JP4296754B2 - 制御弁式鉛蓄電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は制御弁式鉛蓄電池の弁構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に制御弁式鉛蓄電池の安全弁は、通常時には外気が蓄電池内に流入することを防止するために閉弁し、電解液中の水の電気分解によるガス発生等によって蓄電池内圧が上昇した時には開弁することが必要である。
【0003】
従来の制御弁式鉛蓄電池に使用される弁構造は、例えば図2に示すように、電槽(図示せず)の開口部を閉塞する蓋1に注液口を兼ねた排気口2を設け、その排気口2の開口部周辺の弁装着部3に排気口2を覆う平板状のゴム弁4を装着する。更にゴム弁4の上面には弾性を有する平板状の発泡ゴム体5を設け、更に発泡ゴム体5の上面には発泡ゴム体5を圧縮させながら上蓋6が蓋1と溶着等により装着されている。なお、上蓋6と蓋1との間にはガスを排気するための排気孔7が設けられている。更に弁装着部3とゴム弁4の接触面には気密を保つためシリコーンオイル等の液体シール剤が塗布されている。
【0004】
このような構造により、ガス発生によって蓄電池内圧が上昇した時は、ガスが排気口2を通りゴム弁4を押し上げて排気孔7より外部へ放出される。また、ガスを放出して内圧が低下した後は発泡ゴム体5の弾性によりゴム弁4が閉弁される。更に、負極板の酸素ガス吸収反応によって電池内が減圧状態になった場合には、ゴム弁4が大気圧により排気口2に押し当てられて、外気の電池内への流入を防止する。
【0005】
一般的な制御弁式鉛蓄電池は電解液を活物質およびマットセパレータあるいはシリカ等の電解液保持材によって極板群に保持し、極板群から遊離する電解液を実質上有していない構成が用いられている。このような遊離電解液を有していない制御弁式鉛蓄電池にかえて、例えば特開昭62−122076号公報には極板群の下部のみを電解液に浸漬した制御弁式鉛蓄電池が示されている。遊離電解液量は負極での酸素ガス吸収反応を阻害しない程度に設定される。
【0006】
このような遊離電解液を有する制御弁式鉛蓄電池は極板群の下部に潤沢に硫酸分が供給されるため、遊離電解液を有していない電池に比較して低温急放電特性に優れている。特に自動車用鉛蓄電池は低温急放電特性が要求されるためにこのような遊離電解液を有する制御弁式鉛蓄電池が一部に採用されている。
【0007】
図2に示したような安全弁を蓋1に一体に有する構造を採用する場合、蓄電池に電解液を注液する際に電解液が弁装着部3に付着してしまう。この状態でゴム弁4を装着するため、弁装着部3とゴム弁4の接触面には硫酸分が存在してしまう。この状態で蓄電池を長期間使用すると硫酸により弁装着部3とゴム弁4が変質し、両者が貼り付いてしまう。これにより開弁圧が異常に上昇し、結果として電槽の変形という問題が生じている。
【0008】
また、前記したような極板群から遊離した電解液を有する蓄電池の場合、蓄電池を反転した時に排気口2の内側開口部から少なからず電解液が安全弁に浸入する。このような状況により硫酸分が排気口2より弁装着部3とゴム弁4の界面に浸入する。この状態で長期間使用すると、前記と同様、弁装着部3とゴム弁4が変質し、両者が貼り付き開弁圧が異常上昇し、電槽の変形に至る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような制御弁式鉛蓄電池で発生する開弁圧の異常上昇とこれによる電槽の変形という課題を解決するものであり、長期間使用しても高信頼性を有する制御弁式鉛蓄電池を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために本発明の請求項1記載に係る発明は、電槽に収納された極板群の一部を電解液に浸漬した制御弁式鉛蓄電池であって、前記電槽を閉塞する蓋に設けた注液口に装着された安全弁部を有する液栓を備え、前記液栓の内部に設けた貫通孔を閉塞するゴムからなる弁体を備え、前記貫通孔の下部に電槽方向に突出する筒部を設け、前記筒部の先端は閉塞されているとともに、前記筒部の側部に開口部を有し、前記開口部の上端を電池反転時の電解液面よりも高い位置に設けた制御弁式鉛蓄電池を示すものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の目的は、請求項1に記載した構成を実施の形態とすることにより達成できるのであるが、上記した構成に併せてその構成による作用効果を述べて本発明の一実施の形態を図面を用いて説明する。
【0012】
図1は本発明の実施の形態による制御弁式鉛蓄電池の要部断面を示す図である。図1に示すように、電槽(図示せず)の開口部を閉塞する蓋21に設けた注液口22に液栓23が装着されている。
【0013】
