JPWO2005073285A1 - 超臨界流体からの貧溶媒中への急速膨張法を用いた微粒子製造法 - Google Patents
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Abstract
本発明の高分子微粒子の製造方法は、超臨界流体および添加溶媒を含む高圧流体に、高分子材料を溶解または分散させる工程;および、得られた高圧流体を貧溶媒中へ噴出させて急速膨張させる工程;を含む。本発明の製造方法によれば、平均粒子径を制御することが可能な高分子微粒子またはコーティング微粒子が製造できる。
Description
本発明は、高分子微粒子を製造する方法に関する。さらに詳しくは、高圧流体と貧溶媒とを利用する、平均粒子径の制御が可能な微粒子の製造方法に関する。
アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの有機高分子化合物、またはそれらの混合物などの高分子固体原料から微粒子は、従来は、液層重合工程などにより製造されていた。しかし、有害な有機溶媒や界面活性剤を用いるため、環境へ負荷がかかり、また、その粒子径を制御することも困難であった。
本発明者らは、超臨界二酸化炭素の欠点であった高分子に対する低い溶解力を、貧溶媒の特異共存効果により1000倍以上に上昇させ得ることを、熱力学的考察から導き出した。この技術を利用して、本来、ある種の高分子に対して貧溶媒であるエタノールなどを添加溶媒として用い、超臨界流体とこの添加溶媒との混合時にのみ特異的に高分子の溶解度を上昇させ、さらにこの混合物を減圧することによって、塗装用の高分子微粒子を製造する方法を開発した(特開平8−104830号公報および特開平8−113652号公報参照)。この方法では、この混合物を大気中で減圧して急速膨張させる過程で、超臨界流体と添加溶媒とが分離することにより、急速に高分子の溶解度が低下して微粒子が生成する。さらに、添加溶媒自身が揮発性であり、かつ高分子に対して貧溶媒であることから、急速膨張過程で生成した高分子微粒子間の癒着は比較的少ない。
また、本発明者らは、上記貧溶媒の特異共存効果を利用して、芯物質となるタンパク質、薬剤、有機微粒子、無機微粒子、液状物質、ならびにその混合物を、アクリル樹脂などの高分子有機化合物、有機無機化合物、またはそれらとその他の化合物との混合物でコーティングする方法も開発した(特開平11−197494号公報参照)。すなわち、超臨界流体と添加溶媒とを含む高圧流体に上述の物質を溶解し、この混合物を大気中に急速膨張させることにより、コーティングされた微粒子を製造する。
しかし、上記の方法(特開平8−104830号公報、特開平8−113652号公報および特開平11−197494号公報)はいずれも、製造される微粒子の平均粒子径の制御は考慮されていなかった。特に、高分子を超臨界流体と添加溶媒との混合物に加えて溶解させた後、大気中で急速膨張させることにより得られる微粒子は、その形状および分散性が制御されていない。そのため、微粒子製造後に残存する添加溶媒により粒子同士の癒着が起こり、微粒子の形状および平均粒子径を十分に制御することができない。大気中に急速膨張させる際に用いるノズル内での流体の状態によって、微粒子の粒径の調整が可能であるとの報告もあるが(長浜邦雄および劉国堂,高圧力の科学と技術,1996年,第5巻,第1号,50−56頁)、大気中での急速膨張であるため、残存する添加溶媒による微粒子間の癒着の問題は解消されない。
金属または半導体のナノ粒子を得るために、原料を溶解させた超臨界溶液を、大気中ではなく、貧溶媒の溶液中に急速膨張させる方法が報告されている(Sun Y−Pら,Ind.Eng.Chem.Res.,2000年,第39巻,第12号,4663−4669頁;Mediani M.J.ら,J.Phys.Chem.B,2002年,第106巻,第43号,11178−11182頁;およびMediani M.J.ら,ACS Symp.Ser.(Am.Chem.Soc.),2003年,309−323頁)。これらの方法では、超臨界溶液に溶解している原料は金属塩であり、これを、還元剤を含む溶媒中に噴出させた際に還元反応させて、金属ナノ粒子として析出させている。さらに、急速膨張のみではミクロンサイズへの凝集が起こるので(Sun Y−Pら,前出)、これらの方法で用いられている貧溶媒には、粒子の分散を補助して安定化させるためのポリビニルピロリドン(PVP)やウシ血清アルブミン(BSA)などの高分子安定化剤が加えられている。
薬剤の分散溶液を得るために、原料を溶解させた超臨界溶液を、大気中ではなく、貧溶媒である水中に急速膨張させる手法も報告されている(Young T.J.ら,Biotechnol.Prog.,2000年,第16巻,第3号,402−407頁)。安定した薬剤(シクロスポリン)の分散水溶液を得るために、貧溶媒である水中に急速膨張を行うことによって、大気中に急速膨張を行う手法に比べ、生成される粒子の結晶成長を抑制し、その結果、粒子径の小さな粒子を得ることを目的としている。この方法は、さらに安定な分散液を得ることを目的としているので、トゥイーン−80などの界面活性剤の添加が必須である。
本発明者らは、超臨界二酸化炭素の欠点であった高分子に対する低い溶解力を、貧溶媒の特異共存効果により1000倍以上に上昇させ得ることを、熱力学的考察から導き出した。この技術を利用して、本来、ある種の高分子に対して貧溶媒であるエタノールなどを添加溶媒として用い、超臨界流体とこの添加溶媒との混合時にのみ特異的に高分子の溶解度を上昇させ、さらにこの混合物を減圧することによって、塗装用の高分子微粒子を製造する方法を開発した(特開平8−104830号公報および特開平8−113652号公報参照)。この方法では、この混合物を大気中で減圧して急速膨張させる過程で、超臨界流体と添加溶媒とが分離することにより、急速に高分子の溶解度が低下して微粒子が生成する。さらに、添加溶媒自身が揮発性であり、かつ高分子に対して貧溶媒であることから、急速膨張過程で生成した高分子微粒子間の癒着は比較的少ない。
また、本発明者らは、上記貧溶媒の特異共存効果を利用して、芯物質となるタンパク質、薬剤、有機微粒子、無機微粒子、液状物質、ならびにその混合物を、アクリル樹脂などの高分子有機化合物、有機無機化合物、またはそれらとその他の化合物との混合物でコーティングする方法も開発した(特開平11−197494号公報参照)。すなわち、超臨界流体と添加溶媒とを含む高圧流体に上述の物質を溶解し、この混合物を大気中に急速膨張させることにより、コーティングされた微粒子を製造する。
しかし、上記の方法(特開平8−104830号公報、特開平8−113652号公報および特開平11−197494号公報)はいずれも、製造される微粒子の平均粒子径の制御は考慮されていなかった。特に、高分子を超臨界流体と添加溶媒との混合物に加えて溶解させた後、大気中で急速膨張させることにより得られる微粒子は、その形状および分散性が制御されていない。そのため、微粒子製造後に残存する添加溶媒により粒子同士の癒着が起こり、微粒子の形状および平均粒子径を十分に制御することができない。大気中に急速膨張させる際に用いるノズル内での流体の状態によって、微粒子の粒径の調整が可能であるとの報告もあるが(長浜邦雄および劉国堂,高圧力の科学と技術,1996年,第5巻,第1号,50−56頁)、大気中での急速膨張であるため、残存する添加溶媒による微粒子間の癒着の問題は解消されない。
