JPWO2005033298A1 - 幹細胞から心筋細胞を分化誘導する方法 - Google Patents

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Abstract

幹細胞から心筋細胞を分化誘導する方法において、幹細胞を、BMPシグナル伝達を抑制する物質の存在下で心筋細胞への分化誘導のための培養をすることを特徴とする当該方法により、高率かつ選択的に心筋細胞を分化誘導する方法を提供する。

Description

本発明は、ES細胞等の多能性幹細胞から、選択的かつ高率に心筋細胞を作製する方法、及び当該方法により得られた再生医療用の細胞に関する。
一般的に、心筋細胞は、出生前は自律拍動しながら活発に細胞分裂を行っているが、出生直後よりその分裂能を喪失し、また未分化な前駆細胞を持つこともないため、心筋梗塞や心筋炎等の各種ストレスに曝されることにより心筋細胞が死滅すると、喪失した心筋細胞は補充されることがないとされている。その結果、残存心筋細胞は代償性肥大により心機能を保とうとするが、各種ストレスが持続し、その許容範囲を超えてしまうと、さらなる心筋細胞の疲弊、死滅を誘起して心筋機能の低下(即ち心不全)を呈するようになる。
心不全をはじめとする心臓病は、日本国の死亡原因の第2位となっており、その予後もきわめて悪く、心疾患患者の5年生存率は50%程度である。そのため、治療効果の高い心不全治療法の開発は、医療福祉の大きな前進ならびに医療経済の改善につながるものと考えられる。心不全治療薬としては、従来、心筋の収縮力を増加させるジギタリス製剤やキサンチン製剤等の強心剤が使用されてきたが、これらの薬剤の長期投与は、心筋エネルギーの過剰消費のため、病態を悪化させることが知られている。また、最近では、交感神経系やレニン−アンジオテンシン系の亢進による過剰な心臓負荷を軽減するβ遮断薬やACE阻害薬による治療が主流になってきているが、これらは対症的治療法に過ぎず、傷害を受けた心組織そのものを回復させるものではない。これに対し、心臓移植は重症心不全に対する根本的な治療法であるが、臓器提供者の不足や医療倫理、患者の肉体的・経済的負担の重さ等の問題から本法を一般的な治療法として頻用することは困難である。
そのため、衰弱又は失われた心筋細胞を補充的に移植する方法は、心不全の治療に極めて有用であると考えられる。事実、動物を用いた実験では、胎児から未成熟な心筋細胞を取得し、それを成体心組織に移植すると、移植細胞は心筋細胞として有効に機能することが知られている(非特許文献1参照)。しかしながら、この方法で大量の心筋細胞を取得することは困難であり、倫理的観点からも臨床医療への応用は難しい。
そこで、心筋細胞を未分化な幹細胞から分化誘導し、これを移植用細胞として利用する方法が近年、特に注目されている。現在のところ、成体心組織中に心筋細胞を産生し得る前駆細胞もしくは幹細胞として明らかに同定できる細胞集団は見出されていないため、上記の方法を実施するためには、より未分化で多彩な分化能を有している多能性幹細胞の使用が考えられる。
多能性幹細胞(pluripotent stem cells)とは、試験管内培養により未分化状態を保ったまま、ほぼ永続的又は長期間の細胞増殖が可能であり、正常な核(染色体)型を呈し、適当な条件下において三胚葉(外胚葉、中胚葉、および内胚葉)すべての系譜の細胞に分化する能力をもった細胞と定義される。現在、多能性幹細胞としては、初期胚より単離される胚性幹細胞(embryonic stem cells:ES細胞)、胎児期の始原生殖細胞から単離される胚性生殖細胞(embryonic germ cells:EG細胞)、そして成体骨髄から単離される成人型多能性幹細胞(multipotent adult progenitor cells:MAPC)の3種が最もよく知られている。
特にES細胞は、試験管内培養により、心筋細胞に分化誘導できることが以前から知られている。初期の研究はその殆どがマウス由来のES細胞を用いて行われている。ES細胞を単一細胞状態(酵素処理等を施すことで細胞同士の接着がない個々の細胞が分散した状態)下で、白血病阻害因子(leukemia inhibitory factor:LIF)等の分化抑制因子を存在させずに浮遊培養を行うと、ES細胞同士が接着、凝集し、胚様体(embryoid body:EB)とよばれる初期胚類似の構造体を形成する。その後、EBを浮遊状態もしくは接着状態で培養することにより、自立拍動性を有した心筋細胞が出現することが知られている。
上記の様に作製されたES細胞由来心筋細胞は、胎児心臓由来の未成熟な心筋細胞ときわめてよく似た形質を呈している(非特許文献2、3参照)。また、実際にES細胞由来心筋細胞を成体心組織に移植した動物実験例では、胎児心筋を移植した例とほぼ変わらない、極めて高い有効性を示すことも確認されている(特許文献1、非特許文献4参照)。
1995年、Thomsonらが初めて霊長類からES細胞を樹立したことにより、多能性幹細胞に由来する心筋細胞を用いた心筋再生治療法の実用化が現実味を帯びてきた(特許文献2、非特許文献5参照)。引き続き彼らは、ヒト初期胚からヒトES細胞株の単離・樹立にも成功した(非特許文献6参照)。また、Gearhartらは、ヒト始原生殖細胞からhEG細胞株を樹立した(非特許文献7、特許文献3参照)。
マウスES細胞と同様、ヒトES細胞からも心筋細胞が分化誘導できることは、Kehatら(非特許文献8参照)およびChunhuiら(特許文献4、非特許文献9参照)により報告されている。これらの報告によると、ヒトES細胞から分化誘導した心筋細胞は、自立拍動能を有することはもちろん、ミオシン重鎖/軽鎖やα-アクチニン、トロポニンI、心房性利尿ペプチド(artial natriuretic peptide;ANP)等の心筋特異的蛋白質や、GATA-4やNkx2.5、MEF-2c等の心筋特異的転写因子を発現・産生しているとともに、微細解剖学的観察および電気生理学的解析からも、胎生期の未成熟な心筋細胞の形質を保持しており、再生医療への利用が期待される。
一方、多能性幹細胞に由来する心筋細胞を、細胞移植治療やその他の目的のために使用する際の重要な問題として、従来の方法によりES細胞又はEG細胞より形成されたEBからは、心筋細胞以外にも血球系細胞や、血管系細胞、神経系細胞、腸管系細胞、骨・軟骨細胞等の別種細胞が混在して発生してくることが挙げられる。更に、これらの分化した細胞の中で心筋細胞が占める割合はあまり高くなく、全体の5〜20%程度に過ぎない。
別種の細胞が混在している中から、心筋細胞のみを選択的に選別する方法としては、ES細胞の遺伝子に人為的な修飾を加え、薬剤耐性もしくは異所性発現能を付与することにより、心筋細胞又はその前駆細胞としての形質を有する細胞を回収する方法が挙げられる。例えば、Fieldおよび共同研究者らは、α型ミオシン重鎖プロモーターの制御下でネオマイシン(G418)耐性遺伝子を発現し得る遺伝子カセットを、マウスES細胞に導入することにより、そのES細胞が心筋細胞に分化し、それに伴いα型ミオシン重鎖遺伝子を発現した時のみ、G418を添加した培地中で生存し得る系を構築した(特許文献1、非特許文献4参照)。この方法によりG418耐性細胞として選別された細胞は、99%以上の確率で心筋細胞であることが確認されている。しかし、この方法では、心筋細胞の純度はきわめて高くなるものの、最終的に得られる心筋細胞数は、全細胞数の数パーセント程度に過ぎず、移植治療に必要な心筋細胞を得るのは容易なことではない。
最近、Chunhuiらは、ヒトES細胞を5-アザシチジンで処理することにより、EB中のトロポニンI陽性(心筋)細胞が15%から44%に増加することを報告した(非特許文献9参照)が、本法においても、心筋細胞の占める割合がEB中の50%を越えることはない。また、脱メチル化剤である5-アザシチジンは、DNAに結合したメチル基を離脱させることにより遺伝子の発現状態を変化させる薬剤であり、薬剤が直接染色体に作用するため、移植用細胞を作製する薬剤としては適当ではない。
その他、ES細胞から心筋細胞をより高率に発生させる方法としては、例えば、マウスES細胞では、レチノイン酸(非特許文献10参照)やアスコルビン酸(非特許文献11参照)、TGFβ、BMP-2(非特許文献12参照)、PDGF(非特許文献13参照)、Dynorphin B(非特許文献14参照)の添加、又は細胞内の活性酸素種(reactive oxigen species:ROS)(非特許文献15参照)やCa2+(非特許文献16参照)を増加させる処理が心筋細胞の分化誘導に促進的に働くことが知られている。しかし、これらのいかなる方法においても、心筋細胞特異的又は選択的な分化誘導は成功していない。
分泌性蛋白質であるノギン(Noggin)およびコーディン(Chordin)は、当初、アフリカツメガエル胚における神経誘導因子として同定された(非特許文献17、18、特許文献5〜8参照)。その後の検討により、ノギンおよびコーディンは、神経細胞の発生、分化を阻害する効果を有するBMP(Bone Morphogenic Protein;骨形成因子)ファミリー分子と結合し、そのシグナル伝達を遮断することにより、神経誘導効果を呈することが報告されている(非特許文献19〜21参照)。実際に、マウスES細胞を用いた実験でも、ノギン遺伝子又はコーディン遺伝子を恒常的に発現することにより、神経細胞への分化が誘導されることが示されている(非特許文献22参照)。
