JP3908803B2 - アクリルアミドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリロニトリルを、銅系触媒の存在下、水と接触水和してアクリルアミドを製造する方法に関する。さらに詳しくは、分子量が十分高く、水溶性も良好なポリマー製造を可能とする、高品質なアクリルアミドを製造するための、原料アクリロニトリルの精製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリルアミドは従来から、アクリルアミド系ポリマーとして、製紙薬剤、凝集剤、石油回収剤等に用いられ、また、種々のポリマーの原料コモノマーとして広い用途を有している。これらの用途に供されるアクリルアミドの製法としては、古くはいわゆる硫酸法により製造されていたが、近年に至り、銅系触媒の存在下に反応させる接触法が開発され、現在では硫酸法に代わって工業的に実施されている。
【0003】
アクリルアミドの上記の用途のうち、特に凝集剤は、近年排水処理用などに用途が拡大され、これに伴って品質性能の向上に著しい努力が払われている。中でも、凝集剤として用いられるアクリルアミド系ポリマーについては、その性能に直接影響するといわれる高分子量化の傾向が著しく、最近は1000万以上、特に1500万程度の高分子量のものが求められている。そして、求められる分子量範囲は、他の用途に求められているアクリルアミド系ポリマーあるいは他のポリマーに求められている分子量が通常100万以下であることに比較してはるかに高い。さらに、得られたアクリルアミド系ポリマーは凝集剤として、通常、水に溶解して用いられるために、速やかに、かつ不溶解分を残さず溶解することが必要とされる。また、アクリルアミドモノマーの有毒性のために、ポリマー中未反応モノマーが例えば0.2重量%以下の微量であることも必要とされている。
【0004】
これらの要求は、高分子量化とは両立し難い性質であり、その達成に著しい努力が払われている所以である。また、このような高分子量アクリルアミド系ポリマーは、アクリルアミドの一用途に過ぎないとはいうものの、かかる用途に適したものでなければ、広く一般の用にも供し得ないものであり、本発明の方法もかかる用途に供し得るアクリルアミドの製造に関するものである。
【0005】
なお、本発明にいう分子量とは、後述する実施例1に示す試験方法によるものであり、また、水溶性が問題とされるのは、通常、水性媒体中で得られたポリマーを乾燥して、水分を20重量%以下、特に10重量%程度の乾燥粉体として貯蔵した場合であり、本発明にいう水溶性も主としてこの意味で用いられる。
【0006】
このような、高分子量でかつ十分な水溶性をもつアクリルアミド系ポリマーを製造するためには、ポリマーの製造方法のみならず、アクリルアミドの品質によるところが大きいとされ、さらには原料のアクリロニトリルの品質の与える影響が大きいとされている。
【0007】
このアクリロニトリルの製法としては、アセチレン、エチレンオキサイドまたはアセトアルデヒドと青酸との反応による方法、プロピレンのアクロレイン経由法、酸化窒素法、あるいはアンモオキシデーション法などの多くの方法が知られている。
【0008】
例えば、現在、一般的にはプロピレンのアンモオキシデーションにより合成されたアクリロニトリルが広く供されているが、その方法は、プロピレン、アンモニア、酸素または空気の混合ガスを、例えば、モリブデン−ビスマス系触媒、ウラン−アンチモン系触媒、あるいは、鉄−アンチモン系触媒などの触媒の存在下に直接反応させる気相接触アンモオキシデーション反応による製造法のことである。
【0009】
アクリロニトリルは合成反応ガスから、通常、水に吸収することによって回収され、続く精製分離工程において、青酸、アセトニトリル、アセトン、アクロレイン、メタクリロニトリル、オキサゾール、アルデヒド類等の副生成物と分離される。精製分離法としては主に蒸留法が用いられる。
【0010】
このようにして得られたアクリロニトリルは、従来からアクリル系合成繊維、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系合成樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等の種々のポリマーの原料モノマーまたはコポリマーとして広い用途を有しており、アクリロニトリルは大半がこのような用途に用いられている。これ以外にも、他の誘導製品の工業原料としても使用される。
【0011】
しかしながら、アクリロニトリルを接触水和法アクリルアミドの原料として使用するとき、上記した主要な用途に供せられるよりも不純物の少ない高品質なアクリロニトリルが要求され、それを満たすため、通常はアクリロニトリルの製造において、その蒸留精製工程の運転条件を強化する等の対策をとることが一般的である。この方法では蒸留精製工程での回収損失分が無視できなくなる、あるいは蒸気などのエネルギーをより多く消費するなどの大きな犠牲を伴っている。さらに、このようにして得られた不純物の少ないアクリロニトリルを接触水和反応に用いて製造されたアクリルアミドの品質は概ね良好であるが、時に全く不十分となることもあり、品質の安定性に欠け、より高品質なアクリルアミドの商業的生産技術としては不十分なものである。
