JPWO2005121203A1 - 高い蛍光量子収率を示す共役系高分子と金属塩とのハイブリッド体、その製造方法及びそれを用いた蛍光発光材料 - Google Patents
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Abstract
Description
詳しくは、本発明の新規な共役系高分子と、金属塩又は金属酸化物からなるハイブリッド体により、原料の9位にエステル鎖又は両親媒性ユニットを有するポリフルオレン誘導体に比べて大幅な蛍光量子収率の増大、発光領域(バンドギャップ)の制御、および白色発光の実現を可能にするハイブリッド体、その製造方法及びそれを用いた蛍光発光材料に関する。
ポリフルオレン誘導体は、その発光波長変換も幅広く研究されているが、他の芳香族化合物との共重合が良く知られている(非特許文献1)。しかし、金属とポリフルオレンとのハイブリッド化による波長変換については、全く知られていない。
即ち、金属、特に希土類金属と高分子とのハイブリッド化は、主に発光性金属錯体(ユウロピウム、テルビウム)の発光効率や加工性の向上のために古くから研究されてきた(非特許文献2)。また、導電性高分子のカチオンドープのために側鎖にイオン補足部位を持つ共役系高分子が製造され、カチオンが添加された例が報告されている。
近年、主鎖に金属イオンを導入することによりその主鎖構造を変化させ、ポリマーの吸収波長や発光を制御する試みが行われている(非特許文献3)。
しかし、有機系青色発光素子として期待されているポリフルオレン誘導体において、金属塩又は金属酸化物とのハイブリッド化による発光領域の広範囲化や蛍光量子収率の向上はまだ未開の技術といっても過言ではない。
下記、一般式(1)又は(2)で表される繰返単位を骨格とする数平均分子量が400〜1,000,000である9位にカルボン酸エステル鎖を有するポリフルオレン誘導体からなる共役系高分子と、金属塩又は金属酸化物を構成する金属イオンとが、弱い分子間相互作用または配位結合によりハイブリッド化していることを特徴とする共役系高分子と金属塩又は金属酸化物とのハイブリッド体からなるポリフルオレン誘導体。
MLは金属塩又は金属酸化物を表し、金属Mは、La3+、Ce3+、Pr3+、Nb3+、Pm3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb3+、Lu3+からなる群から選択された少なくとも1種の3価の希土類;3価のスカンジウム(Sc3+);Li2+、Mg2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Sn4+、Ti4+、からなる群から選択された少なくとも1種のルイス酸性の金属イオンであり, 上記金属イオンと塩を形成する配位性のカウンターイオン(L)は、F- 、Cl- 、Br- 、I- 、ClO4-、CF3 SO3-、NO3-、HSO4 - 、SO4 2-、CH3 COO- からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンである。〕
両親媒性ユニットによる置換率が10〜100%であるのがよい。
このような共役系高分子と金属塩とのハイブリッド体からなるポリフルオレン誘導体は蛍光発光材料として優れている。
上記のカルボン酸エステル鎖を有するポリフルオレン誘導体又は両親媒性基を有するポリフルオレン誘導体の溶液中で、上記金属(M)と配位性のカウンターイオン(L)とを有する金属塩又は金属酸化物の化合物と接触させることで、該ポリフルオレン誘導体と金属イオンとの分子間相互作用等を利用したハイブリッド体が製造できる。
両親媒性ユニットによる置換率が10〜100%であるポリフルオレン誘導体を含むハイブリッド体は白色発光する蛍光発光材料となる。
この白色発光する蛍光発光材料は両親媒性ユニットを構成する末端R5 基が嵩高基である炭素数6〜40のアルキル、アルケニル基、又はアリール基であるポリフルオレン誘導体であってよい。
また、本発明のハイブリッド体によれば、発光領域の広範囲化による発光色および発光波長の制御、および白色発光の実現が可能となる。従って、特に白色発光を示す系は、蛍光・発光材料や高性能の有機EL素子の原料として利用することが可能ちなる。
また、本発明のハイブリッド体は、その溶液中でもフィルム中でも優れた蛍光発光性能を示す、加工性に優れたハイブリッド体である。
