JPWO2005099009A1 - 電極 - Google Patents
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Abstract
本発明は、電極及び燃料電池を提供する。 本発明は、具体的には、下記の電極及び燃料電池を提供する。 1.下記一般構造式(1)[化1]〔但し、式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基を示す。m及びnは、各々独立して2〜4の整数を示す。〕で表される単量体を構成成分として含む固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を電極基材上に有する電極、 2.前記触媒層を有する燃料電池、並びに、 3.前記固体高分子により燃料電池の表面を被覆してなる体内埋め込み用燃料電池。
Description
本発明は、電極及び燃料電池に関する。
従来、固体高分子電解質として、高分子鎖中にスルホン酸基、カルボン酸基等のイオン交換基を有する固体高分子材料が知られている。かかる固体高分子材料は、特定のイオンと強力に結合する性質、陽イオン又は陰イオンを選択的に透過する性質等を有しており、粒子状、繊維状又は膜状に成形して電極材料、燃料電池の固体高分子電解質等として利用されている。
例えば、特許文献1には、熱処理されたフルオロカーボンスルホンアミド陽イオン交換膜を固体高分子型燃料電池の固体高分子電解質として用いることが開示されている。なお、固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に一対の電極(燃料極・空気極)を有する燃料電池であり、改質ガス等の水素を含む燃料ガスを燃料極に供給し、空気等の酸素を含む酸化性ガスを空気極に供給し、燃料が酸化する際に発生する化学エネルギーを直接電気エネルギーとして取り出す電池である。
電極材料、固体高分子型燃料電池に用いられる固体高分子膜等としては、特許文献1に記載の他に、例えば、特許文献2に示されるように、パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子体からなる膜(例えば、商標名「Nafion」、デュポン社製)が知られている。
このようなパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子体からなる固体高分子膜は、吸湿により優れたプロトン伝導性を発揮するため、電極材料、固体高分子型燃料電池用の固体高分子膜等として有用である。
特許第3444541号公報 米国特許第4168216号明細書 特開2004−014232号公報 特開昭62−195855号公報
しかしながら、パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子体は強酸性であるため、固体高分子中に触媒活性粒子を担持する場合には、粒子の種類によっては溶解する場合がある。そのため、担持可能な粒子の種類は必然的に耐酸性の高い粒子に限定される。
また、パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子体は強酸性であり生体適合性が低い。近年、血液中の血糖成分又は酸素を電極活物質として用いる小型の燃料電池(例えば、ペースメーカーの駆動電源として用いる)は開発されているが、強酸性の固体高分子を含む場合には、体内に埋め込むことは困難である。さらに、油脂成分の吸着により固体高分子表面が被毒する問題もある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされ、固体高分子中に多種多様な触媒活性粒子を担持できる電極及び燃料電池、並びに、生体適合性が高い、体内埋め込み用燃料電池を提供することを主な目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の固体高分子を採用する場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の電極及び燃料電池に係る。
1.下記一般構造式(1)
〔但し、式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基を示す。m及びnは、各々独立して2〜4の整数を示す。〕
で表される単量体を構成成分として含む固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を電極基材上に有する電極。
で表される単量体を構成成分として含む固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を電極基材上に有する電極。
2.前記固体高分子中の前記単量体の含有量が60〜100重量%である、上記項1に記載の電極。
3.前記固体高分子がプロトン伝導性である、上記項1に記載の電極。
4.前記触媒活性粒子が、アルカリ繊維活性炭、備長炭及びビール酵母活性炭からなる群から選択される1種以上である、上記項1に記載の電極。
5.前記固体高分子が、下記構造式(2)
〔但し、式中、nは1000〜5000000の整数を示す。〕
で表される、上記項1に記載の電極。
で表される、上記項1に記載の電極。
6.前記電極基材が、金属、酸化物及び炭化物からなる群から選択される1種以上である、上記項1に記載の電極。
7.前記電極が酸素還元電極である、上記項1に記載の電極。
8.R4は水素原子又はメチル基であり、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、m及びnは各々独立して2〜4の整数を示す、上記項1に記載の電極。
9.R4は水素原子又はメチル基であり、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、炭素数1〜4の1価の炭化水素基であり、m及びnは各々独立して2〜4の整数を示す、上記項1に記載の電極。
10.R1、R2、R3及びR4は全てメチル基であり、m及びnは共に2である、上記項1に記載の電極。
11.下記一般構造式(1)
〔但し、式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基を示す。m及びnは、各々独立して2〜4の整数を示す。〕
で表される単量体を構成成分として含む固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を有する燃料電池。
で表される単量体を構成成分として含む固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を有する燃料電池。
12.下記一般構造式(1)
〔但し、式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基を示す。m及びnは、各々独立して2〜4の整数を示す。〕
で表される単量体を構成成分として含む固体高分子により燃料電池の表面を被覆してなる、体内埋め込み用燃料電池。
