以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る保守管理装置を含む基板処理システムの全体構成を示すブロック図である。図1において、10は基板処理を行う基板処理工場を示しており、20は基板処理工場に設けられた基板処理装置の管理を行う管理センターを示している。基板処理工場10は、例えば半導体メーカの工場であり、管理センター20は、例えば基板処理装置メーカの一つの部署内に設けられる。これらの基板処理工場10と管理センター20とはインターネット、専用回線、公衆回線等のネットワークNを介して接続されている。
基板処理工場10内には、複数の基板処理装置11、ホストコンピュータ12、保守管理サーバ13、端末装置14、及び接続装置15が設けられている。これらは、基板処理工場10内に敷設されたLAN(Local Area Network)等の内部ネットワークLN1に接続されている。基板処理装置11は、基板としてのウエハに対して、例えばフォトレジスト等の感光剤を塗布する塗布処理、感光剤が塗布された基板上にマスク又はレチクルのパターンの像を投影露光する露光処理、及び露光処理が施された基板を現像する現像処理等を行う。尚、以下の説明では基板処理装置11がウエハに対する処理を行うものである場合を例に挙げて説明するが、ウエハ以外にガラスプレート等に対する処理を行うものにも本発明を適用することができる。ホストコンピュータ12は、複数の基板処理装置11の動作を一括して管理・制御する上位のコンピュータである。
保守管理サーバ13は、各基板処理装置11の装置状態を示す装置データを内部ネットワークLN1を介して収集し、収集した装置データを解析して各基板処理装置11の装置状態の時間変動を予測する。また、この予測結果から各基板処理装置11の保守を行う保守時期(メンテナンス日)を求める。例えば、各基板処理装置11で露光処理を行うときに用いられる露光光の照度(光量)及び照度分布の所定期間前から現在までの計測結果から、露光光の今後の照度変化を予測し、レンズ等の調整若しくは交換、又は光源に封入されているガスの交換等の作業を行うメンテナンス日を求める。
また、保守管理サーバ13には基板処理装置11に含まれる各装置を構成する部品を発注してから取り寄せまで(納品されるまで)に要する期間を示す部品納期データが格納されており、保守管理サーバ13はメンテナンス内容に応じて交換が必要となる部品の発注時期を部品納期データに基づいて算出する。例えば、上記の例では交換するレンズ又はガスの発注時期を算出する。ここで、算出される発注時期は少なくともメンテナンス日から部品を取り寄せるのに要する期間だけ遡った時期である。保守管理サーバ13は、メンテナンス内容及びメンテナンス日を示す情報を含む保守データを、算出した発注時期が到来した時点でネットワークNを介して管理センター20へ送信する。
保守データの送信は、例えば電子メールで行うことが好ましい。電子メールで保守データを送信するときは、保守データを何ら暗号化せずに平文のまま基板処理工場10外へ送信すると盗用又は改竄される虞があり、また基板処理装置11の性能等の情報が第三者に知られる可能性が考えられる。そこで、保守データを暗号化して電子メールにて送信することが好適である。ここで、暗号化方式は、暗号化と復号とを同一の鍵を用いて行う共通鍵方式と、暗号化と復号とをそれぞれ異なる鍵を用いて行う公開鍵暗号化方式とに大別されるが、秘密保持の観点からは公開鍵暗号化方式を用いることが好ましい。
端末装置14は、基板処理装置11のメンテナンスを行う作業員(サービスマン)によって操作され、例えば保守管理サーバ13に格納する各種データの入力等に用いられる。接続装置15は、基板処理工場10内に敷設された内部ネットワークLN1とネットワークNとを接続するための装置であり、例えばルータ等の装置である。尚、基板処理工場10内で取り扱われる基板処理装置11の稼働状況を示す装置データが外部に漏洩することを防止するために、接続装置15はファイヤーウォール機能を有することが望ましい。
次に、管理センター20内には、管理サーバ21、複数の端末装置22、及び接続装置23が設けられている。これらは、管理センター20内に敷設されたLAN等の内部ネットワークLN2に接続されている。管理サーバ21は、基板処理工場10からネットワークNを介して送られてきた保守データに基づいて部品の在庫の有無を判断し、在庫が無い場合には部品の発注を行う。また、管理サーバ21には基板処理装置11のメンテナンスを行うサービスマンのスキル及び作業可能日を示すサービスマンデータが格納されており、送られてきた保守データに基づいて、サービスマンの割り当て(スケジューリング)を行う。
端末装置22は、管理センター20の作業者によって操作され、例えば管理サーバ21に格納する各種データの入力、更新、確認等の作業を行うために用いられる。接続装置23は、管理センター20内に敷設された内部ネットワークLN2とネットワークNとを接続するための装置であり、例えばルータ等の装置である。尚、基板処理工場10に設けられた接続装置15と同様に、管理センター20内で取り扱われる各種のデータが外部に漏洩することを防止するために、接続装置23はファイヤーウォール機能を有することが望ましい。
次に、基板処理工場10内に設けられる基板処理装置11について説明する。図2は、基板処理装置11の概略構成を示す上面図である。基板処理装置11の各々は図2に示す構成と同様の構成である。図2に示す通り、基板処理装置11は露光装置30を囲むチャンバにインライン方式で接するように、コータ・デベロッパ部31が設置されており、また露光装置30及びコータ・デベロッパ部31の全体の動作を統轄制御する制御コンピュータ32が設置されている。この制御コンピュータ32は基板処理工場10内に敷設された内部ネットワークLN1に接続されている。
上記のコータ・デベロッパ部31には、その中央部を横切るようにウエハWを搬送する搬送ライン33が配置されている。この搬送ライン33の一端に未露光の多数のウエハWを収納するウエハキャリア34と、露光処理及び現像処理を終えた多数のウエハWを収納するウエハキャリア35とが配置されており、搬送ライン33の他端に露光装置30のチャンバ側面のシャッタ付きの搬送口(不図示)が設置されている。
また、コータ・デベロッパ部31に設けられた搬送ライン33の一方の側面に沿ってコータ部36が設けられており、他方の側面に沿ってデベロッパ部37が設けられている。コータ部36は、ウエハキャリア34から露光装置30に向けて、ウエハWにフォトレジストを塗布するレジストコータ36a、そのウエハW上のフォトレジストをプリベークするためのホットプレートからなるプリベーク装置36b、及びプリベークされたウエハWを冷却するためのクーリング装置36cが設置されている。
