JPWO2004103391A1 - 肝臓中の脂質代謝促進剤、肝臓中の脂質代謝促進健康食品及びその有効成分であるペプチド混合物の製造法 - Google Patents
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Abstract
本発明は肝臓での脂質代謝を促進し、肝臓での脂質代謝異常と関連する生活習慣病などを改善あるいは予防すべく、そのための有効な肝臓内脂質代謝促進剤或いは健康食品を提供することを目的とした。 そして、親水性ペプチドからなり、この親水性ペプチドの構成アミノ酸の30〜70重量%が酸性アミノ酸であるペプチド混合物を有効成分とする肝臓内の脂質代謝促進剤または健康食品を完成した。 また、蛋白質を、一種以上の蛋白質分解酵素により分解し、疎水性樹脂で処理することを特徴とするペプチド混合物の製造法である。
Description
本発明は、肝臓中の脂質代謝促進剤、肝臓中の脂質代謝促進健康食品及びその有効成分であるペプチド混合物を提供するものである。
肝臓はヒトの臓器の中で最大のものであり、体重の約50分の1に相当する。その生理機能の内容は極めて多岐に渡り、糖質、タンパク質代謝、脂質・エネルギー代謝の中心的役割を演じ、更に物質の貯蔵、解毒、造血、血液凝固など生体の生命維持に必要不可欠なものが多い。
肝臓細胞が担当する脂質代謝機能は体内の脂質代謝機能と深く連動しており、肝臓の脂質代謝機能低下、更に機能不全が原因の一つとなり、高脂血症、高血圧、動脈硬化、肥満、脂肪肝、糖尿病および高血圧などの疾患がもたらされる。この肝臓での脂質代謝機能不全を改善するためには、脂質代謝を促進し、細胞内に蓄積される脂質濃度を低下させることが重要であると考えられている。
近年、食品中に含有される成分の疾病予防および治療効果が注目されており、前記の循環器系の疾患に対しても、食品成分による予防および治療効果を得られるものの開発が期待されている。
いくつかの蛋白質やその加水分解物(ペプチド)を由来とする脂質代謝改善剤はすでに知られている。蛋白質の脂質代謝改善効果においては動物性蛋白質より植物性蛋白質、特に大豆蛋白が優れていることが知られている。これらたんぱく質の加水分解物(ペプチド)に関しては、以下のようにいろいろな蛋白由来の物が知られているし、その作用効果もさまざまである。
まず、大豆蛋白質の加水分解物以外の脂質改善剤として、例えば、特開昭52−83816号公報(新規ポリペプチド)、特開平04−149137号公報(ダイエツト剤)、特開平06−211690号公報(カゼイン由来の血中脂質抑制用摂食物)、特開平11−80006号公報(脂質吸収抑制剤)、特開2000−264845号公報(魚由来のコレステロール降下剤)、特開2000−228967号公報(脂質代謝加工食品)、特開2001−2577号公報(ローヤルゼリー由来の脂質代謝改善剤)、特開2001−57868号公報(畜産加工廃液由来の脂質代謝改善用素材)、特開2001−57869号公報(肥満改善及びダイエツト食用素材)、特開2001−58955号公報(生理活性ペプチド放性製剤)、特開平08−157389号公報(高トリグリセリド血症治療剤)、特開平09−157290号公報(コレステロール低減化ペプチド)、特開平09−255698号公報(血中トリグリセリド濃度上昇抑制ペプチド)、特開平07−188284号公報(血中トリグリセリド濃度上昇抑制ペプチド)などが知られている。
一方蛋白質を加水分解したペプチドにも脂質代謝を改善する効果に関してはいろいろと知られている。例えば、特開平5−87052号公報では、脂質代謝改善剤において肝臓中の脂肪含量および脂肪小滴量を低下させる効果があるとしているが、これは有効成分である低分子ペプチドがリパーゼ活性を抑えるため吸収される脂肪含量が低下し、血清中の脂肪含量が低下するために生じるためであり、肝臓内での脂質代謝活性自体を変化させる効果ではない。