(A)本発明の新規なハイブリッド体の原料である特定のポリフルオレン誘導体 〔I〕本発明のハイブリッド体の原料であるポリフルオレン誘導体本発明に原料として用いるポリフルオレン誘導体は、一般式(6)又は(7)で表される、9位にカルボン酸基又はエステル基を有する繰返単位を骨格とするポリフルオレン誘導体であって、数平均分子量が400〜1,000,000の重合体である。
該ポリフルオレン誘導体は、その数平均分子量が400〜1,000,000の重合体であり、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは1,500〜50,000の範囲である。
該共重合体は、上記一般式(6)又は(7)の繰返単位が主にランダムに共重合したものであるが、ブロック共重合してもグラフト共重合してもよい。
炭素数2〜40のアルケニル基としては、直鎖アルケニル、分岐アルケニルがあり、直鎖アルケニルが好ましく、具体的には上記アルキル基に相当する炭素数2〜40のアルケニル基が挙げられる。
アシル基としては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ベンゾイル等が挙げられ、アセチル、プロピオニルなどの基が好ましい。
アリール基としては、例えば、フェニル、アルキルフェニル、アルコキシフェニル、ナフチル等が挙げられ、アルキルフェニル、アルコキシフェニルなどの基が好ましい。
更に、ポリ(メタ)アクリル酸の金属塩中の金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Ni、Mg,Mn等の金属を挙げることができる。
また、ポリ(2−アルキル−2−オキサゾリン)残基又はポリ(2−フッ化アルキルー2−オキサゾリン)残基中のアルキル基としては、炭素数1〜18、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜4の直鎖アルキル、分岐アルキルが挙げられ、直鎖アルキルが好ましく、例えばメチル、エチル、プロピルなどの基である。
式中、R4 は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、炭素数2〜6の直鎖又は分岐鎖のアルケニレン基から選ばれる少なくとも1種の基であり、例えば、エチレン、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、n−ブチレン、iso−ブチレン、t−ブチレン、ペンチレン、ヘキセレンなどが挙げられ、特にエチレン、プロピレン基が好ましい。
その重合単位数Xは1〜1000、好ましくは2〜100、更に好ましくは3〜50である。
また、R5 は炭素数1〜40のアルキル基、炭素数2〜40のアルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アシル基であり、前述のR1 〜R3 についてのアルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基で述べた基と対応するが、本発明のハイブリッド体が白色発光を呈するためには、該基が両親媒性ユニットの親油性成分となることから、炭素数6〜40、より好ましくは炭素数8〜24のアルキル基が好ましく、例えば、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、セチル、ステアリル等の基が挙げられ、好ましくはセチル、ステアリルなどの基である。
下記一般式(4)又は(5)で表されるフルオレン誘導体モノマーを、下記反応式(1)、(2)に従って酸化重合して、上記一般式(6)又は(7)で表される9位にエステル鎖を有するポリフルオレン誘導体を製造する。
一方、電気化学的酸化重合は、上記モノ或いはジカルボン酸エステル置換のフルオレン誘導体と電解質を溶媒に溶かし、その中に一対の電極を浸漬させ、この電極に電圧を印加することにより電極表面に重合体を生成せしめる。
本発明では、化学的酸化重合によりポリフルオレン誘導体を製造するのが好ましく、特に、FeCl3 を触媒とする上記反応式(1)、(2)で表される酸化重合によりポリフルオレン誘導体を製造するのが好ましい。
前記のようにして得られた、一般式(6)又は(7)で表される9位にエステル鎖を有するポリフルオレン誘導体の繰返単位骨格中のR1 〜R3の一部もしくは全部を上記一般式(3)で表される両親媒性ユニット含有化合物でエステル交換することにより、両親媒性ユニットを有する(で置換した)ポリフルオレン誘導体を製造する。
