JPWO2006129668A1 - 糖衣を施した丸剤 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、上記製剤の中にはその薬物が呈する不快な味の程度により実質的にその味を隠し切れず、服用しやすい製剤とは呼びにくいものが少なからず存在するのが現状である。
このうち、糖衣錠を含む錠剤やカプセル剤では配合する薬物の配合量が多くなると、製剤そのものが大きくなり、のみ下しづらくなるのが一般的である。一方、そのような製剤を適度な大きさに抑えるためには1回に服用する製剤の個数を多くする必要があるため、服用する製剤の個数を数え、取り出し、確認することなどがわずらわしいという意味で服用性が低下することになる。従来の糖衣錠と比較すれば小型化する糖衣錠の製造に関する試みもなされているが(特許文献1参照)、いずれにしてもその素錠よりも小型化することは不可能である。また、そのような比較的大きな糖衣錠やフィルムコート錠あるいはカプセル剤を水なしで服用すること自体、適切な服薬方法であるとはいいがたい。
また、顆粒にフィルムコーティングを施すことで薬物由来の不快な味をマスクすることが可能になる場合もある。一般に顆粒の径が1mmを超えること(日本薬局方の製剤総則における顆粒剤の粒度は1.7mm未満で、1.4mmふるいに残留するものは全量の5%以下と規定されている)は稀である。このような小さな顆粒の単位重量あたりの表面積は錠剤やカプセル剤とそれと比べて大きいため、これらの顆粒は舌や口腔粘膜表面に付着しやすく、あるいは入れ歯や義歯の隙間に入り込みやすく、水なしで服用した場合にすべてをのみ下すことは困難となる。このように付着するなどして口腔内に残留した顆粒からは、フィルムコートの溶解にともない内部の薬物が溶出してその不快な味が感知されることとなる。
本発明者らは上記の課題を解決する目的で鋭意検討を行った。その結果、下記の手段を用いることにより同課題を解決し、本発明を完成するに至った。
(1)有効成分を含有する顆粒、該顆粒の表面を覆う、水溶性高分子からなるコーティング層、および該コーティング層を覆う糖衣層を含み、直径が1.4〜4.0mmである丸剤。
(2)水に溶解したときに、前記有効成分が溶出し始めるまでに15秒以上要する(1)の丸剤。
(3)糖衣層が、糖アルコールおよびトレハロースから選ばれる1種類以上の糖を含む(1)の丸剤。
(4)糖衣層が、さらに矯味剤、水溶性高分子、香料および色素からなる群より選ばれる1種類以上の成分を含む(3)の丸剤。
(5)糖衣層が、水または糖アルコールもしくはトレハロースの水溶液を噴霧しつつ、粉末状の糖アルコールもしくはトレハロースを前記コーティング層上に積層させることにより得られる(3)の丸剤。
(6)糖衣層が、糖アルコールまたはトレハロースの水溶液を前記コーティング層上に噴霧して積層させることにより得られる(3)の丸剤。
(7)有効成分を含有する球形顆粒の表面に水溶性高分子からなるコーティング層を施し、さらに該コーティング層上に糖衣層を施して直径1.4〜4.0mmの球状の丸剤を得ることを特徴とする、丸剤の製造方法。
(8)糖衣層が、水または糖アルコールもしくはトレハロースの水溶液を噴霧しつつ、粉末状の糖アルコールもしくはトレハロースを前記コーティング層上に積層させることにより施される(7)の方法。
(9)糖衣層が、糖アルコールまたはトレハロースの水溶液を前記コーティング層上に噴霧して積層させることにより施される(7)の方法。
本発明の丸剤の1回に服用する粒数としては特に制限されないが、口腔内で速やかに糖衣の風味が広がるよう10粒以上とすることが好ましく、本剤が必ずしも粒数で用量を規定する製剤ではないことを考慮に入れると、丸剤1粒の有無が及ぼす用量の変動に対する影響を少なくするうえで、1回あたりに服用する丸剤の粒数は20粒以上(1粒の有無による用量の変動が約5%以下)がより好ましい。