【0012】
特に、従来、このようにして製造されたアクリロニトリルには、オキサゾールに代表されるような弱塩基性物質が微量含まれており、この微量なオキサゾールに代表されるような弱塩基性物質が、アクリロニトリルの接触水和反応において触媒活性の経時的な低下をもたらし、さらにはアクリルアミドの品質にも大きな影響を与えることが知られている。そこで、このようなオキサゾールに代表されるような塩基性物質を微量に含むアクリロニトリルを接触水和法に適したアクリロニトリルの品質にするために、いくつかの方法が提案されている。
【0013】
例えば、特開昭63−118305では、原料であるアクリロニトリル中のオキサゾールを、H形のカチオン交換樹脂と接触させることにより、200ppm以下、より好ましくは25ppm以下とすることにより、このアクリロニトリルを用いて銅系触媒の存在下、水和反応により合成されたアクリルアミドは、オキサゾールを含むアクリロニトリルから同様にして合成したアクリルアミドに比べ、安定性が高く、またポリマーとしたときの水溶液の粘度が高いこと、またカチオン交換樹脂の再生法として、熱水、水蒸気、メタノール、わずかに酸性の水溶液、またはこれらの混合物と接触させることが記載されている。
【0014】
また、特公昭57−26264では、無機酸または酸性カチオン交換樹脂により精製したアクリロニトリルを銅系触媒存在下で水和反応させると、精製しないものに比べ、触媒活性の劣化が防止できると記載されている。
【0015】
また、特公昭61−35171では、架橋度7%以下の強酸性カチオン交換樹脂により精製したアクリロニトリルを銅系触媒の存在下で、水和反応させると、精製しないものに比べ、触媒活性の劣化が防止でき、さらに樹脂との接触によるアクリロニトリルの重合が防止でき、かつ製造されたアクリルアミドの品質の低下も防ぐことができると記載されている。
【0016】
また、特開平7−145123には、アクリロニトリルを、強酸性カチオン交換樹脂、1級及び/または2級アミン基を有する弱塩基性アニオン交換樹脂、さらに、必要に応じて、活性炭の順に接触させると、オキサゾールに代表される塩基性物質およびアクロレインに代表されるアルデヒド類が除去され、さらにこのアクリロニトリルを銅系触媒の存在下で水和反応して得られるアクリルアミドは、ポリマーとした場合、良好な水溶性と十分に高い分子量を持つと記載されている。
【0017】
また、1948年成立の米国特許USP2444589では、無機シアン化物と有機物から合成したアクリロニトリルは、微量のイオン性不純物、及び微量の中性の不純物を含有し、この不純物がアクリロニトリルを原料とする合成反応生成物の単離を妨害するうえ、収率を低下させることを指摘している。このアクリロニトリルをカチオン交換体(例えば、フェノールとホルムアルデヒドの縮合物、あるいはスルホン化石炭等)及びアニオン交換樹脂(例えば、グアニジン、尿素、ホルムアルデヒドの縮合物等)で処理し、イオン性物質を除去した後、脱色剤(例えば、活性炭)による処理を行うと、イオン交換体、脱色剤、それぞれ単独ではできなかった脱色が可能になるとし、さらに実施例では、カチオン交換体、アニオン交換樹脂、活性炭の順に処理したアクリロニトリルは、これを重合すると、アクリロニトリルの重合速度が大きくなること等が記載されている。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等が試験したところによれば、特開昭63−118305、特公昭57−26264、特公昭61−35171に記載されているように、アクリロニトリルをカチオン交換樹脂により精製する方法は、アクリロニトリル中のオキサゾールを代表とする塩基性物質を除去することは可能であるが、これを銅系触媒の存在下、水と接触水和して得られるアクリルアミドの品質は、これを単独、あるいは、他のコモノマーと重合して得られるアクリルアミド系ポリマーの水溶性および分子量に関して不十分である。
【0019】
また、前述のカチオン交換体、アニオン交換樹脂、活性炭を用いた実施例がある、1948年成立の米国特許USP2444589の成立当時は、銅系触媒の存在下におけるアクリロニトリルの水和反応で得られるアクリルアミドの製造法は、工業化されておらず、この特許の方法による、銅系触媒の存在下で、アクリロニトリルと水とを接触水和して得られるアクリルアミドを単独、あるいは、他のコモノマーと重合して得られるアクリルアミド系ポリマーの物性に関する効果については、この特許中に記載は無く、またこれまでに公知の例は無い。さらに、この特許の実施例ではアクリロニトリルを、カチオン交換体、アニオン交換樹脂、活性炭の順で処理しているが、この特許の主張するところは、イオン性物質を除去することにより、着色等の原因となる中性の不純物を容易に除去することであり、即ち、脱色剤(例えば、活性炭)処理の前に、カチオン交換処理およびアニオン交換処理を行えばよく、このイオン交換処理におけるカチオン交換処理とアニオン交換処理の順序を限定するものではない。
