JPWO2005042579A1 - 抗sarsウイルス抗体、該抗体を産生するハイブリドーマ及び該抗体を用いる免疫測定試薬 - Google Patents

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Abstract

要約SARSウイルスを特異的に認識するモノクローナル抗体を提供し、SARSウイルスを検出する該モノクローナル抗体を用いた免疫測定方法、免疫測定試薬又は免疫測定器具が開示されている。本発明のモノクローナル抗体は、重症急性呼吸器症候群(Severe acute respiratory syndrome ;SARS)原因コロナウイルスの核タンパク質に対するモノクローナル抗体である。

Description

本発明は、重症急性呼吸器症候群(Severe acute respiratory syndrome ;SARS)原因コロナウイルス(以下SARSウイルスという)の核キャプシドタンパク質(以下、「核タンパク質」とする)に対するモノクローナル抗体、該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、前記モノクローナル抗体を固相抗体及び/又は標識抗体として用いるSARSウイルスの免疫測定試薬又は免疫測定器具に関する。
2002年から2003年にかけて、重症肺炎感染患者が世界各地で報告され、感染患者とともに多数の死亡者も報告された。患者から単離されたウイルスは、SARSウイルスと命名され、新型のコロナウイルスであることが確認された。このSARSウイルスの全遺伝子配列は、カナダ・ブリティシュコロンビア州のマイケル・スミス・ゲノム科学センターによって解読されている(非特許文献1)。
SARS感染者は、ウイルスに感染して2日間から7日間の潜伏期間後、38度を超す高熱、咳、頭痛、呼吸困難などを引き起こす。SARS感染者の症状は、一見、インフルエンザの症状と似ており、適切な処置を決定するために、早期にSARSウイルスによる感染か否かを判定することが求められている。SARSウイルスの感染の有無を診断する方法として、現在以下の方法が報告されている。
1)ELISAによる抗体測定法:SARS患者血清中の抗体(IgM/IgA)を、臨床症状出現後約20日目以降から検出することができる。
2)免疫蛍光抗体法:SARSウイルス感染VERO細胞を用いた免疫蛍光抗体法(IgM検出)。発症後約10日後から血清中の抗体を検出することができる。
3)PCR法:血液、便、気道分泌物などの様々な検体からSARSウイルス遺伝子を増幅して検出する。
4)細胞培養法:SARS患者検体(気道分泌物、血液)中のウイルスをVERO細胞などの培養細胞へ感染させて検出する。
サイエンス(Science); 2003 May 30;300(5624):1394-9.
これまでのSARSウイルスの感染を確認する方法は、抗体検査法では感染後10日目以降でなくては確認をすることができず、特に信頼性の高い蛍光抗体法は操作が煩雑であった。また、PCR法は、SARS関連遺伝子を単離して増幅する必要があり、特殊な増幅装置、測定装置を必要とし、簡便な測定法とはいえなかった。更に、細胞培養法は、一度に多数の検体を処理することが難しく、コロナウイルスへの感染の有無は判別できるが、SARSウイルスへの感染をこの方法だけで特定することはできなかった。SARSウイルスを認識する抗体については、より優れた特異性及び親和性が常に望まれている。
本発明の目的は、上記現状に鑑み、SARSウイルスを特異的に認識するモノクローナル抗体を提供し、SARSウイルスを検出する該モノクローナル抗体を用いた免疫測定方法、免疫測定試薬又は免疫測定器具を提供することにある。
本願発明者らは、SARSウイルスに対して特異性を有し、かつ高い親和性を有する抗SARSウイルスモノクローナル抗体を得るべく努力した結果、PCR法を利用したポリヌクレオチド合成によりSARSウイルスの核タンパク質遺伝子を得、遺伝子組換え技術を用いて同遺伝子を含有する形質転換体を作製し、これから得たSARSウイルスの核タンパク質を免疫原として用いた動物への免疫を実施することによって、目的のモノクローナル抗体を得た。更に、本発明者らは、このモノクローナル抗体を用いて免疫測定試薬を開発することができた。
すなわち、本発明は、重症急性呼吸器症候群(Severe acute respiratory syndrome ;SARS)原因コロナウイルスの核タンパク質に対する抗SARSウイルスモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を提供する。また、本発明は、上記本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマであって、抗SARSウイルスモノクローナル抗体産生細胞と腫瘍細胞とを細胞融合させることよって得られるハイブリドーマを提供する。さらに、本発明は、上記本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を固相抗体及び標識抗体の少なくとも一方に用いたSARS原因コロナウイルスの免疫測定試薬を提供する。さらに本発明は、輸液可能なマトリクス上に抗SARS抗体を固定した検出ゾーンと、標識抗SARS抗体を前記マトリクス上に移動可能に点着した標識試薬ゾーンとを有するSARS原因コロナウイルスの免疫測定器具であって、前記検出ゾーンに固定した抗体及び標識抗SARS抗体の少なくとも一方が上記本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片である器具を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の抗SARSウイルスモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と、被検試料中のSARSウイルスとの抗原抗体反応を利用した免疫測定により被検試料中のSARSウイルスを測定することを含む、SARSウイルスの免疫測定方法を提供する。
本発明のモノクローナル抗体は、SARSウイルスの核タンパク質に対する特異性及び親和性が高いので、高感度なSARSウイルスの免疫測定法に利用することができる。また、本発明のハイブリドーマは、SARSウイルスを特異的に認識するモノクローナル抗体を提供することができる。更に、本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫測定試薬は、簡便な操作でSARSウイルスを含む検体又はSARS患者由来の検体のみを拾い落としなく検出することができる。
本発明の実施例で使用した、免疫原として用いた核タンパク質発現用プラスミドpW6Aの制限酵素地図を示す図である。 本発明の実施例において発現させた、組換えタンパク質(S−N)のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を模式的に示す図である。 本発明の実施例において行なった、モノクローナル抗体(rSN-18抗体、rSN-122抗体、rSN-150抗体)の反応性を示すウェスタンブロット法の結果を示す図である。 本発明の実施例において行なった、モノクローナル抗体(rSN-21-2抗体、rSN-29抗体、rSN-122抗体)の反応性を示すウェスタンブロット法の結果を示す図である。 本発明のイムノクロマトグラフィーによる免疫測定器具の1具体例の模式断面図である。
上記の通り、本発明のモノクローナル抗体は、SARSを引き起こすコロナウイルスの核タンパク質(すなわち、キャプシドタンパク質)(以下、単に「核タンパク質」)に対するモノクローナル抗体である。ここで、「核タンパク質に対するモノクローナル抗体」とは、核タンパク質と抗原抗体反応するモノクローナル抗体という意味である。従って、核タンパク質を免疫原として作製されたモノクローナル抗体のみならず、核タンパク質の一部領域又は核タンパク質若しくはその一部領域の変異体を免疫原として作製されたモノクローナル抗体であっても、核タンパク質と抗原抗体反応するモノクローナル抗体は本発明の範囲に含まれる。