で表される単量体を構成成分として含む固体高分子により燃料電池の表面を被覆してなる、体内埋め込み用燃料電池。
本発明の電極及び燃料電池は、固体高分子が化学的に不活性であり、多種多様な触媒活性粒子を担持できる。しかも、固体高分子は、良好なプロトン伝導性に加えて、良好な抗油脂吸着特性、抗油脂被毒特性等を有している。
本発明の体内埋め込み用燃料電池は、上記特性を有する固体高分子により燃料電池の表面が被覆されているため、生体適合性が高い。
[図1]実施例1で測定した、試験電極−C、D、E及びFの電流−電位応答特性を示すグラフである。
[図2]試験例1で測定した、Lipidure希釈溶液からなる固体高分子の抗油脂吸着特性を示すグラフである。
[図3]試験例3で測定した、試験電極−A及びBの電流−電位応答特性を示すグラフである。
[図2]試験例1で測定した、Lipidure希釈溶液からなる固体高分子の抗油脂吸着特性を示すグラフである。
[図3]試験例3で測定した、試験電極−A及びBの電流−電位応答特性を示すグラフである。
以下、本発明の電極及び燃料電池について、詳細に説明する。
1.電極
本発明の電極は、下記一般構造式(1)
本発明の電極は、下記一般構造式(1)
〔但し、式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基を示す。m及びnは、各々独立して2〜4の整数を示す。〕で表される単量体を構成成分として含む固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を電極基材上に有することを特徴とする。
当該単量体において、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基である。m及びnは、各々独立して2〜4の整数を示す。
単量体は、上記条件を満たす限り特に限定されないが、R4が水素原子又はメチル基であり、R1、R2及びR3が炭素数1〜8の1価の炭化水素基(特に炭素数1〜4の1価の炭化水素基)であり、m及びnが各々独立して2〜4の整数を示す単量体が好ましい。
より具体的には、R1、R2、R3及びR4が全てメチル基であり、m及びnが共に2である単量体がより好ましい。かかる単量体は、2−メタクリロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートであり、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下「MPC」とも言う)とも称される。
当該MPCは、下記構造式(3)で示される。
固体高分子は、一般構造式(1)で示される単量体のみが重合した重合体でもよく、一般構造式(1)で示される単量体とそれ以外の単量体との共重合体でもよい。
固体高分子中の一般構造式(1)で示される単量体の含有割合は限定的ではないが、60〜100重量%程度が好ましく、70〜100重量%程度がより好ましく、80〜100重量程度がさらに好ましい。
一般構造式(1)で示される単量体と共重合可能な他の単量体としては、付加重合可能な二重結合を有する化合物がある。例えば、1)エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、スチレン等のオレフィン性炭化水素,それらの異性化オレフィン、多量化オレフィン等,それらに各種誘導体を導入したオレフィン性化合物、2)アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸,それらの多量体、無水物等,それらと炭素数1〜6の多価アルコールとのエステル,それらにカルボニル基、アミノ基、シアノ基、ニトリル基等を導入したエチレン性不飽和カルボン酸誘導体、3)ビニルアルコール,これと各種カルボン酸とのエステル,これと各種アルコールとのエーテル,これらにカルボニル基、アミノ基、シアノ基、ニトリル基などを導入したビニルアルコール誘導体等、が挙げられる。
固体高分子の分子量は、10000〜10000000程度が好ましく、50000〜5000000程度がより好ましい。
固体高分子は、市販品も使用することができる。例えば、MPCが単独重合した固体高分子(但し、分子量約80000)は、商標名「Lipidure−HM−500」(日本油脂株式会社製、5%水溶液の形態)として市販されている。この固体高分子の構造式は、下記構造式(2)で示される。
nの範囲は、上記市販品の場合には、分子量約80000を満たす値であるが、MPCを単独重合させて上記固体高分子を調製する場合には広い範囲から適宜選択でき、1000〜5000000程度が好ましく、10000〜500000程度がより好ましい。
固体高分子を単量体の重合により調製する場合には、一般構造式(1)で示される単量体(及び必要に応じて他の共重合可能な単量体)をラジカル重合させればよい。
例えば、MPCを単独重合させる場合には、液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等によりラジカル重合させることができる。重合条件(温度・時間)は、所定の重合が進行する限り特に限定されないが、重合温度は0〜100℃程度、重合時間は10分〜48時間程度とすればよい。重合雰囲気は、窒素雰囲気、ヘリウム雰囲気等の不活性雰囲気が好適である。
重合開始剤としては公知のラジカル重合開始剤が使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、サクシニルパーオキサイド、グルタルパーオキサイド、サクシニルパーオキシグルタレート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート、1−((1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ)ホルムアミド、2,2´−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド)、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート、4,4´−アゾビス(2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル)等のアゾ化合物;過硫酸塩、過硫酸塩−亜硫酸水素塩系等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。なお、重合開始剤の使用量は、単量体100重量部に対して0.01〜5重量部程度が好ましい。
固体高分子を成形する際は、前述した重合法により合成したポリマーの水溶液、アルコール溶液、分散溶液等を平型、円盤型等に流して成形すればよい。必要に応じて、加熱乾燥・減圧乾燥等を組み合わせてもよい。
固体高分子は、プロトン伝導性であることが好ましい。プロトン伝導性の場合には、固体高分子を酸素還元電極の構成要素として好適に使用できる。例えば、MPC単独重合体の固体高分子(上記構造式(2)で示される固体高分子)は、良好なプロトン伝導体である。
