JP2001077730A - 適応フィルタの係数推定装置 - Google Patents

適応フィルタの係数推定装置

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JP2001077730A
JP2001077730A JP25252299A JP25252299A JP2001077730A JP 2001077730 A JP2001077730 A JP 2001077730A JP 25252299 A JP25252299 A JP 25252299A JP 25252299 A JP25252299 A JP 25252299A JP 2001077730 A JP2001077730 A JP 2001077730A
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adaptive filter
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equation
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JP25252299A
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Kensaku Fujii
健作 藤井
Toshiro Oga
寿郎 大賀
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Fujitsu Ltd
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Fujitsu Ltd
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  • Filters That Use Time-Delay Elements (AREA)
  • Cable Transmission Systems, Equalization Of Radio And Reduction Of Echo (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は特性が未知の信号伝達系に印加した参
照信号と,その参照信号に対する該信号伝達系の応答と
から該信号系の特性を模擬する適応フィルタの係数を推
定する適応フィルタの係数推定装置に関し,有色性の参
照信号に対しても適応フィルタの係数の推定を高速に収
束することを目的とする。 【解決手段】参照信号に対して線形予測分析を行って,
その予測残差を出力する線形予測回路と,その予測残差
と,参照信号の相関を計算する第1の相関計算回路と,
未知の信号伝達系の出力と適応フィルタの出力との差と
予測残差の出力との相関を計算する第2の相関計算回路
と,第2の相関計算回路の出力を前記第1の相関計算回
路の出力で正規化する正規化回路と,適応フィルタの前
回の係数に正規化回路の出力を加える加算回路とによ
り,適応フィルタの係数を更新するよう構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は特性が未知の信号伝
達系に印加した参照信号と,その参照信号に対する該信
号伝達系の応答とから該信号伝達系の特性と同じ特性を
有する適応フィルタの係数を推定する適応フィルタの係
数推定装置に関する。
【0002】近年,エコーキャンセラのようにスピーカ
から発生した信号からエコーを消去するためにマイクに
よりこれを取り出してエコー成分として演算を行うが,
このマイクにより拾った信号と同じ信号を電気的に作成
して引き算すればエコーをキャンセルできる。その時
に,マイクで受けたのと同じ信号を発生するため,信号
伝達系の特性となるような適応フィルタの係数を推定す
ることで疑似エコーを作り出す方式が用いられている。
そのための,適応フィルタの係数の推定は参照信号が白
色性(広帯域のフラットなスペクトルを持つ)であれば
係数の収束が容易で推定がやりやすいが,音声のように
有色性(偏ったスペクトル)の場合は係数の収束が遅く
なるため,その改良が望まれている。
【0003】
【従来の技術】図8は本発明が適用されるシステムの一
般的構成である。図中,80は参照信号Xj が入力して
応答gj を発生する特性が未知の信号伝達系,81は参
照信号が入力されて疑似エコー信号等の係数に対応した
出力Gj を発生する適応フィルタ,82は適応フィルタ
81の係数を更新する係数更新回路,83は応答gj
雑音nj を重畳した信号yj を発生する演算回路,84
は信号yj から適応フィルタの出力Gj を差し引いて残
