本発明は音像定位制御装置に関する。
近年、DVD等に記録された映画や音楽などのコンテンツが普及するに伴い、リビングルームあるいは車室内においてマルチチャンネルオーディオを再生する際に理想的な定位感や音場感を得ることのできる再生装置が提案されている。しかし、これら装置はユーザー一人を対象として再生特性が設計されているため、対象とされない他のユーザーにとっては理想的な音響効果を得ることが出来なかった。このような課題を解決するための装置が特許文献1において提案されている。以下、図面を参照しながらこの特許文献1に示される音響再生装置について説明する。
図9は、特許文献1に示される音響再生装置であって音響再生装置1を車輌の前部座席に適用したものである。具体的には、車室内にいる聴き手としての二人の乗員L1、L2の左耳に記録装置で再生される信号B1を、右耳に信号B2をそれぞれ聴かせることにより、いずれの乗員にも同様に記録装置2に含まれるコンテンツの音響効果を聴かせるものである。乗員L1、L2の正面には4つのスピーカ3a〜3dを有すると共に、各スピーカにはそれぞれアンプ4a〜4dが接続されていて、これらスピーカとアンプの組によって音響発生手段が構成される。一方、記録装置2には公知のバイノーラル収録方式によって記録された音響情報が記録されている。記録装置2とアンプ4a〜4dは、以下に説明する手順で構築された逆フィルタネットワーク5を介して接続されている。
逆フィルタネットワークを構築する際、あらかじめ各スピーカ3a〜3dから各乗員の両耳までの音響伝達関数hij(i=1〜4:耳を示す添字、j=1〜4:スピーカを示す添字)を測定しておく。ただし、h11〜h41以外は図示していない。図10に音響伝達関数hijの測定方法を示す。各アンプ4a〜4dに接続されたテスト信号発生装置6はホワイトノイズ等の広帯域信号を発生し、各スピーカ3a〜3dの発生音S1〜S4と、乗員位置を想定して配置されたダミーヘッドD1、D2の両耳で測定された音M1〜M4とを用いて音響伝達関数hijを測定する。なお実際は、駆動するアンプを順次変える。つまり、例えばスピーカ3aを駆動するときは、他のスピーカ3b〜3dは駆動されない。発生音S1〜S4、測定音M1〜M4、音響伝達関数hijは次式の関係を満たす。
一方、図9で示す音響再生装置1の目標とする効果は、
である。(2)式を変形すると、
(1)式を(3)式に代入すると、
よって、図9のような逆フィルタネットワーク5を(4)式を満足するように設計してアンプ4a〜4dの前に設け、テスト信号発生装置6の出力の代わり左耳用信号と右耳用信号を逆フィルタネットワークに入力すれば、それぞれダミーヘッドD1、D2の左耳、右耳での信号はそれぞれ左耳用信号、右耳用信号となる。なお、図9に示す逆フィルタネットワーク5において紙面向かって左側入力部に左耳用信号を、右側入力部に右耳用信号を入力するものとする。逆フィルタネットワーク5を構成する各要素は次式で表される。
このように構築した逆フィルタネットワーク5でバイノーラル収録された信号B1、B2を処理すると、乗員L1、L2の両耳位置の音はB1、B2となるので収録した原音場を聴かせることが出来る。
また、特許文献1に示される構成において、記録装置2の出力を所定の音響伝達関数を模擬するデジタルフィルタ等で処理して逆フィルタネットワーク5に入力するような制御手段を加えれば、所定の方向に音像を定位させることが可能となる。図11は、仮想音源7からダミーヘッドD1への音響伝達関数G1、G2を示した図である。図12は、所定の方向に音像を定位させる音響再生装置を示す図である。図9と同等の構成には同じ符号を付している。フィルタ8a、8bには所定の音響伝達関数G1、G2が係数として設定されている。音源としては、バイノーラル収録された音ではなく、モノラル信号B0が記録されたモノラル音源9を用いる。図12の構成において、乗員L1、L2の左耳位置、右耳位置の音は、先の説明に従いそれぞれG1・B0、G2・B0となるので、あたかも図7で示した仮想音源方向から音が鳴っているかのように聴こえる。もちろん、あらかじめモノラル信号B0を音響伝達関数G1、G2で処理しておく、もしくは逆フィルタネットワークの構成要素に音響伝達関数G1、G2を畳み込んでおいても同様の効果を得ることが出来る。
特開平6−165298号公報
しかしながら、図9あるいは図10に示した音響再生装置においては、いったん逆フィルタネットワーク5の再生特性を設計すると、ユーザー個別に周波数特性や音量等の音響効果を可変調整することが困難であった。すなわち、特許文献1に記載の音響再生装置では、各ユーザーに対する音響効果を変更する都度、制御フィルタの設計を行う必要があり演算量が大きくなるため、実現が困難であった。
そこで本発明の目的は、前記課題に鑑み、複数のユーザーに対して音像定位を行う音響再生装置において、音像定位効果を損なうこと無くユーザーが個別に音響効果を可変調整することができる音像定位制御装置を提供することにある。
本発明の目的は、以下の構成を備える音像定位制御装置によって達成される。音像定位制御装置は、少なくとも2箇所以上の所定位置の音響伝達関数をそれぞれ所望の特性とするための処理特性を設定する処理特性設定手段と、前記処理特性設定手段により設定された処理特性と音響信号とを入力し信号処理を行う制御手段と、前記制御手段からの出力を入力する音響再生手段とを具備する。
本発明の目的は、以下の音像定位制御方法によって達成される。音像定位制御方法は、音源から出力された音響信号を複数のデジタルフィルタで処理してから複数のスピーカより出力することによって複数の所定位置において同一の音像定位効果を得ることを可能とした音像定位制御システムのための音像定位制御方法であって、第1の所定位置に対応する音量制御信号及び/又は音質制御信号に基づく値を、記憶領域に保持されている第1の所定位置に対応する第1の基準係数に乗算する第1乗算ステップ、第2の所定位置に対応する音量制御信号及び/又は音質制御信号に基づく値を、記憶領域に保持されている第2の所定位置に対応する第2の基準係数に乗算する第2乗算ステップ、第1乗算ステップの乗算結果と第2乗算ステップの乗算結果を加算する加算ステップ、および加算ステップの加算結果をデジタルフィルタのフィルタ係数として設定するフィルタ係数設定ステップを備える。
本発明の目的は、以下の音像定位制御プログラムによって達成される。音像定位制御プログラムは、音源から出力された音響信号を複数のデジタルフィルタで処理してから複数のスピーカより出力することによって複数の所定位置において同一の音像定位効果を得ることを可能とした音像定位制御システムのための音像定位制御プログラムであって、コンピュータに、第1の所定位置に対応する音量制御信号及び/又は音質制御信号に基づく値を、記憶領域に保持されている第1の所定位置に対応する第1の基準係数に乗算する第1乗算ステップ、第2の所定位置に対応する音量制御信号及び/又は音質制御信号に基づく値を、記憶領域に保持されている第2の所定位置に対応する第2の基準係数に乗算する第2乗算ステップ、第1乗算ステップの乗算結果と第2乗算ステップの乗算結果を加算する加算ステップ、および加算ステップの加算結果をデジタルフィルタのフィルタ係数として設定するフィルタ係数設定ステップを実行させる。