また、周知のとおり、抗体をパパイン分解やペプシンで分解することにより、FabフラグメントやF(ab')2フラグメントのような、対応抗原との結合性を有する抗体断片(本明細書において「抗原結合性断片」という)が得られることが知られているが、本発明のモノクローナル抗体の抗原結合性断片も本発明のモノクローナル抗体と同様に用いることができ、本発明の範囲内に入る。
本発明のモノクローナル抗体は、核タンパク質を免疫原として用いて得ることができる。核タンパク質のアミノ酸配列は公知であり(非特許文献1)、該アミノ酸配列を配列番号2に示す。また、配列番号2に示すアミノ酸配列をコードする核酸の塩基配列を配列番号1に示す。従って、本発明のモノクローナル抗体は、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドを免疫原として用いて得ることができる。また、配列番号2のアミノ酸配列の天然の変異体であってもよい。核タンパク質は必ずしも高純度に精製されなくてもよく、粗精製物であっても免疫原として使用することができる。また、配列番号2に示すアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端に、免疫原として影響を与えない範囲で他のアミノ酸配列が付加されたタンパク質も免疫原として用いることができる。あるいは、配列番号2に示されるアミノ酸配列中の一部領域を免疫原として用いても得ることができる場合がある。このような一部領域は、特異性の観点から10個以上のアミノ酸を含むことが好ましい。一部領域のサイズの上限は、全長未満であるが、アミノ酸数が10個ないし50個、好ましくは15個ないし30個程度のペプチドでも本発明のモノクローナル抗体を誘起することができる。例えば、下記実施例では、配列番号3(配列番号2のアミノ酸244〜260とシステインから成る配列)に示すペプチドを免疫原として用いて本発明のモノクローナル抗体が得られることが確認されている。このような比較的サイズの小さいペプチドは、市販のペプチド合成機を用いて容易に化学合成できるので便利である。なお、このような比較的サイズの小さいペプチドは、周知の通り、例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)やウシ血清アルブミン(BSA)のようなキャリアタンパク質に結合して免疫原として用いることにより、抗原性をより高めることができる。
免疫原としては、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する核タンパク質又はその一部領域、特に核タンパク質全長を用いることが好ましいが、配列番号2で示されるアミノ酸配列又はその一部領域中の少数のアミノ酸が、置換及び/若しくは欠失し並びに/又は少数のアミノ酸が挿入されたポリペプチドを免疫原として用いても本発明のモノクローナル抗体が誘起される場合がある。このような免疫原のアミノ酸配列は、配列番号2に示されるアミノ酸配列又はその一部領域とできるだけ高い同一性を有していることが好ましく、同一性は好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。アミノ酸配列の同一性は、BLASTのような周知のコンピューターソフトを用いて容易に算出することができ、このようなソフトはインターネットによっても利用に供されている。さらに、少数のアミノ酸が置換、欠失及び/又は挿入される場合、置換、欠失及び/又は挿入されるアミノ酸の総数は1個ないし数個であることが好ましい。また、天然のタンパク質を構成する20種類のアミノ酸は、低極性側鎖を有する中性アミノ酸(Gly, Ile, Val, Leu, ala, Met, Pro)、親水性側鎖を有する中性アミノ酸(Asn, Gln, Thr, Ser, Tyr Cys)、酸性アミノ酸(Asp, Glu)、塩基性アミノ酸(Arg, Lys, His)、芳香族アミノ酸(Phe, Tyr, Trp)のように類似の性質を有するものにグループ分けでき、これらの各グループ内での置換であれば免疫原としての性質が実質的に変化しないことが多い。
上記免疫原として用いるSARSウイルスの核タンパク質は、例えば遺伝子組換え技術を用いた以下のような方法によって得ることができる。
核タンパク質をコードする遺伝子領域(配列番号1)をPCR法によって増幅することによって、配列番号2のアミノ酸配列を実質的に含むポリペプチドをコードするDNA断片を得る。すなわち、たとえば、SARSウイルスからRNAを抽出し、RT−PCRを実施する。すなわち、Nタンパク質遺伝子の5′末端から制限部位NheIまでの領域(5′末端に制限部位、たとえばEcoRIの認識配列を付加する)と、制限部位NheIからNタンパク質遺伝子の3′末端までの領域(3′末端に制限部位、たとえばBamHIの認識配列を付加する)とを、それぞれRT−PCRにより増幅する。ついで、各断片を制限酵素で処理し、ライゲーションを行うことによって、配列番号2のアミノ酸配列を実質的に含むポリペプチドをコードするDNA断片を得ることができる。さらに、同DNA断片を適当な発現ベクターに挿入することにより、発現ベクターを作製することができる。別法として、上記の塩基配列に基づいて、化学合成により、配列表の配列番号2又は3のアミノ酸配列を実質的に含むポリペプチドをコードするDNA断片を得ることも可能である。こうして得たDNA断片を、アンピシリン耐性遺伝子等の適当な標識遺伝子を有する発現ベクターに導入し、同ベクターにより大腸菌等の宿主を形質転換し、形質転換体を得る。この形質転換体を培養し、培養物を精製することによって上記SARSウイルスの核タンパク質を得ることができる。また、配列番号3で表される配列を含むようなポリペプチドであれば化学合成装置による公知の合成方法に従い得ることもできる。
上記抗SARSウイルスモノクローナル抗体は、上記した免疫原で動物を免疫し、同動物から得た抗核タンパク質抗体産生細胞と腫瘍細胞とを常法により細胞融合することによって得られるハイブリドーマにより産生させることができる。
上記ハイブリドーマは、例えば以下の方法で得ることができる。即ち、上述のようにして得た核タンパク質を、フロイントの完全アジュバンドとともに、数回に分けて、マウス等の動物に、2〜3週間おきに、腹腔内又は静脈内投与することによって免疫する。次いで、免疫した動物から得られた脾臓等に由来する抗体産生細胞と、骨髄腫細胞株等の不死化細胞種から選択されたミエローマ細胞等の試験管内で増殖可能な腫瘍細胞とを融合させる。
上記融合方法としては、例えばケーラーとミルシュタインの常法(ネーチャー(Nature)、256巻、495頁、1975年)に従ってポリエチレングリコール法が適用可能であり、又は、センダイウイルス法等も採用されうる。
上記融合した細胞からSARSウイルスの核タンパク質を認識する抗体を産生するハイブリドーマを選択する方法は、例えば以下のようにして行うことができる。即ち、上記融合した細胞から、HAT培地中で、生存している細胞をハイブリドーマとして選択する。次いで、上記ハイブリドーマの培養培地を、高純度に精製したSARSウイルスの核タンパク質を固定化したアッセイプレート上で反応させる。更に、同アッセイプレートを抗マウス免疫グロブリン(Ig)等と反応させる。このようなEIA法等によって、SARSウイルスの核タンパク質を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。
