JPWO2005122748A1 - コケ植物栽培基 - Google Patents
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Abstract
本発明は、生長ミズゴケ等のコケ植物の栽培を効率的に行うための手段を提供することを目的とする。本発明者らは、長手方向に伸ばした側面同士が接触している複数の乾燥ミズゴケの一部を吸水部として、当該一部以外の一端をコケ植物の植え付け部としてなるコケ植物栽培基、特に、器物に1箇所以上の凹部が設けられており、長手方向に伸ばした側面同士が接触している複数の乾燥ミズゴケが、当該凹部の底部近傍から開口部に向けて配置され、透水部によって、当該乾燥ミズゴケと外部の水が接触可能となっている、コケ植物栽培基を提供し、これを用いて当該コケ植物の養生を行うことにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。
Description
本発明は、コケ植物、特に、生長ミズゴケの栽培を効率的に行うための栽培基に関する発明である。
近年は、コケ植物に関するイメージも向上しつつあり、様々なアート作品において、コケ植物を用いる試みがなされている。
しかしながら、未だ、コケ植物をより身近に扱うための手段が十分に提供されているとは言い難い。
本発明に関連する先行文献としては、国際公開第WO02/41688A1号パンフレットが挙げられる。
本発明は、コケ植物、特に、生長ミズゴケの栽培を効率的に行うための手段を提供することを課題とする発明である。
本発明者は、長手方向に伸ばした側面同士が接触している複数の乾燥ミズゴケの一部を吸水部として、当該一部以外の一端をコケ植物の植え付け部としてなるコケ植物栽培基、特に、器物に1箇所以上の凹部が設けられており、長手方向に伸ばした側面同士が接触している複数の乾燥ミズゴケが、当該凹部の底部近傍から開口部に向けて配置され、透水部によって、当該乾燥ミズゴケと外部の水が接触可能となっている、コケ植物栽培基(以下、本栽培基ともいう)を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。
「乾燥ミズゴケ」とは、湿潤状態にあるか否かを問わず、主に、殺菌死滅処理を加えた乾燥ミズゴケ(市販品も可)を意味するものであるが、生長ミズゴケ(生命活動が維持されているミズゴケ)を単純に乾燥させたものも含むものとする。
本栽培基では、器物に設けられた凹部に配置された乾燥ミズゴケの揚水力と保水力により、透水部から供給される水分が当該ミズゴケに吸い上げられ、これとコケ植物を接触させることにより、コケ植物に継続的に水分を供給することにより、当該コケ植物の生長を効率的に行うことができる。これと同様の目的を有する技術について、本発明者らは、特にミズゴケについて出願を行っている(「ミズゴケ栽培基」:PCT/JP03/16882号)。
本発明は、当該出願に関する技術をさらに一歩すすめて、器物中に配置する「乾燥ミズゴケ」の配置態様を工夫して、一層のコケ植物の栽培の効率化を行うことを可能とした栽培基に関する発明である。
すなわち、本栽培基では、長手方向に伸ばした側面同士が接触している複数の乾燥ミズゴケを、主に器物に設けられた凹部の底部近傍から開口部に向けて揃えて配置した。これにより、生長を行うコケ植物を、これらの乾燥ミズゴケ同士の隙間に埋め込むように配置することで、容易にコケ植物を乾燥ミズゴケと接触した状態として固定することが可能になった。上記の先の出願の「ミズゴケ栽培基」では、「乾燥ミズゴケ」の配置の仕方が不規則であったので、容易に外部からミズゴケを乾燥ミズゴケ中にブルトに似せた状態で配置するのに手間がかかり、かつ、生長させる対象となるコケ植物もミズゴケに限定されていた。本栽培基において、生長させる対象として最も好適なコケ植物はミズゴケ(生長ミズゴケ)であるが、コケ植物全般に対しても適用可能である。
ミズゴケの他に、本栽培基において生長させる対象となるコケ植物は、自然界に自生しているコケ植物をそのまま用いることも可能であり、栽培法で得たコケ植物を用いることも可能である。また、いわゆる培養法〔例えば、「植物バイオテクノロジーII」,東京化学同人:現代化学・増刊20の第39頁「蘚苔類の培養」(小野著)等参照のこと〕を用いた「培養ゴケ」を用いることも可能であるが、通常は、栽培法で得たコケ植物を用いることが好ましい。
この栽培されたコケ植物は、通常の栽培法で得たコケ植物を用いることができる。例えば、以下の方法で得られる、コケ植物断片群を用いることができる。
すなわち、生長したコケ植物の群落の頂部近傍を切断し、切断したコケ植物断片を収穫物として用い、切断されたコケ植物の群落の養生を継続して行い、かつ、この養生と収穫のサイクルを繰りかえし行う、コケ植物の栽培方法において得られる、上記コケ植物の断片群を、本発明において用いることができる。
ここで、生長したコケ植物の群落は、天然のコケ植物の群落であっても、通常のパレット栽培で得られるコケ植物の群落であっても、コケ植物を固定した人工基盤を養生して得られるコケ植物の群落であってもよい。また、本栽培基においてコケ植物を養生して得られるコケ植物の群落であってもよい。コケ植物の群落は、平置きの状態で養生したものであっても、壁面や法面等において養生したものであってもよい。頂部付近の切断を行う時期は、上記の生長したコケ植物におけるコケ植物が、概ね2〜3cm程度に達した時点が好適である。コケ植物の群落の頂部近傍の切断は、コケ植物の群落の上部(緑が多い部分)を、種々の切断器具、たとえば、ハサミ、バリカン、サンダー等を用いて行うことができる。また、ほうきや刷毛等で、コケ植物の群落の上部をなでつけることによっても、コケ植物の頂部近傍は容易に切断され、所望するコケ植物の断片を得ることができる。
上述した切断工程の後、切断して得たコケ植物の断片は、「収穫物」として、種々の用途、例えば、本栽培基において固定されるコケ植物として用いることができる。また、切断された後のコケ植物の群落は、養生を継続して行いコケ植物を再び生長させることができる。この再生長させたコケ植物の群落に対して、再び切断工程を行うことで、コケ植物の断片群を再度得ることができる。この養生と収穫のサイクルを繰りかえし行うことにより、効率的にコケ植物を「収穫物」として得ることができる。
