しかしながら、SNDMを利用した記録再生装置等の如く、超高密度にデータを記録する場合には、再生の基準となるクロックに対して、実際の読取信号の反転エッジの位相ズレが顕著になってしまうという技術的な問題点を有している。これは、再生時のジッタの増加に繋がり、結果としてデータの再生品質の悪化の原因となるため好ましくない。再生の基準となるクロックが読取信号の反転エッジ等が現れるタイミングや読取信号のパルスの長さ等に基づいて生成されることを考慮すると、係る読取信号のエッジの位相ズレは、再生の基準となるクロックの生成を好適に行なうことができなくなるという技術的な問題点にも繋がる。
本発明は例えば上述の課題に鑑みなされたものであって、例えばデータの再生等に用いられるクロックを好適に生成することを可能とならしめる信号生成装置及び方法、記録装置及び方法、再生装置及び方法、記録再生装置及び方法、このような信号生成装置、記録装置、再生装置及び記録再生装置としてコンピュータを機能させるコンピュータプログラムプローブ、並びにこのような信号生成装置により生成されるデータが記録された記録媒体を提供することを課題とする。
(信号生成装置又は方法)
本発明の信号生成装置は上記課題を解決するために、複数の出力先のうち対応する出力先に夫々出力される複数の信号を、第1クロックに同期させながら生成する信号生成装置であって、前記複数の信号を生成するためのデータ源を取得する取得手段と、前記複数の信号の夫々を並行して再生する場合に、該並行して再生された夫々の信号に基づいて前記第1クロックに同期した第2クロックを生成できるように、前記データ源より、前記複数の信号の夫々を前記対応する一の出力先に対応付けて生成する信号生成手段とを備える。
本発明の信号生成装置によれば、取得手段により取得されたデータ源から、複数の出力先へ出力される複数の信号が生成される。この複数の信号は、第1クロックに同期して(即ち、第1クロックのタイミングに合わせて)生成される。具体的には、信号生成手段の動作により、複数の出力先のうち一の出力先へ出力されるべき一の信号と複数の出力先のうち他の出力先へ出力されるべき他の信号等とが夫々生成される。即ち、複数の出力先のうち対応する出力先へ夫々出力される信号が複数生成される。尚、本発明では、取得されたデータ源から信号が生成されているため、取得されたデータ源を変調して信号が生成されてという視点で見れば、信号生成装置は、変調装置と同等と言えよう。
このとき、信号生成手段は、複数の信号の夫々を並行して再生する場合に、その再生結果から第1クロックに同期した(即ち、第1クロックと同じ或いは概ね同じ周期を有する、或いは第1クロックの周期を基準とした)第2クロックを生成することができるような複数の信号を生成する。この第2クロックは、例えば、生成された複数の信号を再生する場合等に参照することができる。即ち、信号生成手段により作成された複数の信号を並行して再生すれば、その再生結果より、該複数の信号を再生する際等に用いられる第2クロックを好適に生成することができる。特に、並行して再生される複数の信号より(即ち、信号の束より)第2クロックを生成することができるため、背景技術等において述べたような単一の信号からクロックを生成する態様と比較しても、より好適に第2クロックを生成することができる。即ち、単に単一の信号の再生結果からクロックを取得する態様と比較して、本発明では、複数の信号の夫々の再生結果を付き合わせることができるため、より信頼性の高い第2クロックを好適に生成することができる。
以上の結果、本発明の信号生成装置によれば、データの再生等に用いられるクロックを好適に生成することが可能となる。
本発明の信号生成装置の一の態様は、前記信号生成手段は、前記第1クロックに同期した時間単位毎に、前記複数の信号のうち少なくとも一つの波形に反転エッジが現れるように、前記複数の信号の夫々を生成する。
この態様によれば、複数の信号のうち少なくとも一つの波形には、第1クロックに同期した時間単位毎に反転エッジ(即ち、パルス波形の立ち上がりエッジ部分又は立ち下がりエッジ部分)が現れる。このとき、「第1クロックに同期した時間単位」とは、第1クロックの周期と同じ時間単位に加えて、第1クロックの周期のn倍又は1/n倍の周期に相当する時間単位(即ち、第1クロックの周期を基準とした時間単位)をも含んだ広い趣旨である。例えば、第1クロックの周期が、0.1μs(周波数が10MHz)であれば、その2倍の0.2μs(周波数が8MHz)の時間単位やその1/2倍の0.05μs(周波数が32MHz)の時間単位も、「第1クロックに同期した時間単位」に含まれるものである。そして、後に詳述するように、並行して再生された信号の反転エッジをサンプリングすれば、反転エッジが現れる周期がそのまま第2クロックの周期となるため、第2クロックを好適に且つ比較的容易に生成することができる。
本発明の信号生成装置の他の態様は、前記信号生成手段は、前記複数の信号の夫々の波形のピークの長さが、前記第1クロックの周期の整数倍に相当するように、且つ前記複数の信号のうち少なくとも一つの波形に対して、前記第1クロックの周期に対応した信号変化を施すように前記複数の信号の夫々を生成する。
この態様によれば、複数の信号は、第1クロックの周期を基準とする長さ変調方式に準拠するように生成される。具体的には、複数の信号の夫々の波形のピークの長さが、第1クロックの周期の整数倍となるように、複数の信号の夫々が生成される。そして、この長さ変調方式に準拠しつつも、上述の如く再生クロックを好適に生成することができる。
本発明の信号生成装置の他の態様は、前記信号生成手段は、変換テーブル及び所定の変換パターンの少なくとも一方に基づいて、前記複数の信号の夫々を生成する。
この態様によれば、該変換テーブルや変換パターンを用いることで、データ源より、好適に第2クロックを生成することができるような複数の信号を比較的容易に生成することができる。即ち、変換テーブルや変換パターンが示すような変換の態様に準拠してデータ源を複数の信号に変換すれば足りるため、複数の信号を比較的容易に生成することができる。もちろん、変換テーブルや変換パターンは、第2クロックを好適に生成することができるような複数の信号を生成することができるように規定されている。
本発明の信号生成方法は上記課題を解決するために、複数の出力先のうち対応する出力先に夫々出力される複数の信号を、第1クロックに同期させながら生成する信号生成方法であって、前記複数の信号を生成するためのデータ源を取得する取得工程と、前記複数の信号の夫々を並行して再生する場合に、該並行して再生された夫々の信号に基づいて前記第1クロックに同期した第2クロックを生成できるように、前記データ源より、前記複数の信号の夫々を前記対応する一の出力先に対応付けて生成する信号生成工程とを備える。
本発明の信号生成方法によれば、上述した本発明の信号生成装置が有する各種利益を享受することが可能となる。
尚、上述した本発明の信号生成装置が有する各種態様に対応して、本発明の信号生成方法も各種態様を採ることが可能である。
(記録装置又は方法)
本発明の記録装置は上記課題を解決するために、複数の記録信号のうち対応する記録信号を夫々並行して且つ記録クロックに同期させながら記録する複数の記録手段と、前記複数の記録信号の夫々を並行して再生する場合に、該並行して再生された夫々の記録信号に基づいて前記記録クロックに同期した再生クロックを生成できるように、前記複数の記録信号を、前記複数の記録手段毎に対応付けて生成する信号生成手段とを備える。
本発明の記録装置によれば、複数の記録手段の夫々により記録信号が例えば記録媒体等に記録される。具体的には、複数の記録手段のうち一の記録手段は、複数の記録信号のうち該一の記録手段に対応する一の記録信号を記録クロックに同期させながら記録する。また、複数の複数の記録手段のうち他の記録手段は、複数の記録信号のうち該他の記録手段に対応する他の記録信号を記録クロックに同期させながら記録する。この記録動作が、複数の記録手段の夫々において並行して(又は、同時に或いは概ね同時に)行なわれる。
このとき、複数の記録信号は信号生成手段の動作により生成される。具体的には、信号生成手段の動作により、複数の記録信号の夫々を並行して再生する場合に、その再生結果から記録クロックに同期した再生クロックを生成することができるような複数の記録信号が生成される。そして、生成された複数の信号は、複数の記録手段のうち対応する記録手段に供給される。例えば、複数の記録手段のうち一の記録手段に対応付けられて生成された一の記録信号は、該一の記録手段へ供給され、複数の記録手段のうち他の記録手段に対応付けられて生成された他の記録信号は、該他の記録手段へ供給される。この結果、上述した信号生成装置と同様に、記録された記録信号に基づいて、その再生時には、比較的容易に且つ好適に再生クロックを取得することができる。
以上の結果、本発明の記録装置によれば、データの再生等に用いられる再生クロックを好適に生成することが可能となる。
本発明の記録装置の一の態様は、前記信号生成手段は、前記記録クロックに同期した時間単位毎に、前記複数の記録信号のうち少なくとも一つの波形に反転エッジが現れるように、前記複数の記録信号の夫々を生成する。
この態様によれば、後に詳述するように、反転エッジが現れる周期がそのまま再生クロックの周期となるため、反転エッジをサンプリングすることで、再生クロックを好適に且つ比較的容易に生成することができる。
