JPWO2004090148A1 - 酵素を用いた高品質アクリルアミド系ポリマーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
高分子量、高溶解性且つ無色のアクリルアミド系ポリマーを得ることを目的とする。オキサゾール濃度が5mg/Kg以下、且つ青酸濃度が1mg/Kg以下であるアクリロニトリルを、酵素法により水和してアクリルアミドとし、該アクリルアミドを含むモノマーを重合するアクリルアミド系ポリマーの製造方法。
Description
本発明は、酵素法を用いた、凝集剤、抄紙用粘剤等に好適な高品質アクリルアミド系ポリマーの製造方法に関する。
アクリルアミド系ポリマーは、凝集剤、抄紙用増粘剤等の用途に利用されるが、いずれの用途においても、高分子量、高溶解性、及び色調が無色に近いアクリルアミド系ポリマーが所望されている。
例えば、凝集剤としてアクリルアミド系ポリマーを使用する場合、アクリルアミド系ポリマーの分子量が低いと凝集性に問題が生じ、また溶解性が悪いアクリルアミド系ポリマーを使用すると処理時間の遅延が問題となる。また、抄紙用増粘剤として使用する場合には、溶解性が悪いアクリルアミド系ポリマーを使用すると抄紙上にフィッシュアイを生じる等の不具合が生じる。また、使用用途に限らず色調が無色に近いアクリルアミド系ポリマーが求められている。
かかる状況下、アクリルアミド系ポリマーの溶解性の改善に関しては、アクリロニトリル中の不純物を除去した後、これからアクリルアミドを製造し、それを原料としてアクリルアミド系ポリマーを製造することが検討されている。また、アクリルアミドの製造方法に関して、酵素法を採用することが好適であることも知られている。
例えば、特開平10−316714号公報(特許文献1)には、酵素法を利用して得られたアクリルアミドを原料とすると高品質のアクリルアミド系ポリマーが製造できることが記載されている。また、特開平11−123098号公報(特許文献2)には、酵素法によるアクリルアミドの製造に際し、青酸濃度の低いアクリロニトリルを原料とすることによって酵素の活性低下を抑制できることが開示されている。
また、特開平9−227478号公報(特許文献3)には、オキサゾール濃度が1ppm以下のアクリロニトリルから銅触媒でアクリルアミドを製造すること、アクリルアミドを重合してアクリルアミド系ポリマーとすることが開示されている。同公報段落番号〔0009〕〜〔0011〕にかけて、青酸等の不純物が少ないアクリロニトリルを使用することが好ましいことが記載されている。
これら文献においては、アクリルアミドの製造法における諸条件が検討されているが、アクリルアミド系ポリマーにおける色調の観点からの検討はなされていない。アクリロニトリル中に含まれる多種類の不純物(アセトン、メタクリロニトリル、アセトアルデヒド、アセトニトリル、ベンゼン、プロピオニトリル、アクロレイン等)がアクリルアミド系ポリマーの色調にいかなる影響を及ぼすかは全く不明であった。
そこで、本発明は、水溶液としたときに無色に近い色調を、また、粉体のときに白色の色調を示すアクリルアミド系ポリマーを提供することを目的とする。
特開平10−316714号公報 特開平11−123098号公報 特開平9−227478号公報
例えば、凝集剤としてアクリルアミド系ポリマーを使用する場合、アクリルアミド系ポリマーの分子量が低いと凝集性に問題が生じ、また溶解性が悪いアクリルアミド系ポリマーを使用すると処理時間の遅延が問題となる。また、抄紙用増粘剤として使用する場合には、溶解性が悪いアクリルアミド系ポリマーを使用すると抄紙上にフィッシュアイを生じる等の不具合が生じる。また、使用用途に限らず色調が無色に近いアクリルアミド系ポリマーが求められている。
かかる状況下、アクリルアミド系ポリマーの溶解性の改善に関しては、アクリロニトリル中の不純物を除去した後、これからアクリルアミドを製造し、それを原料としてアクリルアミド系ポリマーを製造することが検討されている。また、アクリルアミドの製造方法に関して、酵素法を採用することが好適であることも知られている。
例えば、特開平10−316714号公報(特許文献1)には、酵素法を利用して得られたアクリルアミドを原料とすると高品質のアクリルアミド系ポリマーが製造できることが記載されている。また、特開平11−123098号公報(特許文献2)には、酵素法によるアクリルアミドの製造に際し、青酸濃度の低いアクリロニトリルを原料とすることによって酵素の活性低下を抑制できることが開示されている。
また、特開平9−227478号公報(特許文献3)には、オキサゾール濃度が1ppm以下のアクリロニトリルから銅触媒でアクリルアミドを製造すること、アクリルアミドを重合してアクリルアミド系ポリマーとすることが開示されている。同公報段落番号〔0009〕〜〔0011〕にかけて、青酸等の不純物が少ないアクリロニトリルを使用することが好ましいことが記載されている。
これら文献においては、アクリルアミドの製造法における諸条件が検討されているが、アクリルアミド系ポリマーにおける色調の観点からの検討はなされていない。アクリロニトリル中に含まれる多種類の不純物(アセトン、メタクリロニトリル、アセトアルデヒド、アセトニトリル、ベンゼン、プロピオニトリル、アクロレイン等)がアクリルアミド系ポリマーの色調にいかなる影響を及ぼすかは全く不明であった。
そこで、本発明は、水溶液としたときに無色に近い色調を、また、粉体のときに白色の色調を示すアクリルアミド系ポリマーを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、アクリロニトリルをアクリルアミドに変換して、該アクリルアミドからアクリルアミド系ポリマーを製造する際に、アクリロニトリル中に不純物として含まれるオキサゾールとともに、これまで不純物として認識されていなかった青酸が、アクリルアミド系ポリマーの物性、特にアクリルアミド系ポリマーの色調に多大な影響を与えていることを突き止め、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)オキサゾール濃度が5mg/kg以下、且つ青酸濃度が1mg/kg以下であるアクリロニトリルを、酵素法により水和してアクリルアミドとし、該アクリルアミドを含むモノマーを重合するアクリルアミド系ポリマーの製造方法。
