上記目的を達成する本発明の第1の背景置換装置は、複数の撮影条件それぞれの下で共通の被写体が撮影されて得られた複数の撮影画像を取得する画像取得部と、
上記画像取得部で取得された撮影画像に基づいて、撮影画像中の被写体領域と背景領域と境界領域とを区別する領域区別部と、
上記境界領域における被写体色と背景色との混合比を決定する混合比決定部と、
上記領域区別部によって区別された3つの領域と上記混合比決定部で決定された混合比とに基づいて上記画像取得部で取得された撮影画像中の背景を別の背景と置換する背景置換部とを備えたことを特徴とする。
被写体の一部越しに背景が見えているという状態が写っている撮影画像では、多くの場合、そのような状態が写っている画像部分は、被写体の色と、その背後に見える背景の色とが混合された混合色を有する画素が集まって構成されている。そのため、撮影画像中の背景領域を別の背景の画像に置換しただけでは、上記のような画像部分に背景の色が残ってしまう。上述したクロマキー処理等によって背景が置換された画像が観賞者に不自然に見えるのはこのためである。
本発明の第1の背景置換装置によれば、撮影画像中の被写体領域と背景領域と境界領域とが区別され、さらに、境界領域における被写体色と背景色との混合比が決定される。そして、撮影画像中の背景が別の背景と置換されるに当たっては、上記境界領域について、例えば、被写体色とその別の背景の色とを上記の混合比で混合する処理等が行われる。この結果、被写体の一部越しに置換後の背景が見えている状態を観賞者に認識させる画像が作成される。つまり、本発明の背景置換装置によれば、撮影画像における背景が所望の背景に自然に置換された背景置換画像を作成することができる。
また、本発明の第1の背景置換装置において、「上記領域区別部が、上記撮影条件における被写体と背景との所定の相違点に基づいて、撮影画像中の被写体領域と背景領域と境界領域とを区別するものである」という形態は好ましい形態である。
例えば被写体を逆光で撮影するという撮影条件においては、被写体と背景との間に、明るさという顕著な相違点が存在する。上記の好ましい形態の背景置換装置によれば、このような相違点に基づいて、撮影画像中の被写体領域と背景領域と境界領域とが容易に区別される。
また、本発明の第1の背景置換装置において、「前記領域区別部が、前記撮影条件における被写体と背景との所定の相違点に基づいて、撮影画像中で被写体側の領域と背景側の領域とを判別し、それら被写体側の領域および背景側の領域それぞれを、少なくとも一方については縮小して前記被写体領域および前記背景領域として扱い、該被写体領域と該背景領域との間の領域を前記境界領域として扱うものである」という形態や、
「上記領域区別部が、上記撮影条件における被写体と背景との所定の相違点に基づいて、撮影画像中で被写体側の領域と背景側の領域とを判別し、上記被写体側の領域を縮小して上記被写体領域として扱い、縮小前の被写体側の領域におけるその被写体領域を除く領域については上記境界領域として扱うものである」という形態や、
「上記領域区別部が、上記撮影条件における被写体と背景との所定の相違点に基づいて、撮影画像中で被写体側の領域と背景側の領域とを判別し、上記背景側の領域を縮小して上記背景領域として扱い、縮小前の背景側の領域におけるその背景領域を除く領域については上記境界領域として扱うものである」という形態も好ましい形態である。
これらの好ましい形態の背景置換装置によれば、上記のような相違点に基づいて、撮影画像中で被写体側の領域と背景側の領域とが一旦判別された後に、それらの領域の両方あるは一方が縮小されることにより、撮影画像中の被写体と背景との境界付近で見られることがある、被写体の一部越しに背景が見えている状態が写った部分が、確実に上記境界領域に含まれるような適切な境界領域が設定される。これにより、上述したような不自然さが確実に抑制される。
また、本発明の第1の背景置換装置は、「上記領域区別部が、上記画像取得部で取得された撮影画像のうちの1つの撮影画像に基づいて撮影画像中の被写体領域と背景領域と境界領域とを区別するものであり、
上記背景置換部は、上記画像取得部で取得された撮影画像のうち、上記領域区別部が領域の区別に用いた撮影画像とは別の撮影画像中の背景を別の背景と置換するものである」という形態であっても良い。
このような形態の背景置換装置の典型的な例としては、例えば、逆光で撮影された逆光撮影画像等といった、1つの撮影画像中で被写体と背景との間に大きな相違点が存在する撮影画像と、その撮影画像と共通の被写体が、被写体がきれいに写るという撮影条件の下で撮影画像とを取得し、まず、前者の撮影画像中の被写体と被写体領域と背景領域と境界領域とを上記の大きな相違点に基づいて区別し、その区別を後者の撮影画像に適用するという装置が挙げられる。
また、本発明の第1の背景置換装置は、「上記混合比決定部が、撮影画像中の上記境界領域における、被写体色と背景色との混合比、および該被写体色を推定するものであり、
上記背景置換部が、上記混合比決定部で推定された被写体色と混合比とを用いて撮影画像中の背景を別の背景と置換するものである」という形態も好ましい形態である。
撮影画像中の上記境界領域における、被写体色と背景色との混合比は、被写体の一部越しに背景が見えている状態における、背景の見え方の程度に相当する。上記の好ましい形態の背景置換装置によれば、混合比とともに被写体色が推定されるので、背景が置換された状態におけるそれらしい混合色が適切に求められ、自然な背景置換画像が作成される。
また、この好ましい形態の背景置換装置において、「上記混合比決定部が、上記被写体色を推定するに当たり、その被写体色の候補として上記被写体領域中の各色を用いて推定するものである」という形態はさらに好ましい形態である。
このさらに好ましい形態の背景置換装置によれば、上記被写体色の候補として、被写体色に近い色を高い確率で含んでいると考えられる上記被写体領域中の各色が用いられる。これにより、高い確度で上記被写体色が推定される。
また、上記の被写体色と混合比を推定するという形態の背景置換装置においては、「上記混合比決定部が、上記境界領域中の各箇所について、上記被写体色および上記混合比を推定するものであって、その被写体色を推定するに当たり、所定色空間内でその被写体色が上記背景色およびその箇所の色と直線的に並ぶという前提で推定するものである」という形態が好ましい形態である。
2つの色が混合された混合色は、例えばR(レッド)G(グリーン)B(ブルー)色空間等といった色空間内で、その混合色の元となった2つの色と直線的に並ぶと考えられる。上記の好ましい形態の背景置換装置によれば、上記背景色、およびその背景色と上記被写体色との混合色である上記各箇所の色を既知の色として、それら2つの色と直線的に並ぶ色を候補として上記被写体色が推定されるので、その被写体色が高い確度で推定される。
また、上記の被写体色と混合比を推定するという形態の背景置換装置においては、「上記混合比決定部が、上記境界領域中の各箇所について、上記被写体色および上記混合比を推定するものであって、その被写体色を推定するに当たり、その被写体色の候補として上記被写体領域中の各色を用い、その候補のうち、所定色空間内で上記背景色およびその箇所の色と直線的に並んでその箇所の色に最も近い候補を被写体色と推定するものである」という形態も好ましい。
上記各箇所の色は、上記被写体色と上記背景色とが混合された色であるので、その箇所の色と被写体色とはある程度の類似性を有していることが予想される。上記の好ましい形態の背景置換装置によれば、その箇所の色に最も近い候補が被写体色と推定されるので、その被写体色が高い確度で推定される。
また、上記の被写体色と混合比を推定するという形態の背景置換装置においては、「上記混合比決定部が、上記境界領域中の各箇所について、上記被写体色および上記混合比を推定するものであって、上記混合比を推定するに当たり、所定色空間における、上記背景色、その箇所の色、および上記被写体色の相互距離の比に基づいて推定するものである」という形態も好ましい形態である。
この好ましい形態の背景置換装置によれば、上記所定色空間上での上記背景色、上記各箇所の色、および上記被写体色の相互距離の比という、単純な計算で得られる値に基づいて上記混合比が容易に推定される。
また、上記の被写体色と混合比を推定するという形態の背景置換装置においては、「上記背景置換部が、撮影画像中の背景を別の背景と置換するに当たり、その別の背景の色と、上記混合比決定部で推定された被写体色とを、その混合比決定部で推定された混合比で混合することによって背景を置換するものである」という形態も好ましい形態である。
撮影画像中の、被写体越しに背景が見えている状態が写っている部分の色は、多くの場合、上記背景の色と上記被写体色とが混合された混合色であるが、その混合色の混合比には、被写体越しに見えている背景の見え具合が反映されている。この好ましい形態の背景置換装置によれば、上記別の背景の色と、上記被写体色とが、上記混合比で混合されるので、被写体越しの背景の見え具合が、背景置換後の画像で容易に再現される。
また、上記の本発明の第1の背景置換装置において、「前記領域区別部によって区別された領域の修正を、操作を受けて実行し、修正された領域に基づいた背景置換を前記背景置換部に実行させて前記背景置換画像を修正する画像修正部とを備えた」という形態も好ましい形態である。
この好ましい形態の背景置換装置によれば、一旦作成された背景置換画像が、例えば、被写体の縁の一部が背景とともに別の背景に置換されている等といった不自然な画像であったとしても、上記領域区別部によって区別された領域の修正を実行して、例えば、上記のような、背景および被写体双方の要素が含まれている画像部分を背景領域等から外し、そのような特殊な画像部分用の処理を実行することによって、不自然な背景置換画像を自然な背景置換画像に修正することができる。
また、この画像修正部を備えたという形態の背景置換装置は、「上記領域区別部が、上記撮影条件における被写体と背景との所定の相違点に基づいて、撮影画像中で被写体側の領域と背景側の領域とを判別し、それら被写体側の領域および背景側の領域それぞれを所定の縮小量だけ縮小して上記被写体領域および上記背景領域として扱うものであり、
上記画像修正部が、上記領域区別部における上記縮小量を、操作を受けて変更することにより、上記被写体領域および/又は上記背景領域を修正するものである」という形態であっても良く、あるいは、
「上記領域区別部が、上記撮影条件における被写体と背景との所定の相違点に基づいた区別基準によって、上記被写体領域と上記背景領域とを区別するものであり、
上記画像修正部が、上記区別基準を、操作を受けて変更することにより、上記被写体領域および/又は上記背景領域を修正するものである」という形態であっても良い。
これらの形態の背景置換装置によれば、上記被写体領域および/又は上記背景領域が直接に修正されるのではなく、上記縮小量や上記区別基準といった、人間にとって直感的に分かりやすいパラメータが変更されることにより、上記被写体領域および/又は上記背景領域が容易に修正される。
上記目的を達成する本発明の第2の背景置換装置は、複数の撮影条件それぞれの下で共通の被写体が撮影されて得られた複数の撮影画像を取得する画像取得部と、
上記画像取得部で取得された撮影画像に基づいて、撮影画像中の背景領域を他の領域から区別する領域区別部と、
撮影画像中の上記背景領域を除く他の領域における、被写体色と背景色との混合比、およびその被写体色を推定する混合状態推定部と、
上記混合状態推定部で推定された被写体色と混合比とを用いて上記画像取得部で取得された撮影画像中の背景を別の背景と置換する背景置換部とを備えたことを特徴とする。
本発明の第2の背景置換装置によれば、撮影画像中の背景領域が他の領域から区別された後、その撮影画像中の背景領域を除く他の領域における、被写体色と背景色との混合比、およびその被写体色とが推定される。ここで、上記の混合比は、被写体の一部越しに背景が見えているという状態における、背景の見え方の程度に相当する。本発明の背景置換装置によれば、混合比とともに被写体色が推定されるので、背景が置換された状態におけるそれらしい混合色が適切に求められ、自然な背景置換画像が作成される。つまり、本発明の背景置換装置によれば、撮影画像における背景が所望の背景に自然に置換された背景置換画像を作成することができる。
ここで、本発明の第2の背景置換装置において、「上記混合状態推定部が、上記被写体色を推定するに当たり、その被写体色の候補として撮影画像中の各色を用いて推定するものである」という形態は好ましい形態である。
この好ましい形態の背景置換装置によれば、上記被写体色の候補として、被写体色に近い色を高確率で含んでいると考えられる撮影画像中の各色が用いられる。これにより、高い確度で上記被写体色が推定される。
また、本発明の第2の背景置換装置において、「上記混合状態推定部が、上記背景領域を除く他の領域中の各箇所について、上記被写体色および上記混合比を推定するものであって、その被写体色を推定するに当たり、所定色空間内でその被写体色が上記背景色およびその箇所の色と直線的に並ぶという前提で推定するものである」という形態も好ましい形態である。
2つの色が混合された混合色は、例えばR(レッド)G(グリーン)B(ブルー)色空間等といった色空間内で、その混合色の元となった2つの色と直線的に並ぶと考えられる。上記の好ましい形態の背景置換装置によれば、上記背景色、およびその背景色と上記被写体色との混合色である上記各箇所の色を既知の色として、それら2つの色と直線的に並ぶ色を候補として上記被写体色が推定されるので、その被写体色が高い確度で推定される。
また、本発明の第2の背景置換装置において、「上記混合状態推定部が、上記背景領域を除く他の領域中の各箇所について、上記被写体色および上記混合比を推定するものであって、その被写体色を推定するに当たり、その被写体色の候補として上記背景領域を除く他の領域中の各色を用い、その候補のうち、所定色空間内で上記背景色およびその箇所の色と直線的に並んでその箇所の色から最も遠い候補を被写体色と推定するものである」という形態も好ましい形態である。
上記背景領域を除く他の領域内には、上記被写体色に近い色が高確率で含まれていると考えられるが、その被写体色と上記各箇所の色との間の、他の混合比で混合された紛らわしい色も高確率で含まれていると考えられる。上記の好ましい形態の背景置換装置によれば、上記背景領域を除く他の領域中でその箇所の色から最も遠い候補が被写体色と推定されるので、上記のような紛らわしい色等が回避されて、被写体色が高い確度で推定される。
また、本発明の第2の背景置換装置において、「上記混合状態推定部が、上記背景領域を除く他の領域中の各箇所について、上記被写体色および上記混合比を推定するものであって、その混合比を推定するに当たり、所定色空間における、上記背景色、その箇所の色、および上記被写体色の相互距離の比に基づいて推定するものである」という形態も好ましい。
この好ましい形態の背景置換装置によれば、上記所定色空間上での上記背景色、上記各箇所の色、および上記被写体色の相互距離の比という、単純な計算で得られる値に基づいて上記混合比が容易に推定される。
また、本発明の第2の背景置換装置において、「上記背景置換部が、撮影画像中の背景を別の背景と置換するに当たり、その別の背景の色と、上記混合状態推定部で推定された被写体色とを、その混合状態推定部で推定された混合比で混合することによって背景を置換するものである」という形態も好ましい形態である。
撮影画像中の、被写体越しに背景が見えている状態が写っている部分の色は、多くの場合、上記背景の色と上記被写体色とが混合された混合色であるが、その混合色の混合比には、被写体越しに見えている背景の見え具合が反映されている。この好ましい形態の背景置換装置によれば、上記別の背景の色と、上記被写体色とが、上記混合比で混合されるので、被写体越しの背景の見え具合が、背景置換後の画像で容易に再現される。
また、本発明の背景置換装置において、「上記領域区別部が、上記複数の撮影画像の相互間における明るさの比率に基いて、撮影画像中の背景領域を他の領域から区別するものである」という形態も好ましい形態である。
撮影画像中の背景領域を他の領域から区別する1つの方法として、例えば、その撮影画像中での背景と被写体との明るさの違いに基いて区別するという方法が考えられる。しかし、撮影画像が、例えば明るい照明の下で撮影されたものあった場合、背景と被写体との間で明るさに余り違いが無く、そのような方法による背景領域と他の領域との区別が困難となってしまうことがある。上記の好ましい形態の背景置換装置によれば、撮影画像中の背景領域と他の領域との区別が、上記複数の撮影画像の相互間における明るさの比率に基いて行なわれる。この区別方法によれば、例えば背景の明るさが互いに異なる複数の撮影画像を得ておけば、たとえ1枚の撮影画像において背景と被写体との間で明るさに違いが無かったとしても、背景領域と他の領域とでは、複数の撮影画像の相互間における明るさの比率が異なることとなるので、両者を良好に区別することができる。
また、本発明の背景置換装置において、「上記混合状態推定部で推定された被写体色と混合比とを記憶する記憶部を備え、
上記背景置換部が、上記記憶部が記憶している被写体色と混合比とを用いて上記画像取得部で取得された撮影画像中の背景を別の背景と置換するものである」という形態も好ましい形態である。
この好ましい形態の背景置換装置によれば、例えば、一旦背景を置換した後に、その置換した背景をさらに別の背景に置換する等といった場合に、被写体色と混合比との計算に対する手間を省くことができる。
また、本発明の背景置換装置において、「上記混合状態推定部で推定された被写体色に色が置き換えられた上記他の領域の画像に基いて、その被写体色に対する色補正に使われる補正パラメータを決定する第1のパラメータ決定部と、
上記第1のパラメータ決定部によって決定された補正パラメータを使って、上記混合状態推定部で推定された被写体色に対して色補正を施す第1の色補正部とを備え、
上記背景置換部は、上記第1の色補正部によって色補正が施された被写体色と上記混合比とを用いて上記画像取得部で取得された撮影画像中の背景を別の背景と置換するものである」という形態や、
「上記画像取得部で取得された撮影画像に基いて、上記被写体色に対する色補正に使われる補正パラメータを決定する第2のパラメータ決定部と、
上記第2のパラメータ決定部によって決定された補正パラメータを使って、上記混合状態推定部で推定された被写体色に対して色補正を施す第2の色補正部とを備え、
上記背景置換部は、上記第2の色補正部によって色補正が施された被写体色と上記混合比とを用いて上記画像取得部で取得された撮影画像中の背景を別の背景と置換するものである」という形態や、