デベロッパ部37は、露光装置30からウエハキャリア35に向けて、露光処理後のウエハW上のフォトレジストをベーキングする、即ちいわゆるPEB(Post−Exposure Bake)を行うためのポストペーク装置37a、PEBが行われたウエハWを冷却するためのクーリング装置37b、及びウエハW上のフォトレジストの現像を行うための現像装置37cが設置されている。更に、本実施形態では、現像装置37cで現像されたウエハに形成されたフォトレジストのパターン(レジストパターン)の形状を測定する測定装置38がインライン設置されている。測定装置38は、ウエハW上に形成されているレジストパターンの形状(例えばパターンの線幅、パターンの重ね合わせ誤差等)を測定するためのものである。
露光装置30、コータ部36及びデベロッパ部37、測定装置38、及び制御コンピュータ32は、有線又は無線で接続されており、各々の処理開始又は処理終了を示す信号が送受信される。また、これらの装置の装置状態を示す装置データ及び測定装置38による測定結果は制御コンピュータ32へ出力され、制御コンピュータ32内に設けられるハードディスク等の記憶装置に記録される。
露光装置30は、ウエハベース86(図3参照)上を2次元的に移動するウエハステージ85を備えており、露光対像のウエハWはウエハホルダ84を介してウエハステージ85上に保持される。また、露光装置30内には、コータ・デベロッパ部31に設けられた搬送ライン33の中心軸の延長線にほぼ沿うように第1ガイド部材39が配置され、第1ガイド部材39の端部の上方に直交するように、第2ガイド部材40が配置されている。
第1ガイド部材39には第1ガイド部材39に沿って摺動可能に構成されたスライダ41が配置されており、このスライダ41には回転及び上下動自在にウエハWを保持する第1アーム42が設置されている。また、第2ガイド部材40にはウエハWを保持した状態で第2ガイド部材40に沿って摺動可能に構成された第2アーム43が配置されている。第2ガイド部材40は、ウエハステージ85のウエハのローディング位置まで延びており、第2アーム43には第2ガイド部材40に直交する方向にスライドする機構も備えられている。
また、第1ガイド部材39と第2ガイド部材40とが交差する位置の近傍にウエハWのプリアライメントを行うために回転及び上下動ができる受け渡しピン44が設置され、受け渡しピン44の周囲にウエハWの外周部の切り欠き部(ノッチ部)及び2箇所のエッジ部の位置又はウエハWの外周部に形成されたオリエンテーションフラットを検出するための位置検出装置(不図示)が設置されている。第1ガイド部材39、第2ガイド部材40、スライダ41、第1アーム42、第2アーム43、及び受け渡しピン44等からウエハローダ系が構成されている。
上記構成における基板処理装置11がウエハWに対する処理を行うときの動作について簡単に説明する。まず、図1中のホストコンピュータ12から内部ネットワークLN1を介して基板処理装置11が備える制御コンピュータ32に処理開始命令が出力される。制御コンピュータ32はこの処理開始命令に基づいて、露光装置30、コータ部36、及びデベロッパ部37に各種の制御信号を出力する。この制御信号が出力されると、ウエハキャリア34から取り出された1枚のウエハは、搬送ライン33を経てレジストコータ36aに搬送されてフォトレジストが塗布され、順次搬送ライン33に沿ってプリベーク装置36b及びクーリング装置36cを経て露光装置30の第1アーム42に受け渡される。
その後、スライダ41が第1ガイド部材39に沿って受け渡しピン44の近傍に達すると、第1アーム42が回転して、フォトレジストが塗布されたウエハWが第1アーム42から受け渡しピン44上の位置Aに受け渡されて、ここでウエハの外形基準で中心位置及び回転角の調整(プリアライメント)が行われる。その後、ウエハWは第2アーム43に受け渡されて第2ガイド部材40に沿ってウエハのローディング位置まで搬送され、そこでウエハステージ85上のウエハホルダ84にロードされる。そして、そのウエハW上の各ショット領域に対してレチクルの所定のデバイスパターンを介して露光が行われる。
露光処理を終えたウエハWは、第2ガイド部材40及び第1ガイド部材39に沿ってコータ・デベロッパ部31の搬送ライン33まで搬送された後、搬送ライン33に沿って順次ポストペーク装置37a及びクーリング装置37bを経て現像装置37cに送られる。そして、現像装置37cで現像が行われたウエハWの各ショット領域に、レチクルのデバイスパターンに対応した凹凸のレジストパターンが形成される。このように現像が行われたウエハWは、必要に応じて形成されたパターンの線幅、重ね合わせ誤差等が測定装置38で検査され、搬送ライン33に沿ってウエハキャリア35に収納される。このリソグラフィ工程の終了後にウエハキャリア35内の例えば1ロットのウエハは、例えばエッチング又はイオン注入等のパターン形成工程及びレジスト剥離工程等を実行する製造ラインに搬送される。
次に、基板処理装置11に設けられる露光装置30について説明する。図3は、この基板処理装置が備える露光装置の構成を示す図である。本実施形態においてはステップ・アンド・スキャン方式の露光装置を用いた場合を例に挙げて説明する。尚、以下の説明においては、図中に示したXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。XYZ直交座標系は、Y軸及びZ軸が紙面に対して平行となるよう設定され、X軸が紙面に対して垂直となる方向に設定されている。図中のXYZ直交座標系は、実際にはXY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直上方向に設定される。Y軸に沿う方向がスキャン(走査)方向である。
図3において、51は露光光源であり、この露光光源51としては断面が略長方形状の平行光束である露光光ILを射出するArFエキシマレーザ光源(波長193nm)である。この露光光源51としては、これ以外に、例えばg線(波長436nm)、i線(波長365nm)を射出する超高圧水銀ランプ、又はKrFエキシマレーザ(波長248nm)、F2レーザ(波長157nm)、Kr2レーザ(波長146nm)、YAGレーザの高周波発生装置、若しくは半導体レーザの高周波発生装置を用いることができる。
露光光源51からの波長193nmの紫外パルスよりなる露光光IL(露光ビーム)は、ビームマッチングユニット(BMU)52を通り、光アッテネータとしての可変減光器53に入射する。ウエハ上のフォトレジストに対する露光量を制御するための露光制御ユニット73が、露光光源51の発光の開始及び停止、並びに出力(発振周波数、パルスエネルギー)を制御すると共に、可変減光器53における減光率を段階的、又は連続的に調整する。
可変減光器53を通った露光光ILは、レンズ系54a,54bよりなるビーム成形系55を経て第1段のオプティカル・インテグレータ(ユニフォマイザ、又はホモジナイザ)としての第1フライアイレンズ56に入射する。この第1フライアイレンズ56から射出された露光光ILは、第1レンズ系57a、光路折り曲げ用のミラー58、及び第2レンズ系57bを介して第2段のオプティカル・インテグレータとしての第2フライアイレンズ59に入射する。