【0020】
また、特開平7−145123に記載されているように、アクリロニトリルを強酸性カチオン交換樹脂、1級及び/または2級アミン基を有する弱塩基性アニオン交換樹脂、さらに、必要に応じて、活性炭の順に接触させる方法は、その目的の一つがアクリロニトリルに含まれる微量なアクロレインに代表されるようなアルデヒド類の除去にあるため、強酸性カチオン交換樹脂に接触させた後、1級及び/または2級アミン基を有する弱塩基性アニオン交換樹脂と接触させている。しかしながら、3級アミン基を有する弱塩基性アニオン交換樹脂については、この特許中に全く記載されていない。
【0021】
本発明は、原料のアクリロニトリルを精製することによって、銅系触媒の存在下、アクリロニトリルと水との接触水和反応によるアクリルアミドの製造において、分子量が十分高く、水溶性も良好なポリマー製造を可能とする、高品位なアクリルアミドを製造することを目的としている。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、アクリルアミドを重合して得られるアクリルアミド系ポリマーの十分な水溶性と分子量を得るため、原料であるアクリロニトリルの精製法について鋭意検討を加えた結果、本発明に達した。
【0023】
すなわち、上記した本発明の目的は、アンモオキシデーション法によって製造されるアクリロニトリルを強酸性カチオン交換樹脂と接触させる工程及び3級アミン基を有する樹脂と接触させる工程の少なくとも2つの工程を経由し、強酸性カチオン樹脂を後工程とする場合は、さらに活性炭と接触させる工程を経由した後、銅系触媒の存在下で水和反応させることを特徴とするアクリルアミドの製造方法の提供によって達成される。
【0024】
本発明では、アクリロニトリルを強酸性カチオン交換樹脂と接触させた後、3級アミン基を有するアニオン交換樹脂と接触させ、さらに活性炭と接触させる方法であること、アクリロニトリルを3級アミン基を有するアニオン交換樹脂と接触させた後、強酸性カチオン交換樹脂と接触させ、さらに活性炭と接触させる方法であること、及びアクリロニトリルを強酸性カチオン交換樹脂と接触させた後、活性炭と接触させ、さらに3級アミン基を有するアニオン交換樹脂と接触させる方法であることが望ましい。
【0025】
本発明のアクリロニトリルの精製方法は、アンモオキシデーション法によって製造されるアクリロニトリルに対して適用する。例えば、プロピレンのアンモオキシデーションによるアクリロニトリルの製造法とは、プロピレン、アンモニア、酸素あるいは空気の混合ガスを、例えば、モリブデン−ビスマス系触媒、ウラン−アンチモン系触媒、あるいは鉄−アンチモン系触媒などの触媒存在下に直接反応させる気相接触アンモオキシデーション反応による製造法のことである。
【0026】
次に、本発明が適用されるアクリルアミドの製造方法について概略説明する。本発明の方法に用いられる銅系触媒の例としては、
(A)銅線、銅粉等の形の銅と銅イオンの組み合わせ
(B)銅化合物を還元剤で還元して得られるもの(還元銅)
(C)銅化合物を熱などにより分解して得られるもの(分解銅)
及び、
(D)ラネー合金をアルカリなどで展開して得られるもの(ラネー銅)
がある。
【0027】
上記の還元銅の製法の例としては、
(1)酸化銅を気相中で水素、一酸化炭素、またはアンモニアで還元する方法
(2)銅の塩、または水酸化物を水溶液中でホルマリン、ヒドラジン、または水素化ホウ素ナトリウムで還元する方法
及び、
(3)銅の塩または水酸化物を水溶液中で元素状のアルミニウム、亜鉛、または鉄で還元する方法
などがあり、得られるものの主たる触媒成分は、いずれも元素状の銅と考えられる。
【0028】
上記の分解銅の製法の例としては、
(1)銅化合物を次亜塩素酸ナトリウムなどで処理して得られる水素化銅をアルカリ水中で熱分解する方法
(2)ギ酸銅またはシュウ酸銅を熱分解する方法
(3)特開昭49−108015に示されたいわゆるクラスター銅を熱分解する方法
及び、
(4)銅アセチリドまたは窒化銅を直接アクリロニトリルの水和反応系へ加える方法
等があり、得られるものの主たる触媒成分は(4)項のものも含めて元素状の銅と考えられる。
【0029】
上記のラネー銅の製法の例としては、
(1)銅−アルミニウム合金を苛性ソーダ、硫酸、水、有機アミンなどでほぼ完全に展開する方法
及び、
(2)銅−アルミニウム合金を苛性ソーダ、硫酸、水、有機アミンなどで部分的に展開してアルミニウムの一部を銅とともに残す方法
などがあり、得られるものの主たる触媒成分はいずれも元素状の銅と考えられる。
【0030】
これらの銅系触媒は、通常用いられる担体に担持されていても差し支えないし、銅以外の金属、例えばクロムまたはモリブデンを含んでいても差し支えない。
【0031】
上記したこれらの銅系触媒は、その調整方法によって触媒活性自体には差異があるが、例えば、還元銅、水素化銅、ラネー銅などの相違によって副反応などの反応形式が相違することはなく、不純物の生成傾向に関しては同一傾向を有する。
【0032】