「上記被写体色に対する色補正に使われる補正パラメータを、操作に応じたパラメータに決定する第3のパラメータ決定部と、
上記第3のパラメータ決定部によって決定された補正パラメータを使って、上記混合状態推定部で推定された被写体色に対して色補正を施す第3の色補正部とを備え、
上記背景置換部は、上記第3の色補正部によって色補正が施された被写体色と上記混合比とを用いて上記画像取得部で取得された撮影画像中の背景を別の背景と置換するものである」という形態は好ましい形態である。
撮影画像の色合いやホワイトバランスを、一般的に観賞者が好ましいと感じる色合いやホワイトバランスに補正するいわゆるセットアップと呼ばれる色補正が知られている。一見、このようなセットアップ済みの撮影画像について背景の置換を行なえば、背景が置換された高画質の画像が得られるように思われる。しかし、セットアップ済みの撮影画像を用いると、例えば画像中の階調が変更されている等といった理由から、上記混合状態推定部における被写体色の推定が不正確なものとなり、自然な背景の置換が実行できなくなる恐れがある。また、背景置換後の画像に対してセットアップが施されると、置換用の背景の色まで変わってしまう。上記の3種類の好ましい形態では、いずれの形態でも上記混合状態推定部で推定された被写体色に対して色補正が施される。従って、これら3種類の好ましい形態によれば、この色補正として例えばセットアップを採用することで、上記混合状態推定部による被写体色の推定や置換用の背景の色に影響を与えることなく、セットアップを実行することができ、背景が置換された高画質の画像を得ることができる。ここで、セットアップに用いる補正パラメータは、上記の3種類のうちの1番目の形態のように上記被写体色に色が置き換えられた上記他の領域の画像に基いて決定しても良く、2番目の形態のように上記撮影画像に基いて決定しても良く、3番目の形態のようにユーザの操作に応じて決定しても良い。
また、本発明の背景置換装置において、「上記被写体色に対する色補正に使われる補正パラメータを、上記別の背景に応じたパラメータに決定する第4のパラメータ決定部と、
上記第4のパラメータ決定部によって決定された補正パラメータを使って、上記混合状態推定部で推定された被写体色に対して色補正を施す第4の色補正部とを備え、
上記背景置換部は、上記第4の色補正部によって色補正が施された被写体色と混合比とを用いて上記画像取得部で取得された撮影画像中の背景を上記別の背景と置換するものである」という形態も好ましい形態である。
この好ましい形態の背景置換装置によれば、上記混合状態推定部による被写体色の推定や置換用の背景の色に影響を与えることなく、セットアップを実行することができ、背景が置換された高画質の画像を得ることができることに加えて、例えば、上記別の背景として夕景を用いる場合に、その夕景に応じて、上記被写体色をオレンジ色がかった色に補正する等といったセットアップを行なうことによって、背景が一層自然に置換された画像を得ることができる。
また、本発明の背景置換装置において、「上記背景置換部は、上記別の背景として、被写体と背景との画像中における相対関係を表わす関係情報が付与された背景を用いて、上記撮影画像中の背景を置換するとともに、置換後の画像中で被写体と背景との相対関係が、その関連情報が表わす相対関係と同じ相対関係となるように置換するものである」という形態も好ましい。
この好ましい形態の背景置換装置によれば、例えば置換後の画像中における被写体の位置や大きさが上記別の背景に対して自然な位置や大きさとなるように背景の置換を行なうことができるので、背景が一層自然に置換された画像を得ることができる。
上記目的を達成する本発明の第3の背景置換装置は、背景の色が互いに異なる複数の撮影条件それぞれの下で共通の被写体が撮影されて得られた複数の撮影画像を取得する画像取得部と、
上記画像取得部で取得された撮影画像に基づいて、撮影画像中の背景領域を他の領域から区別する領域区別部と、
上記複数の撮影画像に基づいて、撮影画像中の上記背景領域を除く他の領域における、被写体色と背景色との混合比、およびその被写体色を推定する混合状態推定部と、
上記混合状態推定部で推定された被写体色と混合比とを用いて上記画像取得部で取得された撮影画像中の背景を別の背景と置換する背景置換部とを備えたことを特徴とする。
本発明の第3の背景置換装置によれば、各撮影画像中の上記背景領域を除く他の領域における、被写体色と背景色との混合比、およびその被写体色が推定される。ここで、上記の混合比は、被写体の一部越しに背景が見えているという状態における、背景の見え方の程度に相当する。本発明の背景置換装置によれば、混合比とともに被写体色が推定されるので、背景が置換された状態におけるそれらしい混合色が適切に求められ、自然な背景置換画像が作成される。また、本発明の背景置換装置によれば、背景色が互いに異なる複数の撮影画像に基づいて、被写体色と混合比とが推定される。ここで、これら複数の撮影画像は共通の被写体が撮影されて得られたものであるため、これら複数の撮影画像の相互間では被写体色は共通である。これにより、本発明の背景置換装置によれば、例えば、まず複数の撮影画像という複数の推定材料に基づいて1つの被写体色を推定し、そして、推定された被写体色から混合比を推定する等といった、一意的かつ正確な推定方法を用いた被写体色と混合比との推定が可能となる。つまり、本発明の背景置換装置によれば、撮影画像における背景が所望の背景に自然に置換された背景置換画像を作成することができる。
また、本発明の第3の背景置換装置において「上記混合状態推定部が、被写体色と背景色との混合状態が、異なる背景色の下でも同じであるという前提で、上記被写体色と上記混合比とを推定するものである」という形態は好ましい形態である。
このような好ましい形態の背景置換装置によれば、例えば上記混合比が上記複数の撮影画像の相互間で共通であると考えることができるので、その混合比についても、複数の撮影画像という複数の推定材料に基づいて1つの混合比を推定する等といった、一意的かつ正確な推定方法による推定が可能となる。
また、本発明の第3の背景置換装置において「上記混合状態推定部が、上記背景領域を除く他の領域中の各箇所について、上記被写体色および上記混合比を推定するものであって、背景の色が互いに異なる複数の撮影条件それぞれの下で得られた複数の撮影画像それぞれにおける上記背景色とその箇所の色を所定の色空間内で結ぶ各直線を求め、それらの直線の交点に相当する色を上記被写体色と推定するものである」という形態は、本発明の背景置換装置の典型的な形態の一例である。
このような形態の背景置換装置によれば、被写体色を数学的に一意に求め、その被写体色から混合比を容易に求めることができる。
また、本発明の第3の背景置換装置において「上記画像取得部が、背景の色相が互いに異なる複数の撮影条件それぞれの下で撮影されて得られた複数の撮影画像を取得するものである」という形態は好ましい形態である。
このような形態の背景置換装置によれば、上記被写体色と混合比とが精度良く推定される。
また、本発明の第3の背景置換装置において「上記領域区別部が、撮影画像中の上記背景領域を除く他の領域中の被写体領域と境界領域とを区別するものであり、
上記混合状態推定部が、上記境界領域中で、上記被写体色と上記混合比とを推定するものである」という形態も好ましい形態である。
この好ましい形態の背景置換装置によれば、撮影画像中で、上記のような推定処理の対象となる範囲が限定されるので、推定処理が効率的に行なわれることとなる。
また、本発明の第3の背景置換装置において「上記領域区別部が、上記画像取得部で取得された撮影画像中の背景領域を他の領域から、上記複数の撮影画像の相互間における色の変化量に基づいて区別するものである」という形態も好ましく、また、
「上記領域区別部が、上記画像取得部で取得された撮影画像中の背景領域を他の領域から、上記背景と上記被写体との明るさの差に基づいて区別するものである」という形態も好ましい。
これらいずれの形態の背景置換装置によっても上記領域区別部を容易に実現することができる。また、色の変化量に基づいて領域の区別を行なうという前者の形態では、上記被写体色と上記混合比との推定に用いる撮影画像と同じ撮影画像を用いて領域の区別を行なうことができるので、上記のような背景置換処理全体で必要とされる撮影画像の数を節約することができる。また、明るさの差に基づいて領域の区別を行なうという後者の形態では、背景の明るさと被写体の明るさとが互いに異なるという撮影条件の下で上記被写体が撮影されて得られた撮影画像が必要となるが、その撮影画像のみに基づいて上記の領域の区別を行なうことができるので、領域の区別自体の単純化が図られる。
また、上記目的を達成する本発明の第1の背景置換プログラムは、コンピュータに組み込まれ、そのコンピュータ上で、
複数の撮影条件それぞれの下で共通の被写体が撮影されて得られた複数の撮影画像を取得する画像取得部と、
上記画像取得部で取得された撮影画像に基づいて、撮影画像中の被写体領域と背景領域と境界領域とを区別する領域区別部と、
上記境界領域における被写体色と背景色との混合比を決定する混合比決定部と、
上記領域区別部によって区別された3つの領域と上記混合比決定部で決定された混合比とに基づいて上記画像取得部で取得された撮影画像中の背景を別の背景と置換する背景置換部とを構築することを特徴とする。
また、上記目的を達成する本発明の第2の背景置換プログラムは、コンピュータに組み込まれ、そのコンピュータ上で、
複数の撮影条件それぞれの下で共通の被写体が撮影されて得られた複数の撮影画像を取得する画像取得部と、
複数の撮影条件それぞれの下で共通の被写体が撮影されて得られた複数の撮影画像を取得する画像取得部と、
上記画像取得部で取得された撮影画像に基づいて、撮影画像中の背景領域を他の領域から区別する領域区別部と、
撮影画像中の上記背景領域を除く他の領域における、被写体色と背景色との混合比、およびその被写体色を推定する混合状態推定部と、
上記混合状態推定部で推定された被写体色と混合比とを用いて上記画像取得部で取得された撮影画像中の背景を別の背景と置換する背景置換部とを構築することを特徴とする。
また、上記目的を達成する本発明の第3の背景置換プログラムは、コンピュータに組み込まれ、そのコンピュータ上で、
背景の色が互いに異なる複数の撮影条件それぞれの下で共通の被写体が撮影されて得られた複数の撮影画像を取得する画像取得部と、
上記画像取得部で取得された撮影画像に基づいて、撮影画像中の背景領域を他の領域から区別する領域区別部と、
上記複数の撮影画像に基づいて、撮影画像中の上記背景領域を除く他の領域における、被写体色と背景色との混合比、およびその被写体色を推定する混合状態推定部と、
上記混合状態推定部で推定された被写体色と混合比とを用いて上記画像取得部で取得された撮影画像中の背景を別の背景と置換する背景置換部とを構築することを特徴とする。
本発明の第1〜第3の背景置換プログラムによれば、上述した、撮影画像における背景が所望の背景に自然に置換された背景置換画像を作成することができる背景置換装置を容易に実現することができる。
また、上記目的を達成する本発明の第1の背景置換方法は、複数の撮影条件それぞれの下で共通の被写体が撮影されて得られた複数の撮影画像を取得する画像取得過程と、
前記画像取得過程で取得された撮影画像に基づいて、撮影画像中の被写体領域と背景領域と境界領域とを区別する領域区別過程と、
前記境界領域における被写体色と背景色との混合比を決定する混合比決定過程と、
前記領域区別部によって区別された3つの領域と前記混合比決定部で決定された混合比とに基づいて前記画像取得部で取得された撮影画像中の背景を別の背景と置換する背景置換過程とを備えたことを特徴とする。
また、上記目的を達成する本発明の第2の背景置換方法は、複数の撮影条件それぞれの下で共通の被写体が撮影されて得られた複数の撮影画像を取得する画像取得過程と、
上記画像取得過程で取得された撮影画像に基づいて、撮影画像中の背景領域を他の領域から区別する領域区別過程と、
撮影画像中の上記背景領域を除く他の領域における、被写体色と背景色との混合比、およびその被写体色を推定する混合状態推定過程と、
上記混合状態推定過程で推定された被写体色と混合比とを用いて上記画像取得過程で取得された撮影画像中の背景を別の背景と置換する背景置換過程とを備えたことを特徴とする。
また、上記目的を達成する本発明の第3の背景置換方法は、背景の色が互いに異なる複数の撮影条件それぞれの下で共通の被写体が撮影されて得られた複数の撮影画像を取得する画像取得過程と、
上記画像取得過程で取得された撮影画像に基づいて、撮影画像中の背景領域を他の領域から区別する領域区別過程と、
上記複数の撮影画像に基づいて、撮影画像中の上記背景領域を除く他の領域における、被写体色と背景色との混合比、およびその被写体色を推定する混合状態推定過程と、
上記混合状態推定過程で推定された被写体色と混合比とを用いて上記画像取得過程で取得された撮影画像中の背景を別の背景と置換する背景置換過程とを備えたことを特徴とする。
本発明の第1〜第3の背景置換方法によれば、撮影画像における背景が所望の背景に自然に置換された背景置換画像を容易に作成することができる。
なお、上記の本発明の背景置換プログラムおよび本発明の背景置換方法については、ここではその基本形態のみを示すのにとどめるが、これは単に重複を避けるためであり、本発明にいう背景置換プログラムおよび背景置換方法には、前述した背景置換装置の各形態に対応する各種の形態が含まれる。
以上、説明したように、本発明によれば、撮影画像における背景が所望の背景に自然に置換された背景置換画像を作成することができる。
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の背景置換装置の第1実施形態が適用された撮影システムを示す図である。
この図1に示す撮影システム1は、被写体を撮影して撮影画像を取得する撮影スタジオ10と、その撮影画像における被写体と背景とを区別して、撮影画像中の背景を所望の背景に置換して背景置換画像を作成する、本発明の背景置換装置の第1実施形態として動作するパーソナルコンピュータ20と、プリンタ30と、サーバ40とを備えている。また、撮影スタジオ10は、デジタルカメラ11と、閃光発光装置12と、EL(エレクトロルミネセンス)パネル130と、このELパネル用の電源14を備えている。
デジタルカメラ11は、連写機能を有しており、撮影者がシャッタボタンを1回押すと、短時間の間に自動で被写体Pを2回撮影する。1回毎の撮影によって得られた撮影画像はデジタルカメラ11内のメモリに一時的に保管されるが、撮影システム1では、デジタルカメラ11がパーソナルコンピュータ20に接続されており、2回の撮影が終了した時点で、この2回の撮影で得られた撮影画像は、このパーソナルコンピュータ20に直ちに送られる。また、デジタルカメラ11は閃光発光装置12にも接続されており、デジタルカメラ11は、閃光発光装置12に対して閃光を発するように指示する閃光指示信号を、その閃光発光装置12に撮影の度に発信する。
ここで、本実施形態では、撮影スタジオ10について省スペース化が図られており、デジタルカメラ11は被写体を近距離から若干見下ろし気味に撮影することとなる。その結果、デジタルカメラ11で撮影される撮影画像には、画像の幅が、下に向かうほど狭まる、いわゆる台形歪みが生じている可能性が高い。本実施形態では、この台形歪みは、パーソナルコンピュータ20において補正される。
閃光発光装置12は、デジタルカメラ11から閃光指示信号を受けて被写体Pに向かって閃光を発する。ここで、この閃光発光装置12は、1回発光する度に充電される必要があり、1回発光すると、次に発光できるようになるまで時間がかかる。デジタルカメラ11からは、上記の2回の撮影の際、撮影の度に上記の閃光指示信号が発信されるが、閃光発光装置12は1回目の撮影の時だけ閃光を発し、2回目の撮影時には、充電が間に合わないために、閃光発光装置12は消灯したままでいることとなる。また、この閃光発光装置12が発する閃光は、発光の輝度がおよそ2000cd/m2という高輝度の光である。
ELパネル130は、被写体Pが載る載置面131aと被写体Pの背後の面131bとが透明な筐体131、および、その筐体131内に収納された分散型EL素子132からなる。また、電源14は、この分散型EL素子132に駆動電圧を印加する電源である。また、筐体131の、被写体Pの背後の面131bの四隅にはこの面131bの範囲を示す4つのマーカ131cが配置されている。これら4つのマーカ131cは、撮影の際に被写体Pとともに撮影画像に写り、その撮影画像に対する、上記の台形歪みの補正等に利用されるものである。
分散型EL素子132は、蛍光体粉末が高誘電率のバインダー中に分散されたものが、可撓性のプラスチックを基板とした2枚のシート形状の電極の間に挟み込まれて構成されたシート状の面発光光源である。この分散型EL素子132は、それら2枚の電極間に、電源14から交流電圧が印加されることにより発光する。
この分散型EL素子132は、厚みが数百μm〜1mmという非常に薄くて軽い光源であり、筐体131の内部のように、厚みに余裕のない場所に容易に設置することができる。この他、分散型EL素子132には、発光時の発熱が2℃程度と軽微である、発光開始から最高輝度に達するまでの応答速度が速い、発光の寿命がほぼ一定しており計画的な交換が可能、局所発光が可能、衝撃や振動に強い、消費電力が50W/m2(周波数が50Hzの交流電力印加時)と小さい等、性能面での様々な利点がある。さらに、分散型EL素子132には、簡単な製造工程で製造することができるため製造コストが安いという経済面での利点もある。
また、一般的な分散型EL素子は、製造時に発光色の異なる複数の蛍光体粉末をさらに混合することで発光色を白色を含む様々な色に調整することが可能であるが、本実施形態における分散型EL素子132では、このような色調整のための蛍光体粉末は未混合である。この結果、この分散型EL素子132は、発光波長が400nm〜530nmの間に2つ以上の発光ピークを有することとなる。この光は、分散型EL素子本来の、青から緑の間の色の光であり、本実施形態における分散型EL素子132は、上記の2つ以上の発光ピークからなる青緑色の光を発光する。ここで、青緑色は、人物の肌の色の補色であるため、本実施形態の撮影システム1によれば、人物を被写体として撮影した際等に、撮影画像中の被写体と背景とを高い確度で区別することができる、背景が青緑色の撮影画像が得られる。また、上記の色調整のための蛍光体粉末は発光色の輝度を低下させる傾向があるが、本実施形態における分散型EL素子132は、このような蛍光体粉末が未混合であるので分散型EL素子本来の輝度で発光することとなる。