本発明の記録装置の他の態様は、前記信号生成手段は、前記複数の記録信号の夫々の波形のピークの長さが、前記記録クロックの周期の整数倍に相当するように、且つ前記複数の記録信号のうち少なくとも一つの波形に対して、前記記録クロックの周期に対応した信号変化を施すように前記複数の記録信号の夫々を生成する。
この態様によれば、長さ変調方式に準拠するように記録信号の記録を行なうことができ、結果として再生クロックを好適に且つ比較的容易に生成することができる。
尚、長さ変調方式に準拠した従来の記録装置や再生装置にあっては、記録媒体の走査速度が変化するような場合において、長さ変調方式に準拠して記録されている記録信号が基準クロックの何倍の長さとなっているか判別できないという技術的な問題点を有している。このため、媒体の走査速度を一定に保った上で信号の記録再生を行う必要があった。しかしながら、これでは、x−yスキャナ等を用いて走査される記録媒体では、加減速を行なう媒体周辺部において、媒体の走査速度を一定に保つことができないため、記録信号を記録することができないという技術的な問題点につながる。更には、加減速を行なう媒体周辺部のような記録媒体上のほんの一部に記録されている記録信号を読み取るために、媒体の走査速度が安定するまでプローブ等を多数回走査する必要がある。このため、プローブの操作に要する電力消費量が増大すると共に、プローブの磨耗も加速されるという技術的な問題点を有していた。しかるに、この態様によれば、媒体の走査速度が変化する場合においても、平行して再生された記録信号から基準クロック(即ち、上述の記録クロックや或いは後述の再生クロック)を取得することができる。従って、x−yスキャナ等を用いて走査される記録媒体において、記録信号の記録再生を行うことができる領域を拡大することができる。更には、プローブを必要以上に多数回操作する必要がなくなるため、プローブの操作に要する電力消費量を低減し、またプローブの磨耗を抑制することも可能となる。
本発明の記録装置の他の態様は、前記信号生成手段は、変換テーブル及び所定の変換パターンの少なくとも一方に基づいて、前記複数の記録信号の夫々を生成する。
この態様によれば、該変換テーブルや変換パターンを用いることで、好適に再生クロックを生成することができるような複数の記録信号を比較的容易に生成することができる。
本発明の記録装置の他の態様は、前記複数の記録手段は、前記記録信号を記録するプローブを少なくとも3個以上含んでいる。
この態様によれば、3個以上のプローブの夫々により、好適に再生クロックを生成することができるような記録信号を記録することができる。特に、プローブの数が多ければ多いほど、並行して再生される複数の記録信号の少なくとも一つの波形に所定の周期で反転エッジが現れやすくなる。これにより、より好適に再生クロックを生成することができるような記録信号を記録することができる。
本発明の記録方法は上記課題を解決するために、複数の記録信号のうち対応する記録信号を夫々並行して且つ記録クロックに同期させながら記録する複数の記録手段を備える記録装置における記録方法であって、前記複数の記録信号の夫々を並行して再生する場合に、該並行して再生された夫々の記録信号に基づいて前記記録クロックに同期した再生クロックを生成できるように、前記複数の記録信号を、前記複数の記録手段毎に対応付けて生成する信号生成工程と、前記生成された複数の記録信号の夫々を、前記複数の記録手段のうち対応する記録手段により記録する記録工程とを備える。
本発明の記録方法によれば、上述した本発明の記録装置が有する各種利益を享受することが可能となる。
尚、上述した本発明の記録装置が有する各種態様に対応して、本発明の記録方法も各種態様を採ることが可能である。
(再生装置又は方法)
本発明の第1再生装置は上記課題を解決するために、上述した本発明の記録装置(但し、その各種態様を含む)により記録された複数の記録信号を再生する再生装置であって、前記複数の記録信号のうち対応する記録信号を夫々並行して再生する複数の再生手段と、前記並行して再生された夫々の記録信号に基づいて、前記記録クロックに同期した再生クロックを生成するクロック生成手段とを備える。
本発明の第1再生装置によれば、複数の再生手段の動作により、上述した本発明に係る記録装置により記録された複数の記録信号が、例えば記録媒体等から並行して読み取られ、また並行して再生される。より具体的には、複数の再生手段の夫々により、複数の記録信号のうち該夫々の再生手段に対応する記録信号が再生される。
そして、クロック生成手段の動作により、並行して再生された複数の記録信号から再生クロックが生成される。このとき、複数の記録信号は、上述したように、複数の記録信号の夫々を並行して再生した場合に、その再生結果から記録クロックに同期した再生クロックを生成することができるように記録されている。従って、クロック生成手段は、並行して再生された複数の記録信号から再生クロックを比較的容易にかつ好適に生成することができる。そして、生成された再生クロックを用いて、複数の再生手段による複数の記録信号の再生動作が続けられる。
以上の結果、本発明の第1再生装置によれば、データの再生等に用いられる再生クロックを好適に生成することが可能となる。
本発明の第1再生装置の一の態様は、前記複数の記録信号は、前記記録クロックに同期した時間単位毎に、前記複数の記録信号のうち少なくとも一つの波形に反転エッジが現れるように生成されており、前記クロック生成手段は、前記複数の記録信号のうち少なくとも一つの波形に現れる反転エッジをサンプリングすることで前記再生クロックを生成する。
この態様によれば、後に詳述するように、反転エッジが現れる周期がそのまま再生クロックの周期となるため、反転エッジをサンプリングすることで、再生クロックを好適に且つ比較的容易に生成することができる。
本発明の第2再生装置は上記課題を解決するために、複数の記録信号のうち対応する記録信号を夫々並行して再生する複数の再生手段と、前記並行して再生された夫々の記録信号に基づいて、再生クロックを生成するクロック生成手段とを備える。
本発明の第2再生装置によれば、複数の再生手段の動作により、例えば記録媒体等に記録されている複数の記録信号が、例えば記録媒体等から並行して読み取られ、また並行して再生される。より具体的には、複数の再生手段の夫々により、複数の記録信号のうち該夫々の再生手段に対応する記録信号が再生される。
そして、クロック生成手段の動作により、並行して再生された複数の記録信号から再生クロックが生成される。第2再生装置では特に、後に詳述するように、上述した本発明に係る記録装置により記録された記録信号でなくとも、再生クロックを生成することができる。特に第2再生装置は、再生手段(例えば、後述のプローブ)の数は相対的に多いことが好ましい。即ち、後に詳述するように、相対的に数が多い複数の再生手段を用いて記録信号を再生すれば、複数の記録信号は、複数の記録信号の夫々を並行して再生する場合に、その再生結果から記録クロックに同期した再生クロックを生成することができるように記録されている状態と同等の状態となり得る。従って、クロック生成手段は、並行して再生された複数の記録信号から再生クロックを比較的容易にかつ好適に生成することができる。
以上の結果、本発明の第2再生装置によれば、データの再生等に用いられる再生クロックを好適に生成することが可能となる。
本発明の第2再生装置の一の態様は、前記クロック生成手段は、前記複数の記録信号のうち少なくとも一つの波形に現れる反転エッジをサンプリングすることで前記再生クロックを生成する。
この態様によれば、後に詳述するように、反転エッジが現れる周期がそのまま再生クロックの周期となるため、反転エッジをサンプリングすることで、再生クロックを好適に且つ比較的容易に生成することができる。
本発明の第1又は第2再生装置の他の態様は、前記複数の記録信号のうち一の記録信号が前記複数の再生手段のうち一の再生手段により再生される再生タイミングと前記複数の記録信号のうち他の記録信号が前記複数の再生手段のうち他の再生手段により再生される再生タイミングとの差分を示す遅延量を算出する遅延量算出手段を更に備え、前記クロック生成手段は、前記遅延量を考慮して前記再生クロックを生成する。
例えば複数の記録信号が記録されている記録媒体と再生手段との間で生ずる相対的な傾きズレ等に起因して、複数の再生手段の夫々の間で、再生動作にズレが生じ(より具体的には、再生された記録信号の波形に時間的な遅延又は進み等が生じ)、再生クロックの生成に悪影響を及ぼすおそれがある。しかるに、この態様によれば、このようなズレを遅延量として考慮しながら再生クロックを生成することができるため、このような悪影響を好適に排除し、結果として好適に再生クロックを生成することができる。
本発明の第1又は第2再生装置の他の態様は、前記再生手段は、変換テーブル及び所定の変換パターンの少なくとも一方に基づいて、前記複数の記録信号の夫々を再生する。
この態様によれば、該変換テーブルや変換パターンを用いることで、複数の記録信号から、好適にかつ比較的容易に再生クロックを生成することができる。
本発明の第1又は第2再生装置の他の態様は、前記複数の再生手段は、前記記録信号を再生するプローブを少なくとも3個以上含んでいる。
この態様によれば、3個以上のプローブの夫々により再生される記録信号より、好適に再生クロックを生成することができる。特に、プローブの数が多ければ多いほど、並行して再生される複数の記録信号の少なくとも一つの波形に所定の周期で反転エッジが現れやすくなる。これにより、より好適に再生クロックを生成することができる。