また、ヒトES細胞をノギン添加培地で培養すると、ES細胞が内因性に産生するBMP-2の作用を抑制することにより、ES細胞の胚体外内胚葉細胞への分化が抑制され、ES細胞の未分化状態が保れるとともに、引き続き神経分化培養条件下で培養することにより神経細胞への分化誘導が促進されることが開示されている(特許文献9参照)。
更に、ニワトリ胚(非特許文献23参照)、アフリカツメガエル胚(非特許文献24参照)又はマウス胚性癌細胞(非特許文献25参照)を用いた従来の解析では、心筋細胞の発生及び/又は分化には、BMPファミリー分子が促進的に働いており、その作用をノギン刺激により阻害すると、心筋細胞の発生及び/又は分化も抑制されることが報告されている。
このように、ノギン若しくはコーディン又はその他のBMPシグナル抑制因子を利用することにより心筋細胞の発生、分化を促す試みはこれまで皆無であった。
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本発明は、未分化な幹細胞を高率且つ選択的に心筋細胞に分化誘導する方法、当該方法により得られる心筋細胞、及び当該細胞を、心臓病をターゲットとした細胞移植、注入、その他の治療に用いる方法等を提供することを課題とする。
本発明は主に以下の事項に関する。
(1)幹細胞から心筋細胞を分化誘導する方法において、幹細胞を、BMPシグナル伝達を抑制する物質の存在下で分化誘導のための培養をすることを特徴とする当該方法。
(2)分化誘導のための幹細胞の培養が、浮遊凝集培養し、胚様体を形成させる工程を含む上記(1)に記載の方法。
(3)分化誘導のための幹細胞の培養が、フィーダー細胞と共培養する工程を含む上記(1)に記載の方法。
(4)分化誘導のための幹細胞の培養が、培養容器上で平面培養する工程を含む上記(1)に記載の方法。
(5)BMPシグナル伝達を抑制する物質を、分化誘導期の最初の数日間のみ添加する上記(1)〜(4)の何れか1項に記載の方法。
(6)BMPシグナル伝達を抑制する物質を、分化誘導期前の幹細胞に前もって処理しておく工程を含む上記(1)〜(4)の何れか1項に記載の方法。
(7)BMPシグナル伝達を抑制する物質を分化誘導期前の幹細胞に前もって処理しておく工程を含み、かつ、BMPシグナル伝達を抑制する物質を分化誘導期の最初の数日間のみ添加する、上記(1)〜(4)の何れか1項に記載の方法。
(8)BMPシグナル伝達を抑制する物質がBMPアンタゴニストである上記(1)〜(7)の何れか1項に記載の方法。
(9)BMPアンタゴニストが、ノギン、コーディン、フェチュイン、フォリスタチン、スクレロスチン、ダン、サーベラス、グレムリン、及びダンテ、並びにそれらの関連蛋白質からなる群から1つ又は複数選択されたものである、上記(8)に記載の方法。
(10)幹細胞が、試験管内培養下で心筋細胞へ分化し得る能力を有した哺乳動物由来の細胞である上記(1)〜(9)の何れか1項に記載の方法。
(11)心筋細胞へ分化し得る能力を有した哺乳動物由来の細胞が、多能性幹細胞又は当該細胞に由来する細胞である上記(10)に記載の方法。
(12)多能性幹細胞が、胚性幹細胞、胚性幹細胞に類似した形質を有する細胞、胚性生殖細胞又は成人型多能性幹細胞である上記(11)に記載の方法。
(13)多能性幹細胞が、胚性幹細胞である上記(12)に記載の方法。
(14)幹細胞がヒト由来である、上記(1)〜(13)に記載の方法。
(15)上記(1)〜(14)の何れか1項に記載の方法を含む、心筋細胞の製造方法。(16)上記(1)〜(14)の何れか1項に記載の方法により得られる心筋細胞。
(17)心筋細胞が衰弱、機能停止又は死滅したことに起因する心疾患の治療方法において、上記(16)に記載の心筋細胞を心筋細胞が衰弱、機能停止又は死滅した部位又はその周辺に投与(移植)することからなる当該心疾患の治療方法。
(18)心筋細胞が衰弱、機能停止又は死滅したことに起因する心疾患の治療に有用な物質のスクリーニング方法において、被験物質を上記(16)に記載の心筋細胞と接触させて、当該細胞の心筋細胞への分化効率又はその細胞機能の質的若しくは量的な変化を測定することからなる当該スクリーニング方法。
(19)上記(16)に記載の心筋細胞を有効成分として含有する、心筋細胞が衰弱、機能停止又は死滅したことに起因する心疾患治療用の医薬組成物又は支持体。
本発明者らは心筋細胞を作製する幹細胞ソースとして多能性幹細胞、特に最も頻用される細胞であるES細胞を用い、心筋細胞又はその前駆細胞への分化誘導条件について種々検討を重ねた結果、培養時のある期間、培地中に骨形成因子(Bone Morphogenic Protein;BMP)のシグナル伝達を抑制する物質を添加することにより、拍動能を有し心筋細胞と認められる細胞が、従来法よりも極めて選択的且つ高率に産生されることを見出し、また、過剰量のBMPを添加すると、BMPシグナル伝達を抑制する物質処理による心筋分化誘導効果が著しく低減することも見出した結果、BMPシグナルの抑制が、多能性幹細胞の心筋細胞への分化を促進的に誘導することが明らかとなり、本発明を完成させるに至った。
本発明において、BMPシグナル伝達を抑制する物質とは、BMPのシグナル伝達を阻害又は遮断する作用を有する物質を意味し、例えば、BMPアンタゴニストやBMPファミリー分子に対する特異的中和抗体、可溶化型(細胞膜非結合型)BMP受容体分子等が挙げられる。更に別の例としては、BMPファミリー分子又はその受容体遺伝子の機能性遺伝子産物の発現を抑制又は停止するか、又はBMPシグナル伝達経路のトランス作用性成分を規定する遺伝子の発現を抑制又は停止する、遺伝子発現ベクター、特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉用アンチセンスRNA、低分子化合物等が挙げられる。
本発明の方法により多能性幹細胞から作製された拍動性細胞は、「心筋細胞」の特徴を有する細胞であり、例えばGATA-4、TEF-1、Tbx-5、MEF2及びMLC-2v等の心筋特異的転写因子の遺伝子発現や、心筋特異的マーカーであるサルコメア・ミオシン、トロポニンI、α-アクチニン、ANP等の蛋白発現を確認することができる。
また、本発明において、多能性幹細胞の分化誘導法としては、一般的に頻用される浮遊凝集培養法のみならず、懸滴(hanging drop)培養法、更にはフィーダー細胞を用いた共培養法のいずれでも同様の効果が得られる。
更に、BMPシグナル伝達を抑制する物質の添加時期及び期間を検討したところ、多能性幹細胞を単一細胞又は少数の細胞からなる細胞塊に分散させ、浮遊凝集培養又はフィーダー細胞との共培養等の方法により分化を誘導する場合、前もって多能性幹細胞をBMPアンタゴニストで前処理しておくこと、又は分化誘導するための培養を開始した直後の数日間だけ添加すること、又はその両者を組み合わせることがより効果的である。なお、浮遊細胞若しくはフィーダー細胞との共培養等の実施期間にBMPアンタゴニストを恒常的に存在させた場合、多能性幹細胞から心筋細胞への分化誘導効率が極めて低下することが示された。
即ち、本発明は、一時的にBMPシグナル伝達を抑制する物質の刺激下で培養することを特徴とする、多能性幹細胞を心筋細胞に分化誘導する方法及び心筋細胞を作製する方法に関する。
本発明において、心筋分化能を有する幹細胞とは、試験管内培養下で心筋細胞へ分化し得る能力を有した細胞を意味し、例えば、多能性幹細胞、間葉系幹細胞、CMG細胞及びSpoc細胞等が挙げられる。また、多能性幹細胞とは、試験管内培養により未分化状態を保ったまま、ほぼ永続的又は長期間の細胞増殖が可能であり、正常な核(染色体)型を呈し、適当な条件下において三胚葉(外胚葉、中胚葉、および内胚葉)すべての系譜の細胞に分化する能力をもった細胞を意味し、例えば、ES細胞、ES類似細胞、EG細胞及びMAPC等が挙げられる。
別の実施態様において、本発明は多能性幹細胞を分化誘導することにより作製された、心筋細胞の形態学的、生理学的及び/又は免疫学的特徴を示す細胞に関する。生理学的及び/又は免疫学的特徴は、特にこれを限定しないが、本発明の方法によって作製された細胞が、心筋細胞として認識される、心筋細胞に特異的な1つ又はそれ以上のマーカーを発現していればよい。
本発明はまた、心筋細胞の発生や分化誘導、再生、生存等を促進する新規因子又は可能性ある化学療法剤を同定するために、本発明の方法によって作製された細胞を使用するスクリーニング方法に関する。
本発明は更にまた、多能性幹細胞を、心筋前駆細胞又は心筋細胞の形態学的、生理学的及び/又は免疫学的特徴を有する細胞に分化誘導するためのキットに関する。このキットは、本発明の方法を実施するのに有用である。
また別の実施態様において、本発明は、本発明の方法によって作製された細胞を用いることを特徴とする、心疾患状態にある心臓を治療する方法、及び本発明の方法によって作製された細胞を有効成分とする心臓疾患治療薬に関する。
本発明のこれらの利点や他の利点および特徴は、以下の好適な実施態様の詳細な説明において充分に記述される。