金属または半導体のナノ粒子を得るために、原料を溶解させた超臨界溶液を、大気中ではなく、貧溶媒の溶液中に急速膨張させる方法が報告されている(Sun Y−Pら,Ind.Eng.Chem.Res.,2000年,第39巻,第12号,4663−4669頁;Mediani M.J.ら,J.Phys.Chem.B,2002年,第106巻,第43号,11178−11182頁;およびMediani M.J.ら,ACS Symp.Ser.(Am.Chem.Soc.),2003年,309−323頁)。これらの方法では、超臨界溶液に溶解している原料は金属塩であり、これを、還元剤を含む溶媒中に噴出させた際に還元反応させて、金属ナノ粒子として析出させている。さらに、急速膨張のみではミクロンサイズへの凝集が起こるので(Sun Y−Pら,前出)、これらの方法で用いられている貧溶媒には、粒子の分散を補助して安定化させるためのポリビニルピロリドン(PVP)やウシ血清アルブミン(BSA)などの高分子安定化剤が加えられている。
薬剤の分散溶液を得るために、原料を溶解させた超臨界溶液を、大気中ではなく、貧溶媒である水中に急速膨張させる手法も報告されている(Young T.J.ら,Biotechnol.Prog.,2000年,第16巻,第3号,402−407頁)。安定した薬剤(シクロスポリン)の分散水溶液を得るために、貧溶媒である水中に急速膨張を行うことによって、大気中に急速膨張を行う手法に比べ、生成される粒子の結晶成長を抑制し、その結果、粒子径の小さな粒子を得ることを目的としている。この方法は、さらに安定な分散液を得ることを目的としているので、トゥイーン−80などの界面活性剤の添加が必須である。
本発明は、粒子の形状および平均粒子径を制御することが可能な球形状の高分子微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上述のような貧溶媒の特異共存効果を利用して高分子を高圧流体に溶解させた後、貧溶媒中に噴出させて急速膨張させて過飽和析出を急激に引き起こすことによって、均一に分散した高分子微粒子を製造できるという知見に基づく。本発明においては、噴出させる貧溶媒中に、必ずしもPVP、BSAなどの高分子安定化剤やトゥイーン−80などの界面活性剤を含まなくてもよいことが見出された。さらに、本発明では、貧溶媒の温度、圧力、種類などを変化させることによって、得られる高分子微粒子の平均粒子径を制御することも可能である。また、微粒子への高分子コーティングの厚さも制御可能である。
本発明の高分子微粒子の製造方法は、超臨界流体および添加溶媒を含む高圧流体に、高分子材料を溶解または分散させる工程;および、得られた高圧流体を貧溶媒中へ噴出させて急速膨張させる工程;を含む。
好適な実施態様では、上記貧溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、液体窒素、およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種である。
より好適な実施態様では、上記超臨界流体は、二酸化炭素、アンモニア、メタン、エタン、エチレン、およびブタンからなる群より選択される。
他の好適な実施態様では、上記添加溶媒は、常温で液状態の有機溶媒である。
より好適な実施態様では、上記溶解または分散させる工程において、上記高圧流体の圧力、該高圧流体の温度、上記添加溶媒の量、および上記高分子材料の量のうち少なくとも1つを制御する。
好適な実施態様では、上記急速膨張させる工程において、上記貧溶媒の圧力、温度、および種類のうち少なくとも1つを制御する。
別の好適な実施態様では、上記溶解または分散させる工程において、さらに芯物質を溶解または分散させる。
より好適な実施態様では、上記高分子微粒子は球形状である。
さらに好適な実施態様では、上記急速膨張させる工程において、上記高分子微粒子の表面から上記添加溶媒が効率的に除去される。
本発明の方法においては、高分子を溶解した高圧流体を貧溶媒中に急速膨張させることによって、高分子微粒子の癒着の原因となる添加溶媒が貧溶媒中に拡散するため、大気中に急速膨張させる場合よりも、高分子微粒子から添加溶媒を容易に除去することが可能である。さらに、急速膨張により生成した高分子溶液の微小液滴(高分子微粒子の前駆体)が貧溶媒中に分散すると、この液滴に対して界面張力が働いて、効果的に球形状の粒子が形成される。したがって、本発明の方法によれば、分散性の良好な高分子微粒子を安定して製造することができる。また、本発明の方法によれば、製造する高分子微粒子の平均粒子径ならびに微粒子への高分子コーティングの厚さを定量的に制御することができる。
本発明は、上述のような貧溶媒の特異共存効果を利用して高分子を高圧流体に溶解させた後、貧溶媒中に噴出させて急速膨張させて過飽和析出を急激に引き起こすことによって、均一に分散した高分子微粒子を製造できるという知見に基づく。本発明においては、噴出させる貧溶媒中に、必ずしもPVP、BSAなどの高分子安定化剤やトゥイーン−80などの界面活性剤を含まなくてもよいことが見出された。さらに、本発明では、貧溶媒の温度、圧力、種類などを変化させることによって、得られる高分子微粒子の平均粒子径を制御することも可能である。また、微粒子への高分子コーティングの厚さも制御可能である。
本発明の高分子微粒子の製造方法は、超臨界流体および添加溶媒を含む高圧流体に、高分子材料を溶解または分散させる工程;および、得られた高圧流体を貧溶媒中へ噴出させて急速膨張させる工程;を含む。
好適な実施態様では、上記貧溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、液体窒素、およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種である。
より好適な実施態様では、上記超臨界流体は、二酸化炭素、アンモニア、メタン、エタン、エチレン、およびブタンからなる群より選択される。
他の好適な実施態様では、上記添加溶媒は、常温で液状態の有機溶媒である。
より好適な実施態様では、上記溶解または分散させる工程において、上記高圧流体の圧力、該高圧流体の温度、上記添加溶媒の量、および上記高分子材料の量のうち少なくとも1つを制御する。
好適な実施態様では、上記急速膨張させる工程において、上記貧溶媒の圧力、温度、および種類のうち少なくとも1つを制御する。
別の好適な実施態様では、上記溶解または分散させる工程において、さらに芯物質を溶解または分散させる。
より好適な実施態様では、上記高分子微粒子は球形状である。
さらに好適な実施態様では、上記急速膨張させる工程において、上記高分子微粒子の表面から上記添加溶媒が効率的に除去される。
本発明の方法においては、高分子を溶解した高圧流体を貧溶媒中に急速膨張させることによって、高分子微粒子の癒着の原因となる添加溶媒が貧溶媒中に拡散するため、大気中に急速膨張させる場合よりも、高分子微粒子から添加溶媒を容易に除去することが可能である。さらに、急速膨張により生成した高分子溶液の微小液滴(高分子微粒子の前駆体)が貧溶媒中に分散すると、この液滴に対して界面張力が働いて、効果的に球形状の粒子が形成される。したがって、本発明の方法によれば、分散性の良好な高分子微粒子を安定して製造することができる。また、本発明の方法によれば、製造する高分子微粒子の平均粒子径ならびに微粒子への高分子コーティングの厚さを定量的に制御することができる。
図1は、本発明の方法の実施に使用され得る装置の一例の模式図である。
図2は、本発明の方法により得られたポリ乳酸微粒子の走査型電子顕微鏡写真である(実施例1)。
図3は、本発明の方法により得られたポリ乳酸微粒子の粒度分布を示すグラフである(実施例1)。
図4は、本発明により得られたポリ乳酸微粒子の圧力変化と平均粒子径との関係を示すグラフである(実施例2)。