本発明のハイブリドーマとしては、核タンパク質を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマであれば特に限定されないが、例えば、本発明者らが上述の方法によって樹立した6種のハイブリドーマが挙げられる。
上記6種のハイブリドーマは、それぞれ、ハイブリドーマrSN−18、ハイブリドーマrSN−122、ハイブリドーマrSN−150、ハイブリドーマrSN−21−2、ハイブリドーマrSN−29及びハイブリドーマSN5−25と命名された。上記各ハイブリドーマは、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター〔あて名;日本国茨城県つくば市東1丁目1番1号中央第6〕に、ハイブリドーマrSN−18は、受託番号FERM P−19572(受託日;平成15年10月24日)、ハイブリドーマrSN−122は、受託番号FERM P−19573(受託日;平成15年10月24日)、ハイブリドーマrSN−150は、受託番号FERM P−19574(受託日;平成15年10月24日)、ハイブリドーマrSN−21−2は、受託番号FERM P−19619(受託日;平成15年12月26日)及びハイブリドーマrSN−29は、受託番号FERM P−19620(受託日;平成15年12月26日)として寄託されている。これらハイブリドーマは、平成16年10月18日、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター〔あて名;日本国茨城県つくば市東1丁目1番1号中央第6〕に、ハイブリドーマrSN−18は受託番号FERM BP−10143、ハイブリドーマrSN−122は受託番号FERM BP−10144、ハイブリドーマrSN−150は受託番号FERM BP−10145、ハイブリドーマrSN−21−2は受託番号FERM BP−10146及びハイブリドーマrSN−29は受託番号FERM BP−10147として国際寄託に移管された。
上記各ハイブリドーマは、通常、細胞培養に用いられる培地において培養することができる。同培養上清からはモノクローナル抗体を回収することができる。また、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマが由来する動物種の腹腔内にハイブリドーマを移植し、増殖を待って腹水を採取し、これから精製することによって得ることもできる。
上記モノクローナル抗体の回収方法としては、通常行われている精製方法を用いることができ、例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインAによるアフィニティークロマトグラフィー等が挙げられる。
上記のモノクローナル抗体は、通常の確認方法よってその反応性を確認することができる。本発明の抗体においては、SARSウイルスの核タンパク質との反応性の特異性を指標として確認される。
本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、SARSウイルスの検出又は定量のための免疫測定に用いることができる。免疫測定方法自体は、周知であり、周知のいずれの免疫測定方法をも採用することができる。すなわち、測定形式で分類すれば、サンドイッチ法、競合法、凝集法、ウェスタンブロット法などがあり、用いる標識で分類すれば蛍光法、酵素法、放射法、ビオチン法等があるが、これらのいずれをも用いることができる。さらに、免疫組織染色によって診断することもできる。免疫測定方法に標識抗体を用いる場合、抗体の標識方法自体は周知であり、周知のいずれの方法をも採用することができる。
なお、これらの免疫測定法自体は周知であり、本明細書で説明する必要はないが、簡単に記載すると、例えば、サンドイッチ法では、本発明の抗体又はその抗原結合性断片を第1抗体として固相に不動化し、検体と反応させ、洗浄後、本発明の酵素と抗原抗体反応する第2抗体を反応させ、洗浄後、固相に結合した第2抗体を測定する。第2抗体を酵素、蛍光物質、放射性物質、ビオチン等で標識しておくことにより固相に結合した第2抗体を測定することができる。濃度既知の複数の標準試料中について上記方法により測定し、測定された標識量と標準試料中の本発明の酵素の関係に基づき検量線を作成し、未知濃度の被検試料についての測定結果をこの検量線に当てはめることにより、被検試料中の本発明の酵素を定量することができる。なお、第1抗体と第2抗体を上記の説明と入れ替えてもよい。また、凝集法では、ラテックス等の粒子に本発明の抗体又はその抗原結合性断片を不動化し、検体と反応させて吸光度を測定する。濃度既知の複数の標準試料中について上記方法により測定し、測定された標識量と標準試料中の本発明の酵素の関係に基づき検量線を作成し、未知濃度の被検試料についての測定結果をこの検量線に当てはめることにより、被検試料中の本発明の酵素を定量することができる。
上記免疫測定法に供される検体としては、SARSウイルスの核タンパク質を含むものであれば特に限定されず、例えば、ヒト又は動物由来の血清、血漿、全血の他、鼻腔ぬぐい液(鼻腔スワブ)、鼻腔吸引液、咽頭ぬぐい液(咽頭スワブ)等の体液抽出液、気道分泌物、細胞又は組織ホモジネート液等を挙げることができる。
上記本発明に係るモノクローナル抗体を使用することにより、同抗体を固相抗体及び標識抗体の少なくとも一方に用いてSARSウイルス測定試薬を製造することができる。上記モノクローナル抗体を結合させる固相としては、従来免疫測定に用いられる各種固相を用いることができ、例えばELISAプレート、ラテックス、ゼラチン粒子、磁性粒子、ポリスチレン、ガラスなどの各種固相、ビーズ、輸液可能なマトリクス等の不溶性担体等が例示される。また、酵素、金属コロイド粒子、着色ラテックス粒子、発光物質、蛍光物質、放射性物質等によって抗体を標識し、標識抗体を製造することができる。これらの固相抗体及び/又は標識抗体等の試薬を組み合わせて、酵素免疫測定法、放射免疫測定法、蛍光免疫測定法等に用いる試薬を製造することができる。これらの測定試薬は、サンドイッチ法又は競合的結合測定法により、検体中の目的とする抗原を測定するための試薬である。本発明のSARSウイルスの免疫測定器具は、イムノクロマトグラフィーの原理を適用したものであり、本発明のモノクローナル抗体を輸液可能なマトリクス上に固定した検出ゾーン、及び標識された本発明の抗SARSウイルスモノクローナル抗体を前記マトリクス上に移動可能に点着した標識試薬ゾーンを有する。
上記サンドイッチ法による免疫測定の試薬としては、例えば、本発明のモノクローナル抗体を2種用意し、そのうち1種を前記標識抗体とし、他の1種を前記固相に結合させた固相抗体とした試薬を用いることができる。まず、この固相抗体に測定すべき抗原を含む検体を反応させ、次いで同固相抗体に捕捉された抗原に、標識抗体(第二抗体)を反応させ、不溶性担体に結合した標識物の存在を検出することにより、免疫検定を実施することができる。また同様に、固相抗体に測定すべき抗原を含む検体を反応させ、次いで同固相抗体に捕捉された抗原に標識抗体(第二抗体)を反応させ、不溶性担体に結合した標識物、即ち、標識抗体の量から測定すべき抗原の量を定量することにより、免疫測定を実施することができる。サンドイッチ法の免疫測定試薬では、1種類のモノクローナル抗体を固相抗体と標識抗体として用いることもできるが(たとえば、抗原が多量体の場合)、通常測定すべき抗原の2つの異なるエピトープを認識する2種以上の抗体を用いることが好ましい。すなわち、固相抗体と標識抗体とをそれぞれ異なるエピトープを認識するモノクローナル抗体から選択して用いることが好ましい。更に、固相抗体と標識抗体のいずれについても、それぞれ2種以上のモノクローナル抗体から選択し組合せて用いることもできる。