触媒は使用前および使用後を通じて酸素および酸素含有ガスとの接触をさけることが望ましい。その理由は、酸素が触媒としての活性を損ない、エチレンシアンヒドリンなどの副生成物を増加させるからである。
【0033】
本発明のアクリロニトリルの水和反応は、上記した銅系触媒の存在下に次のようにして行われる。反応の形式は、液相中の懸濁床または固定床の触媒床で、流通式または、回分式で行われる。
【0034】
水和反応に供されるアクリロニトリルと水の重量比は、実質的には任意であるが、好ましくは60:40〜5:95であり、さらに好ましくは50:50〜10:90の範囲である。また、アクリロニトリルの反応率は、好ましくは10〜98%であり、更に好ましくは30〜95%の範囲である。
【0035】
アクリロニトリルと水との水和反応における反応温度は、好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは70〜150℃の範囲である。
【0036】
反応器内は、上記した温度と組成における蒸気圧、またはそれに窒素等の不活性ガスを加えた圧力に保たれるが、その圧力は、通常、常圧〜10気圧である。反応器に供給される触媒、アクリロニトリル、水などに含まれる溶存酸素は、触媒の活性を損ない、エチレンシアンヒドリン等の副生成物を増加させるので、反応器に供給するまえに十分除去することが望ましく、また同じ理由から反応器内は酸素を含まない雰囲気に保つことが望ましい。なお、水和反応後反応器から取り出される反応液は、主として、未反応アクリロニトリル、未反応水、及びアクリルアミドからなり、さらにエチレンシアンヒドリン等の副生成物と銅を含む。上記の反応で得られた反応液は、必要ならば通常の蒸発または蒸留操作に付して濃縮されたアクリルアミド水溶液を得ると共に、未反応アクリロニトリルと水を留出回収する。これらの回収物は新規反応原料として、再使用することができる。
【0037】
なお、本発明に記載されるアクリロニトリル中の不純物等の含有量は、新規に供給されるアクリロニトリルにおける含有量のことであって、新規供給分と回収再使用分との合計量における含有量ではない。
【0038】
上記の反応液を濃縮したアクリルアミド水溶液(以下これ等の液をアクリルアミド水溶液と略称する)は、ついでカチオン交換処理、キレート樹脂処理、アニオン交換処理、空気または酸素ガス処理、活性炭処理の様な各種の精製方法により精製される。また活性炭やイオン交換樹脂と類似の方法で用いられるいわゆる合成吸着樹脂(例えば、北越炭素工業社製、商品名:吸着樹脂)も使用できる。これらの精製工程の途中または後に上記の濃縮処理に付しても良いし、また、再濃縮することがあっても差し支えない。
【0039】
次に、アクリロニトリルの精製法について詳しく述べる。
【0040】
アクリロニトリルの精製に用いる強酸性型カチオン交換樹脂は、例えば、レバチットS100(商品名、バイエル社製)、ダイヤイオンSK1B(商品名、三菱化学社製)、ダウエックスHCRW2(商品名、ダウケミカル社製)等のゲル型樹脂、あるいは、例えば、レバチットSP112(商品名、バイエル社製)、ダウエックスMSC1(商品名、ダウケミカル社製)等のマクロポーラス型樹脂の何れでもよく、これを希薄な酸で前処理してH型とし、十分水洗したものをそのまま用いることもできるが、さらに望ましくは、これを、熱風、乾燥窒素、または減圧乾燥により、十分乾燥して用いる。
【0041】
また、3級アミン基を有する樹脂は、交換基として3級アミン基が存在すればよく、例えば、ダイヤイオンWA30(商品名、三菱化学社製)、レバチットMP62(商品名、バイエル社製)等の樹脂が使用される。また、本発明で用いる3級アミンを有する弱塩基性アニオン交換樹脂の概念の中には、いわゆる中塩基性アニオン交換樹脂、例えば、レバチットMP64(商品名、バイエル社製)のように、3級アミンと4級アンモニウムを併せ持つものも含まれる。これらは、市販のものを十分に水洗して用いることができるが、希薄なアルカリで前処理し遊離塩基型とした後、十分水洗して用いることが好ましい。あるいは、希薄なアルカリでの前処理の有無を問わず、水洗後の樹脂を熱風、乾燥窒素、または減圧乾燥により、十分乾燥して用いてもよい。
【0042】
さらに、活性炭と接触させる場合には、用いる活性炭は、特に種類は問わないが、例えば、カルゴンCPG(商品名、カルゴン社製)の様なコールベース活性炭、あるいは、白鷺LHc(商品名、武田薬品工業社製)の様なヤシガラベース活性炭等を用いることができる。これらの活性炭は、市販のものをそのまま用いることができる。無論、水洗して用いてもよいし、あるいは水洗した後、熱風、乾燥窒素、または減圧乾燥により十分乾燥して用いてもよい。
【0043】
これらの樹脂、活性炭は、塔類に充填し、固定層としてアクリロニトリルと連続的に接触・精製できるほか、回分式でも利用できる。しかし、精製効率、運転の容易さ等の理由から、前者を用いることが望ましい。
【0044】
本発明では、アクリロニトリルの精製の処理にあたっては、
(イ)強酸性カチオン交換樹脂
との接触は必須であるが、それとともに、
(ロ)3級アミン基を有する弱塩基性アニオン交換樹脂