また、蛋白加水分解した低分子ペプチドでは、例えば、特開平04−149137号公報(ダイエツト剤)が知られているが、これはジペプチド及びトリペプチドを主成分とするもので脂肪蓄積抑制作用、体重増加抑制作用に関して述べられているが肝臓の脂質代謝改善効果については述べられていない。
また生理活性用組成物として特開平10−203994号公報の中で大豆蛋白分解物由来の分子量500〜5000のペプチドに血液中の中性脂肪ならびにHDL−コレスレロールを増加させる効果のあることを述べているが、肝臓中の脂肪酸代謝を促進するペプチドについては知られていない。
また、蛋白加水分解した低分子ペプチドでは、例えば、特開平04−149137号公報(ダイエツト剤)が知られているが、これはジペプチド及びトリペプチドを主成分とするもので脂肪蓄積抑制作用、体重増加抑制作用に関して述べられているが肝臓の脂質代謝改善効果については述べられていない。
また生理活性用組成物として特開平10−203994号公報の中で大豆蛋白分解物由来の分子量500〜5000のペプチドに血液中の中性脂肪ならびにHDL−コレスレロールを増加させる効果のあることを述べているが、肝臓中の脂肪酸代謝を促進するペプチドについては知られていない。
大豆蛋白質は植物性蛋白質の中で栄養性が優れているだけでなく、近年では様々な生理活性が見出され、生理機能剤としても注目される食品素材である。大豆蛋白質に関しては肥満を抑制する効果があることは知られているが、その体脂肪率を下げるメカニズムに関しては肝臓での脂肪酸生合成酵素の活性が抑えるためであると知られている(入谷らJ.Nutr.,126,380,1996)、しかし、大豆蛋白質中のどの成分が有効成分であるかは知られていない。
本出願人は継続して大豆蛋白加水分解物(ペプチド混合物)の生理作用、特に脂質代謝に関する研究を行ってきた。例えば、特公平7−025796号公報に開示するように大豆蛋白加水分解物(オリゴペプチド混合物)が血中コレステロールの上昇を抑制すること、特開平1−269456号公報や特開平3−272694号公報に開示するようにコレステロールや中性脂肪の代謝に関与することを開示してきた。しかし、体内の脂質代謝のなかでも肝臓内の脂質代謝を促進し、肝臓内の脂質濃度を改善するペプチドに関しては明らかではなかった。また、大豆蛋白酵素分解物に関して肝臓内のトリグリセリド含量が低下することは特開平4−51872において引用データで述べられているにとどまっている。大豆蛋白質およびその酵素分解物中には肝臓の脂肪酸生合成酵素の活性を抑える成分が含まれていることは類推されるが、どのような成分が効果を発揮するか特定するには至っていなかった。
近年、加水分解したペプチドをさらに精製し機能成分を分画する試みがなされている。たとえば、特開平07−188284号公報ではイオン交換樹脂−限外ろ過、さらには逆相クロマトにより分画された疎水性アミノ酸含量の高い画分に血中TG上昇抑制作用示すことが知られている。特開2002−212097号公報において乳由来の塩基性ペプチド画分の脂質代謝改善剤が知られているが陽イオン交換体を用いて製造されており、またグルタミン酸+アスパラギン酸含量も30%以下と本発明とは異なるものである。
本発明のように苦味を感じず、酸性アミノ酸含量が高い肝臓中の脂質代謝促進剤は知られていない。
本発明のように苦味を感じず、酸性アミノ酸含量が高い肝臓中の脂質代謝促進剤は知られていない。
本発明は肝臓での脂質代謝を促進し、肝臓での脂質代謝異常と関連する生活習慣病などを改善あるいは予防すべく、そのための有効な肝臓内脂質代謝促進剤或いは健康食品を提供することを目的とした。
