まず、本発明の硬化性組成物に使用する式(1):
(式中、X1は同じかまたは異なり、H、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;nは2〜7の整数;R1は同じかまたは異なり、結合手または炭素数1〜50の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されていてもよい2価の有機基;R2は炭素数1〜50の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されていてもよいn価の有機基;ただし、X1、R1およびR2の少なくとも1つがフッ素原子を含む)で表され、かつ
(1)フッ素含有率が40質量%以上、
(2)35℃での粘度が100,000mPa・秒以下、および
(3)式(1)で表される化合物の硬化物のガラス転移温度が70℃以上
である多官能含フッ素化合物(I)について説明する。
式(1)において、X1は同じかまたは異なり、H、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、(メタ)アクリロイル基または含ハロゲン(メタ)アクリロイル基を構成する。X1としては、硬化物の耐熱性に優れる点からFまたはCH3が好ましく、特にフッ素含有率を高めるという点からFが好ましい。
式(1)で表される多官能含フッ素化合物はnが2〜7、すなわち(メタ)アクリロイル基または含ハロゲン(メタ)アクリロイル基を2〜7個有する多官能含フッ素化合物である。nは、保存安定性が良好な点から、2〜4、さらには2または3であることが好ましい。
R1は同じかまたは異なり、結合手または炭素数1〜50、好ましくは炭素数1〜30の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されていてもよい2価の有機基であり、n価の有機基R2とアクリロイル基とを連結するスペーサーとして働く。R2が必要なフッ素含有率を有している場合は、単に結合手であってもよい。
R1は、その水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されている含フッ素有機基であることが、フッ素含有率を高める点から好ましい。
特に、側鎖に1価の含フッ素有機基を有する2価の含フッ素有機基であることが、高フッ素含有率で液状組成物を形成できる点から好ましい。側鎖を形成する1価の含フッ素有機基としては、フッ素含有率が50質量%以上、さらには60質量%以上、特に70質量%以上であることが、フッ素含有率を高める点から好ましい。上限はパーフルオロ有機基のフッ素含有率である。
R1の好ましい構造としては、式(5):
(式中、Rf4は炭素数1〜19の含フッ素有機基;z、xおよびyは同じかまたは異なり、0または1;qは1〜10の整数)で表される炭素数2〜50の含フッ素有機基であることが、フッ素含有率を高め、かつ粘度を下げる点から好ましい。
具体的には、
(式中、Rf4およびqは式(5)と同じ)
があげられ、特に合成が容易な点、液状組成物になりやすい点から式(5−2)および(5−3)が好ましい。qは1〜2が、硬化物の耐熱性が向上する点から好ましい。
Rf4は炭素数1〜19の1価の含フッ素有機基であり、他の溶剤との相溶性が良好な点から好ましくは含フッ素炭化水素基、さらには含フッ素脂肪族炭化水素基である。
より具体的には、F(CF2)n(CH2)m−、(CF3)2CF(CH2)m−、(CF3)2CF(CF2)n(CH2)m−、H(CF2)n(CH2)m−、F(CF2)n(CF2CH2)l(CH2)m−、(CF3)2CF(CF2)n(CF2CH2)l(CH2)m−、H(CF2)n(CF2CH2)l(CH2)m−、
(式中、n、mおよびlは同じかまたは異なり、0〜12の整数。ただし、全てが0となることはない)
などがあげられる。
さらに具体的には、F(CF2)2−CH2−、F(CF2)4−CH2−、F(CF2)6−CH2−、(CF3)2CF−CH2−、(CF3)2CF(CF2)4−CH2−、H(CF2)4−CH2−、F(CF2)4(CF2CH2)2−CH2−などが好ましく例示できる。
これらのうち、硬化物の耐熱性が良好で、他の溶剤との相溶性も優れる点から、F(CF2)4−CH2−、(CF3)2CF−CH2−が好ましい。
R1はn(=2〜7)個存在し、同じでも異なっていてもよい。しかし、同一である方が合成の点で有利である。
n価の有機基であるR2は、炭素数1〜50の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されていてもよい有機基である。
具体的には、
(1)3級または4級炭素を含むn価の鎖状の有機基、
(2)芳香族環状構造を有するn価の有機基、
(3)脂肪族環状(単環または多環)構造を有するn価の有機基、
などがあげられ、これら有機基において、炭素−水素結合を形成する水素原子の一部またはすべてがフッ素原子で置換されたものであってもよい。
まず、上記R2のそれぞれの好ましい態様について、具体例を挙げて説明する。
(1)3級または4級炭素を含むn価の鎖状の有機基:
好ましくは、炭素数3〜8の脂肪族炭化水素基が硬化物の耐熱性が向上する点から好ましく、価数nも合成が容易であるほか、保存安定性が良好な点から2〜4が好ましい。
3級炭素を含む2価の鎖状有機基としては、
などがあげられる。
4級炭素を含む2価の鎖状有機基としては、
などがあげられる。
3級炭素を含む3価の鎖状有機基としては、
などがあげられる。
4級炭素を含む3価の鎖状有機基としては、
などがあげられる。
3級炭素を含む4価の鎖状有機基としては、
などがあげられる。
4級炭素を含む4価の鎖状有機基としては、
などがあげられる。
(2)芳香族環状構造を含むn価の有機基:
たとえば、式(R1−1):
(式中、R21およびR22は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z21およびZ22は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;r1およびr2は同じかまたは異なり、1〜4の整数)で表わされる部位を含む2価の有機基、
または式(R1−2):
(式中、R23、R24、R25およびR26は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z23は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;r3は1〜4の整数)で表わされる部位を含む2価の有機基があげられる。
そのほか、つぎの式(R1−3)〜(R1−7)で表わされる部位を含む2価の有機基もあげられる。
式(R1−3):
式(R1−4):
式(R1−5)
式(R1−6):
式(R1−7):
上記式中、R27、R28、R29およびR30は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;R31およびR32は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、水素原子;Z24、Z25およびZ26は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;r4およびr5は同じかまたは異なり、1〜4の整数;r6は1〜2の整数;r7およびr8は同じかまたは異なり、1〜3の整数であり、同じ符号であっても式が異なれば別異の基や整数をとりうる。
式(R1−1)の具体例としては、
(式中、r4、r5は同じかまたは異なり、1〜10の整数;Z21、Z22、r1、r2は前記式(R1−1)と同じ)などが好ましく挙げられる。
(R1−2)の具体例としては、
(式中、Z23、r3は前記式(R1−2)と同じ)などが好ましく挙げられる。
式(R1−3)の具体例としては、
(式中、Z24、Z25、r4およびr5は前記式(R1−3)と同じ)などが好ましく挙げられる。
式(R1−4)の具体例としては、
などが好ましく挙げられる。
式(R1−5)の具体例としては、
(式中、Z24、Z25、r4およびr5は前記式(R1−5)と同じ)などが好ましく挙げられる。
式(R1−6)の具体例としては、
(式中、Z24、Z25、r7およびr8は前記式(R1−6)と同じ)などが好ましく挙げられる。
式(R1−7)の具体例としては、
(式中、Z24、Z25、Z26、r6、r7およびr8は前記式(R1−7)と同じ)などが好ましく挙げられる。
Z21、Z22、Z23、Z24、Z25およびZ26の具体例としては、たとえば水素原子、フッ素原子、メチル基などが例示できる。
これらの芳香族環状構造を有する2価以上の有機基は、耐熱性と機械的特性に優れる点で好ましく、ガラス転移点を高く設定でき、その結果、耐熱性の高い光学材料が得られる点で好ましい。
なかでもフッ素原子を有するものが、近赤外領域の光も含めて広い波長帯域で透明性が高い点で好ましい。また、フッ素原子の導入は、さらに屈折率の低減化において効果的に作用するため好ましい。
(3)脂肪族環状(単環または多環)構造を有するn価の有機基:
具体的には、式(R1−8):
(式中、R33およびR34は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z27およびZ28は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;s1およびs2は同じかまたは異なり、1〜4の整数)で表わされる部位を含む2価の有機基、または式(R1−9):
(式中、R35、R36、R37およびR38は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z29は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;s3は1〜4の整数)で表わされる部位を含む2価の有機基があげられる。
そのほか、つぎの式(R1−10)〜(R1−14)で表わされる部位を含む2価の有機基もあげられる。
式(R1−10):
式(R1−11):
式(R1−12):
式(R1−13):
式(R1−14):
上記式中、R39、R40、R41およびR42は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;R43およびR44は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、水素原子;Z30、Z31およびZ32は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;s4およびs5は同じかまたは異なり、1〜4の整数;s6は1〜2の整数;s7およびs8は同じかまたは異なり、1〜3の整数であり、同じ符号であっても式が異なれば別異の基や整数をとりうる。
式(R1−8)の具体例としては、
(式中、s4、s5は同じかまたは異なり、1〜10の整数;Z27、Z28、s1、s2は前記式(R1−8)と同じ)
などが好ましく挙げられる。
(R1−9)の具体例としては、
(式中、Z29、s3は前記式(R1−9)と同じ)などが好ましく挙げられる。
式(R1−10)の具体例としては、
(式中、Z30、Z31、s4およびs5は前記式(R1−10)と同じ)などが好ましく挙げられる。
式(R1−11)の具体例としては、
などが好ましく挙げられる。
式(R1−12)の具体例としては、
(式中、Z30、Z31、s4およびs5は前記式(R1−12)と同じ)などが好ましく挙げられる。
式(R1−13)の具体例としては、
(式中、Z30、Z31、s7およびs8は前記式(R1−13)と同じ)などが好ましく挙げられる。
式(R1−14)の具体例としては、
(式中、Z30、Z31、Z32、s6、s7およびs8は前記式(R1−14)と同じ)などが好ましく挙げられる。
Z27、Z28、Z29、Z30、Z31およびZ32の具体例としては、たとえば水素原子、フッ素原子、メチル基などが例示できる。
これらの脂肪族環状構造を有する2価以上の有機基は、ガラス転移温度を高く設定でき、耐熱性、機械的特性に優れる点で好ましい。また、紫外光に対して透明性が高い点で好ましく、耐紫外線性にも優れる点でも好ましい。
なかでもフッ素原子を有するものが、近赤外領域の光に対して透明性が高く、広い波長帯域にわたって透明性が高いため好ましい。また、フッ素原子の導入は、さらに屈折率の低減化において効果的に作用するため好ましい。
本発明の硬化性組成物で使用する多官能含フッ素化合物(I)は、さらにつぎの3つの物性を満たしていなければならない。
(1)フッ素含有率が40質量%以上。
(2)35℃での粘度が100,000mPa・秒以下。
(3)式(1)で表される化合物の硬化物のガラス転移温度が70℃以上。
それぞれの物性について説明する。
(1)フッ素含有率が40質量%以上。
光学材料として使用する場合、硬化物のフッ素含有率は高くなければ、たとえば40質量%以上でなければ近赤外領域での透明性が向上しない。したがって、その原料である多官能含フッ素化合物(I)のフッ素含有率も高くなければならない。したがって、原料である多官能含フッ素化合物(I)のフッ素含有率も高くする必要がある。
好ましいフッ素含有率は50質量%以上、さらには60質量%以上、特に70質量%以上のときに、透明性が特に優れた硬化物を与える。上限は76質量%程度である。
(2)35℃での粘度が100,000mPa・秒以下。
前記のように、光導波路などの光学材料に加工するためには、スピンコート、ディップ、キャスト法等の方法により、薄膜(コア層、クラッド層)を形成し、適宜硬化する加工法が一般的にとられている。有機溶剤を使用しない本発明の硬化性組成物においては、こうした作業性の点から室温近辺(35℃)で液状である必要がある。
好ましい粘度は、10,000mPa・秒以下、さらには1,000mPa・秒以下、特に500mPa・秒以下であり、下限は10mPa・秒程度である。
(3)式(1)で表される化合物の硬化物のガラス転移温度Tgが70℃以上。
「式(1)で表される化合物の硬化物」とは、式(1)で表される化合物100質量部に対して、完全に硬化させる量の硬化開始剤(II)を添加し、完全に硬化させて得られた物のことをいう。また「完全に硬化した」とは、硬化前の式(1)で表される多官能含フッ素化合物のIR測定による炭素−炭素二重結合のピーク強度を100としたとき、硬化後の硬化物のIR測定による炭素−炭素二重結合のピーク強度が5以下になったことをいう。
得られる硬化物のガラス転移温度Tgが低いと耐熱性が不充分となり、使用場所によっては変形などの問題が生ずる。
好ましいTgは、80℃以上、さらには90℃以上、特に100℃以上であり、上限は300℃程度である。
本発明で使用する多官能含フッ素化合物(I)の具体例を以下に例示するが、これらのみに限定されるものではない。
なお、本発明では、式(1)で表される多官能含フッ素化合物の中から、これらの3要件を満たす多官能含フッ素化合物(I)を選定するのであるが、その選定法は後述する測定法に従えば、当業者に容易に行なうことができる。
具体例としては、
などがあげられる。
本発明における硬化性組成物は、多官能含フッ素化合物(I)に加えて硬化開始剤(II)を必須として含む。
硬化開始剤(II)は、0.01質量%以上で10質量%以下配合されていることが好ましい。
硬化開始剤(II)としては、活性エネルギー線を照射する硬化方法に使用する活性エネルギー線硬化開始剤(II−1)、ラジカル重合による硬化法に使用するラジカル重合開始剤(II−2)があげられる。
活性エネルギー線硬化開始剤(II−1)は、活性エネルギー線に曝されることによって初めてラジカルやカチオンなどを発生し、単量体の重合性炭素−炭素二重結合の重合(硬化反応)を開始させる触媒として働くものであり、通常、紫外光線でラジカルやカチオンを発生させるもの、特にラジカルを発生するものが汎用される。
活性エネルギー線としては、350nm以下の波長領域の電磁波、つまり紫外光線、X線、γ線などのほか電子線があげられ、好ましくは紫外光線が用いられる。活性エネルギー線の照射のみでも硬化反応は生起するが、効率よく多官能含フッ素化合物を硬化させるために、通常、活性エネルギー線硬化開始剤を用いる。
本発明における活性エネルギー線硬化開始剤(II−1)は、該化合物の炭素−炭素二重結合の種類(ラジカル反応性か、カチオン反応性か)、使用する活性エネルギー線の種類(波長領域など)、照射強度などによって適宜選択されるが、一般に紫外線領域の活性エネルギー線を用いてラジカル反応性の炭素−炭素二重結合を有する該化合物を硬化させる開始剤としては、たとえばつぎのものが例示できる。
(アセトフェノン系)
アセトフェノン、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノンなど
(ベンゾイン系)
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなど
(ベンゾフェノン系)
ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシ−プロピルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、ミヒラーケトンなど
(チオキサンソン類)
チオキサンソン、クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン、ジエチルチオキサンソン、ジメチルチオキサンソンなど
(その他)