(2)酵素法でアクリロニトリルを水和する反応工程において、生成するアクリルアミドの反応溶液中の濃度が30質量%以上になるまで反応を行う前記(1)記載の製造方法。
(3)酵素法を、微生物菌体を触媒として用いて行う前記(1)又は(2)記載の製造方法。
(4)オキサゾール濃度が5mg/kg以下、且つ青酸濃度が1mg/kg以下であるアクリロニトリルを、酵素法により水和してアクリルアミドとし、該アクリルアミドを含むモノマーを重合して得られるアクリルアミド系ポリマー。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2003−106894号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
発明を実施するための形態
本発明において、アクリロニトリルとしては、オキサゾール濃度が5mg/kg以下かつ青酸濃度が1mg/kg以下であるアクリロニトリルが用いられる。
「オキサゾールの濃度が5mg/kg以下のアクリロニトリル」とは、1Kgのアクリロニトリル中に含まれるオキサゾールの濃度が5mg以下のアクリロニトリルのことを意味する。
一般に市販されているアクリロニトリル中には、1mg/kgから100mg/kgのオキサゾールが含まれている。よって、アクリロニトリル中のオキサゾール濃度が5mg/kgよりも多い場合には、オキサゾールを除去または低減する。アクリロニトリル中のオキサゾールの除去又は低減は、例えば、イオン交換樹脂処理や精製蒸留により実施することができる。特に、強酸性のイオン交換樹脂にアクリロニトリルを接触させる方法が簡便でありかつ経済的にも好ましい。
アクリロニトリル中のオキサゾールの濃度は、キャピラリーガスクロマトグラフ(例えばDV225(アリジェントテクノロジー社製)カラム)等により測定できる。
「青酸の濃度が1mg/kg以下のアクリロニトリル」とは、1kgのアクリロニトリル中に含まれる青酸の濃度が1mg以下のアクリロニトリルのことである。一般に市販されているアクリロニトリル中には、0.1mg/kgから5mg/kgの青酸が含まれているので、アクリロニトリル中の青酸濃度が1mg/kgよりも多い場合には、青酸を除去または低減する。
アクリロニトリル中の青酸を除去または低減する方法としては、例えば、陰イオン交換樹脂を用いる方法、アルカリ水溶液で青酸を抽出する方法(特開2001−288256号)及びアルカリを添加することでアクリロニトリルに青酸を付加させる方法(特開平11−123098号)などが挙げられる。
アクリロニトリル中の青酸の濃度は、NPD検出器(例えばアリジェントテクノロジー社製)を備えたキャピラリーガスクロマトグラフ〔例えばDV225(アリジェントテクノロジー社製)カラム〕による方法や、アリカリ水溶液に抽出した後、硝酸銀水溶液で滴定する方法(ASTM E1178−87)等により測定できる。本発明において、「アクリロニトリル中の青酸の濃度」とは、ASTM(E1178−87)で測定された値を意味する。
次に、上記のごとく調製されたオキサゾール濃度が5mg/kg以下かつ青酸濃度が1mg/kg以下であるアクリロニトリルを酵素法により水和(加水分解)してアクリルアミドとする。ここで、「アクリロニトリルを酵素法により水和(加水分解)してアクリルアミドを製造する」とは、アクリロニトリルを水和(加水分解)してアクリルアミドに変換する能力を有する酵素の触媒作用によりアクリロニトリルからアクリルアミドを製造することをいう。
上記水和反応で使用される酵素としては、上記変換能を有する酵素であれば良い。好ましくはニトリルヒドラターゼである。ニトリルヒドラターゼとは、ニトリル化合物を対応するアミド化合物に変換する酵素であり、例えば、バチルス(Bacillus)属、バクテリジューム(Bacteridium)属、マイクロコッカス(Micrococcus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ノカルディア(Nocardia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、ロドコッカス ロドクロス(Rhodococcus rhodochrous)種、フザリウム(Fusarium)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属等に属する微生物由来のものが知られている。
また、前記の微生物由来のニトリルヒドラターゼ遺伝子を取得し、常法により、該遺伝子をそのまま又は人為的に改良して任意の宿主に該遺伝子を導入した形質転換体を使用することもできる(Molecular Cloning 2nd Edition.Cold Spring Habor Laboratory Press.1989)。
そのような形質転換体として、例えば、アクロモバクター(Achromobacter)属細菌のニトリルヒドラターゼで形質転換した大腸菌MT10770(FERM P−14756)(特開平8−266277号)、シュードノカルディア(Pseudonocardia)属細菌のニトリルヒドラターゼで形質転換した大腸菌MT10822(FERM BP−5785)(特開平9−275978号)又はロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)種のニトリルヒドラターゼ(特開平4−211379号)で形質転換した微生物を例示することができる。
ニトリルヒドラターゼの使用形態としては、上記ニトリルヒドラターゼ産生微生物等を定法に従い培養して得られる培養液、培養液から分離した休止菌体又は固定化菌体、あるいは、休止菌体等から抽出したニトリルヒドラターゼの粗・精製酵素、又は担体(例えば、ポリアクリルアミドゲル、アルギン酸塩、カラギーナン等)に固定化した粗・精製酵素等を用いることができる。
酵素法によるアクリロニトリルのアクリルアミドへの水和反応の条件は常温、常法により行うことができる。酵素法の一例として、例えば、以下のようにして行うことができる。
炭素源(グルコース等の糖類)、窒素源(例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機窒素源、酵母エキス、ペプトン、肉エキスなどの有機窒素)及び必要に応じて無機塩類、金属塩、ビタミンなどを添加した培地中で、20〜40℃、pH5〜9でニトリルヒドラターゼ産生微生物を培養する。培養は、適宜、振盪培養や回転培養としてもよい。
