JPWO2005091677A1 - マルチチャンネルシステム同定装置 - Google Patents

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Abstract

マルチチャンネルシステム同定装置は、接続部から取得した信号に基づいて同定誤差が最小となるように第1適応アルゴリズムによってFIRフィルタの係数を更新する係数更新部を備える。第1適応アルゴリズムにおいて、n番目の入力チャンネルからm番目の出力チャンネル至る時刻j+1におけるFIRフィルタの係数ベクトルHnmj+1が、時刻jにおける係数ベクトルHnmjに更新ベクトルを加算することによって作成される。更新ベクトルは、分子ベクトルを正規化分母で除し、ステップサイズを乗ずることによって作成される。分子ベクトルは、第2ベクトルに、m番目の出力チャンネルにおける同定誤差Emjを乗ずることによって、作成される。正規化分母は、第1ベクトルと第2ベクトルとの内積の、入力チャンネルについての累積加算値に基づいて定められる。第1ベクトルは、各入力チャンネルの入力信号ベクトルXnjである。第2ベクトルは、各入力チャンネルの入力信号ベクトルXnjに基づいて定められるベクトルである。

Description

この出願に係る発明は、特性が未知である複数の伝搬路が組み合わされることによって構成されるマルチチャンネル系を同定する、マルチチャンネルシステム同定装置に関する。
図1aはマルチチャンネル系(マルチチャンネルシステム)のモデル図である。図1aに示されるマルチチャンネル系は、マルチチャンネル系のなかでも、その構造が最も簡単な、2の入力チャンネルと2の出力チャンネルとを有する系である。
図1aにおいて、X はマルチチャンネル系の1番目の入力チャンネルに入力される入力信号、X は2番目の入力チャンネルに入力される入力信号、Y はマルチチャンネル系の1番目の出力チャンネルに出力される出力信号、Y は2番目の出力チャンネルに出力される出力信号、N は1番目の出力チャンネルに混入される外乱信号、N は2番目の出力チャンネルに混入される外乱信号である。
また、h11は1番目の入力チャンネルから1番目の出力チャンネルまでの伝播路のインパルス応答、h12は1番目の入力チャンネルから2番目の出力チャンネルまでの伝播路のインパルス応答、h22は2番目の入力チャンネルから2番目の出力チャンネルまでの伝播路のインパルス応答、h21は2番目の入力チャンネルから1番目の出力チャンネルまでの伝播路のインパルス応答である。
例えば、左右のスピーカと左右のマイクロホンを含む音響空間もマルチチャンネル系の一種である。図1aがこのような音響空間を示しているとすれば、X は右チャンネルのスピーカ出力信号、X は左チャンネルのスピーカ出力信号、Y は右チャンネルのマイクロホン出力信号、Y は左チャンネルのマイクロホン出力信号、N は右チャンネルのマイクロホンに混入する外乱信号(近端話者音声を含む)、N は左チャンネルのマイクロホンに混入する外乱信号であると考えることもできる。
図1aに示されるように、マルチチャンネル系ではその出力側において各伝播路の信号が混合される。
このようなマルチチャンネル系を同定するための同定装置が、従来より提案されている。このような同定装置は、例えば、マルチチャンネル能動騒音制御やステレオエコーキャンセラに適用される。
マルチチャンネルシステム同定装置はマルチチャンネル系の個々の伝搬路を同定する。マルチチャンネルシステム同定装置がマルチチャンネル系の個々の伝播路を同定する際には、他の伝播路からの信号が外乱として作用する。この外乱は、同定の精度を低下させる。また、入力信号X と入力信号X の間に相関がある場合、この相関が、同定装置の同定性能を劣化させる。
本願発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、マルチチャンネル系に外乱信号が混入する場合でも高い精度でマルチチャンネル系を同定することができるマルチチャンネルシステム同定装置を提供すること、および、各伝播路に入力される入力信号間に相関がある場合にも同定性能が劣化しないようなマルチチャンネルシステム同定装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、この出願発明に係るマルチチャンネルシステム同定装置は、複数の入力チャンネルと複数の出力チャンネルとを有するマルチチャンネル系を同定する、マルチチャンネルシステム同定装置であって、該マルチチャンネル系の入力チャンネルと出力チャンネルとに接続することができる接続部と、該マルチチャンネル系の各入力チャンネルから各出力チャンネルに至るインパルス応答をそれぞれ模擬する係数更新可能なFIRフィルタと、該接続部から取得した信号に基づいて同定誤差が最小となるように第1適応アルゴリズムによって該FIRフィルタの係数を更新する係数更新部とを備え、該第1適応アルゴリズムにおいて、n番目の入力チャンネルからm番目の出力チャンネル至る時刻j+1におけるFIRフィルタの係数ベクトルHnm j+1が、時刻jにおける係数ベクトルHnm に更新ベクトルを加算することによって作成され、該更新ベクトルは、分子ベクトルを正規化分母で除し、ステップサイズを乗ずることによって作成され、該分子ベクトルは、第2ベクトルに、m番目の出力チャンネルにおける同定誤差E を乗ずることによって、作成され、該正規化分母は、第1ベクトルと第2ベクトルとの内積の、入力チャンネルについての累積加算値に基づいて定められ、該第1ベクトルは、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX であり、該第2ベクトルは、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX に基づいて定められるベクトルである。
上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、該正規化分母が該累積加算値であってもよい。
また上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、該第1適応アルゴリズムが、ブロック実行型の適応アルゴリズムに修正されたものであってもよい。
また上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、該正規化分母が所定値に達するまでブロック長が延長され、該正規化分母が該所定値に達したときに該係数ベクトルHnm が更新されるようにしてもよい。
また上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、該第2ベクトルが、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX であってもよい。
また上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、該第2ベクトルは、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX を、他の入力チャンネルの入力信号ベクトルとの相互相関成分が少なくなるように修正することによって得られるベクトルX’ であってもよい。
また上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、該第2ベクトルが、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX を、相関低減係数rを用いた次の式(1)に従って修正することによって得られるベクトルX’ であってもよい。
Figure 2005091677
また上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、相関低減係数rがr(O)からr(T)まで用意され、該第2ベクトルが、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX を、相関低減係数r(t)を用いた次の式(2)に従って修正することによって得られるベクトルX’ であってもよい。
Figure 2005091677
また上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、相関低減係数rが第2適応アルゴリズムによって更新され、該第2適応アルゴリズムにおいて、参照信号として各入力チャンネルの入力信号ベクトルX が用いられ、X’ が最小化されるように、相関低減係数rが更新されるようにしてもよい。
