本発明は、複数のマイクロホン素子(以下、単に「マイクロホン」と称す。)からなるマイクロホンアレイを有する受音装置に関するものである。
従来から音声入力装置として、特定話者方向に指向特性をもったマイクロホン装置が提案されている(たとえば、下記特許文献1を参照。)。このマイクロホン装置では、平面上に複数のマイクロホンを配列し、各マイクロホン出力を、それぞれ遅延回路を経て加算して出力を得る指向性マイクロホンであり、無音検出機能部が、各マイクロホン出力信号間における、信号間の所定の時間差範囲に対する相互相関関数値と、設定された音源位置に対応する信号間の時間差に対する相互相関関数との比を求めて、この比の値が予め定められた閾値条件を満たすとき、設定された位置に音源があることを検出することによって、有音/無音の判定を行う。
しかしながら、上述したマイクロホン装置を室内など、比較的狭い空間に配置する場合、室内の壁面やテーブル上に配置される場合が殆どである。このように、従来のマイクロホン装置を、壁面やテーブル上に設置すると、壁面やテーブルからの反射波音波の影響で、不明瞭な音声になることが知られており、特に音声認識システムで、その音声を認識させた場合、認識率が低下するという問題があった。
また、バウンダリマイクロホン装置は、話者からの直接の音波のみを受音し、壁面等からの反射波を受音しないように工夫されているが、複数のバウンダリマイクを利用して、マイクロホンアレイ装置として動作させる場合は、バウンダリマイクの構造の複雑さから、バウンダリマイクロホン特性の個体差により、指向性性能が十分発揮できないという問題があった。さらに、マイクロホンアレイ装置を車載する場合、車室空間が狭いために、反射音波の影響が著しく、十分な指向性性能が発揮できないという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡単な構成により指向性の向上を図ることができる受音装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる受音装置は、複数のマイクロホンと、前記複数のマイクロホンがそれぞれ収容され特定方向からの音波を入射する複数の開口穴を有する筐体と、を備えることを特徴とする。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数の開口穴ごとに硬さが互いに異なるように構成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数の開口穴における内周壁の硬さが互いに異なるように構成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数の開口穴の形状が互いに異なるように構成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数の開口穴における内周壁の表面形状が互いに異なるように構成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数の開口穴内において、前記音波の伝搬速度を空気よりも遅くする物質を有することとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記音波の伝搬速度を空気よりも遅くする物質の前記各開口穴の内周壁との境界における硬軟分布が、前記複数の開口穴において互いに異なるように構成されていることとしてもよい。
また、本発明にかかる受音装置は、複数のマイクロホンと、前記複数のマイクロホンが収容され特定方向からの音波を入射する開口穴を有する筐体と、を備えることを特徴とする。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数のマイクロホンにそれぞれ対応する前記開口穴における複数の領域ごとに、当該複数の領域の硬さがそれぞれ異なるように構成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数のマイクロホンにそれぞれ対応する前記開口穴における複数の領域の内周壁の硬さがそれぞれ異なるように構成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数のマイクロホンにそれぞれ対応する前記開口穴における複数の領域の形状が互いに異なるように形成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数のマイクロホンにそれぞれ対応する前記開口穴における複数の領域の内周壁の表面形状が互いに異なるように形成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記開口穴内において、前記音波の伝搬速度を空気よりも遅くする物質を有することとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記音波の伝搬速度を空気よりも遅くする物質の前記開口穴の内周壁との境界における硬軟分布が、前記複数の領域において互いに異なるように構成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記複数のマイクロホンは、無指向性のマイクロホンであることとしてもよい。
本発明にかかる受音装置は、簡単な構成により指向性の向上を図ることができるという効果を奏する。
図1は、この発明の実施の形態1にかかる受音装置を含む音声処理装置を示すブロック図である。
図2は、図1に示した受音装置の外観を示す斜視図である。
図3は、実施例1にかかる受音装置の断面図である。
図4は、実施例2にかかる受音装置の断面図である。
図5は、実施例3にかかる受音装置の断面図である。
図6は、実施例3にかかる受音装置の他の例を示す断面図である。
図7は、実施例3にかかる受音装置の他の例を示す断面図である。
図8は、実施例4にかかる受音装置の断面図である。
図9は、実施例5にかかる受音装置の断面図である。
図10は、実施例6にかかる受音装置の断面図である。
図11は、この発明の実施の形態2にかかる受音装置の外観を示す斜視図である。
図12は、実施例7にかかる受音装置の断面図である。
図13は、実施例8にかかる受音装置の断面図である。
図14は、実施例9にかかる受音装置の断面図である。
図15は、実施例9にかかる受音装置の他の例を示す断面図である。
図16は、実施例9にかかる受音装置の別の例を示す断面図である。
図17は、実施例10にかかる受音装置の断面図である。
図18は、実施例11にかかる受音装置の断面図である。
図19は、実施例12にかかる受音装置の断面図である。
図20は、従来の受音装置による位相差スペクトルを示すグラフである。
図21は、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置の位相差スペクトルを示すグラフである。
図22は、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置の適用例を示す説明図である。
図23は、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置の適用例を示す説明図である。
図24は、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置の適用例を示す説明図である。
符号の説明
100 音声処理装置
101 受音装置
102 信号処理部
103 スピーカ
110 筐体
111,112 マイクロホン
113 マイクロホンアレイ
121 同相化回路
122 加算回路
123 音源判定回路
124 乗算回路
200 前面
201,202,802,912,1100 開口穴
210 背面
220 支持部材
301,302,502,601,701,702,812,902,1201,1301,1302,1402,1501,1601,1602,1701,1702,1802 内周壁
411,412,1311,1312 セル
500,600,1400,1500 吸音部材
1000 ゲル状物質
1001 硬化領域
1002 軟化領域
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる受音装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
まず、この発明の実施の形態1にかかる受音装置を含む音声処理装置について説明する。図1は、この発明の実施の形態1にかかる受音装置を含む音声処理装置を示すブロック図である。図1において、音声処理装置100は、受音装置101と、信号処理部102と、スピーカ103と、を備えている。
受音装置101は、筐体110と、複数(図2では簡略化のため2個)のマイクロホン111,112からなるマイクロホンアレイ113と、から構成されている。マイクロホンアレイ113は、所定間隔dで配置されている。マイクロホンアレイ113は、外部から到来してくる音波SWを所定の位相差で受音する。すなわち、距離a(a=d・sinθ)分ずれた時間差τ(τ=a/c、cは音速)を有することとなる。
信号処理部102は、マイクロホンアレイ113からの出力信号に基づいて、目的音源からの音声を推定する。具体的には、たとえば、信号処理部102は、基本構成として、同相化回路121と、加算回路122と、音源判定回路123と、乗算回路124と、を備えている。同相化回路121は、マイクロホン112からの出力信号をマイクロホン111からの出力信号と同相化する。加算回路122は、マイクロホン111からの出力信号と同相化回路121からの出力信号とを加算する。
音源判定回路123は、マイクロホンアレイ113からの出力信号に基づいて音源を判定し、1ビットの判定結果を出力(「1」の場合は目的音源、「0」の場合は雑音源)する。乗算回路124は、加算回路122からの出力信号と音源判定回路123からの判定結果とを乗算する。また、スピーカ103は、信号処理部102によって推定された音声信号、すなわち乗算回路124からの出力信号に応じた音声を出力する。
つぎに、図1に示した受音装置101について説明する。図2は、図1に示した受音装置101の外観を示す斜視図である。図2において、受音装置101の筐体110は、たとえば、直方体形状とされている。また、筐体110は、たとえば、アクリル系樹脂、シリコンゴム、ウレタン、アルミニウムから選ばれた吸音部材で形成されている。そして、筐体110の前面200には、マイクロホンアレイ113を構成するマイクロホン111,112の数(図2では2個)に応じた複数(図2では2個)の開口穴201,202が形成されている。開口穴201,202は、筐体101の長手方向に沿って一列に形成されている。
また、開口穴201,202は内部で閉塞しており、背面210を貫通しない。さらに、マイクロホン111,112は各開口穴201,202の略中央に配置され、支持部材220によって固定支持されている。なお、マイクロホン111,112の設置位置は、開口穴201,202の内部において、開口211,212から望む位置に配置されていればよい。以下に、この発明の実施の形態にかかる受音装置の実施例1〜6について図3〜図10を用いて説明する。
まず、実施例1にかかる受音装置について説明する。図3は、実施例1にかかる受音装置の断面図である。この図3に示した断面図は、図2に示した受音装置の断面図の一例である。なお、図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図3において、開口穴201,202は略球形状とされており、筐体110の前面200に形成されている開口211,212から音波を入射する。開口穴201,202の形状は、球形状に限らず、ランダムな曲面からなる立体形状や多面体形状であってもよい。外部からの音波は、この開口211,212からのみ入射され、それ以外の方向からの音波は、吸音部材で形成されている筐体110によって遮蔽されているため入射されない。これにより、マイクロホンアレイ113の指向性の向上を図ることができる。