本発明の電極は、固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を電極基材上に有する。
触媒活性粒子としては特に限定されない。例えば、アルカリ繊維活性炭、備長炭、ビール酵母活性炭等の粒子が挙げられる。これらの粒子は、酸素還元触媒能を有する。活性炭のほか、強酸性下では溶解のおそれのある二酸化マンガンも酸素還元触媒能を有する粒子として使用できる。酸素還元触媒能を有する粒子を含む触媒層を有する電極は、例えば、酸素還元電極として有用である。
触媒活性粒子の平均粒子径は限定的ではないが、0.01〜100μm程度が好ましい。
固体高分子中における触媒活性粒子の含有量は限定的ではないが、乾燥状態において、30重量%以上が好ましく、30〜50重量%程度がより好ましい。
電極基材としては、従来から公知である電極基材が使用できる。例えば、金属、酸化物、炭化物等を板状に成形した電極基材が挙げられる。
電極基材上に触媒層を形成する方法は限定的ではなく、例えば、固体高分子を適当な溶媒により溶解後、触媒活性粒子を添加・混合し、得られた懸濁液を電極基材上に塗布・乾燥する方法により形成できる。
固体高分子を溶解する溶媒としては限定的ではないが、例えば、水、アルコール(特にエタノール)等が使用できる。溶媒は、単独溶媒又は混合溶媒のいずれでもよい。
溶液中の固体高分子の濃度(溶液には触媒活性粒子は含まない)は限定的ではないが、0.01〜30重量%の範囲が好ましい。濃度が0.01重量%未満の場合には、固体高分子の量が少なすぎて所定の効果が達成できないおそれがある。濃度が30重量%を超える場合には、溶液粘度が高くなるためコーティングの際の作業性が悪く、また被膜の均一性も得難いため好ましくない。
固体高分子の溶液(触媒活性粒子を含む)は、例えば、ディッピング法、スプレー法、ローラーコーティング法、スピンコーティング法等により、電極基材に塗布できる。塗布厚みは限定的ではないが、0.5〜10μm程度が好ましい。
このような固体高分子を構成要素として含む本発明の電極は、良好な抗油脂吸着特性、抗油脂被毒特性等を具備する。
2.燃料電池
本発明の燃料電池は、上記一般構造式(1)で表される単量体を構成成分として含む固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を有する。固体高分子の説明は、前記電極の場合と同じである。固体高分子としては、MPCの単独重合体である構造式(2)で示される固体高分子が好ましい。
本発明の燃料電池は、上記一般構造式(1)で表される単量体を構成成分として含む固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を有する。固体高分子の説明は、前記電極の場合と同じである。固体高分子としては、MPCの単独重合体である構造式(2)で示される固体高分子が好ましい。
このような触媒層は、例えば、固体高分子電解質型燃料電池の場合には、固体電解質と燃料極との間(燃料極用触媒)、固体電解質と空気極との間(空気極用触媒)、又は両方に形成できる。触媒活性粒子の種類は、前述した活性炭(炭)粒子、二酸化マンガン粒子等のほか、所望の触媒能(燃料極触媒能、空気極触媒能等)に応じて多種多様な粒子から選択できる。
電極(上記燃料電池の場合には、燃料極・空気極)上に触媒層を形成する方法・条件については、前述した通りである。
本発明の燃料電池には、燃料電池の表面を上記一般構造式(1)で表される単量体を構成成分として含む固体高分子により被覆した燃料電池が含まれる。
血液中の血糖成分又は酸素を電極活物質として用いる小型の燃料電池の表面を上記固体高分子により被覆すると、体内埋め込み用燃料電池として使用できる。このような体内埋め込み用燃料電池は、例えば、ペースメーカーの駆動電源として有用である。
前述した通り、上記固体高分子は、化学的に不活性である上、良好な抗油脂吸着特性、抗油脂被毒特性等を有しているため、本発明の体内埋め込み用燃料電池は生体適合性が高い。
上記固体高分子による燃料電池表面の被覆量は限定的ではなく、固体高分子の種類、燃料電池の大きさ等に応じて適宜設定できる。
以下に実施例及び試験例を示して本発明をより詳細に説明する。
[実施例1]
(電極の作製)
実施例1では、試験電極−C、D及びEを作製した。作製手順を以下に示す。
(電極の作製)
実施例1では、試験電極−C、D及びEを作製した。作製手順を以下に示す。
電極基材として、グラッシーカーボン(直径3mm)を用意した。
触媒活性粒子として、下記の触媒活性粒子を用意した。
触媒活性粒子は、いずれも共同組合ラテスト製であり、各々160〜200メッシュに粉砕して使用した。
固体高分子材料として、商標名「Lipidure−HM−500」(日本油脂株式会社製、5%水溶液)を用意した。これをエタノールで希釈し、固体高分子含有量0.05重量%の希釈溶液(以下「Lipidure希釈溶液」と記載する)とした。
Lipidure希釈溶液からなる固体高分子(分子量約80000)の構造を次に示す。
触媒活性粒子3mgとLipidure希釈溶液200μlとを1.5mlのディスポーザブルマイクロチップ中で混合後、ホモジナイザーを用いて撹拌して懸濁液を調製した。
懸濁液を7μl採取し、グラッシーカーボンの表面に塗布・乾燥した。塗布・乾燥は3回繰り返した。
以上の工程を触媒活性粒子毎に3種類行って、試験電極C、D及びEを作製した。
(各電極の酸素還元特性)
試験電極を作用極とし、白金巻き線を補助極とし、塩化カリウムを飽和させた銀/塩化銀電極を参照極とし、純酸素ガスを30分間接触させて溶存酸素量を飽和させた0.1M水酸化ナトリウム溶液を電解液とする三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法によるサイクリックボルタモグラムにより、各電極の酸素還元特性を評価した。
(各電極の酸素還元特性)
試験電極を作用極とし、白金巻き線を補助極とし、塩化カリウムを飽和させた銀/塩化銀電極を参照極とし、純酸素ガスを30分間接触させて溶存酸素量を飽和させた0.1M水酸化ナトリウム溶液を電解液とする三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法によるサイクリックボルタモグラムにより、各電極の酸素還元特性を評価した。
具体的には、参照極に対する作用極の電位を、自然電位からマイナスの電位に向かって100mV/秒の速度で掃引した。マイナス1.5Vに到達後、今度は自然電位に向かって100mV/秒の速度で掃引した。電位掃引中は、試験電極(作用極)と補助極との間を流れる電解電流を、参照極の電位に対して記録した。その結果を図1に示す。
なお、参考のため、図1には触媒活性粒子を有しない試験電極−Fの酸素還元特性も併記した。試験電極−Fは、触媒活性粒子を用いない以外は、実施例1と同様の手順により作製した。