さらに、必要に応じて、
(ハ)活性炭
と接触させる。接触の順序としては、
▲1▼(イ)−(ロ)
▲2▼(イ)−(ロ)−(ハ)
▲3▼(ロ)−(イ)−(ハ)
▲4▼(イ)−(ハ)−(ロ)
の方法がよく、何れも本発明の範囲内である。▲1▼〜▲4▼の精製処理にあたって、予め(ハ)活性炭と接触、精製しておく方法もよく、本発明の範囲内である。
【0045】
これらの樹脂や活性炭を塔に充填して用いる場合、塔の材質は、例えば、SUS304等のアクリロニトリルに侵されない材質であれば良い。
【0046】
これらの塔での処理時の液温は、通常5〜50℃、好ましくは15〜30℃である。塔へのアクリロニトリルの通液速度は、充填樹脂あるいは活性炭の容量に対し、1時間当たり0.1〜50倍、好ましくは0.5〜10倍程度の流量から選ばれる。
【0047】
また、(イ)強酸性カチオン交換樹脂は、アクリロニトリルと接触中、例えば、オキサゾールに代表される塩基性物質の流出が確認された場合、常温〜100℃の水、水蒸気、メタノール、希薄な酸、あるいはこれらの混合物と接触させることにより、容易に再生することができる。
【0048】
このようにして得られた精製アクリロニトリルを用いて、銅系触媒による水との接触水和法によりアクリルアミドの製造を行い、このアクリルアミドを用いて、アクリルアミド単独、あるいは他のコモノマーと重合し、アクリルアミド系ポリマーとして評価した場合、格段の水溶性向上と、十分に高い分子量が得られた。
【0049】
他方、上記▲1▼〜▲4▼以外の精製方法、例えば、
(a)(イ)強酸性カチオン交換樹脂のみのアクリロニトリルの処理
(b)(ロ)3級アミン基を有する樹脂のみのアクリロニトリル処理
(c)(ハ)活性炭のみのアクリロニトリルの処理
あるいは、
(d)(イ)強酸性カチオン交換樹脂を最後に接触させる方法、例えば、(ロ)−(イ)、(ロ)−(ハ)−(イ)他
等を前述と同様の方法で行ったところ、(a)及び(d)の処理ではオキサゾールの除去を確認した。
【0050】
しかしながら、(a)、(b)、(c)及び(d)の処理を行った何れのアクリロニトリルを用いても、前述の銅系触媒を用いた水との接触水和によりアクリルアミドを製造した場合、これを単独あるいは他のコモノマーと重合して得られる、アクリルアミド系ポリマーでは、水溶性は満足できるものではなかった。
【0051】
この理由については、(a)及び(d)ではオキサゾールは除去されているが、(イ)強酸性カチオン交換樹脂との接触を最後にすると、アクリロニトリル中のアルデヒド類等の不純物はかえって増大し、その結果アクリルアミドの品質は改良されなかったものと考えられる。また(b)及び(c)ではオキサゾールは除去されておらず、アクリルアミドの品質の改良には全く不十分であると考えられる。
【0052】
本発明においては、上記▲1▼〜▲4▼の方法の中では、▲2▼の、
(イ)強酸性カチオン交換樹脂
(ロ)3級アミン基を有する弱塩基性アニオン交換樹脂
(ハ)活性炭
の順に接触させた場合が、最もよい結果、即ち、高品質なアクリルアミドを得ることができる。
【0053】
この理由は、明らかではないが、本発明によるアクリロニトリルの精製効果は、強酸性カチオン交換樹脂、3級アミン基を有する樹脂、あるいは活性炭、それぞれが独立に不純物を除去しているのみならず、ある特定の有害不純物に関しては、(イ)強酸性カチオン交換樹脂から(ロ)3級アミン基を有する樹脂、次いで(ハ)活性炭という順序で共同的に作用し、除去を行っているものと考えられる。
【0054】
次に、凝集剤などに用いられる高分子量アクリルアミド系ポリマーの製造方法は、概略以下のようである。
【0055】
アクリルアミドは、単体、または他のビニル重合型のコモノマーと共に用いられる。コモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸またはそれらの水溶性塩:アクリル酸およびメタクリル酸のアルキルアミノアルキルエステルまたはそれらの第4級アンモニウム誘導体:N−(ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドまたはその4級アンモニウム誘導体:酢酸ビニル:アクリロニトリル等を挙げることが出来る。これらのコモノマーとアクリルアミドとの混合比率は普通アクリルアミド100モルに対して100モル以下、特に50モル以下である。
【0056】
アクリルアミドとコモノマーとの重合は、水溶液重合、乳化重合等の周知の方法で行われるが、このうち最も広く用いられる水溶液重合の一般的方法を述べる。アクリルアミドとコモノマーの合計濃度は、通常、5〜60%とする。重合開始剤には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−アミジノプロパン)2塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸ナトリウム)などのアゾ系遊離基開始剤;上記過酸化物と重亜硫酸ナトリウム、トリエタノールアミン、硫酸第一鉄アンモニウム等の還元剤を併用する、いわゆるレドックス系触媒が用いられる。