この構成によれば、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。一方、開口穴201,202の内周壁301,302に到達する音波SWbは、開口穴201,202の内周壁301を透過し、内周壁301,302で吸音され、あるいは、内周壁301,302で反射されて開口穴201,202から出射される。これにより、音波SWbの受音を抑制することができる。
このように、この実施例1にかかる受音装置101によれば、所定方向からのみ到来する音波を受音するとともに、所定方向以外の方向から到来する音波の受音を防止することにより、目的音波を精度よく検出することができ、指向性の高い受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例2にかかる受音装置について説明する。実施例2にかかる受音装置は、各開口穴の内周壁の材質が異なる例である。図4は、実施例2にかかる受音装置の断面図である。この図4に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2および図3に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図4において、筐体110は、マイクロホン111,112ごとに硬さが異なる吸音部材からなる複数(図4では2個)のセル411,412によって構成されている。開口穴201,202はセル411,412ごとに形成されており、開口穴201,202ごとにマイクロホン111,112が収容されている。セル411,412の材質は、たとえば、上述したアクリル系樹脂、シリコンゴム、ウレタン、アルミニウムから選ばれる。具体的には、たとえば、一方のセル411の材質をアクリル系樹脂、他方のセル412の材質をシリコンゴムとすることができる。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、セル411,412の開口穴201,202の内周壁301,302に到達した音波SWc(SWc1,SWc2)は、開口穴201,202の内周壁301,302で反射される。このとき、一方のセル411の開口穴201の内周壁301で反射された音波SWc1は、一方のセル411の材質に応じて位相が変化する。
また、他方のセル412の開口穴202の内周壁302で反射された音波SWc2は、他方のセル412の材質に応じて位相が変化する。一方のセル411と他方のセル412とは材質の硬さが異なるため、音波SWc1,SWc2の位相変化も異なることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例2にかかる受音装置101によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、簡単な構成により、不要な方向からの音波SWcの位相差を乱して、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例3にかかる受音装置101について説明する。実施例3にかかる受音装置は、各開口穴の内周壁を構成する筐体や吸音部材の材質が異なる例である。図5は、実施例3にかかる受音装置の断面図である。この図5に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2〜図4に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図5において、開口穴202の内周壁502は、筐体110とは硬さが異なるポーラス状の吸音部材500で形成されている。筐体110および内周壁502を構成する吸音部材500の材質は、たとえば、上述したアクリル系樹脂、シリコンゴム、ウレタン、アルミニウムから選ばれる。具体的には、たとえば、筐体110の材質をアクリル系樹脂とした場合、内周壁502を構成する吸音部材500の材質はアクリル系樹脂以外の材質、たとえばシリコンゴムとする。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、一方の開口穴201の内周壁301に到達した音波SWc1は、開口穴201の内周壁301で反射される。このとき、一方の開口穴201の内周壁301で反射された音波SWc1は、筐体110の材質に応じて位相が変化する。
また、他方の開口穴202の内周壁502で反射された音波SWc2は、他方の内周壁502を構成する吸音部材500の材質に応じて位相が変化する。一方の開口穴201の内周壁301を構成する筐体110の材質と他方の開口穴202の内周壁502を構成する吸音部材500の材質とは硬さが異なるため、音波SWc1,SWc2の位相変化も異なることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
つぎに、図5に示した受音装置101の他の例について説明する。図6は、実施例3にかかる受音装置101の他の例を示す断面図である。図6において、両開口穴201,202の内周壁601,502は、互いに異なる吸音部材600,500で構成されている。吸音部材600の材質も、吸音部材500と同様、たとえば、上述したアクリル系樹脂、シリコンゴム、ウレタン、アルミニウムから選ばれる。具体的には、たとえば、内周壁601を構成する吸音部材600の材質をアクリル系樹脂とした場合、内周壁502を構成する吸音部材500の材質はアクリル系樹脂以外の材質、たとえばシリコンゴムとする。
この構成でも、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、一方の開口穴201の内周壁601に到達した音波SWc1は、一方の開口穴201の内周壁601で反射される。このとき、一方の開口穴201の内周壁601で反射された音波SWc1は、筐体110の材質に応じて位相が変化する。
また、他方の開口穴202の内周壁502で反射された音波SWc2は、内周壁502を構成する吸音部材500の材質に応じて位相が変化する。一方の開口穴201の内周壁601を構成する吸音部材600の材質と他方の開口穴202の内周壁502を構成する吸音部材500の材質とは硬さが異なるため、音波SWc1,SWc2の位相変化も異なることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
つぎに、図5に示した受音装置101の別の例について説明する。図7は、実施例3にかかる受音装置101の他の例を示す断面図である。図7において、一方の開口穴201の内周壁701は、複数(図では2種類)の吸音部材500,600から構成されている。また、他方の開口穴202の内周壁702も複数(図では2種類)の吸音部材500,600から構成されている。
吸音部材500,600の配置は、両開口穴201,202で異なっており、各開口穴201,202において同一の音波が到達した場合には、互いに異なる吸音部材500(600)の表面で反射されることとなる。これにより、両内周壁701,702において反射される音波SWc1,SWc2の位相をよりランダムに変化させることができる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例3にかかる受音装置101によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、簡単な構成により、不要な方向からの音波SWcの位相差を乱して、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例4にかかる受音装置について説明する。実施例4にかかる受音装置は、各開口穴の形状が異なる例である。図8は、実施例4にかかる受音装置の断面図である。この図8に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図8において、両開口穴201,802は、互いに異なる形状で構成されている。図8では一例として、一方の開口穴201を断面略円形状、すなわち略球形状としており、また、他方の開口穴802を断面略多角形状、すなわち略多面体形状としている。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、一方の開口穴201の内周壁301に到達した音波SWc1は、一方の開口穴201の内周壁301で反射されて、マイクロホン111に受音される。
また、他方の開口穴802の内周壁812に到達した音波SWc2は、他方の開口穴202の内周壁812で反射されて、マイクロホン112に受音される。ここで、筐体110における開口穴201,802は互いに異なる形状であるため、音波SWc1の反射行路長と音波SWc2の反射行路長とが異なる行路長となる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例4にかかる受音装置101によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、簡単な構成により、特に、開口穴の形状を異ならせるだけで、不要な方向からの音波SWcの位相差を乱して、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例5にかかる受音装置について説明する。実施例5にかかる受音装置は、各開口穴の形状が異なる例である。図9は、実施例5にかかる受音装置の断面図である。この図9に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図9において、開口穴201,912は、同一形状とされている。図9では、一例として、両開口穴201,912は、同一の断面略円形状、すなわち略球形状とされている。開口穴201の表面となる内周壁301が平滑面とされている一方、開口穴912の表面となる内周壁902は、ランダムな凹凸(突起)が形成されている。この凹凸の高低差は自由に設定することができるが、音波の振動によって折れない程度の突起にすればよい。実際には、高低差は2[mm]〜4[mm]で、より具体的には3[mm]の高低差が好ましい。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、一方の開口穴201の内周壁301に到達した音波SWc1は、一方の開口穴201の内周壁301で反射されて、マイクロホン111に受音される。
また、他方の開口穴912の内周壁902に到達した音波SWc2は、他方の開口穴202の内周壁902で反射されて、マイクロホン112に受音される。ここで、筐体110における開口穴201,912は互いに異なる形状であるため、音波SWc1の反射行路長と音波SWc2の反射行路長とが異なる行路長となる。
これにより、音波SWcは、音波SWc1の反射行路長と音波SWc2の反射行路長との行路差に応じた位相差を生じることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例5にかかる受音装置101によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、この実施例5では、両開口穴201,912を同一の型で形成して同一形状とし、開口穴912の表面にだけ凹凸を施すことにより内周壁301とは異なる内周壁902を形成でき、受音装置を簡単に作成することができるという効果を奏する。また、内周壁301も内周壁902と同様な、内周壁902とは異なるランダムな凹凸(突起)を形成しても同様の作用効果を奏する。