本願の丸剤を構成する糖衣層およびコーティング層の組成と厚みは、服用後一定時間口腔内で不快な味を呈する薬物が溶出しないような組成と厚みにすることが好ましい。ここで、服用後の一定時間とは、本剤を服用してからその糖衣の風味を感知し唾液の分泌が活発になるまでに要する時間を意味し、一般的には5〜10秒程度である。その後、のみ下すことを勘案すると、有効成分が溶出し始めるまでの時間を規定する必要がある。その目安は、水を試験液とする溶出試験で有効成分が溶出し始めるまでに要する時間として15秒以上、さらに好ましくは30秒以上である。
かぜ薬には解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、気管支拡張薬、去痰薬、制酸薬、鎮静薬、ビタミン類、漢方薬や局所麻酔薬などが含まれる。また、胃腸薬には、制酸薬、健胃薬、消化薬、整腸薬、止瀉薬、鎮痛鎮痙薬、粘膜修復薬などが含まれる。
解熱鎮痛薬としては、アスピリン、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン、エテンザミド、サザピリン、サリチルアミド、ラクチルフェネチジンなどが挙げられる。
抗ヒスタミン薬としては、塩酸イソチペンジル、塩酸イプロヘプチン、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸プロメタジン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、タンニン酸フェネタジン、テオクル酸ジフェニルピラリン、ナパジシル酸メブヒドロリン、フマル酸クレマスチン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、マレイン酸カルビノキサミン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、d-マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジフェテロールなどが挙げられる。
鎮咳薬としては、塩酸アロクラミド、塩酸クロペラスチン、クエン酸ペントキシベリン、クエン酸チペピジン、ジブナートナトリウム、臭化水素酸デキストロメトルファン、デキストロメトルファン・フェノールフタリン塩、塩酸ノスカピン、ヒベンズ酸チペピジン、フェンジゾ酸クロペラスチン、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデインなどが挙げられる。
気管支拡張薬としては、塩酸トリメトキノール、塩酸メトキシフェナミン、dl−塩酸メチルエフェドリン、l−塩酸メチルエフェドリンなどが挙げられる。
去痰薬としては、l−メント−ル、グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、クレゾールスルホン酸カリウムなどが挙げられる。
制酸薬としては、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、アミノ酢酸などが挙げられる。
鎮静薬としては、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素などが挙げられる。
ビタミン類としては、ビタミンB1 若しくはその誘導体又はそれらの塩(例えば、フルスルチアミン、塩酸フルスルチアミン、プロスルチアミン、オクトチアミン、チアミンジスルフィド、ビスベンチアミン、ビスブチチアミン、ビスイブチアミン、ベンフォチアミン、塩酸セトチアミンなど)、ビタミンB2若しくはその誘導体又はそれらの塩(例えば、リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、酪酸リボフラビン等)、ビタミンC(例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸ナトリウム等)等が挙げられる。
生薬としては、アセンヤク、ウイキョウ、ウコン、ウヤク、烏賊骨、エンゴサク、オウヒ、オウバク、オウレン、オウゴン、オンジ、カロニン、カッコン、カンゾウ、キキョウ、キョウニン、ケイガイ、ケイヒ、ゲンチアナ、コウジン、コウボク、ゴシュユ、コロンボ、ゴミシ、コンズランゴ、ゴオウ、サンショウ、サイコ、サイシン、サンショウ、シオン、シャジン、シソシ、シュクシャ、ショウキョウ、シャクヤク、ショウズク、ジャコウ、シャジン、シャゼンシ、シャゼンソウ、ジリュウ、セキサン、セネガ、センブリ、ソウジュツ、ソウハクヒ、ソヨウ、ダイオウ、チクセツニンジン、チョウジ、チンピ、トウヒ、トコン、ボタンピ、バイモ、バクモンドウ、ハンゲ、ボレイ、ナンテンジツ、ニガキ、ニンジン、マオウ、レンギョウなどの生薬末及びそのエキス等が挙げられる。
