JP3842178B2 - パーフルオロ基含有化合物を含む光学材料用の重合性組成物 - Google Patents

パーフルオロ基含有化合物を含む光学材料用の重合性組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチックの光学材料の原料でありパーフルオロ基含有化合物を重合成分として含んでいる重合性組成物、この組成物を重合させた光学材料用の硬化物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
眼鏡やカメラのレンズ、プリズム、光導波路、携帯電話の平面ディスプレイの光学部品、反射防止膜にプラスチックの光学材料が用いられている。プラスチックの光学材料は、夫々の材質に固有の屈折率を持っており、光学部品等の設計に際し、適切な屈折率を持つ材質が選択される。
【0003】
しかしプラスチックの光学材料は、その種類が限られており、屈折率の選択範囲がさほど広いとはいえない。さらに、光導波路として用いるプラスチックの光学材料は、使用される光の吸収損失が低くなるように炭素−水素結合の存在比率が小さいことが望ましいので、その種類が一層限られる。
【0004】
このような光学材料として、直鎖状パーフルオロ基含有重合性化合物を架橋させた重合物が知られている。この化合物のパーフルオロ基が長鎖であると重合物の架橋密度が粗になるため、この重合物で形成された光学材料は、耐擦傷性・耐熱性・耐薬品性が不十分になってしまう。逆にこの化合物のパーフルオロ基が短鎖であると、重合物中のフッ素含有量が少なくなるため、この重合物で形成された光学材料は、屈折率が高くなり、かつ光の吸収損失が大きくなってしまう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記の課題を解決するためなされたもので、屈折率を適宜選択でき屈折率が小さく光吸収損失が低い光学材料のための原料でありパーフルオロ基含有化合物を重合成分として含む重合性組成物、およびこの組成物を重合させた耐擦傷性と耐熱性と耐薬品性とが優れている光学材料用の硬化物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するためになされた本発明の重合性組成物は、下記化学式(I)
【0007】
【化4】
Figure 0003842178
【0008】
(式(I)中、‐Rは水素原子またはメチル基、‐Rf‐は炭素数1〜10の炭化水素基の全ての水素がフッ素に置換されたパーフルオロ基、‐Rf、‐Rf、‐Rf、‐Rfは同一または異なる炭素数1〜18の炭化水素基の全ての水素がフッ素に置換されたパーフルオロ基)で示される重合性不飽和基を持つパーフルオロ基含有化合物が含まれたものである。重合性不飽和基である(メタ)アクリロイル基CH=C(‐R)‐CO‐を持つこのパーフルオロ基含有化合物は、重合させて不飽和基が架橋することにより得られる光学材料用の硬化物を形成するための重合成分である。
【0009】
パーフルオロ基‐Rf‐、およびパーフルオロ基‐Rf、‐Rf、‐Rf、‐Rfは、炭化水素基の全ての水素がフッ素に置換されたもので、飽和、不飽和のいずれであってもよく、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、脂環または芳香環を有していてもよい。
【0010】
この組成物は、前記化学式(I)で示されるパーフルオロ基含有化合物が主として含まれていることが好ましい。さらに下記化学式(IV)
【0011】
【化5】
Figure 0003842178
【0012】
で示される片末端に水酸基を持つパーフルオロ基含有化合物が含まれていてもよい。
【0013】
組成物中、前記化学式(I)で示されるこのパーフルオロ基含有化合物が、少なくとも1〜100重量%含まれていることが好ましい。
【0014】
重合性組成物は、前記化学式(I)で示されるパーフルオロ基含有化合物と、この化合物以外であって重合性不飽和基を持つ化合物とが含まれていてもよい。
【0015】
このような重合性不飽和基を持つ化合物は、例えば1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,4−トリフルオロブタン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,6−へプタフルオロへキサン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロヘプタン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ウンデカフルオロオクタン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−トリデカフルオロノナン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ペンタデカフルオロデカン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−へプタデカフルオロウンデカン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,12−ノナデカフルオロドデカン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ヘプタデカフルオロドデカン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4−トリフルオロメチル−5,5,5−トリフルオロペンタン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−5−トリフルオロメチル−6,6,6−トリフルオロヘキサン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−3−メチル−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−3−メチル−4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロヘキサン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4−(パーフルオロシクロへキシル)ブタン、1,4−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3−テトラフルオロブタン、1,5−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2、3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタン、1,6−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロへキサン、1,7−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロへプタン、1,8−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロオクタン、1,9−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロノナン、1,10−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−へキサデカフルオロデカン、1,11−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−オクタデカフルオロウンデカン、1,12−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−エイコサフルオロデカン、1,8−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,7−ジヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,9−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,8−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,10−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,9−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,11−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,10−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、1,12−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,11−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドテカフルオロデカン、2,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシメチル}プロピオン酸−2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−へプタデカフルオロウンデシルのようなフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールへキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートへキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスルトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマーのようなフッ素非含有の(メタ)アクリル酸エステルで例示される(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。また、重合性不飽和基を持つ化合物は、3,3,4,4,5,5,6,6−オクタフルオロ−1,7−オクタジエン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ドデカフルオロ−1,9−デカジエン、3,3,4,4,5,5,6,6、7,7,8,8,9,9,10,10−ヘキサデカフルオロ−1,11−ドデカジエンのようなビニルモノマーであってもよい。