さらに、このような簡単な構成により、特に、開口穴の表面形状を異ならせるだけで、不要な方向からの音波SWcの位相差を乱して、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例6にかかる受音装置について説明する。実施例6にかかる受音装置は、各開口穴にゲル状物質を充填した例である。図10は、実施例6にかかる受音装置の断面図である。この図10に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図10において、各開口穴201,202は、同一の断面略楕円形状、すなわち略楕円球形状とされている。開口穴201,202には、ゲル状物質1000が充填されている。このゲル状物質1000におけるゲルの組成としては、たとえば、ゼラチンゲル、PVA(ポリビニルアルコール)ゲル、IPA(イソプロピルアクリルアミド)ゲルなどが挙げられる。
また、ゲル状物質1000は、空気に比べて音波の伝搬速度を約1/4程度に減速する。開口穴201,202とゲル状物質1000との境界には、硬化領域1001と軟化領域1002がランダムに形成され、この領域1001,1002が開口穴201,202の内周壁を構成する。これにより、開口穴201,202ごとに、内周壁におけるゲル状物質1000の硬軟分布が異なることとなる。
また、各開口211,212の略中央にマイクロホン111,112が設けられている。ゲル状物質1000は筐体110の前面200と略面一となるため、マイクロホン111,112は、ゲル状物質1000にやや埋め込まれるようにして備えられ、その一部は、ゲル状物質1000から表出するようになっている。すなわち、マイクロホン111,112は、ゲル状物質1000によって固定支持されているため、上述した実施例1〜5のように筐体110と支持部材220を用いる必要がなく、構造の簡素化、部品点数の減少および作製の容易化を図ることができる。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、開口211におけるゲル状物質1000に到達した音波SWc1は、ゲル状物質1000の内部を、空気の1/4程度の音速で伝搬して、たとえば硬化領域1001に到達する。この硬化領域1001では音波SWc1は固定端反射する。
また、開口212におけるゲル状物質1000に到達した音波SWc2は、ゲル状物質1000の内部を、空気の1/4程度の音速で伝搬して、たとえば軟化領域1002に到達する。この軟化領域1002では音波SWc2は自由端反射する。このように、反射する領域によって音波SWcはランダムに固定端反射または自由端反射するため、位相差がランダムに変化することとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例6にかかる受音装置101によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、この実施例6では、開口穴201,202にゲル状物質1000を充填したことにより、ゲル状物質1000内の音波の伝搬速度を空気よりも1/4程度減速することができる。したがって、開口穴201,202内部が空気の場合に比べて、筐体110のサイズも1/4程度に小型化することができるとともに、反射される音波SWcの位相差をランダムに変化させることができるという効果を奏する。
さらに、開口穴201,202にゲル状物質1000を充填して硬軟分布がランダムな内周壁を形成することにより、反射音波SWcの位相をランダムに変化させることができる。これにより、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。なお、ゲル状物質1000の組成分布が異なっていれば、音波SWcが乱反射して位相がランダムに変化するため、ゲルの組成自体は左右で同一であってもよい。
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2にかかる受音装置を含む音声処理装置について説明する。上述した実施の形態1にかかる音声処理装置は、複数(図では2個)の開口穴を有する受音装置101を備えているが、実施の形態2にかかる音声処理装置は、単一の開口穴を有する受音装置を備えている。なお、図1および図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
まず、この発明の実施の形態2にかかる受音装置の外観について説明する。図11は、この発明の実施の形態2にかかる受音装置の外観を示す斜視図である。図11において、筐体110の前面200には、単一の開口穴1100が形成されている。
また、開口穴1100は内部で閉塞しており、背面210を貫通しない。さらに、マイクロホン111,112は開口穴1100において、筐体110の長手方向に所定間隔dで配置され、支持部材220によって固定支持されている。なお、マイクロホン111,112の設置位置は、開口穴1100の内部において、開口1110から望む位置に配置されていればよい。以下に、この発明の実施の形態2にかかる受音装置101の実施例7〜12について図12〜図19を用いて説明する。
まず、実施例7にかかる受音装置101について説明する。図12は、実施例7にかかる受音装置の断面図である。この図12に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図12において、開口穴1100は、断面略楕円形状、すなわち略楕円球形状とされており、筐体110の前面200に形成されている開口1110から音波を入射する。開口穴1100の形状は、略楕円球形状に限らず、ランダムな曲面からなる立体形状や多面体形状であってもよい。外部からの音波は、この開口1110からのみ入射され、それ以外の方向からの音波は、吸音部材で形成されている筐体110によって遮蔽されているため入射されない。これにより、マイクロホンアレイ113の指向性の向上を図ることができる。
この構成によれば、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。一方、開口穴1100の内周壁1201に到達する音波SWbは、開口穴1100の内周壁1201を透過し、内周壁1201で吸音され、あるいは、内周壁1201で反射されて開口穴110から出射される。これにより、音波SWbの受音を抑制することができる。
このように、この実施例7にかかる受音装置101によれば、所定方向からのみ到来する音波を受音するとともに、所定方向以外の方向から到来する音波の受音を防止することにより、目的音波を精度よく検出することができ、指向性の高い受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例8にかかる受音装置について説明する。実施例8にかかる受音装置は、開口穴の内周壁の材質が異なる例である。図13は、実施例8にかかる受音装置の断面図である。この図13に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2および図12に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図13において、筐体110は、マイクロホン111,112ごとに硬さが異なる吸音部材からなる複数(図13では2個)のセル1311,1312によって構成されている。開口穴1100はセル1311,1312ごとに形成されている。セル1311,1312の材質は、たとえば、上述したアクリル系樹脂、シリコンゴム、ウレタン、アルミニウムから選ばれる。具体的には、たとえば、一方のセル1311の材質をアクリル系樹脂、他方のセル1312の材質をシリコンゴムとする。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、セル1311,1312の内周壁1301,1302に到達した音波SWc(SWc1,SWc2)は、内周壁1301,1302で反射される。このとき、一方のセル1311の内周壁1301で反射された音波SWc1は、一方のセル1311の材質に応じて位相が変化する。
また、他方のセル1312の内周壁1302で反射された音波SWc2は、他方のセル1312の材質に応じて位相が変化する。一方のセル1311と他方のセル1312とは材質の硬さが異なるため、音波SWc1,SWc2の位相変化も異なることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例8にかかる受音装置101によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、簡単な構成により、不要な方向からの音波SWcの位相差を乱して、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例9にかかる受音装置について説明する。実施例9にかかる受音装置は、開口穴の内周壁を構成する筐体や吸音部材の材質が異なる例である。図14は、実施例9にかかる受音装置の断面図である。この図14に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2、図12、図13に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図14において、開口穴1100の内周壁1402は、筐体110とは硬さが異なる吸音部材1400で形成されている。筐体110および内周壁1402を構成する吸音部材1400の材質は、たとえば、上述したアクリル系樹脂、シリコンゴム、ウレタン、アルミニウムから選ばれる。具体的には、たとえば、筐体110の材質をアクリル系樹脂とした場合、内周壁1402を構成する吸音部材1400の材質はアクリル系樹脂以外の材質、たとえばシリコンゴムとする。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、筐体110の内周壁1201に到達した音波SWc1は、内周壁1201で反射される。このとき、内周壁1201で反射された音波SWc1は、筐体110の材質に応じて位相が変化する。
また、内周壁1402で反射された音波SWc2は、内周壁1402を構成する吸音部材1400の材質に応じて位相が変化する。内周壁1201を構成する筐体110の材質と内周壁1402を構成する吸音部材1400の材質とは硬さが異なるため、音波SWc1,SWc2の位相変化も異なることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
つぎに、図14に示した受音装置101の他の例について説明する。図15は、実施例9にかかる受音装置101の他の例を示す断面図である。図15において、開口穴1100の内周壁1501,1402は、互いに硬さが異なる吸音部材1500,1400で構成されている。
吸音部材1500の材質も、吸音部材1400と同様、たとえば、上述したアクリル系樹脂、シリコンゴム、ウレタン、アルミニウムから選ばれる。具体的には、たとえば、内周壁1501を構成する吸音部材1500の材質をアクリル系樹脂とした場合、内周壁1402を構成する吸音部材1400の材質はアクリル系樹脂以外の材質、たとえばシリコンゴムとする。
この構成でも、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、内周壁1501に到達した音波SWc1は、内周壁1501で反射される。このとき、内周壁1501で反射された音波SWc1は、内周壁1501を構成する吸音部材1500の材質に応じて位相が変化する。
また、内周壁1402で反射された音波SWc2は、内周壁1402を構成する吸音部材1400の材質に応じて位相が変化する。内周壁1501を構成する吸音部材1500の材質と内周壁1402を構成する吸音部材1400の材質とは硬さが異なるため、音波SWc1,SWc2の位相変化も異なることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