差Ej を生成する演算回路である。図8の動作は後述す
る。
【0004】この構成の特徴は,次の式(1) において,
残差Ej (演算回路84で求める)が最小となるように
式(2) に示す係数を更新する点にある。
【0005】 残差Ej =gj +nj −Gj (1)
【0006】
【数1】
【0007】ここで,Iは適応フィルタのタップ数,j
は時刻(sample time index)である。
【0008】現在,その係数Hj の設定方法として最も
一般的に用いられるアルゴリズムは,次の式(3) で定義
される学習同定法である。
【0009】
【数2】
【0010】ここで,適応フィルタは一般には非巡回型
で構成され,式(3) を構成するXjは次の式(4) で表さ
れ, その非巡回型を構成するシフトレジスタのタップ出
力を要素とする参照信号ベクトルである。この学習同定
法のように最急降下原理に従うアルゴリズムは参照信号
が有色性となるときに収束速度が低下することが知られ
ており, この速度の低下は,例えば音響エコーキャンセ
ラにおいてはハウリング発生の危険を増大させる。
【0011】
【数3】
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上記の最急降下法に属
するアルゴリズムの有色性参照信号に対する収束速度の
低下を防止する方法として最も初期に提案された方法
は,参照信号と該信号伝達系の出力に線形予測を適用し
て相関を除去することにより,参照信号における有色性
を除いて収束の高速化を図る方法(S. Yamamoto, S. Ki
tayama,J. Tamura and H. Ishigami, "An adaptive ech
o canceller with linear preldictor,"IECETrans. Vo
l. E62, no. 12,pp. 851-857,Dec.1979 参照) である。
【0013】参照信号Xj に対し線形予測分析を行っ
て,その予測誤差Xj ' が次の式(5)により求める。
【0014】
【数4】
【0015】次いでその予測分析の結果として構成され
た予測フィルタに外乱が重畳した該信号伝達系の出力y
j を印加して得られる該予測フィルタの応答yj ’とを
用い,式(5) の予測誤差Xj ' を使って合成した式(6)
で表すGj ’との式(7) で表す残差Ej ' に対して式
(8) で更新を行う。
【0016】
【数5】
【0017】これにより,式(8) における参照信号は無
色化(白色化)され, 収束は高速化される。しかし,音
響エコーキャンセラのように該信号伝達系の出力を相殺
する機能が要求される場合に,その相殺用の信号として
別に,次の式(9) の計算を必要とする点が問題となる。
【0018】 Gj =Hj T j (9) すなわち,このような係数の更新用以外に,元の参照信
号ベクトルXj を用いて別に適応フィルタ出力Gj を合
成する必要があるときは,例えば適応フィルタに多くの
タップ数を必要とする音響エコーキャンセラの実用化に
大きな障害となる。
【0019】上記の方法の次に提案されたアルゴリズム
は,射影法(尾関和彦,梅田哲夫,“アフィン部分空間
への直交射影を用いた適応フィルタ・アルゴリズムとそ
の性質”,電子情報通信学会論文誌(A),Vol.J67-A,
no.2,pp.126-132,Feb.1984参照) である。これは,例え
ば,参照信号の2次の相関を問題にする場合に次の式(1
0)のように更新される。但しaj ,bj は次の式(11)で
表される。
【0020】
【数6】
【0021】しかし,このアルゴリズムは式(11)から明
らかなように逆行列の計算を必要とする。この逆行列演
算には計算量を必要とし, 実用化するには計算のための
多くの回路と処理時間を要するという問題があった。こ
れを回避するため高速算法(田中雅史,牧野昭二,金田
豊,“高速FIR フィルタリング算法を利用した射影
法”,電子情報通信学会ソサイエティ大会,A-79,Sept
1995) を適用した場合は,数値的安定性に問題が生じ
る。また,射影法において実行される相関除去の区間は
適応フィルタのタップ長に等しいことが指摘される。従
って,音響エコーキャンセラのように音声を参照信号と
する場合,その音声の定常と仮定される以上の区間が相
関除去の対象となる。たとえば,適応フィルタのタップ
数を512と少なく与えた場合でも,相関除去が行われ
る区間は標本化周波数8khzで64msとなる。従って,
その音声に対し相関の除去が十分に行われないという問
題がある。
【0022】本発明は有色性の参照信号に対しても適応
フィルタの係数の推定を高速に収束することができる適