図5は、ポリ乳酸の仕込み量と微粒子の平均粒子径との関係を示すグラフである(実施例3)。
図6は、コーティング材であるポリエチレングリコールの添加量とコーティング微粒子の平均粒子径との関係を示すグラフである(実施例4)。
図7は、ノズルと水面との距離と、ポリ乳酸微粒子の平均粒子径との関係を示すグラフである(実施例6)。
図2は、本発明の方法により得られたポリ乳酸微粒子の走査型電子顕微鏡写真である(実施例1)。
図3は、本発明の方法により得られたポリ乳酸微粒子の粒度分布を示すグラフである(実施例1)。
図4は、本発明により得られたポリ乳酸微粒子の圧力変化と平均粒子径との関係を示すグラフである(実施例2)。
図5は、ポリ乳酸の仕込み量と微粒子の平均粒子径との関係を示すグラフである(実施例3)。
図6は、コーティング材であるポリエチレングリコールの添加量とコーティング微粒子の平均粒子径との関係を示すグラフである(実施例4)。
図7は、ノズルと水面との距離と、ポリ乳酸微粒子の平均粒子径との関係を示すグラフである(実施例6)。
本発明の高分子微粒子の製造方法は、超臨界流体および添加溶媒を含む高圧流体に、高分子材料を溶解または分散させる工程;および、得られた高圧流体を貧溶媒中へ噴出させて急速膨張させる工程;を含む。本発明においては、超臨界流体および添加溶媒を含む高圧流体に、微粒子の原料である高分子材料などを溶解させ、貧溶媒中に急速に噴出させ、過飽和析出を引き起こすことにより高分子微粒子を安定して製造する。
本発明において、「超臨界流体」とは、臨界温度および臨界圧力を超えた温度および圧力下の流体をいうが、亜臨界流体を包含する場合もある。このような超臨界流体としては、その化学種は特に限定されない。例えば、常温で気体状態の有機ガスが用いられ得る。二酸化炭素、一酸化炭素、アンモニア、メタン、エタン、プロパン、エチレン、ブタンなどが好ましく、二酸化炭素、アンモニア、メタン、エタン、エチレン、およびブタンがより好ましく、二酸化炭素およびエチレンがさらに好ましい。
本発明において、「貧溶媒」とは、目的の微粒子の原料またはコーティング用の原料である高分子材料(以下で詳述する)を溶解する能力を有するが、溶解度が極めて低い溶媒をいう。したがって、貧溶媒は、使用する高分子の種類に応じて適宜選択される。このような貧溶媒としては、極性溶媒が好ましく、常温で液状態の溶媒がより好ましい。例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール;アセトン;酢酸などの低分子量の溶媒が挙げられる。あるいは、液体窒素も用いられ得る。
本発明において、「添加溶媒」とは、通常、使用する高分子に対する貧溶媒から選択される。また、添加溶媒は、常温で気体状態の溶媒であってもよい。なお、本発明の方法で使用される添加溶媒と貧溶媒とは、同じまたは異なっていてもよい。このような添加溶媒としては、二酸化炭素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、酢酸、水、メタノール、エタノール、アンモニアなどの低分子量の化学物質が好適である。
本発明において、「高圧流体」とは、超臨界〜臨界圧力下の流体をいい、本発明においては、特に超臨界流体および添加溶媒を含む流体をいう。高圧流体は、通常、気体状態であるが、液状態の物質を含んでいてもよい。
本発明において、「高分子微粒子」とは、高分子材料からなる微粒子あるいは高分子材料によってコーティングされた微粒子をいう。微粒子とは、粒径が1000μm以下の粒子をいい、好適には500μm以下、より好適には100μm以下の粒子である。
本発明において、「高分子材料」とは、目的の高分子微粒子の原料またはコーティング用の原料としての高分子などの化学種をいう。高分子材料は特に限定されず、例えば、以下の物質が挙げられる:ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、アクリル樹脂(ポリアクリル酸;ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリル酸エステル)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリシロキサン、デキストラン、ゼラチン、でん粉、セルロース類(酪酸セルロース、ニトロセルロースなど)、糖類、キチン類、ポリペプチド、およびそれらを構成成分とする高分子共重合体、ならびにそれらを含む混合物など。
高分子材料によってコーティングされる微粒子(以下、コーティング微粒子という場合もある)の芯物質は特に限定されず、有機物質および無機物質であり得る。一般に、医薬品、食品添加物、複写・記録・表示、電子素子などの材料として使用されている物質が挙げられる。
芯物質として適した有機物質としては、例えば、以下の物質が挙げられる:タンパク質(例えば、ツベラクチノマイシン、ポリミキシン、インスリン、リゾチーム、α−キモトリプシン、ペプシン、卵白アルブミン、血清アルブミン、アミラーゼ、リパーゼ、カゼインなど);薬用成分(例えば、バイカリン、バイカレイン、クエルセチンなどのフラボノイド;アセチルサリチル酸;アセトアミノフェノン;パパベリン;テトラサイクリンなどの抗生物質など);食品添加物および香料(例えば、クルクミン、カロテノイド、ペパーミントなど);染料および塗料(例えば、ロイコ染料、セラック、マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、カーボンブラックなど)。
芯物質に適した無機物質としては、電子素子として電子機器分野の当業者に公知の硫化物、珪素化合物、金属、金属化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類化合物などの任意の無機物質が用いられ得る。このような無機物質としては、例えば、以下の物質が挙げられる:硫化物(例えば、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化ナトリウムなど);珪素化合物(例えば、二酸化珪素など);金属(例えば、鉄、ニッケル、コバルト、ステンレス、銅、亜鉛など);酸化物(例えば、酸化鉄、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化モリブデン、酸化マンガン、酸化銅、酸化タルタンなど);金属化合物(例えば、フェライト、MnFe2O4、MnFe2O4、ZnFe2O4、NiFe2O4、CuFe2O4など)。
本発明の高分子微粒子の製造方法においては、まず、超臨界流体および添加溶媒を含む高圧流体に、高分子材料、および/または芯物質を溶解または分散させる。この工程において、超臨界流体、添加溶媒、高分子材料、および/または芯物質を混合する順序は、特に限定されない。例えば、予め超臨界流体と添加溶媒とを含む高圧流体を調製し、これに高分子材料および/または芯物質を溶解または分散させてもよく;あるいは、予め添加溶媒と高分子材料および/または芯物質とを混合した後、さらに超臨界流体を加えて、高分子材料および/または芯物質を溶解または分散させてもよい。このとき、高分子材料および/または芯物質は、予め少量の添加溶媒に溶解または分散されていてもよい。
本発明においては、高分子材料約3質量部に対して、超臨界流体は、通常は50〜300質量部の割合、好ましくは約100〜200質量部の割合で使用される。また、添加溶媒は、超臨界溶媒100質量部に対して、通常は5〜100質量部の割合、好ましくは20〜30質量部の割合で使用される。この工程における圧力は、超臨界流体の急速膨張を効率的に行うために、7.2〜30MPaであることが好ましく、より好ましくは15〜25MPaである。温度は273〜353Kであることが好ましく、より好ましくは298〜313Kである。