第2フライアイレンズ59の射出面、即ちレチクルRのパターン面に対する光学的なフーリエ変換面(照明系の瞳面)には開口絞り板60が、駆動モータ60aによって回転自在に配置されている。開口絞り板60には、通常照明用の円形の開口絞り、輪帯照明用の開口絞り、及び複数(例えば4極)の偏心した小開口よりなる変形照明用の開口絞りや小さいコヒーレンスファクタ(σ値)用の小円形の開口絞り等が切り換え自在に配置されている。露光装置30の全体の動作を統括制御する主制御系74が駆動モータ60aを介して開口絞り板60を回転して、照明条件を設定する。
図3において、第2フライアイレンズ59から射出されて開口絞り板60に形成された何れかの開口絞りを通過した露光光ILは、透過率が高く反射率が低いビームスプリッタ61に入射する。ビームスプリッタ61で反射された露光光は、集光用のレンズ71を介して光電検出器よりなるインテグレータセンサ72に入射し、インテグレータセンサ72の検出信号は露光制御ユニット73に供始されている。インテグレータセンサ72の検出信号とウエハW上での露光光ILの照度との関係は予め高精度に計測されて、露光制御ユニット73内のメモリに記憶されている。露光制御ユニット73は、インテグレータセンサ72の検出信号より間接的にウエハWに対する露光光ILの照度(平均値)、及びその積分値をモニタできるように構成されている。
ビームスプリッタ61を透過した露光光ILは、光軸IAXに沿ってレンズ系62,63を順次経て、固定ブラインド(固定照明視野絞り)64及び可動ブラインド(可動照明視野絞り)65に入射する。後者の可動ブラインド65はレチクル面に対する共役面に設置され、前者の固定ブラインド64はその共役面から所定量だけデフォーカスした面に配置されている。固定ブラインド64は、投影光学系PLの円形視野内の中央で走査露光方向と直交した方向に直線スリット状、又は矩形状(以下、まとめて「スリット状」という)に伸びるように配置された開口部を有する。
固定ブラインド64及び可動ブラインド65を通過した露光光ILは、光路折り曲げ用のミラー66、結像用のレンズ系67、コンデンサレンズ68、及び主コンデンサレンズ系69を介して、レチクルRのパターン面(下面)の照明領域(照明視野領域)IAを照明する。尚、上記BMU52〜主コンデンサレンズ系69は照明光学系ISを構成する。露光光ILのもとで、レチクルRの照明領域IA内の回路パターンの像が両側テレセントリックな投影光学系PLを介して所定の投影倍率α(αは例えば1/4又は1/5等)で、投影光学系PLの結像面に配置されたウエハW上のフォトレジスト層のスリット状の露光領域に転写される。
図3において、レチクルRは、レチクルステージ81上に吸着保持され、レチクルステージ81は、レチクルベース82上でY方向に等速移動できると共に、X方向、Y方向、回転方向に傾斜できるように載置されている。レチクルステージ81(レチクルR)の2次元的な位置及び回転角は駆動制御ユニット83内のレーザ干渉計によってリアルタイムに計測されている。この計測結果、及び主制御系74からの制御情報に基づいて、駆動制御ユニット83内の駆動モータ(リニアモータやボイスコイルモータ等)は、レチクルステージ81の走査速度、及び位置の制御を行う。
一方、ウエハWは、ウエハホルダ84を介してウエハステージ85上に吸着保持され、ウエハステージ85は、ウエハベース86上で投影光学系PLの像面と平行なXY平面に沿って2次元移動する。即ち、ウエハステージ85は、ウエハベース86上でY方向に一定速度で移動すると共に、X方向、Y方向にステップ移動する。更に、ウエハステージ85には、ウエハWのZ方向の位置(フォーカス位置)、並びにX軸及びY軸の回りの傾斜角を制御するZレベリング機構も組み込まれている。
ウエハステージ85のX方向、Y方向の位置、及びX軸、Y軸、Z軸の回りの回転角は駆動制御ユニット87内のレーザ干渉計によってリアルタイムに計測されている。この計測結果及び主制御系74からの制御情報に基づいて、駆動制御ユニット87内の駆動モータ(リニアモータ等)は、ウエハステージ85の走査速度、及び位置の制御を行う。また、ウエハステージ85上の一端には、投影光学系PLを介してウエハW上の露光領域に照射される露光光ILの照度(光量)を検出する照度センサ88が固定されている。
この照度センサ88は、例えばピンホールが形成された筐体を有し、このピンホールの形成位置に受光素子の受光面が配置されたセンサであり、ピンホールを介して入射する露光光ILの照度(光量)を検出する。照度センサ88の検出信号は露光制御ユニット73に供給されている。ウエハステージ85上に露光光ILが照射されている状態で、照度センサ88を露光領域内で移動させることにより、露光光ILの照度むら(光量むら)及び積算光量むらを計測することができる。照度センサ88を用いた照度、この照度むら、及び積算光量むらの測定は、定期的に又は不定期に実行される。
また、投影光学系PLの側面に、ウエハWの表面(被検面)の複数の計測点に斜めにスリット光を投影する投射光学系89aと、その被検面からの反射光を受光してそれらの複数の計測点のフォーカス位置に対応するフォーカス信号を生成する受光光学系89bとからなる多点のオートフォーカスセンサも設けられており、それらのフォーカス信号が主制御系74中に供給されている。
また、走査露光を行う際には、予めレチクルRとウエハWとのアライメントを行っておく必要がある。そのため、レチクルステージ81上にはレチクルRのアライメントマーク(レチクルマーク)の位置を計測するレチクルアライメント顕微鏡(不図示)が設置されている。更に、ウエハW上のアライメントマーク(ウエハマーク)の位置を計測するために、投影光学系PLの側面にオフ・アクシスで画像処理方式(FIA方式:Fleld Image Alignment方式)のアライメントセンサ90が設置されている。アライメントセンサ90は、例えばハロゲンランプ等からの比較的広い波長域の照明光でウエハW上のアライメントマークを照明してCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子でその像を撮像するものである。アライメントセンサ90で得られた画像信号は主制御系74に供給されて画像処理が施され、位置情報が計測される。
主制御系74は、図2に示した制御コンピュータ32に設けられており、ウエハW上の各ショット領域のフォトレジストを適正露光量で走査露光するための各種露光条件を露光データファイルより読み出して、露光制御ユニット73とも連携して最適な露光シーケンスを実行する。露光処理が開始されると、主制御系74は、レチクルステージ81及びウエハステージ85のそれぞれの移動位置、移動速度、移動加速度、位置オフセット等の各種情報を駆動制御ユニット83,87に送る。これにより、レチクルステージ81及びウエハステージ85の加速が開始される。また、主制御系74は露光制御ユニット73に対しても走査露光開始指令を発する。
レチクルステージ81及びウエハステージ85の加速が終了して速度が一定になると、露光制御ユニット73は露光光源51の発光を開始すると共に、インテグレータセンサ72を介してウエハWに対する露光光ILの照度(単位時間当たりのパルスエネルギーの和)の積分値を算出する。その積分値は走査露光開始時に0にリセットされている。走査露光中は、レチクルステージ81を介して露光光ILの照明領域IAに対してレチクルRが+Y方向(又は−Y方向)に速度Vrで走査されるのに同期して、ウエハステージ85を介してレチクルRのパターン像の露光領域に対してウエハWが−Y方向(又は+Y方向)に速度α・Vr(αはレチクルRからウエハWへの投影倍率)で走査される。レチクルRとウエハWとの移動方向が逆であるのは、本例の投影光学系PLが反転投影を行うためである。
