期及び雑音除去の原理により、例えば入力信号に周波数偏差が生じていたとしても、局部発振器60が発生する高い周波数精度で高い安定度を持つ局部発振周波数に従う周波数の出力信号が得られるので、入力信号の周波数偏差が解消できる。
また、出力信号の位相雑音は、入力信号に重畳されていた位相雑音θ(x)がキャンセルされて、代わりに系内の局部発振信号の位相雑音φ(x)のみとなるので、系内の局部発振信号の位相雑音φ(x)が十分小さければ、入力された信号の位相雑音は、十分軽減されて出力される。
特開2002−152158号公報
しかしながら、従来の無線システムにおいては、局部発振器60で発生する位相雑音φ(x)はキャンセルされておらず、また、位相雑音は20*log(周波数の逓倍分)の割合で増加するので、局部発振器60の周波数が高い場合には、位相雑音φ(x)の影響により通信品質の劣化が生じる問題がある。
そこで本発明者らは、かかる問題を解決するために先の出願(特開2005−312021)において、中心周波数に信号が載らない変調信号と前記中心周波数と同一の中心周波数を持つパイロット信号とが多重された無線信号を送信する無線送信装置と、中心周波数に信号が載らない変調信号と前記中心周波数と同一の中心周波数を持つパイロット信号とが多重された無線信号を受信するアンテナと、アンテナにて受信した受信信号を2方向に分配する分配器と、分配器により分配された一方の信号からその中心周波数と同一の中心周波数を持つパイロット信号に対応する信号成分を抽出するバンドパスフィルタと、分配器により分配された他方の信号に遅延を与える遅延補正器と、バンドパスフィルタによ
り抽出された前記パイロット信号に対応する信号成分と遅延補正器にて遅延が付加された前記他方の信号とを周波数乗算し、かつ、直交復調を行う直交復調器とを具備する無線受信装置と、からなる通信システムを提案した。
しかしながら、上記従来の無線システムおよび上記発明者らが提案した通信システムにおいては、受信信号のスペクトルは、伝搬環境が静特性の時には大きなピークとして現れるが、伝搬環境が動特性のときにはフェージングの影響により、受信信号レベルが10〜30dB程度劣化する場合がある。この場合には、パイロット信号の受信レベルも劣化することとなり、最悪の場合パイロット信号を抽出することができず、受信特性が劣化する可能性がある。
本発明の目的は、受信特性を向上する無線受信装置を提供することである。
本発明の無線受信装置は、変調信号と、当該変調信号の周波数と異なる周波数を持つパイロット信号とを含む無線信号を受信するアンテナと、前記アンテナにて受信した受信信号を2方向に分配する分配手段と、前記分配手段により分配された一方の信号から前記パイロット信号に対応する信号成分を抽出する抽出手段と、前記分配手段により分配された他方の信号に遅延を与える遅延付加手段と、前記抽出手段からの信号成分と前記遅延付加手段にて遅延が付加された前記他方の信号とを周波数乗算し、かつ、直交復調を行う直交復調手段と、前記直交復調手段の前段に設けられ、前記抽出手段からの信号成分に当該信号成分と同じ周波数を持つ発振信号を合成する合成手段と、を具備する構成を採る。
本発明によれば、受信特性を向上する無線受信装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
(実施の形態1)
まず、本実施の形態に係る無線システムについて、図面を参照して説明する。
図3は、本実施の形態に係る無線システムの構成を示すブロック図である。図3に示すように、無線システム100は、無線送信装置101および無線受信装置151を備える。
この無線送信装置101は、ベースバンド信号を生成する送信ベースバンド部110と、そのベースバンド信号に所定の処理を施してRF信号として送信する送信部120とを有する。
この送信ベースバンド部110では、変調信号発生部111は、変調信号を発生し、パイロット信号合成部112に与える。なお、ここでは、変調信号をマルチキャリアのCDMAとして説明するが、周波数軸上の中心周波数部分に信号が載せられていないものであればどのような変調信号でも取り扱うことができ、例えば、OFDM信号等でもよい。