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究するなかで酸性アミノ酸(グルタミン酸やアスパラギン酸)が豊富でその割合の大きいペプチド混合物が肝臓内の脂質代謝を促進する知見を得て本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は親水性ペプチドからなり、この親水性ペプチドの構成アミノ酸の30〜70重量%が酸性アミノ酸であるペプチド混合物を有効成分とする肝臓内の脂質代謝促進剤である。親水性ペプチドの構成アミノ酸中のプロリンが全アミノ酸中5%以下が好ましい。より具体的には、蛋白の酵素分解物であって、平均分子量200〜10000、全アミノ酸組成中酸性アミノ酸が30〜70重量%(以下%)、塩基性アミノ酸が10%〜30%、分岐鎖アミノ酸が15.0%以下、芳香族アミノ酸が9.0%以下、プロリンが5.3%以下であるペプチド混合物を有効成分とする肝臓中の脂質代謝促進剤が好ましい。また、本発明は、蛋白質を、一種以上の蛋白質分解酵素により分解し、疎水性樹脂で処理することを特徴とするペプチド混合物の製造法である。蛋白質は大豆蛋白質が好ましい。疎水性樹脂はスチレンジビニルベンゼン系の樹脂が好ましい。
また、本発明は、親水性ペプチドからなり、この親水性ペプチドの構成アミノ酸の30〜70重量%が酸性アミノ酸であるペプチド混合物を有効成分とする肝臓内の脂質代謝促進健康食品である。親水性ペプチドの構成アミノ酸中のプロリンが全アミノ酸中5%以下が好ましい。より具体的には、蛋白の酵素分解物であって、平均分子量200〜10000、全アミノ酸組成中酸性アミノ酸が30〜70重量%(以下%)、塩基性アミノ酸が10%〜30%、分岐鎖アミノ酸が15.0%以下、芳香族アミノ酸が9.0%以下、プロリンが5.3%以下であるペプチド混合物を有効成分とする肝臓中の脂質代謝促進健康食品が好ましい。
即ち、本発明は親水性ペプチドからなり、この親水性ペプチドの構成アミノ酸の30〜70重量%が酸性アミノ酸であるペプチド混合物を有効成分とする肝臓内の脂質代謝促進剤である。親水性ペプチドの構成アミノ酸中のプロリンが全アミノ酸中5%以下が好ましい。より具体的には、蛋白の酵素分解物であって、平均分子量200〜10000、全アミノ酸組成中酸性アミノ酸が30〜70重量%(以下%)、塩基性アミノ酸が10%〜30%、分岐鎖アミノ酸が15.0%以下、芳香族アミノ酸が9.0%以下、プロリンが5.3%以下であるペプチド混合物を有効成分とする肝臓中の脂質代謝促進剤が好ましい。また、本発明は、蛋白質を、一種以上の蛋白質分解酵素により分解し、疎水性樹脂で処理することを特徴とするペプチド混合物の製造法である。蛋白質は大豆蛋白質が好ましい。疎水性樹脂はスチレンジビニルベンゼン系の樹脂が好ましい。
また、本発明は、親水性ペプチドからなり、この親水性ペプチドの構成アミノ酸の30〜70重量%が酸性アミノ酸であるペプチド混合物を有効成分とする肝臓内の脂質代謝促進健康食品である。親水性ペプチドの構成アミノ酸中のプロリンが全アミノ酸中5%以下が好ましい。より具体的には、蛋白の酵素分解物であって、平均分子量200〜10000、全アミノ酸組成中酸性アミノ酸が30〜70重量%(以下%)、塩基性アミノ酸が10%〜30%、分岐鎖アミノ酸が15.0%以下、芳香族アミノ酸が9.0%以下、プロリンが5.3%以下であるペプチド混合物を有効成分とする肝臓中の脂質代謝促進健康食品が好ましい。
本発明により肝臓の脂質代謝を促進するオリゴペプチド混合物が得られ、肝臓での脂肪酸の生合成を抑制することから、肝臓でのトリグリセリド濃度異常が原因され肥満、高トリグリセリド血症、脂肪肝、糖尿病または高血圧症に代表される生活習慣病、冠動脈疾患、脳動脈疾患、慢性腎炎、ネフローゼ、肝硬変、閉塞性黄疸等を予防・改善することが期待され、食品、健康食品、および医薬品への応用が可能になったものである。