競合的結合測定法による免疫測定試薬としては、例えば酵素、金属コロイド粒子、着色ラテックス粒子、発光物質、蛍光物質、放射性物質等によって標識した一定量の標識ウイルス抗原を作製する。この試薬を用いて、例えば、一定量の本発明のモノクローナル抗体、前記標識ウイルス抗原及び測定すべき抗原を含む検体とを競合的に反応させ、抗体と結合した、又は、結合しなかった標識ウイルス抗原の量から測定すべき抗原の量を定量することにより免疫測定を実施することができる。
本発明において、前記抗体又は抗原を固相又は標識物と結合させるには、物理吸着法、化学結合法等の方法を用いることができる(蛋白質 核酸 酵素 別冊No.31,37〜45(1987年)参照)。
また、本発明の抗SARSウイルスモノクローナル抗体を、イムノクロマトグラフィーを適用した免疫測定器具に用いると、検体中のSARSウイルスを特別な測定装置を用いることなく、簡便に検出することができる。この測定器具は、不溶性担体として毛細管作用により輸液(展開)可能な帯状のマトリクスを備え、該マトリクスに、少なくとも1種類の抗SARSウイルスモノクローナル抗体を不動化(固相化)したSARSウイルス検出ゾーンと、標識された抗SARSウイルスモノクローナル抗体を移動可能に点着した標識試薬ゾーンと、検体点着ゾーンと、前記マトリクスの長手方向の一端に展開液パッドを付設した展開液供給ゾーンと、前記マトリクスの長手方向の他の端部に設けた展開液吸収ゾーンとを有する。
このようなイムノクロマトグラフィー用の免疫測定器具の好ましい1例の模式断面図が図5に示されている。図5中、参照番号1はイムノクロマトグラフィー用の免疫測定器具、2は輸液可能なマトリクス、3は乾燥させた基質ゾーン7を有する展開液供給ゾーン、4は標識試薬ゾーン、5は展開液吸収ゾーン、6は検出ゾーン、8は検体点着ゾーン、9は検体、10は展開液を示す。以下、この免疫測定器具の各構成要素について説明する。
マトリクス
この免疫測定器具におけるマトリクスは、帯状の、毛細管作用によって液体を輸送することができる吸収性の材料で構成される。この吸収性材料としては、例えばセルロース、ニトロセルロース等のセルロース又はその誘導体、ガラス繊維等を単独又は混合して製造したろ紙、膜、多孔性材料である。このマトリクスの大きさに制限はないが、幅3mm〜10mm程度、長さ30mm〜100mm程度のストリップ状のものが取り扱いが容易で好ましい。マトリクスの厚さは、たとえば、100μm〜1mmのものを用いることができる。またマトリクスは、その一部又は全体を、測定時に検体由来のタンパク質のマトリクスへの非特異反応による吸着を防止するために、例えば牛血清アルブミン(BSA)等の動物血清、カゼイン、シュークロース等でブロッキングして用いることができる。
検出ゾーン
検出ゾーンには、前記マトリクス上に抗SARSウイルスモノクローナル抗体を固相化したSARSウイルス検出部を設けることができる。検出部の前記抗SARSウイルスモノクローナル抗体は、マトリクス上にあり、マトリクス上で展開される液体の移動方向(マトリクスの長手方向)に直交する方向にライン状に設けることが感度よく測定するためには好ましい。
この検出ゾーンの抗SARSウイルスモノクローナル抗体は、前記した抗体であり、モノクローナル抗体を単独又は混合して用いることもできる。抗SARSウイルスモノクローナル抗体は、IgG抗体、IgM抗体、更にこれらの抗体のフラグメントであるFab、Fab′、F(ab′)2等であってもよい。
検出部に不動化される抗SARSウイルスモノクローナル抗体は、直接マトリクスの検出ゾーンに物理吸着させてもよいが、共有結合などの化学結合によって固定することによって検出部に設けることもできる。また、抗SARSウイルスモノクローナル抗体を水不溶性の担体に結合させ、これをマトリクス内に含有させてもよい。この不溶性の担体としては、ゼラチン、アラビアゴム及びヘキサメタリン酸ナトリウムからなる混合物を不溶化して得られる粒子(特公昭63−29223)、ポリスチレンラテックス粒子、ガラス繊維等を挙げることができる。不溶性の担体と抗SARSウイルスモノクローナル抗体とは、前記化学結合又は物理吸着により結合させることができる。
この検出部は、マトリクス上において、標識試薬ゾーン、検体点着ゾーン及び展開液供給ゾーンに対して展開液の移動方向の下流側に設けられ、かつ展開液吸収ゾーンの上流側に位置する。検出部は、マトリクスに巾0.5mmから5mm程度のラインとして設けることができ、また複数のラインとして設けることもできる。巾5mm程度のマトリクスであれば、前記抗体及び/又は抗原を通常それぞれ 0.1μgから10μg程度点着し、乾燥させることにより検出部を作製することができる。
標識試薬ゾーン
標識試薬ゾーンは、標識抗SARSウイルスモノクローナル抗体を移動可能に点着して設けることができる。この標識試薬ゾーンは展開液供給ゾーンからの展開液の移動方向において前記検出ゾーンの上流側に設けることができる。この標識試薬ゾーンは、マトリクスに標識試薬を点着する方法、標識試薬を含む吸水性のパッドをマトリクス上に積層する方法、又はパッドと密着するマトリクス部分の一部又は全部にパッドとともに標識試薬を含有させる方法により設けることができる。吸水性のパッドとしては、後述する検体点着ゾーンに使用するパッドと同様のものを用いることができる。
標識抗体は、前記検出ゾーンに設けられる抗体とともに、少なくとも一方が本発明の抗SARSウイルスモノクローナル抗体であり、更に両方の抗体が本発明の抗SARSウイルスモノクローナル抗体であることが好ましい。標識抗SARSウイルスモノクローナル抗体としては、前記検出ゾーンの抗体と同様にそのフラグメントを用いることもできる。
前記標識抗SARSウイルスモノクローナル抗体は、抗SARSウイルスモノクローナル抗体と標識物とを結合させて製造することができる。標識物としては、酵素、金属コロイド粒子、着色ラテックス粒子、蛍光ラテックス粒子、発光物質、蛍光物質などを挙げることができる。酵素としては酵素免疫測定法(EIA)に用いられる各種酵素を用いることができ、例示的にはアルカリホスファターゼ、パーオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ等を挙げることができる。また、金属コロイド粒子としては、例えば金コロイド粒子、セレンコロイド粒子などを用いることができる。
また、標識物と抗SARSウイルスモノクローナル抗体との結合方法は、公知の共有結合又は非共有結合を作る方法を利用することができる。結合の方法には、例えばグルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸法、マレイミド法、ピリジル・ジスルフィド法、各種架橋剤を用いる方法等を挙げることができる(例えば「蛋白質核酸酵素」別冊31号、37〜45頁(1985)参照)。架橋剤を用いる結合方法において、架橋剤としては例えばN−スクシンイミジル−4−マレイミド酪酸(GMBS)、N−スクシンイミジル−6−マレイミドヘキサン酸、N−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸等を用いることができる。共有結合による方法においては、抗体に存在する官能基を用いることができる他、例えばチオール基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基等の官能基を、常法により抗体に導入したのち、前記結合法を適用して同官能基と標識物とを結合させることにより、標識抗SARSウイルスモノクローナル抗体を製造することができる。また非共有結合による方法としては物理吸着法等を挙げることができる。
標識抗SARSウイルスモノクローナル抗体量は、通常検査対象物の予測される量に応じて適宜変更することができるが、通常乾燥重量で0.01μg〜5μg程度である。標識抗SARSウイルスモノクローナル抗体は、試薬の安定化剤、溶解調節剤等とともに塗布することができる。
検体点着ゾーン