なお、本発明の実施において、多能性幹細胞を用いた細胞培養及び発生、細胞生物学実験の一般的方法について、実施者は、当該分野の標準的な参考書籍を参照し得る。これらには、Guide to Techniques in Mouse Development(Wassermanら編、Academic Press, 1993);Embryonic Stem Cell Differentiation in vitro(M.V. Wiles、Meth. Enzymol. 225:900, 1993);Manipulating the Mouse Embryo:A laboratory manual(Hoganら編、Cold Spring Harbor Laborayory Press, 1994);Embryonic Stem Cells(Turksen編、Humana Press, 2002)が含まれる。本明細書において参照される細胞培養、発生・細胞生物学実験のための試薬及びキット類はInvitrogen/GIBCO社やSigma社等の市販業者から入手可能である。
本発明方法を用いることにより、幹細胞より心筋前駆細胞及び心筋細胞が効率的かつ選択的に生産できる。この様にして作製された心筋(前駆)細胞は、心疾患治療に有効な薬剤の探索・開発に利用できるとともに,重篤な心疾患に対する心筋移植治療に適用できる可能性がある。
浮遊培養法を用いたES細胞(EB3)の心筋分化誘導系において、ノギン蛋白質(500 ng/mL)の添加が拍動性EBの出現に及ぼす影響。 懸滴培養法を用いたES細胞(EB3)の心筋分化誘導系において、ノギン蛋白質(500 ng/mL)の添加が拍動性EBの出現に及ぼす影響。 ノギン添加濃度の違いが拍動性EBの出現率に及ぼす影響。ES細胞(EB3細胞及びR1細胞)からEBを形成させ、浮遊培養後10日目における拍動性EBの出現率を算出した。 心筋特異マーカー遺伝子の発現に及ぼすノギン添加の影響。浮遊培養後0、5、10、15日後にEB(EB3細胞由来)を回収し、各遺伝子の発現を調べた。TEF-1:transcription enhancer factor-1、MEF-2c:muscle enhancement factor-2c、α-MHC:α-myosin heavy chain、MLC-2v:myosin light chain-2v、GAPDH:glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase 浮遊培養後10日目のノギン(+)群EB(EB3細胞由来)から分離、回収した心筋細胞を免疫染色した結果。a:サルコメア・ミオシン、b:トロポニンI、c:α-アクチニン、d:ANP 浮遊培養後10日目のノギン(+)群及びノギン(−)群EB(EB3細胞由来)内の心筋細胞を免疫染色した結果。a、b:サルコメア・ミオシン、c、d:トロポニンI、e、f:α-アクチニン、g、h:ANP ノギンの心筋分化誘導作用に対するBMPの阻害効果。 フィーダー細胞を用いた心筋分化誘導系におけるノギン処理の効果。ST2細胞フィーダー上にES細胞(R1)を播種し、その心筋分化を検討した。播種8日目における抗サルコメア・ミオシン抗体(MF20)による染色像。 n>5。 ※:ノギン(−)群に対しp<0.01 フィーダー細胞を用いた心筋分化誘導系におけるノギン処理の効果。ST2細胞フィーダー上にES細胞(R1)を播種し、その心筋分化を検討した。播種8日目におけるMF20陽性コロニーの出現率。 n>5。 ※:ノギン(−)群に対しp<0.01 フィーダー細胞を用いた心筋分化誘導系におけるノギン処理の効果。ST2細胞フィーダー上にES細胞(R1)を播種し、その心筋分化を検討した。播種12日目における拍動性コロニーの出現率。 n>5。 ※:ノギン(−)群に対しp<0.01 懸滴培養法を用いたES細胞(R1)の心筋分化誘導系において、コーディン蛋白質(500 ng/mL)の添加が拍動性EBの出現に及ぼす影響を、ノギン蛋白質(500 ng/mL)添加時と比較した結果。培養日数は、懸滴培養を開始してからの日数。 n=8。 ※:未添加群(−)に対しp<0.01 浮遊培養法を用いたES細胞(R1)の心筋分化誘導系において、コーディン蛋白質(150 ng/mL)の添加が拍動性EBの出現に及ぼす影響。C:コーディン添加、N:ノギン(150ng/mL)添加、(−):無添加。 EB形成前の処理とEB形成後の処理を「前処理」→「後処理」の表示形式で示した。 浮遊培養法を用いたES細胞(R1)の心筋分化誘導系において、各種BMPアンタゴニスト蛋白質(各150 ng/mL)の添加が拍動性EBの出現に及ぼす影響。
本開示において、「心筋細胞」とは、将来、機能的な心筋細胞となり得る能力を有した心筋前駆細胞や、胎児型心筋細胞、成体型心筋細胞のすべての分化段階の細胞を含み、以下に記載する少なくとも1つ、好ましくは複数の方法により、少なくとも1つ、好ましくは複数のマーカーや基準が確認できる細胞と定義する。
心筋細胞に特異的な種々のマーカーの発現は、従来の生化学的又は免疫化学的手法により検出される。その方法は特に限定されないが、好ましくは、免疫組織化学的染色法や免疫電気泳動法の様な、免疫化学的手法が使用される。これらの方法では、心筋前駆細胞又は心筋細胞に結合する、マーカー特異的ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を使用することができる。個々の特異的マーカーを標的とする抗体は市販されており、容易に使用することができる。心筋前駆細胞又は心筋細胞に特異的なマーカーは、例えば、ミオシン重鎖/軽鎖やα-アクチニン、トロポニンI、ANP、GATA-4、Nkx2.5、MEF-2c等が挙げられる。
あるいは、心筋前駆細胞又は心筋細胞特異的マーカーの発現は、特にその手法は問わないが、逆転写酵素介在性ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)やハイブリダイゼーション分析といった、任意のマーカー蛋白質をコードするmRNAを増幅、検出、解析するための従来から頻用される分子生物学的方法により確認できる。心筋前駆細胞又は心筋細胞に特異的なマーカー(例えば、ミオシン重鎖/軽鎖やα-アクチニン、トロポニンI、ANP、GATA-4、Nkx2.5、MEF-2c)蛋白質をコードする核酸配列は既知であり、ジェンバンク(GenBank)の様な公共データベースにおいて利用可能であり、プライマー又はプローブとして使用するために必要とされるマーカー特異的配列を容易に決定することができる。
更に、多能性細胞の心筋細胞への分化を確認するために、生理学的基準も追加的に使用される。即ち、多能性細胞由来の細胞が、自立的拍動性を有することや、各種イオンチャンネルを発現しており電気生理的刺激に反応し得ること等も、その有用な指標となる。
本発明に用いられる多能性幹細胞としては、既に培養細胞として広く使用されているマウス、サル、ヒト等の哺乳動物由来ES細胞、EG細胞、MAPC等を挙げることができる。マウス由来ES細胞の具体例としては、EB3細胞、E14細胞、D3細胞、CCE細胞、R1細胞、129SV細胞、J1細胞等が挙げられる。また、ES細胞、EG細胞、MAPCの作製、継代、保存法については、すでに標準的なプロトコールが確立されており、実施者は、前項で挙げた参考書籍に加えて、複数の参考文献(Matsuiら、Cell 70:841, 1992;Shamblottら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:13726, 1998;米国特許第6,090,622号;Jiangら、Nature 418:41, 2002;国際特許公開01/11011)を参照することにより、これらの多能性幹細胞を容易に使用し得る。
なお、本発明に用いることができる細胞は、上記の3種に限らず、哺乳動物の胚や胎児、臍帯血、又は成体臓器や骨髄等の成体組織、血液等に由来する、すべての多能性幹細胞が含まれる。具体例としては、毛根鞘細胞や表皮細胞を5-アザシチジン等の薬剤で処理して得られた幹細胞(Sharda & Zahner、国際特許公開第02/051980号)や、単核球細胞をCR3/43抗体で処理して得られた幹細胞(Abuljadayel、Curr. Med. Res. Opinion 19:355, 2003)、さらには成体内耳細胞に由来する幹細胞(Liら、Nature Med.、Advance online publication )等のES細胞と類似の形質を有する幹細胞が挙げられる。この場合、ES細胞と類似の形質とは、ES細胞に特異的な表面(抗原)マーカーの存在やES細胞特異的な遺伝子の発現、又はテラトーマ(teratoma)形成能やキメラマウス形成能といった、ES細胞に特異的な細胞生物学的性質をもって定義することができる。
また、ES細胞と類似の形質を有さない細胞、又は多能性幹細胞ではない細胞であっても、少なくとも試験管内培養下で心筋細胞様形質を有する細胞に分化し得る性質を有した細胞であれば、本発明に記載の方法を用いることができる。 この様な細胞の例として、骨髄細胞に由来する骨髄間葉系幹細胞(Bruderら、米国特許第5,736,396号;Pittengerら、Science 284:143, 1999)やCMG細胞(Makinoら、J. Clin. Invest. 103:697, 1999;国際特許公開第01/048151号)、筋組織に由来するSpoc細胞(国際特許公開第03/035382号)が挙げられる。