ベンジル、α−アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、アンスラキノンなど
また、必要に応じてアミン類、スルホン類、スルフィン類などの公知の光開始助剤を添加してもよい。
また、カチオン反応性の炭素−炭素二重結合を有する該化合物を硬化させる開始剤としては、つぎのものが例示できる。
(オニウム塩)
ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩など
(スルホン化合物)
β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物など
(スルホン酸エステル類)
アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートなど
(その他)
スルホンイミド化合物類、ジアゾメタン化合物類など
活性エネルギー線硬化開始剤(II−1)の量は、官能基を有する化合物の全量に対して通常、下限は0.1質量%、好ましくは0.2質量%、より好ましくは0.3質量%、特に好ましくは0.5質量%であり、上限は15質量%、好ましくは10質量%、より好ましくは8質量%、特に好ましくは7質量%である。
つぎに、ラジカル重合開始剤(II−2)について説明する。
ラジカル重合を開始させる方法としては、たとえば公知のラジカル重合開始剤を使用して、加熱によってラジカルを発生させる方法が好ましい。
ラジカル重合開始剤(II−2)としては、公知のパーオキサイド類、アゾ系開始剤などが利用できる。
ラジカル重合開始剤(II−2)の量は、官能基を有する化合物の全量に対して通常、下限は0.01質量%、好ましくは0.05質量%、より好ましくは0.1質量%、特に好ましくは0.5質量%であり、上限は10質量%、好ましくは7質量%、より好ましくは5質量%、特に好ましくは3質量%である。
本発明の硬化性組成物には、さらに単官能アクリレート(A)を併用してもよい。
単官能アクリレート(A)としては、単官能含フッ素アクリレートでも単官能非フッ素系アクリレートであってもよい。
配合量は、含フッ素系と非フッ素系を問わず、硬化物としたときの硬化物のフッ素含有量が40質量%以上となる量が好ましい。
単官能アクリレートとしては、式(6):
(式中、X4はH、F、Cl、CH3またはCF3;R9は炭素数1〜30の水素原子の一部または全てがフッ素置換されてもよく、エーテル結合を含んでいてもよい飽和炭化水素基。ただし、X4およびR9の少なくとも一方はフッ素原子を含む)で表される単官能アクリレートがあげられる。得られる硬化物のフッ素含有率が高く、耐熱性(高ガラス転移温度)、近赤外領域での透明性が良好であるとの観点からX4はフッ素原子が好ましい。
好ましいR9としては、
(A1)アルキレンエーテル結合を含む水素原子の一部または全てがフッ素置換されていてもよい飽和炭化水素基、
(A2)分岐構造を含む水素原子の一部または全てがフッ素置換されてもよい飽和炭化水素基、
(A3)ヘテロ原子を有していてもよい水素原子の一部または全てがフッ素置換されていてもよい芳香族炭化水素基、
(A4)ヘテロ原子を有していてもよい水素原子の一部または全てがフッ素置換されていてもよい脂肪族単環構造、
(A5)ヘテロ原子を有していてもよい水素原子の一部または全てがフッ素置換されていてもよい脂肪族複環構造
である。これらの構造(A1)〜(A5)をエステル部に含むアクリレート成分がポリマー中にあると上記の効果が顕著に現れる。
特に好ましくは、これらのR9がフッ素原子を含んでいること、さらにはより一層多くのフッ素原子を含む(フッ素含有率の高い)構造が好ましい。
この観点から、水素原子の一部または全てがフッ素原子に置き換わった上記(A1)〜(A5)の含フッ素炭化水素基、特にパーフルオロアルキレンエーテル基、パーフルオロ芳香族炭化水素基、パーフルオロ脂肪族単環状構造、およびパーフルオロ脂肪族複環状構造を含むものが好ましい。具体例については後述する。
含フッ素アルキル基、特にパーフルオロアルキル基を含むものとしては、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を含むものが好ましく、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を含むものが特に好ましい。炭素数が大きすぎるパーフルオロアルキル基は、得られる硬化物が結晶化しやすく、白濁化等によって透明性が低下しやすい点から好ましくない。
単官能含フッ素アクリレートとしては、フッ素含有率が10質量%以上であり、該単官能含フッ素アクリレートの硬化物のガラス転移温度が50℃以上であるものが、透明性を低下させない点、硬化物の耐熱性を低下させない点で優れており、好ましい。
フッ素含有率は、好ましくは10質量%以上、さらには30質量%以上であり、上限は全ての水素原子がフッ素原子で置換された場合である。
硬化物のガラス転移温度は、好ましくは50℃以上、さらには70℃以上、特に100℃以上であり、上限は200℃程度である。
つぎにR9の具体例について個々に説明する。
(A1)アルキレンエーテル結合を含む水素原子の一部または全てがフッ素置換されていてもよい飽和炭化水素基:
このアルキレンエーテル基は硬化物のフッ素含有率を高くすることができ、また多官能含フッ素化合物(I)に対する溶解性を高めることができ、均一な液状組成物を得やすくなる点で好ましい。
アルキレンエーテル基の好ましい炭素数は、2以上で25以下、特に10以下である。炭素数があまり大きすぎると硬化物の硬度や機械的特性を低下させる場合があるので好ましくない。
(A1)を含む好ましい単官能アクリレートとしては、式(7):
(式中、X5はH、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;R10は式(1−1):
(式中、ZはFまたはCF3;m1、m2、m3、m4は0または1〜10の整数である。ただしm1+m2+m3+m4は1〜10の整数)で表わされる部位を含む含フッ素アルキル基)で表わされる単官能含フッ素アクリレート(a1−1)が好ましい。
単官能含フッ素アクリレート(a1−1)の特徴は、一般式(2)においてR3が含フッ素アルキレンエーテル構造R10である特定のエステル部位を有するものであり、これらのエステル部位を用いることで、本発明の硬化性組成物の優れた溶解性、均一性、硬化後の良好な相溶性と透明性を確保できるものである。
この特定の単官能含フッ素アクリレート(a1−1)と特定の多官能含フッ素化合物(I)(式(1)の多官能含フッ素化合物)を選択し、硬化性組成物とすることによって、さらに硬化後の硬化物において、硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)、機械的強度、硬度が向上し、さらにまた多官能含フッ素化合物(I)が架橋構造をとることで相分離が抑えられる結果、後述する非晶性の含フッ素ポリマー(C)を用いる場合、ポリマー(C)との相溶性が向上して相溶性不足が原因で生じる白濁などによる近赤外領域での透明性の低下を解消できる。
また、硬化物中の部分的な結晶化も硬化物が架橋構造をとることで抑制され、結晶化による白濁などの近赤外領域での透明性の低下も解決できる。
また、単官能含フッ素アクリレート(a1−1)は直鎖状のフルオロアルキル基をエステル部にもつアクリレートに比べて低粘度であり、組成物を低粘度化することができるため、加工性にも優れる。また、これらの単官能含フッ素アクリレート(a1−1)は揮発性も低いため、成形加工の操作時にアクリレート(a1−1)成分の揮発により液状組成物の組成が変化し、硬化物の屈折率等の物性が変化するといった問題がない。また、硬化後も多官能含フッ素化合物(I)や含フッ素アクリルポリマー(C)との相溶性が高いため、白濁を生じたり、加温により相分離するといった問題もない。また得られる硬化物は高フッ素含有率にもかかわらず非晶性を示すという特徴をもつ。
式(7)のエステル部位を構成するR10としては、つぎに示すものが非限定的に例示できる。
(1−3):
(1−4):
(1−5):
(1−6):
(1−7):
(1−8):
これらの中でもフッ素含有率の高さ、含フッ素アクリルポリマー(C)の溶解性、硬化後の含フッ素アクリルポリマー(C)との相溶性、硬化物の近赤外領域での透明性が良好であるとの観点から、特に好ましい構造は式(1−3):
(式中、m5は1〜5の整数)である。
なかでも硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)、機械的強度の観点からm5は1〜3が、さらにm5は1がもっとも好ましい。
式(2)におけるX2は単官能含フッ素アクリレート(a1−1)の重合反応性、硬化物の近赤外領域での透明性、耐熱性(高ガラス転移温度)が良好であるとの観点からフッ素原子がもっとも好ましい。
R10を含む非限定的な単官能含フッ素アクリレート(a1−1)としては、つぎに示すものが例示できる。
(1a):
(1b):
(1c):
(1d):
(1e):
(1f):
これらのうち、式(1−3)で示されるR10、特にm5が1のR10を有する含フッ素アクリレート(1a−1):
が、含フッ素アクリルポリマー(C)の溶解性、硬化後の含フッ素アクリルポリマー(C)との相溶性、硬化物の近赤外領域での透明性の観点でもっとも好ましい。
(A2)分岐構造を含む水素原子の一部または全てがフッ素置換されていてもよい飽和炭化水素基:
分岐構造を含むことにより、多官能含フッ素化合物(I)に対する溶解性が向上し、均一な液状組成物を得やすく、また硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)を高めることができる。
R9の具体例としてはつぎのものが例示できる。
(A2−1)式(1−2)
(式中、Rf1およびRf2は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基;R6は水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の炭化水素基)で表される含フッ素第3級アルキル構造
エステル部位に分岐構造を含むことにより、前述の効果に加え、特に硬化物に耐熱性(高ガラス転移温度)と適度な機械的強度や硬度を付与する。
Rf1およびRf2は同じかまたは異なる炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、具体的にはCF3、CF2CF3、CF2CF2CF3、CF2CF2CF2CF3、CF2CF2CF2CF2CF3であり、特に相溶性および硬化物の耐熱性(ガラス転移温度)が良好であるとの観点からCF3が好ましい。
R6はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の炭化水素基であり、具体的にはCH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、CH2CH2CH2CH3、CH2CH2CH2CH2CH3、CH2CF3、CH2CH2CF3、CH2CF2CF3であり、特に相溶性および硬化物の耐熱性(ガラス転移温度)が良好であるとの観点からCH3であるのが好ましい。Rf1、Rf2およびR6の各々の炭素数が6以上になると分岐鎖が結晶化しやすく、硬化物の透明性を低下させるため好ましくない。
含フッ素第3級アルキル構造を有する具体的アクリレートとしては、たとえばヘキサフルオロネオペンチルメタクリレート(6FNPM:X4=CH3、Rf1=Rf2=CF3、R6=CH3)、ヘキサフルオロネオペンチルα−フルオロアクリレート(6FNPF:X4=F、Rf1=Rf2=CF3、R6=CH3)、2,2−ビストリフルオロメチルブチルメタクリレート(X4=CH3、Rf1=Rf2=CF3、R6=CH2CH3)、2,2−ビストリフルオロメチルブチルα−フルオロアクリレート(X4=F、Rf1=Rf2=CF3、R6=CH2CH3)、
などが例示できる。これらのうち、硬化物の耐熱性に優れ、合成が容易な点から
ヘキサフルオロネオペンチルメタクリレート(6FNPM)、
ヘキサフルオロネオペンチルα−フルオロアクリレート(6FNPF)
が好ましく、特に光導波路を用いた光デバイスを加工する際に耐熱性が必要な場合や、光導波路を用いた光デバイスが車内や、FA用途等で高温下で使用される場合においては、硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)、近赤外領域での透明性の高い6FNPFが好ましい。
(A2−2)
(式中、Rf5およびRf6は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基;R11は水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の炭化水素基、HまたはF;nは1〜6の整数;mは1〜6の整数)
より具体的には、
である。
具体的な含フッ素アクリレートとしてはつぎのものが例示できる。
具体的には、
である。
(A2−3)
より具体的には、
である。
具体的な含フッ素アクリレートとしてはつぎのものが例示できる。
(式中、X6、Rf5、Rf6、R11は前記と同じ)
具体的には、
ヘキサフルオロイソプロピルα−フルオロアクリレート(HFIPF)
または
ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(HFIPM)
である。
これらの中で6FNPM、6FNPF、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(HFIPM)、ヘキサフルオロイソプロピルα−フルオロアクリレート(HFIPF)が硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)、近赤外領域での透明性が良好であるとの観点で好ましい。中でも6FNPFとHFIPFは、多官能含フッ素化合物(I)に対する溶解性が良好なため均一な液状組成物を得やすくなる点、硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)、近赤外領域での透明性が良好であるとの観点で最も好ましい。
(A3)ヘテロ原子を有していてもよい水素原子の一部または全てがフッ素置換されていてもよい芳香族炭化水素基:
この芳香族炭化水素基は、耐熱性(高ガラス転移温度)が良好な点で好ましい。特に、構造中の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されているものは、さらに近赤外領域での透明性にも優れている。
R9の具体例としてはつぎのものが例示できる。
(A3−1)
(式中、R12は同じかまたは異なり、F、Clまたはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜14のアルキル基;R13は結合手、または分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基;aは1〜5の整数;ただし、R12およびR13のいずれか1つはフッ素原子を有している)
より具体的には、
である。
具体的な含フッ素アクリレートとしてはつぎのものが好ましく例示できる。
パーフルオロフェニルα−フルオロアクリレート
パーフルオロフェニルメタクリレート
が好ましくあげられる。
これらのなかでも、パーフルオロフェニルメタクリレート、パーフルオロフェニルα−フルオロアクリレートが耐熱性(高ガラス転移温度)、近赤外領域での透明性を向上させる点で好ましい。
(A4)ヘテロ原子を有していてもよい水素原子の一部または全てがフッ素置換されていてもよい脂肪族単環構造:
この脂肪族単環構造は、耐熱性(高ガラス転移温度)が良好な点で好ましい。特に、構造中の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されているものは、さらに近赤外領域での透明性にも優れている。
R9の具体例としてはつぎのものが非限定的に例示できる。
(A4−1)
(式中、R14は同じかまたは異なり、F、Clまたはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜14のアルキル基;R15は結合手、または分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基;bは1〜5の整数;ただし、R14およびR15のいずれか1つはフッ素原子を有している)
より具体的には、
があげられる。
(A4−2)つぎの単環構造を1個または2個有する脂肪族環状炭化水素構造を含むものも好ましく例示できる。
具体的な含フッ素アクリレートとしてはつぎのものが好ましく例示できる。
(A5)ヘテロ原子を有していてもよい水素原子の一部または全てがフッ素置換されていてもよい脂肪族複環構造:
この脂肪族複環構造は、耐熱性(高ガラス転移温度)が良好な点で好ましい。特に、構造中の水素原子の一部または全てがフッ素原子で置換されているものは、さらに近赤外領域での透明性にも優れている。
R9の具体例としてはつぎのものが例示できる。
(A5−1)アダマンタンおよびその誘導体、
(A5−2)ノルボルナンおよびその誘導体、
(A5−3)パーヒドロアントラセンおよびその誘導体、
(A5−4)パーヒドロナフタレンおよびその誘導体、
(A5−5)トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカンおよびその誘導体