また、本発明において用い得るコケ植物の種類は特に限定されない。
例えば、Atrichum undulatum(Hedw.)P.Beauv(Namigata-Tachigoke)等のAtrichum P.Beauv.(Tachigoke-zoku) ;Pogonatum inflexum(Lindb.)Lac.(Ko-sugigoke) 等のPogonatum P.Beauv(Niwa-sugigoke-zoku);Polytrichastrum formosum(Hedw.)G.L.Smith等のPolytrichastrum G.L.Smith(Miyama-sugigoke-zoku);Polytrichum commune Hedw.(Uma-sugigoke) 等のPolytrichum Hedw.(Sugigoke-zoku);Ceratodon purpureus (Hedw.) Bird.(Yanoueno-akagoke)等のCeratodon Bird.(Yanouenoaka-goke-zoku);Dicranum japonicum Mitt.(Shippogoke) 、Dicranum nipponense Besch(O-shippogoke) 、Dicranum scoparium Hedw.(Kamojigoke)、Dicranum polysetum Sw.(Nami-shippogke)等のDicranum Hedw.(Shippogoke-zoku);Leucobryum scabrum Lac.(O-shiragagoke)、Leucobryum juniperoideum(Brid.) C.Mull.(Hosoba-okinagoke) 等のLeucobryum Hampe(Shiragagoke-zoku);Bryum argenteum Hedw.(Gingoke) 等のBryum Hedw.(Hariganegoke-zoku);Rhodobryum giganteum(schwaegr.)Par.(O-kasagoke)等のRhodobryum(Schimp.)Hampe(Kasagoke-zoku) 、Plagiomnium acutum(Lindb.)T.Kop.(Kotsubogoke) 等のPlagiomnium T.Kop.(Tsuru-chochingoke-zoku);Trachycystis microphylla(Dozy et Molk.)Lindb.(Kobano-chochingoke)等のTrachycystis Lindb.(Kobano-chochingoke-zoku);Pyrrhobryum dozyanum(Lac.) Manuel(Hinokigoke)等のPyrrhobryum Mitt.(Hinokigoke-zoku);Bartramia pomiformis Hedw.(O-tamagoke) 等のBartramia Hedw.(tamagoke-zoku);Climacium dendroides(Hedw.)Web.et Mohr(Furoso) 、Climacium japonicium Lindb.(Koyano-mannengusa)等のClimacium Web.et Mohr(Koyano-mannengusa-zoku);Racomitrium ericoides(Web.et Brid) Brid(Hai-sunagoke) 、Racomitrium japonicium Dozy et Molk.(Ezo-sunagoke)、Racomitrium canescens(Hedw.) Brid.ssp.latifolium(Sunagoke)、Racomitrium barbuloides Card.(Kobanosunagoke) 等のRacomitrium Brid.(Shimofurigoke-zoku) ;Hypnum plumaeforme Wils.(Haigoke) 等のHypnum Hedw.,nom.cons.(Haigoke-zoku);Thuidium Kanedae Sak.(Toyama-shinobugoke)等のThuidium Bruch et Schimp.in B.S.G.(Shinobugoke-zoku)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
これらのコケ植物は、単独種類のコケ植物を用いることは勿論のこと、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。特に、強い日照を好むコケ植物(例えば、スナゴケ等)と、日陰を好むコケ植物(例えば、ハイゴケ等)を組み合わせて用いることにより、本栽培基が用いられる日照環境に依存せずに、コケ植物の生育を維持することが可能となる。
また、上述したように、ミズゴケは、本栽培基において生長対象とするコケ植物の中でも、最も好適なものの一つである。
本栽培基における生長の対象となる「生長ミズゴケ」、さらに、上述した「乾燥ミズゴケ」共、本発明が適用され得るミズゴケは、コケ植物蘚類 ミズゴケ科 ミズゴケ属(Sphagnum L.)に属する全てを意味し、例えば、日本国原産のものであれば、オオミズゴケ(Sphagnum palustre L.)、イボミズゴケ(Sphagnum papillosum Lindb.)、ムラサキミズゴケ(Sphagnum magellanicum Brid.)、キレハミズゴケ(Sphagnum aongstroemii C.Hartm)、キダチミズゴケ(Sphagnum compactum DC.)、コアナミズゴケ(Sphagnum microporum Warnst.ex Card)、コバノミズゴケ(Sphagnum calymmatophyllum Warnest.& Card.)、ユガミミズゴケ(Sphagnum subsecundum Nees ex Sturm)、ホソバミズゴケ(Sphagnum girgensohnii Russow)、チャミズゴケ(Sphagnum fuscum(Schimp.) H.Klinggr.)、ヒメミズゴケ(Sphagnum fimbriatum Wilson ex Wilson & Hook.f.)、スギハミズゴケ(Sphagnum capillifolium(Ehrh.) Hedw.)、ホソベリミズゴケ(Sphagnum junghuhnianum Dozy & Molk. Subsp. Pseudomolle(Warnest.) H.Suzuki)、ワタミズゴケ(Sphagnum tenellum Hoffm.)、ハリミズゴケ(Sphagnum cuspidatum Hoffm.)、アオモリミズゴケ(Sphagnum recurvum P. Beauv.)、ウロコミズゴケ(Sphagnum squarrosum Crome)等を挙げることができる。また、日本国以外の地域原産のミズゴケを、本発明に適用することも可能であることは勿論である。