つぎに、図14に示した受音装置101の別の例について説明する。図16は、実施例9にかかる受音装置101の他の例を示す断面図である。図16において、内周壁1600(1601,1602)は、複数(図では2種類)の吸音部材1400,1500から構成されている。
吸音部材1400,1500の配置や領域の大きさはランダムであるため、内周壁1601,1602の配置や領域の大きさはランダムである。したがって、同一の音波が到達した場合には、互いに異なる吸音部材1400(1500)の表面で反射されることとなる。これにより、両内周壁1601,1602において反射される音波SWc1,SWc2の位相をよりランダムに変化させることができる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例9にかかる受音装置101によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、簡単な構成により、不要な方向からの音波SWcの位相差を乱して、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例10にかかる受音装置について説明する。実施例10にかかる受音装置は、マイクロホンごとに対応する開口穴の形状が異なる例である。図17は、実施例10にかかる受音装置の断面図である。この図17に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図17において、開口穴1100の左半分と右半分は、互いに異なる形状で構成されている。図17では一例として、開口穴1100の左半分を断面略円形状、すなわち略球形状としており、また、開口穴1100の右半分を断面略多角形状、すなわち略多面体形状としている。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、開口穴1100の左半分の内周壁1701に到達した音波SWc1は、内周壁1701で反射されて、マイクロホン111に受音される。
また、開口穴1100の右半分の内周壁1702に到達した音波SWc2は、内周壁1702で反射されて、マイクロホン112に受音される。ここで、開口穴1100の左半分と右半分は、互いに異なる形状で構成されているため、音波SWc1の反射行路長と音波SWc2の反射行路長とは、異なる行路長となる。
これにより、音波SWcは、音波SWc1の反射行路長と音波SWc2の反射行路長との行路差に応じた位相差を生じることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例10にかかる受音装置101によれば、実施例7と同様の作用効果を奏する。また、簡単な構成により、特に、開口穴の形状を異ならせるだけで、不要な方向からの音波SWcの位相差を乱して、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例11にかかる受音装置について説明する。実施例11にかかる受音装置は、マイクロホンごとに対応する開口穴の表面形状が異なる例である。図18は、実施例11にかかる受音装置の断面図である。この図18に示した断面図は、図2に示した受音装置の断面図の一例である。なお、図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図18において、開口穴1100は、断面略円形状、すなわち略球形状とされている。開口穴1100の左半分の表面となる内周壁1701は平滑面とされている一方、開口穴1100の右半分の表面となる内周壁1802は、ランダムな凹凸(突起)が形成されている。この凹凸の高低差は自由に設定することができるが、音波の振動によって折れない程度の突起にすればよい。実際には、高低差は2[mm]〜4[mm]で、より具体的には3[mm]の高低差が好ましい。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、音波SWcは開口穴1100に入射する。このうち、内周壁1701に到達した音波SWc1は、内周壁1701で反射されて、マイクロホン111に受音される。
また、開口穴1100の右半分の内周壁1802に到達した音波SWc2は、内周壁1802で反射されて、マイクロホン112に受音される。ここで、開口穴1100における内周壁1701,1802は、互いに異なる表面形状であるため、音波SWc1の反射行路長と音波SWc2の反射行路長とが異なる行路長となる。
これにより、音波SWcは、音波SWc1の反射行路長と音波SWc2の反射行路長との行路差に応じた位相差を生じることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例11にかかる受音装置101によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、この実施例11では、開口穴1100の右半分の表面にだけ凹凸を施すことにより、開口穴1100の左半分の内周壁1701とは表面形状が異なる内周壁1802を形成でき、受音装置101を簡単に作成することができるという効果を奏する。また、内周壁1701も内周壁1802と同様な、内周壁1802とは異なるランダムな凹凸(突起)を形成しても同様の作用効果を奏する。
さらに、このような簡単な構成により、特に、開口穴の表面形状を異ならせるだけで、不要な方向からの音波SWcの位相差を乱して、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例12にかかる受音装置について説明する。実施例12にかかる受音装置は、開口穴にゲル状物質を充填した例である。図19は、実施例12にかかる受音装置の断面図である。この図19に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図19において、開口穴1100は、断面略楕円形状、すなわち略楕円球形状とされている。開口穴1100には、ゲル状物質1000が充填されている。このゲル状物質1000におけるゲルの組成としては、たとえば、ゼラチンゲル、PVA(ポリビニルアルコール)ゲル、IPA(イソプロピルアクリルアミド)ゲルなどが挙げられる。
また、ゲル状物質1000は、空気に比べて音波の伝搬速度を約1/4程度に減速する。開口穴1100とゲル状物質1000との境界には、硬化領域1001と軟化領域1002がランダムに形成され、この領域1001,1002が開口穴1100の内周壁を構成する。これにより、内周壁におけるゲル状物質1000の硬軟分布が異なることとなる。
また、開口1110の略中央にマイクロホン111,112が設けられている。ゲル状物質1000は筐体110の前面200と略面一となるため、マイクロホン111,112は、ゲル状物質1000にやや埋め込まれるようにして備えられ、その一部は、ゲル状物質1000から表出するようになっている。すなわち、マイクロホン111,112は、ゲル状物質1000によって固定支持されているため、上述した実施例7〜11のように支持部材220を用いる必要がなく、構造の簡素化、部品点数の減少および作製の容易化を図ることができる。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、開口211におけるゲル状物質1000に到達した音波SWc1は、ゲル状物質1000の内部を、空気の1/4程度の音速で伝搬して、たとえば硬化領域1001に到達する。この硬化領域1001では音波SWc1は固定端反射する。
また、開口1110におけるゲル状物質1000に到達した音波SWc2は、ゲル状物質1000の内部を、空気の1/4程度の音速で伝搬して、たとえば軟化領域1002に到達する。この軟化領域1002では音波SWc2は自由端反射する。このように、反射する領域によって音波SWcはランダムに固定端反射または自由端反射するため、位相差がランダムに変化することとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例12にかかる受音装置101によれば、実施例7と同様の作用効果を奏する。また、この実施例12では、開口穴1100にゲル状物質1000を充填したことにより、ゲル状物質1000内の音波の伝搬速度を空気よりも1/4程度減速することができる。したがって、開口穴1100内部が空気の場合に比べて、筐体110のサイズも1/4程度に小型化することができるとともに、反射される音波SWcの位相差をランダムに変化させることができるという効果を奏する。
(位相差スペクトルの比較)
つぎに、従来の受音装置による位相差スペクトルと、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置の位相差スペクトルについて説明する。図20は、従来の受音装置による位相差スペクトルを示すグラフであり、図21は、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置の位相差スペクトルを示すグラフである。図20および図21に示したグラフにおいて、縦軸は位相差(±π)、横軸は受音した音波の周波数(0〜5.5[kHz])である。また、点線は、理論直線である。
図20と図21に示したグラフを比較すると、図20に示した位相差スペクトルの波形2000は、理論直線との差が大きいが、図21に示した位相差スペクトルの波形2100は、理論直線との差は少ない。したがって、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置では、目的音源からの音波を精度よく受音することができ、雑音源からの音声を除去することができる。
(受音装置の適用例)
つぎに、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置の適用例について説明する。図22〜図24は、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置の適用例を示す説明図である。図22は、ビデオカメラに適用した例である。受音装置101は、ビデオカメラ2200に内蔵されており、前面200とスリット板部2201とが当接する。また、図23は、腕時計に適用した例である。
受音装置101は、腕時計2300の時計盤の左右両端に内蔵され、それぞれ前面200とスリット板部2301とが当接する。また、図24は、携帯電話機に適用した例である。受音装置101は、携帯電話機2400の送話部に内蔵され、前面200とスリット板部2401とが当接する。これにより、目的音源からの音波を精度よく受音することができる。
以上説明したように、この発明の実施の形態では、所定方向からのみ到来する音波を受音するとともに、所定方向以外の方向から到来する音波の受音を防止することにより、目的音源からの音波を精度よく検出することができ、マイクロホンアレイの指向性の高い受音装置を実現することができるという効果を奏する。また、簡単な構成により、不要な方向からの音波の位相差を乱して、目的音源からの音波を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
なお、上述した実施の形態1、2においては、マイクロホン111,112を一列に配置したが、受音装置101を適用する環境や装置に応じて2次元的に配置することとしてもよい。また、上述した実施の形態1,2に適用したマイクロホン111,112は、無指向性のマイクロホンであることが好ましい。これにより、安価な受音装置を提供することができる。
以上のように、本発明にかかる受音装置は、室内や車内など所定の閉空間で用いるマイクロホンアレイに有用であり、特に、テレビ会議、工場内の作業ロボット、ビデオカメラ、腕時計、携帯電話機などに適している。