培養終了後、菌体をリン酸緩衝液等で洗浄し、菌体懸濁液を調製する。固定化菌体を調製する場合には、例えば、その菌体懸濁液にアクリルアミド等のモノマーを添加し、これを重合させることにより固定化菌体を得ることができる。
次いで、反応容器に水及び上記のような固定化菌体を添加し、これをpH5〜9.5、5〜50℃に調整し、そこに基質となるアクリロニトリルを添加する。アクリルニトリルは、反応溶液中のアクリルニトリル濃度が0.1〜10質量%の範囲となるように連続的に添加することが好ましい。また、酵素反応の進行の進み具合により適宜酵素を追加してもよい。この酵素反応は反応溶液中にアクリロニトリルが検出されなくなるまで継続するが、好ましくは、反応系内に蓄積するアクリルアミドの反応溶液中での濃度が30質量%以上、特に好ましくは40〜60質量%となるまで行う。目的のアクリルアミド濃度に達した後、アクリロニトリルの添加を止め、反応液中のアクリロニトリルが検出されなくなるまで反応を継続する。
このように、酵素法でアクリルアミドを製造する際、反応溶液中により高濃度にアクリルアミドを蓄積させた方がより経済的であり、また高品質のアクリルアミド系ポリマーを製造できる。
次に上記方法に準じて製造されたアクリルアミドを重合反応に供する。アクリルアミドは水和反応後のアクリルアミド水溶液をそのまま用いてもよいが、必要であれば蒸発濃縮操作などの濃縮操作や活性炭処理やイオン交換処理、ろ過処理などの精製操作を行ってから用いてもよい。
以下にアクリルアミド系ポリマーの製造例を示す。
本発明において、「アクリルアミド系ポリマー」とは、アクリルアミドのホモポリマー、あるいはアクリルアミドとこれと共重合可能な1種以上の不飽和単量体との共重合体をいう。上記共重合可能な不飽和単量体としては、メタクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)、N−メチロールアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド又はその第四級アンモニウム塩、N,N−ジメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体:(メタ)アクリル酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸等の酸、及びそれらの水溶性塩:エチルアクリレート、メチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレート、等の(メタ)アクリル酸の低級アクリルエステル誘導体:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、又はその第四級アンモニウム塩、等の(メタ)アクリル酸のアルキル(メチル又はエチル)アミノアルキル(エチル又はプロピル)エステル又はそれらの第四級アンモニウム誘導体:2−ビニルイミダゾリン及び2−ビニルピリミジン又はそれらの第四級アンモニウム誘導体:N−ビニルアセトアミド、酢酸ビニル、ビニルピロリドン等の他、得られる重合体の水溶性を損なわない限り、アクリロニトリル、スチレン等の難水溶性ないし疎水性単量体を使用することができる。
本発明の製造方法において、水溶媒中で重合する際のアクリルアミドの濃度、又はアクリルアミドとこれと共重合可能な単量体との合計の濃度は、通常10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%の範囲である。10質量%以上とすることにより高分子量のアクリルアミド系ポリマーが得られ、90質量%以下とすることにより、重合中の架橋反応を防止し、ポリマーの溶解性低下や不溶化を抑えることができる。
本発明における重合方法は水溶媒中で重合する方法であれば特に制限されることなく、重合温度は0〜120℃の範囲で、好ましくは10〜90℃の範囲で、断熱重合方式あるいはベルト上で除熱しながらシート重合する方式などを必要に応じて採用できる。
重合開始剤としては従来知られている一般的なものが使用可能であり、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、また、ベンゾインエチルエール等の光分解型の重合開始剤、更には、上記過酸化物とレドックス反応により開始剤を形成する亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ハイドロスルファイトナトリウム、トリエタノールアミン、硫酸第一鉄等の還元剤も使用することができる。これらの重合開始剤は1種類あるいは2種類以上を常法に従って使用することができる。
得られた重合体はミートチョッパーなどの解砕機を用いて解砕した後、乾燥し、更に、常法に従って粉砕器で粉砕して粉体状のポリアクリルアミド系乾燥品としてもよい。乾燥装置は特に制限はなく、棚段式乾燥機、ベルト乾燥機、回転乾燥機、流動乾燥機、赤外線乾燥機、高周波乾燥機などを適宜使用できる。
上記方法により得られたアクリルアミド系ポリマーは、1質量%濃度で4質量%食塩水中に溶解したものを、B型粘度計を用いて、No.3ロータを使用し、回転数6rpmの条件下、25℃で粘度測定した場合、2,000mPa・s以上、好ましくは、3,000mPa・s以上の粘度を有する(粘度2,000mPa・sは、アクリルアミド系ポリマーの分子量約1000万程度に相当する。)。本発明の方法により得られるアクリルアミド系ポリマー粉体は白色であり、その水溶液に関しては、ポリマー粉体をイオン交換水に0.1質量%濃度で溶解し、80メッシュの金網で濾過して、金網上に残るゲル状の不溶解分の量を目視で観察した際、不溶解分がほとんど観察されない。よって、本発明の方法により得られるアクリルアミド系ポリマーは凝集剤、抄紙用粘剤等に好適に使用することができる。
以上のようにして得られた本発明に係るアクリルアミド系ポリマーは、水溶液のときに無色に近い色調を示し、また、粉体のときに白色の色調を示す。ここで、アクリルアミド系ポリマー粉体の色調は、白色の紙の上に、約1gづつの粉体を載せ、色を比較することで評価することができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は実施例により限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例における%表示は質量%である。