応フィルタの係数推定装置を提供することを目的とす
る。
【0023】
【課題を解決するための手段】図1は本発明の原理構成
を示し,この構成はハードウェアとしては上記図8に示
す構成に対して,線形予測回路6が付加されている。図
中,1は参照信号Xjが入力して応答gj を発生する特
性が未知の信号伝達系,2は参照信号が入力されて疑似
エコー信号等の係数に対応した出力Gj を発生する適応
フィルタ,3は適応フィルタ2の係数を更新する係数更
新回路,4は応答gj に雑音nj を重畳した信号yj
発生する第1の演算回路(実際にハードウェアとして構
成されない疑似的な回路),5は信号yj から適応フィ
ルタの出力Gj を差し引いて残差Ej を生成するハード
ウェアとして構成される第2の演算回路,6は線形予測
回路である。この構造で音響エコーキャンセラを構成す
ることができ,その場合,参照信号Xj はスピーカの出
力に相当し,yj はマイクロホン,Ej は伝送路への出
力に相当する。
【0024】本発明は,上記の問題を解決するため本願
の発明者らが提唱している適応信号処理の別の角度から
の理解方法(藤井健作,“適応信号処理の副読本”,電
子情報通信学会技報,EA97-43,Sept.1997)を利用する。
その適応信号処理の異なる角度からの解釈方法では適応
アルゴリズムの原形となる式は次の式(12)のように書く
ことができる。
【0025】
【数7】
【0026】但し,この式(12)に用いた記号である
【0027】
【数8】
【0028】はi=mを除くi=1からi=Iまでの加
算を表している。ここで,説明を簡単にするため,外乱
j を無視すると,式(12)は更に次の式(13)のように展
開される。
【0029】
【数9】
【0030】この式(13)によれば, 適用フィルタは係数
j+1 (m) が該信号伝達系の式(14)で表すインパルス応
答hの第m番目の標本値h(m) に収束する時に該信号伝
達系を完全に模擬したことになり,その収束の早さは式
(13)の第2項の減少速度に対応する。すなわち第2項
(h(i) −Ht (i))が0になればよく,これを早くする
ことが必要である。この式(13)の第2項は現在の適応フ
ィルタの係数と目標となる未知系のインパルス応答の標
本値との差(推定誤差という)を表し,推定の開始時刻
(j=1)から現在までの推定誤差の和が含まれてい
る。この推定誤差を早く小さくするにはこの中の古い大
きな値の推定誤差を加算項から排除すれば良い。そのた
めに3つの方法がある。1番目は推定誤差の加算をブロ
ック単位で行い,順番にブロックを移動すると現在計算
しているブロックから古い大きな推定誤差が順番に排除
されて収束が実現される。2番目は古い推定誤差程小さ
な重みをかけるという方法(学習同定法)であり,3番
目は式(13)の第2項の中のタップ係数Ht (i) として古
い値を使わず, 1番新しい値を使う(推定誤差が小さ
い)ことである。
【0031】
【数10】
【0032】同様に,その収束の速度は参照信号におけ
る相関の強さに関係し,Xt (i) X t (m) の相関が強い
時に収束が遅れることが分かる。このことは逆に,Xt
(i)Xt (m) の相関を小さくすれば,収束が早まること
を意味している。
【0033】ここで,式(13)の第2項の分子を構成する
t (i) とXt (m) を白色雑音としても小さくできるこ
とが分かる。すなわち,参照信号に対する線形予測残差
t(m) ’を用い,次の式(15)のように変形すれば参照
信号が有色性の強い信号であっても第2項は早く小さく
なる。
【0034】
【数11】
【0035】しかし,この信号伝達系の応答gt から第
m番目の標本値h(m) に対する成分を除いて,
【0036】
【数12】
【0037】とできないことから,式(15)は実際には構
成することができない。実際に,構成できるようにする
ためには,同式の第2項の分母を
【0038】
【数13】
【0039】と置き換えるときに,式(16)のように実際
に構成可能な式が得られる。また,該乱nj を含める
と,式(17)が得られる。
【0040】
【数14】
【0041】すなわち,この信号伝達系の応答gt (外
乱が重畳する場合はyt )と適応フィルタの出力Gt
ら更新するタップに関係する成分Ht (m) Xt (m) を除
いた
【0042】
【数15】
【0043】との差に対して,線形予測分析を適用して
得られた予測残差で更新する係数のタップ出力に相当す
る成分Xt (m) ’との相関を,適用フィルタの当該係数
t (m) に関係するタップ出力Xt (m) と,その無色化
した参照信号成分との積和で正規化することによって有