本発明の第1再生方法は上記課題を解決するために、上述した本発明の記録装置(但し、その各種態様を含む)により記録された複数の記録信号を再生する再生方法であって、前記複数の記録信号のうち対応する記録信号を夫々並行して再生する複数の再生工程と、前記並行して再生された夫々の記録信号に基づいて、前記記録クロックに同期した再生クロックを生成するクロック生成工程とを備える。
本発明の第1再生方法によれば、上述した本発明の第1再生装置が有する各種利益を享受することが可能となる。
尚、上述した本発明の第1再生装置が有する各種態様に対応して、本発明の第1再生方法も各種態様を採ることが可能である。
本発明の第2再生方法は上記課題を解決するために、複数の記録信号のうち対応する記録信号を夫々並行して再生する複数の再生工程と、前記並行して再生された夫々の記録信号に基づいて、再生クロックを生成するクロック生成工程とを備える。
本発明の第2再生方法によれば、上述した本発明の記録再生装置が有する各種利益を享受することが可能となる。
尚、上述した本発明の第2再生装置が有する各種態様に対応して、本発明の第2再生方法も各種態様を採ることが可能である。
(記録再生装置又は方法)
本発明の記録再生装置は上記課題を解決するために、複数の記録信号のうち対応する記録信号を夫々並行して且つ記録クロックに同期させながら記録する複数の記録手段と、前記複数の記録信号の夫々を並行して再生する場合に、該並行して再生された夫々の記録信号に基づいて前記記録クロックに同期した再生クロックを生成できるように、前記複数の記録信号を、前記複数の記録手段毎に対応付けて生成する信号生成手段と、前記複数の記録信号のうち対応する記録信号を夫々並行して再生する複数の再生手段と、前記並行して再生された夫々の記録信号に基づいて、前記再生クロックを生成するクロック生成手段とを備える。
本発明の記録再生装置によれば、上述した本発明の記録装置及び再生装置の夫々が有する各種利点を生かしつつ、記録信号(データ)の記録を行い、また記録信号(データ)の再生を行うことができる。
尚、上述した本発明の記録装置及び再生装置の夫々の各種態様に対応して、本発明の記録再生装置も各種態様を採ることが可能である。
本発明の記録再生方法は上記課題を解決するために、複数の記録信号のうち対応する記録信号を夫々並行して且つ記録クロックに同期させながら記録する複数の記録工程と、前記複数の記録信号の夫々を並行して再生する場合に、該並行して再生された夫々の記録信号に基づいて前記記録クロックに同期した再生クロックを生成できるように、前記複数の記録信号を、前記複数の記録手段毎に対応付けて生成する信号生成工程と、前記複数の記録信号のうち対応する記録信号を夫々並行して再生する複数の再生工程と、前記並行して再生された夫々の記録信号に基づいて、前記再生クロックを生成するクロック生成工程とを備える。
本発明の記録再生方法によれば、上述した本発明の記録再生装置が有する各種利益を享受することが可能となる。
尚、上述した本発明の記録再生装置が有する各種態様に対応して、本発明の記録再生方法も各種態様を採ることが可能である。
(コンピュータプログラム)
本発明の第1コンピュータプログラムは上記課題を解決するために、上述した本発明の信号生成装置(但し、その各種態様を含む)に備えられたコンピュータを制御する信号生成制御用のコンピュータプログラムであって、該コンピュータを、前記取得手段及び前記信号生成手段のうち少なくとも一部として機能させる。本発明の第2コンピュータプログラムは上記課題を解決するために、上述した本発明の記録装置(但し、その各種態様を含む)に備えられたコンピュータを制御する記録制御記録制御用のコンピュータプログラムであって、該コンピュータを、前記信号生成手段及び前記供給手段のうち少なくとも一部として機能させる。本発明の第3コンピュータプログラムは上記課題を解決するために、上述した本発明の再生装置(但し、その各種態様を含む)に備えられたコンピュータを制御する再生制御用のコンピュータプログラムであって、該コンピュータを、前記クロック生成手段の少なくとも一部として機能させる。本発明の第4コンピュータプログラムは上記課題を解決するために、上述した本発明の記録再生装置(但し、その各種態様を含む)に備えられたコンピュータを制御する記録再生制御用のコンピュータプログラムであって、該コンピュータを、前記信号生成手段及び前記クロック生成手段のうち少なくとも一部として機能させる。
本発明に係る各コンピュータプログラムによれば、当該コンピュータプログラムを格納するROM、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等の記録媒体から、当該コンピュータプログラムをコンピュータに読み込んで実行させれば、或いは、当該コンピュータプログラムを、通信手段を介してコンピュータにダウンロードさせた後に実行させれば、上述した本発明の信号生成装置、記録装置、再生装置又は記録再生装置を比較的簡単に実現できる。
尚、上述した本発明の信号生成装置、記録装置、再生装置又は記録再生装置における各種態様に対応して、本発明の各コンピュータプログラムも各種態様を採ることが可能である。
コンピュータ読取可能な媒体内の第1コンピュータプログラム製品は上記課題を解決するために、上述した本発明の信号生成装置(但し、その各種形態も含む)に備えられたコンピュータにより実行可能なプログラム命令を明白に具現化し、該コンピュータを、前記取得手段及び前記信号生成手段のうち少なくとも一部として機能させる。コンピュータ読取可能な媒体内の第2コンピュータプログラム製品は上記課題を解決するために、上述した本発明の記録装置(但し、その各種形態も含む)に備えられたコンピュータにより実行可能なプログラム命令を明白に具現化し、該コンピュータを、前記信号生成手段及び前記供給手段のうち少なくとも一部として機能させる。コンピュータ読取可能な媒体内の第3コンピュータプログラム製品は上記課題を解決するために、上述した本発明の再生装置(但し、その各種形態も含む)に備えられたコンピュータにより実行可能なプログラム命令を明白に具現化し、該コンピュータを、前記クロック生成手段の少なくとも一部として機能させる。コンピュータ読取可能な媒体内の第4コンピュータプログラム製品は上記課題を解決するために、上述した本発明の記録再生装置(但し、その各種形態も含む)に備えられたコンピュータにより実行可能なプログラム命令を明白に具現化し、該コンピュータを、前記信号生成手段及び前記クロック生成手段のうち少なくとも一部として機能させる。
本発明の各コンピュータプログラム製品によれば、当該コンピュータプログラム製品を格納するROM、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等の記録媒体から、当該コンピュータプログラム製品をコンピュータに読み込めば、或いは、例えば伝送波である当該コンピュータプログラム製品を、通信手段を介してコンピュータにダウンロードすれば、上述した本発明の信号生成装置、記録装置、再生装置又は記録再生装置を比較的容易に実施可能となる。更に具体的には、当該コンピュータプログラム製品は、上述した本発明の信号生成装置、記録装置、再生装置又は記録再生装置として機能させるコンピュータ読取可能なコード(或いはコンピュータ読取可能な命令)から構成されてよい。
(記録媒体)
本発明の記録媒体は、複数の出力先のうち対応する出力先に夫々出力される複数の信号が、第1クロックに同期しながら記録されている記録媒体であって、前記複数の信号は、前記複数の信号の夫々を並行して再生する場合に、該並行して再生された夫々の信号に基づいて、前記第1クロックに同期した第2クロックを生成できるように記録されている。
本発明の記録媒体によれば、上述した信号生成装置により生成された信号(或いは、上述した本発明に係る記録装置により生成された記録信号)が記録されている。従って、上述した本発明に係る信号生成装置と同様に、好適に第2クロック(或いは、再生クロック)を生成することができる。
尚、上述した本発明の信号生成装置或いは記録装置等における各種態様に対応して、本発明の記録媒体も各種態様を採ることが可能である。
本発明におけるこのような作用、及び他の利得は次に説明する実施例から更に明らかにされる。
以上説明したように、本発明の信号生成装置又は方法によれば、取得手段及び信号生成手段、又は取得工程及び信号生成工程を備える。従って、生成された信号より、好適に所定のクロック(例えば、再生クロック)を取得することができる。
又、本発明の記録装置又は方法によれば、記録手段、信号生成手段及び供給手段、又は信号生成工程及び供給工程を備える。従って、本発明の信号生成装置が有する各種利益を享受できるとともに、データを記録媒体に記録することができる。又、本発明の再生装置又は方法によれば、再生手段及びクロック生成手段、又は再生工程及びクロック生成工程を備える。従って、本発明の信号生成装置が有する各種利益を享受できるとともに、記録媒体に記録されたデータを再生することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について実施例毎に順に図面に基づいて説明する。
以下、本発明の信号生成装置等に係る実施例を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施例においては、信号生成装置、記録装置及び再生装置を含み得る記録再生装置に係る実施例について説明を進める。
(1) 基本構成