また、既に配合されている漢方処方もそのエキスを含めて使用できる。例えば、葛根湯、桂枝湯、小青竜湯、小柴胡湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯などが挙げられる。
局所麻酔薬としては、塩化セチルピリジニウム、塩化デカリニウム、塩酸クロルヘキシジンなどが挙げられる。
健胃薬としては、健胃作用のある生薬、塩酸ベタイン、グルタミン酸塩酸塩、塩化カルニチン、塩化ベタネコール、乾燥酵母などが挙げられる。
消化薬としては、でんぷん消化酵素、蛋白消化酵素、脂肪消化酵素、繊維消化酵素などの消化酵素や胆汁成分であるウルソデスオキシコール酸、オキシコーラン酸塩類、コール酸、胆汁末、胆汁エキス(末)、デヒドロコール酸、動物胆などが挙げられる。
整腸薬としては、整腸作用のある生薬、整腸生菌成分、赤芽柏などが挙げられる。
止瀉薬としては、止瀉作用のある生薬、アクリノール、塩化ベルベリン、グアヤコール、クレオソート、サリチル酸フェニル、炭酸グアヤコール、タンニン酸ベルベリン、次サリチル酸ビスマス、次硝酸ビスマス、次炭酸ビスマス、次没食子酸ビスマス、タンニン酸、タンニン酸アルブミン、メチレンチモールタンニン、カオリン、天然ケイ酸アルミニウム、ヒドロキシナフトエ酸アルミニウム、ペクチン、薬用炭、沈降炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウムなどが挙げられる。
鎮痛鎮痙薬としては、鎮痛鎮痙作用のある生薬、塩酸オキシフェンサイクリミン、塩酸ジサイクロミン、塩酸メチキセン、臭化水素酸スコポラミン、臭化メチルアトロピン、臭化メチルアニソトロピン、臭化メチルスコポラミン、臭化メチル−l−ヒヨスチアミン、臭化メチルベナクチジウム、ベラドンナエキス、ヨウ化イソプロパミド、ヨウ化ジフェニルピペリジノメチルジオキソラン、ロートエキス、ロート根総アルカロイドクエン酸塩、塩酸パパベリン、アミノ安息香酸エチルなどが挙げられる。
粘膜修復薬としては、粘膜修復作用のある生薬、アズレンスルホン酸ナトリウム、アルジオキサ、グリチルリチン酸及びその塩類並びに甘草抽出物、L−グルタミン、銅クロロフィリンカリウム、銅クロロフィリンナトリウム、塩酸ヒスチジン、ブタ胃壁ペプシン分解物、ブタ胃壁酸加水分解物、メチルメチオニンスルホニウムクロライドなどが挙げられる。
また、胃腸薬として胃酸分泌を抑える塩酸ラニチジン、シメチジン、ファモチジンなどのH2ブロッカーやランソプラゾールなどのプロトンポンプ阻害剤、あるいは胃腸機能を調整する塩化カルニチン、マレイン酸トリメブチンなどが含まれる。
また、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェインなども含まれる。
本発明の丸剤の核部となる顆粒は、有効成分を、結合剤の水溶液で造粒したり、粉末状態の結合剤を添加して水やアルコール等を溶媒として造粒したり、粉末状態の結合剤を添加して圧縮成形後、破砕して得ることができる。また、結合剤の水溶液に有効成分を分散させて造粒して得ることもできる。なお、核部となる顆粒に配合する有効成分中に、それ自身が結合能力を有する有効成分(例えばコウジンエキスなど)を含む場合には、医薬品添加物としての結合剤を使用しない場合もある。このような有効成分は、粉末として積層させることにより配合することも、粉末積層時に噴霧する水溶液中に溶解して配合(したがって、その成分は粉末である必要はない)することも、さらには粉末や非粉末の状態を問わず造粒前の練合物中に配合することも可能である。
また、いわゆる押出し造粒法に引き続き、球形整粒機(例えば、製品名:マルメライザー、不二パウダル株式会社製)などにより製造することもできる。
また、ここでいう顆粒には通常医薬品でいう丸剤も含まれる。核部として丸剤を用いる場合は、一般に用いられる製丸機や転動造粒機を用いて、日本薬局方の製剤総則で規定される顆粒よりも大きめの球形顆粒を製することで得られる。