などがあげられ、それらの一部の例として、
などがあげられる。
これら例示のなかで、少なくとも炭化水素基の1つの水素原子を炭素数1〜5の含フッ素アルキル基やフッ素原子で置換したものである。
さらにこれら複環構造の炭化水素部位を含む有機基のうち、アダマンタンおよびその誘導体、ノルボルナンおよびその誘導体を含むものが好ましく、これらは特に耐熱性(高ガラス転移温度)と近赤外領域での透明性を効果的に硬化物に付与できる。
具体的な含フッ素アクリレートとしてはつぎのものが好ましく例示できる。
(a5−1)つぎの式で示されるアダマンタンおよびその誘導体を側鎖に有する単量体:
(式中、X7はH、F、Cl、CH3またはCF3;R1b、R2bは環に結合した置換基であり、CH3、C2H5またはOH;R4b、R5bは結合手または分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基;R3bはH、CH3またはC2H5;nは0または1〜2の整数。ただし、いずれかの置換基にフッ素原子を含む)。
より具体的には、
などがあげられる。
(a5−2)つぎの式で示されるノルボルナンおよびその誘導体を側鎖に有するアクリレート:
(式中、X8はH、F、Cl、CH3またはCF3;R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6a、R7a、R8a、R9aおよびR10aは同じかまたは異なり、H、F、Clまたは炭素数1〜14のハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基;R11aは結合手または分岐鎖を含んでいてもよい炭素数1〜6のアルキレン基;nは0または1〜2の整数。ただし、いずれかの置換基にフッ素原子を含む)。
より具体的には、
などがあげられる。
単官能含フッ素アクリレートは任意成分であるが、その配合割合は、多官能含フッ素化合物(I)100質量部に対して10質量部以上、さらには20質量部以上、特に30質量部以上とするのが、液状組成物の粘度を適正な範囲に調整できる点で好ましい。上限は、硬化物の耐熱性を低下させない点や硬化時の収縮を少なくする点から80質量部、さらには50質量部、特に40質量部である。
単官能の非フッ素系アクリレートとしては、式(6)においてX4およびR9がいずれもフッ素原子を含まない化合物があげられる。その配合量は、硬化物のフッ素含有率を大きく低下させない(たとえばフッ素含有率が40質量%を下回らない)量である。
単官能非フッ素系アクリレートの非限定的な具体例としては、たとえばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレ−ト、イソプロピル(メタ)アクリレ−ト、n−ブチル(メタ)アクリレ−ト、イソブチル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチル(メタ)アクリレ−ト、などの脂肪族エステル(メタ)アクリレ−ト類;そのほかフェニル(メタ)アクリレ−ト、アダマンチル(メタ)アクリレ−ト、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレ−トなどがあげられる。
本発明の硬化性組成物には前記多官能含フッ素化合物(I)に加えて、多官能含フッ素化合物(I)以外の他の多官能含フッ素化合物(B)を配合してもよい。
他の多官能含フッ素化合物(B)としては、たとえば式(8):
(式中、X9およびX10は同じかまたは異なり、H、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種。nは1〜6、たとえば1〜3の整数;R16は炭素数1〜50、たとえば3〜50の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されていてもよい(n+1)価の有機基)で表される多官能含フッ素化合物である。
式(8)において、X9およびX10がフッ素原子であることが、多官能含フッ素化合物の反応性が良好である点、得られる硬化物の耐熱性が向上する点から好ましい(高ガラス転移温度化)。また、フッ素含有率も高く、硬化物の近赤外領域での透明性も高くなる点で好ましい。
式(8)において、R16は炭素数1〜50、たとえば3〜50の水素原子の一部または全てがフッ原子に置換されていてもよい(n+1)価の有機基である。水素原子の一部または全てがフッ原子に置換されている場合は、得られる硬化物の近赤外領域での透明性が向上する。
さらにこの有機基R16は、その構造中に、(B−1)ヘテロ原子を有していてもよい芳香族炭化水素構造の部位、(B−2)ヘテロ原子を有していてもよい脂肪族単環構造の部位、または(B−3)ヘテロ原子を有していてもよい脂肪族複環構造の部位から選ばれる少なくとも1種の部位を含む有機基であることが好ましい。これらの環状構造を含むことにより、得られる硬化物の耐熱性が向上する(高ガラス転移温度化)。
この多官能含フッ素化合物(B)は硬化物の耐熱性を向上させる効果と硬化物の機械的強度を向上させる効果とを併せもつ。さらにはフッ素原子を含有させることにより、フッ素含有率の向上や硬化物の近赤外領域での透明性に寄与する。また、多官能部位に環状構造をもつことによる硬化物の耐熱性の向上は、単官能アクリレート部位に環状構造をもつ含フッ素アクリル系アクリレートの場合に比べて、少量の環状構造の導入で耐熱性(高ガラス転移温度)の向上が実現できる。また、理由は不明であるが、多官能部位に環状構造をもつことにより硬化収縮も低下できる。
R16は、炭素数1〜50の(n+1)価の有機基であり、具体的には、
(1)直鎖状または分枝状のエーテル結合を有していてもよい(n+1)価の有機基、
(2)芳香族環状構造を有する(n+1)価の有機基、
(3)脂肪族環状(単環または多環)構造を有する(n+1)価の有機基、
(4)ウレタン結合を含む(n+1)価の有機基
などが挙げられ、これら有機基において、炭素−水素結合を形成する水素原子の一部またはすべてがフッ素原子で置換されたものであってもよい。
まず、上記R16のそれぞれの好ましい態様について、具体例を挙げて説明する。
(1)直鎖状または分枝状のエーテル結合を有していてもよい(n+1)価の有機基:
前記多官能アクリレートを示す式(8)におけるn=1のもの(2官能アクリレート)としては、たとえば
式(R2−1):
−(CH2)p1−(CF2)p2−(C(CH3))p3− (R2−1)
(式中、p1+p2+p3=1〜30)で示される有機基が例示できる。
具体例としては、
−CH2CH2−、
−CH2CH(CH3)−、
−CH2CH2CH(CH3)−、
−(CH2)4−、
−(CH2)6−、
−(CH2)2(CF2)2(CH2)2−、
−(CH2)2(CF2)4(CH2)2−、
−(CH2)2(CF2)6(CH2)2−、
−CH2C(CH3)2CH2−
などがあげられる。
また、式(R2−1−1):
(式中、p1、p2、p3は前記式(R2−1)と同じ)も挙げられる。
より具体的には、
などが好ましく挙げられる。
その他、式(R2−1−2)、(R2−1−3):
(式中、p4は0または1〜20の整数、Z1、Z2、Z3は同じかまたは異なり、HまたはCH3)なども挙げられる。
また、n=2以上(3官能以上)のものとしては、式(R2−2):
(式中、p5は0または1〜5の整数)があげられる。
具体的には、
などが挙げられる。
また、式(R2−2)以外のものとして、たとえば
などが挙げられる。
また、含フッ素アルキレン基を含むものとして、式(R2−3)、(R2−4):
(式中、p6、p8は同じかまたは異なり、1〜10の整数;p7は1〜30の整数)などが挙げられる。
具体的には、
などが好ましく挙げられる。
R16としてこれら例示の直鎖または分枝状のアルキレン基からなる2価以上の有機基は、重合体に柔軟性や弾性を付与できる点で好ましい。さらにフッ素原子を導入する際、高含有率で導入でき、透明性、低屈折率の点で有利となるため好ましい。
(2)芳香族環状構造を含む(n+1)価の有機基:
たとえば、式(R2−5):
(式中、R21およびR22は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z21およびZ22は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;r1およびr2は同じかまたは異なり、1〜4の整数)で表わされる部位を含む2価の有機基、
または式(R2−6):
(式中、R23、R24、R25およびR26は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z23は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;r3は1〜4の整数)で表わされる部位を含む2価の有機基があげられる。
そのほか、つぎの式(R2−7)〜(R2−11)で表わされる部位を含む2価の有機基もあげられる。
式(R2−7):
式(R2−8):
式(R2−9)
式(R2−10):
式(R2−11):
上記式中、R27、R28、R29およびR30は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;R31およびR32は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、水素原子;Z24、Z25およびZ26は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;r4およびr5は同じかまたは異なり、1〜4の整数;r6は1〜2の整数;r7およびr8は同じかまたは異なり、1〜3の整数であり、同じ符号であっても式が異なれば別異の基や整数をとりうる。
式(R2−5)の具体例としては、
(式中、r4、r5は同じかまたは異なり、1〜10の整数;Z21、Z22、r1、r2は前記式(R2−5)と同じ)などが好ましく挙げられる。
(R2−6)の具体例としては、
(式中、Z23、r3は前記式(R2−6)と同じ)などが好ましく挙げられる。
式(R2−7)の具体例としては、
(式中、Z24、Z25、r4およびr5は前記式(R2−7)と同じ)などが好ましく挙げられる。
式(R2−8)の具体例としては、
などが好ましく挙げられる。
式(R2−9)の具体例としては、
(式中、Z24、Z25、r4およびr5は前記式(R2−9)と同じ)などが好ましく挙げられる。
式(R2−10)の具体例としては、
(式中、Z24、Z25、r7およびr8は前記式(R2−10)と同じ)などが好ましく挙げられる。
式(R2−11)の具体例としては、
(式中、Z24、Z25、Z26、r6、r7およびr8は前記式(R2−11)と同じ)などが好ましく挙げられる。
Z21、Z22、Z23、Z24、Z25およびZ26の具体例としては、たとえば水素原子、フッ素原子、メチル基などが例示できる。
これらの芳香族環状構造を有する2価以上の有機基は、耐熱性と機械的特性に優れる点で好ましく、ガラス転移点を高く設定でき、その結果、耐熱性の高い光学材料が得られる点で好ましい。
なかでもフッ素原子を有するものが、近赤外領域の光も含めて広い波長帯域で透明性が高い点で好ましい。また、フッ素原子の導入は、さらに屈折率の低減化において効果的に作用するため好ましい。
(3)脂肪族環状(単環または多環)構造を有する(n+1)価の有機基:
具体的には、式(R2−12):
(式中、R33およびR34は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z27およびZ28は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;s1およびs2は同じかまたは異なり、1〜4の整数)で表わされる部位を含む2価の有機基、または式(R2−13):
(式中、R35、R36、R37およびR38は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z29は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;s3は1〜4の整数)で表わされる部位を含む2価の有機基があげられる。
そのほか、つぎの式(R2−14)〜(R2−18)で表わされる部位を含む2価の有機基もあげられる。
式(R2−14):
式(R2−15):
式(R2−16):
式(R2−17):
式(R2−18):
上記式中、R39、R40、R41およびR42は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;R43およびR44は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、水素原子;Z30、Z31およびZ32は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;s4およびs5は同じかまたは異なり、1〜4の整数;s6は1〜2の整数;s7およびs8は同じかまたは異なり、1〜3の整数であり、同じ符号であっても式が異なれば別異の基や整数をとりうる。
式(R2−12)の具体例としては、
(式中、s4、s5は同じかまたは異なり、1〜10の整数;Z27、Z28、s1、s2は前記式(R2−12)と同じ)
などが好ましく挙げられる。
(R2−13)の具体例としては、
(式中、Z29、s3は前記式(R2−13)と同じ)などが好ましく挙げられる。
式(R2−14)の具体例としては、
(式中、Z30、Z31、s4およびs5は前記式(R2−14)と同じ)などが好ましく挙げられる。
式(R2−15)の具体例としては、
などが好ましく挙げられる。
式(R2−16)の具体例としては、
(式中、Z30、Z31、s4およびs5は前記式(R2−16)と同じ)などが好ましく挙げられる。
式(R2−17)の具体例としては、
(式中、Z30、Z31、s7およびs8は前記式(R2−17)と同じ)などが好ましく挙げられる。
式(R2−18)の具体例としては、
(式中、Z30、Z31、Z32、s6、s7およびs8は前記式(R2−18)と同じ)などが好ましく挙げられる。
Z27、Z28、Z29、Z30、Z31およびZ32の具体例としては、たとえば水素原子、フッ素原子、メチル基などが例示できる。
これらの脂肪族環状構造を有する2価以上の有機基は、ガラス転移温度を高く設定でき、耐熱性、機械的特性に優れる点で好ましい。また、紫外光に対して透明性が高い点で好ましく、耐紫外線性にも優れる点でも好ましい。
なかでもフッ素原子を有するものが、近赤外領域の光に対して透明性が高く、広い波長帯域にわたって透明性が高いため好ましい。また、フッ素原子の導入は、さらに屈折率の低減化において効果的に作用するため好ましい。
(4)ウレタン結合を含む(n+1)価の有機基
具体的には、
などの有機基が挙げられる。
以上にR16を中心に説明したが、式(8)で示される他の多官能含フッ素化合物(B)の具体例としては次のものが例示できる。
などの多官能含フッ素化合物(B)が好ましく挙げられる。
他の多官能含フッ素化合物(B)の添加量としては、30質量%まで、好ましくは20質量%までである。
本発明の硬化性組成物には、さらにフッ素含有率25質量%以上の非晶性の含フッ素ポリマー(C)を配合してもよい。
ここで、非晶性とは前述のDSC分析において、2nd runで昇温速度10℃/分の条件で測定した際に実質的に融解に基づく吸熱ピークが観測されないか、もしくは融解熱量が1J/g以下である性質を示す。
フッ素含有率が25質量%以上であることにより、得られる硬化物の近赤外領域での透明性の向上という特性を付与することができる。また、非晶性であることにより、含フッ素化合物(I)や(A)に対する溶解性が高く、均一な液状組成物が得られやすい。また、結晶成分による散乱がないため硬化物の近赤外領域での透明性の向上という特性を付与することができる。フッ素含有率は近赤外領域での透明性が良好であるとの観点からより好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。
含フッ素ポリマー(C)の数平均分子量は、他の成分への溶解性、相溶性の観点からは、上限は500,000、好ましくは100,000、特に好ましくは50,000である。下限は特には制限はないが、同様の観点から数量体であるオリゴマーであることが好ましく、具体的には300、好ましくは500である。
つぎに具体的なフッ素含有率25質量%以上の非晶性の含フッ素ポリマーの好ましいものを例示するがこれらのみに限定されるものではない。
(C−1)アクリル系単量体のみを重合してなる重合体であって、フッ素含有率が25質量%以上の非晶性の含フッ素アクリル系ポリマー
(C−2)含フッ素アリルエーテル系単量体を重合してなる重合体であって、フッ素含有率が25質量%以上の非晶性の含フッ素アリルエーテル系ポリマー
(C−3)主鎖中に環状構造を有するフッ素含有率が25質量%以上の非晶性の含フッ素環状ポリマー
(C−4)含フッ素オレフィンと炭化水素系ビニルエーテルからなる共重合体でフッ素含有率が25質量%以上の非晶性の含フッ素コポリマー
(C−5)含フッ素ポリスチレン系単量体を重合してなる重合体であって、フッ素含有率が25質量%以上の非晶性の含フッ素ポリスチレン系ポリマー
(C−6)ビニリデンフルオライド系共重合体であって、フッ素含有率が25質量%以上の非晶性のビニリデンフルオライド系コポリマー。
