JP7119888B2 - Uoe鋼管用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

Uoe鋼管用鋼板およびその製造方法 Download PDF

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本発明はUOE鋼管用鋼板およびその製造方法に関する。
ラインパイプは、地上または海底において天然ガス、石油等(以下、「天然ガス等」という。)の輸送に用いられる鋼管であり、酸化性ガスを含む厳しい腐食環境で使用される。このような腐食環境において、ラインパイプには、割れが生じることがある。具体的には、水素誘起割れ(以下、「HIC(Hydrogen Induced Cracking)」ともいう。)、および、硫化物応力腐食割れ(以下、「SSC(Sulfide Stress Cracking)ともいう。)」と呼ばれる割れである。
HICは、以下のメカニズムが発生要因として知られている。最初に、鋼管が硫化水素(HS)を含む環境において使用されると、水素がイオン化されて鋼管中に吸蔵される。続いて、鋼管中に存在する介在物が水素をトラップすることで、鋼管内に高い応力が発生し、内部に亀裂を生じさせるというものである。
SSCは、以下のメカニズムが発生要因として知られている。鋼管内では、天然ガス等が流動し、HSが存在する。このHSが存在すると、表面から水素の侵入が生じる。また、鋼管の表面の部位には、天然ガス等の輸送により大きな応力が加わる。SSCは、このような水素の侵入と、表面にかかる応力とに起因すると考えられる。そして、SSCは、鋼管表面の硬さが高いほどが生じやすくなるが、SSCの割れの進展を抑制できれば、鋼管の安全性を高めることができる。
近年では、パイプラインにおける天然ガス等の輸送効率を向上させることが求められている。このため、パイプラインにおいては、従来よりも高い輸送圧を設定し、天然ガス等を流す場合が増加している。
上述の輸送圧との関係において、最も一般的な規格として、NACE規格の気圧1bar下における試験が定められている。しかしながら、高い輸送圧が設定される場合は、上記試験気圧よりも高圧となる場合が考えられる。このような輸送圧の上昇により、パイプラインに使用されるラインパイプ(以下、単に「ラインパイプ」と記載する。)には高い強度が要求される。
特許文献1および2においては、表面硬さを規定した鋼板が開示されている。具体的には、特許文献1で開示された鋼板は、組織、化学組成、および介在物を制御している。さらに、上記鋼板は、鋼板の表側表面、裏側表面から深さ1mmの箇所の硬さを抑制することで、冷間曲げ加工性を高めている。
また、特許文献2には、板厚、板幅方向の硬さのばらつき、表層の最高硬さを規定することで、鋼板の伸びのばらつき、および伸びの低下を抑制する鋼管素材である鋼板が開示されている。
特開2007-100190号公報 特開2013-227670号公報
輸送圧の上昇に起因し、ラインパイプにおいては上述の割れの発生および進展のリスクが増大する。このため、ラインパイプには、強度とともに、良好な耐HIC特性、および耐SSC特性が求められる。上述の特許文献1および2においては、鋼板では強度等についての検討はなされている。しかしながら、例えば、耐HIC特性、および上記特性と強度等とのバランスについては、十分な検討がされていない。
HICを回避するために、CおよびMn含有量を低減し、HIC発生の原因となる偏析または介在物を低減する必要がある。また、硬さを上昇させる低温変態組織(マルテンサイト、ベイナイト等)を極力低減し、低温変態組織が発生し易い中心偏析を減少させることも必要となる。しかしながら、CおよびMnは強度確保に不可欠な成分であり、これら元素を低減することは、鋼管の強度低下を招く。
CおよびMnを低減することで生じる強度の低下は、圧延後に加速冷却をし、組織を制御することで抑制できる場合がある。しかしながら、天然ガス等の輸送効率を高めるため、パイプラインでの輸送圧を大きくしようとすると、ラインパイプを厚肉にせざるを得ない。
このような場合、薄肉のラインパイプの素材鋼板と比較し、組織制御(中心偏析の低減、表層制御)が困難になる。この結果、所望する耐食性(耐HIC特性および耐SSC特性)と、強度との両立が難しくなる。
加えて、ラインパイプには、地震時、凍土融解または凍結時などの地盤移動によるパイプラインの破壊を防止するため、高い耐震特性を有することも要求される。一方、所望する上記特性を維持しつつ、耐震特性を確保することについては難しい。
本発明は、上記の問題を解決し、良好な耐食性(耐HIC特性および耐SSC特性)と強度とを備え、さらに、耐震特性をも有するUOE鋼管用鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記のUOE鋼管用鋼板およびその製造方法を要旨とする。
(1)UOE鋼管に用いられる鋼板であって、
前記鋼板の化学組成が、質量%で、
C:0.03~0.06%、
Si:0.05~0.30%、
Mn:1.00~1.50%、
P:0.008%以下、
S:0.0006%以下、
Nb:0.005~0.080%、
V:0.005~0.050%、
Ti:0.005~0.030%、
Al:0.005~0.060%、
N:0.0020~0.0060%、
Ca:0.0005~0.0060%、
Cu:0~0.50%、
Ni:0~0.75%、
Cr:0~0.50%、
Mo:0~0.50%、
B:0~0.0005%、
Mg:0~0.01%、
REM:0~0.05%、
残部:Feおよび不純物であり、
前記鋼板の表面から板厚方向に1mmの深さ位置までの領域おける金属組織が、面積率で、
80%以上のフェライトを含み、
前記鋼板の表面から板厚方向に1/4厚さ位置における金属組織が、面積率で、