本発明は、複数のマイクロホン素子(以下、単に「マイクロホン」と称す。)からなるマイクロホンアレイを有する受音装置に関するものである。
従来から音声入力装置として、特定話者方向に指向特性をもったマイクロホン装置が提案されている(たとえば、下記特許文献1を参照。)。このマイクロホン装置では、平面上に複数のマイクロホンを配列し、各マイクロホン出力を、それぞれ遅延回路を経て加算して出力を得る指向性マイクロホンであり、無音検出機能部が、各マイクロホン出力信号間における、信号間の所定の時間差範囲に対する相互相関関数値と、設定された音源位置に対応する信号間の時間差に対する相互相関関数との比を求めて、この比の値が予め定められた閾値条件を満たすとき、設定された位置に音源があることを検出することによって、有音/無音の判定を行う。
しかしながら、上述したマイクロホン装置を室内など、比較的狭い空間に配置する場合、室内の壁面やテーブル上に配置される場合が殆どである。このように、従来のマイクロホン装置を、壁面やテーブル上に設置すると、壁面やテーブルからの反射波音波の影響で、不明瞭な音声になることが知られており、特に音声認識システムで、その音声を認識させた場合、認識率が低下するという問題があった。
また、バウンダリマイクロホン装置は、話者からの直接の音波のみを受音し、壁面等からの反射波を受音しないように工夫されているが、複数のバウンダリマイクを利用して、マイクロホンアレイ装置として動作させる場合は、バウンダリマイクの構造の複雑さから、バウンダリマイクロホン特性の個体差により、指向性性能が十分発揮できないという問題があった。さらに、マイクロホンアレイ装置を車載する場合、車室空間が狭いために、反射音波の影響が著しく、十分な指向性性能が発揮できないという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡単な構成により指向性の向上を図ることができる受音装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる受音装置は、複数のマイクロホンと、前記複数のマイクロホンがそれぞれ収容され特定方向からの音波を入射する複数の開口穴を有する筐体と、を備えることを特徴とする。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数の開口穴ごとに硬さが互いに異なるように構成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数の開口穴における内周壁の硬さが互いに異なるように構成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数の開口穴の形状が互いに異なるように構成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数の開口穴における内周壁の表面形状が互いに異なるように構成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数の開口穴内において、前記音波の伝搬速度を空気よりも遅くする物質を有することとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記音波の伝搬速度を空気よりも遅くする物質の前記各開口穴の内周壁との境界における硬軟分布が、前記複数の開口穴において互いに異なるように構成されていることとしてもよい。
また、本発明にかかる受音装置は、複数のマイクロホンと、前記複数のマイクロホンが収容され特定方向からの音波を入射する開口穴を有する筐体と、を備えることを特徴とする。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数のマイクロホンにそれぞれ対応する前記開口穴における複数の領域ごとに、当該複数の領域の硬さがそれぞれ異なるように構成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数のマイクロホンにそれぞれ対応する前記開口穴における複数の領域の内周壁の硬さがそれぞれ異なるように構成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数のマイクロホンにそれぞれ対応する前記開口穴における複数の領域の形状が互いに異なるように形成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記複数のマイクロホンにそれぞれ対応する前記開口穴における複数の領域の内周壁の表面形状が互いに異なるように形成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記開口穴内において、前記音波の伝搬速度を空気よりも遅くする物質を有することとしてもよい。
また、上記発明において、前記筐体は、前記音波の伝搬速度を空気よりも遅くする物質の前記開口穴の内周壁との境界における硬軟分布が、前記複数の領域において互いに異なるように構成されていることとしてもよい。
また、上記発明において、前記複数のマイクロホンは、無指向性のマイクロホンであることとしてもよい。
本発明にかかる受音装置は、簡単な構成により指向性の向上を図ることができるという効果を奏する。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる受音装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
まず、この発明の実施の形態1にかかる受音装置を含む音声処理装置について説明する。図1は、この発明の実施の形態1にかかる受音装置を含む音声処理装置を示すブロック図である。図1において、音声処理装置100は、受音装置101と、信号処理部102と、スピーカ103と、を備えている。
受音装置101は、筐体110と、複数(図2では簡略化のため2個)のマイクロホン111,112からなるマイクロホンアレイ113と、から構成されている。マイクロホンアレイ113は、所定間隔dで配置されている。マイクロホンアレイ113は、外部から到来してくる音波SWを所定の位相差で受音する。すなわち、距離a(a=d・sinθ)分ずれた時間差τ(τ=a/c、cは音速)を有することとなる。
信号処理部102は、マイクロホンアレイ113からの出力信号に基づいて、目的音源からの音声を推定する。具体的には、たとえば、信号処理部102は、基本構成として、同相化回路121と、加算回路122と、音源判定回路123と、乗算回路124と、を備えている。同相化回路121は、マイクロホン112からの出力信号をマイクロホン111からの出力信号と同相化する。加算回路122は、マイクロホン111からの出力信号と同相化回路121からの出力信号とを加算する。
音源判定回路123は、マイクロホンアレイ113からの出力信号に基づいて音源を判定し、1ビットの判定結果を出力(「1」の場合は目的音源、「0」の場合は雑音源)する。乗算回路124は、加算回路122からの出力信号と音源判定回路123からの判定結果とを乗算する。また、スピーカ103は、信号処理部102によって推定された音声信号、すなわち乗算回路124からの出力信号に応じた音声を出力する。
つぎに、図1に示した受音装置101について説明する。図2は、図1に示した受音装置101の外観を示す斜視図である。図2において、受音装置101の筐体110は、たとえば、直方体形状とされている。また、筐体110は、たとえば、アクリル系樹脂、シリコンゴム、ウレタン、アルミニウムから選ばれた吸音部材で形成されている。そして、筐体110の前面200には、マイクロホンアレイ113を構成するマイクロホン111,112の数(図2では2個)に応じた複数(図2では2個)の開口穴201,202が形成されている。開口穴201,202は、筐体101の長手方向に沿って一列に形成されている。
また、開口穴201,202は内部で閉塞しており、背面210を貫通しない。さらに、マイクロホン111,112は各開口穴201,202の略中央に配置され、支持部材220によって固定支持されている。なお、マイクロホン111,112の設置位置は、開口穴201,202の内部において、開口211,212から望む位置に配置されていればよい。以下に、この発明の実施の形態にかかる受音装置の実施例1〜6について図3〜図10を用いて説明する。
まず、実施例1にかかる受音装置について説明する。図3は、実施例1にかかる受音装置の断面図である。この図3に示した断面図は、図2に示した受音装置の断面図の一例である。なお、図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図3において、開口穴201,202は略球形状とされており、筐体110の前面200に形成されている開口211,212から音波を入射する。開口穴201,202の形状は、球形状に限らず、ランダムな曲面からなる立体形状や多面体形状であってもよい。外部からの音波は、この開口211,212からのみ入射され、それ以外の方向からの音波は、吸音部材で形成されている筐体110によって遮蔽されているため入射されない。これにより、マイクロホンアレイ113の指向性の向上を図ることができる。
この構成によれば、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。一方、開口穴201,202の内周壁301,302に到達する音波SWbは、開口穴201,202の内周壁301を透過し、内周壁301,302で吸音され、あるいは、内周壁301,302で反射されて開口穴201,202から出射される。これにより、音波SWbの受音を抑制することができる。
このように、この実施例1にかかる受音装置101によれば、所定方向からのみ到来する音波を受音するとともに、所定方向以外の方向から到来する音波の受音を防止することにより、目的音波を精度よく検出することができ、指向性の高い受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例2にかかる受音装置について説明する。実施例2にかかる受音装置は、各開口穴の内周壁の材質が異なる例である。図4は、実施例2にかかる受音装置の断面図である。この図4に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2および図3に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図4において、筐体110は、マイクロホン111,112ごとに硬さが異なる吸音部材からなる複数(図4では2個)のセル411,412によって構成されている。開口穴201,202はセル411,412ごとに形成されており、開口穴201,202ごとにマイクロホン111,112が収容されている。セル411,412の材質は、たとえば、上述したアクリル系樹脂、シリコンゴム、ウレタン、アルミニウムから選ばれる。具体的には、たとえば、一方のセル411の材質をアクリル系樹脂、他方のセル412の材質をシリコンゴムとすることができる。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、セル411,412の開口穴201,202の内周壁301,302に到達した音波SWc(SWc1,SWc2)は、開口穴201,202の内周壁301,302で反射される。このとき、一方のセル411の開口穴201の内周壁301で反射された音波SWc1は、一方のセル411の材質に応じて位相が変化する。