このパイロット信号合成部112は、変調信号発生部111から受け取る変調信号(M−CDMA)と、パイロット信号発生部113から受け取るパイロット信号(PILOT)とを合成し、送信部120へ与える。
なお、パイロット信号は、変調信号の周波数軸上の中心に位置するようにされており、パイロット信号の周波数をfPILOTとすると、fPILOT=0[Hz]とされている。
一方、送信部120では、局部発振部121は、基準信号発振器122から発せられる基準信号を用いて、局部発振信号を発生し直交変調器123に与える。
直交変調器123は、局部発振部121からの局部発振信号を用いて、上記送信ベースバンド部110のパイロット信号合成部112から出力された変調信号とパイロット信号との合成信号を直交変調して、乗算器124に与える。
乗算器124は、局部発振部125から受け取る局部発振信号を用いて、直交変調器123において直交変調された信号を無線信号へと変換する。この無線信号は、増幅器126にて増幅された後に、アンテナ127を介して送信される。なお、ここでは、局部発振部125は、基準信号発振器122から発せられる基準信号を用いて、局部発振信号を発生するものとし、局部発振部121および局部発振部125による局部発振信号の発生が同期している。
一方、無線受信装置151では、アンテナ152は、無線送信装置101から送信された無線信号を受信する。この受信された無線信号は、増幅器153で増幅された後、乗算器154に与えられる。
乗算器154は、局部発振部155により発せられた局部発振信号を用いて、増幅器153にて増幅された無線信号を周波数変換し、バンドパスフィルタ156へ与える。なお、局部発振部155は、基準信号発振器157により発せられる基準信号を用いて、局部発振信号を発振する。
バンドパスフィルタ156は、乗算器154にて周波数変換された信号から所望の周波数帯域の信号のみ抽出する。バンドパスフィルタ156により抽出された信号は、増幅器158にて増幅された後、分配器159に与えられる。
分配器159は、バンドパスフィルタ156から増幅器158を介して受け取る信号を、変調信号ブランチおよびパイロットブランチという2つのルートに分配する。
パイロットブランチでは、バンドパスフィルタ160は、分配器159にて分配された信号からパイロット信号成分のみを抽出する。この抽出されたパイロット信号成分は、増
幅器161にて増幅された後、合成器165に入力され、局部発振部166から出力される局部発振信号と合成される。なお、局部発振部166は基準信号発振器157により発せられる基準信号を用いて、局部発振信号を出力する。
合成器165から出力されたパイロット信号成分と局部発振信号は、直交復調器163に入力される。
一方、変調信号ブランチでは、遅延補正器162は、パイロットブランチを通して直交復調器163へ到達する信号と同期するように、分配器159から受け取る信号を遅延させて直交復調器163に与える。
直交復調器163は、パイロットブランチおよび変調信号ブランチから受け取る信号を乗算した後、直交復調して受信ベースバンド部164に与える。
この直交復調器163のLo(ローカル)入力レベルに対するIQ出力レベルの関係を図4に示す。図4に示すように、Lo入力レベルが十分大きい領域Aの範囲では、直交復調器163は、IQ出力レベルが一定で復調可能となる。また、Lo入力レベルが領域Bの範囲になると直交復調器163のIQ出力レベルは、劣化する。そして、IQレベルが復調可能なレベル以下となる領域Cの範囲では、直交復調器163は、変調信号を復調することができない。なお、直交復調器163のローカルにはパイロット信号が入力されるので、本実施の形態においてLo入力レベルとはパイロット信号成分の電力レベルのことを指す。パイロット信号成分の電力レベルが十分大きいレベルであれば、Lo入力レベルは図4の領域Aとなり良好な受信特性が得られる。すなわち、理想的な電力レベルを持つパイロット信号成分であれば、良好な受信特性が得られる。しかしながらフェージングの影響によりパイロット信号成分の電力レベルが図4の領域Cの範囲になると復調することができず、受信特性が大幅に劣化することになる。
