JPWO2006068095A1 - 制御弁式鉛蓄電池 - Google Patents

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Abstract

本発明の制御弁式鉛蓄電池は、セルを複数備えた電槽、および電槽の開口部に装着した電池蓋を具備する。電池蓋は、底部にセルと連通する排気孔を有する排気室と、底部にセルと連通する注液孔を有する注液室とを備える。排気室は、排気室の底部に当接し、排気孔を覆う平板状の弁体と、弁体上に配された弾性を有するシートと、電池蓋に固定され、シートを覆う上板とを備える。注液室は、注液孔を閉塞する栓体を備える。

Description

本発明は、制御弁式鉛蓄電池に関し、特に電池蓋の構造に関する。
近年、ガラス繊維で構成され、電解液を保持したセパレータと、充電時に生じた酸素ガスを吸収する負極板と、を含む制御弁式鉛蓄電池(密閉式鉛蓄電池)が広く用いられている。一般に、この鉛蓄電池は、複数のセルを有する電槽と、上記電槽の開口部を覆って密閉する電池蓋と、で構成される。上記複数のセルのそれぞれには、正極板と負極板とをセパレータを介して交互に配置して得られた極板群が収納されている。そして、電池蓋に設けた安全弁の開閉により、上記セル内のガス圧を調整することができる。
従来の制御弁式鉛蓄電池における電池蓋の構成を示す分解斜視図を図10に示す。図10に示すよう、従来の電池蓋40は、上面に排気室41を備え、排気室41の底部には、電槽(図示せず)の各セルに対応する部分に複数の排気筒42が設けられている。排気筒42は排気室41とセルとを連通し、排気筒42には安全弁としてキャップ状のゴム弁43が装着される。
セル内で発生したガスが排気筒42からセル外に放出される時に、ゴム弁43が外れないように、ゴム弁43の上部には、排気室41の開口部を覆う上板45が配置されている。図10において、ゴム弁43および上板45は分解されているが、一点鎖線で示す位置関係で、ゴム弁43は排気筒42に装着され、上板45は電池蓋40に接合される。
セル内のガス圧が所定の範囲内の場合、ゴム弁43は排気筒42を閉じている。このため、電池蓋40を備えた鉛蓄電池のセル内は密閉状態に保持され、大気中の酸素ガスのセル内への侵入が防止される。ガスの発生量が多くなってセル内の圧力が上昇すると、ゴム弁43が排気筒42の上端から浮き上がり、密閉状態を開放した状態となる。すなわち、ゴム弁43と排気筒42との間より、セル内のガスが外部に放出される。
ここで、排気室41内に排気筒42が設けられているため、排気筒42の高さを確保するように電池蓋40を設計する必要があり、電池蓋40の高さを低減して鉛蓄電池を小型化するには限界があった。
これに対して、例えば、特許文献1においては、高さの低減が可能な電池蓋を用いた制御弁式鉛蓄電池が提案されている。この制御弁式鉛蓄電池の電池蓋の構成を示す分解斜視図を図11に示す。
電池蓋50は、上面に排気室51を備え、排気室51の底部には、電槽(図示せず)の各セルに対応する部分に複数の排気孔52が設けられている。排気孔52は排気室51とセルとを連通し、ゴム板で構成された弁体53が、排気室51の底部に接するように配置されて排気孔52を覆っている。
また、弁体53上には、厚さ方向に変形可能な弾性シート54が配置され、排気室51の開口部を覆う上板55が、シート54上に配されて電池蓋50に接合されている。そして、弁体53が安全弁として機能する。
上記のように、特許文献1において提案されている電池蓋50は、排気室51の底部に設けられた排気孔52を平板状の弁体で覆う構造を有し、排気室51は図10に示すような排気筒を有しないため、電池蓋50の高さを低減することが可能である。
ところで、従来の制御弁式鉛蓄電池の製造工程では、正極板と負極板とセパレータとを含む極板群を電槽の各セルに1つずつ収納し、電槽に電池蓋を装着し、その後、電解液として硫酸を電池蓋の排気筒や排気孔から注入していた。
このように排気筒や排気孔が注液口を兼ねると、注液時に、排気室内の排気筒や、排気室の底部にある排気孔の周辺に電解液が付着する場合がある。排気筒や排気孔の周辺に電解液が付着すると、鉛蓄電池の密閉性が低下する可能性がある。また、安全弁はゴム製であるため、硫酸を含む電解液の付着により劣化し易くなる。これらにより、安全弁の開閉弁圧が異常な値を示し、安全弁が正常に動作しなくなる。
開弁圧が異常に上昇すると、鉛蓄電池の内圧が異常に上昇して鉛蓄電池が変形してしまうおそれがある。一方、閉弁圧が異常に低下すると、鉛蓄電池の密閉性が損なわれ、極板群を構成する負極板が酸化してしまったり、電解液が鉛蓄電池外に散逸してしまったりする。
このような現象が起こると鉛蓄電池の容量が急激に低下してしまう。したがって、鉛蓄電池の信頼性を低下させないためには、注液時に、排気筒および排気孔周辺に電解液が付着しないよう、細心の注意を払う必要があった。
これに対し、図10に示す従来の鉛蓄電池においては、ゴム弁43を排気筒42に装着する場合、排気筒42が排気室41の底部から突出しているため、排気筒42に付着した電解液は重力によって排気筒42の側部から排気筒42の基部や排気室41の底部に移行する。そのため、電解液の付着が安全弁の動作に与える影響が比較的少ない。
しかし、図11に示す従来の鉛蓄電池において、排気室51の底部に存在する排気孔52を弁体53で覆う場合、排気孔52の周辺に付着した電解液はそのまま残留し易く、電解液の付着が安全弁の動作に与える影響がより大きく、鉛蓄電池の信頼性を保つことが困難であった。
特開昭62−147652号公報
そこで、本発明は、上記従来の問題を解決するために、高さを低減することができる構造を有することによって小型化が可能であり、かつ電池蓋の排気孔の周辺における電解液の付着を抑制することができる信頼性の高い制御弁式鉛蓄電池を提供することを目的とする。
上記の課題を解決すべく、本発明は、
正極板、負極板、前記正極板と前記負極板との間に配されたセパレータ、および電解液を含む極板群と;開口部、および前記極板群を収納する複数のセルを備える電槽と;前記開口部に装着された電池蓋と;を具備する制御弁式鉛蓄電池であって、
前記電池蓋は、排気室と、注液室と、を備え、
前記排気室は、前記排気室の底部に設けられかつ前記セルに連通する排気孔と、前記排気室の底部に当接して前記排気孔を覆う平板状の弁体と、前記弁体上に配置された弾性を有するシートと、前記電池蓋に固定されかつ前記シートを覆う上板と、を備え、
前記注液室は、前記注液室の底部に設けられかつ前記セルに連通する注液孔と、前記注液孔を閉塞する栓体と、を備えること、
を特徴とする制御弁式鉛蓄電池を提供する。
このような構成によれば、電池蓋において、注液孔を有する注液室と排気孔を有する排気室とが別々に設けられているため、注液室の注液孔へ電解液を注液する際に、排気室の排気孔の周辺に電解液が付着することがなく、排気室に備えられる安全弁が正常に機能する。また、排気室の底部の排出孔が平板状の弁体(すなわち安全弁)で覆われているため、電池蓋の高さをより確実に低減させることができ、鉛蓄電池をより確実に小型化することができる。
前記シートは、連続気泡を有するスポンジ体で構成されているのが好ましい。
前記弁体のうちの前記排気室の底部に当接する面に、オイルが塗布されているのが好ましい。
また、前記注液孔内に、前記注液室と前記セルとを連通する中空パイプが配置されているのが好ましい。
さらに、本発明の鉛蓄電池は、前記複数のセルに対応して前記注液室を複数備え、前記栓体は、前記複数の注液室を一括して覆う単一の部材で構成されているのが好ましい。
本発明の鉛蓄電池によれば、電池蓋において、注液孔を有する注液室と排気孔を有する排気室とが別々に設けられているため、注液室の注液孔へ電解液を注液する際に、排気室の排気孔の周辺に電解液が付着することがなく、排気室に備えられる安全弁が正常に機能する。また、排気室の底部の排出孔が平板状の弁体(すなわち安全弁)で覆われているため、電池蓋の高さをより確実に低減させることができ、鉛蓄電池をより確実に小型化することができる。すなわち、本発明によれば、小型化と信頼性の向上とを両立した鉛蓄電池をより確実に提供することができる。
本発明の制御弁式鉛蓄電池の一実施の形態の斜視図である。 図1に示す鉛蓄電池1の電槽2の上面図(すなわち、図1に示す鉛蓄電池1の電池蓋3を外し、矢印Xの方向からみた図)である。 図1に示す鉛蓄電池1の電池蓋3の分解斜視図である。 図3に示す電池蓋3のうちの排気室11の要部断面図(すなわち、図3におけるA−A線断面を示す図)である。 図3に示す電池蓋3の要部を示す上面図(すなわち、弁体13、シート14および上板15、ならびに栓体25をはずした状態で矢印Xの方向からみた図)である。 図3に示す電池蓋3のうちの注液室21の要部断面図(すなわち、図3におけるB−B線断面を示す図)である。 図1に示す鉛蓄電池1に好適に用いられる注液容器31の断面図である。 図1に示す鉛蓄電池1のうちの注液室21に注液容器31を装着した状態を示す断面図(電解液を注入する様子を示す図)である。 本発明の実施の形態における注液孔22内に備えることのできる中空パイプ23の変形例の上端部分を示す斜視図である。 従来の制御弁式鉛蓄電池における電池蓋の分解斜視図である。 従来の制御弁式鉛蓄電池における他の電池蓋の分解斜視図である。 比較例3の制御弁式鉛蓄電池における電池蓋の分解斜視図である。