図1からは、試験電極−C、D及びEの酸素還元ピーク電位が、試験電極−Fと同等の電位に現れ、試験電極−C、D及びEの酸素還元ピーク電流密度が試験電極−Fに比べて大きく増大することが分かった。
具体的には、試験電極−F(破線)の酸素還元ピーク電流値が25μAに対して、試験電極−Cは51μA、試験電極−Dは56μA、試験電極−Eは55μAであり、本発明電極は、全て50μA以上であることが分かった。
この結果は、本発明電極において、固体高分子が触媒活性粒子の酸素還元触媒能を阻害しないことを示している。
また、実施例1において、触媒活性粒子を二酸化マンガン粉末(株式会社高純度化学研究所製の粉末を160〜200メッシュに粉砕した二酸化マンガン粉末)に代えて試験電極−Gを作製し、上記の酸素還元特性評価を行った。
その結果、サイクリックボルタモグラム(図示せず)からは、試験電極−Gの酸素還元ピーク電位が、試験電極−Fと同等の電位に現れ、試験電極−Gの酸素還元ピーク電流密度が試験電極−Fに比べて大きく増大することが分かった。
この結果は、本発明電極において、触媒活性粒子が活性炭の場合のみならず、二酸化マンガンの場合でも、固体高分子が触媒活性粒子の酸素還元触媒能を阻害しないことを示している。
試験例1(固体高分子の抗油脂特性)
実施例1で用いた固体高分子材料(Lipidure希釈溶液)からなる固体高分子膜について、抗油脂特性を調べた。
実施例1で用いた固体高分子材料(Lipidure希釈溶液)からなる固体高分子膜について、抗油脂特性を調べた。
試験は、水晶振動子測定法(QCM法)とした。
水晶振動子(直径25.4mm)の表面に直径13mmの金電極を蒸着した。金電極の周囲にテープマスキングをした後、ディッピング法により金電極上にLipidure希釈溶液を70.2μl/cm2の被覆率で被覆した。
pH7.4のリン酸緩衝水溶液20mlを電解液として用意した。電解液中で上記水晶振動子を振動周波数6MHz(初期値)で振動させた。振動周波数の減少度を3000秒間にわたり調べた。なお、開始900秒後に、0.5重量%オレイン酸エチル50μlを滴下した。図2に、時間(横軸)と振動周波数(縦軸)との関係を示す。なお、固体高分子の被覆をしなかった水晶振動子を用いた結果も併記する。
図2において、上側の線は固体高分子の被覆を行った水晶振動子を示し、下側の線は固体高分子の被覆をしていない水晶振動子を示す。
固体高分子の被覆をしていない水晶振動子は、オレイン酸エチルの滴下により急激に振動周波数が低下し、開始約1800秒後に一定値に落ち着いた。振動周波数の低下は、オレイン酸エチル(油脂)が金電極上に吸着されて水晶振動子の重量が増加したことが原因と考えられる。
他方、固体高分子被覆を行った水晶振動子は、オレイン酸エチルの滴下による顕著な振動周波数の低下は認められなかった。この結果は、Lipidure希釈溶液からなる固体高分子膜が、良好な抗油脂特性を有することを示している。
試験例2(固体高分子の抗被毒性)
Lipidure希釈溶液を7μl採取し、グラッシーカーボン(直径6mm)の表面に塗布・乾燥した。塗布・乾燥は3回繰り返した。これにより、試験電極−Aを作製した。
Lipidure希釈溶液を7μl採取し、グラッシーカーボン(直径6mm)の表面に塗布・乾燥した。塗布・乾燥は3回繰り返した。これにより、試験電極−Aを作製した。
また、他の固体高分子材料として、商標名「Nafion−117」(和光純薬株式会社製)を用意した。これをエタノールで希釈し、ポリマー含有量0.05重量%の希釈溶液(以下「Nafion希釈溶液」と記載する)とした。
Nafion希釈溶液を7μl採取し、グラッシーカーボン(直径6mm)の表面に塗布・乾燥した。塗布・乾燥は3回繰り返した。これにより、試験電極−Bを作製した。
試験電極−A及びBを作用極とし、白金巻き線を補助極とし、塩化カリウムを飽和させた銀/塩化銀電極を参照極とする三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法によるサイクリックボルタモグラムにより、各電極の酸素還元特性を評価した。電解液としては、pH7.4のリン酸緩衝水溶液20mlに0.5重量%オレイン酸エチル50μlを添加した電解液を使用した。
実施例1と同じ電位掃引を、1日に5回、10日間行った。
その結果、試験電極−Aを用いた場合には、全ての測定において実験開始初期と同等の酸素還元特性が示された。一方、試験電極−Bを用いた場合には、酸素還元ピーク電流値が徐々に小さくなった。
この結果は、Nafion希釈溶液からなる固体高分子膜がオレイン酸エチルにより被毒されて酸素還元に有効な電極表面積が減少したことを示している。他方、Lipidure希釈溶液からなる固体高分子膜は、オレイン酸エチルに対して良好な抗被毒性を発揮することを示している。
試験例3(固体高分子のプロトン伝導性)
試験例2で作製した試験電極−A及びBの酸素還元特性を調べた。
試験例2で作製した試験電極−A及びBの酸素還元特性を調べた。
試験電極を作用極とし、白金巻き線を補助極とし、塩化カリウムを飽和させた銀/塩化銀電極を参照極とし、純酸素ガスを30分間接触させて溶存酸素量を飽和させた0.1M水酸化ナトリウム溶液を電解液とする三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法によるサイクリックボルタモグラムにより、各電極の酸素還元特性を評価した。
具体的には、参照極に対する作用極の電位を、自然電位からマイナスの電位に向かって100mV/秒の速度で掃引した。マイナス1.2Vに到達後、今度は自然電位に向かって100mV/秒の速度で掃引した。電位掃引中は、試験電極(作用極)と補助極との間を流れる電解電流を、参照極の電位に対して記録した。その結果を図3に示す。図3中、実線が試験電極−Aの結果であり、破線が試験電極−Bの結果である。
図3では、試験電極−Aの酸素還元ピーク電位は試験電極−Bの酸素還元ピーク電位と同等又は若干プラス側に確認できた。また、試験電極−Aの酸素還元ピーク電流密度は試験電極−Bの酸素還元ピーク電位と同等又は若干増大していた。この結果は、Lipidure希釈溶液からなる固体高分子がNafion希釈溶液からなる固体高分子と同等か又はそれ以上のプロトン伝導性を有することを示している。
本発明の電極及び燃料電池は、固体高分子が化学的に不活性であり、多種多様な触媒活性粒子を担持できる。しかも、固体高分子は、良好なプロトン伝導性に加えて、良好な抗油脂吸着特性、抗油脂被毒特性等を有している。
本発明の体内埋め込み用燃料電池は、上記特性を有する固体高分子により燃料電池の表面が被覆されているため、生体適合性が高い。
本発明は、電極及び燃料電池に関する。
従来、固体高分子電解質として、高分子鎖中にスルホン酸基、カルボン酸基等のイオン交換基を有する固体高分子材料が知られている。かかる固体高分子材料は、特定のイオンと強力に結合する性質、陽イオン又は陰イオンを選択的に透過する性質等を有しており、粒子状、繊維状又は膜状に成形して電極材料、燃料電池の固体高分子電解質等として利用されている。