50~78%のフェライト、および
20~48%のパーライトを含み、
残部が2%以下の不可避的生成組織であり、
前記鋼板の表面、表面から板厚方向に0.4mmの深さ位置、および板厚中心部における硬さが、200HV10以下であり、
板厚が10~40mmであり、
引張強さが460~760MPaである、UOE鋼管用鋼板。
(2)前記化学組成が、質量%で、
Cu:0.05~0.50%、
Ni:0.05~0.75%、
Cr:0.05~0.50%、および
Mo:0.02~0.50%、
から選択される1種以上を含有し、かつ、下記(i)式を満足する、上記(1)に記載のUOE鋼管用鋼板。
Cu+Ni+Cr+Mo<0.80 ・・・(i)
但し、(i)式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、含有しない場合は0とする。
(3)前記化学組成が、質量%で、
B:0.0002~0.0005%、
を含有する、上記(1)または(2)に記載のUOE鋼管用鋼板。
(4)前記化学組成が、質量%で、
Mg:0.0005~0.01%、および
REM:0.0005~0.05%、
から選択される1種以上を含有する、上記(1)~(3)のいずれかに記載のUOE鋼管用鋼板。
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載のUOE鋼管用鋼板の製造方法であって、
(a)上記(1)~(4)のいずれかに記載の化学組成を有するスラブを、下記(ii)式を満たす加熱温度で加熱する工程と、
(b)加熱された前記スラブを、最終1パスがAr点~Ar点+40℃の温度域となる条件で圧延する工程と、
(c)Ar点以上の温度域から冷却を開始して500~600℃の温度域で冷却を停止し、前記冷却時における平均冷却速度が10~25℃/sとなる条件で冷却する工程と、を有し、
前記(b)および(c)の工程における、Ar点は下記(iii)式により定義される、UOE鋼管用鋼板の製造方法。
6770/{2.26-log(Nb・C)}-273≦T(℃)<6770/{2.26-log(Nb・C)}-73 ・・・(ii)
Ar(℃)=910-310C-80Mn-20Cu-15Cr-55Ni-80Mo+0.35(t-8) ・・・(iii)
但し、上記式中の記号は以下により定義され、元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、含有しない場合は0とする。
T(℃):加熱温度
t(mm):圧延完了後の鋼板の板厚
本発明によれば、良好な耐食性(耐HIC特性および耐SSC特性)と強度とを備え、さらに、耐震特性をも有するUOE鋼管用鋼板を得ることができる。
本発明者らは所望する特性を有するUOE鋼管用鋼板を得るため、検討を行い、以下の(a)~(d)の知見を得た。
(a)耐HIC特性を確保するために、中央偏析部の介在物を減少させることが有効である。具体的には、C、およびMnの含有量を従来鋼より低くし、さらに不純物であるPおよびSを低減させることが有効である。この結果、UOE鋼管用鋼板(以下、単に「鋼板」ともいう。)の板厚中心部での偏析を抑制し、中央偏析部における硬化組織を減少させることができる。また、Caを含有させ、MnS等の粗大介在物を無害化することも有効である。
(b)耐SSC特性を確保するためには、UOE鋼管の表面、特に、UOE鋼管の内側表面における硬さを制御することが有効である。具体的には、UOE鋼管の内側表面の硬さが高くなるにつれ、割れの進展速度が上昇し、鋼管破壊時の危険性が増加する。このため、素材である鋼板の表面を改質し、表層硬さを一定以下とすることで、SSCの割れの進展を抑制することができる。
(c)上述の耐HIC特性および耐SSC特性を具備させ、かつ一定以上の強度を確保するためには、素材である鋼板の製造条件、特に、圧延および冷却条件を適切に制御する必要がある。
(d)耐震特性を確保するためには、鋼板の組織を降伏比が低くなる金属組織とすることが有効である。具体的には、主として、フェライトおよびパーライトを含む金属組織とする。これらの組織においては、炭化物が析出し、鋼板の板厚中心部において、偏析が生じやすくなるため、耐HIC特性および強度が低下する。しかしながら、C、P、およびS含有量を低減し、厳格に制御することで、耐HIC特性の大幅な低下を抑制することができる。
本発明はUOE鋼管に用いられる鋼板であり、上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
1.化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.03~0.06%
一般に、Cは鋼の強度に大きな影響を及ぼす元素として知られる。C含有量が0.03%未満であると、ラインパイプなどの用途において所望する強度を得ることが難しい。このため、C含有量は0.03%以上とし、0.04%以上とするのが好ましい。しかしながら、C含有量が0.06%を超えると、連続鋳造時に鋳片の厚み中心部においてマクロ偏析が生じやすくなる。そして、上記マクロ偏析は、HIC割れの発生原因となる。このため、C含有量は0.06%以下とし、0.05%以下とするのが好ましい。
Si:0.05~0.30%
Siは、鋼の製造プロセスでは、一般に、脱酸元素として鋼中の酸素濃度を低減する効果がある。また、Siは鋼を強化し、強度を高める効果を有する。このため、Si含有量は0.05%以上とし、0.10%以上とするのが好ましい。しかしながら、Si含有量が0.30%を超えると、島状マルテンサイトが生成し、HAZ靱性を低下させる。このため、Si含有量は0.30%以下とする。