本発明の目的は、以下の構成を備える集積回路によって達成される。集積回路は、音像定位制御装置に用いられ、少なくとも2箇所以上の所定位置にそれぞれ対応する少なくとも2つ以上の処理特性係数を記憶したメモリから処理特性係数を読み出し可能な集積回路であって、メモリに記憶された処理特性係数を用いて、所定位置の音響伝達関数をそれぞれ所望の特性とするための処理特性を設定する処理特性設定部と、処理特性設定部により設定された処理特性と音響信号とを入力し信号処理を行って音響再生部への出力信号を生成する制御部とを備える。
上記のように、本発明によれば、複数のユーザーに対して音像定位を行う音響再生装置において、音像定位効果を損なうこと無くユーザーが個別に音響効果を可変調整することができる音像定位制御装置を提供することができる。
図1は、実施の形態1に係る音像定位制御装置の構成の示す概略図である。
図2は、4名のユーザーに対して同時音像定位制御と独立音量調整とを両立する音像定位制御装置の構成を示す概略図である。
図3は、音源がステレオ音源の場合において同時音像定位制御と独立音量調整とを両立する音像定位制御装置の構成の概略図である。
図4は、実施の形態2に係る音像定位制御装置の構成を示す概略図である。
図5は、音像定位制御装置を車載用に適用した例を示す図である。
図6は、音像定位制御装置を車載用に適用した例を示す図である。
図7は、音像定位制御装置を車載用に適用した例を示す図である。
図8は、音像定位制御装置をホームシアター用に適用した例を示す図である。
図9は、従来の音響再生装置の構成を示す概略図である。
図10は、伝達関数の計測方法を示す図である。
図11は、目標伝達関数を示す図である。
図12は、従来の音像定位制御を行う音響再生装置の構成を示す概略図である。
図13は、音像定位制御装置がテレビジョン受像機に設けられた例を示す図である。
符号の説明
1 音響装置
2 記録装置
3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h スピーカ
4a、4b、4c、4d アンプ
5 逆フィルタネットワーク
6 テスト信号発生装置
7 仮想音源
8a、8b フィルタ
9 モノラル音源
10 音源
11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h 制御用デジタルフィルタ
12 制御処理部
13 合成パラメータ設定手段
14 フィルタ係数算出手段
15a、15b、15c、15d 加算器
16a、16b、16c、16d、16e、16f、16g、16h ゲイン器
50、51、52、53 音量調整操作部
60、61、62、63 音像定位制御操作部
70 ホームシアター用音像定位制御装置
71 リモートコントロール装置
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る音像定位制御装置の構成の示す概略図である。本実施の形態に係る音像定位装置は、2名のユーザーに対して同時に同じ音像定位効果を与えると共に、各々独立に音量の調整が可能である。音像定位制御装置は、音源10と、スピーカ3a〜3dと、制御処理部12と、合成パラメータ設定手段13と、フィルタ係数算出手段14とを中心に構成される。本実施の形態における合成パラメータ設定手段13およびフィルタ係数算出手段14は処理特性設定手段に相当する。制御処理部12は制御手段に相当し、スピーカ3a〜3dは音響再生手段に相当する。
音源10は、モノラル音源もしくはマルチチャンネル音源の1チャンネル信号源もしくはマルチチャンネル音源の複数音源を合成した音源である。なお本実施の形態では、説明を簡略化するために音源10にモノラル音源を用いた場合について説明する。
制御処理部12は、制御用デジタルフィルタ11a〜11dから構成される。制御用デジタルフィルタ11a〜11dは、音源10の出力信号を入力する。合成パラメータ設定手段13は、各ユーザーが音量を調整するためのインターフェイスとなるものである。フィルタ係数算出手段14は、合成パラメータ設定手段13の出力信号に応じて制御用デジタルフィルタ11a〜11dのフィルタ係数を算出して制御処理部12に入力する。なお、乗員L1、L2および音響伝達関数h11〜h41および測定音M1〜M4は図9で示したものと同じであるので説明を省略する。
次に、音像定位効果を得るための制御用デジタルフィルタ11a〜11dの設計方法について説明する。図11で示した仮想音源7の位置を音像定位制御の目標位置とし、制御用デジタルフィルタ11a〜11dの伝達関数を各々C1〜C4とすると、ユーザーL1の両耳では次式を満たすM1、M2を聴き、ユーザーL2の両耳ではM3、M4を聴く。
ここでユーザーが聴くべき目標伝達関数はG1、G2なので、
に従って制御用デジタルフィルタ11a〜11dを設計すれば、ユーザーL1、L2は共に両耳でG1、G2を聴くことになるので仮想音源7の位置に音像を感じる。なお、フィルタ係数の算出にあたっては、(25)式で示される行列式を解いてもよいし、また例えば公知の適応アルゴリズムによって算出してもよい。
次に、ユーザーが各々独立に音量を調整可能にするための合成パラメータ設定手段13とフィルタ係数算出手段14と制御処理部12との動作について説明する。(24)式における逆行列部を次式で示すように置き換える。
さらに、C1〜C4について解くと次式となる。
(27)式で示されるCi(i=1〜4)は、処理特性設定手段によって制御手段(制御用デジタルフィルタ11a〜11d)に設定される処理特性に相当する。
フィルタ係数算出手段14は、(27)式で示されるフィルタの伝達関数に関して前2項の伝達関数を与えるフィルタ係数と、後ろ2項の伝達関数を与えるフィルタ係数を分けて保持する。つまり、目標伝達関数G1、G2とを用いて、
で表せられる伝達関数を与える8つのフィルタ係数(C11、C12、C21、C22、C31、C32、C41、C42)を基準係数として保持する。ここで、基準係数は処理特性係数に相当する。
一方、合成パラメータ設定手段13には、各ユーザーが聴きたい音量に関する情報が入力される。ここでは一例として、基準係数を用いて音量再生を行ったときに得られる音量に対して、ユーザーL1がα倍、ユーザーL2がβ倍の音量で聴きたい場合を考える。合成パラメータ設定手段13は、αおよびβの音量情報をフィルタ係数算出手段14に入力する。フィルタ係数算出手段14は、合成パラメータ設定手段13から入力された音量情報をもとに次式を用いてフィルタ係数を算出する。
フィルタ係数算出手段14は、(29)式で得られる伝達関数を与えるようなフィルタ係数を制御処理部12に設定する。このフィルタ係数は、制御用デジタルフィルタ11a〜11dの係数として与えられる。
一方、(27)式における前2項は、M1およびM2に掛かる項である。すなわち前2項はユーザーL1の音響効果に対して影響を与える項である。また後ろ2項は、M3およびM4に掛かることから、ユーザーL2の音響効果に対して影響を与える項である。よって、(29)式で示したように前2項をα倍することにより、ユーザーL1が聴く音量はα倍となる。同様に後ろ2項をβ倍することによりユーザーL2が聴く音量はβ倍となる。なお、αおよびβを任意に変化させてもM1とM2とに掛かる係数の比およびM3とM4とに掛かる係数の比は変化しない。つまり音響伝達関数の両耳差が変化しないので、音像定位効果が劣化することはない。
このように本実施の形態に係る音像定位制御装置は、ユーザーへの音響伝達関数の影響を考慮してフィルタ係数をユーザー毎(より正確には再生音を聞く位置毎)に分解して保持する。したがって、(29)式で示すように基準係数(処理特性係数)を定数倍し加算して算出される係数(処理特性)を制御用デジタルフィルタに設定することにより、少ない演算処理量で音像定位制御効果を維持したままユーザー個別に音量を設定することができる。