電源14は、分散型EL素子132に印加する交流電圧を、周波数について50Hz〜10kHzの間、大きさについて40V〜300Vの間で調整することができる。分散型EL素子132の発光の輝度は、印加される交流電圧の大きさにほぼ比例する。本実施形態の撮影スタジオ10では、電源14において、交流電圧が、周波数については1.2kHz〜1.5kHzのうちのいずれかの周波数、大きさについては130V〜200Vのうちのいずれかの大きさに調整されており、その結果、分散型EL素子132の発光の輝度が、500cd/m2〜600cd/m2のうちのいずれかの輝度に調整されている。
ここで、本実施形態の撮影スタジオ10では、デジタルカメラ11による撮影は、ELパネル130が常時点灯した状態で行なわれる。また、上述したように、1回目の撮影は閃光発光装置12が閃光を発した状態で行なわれ、2回目の撮影は閃光発光装置12が消えた状態で行なわれる。さらに、この撮影スタジオ10では、閃光発光装置12が発する閃光の輝度は、ELパネル130が点灯したときの輝度よりもかなり高い。この結果、1回目の撮影では、ELパネル130の輝度よりも高い輝度の閃光が、デジタルカメラ11側から被写体Pを照らすという順光状態での撮影による、被写体Pがきれいに写った順光撮影画像が取得される。また、この1回目の撮影に連続して行なわれる2回目の撮影では、ELパネル130からの光のみが被写体Pを後方から照らすという逆光状態での撮影による、被写体Pの像がシャドウ側に偏り、背景パネル130の像がハイライト側に偏った逆光撮影画像が取得される。
パーソナルコンピュータ20は、上述したように本発明の背景置換装置の第1実施形態として動作するものである。このパーソナルコンピュータ20は、デジタルカメラ11から渡された上記の2つの撮影画像に対して、上記の台形歪みについての補正を含む画像補正処理を施し、さらに、この補正済みの撮影画像に基づいて背景置換画像を作成するという背景置換処理を行なう。この画像補正処理と背景置換処理とについては後述する。
このパーソナルコンピュータ20は、外観構成上、フレキシブルディスク(以降、FDと呼ぶ)やCD−ROMの装填口を有し、その装填口に装填されたFDやCD−ROMへのアクセス機能を有する本体装置210、その本体装置210からの指示に応じて表示画面220a上に画像を表示する画像表示装置220、本体装置210にキー操作に応じた各種の情報を入力するキーボード230、表示画面220a上の任意の位置を指定することにより、その位置に表示された、例えばアイコン等に応じた指示を入力するマウス240、および、デジタルカメラ等で撮影画像の記憶に用いられる小型記憶メディアが装填され、その小型記憶メディアをアクセスするメディアドライブ250を備えている。
プリンタ30は、パーソナルコンピュータ20から送られてくる画像をプリントするものであり、撮影システム1では、パーソナルコンピュータ20が背景置換処理によって作成した背景置換画像をプリントする役割を担っている。
サーバ40には、パーソナルコンピュータ20で実行される背景置換処理で使用される複数種類の背景が格納されている。このサーバ40内の背景は、表示画面220a上に表示されることによって顧客に提示される。また、この撮影システム1では、サーバ40内に格納されている背景以外にも、上記のCD−ROMや上記の小型記憶メディア等といった何らかの入力用記憶媒体を介して提供される背景も、表示画面220aを通じて顧客に提示される。顧客は、表示画面220a上に表示されたそれらの背景の中から所望の背景を選ぶ。
次に、この図1に示す撮影システム1で実行される、本発明の背景置換方法の一実施形態が適用された作業の流れについて説明する。尚、以下の説明では、図1に示す要素については特に図番を断らずに図1中の符号を使って参照する。
図2は、図1の撮影システムで実行される、本発明の背景置換方法の一実施形態が適用された作業の流れを示すフローチャートである。
この図2のフローチャートが示す作業は、撮影スタジオ10において、被写体P、デジタルカメラ11、および閃光発光装置12がそれぞれ適当な位置に配置されていることを前提として行なわれる。
まず、電源14から分散型EL素子132に電圧が印加され、ELパネル130が点灯する(ステップS101)。次に、撮影者が、ピントや露光の調節等を行なった後にデジタルカメラ11のシャッタボタンを押すと、被写体Pに対する撮影が2回連続して行なわれる。まず1回目の撮影では、デジタルカメラ11から発信される指示信号に応じて閃光発光装置12がELパネル130の照明よりも高輝度の閃光を発し、この閃光による順光状態で被写体Pが撮影される(ステップS102)。続いて、2回目の撮影が、閃光発光装置12が消灯した状態、即ち、ELパネル130のみの照明による逆光状態で行なわれる(ステップS103)。ステップS102およびステップS103の処理でそれぞれ得られた、順光撮影画像と逆光撮影画像との2つの撮影画像は、デジタルカメラ11内のメモリに一時的に保管される。
以上に説明したステップS101〜ステップS103の処理は、撮影スタジオ10において行なわれる、写真館の店員等といった人手による撮影処理である。
次に、このフローチャートにおけるステップS104以降の処理について説明するが、この以下に説明する処理のうち、ステップS104からステップS110に至る処理が、本発明の背景置換方法の第1実施形態に相当する。
ステップS103の処理によって、2回目の撮影が行なわれ、その撮影で得られた撮影画像の、デジタルカメラ11内のメモリへの保管が終了すると、2回の撮影で得られ、そのメモリに一時的に保管された2つの撮影画像が直ちにパーソナルコンピュータ20に渡される。また、パーソナルコンピュータ20に対する操作を受けて、顧客が所望する背景がサーバ40あるいは何らかの入力用記憶媒体から読み出される。(ステップS104)。このステップS104で実行される撮影画像および背景の取得処理が、本発明の背景置換方法における画像取得過程の一例に相当する。
続いて、2つの撮影画像に、上記の台形歪みについての補正を含む後述の画像補正処理が施される。(ステップS105)。
さらに、この補正済みの撮影画像に基づいて背景置換画像を作成するという後述の背景置換処理が実行される(ステップS106)。ここで、このステップS104で実行される背景置換処理において、本発明の背景置換方法における領域区別過程と、背景置換過程との各一例が実行される。
次に、上記の背景置換処理(ステップS106)で作成された背景置換画像を表わす画像データが、まず画像表示装置220に転送され(ステップS107)、画像表示装置220において、上記の背景置換画像が、転送されてきた画像データに基づいて表示画面220a上に表示される(ステップS108)。また、この表示画面220a上には、パーソナルコンピュータ20のオペレータに、現在表示されている背景置換画像について修正の必要があるか否かを問うメッセージが表示される(ステップS109)。このメッセージに対する回答が、修正が必要である旨を示すものであった場合(ステップS109におけるYes判定)には、この背景置換画像に後述の画像修正が施される(ステップS110)。
以上に説明したステップS107からステップS110に至る処理は、オペレータが、表示画面220a上の背景置換画像について修正が必要で無い旨を伝える(ステップS109におけるNo判定)まで繰り返される。本実施形態では、この処理により、最終的に自然な背景置換画像が作成される。そして、この最終的に作成された背景置換画像を表わす画像データが、プリンタ30と、顧客が希望する出力用記憶媒体とのうちの少なくとも1つに転送される(ステップS111)。続いて、画像データがプリンタ30に転送された場合には、プリンタ30において、その画像データに基づいて背景置換画像がプリントされる(ステップS112)。
ここで、以上のステップS104からステップS110に至る本発明の背景置換方法の一実施形態の各処理の詳細については、本発明の背景置換装置の一実施形態の各部の作用と併せて説明する。
本発明の背景置換方法の一実施形態を含むステップS104〜ステップS111の処理は、パーソナルコンピュータ20において実行される処理であり、以下では、これらの処理を実行するパーソナルコンピュータ20と、それらの処理の詳細に注目して説明する。
まず、このパーソナルコンピュータ20の内部構成について説明する。
図3は、図1に示すパーソナルコンピュータのハードウェア構成図である。
この図3に示すように、本体装置210の内部には、各種プログラムを実行するCPU211、ハードディスク装置213に格納されたプログラムが読み出されCPU211での実行のために展開される主メモリ212、各種プログラムやデータ等が保存されたハードディスク装置213、FD520が装填され、その装填されたFD520をアクセスするFDドライブ214、CD−ROM510をアクセスするCD−ROMドライブ215、図1のサーバ40やデジタルカメラ11と接続され、これらの機器から置換用の背景や撮影画像等を受け取る入力インタフェース216、および、図1のプリンタ30と接続され、背景置換画像等を出力する出力インタフェース217が内蔵されており、これらの各種要素と、さらに図1にも示す画像表示装置220、キーボード230、マウス240、および、小型記憶メディア530をアクセスするメディアドライブ250は、バス260を介して相互に接続されている。
ここで、上記のCD−ROM510は、パーソナルコンピュータ20を、本発明の背景置換装置の一実施形態として動作させるための、本発明の背景置換プログラムの一実施形態が記憶される。
そして、そのCD−ROM510がCD−ROMドライブ215に装填されると、そのCD−ROM510に記憶されたプログラムがこのパーソナルコンピュータ20にアップロードされてハードディスク装置213に書き込まれる。これにより、パーソナルコンピュータ20は背景置換装置として動作する。
次に、本発明の背景置換プログラムの一実施形態について説明する。
図4は、本発明の背景置換プログラムの一実施形態を示す概念図である。
図4に示すCD−ROM510は、本発明の背景置換プログラムの一実施形態である背景置換プログラム600が記憶されたものである。
この背景置換プログラム600は、画像取得部610、画像補正部620、置換処理部630、画像データ転送部640、画像表示部650、画像修正部660で構成されている。
この背景置換プログラム600の各部の詳細については、本発明の背景置換装置の一実施形態の各部の作用と併せて説明する。尚、以下の説明では、図1、図3、および図4に示す要素については特に図番を断らずに各図中の符号を使って参照する。
図5は、図4に示す背景置換プログラムが図1および図3に示すパーソナルコンピュータにインストールされ、このパーソナルコンピュータが本発明の背景置換装置の一実施形態として動作するときの機能を表わす機能ブロック図である。また、この図5には、図1にも示す、デジタルカメラ11、閃光発光装置12、およびELパネル130からなる撮影スタジオ10と、プリンタ30と、サーバ40も示されている。
この図5に示す背景置換装置700は、上述したように、撮影スタジオ10のデジタルカメラ11によって順光および逆光それぞれの下で撮影された順光撮影画像と逆光撮影画像とを取得して、これらの2つの撮影画像のうち、逆光撮影画像に基づいて、順光撮影画像における被写体と背景とを区別して、その背景を所望の背景に置換するという背景置換処理を実行するものであり、画像取得部710、画像補正部720、置換処理部730、画像データ転送部740、画像表示部750、および画像修正部760を備えている。
画像取得部710は、まず、デジタルカメラ11で撮影され、そのデジタルカメラ11から渡される2つの撮影画像を受け取る。また、この画像取得部710は、顧客が所望する背景を、サーバ40から、あるいは、CD−ROMや小型記憶メディア等といった入力用記憶媒体540から読み出す。この画像取得部710は、実質的には、パーソナルコンピュータ20のCPU211が、背景置換プログラム600の画像取得部610に従って、入力インタフェース216、FDドライブ214、CD−ROMドライブ215、およびメディアドライブ250を制御することによって構成される。この画像取得部710が、本発明の背景置換装置における画像取得部の一例に相当する。また、この画像取得部710によって、本発明の背景置換方法における画像取得過程の一例が実行される。
画像補正部720は、画像取得部710で受け取られた2つの撮影画像に、台形歪みについての補正を含む後述の画像補正処理を施すものであり、実質的には、パーソナルコンピュータ20のCPU211が、背景置換プログラム600の画像補正部620に従って動作することによって構成される。この画像補正部720の詳細については、画像補正処理の詳細とともに別図を参照して後述する。
置換処理部730は、画像補正部720での画像補正処理を経た2つの撮影画像に基づいて背景置換画像を作成するという後述の背景置換処理を行なうものであり、実質的には、パーソナルコンピュータ20のCPU211が、背景置換プログラム600の置換処理部630に従って動作することによって構成される。この画像補正部720の詳細については、背景置換処理の詳細とともに別図を参照して後述する。この置換処理部730が、本発明の背景置換装置における領域区別部と背景置換部とを兼ねた一例に相当する。
画像データ転送部740は、置換処理部730で作成された背景置換画像を表わす画像データを、プリンタ30および顧客が希望する出力用記憶媒体550のうちの少なくとも一方と、この背景置換装置700の画像表示部750とに転送する。この画像データ転送部740は、実質的には、パーソナルコンピュータ20のCPU211が、背景置換プログラム600の画像データ転送部640に従って、出力インタフェース217、FDドライブ214、CD−ROMドライブ215、およびメディアドライブ250を制御することによって構成される。
画像表示部750は、画像データ転送部740から転送されてくる画像データに基づく背景置換画像を、表示画面220aに表示するものであり、実質的には、パーソナルコンピュータ20のCPU211が、背景置換プログラム600の画像表示部650に従って画像表示装置220を制御することによって構成される。
画像修正部760は、画像表示部750において表示画面220aに表示された背景置換画像に対して、この背景置換装置700のオペレータからの操作を受けて後述の画像修正を施すものであり、実質的には、パーソナルコンピュータ20のCPU211が、背景置換プログラム600の画像修正部660に従って動作することによって構成される。この画像修正部760の詳細については別図を参照して後述する。この画像修正部760が、本発明の背景置換装置における画像修正部の一例に相当する。
また、上記の画像データ転送部740からプリンタ30に、最終的に完成された背景置換画像を表わす画像データが出力された場合には、プリンタ30において、この画像データに基づく背景置換画像がプリントされ、上記の画像データ転送部740から何らかの出力用記憶媒体550に背景置換画像を表わす画像データが出力された場合には、この画像データがその出力用記憶媒体550に書き込まれる。そして、背景置換画像がプリントされたプリント紙と、背景置換画像を表わす画像データが書き込まれた出力用記憶媒体550との両方、あるいは一方が、顧客の希望に応じて提供される。
次に、図5において、それぞれ1つのブロックで示されている画像補正部720および置換処理部730の詳細について以下に説明する。
先ず、画像補正部720について説明する。
図6は、図5に1つのブロックで示す画像補正部の詳細を示す図である。尚、以下の説明では、図5に示す要素については特に図番を断らずに図中の符号を使って参照する。
この図6に示す画像補正部720は、上述したように、画像取得部710で受け取られた順光撮影画像と逆光撮影画像とに、台形歪みについての補正を含む画像補正処理を実行するものであり、マーカ検出部721、台形補正処理部722、有効画像切出部723、および色補正部724を備えている。
以下では、この画像補正部720の各要素の作用について、上記の台形歪みが生じた順光撮影画像を例として参照しながら説明する。
図7は、台形歪みが生じた順光撮影画像の一例を示す模式図である。
この図7には、画像の幅が、下に向かうほど狭まる台形歪みが生じた撮影画像が模式的に示されている。
まず、マーカ検出部721が、撮影画像に写っている4つのマーカ131cを検出する。本来、これら4つのマーカ131bを結ぶと長方形が形成されるはずであるが、図7の例では台形歪みのために、4つのマーカ131bを結ぶと台形になってしまう。
台形補正処理部722は、マーカ検出部721が検出した4つのマーカ131cを結んでできる図形が本来の長方形となるように、撮影画像全体に適当な変形を施すことで台形歪みを補正する。
図8は、図7の順光撮影画像における台形歪みが補正された状態を示す模式図である。
背景置換処理に供する撮影画像としては、被写体と背景との区別の容易さ等の点から、背景がELパネル130における発光面のみであることが望ましい。しかしながら、本実施形態では、撮影スタジオ10について省スペース化が図られていることから、ELパネル130の大きさに限界があり、撮影画像には、図7や図8に示すように、ELパネル130の発光面以外の不要な部分が背景として写ってしまう。
有効画像作成部723は、台形補正処理部722による補正処理を経た撮影画像から、4つのマーカ131cで決まる有効範囲E1の外側の画像が削除された有効画像を作成する。
図9は、図8に示す、台形歪みが補正された順光撮影画像に基づいて作成された有効画像を示す模式図である。
有効画像作成部723によって、この図9に示すような、被写体Pの背景が、ELパネル130の発光面のみである有効画像が作成されると、次に、色補正部724が、この有効画像に対して、例えば人物の目についての赤目補正や、画像全体の色合いを好ましい色合いに補正する等といった色補正処理を施す。
以上、図7〜図9の順光撮影画像を参照して、画像補正部720で行なわれる画像補正処理について説明したが、本実施形態では、順光撮影画像とともに撮影された逆光撮影画像にも、順光撮影画像に施された画像補正処理と全く同じ処理が施される。ただし、この逆光撮影画像では、被写体は黒くつぶれて写ることとなるので、上記の色補正部724での処理は、この逆光撮影画像に対しては除外される。
図10は、図6の画像補正部によって画像補正処理が施された、補正済みの逆光撮影画像を示す模式図である。