また、Siは、Tiとの間に強い相互作用を有し、TiNの生成に影響を及ぼす。そして、Si含有量が増加するに伴い、Tiを意図的に含有させない場合であっても、TiNが生成しやすくなる。Si含有量が過剰であると、このTiNを核としてNb炭窒化物が析出する可能性も高い。この結果、耐HIC特性が劣化する場合がある。したがって、Si含有量は0.25%未満とするのが好ましい。
Mn:1.00~1.50%、
Mnは、一般に鋼材の強度に大きな影響を与える元素であり、Mn含有量が1.00%未満では十分な強度を得ることが難しい。このため、Mn含有量は1.00%以上とし、1.05%以上とするのが好ましい。しかしながら、Mn含有量が1.50%を超えると、中心偏析部で濃化し、耐HIC特性を劣化させる。このため、Mn含有量は1.50%以下とする。さらに、中心偏析部での耐HIC性能を確実に確保するためには、Mn含有量は1.40%以下とするのが好ましい。
P:0.008%以下
Pは、鋼中に含有される不純物元素であり、可能な限り低減するのが望ましい。また、Pは凝固時の固液界面における分配係数が小さいため、極めて偏析しやすい。このように、Pは中心偏析部で濃化しやすく、耐HIC特性を劣化させる。このため、P含有量は0.008%以下とする。
S:0.0006%以下
Sも鋼中に含有される不純物元素であり、可能な限り低減するのが望ましい。また、Sは、Pと同様に、凝固時の固液界面における分配係数が小さく、極めて偏析しやすい。この点に加え、Sは、偏析部においてMnSを生成し、生成したMnSはHICの発生起点となる。このため、S含有量は0.0006%以下とし、0.0005%以下とするのが好ましい。
Nb:0.005~0.080%
Nbは、鋼中で炭窒化物を形成し鋼の強度を高めるとともに、靱性の向上にも有効な元素である。特に、熱加工制御(「TMCP(Thermo Mechanical Control Process)」という。)において、固溶および析出を制御し、鋼板の金属組織(ミクロ組織)を制御するために用いられる。このため、Nb含有量は0.005%以上とし、0.020%以上とするのが好ましい。しかしながら、粗大なNb炭窒化物はHICの発生原因となる。このため、Nb含有量は0.080%以下とし、0.050%以下とするのが好ましい。
V:0.005~0.050%
Vは、鋼中でフェライト中に固溶する、または炭窒化物を形成することで、鋼の強度を高める。このため、V含有量は0.005%以上とし、0.010%以上とするのが好ましい。しかしながら、V含有量が0.050%を超えると、溶接熱影響部での析出状況が変化するため、靱性に悪影響を与えることが懸念される。このため、V含有量は0.050%以下とし、0.040%以下とするのが好ましい。
Ti:0.005~0.030%
Tiは鋼の強度を向上させる効果を有する。連続鋳造の鋳片の曲げ、矯正時において、NbN、またはAlNが、オーステナイト粒界に動的析出することで、鋳片表面割れが発生することがある。Tiは、鋼中のNをTiNとして固定し、NbN、またはAlNの析出量を減少させるため、鋳片表面割れを防止する効果も有する。このため、Ti含有量は0.005%以上とし、0.010%以上とするのが好ましい。
しかしながら、過剰にTiを含有させると溶接部靭性の低下を招く。また、TiNはHICの発生原因となる粗大なNb炭窒化物が析出する際の析出核として機能する。さらに、Ti炭窒化物自体もHICの発生原因となるため、過剰にTiを含有させると耐HIC特性が低下する。このため、Ti含有量は0.030%以下とし、0.025%以下とするのが好ましい。
Al:0.005~0.060%
Alも、Siと同様に脱酸元素として鋼中の酸素濃度を低減するために有効である。Al含有量が0.005%未満となると、脱酸が不十分となることで、脱硫も不十分になる。また、Ca添加の歩留まりが悪化し、Caの添加効果も十分に得られなくなる。その結果、鋼中の硫化物およびSの偏析が生じやすくなり、耐HIC特性の低下をもたらす。このため、Al含有量は0.005%以上とし、0.015%以上とするのが好ましい。しかしながら、Alによる脱酸に伴い、生成するアルミナがHICの原因となる場合もある。このため、Al含有量は0.060%以下とし、0.045%以下とするのが好ましい。
N:0.0020~0.0060%
Nは、鋼中でAlおよび/またはTi等と窒化物を形成する元素である。これらの窒化物は熱間加工の過程でピン留め粒子として結晶粒を微細化する効果を有し、鋼材の機械特性に影響を与えるとともに、ミクロ組織形成に影響を与える。このため、N含有量は0.0020%以上とする。しかしながら、N含有量が0.0060%を超えると、窒化物が連続鋳造時にオーステナイト粒界に動的析出することで、鋳片表面割れの原因となる。このため、N含有量は0.0060%以下とし、0.0045%以下とするのが好ましい。
Ca:0.0005~0.0060%
CaはS濃度を低減させ、MnSの生成を防止するとともに、硫化物の形態を制御することができる。このため、Ca含有量は、0.0005%以上とし、0.0010%以上とするのが好ましい。しかしながら、Caを、0.0060%を超えて含有させても、その効果は飽和し、製造コストの増加を招く。このため、Ca含有量は0.0060%以下とし、0.0040%以下とするのが好ましい。
本発明に係る鋼板には、上記元素のほかに、Cu、Ni、CrおよびMoから選択される1種以上の元素を含有させてもよい。
Cu:0~0.50%
Cuは鋼の焼入れ性を向上させ、鋼の強度を上昇させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Cu含有量が0.50%を超えると、鋼の熱間加工性および被削性が低下する。このため、Cu含有量は0.50%以下とし、0.30%以下とするのが好ましい。なお、Cuは、連続鋳造時における表面割れ、いわゆるカッパー割れを誘発する場合がある。Cuを0.20%以上含有させる場合には、Cu含有量の1/3以上の含有量でNiを併せて含有させることが好ましい。一方、上記効果を得るためには、Cu含有量は0.05%以上とするのが好ましい。