また、本願発明のもうひとつのマルチチャンネルシステム同定装置は、複数の入力チャンネルと複数の出力チャンネルとを有するマルチチャンネル系を同定する、マルチチャンネルシステム同定装置であって、該マルチチャンネル系の入力チャンネルと出力チャンネルとに接続することができる接続部と、該マルチチャンネル系の各入力チャンネルから各出力チャンネルに至るインパルス応答をそれぞれ模擬する係数更新可能なFIRフィルタと、該接続部から取得した信号に基づいて同定誤差が最小となるように第1適応アルゴリズムによって該FIRフィルタの係数を更新する係数更新部とを備え、該第1適応アルゴリズムにおいて、n番目の入力チャンネルからm番目の出力チャンネル至る時刻j+1におけるFIRフィルタの係数ベクトルHnm j+1が、時刻jにおける係数ベクトルHnm に更新ベクトルを加算することによって作成され、該更新ベクトルは、分子ベクトルを正規化分母で除し、ステップサイズを乗ずることによって作成され、該分子ベクトルは、第2ベクトルに、m番目の出力チャンネルにおける同定誤差E を乗ずることによって、作成され、該正規化分母は、第1ベクトルと第2ベクトルとの内積であり、該第1ベクトルは、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX であり、該第2ベクトルは、相関低減係数rを用いた次の式(3)に従い、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX 他の入力チャンネルの入力信号ベクトルとの相互相関成分が少なくなるように修正することによって得られるベクトルX’ であり、該相関低減係数rが第2適応アルゴリズムによって更新され、該第2適応アルゴリズムにおいて、参照信号として各入力チャンネルの入力信号ベクトルX が用いられ、該式(3)式のX’ が最小化されるように、該相関低減係数rが更新される。
Figure 2005091677
上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、ρをステップサイズとしたとき、時刻jにおける相関低減係数rが、次の式(4)で示される第2適応アルゴリズムに従って、時刻j+1における相関低減係数rj+1に更新されるようにしてもよい。
Figure 2005091677
また上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、ρをステップサイズとしたとき、時刻jにおける相関低減係数rが、次の式(5)で示される第2適応アルゴリズムに従って、時刻j+1における相関低減係数rj+1に更新されるようにしてもよい。
Figure 2005091677
また上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、該第2適応アルゴリズムがブロック実行型に修正されたものであってもよい。
また上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、該正規化分母が所定値に達するまでブロック長が延長され、該正規化分母が該所定値に達したときに相関低減係数rが更新されるようにしてもよい。
また上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、ρをステップサイズとしたとき、時刻jにおける相関低減係数rが、次の式(6)で示される第2適応アルゴリズムに従って、時刻j+1における相関低減係数rj+1に更新されるようにしてもよい。
Figure 2005091677
また上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、該第2適応アルゴリズムがブロック実行型に修正されたものであってもよい。
また上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、該第2ベクトルが、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX を、自己相関成分が少なくなるように修正し、かつ、他の入力チャンネルの入力信号ベクトルとの相互相関成分が少なくなるようにさらに修正することによって得られるベクトルであってもよい。
また上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、該第2ベクトルは、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX が自己相関成分が少なくなるように相関低減係数cを用いた次の式(7)に従って第1修正ベクトルに修正され、さらに、他の入力チャンネルとの相互相関成分が少なくなるように相関低減係数rを用いた次の式(8)に従って修正されたベクトルであり、相関低減係数cが第3適応アルゴリズムによって更新され、該第3適応アルゴリズムにおいて、式(7)中の第1修正ベクトルX’n が最小化されるように相関低減係数cが更新され、相関低減係数rが第4適応アルゴリズムによって更新され、該第4適応アルゴリズムにおいて、式(8)中のベクトルD が最小化されるように相関低減係数rが更新されるようにしてもよい。
Figure 2005091677
Figure 2005091677
また上記のマルチチャンネルシステム同定装置において、時刻jにおける相関低減係数cが、次の式(9)に従って、時刻j+1における相関低減係数cj+1に更新され、時刻jにおける相関低減係数rが、次の式(10)に従って、時刻j+1における相関低減係数rj+1に更新されるようにしてもよい。
Figure 2005091677
Figure 2005091677
本願発明によれば、マルチチャンネル系に外乱信号が混入する場合でも高い精度でマルチチャンネル系を同定することができる。また、各伝播路に入力される入力信号間に相関がある場合にも同定性能が劣化しない。
図1aは、チャネル数が2であるマルチチャネルシステムの概略構成図である。 図1bは、チャネル数が2であるマルチチャネルシステムと、このマルチチャンネルシステムを同定するマルチチャンネル同定想定の概略構成図である。 図2は、収束条件の検証を示す図である。 図3は、従来法(NLMS法)との性能比較を示す図である。 図4は、相関低減法におるr 21の収束変化を示す図である。 図5は、同定誤差の発散の様子を示す図である。 図6は、rin 更新アルゴリズム改善後の同定誤差の様子を示す図である。 図7は、H11 〜H41 の収束の様子を示す図である。 図8は、図7の初期部分を拡大して示す図である。 図9は、相関低減係数の収束特性を示す図である。 図10は、H11 の収束の様子(有色雑音の場合)を示す図である。 図11は、シミュレーション結果を示す図である。
以下、図面を参照しつつ、本願発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
本願発明のマルチチャンネルシステム同定装置が適用されるマルチチャンネル系は、複数の入力チャンネルと複数の出力チャンネルとを有するような任意の系に対して適用することができる。
例えば、入力チャンネル数が2のマルチチャンネル系にも適用可能であるし、入力チャンネル数が3以上のマルチチャンネル系にも適用可能である。また、出力チャンネル数が2のマルチチャンネル系にも適用可能であるし、出力チャンネル数が3以上のマルチチャンネル系にも適用可能である。さらに、入力チャンネル数が出力チャンネル数と同じであるようなマルチチャンネル系にも適用可能であるし、入力チャンネル数が出力チャンネル数と異なるようなマルチチャンネル系にも適用可能である。
図1a、図1bでは、理解の容易化のために、マルチチャンネル系のなかでも、その構造が最も簡単な、2の入力チャンネルと2の出力チャンネルとを有するマルチチャンネル系を示している。
前述したとおり、図1aはマルチチャンネル系(マルチチャンネルシステム)のモデル図である。マルチチャンネル系は未知系である。
このマルチチャンネル系の入力チャンネル数Nは2である。また、その出力チャンネル数Mは2である。
ここでは、入力側のチャンネル番号を「n」で示し(n=1,2,・・・,N)、出力側のチャンネル番号を「m」で示す(m=1,2,・・・,M)。例えば、マルチチャンネル系のn番目の入力チャンネルに入力される入力信号(入力信号ベクトル)をX で示し、m番目の出力チャンネルに出力される出力信号(出力信号ベクトル)をY で示す。なお、「j」は時刻を表すサンプルタイムインデックスである。
マルチチャンネル系は、入力チャンネルn(n=1,2)から出力チャンネルm(m=1,2)に至る4の伝搬路Rnm(R11,R12,R21,R22)と、加算器11,12,13,14等によってモデル化されている。