これらのミズゴケの中でも、オオミズゴケは、「生長ミズゴケ」としても、「乾燥ミズゴケ」としても、本発明を適用するのに好適なミズゴケの一つである。
「器物」とは、本栽培基の完成状態において、静置状態で一定の形状を有する物体(ただし、電力等による駆動力による形状の変化を伴う物体も、器物の範疇に入るものとする)のことを意味するものである。形状は、乾燥ミズゴケを一定形状に配置することが可能な凹部を設けることができる限り、全く限定されない。また、素材も限定されるものではなく、木、石、プラスチック、発泡スチロール、発泡ガラス、ゴム、金属、素焼き物、陶器、磁器、紙粘土、粘土、炭素繊維、ガラス、軽石、木炭等を用いることができる。また、器物を構成する部材も1種類とは限らず、2種以上の部材を組み合わせて、これを器物として用いることも可能である。
本栽培基においては、1箇所以上の凹部が設けられ、当該凹部が、複数の乾燥ミズゴケを、縦に方向を揃えて配置する場となり、当該乾燥ミズゴケがコケ植物を栽培する場として用いられる。上記したように、「器物」の形状は任意であり、それに応じて凹部の形状も任意である。例えば、器物の形状がすり鉢状やバケツ状の形状である場合は、その器物自体が凹部を形成することとなる。
本栽培基の凹部には透水部が設けられ、当該透水部を介して、生長を行うコケ植物と接触する「方向を縦に揃えて配置された乾燥ミズゴケ」と、外部の水が接触可能となっている。この透水部は、凹部に設けられた貫通口であることが通常である。ただし、凹部に配置する栽培基本体の脱落を防止するために、透水性を保持可能な係止手段を、当該透水部に設けることも可能である。この係止手段は特に限定されないが、下記(1)〜(4)から選ばれる1種以上が設けられることが好適である。
(1)粉砕紙及び/若しくは紙前駆物と土質細物を含有する組成物(以下、固定用組成物ともいう)の層
(2)網状体の層
(3)乾燥ミズゴケの集合物の層
(4)布の層
(2)網状体の層
(3)乾燥ミズゴケの集合物の層
(4)布の層
(1)の固定用組成物は、固化前は、さらに水を含有する、水性組成物である。
粉砕紙、または、紙前駆物により、固定用組成物は、紙繊維を含有する。粉砕紙とは、文字通り、粉砕した紙であり、紙の種類は、特に限定されない。例えば、新聞紙、衛生用紙、雑誌類、チラシ、コピー用紙等を、紙として使用することが可能であり、また、ケナフ紙(ケナフの植物繊維により普通紙の製造工程に準じて製造され得る紙)を紙として用いることもできる。粉砕とは、基となる紙の一部または全部が紙繊維単位まで細かくなっている状態をいう。粉砕手段は、特に限定されないが、水中における剪断刃による剪断、同やすり刃による削り出し、さらには、同手もみ等により、所望の粉砕紙を調製することができる。
紙前駆物とは、パルプから精製した、紙の直接的な原料となる水を含んだ植物繊維である。
土質細物とは、砂利、砂、土、陶器粉、ガラス粉、灰類、軽量骨材、粘土、ピートモス、パーライト等である。また、例えば、植物繊維(紙繊維は除く)、乾燥ミズゴケ、植物の種子等を含有させることができる。
固定用組成物における、粉砕紙等(粉砕紙及び/又は紙前駆物)および土質細物の含有比率は、特に限定されないが、概ね質量比で、粉砕紙等:土質細物=10:1〜1:10程度(乾燥質量)が好適である。粉砕紙等の比率が多くなると、色合いにおいて、紙の色が全面に出てしまい、色彩意匠的にも適切性を欠く場合がある。また、土質細物の比率が多くなりすぎると、固定用組成物自体の固着性が低下し、乾燥しても、安定して対象物上に定着しづらくなるばかりか、この組成物の単位体積あたりのコストが上昇する傾向が強くなる。
なお、固定用組成物において用いる土質細物として、粘土を含有させることも可能である。かかる粘土の含有量は、特に限定されず、これらの組成物の土質細物全部を、粘土とすること、あるいは、粘土を全く用いないことも可能である。一般的には、土質細物の平均粒子経を75μm以下、好適には20μm以下とする(当該平均粒子経の最低範囲は特に限定されないが、概ね3μm以上であることが好適である)。
また、水を含有する固定用組成物における粉砕紙等、土質細物と、水の比率は、特に限定されず、また、固定用組成物を用いる態様に応じて自由に選択し得る。すなわち、後述するように、水を含有する固定用組成物全量に対して1〜99質量%程度の範囲で、自由に選択することが可能である。一般的には、水の含有量が少なすぎると、粉砕紙を用いる場合の紙の粉砕作業が難しくなり、粉砕紙と土質細物との十分な混練も困難となる。水の含有量が多過ぎると、水を含有する固定用組成物の重量が重くなりすぎ、組成物の調製作業に過度の負担を与えるばかりか、水資源の浪費となってしまう可能性がある。
なお、固定用組成物には、上記の必須の要素の他に、必要に応じて他の要素、例えば、植物繊維(例えば、植物の根部等)、わら、生ゴミ粉砕物、炭片、鉱石類、植物の種子、乾燥ミズゴケ等、を含有させることができる。
また、固定用組成物は、必要に応じて、組成物を構成する含有成分の粒径を細かくすることが可能である。この場合は、例えば、水を含有する固定用組成物を混練装置(プロペラミキサー、ディスパー、ニーダー、ローラー、擂潰機等)で処理することで、所望する細粒径の固定用組成物を得ることができる。