まず、本発明の肝臓中の脂質代謝促進剤について説明する。この肝臓中の脂質代謝促進剤は、親水性ペプチドからなり、この親水性ペプチドの構成アミノ酸の30〜70重量%が酸性アミノ酸であるペプチド混合物を有効成分とするものである。ここで、重要なことはこの肝臓中の脂質代謝促進ペプチド混合物が水不溶画分を含まず親水性アミノ酸から成ることであり、かつ酸性アミノ酸の割合が多いことである。親水性アミノ酸としてはグリシニン(Gly)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、シスチン(Cys)、アスパラギン(酸)(Asp)、グルタミン(酸)(Glu)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)があげられるが、この親水性ペプチドの構成アミノ酸中で酸性アミノ酸の割合が30〜70重量%(以下単に%と記載する)、好ましくは35〜55%が適当である。尚、酸性アミノ酸としては、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸等が挙げられるが、グルタミンとグルタミン酸が好ましい。グルタミン酸あるいはグルタミンの割合が多いほど肝臓内の脂質代謝促進効果に優れる傾向にある。グルタミン酸あるいはグルタミンの割合が30%未満では公知の大豆ペプチド混合物より優れた肝臓内の脂質代謝促進効果を奏しない。
また、構成アミノ酸の中で特にプロリン含量が5%以下、好ましくは3%以下、特に1%以下であることが脂肪酸の合成抑制の点から望ましい。より具体的には、蛋白の酵素分解物であって、平均分子量200〜10000、全アミノ酸組成中酸性アミノ酸が30〜70重量%(以下%)、塩基性アミノ酸が10%〜30%、分岐鎖アミノ酸が10.5%以下、芳香族アミノ酸が8.0%以下、プロリンが5%%以下であるペプチド混合物を有効成分とする肝臓中の脂質代謝促進剤が適当である。このペプチド混合物の平均分子量が肝臓内の脂質代謝促進効果に寄与するかは定かでないが、消化管吸収速度は小さいほど早いので酵素分解の態様により通常200〜20000とすることが出来、酵素分解の方法によっては500〜3000とすることが出来る。遊離アミノ酸含量は肝臓内の脂質代謝促進に関与する効果は定かではないが、ペプチド混合物としては少ないほうが好ましく、通常35%以下、好ましくは10%以下が適当である。肝臓内の脂質代謝促進効果は定かでないが、本発明において、塩基性アミノ酸が10%〜30%、分岐鎖アミノ酸が15.0%以下、芳香族アミノ酸が9.0%以下であることが望ましい。本発明の肝臓内の脂質代謝促進剤や健康食品の風味やその安定性の点で、疎水性アミノ酸の含量は少なければ少ない程好ましく、分岐鎖アミノ酸、芳香族アミノ酸などは前記範囲が好ましい。
尚、本発明の肝臓内の脂質代謝促進は肝臓中の脂肪酸の生合成を抑制することである。すなわち肝臓中で、アセチル−CoAから脂肪酸を合成する一連の酵素であるAcetyl−CoA−carboxylase、Fatty acid synthase、ATPcitrate−lyase、Malic enzyme、Glucose−6−phosphate dehydrogenaseなどの酵素活性を抑制し、並びに
Acetyl−CoA−carboxylaseおよびFatty acid synthaseなどのmRNAの発現を抑制する脂質代謝促進であり、肝臓中に蓄積されるトリグリセリドおよびコレステロール含量を低下させる効果がある。
Acetyl−CoA−carboxylaseおよびFatty acid synthaseなどのmRNAの発現を抑制する脂質代謝促進であり、肝臓中に蓄積されるトリグリセリドおよびコレステロール含量を低下させる効果がある。
従って、本発明の肝臓内脂質代謝改善ペプチド混合物は脂肪酸の合成抑制を基礎とする疾患の予防・治療用の医薬品や健康食品として用いることができる。医薬品として用いる肝臓内の脂質代謝促進剤は、オリゴペプチド混合物として剤中に0.01%以上、好ましくは0.1%以上含有することが出来る。0.01%未満では、実質的な効果を認めるのが困難である。また、1日摂取又は投与量は、オリゴペプチド混合物として、0.1mg/kg/日以上、好ましくは1mg/kg/日以上、更に好ましくは10mg/kg/日以上が適当である。0.1mg/kg/日未満では効果が認められない場合がある。また、健康食品としての肝臓内の脂質代謝促進健康食品も同様のペプチド混合物の含有量と摂取量で同様の効果を奏する。