上記一般式(4)又は(6)で表されるエステル鎖含有フルオレンモノマーを予め上記一般式(3)で表される両媒性ユニット含有エステル形成性化合物でエステル交換して、両親媒性ユニット含有カルボン酸エステル置換フルオレンモノマーとし、該モノマーを上記の酸化重合によりポリフルオレン誘導体を得ることも可能であるが、上記一般式(6)又は(7)で表される繰返単位の少なくとも1種からなるポリフルオレン誘導体と一般式(3)で表される両親媒性ユニット含有エステル形成性化合物とをエステル交換反応させて、両親媒性ユニットで置換されているポリフルオレン誘導体を製造するのが好ましい。
ポリフルオレン誘導体を重合した後に両親媒性ユニット含有化合物とエステル交換反応を行うことによって、その置換率(両親媒性ユニット導入率)を10〜100%、好ましくは75〜100%の範囲にコントロールすることが容易となり、また、エステル交換反応に用いる両親媒性ユニット含有エステル形成性化合物としてその親水性成分と親油性成分との割合が種々の比率の化合物を選択使用することによって、その発光特性を調整することが可能となる。
上記一般式(3)で示されるR4 のポリ(アルキレングリコール)鎖含有親水性成分とR5 で表されるアルキル基又はアルケニル基、アリール基である親油性成分とを含有する両親媒性ユニットを有するポリフルオレン誘導体は、エステル交換反応により製造される。
該エステル交換反応は、例えば、9位がカルボン酸ブチルエステルで置換されたポリフルオレン誘導体とポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル交換反応は、下記の反応式(3)に従って行われる。
上記カルボン酸エステル鎖又は両親媒性ユニットを有するポリフルオレン誘導体は、そのままでも、ポリフルオレンポリマー自体が青色発光するため、青色発光を基本に9位の置換基の種類、嵩高基の有無等に応じて緑色、黄色、赤色等に発光するものであるから、このポリフルオレン誘導体もいずれかの色調に発光をするものと考えられていた。
しかしながら、9位に両親媒性ユニットを導入し、その導入割合が高い場合には、そのポリフルオレン誘導体は、N,N’−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等の極性溶媒中及びフィルム状態で白色に近い発光を示す。
具体的には、両親媒性ユニットであって、ポリフルオレンの主鎖骨格に近い側に親水基がある場合に、発光領域の拡大現象が起こり白色発光する。
親水基としては、ポリエチレングリコール残基やポリプロピレングリコール残基などのポリアルキレングリコール残基や、ポリ(2−メチル−2−オキザゾリン)残基、ポリ(2−フルオロメチルー2−オキサゾリン)残基等の高分子鎖が適しており、また、疎水基としては長鎖アルキル基が適している。
しかしながら、両親媒性ユニットの導入率が10%以下と低い場合、発光波長領域の拡大効果を有せず、9位にアルキルエステル鎖を有する他のポリフルオレン誘導体と同じく青色発光を示す。
両親媒性ユニットの導入割合が50%程度の場合、そのポリフルオレン誘導体は弱い黄色発光を示す。
ただ、両親媒性ユニットを構成するR5基がメチル、ブチル基等の短鎖長の場合には、たとえ両親媒性ユニットの導入率(置換率)が75%に近い値であっても、製造例4、5に示されるように白色発光はしない。
また、両親媒性ユニットの親水性と親油性の割合を変化させることにより、発光領域及び発光強度を調整することができる。
更に、ポリフルオレン自体は青色領域に強い発光を示すポリマーであるが、下記(a)一般式(8)、(b)一般式(9)、(c)一般式(10)の場合、緑色、黄色領域にも強い発光を示すために白色に近い発光を示す。
単独のポリマーで白色発光が実現することが可能となれば、その蛍光発光材料は、加工性、均一性が高く、取扱が容易となり、材料的に価値が高い。
また、ポリフルオレン誘導体の溶液中での蛍光量子収率も0.2〜0.5程度と比較的高い値を示すことも利点の1つである。
また、従来のポリフルオレン誘導体のように、9位の側鎖に単にアルキル基やエチレングリコールユニットを導入しても、上記と同じ現象は起こらず、両親媒性ユニットを導入したポリフルオレン誘導体の場合にのみ起こる特異な現象である。
このポリフルオレン誘導体の状態でも、発光・蛍光材料、EL素子、高分子LED、有機半導体材料等広い応用がある。
〔I〕ハイブリッド体
本発明の新規なハイブリッド体は、下記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位骨格を有する共役系高分子と金属塩又は金属酸化物とのハイブリッド体である。
共役系高分子の中のR1 〜R3 は、上記ポリフルオレン誘導体におけるR1 〜R3 と同じ基である。