この固定用組成物は、透水性であり、コケ植物との相性がよく、かつ、一旦乾燥して固化させると、外部の水と接触しても容易には脱落しないという利点を有している。
組成用固定物で、透水部をシールすることにより、透水部の透水性を保ちながら、透水部に接する本栽培基の内容物の脱落を防止することができる。
(2)の網状体は、係止する縦に配列された乾燥ミズゴケ等を脱落させない程度の目の細かさと、外部の水に対してある程度の耐性がある素材であれば、特に限定されない。素材としては、プラスチック、ゴム、金属(防さび性があるものが好適である)、セラミック、糸(合成繊維であっても天然繊維であってもよい)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
網状体で、透水部をシールすることにより、透水部の透水性を保ちながら、透水部に接する本栽培基の内容物の脱落を防止することができる。
(3)の乾燥ミズゴケは、上述した生長させる対象のコケ植物と直接接触させる、縦に配列された乾燥ミズゴケと異なり、配列の方向は任意であってもよい。すなわち、例えば、市販の乾燥ミズゴケをそのまま用いることや、生長ミズゴケを加熱処理して、それをそのまま用いることも可能である。
乾燥ミズゴケを、透水部と縦配列の乾燥ミズゴケとの間に介在させることによって、本栽培基の吸水性を保ちながら、縦配列の乾燥ミズゴケの透水部からの脱落を防止することができる。
(4)の布は、透水性があれば、特に限定されず、織布であっても、不織布であってもよい。また、天然繊維であっても、合成繊維であってもよい。
布で、透水部をシールすることにより、透水部の透水性を保ちながら、透水部に接する本栽培基の内容物の脱落を防止することができる。
上述したように、(1)〜(4)の係止手段は単独で用いることもできるが、複数を組み合わせて用いることもできる。殊に、(2)の網状体と(4)の布を択一手段として、(1)の固定用組成物及び/又は(3)の乾燥ミズゴケと組み合わせることは好適である
また、係止手段は(1)〜(4)に限定されないことは当然であり、例えば、縦に配列した乾燥ミズゴケと透水部の出口の間に粒状物(砂礫、砂利、発泡スチロール球、プラスチック球等)を介在させてもよい。本栽培基が水に浮上させる態様の場合、比重の軽い発布スチロール球やプラスチック球等を用いることが好適である。
また、係止手段は(1)〜(4)に限定されないことは当然であり、例えば、縦に配列した乾燥ミズゴケと透水部の出口の間に粒状物(砂礫、砂利、発泡スチロール球、プラスチック球等)を介在させてもよい。本栽培基が水に浮上させる態様の場合、比重の軽い発布スチロール球やプラスチック球等を用いることが好適である。
本栽培基は、「縦に整列させた乾燥ミズゴケ」を調製して用いることが必要である。図1は、その概略を示した図面である。図1(1)に示すように、市販の乾燥ミズゴケ1は、不規則な並びで乾燥した形態で提供される。「縦に整列させた乾燥ミズゴケ2」(図1(2))は、このような圧縮品から乾燥ミズゴケの植物体を個々に取り出し、一定方向に整列させたものを束ねて用いることも可能であるが、乾燥ミズゴケの圧縮品に、一旦水を含有させてからこの整列を行うことが作業効率上有利である。また、必要に応じて、整列させた乾燥ミズゴケは、長さを揃えて束ねたものを切断したものを用いることが好適である(図1(3))。
本栽培基は、上述のようにして縦に整列させた乾燥ミズゴケを、乾燥ミズゴケ個々の側面が接触した状態で、器物の凹部の底部近傍から開口部に向けて配置することにより、生長させる対象となるコケ植物を本栽培基に固定することが可能となる。すなわち、上記の整列させた乾燥ミズゴケ同士の隙間に生長対象のコケ植物を植え込むことで、当該整列乾燥ミズゴケにコケ植物が接触して固定された状態を容易に作出することが可能である。なお、この縦に束状に配列した乾燥ミズゴケの集合物の配置位置は、少なくともその一端が上記開口部近傍に位置していることを意味しており、他端、すなわち、生長させる対象となるコケ植物の植え込みを行う側の部分が、当該凹部の開口部の中側に止まっていてもよく、外側に露出していてもよい。上記のコケ植物の植え込みは、例えば、ピンセット等を用いて容易に行うことが可能である。また、このコケ植物の植え込みの密度は特に限定されないが、ミズゴケであっても、その他のコケ植物であっても群落状であることが生長に際しては好適な傾向があることから、整列乾燥ミズゴケの横断面において0.2〜2cm2毎に1単位程度、好適には、同0.5〜1.5cm2毎に1単位程度の密度で植え込むことができる。ここでいう「1単位」とは、同一の乾燥ミズゴケ同士の隙間に植え込むコケ植物の植物体のまとまりを意味するもので、1単位を構成するコケ植物の植物体数は、好適には1〜5個、さらに好適には1〜3個、最も好適には1個である。
本栽培基は、その透水部を外部の水と接触させることにより、コケ植物の生長を図ることができる。すなわち、本栽培基全体が被らない程度の浅い水の中に、透水部を接触させるように本栽培基を載置し(この場合、本栽培基全体の比重が水より重いことが好適である)、又は、深い水の中に、水と透水部を接触させながら本栽培基を浮かべる(この場合、本栽培基全体の比重が水より軽いことが条件である)ことで、透水部から水を、乾燥ミズゴケを介して生長対象のコケ植物に継続的に供給することができる。
本栽培基の、器物の表面の一部又は全部に保水性粒子を稠密に定着させて、かつ、当該保水性粒子の定着面が前記凹部の開口部の縁部と連続させることにより、透水部以外に、当該保水性粒子を介して生長対象のコケ植物に補助的に水分を供給することが可能となる。
ここで「稠密に」とは、概ね保水性粒子同士が接触する程度にということを意味する。すなわち、例えば、器物の表面の下部の保水性粒子が吸水した水が、他の保水性粒子を介して、器物の凹部の開口部の縁部まで運搬され、生長対象のコケ植物に供給することが可能となるために、保水性粒子同士の連続した接触が必要となる。保水性粒子としては、例えば、乾燥ミズゴケの粉砕粒子、ピートモス、土粒子、保水性樹脂粒子等が挙げられるが、乾燥ミズゴケの粉砕粒子が最も好適である。器物の表面に定着する粒子は、意匠上の理由から他の種類の粒子を選択することも可能である。例えば、土質細物(砂利、砂、陶器粉、ガラス粉、灰類、軽量骨材、粘土、パーライト等)、顔料、色素等を挙げることができる。また、これらの一般粒子の中に保水性粒子を混合することも可能である。