例えば、特許文献1には、熱処理されたフルオロカーボンスルホンアミド陽イオン交換膜を固体高分子型燃料電池の固体高分子電解質として用いることが開示されている。なお、固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に一対の電極(燃料極・空気極)を有する燃料電池であり、改質ガス等の水素を含む燃料ガスを燃料極に供給し、空気等の酸素を含む酸化性ガスを空気極に供給し、燃料が酸化する際に発生する化学エネルギーを直接電気エネルギーとして取り出す電池である。
電極材料、固体高分子型燃料電池に用いられる固体高分子膜等としては、特許文献1に記載の他に、例えば、特許文献2に示されるように、パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子体からなる膜(例えば、商標名「Nafion」、デュポン社製)が知られている。
このようなパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子体からなる固体高分子膜は、吸湿により優れたプロトン伝導性を発揮するため、電極材料、固体高分子型燃料電池用の固体高分子膜等として有用である。
特許第3444541号公報
米国特許第4168216号明細書
特開2004−014232号公報
特開昭62−195855号公報
しかしながら、パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子体は強酸性であるため、固体高分子中に触媒活性粒子を担持する場合には、粒子の種類によっては溶解する場合がある。そのため、担持可能な粒子の種類は必然的に耐酸性の高い粒子に限定される。
また、パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子体は強酸性であり生体適合性が低い。近年、血液中の血糖成分又は酸素を電極活物質として用いる小型の燃料電池(例えば、ペースメーカーの駆動電源として用いる)は開発されているが、強酸性の固体高分子を含む場合には、体内に埋め込むことは困難である。さらに、油脂成分の吸着により固体高分子表面が被毒する問題もある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされ、固体高分子中に多種多様な触媒活性粒子を担持できる電極及び燃料電池、並びに、生体適合性が高い、体内埋め込み用燃料電池を提供することを主な目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の固体高分子を採用する場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の電極及び燃料電池に係る。
1.下記一般構造式(1)
〔但し、式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基を示す。m及びnは、各々独立して2〜4の整数を示す。〕
で表される単量体を構成成分として含む固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を電極基材上に有する電極。
で表される単量体を構成成分として含む固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を電極基材上に有する電極。
2.前記固体高分子中の前記単量体の含有量が60〜100重量%である、上記項1に記載の電極。
3.前記固体高分子がプロトン伝導性である、上記項1に記載の電極。
4.前記触媒活性粒子が、アルカリ繊維活性炭、備長炭及びビール酵母活性炭からなる群から選択される1種以上である、上記項1に記載の電極。
5.前記固体高分子が、下記構造式(2)
〔但し、式中、nは1000〜5000000の整数を示す。〕
で表される、上記項1に記載の電極。
で表される、上記項1に記載の電極。
6.前記電極基材が、金属、酸化物及び炭化物からなる群から選択される1種以上である、上記項1に記載の電極。
7.前記電極が酸素還元電極である、上記項1に記載の電極。
8.R4は水素原子又はメチル基であり、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、m及びnは各々独立して2〜4の整数を示す、上記項1に記載の電極。
9.R4は水素原子又はメチル基であり、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、炭素数1〜4の1価の炭化水素基であり、m及びnは各々独立して2〜4の整数を示す、上記項1に記載の電極。
10.R1、R2、R3及びR4は全てメチル基であり、m及びnは共に2である、上記項1に記載の電極。
11.下記一般構造式(1)
〔但し、式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基を示す。m及びnは、各々独立して2〜4の整数を示す。〕
で表される単量体を構成成分として含む固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を有する燃料電池。
で表される単量体を構成成分として含む固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を有する燃料電池。
12.下記一般構造式(1)
〔但し、式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基を示す。m及びnは、各々独立して2〜4の整数を示す。〕
で表される単量体を構成成分として含む固体高分子により燃料電池の表面を被覆してなる、体内埋め込み用燃料電池。
で表される単量体を構成成分として含む固体高分子により燃料電池の表面を被覆してなる、体内埋め込み用燃料電池。
本発明の電極及び燃料電池は、固体高分子が化学的に不活性であり、多種多様な触媒活性粒子を担持できる。しかも、固体高分子は、良好なプロトン伝導性に加えて、良好な抗油脂吸着特性、抗油脂被毒特性等を有している。
本発明の体内埋め込み用燃料電池は、上記特性を有する固体高分子により燃料電池の表面が被覆されているため、生体適合性が高い。
以下、本発明の電極及び燃料電池について、詳細に説明する。
1.電極
本発明の電極は、下記一般構造式(1)
本発明の電極は、下記一般構造式(1)
〔但し、式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基を示す。m及びnは、各々独立して2〜4の整数を示す。〕
で表される単量体を構成成分として含む固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を電極基材上に有することを特徴とする。
で表される単量体を構成成分として含む固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を電極基材上に有することを特徴とする。