色性の参照信号に対して収束が早いアルゴリズムが構成
される。
【0044】上記のアルゴリズムの原理を簡単に説明す
れば,式(8) の第2項の式において,分母をエコーキャ
ンセラに対応できるようにXj j ' の積に置き換える
と共に,分子のEj ' j ' の中のEj ' を使わない
で,式(1) のE=y j −Gj (但し,y j =gj
j )を使用して線形予測しないようにしたものに相当
する。
【0045】図1では,線形予測回路6により参照信号
j に対して線形予測分析を行ってその予測残差Xj '
を出力し,その予測残差Xj ' は参照信号Xj と共に係
数更新回路3に保持され,内部で参照信号Xj と予測残
差Xj ' の相関が計算される。また,残差(エコー)E
j (=yj −Gj )と予測誤差Xj ' との相関を取るこ
とで,式(15)の分子(式(8) の第2項の分子に対応) の
値を得ることができ,前回の係数Hj に対して演算が施
されて現在の適応フィルタの係数Hj+1 が得られる。
【0046】
【発明の実施の形態】図2は本発明の実施例1の構成を
示す。図中,10は線形予測回路,11は予測残差記憶
部,12は参照信号記憶部,13は第1の相関計算回
路,14は第2の相関計算回路,15は正規化回路,1
6は加算回路,17は係数記憶部である。
【0047】図1の係数更新回路3は,図2の符号11
〜17の各部を含む構成に相当する。図2の動作を説明
すると,線形予測回路10により参照信号Xj に対して
線形予測分析を行ってその予測残差Xj ' を出力し,そ
の予測残差は予測残差記憶部11に記憶される。参照信
号Xj は参照信号記憶部12に記憶され,第1の相関計
算回路13では,参照信号Xj と予測残差Xj ' の相関
を計算して,式(15)の分母であるXt 2 (m) を置き替え
たXt (m) Xt ’(m) に対応する値が得られ,第2の相
関計算回路14は残差(エコー)Ej (=yj −Gj
と予測誤差記憶部11の予測誤差Xj ' との相関を取る
ことで,式(15)の分子(式(8) の第2項の分子に対応)
の値を得ることができる。第1の相関計算回路13の出
力と第2の相関計算回路14の出力は正規化回路15へ
入力され,別に与えられるステップゲイン(μ)との積
が取られて,その出力は加算回路16において係数記憶
部17から出力された前回の係数Hj と加算され,加算
結果として現在の適応フィルタの係数Hj+1 が得られ
る。
【0048】上記式(12)は適応アルゴリズムの原形の一
つで実際には更に高速化されたアルゴリズムが用いら
れ,その高速化は収束を高速化するための本願の発明者
らが提唱している適応信号処理の別の角度からの理解方
法によれば,t=1からt=jまでの累積加算に残る古
い係数Ht (i) を排除することにより実現される。
【0049】図3はその方法の一つである累積加算を有
限ブロックとする方法を実施する構成ある。図中,30
は上記図2に示す構成を備える適応フィルタの係数計算
部を表し,31は有限ブロック化処理部である。
【0050】この有限ブロックによる高速化法を外乱
(雑音)nj を含む上記のタップ係数の式(17)に適用す
ると,ブロック長をJとして,次の式(18)が得られる。
【0051】
【数16】
【0052】この式はまた, 右辺にHn (m) −Hn (m)
を加え,誤差(Ej =yj −Gj )を導入することで式
(19)のように表される。当然,多くのアルゴリズムと同
様にステップゲイン(ρで表す)を導入することで次の
式(20)が成立し,図3の有限ブロック化処理部31にお
いてこの演算が実行される。
【0053】
【数17】
【0054】図4は個別正規化LMS法に本発明を適用
した結果(収束特性)を表し,本発明の効果を確認する
ために行ったシミュレーションの結果であり,縦軸は推
定誤差(dB),横軸はブロック数(n)を表す。但
し,参照信号は計算機内で合成した白色雑音を係数が
0.8の1次巡回型フィルタに加えて得られた雑音を用
い,その参照信号対外乱のパワー比35dB,適応フィ
ルタのタップ数I=512,ブロック長J=512,ス
テップゲインρ=0.1としている。更に,この参照信
号の相関次数1及び相関係数(0.8)は未知とし,そ
の参照信号に対する線形予測分析は予測次数を8として
ステップゲイン0.1の学習同定法を用いて行ってい
る。
【0055】図4の(1) は上記式(12)の累積加算を有限
なブロックに区切って更新するアルゴリズムが個別正規
化LMS法(藤井健作,大賀寿郎,“固定少数点演算に
適した個別正規化LMS法とその能動騒音制御装置への
適用”,電子情報通信学会論文誌(A) ,Vol.J78-A,no.