顆粒の表面にフィルムコーティングや糖衣を施すことを考慮すれば、流動層造粒機で得られやすい密度の低い軽質な顆粒よりも、高速攪拌造粒機や押出造粒機、転動造粒機などにより得られやすい密度の高い重質な顆粒のほうがより好ましい。
顆粒の造粒に用いる結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、精製白糖、還元麦芽糖水アメ、還元麦芽糖などが挙げられる。これらの結合剤は水やその他の溶媒に溶解して溶液として使用する。
結合剤を水溶液で造粒するときのスプレーによる噴霧方法は造粒装置の種類に応じて適当に選択でき、例えば、トップスプレー方式、ボトムスプレー方式、タンジェンシャルスプレー方式などいずれであってもよい。
本発明の丸剤においては、コーティング層の組成と厚み、並びに、後述する糖衣層の組成と厚みを調節することによって、薬物溶出開始までのラグタイムをその目的に応じて適宜調節することが可能である。そうすることでコーティング層を施したフィルムコート顆粒を各種製造することができる。
本発明において、コーティング層や後述する糖衣層を施すときに使用する製造装置としては、通常用いられるコーティングパンやコーティング機、あるいは、コーティング機能を併せ持つ転動造粒機を用いたりすることができる。その中でも、前述の遠心転動造粒コーティング機(フロイント産業製、グラニュレックス、CFグラニュレーターなど)のような複合造粒機を用いれば、操作性が良好で効率よく製造できる。
なお、必要に応じて医薬品の有効成分であって不快な味や臭いを呈することのない成分を糖衣層に配合することも可能である。例えば、味覚や風味のうえで一般的に好感がもたれるビタミンCやケイヒ、銅クロロフィリンナトリウムなどや、かぜ薬や胃腸薬に配合される無味無臭の制酸成分などは、丸剤の核部の成分としてのみではなく糖衣層の成分として配合することも可能である。
本発明において糖衣を施す方法としては、糖アルコールやトレハロースの水溶液をコーティング層上に噴霧して積層させる方法や、水または糖アルコールもしくはトレハロースの水溶液を噴霧しつつ、粉末状の糖アルコールもしくはトレハロース、またはこれらの糖と矯味剤、香料、色素および糖アルコールの混合粉末を積層させる方法などが挙げられる。例えば、製造装置として、前述の遠心転動造粒コーティング機(フロイント産業製:グラニュレックス、CFグラニュレーター等やパウレック製:マルチプレックス等)のような複合造粒機を用いれば、操作性が良好で効率よく製造できる。
以上は単に例示したに過ぎず、造粒・製丸・コーティング・糖衣がけの各工程の製造方法として必ずしもこれらの手法に限定されるものではない。
粒子径0.71〜0.85mmの球形顆粒である精製白糖4.0kg(フロイント産業製、商品名:ノンパレル−103)を芯物質とし、遠心転動造粒コーティング装置(フロイント産業製、製品名:グラニュレックスGX40、回転数:200rpm、スリットエア温度:25℃)を用いて、アセトアミノフェン(79.5重量%)、カフェイン(17.8重量%)、ケイヒ末(2.7重量%)および軽質無水ケイ酸(0.5重量%)の比率からなる混合粉末6kgを添加(添加速度:100g/分)し、結合液として10%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を噴霧(噴霧速度:20g/分)しながら、混合粉末を積層させて、転動造粒を行った。得られた造粒物を一旦取り出し、篩過(12〜20メッシュ)を行い、粒径を整えた。その篩過した造粒物3kgを改めて、上記の遠心転動造粒コーティング装置に投入し、上記と同様に10%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を噴霧(噴霧速度:20g/分)しながら混合粉末6.0kgを投入(添加速度:100g/分)し、積層的に付着させた。同様に、得られた造粒物を再度取り出し、そのうちの2.5kgの造粒物を上記の遠心転動造粒コーティング装置に再び投入し、混合粉末2.5kgを添加(添加速度:100g/分)しながら、同様の操作を繰り返し、最終的に直径1.7〜2.4mmとなる核部となる球形顆粒(下記の比較例1とした)を得た。