なお、本実施の形態の音像定位制御装置は、典型的にはソフトウェアを用いて実現することができる。この場合、コンピュータに上述した音像定位制御処理を行わせるためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体、例えばハードディスクやCD−ROM、MO、DVD、半導体メモリ等に記録される。
なお、本実施の形態に係る音像定位制御装置は、音量の調整が可能な構成を示したが、これに限られない。ユーザー個別に周波数特性の調整が可能な構成としてもよい。その場合、各ユーザーは合成パラメータ設定手段13に低域ブースト等の所望の周波数特性の情報を入力する。例えば、基準の係数を用いて音響再生を行ったときに得られる周波数特性に対して、ユーザーL1がGαの伝達関数およびユーザーL2がGβの伝達関数が掛かった音を聴きたい場合、フィルタ係数算出手段14は次式を用いてフィルタ係数を算出する。
なお、本実施の形態に係る音像定位制御装置は、ユーザー2名について独立に音量の調整が可能な構成を示したが、これに限られない。ユーザーが3名以上の場合にも適用することができる。以下、4名のユーザーに対する音像定位制御装置について説明する。図2は、ユーザーL1、L2、L3、L4の4名に対して同時音像定位制御と独立音量調整とを両立する音像定位制御装置の構成を示す概略図である。図2に示す音像定位制御装置は、図1のものとほぼ同様の構成を備えるが、以下の点で異なる。すなわち、制御処理部12は、制御用デジタルフィルタ11a〜11hから構成される。またM1〜M2、M3〜M4、M5〜M6、M7〜M8は、ユーザーL1、L2、L3、L4のそれぞれの両耳位置での音である。
次にユーザー4名について、同時音像定位制御を行うための制御用デジタルフィルタ11a〜11hの設計と、独立音量調整を行うための合成パラメータ13とフィルタ係数算出手段14と制御処理部12との動作について説明する。
制御用デジタルフィルタの各スピーカから各ユーザーの両耳までの音響伝達関数をhij(i=1〜8:耳を示す添字、j=1〜8:スピーカを示す添字)とすると、次式が成り立つ。
音響伝達関数の逆行列を次式で表す。
(31)式、(32)式よりC1〜C8について解くと次式となる。
フィルタ係数算出手段14は、(33)式で示されるフィルタの伝達関数に関して2項毎に伝達関数を与えるフィルタ係数を分けて保持する。つまり、目標伝達関数G1とG2とを用いて
で表される伝達関数を与える8つのフィルタ係数を基準係数として保持する。一方、合成パラメータ設定手段13には、各ユーザーが聴きたい音量に関する情報が入力される。ここでは一例として、基準係数を用いて音響再生を行ったときに得られる音量に対してユーザーL1がα倍、ユーザーL2がβ倍、ユーザーL3がγ倍、ユーザーL4がη倍の音量で聴きたい場合を考える。合成パラメータ設定手段13は、α、β、γ、ηの音量情報をフィルタ係数算出手段14に入力する。フィルタ係数算出手段14は、合成パラメータ設定手段13から入力された音量情報をもとに次式を用いてフィルタ係数を算出する。
フィルタ係数算出手段14は、(35)式で得られる伝達関数を与えるようなフィルタ係数を制御用デジタルフィルタ11a〜11hの係数として制御処理部12に設定する。ここで、(33)式におけるj=1、2に関する2項にはM1、M2が掛かっていることから、ユーザーL1の音響効果に対して影響を与える項である。同様に、j=3、4に関する2項にはM3、M4が掛かっていることから、ユーザーL2の音響効果に対して影響を与える項、j=5、6に関する2項にはM5、M6が掛かっていることから、ユーザーL3の音響効果に対して影響を与える項、j=7、8に関する2項にはM7、M8が掛かっていることから、ユーザーL4の音響効果に対して影響を与える項である。よって(35)式で示すように、基準係数を定数倍し加算した係数を制御用デジタルフィルタに設定することにより、各ユーザーが聴く音量を独立に制御することができる。なお、M1とM2に掛かる係数の比と、M3とM4に掛かる係数の比と、M5とM6に掛かる係数の比と、M7とM8に掛かる係数の比とは変化しない。つまり、音響伝達関数の両耳差は変化しないので、音像定位効果が劣化することはない。
以上に説明したように、ユーザーが4名の場合においても、音像定位効果を維持したままユーザー個別に音量を設定することができる。なお、もちろんユーザーが4名の場合に限られるものでなく、さらに複数のユーザーに対しても適用することができる。
なお、本実施の形態における音源は、モノラルの場合を示したがマルチチャンネル音源の場合にも適用できる。図3は、音源がステレオ音源の場合において同時音像定位制御と独立音量調整とを両立する音像定位制御装置の構成の概略図である。以下、図1の音像定位制御装置と異なる構成要素について説明する。図3中、音像定位制御装置は、Lチャンネル音源10aと、Rチャンネル音源10bと、Lチャンネル音源10aからの出力を入力する制御用デジタルフィルタ11a、11c、11e、11gと、Rチャンネル音源10bからの出力を入力する制御用デジタルフィルタ11b、11d、11f、11hと、加算器15a〜15dとを含む。なお加算器15aは制御用デジタルフィルタ11aと11bとの出力を加算する。同様に、加算器15bは制御用デジタルフィルタ11cと11dとの出力、加算器15dは制御用デジタルフィルタ11eと11fとの出力、加算器15dは制御用デジタルフィルタ11gと11hとの出力を各々加算する。
図3に示す音像定位制御装置は、制御用デジタルフィルタ11a、11c、11e、11gを用いてLチャンネル音源10aの信号について所望の仮想音源位置への音像定位制御を行う。また、制御用デジタルフィルタ11b、11d、11f、11hを用いてRチャンネル音源10bの信号について所望の仮想音源位置への音像定位制御を行う。フィルタ係数算出手段14は、チャンネル毎にフィルタ係数を分けて保持する。つまり、目標伝達関数G1、G2を用いて
で表される伝達関数を与える8つのフィルタ係数を基準係数として保持する。
一方、合成パラメータ設定手段13には、各ユーザーが聴きたい音量に関する情報が入力される。ここでは基準係数を用いて、音響再生を行ったときに得られる音量に対してユーザーL1がα倍、ユーザーL2がβ倍の音量で聴きたい場合、合成パラメータ設定手段13は、αとβとの音量情報をフィルタ係数算出手段14に入力する。フィルタ係数算出手段14は、合成パラメータ設定手段13により入力された音量情報をもとに次式を用いてフィルタ係数を算出する。
フィルタ係数算出手段14は、(37)式で得られる伝達関数を与えるようなフィルタ係数を制御用デジタルフィルタ11a〜11hの係数として制御処理部12に設定する。なおもちろん、Lチャンネル音源10aの信号のみ音量を調整したい場合には、CLi(i=1〜4)のフィルタ係数を定数倍し加算して得られたフィルタ係数を制御用デジタルフィルタ11a、11c、11e、11gの係数として制御処理部12に与えればよい。
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2に係る音像定位制御装置の構成を示す概略図である。音像定位制御装置は、ユーザー2名に対して同じ音像定位効果を与えるとともに、各々独立に音量を調整可能である。図4において音像定位制御装置は、スピーカ3a〜3dと、音源10と、制御用デジタルフィルタ11a〜11hと、合成パラメータ設定手段13と、ゲイン器16a〜16hと、加算器15a〜15dとを備える。なお、図4において実施の形態1と同等の構成要素には同じ符号を付しており、説明は省略する。