次いで、高分子材料および/または芯物質を含む高圧流体を、貧溶媒中へ噴出させて急速膨張させる。この工程において、高圧流体を貧溶媒中へ噴出させる手段は、特に限定されない。例えば、高圧状態下で混合溶解した高圧流体を、ノズルなどを用いて、貧溶媒中に噴出させる手段;微粒子を分散させる貧溶媒中に界面活性剤などを予め溶解させて、高圧流体を吹き込む手段などであってもよい。貧溶媒の種類、圧力、温度などを適宜変化させることにより、高分子の分散性をさらに良好にすることができる。本発明では、高分子材料5gに対して、貧溶媒を20〜200mlの割合で使用することが、粒子の分散性の点で好ましい。また、貧溶媒の温度は273〜353Kであることが好ましく、より好ましくは298〜313Kである。あるいは、例えば噴出手段であるノズルと貧溶媒の液面との距離を調整することによっても、粒子径を制御することができる。ノズルと液面との距離が近いほど、粒子径が小さくかつ粒度分布が小さい粒子を得ることができ、特に、ノズルと液面とが接していることが好ましい。
本発明の方法で使用され得る微粒子製造装置は、上記の工程を行い得る装置であれば、特に限定されない。高圧状態下で混合溶解した高圧流体を、ノズルなどを用いて、貧溶媒中に噴出させて急速に膨張させて微粒子を得る方法に用い得る装置としては、例えば、図1に示すような装置を使用することができる。この図1に示す装置を例に挙げて、本発明をより具体的に説明する。
図1に示す装置は、ボンベ1からストップバルブV−3までの昇圧部、その下流のストップバルブV−6までの混合部、およびさらに下流の微粒子を急速に膨張させて分散させるための貧溶媒を含む粒子分散部を含む構成である。ここでは、超臨界流体として二酸化炭素を、添加溶媒としてエタノールを、高分子材料としてポリ乳酸を、そして貧溶媒として水を用いる場合を例に挙げて、図1に基づいて説明する。
昇圧部は、主として、超臨界流体(二酸化炭素)の供給用ボンベ1、添加溶媒(エタノール)の供給用タンク4、それぞれの昇圧用ポンプ5Aおよび5B、および超臨界流体と添加溶媒とを混合するための攪拌セル9とを備える。なお、超臨界流体と添加溶媒とを予め混合しない場合は、タンク4の系は設けられていなくてもよい。
液体二酸化炭素が充填されるボンベ1と昇圧用ポンプ5Aとの間には、乾燥管2、フィルター3A、冷却ユニット13、およびフィルター3Bが設けられる。
乾燥管2には、乾燥剤が充填されており、ボンベ1からの液体二酸化炭素がこの乾燥管2を通過することにより、液体二酸化炭素中の水分が除去される。なお、以下に記載の実施例においては、乾燥管2として、GLサイエンス(株)製のキャリヤーガス乾燥管(Gas Driers;材質SUS316、最高使用圧力20MPa、内径35.5mm、長さ310mm)を使用し、乾燥剤として、GLサイエンス(株)製のモレキュラーシーブ(1/16インチペレット)を使用した。
冷却ユニット13内には、例えば、エチレングリコールが充填されており、このエチレングリコールは約260Kに冷却されるように構成される。上記乾燥剤によって、水分が除去された液体二酸化炭素は、このエチレングリコールによって冷却され、昇圧用ポンプ5Aに供給される。なお、以下に記載の実施例では、冷却ユニット13として、ヤマト科学製BL−22を使用した。
冷却ユニット13の前後には、フィルター3Aおよび3Bが設けられる。このフィルターによって、ゴミなどの不純物を除去し、昇圧用ポンプ5A内に不純物が混入するのを防止する。以下に記載の実施例では、フィルターとして、細孔平均径が約10μmのフィルター(GLサイエンス(株)製FT4−10型)を使用した。
昇圧用ポンプ5Aとしては、GLサイエンス(株)製の高圧用シングルプランジャーポンプAPS−5L(最大圧力58.8MPa、常用圧力49.0MPa、流量0.5〜5.2ml/分)を使用した。昇圧用ポンプ5Aのヘッド部分には、液体二酸化炭素の気化を防ぐために冷却器が装着される。
また、昇圧部には、圧力調節弁V−1が設けられ、この圧力調節弁V−1によって、昇圧部および混合部の系内の圧力を任意の圧力に設定する。なお、以下に記載の実施例では、圧力調節弁V−1として、TESCOM製の26−1721−24を使用した。この圧力調節弁V−1は、圧力±0.1MPa以内の精度で系内の圧力を制御でき、最大使用圧力は41.5MPaである。
昇圧部には、圧力計6Aが設けられ、圧力計6Aによって系内の圧力を測定する。圧力計6Aには、上限接点出力端子が設けられ、指定圧力で、昇圧用ポンプ5Aの電源を切るように設定される。以下に記載の実施例では、圧力計6Aは、ブルドン式のGLサイエンス(株)製LCG−350(最大使用圧力34.3MPa)を使用した。なお、この圧力計6Aは、司測研(株)製エコノミー圧力計PE−33−A(歪ゲージ式、精度±0.3%)によって検定されたものを使用した。
一方、添加溶媒タンク4と攪拌セル9との間には、昇圧用ポンプ5B、逆止弁8、およびストップバルブV−2が配置される。添加溶媒タンク4に充填された添加溶媒(エタノール)は、昇圧用ポンプ5Bにより逆止弁8を通過し、攪拌セル9内に供給され、ボンベ1から供給された二酸化炭素と混合される。あるいは、添加溶媒は、以下に詳述する混合部の高圧セル15内に、高分子材料とともに供給されてもよい。攪拌セル9は、恒温槽11内に設置されており、攪拌セル9内の二酸化炭素と添加溶媒(エタノール)とは、攪拌機10を用いて攪拌される。なお、以下の実施例では、逆止弁として、AKICO製SS−53F4:最大使用圧力34.3MPaを使用し、そして攪拌セル9として、AKICO製クイック開閉型抽出セル(材質SUS316.設計圧力39.2MPa(400kg/cm2)、設計温度423.15K(150℃)、内径55mm、高さ110mm、内容積250ml)を使用した。また、恒温槽11内は、チノーの温度制御器DB1000により、水温が±0.1℃で制御され、そして温度測温部12として、チノー製の白金抵抗測温体1TPF483を用いた。
昇圧部と混合部との間には、ストップバルブV−3が配置され、このストップバルブV−3によって混合部の流体の流出を制御できる。なお、以下に記載の実施例では、ストップバルブV−3としてGLサイエンス(株)製の2Way Valve02−0120(最大使用圧力98.0MPa)を使用した。
また、昇圧部と混合部との間には、安全性を確保するために、安全弁7Aが設けられ得る。以下に記載の実施例においては、安全弁7Aとして、NUPRO製のスプリング式の安全弁を使用し、配管には、ステンレス管を使用した。
次に、混合部は、主として、水恒温槽18、およびその内部に配置される予熱カラム14および高圧セル15を備える。
水恒温槽18は、内部に配置される高圧セル15の温度を制御する。以下に記載の実施例においては、チノーの温度制御器DB1000により、水温が±0.1℃で制御され、温度測温部17として、チノー製の白金抵抗測温体1TPF483を用いた。
昇圧部から供給される液体二酸化炭素とエタノールとの混合物は、予熱カラム14へ送られる。この混合物は、次いで、ストップバルブV−4およびV−5を調節することにより、高圧セル15に導入される。