以下、本発明の制御弁式鉛蓄電池の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、電池に用いられる部材の寸法を具体的に示すが、これら寸法は所望する電池容量や電池形状に応じて適宜設定することができるものであり、本発明は当然にこれらのみに限定されるものではない。
図1は、本発明の制御弁式鉛蓄電池の一実施の形態の斜視図である。また、図2は、図1に示す鉛蓄電池1の電槽2の上面図(すなわち、図1に示す鉛蓄電池1の電池蓋3を外し、矢印Xの方向からみた図)である。
図1に示す鉛蓄電池の形状は、例えば高さ93mm、幅87mmおよび長さ150mmの直方体であり、公称電圧を例えば12Vとし、10時間率容量を例えば6Ahとすることができる。
本実施の形態の鉛蓄電池1は、図2に示すように6つのセル5を有する電槽2の開口部に、正極端子4aおよび負極端子4bを備えた電池蓋3を装着することにより密閉されて構成されている。
セル5は、図2に示すように、電槽2内に5つの隔壁6で区画されることにより一列に形成されている。各セル5には電解液を含む極板群(図示せず)が1つずつ収納されている。極板群としては、例えば、4枚の正極板と5枚の負極板とを、ガラス繊維マットなどで構成されたセパレータを介して交互に配置して構成されるものを用いることができる。
正極板としては、従来公知のものなど、種々のものを用いることができるが、例えば集電用の耳部を有するPb−Ca系合金製の正極格子と、前記正極格子に保持された二酸化鉛を含む正極活物質層と、で構成された正極板を用いることができる。
一方、負極板としては、従来公知のものなど、種々のものを用いることができるが、例えば集電用の耳部を有するPb−Ca系合金製の負極格子と、前記負極格子に保持された鉛を含む負極活物質層と、で構成された負極板を用いることができる。
上記極板群に含まれる上記正極板の複数の耳部には、正極棚(図示せず)が接続され、上記極板群に含まれる上記負極板の複数の耳部には負極棚(図示せず)が接続されている。これら正極棚および負極棚としては、従来公知のものを用いることができる。
そして、隔壁6を介して隣接する極板群は、一方の極板群の正極棚に接続された接続体と、他方の極板群の負極棚に接続された接続体とが、隔壁6に設けた透孔(図示せず)を介して接続されることにより、電気的に直列に接続されている。これにより、セル5に収納された6つの極板群は電気的に直列に接続されている。
また、両端のセル5に収納された2つの極板群のうち、一方の極板群における負極棚に負極柱(図示せず)が設けられ、当該負極柱は負極端子4bに接続されている。他方の極板群における正極棚に正極柱(図示せず)が設けられ、当該正極柱は正極端子4aに接続されている。
なお、図2では、6つのセル5が一列に配置されているが、所望する電池電圧や電池形状に応じて、セル5の数、配置、ならびに正極端子4aおよび負極端子4bの位置を適宜決定することができる。
本実施の形態の鉛蓄電池1における排気室11について説明する。
図3は、図1に示す鉛蓄電池1の電池蓋3の分解斜視図である。図3に示すように、電池蓋3の上面には、長尺状の凹部で構成された排気室11(例えば、縦:135mm、横:15mm、深さ:4mm)が設けられている。排気室11の底部(すなわち凹部の内底面)11aには、電槽2の6つのセル5に対応するように、それぞれのセル5に連通する6つの排気孔12(例えば直径3mm)が一列に設けられている。
そして、平板状の弁体13が、図3における一点鎖線で示される位置関係で、排気室11の底部11aに当接して配置され、排気孔12を覆う。排気孔12を覆う弁体13は、安全弁としての機能を発揮する。
弁体13は、排気室11の底部11aと密着してセル5の気密性を確保するため、適度な硬度および柔軟性を有することが望まれる。
したがって、弁体13は、適度な硬度および柔軟性を有する種々の材料を用いて構成することができ、例えばスチレンブタジエンゴムまたはネオプレンゴムなどの合成ゴムを用いて構成することができる。なかでも、例えば国際ゴム硬さ(IRHD)に基づく硬度が60〜65度のネオプレンゴムを用いることが好ましい。
ここで、弁体13の機能について説明する。
柔軟性を有する弁体13は、電池1の充電時にセル5の内圧が上昇すると、上方に弾性変形し、弁体13と排気室11の底部11aとの間に隙間、すなわちガス排出経路が形成される。これにより、セル5内のガスが排気室11を介して外部に排出される(開弁動作)。このときのセル5の内圧を開弁圧という。
一方、セル5内のガスが排出されて、セル5の内圧が低下すると、弁体13が元の平板状に復元し、再び底部11aと密着する。これにより、ガス排出経路が閉じられ、セル5の気密が復元される(閉弁動作)。このときのセル5の内圧を閉弁圧という。
図3に示す電池蓋3のうちの排気室11の要部断面図(すなわち、図3におけるA−A線断面を示す図)を図4に示す。但し、セル5内に収納された極板群は省略する。
図3および図4に示すように、弁体13上には、弾性を有するシート14が重ねて配置される。さらに、シート14上には、上板15が配置される。上板15は排気室11の開口部を覆い、電池蓋3に接合されている。なお、弁体13とシート14とは、単に重ね合わせるだけでもよく、また、貼り合わせて一体化してもよい。
図4に示すように、弾性を有するシート14は、上板15で押さえられることにより、厚さ方向に圧縮された状態で排気室11内に配置される。シート14の弾性力により、弁体13は排気室11の底部11aに密着するよう押圧される。
この押圧力を高めると、開弁圧および閉弁圧は上昇し、押圧力を低くすると、開弁圧および閉弁圧は低下する。したがって、弁体13を押圧するシート14の押圧力を調整することによって、安全弁の開弁圧と閉弁圧を設定することができる。押圧力は、シート14のヤング率、厚さ、および圧縮時の厚さ減少分などを調整することによって適宜決定することができる。また、弁体13の厚さ、硬度および柔軟性などによっても開弁圧および閉弁圧を調整することが可能である。
シート14を構成する材料としては、鉛蓄電池1の使用中に開弁圧および閉弁圧を安定させる必要があるため、押圧力を維持し得る材料、すなわち、圧縮後の復元性に優れたシート14を実現し得る材料を用いるのが好ましい。
例えば、連続気泡を有したスポンジ体を用いるのが好ましい。例えば空隙率90%のエチレン−プロピレン−ジエンのメチレン共重合体(EPDM)や、ネオプレンなどの合成ゴムを好適に用いることができる。
連続気泡を有するスポンジ体は、特に圧縮後の復元性に優れる。そのため、当該スポンジ体で構成されたシート14を用いると、鉛蓄電池1の充電時に、セル5から発生するガスによりセル5内のガス圧が上昇した場合、排気孔12を通って排気室11にガスが排出された直後に、排気孔12をすぐに閉弁することができる。
また、排気孔12から排出されたガスがスポンジ体を透過するため、排気室11からガスを速やかに排出させることができる。
セル5内が減圧状態になると、弁体13の排気孔12に対向する部分が、セル5方向に吸引される。このとき、シート14で弁体13が押さえられていないと、弁体13にしわが生じ、弁体13と排気室11の底部11aとの密着性が損なわれたり、隣接する排気孔12を確実に塞ぐことができなかったりするおそれがある。
しかし、本実施の形態においては、弁体13がシート14で押さえられているため、弁体13のしわの発生を抑制することができる。
本実施の形態においては、弁体13における排気室11の底部11aとの当接面に、シリコーンオイルなどのオイルを塗布するのが好ましい。オイルが、排気室11の底部11aと、弁体13との間に浸透するため、気密性が向上するからである。
また、当該オイルの塗布によって、弁体13の底部11aへの貼り付きを抑制することができる。これにより、開弁圧および閉弁圧が安定し、安全弁の機能に対する信頼性がさらに向上する。
つぎに、シート14上に配置される上板15は、図3における一点鎖線で示される位置関係で排気室11の開口部を覆い、電池蓋3に固定されている。より具体的には、排気室11を構成する凹部の周縁部には段差部分11bが設けられており、この段差部分11bに上板15の周縁部が接合されて、電池蓋3に上板15が接合される。
ただし、排気室11内にはセル5から排出されたガスが滞留するため、上板15の周縁部に数カ所設けられた突起部(図示せず)が、上記段差部分11bに超音波溶着などにより接合されている。これにより、上板15は突起部により電池蓋3に固定され、電池蓋3と上板15との間には未接合部16が存在する。このため、セル5から排気室11に排出されたガスを、未接合部16を介して排気室11から外部に排出することができる。
本実施の形態においては、弁体13およびシート14は略同一の面積を有しており、上板15は、弁体13およびシート14より大きい面積を有している。したがって、弁体13、シート14および上板15を重ね合わせた場合に、全周にわたって上板15の周縁部が形成される。そして、先に述べた排気室11の段差部分11bに上板15の周縁部が接合されて、電池蓋3に上板15が接合される。