この様にして本発明の肝臓内の脂質代謝促進剤及び肝臓内の脂質代謝促進健康食品は、肝臓での脂質代謝を顕著に促進することより、肝臓での脂質代謝異常、具体的にはトリグリセリドの濃度異常により引き起こされる、肥満、高トリグリセリド血症、脂肪肝、糖尿病または高血圧症の予防・改善を目的とする剤または食品として利用することが出来る。食品として利用する場合、経口栄養食、経管栄養食等の使用形態に応じ、溶液のままや濃縮液・凍結乾燥物・噴霧乾燥物の原材料として使用することができる。摂食物としては広く各種の食品が含まれ、例えば飲料、冷菓、タブレット、菓子等を挙げることができる。また、通常の食品の形態でないカプセルとか錠剤として健康食品として用いることも出来る。
次に、本発明の肝臓中の脂質代謝促進に有効なペプチド混合物の製造法について説明する。本発明の肝臓中の脂質代謝促進ペプチド混合物は大豆蛋白を酵素で分解することにより得ることが出来る。本発明に用いる大豆蛋白は安価に手に入る材料として、豆乳、濃縮大豆蛋白、あるいは分離大豆蛋白、脱脂大豆、大豆ホエー蛋白などを使用し得るが、その中で分離大豆蛋白が好ましい。酵素処理に供する大豆蛋白溶液の濃度は1重量%〜30重量%、好ましくは5〜15重量%、より好ましくは8〜12重量%が適当である。この濃度が低くても酵素分解に支障はないが、生産性が落ちて好ましくない。大豆蛋白溶液の濃度が高すぎると一旦分解された蛋白加水分解物どうしの重合が強くなるためか、十分分解するのに多量の酵素量を必要とし好ましくない。
酵素分解は大豆蛋白を水系下(大豆蛋白スラリーもしくは溶液)に酵素を用いて加水分解することが適当である。本発明に用いる蛋白分解酵素(プロテアーゼ)は、エキソプロテアーゼ又はエンドプロテアーゼを単独又は併用することができ、動物起源、植物起源あるいは微生物起源は問わない。具体的には、セリンプロテアーゼ(動物由来のトリプシン、キモトリプシン、微生物由来のズブチリシン、カルボキシペプチダーゼ等)、チオールプロテアーゼ(植物由来のパパイン、フィシン、ブロメライン等)、カルボキシプロテアーゼ(動物由来のペプシン等)を用いることができる。更に、具体的にはアスペルギルス・オリゼ起源の「プロチンFN」(大和化成(株)製)、ストレプトマイセス・グリセウス起源の「アクチナーゼ」(科研製薬(株)製)、バチルス・リケホルミス由来の「アルカラーゼ」(Novozymes Japan Ltd.製)、バチルス・ズブチルス由来の「プロチンA」(大和化成(株)製)等を例示できる。また、エンドプロテアーゼを含有する酵素としては、「プロテアーゼS」(天野製薬(株)製)や「プロチンAC−10」(大和化成(株)製)が、エキソプロテアーゼおよびエンドプロテアーゼを含有する蛋白分解酵素として「プロテアーゼM」(天野製薬(株)製)が例示できる。
本発明の加水分解の条件は用いる蛋白分解酵素の種類により多少異なるが、概してその蛋白分解酵素の作用pH域、作用温度域で、大豆蛋白を加水分解するに充分な量を用いることが好ましい。本発明の肝臓内脂質代謝促進ペプチド混合物を塩分制限食(例えば、経管栄養食等)に用いることを考慮すると、pHが5〜10、好ましくはpH6〜9であれば中和による塩の生成を軽減できて好ましい。
大豆蛋白酵素分解物から不溶性の分解物を除く方が後で行なう樹脂処理を容易に行なうことができ好ましい。大豆蛋白酵素分解溶液から不溶性の分解物を分離除去する手段としてはフィルタープレス、膜分離などろか手段によってもよいが、最も通常には遠心分離と膜分離を併用する方法が望ましい。酸性下で酵素分解した場合、例えば大豆蛋白の酵素分解液のpHが3〜8の範囲にある場合、この分離の際の分離性を高めるには不溶性物の凝集性を高める目的でpHを4〜6.2好ましくは4.5〜5.5とすることが適当である。これは、未分解物を含む不溶解物は大豆蛋白の等電点付近で凝集しやすくなる傾向にあることによる。或いはまた、分解液中にカルシウムやマグネシウムの塩化物、硫酸塩などの塩類や水酸化物といったアルカリ土類金属化合物又はポリアクリル酸Na、アルギン酸、キチンキトサンなどといった蛋白凝集剤を加えても分離性を高めることができる。