高圧セル15には、高分子材料(ポリ乳酸)、および必要に応じて芯物質および/または少量の添加溶媒が、予め投入される。高圧セル15内のポリエステルおよび導入された二酸化炭素とエタノールとの混合物を撹拌するために、変速型撹拌用モーター16が設置される。その撹拌速度は、好ましくは20〜300rpmであり、デジタル回転表示計により撹拌シャフトの回転数を表示し得る。さらに、高圧セル15内の圧力を測定するために、圧力計6Bを設けている。以下に記載の実施例においては、高圧セル15として、AKICO製クイック開閉型抽出セル(材質SUS316、設計圧力39.2MPa(400kg/cm2)、設計温度423.15K(150℃)、内径55mm、高さ220mm、内容積500ml)を使用した。また、変速型撹拌用モーター16と高圧セル15内の撹拌翼とは、電磁式ノンシール撹拌機(材質SUS316)により接続した。圧力計6Bとしては、山崎計器製作所製ブルドン式圧力計E93004(最大圧力49.0MPa)を使用し、この圧力計の検定には、司測研(株)製エコノミー圧力計PE−33−A(歪ゲージ式、精度±0.3%FS、FS:kgf/cm2)を使用した。また、温度測温部17には、チノー(株)製の白金抵抗測温体を用いた。
また、高圧セル15内の圧力上昇による爆発を防止する目的で、高圧セル15の上部に安全弁7Bを設置し得る。安全弁7Bには、NUPRO製(スプリング式、177−R3AKI−G)を使用した。
混合部に続く粒子分散部は、空気恒温槽23内に、貧溶媒を含む貧溶媒セル21と圧力緩衝用セル22とを備える。
高分子材料(ポリ乳酸)を溶解した高圧流体は、保護管19を通り、ノズル20から、空気恒温槽23中に設置された貧溶媒(水)を含む貧溶媒セル21内に噴射され、貧溶媒中に粒子が分散される。貧溶媒セル21内に生じる余分な圧力は、ストップバルブV−7を介して連通している圧力緩衝用セル22により緩衝され得る。貧溶媒中に噴射されて高分子含有流体が急速膨張する際に温度調節を行うために、貧溶媒セル21および圧力緩衝用セル22は、ヒータを有している。また、減圧に伴う試料の凝縮および超臨界流体(二酸化炭素)によるドライアイスの発生を防ぐために、保護管19およびノズル20もヒータを有している。以下に記載の実施例において、貧溶媒セル21および圧力緩衝用のセル22は、GLサイエンス(株)製のセル(SUS316、設計圧力34.3MPa、設計温度373.15K(100℃)、内径45mm、高さ161.5mm、内容積250ml)を使用した。保護管19は、1/8インチステンレス管(SUS316、外径3.175mm、内径2.17mm、長さ約1m)を使用した。空気恒温槽23の内容積は、125dm3であり、チノー(株)製温度制御器DB1000により、恒温槽内の温度が±0.05℃で制御される。ノズル20としては、スプレーイングシステムジャパン製ユニジェットノズル(オリフィス直径0.28mm、最高使用圧力280kg/cm2)を用いた。
高分子溶液がセル21中で急速膨張すると、高分子がセル21中の貧溶媒中で析出し、微粒化する。バルブV−7を開けてセル21内部を減圧した後、セル21および22を開け、高分子微粒子が分散している貧溶媒を取り出す。減圧乾燥により貧溶媒を除去することによって、高分子微粒子のみを回収できる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明において、「超臨界流体」とは、臨界温度および臨界圧力を超えた温度および圧力下の流体をいうが、亜臨界流体を包含する場合もある。このような超臨界流体としては、その化学種は特に限定されない。例えば、常温で気体状態の有機ガスが用いられ得る。二酸化炭素、一酸化炭素、アンモニア、メタン、エタン、プロパン、エチレン、ブタンなどが好ましく、二酸化炭素、アンモニア、メタン、エタン、エチレン、およびブタンがより好ましく、二酸化炭素およびエチレンがさらに好ましい。
本発明において、「貧溶媒」とは、目的の微粒子の原料またはコーティング用の原料である高分子材料(以下で詳述する)を溶解する能力を有するが、溶解度が極めて低い溶媒をいう。したがって、貧溶媒は、使用する高分子の種類に応じて適宜選択される。このような貧溶媒としては、極性溶媒が好ましく、常温で液状態の溶媒がより好ましい。例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール;アセトン;酢酸などの低分子量の溶媒が挙げられる。あるいは、液体窒素も用いられ得る。
本発明において、「添加溶媒」とは、通常、使用する高分子に対する貧溶媒から選択される。また、添加溶媒は、常温で気体状態の溶媒であってもよい。なお、本発明の方法で使用される添加溶媒と貧溶媒とは、同じまたは異なっていてもよい。このような添加溶媒としては、二酸化炭素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、酢酸、水、メタノール、エタノール、アンモニアなどの低分子量の化学物質が好適である。
本発明において、「高圧流体」とは、超臨界〜臨界圧力下の流体をいい、本発明においては、特に超臨界流体および添加溶媒を含む流体をいう。高圧流体は、通常、気体状態であるが、液状態の物質を含んでいてもよい。
本発明において、「高分子微粒子」とは、高分子材料からなる微粒子あるいは高分子材料によってコーティングされた微粒子をいう。微粒子とは、粒径が1000μm以下の粒子をいい、好適には500μm以下、より好適には100μm以下の粒子である。
本発明において、「高分子材料」とは、目的の高分子微粒子の原料またはコーティング用の原料としての高分子などの化学種をいう。高分子材料は特に限定されず、例えば、以下の物質が挙げられる:ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、アクリル樹脂(ポリアクリル酸;ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリル酸エステル)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリシロキサン、デキストラン、ゼラチン、でん粉、セルロース類(酪酸セルロース、ニトロセルロースなど)、糖類、キチン類、ポリペプチド、およびそれらを構成成分とする高分子共重合体、ならびにそれらを含む混合物など。
高分子材料によってコーティングされる微粒子(以下、コーティング微粒子という場合もある)の芯物質は特に限定されず、有機物質および無機物質であり得る。一般に、医薬品、食品添加物、複写・記録・表示、電子素子などの材料として使用されている物質が挙げられる。
芯物質として適した有機物質としては、例えば、以下の物質が挙げられる:タンパク質(例えば、ツベラクチノマイシン、ポリミキシン、インスリン、リゾチーム、α−キモトリプシン、ペプシン、卵白アルブミン、血清アルブミン、アミラーゼ、リパーゼ、カゼインなど);薬用成分(例えば、バイカリン、バイカレイン、クエルセチンなどのフラボノイド;アセチルサリチル酸;アセトアミノフェノン;パパベリン;テトラサイクリンなどの抗生物質など);食品添加物および香料(例えば、クルクミン、カロテノイド、ペパーミントなど);染料および塗料(例えば、ロイコ染料、セラック、マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、カーボンブラックなど)。
芯物質に適した無機物質としては、電子素子として電子機器分野の当業者に公知の硫化物、珪素化合物、金属、金属化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類化合物などの任意の無機物質が用いられ得る。このような無機物質としては、例えば、以下の物質が挙げられる:硫化物(例えば、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化ナトリウムなど);珪素化合物(例えば、二酸化珪素など);金属(例えば、鉄、ニッケル、コバルト、ステンレス、銅、亜鉛など);酸化物(例えば、酸化鉄、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化モリブデン、酸化マンガン、酸化銅、酸化タルタンなど);金属化合物(例えば、フェライト、MnFe2O4、MnFe2O4、ZnFe2O4、NiFe2O4、CuFe2O4など)。