原料共役系高分子(P)と金属イオン(M)とのモル比(M/P)は0.01〜10,000の範囲であれば特に限定されないが、好ましくは1〜1000であり、ハイブリッドから得られるフィルムの加工性を考慮すると、特に好ましくは1〜5である。
MLは金属塩又は金属酸化物を表し、金属Mは、からなる群から選択された少なくとも1種の3価の希土類;3価のスカンジウム(Sc3+);Mg2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Sn4+、Ti4+、からなる群から選択された少なくとも1種のルイス酸性の金属イオンであり, 上記金属イオンと塩を形成する配位性のカウンターイオン(L)は、F- 、Cl- 、Br- 、I- 、ClO4-、CF3 SO3-、NO3-、HSO4 - 、SO4 2-、CH3 COO- からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンである。〕
ハイブリッド体を構成する金属塩のカウンターアニオン成分(L)は、F- 、Cl- 、Br- 、I- 、ClO4-、CF3 SO3-、NO3-、HSO4 - 、SO4 2-、CH3 COO- からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンであってもよいが、入手のし易さから、塩化物イオン、トリフルオロメタンスルホナート(トリフラート)、過塩素酸イオン、硝酸イオンが好ましく、特に好ましくはトリフラート、過塩素酸イオンである。
本発明のハイブリッド体は、一般式(6)又は(7)で表されるポリフルオレン誘導体又は上記一般式(3)で表される両親媒性ユニットを有するポリフルオレン誘導体の溶媒溶液中で、金属イオン(M)と配位性のカウンターイオン(L)とを有する金属塩又は金属酸化物の化合物と接触させて、該共役系高分子と金属イオンとの分子間相互作用等を利用してハイブリッド体を製造する。
ハイブリッド体の合成に用いる溶媒は、水および各種汎用有機溶媒が特に限定されず使用可能であるが、具体的には水;N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル等の極性溶媒、メタノール、エタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;エチレングリコールや2-エトキシエタノールなどのセロソルブ類;クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン系溶媒およびこれらの混合溶媒などを使用することができる。中でも溶解性の点からクロロホルム・メタノールの混合溶媒、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランが特に好ましい。
この反応は、通常大気雰囲気下で10〜70℃、好ましくは20〜40℃で、通常室温で適宜触媒を加えて行う。
本発明のハイブリッド体は、溶液中およびフィルム状態での極めて高い蛍光量子収率を発現する。本発明のハイブリッド体は、共役系高分子としての原料である前記(a)式の一般式(8)、(b)式の一般式(9)並びに(c)式の一般式(10)で表される両親媒性ユニットを有するポリフルオレン誘導体と比べた場合、これらポリフルオレン誘導体と金属塩又は金属酸化物とのハイブリッド体は、その蛍光量子収率が大幅に向上する。
特に、前記の(b)式の一般式(9)で示されるポリフルオレン誘導体のように、フルオレンの9位にカルボン酸エステル基を有し、側鎖にポリアルキレングリコール鎖のような金属イオンに対して配位能力を持つポリフルオレン誘導体では、ハイブリッド体とすることによる蛍光量子収率の向上が極めて顕著である。量子収率も1に近くなる例もある。
また、金属イオン(M)としては、3価の希土類イオン、3価のスカンジウムイオンが最も効果的である。カウンターイオン(L)としては、種々のアニオン種の使用で量子収率の向上が見られるが、金属イオンのルイス酸性を高めるトリフルオロメタンスルホナート(トリフラート)や金属から遊離しやすい過塩素酸イオンが最も効果的である。
この蛍光量子収率の増大の原因は明らかではないが、酸素原子と親和性の高いルイス酸である希土類イオンやスカンジウムイオンが効果的であることから、9位のエステル基や側鎖のアルキレングリコールポリマーに金属イオンが配位し、ポリフルオレン誘導体周辺の極性環境を変化させているか、もしくは金属イオンとポリフルオレンがなんらかの相互作用、たとえば電荷移動、電子移動、エネルギー移動などを起こして原料とは異なる電子状態になっている可能性がある。
このようなハイブリッド体とすることによる蛍光量子収率が極めて顕著に向上するという知見は従来何ら報告されておらず、新規の発見であると考える。