初めに、図1を参照して、本実施例に係る記録再生装置100の基本構成について説明する。ここに、図1は、本実施例に係る記録再生装置100の基本構成を概念的に示すブロック図である。尚、図1に示すように、本発明の実施例に係る記録再生装置100は、誘電体記録媒体200にデータを記録し、又は誘電体記録媒体200に記録されたデータを再生する記録再生装置であり、記録・再生の方式として、SNDMを採用している。
図1に示すように、記録再生装置1は、夫々の先端が誘電体記録媒体200の誘電体材料217に対向して電界を印加する複数のプローブ131aないし131eを有する記録再生ヘッドと、各プローブ131aないし131eから印加された信号再生用の高周波電界が戻るリターン電極132と、各プローブ131aないし131eとリターン電極132の間に設けられるインダクタ116と、インダクタ116と各プローブ131aないし131eの夫々の直下の誘電体材料217とにより形成され且つ記録されたデータに対応して分極した部位の容量Csとで決まる共振周波数で発振する発振器117と、誘電体材料217に記録された分極状態を検出するための交番電界(交流信号)を印加するための複数の交流信号発生器112aないし112eと、誘電体材料217に分極状態を記録するための信号を生成する記録処理回路140と、交流信号発生器112aないし112e及び記録処理回路140の出力を切り替える複数のスイッチ113aないし113eと、複数のインダクタ114aないし114eと、複数のコンデンサ115aないし115eと、プローブ131aないし131eの直下の誘電体材料217が有する分極状態に対応した容量Csで変調されるFM信号を復調するFM復調器118と、復調された信号からデータを検出する複数の信号検出器119aないし119eと、信号検出器119aないし119eにおいて検出されたデータを再生する再生処理回路150を備えて構成される。
記録再生ヘッド110は、本発明における「記録手段」及び「再生手段」の一具体例を構成する5つのプローブ131aないし131eを備えている。そして、5つのプローブ131aないし131eの夫々は、対応するインダクタ114aないし114e及びコンデンサ115aないし115eの夫々を含んで構成されるHPF(High Pass Filter)を介して発振器117と接続され、またこのHPF及び対応するスイッチ113aないし113eを介して、対応する交流信号発生器112aないし112e及び記録処理回路140と接続される。例えば、プローブ131aは、対応するインダクタ114a及び対応するコンデンサ115aを含んで構成されるHPFを介して発信器117と接続され、またこのHPF及び対応するスイッチ113aを介して、対応する交流信号発生器112a及び記録処理回路140と接続される。そして、5つのプローブ131aないし131eの夫々は、誘電体記録媒体200の誘電体材料217に電界を印加する電極として機能する。
尚、本実施例においては、5つのプローブを有する記録再生ヘッド110を用いているが、プローブの数はこれに限定されることなく、少なくとも2つ以上あればよい。より好ましくは、3つ以上のプローブを有していることが好ましく、例えば3×3個の、8×8個の或いは32×32個のプローブがマトリクス状に分布するように、各プローブが配置された記録再生ヘッド110であってもよい。
また、記録再生ヘッド110が5個のプローブ131aないし131eを有するので、交流信号発生器112aないし112e、スイッチ113aないし113e、第1インダクタ114aないし114e、コンデンサ115aないし115e、及び信号検出器119aないし119eは、それぞれ5個ずつ設けられている。プローブの数が変化すれば、これらの構成要素の数も同様に変化する。なお、これらのインダクタ及びコンデンサは、特に部品を使用せず、記録再生ヘッド110の自己インダクタンスあるいは容量をもって構成してもよい。
リターン電極132は、各プローブ131aないし131eから誘電体材料217に印加される高周波電界(即ち、発信器117からの共振電界)が戻る電極であって、プローブ131aないし131eを取り巻くように設けられている。尚、高周波電界が抵抗なくリターン電極132に戻るものであれば、その形状や配置は任意に設定が可能である。
インダクタ116は、各プローブ131aないし131eとリターン電極132との間に設けられていて、例えばマイクロストリップラインで形成される。インダクタ116と容量Csとを含んで共振回路が構成される。この共振回路における共振周波数が例えば1GHz程度を中心とした値になるようにインダクタ116のインダクタンスLが決定される。
発振器117は、インダクタ116と容量Csとで決定される共振周波数で発振する発振器である。その発振周波数は容量Csの変化に対応して変化するものであり、従って記録されているデータに対応した分極領域によって決定される容量Csの変化に対応してFM変調が行われる。このFM変調されたFM信号を復調することで、誘電体記録媒体200に記録されているデータを読み取ることができる。
尚、後に詳述するように、各プローブ131aないし131e、リターン電極132、発振器117、インダクタ116、インダクタ114aないし114e及びコンデンサ115aないし115eを含んでなるHPF、並びに誘電体材料217中の容量Csから共振回路が構成され、発振器117において増幅されたFM信号がFM復調器118へ出力される。
交流信号発生器112aないし112eは、誘電体記録媒体200の電極216と各プローブ131aないし131eとの間に交番電界を印加する。また、本実施例に係る記録再生装置100のように、複数のプローブを備える記録再生装置であれば、この交番電解の周波数を参照信号として信号検出器119aないし119eにおいて同期が取られ、各プローブ131aないし131eで検出する信号が弁別される。この交番電界の周波数は5kHz程度を中心としたものであり、誘電体材料217の微小領域に交番電界が印加されることになる。
記録処理回路140は、記録用の記録信号WS1ないしWS5を発生し、記録時にこの記録信号WS1ないしWS5を、対応するプローブ131aないし131eに供給する。この記録信号WS1ないしWS5はデジタル信号に限らずアナログ信号であってもよい。これらの記録信号WS1ないしWS5として、音声情報、映像情報、コンピュータ用デジタルデータ等、各種の信号が含まれる。
本実施例では特に、記録信号WS1ないしWS5の夫々によって記録されたデータを複数のプローブ131aないし131eにて再生することで、好適に再生クロックを生成することができるように、記録信号WS1ないしWS5が記録処理回路140において生成される。この記録処理回路140の構成及びその詳細な動作原理については後に詳述する(図4等参照)。
スイッチ113aないし113eは、再生時には交流信号発生器112aないし112eからの信号を、一方、記録時には記録処理回路140からの記録信号WS1ないしWS5を対応するプローブ131aないし131eに供給するようにその出力を選択する。例えば、スイッチ113aは、再生時には対応する交流信号発生器112aからの信号を、一方、記録時には記録処理回路140からの記録信号WS1を対応するプローブ131aに供給するようにその出力を選択する。スイッチ113aないし113eの夫々は機械式のリレーや半導体の回路が用いられるが、アナログ信号にはリレーが、デジタル信号には半導体回路で構成するのが好適である。
複数のインダクタ114aないし114e及び複数のコンデンサ115aないし115eは、対応するプローブ131aないし131eに対してHPFを構成する。例えば、インダクタ114a及びコンデンサ115aは、プローブ131aに対するHPFを構成し、例えばインダクタ114c及びコンデンサ115cは、プローブ131cに対するHPFを構成する。このHPFは、交流信号発生器112aないし112eからの交番電界や記録処理回路140からの記録信号WS1ないしWS5が発振器117の発振に干渉しないように信号系統を遮断するために用いられる。その遮断周波数fは、インダクタ114aないし114eのインダクタンスをL、コンデンサ115aないし115eのキャパシタンスをCとすると、f=1/2π√{LC}となる。ここで、交流信号発生器112aないし112eから供給される交番電界の周波数は5KHz程度であり、発振器117の発振周波数は1GHz程度であるので、1次のLCフィルタで両者の分離は十分に行われる。さらに次数の高いフィルタを用いてもよいが素子数が多くなるので装置が大きくなるおそれがある。
FM復調器118は、容量Csの微小変化に起因してFM変調された発振器117の発振周波数を復調し、各プローブ131aないし131eの夫々がトレースした部位の分極された状態に対応した波形を復元する。記録されているデータがデジタルの「0」と「1」のデータであれば、変調される周波数は2種類であり、その周波数を判別することで容易にデータの再生が行われる。
信号検出器119aないし119eは、FM復調器118において復調された信号から、各プローブ131aないし131eの先端部に対向する部位の強誘電体材料217の分極状態に応じて符号が反転する非線形誘電率成分等を示す検出信号RS1ないしRS5が検出される。このとき、信号検出器119aないし119eには、対応する交流信号発生器112aないし112eから出力される交番電界が供給されており、検出信号RS1ないしRS5の検出の際には、この交番電界(具体的には、該交番電界の周波数や角周波数等)が参照信号として用いられる。この信号検出器119aないし119eとして、例えばロックインアンプを用い、交流信号発生器112aないし112eの交番電界の周波数に基づいて同期検波を行うことで検出信号RS1ないしRS5の検出を行う。尚、他の位相検波手段を用いてもよいことは当然である。そして、検出された検出信号RS1ないしRS5は再生処理回路150へ出力される。