本発明の高分子微粒子の製造方法においては、まず、超臨界流体および添加溶媒を含む高圧流体に、高分子材料、および/または芯物質を溶解または分散させる。この工程において、超臨界流体、添加溶媒、高分子材料、および/または芯物質を混合する順序は、特に限定されない。例えば、予め超臨界流体と添加溶媒とを含む高圧流体を調製し、これに高分子材料および/または芯物質を溶解または分散させてもよく;あるいは、予め添加溶媒と高分子材料および/または芯物質とを混合した後、さらに超臨界流体を加えて、高分子材料および/または芯物質を溶解または分散させてもよい。このとき、高分子材料および/または芯物質は、予め少量の添加溶媒に溶解または分散されていてもよい。
本発明においては、高分子材料約3質量部に対して、超臨界流体は、通常は50〜300質量部の割合、好ましくは約100〜200質量部の割合で使用される。また、添加溶媒は、超臨界溶媒100質量部に対して、通常は5〜100質量部の割合、好ましくは20〜30質量部の割合で使用される。この工程における圧力は、超臨界流体の急速膨張を効率的に行うために、7.2〜30MPaであることが好ましく、より好ましくは15〜25MPaである。温度は273〜353Kであることが好ましく、より好ましくは298〜313Kである。
次いで、高分子材料および/または芯物質を含む高圧流体を、貧溶媒中へ噴出させて急速膨張させる。この工程において、高圧流体を貧溶媒中へ噴出させる手段は、特に限定されない。例えば、高圧状態下で混合溶解した高圧流体を、ノズルなどを用いて、貧溶媒中に噴出させる手段;微粒子を分散させる貧溶媒中に界面活性剤などを予め溶解させて、高圧流体を吹き込む手段などであってもよい。貧溶媒の種類、圧力、温度などを適宜変化させることにより、高分子の分散性をさらに良好にすることができる。本発明では、高分子材料5gに対して、貧溶媒を20〜200mlの割合で使用することが、粒子の分散性の点で好ましい。また、貧溶媒の温度は273〜353Kであることが好ましく、より好ましくは298〜313Kである。あるいは、例えば噴出手段であるノズルと貧溶媒の液面との距離を調整することによっても、粒子径を制御することができる。ノズルと液面との距離が近いほど、粒子径が小さくかつ粒度分布が小さい粒子を得ることができ、特に、ノズルと液面とが接していることが好ましい。
本発明の方法で使用され得る微粒子製造装置は、上記の工程を行い得る装置であれば、特に限定されない。高圧状態下で混合溶解した高圧流体を、ノズルなどを用いて、貧溶媒中に噴出させて急速に膨張させて微粒子を得る方法に用い得る装置としては、例えば、図1に示すような装置を使用することができる。この図1に示す装置を例に挙げて、本発明をより具体的に説明する。
図1に示す装置は、ボンベ1からストップバルブV−3までの昇圧部、その下流のストップバルブV−6までの混合部、およびさらに下流の微粒子を急速に膨張させて分散させるための貧溶媒を含む粒子分散部を含む構成である。ここでは、超臨界流体として二酸化炭素を、添加溶媒としてエタノールを、高分子材料としてポリ乳酸を、そして貧溶媒として水を用いる場合を例に挙げて、図1に基づいて説明する。
昇圧部は、主として、超臨界流体(二酸化炭素)の供給用ボンベ1、添加溶媒(エタノール)の供給用タンク4、それぞれの昇圧用ポンプ5Aおよび5B、および超臨界流体と添加溶媒とを混合するための攪拌セル9とを備える。なお、超臨界流体と添加溶媒とを予め混合しない場合は、タンク4の系は設けられていなくてもよい。
液体二酸化炭素が充填されるボンベ1と昇圧用ポンプ5Aとの間には、乾燥管2、フィルター3A、冷却ユニット13、およびフィルター3Bが設けられる。
乾燥管2には、乾燥剤が充填されており、ボンベ1からの液体二酸化炭素がこの乾燥管2を通過することにより、液体二酸化炭素中の水分が除去される。なお、以下に記載の実施例においては、乾燥管2として、GLサイエンス(株)製のキャリヤーガス乾燥管(Gas Driers;材質SUS316、最高使用圧力20MPa、内径35.5mm、長さ310mm)を使用し、乾燥剤として、GLサイエンス(株)製のモレキュラーシーブ(1/16インチペレット)を使用した。
冷却ユニット13内には、例えば、エチレングリコールが充填されており、このエチレングリコールは約260Kに冷却されるように構成される。上記乾燥剤によって、水分が除去された液体二酸化炭素は、このエチレングリコールによって冷却され、昇圧用ポンプ5Aに供給される。なお、以下に記載の実施例では、冷却ユニット13として、ヤマト科学製BL−22を使用した。
冷却ユニット13の前後には、フィルター3Aおよび3Bが設けられる。このフィルターによって、ゴミなどの不純物を除去し、昇圧用ポンプ5A内に不純物が混入するのを防止する。以下に記載の実施例では、フィルターとして、細孔平均径が約10μmのフィルター(GLサイエンス(株)製FT4−10型)を使用した。
昇圧用ポンプ5Aとしては、GLサイエンス(株)製の高圧用シングルプランジャーポンプAPS−5L(最大圧力58.8MPa、常用圧力49.0MPa、流量0.5〜5.2ml/分)を使用した。昇圧用ポンプ5Aのヘッド部分には、液体二酸化炭素の気化を防ぐために冷却器が装着される。
また、昇圧部には、圧力調節弁V−1が設けられ、この圧力調節弁V−1によって、昇圧部および混合部の系内の圧力を任意の圧力に設定する。なお、以下に記載の実施例では、圧力調節弁V−1として、TESCOM製の26−1721−24を使用した。この圧力調節弁V−1は、圧力±0.1MPa以内の精度で系内の圧力を制御でき、最大使用圧力は41.5MPaである。
昇圧部には、圧力計6Aが設けられ、圧力計6Aによって系内の圧力を測定する。圧力計6Aには、上限接点出力端子が設けられ、指定圧力で、昇圧用ポンプ5Aの電源を切るように設定される。以下に記載の実施例では、圧力計6Aは、ブルドン式のGLサイエンス(株)製LCG−350(最大使用圧力34.3MPa)を使用した。なお、この圧力計6Aは、司測研(株)製エコノミー圧力計PE−33−A(歪ゲージ式、精度±0.3%)によって検定されたものを使用した。
一方、添加溶媒タンク4と攪拌セル9との間には、昇圧用ポンプ5B、逆止弁8、およびストップバルブV−2が配置される。添加溶媒タンク4に充填された添加溶媒(エタノール)は、昇圧用ポンプ5Bにより逆止弁8を通過し、攪拌セル9内に供給され、ボンベ1から供給された二酸化炭素と混合される。あるいは、添加溶媒は、以下に詳述する混合部の高圧セル15内に、高分子材料とともに供給されてもよい。攪拌セル9は、恒温槽11内に設置されており、攪拌セル9内の二酸化炭素と添加溶媒(エタノール)とは、攪拌機10を用いて攪拌される。なお、以下の実施例では、逆止弁として、AKICO製SS−53F4:最大使用圧力34.3MPaを使用し、そして攪拌セル9として、AKICO製クイック開閉型抽出セル(材質SUS316.設計圧力39.2MPa(400kg/cm2)、設計温度423.15K(150℃)、内径55mm、高さ110mm、内容積250ml)を使用した。また、恒温槽11内は、チノーの温度制御器DB1000により、水温が±0.1℃で制御され、そして温度測温部12として、チノー製の白金抵抗測温体1TPF483を用いた。
昇圧部と混合部との間には、ストップバルブV−3が配置され、このストップバルブV−3によって混合部の流体の流出を制御できる。なお、以下に記載の実施例では、ストップバルブV−3としてGLサイエンス(株)製の2Way Valve02−0120(最大使用圧力98.0MPa)を使用した。