本発明において、多能性幹細胞から心筋細胞を作製する培養法としては、心筋細胞の分化誘導に適した方法であれば、いずれも用いることができ、例えばES細胞を用いる場合、浮遊凝集培養法、懸滴(hanging drop)培養法、支持細胞との共培養法、旋回培養法、軟寒天培養法、マイクロキャリア培養法等を挙げることができる。具体的な方法の例としては、例えば浮遊凝集培養法の場合、単一細胞状態(酵素消化等を施すことで細胞同士の接着がない個々の細胞が液相中で分散した状態)としたES細胞を、好ましくは、培地に10細胞/mL〜1×107細胞/mL、より好ましくは100細胞/mL〜1×106細胞/mLの細胞密度になるように懸濁し、培養プレートに播種後、4〜30日間、好ましくは6〜15日間、37℃で5%の二酸化炭素を通気したCO2条件下にて培養する方法を挙げることができる。
また、別の実施態様として、支持細胞との共培養法を用いる場合、支持細胞としては、特にこれを限定しないが、好ましくは間葉系細胞の性質を有した細胞、さらに好ましくはST2細胞、OP9細胞、PA6細胞等の骨髄ストローマ細胞様の形質を有する細胞が挙げられる。これらの支持細胞を高密度培養、マイトマイシンC処理、又は放射線照射等の方法によりフィーダー化し、その上に、培地に1細胞/mL〜1×106細胞/mL、好ましくは100細胞/mL〜1×105細胞/mL、より好ましくは1×103細胞/mL〜1×104細胞/mLの細胞密度になるように懸濁した単一細胞状態のES細胞を播種後、4〜30日間、好ましくは6〜15日間、37℃で5%の二酸化炭素を通気したCO2条件下にて培養することができる。
本発明において、BMPシグナル伝達を抑制する物質とは、BMPのシグナル伝達を阻害又は遮断する作用を有する物質を意味し、例えば、BMPアンタゴニストやBMPファミリー分子に対する特異的中和抗体、可溶化型(細胞膜非結合型)BMP受容体分子等が挙げられる。更に別の例としては、BMPファミリー分子又はその受容体遺伝子の機能性遺伝子産物の発現を抑制又は停止するか、又はBMPシグナル伝達経路のトランス作用性成分を規定する遺伝子の発現を抑制又は停止する、遺伝子発現ベクター、特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉用アンチセンスRNA、低分子化合物等が挙げられる。
また、BMPアンタゴニストとは、BMPファミリー分子(例えばBMP-2、BMP-4、BMP-7等)に結合して、BMP分子と細胞表面上のBMP受容体の結合を阻害又は抑制する物質、又はBMP受容体に結合することにより、BMPシグナル伝達の抑制又は遮断を引き起こす物質と定義される。本発明に係る好ましいBMPアンタゴニストとしては、例えば、ノギンやコーディン等を挙げることができ、更に当該蛋白質とアミノ酸配列において80%以上、更に好ましくは90%以上のホモロジーを有し且つBMPアンタゴニスト活性を有するノギン関連蛋白質又はコーディン関連蛋白質も挙げることができる。また、ノギン又はコーディンをコードする塩基とストリンジェントな条件(例えば、2xSSC)でハイブリダイズする塩基によりコードされるノギン関連蛋白質又はコーディン関連蛋白質も同様に含まれる。
本発明は、多能性幹細胞を一時的にBMPシグナルを抑制する物質の刺激下で培養することを特徴とし、その刺激の方法としては、特にこれを限定しないが、好ましくは精製リコンビナント蛋白質を培地中に添加する方法が挙げられる。その他にも、BMPシグナルを抑制する物質を精製リコンビナント蛋白質として培地中に添加する方法と同様の効果を示す方法であれば、いずれも用いることができる。例えば、生体組織から抽出、精製したノギン等のBMPアンタゴニストを添加する方法、ノギン等のBMPアンタゴニストの遺伝子発現ベクターを多能性幹細胞自身に導入する方法、ノギン等のBMPアンタゴニスト遺伝子発現ベクターを支持細胞に導入し、その導入細胞を共培養細胞として用いる方法、又はその導入細胞の培養上清等の細胞産生物を用いる方法、等が挙げられ、本発明に係る方法においては何れもBMPアンタゴニストを培地中に添加する実施形態として含まれる。
本発明の実施において、使用するBMPシグナルを抑制する物質の蛋白質及び遺伝子は、多能性幹細胞が由来する種と同種の動物由来のものが好ましく、例えば、マウス多能性幹細胞を用いて本発明を実施する場合、マウスのノギンcDNAをイムノグロブリンの定常(Fc)領域cDNAと連結させた融合遺伝子をマウス細胞に導入し、これを発現させて作製した精製リコンビナント蛋白質(Recombinant Mouse Noggin/Fc Chimera;R&D systems社、Genzyme Technology社)が市販されており、マウス由来ノギン蛋白質として容易に使用することができる。また、異種動物由来のものも使用することができ、ヒトのノギンcDNAを大腸菌に導入し、これを発現させて作製した精製リコンビナント蛋白質(PeproTech社より市販)を代用することができる。更に、ブタ、ヒツジ、ウマ、又は鳥類(例えば、ニワトリ等)、又は両生類(例えば、アフリカツメガエル等)由来のノギン蛋白質も使用することができる。コーディン及びその他のBMPアンタゴニストに関しても、同様に使用することができる。なお、これらの因子をコードする遺伝子の塩基配列は、米国National Center for Biotechnology(NCBI)等の公的なDNAデータベースにおいて利用可能であり、当業者であれば、当該遺伝子のcDNAを取得・使用することが可能である。例えば、ノギン及びコーディン遺伝子は既にヒトやマウスで同定されており、ヒトのノギン、マウスのノギン、ヒトのコーディン、マウスのコーディンの塩基配列は、それぞれアクセス番号:NM#005450、NM#008711、NM#073411、NM#009893としてNCBIのデータベースに登録されている。
本発明に係るBMPアンタゴニストとしては、BMP分子(例えば、BMP-2、BMP-4、BMP-7等)に結合して、BMP分子と細胞表面上のBMP受容体の結合を阻害又は抑制する物質、又はBMP受容体に結合することにより、BMPシグナル伝達の抑制又は遮断を引き起こす物質であればよく、ノギン(Re'em-Kalmaら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:12141, 1995;Zimmermanら、Cell 86:599, 1996)、及びコーディン(Piccoloら、Cell 86:589, 1996;De Robertisら、米国特許第5,679,783号;LaVallieら、米国特許第5,846,770号;Lavallieら、米国特許第5,986,056号)をその代表例として挙げることができる。その他のBMPアンタゴニストの具体例としては、フォリスタチン(follistatin)、フェチュイン(fetuin)、スクレロスチン(sclerostin)、さらにはダン/サーベラス・ファミリーに属する分子等が挙げられ、当該分子として、ダン(DAN)、サーベラス(cerberus)、グレムリン(gremlin)、ダンテ(Dante)等が知られている(Balemans & Hul、Dev. Biol. 250:231, 2002)。又は、天然に存在するBMPアンタゴニストの合成又は組換え類似体もまた、本方法を実施する上で有用である。
さらに本発明の実施において、多能性幹細胞を処理する方法としては、ノギン等のBMPアンタゴニストを用いる方法だけに限定されず、BMPアンタゴニストと同様の効果、即ちBMPシグナル伝達の抑制を引き起こす方法であれば使用することができる。BMPシグナル伝達の抑制を引き起こす方法の具体例としては、BMPファミリー分子に対する特異的中和抗体を用いる方法、可溶化型(細胞膜非結合型)BMP受容体分子を用いる方法等が挙げられる。更に別の例としては、BMPファミリー分子又はその受容体遺伝子の機能性遺伝子産物の発現を抑制又は停止するか、又はBMPシグナル伝達経路のトランス作用性成分を規定する遺伝子の発現を抑制又は停止する、遺伝子発現ベクター、特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉用アンチセンスRNA、低分子化合物等を細胞内に導入する方法が挙げられる。
本発明の実施において、多能性幹細胞に対してBMPのシグナル伝達を抑制する物質(例えば、ノギン、コーディン等のBMPアンタゴニスト)を用いる場合、これらの因子を作用させる期間は、2つの時期に分けることができる。即ち、多能性幹細胞を単一細胞又は少数の細胞からなる細胞塊に分散させ、浮遊凝集培養又は支持細胞との共培養等を行う時点の前と後であり、以下、その前の時期を前処理期、後の時期を分化誘導期と呼ぶ。
前処理期における多能性幹細胞に対するBMPのシグナル伝達を抑制する物質を作用させる期間は、分化誘導期開始の1〜2日前から、より好ましくは3日以上前からが望ましい。
更に、前処理期においては、ES細胞を未分化状態に維持するため、当該ES細胞の動物種に応じて、通常用いられる条件下で培養することが好ましい。即ち、マウスES細胞の場合は、培地中に100〜10000 U/mL、好ましくは500〜2000 U/mL濃度の白血病抑制因子(Leukemia inhibitory factor:LIF)を添加しておくことが好ましい。