図1aにおいて、X はマルチチャンネル系の1番目の入力チャンネルに入力される入力信号、X は2番目の入力チャンネルに入力される入力信号、Y はマルチチャンネル系の1番目の出力チャンネルに出力される出力信号、Y は2番目の出力チャンネルに出力される出力信号、N は1番目の出力チャンネルに混入される外乱信号、N は2番目の出力チャンネルに混入される外乱信号である。
11は1番目の入力チャンネルから1番目の出力チャンネルまでの伝播路R11のインパルス応答、h12は1番目の入力チャンネルから2番目の出力チャンネルまでの伝播路R12のインパルス応答、h22は2番目の入力チャンネルから2番目の出力チャンネルまでの伝播路R22のインパルス応答、h21は2番目の入力チャンネルから1番目の出力チャンネルまでの伝播路R21のインパルス応答である。
入力チャンネル1の入力信号X は、伝搬路R11と伝搬路R12とに入力される。入力チャンネル2の入力信号X は、伝搬路R22と伝搬路R21とに入力される。
伝搬路R11の出力信号と伝搬路R21の出力信号は、加算器11で混合される。伝搬路R12の出力信号と伝搬路R22の出力信号は、加算器12で混合される。
加算器11の出力信号には、出力チャンネル1におけるノイズ信号N が、加算器13において混入される。加算器12の出力信号には、出力チャンネル2におけるノイズ信号N が、加算器14において混入される。
そして、加算器13の出力信号が、マルチチャンネル系の出力チャンネル1の出力信号Y として出力される。また、加算器14の出力信号が、マルチチャンネル系の出力チャンネル2の出力信号Y として出力される。
図1bは、マルチチャンネル系S0とマルチチャンネルシステム同定装置Wとを示すブロック図である。
マルチチャンネルシステム同定装置Wは、未知系たるマルチチャンネル系S0を同定するために、マルチチャンネル系S0に接続されている。
マルチチャンネルシステム同定装置Wは、マルチチャンネル系S0の入力チャンネルと出力チャンネルとに接続されている。
マルチチャンネルシステム同定装置Wは、マルチチャンネル系S0の入力チャンネルの入力信号を参照信号として入力している。また、マルチチャンネルシステム同定装置Wは、マルチチャンネル系S0の出力チャンネルの出力信号も入力している。
例えば、マルチチャンネル系S0の入出力チャンネルの信号が電気信号である場合は、マルチチャンネルシステム同定装置Wは電気信号入力端子を接続部として用いることによって、マルチチャンネル系S0の入出力チャンネルの電気信号を入力することができる。
また、例えば、マルチチャンネル系S0の入出力チャンネルの信号が音響信号である場合は、マルチチャンネルシステム同定装置Wはマイクロホンを接続部として用いることによって、マルチチャンネル系S0の入出力チャンネルの音響信号を入力することができる。
マルチチャンネルシステム同定装置Wは、入力したこれら信号を信号ベクトルとして扱って演算する。(以下では、信号ベクトルを単に信号と呼ぶことがある。)
マルチチャンネルシステム同定装置Wは、模擬系S1と係数更新部Cと減算部15,16とを有する。
模擬系S1はマルチチャンネル系S0を模擬する系である。よって、模擬系S1の入力チャンネル数は、マルチチャンネル系S0と同じである。また、模擬系S1の出力チャンネル数も、マルチチャンネル系S0と同じである。
模擬系S1は、入力チャンネルn(n=1,2)から出力チャンネルm(m=1,2)に至る4のFIR型のフィルタFnm(F11,F12,F21,F22)と、加算器17,18等によって構成される。「Hnm」は、フィルタFnmの係数(係数ベクトル)である。
入力信号X は、フィルタF11とフィルタF12とに入力される。入力信号X は、フィルタF22とフィルタF21とに入力される。フィルタF11の出力信号とフィルタF21の出力信号は、加算器17で混合される。フィルタF12の出力信号とフィルタF22の出力信号は、加算器18で混合される。
そして、減算器15において、マルチチャンネル系の出力信号Y から加算器17の出力信号Q が差し引かれることによって、1番目の出力チャンネルの同定誤差信号(推定誤差信号)E が生成される。
また、減算器16において、マルチチャンネル系の出力信号Y から加算器18の出力信号Q が差し引かれることによって、2番目の出力チャンネルの同定誤差信号(推定誤差信号)E が生成される。
係数更新部Cには、入力信号X ,入力信号X ,同定誤差信号E ,同定誤差信号E が入力される。係数更新部Cは、これら信号を使って演算を行い、その演算結果に基づいてフィルタFnmの係数Hnmを更新する。
係数更新部Cは、適応アルゴリズムを用いて、同定誤差信号E が0に近づくように、フィルタFnm係数Hnmを更新する。このようにして、係数Hnmがインパルス応答hnmに同定されてゆく。
以上、図1a,図1bを参照しつつ、マルチチャンネル系S0と、マルチチャンネルシステム同定装置Wとの概略的な構成を説明した。
上述したようなマルチチャネル同定装置においては、個々の伝播路を同定する際に、他の伝播路からの信号が外乱となることが問題となる。この外乱は当然ながらシステム同定の精度を低下させる。したがって、マルチチャネルシステムにおいては、全伝播路に対する同定誤差が同時に減少することが収束の条件となる。
説明を簡単にするため、外乱(図1a,図1bに示すN やN )を無視し、システムを構成する入力チャネル数をNとして、その出力チャネルの一つ、例えばチャネルmに集まるN個の未知経路に並列接続される適応フィルタの係数Hnm (n=1,2,・・・,N)を、次の式(1−1)で示される学習同定法によって更新するとする。
Figure 2005091677
ここで、μはステップサイズ、X は時刻jにおいて入力チャネルnに印加される参照信号ベクトル、E は出力チャネルmにおける同定誤差で
Figure 2005091677
である。また、hnmはチャネルnからmへ回り込む未知経路のインパルス応答である。
このように適応アルゴリズムとして学習同定法を用いる場合、その未知経路nmに関して生じる同定誤差は
Figure 2005091677
と表される。さらに、この同定誤差の収束は、通常、2乗誤差について論じられる。2乗誤差を表すと、
Figure 2005091677
と書ける。この結果から、右辺第2項と第3項の和が負となるときにチャネルnからmに至る未知経路の同定に関して誤差が発散しないと分かる。
この式(1−4)は、チャネルnからmに至る未知経路の同定に関する誤差の推移を表している。しかし、そのチャネルmに回り込む未知経路は実際にはN本ある。マルチチャネルシステム同定においては、その誤差が全未知経路について増加しないことが求められる。その条件は係数H1m ,H2m ,・・・,HNm に生じる同定誤差の2乗和が減少傾向にあるときに満たされる。すなわち、マルチチャネルシステムにおいて誤差が発散しない条件は
Figure 2005091677
において
Figure 2005091677
となるときであると定式化される。しかし、この結果は設計条件としては使い難い。可能ならば、その条件はステップサイズの範囲として与えることが望ましい。
従来は、この条件をステップサイズの範囲として定式化するために、
(a)参照信号のパワーが全て等しい場合
(b)参照信号のパワーが異なる場合
とに分けて、そのそれぞれについて条件を定式化していた(例えば、「藤井健作,前田大輝,棟安実治,“マルチチャネルシステム同定アルゴリズムにおける収束条件に関する検討,”2002春季日本音響学会講演論文集,3−4−18,pp.637−638(2002−03)」参照。以下、この文献を「文献1」という)。
その条件は、前者では全参照信号のパワーが等しく、
Figure 2005091677
と近似できるとして導かれている。この場合、式(1−6)の左辺はまず
Figure 2005091677
と変形される。さらに、式(1−2)から
Figure 2005091677
が成り立つので、式(1−8)は
Figure 2005091677
と整理される。加えて
Figure 2005091677
であることから、これを式(1−10)に適用することで
Figure 2005091677
が得られる。すなわち、参照信号のパワーが全て等しい場合において同定誤差が発散しない条件はμ>0を適用することで最終的に
Figure 2005091677
と得られる。
問題は、実システムにおいて参照信号のパワーは全チャネルで異なることが十分に想定されることである。したがって、上記(a)の条件が適用できる範囲は狭い。