また、昇圧部と混合部との間には、安全性を確保するために、安全弁7Aが設けられ得る。以下に記載の実施例においては、安全弁7Aとして、NUPRO製のスプリング式の安全弁を使用し、配管には、ステンレス管を使用した。
次に、混合部は、主として、水恒温槽18、およびその内部に配置される予熱カラム14および高圧セル15を備える。
水恒温槽18は、内部に配置される高圧セル15の温度を制御する。以下に記載の実施例においては、チノーの温度制御器DB1000により、水温が±0.1℃で制御され、温度測温部17として、チノー製の白金抵抗測温体1TPF483を用いた。
昇圧部から供給される液体二酸化炭素とエタノールとの混合物は、予熱カラム14へ送られる。この混合物は、次いで、ストップバルブV−4およびV−5を調節することにより、高圧セル15に導入される。
高圧セル15には、高分子材料(ポリ乳酸)、および必要に応じて芯物質および/または少量の添加溶媒が、予め投入される。高圧セル15内のポリエステルおよび導入された二酸化炭素とエタノールとの混合物を撹拌するために、変速型撹拌用モーター16が設置される。その撹拌速度は、好ましくは20〜300rpmであり、デジタル回転表示計により撹拌シャフトの回転数を表示し得る。さらに、高圧セル15内の圧力を測定するために、圧力計6Bを設けている。以下に記載の実施例においては、高圧セル15として、AKICO製クイック開閉型抽出セル(材質SUS316、設計圧力39.2MPa(400kg/cm2)、設計温度423.15K(150℃)、内径55mm、高さ220mm、内容積500ml)を使用した。また、変速型撹拌用モーター16と高圧セル15内の撹拌翼とは、電磁式ノンシール撹拌機(材質SUS316)により接続した。圧力計6Bとしては、山崎計器製作所製ブルドン式圧力計E93004(最大圧力49.0MPa)を使用し、この圧力計の検定には、司測研(株)製エコノミー圧力計PE−33−A(歪ゲージ式、精度±0.3%FS、FS:kgf/cm2)を使用した。また、温度測温部17には、チノー(株)製の白金抵抗測温体を用いた。
また、高圧セル15内の圧力上昇による爆発を防止する目的で、高圧セル15の上部に安全弁7Bを設置し得る。安全弁7Bには、NUPRO製(スプリング式、177−R3AKI−G)を使用した。
混合部に続く粒子分散部は、空気恒温槽23内に、貧溶媒を含む貧溶媒セル21と圧力緩衝用セル22とを備える。
高分子材料(ポリ乳酸)を溶解した高圧流体は、保護管19を通り、ノズル20から、空気恒温槽23中に設置された貧溶媒(水)を含む貧溶媒セル21内に噴射され、貧溶媒中に粒子が分散される。貧溶媒セル21内に生じる余分な圧力は、ストップバルブV−7を介して連通している圧力緩衝用セル22により緩衝され得る。貧溶媒中に噴射されて高分子含有流体が急速膨張する際に温度調節を行うために、貧溶媒セル21および圧力緩衝用セル22は、ヒータを有している。また、減圧に伴う試料の凝縮および超臨界流体(二酸化炭素)によるドライアイスの発生を防ぐために、保護管19およびノズル20もヒータを有している。以下に記載の実施例において、貧溶媒セル21および圧力緩衝用のセル22は、GLサイエンス(株)製のセル(SUS316、設計圧力34.3MPa、設計温度373.15K(100℃)、内径45mm、高さ161.5mm、内容積250ml)を使用した。保護管19は、1/8インチステンレス管(SUS316、外径3.175mm、内径2.17mm、長さ約1m)を使用した。空気恒温槽23の内容積は、125dm3であり、チノー(株)製温度制御器DB1000により、恒温槽内の温度が±0.05℃で制御される。ノズル20としては、スプレーイングシステムジャパン製ユニジェットノズル(オリフィス直径0.28mm、最高使用圧力280kg/cm2)を用いた。
高分子溶液がセル21中で急速膨張すると、高分子がセル21中の貧溶媒中で析出し、微粒化する。バルブV−7を開けてセル21内部を減圧した後、セル21および22を開け、高分子微粒子が分散している貧溶媒を取り出す。減圧乾燥により貧溶媒を除去することによって、高分子微粒子のみを回収できる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
上記の装置を利用して、ポリ乳酸の微粒子を製造した。
まず、予め、高圧セル15の中にポリ乳酸5g(分子量10000)および添加溶媒としてエタノール200mlを加え、貧溶媒セル21に貧溶媒としての水を充填した後、これらのセル15および21をそれぞれ所定の位置に設置した。
次いで、バルブV−2を閉じた状態で、ボンベ1より二酸化炭素を供給し、二酸化炭素の上限圧力を圧力調節弁V−1で調節し、水恒温槽18内の温度を上記温度制御器によって313.15±0.2Kに、保護管の温度を350.15±0.5Kにした。次いで、混合部の全てのバルブ(V−4、V−5、およびV−6)を閉じた状態で、バルブV−3を開け、混合部へ二酸化炭素を送った。バルブV−5を開け、高圧セル15内が所定の圧力(25MPa)になるまでしばらく放置した。高圧セル15内を撹拌モーター16により撹拌した。デジタル回転表示計により撹拌シャフトの回転速度を調整し、系全体を25MPaまで加圧・調整し、圧力が一定となった後、高圧セル15内を撹拌モーター16により撹拌して約30分間放置した。
次いで、バルブV−6を開け、25MPaから20MPaまで減圧させながら、二酸化炭素とエタノールとを含む高圧流体中に溶解していたポリ乳酸を、ノズル20より貧溶媒を含むセル21中に急速噴射して分散させた。同時に、バルブV−7を開けて圧力緩衝用セル22で圧力を緩衝させた後、貧溶媒である水と一緒にポリ乳酸微粒子を回収した。
得られた微粒子を、島津製作所製走査電子顕微鏡(SEM−EDX)SSX−550により観察した。ポリ乳酸微粒子の走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。図2からわかるように、平均粒子径の均一な微粒子が得られた。
また、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALD−2000)により粒度分布も測定した。その結果を図3に示す。図3において、カラムは各サイズに相当する粒子の相対割合(容量%)を示し、実線はその累積%を示す。図3から、粒度分布に偏りのないことが明らかである。
[実施例2]
減圧条件を変化させたこと以外は、実施例1と同様に微粒子を製造した。具体的には、バルブV−6を開け、セル内を実施例1に示した25MPaから20MPaまで、20MPaから15MPaまで、および15MPaから10MPaまで減圧させて、貧溶媒中に急速膨張噴射を行い、微粒子を回収した。上記の微粒子を含む貧溶媒をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALD−2000)により粒度分布を測定した。結果を図4に示す。
図4からわかるように、減圧条件を変化させることにより平均粒子径の制御が可能である。
[実施例3]
ポリ乳酸の仕込み量を変化させたこと以外は実施例1と同様にして、微粒子の粒度分布の測定を行った。結果を図5に示す。
図5からわかるように、減圧条件を一定とした場合、高分子材料を多く仕込むことにより、より大きな粒子径を有するポリ乳酸微粒子が得られ、平均粒子径の制御が可能であることが示された。
[実施例4]
