JPWO2005052205A1 - 溶接部靱性に優れた高張力鋼および海洋構造物 - Google Patents
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Abstract
Description
より具体的には、本発明は、建築物、土木構造物、建設機械、船舶、パイプ、タンク、海洋構造物等において溶接構造物として使用される溶接用高張力鋼、特に海洋構造物に用いられる溶接用高張力鋼および海洋構造物に関するものであり、例えば、降伏強度420N/mm2以上、板厚50mm以上の厚肉高強度鋼板およびそれを用いた海洋構造物に関するものである。
このため、これらの海洋構造物に用いられる鋼材には、例えば−40℃以下という非常に厳しい低温域での靱性が要求されると共に、溶接性も当然要求される。
しかしながら、特公平7−81164号公報では、板厚30mm、溶接入熱量40kJ/cmで得た溶接継手のシャルピー特性を評価したに過ぎず、大入熱溶接に対応した材料とは考え難い。
(i)Cu添加鋼をベースとして、N、Al含有量の調整に加え、N/Al比をコントロールすること。
(iii)靱性、特に低温CTOD特性を確保するためには、Cu粒子をある程度粗大化させ、かつ分散量を抑制する必要があること。
(v)Cu粒子の分布状態について、TEM写真より求まる円相当径の平均値および平面換算面積率で整理することにより、強度靱性バランスが制御可能であること。
つまり、高Cu成分材では、溶接割れ感受性指数Pcm値を低減するほどHAZ靱性改善が可能であり、そのためには低C、低Mn化が有効であることが分かった。ただし、高強度を確保するためには、他元素による補填が必要であり、Moの添加量をコントロールすることで、強度/靱性の安定化が可能であることも分かった。
(1)質量%で、C:0.01〜0.10%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、P:0.020%以下、S:0.01%以下、Cu:0.8〜1.5%、Ni:0.2〜1.5%、Al:0.001〜0.05%、N:0.0030〜0.0080%、O:0.0005〜0.0035%を含有し、残部がFeおよび不純物であって、かつN/Alが0.3〜3.0であることを特徴とする高張力鋼。
(2)質量%で、Ti:0.005〜0.03%を含有することを特徴とする上記(1)記載の高張力鋼。
(3)質量%で、Nb:0.003〜0.03%を含有する上記(1)または(2)記載の高張力鋼。
(4)質量%で、Mo:0.1〜0.8%を含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の高張力鋼。
(5)質量%で、Cr:0.03〜0.80%、V:0.001〜0.05%、B:0.0002〜0.0020の一種以上を含有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の高張力鋼。
(6)質量%で、Ca:0.0005〜0.005%、Mg:0.0001〜0.005%、REM:0.0001〜0.01%の一種以上を含有することを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の高張力鋼。
(7)下記(I)式で示すPcmが0.25以下であり、鋼中に分散した長径が1nm以上のCu粒子について、円相当径の平均値が4〜25nmであり、かつ平面率換算分布量が3〜20%であることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の高張力鋼。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の高張力鋼を用いた海洋構造物。
Cは、鋼の強度確保のため、およびNb、V等の添加時に組織微細化の効果を生じさせるために添加される。0.01%未満ではこれらの効果が十分でない。しかし、Cが多過ぎると溶接部に島状マルテンサイト(M−A:martensite-austenite constituent)と呼ばれる硬化組織を生成してHAZ靱性を悪化させるとともに母材の靱性および溶接性にも悪影響を及ぼす。従って、Cは0.10%以下とする。好ましくは0.02〜0.08%、更に好ましくは0.02〜0.05%である。
これは、N/Al比が0.3より小さい場合は、粗大AlNが析出し、これ自体が靱性に悪影響を及ぼすのに加え、TiNの微細/多量な分散が阻害されるためと考えられる。一方N/Al比が3.0を超える場合は、固溶Nが増大し、HAZ靱性が劣化するのに加え、AlN、TiNの分散密度が疎疎になるためと考えられる。効果をより発揮させるための、好ましい範囲は0.4〜2.5である。
Pcmは溶接割れ感受性を表す指数であり、その値が0.25以下であれば、通常の溶接施工条件で溶接割れが生じない。したがってPcmは0.25以下とする。Pcmを低くすると溶接時の予熱を省略することができる。好ましくは0.22以下、さらに好ましくは0.20以下である。
d=√(4a/pai) a:投影面積(nm2) 、d:円相当径(nm)、pai:3.14
によって求める。