次いで、無線システム100の動作を、図3乃至図5を参照して説明する。
図5は、無線システム100における各信号の周波数特性を示す特性図である。なお、図5(A)〜(I)は、図3において対応するアルファベットが付加された部分の信号の周波数特性を示したものである。
送信ベースバンド部110から出力される変調信号とパイロット信号との合成信号Aは、図5(A)に示す周波数特性を持つ。なお、上述のとおり、ここでは、パイロット信号は、変調信号の周波数軸上の中心に位置するようにされており、パイロット信号の周波数をfPILOTとすると、fPILOT=0[Hz]とされている。
合成信号Aは、送信部120で無線信号に周波数変換され、アンテナ127から出力される。
アンテナ127から出力された無線信号に含まれる変調信号の無線周波数fRFと、パイロット信号の無線周波数fRF_PILOTは、以下のように表される。
fRF=fCDMA+fLo1+fLo2
fRF_PIPOT=fPILOT+fLo1+fLo2
なお、変調信号発生部111で発生された変調信号の周波数をfCDMA、局部発振部125にて発振された局部発振信号の周波数をfLo1、局部発振部121にて発振された局部発振信号の周波数をfLo2とする。
ここで、送信部120では、合成信号Aは、直交変調器123における局部発振部121の位相雑音および乗算器124における局部発振部125の位相雑音が重畳されて、無線信号として出力される。また、アンテナ127から出力されてからアンテナ152で受信される間の伝搬路においても、無線信号に位相雑音が重畳される。
よって、送信部120および伝搬路で重畳される位相雑音の総和をθ(t)とすると、アンテナ152で受信される無線信号Bは、図5(B)に示す周波数特性を持ち、次のように表される。
fRF∠θ(t)
fRF_PILOT∠θ(t)
アンテナ152で受信された無線信号Bは、増幅器153にて増幅され、乗算器154で周波数変換される。ここで、局部発振部155は、位相雑音φ(t)を有するローカル信号を発振するので、このローカル信号は、図5(C)に示すような周波数特性を持ち、次のように表される。
fLo1∠φ(t)
そのため、乗算器154で周波数変換された信号には、局部発振部155の位相雑音φ(t)が重畳され、バンドパスフィルタ156へ与えられる。
このバンドパスフィルタ156のバンド幅は、乗算器154で出力される差成分の周波数、すなわち、fRF−fLo1およびfRF_PILOT−fLo1が抽出されるように設定してある。そのため、増幅器158から出力される信号Dは、図5(D)に示す周波数特性を持ち、次のように表される。
fRF−fLo1∠θ(t)−φ(t)
fRF_PILOT−fLo1∠θ(t)−φ(t)
次いで、信号Dは、分配器159にて分配され、一方は変調信号ブランチ、他方はパイロットブランチへと出力される。
パイロットブランチでは、バンドパスフィルタ160はパイロット信号成分のみを抽出するように設定されているので、バンドパスフィルタ160は、分配された信号Dからパイロット信号成分のみを抽出して増幅器161へ出力する。このときパイロット信号成分は図5(E)に示す周波数特性を有する。
増幅器161から出力されたパイロット信号成分は、図5(F)に示す 局部発振部166から出力された信号と合成器165にて合成され、直交復調器163のローカル部に入力される。ここで局部発振部166の出力周波数fLo2とパイロット信号成分の周波数とは同一とするので、fLo2=fRF_PILOT−fLo1となる。また、局部発振部166は、位相雑音ψ(t)を有する。また、局部発振部166の出力レベルを図4の領域Bの範囲のレベルにするものとする。