Ni:0~0.75%
Niは固溶強化によって鋼の強度を向上させるとともに、靱性を改善する効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Niを、0.75%を超えて、含有させてもその効果は飽和し、むしろ溶接性を悪化させるおそれがある。このため、Ni含有量は0.75%以下とし、0.40%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ni含有量は0.05%以上とするのが好ましい。
Cr:0~0.50%
Crは少量の含有で強度上昇に大幅に寄与する。これは、式中の元素記号を各元素の含有量(質量%)として、例えば、炭素当量を表す式の一つである、「Ceq.=C+Mn/6+(Cr+Mo)/5+(Cu+Ni)/15)」における係数が大きいことからも明らかである。また、Crは鋼の靱性を高める効果も有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Crを、0.50%を超えて含有させると溶接割れが発生する等の問題が発生しやすくなる。このため、Cr含有量は0.50%以下とし、特に、溶接性を重視する場合には、Cr含有量は0.40%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を得るためには、Cr含有量は0.05%以上とするのが好ましい。
Mo:0~0.50%
Moは、鋼の焼入れ性を向上させ、強度向上に寄与する。また、ミクロ偏析が生じにくい元素であるため、中心偏析に起因するHICの発生を抑制する効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Moは高価な元素であるため、過度に含有させると、製造コストの増加をもたらす。また、Mo含有量を0.50%超とすると、ベイナイトまたはマルテンサイトなどの硬化相が生成しやすくなり、却って耐HIC特性を悪化させる場合がある。このため、Mo含有量は0.50%以下とする。加えて、Moは耐HIC特性の低下に及ぼす影響が、他元素と比較して大きい。このため、耐HIC特性を重視する場合は、Mo含有量は0.30%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を得るためには、Mo含有量は0.02%以上とするのが好ましい。
耐HIC鋼では、MnSの発生を抑制するとともにC偏析を低減するために、CおよびMnの含有量の上限は比較的低く設定される。このため、鋼板の強度を確保する目的で、Cu、Ni、Cr、およびMoの合金元素を含有させてもよく、この場合、化学組成は、下記(i)式を満足するのが好ましい。
Cu+Ni+Cr+Mo<0.80 ・・・(i)
但し、上記(i)式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、含有しない場合は0とする。
しかしながら、これらの元素を過度に含有させると、焼入れ性の上昇を伴い、強度上昇とともに一部組織の硬化を引き起こす。この結果、耐HIC性能を劣化させる。したがって、上記(i)式左辺値は0.80%未満とするのが好ましく、0.60%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、上記の(i)式左辺値は、0.10%超とするのが好ましい。
本発明に係る鋼板には、上記元素に加え、Bを含有させてもよい。
B:0~0.0005%
Bは鋼の焼入れ性を向上させ、強度を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、B含有量が0.0005%を超えると、強度の上昇が過剰になり、鋼および溶接部の靭性が損なわれることがある。このため、B含有量は0.0005%以下とする。一方、上記効果を得るためには、B含有量は0.0002%以上とするのが好ましい。
本発明に係る鋼板には、上記元素に加え、MgおよびREMから選択される1種以上を含有させてもよい。
Mg:0~0.01%
Mgは、鋼中の介在物の形態を制御し、鋼、および溶接部の靱性および耐食性を向上させる。加えて、Mgは低温靭性に有害な元素(C、N、およびO)を安定化させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Mg含有量が0.01%を超えると、鋼の清浄性が低下し、鋼および溶接部の靭性が低下する。このため、Mg含有量は0.01%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Mg含有量は、0.0005%以上とするのが好ましい。
REM:0~0.05%
REMも鋼中の介在物の形態を制御し、鋼および溶接部の靱性および耐食性を向上させる他、低温靭性に有害な元素(C、N、およびO)を安定化させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、REM含有量が0.05%を超えると、鋼の清浄性が低下し、鋼および溶接部の靭性が低下する。このため、REM含有量は0.05%以下とする。一方、上記効果を得るためには、REM含有量は0.0005%以上とするのが好ましい。
ここで、REMとは、ランタノイドの15元素にYおよびScを合わせた17元素の総称である。これらの17元素のうちの1種以上を鋼に含有させることができ、REM含有量は、これらの元素の合計含有量を意味する。
本発明の鋼板の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。ここで「不純物」とは、鋼板を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