【0016】
重合性組成物中、(メタ)アクリレートモノマーやビニルモノマーである重合性不飽和基を持つ化合物が、0〜99重量%含まれていることが好ましい。
【0017】
本発明の別な重合性組成物は、下記化学式(II)
【0018】
【化6】
Figure 0003842178
および下記化学式(III)
【化7】
Figure 0003842178
【0019】
(式(II)および式(III)中、R‐はオキシラン環、オキセタン環およびテトラヒドロフラン環から選ばれる脂肪族環状エーテル基、n=1〜3、‐Rf‐、‐Rf、‐Rf、‐Rf、‐Rfは前記と同じ)で示されるパーフルオロ基含有化合物のうち、少なくとも前記式(II)のパーフルオロ基含有化合物が含まれたものである。脂肪族環状エーテル基R‐を持つこのパーフルオロ基含有化合物は、脂肪族環状エーテル基が開環重合して架橋することにより得られる光学材料用の硬化物を形成するための重合成分である。
【0020】
脂肪族環状エーテル基R‐は、オキシラン環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環で例示されるものである。R‐(CH)‐は、具体的には、グリシジル基、3,4−エポキシブチル基のようなオキシラン環含有基;2−オキセタンメチル基、2−オキセタン−2−エチル基のようなオキセタン環含有基;テトラヒドロフルフリル基、2−テトラヒドロフラン−2−エチル基のようなテトラヒドロフラン環含有基が挙げられる。
【0021】
重合性組成物は、前記化学式(II)で示されるパーフルオロ基含有化合物を主として含んでいることが好ましい。さらに前記化学式(III)で示されるパーフルオロ基含有化合物が含まれていてもよい。
【0022】
組成物中、前記化学式(II)や(III)で示されるパーフルオロ基含有化合物が、1〜100重量%含まれていることが好ましい。
【0023】
重合性組成物は、前記化学式(II)や(III)で示されるパーフルオロ基含有化合物と、この化合物以外であって重合性環状基を持つ化合物とが含まれていてもよい。このような重合性環状基への付加反応性の化合物は、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール#200ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール#400ジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール#400ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグルコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルで例示されるグリシジルエーテル;1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテルで例示されるビニルエーテル化合物;セロキサイド、エポリード(いずれもダイセル化学工業(株)製の表品名)で例示される脂環式エポキシ化合物;OXT(東亞合成(株)製の商品名)で例示されるオキセタン化合物が挙げられる。
【0024】
重合性組成物中、このような重合性環状基への付加反応性の化合物が、0〜99重量%含まれていることが好ましい。
【0025】
(メタ)アクリロイル基や脂肪族環状エーテル基を持つこれらパーフルオロ基含有化合物を含んでいる重合性組成物に、重合開始剤や反応促進剤が含まれていてもよい。
【0026】
重合開始剤として、活性エネルギー線、例えば紫外線の照射により重合を開始させるものが挙げられる。重合開始剤は、アデカオプトマーSPシリーズ(旭電化工業(株)製の商品名)、サンエイドSIシリーズ(三新化学工業(株)製の商品名)で例示されるトリアリールスルホニウム塩;WPIシリーズ(和光純薬工業(株)製の商品名)で例示されるジアリールヨードニウム塩で例示される紫外線カチオン開始剤が挙げられる。またその他に、重合開始剤は、イルガキュア184、ダロキュア1173(いずれもチバスペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名)で例示されるアセトフェノン系開始剤;ベンゾイン、イルガキュア651(チバスペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名)で例示されるベンゾイン系開始剤;KAYACURE BP−100、KAYACURE BMS(いずれも日本化薬(株)製の商品名)のようなベンゾフェノン系開始剤;KAYACUREDETX−S、KAYACURE CTX(いずれも日本化薬(株)製の商品名)で例示されるチオキサントン系開始剤であってもよい。さらに、重合開始剤は、カオライザーNo.20(花王(株)製の商品名)で例示されるアミン系化合物;パーブチルPV(日本油脂(株)製の商品名)で例示される過酸化物であってもよい。