なお、電池蓋3に上板15が接合された状態で、排気室11を構成する凹部の深さ(図4中のY)は、弁体13、シート14および上板15の厚さの合計と略同一である。この状態において、シート14は厚さ方向に圧縮されるのが好ましい。シート14の弾性力によって弁体13が底部11aに密接し、排気孔12の気密性が向上する。また、排気孔12は、図4に示すように、排気室11の底部11aからセル5側に延びる筒部12aを有している。
つぎに、電池蓋3の注液室21について説明する。
図3に示すように、電池蓋3の上面には、6つのセル5に対応するように、6つの注液室21が一列に設けられている。
ここで、図5は、図3に示す電池蓋3の要部を示す上面図(すなわち、弁体13、シート14および上板15、ならびに栓体25をはずした状態で矢印Xの方向からみた図)である。また、図6は、図3に示す電池蓋3のうちの注液室21の要部断面図(すなわち、図3におけるB−B線断面を示す図)である。ただし、図6では、セル5内に収納された極板群は省略する。
図5および図6に示すように、注液室21の底部には、セル5と連通し、セル5内に電解液を注入するための注液孔22が設けられている。図3および図4に示すように、6つの注液室21は、単一の栓体25により一括して覆われ、注液孔22が閉塞されている。
6つの注液室21に対応させて6つの栓体をそれぞれ装着してもよいが、1つの栓体25で6つの注液室を一度に覆うほうが、部品点数と作業時間削減の面で好ましい。なお、注液室は1つでもよく、6つのセルに対応するように、1つの注液室に6つの注液孔を一列に設けた構成としてもよい。
栓体25は合成ゴムで構成されているのが好ましい。合成ゴム製の栓体25を注液室21に圧入することにより、栓体25と注液室21との間の密着性を高めることができる。栓体25は、各注液室21に嵌められて注液室21を密閉するように構成された6つの筒状部分25aと、これら筒状部分25aを連結する帯状部分25bと、が一体化されて構成されている。すなわち、栓体25は単一の部材で構成されている。
上記のように、本実施の形態の電池蓋3は、排気孔12を有する排気室11と、注液孔22を有する注液室21と、をそれぞれ別個に備えているため、電解液の注液時に排気室11の底面における排気孔12への電解液の付着を抑制することができる。これにより、安全弁の動作が安定化し、鉛蓄電池1の信頼性が向上する。
また、平板状の弁体13で排気孔12を覆う電池蓋3を用いた本実施の形態の鉛蓄電池1は、キャップ状のゴム弁を排気筒に装着する電池蓋を用いる従来の鉛蓄電池と比較して、電池蓋の高さ寸法を低減させることができ、より容易に小型化することができる。
本実施の形態における注液室21をより詳細に説明する。
注液孔22内には、一端が注液室21内に開口し、他端がセル5内に開口する中空パイプ23が設けられている。注液室21の内側側壁より注液孔22側へ突出して支持体24が設けられており、中空パイプ23は支持体24で支持されることにより固定されている。すなわち、中空パイプ23は、注液孔22の内側側壁と接触しないように配置されている。
これにより、注液孔22内において、中空パイプ23の外側と内側の2つの経路が確保され、これら2つの経路によって注液室21とセル5とが連通する。
ここで、上記のような電池蓋3を備えた本実施の形態の鉛蓄電池1への電解液の注液工程について説明する。
注液工程では、図7に示す注液容器31を用いる。図7は、図1に示す鉛蓄電池1に好適に用いられる注液容器31の断面図である。注液容器31は、注液室21に対応するように、6つの容器33は、それぞれ先端に開口部34aを有し、開口部34aが同じ向きとなるように一列に配置され、一体化された構造を有する。容器33は、例えばポリプロピレンなどの耐酸性の合成樹脂で構成され、容器33内にはセル5に注液する電解液32が収納されている。そして、容器33の開口部34aは耐酸性の合成樹脂フィルムなどからなるシート状部材34bで封口されている。
ここで、注液容器31内の電解液32をセル5に注入する状態を図8に示す。図8は、図1に示す鉛蓄電池1のうちの注液室21に注液容器31を装着した状態を示す断面図(電解液を注入する様子を示す図)であって、図3に示す電池蓋3のうちの注液室21の要部断面図(すなわち、図3におけるB−B線断面を示す図)に対応する図である。
各注液孔22に、それぞれ容器33の先端に位置するシート部材34bで封口された開口部34aが対応するように、注液容器31を注液室21に設置する。
このとき、シート部材34bが、中空パイプ23の注液室21側の先端によって破られ、各容器33の先端が開口する。そして、容器33内の電解液32が中空パイプ23の内側を通って、セル5に注入される(図8において矢印Pで示される経路)。
なお、中空パイプ23でシート状部材34bを突き破る作業を円滑に行うため、図6に示すように、中空パイプ23の注液室21側の先端を傾斜させている。
注液後は、注液室21に栓体25を装着して、注液孔22を閉じる。
また、本実施の形態においては、中空パイプ23の外側と、注液孔22の内側と、で形成される空間部分により、セル5と注液室21とを連通する経路(図6における矢印参照)が形成されている。注液時には、セル5内の空気がこの経路を通って注液室21に移動した後、外部へ放出されるか、または容器33内に移動する。
すなわち、セル5中の空気の電解液32への置換(図8に示す経路Qおよび経路R)と、容器33中の電解液32の空気への置換(図8に示す経路Q)とが行われる。このため、容器33内の電解液32がセル5に迅速に移動する。
セル5内において空気と電解液32との置換が円滑に行われない場合、注液速度がセル5内の極板群に電解液32が浸透する速度を上回ると、電解液32が注液室21から電池1の外部に溢れ出す場合がある。また、容器33内において、電解液32と空気との置換が円滑に行われない場合、容器33から電解液32が流出する速度が極端に低下し、注液に要する時間が長くなる。
これに対して、本実施の形態では、上記のように、注液孔22内における中空パイプ23の内側と外側で注液室21とセル5とを連通する経路がそれぞれ形成されるため、注液時のセル内の空気の電解液32への置換が円滑に行われる。これにより、注液時に電解液32が注液室21から溢れ出すのを抑制することができると同時に、注液時間を短縮することができる。
また、図9に示したように、中空パイプ23の外側に注液室21からセル5に向けて溝部23aや切り込み(図示せず)を形成するのが好ましい。図9は、本実施の形態における注液孔22内に備えることのできる中空パイプ23の変形例の上端部分を示す斜視図である。このような構成によれば、図8に示す経路Qを通して、容器33中の電解液32の空気への置換をより円滑に行うことができる。
以下に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
《実施例1》
本実施例においては、上記の実施の形態における図1〜6に示す構造を有する電池蓋3を用いた本発明の鉛蓄電池A(12V−6Ah)を作製した。
安全弁として機能する平板状の弁体13は、ネオプレンゴム(厚さ0.3mm、国際ゴム硬さ60度)を用いて作製した。シート14は、空隙率90%のEPDM発泡体(厚さ2.0mm)を用いて作製した。また、電池作製時において電池蓋3に上板15を固定した後における圧縮時のシート14の厚さを1.4mmに設定した。したがって、電池作製時の弁体13の厚さおよびシート14の厚さの和は1.7mmであった。また、弁体13の排気室11の底部11aとの当接面にはシリコーンオイルを塗布した。
極板群を作製するために、Pb−Ca系合金製の正極格子に二酸化鉛を含む正極活物質層を保持して正極板を得た。また、Pb−Ca系合金製の負極格子に鉛を含む負極活物質層を保持して負極板を得た。上記のようにして得た正極板および負極板を、ガラス繊維製のセパレータを介して交互に配置し、極板群を作製した。
このとき、正極板は4枚、負極板は5枚用いた。
弁体13、シート14、および上板15を電池蓋3の排気室11に設置した。このとき、上板15の周縁部に断続的に設けられた突起部と、電池蓋3の段差部分11bとを、超音波溶着により接合して、上板15を電池蓋3に固定した。突起部は断続的に設けられるため、電池蓋3と上板15との間には未接合部16が存在した。このため、セル5から排出室11に排出されたガスを、未接合部16を介して排気室11から外部に排出することができた。
その後、電池蓋3を電槽2に嵌め、上述した方法で注液容器31を用いて注液室21の注液孔22からセル5内に電解液として希硫酸(比重:1.320)を注入した。このとき、注液に要した時間は20秒間であった。注液した後、注液室21に栓体25を装着した。
《比較例1》
図10に示す構造を有する電池蓋40を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の鉛蓄電池Bを作製した。
電池蓋40は、実施例1において用いた電池蓋3と異なり、上面に深さ8.0mmの凹部からなる排気室41、および各セルに対応するように、その底部に注液孔を兼ねる6つの排気筒42(高さ:5.0mm、外径:6.0mm、内径:3.0mm、)を備える。
上記のような電池蓋40を電槽2に嵌めた後、排気筒42に、外径2.0mmおよび内径1.5mmの先端部を有する注液ノズルを挿入し、当該注液ノズルを通してセル内に実施例1と同じ電解液を注液した。このとき、注液に要した時間は40秒間であった。注液速度をさらに上げると、注液ノズル外側と排気筒42との隙間から電解液が溢れ出し、これ以上の注液時間の短縮はできなかった。