この図10に示すように、補正済みの逆光撮影画像は、被写体Pの領域がシャドウ側に偏り、背景としてELパネル130が写っている領域がハイライト側に偏った画像となっている。ここで、上記の図7〜図9の順光撮影画像では、ELパネル130の発光の輝度が閃光発光装置12が発する閃光の輝度よりも低いため、ELパネル130の発光面は実際の発光色よりも白っぽく写るのに対し、この図10に示す逆光撮影画像では、ELパネル130の実際の発光色である青緑色に写る。
このように、図10に示す補正済みの逆光撮影画像では、被写体Pの領域と、背景領域とでは、明るさが大きく異なるので両者を容易に区別することができる。また、補正済みの逆光撮影画像では、画像中の被写体Pの位置や輪郭は、補正済みの順光撮影画像における被写体の位置や輪郭とほぼ同じになる。そこで、本実施形態では、図5の置換処理部730において、まず、補正済みの逆光撮影画像について被写体Pと背景との区別を行ない、その区別を補正済みの順光撮影画像にそのまま適用することで、この順光撮影画像における被写体Pと背景とを区別する。そして、この置換処理部730では、順光撮影画像における背景を、顧客が所望する背景と置換して背景置換画像を作成する。
次に、この置換処理部730の詳細について、補正済みの逆光撮影画像における被写体と背景との区別から、背景置換画像の作成に至る背景置換処理に注目して説明する。
ここで、以下の説明では、上記の補正済みの順光撮影画像および補正済みの逆光撮影画像それぞれの一例として、次の画像を参照する。
図11は、補正済みの順光撮影画像の一例を示す図であり、図12は、補正済みの逆光撮影画像の一例を示す図である。
これら図11および図12には、人物の被写体P’が写っている。ただし、図12に示す撮影画像は、逆光で撮影されたものであるために、被写体P’の領域がシャドウ側に偏り、背景としてELパネル130が写っている領域がハイライト側に偏った画像となっている。ここで、被写体P’と背景との境界周辺の様子を、図11中のエリアA1と、この図11中のエリアA1に対応する図12中のエリアA2とについて別図に示す。
図13は、図11中のエリアA1の拡大図であり、図14は、図12中のエリアA2の拡大図である。
これら図13および図14には、被写体P’の頭髪越しに背景のELパネル130が見えている様子が示されている。一般に、撮影画像中には、被写体の一部越しに背景が見えている部分がしばしば見られるが、このような部分は、図11〜図14の例に示すように、撮影画像中の被写体と背景との境界周辺に存在する。
ここで、図13および図14は、説明の便宜上、人物の頭髪の一本に至るまで詳細に見える理想的な状態で示されている。しかし、実際の撮影画像では、解像度の制約により、画像を構成する画素が一本の頭髪等といった微細な被写体よりも大きくなる。そのため、例えば、図13および図14に示す、頭髪越しに背景のELパネル130が見えている部分の画像等は、頭髪という微細な被写体の色と、その背後に見える背景の色とが合成された合成色を有する画素が集まって構成されることとなる。そのため、このような部分では、被写体と背景との単純な区別は不可能となっている。
図5の置換処理部730は、例えば図11に示すような、補正済みの順光撮影画像の背景を、顧客が所望する背景に置換する際には、まず、この補正済みの順光撮影画像を、被写体領域と、背景領域と、これら2つの領域に挟まれた境界領域とに区別する。置換処理部730は、この補正済みの順光撮影画像における被写体領域についてはそのまま残し、背景領域を、顧客が所望する別の背景と置換する。
このとき、図13に示すように被写体の一部越しに背景が見えていている部分、即ち、微細な被写体色と背景色とが合成された合成色を有する画素によって構成される部分は、上記のように被写体と背景とに単純に区別することが不可能であることから、置換処理部730によって上記の境界領域に区別される。
置換処理部730は、補正済みの順光撮影画像における上記の境界領域内の全ての画素が、上記のような合成色を有しているという前提のもとに、各画素の色の合成の元となった被写体色と、背景色とを推定し、さらに両者の合成比を推定する。ただし、実際の境界領域には、合成色を有する画素の他にも、背景色のみを有する画素や、被写体色のみを有する画素も含まれる。置換処理部730では、処理対象の画素が、背景色のみを有する画素である場合には、その画素の色に占める被写体色の割合が「0」となる合成比が推定され、処理対象の画素が、被写体色のみを有する画素である場合には、その画素の色に占める被写体色の割合が「1」となる合成比が推定される。
そして、置換処理部730は、上記の境界領域内の各画素の色を、推定された被写体色と、上記の顧客が所望する別の背景色とが、推定された合成比で合成されてなる合成色に置き換える。この処理では、境界領域中の、背景色のみを有する画素の色は上記の別の背景色に置換され、被写体色のみを有する画素の色はそのまま維持され、さらに、被写体の一部越しに背景が見えていている部分の画素の色は上記の合成色に置換される。この処理の結果、境界領域中に、被写体の一部越しに背景が見えていている部分が含まれていたとしても、その被写体の一部越しに、上記の顧客が所望する別の背景が見えているという自然な背景置換画像が作成される。
以下、この置換処理部730の詳細について説明する。
図15は、図5に1つのブロックで示す置換処理部の詳細を示す図である。尚、以下の説明でも、図5に示す要素については特に図番を断らずに図5中の符号を使って参照する。
この置換処理部730は、上述した背景置換処理を実行するものであり、マスク作成部731、色推定部732、および背景置換画像作成部733を備えている。ここで、マスク作成部731が本発明の背景置換装置における領域区別部の一例に相当し、色推定部732と背景置換画像作成部733とを合わせたものが、本発明の背景置換装置における背景置換部の一例に相当する。また、マスク作成部731によって、本発明の背景置換方法における領域区別過程の一例が実行され、色推定部732と背景置換画像作成部733とを合わせたものによって、本発明の背景置換方法における背景置換過程の一例が実行される。
まず、これら各構成要素の概要について説明する。
マスク作成部731は、上記の補正済みの逆光撮影画像において、この逆光撮影画像中で、被写体色の画素のみが存在する範囲を定義する被写体マスクと、背景色の画素のみが存在する範囲を定義する背景マスクとを作成する。ここで、これら2つのマスクは、それぞれのマスクが定義する範囲内に、例えば図14に示すような、被写体越しに背景が見えている部分の画素が含まれないように、互いに隙間を開けて作成される。
色推定部732は、マスク作成部731が作成した被写体マスクと背景マスクとを、上記の補正済みの順光撮影画像に適用して、まず、この順光撮影画像において、これら2つのマスク間に開いた隙間、即ち、境界領域を認識する。そして、この境界領域内の全ての画素の色が被写体色と背景色との混合色であるという前提のもとに、各画素の色を構成している被写体色と、背景色とを推定し、さらに両者の合成比を推定する。
背景置換画像作成部733は、まず、上記の補正済みの順光撮影画像において、被写体マスクで定義される領域についてはそのまま残し、背景マスクで定義される領域を、顧客が所望する別の背景と置換する。次に、境界領域内の各画素について、顧客が所望する背景の色と、上記の色推定部732で推定された被写体色とを、色推定部732で推定された合成比で合成して合成色を求め、各画素の色をその合成色に置換する。これにより、上記の補正済みの順光撮影画像の背景が、顧客が所望する別の背景に自然に置換された背景置換画像が作成される。
このように作成された背景置換画像を表わす画像データが、図5の画像データ転送部740から、各出力デバイスや出力用記憶媒体550(図5参照)に転送される。
次に、置換処理部730の各構成要素の詳細について説明する。
まず、マスク作成部731の詳細について説明する。
図16は、図15に1つのブロックで示すマスク作成部の詳細を示す図である。
このマスク作成部731は、ヒストグラム作成部731a、閾値計算部731b、背景マスク設定部731c、被写体マスク設定部731d、背景マスク縮小部731e、および被写体マスク縮小部731fを備えている。
ヒストグラム作成部731aは、上記の補正済みの逆光撮影画像を構成する各画素の明るさについてのヒストグラムを作成する。
図17は、補正済みの逆光撮影画像を構成する各画素の明るさについてのヒストグラムの様々な例を示す図である。
この図17のパート(a)には、逆光撮影画像を構成する各画素の輝度を、多数の輝度範囲に振り分け、各輝度範囲についてどれだけの画素が振り分けられたかを頻度で示した輝度ヒストグラムH1が示されており、この輝度ヒストグラムH1では、横軸H1_1に輝度がとられ、縦軸H1_2に頻度がとられている。
ここで、本実施形態では上記の順光撮影画像および逆光撮影画像は、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の3色で色を定義するRGB色空間上の座標、即ち、このRGB色空間におけるR値、G値、およびB値で各画素の色が表わされている。各画素の色を表わすR値、G値、およびB値それぞれには、その画素の明るさが反映されているので、逆光撮影画像を構成する各画素の明るさについてのヒストグラムを、これらR値、G値、およびB値のうちのいずれかを用いて作成することもできる。
図17のパート(b)には、逆光撮影画像を構成する各画素のR値を、R値の多数の範囲に振り分け、各範囲についてどれだけの画素が振り分けられたかを頻度で示したR値ヒストグラムH2が示されており、図17のパート(c)には、逆光撮影画像を構成する各画素のG値を、G値の多数の範囲に振り分け、各範囲についてどれだけの画素が振り分けられたかを頻度で示したG値ヒストグラムH3が示されており、図17のパート(d)には、逆光撮影画像を構成する各画素のB値を、B値の多数の範囲に振り分け、各範囲についてどれだけの画素が振り分けられたかを頻度で示したB値ヒストグラムH4が示されている。図17のパート(b)に示すR値ヒストグラムH2では、横軸H2_1にR値がとられ、図17のパート(c)に示すG値ヒストグラムH3では、横軸H3_1にG値がとられ、図17のパート(d)に示すB値ヒストグラムH4では、横軸H4_1にB値がとられている。また、これら3つのヒストグラムの縦軸H2_2,H3_2,H4_2には、頻度がとられている。
本実施形態では、逆光撮影画像では、被写体の背景が、ELパネル130の発光色である青緑色に写ることから、この逆光撮影画像の各画素の明るさは、R値、G値、およびB値のうち、G値に最も良く反映される。そこで、図16のヒストグラム作成部731aは、図17に示す4つのヒストグラムのうち、図17のパート(c)に示すG値ヒストグラムH3を作成するように構成されている。
ここで、このG値ヒストグラムH3には、他の3つのヒストグラムと同様に、シャドウ側と、ハイライト側とに2つのピークPk1,Pk2が現れる。シャドウ側のピークPk1は、補正済みの逆光撮影画像における被写体領域の画素が振り分けられて現れるものであり、ハイライト側のピークPk2は、この逆光撮影画像における背景領域の画素が振り分けられて現れるものである。
図16に示す閾値計算部731bは、このヒストグラム作成部731aが作成したG値ヒストグラムにおける2つのピークPk1,Pk2それぞれに基づいて、次の2つの閾値を計算する。図17のパート(c)に示すようにシャドウ側のピークPk1からは、このピークPk1において、頻度が所定頻度以上となるG値の上限である第1の閾値Sr1が計算される。また、ハイライト側のピークPk2からは、このピークPk2において、頻度が所定頻度以上となるG値の下限である第2の閾値Sr2が計算される。
そして、図16に示す被写体マスク設定部731cは、上記の補正済みの逆光撮影画像を構成する複数の画素のうち、G値が第1の閾値Sr1以下となる画素からなる領域を初期被写体マスクに設定し、背景マスク設定部731dは、G値が第2の閾値Sr2以上となる画素からなる領域を初期背景マスクに設定する。
このように、本実施形態では、ヒストグラム作成部731aが作成したG値ヒストグラムH3における2つのピークPk1,Pk2それぞれに基づいて2種類のマスクが設定される。ここで、これら2種類のマスクが正確に設定されるには、上記の2つのピークそれぞれがなるべく急峻であることが望ましい。ところが、本実施形態とは異なり、撮影スタジオ内が定常的な照明で照らされている等といった状態では、逆光撮影画像が全体的に明るい画像となってしまい、G値ヒストグラムにおける2つの急峻なピークが得られなくなる可能性がある。
以下、このような明るい撮影スタジオに対しても2つの急峻なピークが得られる、本実施形態において作成されるヒストグラムとは別のヒストグラムについて説明する。
図18は、図17に示す例とは異なるヒストグラムの例を示す図である。
この図18に示すヒストグラムH5は、図17に示す例とは異なり、上記の補正済みの順光撮影画像と補正済みの逆光撮影画像との双方が使われて、以下のように作成されるものである。まず、これら2つの撮影画像の間で互いに対応する位置にある画素の組全てについて、各組をなす画素相互間の輝度の比率が算出される。そして、各組について算出された輝度の比率が、多数の範囲に振り分けられ、各範囲についてどれだけの組が振り分けられたかが頻度で示されることでヒストグラムH5が作成される。この比率のヒストグラムH5では、横軸H5_1に輝度の比率がとられ、縦軸H5_2に頻度がとられている。この各組をなす画素相互間の輝度の比率が、本発明にいう「複数の撮影画像の相互間における明るさの比率」の一例に相当する。
ここで、撮影スタジオにおける、閃光発光装置による閃光の輝度をLs、撮影スタジオ内に定常的に存在している明るい照明の輝度をLt、被写体上あるいはELパネル上の撮影画像中の各画素に相当する位置の反射率をRi、ELパネルによる発光光の輝度をLeとすると、この撮影スタジオでの撮影で得られた順光撮影画像と逆光撮影画像とに基いて算出される上記の輝度の比率は以下の式で表わされる。
撮影画像中の被写体領域に相当する画素についての輝度の比率をN1とすると、その輝度の比率は次のようになる。
N1=(Ri×Lt)/(Ri×(Ls+Lt))=Lt/(Ls+Lt)……(1)
この(1)式から、被写体領域内の輝度の比率は、被写体領域内の位置に寄らず、撮影スタジオ内の各装置の仕様に基いて決まる一定値になることがわかる。
また、撮影画像中の背景領域に相当する画素についての輝度の比率をN2とすると、その輝度の比率は次のようになる。
N2=(Ri×Lt+Le)/(Ri×(Ls+Lt)+Le)……(2)
この(2)式において、Riは、ELパネルにおける反射率となるが、ELパネル上では反射率は位置に寄らずほぼ一定となるので、この(2)式から、背景領域内の輝度の比率も、背景領域内の位置によらず、撮影スタジオ内の各装置の仕様に基いて決まる一定値になることがわかる。
ただし、被写体領域内の輝度の比率と背景領域内の輝度の比率との間には、ELパネルによる発光光の輝度(Le)に起因する差がある。その結果、この比率のヒストグラムH5には、図18に示すように、被写体領域と背景領域とのそれぞれに対応する2つの急峻なピークPk3,Pk4が現れることとなる。ここで、順光撮影画像と逆光撮影画像との相互間では、被写体領域における輝度の違いが、背景領域における輝度の違いよりも大きくなるので、図18に示すヒストグラムH5では、低比率側のピークPk3が背景領域に対応し、高比率側のピークPk4が被写体領域に対応する。
このように、図18に示すヒストグラムH5では、撮影スタジオ内に定常的に明るい照明が存在していたとしても、2つの急峻なピークが必ず現れる。また、その定常的な照明の輝度が変わったとしても、各ピークの位置が変わるだけで急峻さは変化しないことが上記の(1)式と(2)式とからわかる。
以上で、この輝度の比率のヒストグラムについての説明を終了し、図17に至る本実施形態の撮影システム1についての説明に戻る。
上述したように、本実施形態では、図17のパート(c)に示すG値ヒストグラムH3における2つのピークPk1,Pk2それぞれに基づいて初期被写体マスクと初期背景マスクとが設定される。
図19は、図14に示す逆光撮影画像の拡大図において、初期被写体マスクに設定された領域と初期背景マスクに設定された領域を示す図である。
この図19における右側のハッチング部分は、図14の拡大図において被写体P’の頭髪が、背景が見えないほどに集まっていて、逆光撮影によってシャドウ側に大きく偏って写っている部分であり、その部分の画素のG値が上記の第1の閾値Sr1を下回っている。その結果、この図18における右側のハッチング部分は、被写体マスク設定部731cによって初期被写体マスクM1に設定される。
また、図19における左側のハッチング部分は、図14の拡大図において背景のELパネル130のみが写っている、ハイライト側に大きく偏った部分であり、その部分の画素のG値は上記の第2の閾値Sr2を上回っている。その結果、この図19における左側のハッチング部分は、背景マスク設定部731dによって初期背景マスクM2に設定される。
一方、図19において左右いずれのハッチング部分にも属していない部分は、頭髪越しに背景が見えている部分であり、その部分のG値は、上記の第1の閾値Sr1を上回り、上記の第2の閾値Sr2を下回る。その結果、この図19において左右いずれのハッチング部分にも属していない部分は、初期被写体マスクM1と初期背景マスクM2との間にあって、両方のマスクの外側となる境界領域M3として残される。
図20は、図19に示す初期被写体マスクと初期背景マスクとを示す図であり、図21は、初期被写体マスクと初期背景マスクとを、図11に示す補正済みの順光撮影画像全体に重ねて示した図である。
図20および図21に示すように、初期被写体マスクM1と初期背景マスクM2とはかなり接近しており、境界領域M3が非常に狭くなっている。ここで、上述したように、補正済みの逆光撮影画像では、画像中の被写体の位置や輪郭は、補正済みの順光撮影画像における被写体の位置や輪郭とほぼ同じになる。しかし、撮影のタイミングが若干ずれているため、2つの撮影画像の間で、被写体の位置や輪郭が若干ずれる可能性もある。そのような場合には、境界領域M3が狭いと、補正済みの順光撮影画像において、図13に示すような、被写体の一部を透かして背景が見えている部分が境界領域M3に完全には含まれず、2つのマスクのいずれか一方に含まれてしまう恐れが生じる。このような初期被写体マスクM1と、初期背景マスクM2とに基づいて、背景の置換が行なわれると、被写体の一部を透かして背景が見えている部分に、古い背景が残ってしまったり、あるいは、そのような部分が全て新しい背景に置換されて、被写体の一部が欠けてしまったりするという問題が発生してしまう恐れがある。