BMPのシグナル伝達を抑制する物質を作用させる期間としては、培養期間の全てに当該物質を存在させておく必要はなく、例えばBMPのシグナル伝達を抑制する物質としてノギン又はコーディン等のBMPアンタゴニストを用いる場合、BMPアンタゴニストが活性を有する状態で存在する培地中での培養は、分化誘導期の初めの5日以内、さらに好ましくは3日以内が望ましい。但し、BMPのシグナル伝達を抑制する物質を作用させる期間は、用いる細胞が由来する動物種、用いる細胞株、用いる分化誘導及び用いるBMPのシグナル伝達を抑制する物質等の条件の違いにより、至適日数を変えて用いることができる。
本発明の実施において、BMPシグナルを抑制する物質としてBMPアンタゴニスト(例えば、ノギン蛋白質、コーディン蛋白質等)を用いる場合、古い培地を無菌的に除去した上で、1 ng/mL 〜 2 μg/ml、好ましくは5 ng/mL〜 1000 ng/mL、より好ましくは10 ng/mL 〜 500 ng/mLの濃度のノギン蛋白質、又はコーディン蛋白質を含有する培地で置換し、好ましくは数日間、培養を継続する。その他のBMPシグナルを抑制する物質を用いる場合は、その種に応じて至適濃度を変えて用いることができる。
上記の方法により、ES細胞をはじめとする多能性幹細胞から分化誘導した心筋細胞は、引き続き、公知の方法による細胞回収、分離、精製法を用いることにより、高純度の心筋細胞を効率的かつ多量に得ることができる。この様にして得られた心筋細胞を以下、本発明により調製された心筋細胞とよぶ。
心筋細胞の精製方法は、公知となっている細胞分離精製の方法であればいずれも用いることができるが、その具体的例として、フローサイトメーターや磁気ビーズ、パンニング法等の抗原−抗体反応に準じた方法(Monoclonal Antibodies: principles and practice, Third Edition(Acad. Press, 1993);Antibody Engineering: A Practical Approach(IRL Press at Oxford University Press, 1996)や、ショ糖、パーコール等の担体を用いた密度勾配遠心による細胞分画法を挙げることができる。また、別の心筋細胞選別法としては、元となるES細胞等の多能性幹細胞の遺伝子に前もって人為的な修飾を加え、薬剤耐性もしくは異所性蛋白質の発現能を付与することにより、心筋細胞としての形質を有する細胞を回収する方法が挙げられる。例えば、Fieldおよび共同研究者らは、α型ミオシン重鎖プロモーターの制御下でネオマイシン(G418)耐性遺伝子を発現し得る遺伝子カセットを、マウスES細胞に導入することにより、そのES細胞が心筋細胞に分化し、それに伴いα型ミオシン重鎖遺伝子を発現した時のみ、G418を添加した培地中で生存し得る系を構築し、この方法によりG418耐性細胞として選別された細胞は、99%以上の確率で心筋細胞であることが確認されている(米国特許第6,015,671号;J. Clin. Invest. 98:216, 1996)。
本発明により調製された心筋細胞は、各種生理活性物質(例えば、薬物)や機能未知の新規遺伝子産物などの薬理評価および活性評価に有用である。例えば、ES細胞等の多能性幹細胞から心筋細胞への分化制御に関する物質や薬剤、又は心筋細胞の機能調節に関する物質や薬剤、さらには心筋細胞に対して毒性や障害性を有する物質や薬剤のスクリーニングに利用することができる。特に現状では、ヒト心筋細胞を用いたスクリーニング法はほとんど存在しておらず、本発明により調製された心筋細胞は、当該スクリーニング法を実施するための有用な細胞ソースとなる。さらなる態様では、本発明により調製された心筋細胞を含む評価キットは、上記スクリーニングのために有用である。
スクリーニングに供する被験物質としては、培養系に添加できるものであれば種類を問わず、例えば、低分子化合物、高分子化合物、有機化合物、無機化合物、蛋白質、ペプチド、遺伝子、ウイルス、細胞、細胞培養液、微生物培養液などが挙げられる。遺伝子を効率的に培養系に導入する方法としては、レトロウイルス、アデノウイルス等のウイルスベクターを用いて培養系に添加する方法、又はリポソームなどの人工的構造物に封入して培養系に添加する方法などが挙げられる。
被験物質の評価は、ES細胞等の多能性幹細胞から心筋細胞への分化誘導効率や、心筋細胞機能の質的又は量的な変化を測定することで行なうことができる。例えば、被験物質の心筋分化誘導効率は、本発明記載の方法を用いて培養している多能性幹細胞を、培養開始後5〜15日目、好ましくは7〜12日目の時点において、心筋細胞に特異的な種々のマーカーの発現を、生化学的又は免疫化学的手法で検出することにより測定できる。生化学的又は免疫化学的手法としては特に限定されないが、好ましくは、免疫組織化学的染色法や免疫電気泳動法の様な、免疫化学的手法が使用できる。これらの方法では、心筋細胞に結合する、マーカー特異的ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を使用することができる。個々の特異的マーカーを標的とする抗体は市販されており、容易に使用することができる。心筋細胞に特異的なマーカーは、例えば、ミオシン重鎖/軽鎖やα-アクチニン、トロポニンI、ANP、GATA-4、Nkx2.5、MEF-2c等が挙げられる。
また、被験物質を評価する指標としての心筋細胞機能としては、心筋細胞の生存性を一例として挙げることができる。具体的には、本発明記載の方法によって調製された心筋細胞を、適切な細胞密度になるように培養プレートに播種し、血清を含まない培地で培養すると細胞死(アポトーシス)を誘導することができるが、その際、適当量の被験物質を培地中に添加し、心筋細胞の生存率又は死亡率を測定すれば良い。心筋細胞の生存率又は死亡率の測定方法としては、トリパンブルー等の色素の取り込みを指標とした肉眼的な観察によるものでも良いし、脱水素酵素の活性(還元活性)を指標とした方法、さらにはアポトーシス細胞に特異的なカスパーゼ活性やアネキシンVの発現を指標とした方法を用いても良い。当該メカニズムを利用したキットは、Sigma社やClonetech社、Promega社等、多くのメーカーより当該メカニズムを利用したキットが市販されており、容易に使用することができる。
かかるスクリーニング方法により得られた物質や薬剤は、心筋細胞の分化誘導作用や機能調節作用を有するため、例えば心筋梗塞、虚血性心疾患、うっ血性心不全、肥大型心筋症、拡張型心筋症、心筋炎、慢性心不全などの心疾患予防薬又は治療薬として用いることができる。これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
また、本発明により調製された心筋細胞は、心筋再生薬又は心臓疾患治療薬として用いることができる。心臓疾患としては、心筋梗塞、虚血性心疾患、うっ血性心不全、肥大型心筋症、拡張型心筋症、心筋炎、慢性心不全などを挙げることができる。心筋再生薬又は心臓疾患治療薬としては、本発明により調製された心筋細胞を高純度で含むものであれば、細胞を培地等の水性担体に浮遊させたもの、細胞を生体分解性基質等の支持体に包埋したもの、あるいは単層もしくは多層の心筋細胞シート(Shimizuら、Circ. Res. 90:e40, 2002)に加工したもの等、どの様な形状のものでも用いることができる。
上記の治療薬を障害部位に輸送する方法としては、開胸し、注射器を用いて直接心臓に注入する方法、心臓の一部を外科的に切開して移植する方法、さらにはカテーテルを用いた経血管的方法により移植する方法等(Murryら、Cold Spring Harb. Symp. Quant. Biol. 67:519, 2002;Menasche、Ann. Thorac. Surg. 75:S20, 2003;Dowellら、Cardiovasc. Res. 58:336, 2003)が挙げられるが、特にこれを限定しない。この様な方法により、胎児心臓から回収した心筋細胞を心傷害動物の心臓に移植すると、きわめて良い治療効果を示すことが報告されている(Menasche、Ann. Thorac. Surg. 75:S20, 2003 ;Reffelmannら、 Heart Fail. Rev. 8:201, 2003)。ES細胞由来の心筋細胞は、胎児心臓由来の心筋細胞ときわめてよく似た形質を呈している(Maltsevら、Mech. Dev. 44:41, 1993;Circ. Res. 75:233, 1994)。また、実際にES細胞由来の心筋細胞を成体心臓に移植した動物実験例では、胎児心筋を移植した例とほぼ変わらない、極めて高い生着性を示すことも確認されている(Klugら、J. Clin. Invest. 98:216, 1996)。そのため、心筋細胞の疲弊および脱落に起因する上記の心疾患において、本発明記載の方法により調製した心筋細胞を、病的心臓組織に補充的に移植することにより、心機能の改善を促すことが期待できる。
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の単なる例示を示すものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