また、注液が完了した後、排気筒42から注液ノズルを取り外す際に、注液ノズル先端に残存した電解液の滴が排気筒42周辺に付着していた。なお、電解液の付着度合いは比較的軽微であった。
その後、排気筒42にキャップ状のゴム弁43(高さ:4.0mm、外径:7.0mm、内径:5.5mm、天面の厚さ:1.0mm)を装着した。このとき、ゴム弁43を構成する材料には実施例1の弁体13と同じ材料を用い、ゴム弁43の排気筒42に密着させる面にはシリコーンオイルを塗布した。ゴム弁43を覆う上板45を超音波溶着により電池蓋40に接合した。
なお、キャップ状のゴム弁43を排気筒42に装着するので、上板45を除いた排気筒42の基部からゴム弁43の上面までの高さ寸法は、排気筒42の高さ5.0mmとゴム弁43の天面の厚さ1.0mmとの和であり、6.0mmであった。
《比較例2》
図11に示す構造を有する電池蓋50を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の鉛蓄電池Cを作製した。
電池蓋50は、実施例1において用いた電池蓋3と異なり、注液室21および栓体25を有しない構造を有し、排気室51内の排気孔52が注液孔を兼ねている。排気室51の内部の構成は、実施例1の排気室11の内部の構成と同じとした。
上記のような電池蓋50を電槽2に嵌めた後、排気孔52に、外径2.0mmおよび内径1.5mmの先端部を有する注液ノズルを挿入し、当該注液ノズルを通してセル内に実施例1と同じ電解液を注液した。このとき、注液に要した時間は40秒間であった。注液速度をさらに上げると、注液ノズルと排気孔52との隙間から電解液が溢れ出し、これ以上の注液時間の短縮はできなかった。
また、注液が完了した後、排気孔52から注液ノズルを取り外す際に、注液ノズル先端に残存した電解液の滴が排気孔52周辺に付着していた。なお、排気筒42が高さを有する比較例1に比べて、排気孔52周辺の電解液の付着度合いが大きかった。
その後、排気孔52を覆う弁体53を、排気室51の底部に当接させて配置した。ついで弁体53上にシート54を配し、シート54上に上板55を配し、超音波溶着により電池蓋50に接合し、鉛蓄電池Cを得た。
《比較例3》
図12に示す構造を有する電池蓋60を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の鉛蓄電池Dを作製した。
電池蓋60は、実施例1において用いた電池蓋3と異なり、図10に示す比較例1の電池蓋40における排気室41内の構造を有する。
まず、排気室61の底面に設けられた排気筒62にキャップ状のゴム弁63を装着した。このとき、ゴム弁63の排気筒62に密着させる面に、シリコーンオイルを塗布した。ゴム弁63を覆う上板65を、超音波溶着により電池蓋60に接合した。
上板65を除いた排気筒62基部からゴム弁63の上面までの高さ寸法は、排気筒62の高さ寸法5.0mmとゴム弁63の天面の厚さ1.0mmとの和であり、6.0mmであった。
また、実施例1と同様の方法により、注液孔(図示しない)および中空パイプ73を有する注液室71から、実施例1と同じ電解液をセル内に注入した。注液に要した時間は20秒間であった。注液した後、注液室71に栓体75を装着した。
[評価試験]
実施例1および比較例1〜3において作製した鉛蓄電池A〜Dをそれぞれ3個ずつ作製し、各鉛蓄電池を1.2Aの定電流で1時間充電した。
そして、各鉛蓄電池について、以下の方法で、安全弁の開弁圧および閉弁圧を計測した。正極端子を備えるセルに隣接するセル(すなわち正極端子側から2番目に位置するセル)に対応する電槽の側面部分に貫通孔を設け、貫通孔にチューブを介して空気圧縮機を接続した。セル内圧は、空気圧縮機と貫通孔との間に設けられた圧力計により測定した。
空気圧縮機によりセル内を加圧した。このとき、セル内圧はピーク値を示した。セル内圧がピーク値に達すると、安全弁の開弁動作によりセル内から外部にガスが排出されるため、セル内圧はそれ以上には上昇しなかった。このセル内圧のピーク値を開弁圧とした。
また、セル内圧がピーク値に達した後、空気圧縮機を停止した。安全弁が開いているため、ガスの排出によりセル内圧が低下した。その後、セル内圧がある値まで低下すると、安全弁の閉弁動作により、セル内圧の低下が止まり、セル内圧が安定した。この安定した状態のセル内圧の値を閉弁圧とした。
結果を表1に示した。
その後、2.5Aの電流値で1時間定電流放電し、その後14.4Vの定電圧で最大電流2.5Aで充電する工程を繰り返して、サイクル試験を行った。放電電圧が10.5Vに到達した時点を寿命とした。
鉛蓄電池A〜Dのなかで電池Cのサイクル寿命が最も短く、425サイクル目で放電電圧が10.5Vまで低下し、寿命となった。そこで、鉛蓄電池A〜Dの充放電サイクル試験をそれぞれ425サイクルまで行い、サイクル試験後に、安全弁の開弁圧および閉弁圧を上記と同様にして再度計測した。結果を表1に示した。
なお、表1には、充放電サイクル前の開弁圧および閉弁圧に対する、充放電サイクル後の開弁圧および閉弁圧の変化量(すなわち、{充放電サイクル後の開弁圧−充放電サイクル前の開弁圧}および{充放電サイクル後の閉弁圧−充放電サイクル前の閉弁圧})も示した。
Figure 2006068095
鉛蓄電池A〜Dは、いずれも充放電の繰り返しにともない開弁圧が上昇する傾向を示した。実施例1の鉛蓄電池Aは、比較例1〜3の鉛蓄電池B〜Dよりも、サイクル試験前後における開弁圧の上昇幅は小さいことがわかった。また、同仕様の電池間における開弁圧の上昇幅のばらつきも、鉛蓄電池Aは鉛蓄電池B〜Dと比べて小さいことがわかった。開弁圧の上昇は、一般的に弁体と排気室の底部との密着により生じるが、鉛蓄電池A程度の開弁圧の上昇は、電池性能に影響を与えない。
本発明の実施例1の鉛蓄電池Aは、比較例の鉛蓄電池B〜Dと比べて、充放電サイクル時において安定した開弁圧と閉弁圧を有し、高い信頼性を示した。
一方、充放電サイクルにおいて早期寿命になった鉛蓄電池Cは、鉛蓄電池A、BおよびDに比べて開弁圧が大幅に上昇した。また、鉛蓄電池Cでは、開弁圧および閉弁圧のばらつきが大きかった。これは、排気孔52周辺に電解液が付着した状態で、弁体13を排気室51の底部に密着させたためであると考えられる。
また、鉛蓄電池Cは、電池A、BおよびDと比べて充放電サイクル前後における閉弁圧の低下幅が大きいことがわかった。このことから、鉛蓄電池Cが早期寿命となった原因は、閉弁圧が大幅に低下し、大気中の酸素がセル内に入ったことにより負極板が劣化したためであると考えられる。
鉛蓄電池Cにおいて閉弁圧が大幅に低下したメカニズムを以下に説明する。
弁体53が排気室51の底部に貼り付くことにより、一旦は、開弁圧が異常に上昇する。この状態で開弁すると、弁体53が排気室52の底部から剥離する際に、弁体53と排気室51の底部との剥離面の平滑性が損なわれる。このため、弁体53と排気室51の底部との密着性が悪くなる。
鉛蓄電池Bおよび鉛蓄電池Dは、鉛蓄電池Aと比べて、開弁圧の上昇幅が増大した。また、鉛蓄電池Cと鉛蓄電池Dとの間における開弁圧の上昇幅の差は、鉛蓄電池Aと鉛蓄電池Cとの間における開弁圧の上昇幅の差より小さかった。このことから、排気室底面に設けられた排気孔を平板状の弁体で覆う構成は、キャップ状のゴム弁を排気室内に設けられた排気筒に装着する構成と比べて、排気室とは別に注液孔を有する注液室を設けるか否かの違いが、充放電の繰り返しにともなう開弁圧の上昇に大きな影響を及ぼすことがわかった。
鉛蓄電池Bおよび鉛蓄電池Dでは、排気筒によって引き伸ばされたキャップ状ゴム弁の復元力で排気筒が締め付けられることにより気密が保たれる。ゴム弁は常に引張力が加わった状態で動作する。一方、鉛蓄電池Aおよび鉛蓄電池Cでは、弁体と弁体上に配置された弾性体との押圧力によって気密が保たれる。弁体は常に圧縮力が加わった状態で動作する。このように、安全弁への応力のかかり方の違いが、鉛蓄電池Aが、鉛蓄電池Bおよび鉛蓄電池Dと、安全弁の開弁圧と閉弁圧の挙動が異なる要因の一つであると考えられる。
弁体とシートの厚さを合計した寸法が1.70mmである実施例1の鉛蓄電池Aでは、排気筒の基部からゴム弁の上面までの寸法が6.00mmである比較例1の鉛蓄電池Bおよび比較例3の鉛蓄電池Dと比較して、電池蓋の高さ寸法の低減、すなわち小型化が可能である。また、電池の高さを同一寸法として、電池蓋の高さを低減した分(例えば、6.00mm−1.70mm=4.30mm)だけ、電槽の高さ寸法を大きくし、極板の高さ寸法を大きくすることができるため、鉛蓄電池を高容量化することができる。さらに、本発明の実施例1の鉛蓄電池Aでは、注液に要する時間が短いため、鉛蓄電池の生産性が向上する。
本発明の制御弁式鉛蓄電池は、小型化や高容量化が可能であり、かつ高信頼性を有し、自動二輪車用やバックアップ用などの各種機器の電源に好適に用いられる。
本発明は、制御弁式鉛蓄電池に関し、特に電池蓋の構造に関する。
近年、ガラス繊維で構成され、電解液を保持したセパレータと、充電時に生じた酸素ガスを吸収する負極板と、を含む制御弁式鉛蓄電池(密閉式鉛蓄電池)が広く用いられている。一般に、この鉛蓄電池は、複数のセルを有する電槽と、上記電槽の開口部を覆って密閉する電池蓋と、で構成される。上記複数のセルのそれぞれには、正極板と負極板とをセパレータを介して交互に配置して得られた極板群が収納されている。そして、電池蓋に設けた安全弁の開閉により、上記セル内のガス圧を調整することができる。