当該単量体において、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基である。m及びnは、各々独立して2〜4の整数を示す。
単量体は、上記条件を満たす限り特に限定されないが、R4が水素原子又はメチル基であり、R1、R2及びR3が炭素数1〜8の1価の炭化水素基(特に炭素数1〜4の1価の炭化水素基)であり、m及びnが各々独立して2〜4の整数を示す単量体が好ましい。
より具体的には、R1、R2、R3及びR4が全てメチル基であり、m及びnが共に2である単量体がより好ましい。かかる単量体は、2−メタクリロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートであり、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下「MPC」とも言う)とも称される。
当該MPCは、下記構造式(3)で示される。
固体高分子は、一般構造式(1)で示される単量体のみが重合した重合体でもよく、一般構造式(1)で示される単量体とそれ以外の単量体との共重合体でもよい。
固体高分子中の一般構造式(1)で示される単量体の含有割合は限定的ではないが、60〜100重量%程度が好ましく、70〜100重量%程度がより好ましく、80〜100重量程度がさらに好ましい。
一般構造式(1)で示される単量体と共重合可能な他の単量体としては、付加重合可能な二重結合を有する化合物がある。例えば、1)エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、スチレン等のオレフィン性炭化水素,それらの異性化オレフィン、多量化オレフィン等,それらに各種誘導体を導入したオレフィン性化合物、2)アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸,それらの多量体、無水物等,それらと炭素数1〜6の多価アルコールとのエステル,それらにカルボニル基、アミノ基、シアノ基、ニトリル基等を導入したエチレン性不飽和カルボン酸誘導体、3)ビニルアルコール,これと各種カルボン酸とのエステル,これと各種アルコールとのエーテル,これらにカルボニル基、アミノ基、シアノ基、ニトリル基などを導入したビニルアルコール誘導体等、が挙げられる。
固体高分子の分子量は、10000〜10000000程度が好ましく、50000〜5000000程度がより好ましい。
固体高分子は、市販品も使用することができる。例えば、MPCが単独重合した固体高分子(但し、分子量約80000)は、商標名「Lipidure−HM−500」(日本油脂株式会社製、5%水溶液の形態)として市販されている。この固体高分子の構造式は、下記構造式(2)で示される。
nの範囲は、上記市販品の場合には、分子量約80000を満たす値であるが、MPCを単独重合させて上記固体高分子を調製する場合には広い範囲から適宜選択でき、1000〜5000000程度が好ましく、10000〜500000程度がより好ましい。
固体高分子を単量体の重合により調製する場合には、一般構造式(1)で示される単量体(及び必要に応じて他の共重合可能な単量体)をラジカル重合させればよい。
例えば、MPCを単独重合させる場合には、液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等によりラジカル重合させることができる。重合条件(温度・時間)は、所定の重合が進行する限り特に限定されないが、重合温度は0〜100℃程度、重合時間は10分〜48時間程度とすればよい。重合雰囲気は、窒素雰囲気、ヘリウム雰囲気等の不活性雰囲気が好適である。
重合開始剤としては公知のラジカル重合開始剤が使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、サクシニルパーオキサイド、グルタルパーオキサイド、サクシニルパーオキシグルタレート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート、1−((1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ)ホルムアミド、2,2´−アゾビス(2−メチルーN−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド)、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート、4,4´−アゾビス(2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル)等のアゾ化合物;過硫酸塩、過硫酸塩−亜硫酸水素塩系等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。なお、重合開始剤の使用量は、単量体100重量部に対して0.01〜5重量部程度が好ましい。
固体高分子を成形する際は、前述した重合法により合成したポリマーの水溶液、アルコール溶液、分散溶液等を平型、円盤型等に流して成形すればよい。必要に応じて、加熱乾燥・減圧乾燥等を組み合わせてもよい。
固体高分子は、プロトン伝導性であることが好ましい。プロトン伝導性の場合には、固体高分子を酸素還元電極の構成要素として好適に使用できる。例えば、MPC単独重合体の固体高分子(上記構造式(2)で示される固体高分子)は、良好なプロトン伝導体である。
本発明の電極は、固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を電極基材上に有する。
触媒活性粒子としては特に限定されない。例えば、アルカリ繊維活性炭、備長炭、ビール酵母活性炭等の粒子が挙げられる。これらの粒子は、酸素還元触媒能を有する。活性炭のほか、強酸性下では溶解のおそれのある二酸化マンガンも酸素還元触媒能を有する粒子として使用できる。酸素還元触媒能を有する粒子を含む触媒層を有する電極は、例えば、酸素還元電極として有用である。
触媒活性粒子の平均粒子径は限定的ではないが、0.01〜100μm程度が好ましい。
固体高分子中における触媒活性粒子の含有量は限定的ではないが、乾燥状態において、30重量%以上が好ましく、30〜50重量%程度がより好ましい。
電極基材としては、従来から公知である電極基材が使用できる。例えば、金属、酸化物、炭化物等を板状に成形した電極基材が挙げられる。
電極基材上に触媒層を形成する方法は限定的ではなく、例えば、固体高分子を適当な溶媒により溶解後、触媒活性粒子を添加・混合し、得られた懸濁液を電極基材上に塗布・乾燥する方法により形成できる。
固体高分子を溶解する溶媒としては限定的ではないが、例えば、水、アルコール(特にエタノール)等が使用できる。溶媒は、単独溶媒又は混合溶媒のいずれでもよい。