これらのうちで含フッ素化合物(I)や(A)への溶解性、相溶性の観点から好ましい構造は(C−1)および(C−2)であり、もっとも好ましい構造は(C−1)である。非晶性含フッ素ポリマー(C)としては、これらの2種以上のポリマーのブレンドであってもかまわない。
つぎに(C)の構造である(C−1)〜(C−3)および(C−6)について説明する。
(C−1)アクリル系単量体のみを重合してなる重合体であって、フッ素含有率が25質量%以上の非晶性の含フッ素アクリル系ポリマー:
このポリマー(C−1)を用いることで、含フッ素化合物(I)や(A)と均一な液状組成物である硬化性組成物が形成される。ポリマー(C−1)は含フッ素化合物(I)や(A)との組み合わせにおいて、硬化性組成物の粘度を調整する機能と、硬化時の重合収縮を低下させる機能、硬化物のフッ素含有率を上げる機能を併せもつ。また、成形時に金型等で形状を付与し硬化させる場合においては、金型から硬化物の剥離性を向上させる機能をももつ。
含フッ素アクリル系ポリマー(C−1)は、含フッ素アクリレートの単独重合体または共重合体であってもよい。また、フッ素含有率が25質量%以上になるのであれば、含フッ素アクリレートと非フッ素アクリレートとの共重合体としてもよい。また、2種類以上の含フッ素アクリル系ポリマー(C−1)をブレンドして使用してもよい。
含フッ素アクリレートとしては、前記単官能アクリレート(A)のうちの(A1)〜(A5)を含む単官能含フッ素アクリレートが例示できる。
含フッ素アクリレートと共重合してもよい非フッ素系アクリレートとしては、含フッ素アクリル系ポリマー(C−1)のフッ素含有率を25質量%以上とするものであれば特に限定されない。
非フッ素アクリル系単量体の非限定的な具体例としては、前記単官能アクリレート(A)のうちの単官能非フッ素系アクリレートが例示できる。
含フッ素アクリル系ポリマー(C−1)のフッ素含有率は25質量%以上であればよいが、多い方が得られる硬化物の近赤外領域での透明性に優れる点で好ましく、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。上限は、各重合体中の水素原子の全てがフッ素原子に置き換わったときのフッ素含有率である。
含フッ素アクリル系ポリマー(C−1)の数平均分子量は、他の成分への溶解性、相溶性の観点からは、上限は500,000、好ましくは100,000、特に好ましくは50,000である。下限は特には制限はないが、同様の観点から数量体であるオリゴマーであることが好ましく、具体的には300、好ましくは500である。
また、ポリマー(C−1)のガラス転移温度は、85℃以上のものが硬化物の耐熱性向上の観点からより好ましい。より好ましくは90℃以上。さらに好ましくは95℃以上である。これらの構造をもつポリマーはポリマー骨格がアクリルであるため、本質的に含フッ素アクリレート成分(a1−1)によく溶解し、均一な液状組成物となり、硬化物の相溶性も高いため、白濁化することなく、近赤外領域での透明性も高い。
(C−2)フッ素アリルエーテル系単量体を重合してなる重合体であって、フッ素含有率が25質量%以上の非晶性の含フッ素アリルエーテル系ポリマー:
ポリマー(C−2)はWO95/33782、WO02/18457、WO02/73255各パンフレット等に開示されている。
ポリマー(C−2)は高フッ素含有率にもかかわらず、非晶性を示し、かつ含フッ素化合物(I)や(A)に対する溶解性が非常に高い。また、たとえば炭素-炭素二重結合のような含フッ素アクリレートと反応し得る硬化部位を容易に側鎖末端にもたせることが可能で、このような含フッ素アクリレートと反応し得る硬化部位があれば、硬化物が全体として相互ネットワークを形成するため、耐溶剤性、低線膨張係数、耐熱性などのさらに優れた硬化物性能を発現する。
(C−3)主鎖中に環状構造を有するフッ素含有率が25質量%以上の非晶性の含フッ素環状ポリマー:
ポリマー(C−3)はガラス転移温度が非常に高く、硬化物の耐熱性が高くなる点で好ましい。このようなポリマー(C−3)としては、好ましくはフッ素を有する脂肪族環状の構造単位をもつポリマーと非フッ素系の脂環式構造単位をもつポリマーが例示できる。
(C−3−1)フッ素を有する脂肪族環状の構造単位:
この構造単位を導入すると、近赤外領域での透明性をより高くでき、さらに高ガラス転移温度の非晶性の含フッ素環状ポリマー(C−3)が得られ、硬化物のさらなる高硬度化が期待できる点で好ましい。
含フッ素脂肪族環状の構造単位(C−3−1)としては式(9):
(式中、X11、X12、X15、X16、X17およびX18は同じかまたは異なり、HまたはF;X13およびX14は同じかまたは異なり、H、F、ClまたはCF3;Rf7は炭素数1〜10の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜10のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;n2は0〜3の整数;n1、n3、n4およびn5は同じかまたは異なり、0または1の整数)で示されるものが好ましい。
たとえば、
(式中、Rf7、X13およびX14は前記と同じ)で示される構造単位があげられる。
具体的には、
(式中、X11、X12、X15およびX16は前記と同じ)などがあげられる。
そのほかの含フッ素脂肪族環状構造単位としては、たとえば
などがあげられる。
(C−3−2)非フッ素系の脂環式構造単位:
また、非フッ素系の脂環式構造単位(C−3−2)を含有した非晶性の含フッ素ポリマーは硬化物の高ガラス転移温度化やさらなる高硬度化が図られる。
非フッ素系の脂環式構造単位(C−3−2)の具体例としては、
(mは0〜3の整数;A、B、CおよびDは同じかまたは異なり、H、F、Cl、COOH、CH2OHまたは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基など)で示されるノルボルネン誘導体、
などの脂環式単量体や、これらに置換基を導入した誘導体などがあげられる。
(C−6)ビニリデンフルオライド系共重合体であって、フッ素含有率が25質量%以上の非晶性のビニリデンフルオライド系コポリマー:
非晶性のビニリデンフルオライド系コポリマーは、ビニリデンフルオライドにこれと共重合可能な他のモノマーの1種または2種以上を共重合したものが好ましい。
他モノマーの代表的な例としては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニルフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、パーフルオロシクロブテン、パーフルオロ(メチルシクロプロピレン)、パーフルオロアレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル類(例えばパーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテルなど)、パーフルオロビニル酢酸またはそのエステル、パーフルオロビニルエーテルスルホン酸、パーフルオロジエン類、エチレン、プロピレン、ビニル酢酸またはそのエステルなどがあげられる。他のモノマーの含有量は特に制限されないが、フッ素含有率が25質量%以上を示す範囲、通常10〜60質量%となるように共重合することが好ましい。
非晶性のビニリデンフルオライド系コポリマーとしては特に、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン(85〜60/15〜40モル%比)コポリマー、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン(84〜20/15〜40/1〜40モル%比)コポリマーが、含フッ素化合物(I)や(A)への溶解性、相溶性に優れる点から好ましい。
ポリマー(C−6)は特に可視域の透明性に優れ、また、硬化物に耐衝撃性をあたえる点で好ましい。硬化物にゴム弾性が要求される場合、ポリマー(C−6)のガラス転移温度は通常室温より低いため、ポリマー(C−6)を用いることにより硬化物全体のガラス転移温度も室温以下にすることができ、好ましい。
また、フッ素含有率25質量%以上の非晶性の含フッ素ポリマー(C)としては、硬化部位をもつものであってもよい。たとえば炭素-炭素二重結合のような含フッ素アクリレートと反応し得る硬化部位を容易に側鎖末端にもたせることが可能で、このような含フッ素アクリレートと反応し得る硬化部位があれば、硬化物が全体として相互ネットワークを形成するため、耐溶剤性、低線膨張係数、耐熱性などのさらに優れた硬化物性能を発現する。
本発明の液状の硬化性組成物の好ましい粘度範囲は、作業性の観点から、10mPa・秒以上、さらには20mPa・秒以上、特に50mPa・秒以上であり、10,000mPa・s以下、さらには8,000mPa・s以下の範囲が好ましい。
また、有機溶媒を実質的に含まないものが好ましいが、粘度を調整する目的などで硬化物の物性に悪影響を与えない範囲で溶剤などを添加してもよい。
また、他の化合物を単なる粘度調整剤として別途加えてもよい。ただしその添加量は、本発明が目的としている効果を損なわない範囲である。
たとえば塗布により光学材料を形成する場合は、作業性および膜厚を薄く均一にするためには、塗布用の組成物の粘度を50〜8,000mPa・sとすることが望ましい。粘度を高くする場合は、非晶性含フッ素ポリマー(C)や多官能含フッ素化合物(I)または(B)の比率を上げればよい。
また、本発明の組成物から得られる硬化物の屈折率を多官能含フッ素化合物(I)、単官能含フッ素アクリレート(A)、含フッ素アクリル系ポリマー(C)および/または他の多官能含フッ素化合物(B)の種類や量を適宜選定することにより調整できる。そのほかに屈折率調整成分として、必要に応じて低分子量化合物を添加してもかまわない。これらの具体例としては、フタル酸ベンジル−n−ブチル(屈折率:1.575)、1−メトキシフェニル−1−フェニルエタン(屈折率:1.571)、安息香酸ベンジル(屈折率:1.568)、ブロモベンゼン(屈折率:1.557)、o−ジクロロベンゼン(屈折率:1.551)、m−ジクロロベンゼン(屈折率:1.543)、1,2’−ジブロモエタン(屈折率:1.538)、3−フェニル−1−プロパノール(屈折率:1.532)、ジフェニルフタル酸(C6H4(COOC6H5)2)、トリフェニルフォスフィン((C6H5)3P)、ジベンジルフォスフェート((C6H5CH2O)2PHO2)、4,4’−ジブロモベンジル、4,4’−ジブロモビフェニル、2,4’−ジブロモアセトフェノン、3’,4’−ジクロロアセトフェノン、3,4−ジクロロアニリン、2,4−ジブロモアニリン、2,6−ジブロモアニリン1,4−ジブロモベンゼンなどの化合物などがあげられる。
本発明の組成物には用途や要求特性に応じて適宜公知の添加剤を使用してもよい。添加剤の代表例としては、たとえばレベリング剤、酸化防止剤などがあげられる。
本発明の第2の発明は、本発明の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物に関する。
硬化物は、硬化性組成物に硬化開始剤(II)や適宜の各種添加剤を加えた後、たとえば成形または基材に塗布し、活性エネルギー線を照射したりまたは加熱して硬化させることにより製造することができる。
活性エネルギー線の照射線量は使用する活性エネルギー線硬化剤の種類、硬化膜の膜厚などによって適宜選定すればよい。加熱温度も使用するラジカル重合開始剤の種類などによって適宜選定すればよい。
本発明の硬化物は、耐熱性および透明性、さらには低屈折率性に優れている。さらには溶剤を使用せずに調製した硬化性含フッ素樹脂組成物を用いて得られる硬化物は、残留溶媒の影響がなく、またマクロボイドの発生が大きく低減化でき、光学材料として使用する場合、光損失を少なくすることができる。
以下、本発明の硬化物の物性および特性を説明する。
分子量は、多官能含フッ素化合物(I)を用いるので、単独でも架橋構造であり、他の成分である(A)、(C)、(B)などを配合するときは、複雑に反応(架橋、グラフト、IPN構造)しているため、特定できない。
ガラス転移温度Tgは、その組成により幅広い範囲で選択できるが、100℃以上にすることが好ましい。さらに、各成分を選択することにより、Tgを120℃以上、さらには130℃以上、またさらに150℃以上にすることも可能である。Tgを高くするには、多官能含フッ素化合物(I)成分を増やしたり、含フッ素ポリマー(C)成分に環構造を導入したりすればよい。
熱分解温度Tdは180℃以上であり優れた耐熱性を有している。さらに、各成分を選択することにより、Tdを200℃以上、さらには230℃以上にすることも可能である。
本発明の硬化物は、多官能含フッ素化合物(I)を使用しているため、全体として非晶性となる。硬化物が非晶性の場合は、透明性に優れ、光導波路、光ファイバーなどの光伝送媒体における伝送損失を低減できる点で有利である。
本発明の硬化物は、その屈折率を1.44以下にすることが可能である。屈折率をさらに下げる、たとえば1.42以下にすることは全体のフッ素含有率を増加させることで実現できる。こういった低屈折率性は光導波路、光ファイバー用のクラッド材、反射防止材として有利である。
また本発明の硬化物は可視領域の光に対して透明性が高いものであり、特に650nm(さらには850nm)の波長の光に対して透明性が高い。この観点から、本発明の硬化物を光学材料として用いる場合、650nm(または850nm)波長光の光透過率が90%以上、さらには92%以上、特に94%以上のものを提供できる。
またさらに、本発明の硬化物は近赤外領域の光に対して透明性が高いものであり、特に1310nm(さらには1550nm)の波長の光に対して透明性が高い。この観点から、本発明の硬化物を光学材料として用いる場合は、1310nm(または1550nm)波長光の光透過率が90%以上、さらには92%以上、特に94%以上のものを提供できる。
こうした光学的な透明性を高めるためには、フッ素含有率が40質量%以上、さらには45質量%以上、特に50質量%以上であることが好ましい。上限は、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたときである。
本発明の第3の発明は、硬化性組成物の硬化物からなる光学材料に関する。また、コア部とクラッド部からなる光導波路であって、コア部およびクラッド部の少なくとも一方が、本発明の硬化性組成物の硬化物からなることを特徴とする光導波路にも関する。
まず、光学材料に関して説明する。
本発明の硬化物は上記のとおり透明で耐熱性が高く、またフッ素含有率が高い。そのため低屈折率の光学材料になる。たとえば光伝送用媒体として有用である。特にコア材が石英、もしくは光学ガラスであるプラスチッククラッド光学ファイバーのクラッド材料、コア材がプラスチックである全プラスチック光学ファイバーのクラッド材料、反射防止コーテイング材料、レンズ材料、光導波路材料、プリズム材料、光学窓材料、光記憶ディスク材料、非線形型光素子、ホログラム材料、フォトリフラクティブ材料などといった光学材料、また、封止部材用材料、さらにはそれらの材料を硬化して得られる硬化物を含む光デバイスなどに使用可能である。
封止部材用材料としては、たとえば発光ダイオード(LED)、EL素子、非線形光学素子、フォトリフラクティブ素子、フォトニクス結晶などの発光素子や受光素子や波長変換素子、光分岐挿入素子、光クロスコネクト素子、モジュレーターなどの光機能素子のパッケージ(封入)、表面実装などに用いられる材料などがあげられる。
本発明の材料で封止された光デバイスは、封止部分が含フッ素ポリマーに由来する優れた耐湿性に加え、ポリマー成分を有するため重合硬化に基づく硬化収縮が少なく、極めて優れた耐湿信頼性を有している。また、使用される波長帯域での優れた透明性と耐熱性を兼ね備えた材料でもある。
これらの封止された光素子は種々の場所に使用されるが、非限定的な例示としては、ハイマウントストップランプやメーターパネル、携帯電話のバックライト、各種電気製品のリモートコントロール装置の光源などといった発光素子;カメラのオートフォーカス、CD/DVD用光ピックアップ用受光素子などがあげられる。
本発明の材料を用いた封止部材用材料には、必要に応じて光酸化剤、さらに硬化促進剤、染料、変性剤、劣化防止剤、離型剤などの添加剤を配合し、ドライブレンド法、さらに溶融ブレンド法などを組み合わせて常法により混合・混練したのち粉砕し、必要に応じて打錠することにより製造することができる。
封止部材用材料による封止は常法により行なうことができ、トランスファー成形法などの公知の成形法により封止すべき箇所に充填し成形することにより実施できる。
つぎに光導波路に関して説明する。光導波路用部材は、光導波路型素子を構成する部材であり、基板上に形成される。ここで、光導波路型素子とは、光機能素子間を光導波路で接続したもので、光導波路部はコア部とクラッド部から構成される。一方、光機能素子とは光通信信号に対し、増幅、波長変換、光合分波、波長選択等の作用を示す素子で、形態も様々ではあるが、光合分波や光増幅のように導波路型の機能素子がある。その場合は、機能素子もコア部とクラッド部より形成されている。本発明の光学材料はいずれのコア部、クラッド部にも用いることが可能で、コア部のみ、またはクラッド部のみに本発明の光学材料を用いてもよい。また、種々の機能性化合物、たとえば非線形光学材料や蛍光発光性の機能性有機色素、フォトリフラクティブ材料などを本発明の光学材料に含有させて、導波路型の機能素子のコア材として用いることも可能である。さらに、コア部とクラッド部との両者が硬化性含フッ素樹脂組成物を硬化させたものであることがより好ましい。