このような問題を回避するために、本実施形態では、図16に示す被写体マスク縮小部731eによって初期被写体マスクM1を境界領域M3から離れる方向に縮小し、背景マスク縮小部731fによって初期背景マスクM2を境界領域M3から離れる方向に縮小する。これにより、境界領域M3が広げられ、被写体の一部を透かして背景が見えている部分が境界領域M3により多く含まれるようになる。
図22は、図20に示す初期被写体マスクと初期背景マスクとが、それぞれ境界領域から離れる方向に縮小される様子を示す図である。
この図22に示すように、初期被写体マスクM1の輪郭L1が所定数の画素分だけ、境界領域M3から離れる方向に移動されることによって初期被写体マスクM1が縮小され、同様に、初期背景マスクM2の輪郭L2が所定数の画素分だけ、境界領域M3から離れる方向に移動されることによって初期背景マスクM2が縮小される。ここで、本実施形態では、2つのマスクの輪郭の移動量として5画素が採用されている。このようなマスクの縮小を経て、最終的な被写体マスクM1’および背景マスクM2’が完成される。
図23は、最終的に完成された被写体マスクと背景マスクとを、図11に示す補正済みの順光撮影画像全体に重ねて示した図である。
最終的に完成された被写体マスクM1’と背景マスクM2’との間、即ち、最終的な境界領域M3’は、図21に示す境界領域M3に比べて10画素分広くなっており、図23に示すように、この最終的な境界領域M3’に、被写体の一部を透かして背景が見えている部分がかなり含まれることとなる。ここで、上記の最終的に完成された背景マスクM2’で定義される領域が、本発明にいう「撮影画像中の背景領域」の一例に相当し、上記の最終的に完成された被写体マスクM1’で定義される領域と上記の最終的な境界領域M3’とを合わせた領域が本発明にいう「撮影画像中の上記背景領域を除く他の領域」の一例に相当する。
以上で、図15の置換処理部730が備えるマスク作成部731についての説明を終了し、次に、この置換処理部730が備える色推定部732の詳細について説明する前に、本実施形態のマスク作成部731とは別の、本実施形態とは異なる方法で背景マスクと被写体マスクを作成するマスク作成部について説明する。
例えば、図1に示す撮影スタジオ10では、ELパネル130とデジタルカメラ11との相対的な位置関係によっては、撮影画像中において、ELパネル130が、被写体Pの足元に近い下方では上方よりも暗く写ってしまい、マスクの作成に使う補正済みの逆光撮影画像において明るさが高さ方向に不均一になってしまう場合がある。そのような場合には、図17に示したヒストグラムの背景領域に対応するピークが分散されてしまい、正確な背景マスクの作成が困難となってしまうことがある。以下に説明する、本実施形態のマスク作成部731とは別のマスク作成部は、このような事態に対処できるものである。
図24は、本実施形態のマスク作成部731とは別のマスク作成部を示す図である。
この別のマスク作成部731’は、画像分割部731a’、ヒストグラム作成部731b’、閾値計算部731c’、被写体マスク設定部731d’、背景マスク設定部731e’、被写体マスク縮小部731f’、背景マスク縮小部731g’、被写体マスク合成部731h’、および背景マスク合成部731i’を備えている。
画像分割部731a’は、上記の補正済みの逆光撮影画像を次のように分割する。
図25は、補正済みの逆光撮影画像が分割された様子を示す図である。
この図25には、補正済みの逆光撮影画像が高さ方向に3分割された状態が示されている。上述したように、補正済みの逆光撮影画像における明るさの不均一は、画像の高さ方向に現れる。従って、高さ方向の分割で得られる3つの小領域Ar1,Ar2,Ar3それぞれの内部では、比較的、明るさが均一になっている。
図24に示すヒストグラム作成部731b’は、このような3つの小領域Ar1,Ar2,Ar3それぞれについてヒストグラムの作成を行なう。
図26は、図25に示す3つの小領域Ar1,Ar2,Ar3それぞれについて作成されるヒストグラムの一例を示す図である。
図26のパート(a)には、図25における最上段の小領域Ar1に対応するG値のヒストグラムH6が示され、パート(b)には、図25における中段の小領域Ar2に対応するG値のヒストグラムH7が示され、パート(c)には、図25における最下段の小領域Ar3に対応するG値のヒストグラムH8が示されている。この図26に示すように、3つの小領域Ar1,Ar2,Ar3それぞれについて作成されるヒストグラムでは、背景領域に対応するピークが、ハイライト側に判別可能な急峻さで現れる。
図24に示す閾値計算部731c’は、これら図26に示す3つのヒストグラムそれぞれについて、上述したような、被写体領域を他の領域から区別するための閾値と背景領域を他の領域から区別するための閾値とを計算する。
さらに、被写体マスク設定部731d’および背景マスク設置部731e’それぞれは、3つの小領域Ar1,Ar2,Ar3それぞれについて、閾値計算部731c’で算出された閾値を用いて上述したような初期被写体マスクおよび初期背景マスクの設定を行なう。また、被写体マスク縮小部731f’および背景マスク縮小部731g’それぞれは、3つの小領域Ar1,Ar2,Ar3それぞれについて設定された初期被写体マスクおよび初期背景マスクを縮小して、上述したような被写体マスクおよび背景マスクを作成する。
被写体マスク合成部731h’は、3つの小領域Ar1,Ar2,Ar3それぞれについて作成された被写体マスクを合成して、逆光撮影画像全体に対応する最終的な被写体マスクを完成する。同様に、背景マスク合成部731i’も、3つの小領域Ar1,Ar2,Ar3それぞれについて作成された背景マスクを合成して、逆光撮影画像全体に対応する最終的な背景マスクを完成する。
以上に説明した別のマスク作成部731’によれば、補正済みの逆光撮影画像を比較的明るさが均一な小領域に分割し、各小領域について被写体マスクと背景マスクを作成した後に各マスクを合成して最終的な被写体マスクと背景マスクを完成する。このような処理により、マスクの作成に使う補正済みの逆光撮影画像において明るさが高さ方向に不均一になっていたとしても、正確なマスクの作成が可能となる。尚、ここでは、補正済みの逆光撮影画像を小領域に分割するときの分割数の例として、分割数が3つである例を示したが、この分割数は3つ以外であっても良い。
以上で別のマスク作成部731’の説明を終了し、再度、図15の置換処理部730についての説明に戻り、この置換処理部730が備える色推定部732の詳細について説明する。
図27は、図15に1つのブロックで示す色推定部の詳細を示す図である。
この色推定部732は、背景色推定部732a、被写体色推定部732b、および合成比推定部732cを備えている。
まず、背景色推定部732aについて説明する。
図28は、図27に1つのブロックで示す背景色推定部の詳細を示す図である。
この背景色推定部732aは、補正済みの順光撮影画像における、上記の最終的な境界領域内の各画素について、その画素の色を構成している背景色を推定するものであり、探索範囲設定部732a_1、背景領域確認部732a_2、および背景色計算部732a_3を備えている。
この背景色推定部732aは、境界領域内のある画素について背景色を推定する際には、背景マスクで定義される領域内の画素の中から、ある程度その画素の近くに位置する複数の画素を探索し、探索された複数の画素の色の平均色を、その画素についての背景色として求める。
探索範囲設定部732a_1は、背景色を推定する画素を中心とした正方形状の探索範囲を次のように設定する。
図29は、ある画素について背景色を推定する際に、その画素を中心に探索範囲が設定される様子を示す図である。
境界領域内のある画素Gについて探索範囲を設定するに当たり、探索範囲設定部732a_1は、まず、この画素Gを中心とした正方形状の所定の初期範囲T1から出発して徐々に探索範囲を拡張する。そして、探索範囲設定部732a_1は、背景マスクM2’で定義される領域の画素が、所定数を超えて探索範囲に含まれるようになったところで拡張を止め、そのときの探索範囲T1’を、背景色推定のための探索範囲として設定する。
探索範囲が設定されると、図24に示す背景領域確認部732a_2が、画素Gについて背景色を推定するために用いる領域として、補正済みの順光撮影画像における次の領域を確認する。
図30は、ある画素について背景色を推定するために用いられる領域の一例を示す図である。
この図30に示すように、画素Gについて背景色を推定するために用いられる領域として、補正済みの順光撮影画像において、背景マスクで定義される領域であり、かつ探索範囲設定部732a_1によって設定された探索範囲T1’内となる領域B1が確認される。
このように、画素Gについて背景色を推定するために用いられる領域B1が確認されると、図28に示す背景色計算部732a_3が、この領域B1内の複数の画素の平均色、即ち、複数の画素のR値、G値、およびB値それぞれの平均値を計算する。そして、その計算結果が表わす色を、その画素Gについての背景色として採用する。
以上に説明した背景色推定部732aは、上記の探索範囲の設定から平均色の計算に至るまでの処理を、補正済みの順光撮影画像における境界領域内の全ての画素について実行する。
次に、図27に示す被写体色推定部732bについて説明する。
図31は、図27に1つのブロックで示す被写体色推定部の詳細を示す図である。
この被写体色推定部732bは、補正済みの順光撮影画像における、上記の最終的な境界領域内の各画素について、その画素の色を構成している被写体色を推定するものであり、探索範囲設定部732b_1、被写体領域確認部732b_2、画素色確認部732b_3、および被写体色探索部732b_4を備えている。
この被写体色推定部732bは、境界領域内のある画素について被写体色を推定する際には、被写体マスクで定義される領域内の画素の中から、ある程度その画素の近くに位置する複数の画素を探索し、探索された複数の画素の色の中から、後述の探索方法によって、その画素についての被写体色を探索する。
探索範囲設定部732b_1は、被写体色を推定する画素を中心とした正方形状の探索範囲を次のように設定する。
図32は、ある画素について被写体色を推定する際に、その画素を中心に探索範囲が設定される様子を示す図である。
境界領域内のある画素Gについて探索範囲を設定するに当たり、探索範囲設定部732b_1は、まず、この画素Gを中心とした正方形状の所定の初期範囲T2から出発して徐々に探索範囲を拡張する。そして、探索範囲設定部732b_1は、被写体マスクM1’で定義される領域の画素が、所定数を超えて探索範囲に含まれるようになったところで拡張を止め、そのときの探索範囲T2’を、被写体色推定のための探索範囲として設定する。
探索範囲が設定されると、図31に示す被写体領域確認部732b_2が、画素Gについて被写体色を推定するために用いる領域として、補正済みの順光撮影画像における次の領域を確認する。
図33は、ある画素について被写体色を推定するために用いられる領域の一例を示す図である。
この図33に示すように、画素Gについて被写体色を推定するために用いられる領域として、補正済みの順光撮影画像において、被写体マスクで定義される領域であり、かつ探索範囲設定部732b_1によって設定された探索範囲T2’内となる領域B2が確認される。
このように、画素Gについて被写体色を推定するために用いられる領域B2が確認されると、まず、図31に示す画素色確認部732b_3が、その画素Gの色を確認し、次に、図31に示す被写体色探索部732b_4が、上記の領域B2内の複数の画素の色の中から、以下のような探索方法によって、その画素Gについての被写体色を探索する。
図34は、補正済みの順光撮影画像における境界領域内のある画素について被写体色を探索する際の探索方法を示す図である。
図34には、補正済みの順光撮影画像における境界領域内のある画素について、図27の背景色推定部732aで推定された背景色C1と、図27の画素色確認部732b_3で確認されたその画素の色C2とを、RGB色空間上で結ぶ直線CL1が示されている。
上述したように、補正済みの順光撮影画像における境界領域内の画素の色は、撮影時に被写体の一部越しに背景が見えて、背景色と被写体色とが合成された合成色となっている可能性がある。仮に、今、被写体色を探索しようとしている画素の色がこのような合成色となっている場合には、合成色である画素の色C2と、その色C2の元となった背景色C1と被写体色とはRGB色空間上の直線上に並ぶ。
そこで、図31に示す被写体色探索部732b_4は、まず、上記の領域B2内の複数の画素の色の中から、上記の直線CL1の延長線上に並ぶ色C3を探索する。
このような色C3が複数存在する場合には、この直線CL1の延長線上で、画素の色C2に最も近い色が、背景色C1とともにその画素の色C2の元となった可能性が最も高い。そこで、被写体色探索部732b_4は、上記の直線CL1の延長線上に並ぶ色C3が複数存在する場合には、これらの色C3の中から、画素の色C2に最も近い色を、この画素についての被写体色C4として採用する。
以上に説明した被写体色推定部732bは、上記の探索範囲の設定から被写体色の探索に至るまでの処理を、補正済みの順光撮影画像における境界領域内の全ての画素について実行する。
以上で、図27に示す被写体色推定部732bについての説明を終了し、次に、この図27に示す合成比推定部732cについて説明する。尚、この合成比推定部732cについての説明では上記の図34を参照する。
この合成比推定部732cは、図34に示すように、背景色推定部732aで推定された背景色C1と、被写体色推定部732bで推定された被写体色C4とを、RGB色空間上で結ぶ線分の長さに対する、背景色C1と、その画素の色C2とを結ぶ線分の長さの割合を、背景色C1と被写体色C4とで画素の色C2を合成するときの合成比αとして算出する。また、この合成比推定部732cは、このような合成比αの算出を、補正済みの順光撮影画像における境界領域内の全ての画素について実行する。
以上で、図15の置換処理部730が備える色推定部732の詳細についての説明を終了し、次に、この置換処理部730が備える背景置換画像作成部733の詳細について説明する。
この背景置換画像作成部733は、上述したように、まず、上記の補正済みの順光撮影画像において、被写体マスクで定義される領域についてはそのまま残し、背景マスクで定義される領域を、顧客が所望する別の背景と置換する。
そして、この背景置換画像作成部733は、境界領域内の各画素については、顧客が所望する背景の色と、色推定部732で推定された被写体色とを、色推定部732で推定された合成比で合成して合成色を求める。
図35は、補正済みの順光撮影画像における境界領域内のある画素について合成色が求められる様子を示す図である。
この図35には、RGB色空間上で、推定された背景色C1と、その画素の色C2と、推定された被写体色C4とを結ぶ、図34にも示した直線CL1が示されている。ここで、画素の色C2は、背景色C1と被写体色C4とを結ぶ直線を、合成比α:(1−合成比α)で分割する点であるといえる。そこで、背景置換画像作成部733は、この図31に示すように、別の背景色C5と、推定された被写体色C4とを結ぶ直線CL2を、合成比α:(1−合成比α)で分割する点を合成色C6として採用する。
この図35を参照して説明した方法で、境界領域内の全ての画素について合成色が求められると、背景置換画像作成部733は、この全ての画素の色を、各画素について求められた合成色に置換することにより、補正済みの順光撮影画像の背景が、顧客が所望する別の背景に置換された背景置換画像を完成させる。
ここで、補正済みの順光撮影画像における境界領域内には、図23等からもわかるように、被写体の一部越しに背景が見えている部分以外にも、被写体のみで占められた部分や、背景のみで占められた部分も含まれる。被写体のみで占められた部分の画素の色は被写体そのものの色であり、背景が別の背景に置換されたとしても、その画素の色は維持される必要がある。また、背景のみで占められた部分の画素の色は背景そのものの色であり、背景が別の背景に置換されたときには、その画素の色は、その別の背景色に完全に置換される必要がある。
本実施形態では、背景色や被写体色や合成比の推定対象の画素が、被写体のみで占められた部分の画素であった場合には、図33に示す領域B2のような、その画素について被写体色を推定するために用いられる領域内のほとんどの画素の色が、推定対象の画素の色と同じ被写体そのものの色となる。その結果、このような画素については、合成比αがほぼ「1」となり、背景が置換される際には、この合成比αに基づいて合成色が求められるので、その画素の色である被写体そのものの色が維持される。
一方、背景色や被写体色や合成比の推定対象の画素が、背景のみで占められた部分の画素であった場合には、その画素の色が、その画素について推定される背景色と同じ背景そのものの色となる。その結果、このような画素については、合成比αがほぼ「0」となり、背景が置換される際には、この合成比αに基づいて、その画素の色は、別の背景色に完全に置換されることとなる。
結局、本実施形態では、背景色や被写体色や合成比の推定対象の画素が、被写体の一部越しに背景が見えている部分の画素であった場合に、合成比αが「0」と「1」との間の値を持つこととなり、背景が置換される際に、被写体色と、別の背景色との合成が行なわれて背景置換画像が作成される。
図36は、背景置換画像の一例を示す図である。
この図36には、図11に示す補正済みの順光撮影画像の背景を別の背景に置換して作成された背景置換画像における、図11中のエリアA1と同じ部分が拡大された拡大図が示されている。
背景置換画像作成部733で作成される背景置換画像は、境界領域内の画素の色が上記の合成色に置換された画像であり、この背景置換画像から、観賞者は、この図36に示すような、被写体P’の頭髪越しに、置換された別の背景TBが透けている状態を認識することとなる。
ここで、繰返しになるが、本実施形態では、補正済みの逆光撮影画像に基づいて作成された初期被写体マスクM1および初期背景マスクM2が、図16に示す被写体マスク縮小部731eおよび背景マスク縮小部731fによって5画素分だけ境界領域から離れるように縮小されて、被写体マスクM1’と、背景マスクM2’とが完成される。これにより、補正済みの順光撮影画像と補正済みの逆光撮影画像との間に生じる可能性のある被写体の位置や輪郭のずれによって、撮影画像中で被写体の一部を透かして背景が見えている部分が、上記の境界領域から外れてしまうという不具合の回避が図られている。しかしながら、撮影時の被写体の状況によっては、5画素分の縮小では被写体の位置や輪郭のずれを補いきれない場合がある。そのような場合には、結局、表示画面220a(図1参照)に表示された背景置換画像中の、被写体の一部を透かして背景が見えている部分において、古い背景が残ってしまったり、あるいは、そのような部分が全て新しい背景に置換されて、被写体の一部が欠けてしまったり等といった問題が発生してしまう。