溶液中の固体高分子の濃度(溶液には触媒活性粒子は含まない)は限定的ではないが、0.01〜30重量%の範囲が好ましい。濃度が0.01重量%未満の場合には、固体高分子の量が少なすぎて所定の効果が達成できないおそれがある。濃度が30重量%を超える場合には、溶液粘度が高くなるためコーティングの際の作業性が悪く、また被膜の均一性も得難いため好ましくない。
固体高分子の溶液(触媒活性粒子を含む)は、例えば、ディッピング法、スプレー法、ローラーコーティング法、スピンコーティング法等により、電極基材に塗布できる。塗布厚みは限定的ではないが、0.5〜10μm程度が好ましい。
このような固体高分子を構成要素として含む本発明の電極は、良好な抗油脂吸着特性、抗油脂被毒特性等を具備する。
2.燃料電池
本発明の燃料電池は、上記一般構造式(1)で表される単量体を構成成分として含む固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を有する。固体高分子の説明は、前記電極の場合と同じである。固体高分子としては、MPCの単独重合体である構造式(2)で示される固体高分子が好ましい。
本発明の燃料電池は、上記一般構造式(1)で表される単量体を構成成分として含む固体高分子と触媒活性粒子とを含む触媒層を有する。固体高分子の説明は、前記電極の場合と同じである。固体高分子としては、MPCの単独重合体である構造式(2)で示される固体高分子が好ましい。
このような触媒層は、例えば、固体高分子電解質型燃料電池の場合には、固体電解質と燃料極との間(燃料極用触媒)、固体電解質と空気極との間(空気極用触媒)、又は両方に形成できる。触媒活性粒子の種類は、前述した活性炭(炭)粒子、二酸化マンガン粒子等のほか、所望の触媒能(燃料極触媒能、空気極触媒能等)に応じて多種多様な粒子から選択できる。
電極(上記燃料電池の場合には、燃料極・空気極)上に触媒層を形成する方法・条件については、前述した通りである。
本発明の燃料電池には、燃料電池の表面を上記一般構造式(1)で表される単量体を構成成分として含む固体高分子により被覆した燃料電池が含まれる。
血液中の血糖成分又は酸素を電極活物質として用いる小型の燃料電池の表面を上記固体高分子により被覆すると、体内埋め込み用燃料電池として使用できる。このような体内埋め込み用燃料電池は、例えば、ペースメーカーの駆動電源として有用である。
前述した通り、上記固体高分子は、化学的に不活性である上、良好な抗油脂吸着特性、抗油脂被毒特性等を有しているため、本発明の体内埋め込み用燃料電池は生体適合性が高い。
上記固体高分子による燃料電池表面の被覆量は限定的ではなく、固体高分子の種類、燃料電池の大きさ等に応じて適宜設定できる。
以下に実施例及び試験例を示して本発明をより詳細に説明する。
実施例1
(電極の作製)
実施例1では、試験電極−C、D及びEを作製した。作製手順を以下に示す。
(電極の作製)
実施例1では、試験電極−C、D及びEを作製した。作製手順を以下に示す。
電極基材として、グラッシーカーボン(直径3mm)を用意した。
触媒活性粒子として、下記の触媒活性粒子を用意した。
触媒活性粒子は、いずれも共同組合ラテスト製であり、各々160〜200メッシュに粉砕して使用した。
固体高分子材料として、商標名「Lipidure−HM−500」(日本油脂株式会社製、5%水溶液)を用意した。これをエタノールで希釈し、固体高分子含有量0.05重量%の希釈溶液(以下「Lipidure希釈溶液」と記載する)とした。
Lipidure希釈溶液からなる固体高分子(分子量約80000)の構造を次に示す。
触媒活性粒子3mgとLipidure希釈溶液200μlとを1.5mlのディスポーザブルマイクロチップ中で混合後、ホモジナイザーを用いて撹拌して懸濁液を調製した。
懸濁液を7μl採取し、グラッシーカーボンの表面に塗布・乾燥した。塗布・乾燥は3回繰り返した。
以上の工程を触媒活性粒子毎に3種類行って、試験電極C、D及びEを作製した。
(各電極の酸素還元特性)
試験電極を作用極とし、白金巻き線を補助極とし、塩化カリウムを飽和させた銀/塩化銀電極を参照極とし、純酸素ガスを30分間接触させて溶存酸素量を飽和させた0.1M水酸化ナトリウム溶液を電解液とする三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法によるサイクリックボルタモグラムにより、各電極の酸素還元特性を評価した。
(各電極の酸素還元特性)
試験電極を作用極とし、白金巻き線を補助極とし、塩化カリウムを飽和させた銀/塩化銀電極を参照極とし、純酸素ガスを30分間接触させて溶存酸素量を飽和させた0.1M水酸化ナトリウム溶液を電解液とする三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法によるサイクリックボルタモグラムにより、各電極の酸素還元特性を評価した。
具体的には、参照極に対する作用極の電位を、自然電位からマイナスの電位に向かって100mV/秒の速度で掃引した。マイナス1.5Vに到達後、今度は自然電位に向かって100mV/秒の速度で掃引した。電位掃引中は、試験電極(作用極)と補助極との間を流れる電解電流を、参照極の電位に対して記録した。その結果を図1に示す。
なお、参考のため、図1には触媒活性粒子を有しない試験電極−Fの酸素還元特性も併記した。試験電極−Fは、触媒活性粒子を用いない以外は、実施例1と同様の手順により作製した。
図1からは、試験電極−C、D及びEの酸素還元ピーク電位が、試験電極−Fと同等の電位に現れ、試験電極−C、D及びEの酸素還元ピーク電流密度が試験電極−Fに比べて大きく増大することが分かった。
具体的には、試験電極−F(破線)の酸素還元ピーク電流値が25μAに対して、試験電極−Cは51μA、試験電極−Dは56μA、試験電極−Eは55μAであり、本発明電極は、全て50μA以上であることが分かった。
この結果は、本発明電極において、固体高分子が触媒活性粒子の酸素還元触媒能を阻害しないことを示している。
また、実施例1において、触媒活性粒子を二酸化マンガン粉末(株式会社高純度化学研究所製の粉末を160〜200メッシュに粉砕した二酸化マンガン粉末)に代えて試験電極−Gを作製し、上記の酸素還元特性評価を行った。
その結果、サイクリックボルタモグラム(図示せず)からは、試験電極−Gの酸素還元ピーク電位が、試験電極−Fと同等の電位に現れ、試験電極−Gの酸素還元ピーク電流密度が試験電極−Fに比べて大きく増大することが分かった。
この結果は、本発明電極において、触媒活性粒子が活性炭の場合のみならず、二酸化マンガンの場合でも、固体高分子が触媒活性粒子の酸素還元触媒能を阻害しないことを示している。
試験例1(固体高分子の抗油脂特性)
実施例1で用いた固体高分子材料(Lipidure希釈溶液)からなる固体高分子膜について、抗油脂特性を調べた。
実施例1で用いた固体高分子材料(Lipidure希釈溶液)からなる固体高分子膜について、抗油脂特性を調べた。
試験は、水晶振動子測定法(QCM法)とした。
水晶振動子(直径25.4mm)の表面に直径13mmの金電極を蒸着した。金電極の周囲にテープマスキングをした後、ディッピング法により金電極上にLipidure希釈溶液を70.2μl/cm2の被覆率で被覆した。