検体点着ゾーンは、展開液供給ゾーンの展開液の移動方向の下流側であり、かつ検出ゾーンの上流側のマトリクスに特に試薬等を含まずに設けることができる。さらに検体点着ゾーンは、1)展開液供給ゾーンの展開液移動方向の下流側であり、かつ標識試薬ゾーンの上流側の所定箇所、2)標識試薬ゾーンの下流側であり、かつ検出ゾーンの上流側の所定箇所、または3)標識試薬ゾーン上の所定箇所等に設けることができる。また、前記標識試薬ゾーンに検体点着ゾーンを設けた装置では、前記した如く標識試薬を含有する吸水性パッドを付設することが効率よく分析を行う上で好ましい。このパッドを付加する装置では、多量の検体液を点着することができるため、検体中の微量成分を検出感度よく測定を行うことができる。この吸水性のパッドは、標識試薬や検体中のSARSウイルスを吸着することの少ない材料から選択され、例えばポリビニルアルコール(PVA)、不織布、セルロース等の多孔質の合成又は天然の高分子化合物からなる材料を単独又は組み合わせて構成することができる。このパッドの大きさ、厚さ、密度等は限定されないが、通常縦と横が3mm〜10mm程度で、厚さが0.5mm〜4mm程度のパッドを用いることが効率よく測定を行うためには好ましい。
展開液供給ゾーン
展開液供給ゾーンは、マトリクスの長手方向の一端に設けられ展開液が供給されるゾーンである。測定の開始は、このゾーンを、少なくとも展開液吸収ゾーンに達する量の展開液の入った容器に浸すことにより行うことができる。さらに展開液の供給には、展開液供給ゾーンに展開液の入った液槽を付加し、この液槽のカバーを破り展開液とマトリクスを接触させることにより測定を開始することもできる。展開液は、界面活性剤、緩衝剤、安定化剤、抗菌剤等を適宜含有することができる。また、標識物として酵素を用いる場合には、後述する基質ゾーンとともに展開液に基質を添加することもできる。緩衝剤を含む緩衝液としては、例えば酢酸緩衝液、ほう酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、ジエタノールアミン緩衝液等を挙げることができる。また展開液供給ゾーンには展開液のマトリクスへの供給を安定して連続的に実施するため展開液パッドを付設するができる。展開液パッドとしては、例えばセルロース又はセルロース誘導体等のろ紙用いることができる。
展開液吸収ゾーン
展開液吸収ゾーンは、マトリクスの一端に設けられた前記展開液供給ゾーンに対して他端に設置される。このゾーンはマトリクスに供給される展開液を吸収し分析を円滑に行うために設けられる。展開液吸収ゾーンは、マトリクスを長く形成することにより確保することができる。また、マトリクスに吸水性材料を付設することにより吸収ゾーンとすることもでき、この場合、展開液の展開を促進することができる。この吸水性材料には、天然高分子化合物、合成高分子化合物等からなる保水性の高いろ紙、スポンジ等を用いることができる。展開液吸収ゾーンには、展開液を全て吸収する容積をもったパッド状の吸収性材料を設けることが好ましい。吸収性材料をマトリクスの上又は下に積層することにより展開液吸収ゾーンを設ける場合、小型化した免疫測定器具を製造することができる。
基質試薬ゾーン
更に、標識試薬ゾーンの標識物として酵素を用いる場合には、前記した通り展開液に基質を含有させるか、基質試薬ゾーンをマトリクスの前記展開液供給ゾーン近傍に設けることができる。基質試薬ゾーンは、展開液供給ゾーンに付設した前記展開液パッドに含浸させ設けることが基質量を多くして高感度測定を行う上で好ましい。
基質としては標識試薬の酵素に対応して以下に示す各種発色基質、蛍光基質、発光基質等を用いることができる。
(a)発色基質パーオキシダーゼ用:過酸化水素と組合せた2,2'−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、3,3',5,5'−テトラメチルベンチジン(TMB)、ジアミノベンチジン(DAB)、アルカリホスファターゼ用:5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)、p−ニトロフェニルホスフェート(p−NPP)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸ナトリウム(BCIP・Na)
(b)蛍光基質アルカリホスファターゼ用:4−メチルウムベリフェニル−ホスフェート(4MUP)
β−D−ガラクトシダーゼ用:4−メチルウムベリフェニル−β−D−ガラクトシド(4MUG)
(c)発光基質アルカリホスファターゼ用:3−(2'−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3''−ホスフォリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキセタン・2ナトリウム塩(AMPPD)
β−D−ガラクトシダーゼ用:3−(2'−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3''−β−D−ガラクトピラノシル)フェニル−1,2−ジオキセタン(AMGPD)
パーオキシダーゼ用:過酸化水素と組み合わせたルミノール、イソルミノール
基質ゾーンは、通常前記基質を水溶液に溶解して展開液パッドにライン状に塗布した後、乾燥させることにより形成することができ、所望により基質のシグナル増強剤、安定化剤、溶解調節剤等を添加することもできる。基質ゾーンは、マトリクスの端部に付設した展開液パッド内であれば、特に限定されない。展開液及び展開液パッドに添加する基質量は、測定条件により決定することができるが、1個の器具当たり通常5〜500μg程度を用いることができる。
測定試薬の使用方法
本発明の測定試薬により各種検体試料中のSARSウイルスの測定を行うことができる。測定は、まず検体を本発明の測定器具の検体点着ゾーンに供給した後、展開液を展開液パッドに供給し、マトリクスに展開して行う。展開液は毛細管作用によりマトリクスを移動し、展開液吸収ゾーンに達し、検出ゾーンに結合されなかった検体中の成分、酵素標識試薬等が展開液吸収ゾーンに吸収され展開が完了する。所定時間(通常10分から20分)経過後、検出ゾーンを観察し、検体液中のSARSウイルス抗原により検出部に固定化された標識物を検出および/または測定することにより、SARSウイルスの測定を行うことできる。この検出は、標識物に応じて目視にて、又は比色計、蛍光光度計、フォトンカウンター、感光フィルム等の測定装置を用いて実施することができる。測定は、例えば検出ゾーンの発色を目視で測定する方法が簡便である。また、この方法ではSARSウイルスの濃度に対応した色票(カラーチャート)を用いることにより半定量的な分析が可能となる。更に、比色計等により検出ゾーンの発色を数値化して、定量を行うこともできる。
また、前記マトリクスは、プラスチック、金属、紙等の支持部材上に積層し固定して用いることもできる。更に前記マトリクスは、プラスチック等のケースに固定し、展開液を含む液槽を展開液供給ゾーンに付設し、少なくとも検体点着ゾーンおよび検出ゾーン部分に穴の開いたケースでカバーをすることにより取扱の容易な器具を構成することができる。
上記試薬によって測定できる検体としては、SARSウイルスの核タンパク質を含むものであれば特に限定されず、例えば、ヒト又は動物由来の血清、血漿、全血の他、鼻腔ぬぐい液(鼻腔スワブ)、鼻腔吸引液、咽頭ぬぐい液(咽頭スワブ)等の体液抽出液、気道分泌物、細胞又は組織ホモジネート液等を挙げることができる。これらの検体は、SARSウイルスを含む溶液をそのまま検体として用いることもできるが、界面活性剤、例えば非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤等を用いてウイルスを処理をした溶液を用いることもできる。非イオン界面活性剤としては、例えばノニデット(ノニデットT−40)、トライトン、Brij等、陰イオン界面活性剤としては、例えばSDS等が用いられる。