また、他方のセル412の開口穴202の内周壁302で反射された音波SWc2は、他方のセル412の材質に応じて位相が変化する。一方のセル411と他方のセル412とは材質の硬さが異なるため、音波SWc1,SWc2の位相変化も異なることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例2にかかる受音装置101によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、簡単な構成により、不要な方向からの音波SWcの位相差を乱して、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例3にかかる受音装置101について説明する。実施例3にかかる受音装置は、各開口穴の内周壁を構成する筐体や吸音部材の材質が異なる例である。図5は、実施例3にかかる受音装置の断面図である。この図5に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2〜図4に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図5において、開口穴202の内周壁502は、筐体110とは硬さが異なるポーラス状の吸音部材500で形成されている。筐体110および内周壁502を構成する吸音部材500の材質は、たとえば、上述したアクリル系樹脂、シリコンゴム、ウレタン、アルミニウムから選ばれる。具体的には、たとえば、筐体110の材質をアクリル系樹脂とした場合、内周壁502を構成する吸音部材500の材質はアクリル系樹脂以外の材質、たとえばシリコンゴムとする。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、一方の開口穴201の内周壁301に到達した音波SWc1は、開口穴201の内周壁301で反射される。このとき、一方の開口穴201の内周壁301で反射された音波SWc1は、筐体110の材質に応じて位相が変化する。
また、他方の開口穴202の内周壁502で反射された音波SWc2は、他方の内周壁502を構成する吸音部材500の材質に応じて位相が変化する。一方の開口穴201の内周壁301を構成する筐体110の材質と他方の開口穴202の内周壁502を構成する吸音部材500の材質とは硬さが異なるため、音波SWc1,SWc2の位相変化も異なることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
つぎに、図5に示した受音装置101の他の例について説明する。図6は、実施例3にかかる受音装置101の他の例を示す断面図である。図6において、両開口穴201,202の内周壁601,502は、互いに異なる吸音部材600,500で構成されている。吸音部材600の材質も、吸音部材500と同様、たとえば、上述したアクリル系樹脂、シリコンゴム、ウレタン、アルミニウムから選ばれる。具体的には、たとえば、内周壁601を構成する吸音部材600の材質をアクリル系樹脂とした場合、内周壁502を構成する吸音部材500の材質はアクリル系樹脂以外の材質、たとえばシリコンゴムとする。
この構成でも、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、一方の開口穴201の内周壁601に到達した音波SWc1は、一方の開口穴201の内周壁601で反射される。このとき、一方の開口穴201の内周壁601で反射された音波SWc1は、筐体110の材質に応じて位相が変化する。
また、他方の開口穴202の内周壁502で反射された音波SWc2は、内周壁502を構成する吸音部材500の材質に応じて位相が変化する。一方の開口穴201の内周壁601を構成する吸音部材600の材質と他方の開口穴202の内周壁502を構成する吸音部材500の材質とは硬さが異なるため、音波SWc1,SWc2の位相変化も異なることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
つぎに、図5に示した受音装置101の別の例について説明する。図7は、実施例3にかかる受音装置101の他の例を示す断面図である。図7において、一方の開口穴201の内周壁701は、複数(図では2種類)の吸音部材500,600から構成されている。また、他方の開口穴202の内周壁702も複数(図では2種類)の吸音部材500,600から構成されている。
吸音部材500,600の配置は、両開口穴201,202で異なっており、各開口穴201,202において同一の音波が到達した場合には、互いに異なる吸音部材500(600)の表面で反射されることとなる。これにより、両内周壁701,702において反射される音波SWc1,SWc2の位相をよりランダムに変化させることができる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例3にかかる受音装置101によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、簡単な構成により、不要な方向からの音波SWcの位相差を乱して、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例4にかかる受音装置について説明する。実施例4にかかる受音装置は、各開口穴の形状が異なる例である。図8は、実施例4にかかる受音装置の断面図である。この図8に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図8において、両開口穴201,802は、互いに異なる形状で構成されている。図8では一例として、一方の開口穴201を断面略円形状、すなわち略球形状としており、また、他方の開口穴802を断面略多角形状、すなわち略多面体形状としている。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、一方の開口穴201の内周壁301に到達した音波SWc1は、一方の開口穴201の内周壁301で反射されて、マイクロホン111に受音される。
また、他方の開口穴802の内周壁812に到達した音波SWc2は、他方の開口穴202の内周壁812で反射されて、マイクロホン112に受音される。ここで、筐体110における開口穴201,802は互いに異なる形状であるため、音波SWc1の反射行路長と音波SWc2の反射行路長とが異なる行路長となる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例4にかかる受音装置101によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、簡単な構成により、特に、開口穴の形状を異ならせるだけで、不要な方向からの音波SWcの位相差を乱して、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例5にかかる受音装置について説明する。実施例5にかかる受音装置は、各開口穴の形状が異なる例である。図9は、実施例5にかかる受音装置の断面図である。この図9に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図9において、開口穴201,912は、同一形状とされている。図9では、一例として、両開口穴201,912は、同一の断面略円形状、すなわち略球形状とされている。開口穴201の表面となる内周壁301が平滑面とされている一方、開口穴912の表面となる内周壁902は、ランダムな凹凸(突起)が形成されている。この凹凸の高低差は自由に設定することができるが、音波の振動によって折れない程度の突起にすればよい。実際には、高低差は2[mm]〜4[mm]で、より具体的には3[mm]の高低差が好ましい。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、一方の開口穴201の内周壁301に到達した音波SWc1は、一方の開口穴201の内周壁301で反射されて、マイクロホン111に受音される。
また、他方の開口穴912の内周壁902に到達した音波SWc2は、他方の開口穴202の内周壁902で反射されて、マイクロホン112に受音される。ここで、筐体110における開口穴201,912は互いに異なる形状であるため、音波SWc1の反射行路長と音波SWc2の反射行路長とが異なる行路長となる。
これにより、音波SWcは、音波SWc1の反射行路長と音波SWc2の反射行路長との行路差に応じた位相差を生じることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例5にかかる受音装置101によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、この実施例5では、両開口穴201,912を同一の型で形成して同一形状とし、開口穴912の表面にだけ凹凸を施すことにより内周壁301とは異なる内周壁902を形成でき、受音装置を簡単に作成することができるという効果を奏する。また、内周壁301も内周壁902と同様な、内周壁902とは異なるランダムな凹凸(突起)を形成しても同様の作用効果を奏する。
さらに、このような簡単な構成により、特に、開口穴の表面形状を異ならせるだけで、不要な方向からの音波SWcの位相差を乱して、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例6にかかる受音装置について説明する。実施例6にかかる受音装置は、各開口穴にゲル状物質を充填した例である。図10は、実施例6にかかる受音装置の断面図である。この図10に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図10において、各開口穴201,202は、同一の断面略楕円形状、すなわち略楕円球形状とされている。開口穴201,202には、ゲル状物質1000が充填されている。このゲル状物質1000におけるゲルの組成としては、たとえば、ゼラチンゲル、PVA(ポリビニルアルコール)ゲル、IPA(イソプロピルアクリルアミド)ゲルなどが挙げられる。
また、ゲル状物質1000は、空気に比べて音波の伝搬速度を約1/4程度に減速する。開口穴201,202とゲル状物質1000との境界には、硬化領域1001と軟化領域1002がランダムに形成され、この領域1001,1002が開口穴201,202の内周壁を構成する。これにより、開口穴201,202ごとに、内周壁におけるゲル状物質1000の硬軟分布が異なることとなる。
また、各開口211,212の略中央にマイクロホン111,112が設けられている。ゲル状物質1000は筐体110の前面200と略面一となるため、マイクロホン111,112は、ゲル状物質1000にやや埋め込まれるようにして備えられ、その一部は、ゲル状物質1000から表出するようになっている。すなわち、マイクロホン111,112は、ゲル状物質1000によって固定支持されているため、上述した実施例1〜5のように筐体110と支持部材220を用いる必要がなく、構造の簡素化、部品点数の減少および作製の容易化を図ることができる。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、開口211におけるゲル状物質1000に到達した音波SWc1は、ゲル状物質1000の内部を、空気の1/4程度の音速で伝搬して、たとえば硬化領域1001に到達する。この硬化領域1001では音波SWc1は固定端反射する。
また、開口212におけるゲル状物質1000に到達した音波SWc2は、ゲル状物質1000の内部を、空気の1/4程度の音速で伝搬して、たとえば軟化領域1002に到達する。この軟化領域1002では音波SWc2は自由端反射する。このように、反射する領域によって音波SWcはランダムに固定端反射または自由端反射するため、位相差がランダムに変化することとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例6にかかる受音装置101によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、この実施例6では、開口穴201,202にゲル状物質1000を充填したことにより、ゲル状物質1000内の音波の伝搬速度を空気よりも1/4程度減速することができる。したがって、開口穴201,202内部が空気の場合に比べて、筐体110のサイズも1/4程度に小型化することができるとともに、反射される音波SWcの位相差をランダムに変化させることができるという効果を奏する。