以上のように大豆蛋白酵素分解溶液から不溶性の分解物を分離除去した後、ポリスチレンビーズのような疎水性吸着材に疎水性成分を吸着させることにより、親水性成分を回収する。適当な疎水性吸着樹脂材としては、例えばオルガノ社製のアンバーライトXAD(登録商標)やバイエル社製のレバチットOC(登録商標)、三菱化成社製のダイヤイオン(登録商標)等が挙げられる。より具体的には、芳香族系としてスチレンジビニルベンゼン系の樹脂(例えば、HP−20、HP−21、SP−825、SP−206、SP−207、SP−800(いずれも登録商標、三菱化成(株)製)等)、アクリル系の樹脂(HP1MG、HP2MG(いずれも登録商標、三菱化成株製)等)、フェノール系の樹脂(S874、S861(いずれも登録商標、住友化学工業(株)製)等)が適当である。
樹脂で処理して疎水性成分を吸着除去する態様としては樹脂と大豆蛋白酵素分解溶液を接触させることが出来る。この接触方法は、バッチ式の処理或いは連続カラムによる処理でもかまわない。例えば、バッチ式で処理する場合には、使用する疎水性吸着材の量を大豆蛋白加水分解物乾燥物重量の0.5から100倍重量程度、より好ましくは2〜60倍重量程度である。吸着剤の量が少ないと疎水性アミノ酸を十分吸着できず多すぎると他のオリゴペプチト混合物の収率が下がる。5分〜2時間程度、1〜40℃の温度範囲内で攪拌した後、水不溶の高分子成分は通過できるが樹脂は通過出来ない程度のフィルターでろ過することが出来る。
又、連続カラムによる方法では、大豆蛋白質加水分解物の乾燥物重量1部に対して疎水性吸着材として2〜200重量部、より好ましくは25〜100重量程度となる量の大豆蛋白加水分解物液を通液し、疎水性吸着材との接触時間が5分以上取れる線速度とすることが出来る。この時の大豆蛋白加水分解物の濃度は2〜50%、より好ましくは10〜30%であることが好ましい。疎水性吸着材の再生は、0.5〜3Nの水酸化ナトリウム或いは10〜90%程度の有機溶剤を用いることが出来、有機溶剤として、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン等を、疎水性吸着材量の1〜20倍容量程度用いることが出来る。
以上のようにして得られた大豆蛋白ペプチド混合物液は、用途によりそのまま或いは濃縮して用いることも出来るが、通常、殺菌して粉霧乾燥、凍結乾燥等して乾燥粉末の状態で利用することができる。
上記した方法によって得られたペプチド混合物を加水分解しアミノ酸組成を分析するもとの大豆蛋白質加水分解物にくらべ、親水性アミノ酸の組成が高く、疎水性アミノ酸の組成が低くなる。親水アミノ酸の中では特に酸性アミノ酸であるグルタミン酸の含量が高く、次ぎにアスパラギン酸が高くなる傾向にあるが、塩基性アミノ酸およびその他の親水性アミノ酸含量はさほど増減しない。疎水性アミノ酸含量はいづれも低下するが中でも特にプロリン、低下が高く、ついでフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、チロシンが低下する。また、このようにして調製されたペプチドは風味が良好で、長期間保存しても褐変が少ない特徴がある。
以下、実施例により本発明の実施態様を説明する。
(実施例1)ペプチド混合物の製造法
分離大豆蛋白(不二製油(株)製、「ニューフジプロ−R」)3kgを水を添加して10%水溶液とし、蛋白分解酵素(大和化成(株)製、「プロチンAC−10」)120gを作用させ50℃で5時間加水分解(15%TCA可溶率85%)した後、生じた沈殿成分を高速遠心分離機で分離除去した。得られた上清液8kg/cm2圧の蒸気を吹き込んで140℃で7秒間殺菌後、さらにこの液を0.22ミクロン(キュノー(株)製)のフィルターでろ過しスプレードライで粉末乾燥させた。
(実施例1)ペプチド混合物の製造法