また、ヒト又は動物由来の種々の細胞、組織等を固定化し、本発明のモノクローナル抗体を反応させることによって、細胞、組織等に分布するSARSウイルスの核タンパク質を直接測定することも可能である。更に、本発明のモノクローナル抗体を用いて、いわゆるウェスタンブロッティング、アフィニティクロマトグラフィー等を行うこともできる。
本発明のモノクローナル抗体を用いたSARSウイルスの核タンパク質の測定方法を、ヒト又は動物由来の種々の検体に適用することにより、SARSウイルス感染の診断を実施することができる。本発明のモノクローナル抗体を用いることによって、免疫化学的方法や免疫組織化学的方法により、ヒト又は動物由来の種々の体液、細胞、組織等におけるSARSウイルスの核タンパク質を直接測定することが可能となる。SARSウイルスは、哺乳動物、鳥類などからヒトへ感染したルートが疑われており、通常のヒト検体のほか、動物検体の測定によって、感染ルートの解明にも用いることができる。
なお、上記した免疫測定方法、試薬及び器具の説明において、本発明のモノクローナル抗体に代えて本発明のモノクローナル抗体の抗原結合性断片を用いることもできる。
以下、本発明を参考例及び実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
参考例1 プラスミドの作製
核タンパク質(「Nタンパク質」とする)遺伝子は全長1270塩基対で構成されている。既に報告された遺伝子配列より、Nタンパク質遺伝子のほぼ真中を水解する制限部位NheIの前後で2つの断片に分け、それぞれを既知の配列情報に基づいて合成された互いに15塩基の重なりを有する50〜55塩基のオリゴマーをアニールさせてDNA合成条件下で伸長反応に付し、次いでPCRにて順次増幅した。この操作を反復し、前半部分のフォワードプライマーの5’側にEcoRI部位を、またリバースプライマーの3’側にNheI部位を持たせ、かつ後半部分のリバースプライマーの3’側にBamHI部位を、またフォワードプライマーの5’側にNheI部位を付加してPCRを行った。
これらの断片をQIAGEN社のPCR Purification Kitで精製し、前半部はEcoRIおよびNheI、後半部はNheIおよびBamHIで水解し、図1に示す発現用プラスミドpW6AのEcoRI-BamHI部位に挿入し、プラスミドpWS-Nを作製した。これを用い大腸菌BL21(DE3) (Brookhaven National Laboratoryより入手)を形質転換させ、アンピシリン耐性の形質転換体大腸菌BL21(DE3)/pWS-Nを得た。核タンパク質の塩基配列およびアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1及び2に示す。
参考例2 組換えタンパク質(S-N)の発現
参考例1で作製した形質転換体を、50μg/mlのアンピシリンを含むLB培地2ml中にて37℃で培養した。予備培養において600nmでのODが0.6〜0.8となるまで増殖させた後、培養物に0.4mM IPTGを添加して発現誘導を行い、更に3時間培養した。1.5ml量の菌体培養液を5000rpmで2分間遠心分離して菌体を集め、100μlの緩衝液(10mMトリス-塩酸、pH8.0、0.1M塩化ナトリウム、1mMEDTA)に懸濁し、15分間の超音波破砕により完全に菌体を破砕した。これを菌体試料とした。
菌体試料8μlに3倍濃度のSDSポリアクリルアミド緩衝液(0.15Mトリス-塩酸、pH6.8、6%SDS、24%グリセロール、6mM EDTA、2% 2−メルカプトエタノール、0.03% ブロモフェノールブルー)4μlを加え十分攪拌した後、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。電気泳動後、展開された試料をニトロセルロースフィルターに転写し、1%BSAによるフィルターのブロッキング後、リン酸緩衝液(10mMリン酸、pH7.4、0.15M塩化ナトリウム)で1000倍に希釈した抗N5ペプチド血清を反応させた。更に、ペルオキシダーゼ酵素標識された抗マウスIgウサギポリクローナル抗体(ダコ社製)を反応させ、洗浄後10mlの基質発色液(0.01%過酸化水素水、0.6mg/ml 4−クロロ−1−ナフトール)を添加し発色させた。結果を図2に示す。
なお、抗N5ペプチド血清は、参考例4の記載に従って調製したN5ペプチドKLHコンジュゲイトを用いてマウスを免疫し、同マウスより採取した血液から分離した。
参考例3 可溶性S-Nの精製
参考例1で作製した大腸菌BL21(DE3)/pWS-Nをアンピシリンを含むLB培地37℃条件下で培養した。該形質転換体を予備培養にて増殖させ、600nmでのODが約0.7の密度となるようにしたのち、0.4mM IPTGを添加し、発現誘導を行った。18時間培養後、遠心操作を行い、大腸菌を回収した。回収した大腸菌に20mMトリス−塩酸 pH8.0、1mM PMSF( フェニルメチルスルホニルフルオリド )を加え、氷冷下で超音波破砕処理を行った。遠心後、可溶性画分S-Nに硫酸アンモニウムを加え、20〜40%画分を回収した。この硫酸アンモニウム画分を、0.1M 塩化ナトリウム、8M 尿素、20mM リン酸緩衝液 pH6.9で平衡化したSP セファロース ファースト フロー(アマシャム社製)にアプライし、0.2M 塩化ナトリウム、8M 尿素、20mM リン酸緩衝液 pH6.9で溶出し精製した。溶出画分を0.2M塩化ナトリウム、20mMトリス−塩酸緩衝液 pH8.0に対して透析した。この調製物を、参考例2と同様にSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、及びウェスタンブロットによって、その精製度を確認した。その結果では単一のバンドを示した。
実施例1 抗Nタンパク質モノクローナル抗体の確立
抗Nタンパク質モノクローナル抗体を、参考例3で作製したリコンビナントNタンパク質をマウスに免疫し、同マウスの脾臓リンパ球とミエローマ細胞を融合することにより作製した。すなわち、BALB/Cマウスに、フロイント完全アジュバントでエマルジョン化したリコンビナントNタンパク質を50〜100μg/マウスで初回免疫を行い、2〜3週間後、フロイント不完全アジュバントでエマルジョン化した同抗原 50〜100μg/マウスで追加免疫を行った。抗体価のチェックは、リコンビナントNタンパク質をコートした96ウェル ELISAプレートを用いた固相ELISAで行った。抗体価の上昇が認められたマウスに遊離のリコンビナントNタンパク質25〜100μgを静脈内投与し、その3〜4日後、マウスから脾臓を取り出し、脾細胞を調製した。前もってRPMI-1640培地で培養していたマウスミエローマ細胞(P3U1)と脾細胞を1:2〜1:5の比率で混合し、PEG(ベーリンガー社製)を用いて細胞融合を行った。融合した細胞はHAT培地に浮遊した後、96ウェル培養プレートに分注し、37℃ CO2インキュベーターで培養した。