次に、得られた核部となる球形顆粒4.0kgを上記の遠心転動造粒コーティング装置(回転数:200rpm、スリットエア温度: 80℃)に投入し、0.5%酸化チタンを含む5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液8Lを噴霧コーティングし、核部の重量に対して10%に相当するフィルムコーティングが施されたフィルムコート球形顆粒(下記の比較例2とした)4.4kgを得た。
更に、このフィルムコート球形顆粒2.5kgを上記の遠心転動造粒コーティング装置回転数:200rpm、スリットエア温度:35℃)に投入し、粉末の還元麦芽糖(98.1重量部)(商品名:粉末マビット、発売元:(株)林原商事)、クエン酸(1.5重量部)、軽質無水ケイ酸(0.2重量部)および香料として粉末のいちごフレーバー(0.2重量部)からなる混合粉末2.5kgを投入し、還元麦芽糖の水溶液(固形分重量18%)(商品名:マビット、発売元:(株)林原商事)を噴霧しながら、積層的に転動造粒し、フィルムコート球形顆粒の重量と同じ重量の粉末からなる糖衣を施した直径2.2〜3.2mmの糖衣丸剤5.1kgを得た。
本糖衣丸剤843mgは、アセトアミノフェン300mg、カフェイン67mg、ケイヒ末10mgを含み、その粒数は平均で84粒であった。この薬物量は、成人が解熱鎮痛薬として服用するアセトアミノフェンの1回量に相当する。
精製白糖の球形顆粒(実施例1と同一)500gを芯物質とし、遠心転動造粒器(フロイント産業製、製品名:CFグラニュレーター、機種:CF−360、回転数:300rpm、スリットエア温度:約80℃)を用いて、10%メチルセルロース(信越化学製、SM−4)水溶液を噴霧しつつ総合感冒薬の混合末2283g(アセトアミノフェン1500g、臭化水素酸デキストロメトルファン80g、マレイン酸クロルフェニラミン12.5g、無水カフェイン125g、リン酸リボフラビンナトリウム20g、タルク45g)を散布しながら芯物質の表面に総合感冒薬の混合末を積層させ、乾燥・篩過することで核部となる顆粒を得た。
次に、得られた核部となる顆粒の一部1500gを転動流動コーティング装置(パウレック製、製品名:マルチプレックス、機種:MP−01、回転数:300rpm、給気温度:約80℃)中に投入し、メチルセルロース150gおよび酸化マグネシウム197gを水1700gに分散させた懸濁液を噴霧・乾燥することで、フィルムコート球形顆粒を得た。
得られたフィルムコート球形顆粒の一部500gを同じく転動流動コーティング装置に投入し、エリスリトール300g、クエン酸4g、スクラロース0.7g、黄色アルミニウムレーキ0.1g、レモン香料0.8gを精製水700gに溶解させた水溶液を噴霧乾燥することで、直径1.70〜2.36mmの、総合感冒薬を含有するレモン風味の糖衣丸剤を得た。
本糖衣丸剤は、総合感冒薬の有効成分408mg(アセトアミノフェン300mg、臭化水素酸デキストロメトルファン16mg、マレイン酸クロルフェニラミン2.5mg、無水カフェイン25mg、リン酸リボフラビンナトリウム4mg)を含む。
精製白糖の球形顆粒(実施例1と同一)500gを芯物質とし、転動流動コーティング装置(実施例2と同一機種、回転数:300rpm、給気温度:約70℃)を用いて、イブプロフェン1800gを5%メチルセルロース水溶液5.4Lに分散させ、噴霧することで芯物質の表面にイブプロフェンを積層させ、乾燥・篩過することで核部となる顆粒を得た。
得られた核部となる顆粒の一部1500gを転動流動コーティング装置(パウレック製、製品名:マルチプレックス、機種:MP−01、ワースター装置を装着、回転数:300rpm、給気温度:約70℃)中に投入し、メチルセルロース150gおよびマンニトール150gを水1700gに溶解させた水溶液を噴霧・乾燥することで、フィルムコート顆粒を得た。
得られたフィルムコート顆粒の一部500gを同じく転動流動コーティング装置に投入し、エリスリトール300g、クエン酸4g、スクラロース0.7g、食用赤色、オレンジ香料0.8gを精製水700gに溶解させた水溶液を噴霧乾燥することで、直径1.40〜2.00mmの、イブプロフェンを含有するオレンジ風味の糖衣丸剤を得た。