本実施形態では、背景置換画像中のこのような不自然な部分を修正して、最終的に自然な背景置換画像を得るために、画像修正部760(図5参照)が備えられている。
以下、この画像修正部760の詳細について説明する。
図37は、図5に1つのブロックで示す画像修正部760の詳細を示す図である。尚、以下の説明では、図1および図5に示す要素については特に図番を断らずに図中の符号を使って参照する。
この図37には、画像修正部760の他に、図16にも示した被写体マスク縮小部731eおよび背景マスク縮小部731fも示されている。
図37に示す画像修正部760は、表示画面220aに表示された背景置換画像中の上記のような不自然な部分を修正するものであり、修正受付部761と、修正値入力部762と、再置換指示部763とを備えている。
上述したように、表示画面220aには、背景置換画像とともに、その背景置換画像について修正の必要があるか否かを問うメッセージが表示される。このとき、この背景置換画像中に上記のような不自然な部分を見たオペレータが、キーボード230やマウス240を操作して、修正が必要である旨を指示すると、修正受付部761が、そのオペレータからの指示を受け付ける。
修正受付部761が、修正指示を受け付けると、修正値入力部762が、次のような修正値を入力するための入力画面を表示画面220aに表示させる。
即ち、本実施形態では、図16にも示す被写体マスク縮小部731eおよび背景マスク縮小部731fにおける各マスクに対する5画素分の縮小量に替わる新たな縮小量が上記の修正値として扱われ、この縮小量が上記の5画素以上の値に設定されるようになっている。
修正値入力部762が表示させた修正値の入力画面では、この縮小量が、オペレータによるキーボード230やマウス240を操作によって入力される。そして、修正値入力部762は、入力された縮小量を被写体マスク縮小部731eおよび背景マスク縮小部731fに渡す。被写体マスク縮小部731eおよび背景マスク縮小部731fそれぞれは、5画素に替えて、修正値入力部762から渡された縮小量で上記の初期被写体マスクM1および初期背景マスクM2を縮小し直す。これにより、縮小量が5画素であったときよりも広さが狭い新たな被写体マスクおよび背景マスクが作られる。この結果、上記の境界領域が広がり、被写体の一部を透かして背景が見えている部分が、縮小量が5画素であったときよりも多く境界領域に含まれることとなる。
そして、再置換指示部763が、上記の新たな被写体マスクおよび背景マスクを用いた、背景の再置換処理を、上述した置換処理部730の各部に指示する。
この再置換処理によって作成された新たな背景置換画像は表示画面220aに表示される。そして、以上、説明した画像修正部760による画像修正は、表示画面220aに表示される背景置換画像中に、上記のような不自然な部分が認められなくなるまで繰り返される。
以上、図1〜図37を参照して説明したように、本実施形態の撮影システム1によれば、まず、画像中の背景と被写体とで明るさが大きく異なり、背景と被写体とを互いに誤認することなく区別できる補正済みの逆光撮影画像に基づいて、補正済みの順光撮影画像における背景と被写体とが区別される。このため、この補正済みの順光撮影画像の背景が別の背景に置換されるときに、被写体の一部が誤って背景に置換されてしまったり、背景置換画像の中に、古い背景が残ってしまったりする等といった不具合が抑制されて、背景が所望の背景に自然に置換された背景置換画像を作成することができる。
また、本実施形態の撮影システム1によれば、補正済みの順光撮影画像における、被写体領域と背景領域との境界領域が認識され、背景を置換する際には、この境界領域内の画素の色が、置換される別の背景色と被写体色とが適切に合成された合成色に置換される。これにより、例えば、被写体の一部越しに背景が見えている部分があったとしても、背景を置換すると、この被写体の一部越しに別の背景が見えているといった自然な背景置換画像を作成することができる。
さらに、本実施形態の撮影システム1によれば、背景が所望の背景に置換された背景置換画像に修正を施すことにより、背景が、より自然に置換された背景置換画像を作成することができる。
尚、上記では、本発明の背景置換装置における画像修正部の一例として、上記の初期被写体マスクおよび初期背景マスクについての縮小量を、背景置換画像に対する修正量として扱う画像修正部760を挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。本発明の画像修正部は、例えば、次のようなものであっても良い。
図38は、図37に示した画像修正部とは別の画像修正部を示す図である。
尚、以下では、図37に示した画像修正部760との相違点に注目して説明を行ない、図38では、図37と同等な構成要素については図37と同じ符号を付し、重複説明を省略する。また、以下の説明では、図17のパート(c)に示すG値ヒストグラムH3を適宜に参照する。
この図38に示す画像修正部810は、上記の画像修正部760とは異なり、次のような修正値入力部811を備えている。
上記の初期被写体マスクおよび初期背景マスクは、上述したように、補正済みの逆光撮影画像から作成されたG値ヒストグラムH3から計算される2つの閾値Sr1,Sr2に基づいて設定される。即ち、補正済みの逆光撮影画像を構成する複数の画素のうち、G値が第1の閾値Sr1以下となる画素からなる領域が初期被写体マスクに設定され、G値が第2の閾値Sr2以上となる画素からなる領域が初期背景マスクに設定される。
ここで、この図38に示す画像修正部810では、上記のG値ヒストグラムH3から計算される2つの閾値Sr1,Sr2に替わる新たな2つの閾値が修正値として扱われ、初期被写体マスク用の修正値としては、第1の閾値Sr1以下の値となる閾値が設定され、初期背景マスク用の修正値としては、第2の閾値Sr2以上の値となる閾値が設定されるようになっている。ここで、この画像修正部810において修正値として扱われる2つの閾値が、本発明にいう「区別基準」の一例に相当する。
修正値入力部811が表示画面に表示させる入力画面では、これら2つの閾値が、オペレータによるキーボード230やマウス240の操作によって入力される。そして、修正値入力部762は、入力された2つの閾値を、それぞれ、図16にも示す被写体マスク設定部731cと背景マスク設定部731dとに渡す。これにより、上記の第1の閾値Sr1および第2の閾値Sr2を用いて設定される初期被写体マスクおよび初期背景マスクと比べて、形や位置が、境界領域が広がるように異なった新たな初期被写体マスクおよび初期背景マスクが設定される。この結果、最終的な2つのマスクも新たなものとなり、両者間の境界領域には、被写体の一部を透かして背景が見えている部分が、元の2つの初期マスクを用いたときよりも多く含まれることとなる。
つまり、この図38に示す画像修正部810によっても、上記の縮小量を修正値として扱う画像修正部760と同等な効果を得ることができる。
ここで、本実施形態では、境界領域内のある画素について被写体色や合成比αを推定する際に設定される探索範囲は、その画素を中心とした範囲であって、被写体マスクM1’で定義される領域の画素が所定数を超えて含まれる範囲である。このため、探索範囲は、被写体マスクM1’で定義される領域から画素の位置が離れるに従って広くなる。以下、このような探索範囲の拡大が抑えられた、本実施形態とは別の、探索範囲の設定方法について説明する。
まず、この別の設定方法では、境界領域内の、被写体マスクM1’で定義される領域に近い画素から、被写体色や合成比αの推定が実行される。
図39は、被写体マスクM1’で定義される領域に近い画素から、被写体色や合成比αの推定が実行される様子を示す模式図である。
この図39に示すように、この別の設定方法では、被写体マスクM1’の輪郭L3の側から被写体色や合成比αの推定が実行される。ここで、この別の設定方法では、被写体色が推定された画素を、被写体マスクM1’で定義される領域内の画素と同等であるとみなす。その結果、境界領域内に、被写体マスクM1’の輪郭L3と同等な見かけ上の輪郭(図中の点線L3’)が形成される。そして、この見かけ上の輪郭は、推定が進む度に、この図39に示すように、境界領域内に進出することとなる。
この別の設定方法では、この境界領域内に進出した見かけ上の輪郭(図中の点線L3’)を使って、探索範囲の設定が行なわれる。
図40は、見かけ上の輪郭を使った探索範囲の設定の様子を示す模式図である。
この図40に示すように、この別の設定方法では、被写体色や合成比αを推定する画素Gを中心とし、見かけ上の輪郭(図中の点線L3’)よりも被写体側の領域に画素が所定数を超えて含まれる範囲が探索範囲T2”として設定される。そして、探索範囲T2”における、見かけ上の輪郭よりも被写体側の領域B2’において、被写体色の推定が実行される。この推定には、見かけ上の輪郭よりも被写体側にある画素について既に推定された被写体色が推定の候補として使われる。
このように、推定が進む毎に境界領域内に進出する見かけ上の輪郭よりも被写体側の領域B2’を推定に利用することで、被写体マスクM1’の輪郭L3から離れた位置の画素についても探索範囲の拡大が抑えられることとなる。
尚、上記では、本発明にいう背景置換装置の一実施形態として、補正済みの逆光撮影画像中で被写体が占めている範囲を定義する被写体マスクと、背景が占めている範囲を定義する背景マスクとの2つのマスクを作成し、これら2つのマスクを用いて、補正済みの順光撮影画像における背景の置換を行なう背景置換装置700を例示したが、本発明はこれに限るものではない。本発明の背景置換装置は、例えば、以下に説明するように、上記の背景マスクのみを作成し、この背景マスクのみを用いて、補正済みの順光撮影画像における背景の置換を行なうもの等であっても良い。
以下に、背景マスクのみを用いた背景置換の方法の一例について説明する。尚、ここでの背景マスクは、図15に示すマスク作成部731が行なう背景マスクの作成と同じ方法で作成されたものであるとして、背景マスクの作成については重複説明を省略する。
この背景マスクのみを用いた背景置換では、まず、この背景マスクに基づいて、補正済みの順光撮影画像において、背景マスクで定義される領域を除いた領域を定義する非背景マスクが作成される。この非背景マスクが定義する領域は、上記の被写体マスクが定義する領域と、境界領域とを合わせた領域になる。そして、この非背景マスクが定義する領域内の全ての画素について、背景色と、被写体色と、両者の合成比の推定が行なわれる。尚、ここでの背景色は、図27に示す背景色推定部732aが行なう推定方法と同じ方法によって推定されるものであるとして、背景色の推定については重複説明を省略する。以下では、主に、被写体色の推定方法に注目して説明する。
図41は、補正済みの順光撮影画像において、非背景マスクで定義される領域内のある画素について被写体色を推定する際に、その画素を中心に探索範囲が設定される様子を示す図である。ここで、この図41では、図22に示す被写体マスクM1’ が定義する領域と、境界領域M3とを合わせた領域が、上記の非背景マスクM4が定義する領域の一例として挙げられている。また、この非背景マスクM4が定義する領域は、本発明にいう「撮影画像中の上記背景領域を除く他の領域」の一例に相当する。
非背景マスクM4が定義する領域内のある画素Gについて探索範囲を設定するに当たっては、まず、この画素Gを中心とした正方形状の所定の初期範囲T3から出発して徐々に探索範囲が拡張される。そして、補正済みの順光撮影画像において非背景マスクM4で定義される領域の画素が、所定数を超えて探索範囲に含まれるようになったところで拡張が止められ、そのときの探索範囲T3’が、被写体色推定のための探索範囲として設定される。
探索範囲が設定されると、画素Gについて被写体色を推定するために用いる領域として、補正済みの順光撮影画像における次の領域が確認される。
図42は、ある画素について被写体色を推定するために用いられる領域の一例を示す図である。
この図42に示すように、画素Gについて被写体色を推定するために用いられる領域として、補正済みの順光撮影画像において、非背景マスクで定義される領域であり、かつ上記のように設定された探索範囲T3’内となる領域B3が確認される。
このように、画素Gについて被写体色を推定するために用いられる領域B3が確認されると、まず、その画素Gの色が確認され、次に、上記の領域B3内の複数の画素の色の中から、以下のような探索方法によって、その画素Gについての被写体色が探索される。
図43は、補正済みの順光撮影画像における、非背景マスクで定義される領域内のある画素について被写体色を探索する際の探索方法を示す図である。
図43には、補正済みの順光撮影画像における境界領域内のある画素について、推定された背景色C7と、その画素の色C8とを、RGB色空間上で結ぶ直線CL3が示されている。
ここで、補正済みの順光撮影画像における非背景マスクで定義される領域には、上述したような境界領域が含まれている。そして、この境界領域には被写体の一部越しに背景が見えている部分が含まれている可能性があり、そのような部分の画素の色は、背景色と被写体色とを合成した合成色となっている。仮に、今、被写体色を探索しようとしている画素の色がこのような合成色となっている場合には、合成色である画素の色C8と、その色C8の元となった背景色C7と被写体色とはRGB色空間上の直線上に並ぶ。
そこで、まず、上記の領域B3内の複数の画素の色の中から、上記の直線CL3の延長線上に並ぶ色C9を探索する。このような色C9が複数存在する場合、これら複数の色C9のうちの1つの色が被写体色として採用される。
ここで、非背景マスクで定義される領域内には、上記の合成色を有する画素や、背景色のみを有する画素等といった、被写体色以外の色を有する画素が含まれる。このため、上記の複数の色C9のうちでは、画素の色C8から最も遠い色が、背景色C7とともにその画素の色C8の元となった被写体色である可能性が高い。
そこで、この非背景マスクで定義される領域内の画素の色の中から被写体色を探索する方法では、上記の直線CL3の延長線上に複数の色C9が並んだ場合には、これらの色C9の中から、画素の色C7に最も遠い色を、この画素についての被写体色C10として採用する。
このように被写体色が推定されると、この図37に示すように、背景色推定部732aで推定された背景色C7と、被写体色推定部732bで推定された被写体色C10とを、RGB色空間上で結ぶ線分の長さに対する、背景色C7と、その画素の色C8とを結ぶ線分の長さの割合を、背景色C7と被写体色C10とで画素の色C8を合成するときの合成比αとして算出する。
そして、背景マスクのみを用いた背景置換では、以上に説明した探索範囲の設定から合成比の算出に至るまでの処理が、補正済みの順光撮影画像における、非背景マスクで定義される領域内の全ての画素について実行される。
以上説明した、背景色と被写体色と合成比との推定が終了すると、まず、補正済みの順光撮影画像における、背景マスクで定義される領域が、顧客が所望する別の背景に置換される。次に、補正済みの順光撮影画像における、非背景マスクで定義される領域内の全ての画素について、上記の図31を参照して説明した方法で合成色が求められ、この非背景マスクで定義される領域内の全ての画素の色が合成色に置換されて、背景置換画像が完成される。
ここで、この非背景マスクで定義される領域内の、被写体のみで占められた部分の画素については、合成比αがほぼ「1」となり、背景が置換される際にも、その画素における被写体そのものの色が維持される。また、非背景マスクで定義される領域内の、背景のみで占められた部分の画素については、合成比αがほぼ「0」となり、背景が置換される際には、その画素の色が、別の背景色に完全に置換される。
以上、図41〜図43を参照して説明した、背景マスクのみを用いた背景置換によっても、上記の図1〜図36を参照して説明した、撮影システム1と同様に、撮影画像における背景が所望の背景に自然に置換された背景置換画像を作成することができる。
また、例えば、上述した被写体マスクと背景マスクとの両方を用いた背景置換では、被写体マスクで定義される領域内にELパネル130の発光色の写り込みが存在しているような場合、背景置換の際に、そのELパネル130の発光色の写り込みがそのまま残されてしまう可能性がある。しかし、上記の背景マスクのみを用いた背景置換によれば、このような場合であっても、完全な背景色の領域以外の領域が全てが推定対象となるので、そのような写り込みの色が除去された正確な被写体色が推定される。
また、ここまで、被写体マスクと背景マスクとの両方を用いた背景置換と、背景マスクのみを用いた背景置換とのいずれか一方の方法で背景置換を実行する実施形態について説明したが、本発明はこれに限るものではない。
被写体マスクと背景マスクとの両方を用いた背景置換と背景マスクのみを用いた背景置換とでは、ほぼ同様に被写体色を推定することができる。しかし、前者の方法において被写体色の推定に用いられる図33に示す領域B2は、後者の方法において被写体色の推定に用いられる図40に示す領域B3よりも範囲が狭いため、撮影画像の状況によっては、前者の方法では、図34に示す直線CL1の延長線上に並ぶ色C3等といった被写体色の候補が見つからない場合がある。
そこで、まず、被写体マスクと背景マスクとの両方を用いた背景置換によって被写体色の推定を行ない、その方法では、被写体色の候補が見つからなかった場合には、背景マスクのみを用いた背景置換によって被写体色の推定を行ない、図33に示す領域B2よりも範囲が広い、図40に示す領域B3をから被写体色の候補を探すといった推定方法が考えられる。
また、上記の2種類の方法それぞれによる被写体色の推定の精度はほぼ同等であるが、撮影画像の状況によっては、いずれか一方の方法が若干高精度となる場合がある。そこで、例えば、これら2種類の方法を次のように組み合わせて、推定精度を高めるということが考えられる。
例えば、上記の2種類の方法それぞれで被写体色と合成比αとを推定した場合、いずれか一方の方法で得られた合成比αのみが「0」や「1」に近い等といった場合、何らかの理由で、その方法による推定の精度がもう一方の方法による推定の精度よりも低くなっている可能性が高い。そこで、上記の2種類の方法それぞれで被写体色と合成比αとを推定し、2つの合成比αのうちの1つの合成比αのみが、「0」に近い所定の第1閾値以下となっているか、あるいは「1」に近い所定の第2閾値以上となっている場合には、もう1つの合成比αに対応する被写体色を採用するという方法が考えられる。