さらに、開口穴201,202にゲル状物質1000を充填して硬軟分布がランダムな内周壁を形成することにより、反射音波SWcの位相をランダムに変化させることができる。これにより、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。なお、ゲル状物質1000の組成分布が異なっていれば、音波SWcが乱反射して位相がランダムに変化するため、ゲルの組成自体は左右で同一であってもよい。
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2にかかる受音装置を含む音声処理装置について説明する。上述した実施の形態1にかかる音声処理装置は、複数(図では2個)の開口穴を有する受音装置101を備えているが、実施の形態2にかかる音声処理装置は、単一の開口穴を有する受音装置を備えている。なお、図1および図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
まず、この発明の実施の形態2にかかる受音装置の外観について説明する。図11は、この発明の実施の形態2にかかる受音装置の外観を示す斜視図である。図11において、筐体110の前面200には、単一の開口穴1100が形成されている。
また、開口穴1100は内部で閉塞しており、背面210を貫通しない。さらに、マイクロホン111,112は開口穴1100において、筐体110の長手方向に所定間隔dで配置され、支持部材220によって固定支持されている。なお、マイクロホン111,112の設置位置は、開口穴1100の内部において、開口1110から望む位置に配置されていればよい。以下に、この発明の実施の形態2にかかる受音装置101の実施例7〜12について図12〜図19を用いて説明する。
まず、実施例7にかかる受音装置101について説明する。図12は、実施例7にかかる受音装置の断面図である。この図12に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図12において、開口穴1100は、断面略楕円形状、すなわち略楕円球形状とされており、筐体110の前面200に形成されている開口1110から音波を入射する。開口穴1100の形状は、略楕円球形状に限らず、ランダムな曲面からなる立体形状や多面体形状であってもよい。外部からの音波は、この開口1110からのみ入射され、それ以外の方向からの音波は、吸音部材で形成されている筐体110によって遮蔽されているため入射されない。これにより、マイクロホンアレイ113の指向性の向上を図ることができる。
この構成によれば、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。一方、開口穴1100の内周壁1201に到達する音波SWbは、開口穴1100の内周壁1201を透過し、内周壁1201で吸音され、あるいは、内周壁1201で反射されて開口穴110から出射される。これにより、音波SWbの受音を抑制することができる。
このように、この実施例7にかかる受音装置101によれば、所定方向からのみ到来する音波を受音するとともに、所定方向以外の方向から到来する音波の受音を防止することにより、目的音波を精度よく検出することができ、指向性の高い受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例8にかかる受音装置について説明する。実施例8にかかる受音装置は、開口穴の内周壁の材質が異なる例である。図13は、実施例8にかかる受音装置の断面図である。この図13に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2および図12に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図13において、筐体110は、マイクロホン111,112ごとに硬さが異なる吸音部材からなる複数(図13では2個)のセル1311,1312によって構成されている。開口穴1100はセル1311,1312ごとに形成されている。セル1311,1312の材質は、たとえば、上述したアクリル系樹脂、シリコンゴム、ウレタン、アルミニウムから選ばれる。具体的には、たとえば、一方のセル1311の材質をアクリル系樹脂、他方のセル1312の材質をシリコンゴムとする。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、セル1311,1312の内周壁1301,1302に到達した音波SWc(SWc1,SWc2)は、内周壁1301,1302で反射される。このとき、一方のセル1311の内周壁1301で反射された音波SWc1は、一方のセル1311の材質に応じて位相が変化する。
また、他方のセル1312の内周壁1302で反射された音波SWc2は、他方のセル1312の材質に応じて位相が変化する。一方のセル1311と他方のセル1312とは材質の硬さが異なるため、音波SWc1,SWc2の位相変化も異なることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例8にかかる受音装置101によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、簡単な構成により、不要な方向からの音波SWcの位相差を乱して、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例9にかかる受音装置について説明する。実施例9にかかる受音装置は、開口穴の内周壁を構成する筐体や吸音部材の材質が異なる例である。図14は、実施例9にかかる受音装置の断面図である。この図14に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2、図12、図13に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図14において、開口穴1100の内周壁1402は、筐体110とは硬さが異なる吸音部材1400で形成されている。筐体110および内周壁1402を構成する吸音部材1400の材質は、たとえば、上述したアクリル系樹脂、シリコンゴム、ウレタン、アルミニウムから選ばれる。具体的には、たとえば、筐体110の材質をアクリル系樹脂とした場合、内周壁1402を構成する吸音部材1400の材質はアクリル系樹脂以外の材質、たとえばシリコンゴムとする。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、筐体110の内周壁1201に到達した音波SWc1は、内周壁1201で反射される。このとき、内周壁1201で反射された音波SWc1は、筐体110の材質に応じて位相が変化する。
また、内周壁1402で反射された音波SWc2は、内周壁1402を構成する吸音部材1400の材質に応じて位相が変化する。内周壁1201を構成する筐体110の材質と内周壁1402を構成する吸音部材1400の材質とは硬さが異なるため、音波SWc1,SWc2の位相変化も異なることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
つぎに、図14に示した受音装置101の他の例について説明する。図15は、実施例9にかかる受音装置101の他の例を示す断面図である。図15において、開口穴1100の内周壁1501,1402は、互いに硬さが異なる吸音部材1500,1400で構成されている。
吸音部材1500の材質も、吸音部材1400と同様、たとえば、上述したアクリル系樹脂、シリコンゴム、ウレタン、アルミニウムから選ばれる。具体的には、たとえば、内周壁1501を構成する吸音部材1500の材質をアクリル系樹脂とした場合、内周壁1402を構成する吸音部材1400の材質はアクリル系樹脂以外の材質、たとえばシリコンゴムとする。
この構成でも、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、内周壁1501に到達した音波SWc1は、内周壁1501で反射される。このとき、内周壁1501で反射された音波SWc1は、内周壁1501を構成する吸音部材1500の材質に応じて位相が変化する。
また、内周壁1402で反射された音波SWc2は、内周壁1402を構成する吸音部材1400の材質に応じて位相が変化する。内周壁1501を構成する吸音部材1500の材質と内周壁1402を構成する吸音部材1400の材質とは硬さが異なるため、音波SWc1,SWc2の位相変化も異なることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
つぎに、図14に示した受音装置101の別の例について説明する。図16は、実施例9にかかる受音装置101の他の例を示す断面図である。図16において、内周壁1600(1601,1602)は、複数(図では2種類)の吸音部材1400,1500から構成されている。
吸音部材1400,1500の配置や領域の大きさはランダムであるため、内周壁1601,1602の配置や領域の大きさはランダムである。したがって、同一の音波が到達した場合には、互いに異なる吸音部材1400(1500)の表面で反射されることとなる。これにより、両内周壁1601,1602において反射される音波SWc1,SWc2の位相をよりランダムに変化させることができる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例9にかかる受音装置101によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、簡単な構成により、不要な方向からの音波SWcの位相差を乱して、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例10にかかる受音装置について説明する。実施例10にかかる受音装置は、マイクロホンごとに対応する開口穴の形状が異なる例である。図17は、実施例10にかかる受音装置の断面図である。この図17に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図17において、開口穴1100の左半分と右半分は、互いに異なる形状で構成されている。図17では一例として、開口穴1100の左半分を断面略円形状、すなわち略球形状としており、また、開口穴1100の右半分を断面略多角形状、すなわち略多面体形状としている。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、開口穴1100の左半分の内周壁1701に到達した音波SWc1は、内周壁1701で反射されて、マイクロホン111に受音される。
また、開口穴1100の右半分の内周壁1702に到達した音波SWc2は、内周壁1702で反射されて、マイクロホン112に受音される。ここで、開口穴1100の左半分と右半分は、互いに異なる形状で構成されているため、音波SWc1の反射行路長と音波SWc2の反射行路長とは、異なる行路長となる。