分離大豆蛋白(不二製油(株)製、「ニューフジプロ−R」)3kgを水を添加して10%水溶液とし、蛋白分解酵素(大和化成(株)製、「プロチンAC−10」)120gを作用させ50℃で5時間加水分解(15%TCA可溶率85%)した後、生じた沈殿成分を高速遠心分離機で分離除去した。得られた上清液8kg/cm2圧の蒸気を吹き込んで140℃で7秒間殺菌後、さらにこの液を0.22ミクロン(キュノー(株)製)のフィルターでろ過しスプレードライで粉末乾燥させた。
上記で得られたペプチド粉末を10%の水溶液に調製し、7℃の雰囲気下で約1時間、バッチ式で生合成吸着剤HP−20(三菱化成(株)製)で処理を行ない、1ミクロンのろ紙を通過させて樹脂の除き、処理液を凍結乾燥した。尚、ペプチド乾燥物重量の1、2,4、8,16,32倍重量にふらして樹脂で処理を行った。前記方法で得られたペプチド混合物の平均分子量は700(HPLCでのゲルろ過法)で、分画後のペプチドの平均分子量は700〜800で、樹脂の比率が高くなるほどやや分子量が大きくなる傾向にあった。
実施例1で得られた凍結乾燥品について、6N塩酸で110℃、24時間加水分解した後、アミノ酸分析装置(L−8500型、日立製作所製)でそのアミノ酸組成を分析した。その結果を表1に示す。
(実施例2)培養細胞での試験 その1/脂肪酸合成系酵素のmRNA量の測定
コラゲナーゼ法で得たラットの肝細胞をWE培地(20mM glucose,10−7M Insulin)で5時間platingした後、サンプルを添加した。朝と夕方に培地を交換し、24時間後にtotal RNAを抽出してmRNA量を測定した。WE培地はアミノ酸として2.04g/L,スタート、×1、×4、×8は0.2g/L。
コラゲナーゼ法で得たラットの肝細胞をWE培地(20mM glucose,10−7M Insulin)で5時間platingした後、サンプルを添加した。朝と夕方に培地を交換し、24時間後にtotal RNAを抽出してmRNA量を測定した。WE培地はアミノ酸として2.04g/L,スタート、×1、×4、×8は0.2g/L。
(実施例3)培養細胞での試験 その2
コラゲナーゼ法で得たラットの肝細胞をWE培地(20mM glucose,10−7M Insulin)で5時間platingした後、サンプルを添加した。朝と夕方に培地を交換し、48時間調整後にharvestした。肝細胞をホモジネイトした後、105,000×g上清後の酵素活性を測定した。WE培地はアミノ酸として2.04g/L,スタート、×1、×4、×8は0.2g/L。
コラゲナーゼ法で得たラットの肝細胞をWE培地(20mM glucose,10−7M Insulin)で5時間platingした後、サンプルを添加した。朝と夕方に培地を交換し、48時間調整後にharvestした。肝細胞をホモジネイトした後、105,000×g上清後の酵素活性を測定した。WE培地はアミノ酸として2.04g/L,スタート、×1、×4、×8は0.2g/L。
(実施例4)動物での試験(肝臓の脂質濃度の試験)
ラットは、Sprague−Dawley(SD)系雄ラット(4週令、体重70〜80g)を九動(株)(熊本)から購入した。6〜10日の予備飼育の後、カゼイン群、大豆蛋白群、大豆蛋白酵素分解(スタート原料)および大豆蛋白酵素分解物の樹脂分画品(上記×32)の4群に分け下記に示すような飼料を4週間摂食させた。飼育室の温度は22〜24℃に維持し、7:00〜19:00までを明期とした。なお、飼料および脱イオン水は自由に与えた。2週間摂食終了後、ラットは断頭屠殺し、肝臓および脂肪組織を摂取した。尚、脂肪組織は腎臓周辺および副睾丸周辺脂肪を摂取した。ラットは初体重130〜140gのSprague−Dawley(SD)系雄ラットにAIN76に準じて調製した飼料を2週間自由に摂取させた。尚、大豆蛋白酵素分解物ではラットの摂食性に問題ないが、その分画品(上記×32)を配合した飼料では強い摂食抑制を示したことから、蛋白量の50%をカゼインに代替して試験を行なった。試料組成は、タンパク質量は窒素換算で、カゼイン20%、カゼイン10%−大豆蛋白(「フジプロ−R」不二製油(株)製)9.75%、カゼイン10%+大豆蛋白分解物スタート9.64%及びカゼイン10%−大豆蛋白酵素分解物の樹脂分画品(上記×32)12.26%を添加した。その他、β−コーンスターチ15%、DL−メチオニン0.3%、セルロース5%、コーン油5%、ミネラル混合3.5%、ビタミン混合1%、重酒石酸コリン0.2%を添加し、シュクロースを添加して100%になるように調製した。