本発明によれば、硬化性組成物の硬化物を含む光導波路型素子をも提供できる。
光導波路型素子がコア部とクラッド部とを有する場合、コア部の屈折率はクラッド部のそれより高くなければならないが、コア部とクラッド部との屈折率の差は、0.003以上であることが好ましく、0.01以上であることがさらに好ましい。本発明の材料は幅広く屈折率の制御が可能なため、材料の選択範囲は広い。
光導波路素子において、コア部の幅は1〜200μmが好ましく、さらに好ましくは5〜50μmである。またコア部の高さは、5〜50μmが好ましい。コア部の幅および高さの精度は、平均値の5%以下が好ましく、さらに好ましくは1%以下である。
図1に、典型的な光導波路型素子の構造を概略断面図で例示する。1は基板、2はコア部、4および5はクラッド部である。かかる光導波路型素子は、光機能素子間を接続するために使用され、一方の光機能素子の端末から送出された光は、光導波路型素子のコア部2内を、例えばコア部2とクラッド部4、5との界面で全反射を繰り返しながら、他方の光機能素子端末へと伝播される。光導波路型素子の形式は、平面型、ストリップ型、リッジ型、埋込み型等の適宜の形式をとることができる。
光導波路型素子の基板材料は、特に限定されるものではなく、金属、半導体材料、セラミック、ガラス、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の適宜の材料を使用することができる。
本発明の材料を用いる光導波路型素子の製造工程の一例を図2に示す。光導波路型素子は、フォトリソグラフィー技術を利用して製造される。まず図2(a)に示すように、予め基板1上にクラッド部4を形成し、コア部を形成する本発明の光学材料の膜3を形成する。これらのクラッド部4、コア部を形成する光導波路用材料の膜の形成に際しては、それらの均一な液状組成物を回転塗布、流延塗布等の塗布手段で塗布する方法、金型を用いる方法がある。前記の組成物は、好ましくは、例えば孔径0.2μm程度のフィルターで濾過して調製される。
前記硬化性組成物の好ましい粘度は、一般に10〜10,000mPa・s、特に好ましくは20〜10,000mPa・sであり、さらに好ましくは50〜8,000mPa・sである。ここで粘度の調整は前述のとおり、ポリマー成分(C−1)、(C)で調整を行なう。
ついで、図2(b)に示すように、硬化性組成物に対して、所定パターン形状のマスク6を介して活性エネルギー線7を照射する。その後、必要に応じて予備焼成を行う。光硬化すると硬化性組成物が分子間で重合する。その結果、樹脂硬度が高くなり、機械的強度が向上したり、耐熱性が向上する。多官能含フッ素化合物を用いるので、硬化前には溶解していた溶剤に対して不溶となるだけでなく、他の数多くの種類の溶剤に対して不溶となる。すなわち、フォトレジスト材料として機能する。ついで、未硬化の硬化性組成物を適当な溶剤で溶解、留去することで、図2(c)に示すように、所定パターン形状のコア部2を形成する。光導波路型素子は、以上のようにして形成されたコア部2のみを有する形態でそのまま使用することもできるが、コア部2の形成後、図2(d)に示すように、さらにクラッド部5を形成することが好ましい。このクラッド部5は、その材料溶液を回転塗布、流延塗布、ロール塗布等により塗布することにより形成することが好ましく、特に回転塗布が好ましい。またクラッド部5の均一な液状組成物も、好ましくは、例えば孔径0.2μm程度のフィルターで濾過して調製される。
硬化方法は適宜公知の方法を採用すればよい。また前記のように光硬化する場合はプロセスが簡単になり、有利である。また、導波路の形成方法としては、上記の方法以外にも、最近、硬化性組成物を用いる新しい成形方法が提案されている。例えば、微細金型を用いて光導波路を作成するスタンパ成形方法、エンボス加工、シリコーンゴムの鋳型を介するナノインプリント方法である。これらのいずれの成形においても、本発明の硬化性組成物は適用できる。
本発明の硬化物は、光学用途に特に好適であるが、そのほか硬化して得られる有機ポリマーの特性を活用して、光学用途以外の用途、たとえば接着剤、塗料、各種成形材料、歯科用材料などを製造する材料としても有用である。
したがって、本発明の硬化性組成物には、光学用途用の各種添加剤のほか、顔料、充填剤、酸化チタンなどの光触媒などを配合することができる。
本発明の硬化性組成物には、さらに希土類金属化合物(III)を加えて、光機能性を有する光学材料を与える硬化性組成物とすることもできる。
希土類金属化合物(III)に用いられる希土類元素は、周期律表においてアクチニウムを除くスカンジニウム族元素とランタノイドの17種の元素から選ばれる少なくとも1種であり、なかでも、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、プラセオジウム(Pr)、ホルミウム(Ho)、ネオジウム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)などが好ましく挙げられる。
これらのなかから、発光、光増幅および波長変換などの用途に応じ、また必要とする光の種類(波長)に応じて用いる希土類元素の種類が選択される。
例えば、波長1300〜1550nmの近赤外光を用いた光通信の光増幅用途では、近赤外領域の蛍光発生能を有する希土類元素から選択するのが好ましい。
具体的には、プラセオジウム(蛍光波長:1300nm)、エルビウム(蛍光波長:1550nm)などの希土類元素があげられ、波長850nmの近赤外光を用いた光通信の光増幅用途では、ネオジウム(蛍光波長:850nm)が好ましい。波長650nmの可視光を用いた光通信の光増幅用途では、ユーロピウム(蛍光波長:615nm)などが好ましい。
発光素子および波長変換材料としての用途では、それぞれ必要とする波長の光を蛍光として発生する希土類元素が選択される。
例えば、発光用途では、緑色発光のテルビウム(蛍光波長:532nm)、赤色発光のユーロピウム(蛍光波長:615nm)などから選択するのが好ましい。
本発明の光機能性光学材料中における希土類金属化合物(III)とは、希土類金属錯体(配位子と錯体を形成している状態)(III-1)、無機蛍光体(III-2)、希土類金属イオン(通常のイオン結合で存在した状態)(III-3)のことであり、なかでも希土類金属錯体、無機蛍光体が好ましい。なかでも特に、希土類金属錯体が好ましい。
以下、各希土類金属化合物について説明する。
(III-1)希土類金属錯体
希土類金属錯体はそれ自体の発光(増幅)効率が高く、また本発明で用いる多官能含フッ素化合物(I)との分散性、相溶性に優れる点で好ましい。
つまり、通常、希土類金属錯体は、希土類元素に1つ以上の配位子が配位結合したものであり、希土類金属イオンと比べ、希土類元素の周りを配位子がとり囲んでいる。そのため励起した希土類元素が発光する過程で、その蓄えられた希土類元素のエネルギーが周りのマトリックス分子(ポリマー分子など)へ逃げるのを抑えられ、その結果、希土類金属からの発光強度・発光効率が増大するものである。
希土類金属錯体の配位子は、π電子を有する原子(例えばヘテロ原子など)や不飽和結合などを含むものであれば無機系、有機系のいずれのものであってもよいが、炭素−炭素二重結合、炭素−ヘテロ原子間の二重結合、ヘテロ原子−ヘテロ原子間二重結合を有する有機系化合物であることが、特に、本発明に用いる多官能含フッ素化合物(I)への分散性や相溶性に優れる点で好ましい。
さらには、配位子自体アニオンを形成し、希土類金属イオン(カチオン)と配位結合とイオン結合を形成する電荷補償タイプの配位子を含むことが希土類金属錯体の安定性、耐熱性、耐紫外線性に優れる点で好ましい。
電荷補償タイプの配位子は具体的には、例えば、式(b1):
X11は水素原子、重水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、および水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基から選ばれるもの)で示される構造単位を有するもの、
式(b2):
(式中、Y1、Y2は式(b1)と同じ)で示される構造単位を有するもの、
式(b3):
[式中、Y3はO、SまたはN−R′(R′は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、および水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基から選ばれるもの)から選ばれるもの;Y4は、
(式中、R1′は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、および水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基から選ばれるものであって、またさらにR1′はC=N中の炭素原子を伴って環構造を形成していてもよい;R2′、R3′は同じかまたは異なり、炭素数1〜20の炭化水素基および水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基から選ばれるものであって、またさらにR2′、R3′はリン原子を伴って環構造を形成してもよい)から選ばれる少なくとも1種]で示される構造単位を有するものなどが挙げれる。
式(b1)の構造を有する配位子としては具体的には、たとえばつぎのものがあげられる。
(b1−1)β−ジケトン構造を有する配位子
具体的には、式(b1−1):
(式中、Rb1、Rb2は同じかまたは異なり、炭素数1〜20の炭化水素基、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基、および複素環構造を有する炭素数1〜20の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種;X11は前記式(b1)と同じ)で示される配位子であり、これらは、発光効率、増幅効率、形成した錯体と多官能含フッ素化合物(I)との相溶性が良好な点で好ましい。
具体的には、
が例示でき、なかでも
が好ましく挙げられる。
(b1−2)β−ジスルフォニル構造を有する配位子
具体的には、式(b1−2):
(式中、Rb1、Rb2は前記式(b1−1)と同じ;X11は前記式(b1)と同じ)で示される配位子であり、これらは発光効率、増幅効率、形成した錯体と多官能含フッ素化合物(I)との相溶性が良好な点で好ましい。
具体的には、
が例示でき、なかでも
が好ましく挙げられる。
また、式(b2)の構造を有する配位子としては、具体的には、つぎのものがあげられる。
(b2−1)カルボニルイミド構造を有する配位子
具体的には、式(b2−1):
(式中、Rb1、Rb2は前記式(b1−1)と同じ)で示される配位子であり、これらは、発光効率、増幅効率、形成した錯体と多官能含フッ素化合物(I)との相溶性が良好な点で好ましい。
具体的には、
が例示でき、なかでも
が好ましく挙げられる。
(b2−2)スルホンイミド構造を有する配位子
具体的には、式(b2−2):
(式中、Rb1、Rb2は前記式(b2−1)と同じ)で示される配位子であり、これらは発光効率、増幅効率、形成した錯体と多官能含フッ素化合物(I)との相溶性が良好な点で好ましい。
具体的には、
が例示でき、なかでも
が好ましく挙げられる。
式(b1−1)、(b1−2)、(b2−1)および(b2−2)において、Rb1、Rb2はなかでも、少なくとも一方が水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基であることが発光(増幅)効率の点で好ましい。
さらに式(b1−1)、(b1−2)において、X11はなかでも、重水素原子またはフッ素原子であることが発光(増幅)効率の点で好ましい。
また、式(b3)の構造を有する配位子としては、具体的には、つぎのものがあげられる。
(b3−1)式(b3−1):
(式中、Rb3は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基、および複素環構造を有する炭素数1〜20の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種;Rb4は水素原子、エーテル結合を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなるエーテル結合を有していてもよい含フッ素炭化水素基;Y3は前記(b3)と同じ)で示される配位子であり、これらは発光効率、増幅効率、形成した錯体と多官能含フッ素化合物(I)との相溶性が良好な点で好ましい。
具体的には、
が例示でき、なかでも
が好ましく挙げられる。
(b3−2)式(b3−2):
(式中、Rb3およびRb4は前記式(b3−1)と同じ;Y3は前記(b3)と同じ)で示される配位子であり、これらは発光効率、増幅効率、形成した錯体と多官能含フッ素化合物(I)との相溶性が良好な点で好ましい。
具体的には、
が例示でき、なかでも
が好ましく挙げられる。
(b3−3)式(b3−3):
(式中、Rb3およびRb4は前記式(b3−1)と同じ;Y3、R2′は前記(b3)と同じ)で示される配位子であり、これらは発光効率、増幅効率、形成した錯体と多官能含フッ素化合物(I)との相溶性が良好な点で好ましい。
具体的には、
が例示でき、なかでも
が好ましく挙げられる。
式(b3)、(b3−1)、(b3−2)および(b3−3)において、Rb3は、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基であることが発光(増幅)効率の点で好ましい。
式(b3)および(b3−3)において、R1′、R2′、R3′は、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されてなる炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基であることが発光(増幅)効率の点で好ましい。
本発明の光機能性光学材料に用いる希土類金属錯体は、さらに電荷(負の電荷)を有さない電荷非補償型の配位子を導入したものであってもよい。
電荷非補償型の配位子とは、配位子全体で電荷を有さず、希土類金属の空のd起動に配位可能なπ電子対を有するもので、
などの部位を有する化合物から通常選択される。
具体的には、
などが挙げられ、好ましくは
などが挙げられる。
電荷非補償型の配位子において、一部にフッ素原子を導入したものが発光(増幅)効率の点で好ましい。
本発明に用いる希土類金属錯体はプラス三価の希土類金属イオンに、前述の電荷補償型または電荷非補償型の配位子から選ばれる少なくとも1種の配位子が配位結合したものであればよく、好ましくは3または4個の配位子が配位結合したものである。希土類金属錯体において配位子は、電荷補償型または電荷非補償型のいずれか一方のみで構成されていても、電荷補償型と電荷非補償型の両方を含んでいてもよい。
なかでも、電荷補償型の配位子を少なくとも1個含むものが好ましく、特には3個の電荷補償型の配位子が配位結合したものが好ましい。さらに必要に応じて4個目の配位子として電荷非補償型の配位子を導入したものであってもよい。これら電荷補償型の配位子を含む錯体は、それ自体安定性が高く発光(増幅)効率に優れ、さらには本発明に用いる多官能含フッ素化合物(I)への分散性や相溶性に優れる点で好ましい。
その結果、本発明の光機能性光学材料において、発光(増幅)強度、発光(増幅)効率において、特に効果的に作用する点で好ましい。
(III-2)無機蛍光体
無機蛍光体は、無機塩中に希土類金属が付活されたものであり、耐熱性が高い点で好ましい。
無機蛍光体の具体例としては、
(1)YAG(黄色発光材料)
具体的には(YaGdl−a)(AlbGal−b)O12Ce3+など
(2)YOS(赤色発光材料)
具体的にはY2O2S:Erなど
(3)BAM:Eu(青色発光材料)
具体的には(Ba,Mg)Al10O17:Erなど
(4)SCA(青色発光材料)
具体的には(Sr、CaBaMg)10(PO4)6Cl2:Euなど
(5)GN4(緑色発光材料)
ZnS:Cu,Alなど
(6)BAM:Eu,Mn(緑色発光材料)
具体的には(Ba,Mg)Al10O17:Eu,Mnなど
の蛍光体があげられる。
(III-3)希土類金属イオン
本発明で用いる希土類金属化合物(III)において、希土類金属イオンは通常、希土類金属イオンとイオン結合できる対アニオンとの塩の形態で混合される。希土類金属陽イオンは価数には制限はなく、通常2価または3価あるいは4価の金属カチオンの塩として用いられる。
希土類金属塩としては、前記例示の希土類元素の塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物;硝酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの塩などが挙げられる。また、有機酸の塩、有機スルホン酸の塩など、希土類金属の有機塩であってもよい。また、複硝酸塩、複硫酸塩、キレート化物も使用可能である。