6,pp.669-677,(June.1995))として知られる従来の式(2
1)による収束の特性である。図4の(2) が本発明による
収束の特性であり, (1)に比べて本発明は有効に動作
し,有色性の参照信号に対して収束を高速化しているこ
とが分かる。
【0056】
【数18】
【0057】すなわち,無色化した参照信号と残差の積
和を,無色化した参照信号ともとの参照信号との積和で
正規化した結果を現係数に加えることで適応フィルタの
係数は推定される。
【0058】次に上記本願発明者らが提唱している適応
信号処理の別の角度からの理解方法によれば,その累積
加算から古い係数を排出して収束を高速化する方法は次
の式(22)で表す学習同定法に導かれる。
【0059】
【数19】
【0060】上記式(20)と式(21)の関係を式(22)に適用
すると, 本発明の原理を適用して要素で表した次の式(2
3)が導かれる。これをベクトルで表現すると式(24)とな
る。
【0061】
【数20】
【0062】図5は学習同定法に本発明を適用した結果
(収束特性)を表し,(3) は学習同定法の場合で,(4)は
本発明を学習同定法に適用した場合であり,これにより
上記の式(23)に与えるアルゴリズムの効果を確認するこ
とができる。但し,シミュレーションの条件は上記図4
と同じである。明らかに,本発明は(3) に示す学習同定
法に対して式(23)に示すアルゴリズムにおいて(4) に示
すように有効に動作し,有色性の参照信号に対して収束
を高速化していることが分かる。すなわち,無色化した
参照信号と残差の積和を,無色化した参照信号の元の参
照信号との積を全タップについて累積した積和で正規化
した結果を現係数に加えることで適応フィルタの係数は
推定される。
【0063】このように学習同定法に対して要素で表し
た式(23)またはベクトル式(24)の変形が可能であり, ま
た有効に動作するなら学習同定法における正規化を省略
して次の式(25)に示すようなLMS(Least Means Squa
re) 法においても, 同様に成り立つことは明らかである
(請求項6に対応)。
【0064】
【数21】
【0065】次に上記式(17)の収束を早めるためにフィ
ルタの係数を1番新しいものにする方法を使用する。一
般に逐次最小2乗法は参照信号が有色性となる場合でも
収束速度の低下はほとんどないとされているが,それは
外乱(雑音)がない場合についてだけ言えることで,外
乱がある場合はその収束は大きく遅れる。この逐次最小
2乗法にも線形予測分析法を適用した係数更新式を導
き,その係数更新式は線形予測分析法を亜逐次最小2乗
法に適用した結果から得ることができる。その場合,上
記式(17)を次の式(26)と変形することから行われる。
【0066】
【数22】
【0067】すなわち, 上記本願発明者等が提唱する適
応信号処理の別の角度からの理解方法によれば,式(26)
の分子の第2項を構成する疑似エコーの合成を最新の係
数H j (i) を用いて行うことによって収束は非常に高速
化される。その変形は式(26)の分子第2項の加算順序を
入れ換え, 係数Ht (i) を最新の係数Hj (i) と置き換
えることによって行われる。すなわち,亜逐次最小2乗
法に対する線形予測型アルゴリズムは,次の式(27)とし
て得られる。
【0068】
【数23】
【0069】図6は実施例2の構成であり,亜逐次最小
2乗法に対する適応フィルタの係数推定装置の構成を示
し,上記式(27)のアルゴリズムを実現するものである。
図6において,20は第3の相関回路,21は第4の相
関回路,22は第5の相関回路,23は演算回路,24
は引算回路,25は正規化回路,26はメモリである。
【0070】第3の相関回路20は未知系出力yt と参
照信号の予測残差Xt (m) ’とを入力して相関を取り,
その出力を引算回路24に供給し,第4の相関回路21
は参照信号の予測残差Xt (m) ’と参照信号Xt (i)
(i≠m)との相関を取って出力を演算回路23へ供給
する。演算回路23は第4の相関回路21の出力とメモ
リ26から最新の適応フィルタの係数Hj (i) との演算
を行い,その出力は引算回路24へ供給されて第3の相
関回路20からの出力から引算を行い,その結果は正規
化回路25へ供給される。また,第5の相関回路22で
参照信号の予測残差Xt (m) ’と参照信号Xt (m) との
相関をとってその出力は正規化回路25へ供給されて,
引算回路24の出力に対して第5の相関回路22の値に
より割算を行って正規化が行われる。その割算の結果で
ある適応フィルタの係数はメモリ26へ格納される。こ
うして,上記式(27)の計算式は図6の構成により実行す
ることができる。
【0071】次に上記式(27)から逐次最小2乗法を導く
ため, ベクトルと行列で表現すると次の式(28)が得ら