2.金属組織
本発明に係る鋼板全体では、主として、フェライトおよびパーライトからなる金属組織とする。このような金属組織では、二層組織になりやすく、界面にCを排出し、偏析を助長する。この結果、HICが発生しやすくなる。
2-1.鋼板の表面から板厚方向に1mmの深さ位置までの領域における金属組織
本発明に係る鋼板では表面付近においても、基本的にフェライトおよびパーライトの金属組織である。上述したように、本発明に係る鋼板を素材としたUOE鋼管では、鋼管内部を流れる天然ガス等の輸送圧が高い使用環境を想定している。このため、UOE鋼管の表面付近では応力がかかり、HICの割れが進展しやすい。
上記を踏まえ、本発明に係る鋼板では、表面近傍である、表面から板厚方向に1mmの深さ位置までの領域における金属組織が、面積率で、80%以上のフェライトを含む。フェライトが面積率で80%未満であると、硬化組織が増加し、硬さが上昇することで、割れ進展を助長させてしまうためである。上記領域においてフェライト主体の組織を確保することで硬さの上昇を抑えることができ、使用環境に適した組織となる。
また、上記領域においては、特性に影響を与えない範囲で、不可避的に生成するベイナイト、マルテンサイト等の硬化組織(以下、「不可避的生成組織」と記載する。)を含んでもよい。上記不可避的生成組織は、極力存在しない方が好ましいが、不可避的生成組織が含まれる場合は、面積率で、2%以下とするのが望ましい。
2-2.鋼板の表面から板厚方向に1/4厚さ位置における金属組織
鋼板の表面から板厚方向に1/4厚さ位置における金属組織は、平均的な組織であり、耐震特性に影響を与えるが、フェライトおよびパーライトは、ともに低強度、低降伏比の組織である。これらの組織を一定量確保することで、硬さを低減させ、鋼の応力歪曲線(以下、「SS曲線」という。)の形状は耐震特性の良好なラウンド型となる。
通常、SS曲線がラウンド型の鋼板を、素材をUOE鋼管とする際に、コーティングなどを介して熱加工工程が加わる。このような、熱加工工程が加わると、SS曲線応力歪曲線の形状は降伏点型となる。しかしながら、本発明に係る鋼板では、CおよびPの含有量を低く抑えているため、鋼管加工時に応力を付加しても、鋼中の転位がCまたはPにトラップされることがない。この結果、SS曲線がラウンド型を維持でき、耐震特性も維持できる。
以上を踏まえ、本発明に係る鋼板では、鋼板の表面から板厚方向に1/4厚さ位置における金属組織が、面積率で、50~78%のフェライト、および20~48%のパーライトを含み、残部が2%以下の不可避的生成組織とする。
上記位置において、面積率で、フェライトが50%未満であると、硬化組織の影響による硬さの上昇を招く。このため、フェライトは、面積率で、50%以上とする。一方、上記位置において、面積率で、フェライトが78%超であると強度が不足する。また、SS曲線がラウンド型とならず、耐震特性が低下する場合がある。このため、フェライトは、面積率で、78%以下とする。
また、上記位置において、面積率で、パーライトが20%未満であると、硬化組織の影響による硬さの上昇を招く。このため、パーライトは、面積率で、20%以上とする。一方、上記位置において、面積率で、パーライトが48%超であると、パーライト組織による強度低下を招く。このため、パーライトは、面積率で、48%以下とする。
なお、基本的には、上述の位置における金属組織はフェライトおよびパーライトからなる。不可避的生成組織は、極力存在しない方が好ましいが、残部が2%以下であれば不可避的生成組織であってもよい。不可避的生成組織としては、例えば、ベイナイト等の組織が考えられる。
そして、本発明に係る鋼板では、鋼板の表面から板厚方向に1/4厚さ位置における金属組織を、「鋼板の表面から板厚方向に1/4厚さ位置±1mmの領域」において観察される組織とする。
また、鋼板の上記部位の組織は以下の手順で観察を行う。具体的には、鋼板から圧延方向に直行する方向(鋼管にしたときの周方向)に切断して、L断面(圧延方向に平行な板厚断面)のサンプルを切り出し、鏡面研磨後、ナイタールにより表面を腐食した後、倍率300倍の光学顕微鏡を用いて観察を行う。
観察は、上述のように「鋼板の表面から板厚方向に1mmの領域」および「鋼板の表面から板厚方向に1/4厚さ位置±1mmの領域」について各10視野行う。観察した組織を画像処理により、フェライト、パーライト、その他の組織に分別して、それぞれの組織分率(%)を導出し、その平均値を算出して、各部位における面積率とする。
なお、本発明に係る鋼板は、後述するUOEプロセスを経て、鋼管となった後も、HAZを除き、鋼管母材は、鋼板における金属組織を維持する。このため、本発明に係る鋼板を用いたUOE鋼管は、以下のような対応関係を有する。
具体的には、観察した鋼板の表面をUOE鋼管の管の内側となるように鋼管を製造した場合、「鋼板の表面から板厚方向に1mmの領域」は、「鋼管の内側表面から径方向に1mmの深さ位置までの領域」に相当する。同様に、「鋼板の表面から板厚方向に1/4厚さ位置±1mmの領域」は、「鋼管の内側表面から径方向に1/4厚さ位置」に相当する。そして、鋼板の上記位置を本発明で規定する組織とした上で、鋼管製造時における条件、具体的には溶接条件を適切に選択することにより、所望する特性を有するUOE鋼管を得ることができる。
3.硬さ
本発明に係る鋼板では、鋼板の表面、表面から板厚方向に0.4mmの深さ位置、および板厚中心部における硬さが、200HV10以下とする。以下、各位置における硬さの限定理由を説明する。
3-1.鋼板の表面における硬さ