このような場合、以下のα)〜δ)の工程で、所望する保水性粒子の器物への定着を行うことが可能である。
α)器物の表面に、事後的に硬化し、かつ、固化前は粘調な液体素材を塗布する。かかる事後的な硬化素材としては、接着剤や水性の塗料、例えば、水性の合成樹脂塗料(水性アクリル系塗料)、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、セルロース系接着剤、合成ゴム系接着剤、紫外線硬化系接着剤、嫌気性接着剤、紫外線嫌気性接着剤等を挙げることができるが、水性の合成樹脂塗料(水性アクリル系塗料)が特に好適であり、接着剤では、シリコーン系接着剤が好適である。水性の合成樹脂塗料を用いる場合には、定着させる保水性粒子等に近い色のものを用いることが好適である。例えば、保水性粒子として、乾燥ミズゴケの粉砕粒子を用いる場合には、「ライトカーキ色」の水性合成塗料を用いることが好適である。
この塗布の方法は、特に限定されず、例えば、上記液体素材を入れた射出用容器(射出用チューブ等)から、当該液体素材を器物の表面に射出し、これを小手等で均すことも可能であり、薄く塗りたい場合は、刷毛等に当該液体素材を付着させて、これを器物表面に塗布することも可能である。
β)次に、好適には器物の表面に塗布された上記液体素材を毛羽立たせる。この工程を行う方法は、特に限定されないが、例えば、器物表面の液体素材の表面に剛性を有する起毛性部材(例えば、針金の刷毛)でたたくことにより、上記液体素材を器物表面上において毛羽立たせることができる。
γ)次に、器物表面において毛羽立たせた液体素材の上から、保水性粒子等の定着対象粒子をふりかけた後、好適には、器物表面に、通常の上水道口にシャワーノズルを付加して生成させた程度の水流を接触させて、余分なふりかけ物を洗い流す。次いで、上から器物表面を軽くなでつけてならし、次いで、この液体素材を固化(乾燥、紫外線照射、嫌気等の事後的硬化素材の種類に応じた固化方法による)させることにより、所望する保水性粒子が定着した表面を器物上に形成することができる。
ここで、この保水性粒子等のふりかけ工程においては、保水性粒子を粒径別に集め、大きな粒径の保水性粒子等の群から小さな粒径の保水性粒子等の群へと段階的にふりかけることで、大きな粒径の粒子の間に小さな粒径の粒子が入り込み、ふりかけ面における粒子のふりかけむらが生ずるのを防ぐことができる。これらを同時にふりかけると、大きな粒径の粒子が優先的にふりかけ面に付着して、ふりかけむらが発生しやすい傾向が認められる。この保水性粒子等の大きさの分類は、特に限定されず、例えば、最大の粒径群を3〜4mm程度とし、2番目の粒径群を2〜3mm程度とし、3番目の粒径群を1〜2mm程度とすることで、上記の粒径別の粒子の定着を行うことができる。この粒子の粒径の分別方法は特に限定されず、例えば、所望する大きさの網の目を有する篩で粒子を分別することで行うことができる。
δ) 上記γ)の器物の表面に、塗膜を設けて、器物の表面における微生物の栄養源が表面に露出するのを防ぐこともできる。塗膜は、器物の表面上に所望するコーティング素材の塗布を行い、これを乾燥・固化させることで設けることができる。このコーティング素材としては、特に限定されず、現在、上薬として提供されている製品を用いることが可能であるが、可能な限り、透明性が保たれ、かつ、安全性の高いものを用いることが好適である。例えば、水性の下地安定剤として販売されているアクリル樹脂の水性剤(アトミクス株式会社製等)を、このコーティング素材として転用することが非常に好適である。さらに、必要に応じて、このコーティング素材の上面に防水処理、例えば、シリコーンコーティング剤の塗布処理を行うことにより、防水を行うことができる。
上記α)〜δ)の工程に従うことにより、器物の表面に、保水性粒子等を定着させることができる。
なお、上記δ)の工程を行わない表面においては、当該表面自体において自然のコケ植物等の定着を促進することが可能となる。すなわち、通常の器物の表面に比べて、保水性粒子等が定着した粒子は、水(器物に接触している水、雨水、空気中の水分)を積極的に吸引して保持するので、コケ植物や藻類の自然の定着を促進させることができる。この場合、保水性粒子等が定着した表面に、上述した固定用組成物を上層することにより、一旦定着した保水性粒子等の経時的な脱落を抑制することができる。この固定用組成物は、事後的なコケ植物(コケ植物の胞子、無性芽)や藻類の定着を妨げないので、非常に有利である。
さらに、本発明においては、「生長させるコケ植物を植え付けていないコケ植物栽培基」、及び、「生長させるコケ植物」、を構成要素として含む、コケ植物栽培用セットを提供する。この栽培用セットでは、使用者自身が、「生長させるコケ植物を植え付けていないコケ植物栽培基」の縦に整列された乾燥ミズゴケの間隙に、「生長させるコケ植物」を植え付けて、このコケ植物栽培基の透水部を継続的に水に接触させることで、コケ植物の生長を行うことができる。この栽培用セットには、コケ植物の植え付けに用いるピンセット等を組み合わせることも可能である。
本栽培基において、コケ植物、特に生長ミズゴケを栽培する際には、上記のようにして植え付けられたコケ植物と、上記有水部の水面との垂直距離(高さ)が重要な要素である。有水部の水が清水で、本栽培基が置かれている環境が温和で寒暖差も少なければ、この高さを0としても、所望する生長ミズゴケ植物の養生を行うことが可能であるが、中下水等の汚れた水を有水部としたり、都市部のように温度の変動が激しい場所で本栽培基による養生を行う場合には、この高さを十分にとることが必要となる。一般的には、この高さは、最低2cm必要であり、やや好適には5cm以上、好適には7cm以上確保するべきである。この高さの上限は、乾燥ミズゴケが水を吸い上げることができる限界まで設定することが可能であり、概ね20〜30cm程度とすることもできる。しかしながら、必要以上に乾燥ミズゴケを嵩高とすることは、乾燥ミズゴケ自体の浪費となってしまう傾向がある。本栽培基自体の高さは、設定されるこの水位との垂直距離に応じて設計され、特に限定されないが、一般的には5〜20cm程度である。