そこで、より一般的な場合にも適用できるように、参照信号のパワーはチャネルごとに異なる場合として上記(b)が導かれた。この場合、仮想的な参照信号X が導入され、そのパワーを基準として各参照信号のパワーがP倍になるとして導かれる。すなわち、
Figure 2005091677
が成り立つものとすれば、同定誤差が発散しない条件は式(1−6)にX >0を適用して
Figure 2005091677
と得られる。
一方、同定誤差の収束値は、適応アルゴリズムを学習同定法とした場合、外乱と参照信号のパワー比とステップサイズの関数として定式化されている。このことは、参照信号のパワーがチャネルごとに異なる場合においてステップサイズを同一とすれば同定誤差の収束値は未知経路ごとに異なることを意味する。通常、同定誤差の収束値は全未知経路に対して同一となるように設計されると考えるのが妥当である。上記(b)は、その条件の下に誤差が発散しないステップサイズの範囲が導かれている。
それは、同定誤差に最大3dBの差が生じることを許容して
Figure 2005091677
となる近似をおいて行われる。この場合、参照信号X に適用するステップサイズμを基準として各ステップサイズを
Figure 2005091677
と与えることで同定誤差はほぼ同じ値に収束することとなる。さらに、この関係から同定誤差が発散しない条件は式(1−15)を構成するステップサイズμをμと置き換えて累積和内に移すことによって
Figure 2005091677
が負になるときとして定式化できる。すなわち、上式から
Figure 2005091677
であり、μ>0であることから
Figure 2005091677
あるいは
Figure 2005091677
が誤差が発散しない条件として得られる。ここで、全ての参照信号のパワーが等しい場合はP=1,μ=μとなることから、式(1−21)は式(1−13)に一致する。
この(b)の場合における条件として導かれた式(1−21)から、システムを安定動作させるためには参照信号のパワーによってステップサイズを制御する必要があること、さらに、この式(1−21)の導出過程から、そのステップサイズもチャネルごとに個別に制御する必要があり、左右のチャネルで激しく変動するステレオエコーキャンセラのようなシステムには適用が困難であることがわかる。
この課題を解決するため、上記(a)と(b)の場合における条件導出の元となった式を見直す。すなわち、
Figure 2005091677
において条件の導出が(a)と(b)に分けられた理由は、参照信号のパワーに対応する「X 」がチャネルごとに異なる点にある。式(1−22)の分母に与える「X 」が全チャネルに共通となるようにすれば、このような場合分けは不要となる。本発明では、その共通化を適応アルゴリズムの修正によって行うことを考える。すなわち、学習同定法を
Figure 2005091677
と変形するのである。
式(1−23)において、「E 」は分子ベクトルに相当し、「X 」は第1ベクトルと第2ベクトルに相当する。
この場合、未知経路nmに関して生じる同定誤差は
Figure 2005091677
と書き換えられる。さらに、この2乗誤差は
Figure 2005091677
と書ける。ここで、「Σn=1 」は全チャネルに共通しているので、
Figure 2005091677
とおくことができる。すなわち、
Figure 2005091677
である。この式(1−27)は、チャネルnからmに至る未知経路の同定に関する誤差の推移を表している。しかし、そのチャネルmに回り込む未知経路は実際にはN本ある。マルチチャネルシステム同定においては、その誤差が全未知経路について増加しないことが求められる。その条件は係数H1m ,H2m ,・・・,HNm に生じる同定誤差の2乗和が減少傾向にあるときに満たされる。すなわち、マルチチャネルシステムにおいて誤差が発散しない条件は
Figure 2005091677
に式(1−26)と式(1−2)を適用して、第2項と第3項が
Figure 2005091677
と整理され、(E )≧0とP>0より
Figure 2005091677
と収束条件は単純化される。
実際のシステムは各チャネル間の参照信号間には相関がある。この場合、その相関が強いときにはシステム同定が困難となる場合がある。そこで、以下のアルゴリズムが提案されている。
Figure 2005091677
ただし、X’ はm≠nのチャネルに印加される参照信号X に定数rmnを乗じてチャネルnに印加される参照信号X に含まれる参照信号X の相関成分を低減した信号で以下のように定義される、
Figure 2005091677
である。この式(1−32)は、式(1)に対応する。このアルゴリズムによれば参照信号間に相関が強くあっても適応フィルタの係数が高速に収束することが示されている(「前田大輝,藤井健作,棟安実治,“マルチチャネル適応アルゴリズムの一提案とその解析,”電子情報通信学会和文論文誌(A),vol.J87−A,No.2,pp.180−189(2004−02)」参照。以下、この文献を「文献2」という。)
このアルゴリズムにおいても本発明は同様に適用することができ、
Figure 2005091677
に対して、2乗誤差を
Figure 2005091677
とおく。さらに、
Figure 2005091677
とおけば、
Figure 2005091677
となる。次いで、チャネルmに回り込む未知経路は実際にはN本あることを考慮して、
Figure 2005091677
に式(1−2)と
Figure 2005091677
を代入して
Figure 2005091677
が得られる。すなわち、推定誤差が増加しない条件は
Figure 2005091677
と整理され、
Figure 2005091677
Figure 2005091677
のように収束条件は単純化される。ここで、式(1−42)の収束条件は文献2で与えられている条件と同様の性格をもつ条件である。
本実施形態によれば、係数更新ベクトルを正規化する分母を全チャネルについての総和として与えることによって収束条件が単純なステップサイズの範囲として与えられ、安定動作の確保が容易となる。また、実施例から明らかなように、その正規化分母に制限がないことに注意が必要である。
(第2の実施形態)
上記において、図1a,図1bを参照しつつ、マルチチャンネル系(マルチチャンネルシステム)とマルチチャンネルシステム同定装置の概略構成を説明した。
マルチチャンネルシステム同定装置が適用される装置として、ステレオエコーキャンセラがよく知られている。図1bのマルチチャネル同定装置Wがステレオエコーキャンセラであるとすれば、図1a,図1bにおけるX は例えば右チャネルのスピーカから出力される信号に対応する。ただし、jは時刻である。同様に、X は左チャネルのスピーカ出力、Y は右チャネルのマイクロホン出力、Y は左チャネルのマイクロホン出力、N は右チャネルのマイクロホンに混入する外乱(近端話者音声を含む)、N は左チャネルのマイクロホンに混入する外乱に対応する。
図1aのシステムにおいて、右チャネルのスピーカから出力された信号はインパルス応答がh11の伝播路を経て右チャネルのマイクロホンに達すると同時に、インパルス応答がh12の伝播路を通って左チャネルのマイクロホンにも達する。同様に、左チャネルのスピーカから出力された信号はインパルス応答がh22の伝播路を経て左チャネルのマイクロホンに達すると同時に、インパルス応答がh21の伝播路を通って右チャネルのマイクロホンにも達する。このようにマルチチャネルシステムでは、その出力側において各伝播路の出力が混合して受信される。
このようなマルチチャネル同定装置においては、入力信号X と入力信号X の間の相関が個々の伝播路の同定を困難とする。
例えば、ステレオエコーキャンセラにおいては、左右のマイクロホンの中央に座った話者が発話し、その結果として左右のマイクロホン出力が完全に同一となることもありうる。この場合、X =X となって個々の伝播路の同定が不可能となることは明らかである。このように極端な例でなくてもステレオエコーキャンセラにおいては左右のマイクロホン出力が強い相関をもつことは通常のことである。この場合、各伝播路の同定が困難となることがよく知られている。
従来の技術には、この問題を解決する手法をチャネル数が2の場合について与えているものがある(例えば、文献2参照)。すなわち、相関低減係数r12とr21を導入して
Figure 2005091677
Figure 2005091677
を合成し、入力チャネルn(n=1,2)から出力チャネルm(m=1,2)に至る伝播路hnmに並列に接続された適応フィルタの係数Hnm