鋼板の表面における硬さは200HV10以下とする。これは、上記位置における硬さが200HV10を超えると、UOE鋼管の耐SSC特性が低下するためである。また、鋼板の表面は、鋼管として使用される際、輸送ガスの圧力がかかる部位である。このため、鋼板の表面の硬さが200HV10超であると、腐食による亀裂の発生と伝播とが生じやすくなるからである。
3-2.鋼板の表面から0.4mmの深さ位置における硬さ
鋼板の表面から0.4mmの深さ位置における硬さは200HV10以下とする。これは、上記位置における硬さが200HV10を超えると、耐SSC特性が低下するためである。また、上記位置は、表面と同様に輸送ガスの圧力がかかる部位である。このため、上記位置の硬さが200HV10超であると、腐食による亀裂の発生、および伝播がしやすくなるからである。
3-3.鋼板の板厚中心部における硬さ
鋼板の板厚中心部における硬さは200HV10以下とする。これは、板厚中心部の硬さが200HV10を超えると、耐SSC特性が低下するためである。また、板厚中心部は、もともと中心部に介在物を含有している場合がある。このため、鋼板の板厚中心部の硬さが200HV10を超えると、鋼管として使用する際に、水素が介在物を起点として、鋼管の肉厚中心部に凝集し、HICが引き起こされる可能性があるからである。
なお、上記の各位置における硬さは、JIS Z 2244(2009)に準拠して、試験力98.07N(10kgf)でのビッカース硬さ(HV10)の測定を行うこととする。「鋼板の表面」の硬さについては、圧延面における硬さを測定する。また、「鋼板の表面から板厚方向に0.4mmの深さ位置」、および「鋼板の板厚中心部」の硬さについては、各鋼板から圧延方向に直行する方向(鋼管にしたときの周方向)に切断して、L断面のサンプルを切り出し、鏡面研磨して試験片とする。硬さ測定は、いずれの位置についても各5カ所測定し、その平均値を硬さとする。
ここで、硬さを測定した鋼板の表面をUOE鋼管の管の内側となるように鋼管を製造した場合、「鋼板の表面」は「鋼管の内側表面」に相当する。同様に、「鋼板の表面から板厚方向に0.4mmの位置」は、「鋼管の内側表面から径方向に0.4mmの深さ位置」に相当する。同様に、「鋼板の板厚中心部(L断面における中心部)は、「鋼管の肉厚中心部」に相当する。
4.鋼板の板厚
本発明に係る鋼板の板厚は10~40mmの範囲とする。鋼管強度の大きさを鑑み、鋼板の板厚は、10mm以上とし、15mm以上とするのが好ましく、23mm以上とするのがより好ましい。また、本発明では、輸送ガス圧力の観点から、鋼板の板厚は40mm以下とする。なお、素材である鋼板からUOE鋼管に製造後も、同程度の厚さを維持することから、鋼管の肉厚も10~40mmの範囲となる。
5.鋼板の引張強さ
所望するUOE鋼管の引張強さが、460~760MPaであることから、本発明に係る鋼板の引張強さは460~760MPaの範囲とする。鋼板の引張強さが460MPa未満であると、UOE鋼管での使用に際し、天然ガス等の輸送圧に耐えることができない。このため、鋼板の引張強さは460MPa以上とする。一方、鋼板の引張強さが760MPaを超えると、耐HIC特性が低下する。このため、鋼板の引張強さは、760MPa以下とし、600MPa以下であるのが好ましく、550MPa以下であるのがより好ましい。
なお、本発明では、鋼板の引張強さは、UOE鋼管にしたときを想定し、得られた鋼板を圧延方向に直行する方向(UOE鋼管にしたときの周方向)に切断して試験片を採取する。続いて、採取した試験片を用い、ISO6892に準拠して引張試験を実施し、降伏応力(以下、「YS」ともいう。)、引張強さ(以下、「TS」ともいう。)の測定を行う。
6.目標とする特性値
さらに、本発明では、YS、耐震特性、耐HIC特性、および耐SSC特性が良好であるか否かを以下の指標に基づき判断する。具体的には、目標とする特性値として、YSが360MPa以上とする。また、SS曲線がラウンド型になっている場合を、耐震特性が良好であると判断する。耐HIC特性については割れ部の面積率が5.0%以下である場合、良好な耐HIC特性を有すると判断する。耐SSC特性についてはSSC試験後、割れが認められない場合を耐SSC特性が良好であると判断する。
7.製造方法
本発明に係るUOE鋼管用鋼板は、以下の手順により製造される。
7-1.スラブ加熱
上記化学組成を有するスラブを連続鋳造法により鋳造する。製造されたスラブを、下記(ii)式を満たす加熱温度(以下、式中では「T(℃)」と表記する。)で加熱するのが好ましい。
6770/{2.26-log(Nb・C)}-273≦T(℃)<6770/{2.26-log(Nb・C)}-73 ・・・(ii)
但し、上記(ii)式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、含有しない場合は0とする。
加熱温度が上記(ii)式の左辺値未満であると、スラブ中のNb炭化物を溶解させ、Nbをオーステナイト相に完全に固溶させることができない。そして、溶解せず、スラブ中にNb炭化物が残存する場合は、HIC発生の原因となる。一方、加熱温度が上記(ii)式の右辺値以上であると、加熱温度が高すぎて、加熱に要するエネルギーに無駄が生じる。
7-2.圧延
続いて、加熱されたスラブを、最終1パスがAr点~Ar点+40℃の温度域となる条件で圧延するのが好ましい。鋼中の組織を主として、フェライトとするには、未再結晶域であるAr点直上の温度域で圧延することが重要であるからである。
なお、Ar点は下記(iii)式により定義される。
Ar(℃)=910-310C-80Mn-20Cu-15Cr-55Ni-80Mo+0.35(t-8) ・・・(iii)
但し、上記(iii)式中の記号は以下により定義され、元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、含有しない場合は0とする。
t(mm):圧延完了後の鋼板の板厚