図2は、本栽培基の器物が植木鉢状の形状である場合の態様を示した図面である(縦断面図)。この態様は、当該器物が水に被らない程度の浅い水の中に載置して、この水により、生長対象のコケ植物の生長を行う態様である。図2(1)に示した器物10は、全体が植木鉢状の形状であり、凹部11における底部の中心点近傍に透水部に該当する貫通口12が設けられている。また、前述したα)〜γ)ないしδ)の工程に従い。器物10の縁部に保水性粒子等131を定着させている。この保水性粒子等131は器物10の外延部に保水性を付与すると同時に、凹部に配置した本栽培基の内容物の脱落を防止するためのストッパーとしての役割を担うことができる。また、保水性粒子等132は、器物10の外壁から縁部を経由して内壁へと定着している。このようにすることで、外壁の保水性粒子等132から外部の水分を縁部へと分布させることが可能であり、かつ、当該粒子が内壁に定着して粗表面化しているために内容物の脱落を防止することができる。この器物10の凹部の最下層に未配列の乾燥ミズゴケの層14を設け、その上層に、縦配列の乾燥ミズゴケ群15が設けられている。この乾燥ミズゴケ群15の個々の乾燥ミズゴケの間隙に、生長対象の生長ミズゴケ16(生長ミズゴケ以外の他のコケ植物も可能である:以下、これらを生長ミズゴケ等と総称する)の植物体の一部を挿入することで植え付けを行い、容易に当該生長ミズゴケ等16を本栽培基100に固定することができる(図2(2))。本栽培基100においては、透水部12を介して外部から水分が乾燥ミズゴケ層14を介して、縦配列の乾燥ミズゴケ群15に吸い上げられる結果、当該水分が継続的に生長ミズゴケ等16に供給され、効率的に生長ミズゴケ等16の生長を行うことができる。なお、透水部12に、固定用組成物の層を設けることも可能であり、網状体や布で封をすることも可能である(図示せず)。
本栽培基101は、同100の乾燥ミズゴケ層14に代えて、中心を乾燥ミズゴケ層141として、砂利、軽石、砕石等17でその周囲を充填した態様の本栽培基である。この態様では、用いる乾燥ミズゴケの量を節約できることと、本栽培基自体に重量を与えて載置安定性を確保することができる(図2(3))。
本栽培基102は、同100の乾燥ミズゴケ層14に代えて、中心部に貫通部分を設けたリングドーナツ型の乾燥ミズゴケ層142を用い、この乾燥ミズゴケ層142の上には、短い乾燥ミズゴケ1521を縦に配列し、貫通部分には、透水部12に届く程度に長い乾燥ミズゴケ1522を縦に配列している(図2(4))。また、図2(5)の本栽培基103のように、器物10の凹部の中に配置する内容物全部を、縦配列の乾燥ミズゴケ153とすることも可能である。本栽培基102・103のような場合、透水部12には、網状体、固定用組成物、布等の係止機構を設けることが好適である(図示せず)。
本栽培基104は、同100の縦配列の乾燥ミズゴケ154の長さを中心部から周辺部へと下りカーブを描くようにデザインして配置した態様である。このようにすることで、植え付けた生長対象の生長ミズゴケ等全体が盛り上がった群落を形成しているように表現することができる(図2(6))。
本栽培基105は、同101の縦配列の乾燥ミズゴケ151に相当する同155の縁部近傍にリングドーナツ状部材1551を嵌め込んだ態様である。このリングドーナツ状の部材1551の上面には、上述した方法で、保水性粒子等1552を定着させることも容易である(図3(7))。また、図3(8)の本栽培基106のように、本栽培基の上面に保水性粒子等133を定着させることもできる。このような態様においては、本栽培基の運搬時の内容物の破損等を防ぐことができる。
図3は、器物を用いない栽培基の例について記載した図面である。すなわち、図3は、「長手方向に伸ばした側面同士が接触している複数の乾燥ミズゴケの一部を吸水部として、当該一部以外の一端をコケ植物の植え付け部としてなるコケ植物栽培基」の器物を用いない例の一態様を示している。例えば、図3(1)のように、乾燥ミズゴケを縦に揃えて、側面同士が密接した状態でまとまった乾燥ミズゴケ群25を形成することができれば、当該乾燥ミズゴケ群25自体を、コケ植物の栽培基として用いることができる。一例として、乾燥ミズゴケ同士を配列する際に、これに水を含有させた固定用組成物をまぶして、布等で巻き込んだ状態で乾燥することで、所望する乾燥ミズゴケ群25を製造することができる。また、当該乾燥ミズゴケの側面をひも状部材で縛り混む(図示せず)によっても、縦に乾燥ミズゴケが配列された乾燥ミズゴケ群を製造することができる。また、このような乾燥ミズゴケ群の表面に保水性粒子23を定着させることも可能である。さらに、図3(2)のように、縦に乾燥ミズゴケが配列された乾燥ミズゴケ群253の下層に、未配列の乾燥ミズゴケ層24を設け、この組み合わせ物の表層に保水性粒子等231を定着させることにより、縦配列の乾燥ミズゴケ群251と未配列の乾燥ミズゴケ層が一体となった生長ミズゴケ等の栽培基を製造することができる。
図4は、器物が網状部材の外壁を組み合わせて構成される本栽培基の態様を示した図面である(縦断面図)。この態様は、浅い水中への載置タイプ、又は、地中への埋め込みタイプとして用いることが好適である。
図4(1)は、この態様に好適に用いる網状体(プラスチック又は金属製であることが好適である)でできた、一方が開口した円筒状部材30を示している(縦断面図)。円筒状部材30は、円形の底面301と側面302と開口部の外延から外側への突出部303により構成されている(突出部303は選択的である)。また、選択的要素として、円筒状部材30の側面302及び/又は突出部303に保水性粒子等33を定着させることもできる。この態様では、底面301自体が、本栽培基の透水部の係止機構として用いられ得る。
図4(2)の本栽培基300Aでは、円筒形部材30の下層に配列されていない乾燥ミズゴケ層341を設け、その上にリングドーナツ状部材39をはめ込み、当該リングドーナツ状部材の中心穴に縦に配列した乾燥ミズゴケ群351が配置されている。さらに、当該リングドーナツ状部材39の上面には、保水性粒子等331が定着している。配列された乾燥ミズゴケ群351における乾燥ミズゴケ同士の隙間に栽培対象となる生長ミズゴケ等を植え込み(図示せず)、当該生長ミズゴケ等を、乾燥ミズゴケ層341と配列された乾燥ミズゴケ群351を介して吸水した水分により、効率的に生長させることが可能となる。