本糖衣丸剤は、イブプロフェン150mgを含む。
精製白糖の球形顆粒(実施例1と同一)1200gを芯物質とし、遠心転動造粒器(フロイント産業製、製品名:CFグラニュレーター、機種:CF−360、回転数:300rpm、スリットエア温度:約80℃)を用いて、42%コウジンエキス水溶液(コウジンエキス末166g含有、全量395g)を噴霧しつつ胃腸薬混合末1860g(コウジンエキス末167g、ソウジュツエキス末75g、エンゴサク末625g、ボレイ末833g、粉末還元麦芽糖水アメ160g)を散布することで芯物質表面に胃腸薬混合末を積層(混合末の散布終了前にコウジンエキス水溶液噴霧が終了するようにそれぞれ調整し、コウジンエキス水溶液噴霧終了後は10%メチルセルロース水溶液を噴霧する)させ、乾燥・篩過することで造粒物を得た。得られた造粒物の一部1600gを再度遠心転動造粒器に投入し、42%コウジンエキス水溶液(コウジンエキス末199g含有、全量473g)を噴霧しつつ胃腸薬混合末2242g(コウジンエキス末200g、ソウジュツエキス末90g、エンゴサク末750g、ボレイ末999g、粉末還元麦芽糖水アメ204g)を散布することで芯物質表面に胃腸薬混合末を積層(混合末の散布終了前にコウジンエキス水溶液噴霧が終了するようにそれぞれ調整し、コウジンエキス水溶液噴霧終了後は10%メチルセルロース水溶液を噴霧する)させ、乾燥・篩過することで核部となる顆粒を得た。
得られた核部となる顆粒4000gを同じく遠心転動造粒器中に投入し、メチルセルロース560gおよび酸化チタン56gを水4984gに分散させた懸濁液を噴霧乾燥することで、フィルムコート顆粒を得た。
得られたフィルムコート顆粒1000gを同じく遠心転動造粒器中に投入し、0.25%銅クロロフィリンナトリウムを含む10%メチルセルロース水溶液130gを噴霧しつつ糖衣成分の混合末612g(エリスリトール600g、ペパーミントフレーバー8g、スクラロース1.5g)を散布することでフィルムコート顆粒の表面に糖衣成分の混合末を積層させ、乾燥・篩過して、直径1.70〜2.36mmの、胃腸薬を含有するミント風味の糖衣丸剤を得た。
本糖衣丸剤1.65gは、胃腸薬の有効成分746mg(コウジンエキス末133mg(原生薬換算800mg)、ソウジュツエキス末30mg(原生薬換算300mg)、エンゴサク末250mg、ボレイ末333mg)を含む。
実施例の製造工程の途中で得られたフィルムコ−ト前の苦味および臭いを有する核部の球形顆粒を、下記の溶出試験の比較対照に用いた。
(比較例2) フィルムコート球形顆粒
実施例の製造工程の途中で得られた糖衣前のフィルムコート球形顆粒を、下記の溶出試験の比較対照に用いた。
第十四改正日本薬局方第一部の一般試験法に記載されている溶出試験の第2法に準拠して、試験液に精製水900mL(37℃)を用い、パドル回転数100回転/分の条件下で溶出試験を行った。試料として比較例1の核部球形顆粒(500mg)、比較例2のフィルムコート球形顆粒(550mg)及び実施例1の糖衣丸剤(1100mg)を供した。含有する薬物量は各試料とも同等になるようにした。時間経過(0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、3.5、10及び15分)とともに試験液を約0.5mLずつ採取した。採取した各試験液は孔径0.45μmのメンブランフィルターで濾過した。濾過した試験液を正確に0.1mL量りとり、そこへ精製水4mLを加えて混合し、試料溶液とした。分光光度計により各試料溶液の吸光度(波長242nm)を測定し、試験開始30分後の試験液の吸光度を100%として、各試料溶液中の薬物の溶出率をもとめた。
その溶出挙動の結果を図1に示す。図1に示すとおり、比較例1の核部球形顆粒は溶出試験開始後、速やかに薬物溶出を開始し、約5分後に薬物の大部分が溶出した。一方、比較例2のフィルムコート球形顆粒および実施例の糖衣丸剤はそれぞれ15および30秒間薬物溶出を示さず、その後、薬物が溶出した。両者とも同様な溶出挙動を示し、試験開始から約10分間後に薬物の大部分が溶出した。