この液栓23は貫通孔24を閉塞するためのゴム弁25を有しており、更にゴム弁25の上面に弾性を有する発泡ゴム体26を装着し、更に発泡ゴム体26を一定率圧縮させながら周囲が凸形状で排気口27を備えた上蓋28を液栓23に嵌合させている。ここで、蓄電池内の気密性、すなわちゴム弁25と弁装着部29との密閉性を保つため、弁装着部29にはシリコーンオイル等の液体シール剤が塗布されている。なお、図1には貫通孔24、ゴム弁25、発泡ゴム体26および上蓋28で安全弁部を構成した例を示しているが、この構造にかぎらず、従来の弁筒部にキャップ状弁を装着した構成を採用することができる。
【0014】
本発明においては貫通孔24の下部に電槽内に突出する底面が閉塞された筒部30を設け、その筒部30の下方の側面に開口部31を設ける。そしてこの開口部31の上端位置は電槽底部に存在する極板群から遊離した電解液量に応じて設定する。すなわち開口部31の上端から上方の空間の容積が遊離電解液体積よりも大きくなるよう設定する。
【0015】
このような本発明の構成によれば蓄電池を反転しても先端が閉塞された筒部30によって安全弁部へ遊離電解液が流れ込むことを抑制し、従来発生していた、硫酸によるゴム弁の変質による開弁圧の異常上昇を抑制することができる。
【0016】
そして液栓23内にゴム弁25を内蔵することで、電解液の注液時に電解液が注液口22に付着したとしても、図2に示した従来構成と異なり、弁装着部29には硫酸は到達しないために、硫酸とゴム弁25とが接触することなく、従来のようにゴム弁25と弁装着部29の貼り付きによる開弁圧の異常上昇および電槽の変形といった現象を抑制することができる。
【0017】
【実施例】
本発明例による制御弁式鉛蓄電池(以下、蓄電池という)と比較例および従来例による蓄電池を用いて比較評価を行った。本発明の実施例として、発明の実施の形態にしたがって蓄電池を作製し、これを電池Aとした。更に比較例として電池Aにおいて、筒部30の先端を閉塞せず、開口部とした蓄電池を作製し、これを電池Bとした。更に従来例として、図1に示した構成の安全弁を備えた蓄電池を作製し、これを電池Cとした。なお、各々の蓄電池は極板群の下部1/10が極板群から遊離した電解液に浸漬した構成を有する制御弁式鉛蓄電池である。
【0018】
これらの電池A、B、Cについて電槽化成終了後電池を5回反転した後、初期開弁圧を測定し、その後60℃中で1ヶ月放置、3ヶ月放置および6ヶ月放置後の開弁圧を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
Figure 0004296754
【0020】
表1に示したように本発明による電池Aは高温で長期間放置しても開弁圧が異常に大きくならず、一定値を保持できることが判る。逆に従来例の電池Cは高温で長期間放置すると開弁圧が異常に上昇していることが判る。更に、比較例の筒部底面を開口した電池Bについては、従来例程ではないが、開弁圧が大幅に上昇していることが判る。
【0021】
これら開弁圧の大幅な上昇は、弁装着部へ電解液が浸入する量に起因するものであり、従来例の電池Cでは注液時の弁装着部への電解液付着と更に筒部底面が開口していることにより電池反転時に電解液が筒内へ浸入しやすいことにより、特に開弁圧上昇の程度が顕著である。また、比較例の電池Bについては、注液時の弁装着部への電解液付着はないが、筒部底面が開口しているため、電池反転時に電解液が浸入しやすいことによるものである。
【0022】
ところが、本発明例の電池Aにおいては注液時の弁装着部への電解液の付着がないのはもちろん、更に、電池反転時においても筒部底面が閉塞しているため、筒内へ電解液が浸入しにくい構造としているため、開弁圧の上昇を防止することができる。
【0023】
【発明の効果】
以上のように本発明の構成によれば、長期間使用しても開弁圧や電池内圧の異常上昇を抑制し、信頼性の高い制御弁式鉛蓄電池を提供できることから、工業上、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明例による制御弁式鉛蓄電池の要部断面図
【図2】従来例による制御弁式鉛蓄電池の要部断面図
【符号の説明】
1,21 蓋
2,27 排気口
3,29 弁装着部
4,25 ゴム弁
5,26 発泡ゴム体
6,28 上蓋
7 排気孔
22 注液口
23 液栓
24 貫通孔
30 筒部
31 開口部

Claims (1)

  1. 電槽に収納された極板群の一部を電解液に浸漬した制御弁式鉛蓄電池であって、前記電槽を閉塞する蓋に設けた注液口に装着された安全弁部を有する液栓を備え、前記液栓の内部に設けた貫通孔を閉塞するゴムからなる弁体を備え、前記貫通孔の下部に電槽方向に突出する筒部を設け、前記筒部の先端は閉塞されているとともに、前記筒部の側部に開口部を有し、前記開口部の上端を電池反転時の電解液面よりも高い位置に設けたことを特徴とする制御弁式鉛蓄電池。
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