また、上記の2種類の方法の間の平均的な精度での推定結果を得るために、これら2種類の方法それぞれで推定された2種類の被写体色の平均的な色を被写体色として採用するという方法も考えられる。
以上に説明した3通りの推定方法によれば、いずれの方法によっても、被写体マスクと背景マスクとの両方を用いた背景置換と背景マスクのみを用いた背景置換との何れか一方のみで被写体色を推定する場合に比べて推定精度を高めることができる。
尚、ここまで、顧客が所望する置換用の背景が1つであることを前提として説明したが、本発明の背景置換装置は、例えば、顧客が所望する置換用の背景が複数あって、このような複数の置換用の背景に効率的に対処できる次のような構成のものであっても良い。
図44は、複数の置換用の背景に効率的に対処できる工夫が施された、図15に示す置換処理部730とは別の置換処理部を示す図である。尚、この図44では、図15の構成要素と同等な構成要素については図15と同じ符号を付し重複説明を省略する。
この図44に示す別の置換処理部730’は、図15に示す置換処理部730に、推定された被写体色と合成比αとを記憶する記憶部734が追加された構成となっている。この記憶部734が、本発明にいう記憶部の一例に相当する。
この別の置換処理部730’では、撮影画像について、マスク作成部731において背景マスクと被写体マスクが作成され、色推定部732において被写体色と合成比αとが推定されると、それら背景マスク、被写体マスク、被写体色、および合成比αが記憶部734に記憶される。そして、この別の置換処理部730’では、背景置換画像作成部733’は、この記憶部734に記憶された背景マスク、被写体マスク、被写体色、および合成比αを使って背景置換画像を作成する。
この図44に示す別の置換処理部730’では、一度、背景マスク、被写体マスク、被写体色、および合成比αが求められると、後は、置換用の背景が複数あっても、それらの背景マスク、被写体マスク、被写体色、および合成比αが、全ての置換用の背景に適用される。これにより、例えば、背景置換の度に背景マスク、被写体マスク、被写体色、および合成比αを求める等といった手間が省かれて、効率的に背景置換を作成することができる。
また、上記では、図6に示すように、画像補正部720中で、順光撮影画像に基いて作成された有効画像の色に色補正処理を施す色補正部724について説明したが、本発明はこれに限るものではない。本発明の背景置換装置は、このような有効画像の色ではなく、以下に説明するように、置換処理部にあって、推定された被写体色に対して色補正処理を施すものであっても良い。
図45は、推定された被写体色に対して色補正処理を施す色補正部を備えた、図15に示す置換処理部730とは別の置換処理部を示す図である。尚、この図43では、図15の構成要素と同等な構成要素については図15と同じ符号を付し重複説明を省略する。
この図45に示す別の置換処理部730”は、図15に示す置換処理部730に、被写体色に対する色補正に使われる補正パラメータを決定するパラメータ決定部735と、パラメータ決定部735によって決定された補正パラメータを使って、被写体色に対して色補正を施す色補正部736とが追加された構成となっている。ここで、この図43のパラメータ決定部735が、本発明にいう第1のパラメータ決定部と第2のパラメータ決定部と第3のパラメータ決定部と第4のパラメータ決定部とを兼ねた一例に相当し、この図45の色補正部736が、本発明にいう第1の色補正部と第2の色補正部と第3の色補正部と第4の色補正部とを兼ねた一例に相当する。
この別の置換処理部730”では、色補正部736において、上記の被写体領域で定義される領域内の色と、推定された被写体色とに対して、色合いやホワイトバランスを、一般的に観賞者が好ましいと感じる色合いやホワイトバランスに補正するいわゆるセットアップと呼ばれる色補正が実行される。そして、そのセットアップに使われる補正パラメータ(セットアップパラメータ)が、パラメータ決定部735において決定される。
ここで、この図45に示すパラメータ決定部735は、有効画像作成部723において順光撮影画像に基いて作成された有効画像に基いてセットアップパラメータを決定する機能と、色推定部732において推定された被写体色に境界領域内の色が置き換えられた画像中の背景以外の部分に基いてセットアップパラメータを決定する機能と、セットアップパラメータを操作に応じたパラメータに決定する機能と、置換用の背景に基いてセットアップパラメータを決定する機能とを有している。そして、これら4種類の機能のうちいずれの機能を使ってセットアップパラメータを決定するかは、不図示の操作画面を介したオペレータの操作によって決定される。そして、このパラメータ決定部735において決定されたセットアップパラメータを使ったセットアップが、上記のように、被写体領域で定義される領域内の色と、推定された被写体色とに対して施される。
例えば、図1に示す撮影スタジオ10では、撮影の状況によっては、デジタルカメラ11における撮影時のホワイトバランスが、ELパネル130の発光色である青緑色に影響を受けてしまう場合がある。そのような場合には、例えば人物の顔等が実際以上に青白く写ってしまう。しかし、上記の図45に示す色補正部736におけるセットアップによれば、この人物の顔等の色を好ましい色に補正することができる。
また、図6に示す色補正部724のように、順光撮影画像に基いて作成された有効画像の色に色補正処理を施すと、撮影画像の状況によっては、例えば撮影画像中の階調が変更されている等といった理由から、被写体色の推定が不正確なものとなってしまう場合がある。また、背景置換後の画像に対してセットアップが施されると、置換用の背景の色まで変わってしまい顧客が所望した背景とは色合いが異なる背景の画像ができてしまう恐れがある。図44に示すパラメータ決定部735および色補正部736によるセットアップによれば、セットアップは、被写体色の推定の後、かつ背景の置換の前に実行されるので、被写体色の推定や置換用の背景の色に影響を与えることなく、セットアップを実行することができ、背景が置換された高画質の画像を得ることができる。
また、この図45に示す例では、サーバ40内に格納されている置換用の背景には、被写体と背景との画像中における相対的な位置関係や、画像中における背景に対する被写体の相対的な大きさ等といった相対関係を表わす関係情報が付与されている。そして、この図45の背景置換画像作成部733”は、顧客が所望した置換用の背景を使った背景置換画像を作成する際には、その背景置換画像中で被写体と背景との相対関係が、顧客が所望した置換用の背景に付与されている相対関係と同じ相対関係となるようにその背景置換画像を作成する。このような処理により、例えば背景置換画像中の被写体の位置や大きさが背景に対して自然な位置や大きさとなった、見た目の自然さが高められた背景置換画像を得ることができる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
この第2実施形態は、上記の第1実施形態とは、撮影システムのうちの撮影スタジオの構成と、その撮影スタジオにおいて行われる撮影処理と、パーソナルコンピュータで行われる背景置換処理が異なっている。以下では、第2実施形態における、第1実施形態との相違点に注目して説明し、その他の、第1実施形態と同等な点については、図面に同一符号を付して重複説明を省略する。
図46は、本発明の背景置換装置の第2実施形態が適用された撮影システムを示す図である。
この図1に示す撮影システム1001は、被写体を撮影して撮影画像を取得する撮影スタジオ1010と、その撮影画像における被写体と背景とを区別して、撮影画像中の背景を所望の背景に置換して背景置換画像を作成する、本発明の背景置換装置の第2実施形態として動作するパーソナルコンピュータ20と、プリンタ30と、サーバ40とを備えている。また、撮影スタジオ1010は、デジタルカメラ1011と、閃光発光装置12と、EL(エレクトロルミネセンス)パネル1130と、このELパネル用の電源14を備えている。
デジタルカメラ1011は、連写機能を有しており、撮影者がシャッタボタンを1回押すと、短時間の間に自動で被写体Pを3回撮影する。1回毎の撮影によって得られた撮影画像はデジタルカメラ1011内のメモリに一時的に保管されるが、撮影システム1001では、デジタルカメラ1011がパーソナルコンピュータ20に接続されており、3回の撮影が終了した時点で、この3回の撮影で得られた撮影画像は、このパーソナルコンピュータ20に直ちに送られる。
また、このデジタルカメラ1011には、後述のパネル点灯制御回路11aと閃光制御回路11bとが取り付けられており、デジタルカメラ1011は、パネル点灯制御回路11aを介して上記の電源14に接続され、また、閃光制御回路11bを介して閃光発光装置12に接続されている。このデジタルカメラ1011は、上記の連写の際には、撮影の度に、まず、ELパネル1130用の電源14に対してELパネル1130を点灯させるように指示するパネル点灯指示信号をこの電源14に向けて発信し、続いて、閃光発光装置12に対して閃光を発するように指示する閃光指示信号をこの閃光発光装置12に向けて発信する。ここで、パネル点灯制御回路11aは、デジタルカメラ1011が上記の連写の際に撮影の度に発信するパネル点灯指示信号を、1回目の撮影時には遮断し、2回目と3回目の撮影時には通過させる。また、閃光制御回路11bは、上記の閃光指示信号を、1回目と2回目の撮影時には通過させ、3回目の撮影時には遮断する。この結果、連写の際、1回目の撮影時には、閃光発光装置12への閃光指示信号の入力のみが行なわれ、2回目の撮影時には、まず、電源14にパネル点灯指示信号が入力され、続いて閃光発光装置12に閃光指示信号が入力され、さらに、3回目の撮影時には、電源14へのパネル点灯指示信号の入力のみが行なわれる。
閃光発光装置12は、デジタルカメラ1011から閃光指示信号を受けて被写体Pに向かって閃光を発する。上述したように、この閃光発光装置12には、デジタルカメラ1011における連写の際の1回目と2回目の撮影時にのみ閃光指示信号が入力される。これにより、閃光発光装置12は1回目と2回目の撮影時にのみ閃光を発し、3回目の撮影時には消灯したままでいることとなる。
ELパネル1130は、被写体Pが載る載置面131aと被写体Pの背後の面131bとが透明な筐体131、および、その筐体131内に収納された分散型EL素子1132からなる。また、電源14は、この分散型EL素子1132に駆動電圧を印加する電源である。さらに、上述したように、この電源14には、デジタルカメラ1011における連写の際の2回目と3回目の撮影時にパネル点灯指示信号が入力される。この結果、電源14は2回目の撮影時にELパネル1130を点灯させる。また、3回目の撮影時にパネル点灯指示信号が入力されたときには、電源14は、既に点灯状態にあるELパネル1130を点灯させたままにする。
一般的な分散型EL素子は、製造時に発光色の異なる複数の蛍光体粉末をさらに混合することで発光色を白色を含む様々な色に調整することが可能であるが、本実施形態における分散型EL素子1132は、赤色の蛍光体粉末によって発光色が調整されている。このため、ELパネル1130の色は、消灯時には薄い赤色となり、発光時には、分散型EL素子の発光色である青緑色が調整された青色となる。
ここで、本実施形態の撮影スタジオ1010では、デジタルカメラ1011による撮影は、上述したように、1回目の撮影はELパネル1130が消灯し閃光発光装置12が閃光を発した状態で行なわれ、2回目の撮影はELパネル1130が点灯し閃光発光装置12が閃光を発した状態で行なわれ、3回目の撮影はELパネル1130が点灯し閃光発光装置12が消えた状態で行なわれる。さらに、この撮影スタジオ1010では、閃光発光装置12が発する閃光の輝度は、ELパネル1130が点灯したときの輝度よりもかなり高い。この結果、1回目の撮影だけでなく2回目の撮影でも、高い輝度の閃光が、デジタルカメラ1011側から被写体Pを照らすという順光状態での撮影による、被写体Pがきれいに写った順光撮影画像が取得される。また、上述したように、ELパネル1130は、消灯状態では薄い赤色であり、点灯状態では青色に発光する。この結果、1回目の撮影に対応する順光撮影画像は背景が薄い赤色に写り、2回目の撮影での順光撮影画像は背景が青色に写ることとなる。これら背景色が互いに異なる2つの順光撮影画像が、本発明にいう「背景の色が互いに異なる複数の撮影条件それぞれの下で共通の被写体が撮影されて得られた複数の撮影画像」の一例に相当する。また、3回目の撮影では、ELパネル1130からの光のみが被写体Pを後方から照らすという逆光状態での撮影による、被写体Pの像がシャドウ側に偏り、背景パネル130の像がハイライト側に偏った逆光撮影画像が取得される。このように、本実施形態では、デジタルカメラ1011による連写によって、背景色が互いに異なる2つの順光撮影画像と、1つの逆光撮影画像との3つの撮影画像が得られる。
次に、この図46に示す撮影システム1001で実行される、本発明の背景置換方法の第2実施形態が適用された作業の流れについて説明する。尚、以下の説明では、図46に示す要素については特に図番を断らずに図46中の符号を使って参照する。
図47は、図46の撮影システムで実行される、本発明の背景置換方法の第2実施形態が適用された作業の流れを示すフローチャートである。
この図47のフローチャートが示す作業は、撮影スタジオ1010において、被写体P、デジタルカメラ1011、および閃光発光装置12がそれぞれ適当な位置に配置され、さらにELパネル1130が消灯されていることを前提として行なわれる。
撮影者が、ピントや露光の調節等を行なった後にデジタルカメラ1011のシャッタボタンを押すと、被写体Pに対する撮影が以下に説明するように3回連続して行なわれる。
まず1回目の撮影では、デジタルカメラ1011から発信される閃光指示信号に応じて閃光発光装置12が閃光を発し、この閃光による順光状態で被写体Pが撮影される(ステップS201)。この1回目の撮影時には、ELパネル1130は消灯したままであり、その色は薄い赤色となっている。
2回目の撮影では、まず、デジタルカメラ1011から発信されるパネル点灯信号に応じてELパネル1130が点灯する(ステップS202)。次に、デジタルカメラ1011から発信される閃光指示信号に応じて閃光発光装置12が閃光を発し、この閃光による順光状態で被写体Pが撮影される(ステップS203)。この2回目の撮影時には、ELパネル1130は青色に発光している。
続く3回目の撮影は、閃光発光装置12が消灯した状態、即ち、ELパネル1130のみの照明による逆光状態で行なわれる(ステップS204)。
ステップS202およびステップS203の処理でそれぞれ得られた、背景色が互いに異なる2つの順光撮影画像と逆光撮影画像との3つの撮影画像は、デジタルカメラ1011内のメモリに一時的に保管される。
次に、このフローチャートにおけるステップS205以降の処理について説明するが、この以下に説明する処理のうち、ステップS205からステップS207に至る処理が、本発明の背景置換方法の第2実施形態に相当する。
ステップS204の処理によって、3回目の撮影が行なわれ、その撮影で得られた撮影画像の、デジタルカメラ1011内のメモリへの保管が終了すると、3回の撮影で得られ、そのメモリに一時的に保管された3つの撮影画像が直ちにパーソナルコンピュータ20に渡される。また、パーソナルコンピュータ20に対する操作を受けて、顧客が所望する背景がサーバ40あるいは何らかの入力用記憶媒体から読み出される(ステップS205)。このステップS205で実行される撮影画像および背景の取得処理が、本発明の背景置換方法における画像取得過程の一例に相当する。
続いて、3つの撮影画像に、上記の台形歪みについての補正を含む画像補正処理が施される。(ステップS206)。
さらに、この補正済みの撮影画像に基づいて背景置換画像を作成するという後述の背景置換処理が実行される(ステップS207)。ここで、このステップS207で実行される背景置換処理において、本発明の背景置換方法における領域区別過程と、混合状態推定過程と、背景置換過程との各一例が実行される。
ここで、以上のステップS205からステップS207に至る本発明の背景置換方法の第2実施形態の各処理の詳細については、本発明の背景置換装置の第2実施形態の各部の作用と併せて説明する。
次に、上記の背景置換処理(ステップS207)で作成された背景置換画像を表わす画像データが、まず画像表示装置220に転送され、さらに、プリンタ30と、顧客が希望する出力用記憶媒体とのうちの少なくとも1つに転送される(ステップS208)。続いて、画像表示装置220において、背景置換画像が、転送されてきた画像データに基づいて表示画面220a上に表示され(ステップS209)、さらに、画像データがプリンタ30に転送された場合には、プリンタ30において、その画像データに基づいて背景置換画像がプリントされる(ステップS210)。
ここで、本発明の背景置換方法の第2実施形態を含むステップS205〜ステップS209の処理は、パーソナルコンピュータ20において実行される処理である。
次に、本発明の背景置換プログラムの第2実施形態について説明する。
図48は、本発明の背景置換プログラムの第2実施形態を示す概念図である。
図48に示すCD−ROM1510は、本発明の背景置換プログラムの第2実施形態である背景置換プログラム1600が記憶されたものである。
この背景置換プログラム1600は、画像取得部610、画像補正部620、置換処理部1630、画像データ転送部640、および画像表示部650で構成されている。
この背景置換プログラム1600の各部の詳細については、本発明の背景置換装置の第2実施形態の各部の作用と併せて説明する。尚、以下の説明では、図46および図48に示す要素については特に図番を断らずに各図中の符号を使って参照する。
図49は、図48に示す背景置換プログラムが図46および図3に示すパーソナルコンピュータにインストールされ、このパーソナルコンピュータが本発明にいう背景置換装置の第2実施形態として動作するときの機能を表わす機能ブロック図である。また、この図49には、図46にも示す、デジタルカメラ1011、閃光発光装置12、およびELパネル1130からなる撮影スタジオ1010と、プリンタ30と、サーバ40も示されている。