ボランティア10名に比較例1の核部球形顆粒0.38gを服用後、約6時間経過後に、比較例2のフィルムコート球形顆粒0.42gおよび実施例の糖衣丸剤0.84gを、同様の時間間隔をおいて服用させた。服用終了後、各人の感想を実施例および比較例のそれぞれにつき、表にしたがい数値化して評点させた。実施例または比較例ごとにすべての項目の評点を合計して(最低点4点、最高点20点)、ボランティア10名の総合点としてそれぞれ実施例または比較例ごとに求めた(最低点40点、最高点200点)。
比較例1に関し、顆粒の苦味に耐え難いため、全量を服用すること自体が苦痛であるとの感想をもったボランティアが多く、ボランティアの全員が「水が必要」と回答した。一方、比較例2および実施例に関しては、「水が必要」との回答はなかった。これは、「味が苦い」との回答がなかったことから、比較例2および実施例のいずれも原薬の不快な味がマスクされていたこと、および、球形顆粒の大きさ(径)がのみ下すのに適した大きさであったことによるものと推定される。
これらの官能試験の結果は、上記溶出試験の結果と極めてよく一致する。
なお、比較例2と実施例との総合点の差(28点)は、主として製剤の味の項目で「おいしい」または「ややおいしい」との評価を得た実施例に対し、比較例2では多くが「特に感じない」であったことによるものである。また、味に関連して「のみ下し」や「水の必要性」の項目で比較例2の評点が実施例の評点より低かった。これは、比較例2の服用時と実施例の服用時とを比較して唾液の分泌量が少ないことに関係していると推定される。
上記の試験例で示したように、本発明は、不快な味を呈する原薬を単にマスクするだけでなく、糖衣を構成する成分の風味が口腔内で速やかに広がることにより唾液分泌が促進され、のみ下すのに適切な大きさ(径)である製剤を水なしで容易にのみくだすことを可能になった。
本発明の糖衣を施した丸剤は顆粒剤のような感覚で服用できる一方、顆粒剤のように誤って気道に吸い込みむせてしまう可能性が極めて低い。このことは、風味の改善だけでなく、特に小児や高齢者が服用するうえで顆粒剤に比べて服用性が向上していることを示す。
また、官能試験の結果にみられるように、本剤を水なしで服用することができることから、外出先など水が容易に手に入らない時や場所などで服用することが可能である。
これらのことにより、服用時の患者の苦痛をより軽減し(服用性の改善)、服薬履行性(コンプライアンス)を高めることができる。
Claims (9)
- 有効成分を含有する顆粒、該顆粒の表面を覆う、水溶性高分子からなるコーティング層、および該コーティング層を覆う糖衣層を含み、直径が1.4〜4.0mmである丸剤。
- 水に溶解したときに、前記有効成分が溶出し始めるまでに15秒以上要する請求項1記載の丸剤。
- 糖衣層が、糖アルコールおよびトレハロースから選ばれる1種類以上の糖を含む請求項1記載の丸剤。
- 糖衣層が、さらに矯味剤、水溶性高分子、香料および色素からなる群より選ばれる1種類以上の成分を含む請求項3記載の丸剤。
- 糖衣層が、水または糖アルコールもしくはトレハロースの水溶液を噴霧しつつ、粉末状の糖アルコールもしくはトレハロースを前記コーティング層上に積層させることにより得られる請求項3記載の丸剤。
- 糖衣層が、糖アルコールまたはトレハロースの水溶液を前記コーティング層上に噴霧して積層させることにより得られる請求項3記載の丸剤。
- 有効成分を含有する球形顆粒の表面に水溶性高分子からなるコーティング層を施し、さらに該コーティング層上に糖衣層を施して直径1.4〜4.0mmの球状の丸剤を得ることを特徴とする、丸剤の製造方法。
- 糖衣層が、水または糖アルコールもしくはトレハロースの水溶液を噴霧しつつ、粉末状の糖アルコールもしくはトレハロースを前記コーティング層上に積層させることにより施される請求項7記載の丸剤の製造方法。
- 糖衣層が、糖アルコールまたはトレハロースの水溶液を前記コーティング層上に噴霧して積層させることにより施される請求項7記載の丸剤の製造方法。
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