具体的な希土類金属塩としては、塩化プラセオジウム、臭化プラセオジウム、ヨウ化プラセオジウム、硝酸プラセオジウム、過塩素酸プラセオジウム、臭素酸プラセオジウム、酢酸プラセオジウム、硫酸プラセオジウム、リン酸プラセオジウム等のプラセオジウム塩;塩化ネオジウム、臭化ネオジウム、ヨウ化ネオジウム、硝酸ネオジウム、過塩素酸ネオジウム、臭素酸ネオジウム、酢酸ネオジウム、硫酸ネオジウム、リン酸ネオジウム等のネオジウム塩;塩化ユーロピウム、臭化ユーロピウム、ヨウ化ユーロピウム、硝酸ユーロピウム、過塩素酸ユーロピウム、臭素酸ユーロピウム、酢酸ユーロピウム、硫酸ユーロピウム、リン酸ユーロピウム等のユーロピウム塩;塩化エルビウム、臭化エルビウム、ヨウ化エルビウム、硝酸エルビウム、過塩素酸エルビウム、臭素酸エルビウム、酢酸エルビウム、硫酸エルビウム、リン酸エルビウム等のエルビウム塩;塩化テルビウム、臭化テルビウム、ヨウ化テルビウム、硝酸テルビウム、過塩素酸テルビウム、臭素酸テルビウム、酢酸テルビウム、硫酸テルビウム、リン酸テルビウム等のテルビウム塩;塩化サマリウム、臭化サマリウム、ヨウ化サマリウム、硝酸サマリウム、過塩素酸サマリウム、臭素酸サマリウム、酢酸サマリウム、硫酸サマリウム、リン酸サマリウム等のサマリウム塩などをあげることができる。
本発明の光機能性光学材料において、多官能含フッ素化合物(I)と希土類金属化合物(III)の存在比率は(I)が1〜99.99質量%、(III)0.01〜99質量%(イオンとしての質量%。希土類金属化合物(III)含有量に関しては、以下同様)であり、使用する希土類金属化合物(III)および多官能含フッ素化合物(I)の種類、用途、目的などによって適宜選択される。
光増幅器や光導波路等の光通信用部品や発光体として利用する場合には、この希土類金属化合物の含有量は、蛍光強度の向上の観点から0.01〜20質量%の範囲で選ぶのが好ましく、さらに好ましくは0.1〜15質量%、最も好ましくは0.5〜10質量%である。
希土類金属化合物(III)の含有量が少なすぎると目的とする光増幅作用、発光強度、波長変換効果などの目的の性能が発揮されなくなる。
一方、希土類金属化合物(III)の含有量が多すぎると、希土類金属化合物(III)とマトリックスポリマーを形成する多官能含フッ素化合物(I)との分散性、相溶性が悪くなるため好ましくない。
なお、希土類金属イオンの含有量は、約600℃の温度の電気炉中で有機成分を燃焼してその灰分を定量するか、または蛍光X線分析などの物理化学的手法により定量的に測定することができる。
本発明の光機能性光学材料には、前述の多官能含フッ素化合物(I)と希土類金属化合物(III)のほかに、必要に応じて種々の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、たとえばレベリング剤、粘度調整剤、光安定剤、酸化防止剤、水分吸収剤、顔料、染料、補強剤などがあげられる。
本発明の多官能含フッ素化合物(I)と希土類金属化合物(III)からなる光機能性光学材料を製造する方法には特に制限はなく、例えば多官能含フッ素化合物(I)と、要すれば式(2)の単官能アクリレートに前記希土類金属化合物(III)を混合または溶解した後、ラジカル重合法やアニオン重合法等の公知の重合法で重合(硬化)する方法があげられる。
より詳しくは、多官能含フッ素化合物(I)と、要すれば前記式(2)の単官能アクリレートおよび任意の単量体(n)と前記希土類金属化合物(III)からなる組成物を一旦調製し、必要に応じて重合開始剤を添加した重合用組成物を重合(硬化)することで、光機能性光学材料を製造する方法である。
単量体(n)としては、前記式(1)および式(2)以外のアクリレート系単量体、(メタ)アクリル酸類、含フッ素(メタ)アクリル酸類、マレイン酸誘導体などの単量体由来の構造単位から選ばれるのが好ましい。アクリレート系単量体としては、直鎖または分枝状の炭素数1〜20のアルキル基を側鎖に有する(メタ)アクリレート系単量体、具体的にはメチルメタクリレート(MMA)、メチルアクリレート(MA)、エチルメタアクリレート(EMA)、エチルアクリレート(EA)、イソプロピルメタアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルメタアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクタデシルメタアクリレート、オクタデシルアクリレートなどが好ましく挙げられる。
重合は、通常、ラジカル重合法が、重合反応性、生産性が良好で、また多官能含フッ素化合物(I)中の単量体組成の均質性が高い点で好ましい。
ラジカル重合は重合開始剤を用いない熱ラジカル重合法、ラジカル重合開始剤を使用した熱重合法、光ラジカル発生剤を使用した光重合法などが利用でき、なかでもラジカル重合開始剤を使用した熱重合法、光ラジカル発生剤を使用した光重合法が良好な重合反応性を有する点で好ましい。さらに光ラジカル発生剤を使用した光重合法は、上記(1)の光機能性光学材料を製造する際、特に連続加工性に優れる点で好ましい。
本発明の光機能性光学材料は、前述の光増幅素子および発光素子のほかに、たとえば照明器具のカバー材、液晶ディスプレイのバックライト、透明意匠ケース、表示板、自動車用部品、波長変換フィルターなどに例示されるシート状発光体、X線イメージングプレート、ファイバレーザー、感光性インク、センサーなどとして有用である。
そして、本発明の光機能性光学材料は、光機能性を備えた封止部材用材料および、それらからなる光デバイスとしても使用できる。
本発明の光機能性光学材料で封止された光デバイスは、封止部分が含フッ素ポリマーに由来する優れた防湿性、耐湿性をもつため、極めて優れた防湿、耐湿信頼性を有している。また、本発明の光機能性光学材料は紫外から近赤外の広範囲にわたって透明性に優れており、光学用途での封止部材に特に有用である。さらに、本発明の光機能性を併せもつため、通常の封止機能だけではなく、例えば、波長変換機能や光増幅機能といった付加価値を加えることができる。
本発明における光機能性封止部材の使用形態としては、たとえば発光ダイオード(LED)、EL素子、非線形光学素子、フォトリフラクティブ素子、フォトニクス結晶などの発光素子や受光素子や波長変換素子、光分岐挿入素子、光クロスコネクト素子、モジュレーターなどの光機能素子のパッケージ(封入)、表面実装などが例示できる。また、深紫外線顕微鏡のレンズなどの光学部材用封止材(または充填材)などもあげられる。封止された光素子は種々の場所に使用されるが、非限定的な例示としては、ハイマウントストップランプやメーターパネル、携帯電話のバックライト、各種電気製品のリモートコントロール装置の光源などの発光素子;カメラのオートフォーカス、CD/DVD用光ピックアップ用受光素子などがあげられる。
本発明の第4の発明は、新規多官能含フッ素化合物に関する。
かかる多官能含フッ素化合物は、式(3):
(式中、X3は同じかまたは異なり、H、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;nは2〜7の整数;R7は同じかまたは異なり、結合手または炭素数1〜50の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されていてもよい2価の有機基;R8は炭素数1〜50の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されていてもよいn価の有機基であって、ヘテロ原子を有していてもよい芳香族炭化水素構造の部位またはヘテロ原子を有していてもよい脂肪族環状炭化水素構造の部位から選ばれる少なくとも1種の部位を含む有機基;ただし、R7の少なくとも1つは、式(4):
(式中、Rf3は炭素数1〜19の含フッ素アルキル基;z、xおよびyは同じかまたは異なり、0または1)で表される炭素数2〜20の含フッ素有機基である)で表される多官能含フッ素化合物(I−1)である。
式(3)で表される多官能含フッ素化合物(I−1)としては、さらに
(1)フッ素含有率が40質量%以上、
(2)35℃での粘度が100,000mPa・秒以下、および
(3)式(3)で表される化合物の硬化物のガラス転移温度が70℃以上
である多官能含フッ素化合物(I−1)が好ましい。
この多官能含フッ素化合物(I−1)の合成はたとえば、つぎの2段階反応によって行なうことができる。
第1段階(ジオール合成)
含フッ素多価アルコールと、含フッ素エポキシ化合物の1種または2種以上とを酸条件または塩基条件下に反応させて、式(10):
R8−(R7OH)n (10)
(式中、R7、R8およびnは式(3)と同じ)で表される含フッ素多価アルコールを得る。
この反応は、溶媒を用いるか用いないで、触媒の存在下または不存在下に、反応温度−100〜200℃にて、0.1〜600時間行なうことが好ましい。
溶媒を用いる場合、酸条件で用いる溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、アセトニトリル、二酸化炭素、二酸化硫黄、酢酸エチル、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、クロロフルオロカーボン(CFC)、ペルフルオロカーボン(PFC)などがあげられる。触媒としては、たとえば硫酸、燐酸、過塩素酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、四塩化チタン、二塩化マグネシウム、二塩化スズ、四塩化スズ、二塩化亜鉛、四塩化珪素、三塩化メチルシラン、三塩化エチルシラン、塩化トリメチルシラン、塩化トリメトキシシラン、塩化トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、五塩化アンチモン、五フッ化アンチモン、二塩化エチルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウムなどがあげられる。塩基条件で用いる溶媒としては、たとえばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、オクタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、ジメチルスルホキシド、スルホランジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの単一溶媒、またヘキサン−水、ペンタン−水、ヘプタン−水、オクタン−水、ベンゼン−水、トルエン−水、ニトロベンゼン−水、ベンゾニトリル−水、ニトロメタン−水、アセトニトリル−水、酢酸エチル−水、ハイドロフルオロカーボン(HFC)−水、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)−水、クロロフルオロカーボン(CFC)−水、ペルフルオロカーボン(PFC)−水などの非混合性溶媒などがあげられ、反応層と生成物層の溶解度を制御するために、これらの溶媒にジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、オクタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、スルホランを添加しても良い。二層系溶媒を用いるときには、相間移動触媒を用いることができ、触媒としては、たとえば塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロジェンスルファート、テトラメチルアンモニウムアセタート、テトラメチルアンモニウムホスファート、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロジェンスルファート、テトラエチルアンモニウムアセタート、テトラエチルアンモニウムホスファート、塩化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロジェンスルファート、テトラプロピルアンモニウムアセタート、テトラプロピルアンモニウムホスファート、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロジェンスルファート、テトラブチルアンモニウムアセタート、テトラブチルアンモニウムホスファート、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロジェンスルファート、ベンジルトリメチルアンモニウムアセタート、ベンジルトリメチルアンモニウムホスファート、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、臭化ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロジェンスルファート、ベンジルトリエチルアンモニウムアセタート、ベンジルトリエチルアンモニウムホスファート、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、臭化ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリブチルアンモニウムヒドロジェンスルファート、ベンジルトリブチルアンモニウムアセタート、ベンジルトリブチルアンモニウムホスファート、塩化フェニルトリメチルアンモニウム、臭化フェニルトリメチルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロジェンスルファート、フェニルトリメチルアンモニウムアセタート、フェニルトリメチルアンモニウムホスファート、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、臭化トリオクチルメチルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリオクチルメチルアンモニウムヒドロジェンスルファート、トリオクチルメチルアンモニウムアセタート、トリオクチルメチルアンモニウムホスファート、塩化トリオクチルエチルアンモニウム、臭化トリオクチルエチルアンモニウム、トリオクチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリオクチルエチルアンモニウムヒドロジェンスルファート、トリオクチルエチルアンモニウムアセタート、トリオクチルエチルアンモニウムホスファートなどが好適である。この反応において塩基は等量もしくは触媒量用いることができ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムiso−プロポキシド、ナトリウムn−プロポキシド、ナトリウムt−ブトキシド、ナトリウムn−ブトキシド、ナトリウムsec−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムiso−プロポキシド、カリウムn−プロポキシド、カリウムt−ブトキシド、カリウムn−ブトキシド、カリウムsec−ブトキシド、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムiso−プロポキシド、リチウムn−プロポキシド、リチウムt−ブトキシド、リチウムn−ブトキシド、リチウムsec−ブトキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム、ナフタレンナトリウム、メチルリチウム、エチルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヨージド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムヨージド、ベンジルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムヨージド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムヨージドなどが用いられる。
第2段階(エステル化)
得られた含フッ素多価アルコール(10)と式(11):
(式中、R17はH、Clなど;X3は式(3)と同じ)で表されるアクリル系化合物とを酸条件または塩基条件下で反応させることにより、式(3)で表される多官能含フッ素化合物を合成できる。
この後段の反応は、溶媒を用いるか用いないで、塩基の存在下または不存在下に、反応温度−100〜200℃にて、0.1〜600時間行なうことが好ましい。
溶媒としては、第1段反応で例示したものが採用できる。
また、塩基としては、たとえばトリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリベンジルアミン、ジベンジルメチルアミン、ジベンジルエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピリジン、N−メチルピリジン、イミダゾールなどが例示できる。
かかる新規な多官能含フッ素化合物(I−1)は、硬化開始剤(II)と共に硬化性組成物を形成し得る。さらに要すれば、単官能含フッ素アクリレート、好ましくは式(2)で示される単官能含フッ素アクリレートを配合してもよい。
この硬化性組成物は、第1の発明の硬化性組成物と同様に、溶剤を使用しなくても高耐熱性でかつ透明性の高い高フッ素含有率の光学材料、たとえば光導波路を与え得る硬化性組成物を提供できるほか、前述の各種の効果が奏される。
したがって、第1の発明の硬化性組成物、第2の発明の硬化物および第3の発明の各種光学材料や光導波路に関する記載が第5の発明の硬化性組成物、それを用いた硬化物、各種光学材料および光導波路にも適用される。
なお、本明細書における各種の物性および特性は、以下の方法で測定したものである。
(1)重合体組成(1H−NMR、19F−NMR、IR)
NMR測定装置:BRUKER社製
1H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
IR測定装置:PERKIN ELMER社製フーリエ変換赤外分光光度計1760X