Figure 2005091677
と更新するアルゴリズムを導出した。ここで、μはステップサイズであり、E は次式で表される。
Figure 2005091677
式(2−1)と式(2−2)は、式(1)に対応する。また、式(2−1)と式(2−2)は、式(3)にも対応する。
式(2−3)において、「E X’ 」は分子ベクトルに相当し、「X 」第1ベクトルに相当 し、「X’ 」は第2ベクトルに相当する。
式(2−3)は、式(1−31)と同一である。
上記文献2によれば、上記アルゴリズムは両参照信号間にわずかでも独立成分が含まれておれば同定が可能となること、また、相関低減係数r12とr21を参照信号X とX の相互相関係数
Figure 2005091677
Figure 2005091677
と与えるときに係数Hnm の収束が最も高速化される。
問題は、チャネル数Nが3以上である場合において、この相関低減係数が単純な相互相関係数としては得られないことである。以下に、その理由を説明する。
式(2−4)から分かるように、残差E を構成する成分のうち、入力チャネルnから出力チャネルmに至る伝播路hnmの同定に有効な成分は推定誤差
Figure 2005091677
である。これ以外のΔkm (k≠n)は、適応フィルタの係数Hnm の更新に無用である。式(2−3)のアルゴリズムは、このΔnm を取り出すのにE とX’ の相関を利用する。ここで、外乱N を全ての参照信号と無相関と仮定して無視すると、例えば、チャネル1からチャネルmに至る伝播路h1mの同定は
Figure 2005091677
からΔ1m を取り出して行われる。すなわち、
Figure 2005091677
に対して「第2項が零となれば、h1mの同定に無用なΔ2m が排除できる」というのが式(2−3)に与えるアルゴリズムの原理である。実際、参照信号に自己相関がなければ
Figure 2005091677
と与えるときに、上記第2項の期待値が零になることは明らかである。
一方、チャネル数NがN≧3の場合、外乱を無視して残差を
Figure 2005091677
とおけば、伝播路hnmの同定に際して計算される残差との相関は
Figure 2005091677
となる。ここで、係数Hnm の推定に有効となるΔnm を取り出すためには、第2項の期待値が零となる必要がある。それには、参照信号において自己相関が無視できるとしても
Figure 2005091677
となる相関低減係数を与える必要がある。このことから、チャネル数NがN≧3の場合において相関低減係数が各参照信号間の相互相関係数として与えられないことは明らかである。
式(2−14)は従来法における問題点と同時に解決法を示唆している。すなわち、時刻jにおいて与えた相関低減係数rin に対して
Figure 2005091677
は信号X に対するX (i≠n)による線形予測の結果としての予測誤差とみなすことができる。この場合、
Figure 2005091677
と相関低減係数を更新すれば、同相関低減係数rin の収束後においてX’ とX (i≠n)は無相関となる。すなわち、式(2−15)を式(2−14)の左辺に代入した
Figure 2005091677
の期待値はX’ とX (k≠n)が相関をもたないことから零となり、この相関低減の原理を全てのnについて同様に行えば、チャネル数がNの場合について、チャネル数が2の場合と同様の効果が得られる。
なお、式(2−16)は、式(4)に対応する。
実際のマルチチャネルシステムでは、そのチャネル数は少ない場合がほとんどである。その場合、式(2−16)第2項の分母が零となる可能性が高くなる。この場合、アルゴリズムをブロック実行型として
Figure 2005091677
とすれば、零による除算の可能性が下げられる。
なお、ブロック実行型アルゴリズムとは、分子ベクトルと正規化分母とを時間ブロックで累積加算する更新アルゴリズムのことである。
また、参照信号のパワーが激しく変動する場合、とくに、そのパワーが小さくなるときに相関低減係数rin の算定精度が低下する。この場合、式(2−17)第2項の分母が一定値以上となるまで、ブロック長Lを延長すれば、算定精度の安定化が図れる。
つまり、式(2−17)において、ブロック長Lを固定値とはしないで、式(2−17)第2項の分母が一定値に達したときに係数更新を行うようにするのである。
反対に、参照信号のパワーが安定している場合は式(2−16)あるいは式(2−17)第2項の分母は一定とみなすことができ、その場合は同第2項の分母をステップサイズρに含めて
Figure 2005091677
Figure 2005091677
とすることができる。
式(2−18)は、式(6)に対応する。
式(2−19)で示されるアルゴリズムは、式(2−18)で示されるアルゴリズムをブロック実行型に修正した式である。
さらに、参照信号に自己相関がある場合は、相関低減係数を自己相関が零となる間隔までrin (O)からrin (T)まで用意し、
Figure 2005091677
として相関を低減すれば同様の効果が得られる。
この式(2−20)は、式(2)に対応する。
一方、式(2−3)として示している係数更新アルゴリズムは、
Figure 2005091677
に対しても同様の効果が得られることに変わりはない。
この式(2−21)は、実質的に式(1−33)と同一である。
式(2−21)において、「E X’ 」は分子ベクトルに相当し、「X 」は第1ベクトルに相当し、「X’ 」は第2ベクトルに相当する。
本発明によれば、係数更新ベクトルを正規化する分母を全チャネルについての総和として与えることによって収束条件が単純なステップサイズの範囲として与えられ、安定動作の確保が容易となる。また、本実施形態から明らかなように、その正規化分母に制限がないことに注意が必要である。
(第3の実施形態)
上記において、図1a,図1bを参照しつつ、マルチチャンネル系(マルチチャンネルシステム)とマルチチャンネルシステム同定装置の概略構成を説明した。
マルチチャンネルシステム同定装置が適用される装置としては、マルチチャネル能動騒音制御装置やステレオエコーキャンセラがよく知られている。
マルチチャネル能動騒音制御(「陳国躍,安倍正人,曽根敏夫,”参照信号間に相関がある場合のFiltered−x LMSアルゴリズムの収束速度の改善法”信学論(A),vol.J80−A,no.2,pp.309−316,1997−02(以下、この文献を「文献3」という)」および「棟安実治,浅井隆,藤井健作,雛元孝夫,”マルチチャネル能動騒音制御システムへの連立方程式法の拡張”信学論(A),vol.J83−A,no.11,2000−11(以下、この文献を「文献4」という)」参照)やステレオエコーキャンセラ(「M.M.Sondhi,D.R.Morgan,and J.L.Hall,”Stereophonic Acoustic Echo Cancellation−−An Overview of the fundamental Problem”IEEE SP Letter,pp.148−150,1995−08」参照。以下、この文献を「文献5」という。)のように,参照信号を複数のマイクロフォンで採取するシステムでは,必然的に参照信号は相互に相関を持つ。この相関は,適応フィルタの係数推定に対して収束速度の低下など,同定性能に劣化をもたらす。
この劣化を抑える改善法に関する提案が数多くなされている。それらは,参照信号に含まれる独立成分の割合を大きくする前処理を参照信号に加えて未知系に送出するという原理において共通している。従って,その違いは単に,その独立成分の割合を大きくするために適用する前処理の方法にだけあると言える(「鈴木邦和,阪内澄宇,島内末廣,羽田陽一,”ステレオエコーキャンセラにおける収束改善のための前処理方式の検討”平10秋音講論集,3−5−10,1998−03」参照。以下、この文献を「文献6」という。)。しかし,そのような原理において共通する前処理の挿入はステレオエコーキャンセラではスピーカから出力される音声に細工を加える操作に等しくなる。従って,それらの方法には通話品質を劣化させるという問題が必然的につきまとう。
例えば,その最も簡単な前処理法の例として白色雑音を参照信号に付加する方法がある(文献5参照)。しかし,その付加はスピーカから異質の騒音が送出されるという問題を引き起こす。従って,そこで加えられる白色雑音の大きさは,話者に検知されない程度の低いレベルに抑える必要がある。具体的には,そのレベルは音声に対して13−15dB低くなければならないとされている(文献5参照)。しかし,このように低いレベルの白色雑音の付与では残念ながら満足のできる特性は得られない(文献5参照)。