走査露光中は、露光制御ユニット73において、露光光ILの照度の積分値が逐次算出され、この結果に応じて、走査露光後のウエハW上のフォトレジストの各点で適正露光量が得られるように、露光光源51の出力(発振周波数、及びパルスエネルギー)及び可変減光器53の減光率を制御する。そして、当該ショット領域への走査露光の終了時に、露光光源51の発光が停止される。この動作が繰り返されることにより、ウエハW上に設定された複数のショット領域に対して露光処理が行われる。
また、主制御系74には、半導体メモリ又はハードディスク等の記憶装置が設けられており、インテグレータセンサ72の検出結果を示すデータ、照度センサ88を用いて計測して得られた照度、照度むら、及び積算光量むらを示すデータ、投影光学系PLの残存収差を示すデータ、レチクルステージ81とウエハステージ85との同期誤差を示すデータ等の各種データを装置データとして一時的に記憶する。主制御系74は、図1に示す保守管理サーバ13から装置データの送信要求があったときに、一時的に記憶した装置データを読み出して、内部ネットワークLN1を介して保守管理サーバ13へ出力する。
次に、図1中の基板処理工場10内に設けられる保守管理サーバ13について説明する。図4は、保守管理サーバ13に設けられる機能を示す機能ブロック図である。図4に示す通り、保守管理サーバ13は、装置データ収集部91、装置データ解析部92、閾値到達時期予測部93、保守データ送信部94、記憶部95、及び部品発注時期算出部96を含んで構成される。
上記記憶部95は、各基板処理装置11のメンテナンスを行うメンテナンス日及びメンテナンス時に交換する部品の発注時期を算出するための各種情報を記憶する。図4に示す通り、記憶部95は、傾向関数データD1、性能閾値Th1、部品調整閾値Th2、改善量閾値Th3、部品納期データD2を記憶する。図5は、記憶部95に記憶される各種情報の一例を示す図である。以下、記憶部95に記憶される各種情報の各々について順に説明する。
傾向関数データD1は、収集した装置データを解析して各基板処理装置11の装置状態の時間変動を予測するときに用いる近似関数を示すデータである。装置状態の時間変動は、検査を行う検査項目毎に予めその傾向が分かっており、収集した装置データを所定の関数を用いて近似することで、装置状態の未来の時間変動を予測することができる。例えば、図3に示した露光装置30において、ウエハW上に照射される露光光ILは、時間の経過に比例して照度が低下することが分かっている。このため、図5Aに示す通り、検査項目の「照度」に対しては近似関数として「直線」が対応付けられている。このように、傾向関数データD1は、検査項目毎に、近似関数を対応付けたデータである。
性能閾値Th1は、基板処理装置11で許容される最低性能の閾値を定めるものである。基板処理装置11の性能が性能閾値Th1を越えて悪化した場合には、部品交換等を行って所期の性能以上の性能にすることが要求される。基板処理装置11の性能を示す指標は種々のものがあるため、検査項目毎に性能閾値Th1が設定される。例えば、図5Bに示す通り、検査項目の「照度」に対しては閾値として「P0」が設定されている。仮に、図3に示した露光装置30のウエハW上に照射される露光光ILが閾値「P0」よりも低下した場合に、部品交換等を行う必要がある。
部品調整閾値Th2は、基板処理装置11の性能が低下したときに、基板処理装置11に設けられる部品の調整を行う目安を定める閾値である。基板処理装置11の性能が上記の最低性能まで劣化する前に、性能が悪化した検査項目に関連する部品の調整を行うことにより、性能が回復することがある。例えば、図3に示す露光装置30に設けられる照明光学系ISに含まれるレンズを偏心させて露光光ILが照射されていない部分を用いると、露光光ILの照度が向上することがある。部品調整閾値Th2はこの調整の目安を定めるものである。この部品調整閾値Th2は、性能閾値Th1と同様に、検査項目毎に設定される。例えば、図5Cに示す通り、検査項目の「照度」に対しては閾値として「P1」が設定されている。部品調整閾値Th2は、基板処理装置11の性能が上記の最低性能になる前に調整が行われるよう設定されているため、図5C中の閾値「P1」の値は図5B中の閾値「P0」よりも大きな値に設定される。
改善量閾値Th3は、上記の部品調整により基板処理装置11の性能が改善されたときに、再度部品調整を行うか否かを定める閾値である。部品調整により基板処理装置11の性能は改善するが、その改善量が僅かな場合には基板処理装置11の性能が短時間で部品調整閾値Th2を越えて悪化することがある。かかる状況においては、部品調整を行っても大きな性能改善は見込めないため調整作業が無駄となり、却って基板処理装置11の稼働率を低下させることになる。このため、改善量が改善量閾値Th3よりも小さい場合には、部品調整は行われない。この改善量閾値Th3も検査項目毎に設定されており、例えば図5Dに示す通り、検査項目の「照度」に対しては閾値として「A1」が設定されている。
部品納期データD2は、部品を発注してから取り寄せまでに要する期間を示すデータである。基板処理装置11の部品の交換を行うときに、交換する部品が手元になければ交換作業を行うことができず部品を入手するまで基板処理装置11を稼働することができないという事態になる。かかる事態が生ずるのを防止するため、部品納期データD2は、メンテナンス日において交換すべき部品が用意されているように部品の発注時期を算出するために用いられる。この部品納期データD2も検査項目毎に設定されており、例えば図5Eに示す通り、検査項目の「照度」に対しては対象部品として「レンズ」が設定されており、また納期として「2ヶ月」が設定されている。
再度、図4を参照する。保守管理サーバ13に設けられる装置データ収集部91は、基板処理工場10内に設けられた基板処理装置11の各々に対して装置データの送信要求を送出し、この送信要求に応答して返信される装置データを収集する。また、装置データ収集部91は、収集した装置データを一定期間記憶する。装置データ解析部92は、記憶部95内に記憶された傾向関数データD1を用いて装置データ収集部91で収集された装置データを解析し、各基板処理装置11の装置状態の時間変動を予測する。
閾値到達時期予測部93は、装置データ解析部92で予測された時間変動が性能閾値Th1を越えて悪化する時期、及び装置データ解析部92で予測された時間変動が部品調整閾値Th2を越えて悪化する時期を予測する。また、部品調整を行って得られた改善量が改善量閾値Th3よりも小さいか否かを判断する。閾値到達時期予測部93によって予測された時期は基板処理装置11の部品の交換又は調整を行うメンテナンス日である。保守データ送信部94は、閾値到達時期予測部93によって予測されたメンテナンス日及びメンテナンスの内容を含む保守データを、部品発注時期算出部96で算出された部品発注時期が到来したときにネットワークNを介して管理センター20に送信する。