スクリーニングは上記に示した固相ELISAで行った。すなわち、リコンビナントNタンパク質を96ウェル ELISAプレート(ファルマシア社製)に1μg/mlの濃度で50μl/ウェルずつ分注し、4℃ にて一晩放置することにより吸着させた。ウェルを1%スキムミルクでブロッキングした後、洗浄緩衝液(0.05% Tween20を含むPBS)で3回洗浄し、細胞融合を行ったプレートの培養上清50μlを加え、37℃にて1時間反応させた。同様に洗浄緩衝液で3回洗浄後、POD標識抗マウスイムノグロブリン抗体(DACO社製)を加え、さらに37℃にて1時間反応させた。洗浄緩衝液で4回洗浄後、基質ABTSを加え、発色の見られるウェルを選択した。次に、選択したウェルの細胞を24ウェル 培養プレートに移し37℃ のCO2インキュベーター中で培養した後、限外希釈法にて単一クローンとし、以下に示す抗Nタンパク質モノクローナル抗体を産生する5種類のハイブリドーマrSN−18、rSN−122、rSN−150、rSN−21−2及びrSN−29を確立した。これらのハイブリドーマは、前記特許生物寄託センターに寄託され、その寄託番号はそれぞれFERM P−19572、FERM P−19573、FERM P−19574、受託番号FERMP−19619及びFERM P−19620である。これらハイブリドーマは、平成16年10月18日、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター〔あて名;日本国茨城県つくば市東1丁目1番1号中央第6〕に、ハイブリドーマrSN−18は受託番号FERM BP−10143、ハイブリドーマrSN−122は受託番号FERM BP−10144、ハイブリドーマrSN−150は受託番号FERM BP−10145、ハイブリドーマrSN−21−2は受託番号FERM BP−10146及びハイブリドーマrSN−29は受託番号FERM BP−10147として国際寄託に移管された。
実施例2 ウエスタンブロッティング法(WB)によるモノクローナル抗体の反応性の確認
確立した各モノクローナル抗体の天然型抗原(ウイルス由来のNタンパク質)に対する反応性を、濃縮ウイルス懸濁液をサンプルとしたWBで確認した。Vero E6細胞にSARS ウイルスHanoi株を感染させ、48時間、CO2インキュベーターで培養した後、2000rpm、15分間遠心し、ウイルス培養上清(TCID50は7.95 x 106/ml)を調製した。この培養上清に対して56℃、90分で不活性化処理を行なった後、その31.5mlを日立超遠心機(40Tローター)を用いて、30Krpmで3時間遠心した。得られた沈殿にTNE(Tris-NaCl-EDTA)緩衝液(0.3ml)を加え、ピペッティングを行い、濃縮ウイルス懸濁液を調製した。本懸濁液に等量の電気泳動用サンプル処理液を添加し、次いで過熱処理を行うことにより分析用サンプルとした。12.5%ゲルを用いてSDSポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)を行った後、サンプルをニトロセルロース膜に転写し、WB用転写膜(抗原転写WB膜)を作製した。転写膜をスキムミルクでブロッキングした後、抗体との反応に付した。抗Nタンパク質モノクローナル抗体としてrSN-18抗体、rSN-122抗体、rSN-150抗体、rSN-29抗体、rSN-21-2抗体、rSN-122抗体を用い、無関係なモノクローナル抗体であるE2CT-38抗体を陰性コントロールとして用いてWBを実施した。
抗体との反応は以下のとおりである。それぞれのモノクローナル抗体を、抗原転写WB膜と室温にて1時間振盪し、反応に付した後、洗浄緩衝液(0.05% Tween20を含むPBS)で3回洗浄(5分の振盪洗浄)した。次にPOD標識抗マウスイムノグロブリン抗体(DACO社製)を加え、さらに室温、1時間反応させた。洗浄緩衝液で4 回洗浄(5分の振盪洗浄)後、基質4−クロロナフトール溶液を加え、バンドの確認を行った。図3及び図4に示すように各モノクローナル抗体を用いた場合、分子量50Kd弱のNタンパク質に相当する位置にバンドが確認された。
実施例3 サンドイッチELISA法によるウイルス培養上清中のNタンパク質の検出
リコンビナントNタンパク質及びウイルス培養上清をサンプルとしてサンドイッチELISAを行い、Nタンパク質測定系が成立するかどうかを確認した。ELISAを以下のように行った。すなわち、ファルコン社製ELISAプレートに、各モノクローナル抗体を5μg/mlの濃度にPBS(pH7.4)で希釈し、1ウェルに50μlづつ入れ、4 ℃一晩放置することにより抗体をコートした。次に1%BSA-PBS(pH7.4)を150μl/ウェル入れ、37℃、1時間放置しマスキング(masking)を行った。洗浄緩衝液(0.05%Tween20含有PBS(pH7.4))でウェルを3回洗浄後、リコンビナントNタンパク質またはウイルス培養上清を50μl/ウェル入れ、37℃、1時間反応させた。リコンビナントNタンパク質は20ng/ml、培養上清はそのまま或いは洗浄緩衝液で希釈して用いた。このとき、ウイルスで感染させていない細胞の培養上清を陰性コントロールとして用いた。次に、実施例1で記したハイブリドーマ培養上清から抗マウスイムノグロブリン抗体アフィニティーカラムで精製したモノクローナル抗体をプール後、アルカリフォスファターゼで標識した標識抗体を、ウェルに50μl/ウェル入れ、37℃、1時間反応させた。洗浄緩衝液で3回洗浄後、基質p−ニトロフェニルホスフェート(p-NPP)を50μl /ウェル入れ、室温で15分間放置後、目視で観察し、さらに405nmの波長を測定した。表1に示すように、本実施例で用いた全てのモノクローナル抗体においてNタンパク質の検出が可能であることが確認された。
実施例4 アルカリホスファターゼ標識抗SARSウイルスモノクローナル抗体の作製
実施例1で作製した抗SARSウイルスモノクローナル抗体に2−イミノチオラン塩酸塩(アルドリッチ社製)を反応させ、チオール基を導入した。
次にマレイミド基を導入したアルカリホスファターゼと前記チオール基を導入した抗体とを反応させ、ゲルろ過処理を行い、精製アルカリホスファターゼ標識抗SARSウイルスモノクローナル抗体を得た。
実施例5 アルカリホスファターゼ標識抗SARSウイルスモノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法による測定
リコンビナントNタンパク質及び56℃にて90分間熱処理して得た不活化ウイルス培養上清を検体として用い、以下に示すサンドイッチELISAを行った。
Nunc社製IMMUNOMODULE MAXISORPプレートに、各モノクローナル抗体単独又は混合したものを10〜15μg/mlの濃度となるようにリン酸緩衝液(pH7.5)を用いて希釈し、1ウェルに100μlずつ入れ、4 ℃にて一晩放置し、固相化した。次に、洗浄緩衝液[0.02% TritonX-100含有TBS(Tris緩衝生理食塩水)pH7.2]で各ウェルを3回洗浄後、1%BSA-リン酸緩衝液(pH7.4)を250μl/ウェル入れ、37℃にて一晩放置し、ブロッキングを施すことにより抗体固相化プレートを作製した。抗体固相化プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄後、反応溶液(1%BSA,含有PBS,pH7.5)で希釈したリコンビナントNタンパク質(1.0ng/ml)及びウイルス培養上清(100μl/ウェル)を入れ、室温(25℃)にて1時間反応させた。このとき、ウイルスで感染させていない細胞の培養上清を陰性コントロールとして用いた。プレートを洗浄緩衝液で4回洗浄後に、実施例4で作製した1.0〜5.0μg/mlの標識抗体の単独又は混合したものを100μl/ウェル入れ、室温(25℃)にて1時間反応させた。プレートを洗浄緩衝液で4回洗浄後、基質p−ニトロフェニルホスフェート(p-NPP)を100μl /ウェル入れ室温で30〜60分間放置後、波長405nmで測定した。リコンビナントNタンパク質及びウイルス培養上清について測定した吸光度測定の結果を、それぞれ表2aおよび表2bに示す。表2aに示すように、全てのモノクローナル抗体において、組合せによる反応性は異なるが、リコンビナントNタンパク質の検出が可能であることが確認された。また、表2bに示すように、ウイルス培養上清に対してもリコンビナントNタンパク質に対する反応性とほぼ同じ反応性が認められた。
実施例6 イムノクロマトグラフィーによる測定
リコンビナントNタンパク質及び56℃にて90分間熱処理して得た不活化ウイルス培養上清を検体としてイムノクロマトグラフィーによるNタンパク質の迅速検出を確認した。図5に示すイムノクロマトグラフィーの免疫測定器具1を以下のようにして作製した。