ここで、全ての圧延パスにおいて、Ar点~Ar点+40℃の温度域で圧延を行う必要はない。圧延の最終1パスをAr点~Ar点+40℃の温度域で圧延すればよい。また、圧延開始温度、圧下率等は、特に限定されないが、歪みを多く導入するため、上記温度域での圧下比を大きくするのが好ましい。
上記のような圧延を行うことで、鋼板の表面から板厚方向に1mmの深さ位置までの領域における金属組織が、面積率で、80%以上のフェライトを含む組織となる。
7-3.冷却
最終パスの圧延後は、Ar点以上の温度域から冷却を開始するのが好ましい。Ar点より低い温度から冷却を開始すると、フェライトの析出量が過剰となり、偏析が生じ、耐HIC特性が低下するためである。
なお、冷却は、例えば、水冷により行えばよい。以下、冷却を水冷によって行う場合を例にして説明する。
水冷時における平均冷却速度は10~25℃/sとするのが好ましい。水冷時の平均冷却速度が10℃/s未満であると、パーライトの析出量が増加し、偏析が生じ、耐HIC特性が低下する。一方、上記平均冷却速度が25℃/s超であると、フェライトまたはパーライト以外の金属組織、具体的には、ベイナイト、マルテンサイト等が形成され、耐食性(耐HIC特性および耐SSC特性)が低下する。このため、水冷時の平均冷却速度は上記範囲とする。
そして、500~600℃の温度域で水冷を停止するのが好ましい。水冷停止温度が500℃未満であると、ベイナイト、島状マルテンサイトが形成され、鋼の表面付近が硬化する。この結果、鋼管の表面、表面から板厚方向に0.4mm深さ位置における硬さが、200HV10超となり、耐HIC性能が低下する。一方、水冷停止温度が600℃超であると、フェライトが析出されず、耐HIC特性が低下する。以上の工程により、UOE鋼管素材である鋼板を製造することができる。なお、製造条件における各温度は、鋼板の表面温度とする。
なお、上記工程により製造された鋼板をUOE鋼管とする際には、鋼管製造時における条件、特に溶接条件を適切に選択して、いわゆる「UOEプロセス」を施せばよい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1および2に示す化学組成を有するスラブを作製し、表3および4に示す条件で製造し、鋼板とした。
Figure 0007119888000001
Figure 0007119888000002
Figure 0007119888000003
Figure 0007119888000004
(組織観察)
金属組織の組織観察を行った。具体的には、各鋼板から圧延方向に直行する方向(鋼管にしたときの周方向)に切断して、L断面のサンプルを切り出し、鏡面研磨後、ナイタールにより表面を腐食した後、倍率300倍の光学顕微鏡を用いて観察を行った。
観察は、上述のように「鋼板の表面から板厚方向に1mmの領域」、および「鋼板の表面から板厚方向に1/4厚さ位置」を「鋼板の表面から板厚方向に1/4厚さ位置±1mmの領域」として、各10視野行った。観察した組織を画像処理により、フェライト、パーライト、その他の組織に分別して、それぞれの組織分率(%)を導出し、その平均値を算出して、各部位における面積率とした。
(硬さ測定)
硬さの測定は、JIS Z 2244(2009)に準拠し、試験力98.07N(10kgf)でのビッカース硬さ(HV10)なお、「鋼板の表面」の硬さについては、圧延面における硬さを測定した。また、「鋼板の表面から板厚方向に0.4mmの深さ位置」および「鋼板の板厚中心部」の硬さについては、各鋼板から圧延方向に直行する方向(鋼管にしたときの周方向)に切断して、L断面のサンプルを切り出し、鏡面研磨して試験片とした。硬さ測定は、各試験片について各5カ所測定し、その平均値を硬さとした。
ここで、硬さを測定した鋼板の表面をUOE鋼管の管の内側となるように鋼管を製造した場合、「鋼板の表面」は「鋼管の内側表面」に相当する。同様に、「鋼板の表面から板厚方向に0.4mmの位置」は、「鋼管の内側表面から径方向に0.4mmの深さ位置」に相当する。同様に、「鋼板の板厚中心部(L断面における中心部)は、「鋼管の肉厚中心部」に相当する。そして、鋼板の上記位置を本発明で規定する硬さとすることで、所望する特性を有するUOE鋼管を得ることができる。
また、製造した鋼板に対し、UOEプロセスにて鋼管を製造したことを想定し、引張試験、HIC試験、および硫化物応力腐食割れ試験(以下、「SSC試験」ともいう。)についても実施した。
(引張試験)
強度特性を評価する引張試験では、鋼管にしたときを想定し、得られた鋼板を圧延方向に直行する方向(鋼管にしたときの周方向)に切断して試験片を採取した。続いて、採取した試験片を用い、ISO6892に準拠して引張試験を実施し、YSとTSについて測定を行った。YSは360MPa以上、TSは460~760MPaの試験片を良好な強度を有すると判断した。また、上記試験で得られたSS曲線がラウンド型になっている場合について耐震特性が良好であると判断し、ラウンド型ではない場合を耐震特性が良好ではないと判断した。
(HIC試験)
HIC試験は、NACE TM0284に準拠して、試験片を指定の大きさに切断後、表面研磨を実施し、試験溶液:Solution A、試験温度:25℃、HS濃度:1bar、pH:2.7~4.0の条件のもと、試験片を96時間、浸漬した後、試験片の全面の超音波探傷を実施し、発生した割れ部の面積率(CAR%;Cracking Area Ratio)にて評価を実施した。このとき、同面積率が5.0%以下である場合、良好な耐HIC特性を有すると判断した。
(SSC試験)
SSC試験は、以下の条件で実施した。具体的には、鋼板(鋼管における母材に相当。)から1.5mm×30mm×115mmの寸法のSSC試験片を採取し、4点曲げによってYSの90%となる応力を付与し、720時間溶液中に浸漬する試験を実施した。