この図49に示す背景置換装置1700は、上述したように、撮影スタジオ1010のデジタルカメラ1011によって順光の下で撮影された背景色が互いに異なる2つの順光撮影画像と、逆光の下で撮影された逆光撮影画像とを取得して、これらの3つの撮影画像のうち、逆光撮影画像に基づいて、2つの順光撮影画像のうち所定の一方の順光撮影画像における被写体と背景とを区別して、その背景を所望の背景に置換するという背景置換処理を実行するものであり、画像取得部710、画像補正部720、置換処理部1730、画像データ転送部740、および画像表示部750を備えている。
ここで、以下では、上記の2つの順光撮影画像のうち、連写における1回目の撮影時に得られた順光撮影画像、即ち、背景色が薄い赤色の順光撮影画像について背景置換処理を実行することを前提として説明するが、本発明はこれに限るものではなく、連写における2回目の撮影時に得られた順光撮影画像、即ち、背景色が青色の順光撮影画像について背景置換処理を実行するものであっても良い。
置換処理部1730は、画像補正部720での画像補正処理を経た3つの撮影画像に基づいて背景置換画像を作成するという後述の背景置換処理を行なうものであり、実質的には、パーソナルコンピュータ20のCPU211が、背景置換プログラム1600の置換処理部1630に従って動作することによって構成される。この画像補正部1720の詳細については、背景置換処理の詳細とともに別図を参照して後述する。この置換処理部1730が、本発明の背景置換装置における領域区別部と混合状態推定部と背景置換部とを兼ねた一例に相当する。
次に、図49において1つのブロックで示されている置換処理部1730の詳細について以下に説明する。
置換処理部1730は、互いに背景色が異なる2つの補正済みの順光撮影画像のうち、1回目の撮影に対応する補正済みの順光撮影画像について、背景を、顧客が所望する背景に置換する。その際には、置換処理部1730は、まず、2つの補正済みの順光撮影画像について、被写体領域と、背景領域と、これら2つの領域に挟まれた境界領域とに区別する。そして、置換処理部1730は、1回目の撮影に対応する補正済みの順光撮影画像について、被写体領域についてはそのまま残し、背景領域を、顧客が所望する別の背景と置換する。
置換処理部1730は、補正済みの順光撮影画像における上記の境界領域内の全ての画素が、上記のような合成色を有しているという前提のもとに、上記の2つの補正済みの順光撮影画像を用いて、これら2つの補正済みの順光撮影画像の間で共通な、各画素の色の元となった被写体色(本発明にいう被写体色の一例に相当)、および、その被写体色と各背景色との合成比(本発明にいう混合比の一例に相当)を推定する。
そして、置換処理部1730は、1回目の撮影に対応する補正済みの順光撮影画像について、上記の境界領域内の各画素の色を、推定された被写体色と、上記の顧客が所望する別の背景色とが、推定された合成比で合成されてなる合成色に置き換える。
図50は、図49に1つのブロックで示す置換処理部の詳細を示す図である。尚、以下の説明でも、図49に示す要素については特に図番を断らずに図49中の符号を使って参照する。
この置換処理部1730は、上述した背景置換処理を実行するものであり、マスク作成部731、色推定部1732、および背景置換画像作成部733を備えている。ここで、マスク作成部731、色推定部1732、および背景置換画像作成部733が、それぞれ本発明にいう領域区別部、混合状態推定部、および背景置換部の各一例に相当する。また、マスク作成部731によって、本発明の背景置換方法における領域区別過程の一例が実行され、色推定部1732によって、本発明の背景置換方法における混合状態推定過程の一例が実行され、背景置換画像作成部733によって、本発明の背景置換方法における背景置換過程の一例が実行される。
まず、これら各構成要素の概要について説明する。
マスク作成部731は、上記の補正済みの逆光撮影画像において、この逆光撮影画像中で、被写体色の画素のみが存在する範囲を定義する被写体マスクと、背景色の画素のみが存在する範囲を定義する背景マスクとを作成する。ここで、これら2つのマスクは、それぞれのマスクが定義する範囲内に、例えば図14に示すような、被写体越しに背景が見えている部分の画素が含まれないように、互いに隙間を開けて作成される。
色推定部1732は、マスク作成部731が作成した被写体マスクと背景マスクとを、互いに背景の異なる2つの補正済みの順光撮影画像に適用して、まず、これらの順光撮影画像において、これら2つのマスク間に開いた隙間、即ち、境界領域を認識する。そして、この境界領域内の全ての画素の色が被写体色と背景色との混合色であるとともに、異なる背景色の下でも混合状態が同じであるという前提のもとに、上記の2つの補正済みの順光撮影画像を用いて、これら2つの補正済みの順光撮影画像の間で共通な、各画素の色を構成している被写体色、および、その被写体色と各背景色との合成比を推定する。
背景置換画像作成部733は、まず、上記の1回目の撮影に対応する補正済みの順光撮影画像において、被写体マスクで定義される領域についてはそのまま残し、背景マスクで定義される領域を、顧客が所望する別の背景と置換する。次に、境界領域内の各画素について、顧客が所望する背景の色と、上記の色推定部1732で推定された被写体色とを、色推定部1732で推定された合成比で合成して合成色を求め、各画素の色をその合成色に置換する。これにより、上記の補正済みの順光撮影画像の背景が、顧客が所望する別の背景に自然に置換された背景置換画像が作成される。
このように作成された背景置換画像を表わす画像データが、図49の画像データ転送部740から、各出力デバイスや出力用記憶媒体550(図49参照)に転送される。
この第2実施形態においても第1実施形態と同様に、マスク作成部731は、背景と被写体との明るさの差に基づいて、被写体マスクM1’と背景マスクM2’とを作成することにより、撮影画像中の被写体領域と背景領域と境界領域とを区別するものである。しかし、本発明の領域区別部はこの形態に限るものではなく、次のような形態のものであっても良い。
以下、本発明の領域区別部の別例について説明する。
以下に説明する別例は、複数の撮影画像の相互間における色の変化量に基づいて撮影画像中の被写体領域と背景領域と境界領域とを区別するというものである。この別例における基本的な構成は、図16に示す上記のマスク作成部731の構成と同じである。ただし、図16のヒストグラム作成部731aが、補正済みの逆光撮影画像を構成する各画素の明るさについてのヒストグラムを作成するものであったのとは異なり、この別例では、上記の2つの補正済みの順光撮影画像に基づいて、これら2つの撮影画像の相互間における色の変化量についての次のようなヒストグラムが作成される。
まず、この色の変化量についてのヒストグラムを作成するに当たって、この別例では、2つの補正済みの順光撮影画像のうちの一方を第1撮影画像としてもう一方を第2撮影画像としたとき、第1撮影画像を構成する各画素の、第2撮影画像において対応する位置の画素に対する色相の変化量が、上記の色の変化量を表わす値として採用される。
この別例で作成されるヒストグラムは、第1撮影画像を構成する各画素における色相の変化量を、多数の範囲に振り分け、各範囲についてどれだけの画素が振り分けられたかを頻度で示した色相変化のヒストグラムである。この色相変化のヒストグラムは、例えば、図17のパート(a)に示す輝度のヒストグラムH1の横軸H1_1を、色相の変化量に置き換えたものとなる。この色相変化のヒストグラムには、色相の変化量が少ない部分と、色相の変化量が多い部分とに2つのピークが現れる。上述したように2つの補正済みの順光撮影画像の間の相違点は背景色のみであるので、色相の変化量が多い部分のピークが、第1撮影画像中の背景領域に対応し、色相の変化量が少ない部分のピークが、第1撮影画像中の被写体領域に対応する。
このような色相変化のヒストグラムが作成されると、上記の別例では、上記のマスク作成部731におけるマスク作成の手順と同様の手順によって、色相の変化量が少ない部分のピークに基づいて上記の初期被写体マスクが設定され、色相の変化量が多い部分のピークに基づいて上記の初期背景マスクが設定され、さらに、それぞれの初期マスクが縮小されて、最終的に被写体マスクと背景マスクとが作成されて、これらのマスクによって撮影画像中の被写体領域と背景領域と境界領域とが区別される。
以上に説明した別例によっても、撮影画像中の被写体領域と背景領域と境界領域とが区別されるが、この別例では、マスク作成に2つの撮影画像を用いることから処理の複雑さが若干増す半面、上記のマスク作成部731におけるマスク作成で必要とされる上記の補正済みの逆光撮影画像不要となる。つまり、この別例では、図47のフローチャートにおけるステップS204の撮影処理も不要となり、このフローチャートが示す処理の例に比べて撮影回数が少なくて済むという利点が生じることとなる。
以上で、この別例についての説明を終了し、次に、この置換処理部1730が備える色推定部1732の詳細について説明する。
図51は、図50に1つのブロックで示す色推定部の詳細を示す図である。
この色推定部1732は、背景色推定部732a、被写体色推定部1732b、および合成比推定部1732cを備えている。
背景色推定部732aについては第1実施形態と同様であるので重複説明は省略する。
背景色推定部732aにおける背景色の推定は、互いに背景色が異なる2つの補正済みの順光撮影画像それぞれについて実行される。
次に、図51に示す被写体色推定部1732bについて説明する。
この被写体色推定部1732bでは、互いに背景色が異なる2つの補正済みの順光撮影画像の間で共通な、境界領域内の各画素の色の元となった被写体色を、上記の背景色推定部732aで2つの補正済みの順光撮影画像それぞれにおける境界領域内の各画素について求められた背景色を用いて次のように推定する。
図52は、互いに背景色が異なる2つの補正済みの順光撮影画像の間で共通な、境界領域内の各画素の色の元となった被写体色の推定方法を示す図である。
図52には、まず、上記の2つの補正済みの順光撮影画像のうち、1回目の撮影に対応する補正済みの順光撮影画像における境界領域内のある画素について、図51の背景色推定部732aで推定された第1の背景色C1と、その画素の色(第1の画素色)C2とを、RGB色空間上で結ぶ直線CL1が示されている。さらに、この図52には、2回目の撮影に対応する補正済みの順光撮影画像において、上記の画素と対応する位置にある画素について、図51の背景色推定部732aで推定された第2の背景色C3と、その画素の色(第2の画素色)C4とを、RGB色空間上で結ぶ直線CL2が示されている。
上述したように、境界領域内の画素の色は、撮影時に被写体の一部越しに背景が見えて、背景色と被写体色とが合成された合成色となっている可能性がある。仮に、ある画素色がこのような合成色となっている場合には、その画素色と、その画素色の元となった背景色と被写体色とはRGB色空間上の直線上に並ぶ。このとき、上記の2つの補正済みの順光撮影画像は、背景色が互いに異なっている他は共通な画像であるため、両者の間で互いに対応する位置にある画素に含まれる被写体色は共通の色となる。このため、これら互いに対応する位置にある2つの画素それぞれについての、図52に示されている2本の直線CL1,CL2は、それらの画素に含まれる共通な被写体色C5において交差することとなる。
図51に示す被写体色推定部1732bは、上記の2つの補正済みの順光撮影画像において互いに対応する位置にある2つの画素からなる画素ペアのうち、上記の境界領域内の全ての画素ペアについて、図52に示すような2本の直線CL1,CL2の交点を、各画素ペアについての被写体色C5として求める。従って、第2実施形態では、被写体色C5が一意に決定され、第1実施形態で行われたような探索は不要である。
以上で、図51に示す被写体色推定部1732bについての説明を終了し、次に、この図51に示す合成比推定部1732cについて説明する。尚、この合成比推定部1732cについての説明では上記の図52を参照する。
この合成比推定部1732cは、図52に示すように、上記の1回目の撮影に対応する補正済みの順光撮影画像について、背景色推定部732aで推定された第1の背景色C1と被写体色推定部1732bで推定された被写体色C5とをRGB色空間上で結ぶ線分の長さに対する、第1の背景色C1と第1の画素色C2とを結ぶ線分の長さの割合を、第1の背景色C1と被写体色C5とで第1の画素色C2を合成するときの合成比αとして算出する。また、2回目の撮影に対応する補正済みの順光撮影画像についても、同様に、第2の背景色C3と被写体色C5とをRGB色空間上で結ぶ線分の長さに対する、第2の背景色C3と第2の画素色C4とを結ぶ線分の長さの割合を、第2の背景色C3と被写体色C5とで第2の画素色C4を合成するときの合成比α’として算出するとこができる。また、1回目および2回目の撮影が連写で行なわれることから、2つの補正済みの順光撮影画像における背景色と被写体色との混合状態はほぼ同じであり、上記の2つの合成比α,α’もほぼ等しいと考えられる。ただし、本実施形態では、直接に背景が置換される撮影画像として1回目の撮影に対応する補正済みの順光撮影画像が採用されるので、上記のような算出は、この1回目の撮影に対応する補正済みの順光撮影画像についてのみ実行される。
合成比推定部1732cは、このような合成比αの算出を、上記の2つの補正済みの順光撮影画像における境界領域内の全ての画素ペアについて実行する。
第2実施形態では、以上説明したように推定された被写体色と合成比が用いられることで、第1実施形態と同様に自然な背景置換画像が作成される。
尚、上記では、本発明の背景置換装置における領域区別部の一例として、補正済みの逆光撮影画像を構成する各画素の明るさについてのヒストグラムとして、各画素の色を表わすR値、G値、およびB値のうちのG値についてのヒストグラムを作成するマスク作成部731を例示したが、本発明はこれに限るものではない。本発明の領域区別部は、R値についてのヒストグラムを作成するものであっても良く、あるいは、B値についてのヒストグラムを作成するものであっても良く、あるいは、各画素の輝度についてのヒストグラムを作成するものであっても良い。
また、上記では、本発明の背景置換装置における領域区別部の一例として、補正済みの逆光撮影画像という1つの撮影画像に基づいて、撮影画像中の背景領域を他の領域から区別するマスクを作成するマスク作成部731を例示したが、本発明はこれに限るものではない。本発明の領域区別部は、例えば、背景の輝度や色が互いに異なる2つの撮影画像に基づいて、撮影画像中の背景領域を他の領域から区別するマスクを作成するもの等であっても良い。その場合には、例えば2つの撮影画像の間で輝度や色の変化量が相対的に大きな部分を他の領域から区別するマスクを作成することにより、撮影画像中の背景領域を他の領域から区別するマスクが作成される。
また、上記では、本発明にいう混合比決定部の一例として、境界領域中のある画素について、まず、その画素の色を構成する被写体色と推定し、次に、そのRGB色空間における、背景色、画素の色、および被写体色の相互距離の比を合成比と推定する色推定部732を例示したが、本発明はこれに限るものではない。本発明の混合比決定部は、例えば、境界領域中のある画素について、その画素と被写体領域との位置関係に応じて合成比を決定する、即ち、被写体領域から遠い画素ほど、被写体色が含まれる割合を下げる等といった方法で合成比を決定するもの等であっても良い。
また、上記では、本発明の背景置換装置における画像修正部の一例について、オペレータによる上記の修正値の入力が行なわれる入力画面について特に言及しなかったが、この入力画面は、例えば、オペレータがキーボードから数値を打込むという形態の入力画面であっても良く、あるいは、例えば、修正値の設定バーが設けられていて、オペレータがその設定バーをマウス操作により動かして修正値を入力するという形態の入力画面等であっても良い。
また、上記では、本発明の背景置換装置における画像修正部の一例として、被写体領域と背景領域とに対する修正による画像修正のみを実行する画像修正部を例示して説明したが、本発明はこれに限るものではなく、本発明の画像修正部は、例えば、上記のような領域の修正に加えて、作成された背景置換画像の各部の色についても修正するものであっても良い。
また、上記では、本発明の背景置換装置における画像修正部の一例として、上記の被写体マスクと背景マスクとを狭めることにより背景置換画像を修正する2つの画像修正部760,810を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、本発明の背景置換装置における画像修正部は、上記の被写体マスクと背景マスクとを広げる、延いては境界領域を狭めることにより背景置換画像を修正するもの等であっても良い。このような修正は、本来は背景が透けていない部分まで、置換後の背景の色が混ざってしまっているような不自然な背景置換画像に対して有効である。このような不自然な背景置換画像は、置換後の背景が、高彩度の色等の強い色を有している場合に生じる恐れがある。
また、上記では、本発明にいう複数の撮影画像を撮影する撮影システムの一実施形態として、1回目の撮影時に閃光発光装置12が閃光を発し、2回目の撮影時には閃光発光装置12が消灯していることにより、順光撮影と逆光撮影とをこの順序で連続して行なうという撮影システム1を挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、本発明の撮影システムは、例えば、順光撮影と逆光撮影とをこの順序とは逆の順序で連続して行なうというものであっても良い。このような形態の撮影システムは、例えば、上記の実施形態において、デジタルカメラから閃光発光装置に向けて1回の撮影の度に発信される、閃光発光装置に閃光を発するように指示する指示信号を、1回目の撮影時には遮断し、2回目の撮影時には通過させる遮断回路等を、上記の実施形態においてデジタルカメラと閃光発光装置とを繋ぐ上記の指示信号の伝送ライン上に設置することにより構築される。
また、上記では、本発明にいう複数の撮影画像を撮影する撮影システムの一実施形態として、1回発光すると、次に発光できるようになるまで充電に時間がかかり、撮影が2回連続して行なわれるときには、1回目の撮影時にのみ閃光を発するという閃光発光装置12を備えた撮影システム1挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。上記の撮影システムは、例えば、充電が極めて短時間で済み、撮影が2回連続して行なわれるときに、2回とも閃光を発することができるような高速型の閃光発光装置を備えた撮影システムであっても良い。ただし、このような撮影システムにも、不要な指示信号を遮断する上記のような遮断回路等が必要となる。