【0057】
重合反応の温度に関しては、アクリルアミドとコモノマーとの合計濃度が15重量%以上であって、得られるポリマーの分子量が1000万以上の高分子量の場合には、冷却などによる温度の制御が困難であるため、普通断熱的な重合の形式が採られ、この場合、重合系の温度は重合の進行と共に重合熱によって上昇する。この場合において重合の開始時の温度は、−5〜40℃の範囲から選ばれることが多く、反応終了後の温度は、例えば、55〜100℃の高温に達する。
【0058】
分子量を1000万以上、特に1500万程度の高分子量とするため、アクリルアミドおよびコモノマーの合計濃度、使用する重合開始剤の種類と濃度、反応温度などについて工夫がなされる。未反応アクリルアミドを例えば0.2重量%以下の微量とするためにも同様の工夫がなされるが、特に2種類以上の重合開始剤を異なった温度領域で作用させる方法が多く提案され実施されている。
【0059】
上記のような重合反応によって得られるものは、含水ゲル、即ちアクリルアミドとコモノマーとを水溶液にするために用いた水をほぼそのまま含むゴム状のゲルであるが、通常はこれを乾燥粉末状の製品とするため、水の抽出または加熱乾燥による脱水、あるいは、含水ゲルまたは乾燥ゲルの破砕または粉砕などの処理を加える。なお、これらの処理に先立ってまたはその途中で、含水ゲルに苛性ソーダをねりこみ加熱して、アミド基の一部をカルボキシル基に変ずるなど、アクリルアミド系ポリマーを化学的に変性することもある。
【0060】
以上のようにして高分子量化し、未反応モノマーを減少させ、乾燥粉末化し、場合によっては、化学的変性を行う結果として、得られるポリマーは、しばしば水に溶解しにくいものとなり、凝集剤などの商品としての価値を失いがちである。その解決のために重合反応の前、途中、または後に不溶化防止剤を添加する方法、特定の重合開始剤を用いる方法、あるいは含水ゲルの乾燥を特定の条件下で行う方法などが行われる。
【0061】
本発明の方法が適用されるアクリルアミドは、概略上記のようなアクリロニトリル精製、水和反応、蒸留操作、各種の精製処理及びその他の付帯的工程からなる方法で製造され、概略上記のような高分子量アクリルアミド系ポリマーの製造に共される。
【0062】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
<アクリロニトリルの精製>
常法に従い、希塩酸で処理してH型とし、十分水洗した強酸性カチオン交換樹脂レバチットS100(商品名、バイエル社製)1Lを、90℃、常圧で、約8時間乾燥後、内径70mm、長さ400mmのSUS304製カラムに充填した。また3級アミン基を有する樹脂レバチットMP62(商品名、カルゴン社製)1Lを水洗したのち、内径70mm、長さ400mmのSUS304製カラムに充填した。また活性炭カルゴンCPG(商品名、カルゴン社製)1Lを水洗したのち、内径70mm、長さ400mmのSUS304製カラムに充填した。
【0063】
この3つのカラムを、第1塔にレバチットS100、第2塔にレバチットMP62、第3塔にカルゴンCPGの順になるように接続した。これにアクリロニトリルを6L/hの流量で通液した。
<アクリルアミドの製造>
上記の方法で得られた精製アクリロニトリルを用い、以下のように銅系触媒の存在下で水和反応させることにより、アクリルアミドを得た。
水和反応の触媒:
80メッシュ以下のラネー銅合金を常法により苛性ソーダを用いて展開し、水洗して、ラネー銅触媒を製造した。製造中及びその後の取扱いに際して、空気等の酸素含有ガスとの接触を避けた。
接触水和反応:
SUS製で攪拌機と触媒分離器を内蔵した、約2Lの反応器に上記の触媒を400g仕込み、これに予め、窒素ガスを用いて溶存酸素を除いたアクリロニトリルと水を各々600g/h、900g/hの速度で供給し、120℃で反応させた。反応液は、触媒と共に攪拌されて懸濁液となり、ついで触媒分離器を通って触媒を殆ど含まない液として反応器から取り出される。この反応を3日間続けた。
濃縮:
得られた反応液を回分式の減圧濃縮にかけ、未反応アクリロニトリルの全量と未反応水の一部を留去して濃度約50%のアクリルアミド水溶液を得た。アクリルアミド水溶液は、銅を含有していた。
脱銅処理:
常法により希塩酸で前処理してH型とした強酸性カチオン交換樹脂レバチットSP112(商品名、バイエル社製)150mLをガラス製カラムに充填し、これに前述の濃縮処理で得られたアクリルアミド水溶液を900ml/hで通液した。得られた液の銅含有量は0.01ppm以下、pHは3.5〜4.0であった。
pH調整:
脱銅処理の間、苛性ソーダを連続的に添加して処理液のpHを約6.5に調整した。
<アクリルアミドポリマーの製造方法>
上記の方法で得られた、アクリルアミド水溶液を以下の方法で重合し、アクリルアミドポリマーを得た。
【0064】
アクリルアミド水溶液に水を加えて濃度20重量%とし、この500gを1Lポリエチレン容器に入れ、18℃に保ちながら、窒素を通じて液中の溶存酸素を除き、直ちに、発泡スチロール製の保温用ブロックの中に入れた。
【0065】