(実施例1:ノギン処理によるES細胞由来心筋細胞の出現増強効果)
ES細胞を浮遊凝集培養(以下、本願実施例においては単に浮遊培養と記す)によりEBを形成させ、心筋細胞に分化誘導する実験系を用い、培地中へのノギン蛋白質添加が心筋細胞の出現率に及ぼす影響を検討した。
以下の実験には、ES細胞として、EB3細胞(丹羽仁史博士〔理科学研究所〕より恵与)、R1細胞(Andrew Nagy博士〔Mount Sinai病院;カナダ〕より恵与)、及び129SV細胞(大日本製薬株式会社より購入)を用いたが、総じてES細胞種の違いによる実験結果の相違はみられなかった。これらのES細胞は、10%仔牛胎児血清、0.1 mM MEM非必須アミノ酸液、2 mM L-グルタミン、及び0.1 mM 2-メルカプトエタノールを含むGlasgow Minimum Essential Medium(GMEM;Sigma社)培地に2000 U/mL白血病抑制因子(Leukemia inhibitory factor:LIF)(ESGRO;Chemicon社)を添加したものを用い、Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual(Hoganら編、Cold Spring Harbor Laborayory Press, 1994);Embryonic Stem Cells:Methods and Protocols(Turksen編、Humana Press, 2002)等に記載の方法に従い、未分化な形質を保ちながら継代培養したものを実験に供した。
浮遊培養を開始する3日前、上記条件で培養しコロニーを形成しているES細胞を、PBSで2回洗浄後、1 mM EDTAを含む0.25%トリプシン溶液で処理をすることにより単一細胞状態にし、10%仔牛胎児血清、0.1 mM MEM非必須アミノ酸液、2 mM L-グルタミン、及び0.1 mM 2-メルカプトエタノールを含むα-modified Minimum Essential Medium(αMEM;Sigma社)培地(以下,「分化培地」と称する)に2000 U/mLの LIFを添加した培地を用いて、2.5×105細胞/mLの細胞懸濁液を調製した。この懸濁液に、500 ng/mLリコンビナント・ノギン−Fcキメラ蛋白質(Recombinant Mouse Noggin/Fc Chimera;R&D systems社)(以下、単に「ノギン蛋白質」と称する)を添加、又は非添加した後、フィーダー非依存性ES細胞株であるEB3細胞の場合は、ゼラチンコートした市販の細胞培養用プレート(T75フラスコ;グライナー社製)上に播種した。一方、フィーダー依存性ES細胞株であるR1細胞及び129SV細胞の場合は、ゼラチンコートしたプレート上にマイトマイシン処理済みの初代マウス胚繊維芽細胞(大日本製薬社)を播種したプレートを前もって作製しておき、フィーダー化した細胞上に細胞懸濁液を播種した。
ES細胞からEBを形成させるための浮遊培養は以下の様にして行った。ノギン添加、又は非添加の分化培地で3日間培養したES細胞をPBSで2回洗浄後、1 mM EDTAを含む0.25%トリプシン溶液で処理をすることにより単一細胞状態にし、引き続き、分化培地で満たした市販の、細胞接着性の弱いバクテリア用プレート(直径100 mm;Valmalk社製)中に1×102 細胞/mL、又は2×105 細胞/mLの濃度で播種した。その際、浮遊培養を開始する3日前の時点からノギン蛋白質を添加した細胞群の培地には、500ng/mLノギン蛋白質を添加した。その後、細胞がプレートに定着しない状態を保ちながら、4〜14日間浮遊培養した。本実験条件では、浮遊培養直後からES細胞が凝集してEBの形成が認められ、浮遊培養後7〜8日目ごろから一部のEBで自立拍動性が観察されるようになる。
一方、ES細胞からEBを形成させる別法として、懸滴培養を以下の様に行った。ノギン添加、又は非添加の分化培地で3日間培養したES細胞をPBSで2回洗浄後、1 mM EDTAを含む0.25%トリプシン溶液で処理をすることにより単一細胞状態にした。引き続き、分化培地15μL中に500個の細胞を含む液滴を作製し、これを培養プレートの天蓋に懸滴して、4日間培養を行った。その際、懸滴培養を開始する3日前の時点からノギン蛋白質を添加した細胞群の培地には、500 ng/mLノギン蛋白質を添加した。懸滴培養後、懸滴中に形成されたEBを、分化培地で満たした市販の細胞培養用ディッシュ(4穴マルチディッシュ;Nunc社製)上に播種し、引き続き付着培養を行い、心筋細胞への分化を誘導した。付着培養後、2日ごとに培地の半量を新鮮培地と交換した。本実験条件では、浮遊培養法と同様、懸滴培養直後からES細胞が凝集してEBの形成が認められ、回収したEBの付着培養を開始した3〜4日目(懸滴培養後7〜8日目)ごろから一部のEB由来コロニーで自立拍動性が観察されるようになる。
ES細胞から心筋細胞が分化、発生したことの1つの指標として、自立拍動性を呈するEBの出現率を経時的に調べた。ES細胞としてEB3細胞を用い、1×102 個/mLの細胞濃度で浮遊培養を行ったところ、ノギン処理をしなかった(ノギン(−)群)ES細胞に由来するEBでは、浮遊培養後14日目においても、拍動性が認められるものはほとんど観察されなかった(図1A)。一方、ノギン処理を行った(ノギン(+)群)ES細胞に由来するEBでは、浮遊培養後7日目から拍動性が観察されるものが出現し、14日目では80%以上のEBで拍動性が確認できた。2×105個/mLの細胞濃度で浮遊培養を行った場合も同様の傾向が見られ、ノギン(−)群EBでは最終的に10%に満たないEBでしか拍動が認められなかったのに対し、ノギン(+)群EBでは、浮遊培養後10日目には30%以上、14日目には90%以上のEBが拍動性を示した。なお、ノギン(−)群EBでは、拍動する部域はEBの一部に限定されていたが、ノギン(+)群EBでは、驚くべきことに、EB表層のほぼ全域にわたる細胞が拍動していることが観察できた。
懸滴培養条件においても、ノギン(+)群ES細胞における心筋分化能はノギン(−)群ES細胞と比べて著しく高く、分化誘導後7日目(付着培養後3日目)には40%以上、10日目には80%以上、さらに14日目にはほぼすべてのEB由来コロニーで拍動が見られた(図1B)。また、浮遊培養条件で観察されたのと同様、ノギン(−)群では、EBを培養ディッシュに付着させて形成させたコロニーの一部領域の細胞でのみ拍動性が見られたのに対し、ノギン(+)群では、EB由来コロニーのほぼ全体にわたる細胞で拍動が認められた。
なお、両培養系において、ノギン処理と同様の条件にて、例えばIGF(insulin-like growth factor)-1、FGF(fibroblast growth factor)-2、BMP-2等、種々の増殖因子類やサイトカイン類のリコンビナント蛋白質を培地中に添加してみたが、ノギンと同様、もしくはノギンに勝る心筋誘導活性を呈するものは確認できなかった。
引き続き、ノギン蛋白質の添加濃度の違いが、ES細胞から心筋細胞への分化誘導に及ぼす影響について検討した。添加するノギン蛋白質の濃度を0.5〜1500 ng/mLとした以外は、図1の条件と全く同様に浮遊培養を行った結果を図2に示す。EB3細胞及びR1細胞とも、ほぼ同様の濃度依存性を示し、5 ng/mL〜1500 ng/mL濃度のノギン蛋白質添加により、ノギン(−)群より有意に高い拍動性EBの出現が認められた。特に50 ng/mL〜150 ng/mL濃度のノギン蛋白質添加により、きわめて良好な拍動性EBの出現がみられた。
(実施例2:ノギン処理により分化誘導したES細胞由来心筋細胞の形質)
実施例1で示す様に、ノギン処理を行うことにより、ES細胞から作製したEBの拍動性が有意に高まったが、この拍動性EBにおいて、その拍動性細胞が心筋細胞であることを確認するため、各種心筋特異的マーカー分子の遺伝子発現、ならびに蛋白質産生を検討した。
図3にはノギン(+)群、又はノギン(−)群EBにおける、各種心筋細胞特異的マーカー遺伝子の発現を示した。図1と同様の浮遊培養法で形成させたEBを経時的に回収し、RNeasy(Qiagen社製)を使用して全RNAを調製した。続いて、常法に従い、SUPERSCRIPT II(Invitrogen社製)を用いてcDNAを逆転写し、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction;PCR)により、心筋細胞に特異的な遺伝子の発現を検出した。GATA-4、TEF-1、Tbx-5、MEF-2c、αMHC、MLC-2v、α-cardiac actin、GAPDHの各転写産物の検出に用いたプライマーは以下の通りである。
GATA-4(順方向)5'-CTGTCATCTC ACTATGGGCA-3'(SEQ ID NO:1)、
GATA-4(逆方向)5'- CCAAGTCCGA GCAGGAATTT -3'(SEQ ID NO:2);
TEF-1(順方向)5'-AAGACGTCAA GCCCTTTGTG-3'(SEQ ID NO:3)、
TEF-1(逆方向)5'-AAAGGAGCAC ACTTTGGTGG-3'(SEQ ID NO:4);