【0027】
反応促進剤は、例えばKAYACURE DMBI、KAYACURE EPA(いずれも日本化薬(株)製の商品名)で例示される3級アミンが挙げられる。
【0028】
重合開始剤や反応促進剤は、重合性組成物中、0.01〜20重量%含まれていることが好ましい。
【0029】
本発明の膜状硬化物は、活性エネルギー線を照射することにより前記の重合性組成物が重合したものである。活性エネルギー線は、例えば、紫外線、電子線、放射線、熱線が挙げられる。この硬化物は、光学材料として用いられる。
【0030】
重合性組成物中に含まれた前記化学式(I)で示されるパーフルオロ基含有化合物が重合する場合を例に説明すると、パーフルオロ基含有化合物の(メタ)アクリル基が、別なパーフルオロ基含有化合物分子や(メタ)アクリレートモノマー分子のアクリロイル基と速やかに架橋し、順次繰り返されて3次元的な網目状に架橋して重合した硬化物を形成する。
【0031】
重合性組成物中に含まれた前記化学式(II)で示され両端に脂肪族環状エーテル基を有するパーフルオロ基含有化合物が重合する場合を例に説明すると、その脂肪族環状エーテル基が触媒によって開環して別な分子の脂肪族環状エーテル基を開環させて速やかに架橋する。組成物にさらに前記式(III)で示され脂肪族環状エーテル基と水酸基とを有するパーフルオロ基含有化合物が含まれている場合、前記のような開環する架橋のほか、この水酸基が別な分子の脂肪族環状エーテル基を開環させて架橋する。このような架橋が順次繰り返されて、3次元的な網目状に架橋して重合した硬化物を形成する。
【0032】
(メタ)アクリロイル基および脂肪族環状エーテル基のいずれかを持っているこのパーフルオロ基含有化合物が含まれた重合性組成物を用いて、簡便に硬化物を形成することができる。
【0033】
この硬化物中、パーフルオロ基含有化合物由来のパーフルオロ基‐Rf‐は炭素数1〜10とさほど長くなく、また分岐したパーフルオロ基‐Rf、‐Rf、‐Rf、‐Rfも炭素数1〜18とさほど長くないので、架橋を阻害するような立体障害とならない。そのため、硬化物は、密な網目状に架橋しており、強固で、耐擦傷性と耐熱性と耐薬品性とが優れている。
【0034】
パーフルオロ基‐Rf‐、‐Rf、‐Rf、‐Rf、‐Rfが存在するため、硬化物中、炭素−水素結合の存在比率が相対的に小さくなる結果、硬化物は、光吸収損失が低くなっている。さらに、電子吸引性の強いパーフルオロ基が炭素−水素結合を有する炭素と直接結合しておらず、またパーフルオロ基の近傍にも炭素−水素結合が存在しないために、炭素−水素結合からの水素原子の引抜きによる分解が抑制される結果、硬化物は、耐久性が向上する。
【0035】
硬化物中のフッ素の含有量が多いほど、硬化物の屈折率は低下する。
【0036】
フッ素の含有量は、パーフルオロ基‐Rf‐、‐Rf、‐Rf、‐Rf、‐Rfが適切な炭素数であるパーフルオロ基含有化合物を用いたり、(メタ)アクリレートモノマーや環状エーテルモノマーを適切な配合比率で配合したりした組成物を、硬化重合させることによって適宜調整できる。
【0037】
これにより所望の屈折率や、低い光吸収損失の光学材料のための硬化物が得られる。この硬化物は、レンズや光導波路等の原材として有用である。
【0038】
またこの硬化物は、屈折率が1.32〜1.45と低いため、光学部品表面に形成する反射防止膜としても有用である。この膜は、汎用されているポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、メチルメタクリレート、ポリカーボネートのようなプラスチック製のレンズ、フィルム等の基材上、またはガラスのレンズの基材上に形成される。必要に応じて、基材と反射防止膜との間に、別な層を設けてもよい。
【0039】
さらに、この硬化物は、その表面に化学的に安定なパーフルオロ基が露出し表面エネルギーを低下させているので、塵埃を吸着せず防汚性も優れている。
【0040】
【実施例】
本発明の実施例を詳細に説明する。
【0041】
以下、本発明を適用するパーフルオロ基含有化合物を含む重合性組成物を調製し、この組成物を重合させて硬化物を形成させた実施例を示す。
【0042】
重合成組成物の調製に先立ち、パーフルオロ基含有化合物A、BおよびCを合成した。
【0043】
(パーフルオロ基含有化合物Aの合成例)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた1Lの四つ口フラスコに、2,5−トリフルオロメチル−2,5−パーフルオロヘキサノールの43.4gと、トリエチルアミンの21.2gと、トルエンの40.0gとを仕込んだ。この反応系を窒素気流下で撹拌しながら氷/塩により冷却した。この反応液を0℃以下好ましくは−10℃以下に冷却しながら、反応液にアクリル酸クロライドの19.01gを滴下ロートにより2時間かけて徐々に滴下した。滴下終了後0℃以下で約1時間、次いで室温で約3時間攪拌した。反応液に10wt%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和し、次いで10wt%食塩水を加えて水洗処理をした後、減圧下で濃縮し、パーフルオロ基含有化合物Aを得た。