前田ら(「前田大輝,藤井健作,棟安実治,”マルチチャネル適応アルゴリズムの収束特性に関する検討”信学論(A),pp.180−189,2004−02」参照。以下、この文献を「文献7」という。)は,マルチチャネルシステムにおける各参照信号において,白色雑音を付加するという概念ではなく,参照信号にもともと白色雑音が独立成分として存在しているものとみなした上での同定アルゴリズムを提案している。それによると,その独立成分の含有割合が−40dBと非常に小さい場合においても未知系の同定が可能である。
マルチチャネルシステム同定アルゴリズムは,図1aに示す未知系のインパルス応答hnm(n,m=1,2)を,適応フィルタの係数Hnm によって同定することを目的とする。ここにjは時刻である。その同定に際して問題は,各チャネルの参照信号X に含まれる独立成分の割合が非常に低く,参照信号間の相互相関が強い場合において,Hnm がhnmに収束する速度(同定速度)が極めて遅くなることである。前田らは,そのチャネル数が2のときに同定速度を向上させるアルゴリズムを提案し,その有効性を文献7に示している。
その文献7では各参照信号X
Figure 2005091677
と仮定している。本検討でも,この仮定を踏襲する。さらに,同アルゴリズムでは相関低減係数
Figure 2005091677
を導入し,相互相関成分を低減した相関低減信号
Figure 2005091677
を定義する。前田ら(文献7)は以上の条件の下に同定アルゴリズムを
Figure 2005091677
としたときに同定速度が向上することを示している。ここで,E は,
Figure 2005091677
で示される誤差信号である。このアルゴリズムにおける問題は,チャネル数が3以上の場合に適用できないことである。
なお、同定アルゴリズムについては、「藤井健作,棟安実治,”マルチチャネルシステム同定アルゴリズムの提案と推定誤差が増加しない条件”信学技報,SIP2004−9,2004−05(以下、この文献を「文献8」という。)」にも記載がある。
従来アルゴリズムではチャネル数を3以上とできない理由は相関低減係数を参照信号間の相互相関係数で与えたことにある。しかし,その相関低減信号を式(3−3)と与える考え方は有用である。本実施形態では,相関低減係数rnmをrnm と表し,相関低減係数を逐次算定するように変更する。すなわち,相関低減信号D
Figure 2005091677
と与える。ここで,Nはチャネル数である。
この式(3−6)は、式(1)に対応する。
本実施形態では,このD を用い,適応フィルタの係数を
Figure 2005091677
と更新する同定アルゴリズムを提案する。ここに,μはステップサイズである。
式(3−7)において、「E 」は分子ベクトルに相当し、「X 」は第1ベクトルに相当し、「D 」「D 」は第2ベクトルに相当する。
式(3−7)のアルゴリズムと,式(3−4)に与える前田ら(文献7)のアルゴリズムとの違いは第二項の分母にある。この変更によって,前田ら(文献7)のアルゴリズムではチャネルごとに異なるステップサイズを与えて収束条件としていたのに対して,本実施形態では全チャネルに共通するステップサイズを収束条件とすることができる(文献8)。
問題は,残差信号D を生成するrin の算定法である。その算定法を見出すために式(3−6)を見ると,D はX (i=1,・・・,N,i≠n)によるX に対する線形予測残差ともみなせることが分かる。この場合,rin はNLMS法を用いることによって,
Figure 2005091677
と算定できる。ここに,ρはステップサイズである。この式(3−8)は、式(4)に対応する。このように相関低減係数を与えることによって,チャネル数が3以上の場合においても,相互相関の低減が可能になる(文献8)。さらに,この場合の収束条件は同定誤差
Figure 2005091677
の2乗平均が増大しない条件として
Figure 2005091677
Figure 2005091677
と導かれている(文献8)。ここに,E’
Figure 2005091677
である。
次に、シミュレーションによる収束条件の確認について記す。
文献8では収束条件のシミュレーションによる確認がなされていない。以下では,その確認を行う。ただし,参照信号として相互相関成分(式(3−1)参照),独立成分x をともに白色雑音,さらに両成分のパワーを1とする。また,未知系インパルス応答hnmの各要素には正規乱数を与え,そのパワーが1となるように正規化を行う。
パワーと独立成分比が全チャンネルで等しい場合について記すと、次のとおりである。
まず,その確認をチャネル数N=4,タップ数64,ステップサイズρ=0.001,a〜a=1.0,b〜b=0.1として行う。図2(e)は,このように前チャネルの参照信号に含まれる相関成分と独立成分の割合が等しく,パワーもまた等しいとした場合の収束特性である。さらに,同定誤差(Estimation Error)は
Figure 2005091677
として計算している。ただし,図中の数字はステップサイズμ,m=n=1,Mはタップ数,iは配列要素の番号である。
図2(a)〜(d)は式(3−11)に与えられる収束条件の有効性を確認するシミュレーションの結果である。明らかに,式(3−10)の条件を満たすときに同定誤差が減少していることが分かる。一方,式(3−11)の条件では同定誤差が収束しているμ=0.3、1.0において,図2(a)および図2(b)より,式(3−11)の条件から外れる頻度が少なく,収束への影響が少ないことが分かる。また,μ=1.97では,図2(c)より式(3−11)の条件を満たしていない区間で同定誤差が減少していないこと,μ=2.1では図2(d)より式(3−11)の条件から大きく外れていることも確認できる。以上のことから,収束条件式(3−10)と(3−11)は概ね同時に成立つことが分かる。
図3は従来のNLMS法との比較である。このときの条件はステップサイズμ=0.3を除いて図2と同じである。この図より,本実施形態の有効性が確認できる。
図4はρ=0.001としたときのr21jの収束の様子である。j=5,000付近でr21jが収束し,その収束と対応して同定誤差の収束速度が向上していることが図2(e)より分かる。以上より,同定誤差の初期における収束の遅れは相関低減係数の収束の遅れに起因することが分かる。
次に、パワー及び独立成分比が異なる場合について記す。
図5(c)は,チャネル数4,タップ数64,ステップサイズμ=0.1,ρ=0.001,a=1.0,a=2.0,a=5.0,a=10.0,b=0.1としたときの収束特性である。この図5(c)において,j=8,000付近から誤差が増大し,その原因が収束条件(3−11)が満たされないためであることが図5(b)の結果から分かる。また同図(a)より,その原因の1つは式(3−11)の分母が0を中心に振動することにあると推測される。すなわち式(3−7)の,第二項の分母の値が0に近い値となることによる第二項の発散が原因であると予想される。
次に、収束を不安定にする要因への対処について記す。
まず、相関低減係数の算出法の修正について記す。
その式(3−11)の分母が0を中心に振動する原因の1つは,相関低減係数の算定が不安定になることにあると考えられる。
例えばチャネルnの参照信号のパワーが大きく,他チャネルの参照信号のパワーが小さい場合,式(3−8)によるrni (i≠n)の更新に際して,その分母には大きな信号であるチャネルnの参照信号の二乗値が含まれる。一方,rin (i≠n)ではその分母には大きな信号であるチャネルnの参照信号の二乗値が加算されず,分子の予測残差D にはパワーの大きい参照信号が外乱として加わる。この場合,チャネルnを除く相関低減係数の算定精度が低下することになる。これを防ぐにはステップサイズを小さくする必要がある。このステップサイズの自動修正は相関低減係数の算定を
Figure 2005091677
と行うことによって等価的に行うことができる。
この式(3−14)は、式(5)に対応する。
図6(c)は式(3−14)を用いたときの収束特性である。明らかに,発散の発生が大きく遅れていることが分かる。しかし,まだ収束条件(3−11)が完全には満たされないことが図6(b)から分かる。そして,依然として式(3−11)の分母が負になっていることが図6(a)から分かる。
次に、ブロック長制御法の導入について記す。
この式(3−7)の正規化分母が正となることを保証するブロック長制御法の適用を提案する。すなわち,
Figure 2005091677
とし,正の定数kを定めて,J回分の和がk以上になったときに更新するのである。