これにより、音波SWcは、音波SWc1の反射行路長と音波SWc2の反射行路長との行路差に応じた位相差を生じることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例10にかかる受音装置101によれば、実施例7と同様の作用効果を奏する。また、簡単な構成により、特に、開口穴の形状を異ならせるだけで、不要な方向からの音波SWcの位相差を乱して、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例11にかかる受音装置について説明する。実施例11にかかる受音装置は、マイクロホンごとに対応する開口穴の表面形状が異なる例である。図18は、実施例11にかかる受音装置の断面図である。この図18に示した断面図は、図2に示した受音装置の断面図の一例である。なお、図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図18において、開口穴1100は、断面略円形状、すなわち略球形状とされている。開口穴1100の左半分の表面となる内周壁1701は平滑面とされている一方、開口穴1100の右半分の表面となる内周壁1802は、ランダムな凹凸(突起)が形成されている。この凹凸の高低差は自由に設定することができるが、音波の振動によって折れない程度の突起にすればよい。実際には、高低差は2[mm]〜4[mm]で、より具体的には3[mm]の高低差が好ましい。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、音波SWcは開口穴1100に入射する。このうち、内周壁1701に到達した音波SWc1は、内周壁1701で反射されて、マイクロホン111に受音される。
また、開口穴1100の右半分の内周壁1802に到達した音波SWc2は、内周壁1802で反射されて、マイクロホン112に受音される。ここで、開口穴1100における内周壁1701,1802は、互いに異なる表面形状であるため、音波SWc1の反射行路長と音波SWc2の反射行路長とが異なる行路長となる。
これにより、音波SWcは、音波SWc1の反射行路長と音波SWc2の反射行路長との行路差に応じた位相差を生じることとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例11にかかる受音装置101によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、この実施例11では、開口穴1100の右半分の表面にだけ凹凸を施すことにより、開口穴1100の左半分の内周壁1701とは表面形状が異なる内周壁1802を形成でき、受音装置101を簡単に作成することができるという効果を奏する。また、内周壁1701も内周壁1802と同様な、内周壁1802とは異なるランダムな凹凸(突起)を形成しても同様の作用効果を奏する。
さらに、このような簡単な構成により、特に、開口穴の表面形状を異ならせるだけで、不要な方向からの音波SWcの位相差を乱して、目的音源の音声、すなわち音波SWaの音声を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
つぎに、実施例12にかかる受音装置について説明する。実施例12にかかる受音装置は、開口穴にゲル状物質を充填した例である。図19は、実施例12にかかる受音装置の断面図である。この図19に示した断面図は、図2に示した受音装置101の断面図の一例である。なお、図2に示した構成と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図19において、開口穴1100は、断面略楕円形状、すなわち略楕円球形状とされている。開口穴1100には、ゲル状物質1000が充填されている。このゲル状物質1000におけるゲルの組成としては、たとえば、ゼラチンゲル、PVA(ポリビニルアルコール)ゲル、IPA(イソプロピルアクリルアミド)ゲルなどが挙げられる。
また、ゲル状物質1000は、空気に比べて音波の伝搬速度を約1/4程度に減速する。開口穴1100とゲル状物質1000との境界には、硬化領域1001と軟化領域1002がランダムに形成され、この領域1001,1002が開口穴1100の内周壁を構成する。これにより、内周壁におけるゲル状物質1000の硬軟分布が異なることとなる。
また、開口1110の略中央にマイクロホン111,112が設けられている。ゲル状物質1000は筐体110の前面200と略面一となるため、マイクロホン111,112は、ゲル状物質1000にやや埋め込まれるようにして備えられ、その一部は、ゲル状物質1000から表出するようになっている。すなわち、マイクロホン111,112は、ゲル状物質1000によって固定支持されているため、上述した実施例7〜11のように支持部材220を用いる必要がなく、構造の簡素化、部品点数の減少および作製の容易化を図ることができる。
この構成では、マイクロホン111,112に直接到達した音波SWaは、図1で示したように、所定の位相差でマイクロホン111,112に直接受音される。これに対し、開口211におけるゲル状物質1000に到達した音波SWc1は、ゲル状物質1000の内部を、空気の1/4程度の音速で伝搬して、たとえば硬化領域1001に到達する。この硬化領域1001では音波SWc1は固定端反射する。
また、開口1110におけるゲル状物質1000に到達した音波SWc2は、ゲル状物質1000の内部を、空気の1/4程度の音速で伝搬して、たとえば軟化領域1002に到達する。この軟化領域1002では音波SWc2は自由端反射する。このように、反射する領域によって音波SWcはランダムに固定端反射または自由端反射するため、位相差がランダムに変化することとなる。したがって、音波SWcは、音波SWaの位相差とは異なる位相差でマイクロホン111,112に受音され、図1に示した音源判定回路123により雑音と判定される。
このように、この実施例12にかかる受音装置101によれば、実施例7と同様の作用効果を奏する。また、この実施例12では、開口穴1100にゲル状物質1000を充填したことにより、ゲル状物質1000内の音波の伝搬速度を空気よりも1/4程度減速することができる。したがって、開口穴1100内部が空気の場合に比べて、筐体110のサイズも1/4程度に小型化することができるとともに、反射される音波SWcの位相差をランダムに変化させることができるという効果を奏する。
(位相差スペクトルの比較)
つぎに、従来の受音装置による位相差スペクトルと、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置の位相差スペクトルについて説明する。図20は、従来の受音装置による位相差スペクトルを示すグラフであり、図21は、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置の位相差スペクトルを示すグラフである。図20および図21に示したグラフにおいて、縦軸は位相差(±π)、横軸は受音した音波の周波数(0〜5.5[kHz])である。また、点線は、理論直線である。
図20と図21に示したグラフを比較すると、図20に示した位相差スペクトルの波形2000は、理論直線との差が大きいが、図21に示した位相差スペクトルの波形2100は、理論直線との差は少ない。したがって、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置では、目的音源からの音波を精度よく受音することができ、雑音源からの音声を除去することができる。
(受音装置の適用例)
つぎに、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置の適用例について説明する。図22〜図24は、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置の適用例を示す説明図である。図22は、ビデオカメラに適用した例である。受音装置101は、ビデオカメラ2200に内蔵されており、前面200とスリット板部2201とが当接する。また、図23は、腕時計に適用した例である。
受音装置101は、腕時計2300の時計盤の左右両端に内蔵され、それぞれ前面200とスリット板部2301とが当接する。また、図24は、携帯電話機に適用した例である。受音装置101は、携帯電話機2400の送話部に内蔵され、前面200とスリット板部2401とが当接する。これにより、目的音源からの音波を精度よく受音することができる。
以上説明したように、この発明の実施の形態では、所定方向からのみ到来する音波を受音するとともに、所定方向以外の方向から到来する音波の受音を防止することにより、目的音源からの音波を精度よく検出することができ、マイクロホンアレイの指向性の高い受音装置を実現することができるという効果を奏する。また、簡単な構成により、不要な方向からの音波の位相差を乱して、目的音源からの音波を高精度に検出することができ、指向性がよい高感度の受音装置を実現することができるという効果を奏する。
なお、上述した実施の形態1、2においては、マイクロホン111,112を一列に配置したが、受音装置101を適用する環境や装置に応じて2次元的に配置することとしてもよい。また、上述した実施の形態1,2に適用したマイクロホン111,112は、無指向性のマイクロホンであることが好ましい。これにより、安価な受音装置を提供することができる。
以上のように、本発明にかかる受音装置は、室内や車内など所定の閉空間で用いるマイクロホンアレイに有用であり、特に、テレビ会議、工場内の作業ロボット、ビデオカメラ、腕時計、携帯電話機などに適している。
図1は、この発明の実施の形態1にかかる受音装置を含む音声処理装置を示すブロック図である。
図2は、図1に示した受音装置の外観を示す斜視図である。
図3は、実施例1にかかる受音装置の断面図である。
図4は、実施例2にかかる受音装置の断面図である。
図5は、実施例3にかかる受音装置の断面図である。
図6は、実施例3にかかる受音装置の他の例を示す断面図である。
図7は、実施例3にかかる受音装置の他の例を示す断面図である。
図8は、実施例4にかかる受音装置の断面図である。
図9は、実施例5にかかる受音装置の断面図である。
図10は、実施例6にかかる受音装置の断面図である。
図11は、この発明の実施の形態2にかかる受音装置の外観を示す斜視図である。
図12は、実施例7にかかる受音装置の断面図である。
図13は、実施例8にかかる受音装置の断面図である。
図14は、実施例9にかかる受音装置の断面図である。
図15は、実施例9にかかる受音装置の他の例を示す断面図である。
図16は、実施例9にかかる受音装置の別の例を示す断面図である。
図17は、実施例10にかかる受音装置の断面図である。
図18は、実施例11にかかる受音装置の断面図である。
図19は、実施例12にかかる受音装置の断面図である。
図20は、従来の受音装置による位相差スペクトルを示すグラフである。
図21は、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置の位相差スペクトルを示すグラフである。
図22は、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置の適用例を示す説明図である。
図23は、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置の適用例を示す説明図である。
図24は、この発明の実施の形態1、2にかかる受音装置の適用例を示す説明図である。
符号の説明
100 音声処理装置
101 受音装置
102 信号処理部
103 スピーカ
110 筐体
111,112 マイクロホン
113 マイクロホンアレイ
121 同相化回路
122 加算回路
123 音源判定回路
124 乗算回路
200 前面
201,202,802,912,1100 開口穴
210 背面
220 支持部材
301,302,502,601,701,702,812,902,1201,1301,1302,1402,1501,1601,1602,1701,1702,1802 内周壁
411,412,1311,1312 セル
500,600,1400,1500 吸音部材
1000 ゲル状物質
1001 硬化領域
1002 軟化領域