【0044】
(パーフルオロ基含有化合物Bの合成例)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた500mLの四つ口フラスコに、1H,1H,8H,8H−パーフルオロオクタンジオールの20gと、エピクロロヒドリンの102.2gと、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドの0.66gとを仕込んだ。この反応液を、撹拌しながら85℃に加熱した。さらに同温度で、反応液に50%水酸化ナトリウム水溶液10.6gを1時間かけて滴下し、滴下後2時間撹拌しながら反応させた。反応液に1wt%リン酸第一ナトリウム水溶液を加えて、中和および水洗処理をした後、減圧下で濃縮し、パーフルオロ基含有化合物Bを得た。
【0045】
(パーフルオロ基含有化合物Cの合成例)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた500mLの四つ口フラスコに、2,5−トリフルオロメチル−2,5−パーフルオロヘキサノールの43.4gと、エピクロロヒドリンの185gと、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドの3.5gとを仕込んだ。この反応液を撹拌しながら85℃に加熱した。さらに同温度にて、反応液に50%水酸化ナトリウム水溶液19.32gを1時間かけて滴下し、滴下後2時間撹拌しながら反応させた。反応液に1wt%リン酸第一ナトリウム水溶液を加えて、中和および水洗処理をした後、減圧下で濃縮し、パーフルオロ基含有化合物Cを得た。
【0046】
次に、これらのパーフルオロ基含有化合物を用いて、本発明を適用する重合性組成物の調製とそれの膜状の硬化物の形成の例を実施例1〜3に示す。また、本発明を適用外の重合性組成物の調製と硬化物の形成の例を比較例1〜3に示す。
【0047】
(実施例1)
パーフルオロ基含有化合物Aの70重量部と、フルオライト FA−16(共栄社化学(株)製の商品名)の30重量部と、イルガキュア1173(チバスペシャリティケミカルズ社製の商品名)の4重量部とを混合し、重合性組成物を得た。この重合性組成物を、スピンコートにて、下記の物性の評価のための適当な厚さとなるようにガラス上に塗工した。その後、嫌気条件下、高圧水銀灯(80W/cm)を用いて600mJ/cmの照射量で紫外線硬化させて、膜状の硬化物を得た。
【0048】
(実施例2)
実施例1におけるフルオライト FA−16に代えて、ライトアクリレート 1,9−NDA(共栄社化学(株)製の商品名)の30重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして重合性組成物、および膜状の硬化物を得た。
【0049】
(実施例3)
パーフルオロ基含有化合物Bの70重量部と、パーフルオロ基含有化合物Cの30重量部と、スルホニウム塩系カチオン開始剤であるアデカオプトマーSP−170(旭電化工業(株)製の商品名)の6重量部とを混合し、重合性組成物を得た。この重合性組成物を、実施例1と同様に紫外線硬化させて、膜状の硬化物を得た。
【0050】
(比較例1)
フルオライト FA−16(共栄社化学(株)製の商品名)の100重量部と、イルガキュア1173(チバスペシャリティケミカルズ社製の商品名)の4重量部とを混合し、重合性組成物を得た。実施例1と同様にしてこの組成物を紫外線硬化させて、膜状の硬化物を得た。
【0051】
(比較例2)
パーフルオロ基含有化合物Bの100重量部と、スルホニウム塩系カチオン開始剤であるアデカオプトマーSP−170(旭電化工業(株)製の商品名)の6重量部とを混合し、重合性組成物を得た。この組成物を実施例3と同様にして紫外線硬化させて、膜状の硬化物を得た。
【0052】
(比較例3)
比較例1におけるフルオライト FA−16に代えて、ライトアクリレート 1,9−NDA(共栄社化学(株)製の商品名)の100重量部を用いたこと以外は、比較例1と同様にして重合性組成物、および膜状の硬化物を得た。
【0053】
実施例1〜3および比較例1〜3で得た重合性組成物の物性を評価するため、外観の観察、および屈折率の測定を行った。さらに夫々の組成物を重合させて形成した膜状の硬化物について物性を評価するため、硬化性の観察、屈折率の測定、ガラス転移温度の測定、および耐擦傷性を行った。
【0054】
(重合性組成物の外観観察)
組成物の外観について、目視により透明、白濁のいずれであるかを観察した。
【0055】
(重合性組成物の屈折率測定試験)
アッベ屈折計(アタゴ(株)製)により25℃での重合性組成物の屈折率を測定した。
【0056】
(硬化物の硬化性試験)