ついでこれに、200×10-6mpm(アクリルアミドに対するモル比)の4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸ナトリウム)、200×10-6mpmのジメチルアミノプロピオニトリル、及び80×10-6mpmの過硫酸アンモニウムを各々小量の水に溶解して、この順次に素早く注入した。これらの試薬には、予め窒素ガスを通じておき、また、注入およびその前後には上記ポリエチレン容器にも少量の窒素ガスを通じておくなどして酸素ガスの混入を防止した。試薬を注入して、数分間の誘導期の後、ポリエチレン容器の内部の温度が上昇するのが認められたので窒素ガスの供給をとめた。約100分後に温度が約70℃の頂点に達してから、ポリエチレン容器を保温用ブロックから取りだして97℃の水に2時間浸漬し、ついで冷水に浸漬して冷却した。
【0066】
このようにして得られたアクリルアミドポリマーの含水ゲルを、小塊にわけ、肉挽器ですりつぶし、100℃の熱風で2時間乾燥し、高速回転刃粉砕器で粉砕して乾燥粉末状のアクリルアミドポリマーを得た。さらに、これを篩にかけ、32〜42メッシュのものを分取し、以後の試験に供するポリマーサンプルとした。ポリマーサンプルの水分を125℃、1液の熱風乾燥による減量として求めたところ、何れのポリマーサンプルについても約10重量%であった。
<アクリルアミドポリマーの試験法>
上記の方法で得られたポリマーサンプルの水溶性、標準粘度の測定を次の方法で行った。
水溶性:
水溶性は、1Lビーカーに水600mLを入れ、定められた形状の攪拌羽根で攪拌しながら、ポリマーサンプル0.66g(純分0.6g)を添加し、400rpmで2時間攪拌を行い、得られた溶液を150メッシュの金網で濾過し、不溶解分の多少と濾過性から、水溶性を判断した。即ち、完溶のものを◎、完溶に近いものを○、不溶解分があるが、それを濾別する事ができるものを△、濾液の通過が遅く、不溶解分の濾過が事実上できないものを×とした。
分子量:
分子量は、上記と同様の操作で得られた濾液を用いて、濃度の異なるいくつかのアクリルアミドポリマー水溶液を調整し、これに1mol/L濃度相当の硝酸ナトリウムを加え、毛管型粘度計を用いて極限粘度を求め、次式を用いて算出した。
【0067】
極限粘度式=3.73×10-4×[重量平均分子量]0.66
この式を分子量1000万以上のアクリルアミドポリマーに適用することには疑問があることがReport on Progress in PolymerPhysics in Japan,20,5(1977)から示唆されるが、広く慣用もされている。
【0068】
なお、上記の水溶性試験により得られる濾液は、水溶性の良好な場合は、濃度0.1%のポリマー水溶液であるが、これに1mol/L濃度相当の塩化ナトリウムを加え、BL型粘度計でBLアダプターを用いて25℃、ローター回転数60rpmで粘度を測定した(標準粘度)。このような方法で得られる標準粘度は、分子量に相関のある値として慣用されているので、本実施例でも併用した。このような方法で、評価したところ、得られたポリマーの水溶性は、良好であり、分子量も十分であった。結果を表1に示した。
実施例2
アクリロニトリルの精製時に、第1塔にレバチットS100、第2塔にレバチットMP62の順になるように接続して、アクリロニトリルを通液し、アクリルアミドの製造に供する以外は、実施例1と同様な操作を行い、最終的に得られたアクリルアミドポリマーの評価を行ったところ、良好な水溶性が得られ、また分子量も十分であった。結果を表1に示した。
実施例3
アクリロニトリルの精製時に、第1塔にレバチットMP62、第2塔にレバチットS100、第3塔にカルゴンCPGの順になるように精製してアクリロニトリルを通液し、アクリルアミドの製造に供する以外は、実施例1と同様な操作を行い、最終的に得られたアクリルアミドポリマーの評価を行ったところ、実施例1ほどではないが、水溶性は比較的良好であり、分子量も十分であった。結果を表1に示した。
実施例4
アクリロニトリルの精製時に、第1塔にレバチットS100、第2塔にカルゴンCPG、第3塔にレバチットMP62の順になるように接続してアクリロニトリルを通液し、アクリルアミドの製造に供する以外は、実施例1と同様な操作を行い、最終的に得られたアクリルアミドポリマーの評価を行ったところ、実施例1ほどではないが、水溶性は比較的良好であり、分子量も十分であった。結果を表1に示した。
実施例5
アクリロニトリルの精製時に、第1塔にレバチットSP112、第2塔にレバチットMP62、第3塔にカルゴンCPGの順になるように接続してアクリロニトリルを通液し、アクリルアミドの製造に供する以外は、実施例1同様の操作を行い、最終的に得られたアクリルアミドポリマーの評価を行ったところ、実施例1とほぼ同様な結果が得られた。結果を表1に示した。
実施例6
アクリロニトリルの精製時に、第1塔にレバチットS100、第2塔にレバチットMP64、第3塔にカルゴンCPGの順になるように接続してアクリロニトリルを通液し、アクリルアミドの製造に供する以外は、実施例1と同様の操作を行い、最終的に得られたアクリルアミドポリマーの評価を行ったところ、実施例1とほぼ同様な結果が得られた。結果を表1に示した。