ゲイン器16a〜16hには、音源10からの出力が入力されゲインを可変調整できる。制御用デジタルフィルタ11a〜11hには、ゲイン器16a〜16hからの出力が入力される。加算器15aは、制御用デジタルフィルタ11aと11bとの出力を加算する。同様に、加算器15bは、制御用デジタルフィルタ11cと11dとの出力を加算する。加算器15cは、制御用デジタルフィルタ11eと11fとの出力を加算する。加算器15dは、制御用デジタルフィルタ11gと11hとの出力を加算する。合成パラメータ設定手段13は、ゲイン器16a〜16hのゲインを制御し、各ユーザーが音量を調整するためのインターフェイスとなる。
制御用デジタルフィルタ11aには、(28)式で得られる伝達関数C11を与えるフィルタ係数が設定される。同様に、制御用デジタルフィルタ11bには、(27)式で得られる伝達関数C12を与えるフィルタ係数、制御用デジタルフィルタ11cには伝達関数C21を与えるフィルタ係数、制御用デジタルフィルタ11dには、(27)式で得られる伝達関数C22を与えるフィルタ係数、制御用デジタルフィルタ11eには伝達関数C31を与えるフィルタ係数、制御用デジタルフィルタ11fには伝達関数C32を与えるフィルタ係数、制御用デジタルフィルタ11gには伝達関数C41を与えるフィルタ係数、制御用デジタルフィルタ11hには伝達関数C42を与えるフィルタ係数が各々設定される。
合成パラメータ設定手段13は、ユーザーによって設定される各ユーザーの音量設定値に基づいてゲイン器16aから16hのゲインを設定する。例えば、ユーザーL1がα倍、ユーザーL2がβ倍の音量で聴きたい場合、合成パラメータ設定手段13は、ゲイン器16a、16c、16e、16gにはゲインαを設定する。一方、ゲイン器16b、16d、16f、16hにはゲインβを設定する。この設定により、スピーカ3a〜3dからは音源10に対し次式で示される音響伝達関数が掛かった音が出力される。
(38)式は、図4におけるスピーカ3a〜3dの出力は、図1の構成における(29)式を満足するときのスピーカ3a〜3dからの出力と同じである。よって、実施の形態1で説明したのと同様に、ユーザーL1、L2は音像定位制御効果を維持しつつ、各自が任意に設定した音量で再生音を聴くことができる。
このように本実施の形態に係る音像定位制御装置は、各ユーザーの音量設定に応じてゲインを調整することにより、少ない演算処理量で音像定位制御効果を維持したままユーザー個別に音量を設定することができる。
なお、本実施の形態に係る音像定位制御装置は、ユーザーが2名の場合を示したが、これに限られず3名以上の複数のユーザーに対しても同様の効果を得ることができる。この場合、増やしたいユーザーの数に応じて、図4のゲイン器16a〜16d、制御用デジタルフィルタ11a〜11d、加算器15a〜15bおよびスピーカ3a〜3bに相当する構成要素を追加すればよい。
また、本実施の形態に係る音像定位制御装置では、音像定位制御効果を維持したままユーザー毎に音量を制御することが可能であるが、ゲイン器の代わりに(もしくはゲイン器に加えてさらに)イコライザを設けることにより、音像定位制御効果を維持したままユーザー毎に音質を制御することが可能となる。
図5〜図8は、実施の形態1および2に係る音像定位制御装置の適用例を示す。
図5は、音像定位制御装置を車両内に設置し、操作部をダッシュボード部に設けた例を示す。図5中、音量調整ダイヤル50〜53は、図1〜4の合成パラメータ設定手段13に相当し、ユーザー毎に個別に音量の調整が可能である。音像定位制御ボタン60〜63は押下されることにより、ユーザー毎に個別に音像定位の効果を発生させる。運転席側のユーザーは、音像定位制御ボタン60を押下することにより、再生する音楽に対し音像定位を実現することができる。さらに運転席側のユーザーは、音量調整ダイヤル50を操作することにより音像定位を維持したまま運転席側のユーザーに対してのみ、設定された音量に変化させることができる。一方、助手席側のユーザーは、音像定位制御ボタン61を押下し、音量調整ダイヤル51を操作することにより音像定位を維持したまま助手席側のユーザーに対してのみ、設定された音量に変化させることができる。同様に音量ダイヤル52、53を調整することにより後部座席のユーザーに達する音量を変化させることができる。
また、図6に示すように音像定位制御装置の操作部は各ユーザの手の届く範囲、例えば各座席の肘掛部に設置されてもよい。この場合、各座席のユーザーは肘掛部に設けられた音像定位制御ボタン60を押下することにより音像定位を実現することできる。さらに音量調整ダイヤル50を操作することにより音像定位を維持したまま当該座席側のユーザーに対してのみ、設定された音量に変化させることができる。なお、従来の音像定位制御装置ではユーザ毎に音量を調整することができなかったが、本実施の形態の音像定位制御装置では音像定位を維持したままユーザが個別に音量を調整することができる。したがって、図6のように、音量調整を行うための操作部をユーザの数だけ用意し、対応するユーザの手の届く範囲にそれぞれ設置することができる。
また例えば図7に示すように操作部は車両内のフロントパネル部に設置されてもよく、ユーザは各座席における音量を一括して管理することができる。図5や図7のように各ユーザ用の操作部を一箇所にまとめて配置することにより、配線の手間が省け、設置コストを低減することができる。
図8は、音像定位制御装置をホームシアター用として適用したものであり、例えばリビングルーム等において用いることができる。音像定位制御ボタン60〜63を押下することにより、リビングルーム内の所定の位置で音像効果を実現する。また、音量調整ダイヤル50を操作することにより、音像定位を維持したまま、それぞれ所定の位置での音量を個別に変化させることができる。また、これらの操作部はリモートコントロール装置70に設けることもできる。
なお、上記実施の形態の音像定位制御装置を構成する構成要素の一部または全部は、1チップ化した集積回路によって実現することも可能である。このような集積回路は、LSIや専用回路や汎用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用しても良い。さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて上記の構成要素の集積化を行ってもよい。なお、前述の基準係数については、集積回路に接続された、集積回路の外部の記憶装置に格納されても良く、この場合、集積回路は、記憶装置に記録されている基準係数を読み出して信号処理を行う。
なお、上記実施の形態の音像定位制御装置は、カーオーディオやホームシアターに適用できるだけでなく、音量や音質を調整する様々な装置に適用できる。例えば図13に示すように音像定位制御装置はテレビジョン受像機に設けられてもよい。ユーザ毎に個別に音像定位の効果を発生させるための音像定位制御ボタン60およびユーザ毎に個別に音量の調整を行うための音量調整ダイヤル50は、テレビジョン受像機に設けられても良いし、リモートコントローラ70に設けられてもよい。またゲーム装置であれば、音像定位制御ボタン及び音量調整ダイヤルは各コントローラに設けられてもよい。ユーザは、映像を見ながら個別に音量や周波数特性を変化させることができるので利便性の高いテレビジョン受像機、ゲーム装置を提供することができる。