(1)オキサゾール濃度が5mg/kg以下、且つ青酸濃度が1mg/kg以下であるアクリロニトリルを、酵素法により水和してアクリルアミドとし、該アクリルアミドを含むモノマーを重合するアクリルアミド系ポリマーの製造方法。
(2)酵素法でアクリロニトリルを水和する反応工程において、生成するアクリルアミドの反応溶液中の濃度が30質量%以上になるまで反応を行う前記(1)記載の製造方法。
(3)酵素法を、微生物菌体を触媒として用いて行う前記(1)又は(2)記載の製造方法。
(4)オキサゾール濃度が5mg/kg以下、且つ青酸濃度が1mg/kg以下であるアクリロニトリルを、酵素法により水和してアクリルアミドとし、該アクリルアミドを含むモノマーを重合して得られるアクリルアミド系ポリマー。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2003−106894号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
発明を実施するための形態
本発明において、アクリロニトリルとしては、オキサゾール濃度が5mg/kg以下かつ青酸濃度が1mg/kg以下であるアクリロニトリルが用いられる。
「オキサゾールの濃度が5mg/kg以下のアクリロニトリル」とは、1Kgのアクリロニトリル中に含まれるオキサゾールの濃度が5mg以下のアクリロニトリルのことを意味する。
一般に市販されているアクリロニトリル中には、1mg/kgから100mg/kgのオキサゾールが含まれている。よって、アクリロニトリル中のオキサゾール濃度が5mg/kgよりも多い場合には、オキサゾールを除去または低減する。アクリロニトリル中のオキサゾールの除去又は低減は、例えば、イオン交換樹脂処理や精製蒸留により実施することができる。特に、強酸性のイオン交換樹脂にアクリロニトリルを接触させる方法が簡便でありかつ経済的にも好ましい。
アクリロニトリル中のオキサゾールの濃度は、キャピラリーガスクロマトグラフ(例えばDV225(アリジェントテクノロジー社製)カラム)等により測定できる。
「青酸の濃度が1mg/kg以下のアクリロニトリル」とは、1kgのアクリロニトリル中に含まれる青酸の濃度が1mg以下のアクリロニトリルのことである。一般に市販されているアクリロニトリル中には、0.1mg/kgから5mg/kgの青酸が含まれているので、アクリロニトリル中の青酸濃度が1mg/kgよりも多い場合には、青酸を除去または低減する。
アクリロニトリル中の青酸を除去または低減する方法としては、例えば、陰イオン交換樹脂を用いる方法、アルカリ水溶液で青酸を抽出する方法(特開2001−288256号)及びアルカリを添加することでアクリロニトリルに青酸を付加させる方法(特開平11−123098号)などが挙げられる。
アクリロニトリル中の青酸の濃度は、NPD検出器(例えばアリジェントテクノロジー社製)を備えたキャピラリーガスクロマトグラフ〔例えばDV225(アリジェントテクノロジー社製)カラム〕による方法や、アリカリ水溶液に抽出した後、硝酸銀水溶液で滴定する方法(ASTM E1178−87)等により測定できる。本発明において、「アクリロニトリル中の青酸の濃度」とは、ASTM(E1178−87)で測定された値を意味する。
次に、上記のごとく調製されたオキサゾール濃度が5mg/kg以下かつ青酸濃度が1mg/kg以下であるアクリロニトリルを酵素法により水和(加水分解)してアクリルアミドとする。ここで、「アクリロニトリルを酵素法により水和(加水分解)してアクリルアミドを製造する」とは、アクリロニトリルを水和(加水分解)してアクリルアミドに変換する能力を有する酵素の触媒作用によりアクリロニトリルからアクリルアミドを製造することをいう。
上記水和反応で使用される酵素としては、上記変換能を有する酵素であれば良い。好ましくはニトリルヒドラターゼである。ニトリルヒドラターゼとは、ニトリル化合物を対応するアミド化合物に変換する酵素であり、例えば、バチルス(Bacillus)属、バクテリジューム(Bacteridium)属、マイクロコッカス(Micrococcus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ノカルディア(Nocardia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、ロドコッカス ロドクロス(Rhodococcus rhodochrous)種、フザリウム(Fusarium)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属等に属する微生物由来のものが知られている。
また、前記の微生物由来のニトリルヒドラターゼ遺伝子を取得し、常法により、該遺伝子をそのまま又は人為的に改良して任意の宿主に該遺伝子を導入した形質転換体を使用することもできる(Molecular Cloning 2nd Edition.Cold Spring Habor Laboratory Press.1989)。
そのような形質転換体として、例えば、アクロモバクター(Achromobacter)属細菌のニトリルヒドラターゼで形質転換した大腸菌MT10770(FERM P−14756)(特開平8−266277号)、シュードノカルディア(Pseudonocardia)属細菌のニトリルヒドラターゼで形質転換した大腸菌MT10822(FERM BP−5785)(特開平9−275978号)又はロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)種のニトリルヒドラターゼ(特開平4−211379号)で形質転換した微生物を例示することができる。
ニトリルヒドラターゼの使用形態としては、上記ニトリルヒドラターゼ産生微生物等を定法に従い培養して得られる培養液、培養液から分離した休止菌体又は固定化菌体、あるいは、休止菌体等から抽出したニトリルヒドラターゼの粗・精製酵素、又は担体(例えば、ポリアクリルアミドゲル、アルギン酸塩、カラギーナン等)に固定化した粗・精製酵素等を用いることができる。