式(3−15)で示されるアルゴリズムは、式(3−7)で示されるアルゴリズムをブロック実行型のアルゴリズムに修正し、さらに、ブロック長Jを固定値とはしないで、正規化分母が一定値kに達したときに係数更新を行うように修正したアルゴリズムである。なお、ブロック実行型アルゴリズムとは、前述したとおり、分子ベクトルと正規化分母とを時間ブロックで累積加算する更新アルゴリズムのことである。
式(3−15)のアルゴリズムを用いるとき、収束条件としての式(3−11)の分子も同様にJ回分の和をとることになる。これによって,式(3−15)の分母は常に正となることが保証される。
図6のシミュレーションと同じ条件下で,閾値k=7.0としたときの収束特性を図7に示す。誤差曲線が重なっているため読み取りづらいが,収束後において−40dBやや上寄りで重なっているのがH11 およびH21 ,その下方で同じく重なっているのがH31 ,およびH41 である。明らかに,この結果から同定誤差が発散を起こさずに収束していることが分かる。
次に、収束初期における遅延の原因について記す。
図7の誤差曲線の初期段階において横ばい状態の部分が存在する。それを拡大したのが図8である。これは相関低減係数rnm の収束の遅れに伴うものである。この原因は,式(3−7)から考えると分かりやすい。初期段階ではD は相関成分が適切に低減されていないため,D はX に非常に近いものとなる。そのため式(3−7)はNLMS法と同じ働きをすることになる。
また同図においてj=25,000付近から同定誤差の収束速度が向上しているが,その安定性が未知系ごとに異なることが分かる。例えば,H41 の誤差曲線は,H11 の誤差曲線と比較すると大きな振動を伴っていることが分かる。以上より,各参照信号のパワーの違いが外乱となる成分に影響を与え,収束速度に影響すると言える。
次に、有色雑音を参照信号とした場合について記す。
以上の議論は,相関成分(式(3−1)参照)が白色雑音という条件下で行われている。以下では,実システムへの応用を考え,ジェットファンの騒音を模倣した有色雑音を相関成分(式(3−1)参照)とした場合の収束特性を計算しておく。その結果を図10に示す。ただし,チャネル数N=4,a=a=a=a=1.0,b=b=b=b=0.1,μ=0.1,ρ=0.001である。性能比較のため,NLMS法を用いた場合の収束特性も同時に示す。
図10より,相関成分(式(3−1)参照)が有色雑音であっても同定誤差が収束していることが分かる。しかし,相関成分を白色雑音とした場合に比べて同定誤差の収束速度は非常に遅い。このことは,問題の解決には自己相関成分についても同様の低減が必要であることを示している。
本実施形態では,チャネル数が3以上においても有効に動作するマルチチャンネルシステム同定装置を提案した。さらに,そのアルゴリズムの有効性および問題点をシミュレーション実験を交えて示し,それらの結果を基に解決案を提示した。同時にシミュレーション実験により解決案の有効性も示した。
また,本実施形態では最後に有色性の雑音を参照信号とした場合のシミュレーションを行った。この結果から,相互相関成分のみならず,自己相関成分に対する低減処理が必要であることが明らかにされた。従って,今後の課題として有色性の参照信号に対する考察が挙げられる。
(第4の実施形態)
上記において、図1a,図1bを参照しつつ、マルチチャンネル系(マルチチャンネルシステム)とマルチチャンネルシステム同定装置の概略構成を説明した。
マルチチャンネルシステムでは、参照信号間に相関が存在するとき、未知系の同定速度が低下することが知られている。本実施形態では、同定速度向上のためのアルゴリズムを提案する。この提案に際し、まずチャンネルn(1≦n≦N)の入力信号(参照信号)X を、次式のように仮定する。
Figure 2005091677
まず、このX に線形予測を適用することにより、自己相関を取り除いた信号X’ を、次式により算定する。
Figure 2005091677
この式(4−2)は、式(7)に対応する。
上式の係数の更新は、次式により行うことができる。
Figure 2005091677
この式(4−3)は、式(9)に対応する。
次いで、相関低減係数rnmを導入し、これによって相互相関成分を低減した信号D を、次式のように定義する。
Figure 2005091677
この式(4−4)は、式(8)に対応する。
本実施形態では、このD を用い、未知数hnmに並列接続される適用フィルタ係数Hnm を、次式により更新する。
Figure 2005091677
この式(4−5)において、「E 」は分子ベクトルに相当し、「X 」は第1ベクトルに相当し、「D 」「D 」は第2ベクトルに相当する。
また、E は、次式により計算される誤差信号である。
Figure 2005091677
残る問題はrnmの算定である。そこでD を見ると、これはX’ に対する線形予測誤差と捉えることもできる。従ってこのD を用いることによりrnmにNLMS法(Normalized−LMS:学習同定法)が適用でき、次式により算定することができる。
Figure 2005091677
この式(4−7)は、式(10)に対応する。
次に、シミュレーションの結果を示す。
チャンネル数N=4、各参照信号パワーを定常とし、相関成分である
Figure 2005091677
と、独立成分である
Figure 2005091677
のパワー比を−20dBとする。独立成分
Figure 2005091677
には白色雑音を与える。μ=0.1、ρ=0.001としたときのH11 の同定誤差を図11に示す。示してあるのは相関成分
Figure 2005091677
が白色雑音の場合と、ジェットファンの騒音を想定した有色雑音の場合である。有色雑音の場合、線形予測による自己相関除去を適用した場合と適用していない場合の2つを示してある。線形予測を行う際、タップ数M=5、ν=0.1である。同図より、相互相関成分が自己相関を持つ場合でも同定速度が向上していることが分かる。
本実施形態では、N≧2のマルチチャンネルシステムにおいて参照信号間の相互相関成分が自己相関を持つような場合においても未知系の同定速度が向上するアルゴリズムおよびこのアルゴリズムを用いたマルチチャンネルFIR型適応フィルタを示し、シミュレーションによりその有効性を確かめた。該アルゴリズムおよび該適応フィルタは、音声信号や実システムへの応用が可能である。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
本発明のマルチチャンネルシステム同定装置によれば、高い精度でマルチチャンネル系を同定することができるので、例えばエコーキャンセラのような電気音響の技術分野において有益である。

Claims (19)

  1. 複数の入力チャンネルと複数の出力チャンネルとを有するマルチチャンネル系を同定する、マルチチャンネルシステム同定装置であって、
    該マルチチャンネル系の入力チャンネルと出力チャンネルとに接続することができる接続部と、
    該マルチチャンネル系の各入力チャンネルから各出力チャンネルに至るインパルス応答をそれぞれ模擬する係数更新可能なFIRフィルタと、
    該接続部から取得した信号に基づいて同定誤差が最小となるように第1適応アルゴリズムによって該FIRフィルタの係数を更新する係数更新部とを備え、
    該第1適応アルゴリズムにおいて、n番目の入力チャンネルからm番目の出力チャンネル至る時刻j+1におけるFIRフィルタの係数ベクトルHnm j+1が、時刻jにおける係数ベクトルHnm に更新ベクトルを加算することによって作成され、
    該更新ベクトルは、分子ベクトルを正規化分母で除し、ステップサイズを乗ずることによって作成され、
    該分子ベクトルは、第2ベクトルに、m番目の出力チャンネルにおける同定誤差E を乗ずることによって、作成され、
    該正規化分母は、第1ベクトルと第2ベクトルとの内積の、入力チャンネルについての累積加算値に基づいて定められ、
    該第1ベクトルは、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX であり、
    該第2ベクトルは、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX に基づいて定められるベクトルである、マルチチャンネルシステム同定装置。
  2. 該正規化分母が該累積加算値である、請求項1記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