ラットは、Sprague−Dawley(SD)系雄ラット(4週令、体重70〜80g)を九動(株)(熊本)から購入した。6〜10日の予備飼育の後、カゼイン群、大豆蛋白群、大豆蛋白酵素分解(スタート原料)および大豆蛋白酵素分解物の樹脂分画品(上記×32)の4群に分け下記に示すような飼料を4週間摂食させた。飼育室の温度は22〜24℃に維持し、7:00〜19:00までを明期とした。なお、飼料および脱イオン水は自由に与えた。2週間摂食終了後、ラットは断頭屠殺し、肝臓および脂肪組織を摂取した。尚、脂肪組織は腎臓周辺および副睾丸周辺脂肪を摂取した。ラットは初体重130〜140gのSprague−Dawley(SD)系雄ラットにAIN76に準じて調製した飼料を2週間自由に摂取させた。尚、大豆蛋白酵素分解物ではラットの摂食性に問題ないが、その分画品(上記×32)を配合した飼料では強い摂食抑制を示したことから、蛋白量の50%をカゼインに代替して試験を行なった。試料組成は、タンパク質量は窒素換算で、カゼイン20%、カゼイン10%−大豆蛋白(「フジプロ−R」不二製油(株)製)9.75%、カゼイン10%+大豆蛋白分解物スタート9.64%及びカゼイン10%−大豆蛋白酵素分解物の樹脂分画品(上記×32)12.26%を添加した。その他、β−コーンスターチ15%、DL−メチオニン0.3%、セルロース5%、コーン油5%、ミネラル混合3.5%、ビタミン混合1%、重酒石酸コリン0.2%を添加し、シュクロースを添加して100%になるように調製した。
下記表5に示す組成の脂質代謝改善飲料を製造した。製造した飲料の風味は良好で、常温1年間保存によっても風味が劣化することはなく、沈殿等の問題もなかった。
Claims (9)
- 親水性ペプチドからなり、この親水性ペプチドの構成アミノ酸の30〜70重量%が酸性アミノ酸であるペプチド混合物を有効成分とする肝臓内の脂質代謝促進剤。
- 親水性ペプチドの構成アミノ酸中のプロリンが全アミノ酸中5%以下である請求項1記載の肝臓内の脂質代謝促進剤。
- 蛋白の酵素分解物であって、平均分子量200〜10000、全アミノ酸組成中酸性アミノ酸が30〜70重量%(以下%)、塩基性アミノ酸が10%〜30%、分岐鎖アミノ酸が15.0%以下、芳香族アミノ酸が9.0%以下、プロリンが5.3%以下であるペプチド混合物を有効成分とする請求項1又は2の肝臓中の脂質代謝促進剤。
- 蛋白質を、一種以上の蛋白質分解酵素により分解し、疎水性樹脂で処理することを特徴とするペプチド混合物の製造法。
- 蛋白質が大豆蛋白質である請求項4記載の製造方法。
- 疎水性樹脂がスチレンジビニルベンゼン系の樹脂である請求項4または5の製造法。
- 親水性ペプチドからなり、この親水性ペプチドの構成アミノ酸の30〜70重量%が酸性アミノ酸であるペプチド混合物を有効成分とする肝臓内の脂質代謝促進健康食品。
- 親水性ペプチドの構成アミノ酸中のプロリンが全アミノ酸中5%以下である請求項1記載の肝臓内の脂質代謝促進健康食品。
- 蛋白の酵素分解物であって、平均分子量200〜10000、全アミノ酸組成中酸性アミノ酸が30〜70重量%(以下%)、塩基性アミノ酸が10%〜30%、分岐鎖アミノ酸が15.0%以下、芳香族アミノ酸が9.0%以下、プロリンが5.3%以下であるペプチド混合物を有効成分とする請求項7又は8の肝臓中の脂質代謝促進健康食品。
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