部品発注時期算出部96は、閾値到達時期予測部93によって求められたメンテナンス日に行われるメンテナンスの内容が、部品交換を伴うものである場合には、求められたメンテナンス日と部品納期データD2とに基づいて、部品を発注する部品発注時期を算出する。算出された部品発注時期は保守データ送信部94に出力される。
次に、管理センター20に設けられる管理サーバ21について説明する。図6は、管理サーバ21に設けられる機能を示す機能ブロック図である。図6に示す通り、管理サーバ21は、保守データ受信部101、部品発注部102、スケジューリング部103、及び記憶部104を含んで構成される。
上記記憶部104は、部品在庫データD11及びサービスマンデータD12を記憶する。図7は、記憶部104に記憶される各種情報の一例を示す図である。部品在庫データD11は、図7Aに示す通り、基板処理装置11の部品毎の在庫状況を示すデータであり、例えば部品名「レンズ」については在庫が「0」である旨を示すデータ、部品名「光源ガス」については在庫が「2」である旨を示すデータが格納される。
また、サービスマンデータD12は、基板処理装置11のメンテナンスを行うサービスマンに関するデータであり、図7Bに示す通りサービスマン毎の技能(スキル)を示すスキルデータと、図7Cに示す通りサービスマン毎のスケジュールを示すスケジーリングデータとからなる。各サービスマンには一意に定まる作業員IDが付されており、この作業員IDを用いてサービスマンの管理が行われる。
図7Bに示すスキルデータは、作業項目(メンテナンス内容)毎に対応可能な作業員IDを格納したデータである。例えば、図7Bに示す例では、作業項目の1つである「レンズ交換」には、作業員「A氏」と作業員「B氏」とが対応付けられている。このスキルデータによって、レンズ交換の作業が必要な場合には、その作業員として「A氏」と「B氏」が候補に挙げられる。尚、図7では作業員IDを「A氏」、「B氏」等として表しているが、実際には、数字、文字、若しくは記号、又はこれらの組み合わせで表される。
また、図7Cに示すスケジューリングデータは、作業員ID毎に作業予定を示す情報その他の情報を格納したデータである。例えば、図7Cに示す例では、作業員「A氏」については、作業予定として「10/1予約」という情報が格納されている。この情報は、作業員「A氏」については10月1日にメンテナンス作業の予定がある旨を示す情報である。このため、例えば仮に10月1日に行われる他のメンテナンスに作業員「A氏」が候補に挙げられたとしても、作業員「A氏」は既に作業予約があるため、そのメンテナンス作業を行うサービスマンとしては選択されない。
再度、図6を参照する。保守データ受信部101は、基板処理工場10からネットワークNを介して送られてくる保守データを受信する。部品発注部102は記憶部104に記憶された部品在庫データD11を参照して、保守データ受信部101で受信された保守データに含まれるメンテナンス内容で示される作業を行う上で必要となる部品の在庫状況を確認し、在庫が無い場合には部品発注を指示する発注データを出力する。尚、ここでは、部品発注部102が発する発注データは、内部ネットワークLN2を介して予め定められた担当者(管理センター20の作業員の一人又は複数人)宛に送信されるとする。また、部品在庫の管理は自動的に又は担当者が手作業で行っており、部品の在庫状況に応じて部品在庫データD11は更新される。
スケジューリング部103は、サービスマンデータD12を参照して、保守データ受信部101が受信した保守データに含まれるメンテナンス内容で示される作業を行うサービスマンの選択及び決定を行う。サービスマンの決定を行うと、スケジューリング部103は、新たに決定した作業員宛に作業内容が決定した旨、又は新たな作業内容の詳細を送信するとともに、サービスマンデータD12に含まれるスケジューリングデータの内容を更新する。
次に、この基板処理システムの保守に関する動作について説明する。以下の説明では、まず部品交換が必要になるまで基板処理装置11の性能が低下する場合の動作(第1動作例)を説明し、次いで部品調整によって基板処理装置11の性能維持を行う場合の動作(第2動作例)を説明する。また、以下の説明では、図1中の基板処理工場10内の基板処理装置11に設けられる露光装置30の露光光ILの照度が低下する場合を例に挙げて説明する。
[第1動作例]
図8は、保守管理サーバ13の第1動作例を示すフローチャートである。基板処理工場10内で基板処理装置11が稼働している状況下において、保守管理サーバ13に設けられた装置データ収集部91(図4参照)は、基板処理装置11の各々に対して内部ネットワークLN1を介して装置データの送信要求を出力する。この送信要求が送信されると、露光装置30に設けられた主制御系74(図3参照)は、照度センサ88を用いて計測した過去の露光光ILの照度、照度むら、及び積算光量むらを示すデータ、並びにインテグレータセンサ72の検出結果を示すデータ等の装置データを、内部ネットワークLN1を介して保守管理サーバ13宛に送信する。装置データ収集部91は、送られた装置データを収集して一定期間記憶する(ステップS11)。
装置データが収集されると、装置データ解析部92は記憶部95内に記憶された傾向関数データD1を用いて装置データ収集部91で収集された装置データを解析し、各基板処理装置11の装置状態の時間変動を予測する(ステップS12)。ここでは、露光光ILの照度の変化に着目しているため、装置データ解析部92は記憶部95に記憶された傾向関数データD1中の検査項目の「照度」に対して対応付けられている近似関数を得る。図5Aを参照すると、検査項目の「照度」には近似関数として「直線」が対応付けられているため、装置データ解析部92は、装置データ収集部91で収集された装置データを直線近似して、露光光ILの照度の変動を予測する。
図9は、第1動作例時に保守管理サーバ13で行われる処理を説明するための図である。図9中に示すグラフは照度の時間変化を示すグラフであり、横軸に時間を、縦軸に照度を取っている。尚、横軸は年単位のスケールである。このグラフ中で符号DTを付した黒丸は、装置データ収集部91で収集された照度に関する装置データを示している。露光装置30は照度センサ88を用いて露光光ILの照度等を定期的に測定しているため、定期的な露光光ILの照度が得られる。尚、図9において、時刻t10が現在時期であり、装置データは現在時期t10よりも過去の時点においてのみ得られている点に注意されたい。
この装置データに対して装置データ解析部92が直線近似を行って図示の近似直線L1を求めることにより、露光装置30で用いられる露光光ILの照度の変動を予測する。次に、閾値到達時期予測部93は、装置データ解析部92で得られた近似直線L1で示される照度が性能閾値Th1を越えて低下する時期を予測する(ステップS13)。図5Bに示した例では、性能閾値Th1の検査項目「照度」に対しては閾値として「P0」が設定されているため、閾値到達時期予測部93は近似直線L1で示される照度がP0以下になる時期t12を求める。ここで求められた時期t12がメンテナンス日である。