このとき、パイロット信号成分Gには、バンドパスフィルタ160、増幅器161、および合成器165を通過することで、遅延τ1が重畳される。そのため、合成器165の出力信号Gは、次のように表される。
fRF_PILOT−fLo1∠θ(t−τ1)−φ(t−τ1)
fRF_PILOT−fLo1∠ψ(t)
一方、変調信号ブランチでは、信号Dには、遅延補正器162において、Δt=τ1となるような遅延が重畳される。そのため、遅延補正器162から出力される信号Hは、図
5(H)に示すような周波数特性を持ち、次式のように表すことができる。
fRF−fLo1∠θ(t−Δt)−φ(t−Δt)
そして、信号Hと信号Gとは、直交復調器163にて、乗算された後、直交復調される。そのため、直交復調器163から出力される信号Iは、図5(I)に示すような周波数特性を持ち、次式で表すことができる。
(fRF−fLo1)−(fRF_PILOT−fLo1)
∠θ(t−τ1)−φ(t−τ1)−{θ(t−Δt)−φ(t−Δt)}
(fRF−fLo1)−fLo2
∠θ(t−τ1)−φ(t−τ1)−ψ(t)
これをfPILOT=0HzおよびΔt=τ1という条件を用いて整理すると、次のようになる。
fCDMA∠0・・・(1)
fCDMA∠θ(t−τ1)−φ(t−τ1)−ψ(t)・・・(2)
すなわち、直交復調器163は、式(1)で表される復調信号と、式(2)で表される復調信号という異なる位相雑音を有する2つの信号を復調することができる。
ここでパイロット信号成分Eの電力レベルが、図4の領域Aの範囲であれば、式(1)で表される復調信号が支配的となるので、復調される信号は式(1)で表される復調信号となる。
fCDMA∠0
これは、送信部120、伝搬路および局部発振部155において重畳される位相雑音が完全にキャンセルされて、変調信号発生部111にて発生された変調信号が、無線受信装置151にて復調されていることを意味する。図6に示すコンスタレーションの概念図で示すと、図6(A)に示すように理想値又はその近傍のシンボルを得ることができる。すなわち、パイロット信号成分Eが理想的な電力レベルであれば、理想値又はその近傍のシンボルを得ることができる。
一方、パイロット信号Eのレベルが図4の領域Cの範囲であれば、式(2)で表される復調信号が支配的となるので、復調される信号は式(2)で表される復調信号となる。なお、パイロット信号成分の電力レベルが図4の領域Cのように低い場合の図5に対応する図を図7に示す。
これは、送信部120、伝搬路および局部発振部155、局部発振部166において位相雑音が重畳されて、変調信号発生部111にて発生された変調信号が、無線受信装置151にて復調されていることを意味しており、通常のスーパーヘテロダイン方式を用いた場合と同じ位相雑音を有する復調信号を得ることができる。また、この時のコンスタレーションは図6(C)となる。
また、パイロット信号Eのレベルが図4の領域Bの範囲であれば、異なる位相雑音を有する2つの復調信号が復調される。このときのコンスタレーションは、図6(B)となるが、誤差ベクトルの大きさは図6(C)よりも小さいことが分かる。
よって、直交復調器163のLo入力レベルに対する誤り率特性は、図8に示すようになる。すなわち、Lo入力レベルが大きいときには、Lo入力にパイロット信号成分のみを用いたときと同等の特性となり、一方、Lo入力レベルが小さいときには、 局部発振部166の局部発振信号のみを用いたときと同等の特性となる。すなわち、一般に用いら
れるスーパーヘテロダイン方式と同等以上の受信特性を実現することができる。なお、図8においては、原点から縦軸方向に誤り率特性が悪化する方向にあり、原点から横軸方向にLo入力レベルは大きくなる。