本発明は、理想的な定位感や音場感の向上が要望されるリビングルームや車室内等で使用可能な再生装置等に好適である。
本発明は音像定位制御装置に関する。
近年、DVD等に記録された映画や音楽などのコンテンツが普及するに伴い、リビングルームあるいは車室内においてマルチチャンネルオーディオを再生する際に理想的な定位感や音場感を得ることのできる再生装置が提案されている。しかし、これら装置はユーザー一人を対象として再生特性が設計されているため、対象とされない他のユーザーにとっては理想的な音響効果を得ることが出来なかった。このような課題を解決するための装置が特許文献1において提案されている。以下、図面を参照しながらこの特許文献1に示される音響再生装置について説明する。
図9は、特許文献1に示される音響再生装置であって音響再生装置1を車輌の前部座席に適用したものである。具体的には、車室内にいる聴き手としての二人の乗員L1、L2の左耳に記録装置で再生される信号B1を、右耳に信号B2をそれぞれ聴かせることにより、いずれの乗員にも同様に記録装置2に含まれるコンテンツの音響効果を聴かせるものである。乗員L1、L2の正面には4つのスピーカ3a〜3dを有すると共に、各スピーカにはそれぞれアンプ4a〜4dが接続されていて、これらスピーカとアンプの組によって音響発生手段が構成される。一方、記録装置2には公知のバイノーラル収録方式によって記録された音響情報が記録されている。記録装置2とアンプ4a〜4dは、以下に説明する手順で構築された逆フィルタネットワーク5を介して接続されている。
逆フィルタネットワークを構築する際、あらかじめ各スピーカ3a〜3dから各乗員の両耳までの音響伝達関数hij(i=1〜4:耳を示す添字、j=1〜4:スピーカを示す添字)を測定しておく。ただし、h11〜h41以外は図示していない。図10に音響伝達関数hijの測定方法を示す。各アンプ4a〜4dに接続されたテスト信号発生装置6はホワイトノイズ等の広帯域信号を発生し、各スピーカ3a〜3dの発生音S1〜S4と、乗員位置を想定して配置されたダミーヘッドD1、D2の両耳で測定された音M1〜M4とを用いて音響伝達関数hijを測定する。なお実際は、駆動するアンプを順次変える。つまり、例えばスピーカ3aを駆動するときは、他のスピーカ3b〜3dは駆動されない。発生音S1〜S4、測定音M1〜M4、音響伝達関数hijは次式の関係を満たす。
一方、図9で示す音響再生装置1の目標とする効果は、
である。(2)式を変形すると、
(1)式を(3)式に代入すると、
よって、図9のような逆フィルタネットワーク5を(4)式を満足するように設計してアンプ4a〜4dの前に設け、テスト信号発生装置6の出力の代わり左耳用信号と右耳用信号を逆フィルタネットワークに入力すれば、それぞれダミーヘッドD1、D2の左耳、右耳での信号はそれぞれ左耳用信号、右耳用信号となる。なお、図9に示す逆フィルタネットワーク5において紙面向かって左側入力部に左耳用信号を、右側入力部に右耳用信号を入力するものとする。逆フィルタネットワーク5を構成する各要素は次式で表される。
このように構築した逆フィルタネットワーク5でバイノーラル収録された信号B1、B2を処理すると、乗員L1、L2の両耳位置の音はB1、B2となるので収録した原音場を聴かせることが出来る。
また、特許文献1に示される構成において、記録装置2の出力を所定の音響伝達関数を模擬するデジタルフィルタ等で処理して逆フィルタネットワーク5に入力するような制御手段を加えれば、所定の方向に音像を定位させることが可能となる。図11は、仮想音源7からダミーヘッドD1への音響伝達関数G1、G2を示した図である。図12は、所定の方向に音像を定位させる音響再生装置を示す図である。図9と同等の構成には同じ符号を付している。フィルタ8a、8bには所定の音響伝達関数G1、G2が係数として設定されている。音源としては、バイノーラル収録された音ではなく、モノラル信号B0が記録されたモノラル音源9を用いる。図12の構成において、乗員L1、L2の左耳位置、右耳位置の音は、先の説明に従いそれぞれG1・B0、G2・B0となるので、あたかも図7で示した仮想音源方向から音が鳴っているかのように聴こえる。もちろん、あらかじめモノラル信号B0を音響伝達関数G1、G2で処理しておく、もしくは逆フィルタネットワークの構成要素に音響伝達関数G1、G2を畳み込んでおいても同様の効果を得ることが出来る。
特開平6−165298号公報
しかしながら、図9あるいは図10に示した音響再生装置においては、いったん逆フィルタネットワーク5の再生特性を設計すると、ユーザー個別に周波数特性や音量等の音響効果を可変調整することが困難であった。すなわち、特許文献1に記載の音響再生装置では、各ユーザーに対する音響効果を変更する都度、制御フィルタの設計を行う必要があり演算量が大きくなるため、実現が困難であった。
そこで本発明の目的は、前記課題に鑑み、複数のユーザーに対して音像定位を行う音響再生装置において、音像定位効果を損なうこと無くユーザーが個別に音響効果を可変調整することができる音像定位制御装置を提供することにある。
本発明の目的は、以下の構成を備える音像定位制御装置によって達成される。音像定位制御装置は、少なくとも2箇所以上の所定位置の音響伝達関数をそれぞれ所望の特性とするための処理特性を設定する処理特性設定手段と、前記処理特性設定手段により設定された処理特性と音響信号とを入力し信号処理を行う制御手段と、前記制御手段からの出力を入力する音響再生手段とを具備する。
本発明の目的は、以下の音像定位制御方法によって達成される。音像定位制御方法は、音源から出力された音響信号を複数のデジタルフィルタで処理してから複数のスピーカより出力することによって複数の所定位置において同一の音像定位効果を得ることを可能とした音像定位制御システムのための音像定位制御方法であって、第1の所定位置に対応する音量制御信号及び/又は音質制御信号に基づく値を、記憶領域に保持されている第1の所定位置に対応する第1の基準係数に乗算する第1乗算ステップ、第2の所定位置に対応する音量制御信号及び/又は音質制御信号に基づく値を、記憶領域に保持されている第2の所定位置に対応する第2の基準係数に乗算する第2乗算ステップ、第1乗算ステップの乗算結果と第2乗算ステップの乗算結果を加算する加算ステップ、および加算ステップの加算結果をデジタルフィルタのフィルタ係数として設定するフィルタ係数設定ステップを備える。
本発明の目的は、以下の音像定位制御プログラムによって達成される。音像定位制御プログラムは、音源から出力された音響信号を複数のデジタルフィルタで処理してから複数のスピーカより出力することによって複数の所定位置において同一の音像定位効果を得ることを可能とした音像定位制御システムのための音像定位制御プログラムであって、コンピュータに、第1の所定位置に対応する音量制御信号及び/又は音質制御信号に基づく値を、記憶領域に保持されている第1の所定位置に対応する第1の基準係数に乗算する第1乗算ステップ、第2の所定位置に対応する音量制御信号及び/又は音質制御信号に基づく値を、記憶領域に保持されている第2の所定位置に対応する第2の基準係数に乗算する第2乗算ステップ、第1乗算ステップの乗算結果と第2乗算ステップの乗算結果を加算する加算ステップ、および加算ステップの加算結果をデジタルフィルタのフィルタ係数として設定するフィルタ係数設定ステップを実行させる。