再生処理回路150は、信号検出器119aないし119eにより検出された検出信号RS1ないしRS5から、誘電体記録媒体200に記録されたデータを再生する。本実施例では特に、再生処理回路150は、検出信号RS1ないしRS5を用いて、データを再生する際の基準となる再生クロックを生成する。この再生処理回路150の構造及びその詳細な動作原理については後に詳述する(図8等参照)。
尚、記録再生装置100のうち、主として記録処理回路140、スイッチ113aないし113e及び記録再生ヘッド110により記録系(即ち、本発明における「記録装置」の一具体例)が構成されており、他方、主として再生処理回路150、交流信号発生器112aないし112e、スイッチ113aないし113e、記録再生ヘッド110、インダクタ116、発振器117、FM復調器118及び信号検出器119aないし119eにより再生系(即ち、本発明における「再生装置」の一具体例)が構成されている。
続いて、本実施例に係る記録再生装置によるデータの記録及び再生に用いられる誘電体記録媒体について、図2を参照しながら説明する。ここに、図2は、本実施例において用いられる誘電体記録媒体200の一例を概念的に示す平面図及び断面図である。
図2(a)に示すように、誘電体記録媒体200は、ディスク形態の誘電体記録媒体であって、例えばセンターホール210と、センターホール210と同心円状に内側から内周エリア207、記録エリア208、外周エリア209を備えている。センターホール210はスピンドルモータに装着する場合等に用いられる。
記録エリア208はデータを記録する領域であって、トラックやトラック間のスペースを有し、また、トラックやスペースには記録再生にかかわる制御情報を記録するエリアが設けられている。また、内周エリア207及び外周エリア208は誘電体記録媒体200の内周位置及び外周位置を認識するために用いられると共に、記録するデータに関する情報、例えばタイトルやそのアドレス、記録時間、記録容量等を記録する領域としても使用可能である。尚、上述した構成はその一例であって、カード形態等、他の構成を採ることも可能である。
また、図2(b)に示すように誘電体記録媒体200は、基板215の上に電極216が、また、電極216の上に誘電体材料217が積層されて形成されている。
基板215は例えばSi(シリコン)であり、その強固さと化学的安定性、加工性等において好適な材料である。電極216は各プローブ131aないし131e(或いは、リターン電極132)との間で電界を発生させるためのもので、誘電体材料217に抗電界以上の電界を印加することで分極方向を決定する。データに対応して分極方向を定めることにより記録が行われる。
誘電体材料217は、例えば強誘電体であるLiTaO3等を電極216の上にスパッタリング等の公知の技術によって形成されている。そして、分極の+面と−面が180度のドメインの関係であるLiTaO3のZ面に対して記録が行われる。他の誘電体材料を用いても良いことは当然である。この誘電体材料217は直流のバイアス電圧と同時に加わるデータ用の電圧によって、高速で微小な分極を形成する。
又、誘電体記録媒体200の形状として、例えばディスク形態やカード形態等がある。各プローブ131aないし131eとの相対的な位置の移動は媒体の回転によって行われ、或いは各プローブ131aないし131eと媒体のいずれか一方が直線的に(例えば、X軸及びY軸の2軸上において)移動して行われる。
(2) 記録動作
続いて、図3から図6を参照して、本実施例に係る記録再生装置1の記録動作について説明を進める。
初めに図3を参照して、記録動作の基本的原理について説明する。ここに、図3は、データの記録動作を概念的に示す断面図である。
図3に示すように、各プローブ131aないし131eと電極216との間に誘電体材料217の抗電界以上の電界を印加することで、印加電界の方向に対応した方向を有して誘電体材料217は分極する。そして、印加する電圧を制御し、この分極の方向を変えることで所定のデータを記録することができる。これは、誘電体(特に、強誘電体)にその抗電界を超える電界を印加すると分極方向が反転し、且つその分極方向が状態で維持されるという性質を利用したものである。
より具体的に説明すると、記録処理回路140は、記録すべきデータに対応する記録信号(パルス信号)WS1ないしWS5を生成する。データを誘電体記録媒体200に記録するときには、スイッチ113aが記録処理回路140とインダクタ114aとを接続するように切り替えられる。これにより、記録処理回路140から出力された記録信号は、スイッチ113a及びインダクタ114aを通って、記録再生ヘッド110のプローブ131aに供給され、誘電体記録媒体200の強誘電体材料217に印加される。これにより、プローブ131aの先端部と対向する部位の強誘電体材料217の分極状態が、記録信号WS1に応じて設定される。もちろんその他のプローブ131bないし131eについても同様の動作が行なわれる。このように記録信号WS1ないしWS5の印加が行われるとき、誘電体記録媒体200は、図示しないスピンドルモータ等の駆動により回転しており、かつ、記録再生ヘッド110は、図示しないサーボ制御装置の制御の下で、誘電体記録媒体200の半径方向に移動する。これにより、データが強誘電体材料217の分極状態として誘電体記録媒体200に記録される。
例えばプローブ131aないし131eから電極216に向かう電界が印加されたとき、微小領域は下向きの分極Pとなり、電極216からプローブ131aないし131eに向かう電界が印加されたときは上向きの分極Pとなるとする。これがデータを記録した状態に対応する。プローブ131aないし131eを含む記録再生ヘッド110が矢印で示す方向に操作されると、検出電圧は分極Pに対応して、上下に振れた矩形波として出力される。尚、分極Pの分極程度によりこのレベルは変化し、アナログ信号としての記録も可能である。
続いて、本実施例に係る記録再生装置100が有する記録処理回路140及び該記録処理回路140により生成される記録信号について、図4から図6を参照してより詳細に説明する。ここに、図4は、記録処理回路140の内部構成を概念的に示すブロック図であり、図5は、各プローブ131aないし131eに対応して生成される記録信号の波形を示す説明図であり、図6は、記録信号を生成する際の具体的処理の流れを概念的に示す説明図である。尚、記録処理回路140は、本発明における「信号生成装置」の一具体例を構成している。
図4に示すように、記録処理回路140は、記録クロック生成器141、記録データ源142及び記録信号生成器142を備えている。
記録クロック生成器141は、記録信号WS1ないしWS5を生成する際の基準となる記録クロックを生成する。
記録データ源142は、本発明における「取得手段」の一具体例を構成しており、誘電体記録媒体200へ記録される各種データ(例えば、映画やTV番組等の映像コンテンツデータや音楽コンテンツデータ、或いはPC用データ等)を格納している。そして、格納されている各種データを記録信号生成器143へ出力可能に構成されている。或いは、例えばネットワークを介して或いは地上波や衛星波を介して各種データを受信し、該受信されたデータを記録信号生成器143へ出力可能に構成されていてもよい。
記録信号生成器143は、本発明における「信号生成手段」の一具体例を構成しており、記録データ源142から出力される元のデータに基づいて、各プローブ131aないし131eに対応する記録信号WS1ないしWS5を生成する。即ち、誘電体記録媒体200へ記録されるべき元のデータ(或いは、その2値化されたデータ)に対して、例えば時分割処理等を施すことで、複数の記録信号WS1ないしWS5を生成する。
このとき記録信号生成器143は特に、記録クロック生成器141が生成する記録クロックの周期毎に記録信号WS1ないしWS5の少なくとも一つのパルス波形が反転する(反転エッジ部分を有する)ような、記録信号WS1ないしWS5を生成する。言い換えれば、記録クロックが反転する周期と同じ周期で、記録信号WS1ないしWS5の少なくとも一つのパルス波形が反転するような、記録信号WS1ないしWS5を生成する。
具体的には、図5に示すように、記録クロックのパルス波形が反転する部分(反転エッジ部分)に対応するように、WS1ないしWS5の少なくとも一つのパルス波形が反転する。例えば、図5に示す記録クロックの最初にパルス波形が反転する部分(図5中(a)にて示す部分)においては、記録信号WS1及びWS4の夫々のパルス波形が反転している。また、その次に記録クロックのパルス波形が反転する部分(図5中(b)にて示す部分)においては、記録信号WS2のパルス波形が反転している。また、更にその次に記録クロックのパルス波形が反転する部分(図5中(c)にて示す部分)においては、記録信号WS3及びWS4の夫々のパルス波形が反転している。また、更にその次に記録クロックのパルス波形が反転する部分(図5中(d)にて示す部分)においては、記録信号WS1及びWS5の夫々のパルス波形が反転している。これ以降の記録クロックのパルス波形が反転する部分においても同様のことが言える。