このように実施の形態1によれば、無線受信装置151に、変調信号と当該変調信号の周波数と異なる周波数を持つパイロット信号とを含む無線信号を受信するアンテナ152と、アンテナ152にて受信した受信信号を2方向に分配する分配器159と、分配器159にて分配された一方の信号から前記パイロット信号に対応する信号成分を抽出するバンドパスフィルタ160と、分配器159にて分配された他方の信号に遅延を与える遅延補正器162と、バンドパスフィルタ160からの信号成分と遅延補正器162にて遅延が付加された前記他方の信号とを周波数乗算し且つ直交復調を行う直交復調器163と、直交復調器163の前段に設けられ、バンドパスフィルタ160からの信号成分に当該信号成分に相当する周波数を持つ局部発振信号を合成する合成器165とを設けた。
こうすることにより、パイロット信号成分とパイロット信号成分に相当する周波数を持つ局部発振信号とを合成した信号と、遅延が付加された受信信号とを周波数乗算し且つ直交復調するので、パイロット信号成分の電力レベルが復調に利用することの困難なレベルであってもパイロット信号成分に相当する周波数を持つ局部発振信号を用いることができるため、フェージングなどの影響によりパイロット信号レベルが劣化しても、受信特性の大幅な劣化を防ぐことができ、受信特性を向上することができる。
そして、アンテナ152にて受信する無線信号は、中心周波数に信号が載らない変調信号と前記中心周波数と同一の中心周波数を持つパイロット信号とを多重した多重信号である。
こうすることにより、受信する無線信号が中心周波数に信号が載らない変調信号と前記中心周波数と同一の中心周波数を持つパイロット信号とが多重されたものであるので、従来例に示すローカルノイズキャンセラのシグナルブランチにある局部発振部60および周波数変換器61が必要なくなるため、この局部発振部60にて発生する局部発振信号に含まれる位相雑音がシグナルブランチの信号(信号F)に載らない。そのため、系内で発生する位相誤差も完全に除去することができるので、位相雑音特性に優れた無線システムを実現することができる。
(実施の形態2)
実施の形態1においては、パイロットブランチにて抽出されたパイロット成分と、同じ周波数を持ちかつ抽出されたパイロット成分の電力レベルが低くても直交復調器163にて従来の受信方式と同等以上の受信特性を得ることができる電力レベルを持つ局部発振信号とを合成器165にて合成した後に直交復調器163へ入力した。これに対して、実施の形態2においては、抽出されたパイロット成分の電力レベルに応じて、局部発振信号を合成するかしないかを切り換えるようにする。
図9は、本実施の形態に係る無線システムの構成を示すブロック図である。図9に示すように無線システム200は、無線送信装置101および無線受信装置251を備える。この無線受信装置251は、方向性結合器252と、電力レベル演算部253と、スイッチ制御部254と、スイッチ255とを有する。
パイロットブランチのバンドパスフィルタ160にて抽出されたパイロット信号成分は、増幅器161にて増幅されたのち方向性結合器252を介して合成器165に入力される。
合成器165と局部発振部166との間には、スイッチ255が配設されており、このスイッチ255が閉じているときには、局部発振部166の局部発振信号が合成器165に入力される。なお、スイッチ255は、スイッチ制御部254の制御により開閉する。
電力レベル演算部253は、方向性結合器252からのパイロット信号成分を入力し、その電力レベルを算出し、スイッチ制御部254に出力する。
スイッチ制御部254は、電力レベル演算部253にて算出されたパイロット信号成分の電力レベルに応じて、スイッチ255の開閉を制御する。
次いで、無線システム200の動作について説明する。なお実施の形態1と同じ動作をする部分については、説明を省略する。
アンテナ152で受信された無線信号Bは、増幅器153にて増幅され、乗算器154で周波数変換される。ここで、局部発振部155は、位相雑音φ(t)を有するローカル信号を発振するので、このローカル信号は、図5(C)に示すような周波数特性を持ち、次のように表される。
fLo1∠φ(t)
そのため、乗算器154で周波数変換された信号には、局部発振部155の位相雑音φ(t)が重畳され、バンドパスフィルタ156へ与えられる。