れ,Yj とSj -1 を式(29)と式(30)のように定義
し,式(31)と表され,これを用いて式(32)と表される。
【0072】
【数24】
【0073】一方, 亜逐次最小2乗法は最小2乗法に対
して式(33)と近似して得られる適応アルゴリズムでもあ
る(K.Fujii and J.Ohga,“A new recursive type of le
astsquare algorithm, ”電子情報通信学会技報,EA96-7
1,Nov.1996.) 。
【0074】そこで,式(32)を式(34)と書き換え, その
同様の近似である式(35)を逆に適用すれば, 最小2乗法
の線形予測形アルゴリズムは式(36)のように得られる。
【0075】
【数25】
【0076】この式(36)から逐次最小2乗法の線形予測
形アルゴリズムは最小2乗法からの変形手順に従って,
式(37),(38) が得られる。
【0077】
【数26】
【0078】上記の適応フィルタの係数推定装置の処理
を行うための信号処理プロセッサとしては浮動小数点型
と固定小数点型とがある。固定小数点型のプロセッサは
浮動小数点型に比べ価格が10分の1程度で安価である
が,固定のビット長(例えば16ビット)でそれ以上の
ビットは切り捨てるため,ダイナミックレンジが狭くて
性能が悪いという問題がある。特に,固定ビット長より
小さい数値を乗算した場合には,結果は32ビット長で
あるがメモリに格納する場合には下位の16ビットは切
り捨てられ上位16ビットの“0”になってしまう。こ
のように小さな数値は無視される場合が多くて精度が劣
化して,適応フィルタの係数推定の誤差を大きくする要
因となる。
【0079】そこで,本発明では安価な固定小数点型の
プロセッサを利用しながら精度を下げないようにするた
め,予測残差は極性(±)を表す値に制限した。次の式
(39)は予測残差を極性とした個別正規化LMS法に対応
する線形予測形アルゴリズムであり,式(40)は予測残差
を極性とした学習同定法の線形予測形アルゴリズムであ
る。各式において「sgn」は極性を表し,具体的には
+1または−1の値を取る。
【0080】
【数27】
【0081】このように極性を使用することで,固定小
数点型の信号処理プロセッサでも精度を劣化させること
なく適応フィルタの係数推定の演算処理を行うことがで
きる。
【0082】上記の適応フィルタの係数推定装置を音響
のエコーキャンセラのハードウェアとして構成する場
合,マイクロフォンに入らないような小さな音声信号
(参照信号)に対して係数更新をしても意味がない。本
発明では,このような場合上記式(39),(40) のような極
性化(±1)を使用せず,ステップゲインを掛けるEj
×±1×μではなく,+μ,−μまたは0を掛けるよう
にする。これは次の式により表される。なお,aは正の
整数(マイクロホンに入らないような小さな信号を係数
更新演算から除く定数)である。このように0とμ,−
μを使うことで係数の乱れが防止できる。
【0083】
【数28】
【0084】図7は極性化により有効動作することを確
認するシミュレーションの結果である。(3) は線形予測
を適用しない場合で,(4)は適用した場合である。但し,
シミュレーションの条件は上記図3と同じで,アルゴリ
ズムは上記式(40)等を用いている。明らかに,この
結果から本発明は無色化参照信号の極性化によっても有
効に動作し,有色性の参照信号に対して収束を高速化す
ることが分かる。
【0085】また,図1の構成において,小さな音声が
参照信号(Xj )として入力した場合,マイクロフォン
からの出力yj (応答出力gj +雑音nj )のS/Nが
悪くなる。その場合,出力yj を使って係数更新をする
のにS/Nが悪くなると適応フィルタからのGj での引
算がどの程度であったか分からなくなり,係数更新を行
う場合の係数更新回路からの係数Hj+1 の推定精度が悪
くなる。
【0086】このように参照信号の有色性が問題になる
のは参照信号としてパワーが大きく変動する音声が用い
られるときである。その場合でも,実用的には参照信号
のパワー変動によっても推定誤差を一定に保つ必要があ
り,本発明ではこの問題をブロック長の制御によって解
決する。
【0087】すなわち,このブロック長制御を適用した
線形予測形のアルゴリズムを個別正規化LMS法に適用
したものが式(41)で,その極性化したものが式(42)で表
わされる。これらの式の第2項の分母を監視して,その
値が予め定められた一定値以上となるまでブロック長J
を延長した後に更新することで実現される。
【0088】
【数29】
【0089】また,ブロック長制御を適用した線形予測
形のアルゴリズムを学習同定法に適用したものが式(43)
で,その極性化したものが式(44)で表わされる。これら
の式の第2項の分母が予め定められた一定値以上となる