実施例7
アクリロニトリルの精製時に、第1塔にレバチットS100、第2塔にレバチットMP62、第3塔に白鷺LHcの順になるように接続してアクリロニトリルを通液し、アクリルアミドの製造に供する以外は、実施例1と同様な操作を行い、最終的に得られたアクリルアミドポリマーの評価を行ったところ、実施例1と同様な結果が得られた。結果を表1に示した。
比較例1
アクリロニトリルの精製を行わなかったこと以外は、実施例1と同様な操作を行った。最終的に得られたアクリルアミドポリマーの評価を行ったところ、得られたポリマーの水溶性は全く不十分であり、粘度は測定不能であった。結果を表1に示した。
比較例2
アクリロニトリルをレバチットS100のみに通液し、アクリルアミドの製造に供する以外は、実施例1と同様の操作を行い、最終的に得られたアクリルアミドポリマーの評価を行ったところ、比較例1よりは若干の改良効果は見られるものの、まだ不十分であり満足できるものではなかった。結果を表1に示した。
比較例3
アクリロニトリルをレバチットMP62のみに通液し、アクリルアミドの製造に供する以外は、実施例1と同様の操作を行い、最終的に得られたアクリルアミドポリマーの評価を行ったところ、得られたポリマーの水溶性は全く不十分であり、粘度は測定不能であった。結果を表1に示した。
比較例4
アクリロニトリルをカルゴンCPGのみに通液した以外は、実施例1と同様な操作を行い、最終的に得られたアクリルアミドポリマーの評価を行ったところ、得られたポリマーの水溶性は全く不十分であり、粘度は測定不能であった。結果を表1に示した。
比較例5
アクリロニトリルの精製時に、第1塔にレバチットMP62、第2塔にレバチットS100の順になるように接続して、アクリロニトリルを通液し、アクリルアミドの製造に供する以外は、実施例1と同様な操作を行い、最終的に得られたアクリルアミドポリマーの評価を行ったところ、得られたポリマーの水溶性は全く不十分であり、粘度は測定不能であった。結果を表1に示した。
比較例6
アクリロニトリルの精製時に、第1塔にレバチットMP62、第2塔にカルゴンCPGの順になるように接続して、アクリロニトリルを通液する以外は、実施例1と同様な操作を行い、最終的に得られたアクリルアミドポリマーの評価を行ったところ、得られたポリマーの水溶性は全く不十分であり、粘度は測定不能であった。結果を表1に示した。
比較例7
アクリロニトリルの精製時に、第1塔にレバチットMP62、第2塔にカルゴンCPG、第3塔にレバチットS100の順になるように接続して、アクリロニトリルを通液する以外は、実施例1と同様な操作を行い、最終的に得られたアクリルアミドポリマーの評価を行ったところ、得られたポリマーの水溶性は全く不十分であり、粘度は測定不能であった。結果を表1に示した。
【0069】
【表1】
(注1)ガスクロマトグラフィーにより濃度を求めた。N.D.は未検出を表す。検出下限は1.0重量ppmである。
(注2)ジニトロフェニルヒドラジンを塩酸酸性下で反応発色させ、その吸光度から求めた。
(注3)ヨウ化カリウムと反応発色させ、その吸光度から求めた。
【0070】
【発明の効果】
接触水和法アクリルアミド原料用のアクリロニトリルは、オキサゾールに代表されるような弱塩基性物質が微量含まれている場合、高品質なアクリルアミドの製造には適さない。このようなアクリロニトリルを用いる場合、本発明の方法により接触水和反応前に簡単なカラム吸着処理を行うだけで、高品質のアクリルアミドが得られ、このアクリルアミドは凝集剤用ポリアクリルアミドの原料として特に有用である。
Claims (5)
- アンモオキシデーション法によって製造されるアクリロニトリルを強酸性カチオン交換樹脂と接触させる工程及び3級アミン基を有する樹脂と接触させる工程の少なくとも2つの工程を経由し、強酸性カチオン樹脂を後工程とする場合は、さらに活性炭と接触させる工程を経由した後、銅系触媒の存在下で水和反応させることを特徴とするアクリルアミドの製造方法。
- アクリロニトリルを強酸性カチオン交換樹脂と接触させ、次いで3級アミン基を有する樹脂と接触させる工程を経由した後、銅系触媒の存在下に水和反応させる請求項1記載のアクリルアミドの製造方法。
- アクリロニトリルを強酸性カチオン交換樹脂と接触させ、次いで3級アミン基を有する樹脂と接触させ、さらに活性炭と接触させる工程を経由した後、銅系触媒の存在下に水和反応させる請求項1記載のアクリルアミドの製造方法。
- アクリロニトリルを強酸性カチオン交換樹脂と接触させ、次いで活性炭と接触させ、さらに3級アミン基を有する樹脂と接触させる工程を経由した後、銅系触媒の存在下に水和反応させる請求項1記載のアクリルアミドの製造方法。
- アクリロニトリルを3級アミン基を有する樹脂と接触させ、次いで強酸性カチオン交換樹脂と接触させ、さらに活性炭と接触させる工程を経由した後、銅系触媒の存在下に水和反応させる請求項1記載のアクリルアミドの製造方法。
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