このバンドパスフィルタ156のバンド幅は、乗算器154で出力される差成分の周波数、すなわち、fRF−fLo1およびfRF_PILOT−fLo1が抽出されるように設定してある。そのため、増幅器158から出力される信号Dは、図5(D)に示す周波数特性を持ち、次のように表される。
fRF−fLo1∠θ(t)−φ(t)
fRF_PILOT−fLo1∠θ(t)−φ(t)
次いで、信号Dは、分配器159にて分配され、一方は変調信号ブランチ、他方はパイロットブランチへと出力される。
パイロットブランチでは、バンドパスフィルタ160はパイロット信号成分のみを抽出するように設定されているので、バンドパスフィルタ160は、分配された信号Dからパイロット信号成分のみを抽出して増幅器161へ出力する。増幅器161の出力は方向性結合器252を介して電力レベル演算部253に入力され、電力レベル演算部253にてパイロット信号成分の電力レベルが算出される。このパイロット信号成分の電力レベルにより、以下の動作が異なる。
1)パイロット信号の電力レベルが図4の領域A、Bに相当する場合
パイロット信号の電力レベルが図4の領域AおよびBに相当する場合には、スイッチ制御部254は、スイッチ255が開くように制御する。なお、このとき局部発振部166の電源もOFFにする制御を行ってもよく、これにより省電力化を図ることができる。
このときパイロット信号成分は図5(E)に示す周波数特性を有する。方向性結合器252から出力されたパイロット信号成分は、合成器165を介して直交復調器163のローカル部に入力される。ここで信号Gの周波数特性は、図5(E)と同じである。
このとき、パイロット信号成分Eには、バンドパスフィルタ160、増幅器161、方向性結合器252、および合成器165を通過することで、遅延τ2が重畳される。その
ため、合成器165の出力信号Gは、次のように表される。
fRF_PILOT−fLo1∠θ(t−τ2)−φ(t−τ2)
一方、変調信号ブランチでは、信号Dには、遅延補正器162において、Δt=τ2となるような遅延が重畳される。そのため、遅延補正器162から出力される信号Hは、図5(H)に示すような周波数特性を持ち、次式のように表すことができる。
fRF−fLo1∠θ(t−Δt)−φ(t−Δt)
そして、信号Gと信号Fとは、直交復調器163にて乗算された後、直交復調される。そのため、直交復調器163から出力される信号Iは、図5(I)に示すような周波数特性を持ち、次式で表すことができる。
(fRF−fLo1)−(fRF_PILOT−fLo1)
∠θ(t−τ1)−φ(t−τ1)−{θ(t−Δt)−φ(t−Δt)}
(fRF−fLo1)−fLo2
これをfPILOT=0HzおよびΔt=τ2という条件を用いて整理すると、次のようになる。
fCDMA∠0
これは、送信部120、伝搬路および局部発振部155において重畳される位相雑音が完全にキャンセルされて、変調信号発生部111にて発生された変調信号が、無線受信装置151にて復調されていることを意味する。図6に示すコンスタレーションの概念図で示すと、図6(A)に示すように理想値のシンボルを得ることができる。
2)パイロット信号の電力レベルが図4の領域Cに相当する場合
パイロット信号の電力レベルが図4の領域Cに相当する場合には、スイッチ制御部254は、スイッチ255を閉じる制御を行う。なお、このとき増幅器161の電源をOFFにする制御も同時に行ってよく、これにより省電力化を図ることができる。
このときパイロット信号成分は図7(E)に示す周波数特性を有する。方向性結合器252から出力されたパイロット信号成分は、図7(F)に示す 局部発振部166から出力された信号と合成器165にて合成され、直交復調器163のローカル部に入力される。ここで信号Gの周波数特性は、図7(F)と同じとなる。よって、合成器165の出力信号Gは、次のように表される。
fRF_PILOT−fLo1∠ψ(t)