さらに金属イオン(M)としては、3価の希土類イオン、3価のスカンジウムイオンが最も効果的であり、カウンターイオン(L)としては、金属イオンのルイス酸性を高めるトリフルオロメタンスルホナート(トリフラート)や金属から遊離しやすい過塩素酸イオンが最も効果的であることも新規な知見である。
特にスカンジウムイオンやテルビウムイオンを用いた材料であって白色発光する材料は、発光・蛍光材料、およびEL素子の中で最も製造するのが困難であった材料であり、様々な用途への多様な応用が期待できる。
〔構造等の確認手段、及びその測定条件〕
本発明の製造例で得られたエステル鎖又は両親媒性ユニットを有するポリフルオレン誘導体、及び実施例で得られたハイブリッド体の蛍光特性等の測定は、以下の如く行った。
(イ) 1H−NMRスペクトル(270MHz)は、日本電子フーリエ変換NMR分光光度計(JNM−EX−270)を使用して25℃で測定した。溶媒として重水素化クロロホルムを、内部標準物質としてテトラメチルシランを使用した。
(ロ)検出器は東ソー社製紫外分光光度計(UV−8011、測定波長270nm)を用い、THFを溶離液とし流速1.0ml/分、室温で測定した。
(ハ)蛍光スペクトル測定は、日立製作所製F−3010型分光蛍光光度計(光源150WXe−ランプ)を用いて溶液状態での測定を行った。
(ニ)ポリマーの蛍光量子収率は、アントラセン−9−カルボン酸を標準試料として、同じ溶媒(クロロホルムまたはDMF)、濃度(10-5M)で測定した場合の相対蛍光量子収率を求めた。
(ホ)両親媒性ユニットの導入率(置換率)は、 1H−NMRのピークの積分比により容易に算出できる。
(ヘ)蛍光発光の確認は、(a)フィルム状の場合には、非特許文献1の551〜552頁に記載されるように、陰極とITO透明カソード電極の間に介在して蛍光材料からなる発光フィルム層とキャリア輸送層とから構成されるLEDセルを用いた(実施例21〜22)、(b)溶液状の場合には、ハイブリッド体のN−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(5×105 mol/l)中で測定した。励起波長(λex)は355nmである(実施例1〜20)。
(製造例1)
・ポリ(9−フルオレンカルボン酸ブチル)の製造
窒素雰囲気下100ml容量の三つ口フラスコに9−フルオレンカルボン酸ブチル2.
5g(9.4nmol)、1,2−ジクロロエタン125mlを入れ、この溶液に三塩化鉄4.6 g(28.2nmol)を加え、室温で98時間攪拌した。得られた反応物をメタノール中への再沈殿を繰り返し、ポリマー1.9g(収率75%)を得た。
得られたポリマーは、 1H−NMR、FT−IR、UV/Visの各スペクトルを分析することでポリ(9−フルオレンカルボン酸ブチル)であることを確認した。GPCを測定したところ数平均分子量(Mn)は3500であり、ポリマーの分子量分布を表す「重量平均分子量/数平均分子量の比率」としての分散度(Mw/Mn)は1.1であった。
クロロホルム中で蛍光を測定したところ、λex=355nmでλem=448nm(蛍光量子収率Φ=0.46)であった。
この9位にカルボン酸ブチルエステル鎖を含有するポリフルオレン誘導体は、それ自体で蛍光発光を示した。
・両親媒性ユニットを低い導入率で9位に持つポリフルオレンの製造
ディー・シュターク管を備えた100ml容量のナス型フラスコに実施例1で得られたポリ(9−フルオレンカルボン酸ブチル) (Mn=3500) 0.5g(1.9mmol)とポリオキシエチレンモノセチルエーテル(商品名「Brij56」;エチレンオキサイド単位=5)1.3g(1.9mmol)、クロロホルム75mlを入れ、室温でしばらく攪拌した。そこへp−トルエンスルホン酸を少量加え、還流温度で一晩攪拌した。反応溶液を濃縮し、メタノールに再沈すると、0.48gの下記構造式(P1)で表されるポリマーが得られた。
得られたポリマーの構造は、 1H−NMRスペクトル、FT−IRスペクトル、UV/Visスペクトルで確認した。GPCを測定したところ数平均分子量(Mn)は6100であり、分散度(Mw/Mn)は1.3であった。
クロロホルム中で蛍光を測定したところλex=355nmでλem=459nm(蛍光量子収率Φ= 0.28)であった。
・高い導入率で両親媒性ユニットを9位に持つポリフルオレンの製造