これらの記録信号WS1ないしWS5は、記録されるべき元のデータに対して、例えば1−7変調やEFM変調(Eight to Fourteen Modulation)や8−16変調等の長さ変調を施すことで生成することができる。即ち、記録クロックの周期の整数倍のパルス波形が組み合わさることで、記録信号WS1ないしWS5が生成される。
また、単にこれらの長さ変調を記録されるべき元のデータに対して施すのみでは、記録クロックのパルス波形が反転する部分において、記録信号WS1ないしWS5のいずれのパルス波形も反転しないという事態も考えられる。このような場合は、記録信号WS1ないしWS5のいずれのパルス波形も反転しない部分において、少なくとも一つのパルス波形が反転するように、特別な変調を施すように構成してもよい。例えば、8ビットのデータを16ビットのデータに変換することで記録信号WS1ないしWS5を生成する8−16変調を例に説明すると、16ビットのデータに変換する際のパターンを複数用意しておき、記録クロックのパルス波形が反転する部分において、記録信号WS1ないしWS5の少なくとも一つのパルス波形が反転するようなパターンを選択する。選択されたパターンの種類は、例えば記録信号WS1ないしWS5中に(或いは、そのヘッダ部分やシンクブロック部分等に)含ませるように構成すれば、データの再生時においても特段の問題は生じない。このように構成することで、記録クロックのパルス波形が反転する部分において、記録信号WS1ないしWS5の少なくとも一つのパルス波形が反転するような記録信号WS1ないしWS5を生成することができる。
このような記録信号WS1ないしWS5に基づいて、各プローブ131aないし131eから誘電体記録媒体200に対して印加される電圧が変化し、誘電体材料217の微小領域上における分極状態を変化させる。そしてその分極状態を後述するように複数のプローブ131aないし131eを用いて読み取ることで、後述するように好適に再生クロックを生成(取得)することが可能となる。係る再生クロックの生成動作については、後に詳述する。
尚、上述した変調のパターンを選択することに代えて、図6に示すように、例えば記録されるべき元のデータを所定のテーブルでデータ変換することで、記録クロックのパルス波形が反転する部分において(或いは、所定周期毎に)、記録信号WS1ないしWS5の少なくとも一つのパルス波形が反転するような、記録信号WS1ないしWS5を生成するように構成してもよい。
例えば図6に示すように、記録されるべき元のデータの変換用に3つのテーブルA、テーブルB及びテーブルCを用意してもよい。このとき、元のデータをテーブルAに基づいて変換すると、図6の上側のパルス波形図に示すように、所定周期に合わせて、丸で囲まれているように、記録信号WS1ないしWS5のいずれのパルス波形も反転しない部分が存在する。同様に、元のデータをテーブルBに基づいて変換すると、図6の中側のパルス波形図に示すように、所定周期に合わせて、丸で囲まれているように、記録信号WS1ないしWS5のいずれのパルス波形も反転しない部分が存在する。他方、元のデータをテーブルCに基づいて変換すると、図6の下側のパルス波形図に示すように、所定周期毎に、記録信号WS1ないしWS5の少なくとも一つのパルス波形が反転している。従って、この場合は、元のデータを変換するためにテーブルCが選択される。そして、選択されたテーブルの種類は、記録信号WS1ないしWS5中に(或いは、そのヘッダ部分やシンクブロック部分等に)含ませるように構成すれば、データの再生時においても特段の問題は生じない。
また、このようなテーブルを用いて記録されるべき元のデータを変換する場合には、上述の如く記録クロックの周期に合わせた長さ変調を必ずしも施さなくともよい。即ち、テーブルを用いることで、所定の周期毎に少なくとも一つのパルス波形が反転するような記録信号WS1ないしWS5を直接的に生成(変換)できるため、必ずしも長さ変調を施す必要がないからである。
尚、この記録信号WS1ないしWS5は、図5に示すように、記録時間軸上において少なくとも一つのパルス波形が反転するような記録信号WS1ないしWS5を生成しなくともよい。例えば、図5の記録信号WS1と記録信号WS2(或いは、その他の記録信号WS3ないしWS5)とは、必ずしも記録時間軸上において、図5に示すタイミングで生成されまた記録される必要はない。要は、記録されたデータを再生する際に、各プローブ131aないし131eにより同時に或いは並行して再生されたデータから後述するように再生クロックを取得できれば、どのようなタイミングで記録信号WS1ないしWS5を生成しまた記録してもよい。より具体的には、後に詳述するように(図9参照)、再生時間軸上において、同時に或いは並行して検出される検出信号RS1ないしRS5の少なくとも一つのパルス波形が、所定の周期毎に反転するようなデータを記録するための記録信号WS1ないしWS5が生成され、且つ記録されれば足りる。
(3) 再生動作
続いて、図7から図11を参照して、本実施例に係る記録再生装置100の再生動作について説明を進める。
初めに、図7を参照して、本実施例に係る記録再生装置100の再生動作について説明する。ここに、図7は、データの再生動作を概念的に示す断面図である。
誘電体の非線形誘電率は、誘電体の分極方向に対応して変化する。そして、誘電体の非線形誘電率は、誘電体に電界を印加した時に、誘電体の容量の違いないし容量の変化の違いとして検出することができる。従って、誘電体材料に電界を印加し、そのときの誘電体材料の一定の微小領域における容量Csの違いないし容量Csの変化の違いを検出することにより、誘電体材料の分極の方向として記録されたデータを読み取り、再生することが可能となる。
具体的にはまず、スイッチ113aないし113eが、交流信号発生器112aないし112eと対応するインダクタ114aないし114eとを接続するように切り替えられる。これにより、交流信号発生器112aないし112eによって生成された交番電界が、対応するスイッチ113aないし113e及び対応するインダクタ114aないし114eを通って、記録再生ヘッド110の各プローブ131aないし131eに供給される。そして図7に示すように、不図示の交流信号発生器112aないし112eからの交番電界が電極216及び対応するプローブ131aないし131eの間に印加される。例えば、交流信号発生器112aからの交番電界は、電極216及び対応するプローブ131aの間に印加され、或いは交流信号発生器112cからの交番電界は、電極216及び対応するプローブ131cの間に印加される。この交番電界は、誘電体材料217の抗電界を越えない程度の電界強度を有し、例えば5kHz程度の周波数を有する。交番電界は、主として、誘電体材料217の分極方向に対応する容量変化の違いの識別を可能にするために生成される。尚、交番電界に代えて、直流バイアス電圧を印加して、誘電体材料217内に電界を形成してもよい。係る交番電界が印加されると誘電体記録媒体200の誘電体材料217内に電界が生ずる。
次に、各プローブ131aないし131eの先端と記録面との距離がナノオーダの極めて小さい距離となるまで、記録再生ヘッド110を記録面に接近させる。この状態で発振器117を駆動する。尚、各プローブ131aないし131e直下の誘電体材料217の容量Csを高精度に検出するためには、各プローブ131aないし131eを誘電体材料217の表面、即ち、記録面に接触させることが好ましい。但し、各プローブ131aないし131eの先端を記録面に接触させなくとも、例えば実質的には接触と同視できる程度に各プローブ131aないし131eの先端を記録面に接近させても、再生動作(更には、上述の記録動作)を行なうことは可能である。
そして、発振器117は、各プローブ131aないし131e直下の誘電体材料217に係る容量Csとインダクタ116とを構成要素として含む共振回路の共振周波数で発振する。この共振周波数は、上述のとおりその中心周波数をおおよそ1GHz程度とする。
ここで、リターン電極132及び各プローブ131aないし131eは、発振器117による発振回路の一部を構成している。各プローブ131aないし131eから誘電体材料217に印加された1GHz程度の高周波信号は、図7中点線の矢印にて示すように、誘電体材料217内を通過してリターン電極132に戻る。リターン電極132を各プローブ131aないし131eの近傍に設け、発振器117を含む発振回路の帰還経路を短くすることにより、発振回路内にノイズ(例えば、浮遊容量成分)が入り込むのを軽減することができる。
付言すると、誘電体材料217の非線形誘電率に対応する容量Csの変化は微小であり、これを検出するためには、高い検出精度を有する検出方法を採用する必要がある。FM変調を用いた検出方法は、一般に高い検出精度を得ることができるが、誘電体材料217の非線形誘電率に対応する微小な容量変化の検出を可能とするために、さらに検出精度を高める必要がある。そこで、本実施例に係る記録再生装置100(即ち、SNDM原理を用いた記録再生装置)は、リターン電極132を各プローブ131aないし131eの近傍に配置し、発振回路の帰還経路をできる限り短くしている。これにより、ノイズ等の影響を排除し、極めて高い検出精度を得ることができ、誘電体の非線形誘電率に対応する微小な容量変化を検出することが可能となる。
発振器117の駆動後、記録再生ヘッド110を誘電体記録媒体200上において記録面と平行な方向に移動させる。すると移動によって、各プローブ131aないし131e直下の誘電体材料217のドメインが変わり、その分極方向が変わるたびに、容量Csが変化する。即ち、各プローブ131aないし131eの先端部に対向する部位の強誘電体材料217の分極状態の変化に応じて符号が反転する非線形誘電率成分により、容量Csが変化する。容量Csが変化すると、共振周波数、即ち、発振器1117の発振周波数が変化する。この結果、発振器117は、容量Csの変化に基づいてFM変調された信号を出力する。