ポリ乳酸の代わりに、芯物質として無機粒子である二酸化珪素粒子(平均粒径10μm)およびコーティング用の高分子材料として5〜50gの範囲のポリエチレングリコール(分子量7500)を用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して、コーティング微粒子を製造した。図6に、生成されたコーティング微粒子の平均粒子径とポリエチレングリコールの仕込み量との関係を示す。この図より、減圧条件を一定とした場合、高分子材料の量を制御することにより、微粒子の粒子径を制御できることがわかる。
[実施例5]
貧溶媒としてそれぞれメタノール、エタノール、プロパノールおよびアセトンを用いたこと以外は、実施例1と同様にポリエステルの微粒子を製造した。その結果、メタノール、エタノール、プロパノールおよびアセトンを用いても、製造した微粒子の平均粒子径を制御できることが示された(データは示さず)。
[実施例6]
ノズル20先端と貧溶媒セル21に仕込んだ水の水面との距離を変化させたこと以外は、実施例1と同様に微粒子を製造し、粒度分布を測定した。結果を図7に示す。図7から、ノズルと水面との距離を変化させることにより、平均粒子径の距離が制御可能であることがわかる。
上記の装置を利用して、ポリ乳酸の微粒子を製造した。
まず、予め、高圧セル15の中にポリ乳酸5g(分子量10000)および添加溶媒としてエタノール200mlを加え、貧溶媒セル21に貧溶媒としての水を充填した後、これらのセル15および21をそれぞれ所定の位置に設置した。
次いで、バルブV−2を閉じた状態で、ボンベ1より二酸化炭素を供給し、二酸化炭素の上限圧力を圧力調節弁V−1で調節し、水恒温槽18内の温度を上記温度制御器によって313.15±0.2Kに、保護管の温度を350.15±0.5Kにした。次いで、混合部の全てのバルブ(V−4、V−5、およびV−6)を閉じた状態で、バルブV−3を開け、混合部へ二酸化炭素を送った。バルブV−5を開け、高圧セル15内が所定の圧力(25MPa)になるまでしばらく放置した。高圧セル15内を撹拌モーター16により撹拌した。デジタル回転表示計により撹拌シャフトの回転速度を調整し、系全体を25MPaまで加圧・調整し、圧力が一定となった後、高圧セル15内を撹拌モーター16により撹拌して約30分間放置した。
次いで、バルブV−6を開け、25MPaから20MPaまで減圧させながら、二酸化炭素とエタノールとを含む高圧流体中に溶解していたポリ乳酸を、ノズル20より貧溶媒を含むセル21中に急速噴射して分散させた。同時に、バルブV−7を開けて圧力緩衝用セル22で圧力を緩衝させた後、貧溶媒である水と一緒にポリ乳酸微粒子を回収した。
得られた微粒子を、島津製作所製走査電子顕微鏡(SEM−EDX)SSX−550により観察した。ポリ乳酸微粒子の走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。図2からわかるように、平均粒子径の均一な微粒子が得られた。
また、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALD−2000)により粒度分布も測定した。その結果を図3に示す。図3において、カラムは各サイズに相当する粒子の相対割合(容量%)を示し、実線はその累積%を示す。図3から、粒度分布に偏りのないことが明らかである。
[実施例2]
減圧条件を変化させたこと以外は、実施例1と同様に微粒子を製造した。具体的には、バルブV−6を開け、セル内を実施例1に示した25MPaから20MPaまで、20MPaから15MPaまで、および15MPaから10MPaまで減圧させて、貧溶媒中に急速膨張噴射を行い、微粒子を回収した。上記の微粒子を含む貧溶媒をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALD−2000)により粒度分布を測定した。結果を図4に示す。
図4からわかるように、減圧条件を変化させることにより平均粒子径の制御が可能である。
[実施例3]
ポリ乳酸の仕込み量を変化させたこと以外は実施例1と同様にして、微粒子の粒度分布の測定を行った。結果を図5に示す。
図5からわかるように、減圧条件を一定とした場合、高分子材料を多く仕込むことにより、より大きな粒子径を有するポリ乳酸微粒子が得られ、平均粒子径の制御が可能であることが示された。
[実施例4]
ポリ乳酸の代わりに、芯物質として無機粒子である二酸化珪素粒子(平均粒径10μm)およびコーティング用の高分子材料として5〜50gの範囲のポリエチレングリコール(分子量7500)を用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して、コーティング微粒子を製造した。図6に、生成されたコーティング微粒子の平均粒子径とポリエチレングリコールの仕込み量との関係を示す。この図より、減圧条件を一定とした場合、高分子材料の量を制御することにより、微粒子の粒子径を制御できることがわかる。
[実施例5]
貧溶媒としてそれぞれメタノール、エタノール、プロパノールおよびアセトンを用いたこと以外は、実施例1と同様にポリエステルの微粒子を製造した。その結果、メタノール、エタノール、プロパノールおよびアセトンを用いても、製造した微粒子の平均粒子径を制御できることが示された(データは示さず)。
[実施例6]
ノズル20先端と貧溶媒セル21に仕込んだ水の水面との距離を変化させたこと以外は、実施例1と同様に微粒子を製造し、粒度分布を測定した。結果を図7に示す。図7から、ノズルと水面との距離を変化させることにより、平均粒子径の距離が制御可能であることがわかる。
本発明によれば、分散性の良好な高分子微粒子を安定して製造することができる。また、本発明の方法によれば、製造する高分子微粒子の平均粒子径ならびに微粒子への高分子コーティングの厚さを定量的に制御することができる。したがって、本発明の方法によって得られる高分子微粒子は、より機能性が付与された材料として、食品、医薬品、化粧品、微小画像素子、トナー、塗料、触媒担体、液体クロマトグラフ用分離カラムの充填剤の担体などに利用され得る。
Claims (9)
- 超臨界流体および添加溶媒を含む高圧流体に、高分子材料を溶解または分散させる工程;および、得られた高圧流体を貧溶媒中へ噴出させて急速膨張させる工程;を含む、高分子微粒子の製造方法。
- 前記貧溶媒が、水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、液体窒素、およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
- 前記超臨界流体が、二酸化炭素、アンモニア、メタン、エタン、エチレン、およびブタンからなる群より選択される、請求項1または2に記載の方法。
- 前記添加溶媒が、常温で液状態の有機溶媒である、請求項1から3のいずれかの項に記載の方法。
- 前記溶解または分散させる工程において、前記高圧流体の圧力、該高圧流体の温度、前記添加溶媒の量、および前記高分子材料の量のうち少なくとも1つを制御する、請求項1から4のいずれかの項に記載の方法。
- 前記急速膨張させる工程において、前記貧溶媒の圧力、温度、および種類のうち少なくとも1つを制御する、請求項1から5のいずれかの項に記載の方法。
- 前記溶解または分散させる工程において、さらに芯物質を溶解または分散させる、請求項1から6のいずれかの項に記載の方法。
- 前記高分子微粒子が球形状である、請求項1から7いずれかの項に記載の方法。
- 前記急速膨張させる工程において、前記高分子微粒子の表面から前記添加溶媒が効率的に除去される、請求項1から8いずれかの項に記載の方法。
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