従来の制御弁式鉛蓄電池における電池蓋の構成を示す分解斜視図を図10に示す。図10に示すよう、従来の電池蓋40は、上面に排気室41を備え、排気室41の底部には、電槽(図示せず)の各セルに対応する部分に複数の排気筒42が設けられている。排気筒42は排気室41とセルとを連通し、排気筒42には安全弁としてキャップ状のゴム弁43が装着される。
セル内で発生したガスが排気筒42からセル外に放出される時に、ゴム弁43が外れないように、ゴム弁43の上部には、排気室41の開口部を覆う上板45が配置されている。図10において、ゴム弁43および上板45は分解されているが、一点鎖線で示す位置関係で、ゴム弁43は排気筒42に装着され、上板45は電池蓋40に接合される。
セル内のガス圧が所定の範囲内の場合、ゴム弁43は排気筒42を閉じている。このため、電池蓋40を備えた鉛蓄電池のセル内は密閉状態に保持され、大気中の酸素ガスのセル内への侵入が防止される。ガスの発生量が多くなってセル内の圧力が上昇すると、ゴム弁43が排気筒42の上端から浮き上がり、密閉状態を開放した状態となる。すなわち、ゴム弁43と排気筒42との間より、セル内のガスが外部に放出される。
ここで、排気室41内に排気筒42が設けられているため、排気筒42の高さを確保するように電池蓋40を設計する必要があり、電池蓋40の高さを低減して鉛蓄電池を小型化するには限界があった。
これに対して、例えば、特許文献1においては、高さの低減が可能な電池蓋を用いた制御弁式鉛蓄電池が提案されている。この制御弁式鉛蓄電池の電池蓋の構成を示す分解斜視図を図11に示す。
電池蓋50は、上面に排気室51を備え、排気室51の底部には、電槽(図示せず)の各セルに対応する部分に複数の排気孔52が設けられている。排気孔52は排気室51とセルとを連通し、ゴム板で構成された弁体53が、排気室51の底部に接するように配置されて排気孔52を覆っている。
また、弁体53上には、厚さ方向に変形可能な弾性シート54が配置され、排気室51の開口部を覆う上板55が、シート54上に配されて電池蓋50に接合されている。そして、弁体53が安全弁として機能する。
上記のように、特許文献1において提案されている電池蓋50は、排気室51の底部に設けられた排気孔52を平板状の弁体で覆う構造を有し、排気室51は図10に示すような排気筒を有しないため、電池蓋50の高さを低減することが可能である。
ところで、従来の制御弁式鉛蓄電池の製造工程では、正極板と負極板とセパレータとを含む極板群を電槽の各セルに1つずつ収納し、電槽に電池蓋を装着し、その後、電解液として硫酸を電池蓋の排気筒や排気孔から注入していた。
このように排気筒や排気孔が注液口を兼ねると、注液時に、排気室内の排気筒や、排気室の底部にある排気孔の周辺に電解液が付着する場合がある。排気筒や排気孔の周辺に電解液が付着すると、鉛蓄電池の密閉性が低下する可能性がある。また、安全弁はゴム製であるため、硫酸を含む電解液の付着により劣化し易くなる。これらにより、安全弁の開閉弁圧が異常な値を示し、安全弁が正常に動作しなくなる。
開弁圧が異常に上昇すると、鉛蓄電池の内圧が異常に上昇して鉛蓄電池が変形してしまうおそれがある。一方、閉弁圧が異常に低下すると、鉛蓄電池の密閉性が損なわれ、極板群を構成する負極板が酸化してしまったり、電解液が鉛蓄電池外に散逸してしまったりする。
このような現象が起こると鉛蓄電池の容量が急激に低下してしまう。したがって、鉛蓄電池の信頼性を低下させないためには、注液時に、排気筒および排気孔周辺に電解液が付着しないよう、細心の注意を払う必要があった。
これに対し、図10に示す従来の鉛蓄電池においては、ゴム弁43を排気筒42に装着する場合、排気筒42が排気室41の底部から突出しているため、排気筒42に付着した電解液は重力によって排気筒42の側部から排気筒42の基部や排気室41の底部に移行する。そのため、電解液の付着が安全弁の動作に与える影響が比較的少ない。
しかし、図11に示す従来の鉛蓄電池において、排気室51の底部に存在する排気孔52を弁体53で覆う場合、排気孔52の周辺に付着した電解液はそのまま残留し易く、電解液の付着が安全弁の動作に与える影響がより大きく、鉛蓄電池の信頼性を保つことが困難であった。
特開昭62−147652号公報
そこで、本発明は、上記従来の問題を解決するために、高さを低減することができる構造を有することによって小型化が可能であり、かつ電池蓋の排気孔の周辺における電解液の付着を抑制することができる信頼性の高い制御弁式鉛蓄電池を提供することを目的とする。
上記の課題を解決すべく、本発明は、
正極板、負極板、前記正極板と前記負極板との間に配されたセパレータ、および電解液を含む極板群と;開口部、および前記極板群を収納する複数のセルを備える電槽と;前記開口部に装着された電池蓋と;を具備する制御弁式鉛蓄電池であって、
前記電池蓋は、排気室と、注液室と、を備え、
前記排気室は、前記排気室の底部に設けられかつ前記セルに連通する排気孔と、前記排気室の底部に当接して前記排気孔を覆う平板状の弁体と、前記弁体上に配置された弾性を有するシートと、前記電池蓋に固定されかつ前記シートを覆う上板と、を備え、
前記注液室は、前記注液室の底部に設けられかつ前記セルに連通する注液孔と、前記注液孔を閉塞する栓体と、を備えること、
を特徴とする制御弁式鉛蓄電池を提供する。
このような構成によれば、電池蓋において、注液孔を有する注液室と排気孔を有する排気室とが別々に設けられているため、注液室の注液孔へ電解液を注液する際に、排気室の排気孔の周辺に電解液が付着することがなく、排気室に備えられる安全弁が正常に機能する。また、排気室の底部の排出孔が平板状の弁体(すなわち安全弁)で覆われているため、電池蓋の高さをより確実に低減させることができ、鉛蓄電池をより確実に小型化することができる。
前記シートは、連続気泡を有するスポンジ体で構成されているのが好ましい。
前記弁体のうちの前記排気室の底部に当接する面に、オイルが塗布されているのが好ましい。
また、前記注液孔内に、前記注液室と前記セルとを連通する中空パイプが配置されているのが好ましい。
さらに、本発明の鉛蓄電池は、前記複数のセルに対応して前記注液室を複数備え、前記栓体は、前記複数の注液室を一括して覆う単一の部材で構成されているのが好ましい。
本発明の鉛蓄電池によれば、電池蓋において、注液孔を有する注液室と排気孔を有する排気室とが別々に設けられているため、注液室の注液孔へ電解液を注液する際に、排気室の排気孔の周辺に電解液が付着することがなく、排気室に備えられる安全弁が正常に機能する。また、排気室の底部の排出孔が平板状の弁体(すなわち安全弁)で覆われているため、電池蓋の高さをより確実に低減させることができ、鉛蓄電池をより確実に小型化することができる。すなわち、本発明によれば、小型化と信頼性の向上とを両立した鉛蓄電池をより確実に提供することができる。
以下、本発明の制御弁式鉛蓄電池の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、電池に用いられる部材の寸法を具体的に示すが、これら寸法は所望する電池容量や電池形状に応じて適宜設定することができるものであり、本発明は当然にこれらのみに限定されるものではない。
図1は、本発明の制御弁式鉛蓄電池の一実施の形態の斜視図である。また、図2は、図1に示す鉛蓄電池1の電槽2の上面図(すなわち、図1に示す鉛蓄電池1の電池蓋3を外し、矢印Xの方向からみた図)である。
図1に示す鉛蓄電池の形状は、例えば高さ93mm、幅87mmおよび長さ150mmの直方体であり、公称電圧を例えば12Vとし、10時間率容量を例えば6Ahとすることができる。
本実施の形態の鉛蓄電池1は、図2に示すように6つのセル5を有する電槽2の開口部に、正極端子4aおよび負極端子4bを備えた電池蓋3を装着することにより密閉されて構成されている。
セル5は、図2に示すように、電槽2内に5つの隔壁6で区画されることにより一列に形成されている。各セル5には電解液を含む極板群(図示せず)が1つずつ収納されている。極板群としては、例えば、4枚の正極板と5枚の負極板とを、ガラス繊維マットなどで構成されたセパレータを介して交互に配置して構成されるものを用いることができる。
正極板としては、従来公知のものなど、種々のものを用いることができるが、例えば集電用の耳部を有するPb−Ca系合金製の正極格子と、前記正極格子に保持された二酸化鉛を含む正極活物質層と、で構成された正極板を用いることができる。
一方、負極板としては、従来公知のものなど、種々のものを用いることができるが、例えば集電用の耳部を有するPb−Ca系合金製の負極格子と、前記負極格子に保持された鉛を含む負極活物質層と、で構成された負極板を用いることができる。
上記極板群に含まれる上記正極板の複数の耳部には、正極棚(図示せず)が接続され、上記極板群に含まれる上記負極板の複数の耳部には負極棚(図示せず)が接続されている。これら正極棚および負極棚としては、従来公知のものを用いることができる。
そして、隔壁6を介して隣接する極板群は、一方の極板群の正極棚に接続された接続体と、他方の極板群の負極棚に接続された接続体とが、隔壁6に設けた透孔(図示せず)を介して接続されることにより、電気的に直列に接続されている。これにより、セル5に収納された6つの極板群は電気的に直列に接続されている。