このFM信号は、FM復調器118によって周波数−電圧変換される。この結果、容量Csの変化は、電圧の大きさに変換される。容量Csの変化は、誘電体材料217の非線形誘電率成分に対応し、この非線形誘電率成分は、誘電体材料217の分極方向に対応し、この分極方向は、誘電体材料217に記録されたデータに対応する。従って、FM復調器118から得られる信号は、誘電体記録媒体200に記録されたデータに対応して電圧が変化する信号となる。そして、信号検出器119aないし119eによって、対応するプローブ131aないし131eの先端部に対向する部位の強誘電体材料217の分極状態に応じて符号が反転する非線形誘電率成分等を含む検出信号RS1ないしRS5が検出される。信号検出器119aないし119eには、対応する交流信号発生器112aないし112eから出力される交流信号が供給されており、この交流信号が参照信号として用いられて同期検波等が行われることで、検出信号RS1ないしRS5が検出される。このようにして検出された検出信号RS1ないしRS5が、プローブ131aないし131eの先端部に対向する部位の強誘電体材料217の分極状態、すなわち、当該部位の強誘電体材料217に記録されたデータに対応する。
検出された検出信号RS1ないしRS5は、再生処理回路150によって合成等の処理が施されることで、誘電体記録媒体に記録されたデータが再生される。係る再生動作は、誘電体誘電体記録媒体200の回転と記録再生ヘッド110の移動と共に行われる。
加えて、本実施例では特に、再生処理回路150において、検出信号RS1ないしRS5より再生クロックが生成される。係る動作について、図8及び図9を参照して、より詳細に説明する。ここに、図8は、再生処理回路150の内部構成を概念的に示すブロック図であり、図9は、各信号検出器119aないし119eにより検出される検出信号及び該検出信号より生成される再生クロックの波形を示す説明図である。
図8に示すように、再生処理回路150は、複数の増幅器151aないし151e、複数の2値化回路152aないし152e、並列/直列変換回路153及び再生クロック生成器154を備えている。
増幅器151aないし151eは、対応する検出信号RS1ないしRS5を電圧信号に変換して、対応する2値化回路153aないし153eへ出力する。例えば、増幅器151aは、対応する検出信号RS1を電圧信号に変換し、対応する2値化回路153aへ出力する。このとき、増幅器151aないし151eの夫々は、変換された電圧信号を増幅するように構成してもよい。
2値化回路152aないし152eは、対応する増幅器151aないし151eにより変換された電圧信号を「0(LOWレベル)」及び「1(HIGHレベル)」にて示される2値化データ列に変換する。このとき、2値化回路152aないし152eは、再生クロック生成器154より出力される再生クロックを参照しながら、変換された電圧信号をサンプリングすることで、2値化データ列に変換する。
並列/直列変換回路153は、2値化回路152aないし152eの夫々より並行して出力される2値化データ列を再生されるべき元のデータに変換する。即ち、各2値化回路152aないし152eの夫々より出力される並列信号(2値化データ列)を、直列信号(1つの元のデータ)に変換する。再生されるべき元のデータは、例えばディスプレイやスピーカー等の各種外部出力機器に出力されることで表示されたり、或いはパーソナルコンピュータ等に出力されることで各種データ処理が施されたりする。
再生クロック生成器154は、本発明における「クロック生成手段」の一具体例を構成しており、増幅器151aないし151eの夫々により変換された電圧信号を2値化することで再生クロックを生成する。この再生クロックの生成について、図9を参照してより詳細に説明する。
図9に示すように、具体的には、増幅器151aないし151eの夫々により変換された電圧信号を2値化することで生成される5つのパルス波形(以降、適宜“再生パルス波形”と称する)の少なくとも一つが反転する部分において、再生クロックのパルス波形が反転するような再生クロックを生成する。例えば、図9においては、初めに増幅器151a及び151dの夫々に対応する再生パルス波形が反転し、続いて増幅器151bに対応する再生パルス波形が反転し、続いて増幅器151c及び151dの夫々に対応する再生パルス波形が反転し、続いて増幅器151a及び151eの夫々に対応する再生パルス波形が反転している。再生クロック生成器154においては、この再生パルス波形の反転のタイミングと同じタイミングでパルス波形が反転するような再生クロック(図9最下部参照)が生成される。
このとき、複数の再生パルス波形(或いは、検出信号RS1ないしRS5)より直接的に1つの再生クロックを生成してもよい。例えば、図9に示す複数の再生パルス波形の反転のタイミングをサンプリングすることで、図9最下部に示す再生クロックを生成するように構成してもよい。或いは、複数の再生パルス波形の夫々から、個別的に複数の(この場合5つの)クロックを生成した後に、該5つのクロックに対して平均化処理等を施すことにより、図9最下部に示すような記録再生装置100において共通に用いられる1つの再生クロックを生成するように構成してもよい。即ち、間接的に1つの再生クロックを生成するように構成してもよい。
そして、上述の記録動作において説明したように、複数のプローブ131aないし131eにより並行してデータが再生された場合に、図9に示すように所定の周期毎に少なくとも一つの再生パルス波形が反転するように、該データが記録されている。このため、この所定の周期毎にパルス波形が反転するような再生クロック(図9最下部参照)を好適に生成することができる。
以上説明したように、本実施例に係る記録再生装置100によれば、複数のプローブ131aないし131eにより並行して再生されたデータを用いて、再生クロックを好適に生成することができる。特に、並行して再生されたデータに相当する複数の再生パルス波形は、所定のタイミングで少なくとも一つの再生パルス波形が反転している。このため、この再生パルス波形の反転のタイミングをサンプリングすることで、所定のタイミングでパルス波形が反転する(即ち、所定周期を有する)再生クロックを好適に且つ比較的容易に生成することができる。
仮に、単一のプローブにより再生されたデータを用いて再生クロックを生成しようとしても、再生されたデータに相当する再生パルス波形は、所定の周期毎に必ずしも反転していないため、長さ変調方式等に準拠した所定の処理等を施すことで再生クロックを生成する必要がある。係る再生クロックの生成は、本実施例の如く再生パルス波形の反転のタイミングをサンプリングするのみではなし得ない。また、背景技術において説明したように、仮に複数のプローブにより再生されたデータに相当する複数の再生パルス波形を用いて再生クロックを生成したとしても、背景技術では夫々の再生パルス波形から個別的に取得されるクロックとはまた別個独立な周期・周波数を有する共通の再生クロックを生成している。
しかるに本実施例では、夫々の再生パルス波形に基づいて共通に用いられる再生クロックを生成する態様であるがゆえに、上述の背景技術の構成とは大きく異なっている。そして、並行して再生されたデータに相当する再生パルス波形の夫々を、個別に独立して扱うのではなく、夫々をいわば一つの信号のように統一的に或いは関連付けて扱うがゆえに、再生パルス波形の反転のタイミングをサンプリングすることで、比較的容易に再生クロックを生成することができる。
尚、プローブの数が相対的に増加するほど、複数のプローブの夫々に対応する複数の再生パルス波形のうち少なくとも一つが、所定の周期毎に反転する機会が増える。即ち、再生クロック生成器134において並行して変換される再生パルス波形の数が増えれば増えるほど、所定の周期毎に複数の再生パルス波形の少なくとも一つが反転する可能性が大幅に増加する。このため、プローブの数が相対的に増加すれば(例えば8×8個以上になれば、或いは例えば32×32個以上になれば)、上述した記録動作を行なわなくとも、所定の周期毎に複数の再生パルス波形の少なくとも一つが反転するような状態を実現することが可能となる。そして、仮に上述の如き記録動作を行なわないがゆえに、所定の周期毎に複数のパルス波形の少なくとも一つが反転しない部分が存在したとしても、プローブの数が相対的に増加していれば、その部分を極力或いは無視できる程度に減らすことができる。従って、再生クロックの生成に対して特段の影響を与えることはない(即ち、無視できる)ため、結果として再生クロックを好適に生成することができるという利点を有する。
尚、係る再生処理回路150は、例えばロジック回路によりハードウェア的に構成されてもよいし、或いは例えばDSP(Digital Signal Processor)のプログラミングによりソフトウェア的に構成されてもよい。但し、再生処理回路150をソフトウェア的に構成する場合においても、増幅器151aないし151eについては、ハードウェア的に構成されていることが好ましい。
また、記録動作の説明において述べたように、変調のパターンを選択して記録信号を生成したり、或いは所定のテーブルを選択して記録信号を生成したりしている場合は、選択された変調のパターン又はテーブルを認識して上述の再生動作(特に、再生処理回路150内における動作)を行なうことが好ましい。