本発明の目的は、以下の構成を備える集積回路によって達成される。集積回路は、音像定位制御装置に用いられ、少なくとも2箇所以上の所定位置にそれぞれ対応する少なくとも2つ以上の処理特性係数を記憶したメモリから処理特性係数を読み出し可能な集積回路であって、メモリに記憶された処理特性係数を用いて、所定位置の音響伝達関数をそれぞれ所望の特性とするための処理特性を設定する処理特性設定部と、処理特性設定部により設定された処理特性と音響信号とを入力し信号処理を行って音響再生部への出力信号を生成する制御部とを備える。
上記のように、本発明によれば、複数のユーザーに対して音像定位を行う音響再生装置において、音像定位効果を損なうこと無くユーザーが個別に音響効果を可変調整することができる音像定位制御装置を提供することができる。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る音像定位制御装置の構成の示す概略図である。本実施の形態に係る音像定位装置は、2名のユーザーに対して同時に同じ音像定位効果を与えると共に、各々独立に音量の調整が可能である。音像定位制御装置は、音源10と、スピーカ3a〜3dと、制御処理部12と、合成パラメータ設定手段13と、フィルタ係数算出手段14とを中心に構成される。本実施の形態における合成パラメータ設定手段13およびフィルタ係数算出手段14は処理特性設定手段に相当する。制御処理部12は制御手段に相当し、スピーカ3a〜3dは音響再生手段に相当する。
音源10は、モノラル音源もしくはマルチチャンネル音源の1チャンネル信号源もしくはマルチチャンネル音源の複数音源を合成した音源である。なお本実施の形態では、説明を簡略化するために音源10にモノラル音源を用いた場合について説明する。
制御処理部12は、制御用デジタルフィルタ11a〜11dから構成される。制御用デジタルフィルタ11a〜11dは、音源10の出力信号を入力する。合成パラメータ設定手段13は、各ユーザーが音量を調整するためのインターフェイスとなるものである。フィルタ係数算出手段14は、合成パラメータ設定手段13の出力信号に応じて制御用デジタルフィルタ11a〜11dのフィルタ係数を算出して制御処理部12に入力する。なお、乗員L1、L2および音響伝達関数h11〜h41および測定音M1〜M4は図9で示したものと同じであるので説明を省略する。
次に、音像定位効果を得るための制御用デジタルフィルタ11a〜11dの設計方法について説明する。図11で示した仮想音源7の位置を音像定位制御の目標位置とし、制御用デジタルフィルタ11a〜11dの伝達関数を各々C1〜C4とすると、ユーザーL1の両耳では次式を満たすM1、M2を聴き、ユーザーL2の両耳ではM3、M4を聴く。
ここでユーザーが聴くべき目標伝達関数はG1、G2なので、
に従って制御用デジタルフィルタ11a〜11dを設計すれば、ユーザーL1、L2は共に両耳でG1、G2を聴くことになるので仮想音源7の位置に音像を感じる。なお、フィルタ係数の算出にあたっては、(25)式で示される行列式を解いてもよいし、また例えば公知の適応アルゴリズムによって算出してもよい。
次に、ユーザーが各々独立に音量を調整可能にするための合成パラメータ設定手段13とフィルタ係数算出手段14と制御処理部12との動作について説明する。(24)式における逆行列部を次式で示すように置き換える。
さらに、C1〜C4について解くと次式となる。
(27)式で示されるCi(i=1〜4)は、処理特性設定手段によって制御手段(制御用デジタルフィルタ11a〜11d)に設定される処理特性に相当する。
フィルタ係数算出手段14は、(27)式で示されるフィルタの伝達関数に関して前2項の伝達関数を与えるフィルタ係数と、後ろ2項の伝達関数を与えるフィルタ係数を分けて保持する。つまり、目標伝達関数G1、G2とを用いて、
で表せられる伝達関数を与える8つのフィルタ係数(C11、C12、C21、C22、C31、C32、C41、C42)を基準係数として保持する。ここで、基準係数は処理特性係数に相当する。
一方、合成パラメータ設定手段13には、各ユーザーが聴きたい音量に関する情報が入力される。ここでは一例として、基準係数を用いて音量再生を行ったときに得られる音量に対して、ユーザーL1がα倍、ユーザーL2がβ倍の音量で聴きたい場合を考える。合成パラメータ設定手段13は、αおよびβの音量情報をフィルタ係数算出手段14に入力する。フィルタ係数算出手段14は、合成パラメータ設定手段13から入力された音量情報をもとに次式を用いてフィルタ係数を算出する。
フィルタ係数算出手段14は、(29)式で得られる伝達関数を与えるようなフィルタ係数を制御処理部12に設定する。このフィルタ係数は、制御用デジタルフィルタ11a〜11dの係数として与えられる。
一方、(27)式における前2項は、M1およびM2に掛かる項である。すなわち前2項はユーザーL1の音響効果に対して影響を与える項である。また後ろ2項は、M3およびM4に掛かることから、ユーザーL2の音響効果に対して影響を与える項である。よって、(29)式で示したように前2項をα倍することにより、ユーザーL1が聴く音量はα倍となる。同様に後ろ2項をβ倍することによりユーザーL2が聴く音量はβ倍となる。なお、αおよびβを任意に変化させてもM1とM2とに掛かる係数の比およびM3とM4とに掛かる係数の比は変化しない。つまり音響伝達関数の両耳差が変化しないので、音像定位効果が劣化することはない。
このように本実施の形態に係る音像定位制御装置は、ユーザーへの音響伝達関数の影響を考慮してフィルタ係数をユーザー毎(より正確には再生音を聞く位置毎)に分解して保持する。したがって、(29)式で示すように基準係数(処理特性係数)を定数倍し加算して算出される係数(処理特性)を制御用デジタルフィルタに設定することにより、少ない演算処理量で音像定位制御効果を維持したままユーザー個別に音量を設定することができる。
なお、本実施の形態の音像定位制御装置は、典型的にはソフトウェアを用いて実現することができる。この場合、コンピュータに上述した音像定位制御処理を行わせるためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体、例えばハードディスクやCD−ROM、MO、DVD、半導体メモリ等に記録される。
なお、本実施の形態に係る音像定位制御装置は、音量の調整が可能な構成を示したが、これに限られない。ユーザー個別に周波数特性の調整が可能な構成としてもよい。その場合、各ユーザーは合成パラメータ設定手段13に低域ブースト等の所望の周波数特性の情報を入力する。例えば、基準の係数を用いて音響再生を行ったときに得られる周波数特性に対して、ユーザーL1がGαの伝達関数およびユーザーL2がGβの伝達関数が掛かった音を聴きたい場合、フィルタ係数算出手段14は次式を用いてフィルタ係数を算出する。
なお、本実施の形態に係る音像定位制御装置は、ユーザー2名について独立に音量の調整が可能な構成を示したが、これに限られない。ユーザーが3名以上の場合にも適用することができる。以下、4名のユーザーに対する音像定位制御装置について説明する。図2は、ユーザーL1、L2、L3、L4の4名に対して同時音像定位制御と独立音量調整とを両立する音像定位制御装置の構成を示す概略図である。図2に示す音像定位制御装置は、図1のものとほぼ同様の構成を備えるが、以下の点で異なる。すなわち、制御処理部12は、制御用デジタルフィルタ11a〜11hから構成される。またM1〜M2、M3〜M4、M5〜M6、M7〜M8は、ユーザーL1、L2、L3、L4のそれぞれの両耳位置での音である。