以上の処理が終了すると、部品発注時期算出部96は、閾値到達時期予測部93によって予測されたメンテナンス日と部品納期データD2とに基づいて、部品発注時期を算出する(ステップS14)。図5Eに示す例では、検査項目の「照度」に対しては対象部品として「レンズ」が設定されており、また納期として「2ヶ月」が設定されている。このため、部品発注時期算出部96は、図9に示したメンテナンス日(時期t12)から「2ヶ月」の期間(図9中に示した期間T1)だけ遡った時期t11を算出する。ここで、求められた時期t11が部品発注時期である。
閾値到達時期予測部93で算出されたメンテナンス日及び部品発注時期算出部96で算出された部品発注時期が保守データ送信部94へ出力される。また、部品納期データD2検査項目の「照度」に対して対象部品として設定されている「レンズ」を示す情報(以下、部品データという)も、部品発注時期算出部96から保守データ送信部94へ出力される。次に、保守データ送信部94は、現在時期t10が部品発注時期t11を経過しているか否かを判断する(ステップS15)。現在時期t10が部品発注時期t11を経過していないと判断した場合(判断結果が「NO」の場合)には、ステップS11に戻って装置データの収集が再度行われる。
一方、ステップS15において、現在時期t10が部品発注時期t11を経過したと判断された場合(判断結果が「YES」の場合)には、保守データ送信部94がネットワークNを介して管理センター20へ保守データを送信する。尚、保守データには、メンテナンス日を示すデータ及び部品データ以外に、メンテナンスが必要となる基板処理装置11を特定するデータ及び基板処理工場10を特定するデータが含まれる。次に、保守管理サーバ13から送られた保守データに基づいて管理センター20に設けられた管理サーバ21で行われる処理について説明する。
図10は、管理サーバ21の動作例を示すフローチャートである。保守管理サーバ13から送られた保守データは管理サーバ21内に設けられた保守データ受信部101で受信される(ステップS21)。保守データを受信すると、保守データ受信部101は受信した保守データ中に部品データが含まれているか否かを判断する(ステップS22)。ここでは、保守データに部品データが含まれているため、ステップS22の判断結果は「YES」となり、保守データ受信部101は受信した保守データを部品発注部102及びスケジューリング部103へ出力する。
次に、部品発注部102は部品在庫データD11を用いて、保守データ受信部101からの保守データに含まれる部品データで示される部品の在庫の有無を判断する(ステップS23)。部品の在庫があると判断された場合(判断結果が「YES」の場合)には、その部品を確保する処理が行われる。ここで行われる処理は、記憶部104に記憶された部品在庫データD11から交換する部品の数を差し引いて部品在庫データD11を更新するとともに、予め定められた在庫担当者(管理センター20の作業員の一人又は複数人)宛にその部品を使用する旨を示す情報を送信する処理である。
一方、部品の在庫が無いと判断された場合(ステップS23の判断結果が「NO」の場合)には、部品発注部102は部品発注を指示する発注データを出力する(ステップS25)。部品発注部102から出力される発注データは、内部ネットワークLN2を介して予め定められた担当者宛に送信され、その担当者により部品の発注が行われる。ステップS24の部品確保又はステップS25の部品発注処理が終了すると、スケジューリング部103は、記憶部104に記憶されたサービスマンデータD12中のスキルデータ(図7B参照)を参照して、保守データ中の部品データで示される部品の交換作業を行うことができるサービスマンを候補として選択する(ステップS26)。
サービスマン候補の選択が終了すると、スケジューリング部103はサービスマンデータD12中のスケジューリングデータ(図7C参照)を参照して、選択したサービスマン候補からメンテナンス日に作業が可能なサービスマンを決定する(ステップS27)。サービスマンの決定が終了すると、スケジューリング部103は、新たに決定した作業員宛に作業内容が決定した旨、又は新たな作業内容の詳細を送信するとともに、サービスマンデータD12に含まれるスケジューリングデータの内容を更新する。
以上説明したように、第1動作例においては基板処理工場10内に設けられた保守管理サーバ13によって基板処理装置11の装置状態の時間変動を予測し、この予測結果からメンテナンス日を求めている。また、メンテナンス日から部品の取り寄せに要する期間だけ遡った部品発注時期を求め、この部品発注時期を経過した時点で保守データを管理センター20へ送信している。そして、管理センター20に設けられた管理サーバ21は送られた保守データに基づいて部品の確保又は発注を行い、更にサービスマンの手配(スケジューリング)を行っている。以上の処理によって、メンテナンスが必要な時期を適切に求めることができ、また、メンテナンス時までに必要な部品が入手され、且つサービスマンが確保される。これにより、円滑にメンテナンス作業を行うことができ、基板処理装置の稼働率を向上させることができる。
[第2動作例]
図11は、保守管理サーバ13の第2動作例を示すフローチャートである。上述した第1動作例の場合と同様に、基板処理工場10内で基板処理装置11が稼働している状況下において、保守管理サーバ13に設けられた装置データ収集部91(図4参照)は、基板処理装置11の各々に対して内部ネットワークLN1を介して装置データの送信要求を出力し、基板処理装置11の各々から装置データを収集する(ステップS31)。装置データが収集されると、装置データ解析部92は記憶部95内に記憶された傾向関数データD1を用いて収集された装置データを解析し、各基板処理装置11の装置状態の時間変動を予測する(ステップS32)。ここでは、露光光ILの照度の変化に着目しているため、装置データ収集部91で収集された装置データを直線近似して、露光光ILの照度の変動を予測する。
図12は、第2動作例時に保守管理サーバ13で行われる処理を説明するための図である。図12中に示すグラフは、照度の時間変化を示すグラフであり、横軸に時間を、縦軸に照度を取っている。図12に示したグラフの横軸は、図9に示したグラフと同様に年単位のスケールである。また、図9と同様に、グラフ中に示した黒丸は装置データ収集部91で収集された照度に関する装置データを示している。この装置データに対して装置データ解析部92が直線近似を行って図示の近似直線L11を求めて露光装置30で用いられる露光光ILの照度の変動を予測する。
次に、閾値到達時期予測部93は、近似直線L11が部品調整閾値Th2を越える時期を予測する(ステップS33)。図5Cに示した例では、部品調整閾値Th2の検査項目「照度」に対しては閾値として「P1」が設定されているため、閾値到達時期予測部93は近似直線L11で示される照度がP1以下になる時期t21を求める。ここで求められた時期t21がメンテナンス日である。以上の処理が終了すると、閾値到達時期予測部93で求められたメンテナンス日を示すデータは保守データ送信部94へ出力される。この保守データが出力されると、保守データ送信部94はネットワークNを介して管理センター20へ保守データを送信する(ステップS34)。尚、保守データに含まれるデータは、メンテナンス日を示すデータ以外に、メンテナンスが必要となる基板処理装置11を特定するデータ及び基板処理工場10を特定するデータが含まれる。