までブロック長Jを延長した後に更新することで実現さ
れる。
【0090】
【数30】
【0091】このブロック長制御を行うことで,小さい
音声のような参照信号の場合には,ブロック長が長くな
り,大きな信号の場合にはブロック長が短くなること
で,適応フィルタの係数の誤差を少なくすることが可能
となる。
【0092】
【発明の効果】本発明によれば音声のような有色性の参
照信号に対して適応フィルタの係数の収束を高速化する
ことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理構成を示す図である。
【図2】実施例1の構成を示す図である。
【図3】累積加算を有限ブロックとする方法を実施する
構成を示す図である。
【図4】個別正規化LMS法に本発明を適用した結果
(収束特性)を示す図である。
【図5】学習同定法に本発明を適用した結果(収束特
性)を示す図である。
【図6】実施例2の構成を示す図である。
【図7】極性化により有効動作することを確認するシミ
ュレーションの結果を示す図である。
【図8】本発明が適用されるシステムの一般的構成を示
す図である。
【符号の説明】
1 信号伝達系 2 適応フィルタ 3 係数更新回路 4 演算回路 5 演算回路 6 線形予測回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5J023 DC03 DC06 DC07 DD05 5K046 HH05 HH16 HH19 HH24 HH29 HH42 HH79

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 特性が未知の信号伝達系に印加した参照
    信号と,その参照信号に対する該信号伝達系の応答とか
    ら該信号系の特性を模擬する適応フィルタの係数を推定
    する適応フィルタの係数推定装置において,参照信号に
    対して線形予測分析を行って,その予測残差を出力する
    線形予測回路と,その予測残差と,参照信号の相関を計
    算する第1の相関計算回路と,未知の信号伝達系の出力
    と適応フィルタの出力との差と予測残差の出力との相関
    を計算する第2の相関計算回路と,前記第2の相関計算
    回路の出力を前記第1の相関計算回路の出力で正規化す
    る正規化回路と,適応フィルタの前回の係数に前記正規
    化回路の出力を加える加算回路とにより,前記適応フィ
    ルタの係数を更新することを特徴とする適応フィルタの
    係数推定装置。
  2. 【請求項2】 請求項1において,前記第1の相関計算
    回路と第2の相関計算回路の累積加算数に対応するブロ
    ック長を有限に設定することを特徴とする適応フィルタ
    の係数推定装置。
  3. 【請求項3】 請求項1において,前記第1の相関計算
    回路の累積加算数を適応フィルタのタップ数(i=1〜
    I)とすることを特徴とする適応フィルタの係数推定装
    置。
  4. 【請求項4】 請求項1において,前記第2の相関計算
    回路は適応フィルタの係数として最新の係数を使って亜
    逐次最小2乗法を用いて計算することを特徴とする適応
    フィルタの係数推定装置。
  5. 【請求項5】 請求項1において,前記第1の相関計算
    回路と第2の相関計算回路は最小2乗法の変形手順に従
    った線形予測形のアルゴリズムを用いて計算することを
    特徴とする適応フィルタの係数推定装置。
  6. 【請求項6】 請求項1において,前記第1の相関計算
    回路を省略して正規化を行わないことを特徴とする適応
    フィルタの係数推定装置。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至6の何れかにおいて,前記
    第1の相関計算回路と第2の相関計算回路の両方または
    第1の相関計算回路だけの何れかを省略する場合は,相
    関計算に用いる予測残差をその極性(±)を表す値だけ
    とすることを特徴とする適応フィルタの係数推定装置。
  8. 【請求項8】 請求項7において,前記相関計算に用い
    る予測残差をその極性を表す値に対して一定の整数を掛
    けた値または零の値を乗算することを特徴とする適応フ
    ィルタの係数推定装置。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至8の何れかにおいて,学習
    同定法または正規化LMS法において正規化するパワー
    がある一定の大きさになるまでブロック長を調整するこ
    とを特徴とする適応フィルタの係数推定装置。
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