次にユーザー4名について、同時音像定位制御を行うための制御用デジタルフィルタ11a〜11hの設計と、独立音量調整を行うための合成パラメータ13とフィルタ係数算出手段14と制御処理部12との動作について説明する。
制御用デジタルフィルタの各スピーカから各ユーザーの両耳までの音響伝達関数をhij(i=1〜8:耳を示す添字、j=1〜8:スピーカを示す添字)とすると、次式が成り立つ。
音響伝達関数の逆行列を次式で表す。
(31)式、(32)式よりC1〜C8について解くと次式となる。
フィルタ係数算出手段14は、(33)式で示されるフィルタの伝達関数に関して2項毎に伝達関数を与えるフィルタ係数を分けて保持する。つまり、目標伝達関数G1とG2とを用いて
で表される伝達関数を与える8つのフィルタ係数を基準係数として保持する。一方、合成パラメータ設定手段13には、各ユーザーが聴きたい音量に関する情報が入力される。ここでは一例として、基準係数を用いて音響再生を行ったときに得られる音量に対してユーザーL1がα倍、ユーザーL2がβ倍、ユーザーL3がγ倍、ユーザーL4がη倍の音量で聴きたい場合を考える。合成パラメータ設定手段13は、α、β、γ、ηの音量情報をフィルタ係数算出手段14に入力する。フィルタ係数算出手段14は、合成パラメータ設定手段13から入力された音量情報をもとに次式を用いてフィルタ係数を算出する。
フィルタ係数算出手段14は、(35)式で得られる伝達関数を与えるようなフィルタ係数を制御用デジタルフィルタ11a〜11hの係数として制御処理部12に設定する。ここで、(33)式におけるj=1、2に関する2項にはM1、M2が掛かっていることから、ユーザーL1の音響効果に対して影響を与える項である。同様に、j=3、4に関する2項にはM3、M4が掛かっていることから、ユーザーL2の音響効果に対して影響を与える項、j=5、6に関する2項にはM5、M6が掛かっていることから、ユーザーL3の音響効果に対して影響を与える項、j=7、8に関する2項にはM7、M8が掛かっていることから、ユーザーL4の音響効果に対して影響を与える項である。よって(35)式で示すように、基準係数を定数倍し加算した係数を制御用デジタルフィルタに設定することにより、各ユーザーが聴く音量を独立に制御することができる。なお、M1とM2に掛かる係数の比と、M3とM4に掛かる係数の比と、M5とM6に掛かる係数の比と、M7とM8に掛かる係数の比とは変化しない。つまり、音響伝達関数の両耳差は変化しないので、音像定位効果が劣化することはない。
以上に説明したように、ユーザーが4名の場合においても、音像定位効果を維持したままユーザー個別に音量を設定することができる。なお、もちろんユーザーが4名の場合に限られるものでなく、さらに複数のユーザーに対しても適用することができる。
なお、本実施の形態における音源は、モノラルの場合を示したがマルチチャンネル音源の場合にも適用できる。図3は、音源がステレオ音源の場合において同時音像定位制御と独立音量調整とを両立する音像定位制御装置の構成の概略図である。以下、図1の音像定位制御装置と異なる構成要素について説明する。図3中、音像定位制御装置は、Lチャンネル音源10aと、Rチャンネル音源10bと、Lチャンネル音源10aからの出力を入力する制御用デジタルフィルタ11a、11c、11e、11gと、Rチャンネル音源10bからの出力を入力する制御用デジタルフィルタ11b、11d、11f、11hと、加算器15a〜15dとを含む。なお加算器15aは制御用デジタルフィルタ11aと11bとの出力を加算する。同様に、加算器15bは制御用デジタルフィルタ11cと11dとの出力、加算器15dは制御用デジタルフィルタ11eと11fとの出力、加算器15dは制御用デジタルフィルタ11gと11hとの出力を各々加算する。
図3に示す音像定位制御装置は、制御用デジタルフィルタ11a、11c、11e、11gを用いてLチャンネル音源10aの信号について所望の仮想音源位置への音像定位制御を行う。また、制御用デジタルフィルタ11b、11d、11f、11hを用いてRチャンネル音源10bの信号について所望の仮想音源位置への音像定位制御を行う。フィルタ係数算出手段14は、チャンネル毎にフィルタ係数を分けて保持する。つまり、目標伝達関数G1、G2を用いて
で表される伝達関数を与える8つのフィルタ係数を基準係数として保持する。
一方、合成パラメータ設定手段13には、各ユーザーが聴きたい音量に関する情報が入力される。ここでは基準係数を用いて、音響再生を行ったときに得られる音量に対してユーザーL1がα倍、ユーザーL2がβ倍の音量で聴きたい場合、合成パラメータ設定手段13は、αとβとの音量情報をフィルタ係数算出手段14に入力する。フィルタ係数算出手段14は、合成パラメータ設定手段13により入力された音量情報をもとに次式を用いてフィルタ係数を算出する。
フィルタ係数算出手段14は、(37)式で得られる伝達関数を与えるようなフィルタ係数を制御用デジタルフィルタ11a〜11hの係数として制御処理部12に設定する。なおもちろん、Lチャンネル音源10aの信号のみ音量を調整したい場合には、CLi(i=1〜4)のフィルタ係数を定数倍し加算して得られたフィルタ係数を制御用デジタルフィルタ11a、11c、11e、11gの係数として制御処理部12に与えればよい。
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2に係る音像定位制御装置の構成を示す概略図である。音像定位制御装置は、ユーザー2名に対して同じ音像定位効果を与えるとともに、各々独立に音量を調整可能である。図4において音像定位制御装置は、スピーカ3a〜3dと、音源10と、制御用デジタルフィルタ11a〜11hと、合成パラメータ設定手段13と、ゲイン器16a〜16hと、加算器15a〜15dとを備える。なお、図4において実施の形態1と同等の構成要素には同じ符号を付しており、説明は省略する。
ゲイン器16a〜16hには、音源10からの出力が入力されゲインを可変調整できる。制御用デジタルフィルタ11a〜11hには、ゲイン器16a〜16hからの出力が入力される。加算器15aは、制御用デジタルフィルタ11aと11bとの出力を加算する。同様に、加算器15bは、制御用デジタルフィルタ11cと11dとの出力を加算する。加算器15cは、制御用デジタルフィルタ11eと11fとの出力を加算する。加算器15dは、制御用デジタルフィルタ11gと11hとの出力を加算する。合成パラメータ設定手段13は、ゲイン器16a〜16hのゲインを制御し、各ユーザーが音量を調整するためのインターフェイスとなる。
制御用デジタルフィルタ11aには、(28)式で得られる伝達関数C11を与えるフィルタ係数が設定される。同様に、制御用デジタルフィルタ11bには、(27)式で得られる伝達関数C12を与えるフィルタ係数、制御用デジタルフィルタ11cには伝達関数C21を与えるフィルタ係数、制御用デジタルフィルタ11dには、(27)式で得られる伝達関数C22を与えるフィルタ係数、制御用デジタルフィルタ11eには伝達関数C31を与えるフィルタ係数、制御用デジタルフィルタ11fには伝達関数C32を与えるフィルタ係数、制御用デジタルフィルタ11gには伝達関数C41を与えるフィルタ係数、制御用デジタルフィルタ11hには伝達関数C42を与えるフィルタ係数が各々設定される。
合成パラメータ設定手段13は、ユーザーによって設定される各ユーザーの音量設定値に基づいてゲイン器16aから16hのゲインを設定する。例えば、ユーザーL1がα倍、ユーザーL2がβ倍の音量で聴きたい場合、合成パラメータ設定手段13は、ゲイン器16a、16c、16e、16gにはゲインαを設定する。一方、ゲイン器16b、16d、16f、16hにはゲインβを設定する。この設定により、スピーカ3a〜3dからは音源10に対し次式で示される音響伝達関数が掛かった音が出力される。