本栽培基300Bでは、同300Aの乾燥ミズゴケ層341に代えて、中心を乾燥ミズゴケ層342として、砂利、軽石、砕石等371でその周囲を充填した態様の本栽培基である(縦に配列した乾燥ミズゴケ群352、定着した保水性粒子332、リングドーナツ状部材391)。この態様では、用いる乾燥ミズゴケの量を節約できることと、本栽培基自体に重量を与えて載置安定性を確保することができる(図4(3))。
本栽培基300Cのように、同300Bの乾燥ミズゴケ層342を用いずに、この部分を縦に配列された長い乾燥ミズゴケ群353を用いることも可能である(砂利、軽石、砕石等371、砂利、軽石、砕石等372、リングドーナツ状部材392)(図4(4))。
また、本栽培基300Dのように、同300Cの砂利、軽石、砕石等371の代わりに、配列されていない乾燥ミズゴケ群343を用いることも可能である(定着した保水性粒子334、縦に配列された乾燥ミズゴケ群354、リングドーナツ状部材393)。
また、リングドーナツ状部材や配列されていない乾燥ミズゴケを用いずに、円筒状部材30の中に、砂利、軽石、砕石等373を入れて、その中央部分を空ける。そこに、砂利、軽石、砕石等373の高さよりも長い、縦に配列された乾燥ミズゴケ群355の側面を圧縮した状態で挿入して、当該乾燥ミズゴケ群355の下部のみが、砂利、軽石、砕石等373により圧縮され、上部は同373の上に広がった本栽培基300Eのような態様もとることができる(図4(5):定着した保水性粒子335)。
また、円筒状部材30に、砂利、軽石、砕石等の層374を設け、その上に、縦に配列された乾燥ミズゴケ群356を配置する態様300Fも可能である(図4(6):定着した保水性粒子336)。この態様は、地下水系を設けた場に埋め込むことが特に好適な態様である。
図5は、地下水系を設けた地中に埋め込むことが特に好適な、本栽培基50と、その使用態様について示した図面である(縦断面図)。
図5(1)において、両端が開放されている筒状部材51(網状体であってもよい)の一方の開放部の縁に沿って、リング状部材53が開放部の内側に突出するように固定されている。リング状部材53の真ん中の円形の空隙に、その底部に透水部541が設けられた植木鉢状の容器54が係止固定されている。また、必要に応じて、筒状部材51の側面部〜リング状部材53の表側〜植木鉢状容器の内壁にかけて、保水性粒子52が定着している。植木鉢状容器54の下層には、配列されていない乾燥ミズゴケの層55が設けられ、その上に縦に配列された乾燥ミズゴケ群56が配置されている。この縦に配列された乾燥ミズゴケ群55の乾燥ミズゴケ同士の隙間に、生長対象の生長ミズゴケ等57を植え込んで、透水部51から乾燥ミズゴケにより、水を継続的に生長ミズゴケ等57に供給することにより、当該生長ミズゴケ等の生長を効率的に行うことができる。
図5(2)において、注水口61〜排水口61’により、定常的に水610が流通してほぼ一定の水位が保たれている中皿形状のプール62に、本栽培基50を載置し、これらの間に砂礫63を敷き詰める。これにより、各本栽培基50では、透水部から水610を吸い上げて、縦に配列されたミズゴケ群に植え付けられた生長ミズゴケ等の生長が図られる。また、砂礫63の中に、乾燥ミズゴケの植物体64を差し込み、砂礫53上にも、水610を供給することが可能となり、生長ミズゴケ等のさらに継続的な生長を図ることが可能となる(生長ミズゴケ等が横に広がってきた場合の水の供給が確保されることとなる)。また、本栽培基50が、プール62において浮上してしまうことを防ぐために、浮上防止ピン65を本栽培基50から横方向に突出させて設け、当該浮上防止ピン65と砂礫63との間の係止力を確保することも好適である。また、これに代えて、例えば、本栽培基50の底面の下に、網状シートを本栽培基50の大きさからはみ出すように接着し、このはみ出し部分と砂礫63との係止力により、上記の浮上防止を図ることも可能である(図示せず)。
図6は、水上に浮上させることが特に好適な、本栽培基の態様を示した図面である。
図6(1)において、本栽培基701は、底が網状体781であり、好適には、側面が軽量プラスチックや木材等の水よりも比重が小さい素材の円筒状部材751の中に、発泡スチロール等の水よりも小さな比重の円柱状部材711が嵌め込まれており、当該円柱状部材711には、貫通口が設けられている。例えば、その貫通口における透水部(網状体781近傍)の上に、配列されていない乾燥ミズゴケ層721を配置し、その上に縦に配列された乾燥ミズゴケ群731を配置し、その上に上述した要領で、生長対象の生長ミズゴケ等741を植え込むことにより、当該生長ミズゴケ等741の生長を行うことができる。また、配列されていない乾燥ミズゴケ層721に代えて、横断面積が小さい乾燥ミズゴケ層722の周囲に、砂利、軽石、砕石等731を充填する態様をとることもできる(縦に配列された乾燥ミズゴケ群732、生長ミズゴケ等742)。この場合、砂利、軽石、砕石等731は、可能な限り比重の小さなものを用いることが好適である。また、この横断面積が小さい乾燥ミズゴケ層722に代えて、植物体の長い乾燥ミズゴケ7332を縦に配列したものを用いることも可能である(縦に配列された乾燥ミズゴケ群7331、生長ミズゴケ等743)。また、必要に応じて、係止用ピン771により、円筒状部材751と円柱状部材711の乖離を防止することもできる。さらに、必要に応じて本栽培基701の表面に保水性粉末等761を定着させることができる。
一方、本栽培基702は、同701と同様の網状体782と円筒状部材752で構成される部材の中に、2種類の薄目の円柱状部材7121と7122が、7122を上にして嵌め込まれている。円柱状部材7121と7122を重ね合わせると、両者に設けた貫通口が重なり合い、下方の円柱部材7121に設けられた貫通口の横断面積の方が広くなっている。この例では、下部の円柱状部材7121の貫通口に、配列されていない乾燥ミズゴケ7231、7232、7233が充填されており、上部の円柱状部材7122の貫通口に縦に配列された乾燥ミズゴケ7341、7342、7343が配列されている。また、必要に応じて、吸収性粒子762が定着している。