ソックスレー抽出用150mlフラスコにポリ(9−フルオレンカルボン酸ブチル)(Mn=2800) 1.0g(3.8mmol)、ポリオキシエチレンモノセチルエーテル(商品名「Brij56」)2.6g(3.8mmol)、クロロホルム30mlとp−キシレン120mlの混合溶媒を入れた。この溶液にp−トルエンスルホン酸を少量加え還流温度で2日間攪拌した。遊離するn−ブタノールを吸着するためにモレキュラーシーブ(5A 1/16)を入れた円筒ろ紙を挿入した。溶媒を留去し、析出した固体をメタノールで洗浄すると、1.6gの下記構造式(P2)で表されるポリマーが得られた。得られたポリマーは茶色の粘性固体であった。
ポリマーの構造は、 1H−NMR、FT−IR、UV/Visで確認した。GPCを測定したところ数平均分子量(Mn)は6800であり、分散度(Mw/Mn)は1.3であった。クロロホルム中で蛍光を測定したところλex=354nmでλem=508nm(蛍光量子収率Φ=0.25)であった。
・ポリオキシエチレン残基を側鎖に持つポリフルオレンの製造
ソックスレー抽出用150mlフラスコにポリ(9−フルオレンカルボン酸ブチル) (Mn=2800) 0.5g(1.9nmol)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量350)0.7g(1.9nmol)、クロロホルム30mlとp−キシレン120mlの混合溶媒を入れ、この溶液にp−トルエンスルホン酸を少量加え、製造例3と同様の方法で反応させ、後処理を行った。
その結果、0.6g(収率59%)の下記の構造式(P3)で表されるポリマー6が0.6g(収率59%)得られ、オキシエチレン鎖の導入率が72%であった。
このポリマーは、導入率72%と白色発光に必要な75%以上に近い値であるが、両親媒性ユニット中の親水性成分はポリエステルポリエチレングリコール残基であるものの、親油性成分のアルキル基がメチル基と極めて嵩高性が低い基なので白色発光とはならない。
製造例1で使用した9−フルオレンカルボン酸ブチルの代わりに9,9’−フルオレンジカルボン酸ジブチル9.4nmolを用いて、製造例1と同様に反応を行ったところ、収率60%で下記構造式(P4)で表されるポリ(9,9’−フルオレンジカルボン酸ジブチルエステル)ポリマーが得られた。 このポリフルオレン誘導体は、エステル鎖のアルキル基がブチル基と嵩高性が低い上に両親媒性ユニットがないので白色発光とはならない。
・オキサゾリンのグラフト重合単位を含有する例
0℃で、窒素雰囲気下100ml容のなす型フラスコに、製造例1で得られたポリ(9−フルオレンカルボン酸ブチル)と3−ブロモプロピルアルコールとエステル交換して得られた下記構造式(P5)で表されるポリ(9−フルオレンカルボン酸3−ブロモプロピルエステル)(Mn=3500)200mg、2−メチル−2−オキサゾリン5mlを入れ密閉し、良く攪拌した。系全体を120℃にし、10時間加熱した。得られた溶液をジクロロエーテル中に注ぎ固体生成物を得た。ポリマーの精製は固体を少量のクロロホルムに溶解し、エーテル中に再沈殿することにより行った。収量は1.80gで下記構造式(P6)で表されるポリフルオレン誘導体ポリマーが得られた。 1H−NMRにより側鎖のグラフトポリマーは平均10ユニットであった。クロロホルム中で蛍光を測定したところ入ex=355nmで入em=455nm(蛍光量子収率Φ=0.30)であった。
・アクリル酸エチルのグラフト重合単位を含有する例
窒素雰囲気下100ml容のなす型フラスコに上記構造式(15)で表されるポリ(9−フルオレンカルボン酸3−ブロモプロピルエステル)(Mn=3500)200mg、アクリル酸エチル5ml、ビス(4,4’−ジノニル−2,2’−ピピリジル)銅(1)を入れ密閉し、良く攪拌した。系全体を120℃にし、10時間加熱した。得られた固体をクロロホルムに溶解し、不溶部を除去後、濃縮した。得られた下記構造式(P7)で表されるポリフルオレン誘導体ポリマーの精製は、固体を少量のクロロホルムに溶解し、メタノール中に繰り返し再沈殿することにより行った。
1H−NMRにより側鎖のグラフトポリマーは平均15ユニットであった。クロロホルム中で蛍光を測定したところ入ex=355nmで入em=450nm(蛍光量子収率Φ=0.48)であった。
・スチレンのグラフト重合単位を含有する例
窒素雰囲気下100ml容のなす型フラスコに上記構造式(15)で表されるポリ(9−フルオレンカルボン酸3−ブロモプロピルエステル)(Mn=3500)200mg、スチレン7ml、ビス(4,4’−ジノニル−2,2’−ピピリジル)銅(1)を入れ密閉し、良く攪拌した。系全体を120℃にし、10時間加熱した。得られた固体をクロロホルムに溶解し、不溶部を除去後、濃縮した。得られた構造式(P8)で表されるポリフルオレン誘導体ポリマーの精製は、固体を少量のクロロホルムに溶解し、メタノール中に繰り返し再沈殿することにより行った。