(38)式は、図4におけるスピーカ3a〜3dの出力は、図1の構成における(29)式を満足するときのスピーカ3a〜3dからの出力と同じである。よって、実施の形態1で説明したのと同様に、ユーザーL1、L2は音像定位制御効果を維持しつつ、各自が任意に設定した音量で再生音を聴くことができる。
このように本実施の形態に係る音像定位制御装置は、各ユーザーの音量設定に応じてゲインを調整することにより、少ない演算処理量で音像定位制御効果を維持したままユーザー個別に音量を設定することができる。
なお、本実施の形態に係る音像定位制御装置は、ユーザーが2名の場合を示したが、これに限られず3名以上の複数のユーザーに対しても同様の効果を得ることができる。この場合、増やしたいユーザーの数に応じて、図4のゲイン器16a〜16d、制御用デジタルフィルタ11a〜11d、加算器15a〜15bおよびスピーカ3a〜3bに相当する構成要素を追加すればよい。
また、本実施の形態に係る音像定位制御装置では、音像定位制御効果を維持したままユーザー毎に音量を制御することが可能であるが、ゲイン器の代わりに(もしくはゲイン器に加えてさらに)イコライザを設けることにより、音像定位制御効果を維持したままユーザー毎に音質を制御することが可能となる。
図5〜図8は、実施の形態1および2に係る音像定位制御装置の適用例を示す。
図5は、音像定位制御装置を車両内に設置し、操作部をダッシュボード部に設けた例を示す。図5中、音量調整ダイヤル50〜53は、図1〜4の合成パラメータ設定手段13に相当し、ユーザー毎に個別に音量の調整が可能である。音像定位制御ボタン60〜63は押下されることにより、ユーザー毎に個別に音像定位の効果を発生させる。運転席側のユーザーは、音像定位制御ボタン60を押下することにより、再生する音楽に対し音像定位を実現することができる。さらに運転席側のユーザーは、音量調整ダイヤル50を操作することにより音像定位を維持したまま運転席側のユーザーに対してのみ、設定された音量に変化させることができる。一方、助手席側のユーザーは、音像定位制御ボタン61を押下し、音量調整ダイヤル51を操作することにより音像定位を維持したまま助手席側のユーザーに対してのみ、設定された音量に変化させることができる。同様に音量ダイヤル52、53を調整することにより後部座席のユーザーに達する音量を変化させることができる。
また、図6に示すように音像定位制御装置の操作部は各ユーザの手の届く範囲、例えば各座席の肘掛部に設置されてもよい。この場合、各座席のユーザーは肘掛部に設けられた音像定位制御ボタン60を押下することにより音像定位を実現することできる。さらに音量調整ダイヤル50を操作することにより音像定位を維持したまま当該座席側のユーザーに対してのみ、設定された音量に変化させることができる。なお、従来の音像定位制御装置ではユーザ毎に音量を調整することができなかったが、本実施の形態の音像定位制御装置では音像定位を維持したままユーザが個別に音量を調整することができる。したがって、図6のように、音量調整を行うための操作部をユーザの数だけ用意し、対応するユーザの手の届く範囲にそれぞれ設置することができる。
また例えば図7に示すように操作部は車両内のフロントパネル部に設置されてもよく、ユーザは各座席における音量を一括して管理することができる。図5や図7のように各ユーザ用の操作部を一箇所にまとめて配置することにより、配線の手間が省け、設置コストを低減することができる。
図8は、音像定位制御装置をホームシアター用として適用したものであり、例えばリビングルーム等において用いることができる。音像定位制御ボタン60〜63を押下することにより、リビングルーム内の所定の位置で音像効果を実現する。また、音量調整ダイヤル50を操作することにより、音像定位を維持したまま、それぞれ所定の位置での音量を個別に変化させることができる。また、これらの操作部はリモートコントロール装置70に設けることもできる。
なお、上記実施の形態の音像定位制御装置を構成する構成要素の一部または全部は、1チップ化した集積回路によって実現することも可能である。このような集積回路は、LSIや専用回路や汎用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用しても良い。さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて上記の構成要素の集積化を行ってもよい。なお、前述の基準係数については、集積回路に接続された、集積回路の外部の記憶装置に格納されても良く、この場合、集積回路は、記憶装置に記録されている基準係数を読み出して信号処理を行う。
なお、上記実施の形態の音像定位制御装置は、カーオーディオやホームシアターに適用できるだけでなく、音量や音質を調整する様々な装置に適用できる。例えば図13に示すように音像定位制御装置はテレビジョン受像機に設けられてもよい。ユーザ毎に個別に音像定位の効果を発生させるための音像定位制御ボタン60およびユーザ毎に個別に音量の調整を行うための音量調整ダイヤル50は、テレビジョン受像機に設けられても良いし、リモートコントローラ70に設けられてもよい。またゲーム装置であれば、音像定位制御ボタン及び音量調整ダイヤルは各コントローラに設けられてもよい。ユーザは、映像を見ながら個別に音量や周波数特性を変化させることができるので利便性の高いテレビジョン受像機、ゲーム装置を提供することができる。
本発明は、理想的な定位感や音場感の向上が要望されるリビングルームや車室内等で使用可能な再生装置等に好適である。
実施の形態1に係る音像定位制御装置の構成の示す概略図
4名のユーザーに対して同時音像定位制御と独立音量調整とを両立する音像定位制御装置の構成を示す概略図
音源がステレオ音源の場合において同時音像定位制御と独立音量調整とを両立する音像定位制御装置の構成の概略図
実施の形態2に係る音像定位制御装置の構成を示す概略図
音像定位制御装置を車載用に適用した例を示す図
音像定位制御装置を車載用に適用した例を示す図
音像定位制御装置を車載用に適用した例を示す図
音像定位制御装置をホームシアター用に適用した例を示す図
従来の音響再生装置の構成を示す概略図
伝達関数の計測方法を示す図
目標伝達関数を示す図
従来の音像定位制御を行う音響再生装置の構成を示す概略図
音像定位制御装置がテレビジョン受像機に設けられた例を示す図
符号の説明
1 音響装置
2 記録装置
3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h スピーカ
4a、4b、4c、4d アンプ
5 逆フィルタネットワーク
6 テスト信号発生装置
7 仮想音源
8a、8b フィルタ
9 モノラル音源
10 音源
11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h 制御用デジタルフィルタ
12 制御処理部
13 合成パラメータ設定手段
14 フィルタ係数算出手段
15a、15b、15c、15d 加算器
16a、16b、16c、16d、16e、16f、16g、16h ゲイン器
50、51、52、53 音量調整操作部
60、61、62、63 音像定位制御操作部
70 ホームシアター用音像定位制御装置
71 リモートコントロール装置