Tbx-5(順方向)5'-GGAGCCTGAT TCCAAAGACA-3'(SEQ ID NO:5)、
Tbx-5(逆方向)5'-TTCAGCCACA GTTCACGTTC-3'(SEQ ID NO:6);
MEF-2c(順方向)5'-AGCAAGAATA CGATGCCATC-3'(SEQ ID NO:7)、
MEF-2c(逆方向)5'-GAAGGGGTGG TGGTACGGTC-3'(SEQ ID NO:8);
αMHC(順方向)5'-GGAAGAGTGA GCGGCCATCA AGG-3'(SEQ ID NO:9)、
αMHC(逆方向)5'-CTGCTGGAGA GGTTATTCCT CG-3'(SEQ ID NO:10);
MLC-2v(順方向)5'-GCCAAGAAGC GGATAGAAGG-3'(SEQ ID NO:11)、
MLC-2v(逆方向)5'-CTGTGGTTCA GGGCTCAGTC-3'(SEQ ID NO:12);
α-cardiac actin(順方向)5'-CTGAGATGTC TCTCTCTCTC TTAG-3' (SEQ ID NO:13)、
α-cardiac actin(逆方向)5'-ACAATGACTG ATGAGAGATG-3' (SEQ ID NO:14);
GAPDH(順方向)5'-TTCAACGGCA CAGTCAAGG-3' (SEQ ID NO:15)、
GAPDH(逆方向)5'-CATGGACTGT GGTCATGAG-3' (SEQ ID NO:16)。
PCRは耐熱性DNAポリメラーゼとしてはTaKaRa Taq(宝酒造社製)を使用し、GeneAmp PCR System 9600(Perkin-Elmer社製)を用いて行った。まずcDNAを含むPCR反応液を94℃で3分加熱した後、94℃:1分−55℃:1分−72℃:1分の加熱サイクルを30回繰り返し、最後に72℃で5分加熱した後、4℃で冷却した。PCR産物を3%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動の後、SYBR Green I(宝酒造社製)で染色し、Molecular Imager FX(Bio-Rad社製)で検出した。
その結果、GATA-4、TEF-1、Tbx-5、MLC-2v等の遺伝子は、ノギン(−)群EBでは、浮遊培養を開始後5ないし10日目から比較的弱い発現が見られるのに対し、ノギン(+)群EBでは、浮遊培養を開始した当日(0日)から発現が認められ、その後、5〜15日目にかけて強い発現が持続した。MEF-2cや心筋特異的α-アクチンでは、ともに浮遊培養後5日目から発現が見られたが、その発現量はノギン(+)群EBの方が有意に強かった。また、αMHC(ミオシン重鎖)遺伝子の場合、ノギン(+)群EBでは10、15日目に強い発現が認められたが、ノギン(−)群EBでは発現を確認することができなかった。以上の結果より、ノギン処理により、EB内の心筋細胞の分化ならびに発生が速やかに、かつ強く促進されていることが明らかである。
さらに、ノギン(+)群EB中に発生した拍動性細胞が、心筋細胞特異的マーカー蛋白質を産生していることを、免疫組織化学的染色法を用いて確認した。図1と同様の浮遊培養法で形成したノギン(+)群EBを、浮遊培養後12日目に回収し、1mM EDTAを含む0.25%トリプシン溶液で処理して細胞を分散させた。分散させた細胞は、ゼラチンコートしたカバースリップ上に個々の細胞が互いに接着しない程度の低密度で播種し、分化培地を満たした市販の細胞培養用プレート内で培養した。翌日、カバースリップ上の細胞を4%パラホルムアルデヒド溶液で固定し、1次抗体として抗サルコメア・ミオシン抗体(MF20;American Type Culture Collection)、抗トロポニンI抗体(#sc-8120;Santa Cruz Biotechnology社)、抗α-アクチニン抗体(#sc-15335;Santa Cruz社)、抗ANP抗体(#AB5490;Chemicon社)と反応させ、さらにAlexa488標識2次抗体(Molecular Probes社)と順次反応後、蛍光顕微鏡下にて観察を行った。
その結果、心筋細胞に特異的なマーカー蛋白質であるサルコメア・ミオシンやトロポニンI、α-アクチニン、ANP陽性細胞が多数認められ(図4)、ES細胞由来の拍動性細胞が心筋細胞であることが実証された。
引き続き、上記と同様の免疫組織化学的染色法を用いて、EB内における心筋細胞の分布及び発生頻度の確認を行った。浮遊培養後12日目に回収したEBを、凍結切片作製用包埋剤(OCT Compound、Sakura Finetek USA Inc.)で新鮮包埋し、液体窒素で凍結して作製した凍結標本をクリオスタット(LEICA CM3050-S)で薄切(5μm)後、スライドグラスに添付した。この凍結切片を上記の心筋細胞特異的マーカーに対する抗体と反応させ、上記と同様の方法によりマーカー蛋白質陽性細胞の検出を行った。
その結果を図5に示した。ノギン(−)群EBでは、心筋細胞に特異的なマーカー蛋白質の陽性細胞はEBのごく限られた領域でのみ観察されるのに対し、ノギン(+)群EBでは、EBの表層領域のほぼ全周にわたって心筋マーカー陽性細胞が認められた。本知見は、ノギン(−)群EBでは拍動域がEBの一部に限定されるのに対し、ノギン(+)群EBではEBのほぼ全域で拍動が認められたという実施例1における観察結果と、きわめて良く一致している。
(実施例3:ノギン処理時期・期間の違いが心筋細胞の分化誘導効果に及ぼす影響)
ノギン処理の最適時期及び期間を検討するため、上記浮遊培養系においてノギン蛋白質の添加時期を変え、その後の心筋分化誘導効果に及ぼす影響を検討した。
結果を表1に示す。
表1は、浮遊培養開始前及び開始時におけるノギン刺激の必要性に関して、各培養条件における拍動性EB(EB3細胞由来)の出現率を示す。表1において、「前処理期」は浮遊培養を開始する3日前から当日までの培養条件、「分化誘導開始期」は浮遊培養を開始する時点の培養条件を示す。また、表1において、「+」は培地中にノギン(150 ng/mL)を添加したこと、「−」は添加しなかったことを示す。
まず、浮遊培養前のノギン処理の必要性を検討した。即ち、実施例1、2の場合と同様に、浮遊培養前の3日間、ノギン蛋白質(150 ng/mL)を含む培地で培養し、さらに浮遊培養開始時(0日目)にもノギン蛋白質(150 ng/mL)を添加したES細胞からは、高率に拍動性EBの出現を認めたが、一方、浮遊培養前の3日間、ノギン蛋白質を含まない培地で培養したES細胞からは、浮遊培養開始時にノギン蛋白質を添加しても、拍動性EBの出現率は著しく低下した。なお、浮遊培養前におけるマウス由来のES細胞の培養には、ES細胞の未分化性を維持する目的で培地中に添加されているLIFの存在も重要であり、浮遊培養前にLIF(2000 U/mL)を添加せずにES細胞を培養した場合、ノギン処理を行っている場合においても、拍動性EBの有意な出現低下が認められた。
一方、ノギン蛋白質(150ng/mL)を5日目以降も培地中に存在させたところ、拍動性心筋細胞の出現は著しく抑制された。更に、浮遊培養後7日間以上、恒常的に存在させたところ、拍動性心筋細胞はほぼ全く出現せず、既報告論文(Gratsch & O'Shea、Dev. Biol. 245:83, 2002)と同様、神経細胞様の細胞の分化誘導が観察された。
以上の結果より、ES細胞を心筋細胞に効率的に分化誘導するには、浮遊培養前及び浮遊培養開始時にノギン処理を行うことが肝要であり、また、浮遊培養後、高濃度ノギン蛋白質が恒常的に残存することは、逆に心筋細胞の発生に阻害的に作用することが明らかとなった。
(実施例4:ノギンの心筋分化誘導作用に対するBMPの阻害効果)
ノギン処理によるES細胞の心筋分化誘導促進効果が、ノギンのBMPアンタゴニストとしての活性を介している可能性を確認するため、ノギン処理と同時にBMP-2を培地中に添加し、その効果を検討した。
実施例1、2と同様の条件で浮遊培養を行い、ノギン蛋白質(150 ng/mL)の添加と同時に各種濃度のBMP-2を共存させ、その影響を調べた結果を図6に示した。BMP-2は濃度依存的に、ノギン処理によるES細胞の心筋分化誘導効果を阻害し、5 ng/mL以上のBMP-2を添加することにより、ほぼ完全に拍動性EBの出現が認められなくなった。
(実施例5:支持細胞を用いた心筋分化誘導系におけるノギン処理の効果)