pH7.4のリン酸緩衝水溶液20mlを電解液として用意した。電解液中で上記水晶振動子を振動周波数6MHz(初期値)で振動させた。振動周波数の減少度を3000秒間にわたり調べた。なお、開始900秒後に、0.5重量%オレイン酸エチル50μlを滴下した。図2に、時間(横軸)と振動周波数(縦軸)との関係を示す。なお、固体高分子の被覆をしなかった水晶振動子を用いた結果も併記する。
図2において、上側の線は固体高分子の被覆を行った水晶振動子を示し、下側の線は固体高分子の被覆をしていない水晶振動子を示す。
固体高分子の被覆をしていない水晶振動子は、オレイン酸エチルの滴下により急激に振動周波数が低下し、開始約1800秒後に一定値に落ち着いた。振動周波数の低下は、オレイン酸エチル(油脂)が金電極上に吸着されて水晶振動子の重量が増加したことが原因と考えられる。
他方、固体高分子被覆を行った水晶振動子は、オレイン酸エチルの滴下による顕著な振動周波数の低下は認められなかった。この結果は、Lipidure希釈溶液からなる固体高分子膜が、良好な抗油脂特性を有することを示している。
試験例2(固体高分子の抗被毒性)
Lipidure希釈溶液を7μl採取し、グラッシーカーボン(直径6mm)の表面に塗布・乾燥した。塗布・乾燥は3回繰り返した。これにより、試験電極−Aを作製した。
Lipidure希釈溶液を7μl採取し、グラッシーカーボン(直径6mm)の表面に塗布・乾燥した。塗布・乾燥は3回繰り返した。これにより、試験電極−Aを作製した。
また、他の固体高分子材料として、商標名「Nafion−117」(和光純薬株式会社製)を用意した。これをエタノールで希釈し、ポリマー含有量0.05重量%の希釈溶液(以下「Nafion希釈溶液」と記載する)とした。
Nafion希釈溶液を7μl採取し、グラッシーカーボン(直径6mm)の表面に塗布・乾燥した。塗布・乾燥は3回繰り返した。これにより、試験電極−Bを作製した。
試験電極−A及びBを作用極とし、白金巻き線を補助極とし、塩化カリウムを飽和させた銀/塩化銀電極を参照極とする三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法によるサイクリックボルタモグラムにより、各電極の酸素還元特性を評価した。電解液としては、pH7.4のリン酸緩衝水溶液20mlに0.5重量%オレイン酸エチル50μlを添加した電解液を使用した。
実施例1と同じ電位掃引を、1日に5回、10日間行った。
その結果、試験電極−Aを用いた場合には、全ての測定において実験開始初期と同等の酸素還元特性が示された。一方、試験電極−Bを用いた場合には、酸素還元ピーク電流値が徐々に小さくなった。
この結果は、Nafion希釈溶液からなる固体高分子膜がオレイン酸エチルにより被毒されて酸素還元に有効な電極表面積が減少したことを示している。他方、Lipidure希釈溶液からなる固体高分子膜は、オレイン酸エチルに対して良好な抗被毒性を発揮することを示している。
試験例3(固体高分子のプロトン伝導性)
試験例2で作製した試験電極−A及びBの酸素還元特性を調べた。
試験例2で作製した試験電極−A及びBの酸素還元特性を調べた。
試験電極を作用極とし、白金巻き線を補助極とし、塩化カリウムを飽和させた銀/塩化銀電極を参照極とし、純酸素ガスを30分間接触させて溶存酸素量を飽和させた0.1M水酸化ナトリウム溶液を電解液とする三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法によるサイクリックボルタモグラムにより、各電極の酸素還元特性を評価した。
具体的には、参照極に対する作用極の電位を、自然電位からマイナスの電位に向かって100mV/秒の速度で掃引した。マイナス1.2Vに到達後、今度は自然電位に向かって100mV/秒の速度で掃引した。電位掃引中は、試験電極(作用極)と補助極との間を流れる電解電流を、参照極の電位に対して記録した。その結果を図3に示す。図3中、実線が試験電極−Aの結果であり、破線が試験電極−Bの結果である。
図3では、試験電極−Aの酸素還元ピーク電位は試験電極−Bの酸素還元ピーク電位と同等又は若干プラス側に確認できた。また、試験電極−Aの酸素還元ピーク電流密度は試験電極−Bの酸素還元ピーク電位と同等又は若干増大していた。この結果は、Lipidure希釈溶液からなる固体高分子がNafion希釈溶液からなる固体高分子と同等か又はそれ以上のプロトン伝導性を有することを示している。
本発明の電極及び燃料電池は、固体高分子が化学的に不活性であり、多種多様な触媒活性粒子を担持できる。しかも、固体高分子は、良好なプロトン伝導性に加えて、良好な抗油脂吸着特性、抗油脂被毒特性等を有している。
本発明の体内埋め込み用燃料電池は、上記特性を有する固体高分子により燃料電池の表面が被覆されているため、生体適合性が高い。
本発明は、電極に関する。
本発明は、かかる点に鑑みてなされ、固体高分子中に多種多様な触媒活性粒子を担持できる電極を提供することを主な目的とする。
即ち、本発明は、下記の電極に係る。
本発明の電極は、固体高分子が化学的に不活性であり、多種多様な触媒活性粒子を担持できる。しかも、固体高分子は、良好なプロトン伝導性に加えて、良好な抗油脂吸着特性、抗油脂被毒特性等を有している。
以下、本発明の電極について、詳細に説明する。
本発明の電極は、固体高分子が化学的に不活性であり、多種多様な触媒活性粒子を担持できる。しかも、固体高分子は、良好なプロトン伝導性に加えて、良好な抗油脂吸着特性、抗油脂被毒特性等を有している。
Claims (12)
- 前記固体高分子中の前記単量体の含有量が60〜100重量%である、請求項1に記載の電極。
- 前記固体高分子がプロトン伝導性である、請求項1に記載の電極。
- 前記触媒活性粒子が、アルカリ繊維活性炭、備長炭及びビール酵母活性炭からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の電極。
- 前記電極基材が、金属、酸化物及び炭化物からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の電極。
- 前記電極が酸素還元電極である、請求項1に記載の電極。
- R4は水素原子又はメチル基であり、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、m及びnは各々独立して2〜4の整数を示す、請求項1に記載の電極。
- R4は水素原子又はメチル基であり、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、炭素数1〜4の1価の炭化水素基であり、m及びnは各々独立して2〜4の整数を示す、請求項1に記載の電極。
- R1、R2、R3及びR4は全てメチル基であり、m及びnは共に2である、請求項1に記載の電極。
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