保守管理サーバ13から保守データが送られると、図10に示す通り、管理サーバ21内に設けられた保守データ受信部101で受信される(ステップS21)。保守データを受信すると、保守データ受信部101は受信した保守データ中に部品データが含まれているか否かを判断する(ステップS22)。ここでは、保守データに部品データが含まれていないため、ステップS22の判断結果は「NO」となり、保守データ受信部101は受信した保守データをスケジューリング部103のみに出力する。
次にスケジューリング部103は、記憶部104に記憶されたサービスマンデータD12を用いてサービスマンの候補を選択し(ステップS26)、選択したサービスマン候補からメンテナンス日に作業が可能なサービスマンを決定する(ステップS27)。尚、サービスマンの決定が終了すると、スケジューリング部103は、新たに決定した作業員宛に作業内容が決定した旨、又は新たな作業内容の詳細を送信するとともに、サービスマンデータD12に含まれるスケジューリングデータの内容を更新する。
このようにして決定されたサービスマンが、メンテナンス日(図12中の時期t21)にメンテナンスが必要な基板処理装置11が設けられた基板処理工場10に赴いて露光装置30の部品調整作業を行う(図11中のステップS35)。露光光ILの照度低下に対しては、例えば図3に示す露光装置30に設けられる照明光学系ISに含まれるレンズを光軸に対して偏心させる作業が部品調整作業として行われる。部品調整作業が完了すると、基板処理工場10の保守管理サーバ13に設けられた装置データ収集部91は調整作業が行われた基板処理装置11の装置データを収集し、装置データ解析部92が収集したデータを解析して調整により基板処理装置11の性能が向上した改善量(ここでは、露光光ILの照度の上昇量)を求める(ステップS36)。図12中に示した例では、時期t21において照度が急激に上昇している箇所の照度の上昇分がここで求められる改善量である。
次に、閾値到達時期予測部93は、ステップS36で算出された改善量と改善量閾値Th3とを比較し、改善量が改善量閾値Th3よりも大であるか否かを判断する。図5Dに示した例では、照度に対しては閾値として「A1」が設定されているため、照度の上昇分が閾値A1よりも大であるか否かが判断される。図12に示す例では、時期t21における改善量が閾値A1を越えているため、ステップS37の判断結果は「YES」となり、ステップS31に戻って装置データの収集が行われる。
ステップS31に戻ると、上記と同様に装置データ収集部91で装置データの収集が行われるとともに、装置データ解析部92で収集された装置データの解析が行われる(ステップS33)。この解析によって、図12中の近似直線L12が求められる。次に、閾値到達時期予測部93は、近似直線L12と部品調整閾値Th2(閾値P1)とから近似直線L12で示される照度が閾値P1以下になる時期t22を求める。ここで求められた時期t22がメンテナンス日である。以上の処理が終了すると、このメンテナンス日を示すデータが保守データとして管理センター20の管理サーバ21宛に送信される。
保守管理サーバ13から保守データが送られると、図10に示す通り、管理サーバ21内に設けられた保守データ受信部101で受信され(ステップS21)、受信された保守データ中に部品データが含まれているか否かが判断される(ステップS22)。ここでは、保守データに部品データが含まれていないため、ステップS22の判断結果は「NO」となり、保守データ受信部101は受信した保守データをスケジューリング部103のみに出力する。
次にスケジューリング部103は、サービスマンの候補を選択する(ステップS26)とともに、選択したサービスマン候補からメンテナンス日に作業が可能なサービスマンを決定する(ステップS27)。尚、スケジューリング部103は、新たに決定した作業員宛に作業内容が決定した旨、又は新たな作業内容の詳細を送信するとともに、サービスマンデータD12に含まれるスケジューリングデータの内容を更新する。
このようにして決定されたサービスマンは、メンテナンス日(図12中の時期t22)にメンテナンスが必要な基板処理装置11が設けられた基板処理工場10に赴いて露光装置30の部品調整作業を行う(図11中のステップS35)。そして、再度照明光学系ISのレンズ調整作業が部品調整作業として行われる。部品調整作業が完了すると、基板処理工場10の保守管理サーバ13に設けられた装置データ収集部91は調整作業が行われた基板処理装置11の装置データを収集し、装置データ解析部92が収集したデータを解析して調整により基板処理装置11の性能の改善量を求める(ステップS36)。ここで求められる改善量は、図12中の時期t22において照度が急激に上昇している箇所の照度の上昇分である。
次に、閾値到達時期予測部93は、ステップS36で算出された改善量と改善量閾値Th3とを比較し、改善量が改善量閾値Th3よりも大であるか否かを判断する。図12に示す例では、時期t22における改善量が閾値A1よりも小さいため、ステップS37の判断結果は「NO」となり、その基板処理装置11に対しては図8のステップS11に移行して前述した第1動作例に示す処理が行われる。つまり、装置データの収集及び解析により近似直線L13が求められ、この近似直線L13で示される照度が閾値P0以下になる時期t23(メンテナンス日)が求められる。更に、求められたメンテナンス日から部品交換時期が算出され、部品交換時期が到来した時点でメンテナンス日及び交換する部品を示すデータを含む保守データが管理センター20の管理サーバ21宛に送信される。
以上説明したように、第2動作例においては、基板処理工場10内に設けられた保守管理サーバ13によって基板処理装置11の装置状態の時間変動を予測し、予測結果から部品の調整を行うためのメンテナンス日を求めている。このメンテナンス日を含む保守データは管理センター20へ送信され、管理センター20に設けられた管理サーバ21は送られた保守データに基づいてサービスマンの手配(スケジューリング)を行っている。以上の処理によって、部品の調整を行う時期を適切に求めることができ、また、メンテナンス時までにサービスマンが確保される。これにより、円滑にメンテナンス作業を行うことができ、基板処理装置の稼働率を向上させることができる。尚、本例における部品の調整は、必ずしもサービスマンが行うものである必要はなく、露光装置が自動的に行うものであっても良い。
更に、部品調整を行った基板処理装置11の性能の改善量を求め、改善量が改善量閾値以下の場合には、基板処理装置11の性能が部品調整閾値以上であっても、性能閾値を用いて部品の交換を行うためのメンテナンス日を求めるようにしている。かかる処理によって、部品調整を行っても大きな性能改善は見込めない場合にはサービスマンによる部品調整作業が行われないため、基板処理装置11の稼働率を向上させることができる。