ES細胞を、培養プレート上に前もって播種したST2細胞やOP9細胞等のストローマ系細胞を支持細胞(フィーダー細胞)として共培養することにより、浮遊培養法や懸滴培養法の様な三次元培養を必要とせずに、心筋細胞への分化を誘導できることが報告されている(Yamaneら、Methods Mol. Biol. 184:261, 2002;Schroederら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:4018, 2003)。そこで、ST2細胞(理研・細胞バンクから購入)をフィーダー細胞として用いた分化誘導系において、ノギン処理の効果を検討した。ST2細胞は、市販の細胞培養用6ウェルプレート(CORNING社製)に播種し、Dulbecco MEM培地(Invitrogen/GIBCO社製)に10%の牛胎児血清(Invitrogen/GIBCO社製)を加えた培地を用いてコンフルエント状態にまで培養したものをフィーダー細胞として使用した。上記と同様の方法で単一細胞状態としたES細胞の懸濁液を調製し、フィーダーをPBSで2回洗浄後、2000細胞/2mL培地/1ウェルで播種した。その後、経時的に拍動性心筋細胞の出現を顕鏡観察するとともに、培養後8日目に一部の細胞を70%エタノール溶液で固定し、1次抗体として抗サルコメア・ミオシン抗体(MF20;American Type Culture Collection社製)、引き続きHorseradish Peroxidase標識2次抗体(ヒストファイン シンプルステインPO(M);ニチレイ社製)と順次反応させ、最後にACE(3-amino-9-ethylcarbazole)基質液(ニチレイ社製)を用いた呈色反応を行った後、光学顕微鏡下にて観察を行った。
本培養条件において、ST2細胞上に播種したES細胞は、培養開始後数日以内に肉眼で観察できる大きさのコロニーを形成し、培養後8日目には心筋細胞マーカーの1種である抗サルコメア・ミオシン抗体に対する陽性(以下、MF20陽性)細胞(コロニー)が確認される様になり、その後、培養12日目前後から拍動性心筋細胞が出現した。そこで、共培養3日前からノギン蛋白質(150 ng/mL)を含む培地で培養したES細胞をST2細胞上に播種し、さらに共培養開始後2日間、ノギン(150 ng/mL)を含む培地で培養した。結果を図7に示す。ノギン(−)群ES細胞を播種した場合、フィーダー上で形成されたES細胞由来コロニーの60%強がMF20陽性であったのに対し、ノギン(+)群では90%以上のコロニーが陽性であり、しかもコロニー中にMF20陽性細胞が占める割合も、ノギン(−)群と比較して、著しく高くなっていた。また、ノギン(+)群では拍動性心筋細胞も高率に出現し、ノギン(−)群ではフィーダー上で形成されたES細胞由来コロニーの30%程度が拍動したのに対し、ノギン(+)群ではほぼ70%のコロニーで拍動が観察された。
(実施例6:コーディン処理によるES細胞由来心筋細胞の出現増強効果)
ノギンと同様、BMPアンタゴニストとしての作用を示すことが知られているコーディンの心筋誘導効果について、ノギンの効果と比較・検討した。コーディン蛋白質としては、市販のリコンビナント・コーディン−Fc キメラ蛋白質(Recombinant Mouse Chordin/Fc Chimera; R&D systems社)(以下、単に「コーディン(蛋白質)」と称する)を使用した。ノギン(500 ng/mL)、又はコーディン(500 ng/mL)を添加した培地、又はどちらの因子も添加しない培地で3日間培養したES細胞を用い、実施例1と同様の方法で懸滴培養を行った。懸滴培養4日目にEBを回収した後、細胞培養用ディッシュ上に播種し、引き続き付着培養により心筋細胞への分化を誘導した。その結果、コーディン処理したES細胞では、ノギン処理したES細胞とほぼ匹敵する程度の拍動性心筋細胞の出現が認められ(図8)、コーディンはES細胞に対し、ノギンと同様の心筋分化誘導効果を示すことが確認できた。
また、別のEB形成法/心筋分化誘導法を用い、コーディンの効果を検討した。ノギン(150 ng/mL)、又はコーディン(150ng/mL)を添加した培地、又はどちらの因子も添加しない培地で3日間培養したES細胞を、市販の浮遊培養用プレート(96穴マルチプレート;住友ベークライト社製)に播種してEBを形成させ、心筋細胞への分化を誘導した。その際、コーディン(150ng/mL)を添加する群と、添加しない群を設定した。
その結果、図9に示す通り、コーディン処理したES細胞(図中C→C)では、ノギン処理したES細胞(図中N→N)と同様、著明な拍動性心筋細胞の出現が認められ、コーディンはES細胞に対し、ノギンと同様の心筋分化誘導効果を示すことが改めて確認できた。また、EB形成前の3日間コーディン処理し、EB形成後はコーディンを添加しなかった群(図中C→(-))、及びEB形成前の3日間はコーディン処理せず、EB形成後にコーディンを添加した群(図中(-)→C)においても、未添加群(図中(-)→(-))よりも有意に強い心筋分化促進効果を呈した。同様の効果は、コーディンの代わりにノギンを用いた場合にも見られ、当該培養条件において、EB形成前の3日間ノギン処理し、EB形成後はノギンを添加しなかった群や、逆にEB形成前にはノギン処理せず、EB形成後にノギンを添加した群においても、ノギン未処理群より明らかに強い心筋分化促進効果が確認された。
次に、ヒト細胞に対するノギン及びコーディン処理の有効性を検討するため、ES細胞の類似細胞である胚性癌腫細胞(Embryonal carcinoma cells;以下、EC細胞と称する)を用いた。ヒトEC細胞株であるNCCIT細胞(American Type Culture Collection社より購入)を、上記マウスES細胞を用いた場合と同様、ノギン(15 ng/mL)、またはコーディン(15 ng/mL)を添加した培地、又はどちらの因子も添加しない培地で3日間培養した。その後、市販の浮遊培養用プレートに播種してEBを形成させ、14日間培養を行った。その後、実施例2の場合と同様の方法を用いて、心筋細胞特異的マーカーの遺伝子発現又は蛋白産生をPCR法又は免疫組織化学的染色法により検討した。その結果、ノギン又はコーディン処理したNCCIT細胞では、心筋マーカーの1つであるミオシンの発現/産生誘導が認められた。
(実施例7:その他のBMPアンタゴニスト処理によるES細胞由来心筋細胞の出現増強効果)
引き続き、BMPアンタゴニストして、フォリスタチン、ダン、カロンティ(Caronte;ニワトリのサーベラス様因子)、グレムリンの4種のBMPアンタゴニスト(何れもR&D systems社製のFcキメラ型リコンビナント蛋白質を使用)の効果を検討した。上記の各種BMPアンタゴニスト(150 ng/mL)を添加した培地、およびBMPアンタゴニストを添加しない培地で3日間培養したES細胞を、市販の浮遊培養用プレート(96穴マルチプレート;住友ベークライト社製)に播種してEBを形成させ、心筋細胞への分化を誘導した。
その結果、どの種の因子においても、ノギン及びコーディンと同様、若しくはそれ以上に強い心筋分化誘導活性を示すことが確認できた(図10)。さらに、BMPレセプター1Aの細胞外領域に相当し、BMPファミリー分子と内因性レセプターの結合を競合的に阻害するリコンビナント蛋白質(Recombinant Mouse BMPR-1A/Fc Chimera;R&D systems社)を添加した場合も、ほぼ同様の促進効果が認められた。

Claims (14)

  1. 幹細胞から心筋細胞を分化誘導する方法において、幹細胞を、BMPシグナル伝達を抑制する物質の存在下で分化誘導のための培養をすることを特徴とする当該方法。
  2. 分化誘導のための幹細胞の培養が、浮遊凝集培養し、胚様体を形成させる工程を含む請求項1に記載の方法。
  3. 分化誘導のための幹細胞の培養が、フィーダー細胞と共培養する工程を含む請求項1に記載の方法。
  4. 分化誘導のための幹細胞の培養が、培養容器上で平面培養する工程を含む請求項1に記載の方法。
  5. BMPシグナル伝達を抑制する物質を、分化誘導期の最初の数日間のみ添加する請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
  6. BMPシグナル伝達を抑制する物質を、分化誘導期前の幹細胞に前もって処理しておく工程を含む請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
  7. BMPシグナル伝達を抑制する物質を分化誘導期前の幹細胞に前もって処理しておく工程を含み、かつ、BMPシグナル伝達を抑制する物質を分化誘導期の最初の数日間のみ添加する、請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
  8. BMPシグナル伝達を抑制する物質がBMPアンタゴニストである請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
  9. BMPアンタゴニストが、ノギン、コーディン、フェチュイン、フォリスタチン、スクレロスチン、ダン、サーベラス、グレムリン、及びダンテ、並びにそれらの関連蛋白質からなる群から1つ又は複数選択されたものである、請求項8に記載の方法。
  10. 幹細胞が、試験管内培養下で心筋細胞へ分化し得る能力を有した哺乳動物由来の細胞である請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
  11. 心筋細胞へ分化し得る能力を有した哺乳動物由来の細胞が、多能性幹細胞又は当該細胞に由来する細胞である請求項10に記載の方法。
  12. 多能性幹細胞が、胚性幹細胞、胚性幹細胞に類似した形質を有する細胞、胚性生殖細胞又は成人型多能性幹細胞である請求項11に記載の方法。
  13. 多能性幹細胞が、胚性幹細胞である請求項12に記載の方法。
  14. 請求項1〜13の何れか1項に記載の方法により得られる心筋細胞。
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