一方、変調信号ブランチでは、信号Dには、遅延補正器162において、Δt=τ3となるような任意の遅延が重畳される。そのため、遅延補正器162から出力される信号Hは、図7(H)に示すような周波数特性を持ち、次式のように表すことができる。
fRF−fLo1∠θ(t−Δt)−φ(t−Δt)
そして、信号Gと信号Hとは、直交復調器163にて乗算された後、直交復調される。そのため、直交復調器163から出力される信号Gは、図7(I)に示すような周波数特性を持ち、次式で表すことができる。
(fRF−fLo1)−fLo2
∠θ(t−τ3)−φ(t−τ3)−ψ(t)
これをfPILOT=0HzおよびΔt=τ3という条件を用いて整理すると、次のようになる。
fCDMA∠θ(t−τ3)−φ(t−τ3)−ψ(t)
これは、送信部120、伝搬路、局部発振部155、および局部発振部166において重畳される位相雑音が重畳されて、変調信号発生部111にて発生された変調信号が、無線受信装置251にて復調されていることを意味しており、スーパーヘテロダイン方式を用いた場合と同じ位相雑音を有する復調信号を得ることができる。またこの時のコンスタレーションは図6(C)となる。
以上から、直交復調器163のLo入力レベルに対する誤り率特性は図10のようになり、Lo入力レベルが大きいときにはLo入力にパイロット信号を用いたときと同等の特性となり、図8に示した実施の形態1の場合よりもさらに受信特性を改善することができる。
このように実施の形態2によれば、無線受信装置251に、変調信号と当該変調信号の周波数と異なる周波数を持つパイロット信号とを含む無線信号を受信するアンテナ152と、アンテナ152にて受信した受信信号を2方向に分配する分配器159と、分配器159にて分配された一方の信号から前記パイロット信号に対応する信号成分を抽出するバンドパスフィルタ160と、分配器159にて分配された他方の信号に遅延を与える遅延補正器162と、バンドパスフィルタ160からの信号成分と遅延補正器162にて遅延が付加された前記他方の信号とを周波数乗算し且つ直交復調を行う直交復調器163と、直交復調器163の前段に設けられ、バンドパスフィルタ160からの信号成分に当該信号成分に相当する周波数を持つ局部発振信号を合成する合成器165とを設け、さらに、バンドパスフィルタ160からの信号成分の電力レベルを算出する電力レベル演算部253と、前記算出した電力レベルに応じて、前記局部発振信号の合成器165への入力を停止するスイッチ制御部254と、を設けた。
こうすることにより、パイロット信号成分とパイロット信号成分に相当する周波数を持つ局部発振信号とをパイロット信号成分の電力レベルに応じて合成した信号と、遅延が付加された受信信号とを周波数乗算し且つ直交復調するので、パイロット信号成分の電力レベルが復調に利用することの困難なレベルであってもパイロット信号成分に相当する周波数を持つ局部発振信号を用いることができるため、フェージングなどの影響によりパイロット信号レベルが劣化しても、受信特性の大幅な劣化を防ぐことができ、受信特性を向上することができる。
本明細書は、2005年7月11日出願の特願2005−202030に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
本発明の無線受信装置は、受信特性を向上するものとして有用である。
従来の無線システムが備えるローカル・ノイズ・キャンセラの構成を示すブロック図
図1のローカル・ノイズ・キャンセラの各構成部分の周波数特性を示す特性図
本発明の実施の形態1に係る無線システムの構成を示すブロック図
図3の直交復調器における入力レベルとIQ出力レベルとの関係を示す図
図3の無線システムにおける各信号の周波数特性を示す特性図
図3の直交復調器における復調特性の説明に供する図
図3の無線システムにおける各信号の周波数特性を示す特性図
図3の無線システムにおける誤り特性の説明に供する図
実施の形態2に係る無線システムの構成を示すブロック図
図9の無線システムにおける誤り特性の説明に供する図