酵素法によるアクリロニトリルのアクリルアミドへの水和反応の条件は常温、常法により行うことができる。酵素法の一例として、例えば、以下のようにして行うことができる。
炭素源(グルコース等の糖類)、窒素源(例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機窒素源、酵母エキス、ペプトン、肉エキスなどの有機窒素)及び必要に応じて無機塩類、金属塩、ビタミンなどを添加した培地中で、20〜40℃、pH5〜9でニトリルヒドラターゼ産生微生物を培養する。培養は、適宜、振盪培養や回転培養としてもよい。
培養終了後、菌体をリン酸緩衝液等で洗浄し、菌体懸濁液を調製する。固定化菌体を調製する場合には、例えば、その菌体懸濁液にアクリルアミド等のモノマーを添加し、これを重合させることにより固定化菌体を得ることができる。
次いで、反応容器に水及び上記のような固定化菌体を添加し、これをpH5〜9.5、5〜50℃に調整し、そこに基質となるアクリロニトリルを添加する。アクリルニトリルは、反応溶液中のアクリルニトリル濃度が0.1〜10質量%の範囲となるように連続的に添加することが好ましい。また、酵素反応の進行の進み具合により適宜酵素を追加してもよい。この酵素反応は反応溶液中にアクリロニトリルが検出されなくなるまで継続するが、好ましくは、反応系内に蓄積するアクリルアミドの反応溶液中での濃度が30質量%以上、特に好ましくは40〜60質量%となるまで行う。目的のアクリルアミド濃度に達した後、アクリロニトリルの添加を止め、反応液中のアクリロニトリルが検出されなくなるまで反応を継続する。
このように、酵素法でアクリルアミドを製造する際、反応溶液中により高濃度にアクリルアミドを蓄積させた方がより経済的であり、また高品質のアクリルアミド系ポリマーを製造できる。
次に上記方法に準じて製造されたアクリルアミドを重合反応に供する。アクリルアミドは水和反応後のアクリルアミド水溶液をそのまま用いてもよいが、必要であれば蒸発濃縮操作などの濃縮操作や活性炭処理やイオン交換処理、ろ過処理などの精製操作を行ってから用いてもよい。
以下にアクリルアミド系ポリマーの製造例を示す。
本発明において、「アクリルアミド系ポリマー」とは、アクリルアミドのホモポリマー、あるいはアクリルアミドとこれと共重合可能な1種以上の不飽和単量体との共重合体をいう。上記共重合可能な不飽和単量体としては、メタクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)、N−メチロールアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド又はその第四級アンモニウム塩、N,N−ジメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体:(メタ)アクリル酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸等の酸、及びそれらの水溶性塩:エチルアクリレート、メチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレート、等の(メタ)アクリル酸の低級アクリルエステル誘導体:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、又はその第四級アンモニウム塩、等の(メタ)アクリル酸のアルキル(メチル又はエチル)アミノアルキル(エチル又はプロピル)エステル又はそれらの第四級アンモニウム誘導体:2−ビニルイミダゾリン及び2−ビニルピリミジン又はそれらの第四級アンモニウム誘導体:N−ビニルアセトアミド、酢酸ビニル、ビニルピロリドン等の他、得られる重合体の水溶性を損なわない限り、アクリロニトリル、スチレン等の難水溶性ないし疎水性単量体を使用することができる。
本発明の製造方法において、水溶媒中で重合する際のアクリルアミドの濃度、又はアクリルアミドとこれと共重合可能な単量体との合計の濃度は、通常10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%の範囲である。10質量%以上とすることにより高分子量のアクリルアミド系ポリマーが得られ、90質量%以下とすることにより、重合中の架橋反応を防止し、ポリマーの溶解性低下や不溶化を抑えることができる。
本発明における重合方法は水溶媒中で重合する方法であれば特に制限されることなく、重合温度は0〜120℃の範囲で、好ましくは10〜90℃の範囲で、断熱重合方式あるいはベルト上で除熱しながらシート重合する方式などを必要に応じて採用できる。
重合開始剤としては従来知られている一般的なものが使用可能であり、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、また、ベンゾインエチルエール等の光分解型の重合開始剤、更には、上記過酸化物とレドックス反応により開始剤を形成する亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ハイドロスルファイトナトリウム、トリエタノールアミン、硫酸第一鉄等の還元剤も使用することができる。これらの重合開始剤は1種類あるいは2種類以上を常法に従って使用することができる。
得られた重合体はミートチョッパーなどの解砕機を用いて解砕した後、乾燥し、更に、常法に従って粉砕器で粉砕して粉体状のポリアクリルアミド系乾燥品としてもよい。乾燥装置は特に制限はなく、棚段式乾燥機、ベルト乾燥機、回転乾燥機、流動乾燥機、赤外線乾燥機、高周波乾燥機などを適宜使用できる。
上記方法により得られたアクリルアミド系ポリマーは、1質量%濃度で4質量%食塩水中に溶解したものを、B型粘度計を用いて、No.3ロータを使用し、回転数6rpmの条件下、25℃で粘度測定した場合、2,000mPa・s以上、好ましくは、3,000mPa・s以上の粘度を有する(粘度2,000mPa・sは、アクリルアミド系ポリマーの分子量約1000万程度に相当する。)。本発明の方法により得られるアクリルアミド系ポリマー粉体は白色であり、その水溶液に関しては、ポリマー粉体をイオン交換水に0.1質量%濃度で溶解し、80メッシュの金網で濾過して、金網上に残るゲル状の不溶解分の量を目視で観察した際、不溶解分がほとんど観察されない。よって、本発明の方法により得られるアクリルアミド系ポリマーは凝集剤、抄紙用粘剤等に好適に使用することができる。