次に夫々の組成物を、ガラス板上に膜厚10μmとなるように塗工した。これに、紫外線照射装置(日本電池(株)製)で80W高圧水銀灯を用いて600mJ/cmの紫外線を照射し、組成物の重合した硬化物を得た。硬化膜を指で触ったとき、硬く充分に重合していたものを良好、軟らかく液状の組成物が残存し重合が不十分であったものを不良とする2段階で評価した。
【0057】
(硬化物の屈折率測定試験)
夫々の組成物を、ガラス板上に膜厚100μmとなるように塗工し、同様に紫外線照射装置で重合させて、硬化物とした。この硬化物をガラス板から剥離し、アッベ屈折計により25℃での屈折率を測定した。
【0058】
(硬化物のガラス転移温度測定試験)
夫々の組成物を、離型処理の施されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に膜厚100μmとなるように塗工し、同様に紫外線照射装置で重合させて、硬化物とした。この硬化物をフィルムから剥離し、動的粘弾性測定器(TAインスツルメンツ社製)により、ガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0059】
(硬化物の耐擦傷性試験)
夫々の組成物を、ガラス板上に膜厚10μmとなるように塗工し、同様に紫外線照射装置で重合させて、硬化物とした。100g/cmの荷重をかけた規格0000のスチールウールでこの硬化物を10往復擦り、硬化物表面の傷の発生の有無を目視により観察した。
【0060】
実施例1〜3の組成物および比較例1〜3の組成物と、その硬化物とについての物性評価の試験結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
Figure 0003842178
【0062】
表1から明らかなとおり、実施例1、2の硬化物は比較例1、3の硬化物と比較して、また実施例3の硬化物は比較例2の硬化物と比較して、屈折率が低く耐擦傷性が優れており、ガラス転移温度が高いため耐熱性が優れていた。さらに、実施例1〜3の硬化物は、低い屈折率を示した。
【0063】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように本発明のパーフルオロ基含有化合物を重合成分として含む重合性組成物は、光学材料の原料として用いられる。
【0064】
重合性組成物の成分や組成を変えることにより、適当な屈折率の光学材料を得ことができる。
【0065】
この重合性組成物を重合させた硬化物は、低屈折率であり、耐擦傷性・耐熱性・耐薬品性・防汚性が優れている。そのため、この硬化物は、光の反射を忌避すべき、携帯電話や各種平面ディスプレイの反射防止膜として、また眼鏡やカメラのレンズのような光学部品の原材として、有用な光学材料である。この硬化物で形成した光学部品や反射防止膜は、長期間、傷が付かず加熱や薬品に安定であるので、光学部品の交換や反射防止膜の再塗布の必要がない。
【0066】
またこの硬化物は、光吸収損失が低いので、光導波路用の原材としても有用である。
【0067】
この硬化物は、鋳型に流し込んで光学部品を成形する際に用いられるキャスティング剤として使用することもできる。この硬化物は、フォトマスクを用いた活性放射線によるパターニングを行うために使用することもできる。

Claims (6)

  1. 下記化学式(I)
    Figure 0003842178
    (式(I)中、‐Rは水素原子またはメチル基、‐Rf‐は炭素数1〜10の炭化水素基の全ての水素がフッ素に置換されたパーフルオロ基、‐Rf、‐Rf、‐Rf、‐Rfは同一または異なる炭素数1〜18の炭化水素基の全ての水素がフッ素に置換されたパーフルオロ基)で示される重合性不飽和基を持つパーフルオロ基含有化合物が、含まれていることを特徴とする重合性組成物。
  2. 請求項1に記載の重合性組成物に、前記式(I)のパーフルオロ基含有化合物以外の重合性不飽和基を持つ化合物が含まれていることを特徴とする重合性組成物。
  3. 下記化学式(II)
    Figure 0003842178
    および下記化学式(III)
    Figure 0003842178
    (式(II)および式(III)中、R‐はオキシラン環、オキセタン環およびテトラヒドロフラン環から選ばれる脂肪族環状エーテル基、n=1〜3、‐Rf‐、‐Rf、‐Rf、‐Rf、‐Rfは前記と同じ)で示される重合性環状基を持つパーフルオロ基含有化合物のうち、少なくとも前記式(II)のパーフルオロ基含有化合物が含まれていることを特徴とする重合性組成物。
  4. 請求項3に記載の重合性組成物に、前記パーフルオロ基含有化合物以外の重合性環状基を持つ化合物が含まれていることを特徴とする重合性組成物。
  5. 活性エネルギー線を照射することにより請求項1〜のいずれかに記載の重合性組成物が重合した膜状硬化物。
  6. 活性エネルギー線を照射することにより請求項3〜4のいずれかに記載の重合性組成物が重合した膜状硬化物。
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