また、両端のセル5に収納された2つの極板群のうち、一方の極板群における負極棚に負極柱(図示せず)が設けられ、当該負極柱は負極端子4bに接続されている。他方の極板群における正極棚に正極柱(図示せず)が設けられ、当該正極柱は正極端子4aに接続されている。
なお、図2では、6つのセル5が一列に配置されているが、所望する電池電圧や電池形状に応じて、セル5の数、配置、ならびに正極端子4aおよび負極端子4bの位置を適宜決定することができる。
本実施の形態の鉛蓄電池1における排気室11について説明する。
図3は、図1に示す鉛蓄電池1の電池蓋3の分解斜視図である。図3に示すように、電池蓋3の上面には、長尺状の凹部で構成された排気室11(例えば、縦:135mm、横:15mm、深さ:4mm)が設けられている。排気室11の底部(すなわち凹部の内底面)11aには、電槽2の6つのセル5に対応するように、それぞれのセル5に連通する6つの排気孔12(例えば直径3mm)が一列に設けられている。
そして、平板状の弁体13が、図3における一点鎖線で示される位置関係で、排気室11の底部11aに当接して配置され、排気孔12を覆う。排気孔12を覆う弁体13は、安全弁としての機能を発揮する。
弁体13は、排気室11の底部11aと密着してセル5の気密性を確保するため、適度な硬度および柔軟性を有することが望まれる。
したがって、弁体13は、適度な硬度および柔軟性を有する種々の材料を用いて構成することができ、例えばスチレンブタジエンゴムまたはネオプレンゴムなどの合成ゴムを用いて構成することができる。なかでも、例えば国際ゴム硬さ(IRHD)に基づく硬度が60〜65度のネオプレンゴムを用いることが好ましい。
ここで、弁体13の機能について説明する。
柔軟性を有する弁体13は、電池1の充電時にセル5の内圧が上昇すると、上方に弾性変形し、弁体13と排気室11の底部11aとの間に隙間、すなわちガス排出経路が形成される。これにより、セル5内のガスが排気室11を介して外部に排出される(開弁動作)。このときのセル5の内圧を開弁圧という。
一方、セル5内のガスが排出されて、セル5の内圧が低下すると、弁体13が元の平板状に復元し、再び底部11aと密着する。これにより、ガス排出経路が閉じられ、セル5の気密が復元される(閉弁動作)。このときのセル5の内圧を閉弁圧という。
図3に示す電池蓋3のうちの排気室11の要部断面図(すなわち、図3におけるA−A線断面を示す図)を図4に示す。但し、セル5内に収納された極板群は省略する。
図3および図4に示すように、弁体13上には、弾性を有するシート14が重ねて配置される。さらに、シート14上には、上板15が配置される。上板15は排気室11の開口部を覆い、電池蓋3に接合されている。なお、弁体13とシート14とは、単に重ね合わせるだけでもよく、また、貼り合わせて一体化してもよい。
図4に示すように、弾性を有するシート14は、上板15で押さえられることにより、厚さ方向に圧縮された状態で排気室11内に配置される。シート14の弾性力により、弁体13は排気室11の底部11aに密着するよう押圧される。
この押圧力を高めると、開弁圧および閉弁圧は上昇し、押圧力を低くすると、開弁圧および閉弁圧は低下する。したがって、弁体13を押圧するシート14の押圧力を調整することによって、安全弁の開弁圧と閉弁圧を設定することができる。押圧力は、シート14のヤング率、厚さ、および圧縮時の厚さ減少分などを調整することによって適宜決定することができる。また、弁体13の厚さ、硬度および柔軟性などによっても開弁圧および閉弁圧を調整することが可能である。
シート14を構成する材料としては、鉛蓄電池1の使用中に開弁圧および閉弁圧を安定させる必要があるため、押圧力を維持し得る材料、すなわち、圧縮後の復元性に優れたシート14を実現し得る材料を用いるのが好ましい。
例えば、連続気泡を有したスポンジ体を用いるのが好ましい。例えば空隙率90%のエチレン−プロピレン−ジエンのメチレン共重合体(EPDM)や、ネオプレンなどの合成ゴムを好適に用いることができる。
連続気泡を有するスポンジ体は、特に圧縮後の復元性に優れる。そのため、当該スポンジ体で構成されたシート14を用いると、鉛蓄電池1の充電時に、セル5から発生するガスによりセル5内のガス圧が上昇した場合、排気孔12を通って排気室11にガスが排出された直後に、排気孔12をすぐに閉弁することができる。
また、排気孔12から排出されたガスがスポンジ体を透過するため、排気室11からガスを速やかに排出させることができる。
セル5内が減圧状態になると、弁体13の排気孔12に対向する部分が、セル5方向に吸引される。このとき、シート14で弁体13が押さえられていないと、弁体13にしわが生じ、弁体13と排気室11の底部11aとの密着性が損なわれたり、隣接する排気孔12を確実に塞ぐことができなかったりするおそれがある。
しかし、本実施の形態においては、弁体13がシート14で押さえられているため、弁体13のしわの発生を抑制することができる。
本実施の形態においては、弁体13における排気室11の底部11aとの当接面に、シリコーンオイルなどのオイルを塗布するのが好ましい。オイルが、排気室11の底部11aと、弁体13との間に浸透するため、気密性が向上するからである。
また、当該オイルの塗布によって、弁体13の底部11aへの貼り付きを抑制することができる。これにより、開弁圧および閉弁圧が安定し、安全弁の機能に対する信頼性がさらに向上する。
つぎに、シート14上に配置される上板15は、図3における一点鎖線で示される位置関係で排気室11の開口部を覆い、電池蓋3に固定されている。より具体的には、排気室11を構成する凹部の周縁部には段差部分11bが設けられており、この段差部分11bに上板15の周縁部が接合されて、電池蓋3に上板15が接合される。
ただし、排気室11内にはセル5から排出されたガスが滞留するため、上板15の周縁部に数カ所設けられた突起部(図示せず)が、上記段差部分11bに超音波溶着などにより接合されている。これにより、上板15は突起部により電池蓋3に固定され、電池蓋3と上板15との間には未接合部16が存在する。このため、セル5から排気室11に排出されたガスを、未接合部16を介して排気室11から外部に排出することができる。
本実施の形態においては、弁体13およびシート14は略同一の面積を有しており、上板15は、弁体13およびシート14より大きい面積を有している。したがって、弁体13、シート14および上板15を重ね合わせた場合に、全周にわたって上板15の周縁部が形成される。そして、先に述べた排気室11の段差部分11bに上板15の周縁部が接合されて、電池蓋3に上板15が接合される。
なお、電池蓋3に上板15が接合された状態で、排気室11を構成する凹部の深さ(図4中のY)は、弁体13、シート14および上板15の厚さの合計と略同一である。この状態において、シート14は厚さ方向に圧縮されるのが好ましい。シート14の弾性力によって弁体13が底部11aに密接し、排気孔12の気密性が向上する。また、排気孔12は、図4に示すように、排気室11の底部11aからセル5側に延びる筒部12aを有している。
つぎに、電池蓋3の注液室21について説明する。
図3に示すように、電池蓋3の上面には、6つのセル5に対応するように、6つの注液室21が一列に設けられている。
ここで、図5は、図3に示す電池蓋3の要部を示す上面図(すなわち、弁体13、シート14および上板15、ならびに栓体25をはずした状態で矢印Xの方向からみた図)である。また、図6は、図3に示す電池蓋3のうちの注液室21の要部断面図(すなわち、図3におけるB−B線断面を示す図)である。ただし、図6では、セル5内に収納された極板群は省略する。
図5および図6に示すように、注液室21の底部には、セル5と連通し、セル5内に電解液を注入するための注液孔22が設けられている。図3および図4に示すように、6つの注液室21は、単一の栓体25により一括して覆われ、注液孔22が閉塞されている。
6つの注液室21に対応させて6つの栓体をそれぞれ装着してもよいが、1つの栓体25で6つの注液室を一度に覆うほうが、部品点数と作業時間削減の面で好ましい。なお、注液室は1つでもよく、6つのセルに対応するように、1つの注液室に6つの注液孔を一列に設けた構成としてもよい。
栓体25は合成ゴムで構成されているのが好ましい。合成ゴム製の栓体25を注液室21に圧入することにより、栓体25と注液室21との間の密着性を高めることができる。栓体25は、各注液室21に嵌められて注液室21を密閉するように構成された6つの筒状部分25aと、これら筒状部分25aを連結する帯状部分25bと、が一体化されて構成されている。すなわち、栓体25は単一の部材で構成されている。
上記のように、本実施の形態の電池蓋3は、排気孔12を有する排気室11と、注液孔22を有する注液室21と、をそれぞれ別個に備えているため、電解液の注液時に排気室11の底面における排気孔12への電解液の付着を抑制することができる。これにより、安全弁の動作が安定化し、鉛蓄電池1の信頼性が向上する。
また、平板状の弁体13で排気孔12を覆う電池蓋3を用いた本実施の形態の鉛蓄電池1は、キャップ状のゴム弁を排気筒に装着する電池蓋を用いる従来の鉛蓄電池と比較して、電池蓋の高さ寸法を低減させることができ、より容易に小型化することができる。