以上のようにして得られた本発明に係るアクリルアミド系ポリマーは、水溶液のときに無色に近い色調を示し、また、粉体のときに白色の色調を示す。ここで、アクリルアミド系ポリマー粉体の色調は、白色の紙の上に、約1gづつの粉体を載せ、色を比較することで評価することができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は実施例により限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例における%表示は質量%である。
(1)固定化菌体の調製
ニトリルヒドラターゼ活性を有するロドコッカス・ロドクロス(Rhodococcus rhodochrous)J−1株(FERM BP−1478)を、グルコース2%、尿素1%、ペプトン0.5%、酵母エキス0.3%、塩化コバルト0.05%を含む培地(pH7.0)により好気的に培養した。培養終了後、培養菌体を遠心分離により回収し、これを50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄した。洗浄した菌体に上記緩衝液を添加し菌体懸濁液(乾燥菌体換算20%)とした。この菌体懸濁液500gに、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド及び2−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが、それぞれ20、2及び2%濃度であるモノマー混合水溶液500gを加え、よく懸濁した。これに5%の過硫酸アンモニウム2g、50%のN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン2gを加えて重合し、ゲル化させた。これを約1mm角の立方体に切断した後、0.5%の硫酸ナトリウム1Lで5回洗浄して、アクリルアミド製造触媒である固定化菌体粒子を得た。
(2)アクリロニトリルの調製
オキサゾールの濃度が10mg/kg、青酸の濃度が0.7mg/kg(ASTM(E1178−87)での測定値)であるアクリロニトリル(ダイヤニトリック社製)を、強酸性イオン交換樹脂Amberlyst15wet(オルガノ社製)で処理して、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下(アリジェントテクノロジー社ガスクロマトグラフ、カラムDB225、FID検出器で未検出)、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルを調製し、これを使用した。
(3)酵素法によるアクリルアミドの製造
内容積5Lのセパラブルフラスコに0.2g/Lのアクリル酸ナトリウム水溶液を3200g入れ、これに前述の(1)で調製した固定化菌体粒子5gを添加した。これをpH7.0、温度15℃に制御しながら攪拌した。これに、アクリロニトリル濃度が常に2%となるように連続的にフィードし、アクリルアミドの濃度が47.3%に達するまで酵素反応を行った。この間、反応の進行が認められなくなった時点で固定化菌体を1gづつ、都度添加していった。その後、アクリロニトリルのフィードを止め、温度を20℃とし反応液中のアクリロニトリルが検出されなくなるまで反応を継続した。
反応終了後、180メッシュの金網で固定化菌体を除去することで、50%アクリルアミド水溶液を得た。
(4)アクリルアミド系ポリマーの製造
1Lビーカーに上述の(3)で得られた50%アクリルアミド水溶液348部と98質量%のアクリル酸2部を秤取し、これにイオン交換水400部を加えた。これに苛性ソーダを添加して中和し、次いでイオン交換水を加えて全体を797部にした。液温を10℃に調整して、溶液を1Lジュワー瓶に移した。この溶液を窒素ガスで30分間パージした後、この溶液に重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩10%水溶液1.5部、ハイドロサルファイトナトリウム0.2%水溶液1部、及びt−ブチルハイドロパーオキサイド0.2%水溶液0.5部を添加して重合を開始させた。重合は断熱的に進行し、ピーク温度は約74℃に達した。ピーク温度に達してから30分後、重合体を取り出し、鋏で5cm角に切り、直径5mm目皿の解砕機(ミートチョッパー)で解砕した。解砕したゲルを60℃で16時間、温風乾燥器にて乾燥したものを直径2mm目皿のウイレー型粉砕器にて粉砕した。次に、粒径0.15〜1.0mmに篩別しアクリルアミドとアクリル酸との共重合ポリマー粉体を得た。
(5)ポリマーの評価
4質量%食塩水中に上記(4)で得られたポリマー粉体を1質量%濃度で溶解したものを、B型粘度計を用いて、25℃で1%塩粘度を測定した。
また、水溶解性を調べるために、重合体粉体をイオン交換水5kgに0.1質量%濃度で溶解した後、80メッシュの金網で濾過して、金網上に残るゲル状の不溶解分の量を目視で評価した。また、ポリマーの色調についてはポリマー粉体を目視にて観察した。
<比較例1>
原料として、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルに代えて、オキサゾールの濃度が10mg/kg、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルを用いる以外は、実施例1と同様にしてアクリルアミドとアクリル酸との共重合ポリマー粉体を調製し、そのポリマーを評価した。
<比較例2>
原料として、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルに代えて、オキサゾールの濃度が10mg/kg、且つ青酸の濃度が5mg/kgであるアクリロニトリルを用いる以外は、実施例1と同様にしてアクリルアミドとアクリル酸との共重合ポリマー粉体を調製し、そのポリマーを評価した。
<比較例3>
原料として、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルに代えて、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下、且つ青酸の濃度が5mg/kgであるアクリロニトリルを用いる以外は、実施例1と同様にしてアクリルアミドとアクリル酸との共重合ポリマー粉体を調製し、そのポリマーを評価した。