ニトロセルロース膜2(5mmx50mm)の一端に、20mg/mlの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル-リン酸ナトリウム(BCIP・Na)を基質として吸水性の不織布へ点着し、乾燥させた基質ゾーン7を有する展開液供給ゾーン3、他端に吸水性の吸収パッド(展開液吸収ゾーン5)を設けた。メンブレン部の標識試薬ゾーン4(検体点着ゾーン8)の輸液方向の下流側に検出ゾーン6を設けた。検出ゾーン6は、表3a又はbに記載のモノクローナル抗体(1mg/ml)をライン点着し、乾燥することにより調製した。標識試薬ゾーン4は、吸水性不織布へ表3a又はbに示す単独又は2種類のアルカリホスファターゼ標識モノクローナル抗体(35ng/パッド)を点着し、乾燥することによって製造した。次いで検出ゾーン6を設けた前記ニトロセルロース膜をそのまま、又はBSAを含むPBSでブロッキングを行ったものに、標識試薬ゾーン4を付設した。
このようにして作製した免疫測定器具1について、3%BSA含有トリス緩衝生理食塩水(検体処理液)でリコンビナントNタンパク質または培養上清を希釈することにより調製した検体9(25〜30μl)を標識試薬ゾーン4上に設けた検体点着ゾーン8へ添加した。ついで、展開液供給ゾーン3へ展開液10を300μl滴下して検体および基質をニトロセルロース膜上に展開させ、15分後に検出ゾーン6でのラインの出現を確認した。その結果を表3aに示す。表3aに示すように、リコンビナントNタンパク質は、抗体の組合せにより反応性に差が見られるが、反応時間15分間で検出が可能であった。一方、表2a,bおよび表3aの結果から、固相抗体と標識抗体の組合せで反応性が高い組合せを選択した系で、ウイルス培養上清の測定を行い、高希釈倍率でウイルス培養上清中のNタンパク質を検出できた。その結果を表3bに示す。
参考例4 N5ペプチドの合成とKLHコンジュゲートの作成
SARS核タンパク質244-260を含むペプチド配列(N5ペプチド、GQTVTKKSAAEASKKPRC:配列番号3)を、島津製作所社製(PSSM−8)のペプチド合成機でFmoc法により合成した。N5ペプチドの合成方法は、合成機に記載の方法に従った。次いで、合成した前記ペプチドを常法に従ってキーホールリンペット・ヘモシアニン(KLH)と結合させ、KLHコンジュゲイトを作成した。
実施例7 N5ペプチド抗原を用いた抗Nタンパク質モノクローナル抗体の確立
抗Nタンパク質に対するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを、参考例4で作製したN5ペプチドKLHコンジュゲイトをマウスに免疫し、同マウスの脾臓リンパ球とミエローマ細胞を融合することにより作製した。作製法の詳細は、実施例1に記載された方法に従って実施し、スクリーニングして抗Nタンパク質モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマSN5−25を確立した。このハイブリドーマから得られるモノクローナル抗体をSN5−25と命名した。
実施例8 アルカリホスファターゼ標識抗SARSウイルスモノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法による測定
実施例4に従い表4に示すアルカリホスファターゼ標識抗SARSウイルスモノクローナル抗体を作製した。更に、実施例5と同様に表4に示す抗体固相化プレートを作成し、ウイルス培養上清を用いて測定を実施した。その結果を表4に示す。結果は、SARS核タンパク質(244-260)に相当するペプチドを抗原とするモノクローナル抗体を用いた試薬によって高感度(高希釈倍率の試料)でウイルス培養上清中のNタンパク質を検出できた。
本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、検体中のSARSウイルスを検出又は定量するための免疫測定方法、そのための試薬又は免疫測定器具に使用することができる。
配列番号3:配列番号2のアミノ酸244〜260とシステインとからなるペプチド配列。

Claims (11)

  1. 重症急性呼吸器症候群(Severe acute respiratory syndrome ;SARS)原因コロナウイルスの核タンパク質に対する抗SARSウイルスモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
  2. モノクローナル抗体である請求項1記載の抗SARSウイルスモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
  3. 配列番号1で表される塩基配列を組み込んだベクターから発現させた前記コロナウイルスの核タンパク質を免疫原として使用することにより作製されたハイブリドーマより産生される請求項1記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
  4. 受託番号FERM BP−10143のハイブリドーマrSN−18、FERM BP−10144のハイブリドーマrSN−122、FERM BP−10145のハイブリドーマrSN−150、FERM BP−10146のハイブリドーマrSN−21−2又はFERM BP−10147のハイブリドーマrSN−29であるハイブリドーマより産生されるモノクローナル抗体の結合特異性を有する請求項3記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
  5. 配列番号3で表されるアミノ酸配列を免疫原として使用することにより作製されたハイブリドーマより産生される請求項1記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマであって、抗SARSウイルスモノクローナル抗体産生細胞と腫瘍細胞とを細胞融合させることよって得られるハイブリドーマ。
  7. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を産生する受託番号FERM BP−10143のハイブリドーマrSN−18、FERM BP−10144のハイブリドーマrSN−122、FERM BP−10145のハイブリドーマrSN−150、FERM BP−10146のハイブリドーマrSN−21−2又はFERM BP−10147のハイブリドーマrSN−29。
  8. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を固相抗体及び標識抗体の少なくとも一方に用いたSARS原因コロナウイルスの免疫測定試薬。
  9. 輸液可能なマトリクス上に抗SARS抗体を固定した検出ゾーンと、標識抗SARS抗体を前記マトリクス上に移動可能に点着した標識試薬ゾーンとを有するSARS原因コロナウイルスの免疫測定器具であって、前記検出ゾーンに固定した抗体及び標識抗SARS抗体の少なくとも一方が請求項1ないし5のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片である器具。
  10. 標識が酵素であり、マトリクスの標識試薬ゾーンの輸液方向の上流側に酵素と反応する基質を有する請求項9記載の免疫測定器具。
  11. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の抗SARSウイルスモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と、被検試料中のSARSウイルスとの抗原抗体反応を利用した免疫測定により被検試料中のSARSウイルスを検出することを含む、SARSウイルスの免疫測定方法。

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