1H−NMRにより側鎖のグラフトポリマーは平均20ユニットであった。クロロホルム中で蛍光を測定したところ入ex=355nmで入em=460nm(蛍光量子収率Φ=0.33)であった。
(実施例1)
撹拌機、スターラーチップを入れた30ml容の3ツ口フラスコに、構造式(e1)で表される側鎖に12%の両親媒性成分を有するポリ(9-フルオレンカルボン酸エステル)(Mn=6000)0.05g(5.7x10-2mmol)と塩化ユウロピウム(III)0.021g(5.7x10-2mmol)を入れ、クロロホルム15ml、メタノール10mlの混合溶媒に溶解させ、室温で1日撹拌した。その後、溶媒を留去し、1日間、真空乾燥し、下記構造式(e2)で表されるハイブリッド体を定量的に得た。
実施例1で使用した塩化ユウロピウム(III)の代わりに塩化テルビウム(III)(5.7x10-2mmol)を用いた点を除いて、実施例1と同じ操作を行ったところ、下記構造式(e3)で表されるハイブリッドが定量的に得られた。
実施例1で使用した塩化ユウロピウム(III)の代わりにスカンジウム(III)トリフルオロメタンスルホナート(5.7x10-2mmol)を用いた点を除いて、実施例1と同じ操作を行ったところ、下記構造式(e4)で表されるハイブリッドが定量的に得られた。
実施例1で使用した塩化ユウロピウム(III)の代わりに過塩素酸ユウロピウム(III)(5.7x10-2mmol)を用いた点を除いて、実施例1と同じ操作を行ったところ、下記構造式(e5)で表されるハイブリッドが定量的に得られた。
実施例1で使用した塩化ユウロピウム(III)の代わりにマグネシウム(II)トリフルオロメタンスルホナート(5.7x10-2mmol)を用いた点を除いて、実施例1と同じ操作を行ったところ、下記構造式(e6)で表されるハイブリッドが定量的に得られた。
撹拌機、スタラーチップを入れた30ml容の3ツ口フラスコに、構造式(e7)で表される側鎖に78%両親媒性成分を有するポリ(9-フルオレンカルボン酸エステル)(Mn=7800)0.05g(5.7x10-2mmol)と塩化ユウロピウム(III)0.021g(5.7x10-2mmol)を入れ、クロロホルム15ml、メタノール10mlの混合溶媒に溶解させ、室温で1日撹拌した。その後、溶媒を留去し、1日間、真空乾燥し、下記構造式(e8)で表されるハイブリッド体を定量的に得た。
実施例6で使用した塩化ユウロピウム(III)の代わりに塩化テルビウム(III)(5.7x10-2mmol)を用いた点を除いて、実施例6と同じ操作を行ったところ、下記構造式(e9)で表されるハイブリッドが定量的に得られた。
実施例6で使用した塩化ユウロピウム(III)の代わりにスカンジウム(III)トリフルオロメタンスルホナート(5.7x10-2mmol)を用いた点を除いて、実施例6と同じ操作を行ったところ、下記構造式(e10)で表されるハイブリッドが定量的に得られた。
実施例6で使用した塩化ユウロピウム(III)の代わりに過塩素酸ユウロピウム(I
II)(5.7x10-2mmol)を用いた点を除いて、実施例6と同じ操作を行ったところ、下記構造式(e11)で表されるハイブリッドが定量的に得られた。
実施例6で使用した塩化ユウロピウム(III)の代わりにマグネシウム(II)トリフルオロメタンスルホナート(5.7x10-2mmol)を用いた点を除いて、実施例6と同じ操作を行ったところ、下記構造式(e12)で表されるハイブリッドが定量的に得られた。
実施例1で使用した側鎖に12%の両親媒性成分を有するポリ(9−フルオレンカルボン酸エステル)の代わりに構造式(e13)で表される側鎖に7%のポリエチレングリコール成分を有するポリ(9−フルオレンカルボン酸エステル)(5.7x10-2mmol)、金属塩として過塩素酸ユウロピウム(III)(5.7x10-2mmol)を用いた点を除いて、実施例1と同じ操作を行ったところ、下記構造式(e14)で表されるハイブリッドが定量的に得られた。
実施例1で使用した側鎖に12%の両親媒性成分を有するポリ(9-フルオレンカルボン酸エステル)の代わりに構造式(e15)で表される側鎖に72%のポリエチレングリコール成分を有するポリ(9-フルオレンカルボン酸エステル)(5.7x10-2mmol)、金属塩として過塩素酸ユウロピウム(III)(5.7x10-2mmol)を用いた点を除いて、実施例1と同じ操作を行ったところ、下記構造式(e16)で表されるハイブリッドが定量的に得られた。