実施例1及び比較例1〜3で得られたアクリルアミドとアクリル酸との共重合ポリマーの物性を表1に示す。
上記の結果から、本発明の方法により製造されたアクリルアミド系ポリマーは良好な溶解性を有し、また、色調に優れることが分かる。
ニトリルヒドラターゼ活性を有するロドコッカス・ロドクロス(Rhodococcus rhodochrous)J−1株(FERM BP−1478)を、グルコース2%、尿素1%、ペプトン0.5%、酵母エキス0.3%、塩化コバルト0.05%を含む培地(pH7.0)により好気的に培養した。培養終了後、培養菌体を遠心分離により回収し、これを50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄した。洗浄した菌体に上記緩衝液を添加し菌体懸濁液(乾燥菌体換算20%)とした。この菌体懸濁液500gに、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド及び2−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが、それぞれ20、2及び2%濃度であるモノマー混合水溶液500gを加え、よく懸濁した。これに5%の過硫酸アンモニウム2g、50%のN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン2gを加えて重合し、ゲル化させた。これを約1mm角の立方体に切断した後、0.5%の硫酸ナトリウム1Lで5回洗浄して、アクリルアミド製造触媒である固定化菌体粒子を得た。
(2)アクリロニトリルの調製
オキサゾールの濃度が10mg/kg、青酸の濃度が0.7mg/kg(ASTM(E1178−87)での測定値)であるアクリロニトリル(ダイヤニトリック社製)を、強酸性イオン交換樹脂Amberlyst15wet(オルガノ社製)で処理して、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下(アリジェントテクノロジー社ガスクロマトグラフ、カラムDB225、FID検出器で未検出)、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルを調製し、これを使用した。
(3)酵素法によるアクリルアミドの製造
内容積5Lのセパラブルフラスコに0.2g/Lのアクリル酸ナトリウム水溶液を3200g入れ、これに前述の(1)で調製した固定化菌体粒子5gを添加した。これをpH7.0、温度15℃に制御しながら攪拌した。これに、アクリロニトリル濃度が常に2%となるように連続的にフィードし、アクリルアミドの濃度が47.3%に達するまで酵素反応を行った。この間、反応の進行が認められなくなった時点で固定化菌体を1gづつ、都度添加していった。その後、アクリロニトリルのフィードを止め、温度を20℃とし反応液中のアクリロニトリルが検出されなくなるまで反応を継続した。
反応終了後、180メッシュの金網で固定化菌体を除去することで、50%アクリルアミド水溶液を得た。
(4)アクリルアミド系ポリマーの製造
1Lビーカーに上述の(3)で得られた50%アクリルアミド水溶液348部と98質量%のアクリル酸2部を秤取し、これにイオン交換水400部を加えた。これに苛性ソーダを添加して中和し、次いでイオン交換水を加えて全体を797部にした。液温を10℃に調整して、溶液を1Lジュワー瓶に移した。この溶液を窒素ガスで30分間パージした後、この溶液に重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩10%水溶液1.5部、ハイドロサルファイトナトリウム0.2%水溶液1部、及びt−ブチルハイドロパーオキサイド0.2%水溶液0.5部を添加して重合を開始させた。重合は断熱的に進行し、ピーク温度は約74℃に達した。ピーク温度に達してから30分後、重合体を取り出し、鋏で5cm角に切り、直径5mm目皿の解砕機(ミートチョッパー)で解砕した。解砕したゲルを60℃で16時間、温風乾燥器にて乾燥したものを直径2mm目皿のウイレー型粉砕器にて粉砕した。次に、粒径0.15〜1.0mmに篩別しアクリルアミドとアクリル酸との共重合ポリマー粉体を得た。
(5)ポリマーの評価
4質量%食塩水中に上記(4)で得られたポリマー粉体を1質量%濃度で溶解したものを、B型粘度計を用いて、25℃で1%塩粘度を測定した。
また、水溶解性を調べるために、重合体粉体をイオン交換水5kgに0.1質量%濃度で溶解した後、80メッシュの金網で濾過して、金網上に残るゲル状の不溶解分の量を目視で評価した。また、ポリマーの色調についてはポリマー粉体を目視にて観察した。
<比較例1>
原料として、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルに代えて、オキサゾールの濃度が10mg/kg、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルを用いる以外は、実施例1と同様にしてアクリルアミドとアクリル酸との共重合ポリマー粉体を調製し、そのポリマーを評価した。
<比較例2>
原料として、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルに代えて、オキサゾールの濃度が10mg/kg、且つ青酸の濃度が5mg/kgであるアクリロニトリルを用いる以外は、実施例1と同様にしてアクリルアミドとアクリル酸との共重合ポリマー粉体を調製し、そのポリマーを評価した。
<比較例3>
原料として、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルに代えて、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下、且つ青酸の濃度が5mg/kgであるアクリロニトリルを用いる以外は、実施例1と同様にしてアクリルアミドとアクリル酸との共重合ポリマー粉体を調製し、そのポリマーを評価した。
実施例1及び比較例1〜3で得られたアクリルアミドとアクリル酸との共重合ポリマーの物性を表1に示す。
上記の結果から、本発明の方法により製造されたアクリルアミド系ポリマーは良好な溶解性を有し、また、色調に優れることが分かる。
(1)アクリルアミド系ポリマーの製造及び評価