(4) 再生動作の変形例
続いて、図10及び図11を参照して、本実施例に係る記録再生装置100の再生動作の変形例について説明する。ここに、図10は、変形例に関する再生処理回路160の内部構成を概念的に示すブロック図であり、図11は、各信号検出器119aないし119eにより検出される検出信号及び該検出信号より生成される再生クロックの波形を示す説明図である。尚、変形例においては、記録再生装置100の構成は基本的には変更はないが、再生処理回路の内部構成及びその動作に若干の変更がある。
記録再生措置100の再生動作中に、夫々のプローブ131aないし131eの間において、再生パルス波形が反転するタイミングがずれることがある。例えば、プローブ131aないし131dの夫々に対応する再生パルス波形が反転するタイミングが揃っている(所定のタイミングに同期して反転している)にも係わらず、プローブ131eに対応する再生パルス波形が反転するタイミングが、所定のタイミング(即ち、プローブ131aないし131dの夫々に対応する再生パルス波形が反転するタイミング)とずれることがある。これは、例えば、記録再生ヘッド110(具体的には、複数のプローブ131aないし131eの夫々)が誘電体記録媒体200に対して相対的に傾いた状態にある場合に起こり得る。このようなタイミングのズレは、データを再生する際のジッタの増加等につながり、好適な再生動作を担保するという観点からは決して好ましいものではない。変形例においては、このような再生パルス波形の反転するタイミングのズレを補正することができる。
図10に示すように、変形例に関する再生処理回路160の内部構成は、上述した再生処理回路150の内部構成と概ね同じである。再生処理回路160は特に、遅延量検出器155を備えている。
遅延量検出器155は、本発明における「遅延量検出手段」の一具体例を構成しており、2値化回路152aないし152eにより2値化されたデータに基づいて、予め誘電体記録媒体200に記録されているプリフォーマット信号の検出タイミングの遅延量を検出可能に構成されている。というのも、誘電体記録媒体200と記録再生ヘッド110(具体的には、複数のプローブ131aないし131eの夫々)との相対的な傾きは、このプリフォーマット信号の検出タイミングのズレ(遅延量)として検出することができる。従って、遅延量検出器155は、プリフォーマット信号の検出タイミングの遅延量を検出することで、間接的に誘電体記録媒体と記録再生ヘッド110との相対的な傾きの有無(或いは、その程度)を検出することができる。
例えば、図11に示すように、信号検出器119a(即ち、プローブ131a)に対応する再生パルス波形を基準とした場合に、信号検出器119d(即ち、プローブ131d)及び信号検出器119e(即ち、プローブ131e)に対応する再生パルス波形にズレが生じているとする。遅延量検出器155は、信号検出器119d及び信号検出器119eに対応するプリフォーマット信号の検出タイミングのズレを検出することで、この信号検出器119d及び信号検出器119eに対応する再生パルス波形のズレを検出することができる。
そして、このズレを示す再生クロック生成器154へフィードバックし、再生クロック生成器154は、信号検出器119d及び信号検出器119eに対応する再生パルス波形のズレを考慮して再生クロックを生成する。例えば、信号検出器119d及び信号検出器119eに対応する再生パルス波形を、ズレに相当する時間だけシフトさせることで(或いは、ズレに基づく所定の演算を施すことで)、ズレが生じていない再生パルス波形を擬似的に生成して、図11最下部に示すような好適な再生クロックを生成する。或いは、夫々の再生パルス波形よりクロックを生成し、該生成された夫々のクロックに対して検出されたズレに基づく補償を行なうことで、夫々のクロックから再生クロックを生成するように構成してもよい。
このように、変形例においては、再生パルス波形のズレをも考慮して、該ズレの悪影響を排除した好適な再生クロックを生成することができる。従って、再生時のデータの品質を示すジッタ値の増加を抑えることができ、より好適な再生動作を実現することができる。
また、このような再生パルス波形の反転するタイミングのズレは、記録再生ヘッド110と誘電体記録媒体200との相対的な位置が、例えばデータの記録時とデータの再生時との間で、例えば熱等の影響によりずれてしまうことで生ずることもある。この場合の再生パルス波形の反転するタイミングのズレは、上述した記録再生ヘッド110が誘電体記録媒体200に対して相対的に傾いた場合と同様に、定常的なズレとして発生する。或いは、検出信号RS1ないしRS5が増幅器151aないし151eに入力される際に、ランダムにノイズが混入することで、再生パルス波形の反転するタイミングのズレがランダムに生ずることがある。
このような場合にも、上述したように遅延量を検出して、再生パルス波形の反転するタイミングのズレを考慮して、好適な再生クロックを生成することが好ましい。
或いは、遅延量を検出することに代えて、以下に示すように再生クロックを生成してもよい。具体的には、夫々の再生パルス波形のうちズレが生じていない部分の定常値を抽出し、その定常値を夫々の再生パルス波形において揃えた上で、夫々の再生パルス波形よりランダムなバラツキを持つクロックを生成する。そして、ランダムなバラツキをもつ夫々のクロックを加算することで、統計的には平均値に近づく再生クロックを生成するように構成してもよい。
尚、上述の実施例では、記録クロックの周期と再生クロックの周期が同一或いは概ね同一となるように構成されているが、相異なるように構成してもよい。例えば、記録クロックの立ち上がりエッジ毎に(即ち、パルス波形の反転が2つ存在する毎に)、記録信号WS1ないしWS5の少なくとも一つのパルス波形が反転するような、記録信号WS1ないしWS5を生成するように構成してもよい。この場合、記録クロックが32MHzであれば、再生処理回路150においては、その半分の周波数16MHzを有する再生クロックが生成される。要は、記録クロックの周波数と同期するように或いは記録クロックの周波数と関係なく所定の周期毎に、記録信号WS1ないしWS5の少なくとも一つのパルス波形が反転するような記録信号WS1ないしWS5が生成されれば、上述の如く再生クロックを好適に生成することができる。
また、上述の如く記録再生装置等において適用されることに限定されず、例えばネットワーク網上のデータの伝送においても同様のことが適用できよう。即ち、ネットワーク網の送信側において上述の記録動作に準拠するように伝送データを生成し、他方ネットワーク網の受信側において上述の再生動作に準拠するように伝送データを処理すればよい。これにより、ネットワーク網の送信側と受信側との双方において、比較的容易に且つ好適に同期を取ることが可能となる。
更に、上述した長さ変調方式に限らずに、複数の検出信号より再生クロックを好適に取得することができれば、長さ変調方式以外の各種変調方式を用いてもよい。
尚、上述の実施例においては、誘電体記録媒体200や記録再生ヘッド110の具体的な駆動方式について深く言及していないが、各種駆動方式を採用可能である。例えば、上述したように、スピンドルモータにより回転する誘電体記録媒体200に対して、該誘電体記録媒体200の径方向に記録再生ヘッド110を移動させる駆動方式を採用してもよい。或いは、例えば誘電体記録媒体200及び記録再生ヘッド110の少なくとも一方を、直交する2軸に沿って(例えば、誘電体記録媒体200の記録面に沿って)自由に動かすことの可能なx−yスキャナ等に備え付けることで、誘電体記録媒体200或いは記録再生ヘッド110を駆動させてもよい。この駆動方式では、データが記録されるべき或いは再生されるべきデータが記録されている誘電体記録媒体200上の記録領域の位置に応じて、x軸方向の移動量及びy軸方向の移動量を制御してやれば、比較的容易にデータの記録動作や再生動作を行うことが可能である。また、誘電体記録媒体200と記録再生ヘッド110との間の距離を調整するべく、x軸及びy軸の2軸に加えて、z軸方向(例えば、誘電体記録媒体20の記録面に垂直な方向)へ誘電体記録媒体200或いは記録再生ヘッド110を駆動させるように構成してもよい。或いは、これに限らず、誘電体記録媒体20に適切にデータを記録し、また誘電体記録媒体200に記録されたデータを再生することができれば、各種記録再生装置において用いられている各種駆動方式を採用できる。そして、採用する駆動方式に応じて、誘電体記録媒体200や記録再生ヘッド110の形状や構造や機能等も、上述した本発明の特徴を具備する限りにおいては適宜変更してもよいことは言うまでもない。
また、上述の実施例では、誘電体材料217を記録層に用いているが、非線形誘電率や自発分極の有無という観点からは、該誘電体材料217は、強誘電体であることが好ましい。
また、記録再生装置100の具体例として、誘電体記録媒体200にデータを記録し、また誘電体記録媒体200に記録されたデータを再生する誘電体記録再生装置を用いて説明を進めたが、もちろんこれ以外の現在市販・開発等が勧められている各種記録再生装置においても、上述した各種構成を適用することができることは言うまでもない。
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う信号生成装置及び方法、記録装置及び方法、再生装置及び方法、記録再生装置及び方法、並びに記録媒体もまた本発明の技術思想に含まれる。