以下、ハイブリッド体の蛍光特性は実施例21〜22を除いてハイブリッドのN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(5x10-5mol/l)中で溶液状態で測定した。励起波長(λex)は355nmである。
(実施例13)
実施例1で合成したハイブリッドの蛍光を測定したところ、λmax=460であり、蛍光量子収率は0.43であり、原料ポリマーの1.5倍であった。発光領域は青色領域から赤色領域まで拡がり、青白い発光を示した(図1)。
(実施例14)
実施例2で合成したハイブリッドの蛍光を測定したところ、λmax=418、438であり、蛍光量子収率は0.50であり、原料ポリマーの1.8倍であった。発光領域は青色領域から赤色領域まで拡がり、白色発光を示した(図2)。
(実施例15)
実施例3で合成したハイブリッドの蛍光を測定したところ、λmax=458、513であり、蛍光量子収率は0.40であり、原料ポリマーの1.4倍であった。発光領域は青色領域から赤色領域まで拡がり、白色発光を示した(図3)。
実施例4で合成したハイブリッドの蛍光を測定したところ、λmax= 462であり、蛍光量子収率は0.34であり、原料ポリマーの1.2倍であった。発光領域は原料ポリマーとあまり変わらず、青色発光を示した(図4)。
(実施例17)
実施例6で合成したハイブリッドの蛍光を測定したところ、λmax=462であり、蛍光量子収率は0.46であり、原料ポリマーの4.6であった。発光領域は原料ポリマーとあまり変わらず、白色発光を示した(図5)。
(実施例18)
実施例7で合成したハイブリッドの蛍光を測定したところ、λmax=463であり、蛍光量子収率は0.46であり、原料ポリマーの4.6倍であった。発光領域は原料ポリマーとあまり変わらず、白色発光を示した(図6)。
実施例11で合成したハイブリッドの蛍光を測定したところ、λmax=463であり、蛍光量子収率は0.99であり、原料ポリマーの3.0倍であった。発光領域は低波長側にシフトし、青色発光を示した(図7)。
(実施例20)
実施例12で合成したハイブリッドの蛍光を測定したところ、λmax=452であり、蛍光量子収率は0.35であり、原料ポリマーの4.4倍であった。発光領域は原料ポリマーとあまり変わらず、青色発光を示した(図8)。
実施例2で合成したハイブリッドのクロロホルム溶液からフィルムを作成し、その蛍光を測定したところ、強い白色発光を示した。
(実施例22)
実施例3で合成したハイブリッドのクロロホルム溶液からフィルムを作成し、その蛍光を測定したところ、強い白色発光を示した。
Claims (4)
- 下記、一般式(1)又は(2)で表される繰返単位を骨格とする数平均分子量が400〜1,000,000である9位にカルボン酸エステル鎖を有するポリフルオレン誘導体からなる共役系高分子と、金属塩又は金属酸化物を構成する金属イオンとが、弱い分子間相互作用または配位結合によりハイブリッド化していることを特徴とする共役系高分子と金属塩又は金属酸化物とのハイブリッド体からなるポリフルオレン誘導体。
MLは金属塩又は金属酸化物を表し、金属Mは、La3+、Ce3+、Pr3+、Nb3+、Pm3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb3+、Lu3+からなる群
から選択された少なくとも1種の3価の希土類;3価のスカンジウム(Sc3+);Li2+、Mg2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Sn4+、Ti4+、からなる群から選択された少なくとも1種のルイス酸性の金属イオンであり, 上記金属イオンと塩を形成する配位性のカウンターイオン(L)は、F- 、Cl- 、Br- 、I- 、ClO4-、CF3 SO3-、NO3-、HSO4 - 、SO4 2-、CH3 COO- からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンである。〕 - 前記一般式(3)で表される両親媒性基による置換率が10〜100%であることを特徴とする請求項2記載の共役系高分子と金属塩又は金属酸化物とのハイブリッド体からなるポリフルオレン誘導体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の共役系高分子と金属塩又は金属酸化物とのハイブリッド体からなるポリフルオレン誘導体からなることを特徴とする蛍光発光材料。
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