  3. 該第1適応アルゴリズムが、ブロック実行型の適応アルゴリズムに修正された、請求項1乃至2記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
  4. 該正規化分母が所定値に達するまでブロック長が延長され、該正規化分母が該所定値に達したときに該係数ベクトルHnm が更新される、請求項3記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
  5. 該第2ベクトルが、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX である、請求項1乃至4のいずれか一の項に記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
  6. 該第2ベクトルは、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX を、他の入力チャンネルの入力信号ベクトルとの相互相関成分が少なくなるように修正することによって得られるベクトルX’ である、請求項1乃至4のいずれか一の項に記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
  7. 該第2ベクトルが、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX を、相関低減係数rを用いた次の式(1)に従って修正することによって得られるベクトルX’ である、請求項6記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
    Figure 2005091677
  8. 相関低減係数rがr(O)からr(T)まで用意され、
    該第2ベクトルが、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX を、相関低減係数r(t)を用いた次の式(2)に従って修正することによって得られるベクトルX’ である、請求項6記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
    Figure 2005091677
  9. 相関低減係数rが第2適応アルゴリズムによって更新され、
    該第2適応アルゴリズムにおいて、参照信号として各入力チャンネルの入力信号ベクトルX が用いられ、X’ が最小化されるように、相関低減係数rが更新される、請求項7又は8記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
  10. 複数の入力チャンネルと複数の出力チャンネルとを有するマルチチャンネル系を同定する、マルチチャンネルシステム同定装置であって、
    該マルチチャンネル系の入力チャンネルと出力チャンネルとに接続することができる接続部と、
    該マルチチャンネル系の各入力チャンネルから各出力チャンネルに至るインパルス応答をそれぞれ模擬する係数更新可能なFIRフィルタと、
    該接続部から取得した信号に基づいて同定誤差が最小となるように第1適応アルゴリズムによって該FIRフィルタの係数を更新する係数更新部とを備え、
    該第1適応アルゴリズムにおいて、n番目の入力チャンネルからm番目の出力チャンネル至る時刻j+1におけるFIRフィルタの係数ベクトルHnm j+1が、時刻jにおける係数ベクトルHnm に更新ベクトルを加算することによって作成され、
    該更新ベクトルは、分子ベクトルを正規化分母で除し、ステップサイズを乗ずることによって作成され、
    該分子ベクトルは、第2ベクトルに、m番目の出力チャンネルにおける同定誤差E を乗ずることによって、作成され、
    該正規化分母は、第1ベクトルと第2ベクトルとの内積であり、
    該第1ベクトルは、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX であり、
    該第2ベクトルは、相関低減係数rを用いた次の式(3)に従い、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX を、他の入力チャンネルの入力信号ベクトルとの相互相関成分が少なくなるように修正することによって得られるベクトルX’ であり、
    該相関低減係数rが第2適応アルゴリズムによって更新され、
    該第2適応アルゴリズムにおいて、参照信号として各入力チャンネルの入力信号ベクトルX が用いられ、該式(3)式のX’ が最小化されるように、該相関低減係数rが更新される、マルチチャンネルシステム同定装置。
    Figure 2005091677
  11. ρをステップサイズとしたとき、
    時刻jにおける相関低減係数rが、次の式(4)で示される第2適応アルゴリズムに従って、時刻j+1における相関低減係数rj+1に更新される、請求項9又は10記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
    Figure 2005091677
  12. ρをステップサイズとしたとき、
    時刻jにおける相関低減係数rが、次の式(5)で示される第2適応アルゴリズムに従って、時刻j+1における相関低減係数rj+1に更新される、請求項9又は10記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
    Figure 2005091677
  13. 該第2適応アルゴリズムがブロック実行型に修正された、請求項11又は12記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
  14. 該正規化分母が所定値に達するまでブロック長が延長され、該正規化分母が該所定値に達したときに相関低減係数rが更新される、請求項13記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
  15. ρをステップサイズとしたとき、
    時刻jにおける相関低減係数rが、次の式(6)で示される第2適応アルゴリズムに従って、時刻j+1における相関低減係数rj+1に更新される、請求項9又は10記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
    Figure 2005091677
  16. 該第2適応アルゴリズムがブロック実行型に修正された、請求項15記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
  17. 該第2ベクトルが、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX を、自己相関成分が少なくなるように修正し、かつ、他の入力チャンネルの入力信号ベクトルとの相互相関成分が少なくなるようにさらに修正することによって得られるベクトルである、請求項1乃至4のいずれか一の項に記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
  18. 該第2ベクトルは、各入力チャンネルの入力信号ベクトルX が自己相関成分が少なくなるように相関低減係数cを用いた次の式(7)に従って第1修正ベクトルに修正され、さらに、他の入力チャンネルとの相互相関成分が少なくなるように相関低減係数rを用いた次の式(8)に従って修正されたベクトルであり、
    相関低減係数cが第3適応アルゴリズムによって更新され、
    該第3適応アルゴリズムにおいて、式(7)中の第1修正ベクトルX’ が最小化されるように相関低減係数cが更新され、
    相関低減係数rが第4適応アルゴリズムによって更新され、
    該第4適応アルゴリズムにおいて、式(8)中のベクトルD が最小化されるように相関低減係数rが更新される、請求項17記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
    Figure 2005091677
    Figure 2005091677
  19. 時刻jにおける相関低減係数cが、次の式(9)に従って、時刻j+1における相関低減係数cj+1に更新され、
    時刻jにおける相関低減係数rが、次の式(10)に従って、時刻j+1における相関低減係数rj+1に更新される、請求項18記載のマルチチャンネルシステム同定装置。
    Figure 2005091677
    Figure 2005091677
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