測定条件:室温にて測定
(2)フッ素含有率(F)
酸素フラスコ燃焼法により試料10mgを燃焼し、分解ガスを脱イオン水20mlに吸収させ、吸収液中のフッ素イオン濃度をフッ素選択電極法(フッ素イオンメータ。オリオン社製の901型)で測定することによって求めた値を採用する(質量%)。
(3)粘度(35℃)
JIS K7117−2に準拠している東機産業(株)製のE型粘度計を用い、35℃にて粘度を測定する(mPa・秒)。
(4)ガラス転移温度(Tg)
DSC(示差走査熱量計)を用いて、以下の製法で製造した硬化物を1st runを昇温速度10℃/分で200℃まで上げ、200℃で1分間維持したのち降温速度10℃/分で25℃まで冷却し、ついで昇温速度10℃/分で得られる2nd runの吸熱曲線の中間点を採用する。
(硬化物の製造)
多官能含フッ素化合物に硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを0.5質量%加えて硬化性組成物を調製する。ついでアルミ箔上にアプリケーターを用いて膜厚が約100μmとなるように塗布し、被膜に高圧水銀灯を用い、1500mJ/cm2Uの強度で紫外線を照射したのち、アルミ箔を希塩酸で溶かし、硬化フィルムとする。この硬化フィルムをさらに70℃の電気炉内で6時間ポストキュアさせた後、完全に硬化させて完全硬化物を得る(完全硬化は、IR分析によるC=Cピーク強度が5以下となることで確認する)。
(5)熱分解温度(Td)
熱天秤(TGA)を用い、室温下に昇温速度10℃/分で室温から加熱し、重量が0.1質量%減少したときの温度を採用する。
(6)非晶性
非晶性とはTgの測定に用いたDSC分析において、2nd runで昇温速度10℃/分の条件で測定した際に実質的に融解に基づく吸熱ピークが観測されないか、もしくは融解熱量が1J/g以下である性質を示す。
(7)屈折率(n)
ナトリウムD線を光源として25℃においてアッベ屈折率計を用いて測定した値を採用する。
(8)光透過率(可視光領域)
自記分光光度計((株)日立製作所製のU−3310(商品名))を用いて波長300〜800nmにおける約100μm厚のサンプル(硬化フィルム)の分光透過率曲線を測定した値を採用する。
(9)光透過率(近赤外領域)
光透過率は、微弱吸収スペクトル測定装置(日本分光(株)製のMAC−1(商品名))を用いて測定した値を採用する。
(10)Eu錯体含有サンプルの発光強度の測定
積分球をセットした蛍光分光光度計(HITACHI社製 Fluorescence Spectrophotometer F−4010)を用い、各サンプルの発光スペクトルを測定し、特定波長のピーク面積を比較し相対発光強度を測定する。
(11)Er錯体含有サンプルの発光強度の測定
図3に示す光学系により測定する。図3において、10は被測定サンプルであり、積分球11内に配置されている。この積分球11に波長可変レーザー発生装置12で発生させたレーザー光(1480nm)を光ファイバー13により積分球11に導き、サンプルから発生する1550nmの発光強度を光パワーメーター14で測定する。
使用した波長可変レーザー発生装置は、Agilent・Technology社製の81480Aであり、光パワーメーターはアンリツ(株)製のML9001A、MA9711Aであり、積分球はLabsphere社製のIS−040−SLである。
つぎに本発明を実施例にしたがって具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
合成参考例1(ジオールAの合成)
500mlフラスコに1,3−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロピル)ベンゼン(41.0g、100mmol)と3−ペルフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン(113g、300mmol)を入れ、トルエン(100g)に溶解させた。次いで5N−水酸化ナトリウム水溶液(10ml、50mmol)、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(0.92g、5.0mmol)、トリグライム(50g)を順次加えた後、100℃の温度で120時間撹拌した。
反応液を1N−塩酸水溶液(500ml)にあけ、有機相を分離し、C3HCl2F5(HCFC225)を用い抽出、MgSO4で乾燥後、溶媒を留去した。
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(MERCK社製:シリカゲル60(0.063−0.200mm)(商品名))を用い、ヘキサン−酢酸エチル(10:1)混合溶媒で展開し精製を行い、反応生成物を単離した(92.4g、80mmol、収率80%)。
この反応生成物を19F−NMRおよび1H−NMRで調べ、式:
で示されるジオール化合物(以下、「ジオールA」という)であることを確認した。
19F-NMR (CD3COCD3): δ -69.5 (3F), -69.8 (3F), -70.0 (3F), -73.8 (3F), -80.1 (6F), -111.9 (4F), -120.7 (4F), -121.8 (4F), -122.6 (4F), -125.2 (4F)
1H-NMR (CD3COCD3): δ 2.56 (4H), 3.77 (4H), 4.51 (2H), 5.02 (2H), 7.63-8.50 (4H)
実施例1(ジアクリレートBの合成)
300ml三口フラスコに合成参考例1で合成したジオールA(29.0g、25mmol)を入れHCFC225(150ml)に溶解させた。窒素雰囲気下、反応器を4℃に冷却し、トリエチルアミン(6.1g、60mmol)を10分間かけて滴下した後、反応器を室温で30分間攪拌した。その後、反応器を4℃に冷却、αF−アクリル酸クロリド(6.5g、60mmol)を30分間かけて滴下した。その後、反応器を室温で3時間攪拌した。
反応液を1N−塩酸水溶液(200ml)にあけ、有機相を分離し、HCFC225を用いて抽出、MgSO4で乾燥後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い、ヘキサン−酢酸エチル(24:1)溶媒で展開し精製を行い、反応生成物を単離した(30.2g、23mmol、収率92%)。
この反応生成物を19F−NMRおよび1H−NMRで調べ、式:
で示されるジαF−アクリレート化合物(以下、「ジアクリレートB」という)であることを確認した。
19F-NMR (CD3COCD3): δ -69.4 (6F), -70.5 (6F), -80.3 (6F), -112.3 (4F), -117.4 (2F), -120.9 (4F), -122.1 (4F), -122.8 (4F), -125.4 (4F)
1H-NMR (CD3COCD3): δ 2.54 (4H), 3.77 (4H), 5.28 (2H), 5.44 (2H), 5.48 (2H), 7.63-8.52 (4H)
実施例2(ジアクリレートCの合成)
300ml三口フラスコに合成参考例1で合成したジオールA(29.0g、25mmol)を入れHCFC225(150ml)に溶解させた。窒素雰囲気下、反応器を4℃に冷却し、トリエチルアミン(6.1g、60mmol)を10分間かけて滴下した後、反応器を室温で30分間攪拌した。その後、反応器を4℃に冷却、メタクリル酸クロリド(6.5g、60mmol)を30分間かけて滴下した。その後、反応器を室温で4時間攪拌した。
反応液を1N−塩酸水溶液(200ml)にあけ、有機相を分離し、HCFC225を用いて抽出、MgSO4で乾燥後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い、ヘキサン−酢酸エチル(24:1)溶媒で展開し精製を行い、反応生成物を単離した(31.2g、24mmol、収率96%)。
この反応生成物を19F−NMRおよび1H−NMRで調べ、式:
で示されるジメタクリレート化合物(以下、「ジアクリレートC」という)であることを確認した。
19F-NMR (CD3COCD3): δ -69.2 (6F), -70.2 (6F), -80.0 (6F), -112.5 (4F), -121.1 (4F), -121.2 (4F), -121.9 (4F), -123.8 (4F)
1H-NMR (CD3COCD3): δ 1.96 (6H), 2.54 (4H), 3.77 (4H), 5.59 (2H), 5.64 (2H), 5.98 (2H), 7.63-8.52 (4H)
合成参考例2(ジオールDの合成)
500mlフラスコに1,3−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロピル)ベンゼン(41.0g、100mmol)と3−ペルフルオロブチル−1,2−エポキシプロパン(82.8g、300mmol)を入れ、トルエン(100g)に溶解させた。次いで5N−水酸化ナトリウム水溶液(10ml、50mmol)、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(0.92g、5.0mmol)、トリグライム(50g)を順次加えた後、100℃の温度で120時間撹拌した。
反応液を1N−塩酸水溶液(500ml)にあけ、有機相を分離し、HCFC225を用い抽出、MgSO4で乾燥後、溶媒を留去した。
シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い、ヘキサン−酢酸エチル(10:1)混合溶媒で展開し精製を行い、反応生成物を単離した(82.9g、86mmol、収率86%)。
この反応生成物を19F−NMRおよび1H−NMRで調べ、式:
で示されるジオール化合物(以下、「ジオールD」という)であることを確認した。
19F-NMR (CD3COCD3): δ -69.5 (6F), -70.0 (6F), -80.3 (6F), -111.8 (4F), -123.5 (4F), -124.9 (4F)
1H-NMR (CD3COCD3): δ 2.56 (4H), 3.78 (4H), 4.53 (2H), 5.02 (2H), 7.65-8.30 (4H)
実施例3(ジアクリレートEの合成)
300ml三口フラスコに合成参考例2で合成したジオールD(24.1g、25mmol)を入れHCFC225(150ml)に溶解させた。窒素雰囲気下、反応器を4℃に冷却し、トリエチルアミン(6.1g、60mmol)を10分間かけて滴下した後、反応器を室温で30分間攪拌した。その後、反応器を4℃に冷却、αF−アクリル酸クロリド(6.5g、60mmol)を30分間かけて滴下した。その後、反応器を室温で5時間攪拌した。
反応液を1N−塩酸水溶液(200ml)にあけ、有機相を分離し、HCFC225を用いて抽出、MgSO4で乾燥後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い、ヘキサン−酢酸エチル(24:1)溶媒で展開し精製を行い、反応生成物を単離した(27.7g、25mmol、収率99%超)。
この反応生成物を19F−NMRおよび1H−NMRで調べ、式:
で示されるジαF−アクリレート化合物(以下、「ジアクリレートE」という)であることを確認した。
19F-NMR (CD3COCD3): δ -69.0 (6F), -70.2 (6F), -81.0 (6F), -112.2 (4F), -117.3 (2F), -123.3 (4F), -124.9 (4F)
1H-NMR (CD3COCD3): δ 2.53 (4H), 3.80 (4H), 5.60 (2H), 5.74 (2H), 5.82 (2H), 7.50-8.28 (4H)
実施例4(ジアクリレートFの合成)
300ml三口フラスコに合成参考例2で合成したジオールD(24.1g、25mmol)を入れHCFC225(150ml)に溶解させた。窒素雰囲気下、反応器を4℃に冷却し、トリエチルアミン(6.1g、60mmol)を10分間かけて滴下した後、反応器を室温で30分間攪拌した。その後、反応器を4℃に冷却、メタクリル酸クロリド(6.5g、60mmol)を30分間かけて滴下した。その後、反応器を室温で4時間攪拌した。
反応液を1N−塩酸水溶液(200ml)にあけ、有機相を分離し、HCFC225を用いて抽出、MgSO4で乾燥後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い、ヘキサン−酢酸エチル(24:1)溶媒で展開し精製を行い、反応生成物を単離した(26.3g、24mmol、収率98%)。
この反応生成物を19F−NMRおよび1H−NMRで調べ、式:
で示されるジメタクリレート化合物(以下、「ジアクリレートF」という)であることを確認した。
19F-NMR (CD3COCD3): δ -68.7 (6F), -70.1 (6F), -81.3 (6F), -112.7 (4F), -123.3 (4F), -124.5 (4F)
1H-NMR (CD3COCD3): δ 1.95 (6H), 2.53 (4H), 3.80 (4H), 5.64 (2H), 5.74 (2H), 6.08 (2H), 7.63-8.52 (4H)
合成参考例3(ジオールGの合成)
500mlフラスコに1,3−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロピル)ベンゼン(41.0g、100mmol)と3−ペルフルオロイソプロピル−1,2−エポキシプロパン(67.8g、300mmol)を入れ、トルエン(100g)に溶解させた。次いで5N−水酸化ナトリウム水溶液(10ml、50mmol)、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(0.92g、5.0mmol)、トリグライム(50g)を順次加えた後、100℃の温度で120時間撹拌した。
反応液を1N−塩酸水溶液(500ml)にあけ、有機相を分離し、HCFC225を用い抽出、MgSO4で乾燥後、溶媒を留去した。
シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い、ヘキサン−酢酸エチル(10:1)混合溶媒で展開し精製を行い、反応生成物を単離した(68.0g、79mmol、収率79%)。
この反応生成物を19F−NMRおよび1H−NMRで調べ、式:
で示されるジオール化合物(以下、「ジオールG」という)であることを確認した。
19F-NMR (CD3COCD3): δ -69.0 (6F), -70.6 (6F), -75.9 (12F), -184.4 (2F)
1H-NMR (CD3COCD3): δ 2.93 (4H), 4.02 (4H), 4.43 (2H), 4.96 (2H), 7.83-7.99 (4H)
実施例5(ジアクリレートHの合成)
300ml三口フラスコに合成参考例3で合成したジオールG(24.1g、25mmol)を入れHCFC225(150ml)に溶解させた。窒素雰囲気下、反応器を4℃に冷却し、トリエチルアミン(6.1g、60mmol)を10分間かけて滴下した後、反応器を室温で30分間攪拌した。その後、反応器を4℃に冷却、αF−アクリル酸クロリド(6.5g、60mmol)を30分間かけて滴下した。その後、反応器を室温で8時間攪拌した。
反応液を1N−塩酸水溶液(200ml)にあけ、有機相を分離し、HCFC225を用いて抽出、MgSO4で乾燥後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い、ヘキサン−酢酸エチル(20:1)溶媒で展開し精製を行い、反応生成物を単離した(22.0g、22mmol、収率88%)。
この反応生成物を19F−NMRおよび1H−NMRで調べ、式:
で示されるジαF−アクリレート化合物(以下、「ジアクリレートH」という)であることを確認した。
19F-NMR (CD3COCD3): δ -69.1 (6F), -70.5 (6F), -76.0 (12F), -117.3 (2F), -184.6 (2F)
1H-NMR (CD3COCD3): δ 2.90 (4H), 4.03 (4H), 5.60 (2H), 5.76 (2H), 5.84 (2H), 7.85-8.00 (4H)
合成参考例4(ジオールIの合成)
500ml三口フラスコにネオペンチルグリコール(15.6g、150mmol)を入れ、HCFC225(200g)を加えた後、窒素雰囲気下、50℃で溶解させた。その後、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体(1.90ml、13.0mmol)を加え20分間攪拌した後、3−ペルフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン(113g、300mmol)を2時間かけて滴下した。50℃で5時間撹拌し、3−ペルフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパンの消失をガスクロマトグラフにより確認し反応を終了した。
反応液を水(500ml)にあけ、有機相を分離し、HCFC225を用い抽出、MgSO4で乾燥後、溶媒を留去し、反応生成物を得た(126g、147mmol、収率98%)。
この反応生成物を19F−NMRおよび1H−NMRで調べ、式:
で示されるジオール化合物(以下、「ジオールI」という)であることを確認した。
19F-NMR (CD3COCD3): δ -79.1 (6F), -110.3 (4F), -119.0 (4F), -120.3 (4F), -121.4 (4F), -122.9 (4F)
1H-NMR (CD3COCD3): δ 1.05 (6H), 2.20-2.40 (4H), 3.31-3.70 (8H), 4.24 (2H)
実施例6(ジアクリレートJの合成)
300ml三口フラスコに合成参考例4で合成したジオールI(48.8g、50mmol)を入れHCFC225(300ml)に溶解させた。窒素雰囲気下、反応器を4℃に冷却し、トリエチルアミン(12.1g、120mmol)を15分間かけて滴下した後、反応器を室温で30分間攪拌した。その後、反応器を4℃に冷却、αF−アクリル酸クロリド(13.0g、120mmol)を30分間かけて滴下した。その後、反応器を室温で7時間攪拌した。
反応液を1N−塩酸水溶液(500ml)にあけ、有機相を分離し、HCFC225を用いて抽出、MgSO4で乾燥後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い、ヘキサン−酢酸エチル(30:1)溶媒で展開し精製を行い、反応生成物を単離した(44.0g、44mmol、収率87%)。
この反応生成物を19F−NMRおよび1H−NMRで調べ、式:
で示されるジαF−アクリレート化合物(以下、「ジアクリレートJ」という)であることを確認した。
19F-NMR (CD3COCD3): δ -79.1 (6F), -110.3 (4F), -119.0 (4F), -120.3 (4F), -121.4 (4F), -122.9 (4F)
1H-NMR (CD3COCD3): δ 1.05 (6H), 2.20-2.40 (4H), 3.31-3.70 (8H), 4.97 (2H), 5.58 (2H), 5.73 (2H)
合成参考例5(ジオールKの合成)
500mlフラスコに4,4−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(33.6g、100mmol)と3−ペルフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン(113g、300mmol)を入れ、トルエン(100g)に溶解させた。次いで5N−水酸化ナトリウム水溶液(10ml、50mmol)、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(0.92g、5.0mmol)、トリグライム(50g)を順次加えた後、100℃の温度で48時間撹拌した。
反応液を1N−塩酸水溶液(500ml)にあけ、有機相を分離し、HCFC225を用い抽出、MgSO4で乾燥後、溶媒を留去した。
シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い、ヘキサン−酢酸エチル(8:1)混合溶媒で展開し精製を行い、反応生成物を単離した(77.4g、71mmol、収率71%)。
この反応生成物を19F−NMRおよび1H−NMRで調べ、式:
で示されるジオール化合物(以下、「ジオールK」という)であることを確認した。
19F-NMR (CD3COCD3): δ -64.5 (6F), -79.8 (6F), -111.3 (4F), -120.5 (4F), -122.2 (4F), -123.9 (4F), -125.1 (4F)
1H-NMR (CD3COCD3): δ 2.56 (4H), 3.77 (4H), 4.51 (2H), 5.02 (2H), 7.43-8.60 (8H)
実施例7(ジアクリレートLの合成)
300ml三口フラスコに合成参考例5で合成したジオールK(27.2g、25mmol)を入れHCFC225(150ml)に溶解させた。窒素雰囲気下、反応器を4℃に冷却し、トリエチルアミン(6.1g、60mmol)を10分間かけて滴下した後、反応器を室温で30分間攪拌した。その後、反応器を4℃に冷却、αF−アクリル酸クロリド(6.5g、60mmol)を30分間かけて滴下した。その後、反応器を室温で6時間攪拌した。
反応液を1N−塩酸水溶液(200ml)にあけ、有機相を分離し、HCFC225を用いて抽出、MgSO4で乾燥後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い、ヘキサン−酢酸エチル(14:1)溶媒で展開し精製を行い、反応生成物を単離した(25.8g、21mmol、収率83%)。
この反応生成物を19F−NMRおよび1H−NMRで調べ、式:
で示されるジαF−アクリレート化合物(以下、「ジアクリレートL」という)であることを確認した。
19F-NMR (CD3COCD3): δ -65.2 (6F), -80.1 (6F), -112.0 (4F), -120.4 (4F), -122.6 (4F), -124.2 (4F), -125.5 (4F)
1H-NMR (CD3COCD3): δ 2.53 (4H), 3.79 (4H), 5.59 (2H), 5.74 (2H), 5.86 (2H), 7.45-8.59 (4H)
実施例8
実施例1〜7で合成したジアクリレートの粘度、硬化物のガラス転移温度Tg、フッ素含有率、屈折率を測定した。結果を表1に示す。
参考例(特開昭63−101409号公報記載のジアクリレートの物性)
特開昭63−101409号公報に具体的に記載されているジアクリレートの物性(ガラス転移温度、フッ素含有率および性状)を調べたところ、以下のとおりであった。
(AF−GA)
(AF−GMA)
(FB−GA)
(FB−GMA)
(DO−GA)
(DO−GMA)
実施例9(組成物の物性評価)
多官能含フッ素化合物として実施例1で得られたジアクリレートBを50重量部、単官能含フッ素アクリレートとしてヘキサフルオロネオペンチルα−フルオロアクリレート(6FNP−F):
を50重量部、そしてこれに活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを0.1重量%加えて本発明の液状の硬化性含フッ素樹脂組成物を調製した。
硬化前の組成物の35℃における粘度を測定し、液状組成物の外観を目視で評価した。結果を表2に示す。
○:透明でかつ均一であり、550nmの光の透過率が80%以上である。
△:一部に白濁(ゲル状物)が認められる。
×:不透明で白濁。
ついでアルミ箔上にアプリケーターを用いて膜厚が約100μmとなるように塗布し、被膜に高圧水銀灯を用い、1500mJ/cm2Uの強度で紫外線を照射したのち、アルミ箔を希塩酸で溶かし、サンプルフィルムとした。
サンプルフィルム(硬化後)の屈折率(n)、ガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td)、フッ素含有率(F)、光透過率可視(633nm)(T(633))、光透過率近赤外(1310nm)(T(1310))を調べた。
また、外観を目視で評価した。
○:透明でかつ均一である。
△:一部に白濁(にごり)が認められる。
×:不透明で白濁。
以上の結果を表2に示す。
実施例10
多官能含フッ素化合物として実施例6で得られたジアクリレートJを50重量部、単官能含フッ素アクリレートとしてヘキサフルオロネオペンチルα−フルオロアクリレート(6FNP−F)を50重量部用いた以外は実施例9と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を得、各種物性を実施例9と同様にして測定した。結果を表2に示す。
実施例11
多官能含フッ素化合物として実施例1で得られたジアクリレートBを60重量部、単官能含フッ素アクリレートとして2−パーフルオロプロポキシ−2,3,3,3−テトラフルオロプロピルα−フルオロアクリレート(6FOn1−F):
を20重量部、フッ素を含有していない単量体としてメチルメタクリレート(MMA)を20重量部用いた以外は実施例9と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を得、各種物性を実施例9と同様にして測定した。結果を表2に示す。
実施例12
多官能含フッ素化合物として実施例2で得られたジアクリレートCを60重量部、単官能含フッ素アクリレートとしてヘキサフルオロネオペンチルα−フルオロアクリレート(6FNP−F)を20重量部、フッ素を含有していない単量体としてメチルメタクリレート(MMA)を20重量部用いた以外は実施例9と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を得、各種物性を実施例9と同様にして測定した。結果を表2に示す。
実施例13
多官能含フッ素化合物として実施例5で得られたジアクリレートHを50重量部、単官能含フッ素アクリレートとしてヘキサフルオロネオペンチルα−フルオロアクリレート(6FNP−F)を30重量部とヘキサフルオロイソプロピルα−フルオロアクリレート(HFIP−F):
を20重量部用いた以外は実施例9と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を得、各種物性を実施例9と同様にして測定した。結果を表2に示す。
実施例14
多官能含フッ素化合物として実施例5で得られたジアクリレートHを50重量部、単官能含フッ素アクリレートとしてヘキサフルオロネオペンチルα−フルオロアクリレート(6FNP−F)を45重量部、添加ポリマーとしてポリメチルメタクリレート(PMMA:数平均分子量:約9万)を5重量部用いた以外は実施例9と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を得、各種物性を実施例9と同様にして測定した。結果を表2に示す。
実施例15
多官能含フッ素化合物として実施例7で得られたジアクリレートLを50重量部、単官能含フッ素アクリレートとしてヘキサフルオロネオペンチルα−フルオロアクリレート(6FNP−F)を50重量部用いた以外は実施例9と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を得、各種物性を実施例9と同様にして測定した。結果を表2に示す。
比較例1
硬化性含フッ素樹脂組成物として多官能含フッ素化合物として1,4−ビス(ヘキサフルオロイソプロピルα−フルオロアクリル)ベンゼン(FB−DFA):
を50重量部用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を作成したが、常温で固体のFB−DFAを溶解させることができず、均一なフィルムの作製を行うことができなかった。
比較例2
硬化性含フッ素樹脂組成物として多官能含フッ素化合物として1,4−ビス(ヘキサフルオロイソプロピルα−フルオロアクリル)ベンゼン(FB−GMA):
を50重量部用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を作成し、各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
実施例16
以上の実施例の結果から、実施例9の硬化性含フッ素樹脂組成物(硬化後の屈折率:1.386)をクラッドに、実施例12の硬化性含フッ素樹脂組成物(硬化後の屈折率:1.415)をコアに用いればコア/クラッド型の光導波路を形成できることがわかった。
そこで実施例9で得られた硬化性含フッ素樹脂組成物を0.5μmのフィルターでろ過後、シリコンウェハ上に回転数200rpmで10秒間、ついで回転数500rpmで30秒間スピンコートさせた。高圧水銀灯を用い、1500mJ/cm2Uの強度で紫外線を照射してシリコン基板上に約15μmの厚さのクラッド層を得た。つぎに実施例12の硬化性含フッ素樹脂組成物を0.5μmのフィルターでろ過後、先のクラッド層の上に回転数500rpmで10秒間、ついで回転数1000rpmで30秒間スピンコートさせた。
つぎに、ホトマスクを介して光照射を行ない、コア部用の膜を硬化させた。その後、コア部用膜の未硬化の部分を溶剤で洗い流し、コア部として長さ50mm、幅8μm、高さ8μmの直線矩形パターンに加工した。加工後、クラッド部を図2にしたがって説明した工程でコア部上に塗布して光導波路を作製した。
つぎに、得られたこの光導波路の伝送損失をカットバック法により測定したところ、波長633nmで0.80dB/cm以下、波長850nmで0.75dB/cm、波長1310nmで0.80dB/cmとなり、可視光から近赤外光までの通信波長帯域の光を良好に伝達できた。
また、併せて85℃、湿度85%の恒温槽内で168時間保持するという耐久テスト後の伝送損失(dB/cm)の変化を表3に示す。
合成参考例6(Er(CF3COCHCOCF3)3の調製)
100mlのガラス製フラスコに、酢酸ユーロピウム4水和物の2.1g(5mmol)、ヘキサフルオロアセチルアセトンの3.0g(20mmol)および純水の50mlを投入し、25℃で3日間攪拌した。
ついで、析出した固形物をろ過により取り出し、固形物を水洗後、水−メタノール混合溶媒で再結晶したところ白色の結晶が得られた(収率50%)。
この結晶をIR分析、1H−NMRおよび19F−NMR分析し、目的の錯体、Er(CF3COCHCOCF3)3であることを確認した。
また、得られた白色結晶はTg測定により、2水和物であることが推測された。
実施例17(光機能性光学材料の製造)
一方を封鎖した内径4mm、長さ200mmの円柱形の耐熱ガラスチューブに、実施例6で合成した式:
で示されるジアクリレートJの2.0g、合成参考例6で得た希土類金属錯体:Er(CF3COCHCOCF3)3の0.020g、およびラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の0.002gを入れて混合したところ、透明な均一溶液となった。
ついで、上記混合した組成物を入れた耐熱ガラスチューブを液体窒素に浸し冷却しながら、真空ポンプにて充分脱気した後、封管した。
60℃で12時間加熱し、耐熱ガラスチューブを粉砕してジアクリレートJとエルビウム錯体(III)からなる円柱状の透明な固形物を得た。
実施例18(光機能性光学材料の製造)
一方を封鎖した内径4mm、長さ200mmの円柱形の耐熱ガラスチューブに、ジアクリレートJの0.32g、式:
で示されるヘキサフルオロネオペンチルメタクリレートの2.0g、合成参考例6で得た希土類金属錯体:Er(CF3COCHCOCF3)3の0.020g、およびラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の0.002gを入れて混合したところ、透明な均一溶液となった。
ついで、上記混合した組成物を入れた耐熱ガラスチューブを液体窒素に浸し冷却しながら、真空ポンプにて充分脱気した後、封管した。
60℃で12時間加熱し、耐熱ガラスチューブを粉砕してジアクリレートJとヘキサフルオロネオペンチルメタクリレートとエルビウム錯体(III)からなる円柱状の透明な固形物を得た。
実施例19(光機能性光学材料の製造)
メチルメタクリレートの2.0g、前記ジアクリレートJの0.32g、合成参考例6で得たEr(CF3COCHCOCF3)3の0.020g、およびAIBNの0.002gを用いた以外は実施例17と同様にして重合反応を行い、多官能含フッ素化合物とエルビウム錯体(III)からなる固形物を得た。
比較例3(比較用光機能性光学材料の製造)
メチルメタクリレートの2.0g、合成参考例6で得たEr(CF3COCHCOCF3)3の0.020g、およびAIBNの0.002gを用いた以外は実施例17と同様にして重合反応を行い、ポリメチルメタクリレートとエルビウム錯体(III)からなる固形物を得た。
試験例1
得られたエルビウム錯体含有固形物について、つぎの物性を調べた。結果を表4に示す。
(12)多官能含フッ素化合物硬化物中のフッ素含有率の測定
(12−1)多官能含フッ素化合物の硬化物の合成
実施例17〜19および比較例3において、エルビウム錯体Er(CF3COCHCOCF3)3を加えなかった以外は、それぞれ同様にして重合反応を行い、対応する硬化物を合成した。
(12−2)フッ素含有率の測定
得られた各硬化物のそれぞれについて前述の酸素フラスコ燃焼法によりフッ素含有率(質量%)を測定した。
(13)希土類金属錯体の含有率
実施例17〜19および比較例3において、希土類金属錯体の使用量から光機能性光学材料全体に対する金属(イオン)量(質量%)を計算により算出した。
(14)外観
実施例17〜19および比較例3でそれぞれ得たアクリレート重合体とエルビウム錯体からなる円柱形の固形物のそれぞれについて、目視により透明性について、つぎの基準で評価した。
○:組成物中の希土類金属錯体の析出なく完全に透明なもの
×:希土類金属錯体の析出が観察され、濁りを生じているもの
(15)1550nm波長での相対発光強度
実施例17〜19および比較例3でそれぞれ得たアクリレート系重合体とエルビウム錯体からなる円柱形の固形物を高さ方向に3cmに切断し、両端面を光学研磨した。
前記図3に示す積分球を備えた蛍光分光光度計に上記サンプルをセットし、励起波長として一定量の1480nm波長光を照射し、発光スペクトルの1550nmの発光強度を測定した。
発光スペクトルにおいて、比較例3のポリメチルメタクリレート固形物サンプルの1550nmの発光ピーク強度を100としたときの、各サンプルの相対的な発光ピーク強度比を算出し、1550nmでの相対発光強度とした。