試験溶液は、5%NaCl+0.5%CHCOOH水溶液に分圧を調整したHSガスを通気し、HS濃度が100ppmの飽和水溶液を用いた。試験終了後、光学顕微鏡500倍にて表面割れを調べ、評価は、割れ無しを「No Crack」、割れが少しでも認められた場合を「Crack」と記載し、「No Crack」の場合耐SSC特性が良好であると判断した。
さらに、UOE鋼管の溶接部は、耐SSC特性に影響を与えるため、以下の条件で溶接を行い、UOE鋼管の溶接部を模擬したSSC試験を実施した。具体的には、各鋼板にX型開先に加工して入熱3.0kJ/mmのサブマージアーク溶接により溶接継手を製作した。この溶接継手の溶接ビードままの表面から1.5mm×30mm×115mmの寸法のSSC試験片を採取し、4点曲げによって鋼板YSの90%となる応力を付与し、上記と同じ条件で720時間溶液中に浸漬し、浸漬後、光学顕微鏡500倍にて表面割れを調べて、評価した。なお、溶接ワイヤはNSSW Y-D(日鉄住金溶接工業社製)を用いた。
以下、表5および6に各結果をまとめて示す。
Figure 0007119888000005
Figure 0007119888000006
鋼種No.1~35は、本発明の規定を満足するため、強度、耐震特性、耐HIC特性および耐SSC特性が良好であった。一方、鋼種No.36~50は、本発明の規定を満足しないため、強度、耐震特性、耐HIC特性、および耐SSC特性の少なくとも一つが劣る結果となった。

Claims (5)

  1. UOE鋼管に用いられる鋼板であって、
    前記鋼板の化学組成が、質量%で、
    C:0.03~0.06%、
    Si:0.05~0.30%、
    Mn:1.00~1.50%、
    P:0.008%以下、
    S:0.0006%以下、
    Nb:0.005~0.080%、
    V:0.005~0.050%、
    Ti:0.005~0.030%、
    Al:0.005~0.060%、
    N:0.0020~0.0060%、
    Ca:0.0005~0.0060%、
    Cu:0~0.50%、
    Ni:0~0.75%、
    Cr:0~0.50%、
    Mo:0~0.50%、
    B:0~0.0005%、
    Mg:0~0.01%、
    REM:0~0.05%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    前記鋼板の表面から板厚方向に1mmの深さ位置までの領域おける金属組織が、面積率で、
    80%以上のフェライトを含み、
    前記鋼板の表面から板厚方向に1/4厚さ位置における金属組織が、面積率で、
    50~78%のフェライト、および
    20~48%のパーライトを含み、
    残部が2%以下の不可避的生成組織であり、
    前記鋼板の表面、表面から板厚方向に0.4mmの深さ位置、および板厚中心部における硬さが、200HV10以下であり、
    板厚が10~40mmであり、
    引張強さが460~760MPaである、UOE鋼管用鋼板。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Cu:0.05~0.50%、
    Ni:0.05~0.75%、
    Cr:0.05~0.50%、および
    Mo:0.02~0.50%、
    から選択される1種以上を含有し、かつ、下記(i)式を満足する、請求項1に記載のUOE鋼管用鋼板。
    Cu+Ni+Cr+Mo<0.80 ・・・(i)
    但し、(i)式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、含有しない場合は0とする。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    B:0.0002~0.0005%、
    を含有する、請求項1または請求項2に記載のUOE鋼管用鋼板。
  4. 前記化学組成が、質量%で、
    Mg:0.0005~0.01%、および
    REM:0.0005~0.05%、
    から選択される1種以上を含有する、請求項1~3のいずれかに記載のUOE鋼管用鋼板。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載のUOE鋼管用鋼板の製造方法であって、
    (a)請求項1~4のいずれかに記載の化学組成を有するスラブを、下記(ii)式を満たす加熱温度で加熱する工程と、
    (b)加熱された前記スラブを、最終1パスがAr点~Ar点+40℃の温度域となる条件で圧延する工程と、
    (c)Ar点以上の温度域から冷却を開始して500~600℃の温度域で冷却を停止し、前記冷却時における平均冷却速度が10~25℃/sとなる条件で冷却する工程と、を有し、
    前記(b)および(c)の工程における、Ar点は下記(iii)式により定義される、UOE鋼管用鋼板の製造方法。
    6770/{2.26-log(Nb・C)}-273≦T(℃)<6770/{2.26-log(Nb・C)}-73 ・・・(ii)
    Ar(℃)=910-310C-80Mn-20Cu-15Cr-55Ni-80Mo+0.35(t-8) ・・・(iii)
    但し、上記式中の記号は以下により定義され、元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、含有しない場合は0とする。
    T(℃):加熱温度
    t(mm):圧延完了後の鋼板の板厚

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