さらに、本栽培基701と702は、必要に応じて、ひも状部材Aで連結させることもできる。
本栽培基701と702では、水791上にこれらを浮上させて、当該水791を透水部(網状体側の貫通口)から、縦に配列されたミズゴケ群に植え付けられた生長対象の生長ミズゴケ等に供給することができる。
図6(2)の本栽培基703では、発泡スチロール等の軽量の基盤状部材713の中央に貫通口を設け、その貫通口の一方を網状部材783でシールし、透水部としている。この透水部の真上に配列されていない乾燥ミズゴケ層724を設け、さらにその上に縦に配列された乾燥ミズゴケ735を配置し、その間隙に生長ミズゴケ等744を植え付けることができる。また、基盤状部材713には、細い貫通口7151が多数設けられ、その中には、乾燥ミズゴケの植物体7631が嵌め込まれて、水792に接触するように、貫通口7151から一部が垂れ下がっている。また、基盤状部材713の上面には、保水性粒子7632が定着されている。これにより、本栽培基703においては、水792が、乾燥ミズゴケ724・735を介して、生長ミズゴケ等744に供給され、さらに、当該上面は、乾燥ミズゴケ7631により水792が供給され、常に湿潤状態になっている。これらにより、生長ミズゴケ等744は横方向にも容易に生長することが可能であり、いっそうの効率的な生長ミズゴケ等の生長を行うことができる。
また、図6(3)では、本栽培基702の下部の円柱状部材7121に代えて、発泡スチロール等やプラスチックボール等の水より比重の小さい軽量部材でできた、小球状部材715を充填することも可能である。この場合、円柱状部材714の貫通口に嵌め込んだ、縦配列の乾燥ミズゴケ群736をそのまま下にたれ下げることも可能であり、同乾燥ミズゴケ群737の下に、配列されていないミズゴケ層725を、底部の網状体784で係止し、網状体でできた円筒状部材785で仕切って設けることも可能である。また、円柱状部材714は、係止用ピン773で、円筒状部材753に係止されていることが好適である。また、必要に応じて、保水性粒子764を本栽培基に定着させることも可能である。
図7は、コケ植物(生長ミズゴケ以外のコケの方が好適である)を、基盤状部材に設けた貫通口に嵌め込む態様を示した図面(縦断面図)である。基盤状部材81に、貫通口811を、好ましくは一方の開口部8111の径を大きくして設け(図7(1))、その狭い方の開口部側の面と側面に、上述した要領で、保水性粒子82を定着させる(図7(2))。次いで、この基盤を転置し、横断面積が大きい方の側8111の側から、コケ植物83の生長点側を下向きにして、貫通口811に嵌め込む(図7(3))。さらに、開口部8111から嵌め込んだコケ植物83の上に、水を含有する固定用組成物84を重層し、これを乾燥させることにより(これとは別に、または、これと共に網状体で開口部8111をシールすることも好適である)。また、コケ植物83と網状体及び/又は固定用組成物の間に、砂礫層841や乾燥ミズゴケ層842を設けることができる。これを再び転置することにより、群落状のコケ植物83が凹部に嵌め込まれ、かつ、基盤上の当該コケ植物83の周辺に保水性粒子82が定着している、コケ植物を用いた植生基盤80とすることができる。
このコケ植物83を用いた植生基盤を適切な場所に載置することにより、コケ植物83には、降雨水や、保水性粒子が吸収する空気中の水分が供給され、継続的なコケ植物83の生長が可能となる。
本発明により、ミズゴケ等のコケ植物の簡便な生長を行うことができる、コケ植物の栽培基が提供される。
Claims (12)
- 長手方向に伸ばした側面同士が接触している複数の乾燥ミズゴケの一部を吸水部として、当該一部以外の一端をコケ植物の植え付け部としてなる、コケ植物栽培基。
- 器物に1箇所以上の凹部が設けられており、長手方向に伸ばした側面同士が接触している複数の乾燥ミズゴケが、当該凹部の底部近傍から開口部に向けて配置され、透水部によって、当該乾燥ミズゴケと外部の水が接触可能となっている、請求項1記載のコケ植物栽培基。
- 前記透水部近傍に、下記(1)〜(4)から選ばれる1種以上が設けられて、長手方向に伸ばした側面同士が接触している複数の乾燥ミズゴケが係止されている、請求項2記載のコケ植物栽培基。
(1)粉砕紙及び/若しくは紙前駆物と土質細物を含有する組成物の層
(2)網状体の層
(3)乾燥ミズゴケの集合物の層
(4)布の層 - 前記のコケ植物栽培基において、生長させるコケ植物の一部又は全部が、前記の複数の乾燥ミズゴケ同士の隙間に嵌め込まれることによって、当該コケ植物が固定されている、請求項1〜3のいずれかに記載のコケ植物栽培基。
- 前記の生長させるコケ植物が生長ミズゴケである、請求項4記載のコケ植物栽培基。
- 前記器物の表面の一部又は全部に保水性粒子が稠密に定着しており、かつ、当該保水性粒子の定着面が前記凹部の開口部の縁部と連続している、請求項2〜5のいずれかに記載のコケ植物栽培基。
- 前記保水性粒子の一部又は全部が乾燥ミズゴケの粉砕粒子である、請求項6記載のコケ植物栽培基。
- 前記保水性粒子の定着が、大きな保水性粒子の定着から、保水性粒子の定着へと段階的に行われる、請求項6又は7記載のコケ植物栽培基。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のコケ植物栽培基、及び、生長させるコケ植物、を構成要素として含む、コケ植物栽培用セット。
- 請求項4又は5のコケ植物培養基における生長させるコケ植物に対して、透水部を介して外部の水を間接的に当該コケ植物に継続的に接触させることにより、当該コケ植物の養生を行うことを特徴とする、コケ植物の栽培方法。
- 前記コケ植物の栽培方法において、当該コケ植物が生長ミズゴケであることを特徴とする、コケ植物の栽培方法。
- 請求項10又は11記載の栽培方法により養生されたことを特徴とする、コケ植物。
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