本実施の形態における注液室21をより詳細に説明する。
注液孔22内には、一端が注液室21内に開口し、他端がセル5内に開口する中空パイプ23が設けられている。注液室21の内側側壁より注液孔22側へ突出して支持体24が設けられており、中空パイプ23は支持体24で支持されることにより固定されている。すなわち、中空パイプ23は、注液孔22の内側側壁と接触しないように配置されている。
これにより、注液孔22内において、中空パイプ23の外側と内側の2つの経路が確保され、これら2つの経路によって注液室21とセル5とが連通する。
ここで、上記のような電池蓋3を備えた本実施の形態の鉛蓄電池1への電解液の注液工程について説明する。
注液工程では、図7に示す注液容器31を用いる。図7は、図1に示す鉛蓄電池1に好適に用いられる注液容器31の断面図である。注液容器31は、注液室21に対応するように、6つの容器33は、それぞれ先端に開口部34aを有し、開口部34aが同じ向きとなるように一列に配置され、一体化された構造を有する。容器33は、例えばポリプロピレンなどの耐酸性の合成樹脂で構成され、容器33内にはセル5に注液する電解液32が収納されている。そして、容器33の開口部34aは耐酸性の合成樹脂フィルムなどからなるシート状部材34bで封口されている。
ここで、注液容器31内の電解液32をセル5に注入する状態を図8に示す。図8は、図1に示す鉛蓄電池1のうちの注液室21に注液容器31を装着した状態を示す断面図(電解液を注入する様子を示す図)図であって、図3に示す電池蓋3のうちの注液室21の要部断面図(すなわち、図3におけるB−B線断面を示す図)に対応する図である。
各注液孔22に、それぞれ容器33の先端に位置するシート部材34bで封口された開口部34aが対応するように、注液容器31を注液室21に設置する。
このとき、シート部材34bが、中空パイプ23の注液室21側の先端によって破られ、各容器33の先端が開口する。そして、容器33内の電解液32が中空パイプ23の内側を通って、セル5に注入される(図8において矢印Pで示される経路)。
なお、中空パイプ23でシート状部材34bを突き破る作業を円滑に行うため、図6に示すように、中空パイプ23の注液室21側の先端を傾斜させている。
注液後は、注液室21に栓体25を装着して、注液孔22を閉じる。
また、本実施の形態においては、中空パイプ23の外側と、注液孔22の内側と、で形成される空間部分により、セル5と注液室21とを連通する経路(図6における矢印参照)が形成されている。注液時には、セル5内の空気がこの経路を通って注液室21に移動した後、外部へ放出されるか、または容器33内に移動する。
すなわち、セル5中の空気の電解液32への置換(図8に示す経路Qおよび経路R)と、容器33中の電解液32の空気への置換(図8に示す経路Q)とが行われる。このため、容器33内の電解液32がセル5に迅速に移動する。
セル5内において空気と電解液32との置換が円滑に行われない場合、注液速度がセル5内の極板群に電解液32が浸透する速度を上回ると、電解液32が注液室21から電池1の外部に溢れ出す場合がある。また、容器33内において、電解液32と空気との置換が円滑に行われない場合、容器33から電解液32が流出する速度が極端に低下し、注液に要する時間が長くなる。
これに対して、本実施の形態では、上記のように、注液孔22内における中空パイプ23の内側と外側で注液室21とセル5とを連通する経路がそれぞれ形成されるため、注液時のセル内の空気の電解液32への置換が円滑に行われる。これにより、注液時に電解液32が注液室21から溢れ出すのを抑制することができると同時に、注液時間を短縮することができる。
また、図9に示したように、中空パイプ23の外側に注液室21からセル5に向けて溝部23aや切り込み(図示せず)を形成するのが好ましい。図9は、本実施の形態における注液孔22内に備えることのできる中空パイプ23の変形例の上端部分を示す斜視図である。このような構成によれば、図8に示す経路Qを通して、容器33中の電解液32の空気への置換をより円滑に行うことができる。
以下に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
《実施例1》
本実施例においては、上記の実施の形態における図1〜6に示す構造を有する電池蓋3を用いた本発明の鉛蓄電池A(12V−6Ah)を作製した。
安全弁として機能する平板状の弁体13は、ネオプレンゴム(厚さ0.3mm、国際ゴム硬さ60度)を用いて作製した。シート14は、空隙率90%のEPDM発泡体(厚さ2.0mm)を用いて作製した。また、電池作製時において電池蓋3に上板15を固定した後における圧縮時のシート14の厚さを1.4mmに設定した。したがって、電池作製時の弁体13の厚さおよびシート14の厚さの和は1.7mmであった。また、弁体13の排気室11の底部11aとの当接面にはシリコーンオイルを塗布した。
極板群を作製するために、Pb−Ca系合金製の正極格子に二酸化鉛を含む正極活物質層を保持して正極板を得た。また、Pb−Ca系合金製の負極格子に鉛を含む負極活物質層を保持して負極板を得た。上記のようにして得た正極板および負極板を、ガラス繊維製のセパレータを介して交互に配置し、極板群を作製した。
このとき、正極板は4枚、負極板は5枚用いた。
弁体13、シート14、および上板15を電池蓋3の排気室11に設置した。このとき、上板15の周縁部に断続的に設けられた突起部と、電池蓋3の段差部分11bとを、超音波溶着により接合して、上板15を電池蓋3に固定した。突起部は断続的に設けられるため、電池蓋3と上板15との間には未接合部16が存在した。このため、セル5から排出室11に排出されたガスを、未接合部16を介して排気室11から外部に排出することができた。
その後、電池蓋3を電槽2に嵌め、上述した方法で注液容器31を用いて注液室21の注液孔22からセル5内に電解液として希硫酸(比重:1.320)を注入した。このとき、注液に要した時間は20秒間であった。注液した後、注液室21に栓体25を装着した。
《比較例1》
図10に示す構造を有する電池蓋40を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の鉛蓄電池Bを作製した。
電池蓋40は、実施例1において用いた電池蓋3と異なり、上面に深さ8.0mmの凹部からなる排気室41、および各セルに対応するように、その底部に注液孔を兼ねる6つの排気筒42(高さ:5.0mm、外径:6.0mm、内径:3.0mm、)を備える。
上記のような電池蓋40を電槽2に嵌めた後、排気筒42に、外径2.0mmおよび内径1.5mmの先端部を有する注液ノズルを挿入し、当該注液ノズルを通してセル内に実施例1と同じ電解液を注液した。このとき、注液に要した時間は40秒間であった。注液速度をさらに上げると、注液ノズル外側と排気筒42との隙間から電解液が溢れ出し、これ以上の注液時間の短縮はできなかった。
また、注液が完了した後、排気筒42から注液ノズルを取り外す際に、注液ノズル先端に残存した電解液の滴が排気筒42周辺に付着していた。なお、電解液の付着度合いは比較的軽微であった。
その後、排気筒42にキャップ状のゴム弁43(高さ:4.0mm、外径:7.0mm、内径:5.5mm、天面の厚さ:1.0mm)を装着した。このとき、ゴム弁43を構成する材料には実施例1の弁体13と同じ材料を用い、ゴム弁43の排気筒42に密着させる面にはシリコーンオイルを塗布した。ゴム弁43を覆う上板45を超音波溶着により電池蓋40に接合した。
なお、キャップ状のゴム弁43を排気筒42に装着するので、上板45を除いた排気筒42の基部からゴム弁43の上面までの高さ寸法は、排気筒42の高さ5.0mmとゴム弁43の天面の厚さ1.0mmとの和であり、6.0mmであった。
《比較例2》
図11に示す構造を有する電池蓋50を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の鉛蓄電池Cを作製した。
電池蓋50は、実施例1において用いた電池蓋3と異なり、注液室21および栓体25を有しない構造を有し、排気室51内の排気孔52が注液孔を兼ねている。排気室51の内部の構成は、実施例1の排気室11の内部の構成と同じとした。
上記のような電池蓋50を電槽2に嵌めた後、排気孔52に、外径2.0mmおよび内径1.5mmの先端部を有する注液ノズルを挿入し、当該注液ノズルを通してセル内に実施例1と同じ電解液を注液した。このとき、注液に要した時間は40秒間であった。注液速度をさらに上げると、注液ノズルと排気孔52との隙間から電解液が溢れ出し、これ以上の注液時間の短縮はできなかった。
また、注液が完了した後、排気孔52から注液ノズルを取り外す際に、注液ノズル先端に残存した電解液の滴が排気孔52周辺に付着していた。なお、排気筒42が高さを有する比較例1に比べて、排気孔52周辺の電解液の付着度合いが大きかった。
その後、排気孔52を覆う弁体53を、排気室51の底部に当接させて配置した。ついで弁体53上にシート54を配し、シート54上に上板55を配し、超音波溶着により電池蓋50に接合し、鉛蓄電池Cを得た。
《比較例3》