実施例1にしたがって調製した50%アクリルアミド水溶液192部、イオン交換水8部及び連鎖移動剤ニトリロトリスプロピオン酸アミド0.18部を混合し、0.1規定NaOH水溶液でpH10に調整してから、光開始剤ベンゾインエチルエーテルを1%溶解したメタノール溶液0.5部を添加した。光を遮断して、この重合溶液を窒素置換した。SUS製バットを重合容器として用い、上部にガラス板を設置し、バス温度20℃の水浴上に置き窒素雰囲気下にあるバット容器中に、窒素置換した重合溶液をシート厚さ5mmとなるように送液し、上方からケミカルランプ(東芝FL−20S−BL)を照射して、光開始シート重合を行った。光重合の条件は、光強度1.0W/m2で40分間、光照射して重合した後、更に、光強度40W/m2で30分間光照射である。
重合後のゲルを鋏で2〜3ミリ角に裁断し、60℃で16時間、乾燥した。これをウイレー型粉砕器で粉砕し、粒径0.15〜1.0mmに篩別しアクリルアミドポリマー粉体を得た。
得られたアクリルアミドポリマーを実施例1の(5)と同様に評価した。
<比較例4>
原料として、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルに代えて、オキサゾールの濃度が10mg/kg、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルを用いる以外は、実施例2と同様にしてアクリルアミドポリマーを製造した。
<比較例5>
原料として、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルに代えて、オキサゾールの濃度が10mg/kg、且つ青酸の濃度が5mg/kgであるアクリロニトリルを用いる以外は、実施例2と同様にしてアクリルアミドポリマーを製造した。
<比較例6>
原料として、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルに代えて、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下、且つ青酸の濃度が5mg/kgであるアクリロニトリルを用いる以外は、実施例2と同様にしてアクリルアミドポリマーを製造した。
実施例2及び比較例4〜6で得られたアクリルアミドとアクリル酸との共重合ポリマーの物性を表2に示す。
上記の結果から、本発明の方法により製造されたアクリルアミド系ポリマーは高分子量で良好な溶解性を有し、また、色調に優れることが分かる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
実施例1にしたがって調製した50%アクリルアミド水溶液192部、イオン交換水8部及び連鎖移動剤ニトリロトリスプロピオン酸アミド0.18部を混合し、0.1規定NaOH水溶液でpH10に調整してから、光開始剤ベンゾインエチルエーテルを1%溶解したメタノール溶液0.5部を添加した。光を遮断して、この重合溶液を窒素置換した。SUS製バットを重合容器として用い、上部にガラス板を設置し、バス温度20℃の水浴上に置き窒素雰囲気下にあるバット容器中に、窒素置換した重合溶液をシート厚さ5mmとなるように送液し、上方からケミカルランプ(東芝FL−20S−BL)を照射して、光開始シート重合を行った。光重合の条件は、光強度1.0W/m2で40分間、光照射して重合した後、更に、光強度40W/m2で30分間光照射である。
重合後のゲルを鋏で2〜3ミリ角に裁断し、60℃で16時間、乾燥した。これをウイレー型粉砕器で粉砕し、粒径0.15〜1.0mmに篩別しアクリルアミドポリマー粉体を得た。
得られたアクリルアミドポリマーを実施例1の(5)と同様に評価した。
<比較例4>
原料として、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルに代えて、オキサゾールの濃度が10mg/kg、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルを用いる以外は、実施例2と同様にしてアクリルアミドポリマーを製造した。
<比較例5>
原料として、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルに代えて、オキサゾールの濃度が10mg/kg、且つ青酸の濃度が5mg/kgであるアクリロニトリルを用いる以外は、実施例2と同様にしてアクリルアミドポリマーを製造した。
<比較例6>
原料として、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下、且つ青酸の濃度が0.7mg/kgであるアクリロニトリルに代えて、オキサゾールの濃度が5mg/kg以下、且つ青酸の濃度が5mg/kgであるアクリロニトリルを用いる以外は、実施例2と同様にしてアクリルアミドポリマーを製造した。
実施例2及び比較例4〜6で得られたアクリルアミドとアクリル酸との共重合ポリマーの物性を表2に示す。
上記の結果から、本発明の方法により製造されたアクリルアミド系ポリマーは高分子量で良好な溶解性を有し、また、色調に優れることが分かる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
本発明の製造方法によれば、従来品と比較してより高分子量、高溶解性、且つ色調が良い、高品質で非常に有用性が高いポリアクリルアミド系ポリマーを製造することができる。
Claims (4)
- オキサゾール濃度が5mg/kg以下、且つ青酸濃度が1mg/kg以下であるアクリロニトリルを、酵素法により水和してアクリルアミドとし、該アクリルアミドを含むモノマーを重合するアクリルアミド系ポリマーの製造方法。
- 酵素法でアクリロニトリルを水和する反応工程において、生成するアクリルアミドの反応溶液中の濃度が30質量%以上になるまで反応を行う請求項1記載の製造方法。
- 酵素法を、微生物菌体を触媒として用いて行う請求項1又は2記載の製造方法。
- オキサゾール濃度が5mg/kg以下、且つ青酸濃度が1mg/kg以下であるアクリロニトリルを、酵素法により水和してアクリルアミドとし、該アクリルアミドを含むモノマーを重合して得られるアクリルアミド系ポリマー。
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