海洋構造物に用いられる鋼の特徴としては、嵐の波浪による外力に耐えるため、最大板厚100mm 近くの極厚高張力鋼になる場合が多く、また今後、厳しい状況で使用されることから、さらに厳しいCTOD値を満たすことが要求される。
従来のCu添加鋼においては、海洋構造物用への適用例がほとんどなく、厳しいCTOD値要求がなかったので、このようなCu析出粒子の平均径や分布量を厳密に制御する必要がなかった。
円相当径を4〜25nmにするのは強度と靱性のバランスのためであり、平面率換算分布量を3〜20%とするのも強度と靱性のバランスのためである。
(1) Cu添加量は多いほど分布量は多くなる。粒子径に与える影響については適正添加範囲であれば主に時効処理前の組織、時効処理の温度および時間で平均粒径が決まる。適正添加量より少なければCu粒子の析出が不十分で粒子径は小さく、多ければ粒子径は大きくなる傾向にある。
転位あるいは結晶粒界などがCu粒子の析出サイトになるので、このような析出サイトを多く含む組織とすることが、Cu粒子径を細かくし分布量を多くする。このためには鋼の成分を適切に制御するとともに圧延条件を適切にし、その後の水冷条件もフェライト・ベイナイト主体の微細組織となるように選ぶ必要がある。
上述の3つの因子を適宜調整して、本発明鋼を製造すればよく、以上の開示からすれば当業者には本発明の実施は困難ではない。
上記のような鋼成分組成であってもCuの析出硬化を十分に発揮させ、更に厚さ50mm以上の厚肉材の板厚方向各位置の強度および靱性を均一に高靱化させ、且つ降伏強度を向上させるためには、製造方法が適切でなければならない。
次に、熱間圧延後、水冷された鋼は、その後、必要により加熱を行って、540 ℃以上Ac1 点以下の温度で時効処理を行い、次いで冷却する。
本明細書で「溶接性」に優れたと言った場合、通常は、溶接入熱量300 kJ/cm以上のアーク溶接が可能であることを意味するが、溶接法としてはその他、サブマージアーク溶接、被覆アーク溶接などであってもよい。
その後、各時効温度まで再加熱し、各保持時間保持した。ここで加熱速度は、時効温度−100℃までの平均加熱速度を10℃/分となるように制御し、冷却速度は、500℃までの平均冷却速度が10℃/分となるよう制御した。(これらの条件については、表3および表4に時効処理条件と表記)
このようにして得られた鋼の引張試験は、ASTM規格に準拠し、平行部12.5mm直径の引張試験片を圧延方向に対し直角方向の板厚中央より採取し、実施した。
溶接継手部は、BS7448規格に準拠し、K開先加工した鋼板突き合わせ部に10.0kJ/cmのFCAW溶接(Flux Cored Arc Welding)を実施して得た。このようにして得られた継手について、CTOD試験片の疲労ノッチがV型開先のストレート部側の溶接線となるように加工を行って得た試験片に、−40℃にてCTOD試験を実施した。
Claims (9)
- 質量%で、C:0.01〜0.10%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、P:0.020%以下、S:0.01%以下、Cu:0.8〜1.5%、Ni:0.2〜1.5%、Al:0.001〜0.05%、N:0.003〜0.008%、O:0.0005〜0.0035%を含有し、残部がFeおよび不純物であって、かつN/Alが0.3〜3.0であることを特徴とする高張力鋼。
- 質量%で、Ti:0.005〜0.03%を含有することを特徴とする請求項1記載の高張力鋼。
- 質量%で、Nb:0.003〜0.03%を含有することを特徴とする請求項1または2記載の高張力鋼。
- 質量%で、Mo:0.1〜0.8%を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高張力鋼。
- 質量%で、Cr:0.03〜0.80%、B:0.0002〜0.002の1種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の高張力鋼。
- 質量%で、V:0.001〜0.05%を含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の高張力鋼。
- 質量%で、Ca:0.0005〜0.005%、Mg:0.0001〜0.005%、REM:0.0001〜0.01%の1種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の高張力鋼。
- 下記(I) 式で示すPcmが0.25以下であり、鋼中に分散した長径が1nm以上のCu粒子について、円相当径の平均値が4〜25nmであり、かつ平面率換算分布量が3〜20%であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の高張力鋼。
Pcm=C+(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10 )+5B・・・(I) - 請求項1〜8のいずれかに記載の高張力鋼を用いた海洋構造物。
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