尚、以上の説明では、基板処理装置11が備える露光装置30で用いられる露光光ILの照度の低下を改善する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれ以外に、露光装置30の種々の性能低下を改善する場合に適用することができる。また、露光装置30以外に、コータ部36及びデベロッパ部37の性能低下を改善するためにも本発明を適用することができる。
更に、上記実施形態では数年を単位とする基板処理装置11の性能劣化を予測してメンテナンス日を求めていたが、本発明は数日〜数ヶ月を単位とする短期間の基板処理装置11の性能変動を改善するためにも適用することができる。図13は、短期間に生ずる基板処理装置11の性能変動の例を示す図である。図13Aは、露光装置30が備える投影光学系PLの像面位置が大気圧の変化により変動する様子を示す図である。図13Aに示すグラフにおいて、符号Prを付した曲線は大気圧の変動曲線を示しており、符号Foを付した曲線は投影光学系PLの像面位置の変動曲線を示している。
投影光学系PLの像面は、図13A中の符号IDを付した直線のように、大気圧の変動に関わらず常時一定であることが理想的である。しかしながら、実際には、図示の通り、投影光学系PLの像面は大気圧の変化にほぼ連動して変化するとともに、一定時間が経過すると直線IDからのずれ量(ドリフト)Drが発生してしまう。このため、図13Bに示す通り、大気圧の変動とフォーカスとの変動との相関関係(図13Bに示す例では一次直線)を予め求めておき、大気圧が変動しても投影光学系PLの像面が変動しないように投影光学系PLの光学性能を制御することが望ましい。また、所定の閾値を設定しておき、この閾値以上のドリフトが発生した場合には、保守管理サーバ13から管理センター20宛にその旨を通知すること好ましい。
また、図13Cは、露光装置30に設けられたアライメントセンサ90の計測再現性(3σ)の一例を示す図である。図13Cに示す通り、アライメントセンサ90の計測再現性は一定の期間(例えば、半年)経過すると急激に悪化する傾向を有する。このため、ある閾値Th4を設定しておき、アライメントセンサ90の計測再現性が閾値Th4を越えたときに、保守管理サーバ13から管理センター20宛にその旨を通知するようにしても良い。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、図4に示す保守管理サーバ13及び図6に示す管理サーバ21の機能をハードウェアで構成することも可能であり、ソフトウェアで実現することも可能である。ソフトウェアで実現する場合には、保守管理サーバ13又は管理サーバ21のハードウェア構成を、CPU(中央処理装置)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、通信インタフェース、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等の外部記憶装置等から構成し、上述した制御を行う保守管理プログラムを保守管理サーバ13又は管理サーバ21に読み込ませて、そのプログラムを実行させることにより実現される。尚、保守管理プログラムは、コンピュータ読み取り可能な情報記録媒体内に記録されて配布され、当該媒体としては、CD−ROM、DVD(登録商標)、ハードディスク、光磁気ディスク、フレキシブルディスク、又は磁気テープ等を例示することができる。保守管理プログラムのコンピュータシステムへの読み込みは、コンピュータシステムが備える読み取り装置を介して行われ、あるいはインターネット等のネットワークを介してダウンロードすることにより行われる。
また、上述した実施形態では、保守管理装置としての各機能(装置データ収集部91、装置データ解析部92、閾値到達時期予測部93、保守データ送信部94、記憶部95及び部品発注時期算出部96、並びに保守データ受信部101、部品発注部102、スケジューリング部103及び記憶部104)を、保守管理サーバ13と管理サーバ21とをネットワークで相互に接続した別々のサーバにより実現しているが、これらを同一のサーバにより実現してもよく、あるいはさらに複数のサーバに機能分散させて実現してもよい。
尚、以上の説明では基板処理装置11がステップ・アンド・スキャン方式の露光装置30を備える場合を例に挙げたが、ステップ・アンド・リピート方式の露光装置(ステッパー)を備える基板処理装置11についても本発明を適用することができる。また、上記実施形態では、露光装置30が露光光ILとしてArFエキシマレーザ等から射出されるレーザ光を用いていたが、レーザプラズマ光源、又はSORから発生する軟X線領域、例えば波長13.4nm、又は11.5nmのEUV(Extreme Ultra Violet)光を用いるようにしてもよい。さらに、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いてもよい。また、投影光学系PLは、反射光学系、屈折光学系、及び反射屈折光学系のいずれを用いてもよい。
また、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザを、例えばエルビウム(又はエルビウムとイットリビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いてもよい。
また、本発明は、基板処理装置11が、国際公開第99/49504号パンフレットに記載されている所謂液浸型露光装置を備える場合にも適用することができる。液浸型露光装置とは、投影光学系の下面とパターンが露光される基板(ウエハ)表面との間を水や有機溶媒等の液体で満たし、該液体を介してパターンの露光を行なうものである。液浸型露光装置は、液体中での露光光の波長が空気中の1/n(nは液体の屈折率であり、通常1.2〜1.6程度)になることを利用して、解像力の向上と焦点深度の拡大を図っている。この液浸型露光装置に本発明を適用することにより、たとえば液体の比抵抗、全有機体炭素量(TOC:Total Organic Carbon)などの液質情報、撥液性コートの劣化状況、接液している光学部材の曇りによる照度の低下等の装置情報に基づいて、最適な時期にメンテナンス日を設定し、必要な部品の発注を予め行なうことができる。
さらに、基板処理装置11は、半導体素子の製造に用いられるデバイスパターンをウエハW上に転写する露光装置だけでなく、液晶表示素子などを含むディスプレイの製造に用いられるデバイスパターンをガラスプレート上に転写する露光装置、薄膜磁気ヘッドの製造に用いられるデバイスパターンをセラミック基板上に転写する露光装置、撮像素子(CCDなど)、マイクロマシン、及びDNAチップなどの製造に用いられる露光装置等を備えていても良い。
本開示は、2003年9月2日に提出された日本国特許出願第2003−310146号に含まれた主題に関連し、その開示の全てはここに参照事項として明白に組み込まれる。なお、本国際出願で指定した指定国又は選択した選択国の国内法令が許す限りにおいて、前述した全ての公報の開示を援用して本明細書の記載の一部とする。