図12に示す構造を有する電池蓋60を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の鉛蓄電池Dを作製した。
電池蓋60は、実施例1において用いた電池蓋3と異なり、図10に示す比較例1の電池蓋40における排気室41内の構造を有する。
まず、排気室61の底面に設けられた排気筒62にキャップ状のゴム弁63を装着した。このとき、ゴム弁63の排気筒62に密着させる面に、シリコーンオイルを塗布した。ゴム弁63を覆う上板65を、超音波溶着により電池蓋60に接合した。
上板65を除いた排気筒62基部からゴム弁63の上面までの高さ寸法は、排気筒62の高さ寸法5.0mmとゴム弁63の天面の厚さ1.0mmとの和であり、6.0mmであった。
また、実施例1と同様の方法により、注液孔(図示しない)および中空パイプ73を有する注液室71から、実施例1と同じ電解液をセル内に注入した。注液に要した時間は20秒間であった。注液した後、注液室71に栓体75を装着した。
[評価試験]
実施例1および比較例1〜3において作製した鉛蓄電池A〜Dをそれぞれ3個ずつ作製し、各鉛蓄電池を1.2Aの定電流で1時間充電した。
そして、各鉛蓄電池について、以下の方法で、安全弁の開弁圧および閉弁圧を計測した。正極端子を備えるセルに隣接するセル(すなわち正極端子側から2番目に位置するセル)に対応する電槽の側面部分に貫通孔を設け、貫通孔にチューブを介して空気圧縮機を接続した。セル内圧は、空気圧縮機と貫通孔との間に設けられた圧力計により測定した。
空気圧縮機によりセル内を加圧した。このとき、セル内圧はピーク値を示した。セル内圧がピーク値に達すると、安全弁の開弁動作によりセル内から外部にガスが排出されるため、セル内圧はそれ以上には上昇しなかった。このセル内圧のピーク値を開弁圧とした。
また、セル内圧がピーク値に達した後、空気圧縮機を停止した。安全弁が開いているため、ガスの排出によりセル内圧が低下した。その後、セル内圧がある値まで低下すると、安全弁の閉弁動作により、セル内圧の低下が止まり、セル内圧が安定した。この安定した状態のセル内圧の値を閉弁圧とした。
結果を表1に示した。
その後、2.5Aの電流値で1時間定電流放電し、その後14.4Vの定電圧で最大電流2.5Aで充電する工程を繰り返して、サイクル試験を行った。放電電圧が10.5Vに到達した時点を寿命とした。
鉛蓄電池A〜Dのなかで電池Cのサイクル寿命が最も短く、425サイクル目で放電電圧が10.5Vまで低下し、寿命となった。そこで、鉛蓄電池A〜Dの充放電サイクル試験をそれぞれ425サイクルまで行い、サイクル試験後に、安全弁の開弁圧および閉弁圧を上記と同様にして再度計測した。結果を表1に示した。
なお、表1には、充放電サイクル前の開弁圧および閉弁圧に対する、充放電サイクル後の開弁圧および閉弁圧の変化量(すなわち、{充放電サイクル後の開弁圧−充放電サイクル前の開弁圧}および{充放電サイクル後の閉弁圧−充放電サイクル前の閉弁圧})も示した。
Figure 2006068095
鉛蓄電池A〜Dは、いずれも充放電の繰り返しにともない開弁圧が上昇する傾向を示した。実施例1の鉛蓄電池Aは、比較例1〜3の鉛蓄電池B〜Dよりも、サイクル試験前後における開弁圧の上昇幅は小さいことがわかった。また、同仕様の電池間における開弁圧の上昇幅のばらつきも、鉛蓄電池Aは鉛蓄電池B〜Dと比べて小さいことがわかった。開弁圧の上昇は、一般的に弁体と排気室の底部との密着により生じるが、鉛蓄電池A程度の開弁圧の上昇は、電池性能に影響を与えない。
本発明の実施例1の鉛蓄電池Aは、比較例の鉛蓄電池B〜Dと比べて、充放電サイクル時において安定した開弁圧と閉弁圧を有し、高い信頼性を示した。
一方、充放電サイクルにおいて早期寿命になった鉛蓄電池Cは、鉛蓄電池A、BおよびDに比べて開弁圧が大幅に上昇した。また、鉛蓄電池Cでは、開弁圧および閉弁圧のばらつきが大きかった。これは、排気孔52周辺に電解液が付着した状態で、弁体13を排気室51の底部に密着させたためであると考えられる。
また、鉛蓄電池Cは、電池A、BおよびDと比べて充放電サイクル前後における閉弁圧の低下幅が大きいことがわかった。このことから、鉛蓄電池Cが早期寿命となった原因は、閉弁圧が大幅に低下し、大気中の酸素がセル内に入ったことにより負極板が劣化したためであると考えられる。
鉛蓄電池Cにおいて閉弁圧が大幅に低下したメカニズムを以下に説明する。
弁体53が排気室51の底部に貼り付くことにより、一旦は、開弁圧が異常に上昇する。この状態で開弁すると、弁体53が排気室52の底部から剥離する際に、弁体53と排気室51の底部との剥離面の平滑性が損なわれる。このため、弁体53と排気室51の底部との密着性が悪くなる。
鉛蓄電池Bおよび鉛蓄電池Dは、鉛蓄電池Aと比べて、開弁圧の上昇幅が増大した。また、鉛蓄電池Cと鉛蓄電池Dとの間における開弁圧の上昇幅の差は、鉛蓄電池Aと鉛蓄電池Cとの間における開弁圧の上昇幅の差より小さかった。このことから、排気室底面に設けられた排気孔を平板状の弁体で覆う構成は、キャップ状のゴム弁を排気室内に設けられた排気筒に装着する構成と比べて、排気室とは別に注液孔を有する注液室を設けるか否かの違いが、充放電の繰り返しにともなう開弁圧の上昇に大きな影響を及ぼすことがわかった。
鉛蓄電池Bおよび鉛蓄電池Dでは、排気筒によって引き伸ばされたキャップ状ゴム弁の復元力で排気筒が締め付けられることにより気密が保たれる。ゴム弁は常に引張力が加わった状態で動作する。一方、鉛蓄電池Aおよび鉛蓄電池Cでは、弁体と弁体上に配置された弾性体との押圧力によって気密が保たれる。弁体は常に圧縮力が加わった状態で動作する。このように、安全弁への応力のかかり方の違いが、鉛蓄電池Aが、鉛蓄電池Bおよび鉛蓄電池Dと、安全弁の開弁圧と閉弁圧の挙動が異なる要因の一つであると考えられる。
弁体とシートの厚さを合計した寸法が1.70mmである実施例1の鉛蓄電池Aでは、排気筒の基部からゴム弁の上面までの寸法が6.00mmである比較例1の鉛蓄電池Bおよび比較例3の鉛蓄電池Dと比較して、電池蓋の高さ寸法の低減、すなわち小型化が可能である。また、電池の高さを同一寸法として、電池蓋の高さを低減した分(例えば、6.00mm−1.70mm=4.30mm)だけ、電槽の高さ寸法を大きくし、極板の高さ寸法を大きくすることができるため、鉛蓄電池を高容量化することができる。さらに、本発明の実施例1の鉛蓄電池Aでは、注液に要する時間が短いため、鉛蓄電池の生産性が向上する。
本発明の制御弁式鉛蓄電池は、小型化や高容量化が可能であり、かつ高信頼性を有し、自動二輪車用やバックアップ用などの各種機器の電源に好適に用いられる。
本発明の制御弁式鉛蓄電池の一実施の形態の斜視図である。 図1に示す鉛蓄電池1の電槽2の上面図(すなわち、図1に示す鉛蓄電池1の電池蓋3を外し、矢印Xの方向からみた図)である。 図1に示す鉛蓄電池1の電池蓋3の分解斜視図である。 図3に示す電池蓋3のうちの排気室11の要部断面図(すなわち、図3におけるA−A線断面を示す図)である。 図3に示す電池蓋3の要部を示す上面図(すなわち、弁体13、シート14および上板15、ならびに栓体25をはずした状態で矢印Xの方向からみた図)である。 図3に示す電池蓋3のうちの注液室21の要部断面図(すなわち、図3におけ るB−B線断面を示す図)である。 図1に示す鉛蓄電池1に好適に用いられる注液容器31の断面図である。 図1に示す鉛蓄電池1のうちの注液室21に注液容器31を装着した状態を示す断面図(電解液を注入する様子を示す図)図でる。 本発明の実施の形態における注液孔22内に備えることのできる中空パイプ23の変形例の上端部分を示す斜視図である。 従来の制御弁式鉛蓄電池における電池蓋の分解斜視図である。 従来の制御弁式鉛蓄電池における他の電池蓋の分解斜視図である。 比較例3の制御弁式鉛蓄電池における電池蓋の分解斜視図である。

Claims (5)

  1. 正極板、負極板、前記正極板と前記負極板との間に配されたセパレータ、および電解液を含む極板群と;開口部、および前記極板群を収納する複数のセルを備える電槽と;前記開口部に装着された電池蓋と;を具備する制御弁式鉛蓄電池であって、
    前記電池蓋は、排気室と、注液室と、を備え、
    前記排気室は、前記排気室の底部に設けられかつ前記セルに連通する排気孔と、前記排気室の底部に当接して前記排気孔を覆う平板状の弁体と、前記弁体上に配置された弾性を有するシートと、前記電池蓋に固定されかつ前記シートを覆う上板と、を備え、
    前記注液室は、前記注液室の底部に設けられかつ前記セルに連通する注液孔と、前記注液孔を閉塞する栓体と、を備えること、
    を特徴とする制御弁式鉛蓄電池。
  2. 前記シートは、連続気泡を有するスポンジ体で構成されている請求項1記載の制御弁式鉛蓄電池。
  3. 前記弁体のうちの前記排気室の底部に当接する面に、オイルが塗布されている請求項1または2記載の制御弁式鉛蓄電池。
  4. 前記注液孔内に、前記注液室と前記セルとを連通する中空パイプが配置されている請求項1〜3のいずれかに記載の制御弁式鉛蓄電池。
  5. 前記複数のセルに対応して前記注液室を複数備え、
    前記栓体は、前記複数の注液室を一括して覆う単一の部材で構成されている請求項1〜4うちのいずれかに記載の制御弁式鉛蓄電池。
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